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  • 特開-積層体及びリサイクル方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118765
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】積層体及びリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/06 20060101AFI20240826BHJP
   C08F 8/12 20060101ALI20240826BHJP
   C08F 216/06 20060101ALI20240826BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20240826BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B32B27/06
C08F8/12
C08F216/06
B29B17/04 ZAB
B29B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025235
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】山本 信行
(72)【発明者】
【氏名】坂 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅彦
【テーマコード(参考)】
4F100
4F401
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AK04B
4F100AK06
4F100AK07B
4F100AK12B
4F100AK16B
4F100AK21A
4F100AK26B
4F100AK42B
4F100AK45B
4F100AK46B
4F100AK51B
4F100AL06A
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CB00
4F100DG10B
4F100GB15
4F100JA07
4F100JB05A
4F100JL11
4F100JL16
4F100YY00A
4F401AA09
4F401AA11
4F401AA15
4F401AD01
4F401AD07
4F401BA13
4F401CA14
4F401CA32
4F401CA50
4F401EA46
4J100AD02P
4J100AD11Q
4J100BA03H
4J100BA03Q
4J100CA03
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA38
4J100HA09
4J100HB39
4J100HE05
4J100HE08
4J100HE14
4J100JA03
4J100JA05
4J100JA58
4J100JA59
(57)【要約】
【課題】層間剥離するまでの時間が短く、回収性に優れると共に、汎用性にも優れる積層体を提供する。
【解決手段】
親水性樹脂を主成分として含有する層(I)を有する積層体であって、前記積層体の平面視における面積が25~625mm2であることを特徴とする積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性樹脂を主成分として含有する層(I)を有する積層体であって、前記積層体の平面視における面積が25~625mm2であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記親水性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂である、請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール系樹脂が、側鎖に1,2-ジオール構造単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂である、請求項2記載の積層体。
【請求項4】
前記積層体が、前記層(I)と、他の層(II)とを有し、前記他の層(II)が、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、紙類からなる群より選ばれた1種以上を主成分として含有する層である、請求項1又は2記載の積層体。
【請求項5】
親水性樹脂を主成分として含有する層(I)と、他の層(II)とを有する積層体を、平面視における面積が25~625mm2の大きさに粉砕する工程;
前記平面視における面積が25~625mm2の大きさに粉砕された積層体を、水を含有する溶媒に浸漬し、前記他の層(II)を分離する工程;
を有するリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材等に用いられる積層体に関し、より詳細には、リサイクル方法に用いられる積層体、及び当該積層体を用いるリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムを用いた積層体(積層フィルム)は、食料品、医薬品、工業部材等の包装材として広く普及し利用されてきたが、近年は、環境問題から、リサイクルによる環境負荷を低減するための技術開発が早急に進められている。
【0003】
これら積層体のリサイクルを行うためには、各層ごとに剥離、分離することが必要であり、各種の技術開発が鋭意進展しているが、各層を構成する樹脂の種別が異なる積層体を分別するのは非常に困難な場合が多い。
【0004】
このような事情下、リサイクル性、主に回収性に優れた積層体として、親水性樹脂層を有する積層体が提案されている。
例えば、特許文献1、2のように、水溶性のエチレン変性ポリビニルアルコール系樹脂を中間層とし、熱可塑性樹脂を外層として積層させた積層体において、使用後に外層と中間層を分離し、回収するリサイクル方法が提案されている。
ほかにも、例えば、特許文献3のように、外層の水蒸気透過度を特定範囲に制御した積層体を水で洗浄し、外層を分離する工程を有するリサイクル方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-348200号公報
【特許文献2】特開平11-348201号公報
【特許文献3】国際公開第2021/132683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術は、層の剥離が、エチレン変性ポリビニルアルコール系樹脂の水溶性に依存するため、剥離速度の点で未だ改善の余地がある。
また、特許文献3に記載の技術は、外層の水蒸気透過度が特定範囲に制限されており、適用できる積層体が限定される点で未だ改善の余地がある。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、層間剥離するまでの時間が短く、回収性も高く、さらに汎用性にも優れる積層体及びリサイクル方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]
親水性樹脂を主成分として含有する層(I)を有する積層体であって、前記積層体の平面視における面積が25~625mm2であることを特徴とする積層体。
[2]
前記親水性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂である、[1]記載の積層体。
[3]
前記ポリビニルアルコール系樹脂が、側鎖に1,2-ジオール構造単位を有する変性ポリビニルアルコール系樹脂である、[2]記載の積層体。
[4]
前記積層体が、前記層(I)と、他の層(II)とを有し、前記他の層(II)が、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、紙類からなる群より選ばれた1種以上を主成分として含有する層である、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]
親水性樹脂を主成分として含有する層(I)と、他の層(II)とを有する積層体を、平面視における面積が25~625mm2の大きさに粉砕する工程;
前記平面視における面積が25~625mm2の大きさに粉砕された積層体を、水を含有する溶媒に浸漬し、前記他の層(II)を分離する工程;
を有するリサイクル方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、層間剥離するまでの時間が短く、回収性に優れると共に、汎用性にも優れる積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に関する模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に限定されるものではない。
なお、本発明の実施形態において、「主成分」とは、各層を構成する成分全体を基準(100質量%)とした際に、当該成分の含有量が、50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更により好ましくは100質量%含有することを意味する。
なお、本明細書において、「X及び/又はY(X,Yは任意の構成)」とは、X及びYの少なくとも一方を意味するものであって、Xのみ、Yのみ、X及びY、の3通りを意味する。
また、本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」または「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、本明細書において、「X以上」(Xは任意の数字)又は「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」又は「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0012】
本発明の一実施態様に係る積層体(以下、「本積層体」という場合がある)は、親水性樹脂を主成分として含有する層(I)(以下「親水性樹脂層(I)」という場合がある)を有する積層体であって、前記積層体の平面視における面積が25~625mm2であることを特徴とする。前記積層体の平面視における面積を、比較的小さな特定範囲に制御することによって、層間剥離するまでの時間が短く、回収性に優れ、さらに、汎用性にも優れる積層体を提供することができる。
【0013】
前記積層体の面積は、層間剥離性及び回収性を両立させる観点から、35~600mm2が好ましく、特に45~500mm2であることが好ましく、殊に55~450mm2であることが好ましい。前記積層体の面積が前記範囲よりも大きすぎると、層間剥離に要する時間が長くなる傾向があり、逆に前記範囲よりも小さすぎると回収性が低下する傾向がある。
【0014】
例えば、食品等の包装材としての所定の使用目的を達成した後、廃棄等された包装材(積層体)を回収し、回収された積層体を水等に浸漬して層別に分離する工程を有するリサイクル方法において、本積層体を用いることにより、親水性樹脂層(I)への含水が効果的に促進され、親水性樹脂層と他の層とが分離(剥離)するまでの時間が短くなる。しかも、分離(剥離)した他の層の回収性にも優れるものである。
さらに、例えば、本積層体は、前記特許文献3のように、積層体を構成する他の層について、特定条件を満たす外層を用いる必要がなく、多様な積層体を構成できるため、汎用性にも優れる。
【0015】
以上のように、本発明の一実施形態によれば、例えば、外層等の種別を問わず、多様な積層体において容易に剥離分別が可能となり、しかも、剥離時間が短縮可能であって、回収率も高く、剥離工程の効率化が可能となるため、実用的価値が高い。
【0016】
なお、本積層体において、「平面視における面積」とは、積層体を平面方向(すなわち積層方向)から見た際の表面の面積である。具体的には、積層体を平面方向から見た際に、外形線によって囲われる面の面積を意味する。例えば、図1に示すように、積層体の積層方向(Z方向)から見た際に、点C1~C4により構成される各線分l1~l4によって囲われる面の面積である。かかる面積は、公知の方法によって求めることができる。例えば、走査型プローブ顕微鏡(SPM)等を用いて観察することにより算出することができる。
【0017】
本積層体における親水性樹脂層(I)の厚みは、層間剥離性及び回収性を両立させる観点から、0.1~300μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~150μmであり、更により好ましくは1~100μmである。
【0018】
本積層体の好ましい一実施形態としては、親水性樹脂を主成分として含有する層(I)と、他の層(II)とを有し、「第1の他の層(IIa)/親水性樹脂層(I)/第2の他の層(IIb)」の順で配置される積層体が挙げられる。以下、かかる実施形態を参照して、本発明を説明する。但し、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
【0019】
<層(I):親水性樹脂層(親水性樹脂フィルム)>
本積層体に係る層(I)は、親水性樹脂を主成分として含有する親水性樹脂層である。
【0020】
〔親水性樹脂〕
前記親水性樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、多糖類、アクリル系樹脂、ポリエーテル系樹脂等が挙げられる。前記親水性樹脂は、単独でもしくは2種以上を併用してもよい。
【0021】
また、前記親水性樹脂は、例えば、フィルムとした場合に下記のような特性を有することが好ましい。
すなわち、前記親水性樹脂を用いて、厚み30μmのフィルムを調製し、25℃の水に2時間、静置浸漬した際の面積変化率が105%以上であることが好ましい。なお、前記面積変化率は、下記式により求めることができる。
面積変化率(%)=浸漬後のフィルム面積/浸漬前のフィルム面積×100
【0022】
[ポリビニルアルコール系樹脂]
前記ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」という場合がある)としては、未変性PVAの他に、ビニルエステル系樹脂の製造時に各種モノマーを共重合させ、これをケン化して得られる変性PVAや、未変性PVAに後変性によって各種官能基を導入した各種の後変性PVAが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、かかる変性は、PVA系樹脂の水溶性が失われない範囲で行うことができる。また、場合によっては、変性PVAを更に後変性させてもよい。
【0023】
ビニルエステル系樹脂の製造時にビニルエステル系モノマーとの共重合に用いられるモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩、そのモノ又はジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩;アルキルビニルエーテル類;N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド;アリルトリメチルアンモニウムクロライド;ジメチルアリルビニルケトン;N-ビニルピロリドン;塩化ビニル;塩化ビニリデン;ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル;ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド;ポリオキシエチレン(1-(メタ)アクリルアミド-1,1-ジメチルプロピル)エステル;ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル等のポリオキシアルキレンビニルエーテル;ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン等のポリオキシアルキレンアリルアミン;ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等のポリオキシアルキレンビニルアミン;3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類あるいはそのアシル化物等の誘導体が挙げられる。
また、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-ヒドロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-3-ヒドロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4,5-ジヒドロキシ-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-1-ペンテン、4,5-ジヒドロキシ-3-メチル-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-3-メチル-1-ペンテン、5,6-ジヒドロキシ-1-ヘキセン、5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン、グリリンモノアリルエーテル、2,3-ジアセトキシ-1-アリルオキシプロパン、2-アセトキシ-1-アリルオキシ-3-ヒドロキシプロパン、3-アセトキシ-1-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、グリセリンモノビニルエーテル、グリセリンモノイソプロペニルエーテル、ビニルエチレンカーボネート、2,2-ジメチル-4-ビニル-1,3-ジオキソラン等のジオールを有する化合物等が挙げられる。
これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0024】
また、後反応によって官能基が導入された後変性PVAとしては、例えば、ジケテンとの反応によるアセトアセチル基を有するもの、エチレンオキサイドとの反応によるポリアルキレンオキサイド基を有するもの、エポキシ化合物等との反応によるヒドロキシアルキル基を有するもの、あるいは各種官能基を有するアルデヒド化合物をPVA系樹脂と反応させて得られたもの等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0025】
前記PVA系樹脂は、溶融成形に適したPVA系樹脂が好ましい。溶融成形に適したPVA系樹脂としては、側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有するPVA系樹脂や、エチレン変性PVA系樹脂が好ましく、特に、溶融成形性に優れ、さらに水溶性に優れる点で、側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有するPVA系樹脂が好ましい。かかる構造単位における一級水酸基の数は、通常1~5個であり、好ましくは1~2個であり、特に好ましくは1個である。また、一級水酸基以外にも二級水酸基を有することが好ましい。
【0026】
このような側鎖に一級水酸基を有する構造単位を含有するPVA系樹脂としては、例えば、側鎖に1,2-ジオール構造単位を有する変性PVA系樹脂、側鎖にヒドロキシアルキル基構造単位を有する変性PVA系樹脂等が挙げられる。なかでも、特に下記一般式(1)で表される、側鎖に1,2-ジオール構造単位を含有する変性PVA系樹脂(以下、「側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂」と称することがある。)を用いることが好ましい。
なお、1,2-ジオール構造単位以外の部分は、通常のPVA系樹脂と同様、ビニルアルコール構造単位と未ケン化部分のビニルエステル構造単位である。
【0027】
【化1】
(前記一般式(1)において、R1~R6はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表す。)
【0028】
前記一般式(1)において、R1~R6はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表すところ、なかでも、R1~R6は、すべて水素原子であることが側鎖の末端が一級水酸基となり望ましいが、樹脂特性を大幅に損なわない程度の量であれば炭素数1~4のアルキル基であってもよい。当該有機基としては特に限定しないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が好ましく、当該アルキル基は必要に応じてハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
【0029】
前記一般式(1)中、Xは単結合又は結合鎖であり、熱安定性の点や高温下や酸性条件下での安定性の点で、単結合であることが好ましい。前記結合鎖としては、特に限定されず、例えば、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素(これらの炭化水素は、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていてもよい)の他、-O-、-(CH2O)m-、-(OCH2)m-、-(CH2O)mCH2-、-CO-、-COCO-、-CO(CH2)mCO-、-CO(C64)CO-、-S-、-CS-、-SO-、-SO2-、-NR-、-CONR-、-NRCO-、-CSNR-、-NRCS-、-NRNR-、-HPO4-、-Si(OR)2-、-OSi(OR)2-、-OSi(OR)2O-、-Ti(OR)2-、-OTi(OR)2-、-OTi(OR)2O-、-Al(OR)-、-OAl(OR)-、-OAl(OR)O-等が挙げられる。Rは各々独立して水素原子又は任意の置換基であり、水素原子又はアルキル基(特に炭素数1~4のアルキル基)が好ましい。また、mは自然数であり、好ましくは1~10、特に好ましくは1~5である。
なかでも、製造時の粘度安定性や耐熱性等の点で、炭素数6以下のアルキレン基、特にメチレン基、あるいはCH2OCH2-が好ましい。
【0030】
前記一般式(1)で表される1,2-ジオール構造単位における特に好ましい構造は、R1~R6がすべて水素原子であり、Xが単結合である。
【0031】
前記PVA系樹脂のケン化度(JIS K 6726に準拠して測定)は、通常、60~100モル%である。また、ケン化度の好ましい範囲は、変性種によって異なり、例えば、未変性PVA系樹脂の場合、通常、60~99.9モル%であり、好ましくは65~95モル%、特に好ましくは70~90モル%である。かかるケン化度が高すぎると融点と分解温度が近くなり、溶融成形が困難になる傾向があり、低すぎると水溶性が低下する傾向がある。
また、側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂のケン化度は、通常、60~99.9モル%であり、好ましくは65~99.8モル%、特に好ましくは70~99.5モル%である。かかるケン化度が低すぎると水溶性が低下する傾向がある。
更に、少量のエチレンで変性されたエチレン変性PVA系樹脂のケン化度は、通常、60モル%以上であり、好ましくは70~95モル%、特に好ましくは75~90モル%である。かかるケン化度が高すぎると融点と分解温度が近くなり、溶融成形が困難になる傾向があり、低すぎると水溶性が低下する傾向がある。
【0032】
前記PVA系樹脂の平均重合度(JIS K 6726に準拠して測定)は、通常、100~3000であり、好ましくは150~2000、特に好ましくは180~1000、更に好ましくは200~800である。かかる平均重合度が大きすぎると溶融成形時の溶融粘度が高くなり、溶融成形が困難となる傾向がある。
【0033】
また、PVA系樹脂が変性PVA系樹脂である場合、かかる変性PVA系樹脂中の変性率、すなわち共重合体中の各種モノマーに由来する構成単位、あるいは後反応によって導入された官能基の含有量は、官能基の種類によって特性が大きく異なるため一概には言えないが、通常、0.1~20モル%である。
更に、PVA系樹脂が側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂である場合の変性率は、通常、0.1~20モル%であり、好ましくは0.5~10モル%、特に好ましくは1~8モル%である。かかる変性率が高すぎても低すぎても溶融成形が困難になる傾向がある。
なお、PVA系樹脂中の1,2-ジオール構造単位の含有率は、ケン化度100モル%のPVA系樹脂の1H-NMRスペクトル(溶媒:DMSO-d6、内部標準:テトラメチルシラン)から求めることができる。具体的には1,2-ジオール構造単位中の水酸基プロトン、メチンプロトン、及びメチレンプロトン、主鎖のメチレンプロトン、主鎖に連結する水酸基のプロトン等に由来するピーク面積から算出することができる。
【0034】
PVA系樹脂が少量のエチレンで変性されたエチレン変性PVA系樹脂である場合の変性率は、通常、0.1~15モル%であり、好ましくは0.5~10モル%、更に好ましくは1~10モル%、特に好ましくは5~9モル%である。かかる変性率が高すぎると水溶性が低下する傾向があり、低すぎると溶融成形が困難となる傾向がある。
【0035】
PVA系樹脂の融点は、通常140~230℃であり、好ましくは145~220℃、より好ましくは180~200℃、特に好ましくは150~200℃、更に好ましくは155~190℃である。
なお、融点は、示差走査熱量計(DSC)で昇降温速度10℃/minで測定した値である。
【0036】
前記PVA系樹脂は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよい。PVA系樹脂を2種類以上用いる場合としては、例えば、ケン化度、平均重合度、融点等が異なる2種以上の未変性PVA系樹脂の組み合わせ;未変性PVA系樹脂と変性PVA系樹脂との組み合わせ;ケン化度、平均重合度、融点、官能基の種類や変性率等が異なる2種以上の変性PVA系樹脂の組み合わせ等が挙げられるが、ケン化度、平均重合度、変性率等の平均値は本発明の好ましい範囲内であることが好ましい。
【0037】
前記PVA系樹脂の主鎖の結合様式は1,3-ジオール結合が主であり、1,2-ジオール結合の含有量は1.5~1.7モル%程度であるが、ビニルエステル系モノマーを重合する際の重合温度を高温にすることによって1,2-ジオール結合の含有量を増やすことができ、その含有量を1.8モル%以上、更には2.0~3.5モル%に増やすことができる。
【0038】
前記PVA系樹脂の製造方法としては、例えば酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーを重合し、ケン化して製造する方法が挙げられる。
【0039】
前記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピパリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル、トリフロロ酢酸ビニル等を用いることができるが、価格や入手の容易さの観点で、酢酸ビニルが好ましく用いられる。次いで、かかるビニルエステル系モノマーを重合し、ケン化してPVA系樹脂を製造する。
【0040】
また、側鎖1,2-ジオール構造単位含有変性PVA系樹脂は、公知の製造方法により製造することができる。例えば、特開2002-284818号公報、特開2004-285143号公報、特開2006-95825号公報に記載されている方法により製造することができる。
【0041】
[多糖類]
前記親水性樹脂の一例である多糖類としては、例えば、澱粉、セルロース等が挙げられる。前記澱粉としては、例えば、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉等の天然澱粉や、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、架橋澱粉、グラフト化澱粉、焙焼デキストリン、酵素変性デキストリン、アルファ化澱粉、酸化澱粉等の変性澱粉等が挙げられる。
前記セルロースとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ニトロセルロース、カチオン化セルロース等や、そのナトリウム塩等の金属塩が挙げられる。また、前記多糖類としては、アルギン酸ナトリウム、ペクチン酸等の天然高分子多糖類も挙げられる。
【0042】
[ポリエーテル系樹脂]
前記親水性樹脂の一例であるポリエーテル系樹脂としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0043】
なお、親水性樹脂層(親水性樹脂フィルム)は、単層フィルムでもよいし多層フィルムでもよく、また、未延伸フィルムでもよく一軸延伸フィルムでも、二軸延伸フィルムでもよい。
【0044】
本積層体に係る層(I)は、親水性樹脂を主成分として含有する親水性樹脂層であるが、好ましくは前記のPVA系樹脂を主成分として含有する親水性樹脂層であることが好ましく、より好ましくは、PVA系樹脂の含有量が50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%含有する親水性樹脂層である。
【0045】
<第1の他の層(IIa)>
本積層体に係る第1の他の層(IIa)は、親水性樹脂層(I)の一方平面に対して積層される層であり、その構成材料や層数は特に限定されるものではない。例えば、第1の他の層(IIa)は、単層フィルムでもよいし多層フィルムでもよく、また、未延伸フィルムでもよく一軸延伸フィルムでも、二軸延伸フィルムでもよい。多層フィルムを構成する各層は、異なる材料、異なる機能をもつ複数の層からなる複層であってもよい。
【0046】
かかる複数の層(多層フィルム)としては、例えば、最外層、接着樹脂層、防水層、紫外線防止層、リグラインド層等を挙げることができ、これらを適宜、組み合わせて積層し、第1の他の層(IIa)とすればよい。また、最外層の上に印刷、着色等を施し、意匠性を付与することもできる。
【0047】
第1の他の層(IIa)の中の最外層としては、主成分として熱可塑性樹脂を含む層が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、EVOH等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル;ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル、ナイロン6等のポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリウレタン等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。また、これらを最外層の主成分として用いることができる。なかでも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアミドからなる群より選ばれた1種以上を主成分として含有することが好ましい。また、第1の他の層(IIa)の中の最外層としては、主成分として、キャストコート紙、アート紙、コート紙、上質紙、蒸着紙、合成紙等の紙類を含む層であってもよい。
【0048】
第1の他の層(IIa)の中の最外層には、主成分となる熱可塑性樹脂等以外に、可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、接着樹脂等、公知の添加剤が適宜配合されていてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲において、前述のPVA系樹脂を含有してもよい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0049】
第1の他の層(IIa)の中の最外層の厚みとしては、通常1~1000μmであり、好ましくは10~500μmであり、より好ましくは15~200μmであり、さらにより好ましくは15~100μmである。
【0050】
第1の他の層(IIa)の中の接着樹脂層の主成分を構成する樹脂としては、特に制限されないが、例えば、不飽和カルボン酸又はその無水物をオレフィン系重合体に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させてえられ得るカルボキシ基を含有する変性オレフィン系重合体等が挙げられる。
【0051】
前記接着樹脂層の厚みは、通常0.5~50μm、さらには1~30μm、特には2~20μm、殊には3~10μmが好ましい。かかる厚みが0.5μm未満では、接着力不足等が生じるおそれがある。逆に50μmを超えると機械的強度が不十分となり、また経済的にも不利となって好ましくない。
【0052】
また、第1の他の層(IIa)の中の最外層以外の層を積層させる場合の層構成としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
(a)IIa[最外層/接着樹脂層]/I/IIb
(b)IIa[最外層/防水層/接着樹脂層]/I/IIb
(c)IIa[最外層/リグラインド層/接着樹脂層]/I/IIb
(d)IIa[印刷/最外層/接着樹脂層]/I/IIb
(e)IIa[最外層/ヒートシール層]/I/IIb
【0053】
第1の他の層(IIa)の厚み(全厚)は、特に限定されないが、通常1~1000μmであり、好ましくは10~500μmであり、より好ましくは15~200μmである。
【0054】
<第2の他の層(IIb)>
本積層体に係る第2の他の層(IIb)は、親水性樹脂層(I)の他方平面に対して積層される層であり、その構成材料や層数は特に限定されるものではない。例えば、第2の他の層(IIb)は、単層フィルムでもよいし多層フィルムでもよく、また、未延伸フィルムでもよく一軸延伸フィルムでも、二軸延伸フィルムでもよい。多層フィルムを構成する各層は、異なる材料、異なる機能をもつ複数の層からなる複層であってもよい。
【0055】
かかる複数の層(多層フィルム)としては、例えば、最外層、接着樹脂層、防水層、紫外線防止層、リグラインド層等を挙げることができ、これらを適宜、組み合わせて積層し、第2の他の層(IIb)とすればよい。また、最外層の上に印刷、着色等を施し、意匠性を付与することもできる。
【0056】
第2の他の層(IIb)の中の最外層としては、主成分として熱可塑性樹脂を含む層が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、EVOH等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル;ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル、ナイロン6等のポリアミド、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、紙類等からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。また、これらを最外層の主成分として用いることができる。なかでも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリアミドからなる群より選ばれた1種以上を主成分として含有することが好ましい。また、第2の他の層(IIb)の中の最外層としては、主成分として、キャストコート紙、アート紙、コート紙、上質紙、蒸着紙、合成紙等の紙類を含む層であってもよい。
【0057】
第2の他の層(IIb)の中の最外層には、主成分となる熱可塑性樹脂等以外に、可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、接着樹脂等、公知の添加剤が適宜配合されていてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲において、前述のPVA系樹脂を含有してもよい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0058】
第2の他の層(IIb)の中の最外層の厚みとしては、通常1~1000μmであり、好ましくは10~500μmであり、より好ましくは15~200μmであり、さらにより好ましくは15~100μmである。
【0059】
第2の他の層(IIb)の中の接着樹脂層の主成分を構成する樹脂としては、特に制限されないが、例えば、不飽和カルボン酸又はその無水物をオレフィン系重合体に付加反応やグラフト反応等により化学的に結合させてえられ得るカルボキシ基を含有する変性オレフィン系重合体等が挙げられる。
【0060】
前記接着樹脂層の厚みは、通常0.5~50μm、さらには1~30μm、特には2~20μm、殊には3~10μmが好ましい。かかる厚みが0.5μm未満では、接着力不足等が生じるおそれがある。逆に50μmを超えると機械的強度が不十分となり、また経済的にも不利となって好ましくない。
【0061】
また、第2の他の層(IIb)の中の最外層以外の層を積層させる場合の層構成としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
(a)IIa/I/IIb[接着樹脂層/最外層]
(b)IIa/I/IIb[接着樹脂層/防水層/最外層]
(c)IIa/I/IIb [接着樹脂層/リグラインド層/最外層]
(d)IIa/I/IIb[接着樹脂層/最外層/印刷]
(e)IIa/I/IIb[ヒートシール層/最外層]
【0062】
第2の他の層(IIb)の厚み(全厚)は、通常1~50μmであり、好ましくは2~20μmであり、より好ましくは3~10μmである。
【0063】
なお、第1の他の層(IIa)及び第2の他の層(IIb)における最外層とは、積層体を構成する層のうち最も外側に位置する層であり、当該層(IIa)及び層(IIb)が単層で構成される場合は、当該各単層が最外層であり、また、各他の層が複層で構成される場合は、当該複層を構成する各単層のうち親水性樹脂層(I)から最も離れた位置に配置される単層が最外層である。
【0064】
<積層体>
前記のとおり、本発明の好ましい実施形態に係る積層体は、「第1の他の層(IIa)/親水性樹脂層(I)/第2の他の層(IIb)」の順で配置された積層体であるが、本発明の実施形態としては、例えば、「層(II)/層(I)」、「層(I)/層(II)」等であってもよい。
【0065】
本発明の実施形態に係る積層体の厚みは、特に制限されないが、例えば、3~2000μmであり、好ましくは5~1500μmであり、より好ましくは10~1000μmである。
【0066】
<本積層体の製造方法>
本積層体は、前記親水性樹脂層(I)を有する積層体を成形し、当該積層体を平面視の面積が25~625mm2になるように細分化することによって製造される。
【0067】
具体的には、前記親水性樹脂層(I)を有する積層体を用いて作製された包装材等であって、所定の使用目的を達成した後、廃棄等されたものを回収し、回収された包装材等を裁断又は粉砕して細分化して、平面視の面積が25~625mm2の本積層体を得ることができる。
【0068】
回収された包装材等を粉砕して細分化する方法としては、特に限定されないが、例えば、回転刃を有する粉砕機、回転刃と固定刃を有する粉砕機、摺動刃を有する粉砕機を用いて行うことができる。
【0069】
本積層体の平面視形状としては、平面視の面積が25~625mm2である限り、特に限定されない。かかる平面視形状の好適な例としては、任意の多角形状が挙げられる。任意の多角形状としては、正方形や長方形などの四角形、五角形、三角形などが挙げられる。また、積層体の平面視形状としては、丸状、楕円状などであってもよい。
【0070】
かかる多角形状の積層体における任意の一辺の長さとしては、層間剥離性及び回収性を両立させる観点から、5~25mmであることが好ましい。また、より好ましくは、多角形状(特には四辺形)における任意の二辺の長さがいずれも5~25mmであり、更により好ましくは、多角形状(特には四辺形)における任意の三辺の長さがいずれも5~25mmである。とりわけ、多角形状(特には四辺形)における任意の四辺の長さがいずれも5~25mmであることが特に好ましい。
なお、前述の多角形状(特には四辺形)における一辺の長さとしては、5~25mmの範囲内で適宜調製することができ、例えば6~23mm、7~21mm等であってもよい。
【0071】
また、本積層体の平面視形状における周辺の長さ(周全長。例えば、四辺形であれば四辺の合計長さ)は、層間剥離性及び回収性を両立させる観点から、20~100mmが好ましい。また、本積層体の平面視形状における周辺の長さ(周全長)は、例えば、24~92mm、28~84mm等であってもよい。
【0072】
なお、前記親水性樹脂層(I)を有する積層体を用いて作製された包装材は、従来公知の方法により製造することができる。
例えば、一方の最外層を構成する樹脂からなるフィルムあるいはシートに、接着性樹脂、親水性樹脂、他方の最外層を構成する樹脂(例えば、ポリアミド樹脂)を順次、あるいは同時に溶融押出ラミネートする方法、逆に、他方の最外層を構成する樹脂からなるフィルムあるいはシートに、親水性樹脂、接着性樹脂、一方の最外層を構成する樹脂(例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂)を順次、あるいは同時に溶融押出ラミネートする方法、又は、一方の最外層を構成する樹脂及び接着樹脂、親水性樹脂、他方の最外層を構成する樹脂を共押出又は共射出する方法が挙げられる。
また、溶液状態からの成形法としては、一方の最外層を構成するフィルムあるいはシート等に接着樹脂を良溶媒に溶解した溶液を溶液コートし、乾燥後、親水性樹脂の水溶液を溶液コートし、その上に他方の最外層を構成するフィルムあるいはシート等を積層させる方法等が挙げられる。特に限定されないが、前記のなかでも、一工程で製造でき、層間接着性が優れた積層体が得られる点で溶融成形法が好ましく、特に共押出法が好ましく用いられる。そして、かかる溶融成形法を用いる場合には、親水性樹脂として、側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂を用いることが好ましい。
【0073】
前記共押出法においては、例えば具体的にはインフレーション法、Tダイ法、マルチマニーホールドダイ法、フィードブロック法、マルチスロットダイ法が挙げられる。ダイ外接着法等のダイスの形状としてはTダイス、丸ダイス等を使用することができる。
溶融押出時の溶融成形温度は、通常190~250℃であり、好ましくは200~230℃の範囲が用いられる。
【0074】
前記包装材はとしては、袋、カップ、トレイ、チューブ、ボトル等の容器及び蓋材等の包装材である。特にマヨネーズ、ドレッシング等の調味料、味噌等の発酵食品、サラダ油等の油脂食品、飲料の各種の食品包装用の包装材が挙げられる。
【0075】
本発明の実施形態に係る積層体及び包装材は、リサイクル性に優れている。例えば、シート成形した端部や使用済み積層体を、水に浸漬し、撹拌することにより、前記の他の層が剥離することにより、回収することができる。
【0076】
<リサイクル方法>
本発明の一実施形態に係るリサイクル方法は、親水性樹脂を含有する層(I)と、他の層(II)とを有する積層体を、平面視における面積が25~625mm2の大きさに粉砕する工程と、前記のように細分化された積層体を、水を含有する溶媒中に浸漬し、他の層(II)を分離する工程を有するリサイクル方法である。
【0077】
回収された包装材等を粉砕し、平面視における面積が25~625mm2の大きさに細分化する方法としては、特に限定されないが、回転刃を有する粉砕機、回転刃と固定刃を有する粉砕機、摺動刃を有する粉砕機を用いて行うことができる。
【0078】
前記のように細分化された積層体を、水を含有する溶媒中に浸漬すると、親水性樹脂層(I)は水中で膨潤して、親水性樹脂層(I)と他の層(II)との密着性が低下し、他の層(II)は分離する。
【0079】
前記水を含有する溶媒は、水を主成分とするものが好ましく、なかでも、溶媒全体における水の含有量は、80質量%以上が好ましく、より好ましくは90~100質量%、更により好ましくは95~100質量%、特に好ましくは水が100質量%の溶媒である。
【0080】
なお、前記溶媒に配合することができる水以外の成分としては、例えば、アルコール、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ケイ素、バナジウム、ハロゲン、アンモニアなどが挙げられる。
【0081】
前記溶媒の温度としては、限定はされないが、例えば、15℃以上が好ましく、20~120℃がより好ましく、更により好ましくは25~100℃である。
【0082】
前記積層体を水中に浸漬する時間としては、限定はされないが、例えば、1分間~24時間が好ましく、より好ましくは2分間~15時間、更により好ましくは5分間~10時間である。
また、積層体を水中に浸漬し、撹拌翼を用いて撹拌する場合、その回転数は、例えば、1~5000rpmであり、好ましくは5~3000rpm、更により好ましくは10~2000rpmである。
【0083】
親水性樹脂層(I)は水中で膨潤して、親水性樹脂層(I)と他の層(II)との密着性が低下し、他の層(II)は分離するが、その後、親水性樹脂は水中に溶解し、溶媒中に他の層(II)が浮遊した状態となり、この浮遊物を回収する。その後は、例えば、回収された浮遊物を洗浄・脱水し、遠心分離による分別を行う。分別された樹脂は、乾燥後、固化して再利用される。
【実施例0084】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、実施例の記載に限定されるものではない。尚、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り質量基準を意味する。
【0085】
〔実施例1〕
(1)PVA系樹脂の作製
親水性樹脂層(I)を構成するPVA系樹脂を以下のとおり作製した。
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニル68.0部、メタノール23.8部、3,4-ジアセトキシ-1-ブテン8.2部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.3モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。酢酸ビニルの重合率が90%となった時点で、m-ジニトロベンゼンを添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
【0086】
ついで、前記メタノール溶液をさらにメタノールで希釈し、濃度45%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の合計量1モルに対して10.5ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行するとともにケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、側鎖に前記一般式(1)で表される1,2-ジオール構造単位を有するPVA系樹脂を作製した。得られたPVA系樹脂の1,2-ジオール構造単位は、前記一般式(1)において、R1~R6は水素原子であり、Xは単結合である。
【0087】
得られたPVA系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニル及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテンの加水分解に要するアルカリ消費量にて分析したところ、99.2モル%であった。
【0088】
また、PVA系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、450であった。
また、前記一般式(1)で表される1,2-ジオール構造単位の含有量は、1H-NMR(300MHzプロトンNMR、d6-DMSO溶液、内部標準物質:テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出したところ、6モル%であった。
【0089】
(2)積層体の作製
一方の最外層を構成する樹脂としてポリスチレン(PS:PS Japan社製、「475D H27」)を用い、接着樹脂層を構成する樹脂としてモディック(AD1:三菱ケミカル社製、「F503」)を用い、親水性樹脂層を構成する樹脂として前記で得られたPVA系樹脂を用い、他方の最外層を構成する樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE:日本ポリエチレン社製、「YF30」)を用い、押出機を4台備えた4種5層多層成膜装置にて、「PS/AD1/PVA/AD1/LDPE」の5種5層構造の積層体を作製した。各層の厚みは「125μm/5μm/10μm/5μm/125μm」であった。
【0090】
なお、各押出機、及びロールの設定温度は下記の通りであった。
[設定温度]
PS:C1/C2/C3/C4/H/J=180℃/200℃/210℃/210℃/210℃/210℃
PVA:C1/C2/C3/C4/H/J=190℃/200℃/210℃/210℃/210℃/210℃
LDPE:C1/C2/C3/C4/H/J=180℃/200℃/210℃/210℃/210℃/210℃
AD1:C1/C2/C3/C4/H/J=180℃/200℃/210℃/210℃/210℃/210℃
ダイス:FD1/FD2/D1/D2/D3=210℃
ロール:80℃
[前記C1~C4:各シリンダー、H:ヘッド、J:ジョイント、FD1,2:フロントダイス、D1~3:ダイスを示す。]
【0091】
前記で得られた積層体を切断して、平面視における面積が64mm2の略正方形の積層体(試験サンプル)を得た。また、前記積層体における略正方形の一辺の長さは約8mmであった。
【0092】
なお、前記平面視における面積は、以下のようにして測定した。
ハイロックス社製のデジタルマイクロスコープ「KH-1300」を用いて、切断されたサンプルを観察台にセットし、Z方向から試料を観察し、3D計測機能を使用して試料の面積を計測した。
【0093】
(3)層間剥離性評価試験(剥離時間)
500mLビーカーに500mLの水を入れて70℃に加温し、当該水中に前記試験サンプルを浸漬し、300rpmで撹拌した。撹拌開始時点から、試験サンプルの一方の最外層(PS)が指で剥離可能な状態になるまでの時間をストップウォッチで計測した。当該時間を下記基準に従って評価した。結果を表1に示す。
[評価基準]
〇・・・4時間未満
×・・・4時間以上
【0094】
(4)回収性評価試験
前記剥離性評価試験において、試験サンプルの最外層(PS)が指で剥離可能な状態になった後、試験サンプルの一方の最外層(PS)の回収性を評価するため、ビーカーの内容物を網メッシュ(縦横約1mmの網目)に流して、回収性を評価した。結果を表1に示す。
〇:試験サンプルが網メッシュに引っ掛かることない。
×:試験サンプルが網メッシュに引っ掛かりやすい。
【0095】
〔実施例2~8、比較例1~4〕
実施例1におけるポリスチレン(PS)を表1に示す材料に変更し、及び/又は、積層体の面積を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~8、比較例1~4の積層体(試験サンプル)を得た。これらを実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示す。
【0096】
なお、表1における下記材料は以下のとおりである。
・ポリエチレンテレフタレート(PET)
(ベルポリエステル社製、PBK1)
・ポリアミド(PA)
(DSM社製、Novamid 1020)
【0097】
【表1】
【0098】
表1の結果に示されたとおり、積層体の面積を特定範囲に制御した実施例は、層間剥離性及び回収性の両方においても優れることが確認された。
一方、積層体の面積が特定範囲外である比較例は、層間剥離性又は回収性の一方が劣るものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の積層体は、水に浸漬することにより、速やかに層剥離することができ、また、回収性に優れるものであり、汎用性にも優れる。従って、本発明の積層体は、包装材、とりわけ食品包装材として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0100】
I・・・層(I)
II・・・層(II)
1~l4・・・線分
図1