(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118719
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】D級増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 3/217 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
H03F3/217
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025155
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 康之
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA02
5J500AA24
5J500AA41
5J500AA66
5J500AC36
5J500AC51
5J500AF02
5J500AH10
5J500AH19
5J500AH25
5J500AK17
5J500AK36
5J500AS05
5J500AT01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】デッドタイム期間中に出力端子に生じる急激な電圧変化を抑制し誤作動を防止する。
【解決手段】D級増幅回路1Aにおいて、ディレイ時間生成回路X103H、X103Lは、パルス変調された入力信号に応じて、インダクタンス成分を含む負荷回路2に接続された出力端子の電位がハイレベル電位及びローレベル電位に交互にスイッチング動作するように、ハイサイドパワートランジスタM101H及びローサイドパワートランジスタM101Lのゲートを夫々駆動し、入力信号がハイレベルからローレベルに遷移した場合、ハイサイドパワートランジスタのゲートは、第1期間、ハイサイド駆動電源に対応するハイレベル電位及びローレベル電位の中間電位に調整され、入力信号がローレベルからハイレベルに遷移した場合、ローサイドパワートランジスタのゲートは、第2期間、ローサイド駆動電源に対応するハイレベル電位及びローレベル電位の中間電位に調整される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス変調された入力信号が入力される入力端子と、
インダクタンス成分を含む負荷回路に接続された出力端子と、
出力電源に接続されたドレイン、及び、前記出力端子に接続されたソースを有するハイサイドパワートランジスタと、
グラウンド端子に接続されたソース、及び、前記出力端子に接続されたドレインを有するローサイドパワートランジスタと、
前記入力信号に応じて、前記出力端子の電位が前記出力電源に対応するハイレベル電位、及び、前記グラウンド端子に対応するローレベル電位に交互にスイッチング動作するように、前記ハイサイドパワートランジスタ及び前記ローサイドパワートランジスタのゲートをそれぞれ駆動するためのハイサイドゲート駆動回路及びローサイドゲート駆動回路と、
前記入力信号がハイレベルからローレベルに遷移した場合に、前記ハイサイドパワートランジスタのゲートを、第1期間、ハイサイド駆動電源に対応するハイレベル電位及びローレベル電位の中間電位にするためのハイサイドゲート調整回路と、
前記入力信号がローレベルからハイレベルに遷移した場合に、前記ローサイドパワートランジスタのゲートを、第2期間、ローサイド駆動電源に対応するハイレベル電位及びローレベル電位の中間電位にするためのローサイドゲート調整回路と、
を備える、D級増幅回路。
【請求項2】
前記ハイサイドパワートランジスタはNチャネルパワートランジスタであり、
前記ローサイドパワートランジスタはNチャネルパワートランジスタであり、
前記ハイサイドゲート調整回路は、
前記出力端子に接続されたソース、並びに、互いに接続されたゲート及びドレインを有する第1Nチャネルトランジスタと、
前記第1Nチャネルトランジスタのドレインと前記ハイサイド駆動電源との間に接続された第1抵抗器と、
前記入力信号がハイレベルになった場合にハイレベルを出力し、前記入力信号がローレベルになった場合に、前記第1期間、ハイインピーダンスを出力した後に、ローレベルを出力するように構成され、出力端子が前記ハイサイドパワートランジスタのゲートに接続された第1トライステートバッファと、
を含み、
前記ローサイドゲート調整回路は、
前記グラウンド端子に接続されたソース、並びに、互いに接続されたゲート及びドレインを有する第2Nチャネルトランジスタと、
前記第2Nチャネルトランジスタのドレインと前記ローサイド駆動電源との間に接続された第2抵抗器と、
前記入力信号がローレベルになった場合にハイレベルを出力し、前記入力信号がハイレベルになった場合に、前記第2期間、ハイインピーダンスを出力した後に、ローレベルを出力するように構成され、出力端子が前記ローサイドパワートランジスタのゲートに接続された第2トライステートバッファと、
を含む、請求項1に記載のD級増幅回路。
【請求項3】
前記ハイサイドパワートランジスタはPチャネルパワートランジスタであり、
前記ローサイドパワートランジスタはNチャネルパワートランジスタであり、
前記ハイサイドゲート調整回路は、
前記ハイサイド駆動電源に接続されたソース、並びに、互いに接続されたゲート及びドレインを有する第1Pチャネルトランジスタと、
前記第1Pチャネルトランジスタのドレインと前記出力端子との間に接続された第3抵抗器と、
前記入力信号がハイレベルになった場合にローレベルを出力し、前記入力信号がローレベルになった場合に、前記第1期間、ハイインピーダンスを出力した後に、ハイレベルを出力するように構成され、出力端子が前記ハイサイドパワートランジスタのゲートに接続された第3トライステートバッファと、
を含み、
前記ローサイドゲート調整回路は、
前記グラウンド端子に接続されたソース、並びに、互いに接続されたゲート及びドレインを有する第2Nチャネルトランジスタと、
前記第2Nチャネルトランジスタのドレインと前記ローサイド駆動電源との間に接続された第4抵抗器と、
前記入力信号がローレベルになった場合にハイレベルを出力し、前記入力信号がハイレベルになった場合に、前記第2期間、ハイインピーダンスを出力した後に、ローレベルを出力するように構成され、出力端子が前記ローサイドパワートランジスタのゲートに接続された第4トライステートバッファと、
を含む、請求項1に記載のD級増幅回路。
【請求項4】
前記ハイサイドゲート調整回路は、前記入力信号がローレベルになった時刻から前記出力端子が前記出力電源に対応するローレベル電位に遷移した時刻までが前記第1期間となるように構成された第1論理回路を含み、
前記ローサイドゲート調整回路は、前記入力信号がハイレベルになった時刻から前記出力端子が前記出力電源に対応するハイレベル電位に遷移した時刻までが前記第2期間となるように構成された第2論理回路を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のD級増幅回路。
【請求項5】
前記ハイサイドゲート調整回路は、前記入力信号がハイレベルのとき前記出力端子の電圧が前記出力電源の電圧よりも大きくなったことを検出したとき、前記第1期間が無くなるように構成された第3論理回路を含み、
前記ローサイドゲート調整回路は、前記入力信号がローレベルのとき前記出力端子の電圧が前記グラウンド端子の電圧よりも小さくなったことを検出したとき、前記第2期間が無くなるように構成された第4の論理回路を含む、請求項4に記載のD級増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、D級増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばオーディオシステム等に用いられる増幅回路の一つとして、電力効率に優れたD級増幅回路が知られている。D級増幅回路では、一般的に、パルス幅変調(PWM)出力波形からオーディオ信号を抽出するためにローパスフィルタ(LCフィルタ)を含む負荷回路が外付けされる。近年のD級増幅回路では、発振周波数を大きくすることで、ローパスフィルタを含む負荷回路を小型化し、ローコストを実現することがトレンドになってきている。
【0003】
D級増幅回路では、一対のパワートランジスタ(ハイサイドパワートランジスタ及びローサイドパワートランジスタ)が交互にオン/オフのスイッチング動作を繰り返すが、双方のパワートランジスタが同時にオン状態になることで過大な貫通電流が生じて素子が破損することを防止するために、デッドタイムが設けられる。このデッドタイムは、D級増幅回路の増幅特性を低下させる要因になることが知られており、D級増幅回路における発振周波数の高周波化に伴い、デッドタイムを小さくすることが求められている。
【0004】
デッドタイムを小さくするときに課題となるのは、D級増幅回路の出力端子における急激な電圧変化に起因してオフ状態にあるパワートランジスタがオン動作してしまう、いわゆるセルフターンオンによる貫通電流の発生である。このようなセルフターンオンへの対策を含むD級増幅回路が、例えば特許文献1に開示されている。
【0005】
ここで
図8及び
図9を参照して、この種のD級増幅回路について簡潔に説明する。
図8は参考技術に係るD級増幅回路1´を示す回路構成図であり、
図9は
図8の各部における電位の時間的変化を示すタイムチャートである。
【0006】
D級増幅回路1´の入力端子INには、パルス変調された入力信号が入力される。入力信号は、例えば三角波(のこぎり波)オシレータを用いてパルス幅変調(PWM)された信号であり、D級増幅回路1´が有する2つの出力MOSFETであるハイサイドパワートランジスタM101H及びローサイドパワートランジスタM101Lによって増幅される。ハイサイドパワートランジスタM101H及びローサイドパワートランジスタM101Lは、NチャネルのMOSFETで構成され、出力端子OUTを、出力電源V101、又は、グラウンド端子GNDに交互に接続する電流ステアリングスイッチとして動作する。ハイサイドパワートランジスタM101Hは、出力電源V101に接続されたドレイン、及び、出力端子OUTに接続されたソースを有する。ローサイドパワートランジスタM101Lは、グラウンド端子GNDに接続されたソース、及び、出力端子OUTに接続されたドレインを有する。このようなD級増幅回路1´は、出力端子OUTに接続された負荷回路2に対して、高周波の方形波である信号を出力する。
【0007】
負荷回路2は、インダクタンス成分であるインダクタL101及びコンデンサC101からなるローパスフィルタと、抵抗成分及びインダクタ成分を含む負荷LOADとを備える(より具体的には、入力信号がオーディオ信号である場合には、負荷回路2は、オーディオ信号を復元するための外付けのローパスフィルタ回路を含む)。
【0008】
図9に示すように、D級増幅回路1´において、IN端子に入力される入力信号が時刻t1でハイレベルからローレベルに遷移した場合、ハイサイドパワートランジスタM101Hのゲート-ソース間電圧Vgs-Hは、プリドライバX102Hによって0Vへの遷移を開始する。ここでプリドライバX102Hの駆動能力は、トランジスタM103Hに比べて小さく設定されることにより、ハイサイドパワートランジスタM101Hのゲート-ソース間電圧Vgs-Hは比較的緩やかに遷移する。これにより、ハイサイドパワートランジスタM101Hは比較的緩やかにオフすることができるため輻射ノイズが低減される。そしてトランジスタM102H及び抵抗R101Hによって、ハイサイドパワートランジスタM101Hのゲート-ソース間電圧Vgs-Hが時刻t2において所定の閾値電圧Vref1付近に達したことを検出すると、トランジスタM103Hがオンとなり、ゲート-ソース間電圧Vgs-Hを急峻に0Vに遷移させる。このようにハイサイドパワートランジスタM101Hがオフすると、所定のデッドタイムTdが経過した後、時刻t3においてローサイドパワートランジスタM101Lがオンすることにより、スイッチング動作が完了する。
【0009】
続いてIN端子に入力される入力信号が時刻t4でローレベルからハイレベルに遷移した場合、ローサイドパワートランジスタM101Lのゲート-ソース間電圧Vgs-Lは、プリドライバX102Lによって0Vへの遷移を開始する。ここでプリドライバX102Lの駆動能力は、トランジスタM103Lに比べ小さく設定されることにより、ローサイドパワートランジスタM101Lのゲート-ソース間電圧Vgs-Lは比較的緩やかに遷移する。これにより、ローサイドパワートランジスタM101Lは比較的緩やかにオフすることができるため輻射ノイズが低減される。そしてトランジスタM102L及び抵抗R101Lによって、ローサイドパワートランジスタM101Lのゲート-ソース間電圧Vgs-Lが時刻t5において所定の閾値電圧Vref2付近に達したことを検出すると、トランジスタM103Lがオンとなり、ゲート-ソース間電圧Vgs-Lを急峻に0Vに遷移させる。このようにローサイドパワートランジスタM101Lがオフすると、所定のデッドタイムTdが経過した後、時刻t6においてハイサイドパワートランジスタM101Hがオンすることにより、スイッチング動作が完了する。
【0010】
このようにD級増幅回路1´が有する一対のパワートランジスタ(ハイサイドパワートランジスタM101H及びローサイドパワートランジスタM101L)は駆動能力が大きいトランジスタM103H、M103Lでオフさせるため、出力端子OUTの急激な遷移に起因するセルフターンオンを防止できる。そのため参考技術に係るD級増幅回路1´では、セルフターンオンによる貫通電流を防止しながらも、スイッチング動作を急峻にすることでデッドタイムを小さくことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
参考技術に係るD級増幅回路1´では、出力端子OUTにおけるスイッチング動作はハイサイドパワートランジスタM101H及びローサイドパワートランジスタM101Lのオンオフ動作のみを考慮していた。しかしながら、実際のアプリケーションでは、
図8に例示されるD級増幅回路1´のように、出力端子OUTには、ローパスフィルタ(LCフィルタ)やダイナミックスピーカのような負荷LOAD等のインダクタ成分を含む負荷回路2が接続される。そのため、負荷回路2に含まれるインダクタ成分に起因する回生電流が発生するため、その影響を考慮する必要がある。より具体的に言えば、交互にオンオフが切り替わるハイサイドパワートランジスタM101H及びローサイドパワートランジスタM101Lは、前述したように、双方がオン状態になることで大きな貫通電流が生じて素子が破損しないように、双方がオフ状態になるデッドタイムTdが少なからず設けられる。デッドタイムTdでは、双方のパワートランジスタがともにオフ状態となるためD級増幅回路1´の出力端子OUT側がハイインピーダンスになる。ハイインピーダンスの状態では、負荷回路2に含まれるインダクタ成分に蓄積されたエネルギによる逆起電力によって回生電流が発生し、出力端子OUTに急激な変化をもたらすおそれがある。
【0013】
一般的に、D級増幅回路では、内部にアナログアンプが含まれるため、このような出力端子OUTの急激な電圧変化によってアナログアンプにスイッチングノイズが混入すると、誤動作を生じるおそれがある。例えば、典型的なD級増幅回路には、直流電源回路としてバンドギャップリファレンス回路が用いられるが、出力端子OUTに急激な電圧変化であるスイッチングノイズが印加されると、直流電源回路から本来の出力されるべき電圧が出力されず(例えば、直流電源回路の出力が直流1Vであるべきところ、0Vに落ちてしまい)、D級増幅回路の誤動作につながってしまう。
【0014】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、デッドタイム期間中に出力端子に生じる急激な電圧変化を抑制し、誤作動を防止可能なD級増幅回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るD級増幅回路は、上記課題を解決するために、
パルス変調された入力信号が入力される入力端子と、
インダクタンス成分を含む負荷回路に接続された出力端子と、
出力電源に接続されたドレイン、及び、前記出力端子に接続されたソースを有するハイサイドパワートランジスタと、
グラウンド端子に接続されたソース、及び、前記出力端子に接続されたドレインを有するローサイドパワートランジスタと、
前記入力信号に応じて、前記出力端子の電位が前記出力電源に対応するハイレベル電位、及び、前記グラウンド端子に対応するローレベル電位に交互にスイッチング動作するように、前記ハイサイドパワートランジスタ及び前記ローサイドパワートランジスタのゲートをそれぞれ駆動するためのハイサイドゲート駆動回路及びローサイドゲート駆動回路と、
前記入力信号がハイレベルからローレベルに遷移した場合に、前記ハイサイドパワートランジスタのゲートを、第1期間、ハイサイド駆動電源に対応するハイレベル電位及びローレベル電位の中間電位にするためのハイサイドゲート調整回路と、
前記入力信号がローレベルからハイレベルに遷移した場合に、前記ローサイドパワートランジスタのゲートを、第2期間、ローサイド駆動電源に対応するハイレベル電位及びローレベル電位の中間電位にするためのローサイドゲート調整回路と、
を備える。
【0016】
上記(1)の態様によれば、入力信号がハイレベルからローレベルに遷移する際に、第1期間、ハイサイドパワートランジスタのゲートがハイサイド駆動電源のハイレベル電位及びローレベル電位の中間電位に調整される。また入力信号がローレベルからハイレベルに遷移する際に、第2期間、ローサイドパワートランジスタのゲートがローサイド駆動電源のハイレベル電位及びローレベル電位の中間電位に調整される。これにより、入力信号に対応して2つのパワートランジスタが互いにスイッチング動作する際に、出力端子に接続された負荷回路に含まれるインダクタ成分に起因して発生する回生電流によって、デッドタイム期間中に出力端子に生じる急激な電圧変化を抑制し、D級増幅回路の誤作動を防止できる。
【0017】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記ハイサイドパワートランジスタはNチャネルパワートランジスタであり、
前記ローサイドパワートランジスタはNチャネルパワートランジスタであり、
前記ハイサイドゲート調整回路は、
前記出力端子に接続されたソース、並びに、互いに接続されたゲート及びドレインを有する第1Nチャネルトランジスタと、
前記第1Nチャネルトランジスタのドレインと前記ハイサイド駆動電源との間に接続された第1抵抗器と、
前記入力信号がハイレベルになった場合にハイレベルを出力し、前記入力信号がローレベルになった場合に、前記第1期間、ハイインピーダンスを出力した後に、ローレベルを出力するように構成され、出力端子が前記ハイサイドパワートランジスタのゲートに接続された第1トライステートバッファと、
を含み、
前記ローサイドゲート調整回路は、
前記グラウンド端子に接続されたソース、並びに、互いに接続されたゲート及びドレインを有する第2Nチャネルトランジスタと、
前記第2Nチャネルトランジスタのドレインと前記ローサイド駆動電源との間に接続された第2抵抗器と、
前記入力信号がローレベルになった場合にハイレベルを出力し、前記入力信号がハイレベルになった場合に、前記第2期間、ハイインピーダンスを出力した後に、ローレベルを出力するように構成され、出力端子が前記ローサイドパワートランジスタのゲートに接続された第2トライステートバッファと、
を含む。
【0018】
上記(2)の態様によれば、ハイサイドパワートランジスタ及びローサイドパワートランジスタがNチャネルパワートランジスタで構成されるD級増幅回路において、入力信号がハイレベルからローレベルに遷移する際に、第1期間、ハイサイドパワートランジスタのゲートをハイサイド駆動電源の中間電位に調整するとともに、入力信号がローレベルからハイレベルに遷移する際に、第2期間、ローサイドパワートランジスタのゲートをローサイド駆動電源の中間電位に調整することが可能な回路構成が得られる。
【0019】
(3)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記ハイサイドパワートランジスタはPチャネルパワートランジスタであり、
前記ローサイドパワートランジスタはNチャネルパワートランジスタであり、
前記ハイサイドゲート調整回路は、
前記ハイサイド駆動電源に接続されたソース、並びに、互いに接続されたゲート及びドレインを有する第1Pチャネルトランジスタと、
前記第1Pチャネルトランジスタのドレインと前記出力端子との間に接続された第3抵抗器と、
前記入力信号がハイレベルになった場合にローレベルを出力し、前記入力信号がローレベルになった場合に、前記第1期間、ハイインピーダンスを出力した後に、ハイレベルを出力するように構成され、出力端子が前記ハイサイドパワートランジスタのゲートに接続された第3トライステートバッファと、
を含み、
前記ローサイドゲート調整回路は、
前記グラウンド端子に接続されたソース、並びに、互いに接続されたゲート及びドレインを有する第2Nチャネルトランジスタと、
前記第2Nチャネルトランジスタのドレインと前記ローサイド駆動電源との間に接続された第4抵抗器と、
前記入力信号がローレベルになった場合にハイレベルを出力し、前記入力信号がハイレベルになった場合に、前記第2期間、ハイインピーダンスを出力した後に、ローレベルを出力するように構成され、出力端子が前記ローサイドパワートランジスタのゲートに接続された第4トライステートバッファと、
を含む。
【0020】
上記(3)の態様によれば、ハイサイドパワートランジスタがPチャネルパワートランジスタで構成され、ローサイドパワートランジスタがNチャネルパワートランジスタで構成されるD級増幅回路において、入力信号がハイレベルからローレベルに遷移する際に、第1期間、ハイサイドパワートランジスタのゲートをハイサイド駆動電源の中間電位に調整するとともに、入力信号がローレベルからハイレベルに遷移する際に、第2期間、ローサイドパワートランジスタのゲートをローサイド駆動電源の中間電位に調整することが可能な回路構成が得られる。
【0021】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記ハイサイドゲート調整回路は、前記入力信号がローレベルになった時刻から前記出力端子が前記出力電源に対応するローレベル電位に遷移した時刻までが前記第1期間となるように構成された第1論理回路を含み、
前記ローサイドゲート調整回路は、前記入力信号がハイレベルになった時刻から前記出力端子が前記出力電源に対応するハイレベル電位に遷移した時刻までが前記第2期間となるように構成された第2論理回路を含む。
【0022】
上記(4)の態様によれば、ハイサイドゲート調整回路は、第1論理回路を含むことにより、入力信号がローレベルになった時刻から出力端子がローレベル電位に遷移した時刻までが第1期間となるように、ハイサイドパワートランジスタのゲートを駆動する。これにより、ハイサイドパワートランジスタのゲートがハイサイド駆動電源の中間電位になるように調整される第1期間を、入力信号がハイレベルからローレベルに遷移する際に出力端子に急激な電圧変化が生じ得る期間とすることができ、余分な電力消費を抑えることができる。
同様にローサイドゲート調整回路は、第2論理回路を含むことにより、入力信号がハイレベルになった時刻から出力端子がハイレベル電位に遷移した時刻までが第2期間となるように、ローサイドパワートランジスタのゲートを駆動する。これにより、ローサイドパワートランジスタのゲートがローサイド駆動電源の中間電位になるように調整される第2期間を、入力信号がローレベルからハイレベルに遷移する際に出力端子に急激な電圧変化が生じ得る期間とすることができ、余分な電力消費を抑えることができる。
【0023】
(5)他の態様では、上記(4)の態様において、
前記ハイサイドゲート調整回路は、前記入力信号がハイレベルのとき前記出力端子の電圧が前記出力電源の電圧よりも大きくなったことを検出したとき、前記第1期間が無くなるように構成された第3論理回路を含み、
前記ローサイドゲート調整回路は、前記入力信号がローレベルのとき前記出力端子の電圧が前記グラウンド端子の電圧よりも小さくなったことを検出したとき、前記第2期間が無くなるように構成された第4の論理回路を含む。
【0024】
上記(5)の態様によれば、ハイサイドゲート調整回路は第3論理回路を含むことにより、入力信号がハイレベルのとき出力端子の電圧が出力電源の電圧よりも大きくなったことを検出したとき、第1期間が無くなるように動作する。これにより、入力信号がハイレベルからローレベルに遷移する際に出力端子に急激な電圧変化が生じない場合には、ハイサイドパワートランジスタのゲートを中間電位にする第1期間を省略することにより、余分な電力消費を抑えるとともに、スイッチング動作を高速化することで増幅品質を向上できる。
同様に、ローサイドゲート調整回路は第4論理回路を含むことにより、入力信号がローレベルのとき出力端子の電圧がグラウンド端子の電圧よりも小さくなったことを検出したとき、第2期間が無くなるように動作する。これにより、入力信号がローレベルからハイレベルに遷移する際に出力端子に急激な電圧変化が生じない場合には、ローサイドパワートランジスタのゲートを中間電位にする第2期間を省略することにより、余分な電力消費を抑えるとともに、スイッチング動作を高速化することで増幅品質を向上できる。
【発明の効果】
【0025】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、デッドタイム期間中に出力端子に生じる急激な電圧変化を抑制し、誤作動を防止可能なD級増幅回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1実施形態に係るD級増幅回路を示す回路構成図である。
【
図2】
図1の各部における電位の時間的変化を示すタイムチャートである。
【
図3】第2実施形態に係るD級増幅回路を示す回路構成図である。
【
図4】第3実施形態に係るD級増幅回路を示す回路構成図である。
【
図5】
図4の各部における電位の時間的変化を示すタイムチャートである。
【
図6】第4実施形態に係るD級増幅回路を示す回路構成図である。
【
図7】
図6の各部における電位の時間的変化を示すタイムチャートである。
【
図8】参考技術に係るD級増幅回路を示す回路構成図である。
【
図9】
図8の各部における電位の時間的変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0028】
(第1実施形態)
まず
図1及び
図2を参照して、第1実施形態に係るD級増幅回路1Aについて説明する。
図1は第1実施形態に係るD級増幅回路1Aを示す回路構成図であり、
図2は
図1の各部における電位の時間的変化を示すタイムチャートである。
尚、以下の説明において、前述の参考技術に係るD級増幅回路1´に対応する構成については共通の符号を付すこととし、特段の記載がない限りにおいて、重複する説明は省略する。
【0029】
D級増幅回路1Aは、入力端子INと、出力端子OUTと、ハイサイドパワートランジスタM101Hと、ローサイドパワートランジスタM101Lと、ハイサイドゲート駆動回路4Hと、ローサイドゲート駆動回路4Lと、ハイサイドゲート調整回路6Hと、ローサイドゲート調整回路6Lとを備える。
【0030】
入力端子INには、パルス変調された入力信号が入力される。
【0031】
出力端子OUTは、インダクタンス成分を含む負荷回路2に接続される。
【0032】
ハイサイドパワートランジスタM101Hは、出力電源V101に接続されたドレイン、及び、出力端子OUTに接続されたソースを有する。ローサイドパワートランジスタM101Lは、グラウンド端子GNDに接続されたソース、及び、出力端子OUTに接続されたドレインを有する。
【0033】
ハイサイドゲート駆動回路4H及びローサイドゲート駆動回路4Lは、入力信号に応じて、出力端子OUTの電位が出力電源V101に対応するハイレベル電位、及び、グラウンド端子GNDに対応するローレベル電位に交互にスイッチング動作するように、ハイサイドパワートランジスタM101H及びローサイドパワートランジスタM101Lのゲートをそれぞれ駆動するように構成される。
【0034】
ハイサイドゲート調整回路6Hは、入力信号がハイレベルからローレベルに遷移した場合に、ハイサイドパワートランジスタM101Hのゲートを、第1期間T1、ハイサイド駆動電源V103のハイレベル電位、及び、出力端子OUTに対応するローレベル電位の中間電位にするように構成される。ローサイドゲート調整回路6Lは、入力信号がローレベルからハイレベルに遷移した場合に、ローサイドパワートランジスタM101Lのゲートを、第2期間T2、ローサイド駆動電源V102のハイレベル電位、及び、グラウンド端子GNDに対応するローレベル電位の中間電位にするように構成される。
【0035】
D級増幅回路1Aでは、ハイサイドパワートランジスタM101H及びローサイドパワートランジスタM101LはNチャネルパワートランジスタである。このときハイサイドゲート調整回路6Hは、第1Nチャネルトランジスタと、第1抵抗器R101Hと、第1トライステートバッファX102Hとを含む。またローサイドゲート調整回路6Lは、第2Nチャネルトランジスタと、第2抵抗器R101Lと、第2トライステートバッファX102Lとを含む。
【0036】
第1Nチャネルトランジスタは、出力端子OUTに接続されたソース、並びに、互いに接続されたゲート及びドレインを有する。本実施形態では、第1NチャネルトランジスタはトランジスタM102H及びM104Hが組み合わされることで構成される。第1抵抗器R101Hは、第1Nチャネルトランジスタのドレインとハイサイド駆動電源V103との間に接続される。第1トライステートバッファX102Hは、入力信号がハイレベルになった場合にハイレベルを出力し、入力信号がローレベルになった場合に、第1期間T1、ハイインピーダンスを出力した後に、ローレベルを出力するように構成され、出力端子がハイサイドパワートランジスタM101Hのゲートに接続される。
【0037】
第2Nチャネルトランジスタは、グラウンド端子GNDに接続されたソース、並びに、互いに接続されたゲート及びドレインを有する。本実施形態では、第2Nチャネルトランジスタは、トランジスタM102L及びM104Lが組み合わされることで構成される。第2抵抗器R101Lは、第2Nチャネルトランジスタのドレインとローサイド駆動電源V102との間に接続される。第2トライステートバッファX102Lは、入力信号がローレベルになった場合にハイレベルを出力し、入力信号がハイレベルになった場合に、第2期間T2、ハイインピーダンスを出力した後に、ローレベルを出力するように構成され、出力端子がローサイドパワートランジスタM101Lのゲートに接続される。
【0038】
続いて、上記構成を有するD級増幅回路1Aの動作について説明する。
図2に示すように、ここではD級増幅回路1の初期状態として、IN端子に入力される入力信号がハイレベルであることにより、ハイサイドパワートランジスタM101HのゲートがハイレベルであることによりハイサイドパワートランジスタM101Hがオン状態にあるとともに、ローサイドパワートランジスタM101LのゲートがローレベルであることによりローサイドパワートランジスタM101Lがオフ状態である場合を想定する。
【0039】
時刻t1において、IN端子に入力される入力信号がハイレベルからローレベルに遷移すると、ハイサイドゲート調整回路6Hは、ハイサイドパワートランジスタM101Hのゲートの電位を、第1期間T1、ハイサイド駆動電源V103のハイレベル電位及びローレベル電位の中間電位Vmになるように調整する。具体的に説明すると、第1期間T1は、ハイサイドゲート調整回路6Hが有するディレイ時間生成回路X103Hで生成される遅延時間tdlyに基づいて設定される。遅延時間tdlyでは、第1トライステートバッファX102Hはハイインピーダンスとなり、トランジスタM103H及びM104Hがオンとなることで、第1抵抗器R101H及びトランジスタM102H(ダイオード接続MOSトランジスタ)によって、ハイサイドパワートランジスタM101Hのゲートに印加されるバイアス電圧VBNが生成される。このバイアス電圧VBNによってハイサイドパワートランジスタM101Hは電流源動作となり、そのゲートは中間電位Vmとなる。一方、ローサイドパワートランジスタM101Lは、第1期間T1において、第2トライステートバッファX102Lはハイレベルを出力することでオンとなり、その出力端子がハイレベルからローレベルへ遷移する。そして遅延時間tdlyが経過した後、第1トライステートバッファX102Hの出力はローレベルとなり、トランジスタM103H及びM104Hがオフすることで、ハイサイドパワートランジスタM101Hがオフとなる。
【0040】
次に時刻t3において、IN端子に入力される入力信号がローレベルからハイレベルに遷移すると、ローサイドゲート調整回路6Lは、ローサイドパワートランジスタM101Lのゲートを、第2期間T2、ローサイド駆動電源V102のハイレベル電位及びローレベル電位の中間電位Vmになるように調整する。具体的に説明すると、第2期間T2は、ローサイドゲート調整回路6Lが有するディレイ時間生成回路X103Lで生成される遅延時間tdlyに基づいて設定される。遅延時間tdlyでは、第2トライステートバッファX102Lはハイインピーダンスとなり、トランジスタM103L及びM104Lがオンとなることで、第2抵抗器R101L及びトランジスタM102L(ダイオード接続MOSトランジスタ)によって、ローサイドパワートランジスタM101Lのゲートに印加されるバイアス電圧VBNが生成される。このバイアス電圧VBNによってローサイドパワートランジスタM101Lは電流源動作となり、そのゲートは中間電位Vmとなる。一方、ハイサイドパワートランジスタM101Hは、第2期間T2において、第1トライステートバッファX102Hがハイレベルを出力することでオンとなり、その出力端子がローレベルからハイレベルへ遷移する。そして遅延時間tdlyが経過した後、第2トライステートバッファX102Lの出力はローレベルとなり、トランジスタM103L及びM104Lがオフすることで、ローサイドパワートランジスタM101Lがオフとなる。
【0041】
このようにD級増幅回路1Aでは、ハイサイドパワートランジスタM101H及びローサイドパワートランジスタM101Lのスイッチング動作時に、出力端子OUTが一時的に中間電位Vmに調整されることでハイインピーダンスとならないため、負荷回路2に含まれるインダクタンス成分に起因する回生電流の影響を受けにくく、出力端子OUTに急激な電圧変化が生じることを効果的に防止できる。
【0042】
(第2実施形態)
図3は第2実施形態に係るD級増幅回路1Bを示す回路構成図である。D級増幅回路1Bは、前述のD級増幅回路1Aと基本的に同じ構成を有するが、ハイサイドパワートランジスタM101HはPチャネルパワートランジスタであり、ローサイドパワートランジスタM101LはNチャネルパワートランジスタである。このときハイサイドゲート調整回路6Hは、第1Pチャネルトランジスタと、第3抵抗器R201Hと、第3トライステートバッファX202Hとを含む。またローサイドゲート調整回路6Lは、第2Nチャネルトランジスタと、第4抵抗器R201Lと、第4トライステートバッファX202Lとを含む。
【0043】
第1Pチャネルトランジスタは、ハイサイド駆動電源V103に接続されたソース、並びに、互いに接続されたゲート及びドレインを有する。本実施形態では、第1Pチャネルトランジスタは、トランジスタM202H及びM203Hが組み合わされることで構成される。第3抵抗器R201Hは、第1Pチャネルトランジスタのドレインと出力端子OUTとの間に接続される。第3トライステートバッファX202Hは、入力信号がハイレベルになった場合にローレベルを出力し、入力信号がローレベルになった場合に、第1期間T1、ハイインピーダンスを出力した後に、ハイレベルを出力するように構成され、出力端子がハイサイドパワートランジスタM101Hのゲートに接続される。
【0044】
第2Nチャネルトランジスタは、グラウンド端子GNDに接続されたソース、並びに、互いに接続されたゲート及びドレインを有する。本実施形態では、第2Nチャネルトランジスタは、トランジスタM202L及びM204Lが組み合わされることで構成される。第4抵抗器R201Lは、第2Nチャネルトランジスタのドレインとローサイド駆動電源V102との間に接続される。第4トライステートバッファX202Lは、入力信号がローレベルになった場合にハイレベルを出力し、入力信号がハイレベルになった場合に、第2期間T2、ハイインピーダンスを出力した後に、ローレベルを出力するように構成され、出力端子がローサイドパワートランジスタM101Lのゲートに接続される。
【0045】
このように構成されたD級増幅回路1Bは、ハイサイドパワートランジスタM101HがNチャネルパワートランジスタで構成されるか、Pチャネルトランジスタで構成されるかが異なることにより、前述のD級増幅回路1Aと比べて各素子の構成が異なるが、基本的構成を共通にしており、その動作についても実質同様である。
【0046】
(第3実施形態)
前述のD級増幅回路1A及び1Bでは、第1期間T1又は第2期間T2において、ハイサイドパワートランジスタM101H又はローサイドパワートランジスタM101Lが電流源動作となるため、IN端子に入力される入力信号のDUTYが0%もしくは100%付近における効率が低下してしまうという課題がある。このような課題は、以下に示す第3実施形態に係るD級増幅回路1Cによって好適に解消可能である。
図4は第3実施形態に係るD級増幅回路1Cを示す回路構成図であり、
図5は
図4の各部における電位の時間的変化を示すタイムチャートである。
【0047】
D級増幅回路1Cのハイサイドゲート調整回路6Hは、IN端子に入力される入力信号がローレベルになった時刻t1から出力端子OUTがローレベル電位に遷移した時刻t2までが第1期間T1となるように構成された第1論理回路14Hを含む。本実施形態では第1論理回路14Hは、INV401H及びOR401Hを含んで構成される。
【0048】
これにより、時刻t1において、IN端子に入力される入力信号がハイレベルからローレベルに遷移すると、D級増幅回路1Cは前述の各実施形態と同様に、ハイサイドゲート調整回路6Hによって、第1期間T1、ハイサイドパワートランジスタM101Hのゲートはハイサイド駆動電源V103の中間電位Vmになるように調整される。この第1期間T1は、IN端子に入力される入力信号がローレベルになった時刻t1から開始される。そしてハイサイドパワートランジスタM101Hのゲートが中間電位Vmになるように調整されているとき、第1論理回路14Hでは、出力端子OUTの電圧がINV401H及びOR401Hに伝達される。そして時刻t2で出力端子OUTがローレベルになると、第1論理回路14Hでは、直ちに第1トライステートバッファX102Hがローレベルを出力するとともに、トランジスタM103H及びM104Hがオフすることで、ハイサイドパワートランジスタM101Hがオフになる。これにより、ハイサイドパワートランジスタM101Hのスイッチング動作が完了すると、ハイサイドゲート調整回路6HによるハイサイドパワートランジスタM101Hのゲートの中間電位への調整が終了されることで、余分なエネルギ消費が回避され、効率改善が図られる。
【0049】
またD級増幅回路1Cのローサイドゲート調整回路6Lは、IN端子に入力される入力信号がローレベルからハイレベルになった時刻t3から出力端子OUTがハイレベル電位に遷移した時刻t4までが第2期間T2となるように構成された第2論理回路14Lを含む。本実施形態では第2論理回路14Lは、OR401Lを含んで構成される。
【0050】
これにより、時刻t3において、IN端子に入力される入力信号がローレベルからハイレベルに遷移すると、D級増幅回路1Cは前述の各実施形態と同様に、ローサイドゲート調整回路6Lによって、第2期間T2、ローサイドパワートランジスタM101Lのゲートはローサイド駆動電源V102の中間電位Vmになるように調整される。この第2期間T2は、IN端子に入力される入力信号がハイレベルになった時刻t3から開始される。そしてローサイドパワートランジスタM101Lのゲートが中間電位Vmになるように調整されているとき、第2論理回路14Lでは、出力端子OUTの電圧がOR401Lに伝達される。そして時刻t4で出力端子OUTがハイレベルになると、第2論理回路14Lでは、直ちに第2トライステートバッファX102Lがローレベルを出力するとともに、トランジスタM103L及びM104Lがオフすることで、ローサイドパワートランジスタM101Lがオフになる。これにより、ローサイドパワートランジスタM101Lのスイッチング動作が完了すると、ローサイドゲート調整回路6LによるローサイドパワートランジスタM101Lのゲートの中間電位への調整が終了されることで、余分なエネルギ消費が回避され、効率改善が図られる。
【0051】
(第4実施形態)
上記各実施形態では、出力端子OUTから、出力端子OUTに接続される負荷回路2に向けて回生電流が流れ、このような回生電流に起因する急激な出力端子OUTの電圧変化を抑制するために、ハイサイドパワートランジスタM101H又はローサイドパワートランジスタM101Lのゲートを中間電位に調整している。しかしながら負荷回路2によっては、負荷回路2から出力端子OUTに向けて逆向きの回生電流(以下、適宜「負の流れ」と称する)が生じる場合もある。このような場合、そもそも出力端子OUTには急激な電圧変化が生じないため、仮に上記のように、ハイサイドパワートランジスタM101H又はローサイドパワートランジスタM101Lのゲートを中間電位Vmに調整すると、これらのパワートランジスタのオンオフ切替の遷移に要する時間が長くなり、不要なスイッチング動作の遅れをもたらしてしまう。このような課題は、以下に示す第4実施形態に係るD級増幅回路1Dによって好適に解消可能である。
図6は第4実施形態に係るD級増幅回路1Dを示す回路構成図であり、
図7は
図6の各部における電位の時間的変化を示すタイムチャートである。
【0052】
D級増幅回路1Dのハイサイドゲート調整回路6Hは、IN端子に入力される入力信号がハイレベルのとき出力端子OUTの電圧が出力電源V101の電圧よりも大きくなったことを検出したとき、第1期間T1が無くなるように構成された第3論理回路18Hを含む。第3論理回路18Hは、IN端子に入力される入力信号がハイレベルのとき出力端子OUTの電圧が出力電源V101の電圧よりも大きくなったか否かに基づいて、出力端子OUTにおける回生電流の負の流れの有無を判定する。そして、負の流れがあると判定した場合、第3論理回路18Hは、ハイサイドゲート調整回路6Hに対して、ハイサイドパワートランジスタM101Hの電流源動作をさせないようにし、直ちにハイサイドパワートランジスタM101Hをオフする。
【0053】
本実施形態では、第3論理回路18HはコンパレータX601Hを有する。コンパレータX601Hは、反転入力端子がハイサイドパワートランジスタM101Hのドレインに対してトランジスタM601Hを介して接続されるとともに、非反転入力端子が、ハイサイドパワートランジスタM101Hのソースに接続されることにより、ハイサイドパワートランジスタM101Hのドレイン電流がソースからドレインに流れているときにハイレベルを出力するように構成される。コンパレータX601Hの出力端子は、IN端子に入力される入力信号がハイレベルからローレベルに遷移するタイミングでDフリップフロップDFF601Hによってラッチされる。IN端子に入力される入力信号がハイレベルからローレベルに遷移するとき、DフリップフロップDFF601Hの出力がハイレベルである場合、電流源動作を介さず直ちにハイサイドパワートランジスタM101Hがオフとなる。このように、出力端子OUTに急激な電圧変化が生じるおそれがない場合には、ハイサイドパワートランジスタM101Hの電流源動作を行わないことで、ハイサイドパワートランジスタM101Hのスイッチング動作を迅速に完了することができる。
【0054】
またD級増幅回路1Dのローサイドゲート調整回路6Lは、IN端子に入力される入力信号がローレベルのとき出力端子OUTの電圧がグラウンド端子GNDの電圧よりも小さくなったことを検出したとき、第2期間T2が無くなるように構成された第4論理回路18Lを含む。第4論理回路18Lは、IN端子に入力される入力信号がローレベルのとき出力端子OUTの電圧がグラウンド端子GNDの電圧よりも小さくなったか否かに基づいて、出力端子OUTにおける回生電流の負の流れの有無を判定する。そして、負の流れがあると判定した場合、第4論理回路18Lは、ローサイドゲート調整回路6Lに対して、ローサイドパワートランジスタM101Lの電流源動作をさせないようにし、直ちにローサイドパワートランジスタM101Lをオフする(
図7では、第2期間T2にローサイドパワートランジスタM101Lのゲートを中間電位Vmに調整しないようにし、時刻t3において直ちにローサイドパワートランジスタM101Lがオフされている)。
【0055】
本実施形態では、第4論理回路18LはコンパレータX601Lを有する。コンパレータX601Lは、反転入力端子がローサイドパワートランジスタM101Lのドレインに対してトランジスタM601Lを介して接続されるとともに、非反転入力端子が、ローサイドパワートランジスタM101Lのソースに接続されることにより、ローサイドパワートランジスタM101Lのドレイン電流がソースからドレインに流れているときにハイレベルを出力するように構成される。なお、
図6では、コンパレータX601Lの非反転入力端子とローサイドパワートランジスタM101Lのソースは共にグラウンド端子GNDに接続されて図示している。コンパレータX601Lの出力端子は、IN端子に入力される入力信号がローレベルからハイレベルに遷移するタイミングでDフリップフロップDFF601Lによってラッチされる。IN端子に入力される入力信号がローレベルからハイレベルに遷移するとき、DフリップフロップDFF601Lの出力がハイレベルである場合、電流源動作を介さず直ちにローサイドパワートランジスタM101Lがオフとなる。このように、出力端子OUTに急激な電圧変化が生じるおそれがない場合には、ローサイドパワートランジスタM101Lの電流源動作を行わないことで、ローサイドパワートランジスタM101Lのスイッチング動作を迅速に完了することができる。
【符号の説明】
【0056】
1A~1D D級増幅回路
2 負荷回路
4H ハイサイドゲート駆動回路
4L ローサイドゲート駆動回路
6H ハイサイドゲート調整回路
6L ローサイドゲート調整回路
14H 第1論理回路
14L 第2論理回路
18H 第3論理回路
18L 第4論理回路
M101H ハイサイドパワートランジスタ
M101L ローサイドパワートランジスタ
IN 入力端子
OUT 出力端子
GND グラウンド端子
T1 第1期間
T2 第2期間
Td デッドタイム
Vm 中間電位