(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118728
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】シート剥離装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240826BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025168
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】木▲崎▼ 清貴
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131AA33
5F131BA53
5F131CA09
5F131CA46
5F131EC37
5F131EC42
5F131EC44
5F131EC52
5F131EC63
5F131EC76
(57)【要約】
【課題】被着体にダメージを与えることなく且つ剥離テープを保護シートに安定して圧着するシート剥離装置を提供する。
【解決手段】シート剥離装置1は、被着体Wに貼付された保護シートSに剥離テープTを介して剥離力を付与して、保護シートSを剥離するシート剥離装置1であって、剥離テープTを保護シートSに熱圧着させるスタンプヘッド46と、スタンプヘッド46を被着体Wに向けて押し出すエアシリンダ41と、エアシリンダ41を昇降させるヒートスタンプ送り機構47と、エアシリンダ41にエアを供給するとともに、エアの設定圧を制御してエアシリンダ41がスタンプヘッド46を押し出す出力を調整可能な電空レギュレータ44と、を備え、エアシリンダ41は、被着体Wに作用する押圧力が、エアシリンダ41の出力を超えたときに、スタンプヘッド46を上方に退避させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体に貼付された保護シートに剥離テープを介して剥離力を付与して、前記保護シートを剥離するシート剥離装置であって、
前記剥離テープを前記保護シートに熱圧着させるスタンプヘッドと、
前記スタンプヘッドを前記被着体に向けて押し出すエアシリンダと、
前記エアシリンダを昇降させる昇降機構と、
前記エアシリンダにエアを供給するとともに、前記エアの圧力である設定圧を制御して前記エアシリンダが前記スタンプヘッドを押し出す出力を調整可能なレギュレータと、
を備え、
前記エアシリンダは、前記被着体に作用する押圧力が前記出力を超えたときに、前記スタンプヘッドを上方に退避させることを特徴とするシート剥離装置。
【請求項2】
前記レギュレータは、前記昇降機構が前記エアシリンダを降下させているときに前記設定圧を切替可能な電空レギュレータであることを特徴とする請求項1に記載のシート剥離装置。
【請求項3】
前記電空レギュレータは、前記スタンプヘッドが前記剥離テープに接触する際には、前記剥離テープに作用する押圧力の上限に対応する前記出力が得られるように前記設定圧を制御し、前記剥離テープが前記保護シートに圧着される際には、前記被着体に作用する押圧力の上限に対応する前記出力が得られるように前記設定圧を制御することを特徴とする請求項2に記載のシート剥離装置。
【請求項4】
前記レギュレータは、前記昇降機構が前記エアシリンダを降下させているときに前記設定圧を略一定に制御する精密レギュレータであることを特徴とする請求項1に記載のシート剥離装置。
【請求項5】
前記精密レギュレータは、前記剥離テープが前記保護シートに圧着される際に前記被着体に作用する押圧力の上限に対応する前記出力が得られるように前記設定圧を固定して制御することを特徴とする請求項4に記載のシート剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体に貼付された保護シートを剥離するシート剥離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウェハ等の半導体基板(以下、「被着体」という)の裏面を研削して薄くする工程があり、その工程では被着体の表面に粘着フィルム等から成る保護シートを貼り付けて、被着体の表面に形成されたデバイスを保護している。
【0003】
被着体に貼付された保護シートを剥離するシート剥離装置として、特許文献1には、ヒーター上下シリンダ509を駆動して、ヒーター工具505がウェハWに貼付された保護シートFの端部に接着テープTを熱圧着する装置が開示されている。なお、符号は、特許文献1記載のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の装置では、接着テープTを保護シートFに熱圧着する際に、ヒーター上下シリンダ509がヒーター工具505をウェハWに向けて所定量だけ押し込むため、ウェハW、保護シートF及び接着テープTの厚みにばらつきがあったりウェハWを保持するテーブル203の表面高さにバラつき等があると、ウェハWに対するヒーター工具505の押し込み具合が安定せず、ウェハWに過剰な押圧力が作用してウェハWが破損したり、ウェハWに十分な押圧力が作用せず保護シートFへの接着テープTの圧着が不十分になる虞があった。
【0006】
そこで、被着体にダメージを与えることなく且つ剥離テープを保護シートに安定して圧着するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るシート剥離装置は、被着体に貼付された保護シートに剥離テープを介して剥離力を付与して、前記保護シートを剥離するシート剥離装置であって、前記剥離テープを前記保護シートに熱圧着させるスタンプヘッドと、前記スタンプヘッドを前記被着体に向けて押し出すエアシリンダと、前記エアシリンダを昇降させる昇降機構と、前記エアシリンダにエアを供給するとともに、前記エアの圧力である設定圧を制御して前記エアシリンダが前記スタンプヘッドを押し出す出力を調整可能なレギュレータと、を備え、前記エアシリンダは、前記被着体に作用する押圧力が前記出力を超えたときに、前記スタンプヘッドを上方に退避させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、被着体にダメージを与えることなく且つ剥離テープを保護シートに安定して圧着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシート剥離装置を示す斜視図。
【
図7】剥離テープを保護シートに圧着させる際のエアシリンダの動作を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0011】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0012】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0013】
図1は、シート剥離装置1の斜視図である。
図2は、シート剥離装置1の側面図である。シート剥離装置1は、被着体Wの裏面研削を行うにあたって被着体Wの表面を保護するために粘着された保護シート(BGテープ)Sを剥離するものである。被着体Wは、例えば、シリコンウェハ等の半導体基板であるが、これに限定されるものではない。保護シートSは、例えば熱硬化樹脂等から成る。
【0014】
被着体Wは、保護シートSを上面側にした状態でダイシングテープDTを介してリングフレームRFにマウントされたものである。ダイシングテープDTは、紫外線硬化テープ等である。
【0015】
シート剥離装置1は、被着体Wを載置する搬送テーブル2を備えている。搬送テーブル2の上面側には、吸着面21が設けられている。
【0016】
吸着面21は、図示しない真空源又は圧縮空気源に接続されている。真空源が起動すると、吸着面21に載置された被着体Wが吸着面21に吸着保持される。また、圧縮空気源が起動すると、被着体Wと吸着面21との吸着が解除される。
【0017】
搬送テーブル2は、図示しない移動手段を介して移動方向D1に移動可能に設けられている。なお、搬送テーブル2の移動速度は任意に変更可能であり、例えば、被着体Wを損傷することなく、保護シートSの剥離に要する時間を短縮するために、保護シートSの剥離初期では低速にし、保護シートSの剥離がある程度進行した後には高速にしても構わない。
【0018】
シート剥離装置1は、帯状の剥離テープTを繰り出し可能な繰出手段3を備えている。繰出手段3は、送りローラー31と、巻取ローラー32と、第1~第4のガイドローラー33~36と、ナイフエッジ37と、を備えている。
【0019】
送りローラー31は、帯状の剥離テープTを繰り出し可能に支持している。巻取ローラー32は、剥離テープTに繰出力を付与して巻き取る。第1~第4のガイドローラー33~36及びナイフエッジ37は、剥離テープTに張力を作用させるとともに剥離テープTの軌道を規制するように適当な位置に配置されている。
【0020】
シート剥離装置1は、剥離テープTを保護シートSに熱圧着させる貼付手段4を備えている。剥離テープTは、例えば保護シートSと同種の熱硬化樹脂等から成る。貼付手段4は、エアシリンダ41と、ヒートスタンプ42と、を備えている。
【0021】
図3、
図4に示すように、エアシリンダ41は、フレーム43上に載置されたシリンダチューブ41aと、下端にヒートスタンプ42が取り付けられてシリンダチューブ41aに対して上下に進退移動可能なロッド41bと、を備えている。
【0022】
エアシリンダ41は、電空レギュレータ44から供給されるエアによって、ヒートスタンプ42を押し出すようにロッド41bが進退移動する。電空レギュレータ44がエアシリンダ41に供給するエアの圧力(設定圧)は、エアシリンダ41による所望の出力を得られえるように任意に変更可能である。
【0023】
エアシリンダ41は、複動型エアシリンダであり、ヒートスタンプ42を上昇させる方向に作用する一定圧のエアが電空レギュレータ44から常に供給されるとともに、ヒートスタンプ42を降下させる方向に作用するエアが必要に応じて設定圧が調整されて電空レギュレータ44から供給される。なお、エアシリンダ41は、バネ力と空気圧で駆動する単動型エアシリンダ等であっても構わない。
【0024】
ヒートスタンプ42は、エアシリンダ41を介してフレーム43から吊り下げられるように設けられている。ヒートスタンプ42は、
図4中に破線で示すケーシング42a内に収容されている。ロッド41bが上端まで退入すると、ヒートスタンプ42全体がケーシング42a内に収容される。また、ロッド41bが下端まで進出すると、ヒートスタンプ42の下面を含む少なくとも一部がケーシング42a外に露出する。
【0025】
ヒートスタンプ42内には、棒状のカートリッジヒーター45が埋設されている。カートリッジヒーター45は、その長手方向がヒートスタンプ42の幅方向に一致するように水平に配置されている。カートリッジヒーター45が起動することにより、ヒートスタンプ42が昇温される。
【0026】
図4、
図5に示すように、ヒートスタンプ42の下面には、スタンプヘッド46が立設されている。スタンプヘッド46が、昇温された状態で剥離テープTに押し付けられることにより、剥離テープTと保護シートSとが熱圧着される。すなわち、ヒートスタンプ42は、剥離テープTへの投影面積全体で剥離テープTに接触するのではなく、スタンプヘッド46の略矩形状に形成された下面46aでのみ剥離テープTに接触する。
【0027】
貼付手段4は、エアシリンダ41及びヒートスタンプ42を昇降させて、ヒートスタンプ42の高さ位置を調整するヒートスタンプ送り機構47を備えている。ヒートスタンプ送り機構47のモータ47aが駆動して、上下方向に延伸された図示しないボールネジが回転すると、フレーム43とボールネジとを連結するスライダ47bが昇降される。
【0028】
図1、
図2に戻り、シート剥離装置1は、規制手段としての規制ローラー5を備えている。規制ローラー5の長さは、被着体Wの直径より大きく設定される。規制ローラー5は、保護シートSが剥離し始める位置(剥離開始位置)の略上方に約2~3mm程度離間して配置されている。規制ローラー5は、剥離テープTの繰出をスムーズに行えるように、図示しない略水平に取り付けられた支持軸回りに回転自在に設けられている。
【0029】
規制ローラー5の表面(ガイド面51)には、剥離テープTが不用意に付着しないよう、例えば、ガイド面51をフッ素樹脂でコーティングしたり、ガイド面51にローレット加工を施したりすることが好ましい。これにより、剥離テープTの繰出をスムーズに行うことができる。
【0030】
なお、規制手段は、上述した形態に限定されるものではなく、例えば、滑りの良い円弧状のガイド面を備えた扇形柱を用いて、剥離テープTの撓みを押えこむように撓み方向を規制するものであっても構わない。
【0031】
また、ガイド面51の滑りが良く、剥離テープTの繰出をスムーズに行えるのであれば、支持軸回りに回転不能に構成し、剥離テープTをガイド面51上で摺動させるように構成されても構わない。
【0032】
次に、シート剥離装置1の動作について、図面に基づいて説明する。
図6は、保護シートSを剥離する手順を示す図である。なお、以下で例示する各種圧力及び推力等の数値は、ダイシングテープDT、保護シートS及び剥離テープの種類並びに被着体Wの厚み等に応じて任意に調整される。
【0033】
まず、厚み約20μm、直径約400mmの被着体Wを搬送テーブル2に吸着させた後に、
図6(a)に示すように、ヒートスタンプ42の下方に被着体Wの外周部が配置されるように、搬送テーブル2を移動させる。また、ヒートスタンプ送り機構47のモータ47aが正回転すると、ヒートスタンプ42が初期高さ位置に至るようにスライダ47bが降下する。
【0034】
このとき、
図7(a)に示すように、エアシリンダ41には、ヒートスタンプ42を上昇させる方向に作用する約0.05Mpaのエアが電空レギュレータ44から常に供給されているのに対し、ヒートスタンプ42を降下させる方向に作用するエアは供給されておらず、ヒートスタンプ42は上方に退避している。
【0035】
次に、
図6(b)に示すように、スタンプヘッド46が、剥離テープT、保護シートS及び被着体Wに押し付けられて、剥離テープTが保護シートSに熱圧着される。
【0036】
具体的には、
図7(b)に示すように、まず、電空レギュレータ44からヒートスタンプ42を降下させる方向に作用するエアがエアシリンダ41に供給されると、ロッド41bが進出して、エアシリンダ41がヒートスタンプ42を下方に押し出す。また、ヒートスタンプ送り機構47のモータ47aが正回転して、ヒートスタンプ42が、初期高さ位置から降下し始める。ヒートスタンプ送り機構47によるヒートスタンプ42の降下量は、吸着面21に対するヒートスタンプ42の初期高さ位置及び被着体Wの厚み等を考慮して予め設定されたものである。
【0037】
続いて、
図7(c)に示すように、ヒートスタンプ42がさらに降下すると、スタンプヘッド46が剥離テープTに接触する。また、
図7(d)に示すように、ヒートスタンプ42がさらに降下すると、スタンプヘッド46が、剥離テープT、保護シートS及び被着体Wに押し付けられる。そして、ヒートスタンプ42が、約180℃まで加温された状態で剥離テープTを保護シートSに所定時間押し付けることにより、剥離テープTと保護シートSとが熱圧着される。剥離テープTと保護シートSとの溶着範囲は、スタンプヘッド46の下面46aの形状に応じて設定される。
【0038】
エアシリンダ41には、ヒートスタンプ42を上昇させる方向に作用する約0.05Mpaのエア(上昇方向のシリンダ推力:7.4N)が電空レギュレータ44から常に供給されているとともに、ヒートスタンプ42を降下させる方向に作用する約0.05~0.45Mpaのエア(降下方向のシリンダ推力:8.8~88.2N)が電空レギュレータ44から供給される。すなわち、エアシリンダ41の下向きの押圧力は、約0~0.4Mpaに設定され、エアシリンダ41の下向きの推力は、1.4~80.8Nに設定される。
【0039】
したがって、スタンプヘッド46の下面46aが、例えば縦25mm、横1mmの略矩形状に形成されている場合、エアシリンダ41がヒートスタンプ42を押し出す圧力は、エアシリンダ41の下向きの推力をスタンプヘッド46の表面積で除して算出され、56~3232kPaに設定される。
【0040】
ところで、スタンプヘッド46が剥離テープTを保護シートSに圧着させる位置(圧着位置)の高さは、搬送テーブル2の個体差や吸着面21の高さバラつき(上面振れ)、又はダイシングテープDT、保護シートS及び剥離テープTの厚み並びに被着体Wの厚み等に起因して一定ではなく、従来のようにスタンプヘッド46を固定の押し込み量だけ押し込んで剥離テープTを保護シートSに圧着させる場合、圧着位置の高低によっては、被着体Wに過剰な押圧力が作用して被着体Wにダメージを与えるため、剥離テープTと保護シートSとの圧着不良が生じるおそれがある。
【0041】
しかしながら、本実施形態に係る貼付手段4は、エアシリンダ41がヒートスタンプ42を下方に押し出した状態で、ヒートスタンプ送り機構47がヒートスタンプ42を降下させて、スタンプヘッド46が被着体Wに押し付けられる。これにより、エアシリンダ41の出力を上回る押圧力が被着体Wに作用する場合であっても、
図7(e)に示すように、その押圧力の反力でロッド41bが退入して、エアシリンダ41はヒートスタンプ42を上方に退避させる。すなわち、被着体Wに作用する押圧力は、スタンプヘッド46の圧着位置の高さにかかわらず略一定に保たれる。
【0042】
さらに、電空レギュレータ44が供給するエアの設定圧は、剥離テープTを保護シートSに熱圧着させる一連の工程間で異なるエアシリンダ41の出力を得られるように段階的に切り替え可能である。
【0043】
具体的には、
図7(a)~(c)に示すように、スタンプヘッド46が剥離テープTに接触するまでは、エアシリンダ41の出力が、スタンプヘッド46が剥離テープTに接触する際に剥離テープTに作用する押圧力(接触時押圧力)の上限に対応して相対的に低く設定される。接触時押圧力の上限に対応するエアシリンダ41の出力(接触時出力)は、例えば約56kPaに設定される。
【0044】
また、
図7(c)~(e)に示すように、スタンプヘッド46が剥離テープTに接触してから剥離テープTが保護シートSに熱圧着されるまでの間において、エアシリンダ41の出力が、剥離テープTが保護シートSに圧着される際に被着体Wに作用する押圧力(圧着時押圧力)の上限に対応して相対的に高く設定される。圧着時押圧力の上限に対応するエアシリンダ41の出力(圧着時出力)は、例えば約1600kPaに設定される。
【0045】
このように、エアシリンダ41の出力を、剥離テープTを保護シートSに熱圧着させる一連の工程の進行具合に応じて段階的に切り替えて設定することにより、各工程に応じて適切な圧力管理ができ、被着体Wへのダメージを低減することができる。
【0046】
次に、
図6(c)に示すように、電空レギュレータ44が供給するエアの設定圧を低下させてエアシリンダ41の出力を解除するとともに、ヒートスタンプ送り機構47のモータ47aが逆回転して、ヒートスタンプ42を上昇させる。
【0047】
続いて、
図6(d)に示すように、剥離開始位置を規制ローラー5に接近させるように(
図6(d)の紙面左側に向けて)、搬送テーブル2を移動させる。剥離テープTは、剥離開始位置より搬送テーブル2の進行方向の前方側に膨らむような側面から視て横向きの略U字状に撓む。
【0048】
次に、
図6(e)に示すように、搬送テーブル2をさらに移動させると、規制ローラー5が剥離テープTに接触して、規制ローラー5が剥離テープTの撓みを略垂直方向に、換言すれば、剥離テープTと保護シートSとで成す角度が小さくなるように、規制ローラー5が、剥離テープTの撓みを押え込む。
【0049】
次に、
図6(f)に示すように、搬送テーブル2をさらに移動させると、剥離テープTに作用する張力によって、剥離テープTの撓みが略垂直方向に押し込まれたまま、保護シートSを被着体Wから剥離する剥離力が保護シートSに作用する。なお、保護シートSが剥離し始める際の搬送テーブル2の移動速度は、例えば1mm/sに設定される。
【0050】
搬送テーブル2がさらに移動すると、保護シートSが被着体Wから剥離し始める。具体的には、まず、保護シートSの外周部が被着体Wから剥離する直前では、剥離テープTが規制ローラー5に接触することで下方に押え込まれるため、剥離テープTと保護シートSとで成す角度が小さい状態で撓んでいる。
【0051】
その後、搬送テーブル2が移動すると、保護シートSが被着体Wから剥離される。保護シートSの剥離は、スタンプヘッド46が剥離テープTと保護シートSとを熱溶着した領域において剥離力が保護シートSに作用し、搬送テーブル2の移動に伴って、保護シートSが被着体Wから徐々に剥離される。
【0052】
そして、
図6(f)に示すように、被着体Wの外周部の保護シートSが完全に剥離した後には、搬送テーブル2をさらに移動させて、保護シートS全面を被着体Wから剥離させる。
【0053】
このようにして、本実施形態に係るシート剥離装置1は、被着体Wに貼付された保護シートSに剥離テープTを介して剥離力を付与して、保護シートSを剥離するシート剥離装置1であって、剥離テープTを保護シートSに熱圧着させるスタンプヘッド46と、スタンプヘッド46を被着体Wに向けて所定の出力で押し出すエアシリンダ41と、エアシリンダ41を昇降させるヒートスタンプ送り機構47と、エアシリンダ41にエアを供給するとともに、エアの設定圧を制御してスタンプヘッド46を押し出すエアシリンダ41の出力を調整可能な電空レギュレータ44と、を備え、エアシリンダ41は、被着体Wに作用する押圧力がエアシリンダ41の出力を超えたときに、スタンプヘッド46を上方に退避させる構成とした。
【0054】
この構成によれば、被着体Wに作用する押圧力が、スタンプヘッド46の圧着位置の高さにかかわらず略一定に保たれるため、被着体Wにダメージを与えることなく且つ剥離テープTを保護シートSに安定して圧着することができる。
【0055】
また、本実施形態に係るシート剥離装置1は、電空レギュレータ44が、ヒートスタンプ送り機構47がエアシリンダ41を降下させているときにエアの設定圧を切替可能に構成されている構成とした。
【0056】
この構成によれば、エアシリンダ41の出力を、剥離テープTを保護シートSに熱圧着させる一連の工程において必要に応じて段階的に切り替え可能なことにより、各工程に応じて適切な圧力管理ができるため、被着体Wへのダメージを低減することができる。
【0057】
また、本実施形態に係るシート剥離装置1は、電空レギュレータ44が、スタンプヘッド46が剥離テープTに接触する際には、剥離テープTに作用する押圧力の上限に対応する接触時出力が得られるようにエアの設定圧を制御し、剥離テープTが保護シートSに圧着される際には、被着体Wに作用する押圧力の上限に対応する圧着時出力が得られるようにエアの設定圧を制御する構成とした。
【0058】
この構成によれば、エアシリンダ41の出力を、スタンプヘッド46が剥離テープTに相対的に低圧で接触する工程とスタンプヘッド46が相対的に高圧で被着体Wに押し付けられる剥離テープTを保護シートSに熱圧着させる工程とで段階的に切り替えることにより、各工程に応じて適切な圧力管理ができるため、被着体Wへのダメージをさらに低減することができる。
【0059】
なお、上述した実施形態では、電空レギュレータ44を用いて、剥離テープTへの接触時と剥離テープTと保護シートSとの圧着時とでエアシリンダ41の出力を段階的に切り替える場合について説明したが、電空レギュレータ44に代えて、ヒートスタンプ送り機構47がエアシリンダ41を降下させているときに、エアの設定圧を略一定に制御する精密レギュレータ等を用いても構わない。このような精密レギュレータを用いる場合には、エアシリンダ41が圧着時出力を得られるように、エアシリンダ41に供給するエアの設定圧を固定して制御するように構成しても構わない。
【0060】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0061】
1 :シート剥離装置
2 :搬送テーブル
21 :吸着面
3 :繰出手段
31 :送りローラー
32 :巻取ローラー
33 :第1のガイドローラー
34 :第2のガイドローラー
35 :第3のガイドローラー
36 :第4のガイドローラー
37 :ナイフエッジ
4 :貼付手段
41 :エアシリンダ
41a:シリンダチューブ
41b:ロッド
42 :ヒートスタンプ
43 :フレーム
44 :電空レギュレータ
45 :カートリッジヒーター
46 :スタンプヘッド
46a:下面
47 :ヒートスタンプ送り機構(昇降機構)
47a:モータ
47b:スライダ
5 :規制ローラー
51 :ガイド面
D1 :移動方向
DT :ダイシングテープ
F :保護シート
RF :リングフレーム
S :保護シート
T :剥離テープ
W :被着体