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特開2024-118946駆動制御装置、液体吐出装置、液体吐出システム、制御方法および制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118946
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】駆動制御装置、液体吐出装置、液体吐出システム、制御方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240826BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20240826BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20240826BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240826BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
B05C11/10
B41J2/015 101
B41J2/045
B05C11/00
B05C5/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025565
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 秀之
【テーマコード(参考)】
2C057
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C057AF65
2C057AG12
2C057AG44
2C057AL40
2C057BA08
2C057BA14
4F041AA07
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA17
4F041BA36
4F042AA09
4F042AB00
4F042BA06
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA21
4F042CA01
4F042CB03
4F042CB19
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】液体吐出ヘッドのメンテナンス頻度を低減させる。
【解決手段】液体を吐出する複数のノズルと、複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドの駆動制御装置であって、駆動制御装置は、ノズルを弁体に閉鎖させる閉鎖電圧をアクチュエータに印加可能であり、ノズルが閉鎖状態から開放状態へ移行する電圧を閾値電圧とした場合に、複数のノズルのうち、閾値電圧の高いノズルに対応する閉鎖電圧が、閾値電圧の高いノズルよりも閾値電圧の低いノズルに対応する閉鎖電圧と比べて高くなるように複数のアクチュエータに印加する閉鎖電圧を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドの駆動制御装置であって、前記駆動制御装置は、
前記ノズルを前記弁体に閉鎖させる閉鎖電圧を前記アクチュエータに印加可能であり、
前記ノズルが閉鎖状態から開放状態へ移行する電圧を閾値電圧とした場合に、前記複数のノズルのうち、前記閾値電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧が、前記閾値電圧の高い前記ノズルよりも前記閾値電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御する、駆動制御装置。
【請求項2】
前記駆動制御装置は、前記複数のノズルのうち、前記閾値電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と該閾値電圧との差と、前記閾値電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と該閾値電圧との差との差が、所定の値以下になるように前記アクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御する、請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記駆動制御装置は、前記ノズルを前記弁体に開放させる開放電圧を前記アクチュエータに印加可能であり、前記複数のノズルのうち、前記閾値電圧の高い前記ノズルに対応する前記開放電圧が、前記閾値電圧の高い前記ノズルよりも前記閾値電圧の低い前記ノズルに対応する前記開放電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記開放電圧を制御する、請求項1または2に記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記駆動制御装置は、前記ノズルを前記弁体に開放させる開放電圧を前記アクチュエータに印加可能であり、前記複数のノズルのうち、前記閾値電圧の高い前記ノズルに対応する前記開放電圧と該閾値電圧との差と、前記閾値電圧の低い前記ノズルに対応する前記開放電圧と該閾値電圧との差との差が、所定の値以下になるように前記アクチュエータに印加する前記開放電圧を制御する、請求項1または2に記載の駆動制御装置。
【請求項5】
液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドの駆動制御装置であって、前記駆動制御装置は、
前記ノズルを前記弁体に閉鎖させる閉鎖電圧を前記アクチュエータに印加可能であり、
前記アクチュエータに印加する電圧の変化に対する前記ノズルの流量の変化が最大を示す電圧を中間電圧とした場合に、前記複数のノズルのうち、前記中間電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧が、前記中間電圧の高い前記ノズルよりも前記中間電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御する、駆動制御装置。
【請求項6】
前記駆動制御装置は、前記複数のノズルのうち、前記中間電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と該中間電圧との差と、前記中間電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と該中間電圧との差との差が、所定の値以下になるように前記アクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御する、請求項5に記載の駆動制御装置。
【請求項7】
前記駆動制御装置は、前記ノズルを前記弁体に開放させる開放電圧を前記アクチュエータに印加可能であり、前記複数のノズルのうち、前記中間電圧の高い前記ノズルに対応する前記開放電圧が、前記中間電圧の高い前記ノズルよりも前記中間電圧の低い前記ノズルに対応する前記開放電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記開放電圧を制御する、請求項5または6に記載の駆動制御装置。
【請求項8】
前記駆動制御装置は、前記ノズルを前記弁体に開放させる開放電圧を前記アクチュエータに印加可能であり、前記複数のノズルのうち、前記中間電圧の高い前記ノズルに対応する前記開放電圧と該中間電圧との差と、前記中間電圧の低い前記ノズルに対応する前記開放電圧と該中間電圧との差との差が所定の値以下になるように前記アクチュエータに印加する前記開放電圧を制御する、請求項5または6に記載の駆動制御装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載の駆動制御装置と、
前記液体吐出ヘッドと、
を備える、液体吐出装置。
【請求項10】
請求項9に記載の液体吐出装置と、
前記ノズルの流量を測定する流量計と、
前記流量と、前記アクチュエータに印加される電圧との関係を解析する流量解析部と、
解析した結果を前記液体吐出装置にフィードバックする通信回路と、
を備える、液体吐出システム。
【請求項11】
液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドと、前記ノズルを前記弁体に閉鎖させる閉鎖電圧を前記アクチュエータに印加可能な駆動制御装置と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置が、
前記ノズルが閉鎖状態から開放状態へ移行する電圧を閾値電圧とした場合に、前記複数のノズルのうち、前記閾値電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧が、前記閾値電圧の高い前記ノズルよりも前記閾値電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御するステップを実行する、制御方法。
【請求項12】
液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドと、前記ノズルを前記弁体に閉鎖させる閉鎖電圧を前記アクチュエータに印加可能な駆動制御装置と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置が、
前記アクチュエータに印加する電圧の変化に対する前記ノズルの流量の変化が最大を示す電圧を中間電圧とした場合に、前記複数のノズルのうち、前記中間電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧が、前記中間電圧の高い前記ノズルよりも前記中間電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御するステップを実行する、制御方法。
【請求項13】
液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を有する液体吐出ヘッドと、前記アクチュエータに電圧を印可することで前記ノズルを閉鎖状態と開放状態のいずれかとなるように前記液体吐出ヘッドを駆動制御する駆動制御装置と、を備える液体吐出システムの制御方法であって、
前記駆動制御装置に、前記アクチュエータに電圧を印可させ前記ノズルから前記液体を吐出させるステップと、
流量計に、前記ノズルから吐出される前記液体の流量を測定させるステップと、
前記流量と、前記液体吐出ヘッドに印加される電圧との関係を解析するステップと、
解析した結果を通信回路に前記駆動制御装置へフィードバックさせるステップと、
を実行し、
前記解析するステップは、前記流量計の測定結果と前記電圧とに基づいて、前記ノズルを前記閉鎖状態にする閉鎖電圧と前記ノズルを前記開放状態にする開放電圧との少なくとも一方を決定し、
前記フィードバックさせるステップは、決定した前記閉鎖電圧と前記開放電圧との少なくとも一方を前記駆動制御装置にフィードバックする、制御方法。
【請求項14】
液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドと、前記ノズルを前記弁体に閉鎖させる閉鎖電圧を前記アクチュエータに印加可能な駆動制御装置と、を備える液体吐出装置の制御プログラムであって、
前記ノズルが閉鎖状態から開放状態へ移行する電圧を閾値電圧とした場合に、前記複数のノズルのうち、前記閾値電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧が、前記閾値電圧の高い前記ノズルよりも前記閾値電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御するステップをコンピュータに実行させる、制御プログラム。
【請求項15】
液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドと、前記ノズルを前記弁体に閉鎖させる閉鎖電圧を前記アクチュエータに印加可能な駆動制御装置と、を備える液体吐出装置の制御プログラムであって、
前記アクチュエータに印加する電圧の変化に対する前記ノズルの流量の変化が最大を示す電圧を中間電圧とした場合に、前記複数のノズルのうち、前記中間電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧が、前記中間電圧の高い前記ノズルよりも前記中間電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御するステップをコンピュータに実行させる、制御プログラム。
【請求項16】
液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を有する液体吐出ヘッドと、前記アクチュエータに電圧を印加することで前記ノズルを閉鎖状態と開放状態のいずれかとなるように前記液体吐出ヘッドを駆動制御する駆動制御装置と、を備える液体吐出システムの制御プログラムであって、
前記駆動制御装置に、前記アクチュエータに電圧を印可させ前記ノズルから前記液体を吐出させるステップと、
流量計に、前記ノズルから吐出される前記液体の流量を測定させるステップと、
前記流量と、前記液体吐出ヘッドに印加される電圧との関係を解析するステップと、
解析した結果を通信回路に前記駆動制御装置へフィードバックさせるステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記解析するステップは、前記流量計の測定結果と前記電圧とに基づいて、前記ノズルを前記閉鎖状態にする閉鎖電圧と前記ノズルを前記開放状態にする開放電圧との少なくとも一方を決定し、
前記フィードバックさせるステップは、決定した前記閉鎖電圧と前記開放電圧との少なくとも一方を前記駆動制御装置にフィードバックする、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動制御装置、液体吐出装置、液体吐出システム、制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体を吐出する液体吐出ヘッドの駆動制御装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、ニードル弁によりノズルを開閉するバルブ式の液体吐出ヘッドが開示されている。ニードル弁は先端に合成樹脂を備え、ノズルをニードル弁により閉鎖する際に合成樹脂を変形させるようにノズル板に押圧することで漏れなくノズルを閉鎖することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、部品加工または組み立ての精度等に起因してノズル板に対する弁体の押し込み量がばらつくため、吐出の繰り返しによってチャンネル間で弁体の摩耗量がばらつき、メンテナンス頻度が増加する傾向がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、液体吐出ヘッドのメンテナンス頻度を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドの駆動制御装置であって、前記駆動制御装置は、
前記ノズルを前記弁体に閉鎖させる閉鎖電圧を前記アクチュエータに印加可能であり、前記ノズルが閉鎖状態から開放状態へ移行する電圧を閾値電圧とした場合に、前記複数のノズルのうち、前記閾値電圧の高いノズルに対応する前記閉鎖電圧が、前記閾値電圧の高い前記ノズルよりも前記閾値電圧の低いノズルに対応する前記閉鎖電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御する、駆動制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、液体吐出ヘッドのメンテナンス頻度を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの斜視図である。
図2】第1実施形態に係る液体吐出ヘッドのA-A断面図である。
図3】第1実施形態に係る液体吐出モジュールの断面図(a)及び拡大図(b)である。
図4】第1実施形態に係る液体吐出モジュールの動作図(a)~(f)である。
図5】第1実施形態に係る液体吐出モジュールの弁体位置と流量の関係図である。
図6】第1実施形態に係る液体供給機構の構成図である。
図7】第1実施形態に係る液体吐出装置の全体構成図である。
図8】第1実施形態に係る液体吐出装置の制御構成のブロック図である。
図9A】実施例に係る駆動波形を示す図(a)~(b)である。
図9B】実施例に係る各チャンネルの流量曲線を示す図(a)~(b)である。
図9C】実施例に係る測定電圧に対する流量変化量を示す図(a)~(b)である。
図10A】第1実施形態に係る液体吐出システムの構成図である。
図10B】第1実施形態に係る液体吐出システムの動作を示すフローチャートである。
図11】第2実施形態に係る塗布装置の構成図である。
図12】第2実施形態に係る塗布装置の使用例を示す図(a)~(b)である。
図13】第3実施形態に係る電極製造方法および電極製造装置を示す図(a)~(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各図面において、同一構成要素には同一符号を付与し、重複した説明を適宜省略する。各図面の説明において、上下左右等の方向を示す表現は一例であり、実施形態に係る構成要素の方向を制限するものではない。本発明の実施形態に関する用語の定義については、実施形態の最後に説明する。
【0010】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10および液体吐出ユニット60について説明する。
【0011】
(液体吐出ヘッドおよび液体吐出ユニットの構成)
図1は第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10の斜視図である。液体吐出ヘッド10は液体を吐出する。液体としては、例えば、インク、塗料、および表面処理液等が挙げられる。
【0012】
液体吐出ヘッド10はハウジング11を備える。ハウジング11は金属または樹脂等により形成される。ハウジング11の上側には電気信号の通信用のコネクタ29が設けられる。ハウジング11の左右両側には、液体を液体吐出ヘッド10内に供給するための供給ポート12と、液体を液体吐出ヘッド10から排出するための回収ポート13と、が設けられている。
【0013】
図2は第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10のA-A断面図である。液体吐出ヘッド10には複数の弁体17が設けられる。液体吐出ヘッド10はコネクタ29を介して駆動制御装置40に電気的に接続される。駆動制御装置40は複数の弁体17の駆動を制御する。液体吐出ヘッド10および駆動制御装置40は、液体吐出ユニット60を構成する。
【0014】
液体吐出ヘッド10にはノズル形成部材としてのノズル板15が設けられている。ノズル板15はハウジング11に接合される。ノズル板15には液体を吐出する複数のノズル14が設けられる。
【0015】
ハウジング11には流路16が設けられる。流路16は、液体を供給ポート12からノズル板15へ流入し、複数のノズル14が設けられたノズル板15上を経て、回収ポート13から流出する。液体は、矢印a1、矢印a2、及び矢印a3により示される方向へ流路16を流れる。
【0016】
供給ポート12と回収ポート13との間には、液体吐出モジュール20が設けられる。液体吐出モジュール20は流路16の液体をノズル14から吐出する。液体吐出モジュール20の個数はノズル14の個数に対応する。なお、ノズル14および液体吐出モジュール20の個数は制限されない。ノズル14および液体吐出モジュール20の列数は1列ではなく複数列であってもよい。
【0017】
流路16は複数の液体吐出モジュール20に共通の流路として構成される。供給ポート12は、加圧された状態の液体を外部から取り込み、矢印a1の方向に液体を送液して流路16に供給する。流路16は供給ポート12からの液体を矢印a2の方向へ送液して各液体吐出モジュール20に供給する。回収ポート13は液体吐出モジュール20のノズル14から吐出されなかった液体を矢印a3の方向へ排出する。
【0018】
(液体吐出モジュールの構成)
図3は第1実施形態に係る液体吐出モジュール20の断面図(a)及び拡大図(b)である。液体吐出モジュール20は、ノズル14を開閉する弁体17と、弁体17を駆動するアクチュエータ18と、を備える。
【0019】
弁体17は、例えば針状に形成されたニードル弁である。弁体17の径は、封止の観点からノズル14の径よりも大きいことが好ましい。弁体17は先端部に弾性部材17aを備え、ノズル14を十分に封止可能であることが好ましい。或いは、弁体17の全体が弾性部材として構成されてもよい。
【0020】
弾性部材17aは、ノズル板15に押圧された際に圧縮変形可能な樹脂またはゴムである。弾性部材17aは、液体に対して耐溶解性を有することが好ましい。ゴムとしては、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム等が挙げられる。樹脂としては、フッ素樹脂、塩素化ポリエーテル、フッ素系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等が挙げられる。中でも、耐薬品性、耐摩耗性、および耐熱性に優れた、フッ素ゴム、FFKM(パーフロロエラストマー)、およびPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等が好ましい。
【0021】
弾性部材17aの弾性率としては、弾性部材17aの上下方向の厚さ、弁体17のノズル板15に対する垂直度、ノズル板15の平面度、液体に含まれる顔料またはフィラー等の粒子の大きさ、および封止に必要な変形量等に基づいて適宜選択することができる。例えば、弾性部材17aとしては、液体に含まれる粒子と同程度の範囲で弾性変形するような弾性率を有する材質を選択することが好ましい。
【0022】
弾性部材17aは、例えば円柱状に形成されて弁体17の先端面に固定される。或いは、弾性部材17aは、弁体17の先端面から弁体17の先端部近傍の側周面まで覆うようにコーティングされてもよい。
【0023】
ノズル14に対する弾性部材17aの対向面には液溜まりとなる凹部が設けられてもよい。凹部の開口径をノズル14の口径よりも大きくすることにより、液体の吐出速度、1回の吐出量、および直進性等の吐出性能を向上させることができる。また、弾性部材17aに対向するノズル14のエッジ部分の摩耗を抑制することができる。
【0024】
弁体17は軸受21によって支持される。弁体17は軸受21によってノズル14の位置へ案内される。弁体17はノズル板15を押圧して圧縮することでノズル14を確実に封止することができる。
【0025】
アクチュエータ18は、例えばジルコニアセラミックス等により形成された圧電素子であるが、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、または、振動板と対向電極とにより構成される静電アクチュエータ等であってもよい。
【0026】
アクチュエータ18は、ハウジング11の内部に形成された駆動機構収容空間23aに収容される。駆動機構収容空間23aと流路16とは2個の封止部材22によって空間が分離されるが、封止部材22の個数は限定されない。封止部材22は駆動機構収容空間23aへの液体の流入を阻止する。封止部材22としては、例えば、Oリング、パッキン等のシール材が挙げられる。
【0027】
アクチュエータ18は、駆動機構収容空間23aで保持部材23によって保持される。保持部材23は、例えば、ゴム、樹脂、または金属等により形成された板ばねである。保持部材23は、アクチュエータ18の先端部を保持する先端部23bと、アクチュエータ18の後端部を保持する後端部23cと、を備えることが好ましい。
【0028】
アクチュエータ18は、保持部材23の先端部23bを介して弁体17に連結される。またアクチュエータ18は、保持部材23の後端部23cを介して規制部材19に固定される。規制部材19は、保持部材23の後端部23cを固定することでアクチュエータ18の固定点として機能する。
【0029】
保持部材23は、アクチュエータ18の作動時にアクチュエータ18の変形方向とは逆方向に変形する逆ばね機構として作用する。保持部材23は、アクチュエータ18の僅かな変形を増幅して弁体17の移動距離を長くすることが可能である。
【0030】
アクチュエータ18を作動させて弁体17を後端方向へ移動させた場合は、弾性部材17aにより閉鎖されていたノズル14が開放状態となり、ノズル14から液体が吐出される。一方、アクチュエータ18を作動させて弁体17を先端方向へ移動させた場合は、弾性部材17aがノズル板15に当接してノズル14が閉鎖状態となり、ノズル14から液体が吐出されなくなる。
【0031】
なお、対象物に対して液体を吐出する間は、液体の吐出効率が低下しないように、回収ポート13からの液体の排出を一時的に行わないようにしてもよい。
【0032】
アクチュエータ18は、電圧印加により収縮するタイプであってもよいし、または電圧印加により伸張するタイプであってもよい。
【0033】
電圧印加により収縮するアクチュエータ18を用いる場合、アクチュエータ18に電圧が印加されていない状態でノズル14の閉鎖が可能な位置を見つけ、規制部材19により保持部材23の固定を行う。
【0034】
駆動制御装置40によってアクチュエータ18に電圧が印加されることにより、アクチュエータ18が収縮して保持部材23を介して弁体17を引っ張る。弁体17がノズル14から離間してノズル14を開放することにより、流路16に加圧供給された液体がノズル14から吐出される。
【0035】
一方、駆動制御装置40によってアクチュエータ18に電圧が印加されていないときは、弁体17がノズル14を閉鎖する。ノズル14が閉鎖された状態では、流路16に液体が加圧供給されていても、ノズル14から液体が吐出されることはない。
【0036】
電圧印加により伸張するアクチュエータ18を用いる場合、アクチュエータ18に電圧が印加された状態でノズル14の閉鎖が可能な位置を見つけ、規制部材19により保持部材23の固定を行う。
【0037】
駆動制御装置40によってアクチュエータ18に印加される電圧を小さくすることにより、アクチュエータ18が収縮して保持部材23を介して弁体17を引っ張る。弁体17がノズル14から離間してノズル14を開放することにより、流路16に加圧供給された液体がノズル14から吐出される。
【0038】
一方、駆動制御装置40によってアクチュエータ18に電圧が印加されるときは、弁体17がノズル14を閉鎖する。ノズル14が閉鎖された状態では、流路16に液体が加圧供給されていても、ノズル14から液体が吐出されることはない。
【0039】
駆動制御装置40は、アクチュエータ18に印加される電圧を示す駆動波形を生成する駆動波形発生回路41と、駆動波形の電圧値または電流値を必要な値まで増幅する増幅回路42と、を備える。増幅回路42により増幅された電圧がアクチュエータ18に印加される。
【0040】
駆動制御装置40は、電圧の印加によって弁体17の開閉を制御することで液体吐出ヘッド10からの液体の吐出を制御する。なお、駆動波形発生回路41が十分な値の電圧を印加できる場合には増幅回路42を省略してもよい。
【0041】
駆動波形発生回路41は、アクチュエータ18に印加する電圧の時間経過に伴う波形である駆動パルス波形を生成する。駆動波形発生回路41は、例えばPWM(パルス幅変調)方式等により駆動パルス波形を生成してアクチュエータ18に所望の電圧を印加する。
【0042】
駆動波形発生回路41は、PC(Personal Computer)等の外部装置または装置内部の記憶装置からの画像データを入力し、画像データに基づいて駆動パルス波形を生成する。駆動波形発生回路41は、例えば、画像データに含まれる画素の各色の濃度に応じた液滴サイズに対応する駆動パルス波形を生成する。
【0043】
また駆動波形発生回路41は、ノズル板15に対する弁体17の過剰な押し込み、または、チャンネル間の弁体17の押し込み量のばらつきを抑制するため、後述のようにアクチュエータ18に印加する閉鎖電圧をチャンネル毎に設定した駆動パルス波形を生成する。
【0044】
また駆動波形発生回路41は、チャンネル間の吐出量のばらつきを抑制するため、後述のようにアクチュエータ18に印加する開放電圧をチャンネル毎に設定した駆動パルス波形を生成する。
【0045】
アクチュエータ18は、駆動波形発生回路41から出力された駆動波形に応じて圧縮または伸張することでノズル14を弁体17に開閉させる。
【0046】
(液体吐出モジュールの動作)
図4は第1実施形態に係る液体吐出モジュール20の動作図(a)~(f)である。アクチュエータ18の各電極には一対のリード線24が電気的に接続される。第1リード線24aおよび第2リード線24bは駆動制御装置40に電気的に接続される。
【0047】
図4(a)~(c)は電圧印加により圧縮するタイプのアクチュエータ18を用いた液体吐出モジュール20の動作を示している。
【0048】
図4(a)には、ノズル14を閉鎖する閉鎖電圧Vcとして、例えば0Vがアクチュエータ18に印加されており、アクチュエータ18が伸張した状態が示されている。弁体17はノズル板15に最も大きな圧力で接触してノズル14を閉鎖している。
【0049】
すなわち、電圧印加により圧縮するタイプのアクチュエータ18を用いる場合、閉鎖電圧Vcとは、弁体17がノズル板15を最も大きな圧力で押し込んでノズル14を閉鎖するようにアクチュエータ18に印加される最小電圧である。
【0050】
図4(b)には、ノズル14を閉鎖する閉鎖電圧Vcよりより高く、かつ開放電圧Veより低い電圧がアクチュエータ18に印加され、アクチュエータ18が圧縮を開始した状態が示されている。弁体17はノズル板15に図4(a)の状態よりも小さい圧力で接触しているが、依然としてノズル14を閉鎖している。
【0051】
すなわち、ノズル14は閉鎖状態から開放状態へ移行する状態である。ノズル14が閉鎖状態から開放状態へ移行する閾値電圧Vthは、例えばノズル14から吐出される流量に基づいて30Vとして算定することができる。
【0052】
図4(c)には、開放電圧Veである72Vがアクチュエータ18に印加されており、アクチュエータ18が完全に圧縮した状態が示されている。弁体17はノズル板15から最も離間してノズル14を閉鎖していない状態であり、加圧供給された液体25がノズル14から吐出される。
【0053】
すなわち、電圧印加により圧縮するタイプのアクチュエータ18を用いる場合、開放電圧Veとは、弁体17がノズル板15から最も離間してノズル14を弁体17に開放させるようにアクチュエータ18に印加される最大電圧である。
【0054】
一方、図4(d)~(f)は電圧印加により伸張するタイプのアクチュエータ18を用いた液体吐出モジュール20の動作を示している。
【0055】
図4(d)には、ノズル14を閉鎖する閉鎖電圧Vcとして、例えば72Vがアクチュエータ18に印加されており、アクチュエータ18が伸張した状態が示されている。弾性部材17aはノズル板15に最も大きな圧力で接触してノズル14を閉鎖している。
【0056】
すなわち、電圧印加により伸張するタイプのアクチュエータ18を用いる場合、閉鎖電圧Vcとは、弁体17がノズル板15を最も大きな圧力で押し込んでノズル14を閉鎖するようにアクチュエータ18に印加される最大電圧である。
【0057】
図4(e)には、ノズル14を閉鎖する閉鎖電圧Vcよりより低く、かつ開放電圧Veより高い電圧がアクチュエータ18に印加され、アクチュエータ18が圧縮を開始した状態が示されている。弾性部材17aはノズル板15に図4(d)の状態よりも小さい圧力で接触しているが、ノズル14を依然として閉鎖している。
【0058】
すなわち、ノズル14は閉鎖状態から開放状態へ移行する状態である。ノズル14が閉鎖状態から開放状態へ移行する閾値電圧Vthは、例えばノズル14から吐出される流量に基づいて54Vとして算定することができる。
【0059】
図4(f)には、開放電圧Veである0Vがアクチュエータ18に印加され、アクチュエータ18が完全に圧縮した状態が示されている。弁体17はノズル板15から離間してノズル14を閉鎖していない状態であり、加圧供給された液体25がノズル14から吐出される。
【0060】
すなわち、電圧印加により伸張するタイプのアクチュエータ18を用いる場合、開放電圧Veとは、弁体17がノズル板15から最も離間してノズル14を弁体17に開放させるようにアクチュエータ18に印加される最小電圧である。
【0061】
図4(a)~(f)の各々の状態は、駆動制御装置40がアクチュエータ18に対する印加電圧を設定することにより操作可能である。なお、図4(a)、図4(b)、図4(d)および図4(e)に示すようにノズル14が閉鎖した状態を「閉鎖状態」と称する。また、図4(c)および図4(f)に示すようにノズル14が開放した状態を「開放状態」と称する。
【0062】
液体吐出モジュール20の組み立て時には、液体25の封止を確実にするため、弁体17がノズル板15に最も大きな圧力で接触している状態から電圧操作をしても、依然として封止状態が維持されるように規制部材19を用いて弁体17を位置決めする。
【0063】
また、弁体17とノズル板15との間の隙間は、例えば15μmを中心値として、±0.1μmの範囲となるように、開放電圧Veを制御する。斯かる制御を行うことで吐出滴量Mjのばらつきを1%以下に制御することができる。なお、電圧範囲は、所望の吐出滴量Mjの範囲に応じて適宜調整される。
【0064】
ここで、弁体17の位置とノズル14から吐出する流量との関係の一例について説明する。図5は第1実施形態に係る液体吐出モジュール20の弁体位置と流量の関係図である。
【0065】
例えば弁体17の位置が1μmずれると、単位時間当たりの流量が大きく変化するため、部品加工または弁体17の位置決めにおいては、サブミクロンオーダーの非常に高い精度が求められる。
【0066】
しかしながら、実際には部品加工または弁体17の位置決めにおいて精度を求めるのは非常に困難であり、弁体17の位置は所望の位置からずれを有するため、弁体17がノズル板15に過剰な圧力で接触した状態になってしまう場合がある。弁体17の位置ずれはチャンネル毎にばらつきを有するため、電圧操作をしても封止状態を維持可能な電圧の幅はチャンネル毎にばらつきを持ってしまう。
【0067】
また、弁体17は駆動制御装置40からアクチュエータ18への電圧信号によりkHzオーダーの動作するため、接触するノズル板15との間で摩耗を生じる。弁体17が摩耗によって初期状態から変化すると、封止状態または吐出状態が変化してしまうため、部品交換または弁体17の位置決め再調整のメンテナンスが必要となる。
【0068】
摩耗の度合いは弁体17のノズル板15へ接触圧力が大きいほど大きくなり、組み立て時の弁体17の位置ばらつきは弁体17の摩耗量のばらつきにつながる。そしてチャンネル間の摩耗量のばらつきが大きい場合、メンテナンス時期がずれてしまい、メンテナンス頻度が増加してしまう。
【0069】
そこで、駆動波形発生回路41は、アクチュエータ18に印加する電圧をチャンネル毎に設定することにより、部品加工または組み立ての精度等に起因する弁体17の過剰な押し込み、および、チャンネル間の弁体17の押し込み量のばらつきを抑制する。
【0070】
(液体吐出装置の構成)
次に、液体吐出装置の構成について説明する。図6は第1実施形態に係る液体供給機構30の構成図である。液体吐出装置100は、液体供給機構30を備える。液体供給機構30は、複数の液体吐出ヘッド10の各々から吐出する各色の液体25を収容する密閉容器としてのタンク31を備える。
【0071】
なお、第1液体吐出ヘッド10a~第4液体吐出ヘッド10dを総称する場合は液体吐出ヘッド10と称し、第1液体25a~第4液体25dを総称する場合は液体25と称し、第1タンク31a~第4タンク31dを総称する場合はタンク31と称する。
【0072】
液体吐出ヘッド10の供給ポート12(図1または図2を参照)と、タンク31とは、それぞれチューブ32を介して接続される。タンク31は、エアーレギュレータ33を備えるパイプ34を介してコンプレッサ35に接続される。コンプレッサ35がタンク31に加圧空気を供給することにより、液体吐出ヘッド10の内部の液体25は加圧状態になり、ノズル14を弁体17に開放させればノズル14から液体25が吐出する。
【0073】
ここで、コンプレッサ35、エアーレギュレータ33を備えるパイプ34、タンク31、およびチューブ32は、液体吐出ヘッド10に対して液体25を加圧供給する液体供給機構30を構成する。
【0074】
図7は第1実施形態に係る液体吐出装置100の構成図である。図7では、理解を容易にするため、液体供給機構30を省略している。
【0075】
液体吐出装置100は、液体が吐出される対象物Sに対向して設置される。液体吐出装置100は、例えば、X軸レール101と、X軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101およびY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。
【0076】
Y軸レール102はX軸レール101がY方向に移動可能となるようにX軸レール101を保持する。X軸レール101はZ軸レール103がX方向に移動可能となるようにZ軸レール103を保持する。Z軸レール103はキャリッジ71がZ方向に移動可能となるようにキャリッジ71を保持する。キャリッジ71は液体吐出ヘッド10および駆動制御装置40と共に液体吐出ユニット60を構成する。
【0077】
液体吐出装置100には、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY方向に駆動するY方向駆動アクチュエータ82が設けられる。また液体吐出装置100には、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX方向に動かすX方向駆動アクチュエータ72が設けられる。さらに液体吐出装置100には、キャリッジ71をZ軸レール103に沿ってZ方向に駆動する第1Z方向駆動アクチュエータ92と、キャリッジ71に対してヘッド保持体70をZ方向に駆動する第2Z方向駆動アクチュエータ93と、を備える。
【0078】
キャリッジ71は液体吐出ヘッド10を保持するヘッド保持体70を備える。キャリッジ71は第1Z方向駆動アクチュエータ92からの動力によりZ軸レール103に沿ってZ方向へ移動する。またヘッド保持体70は第2Z方向駆動アクチュエータ93からの動力によりキャリッジ71に対してZ方向へ移動する。
【0079】
X方向駆動アクチュエータ72、Y方向駆動アクチュエータ82、第1Z方向駆動アクチュエータ92、および第2Z方向駆動アクチュエータ93は、例えば電動モータ等の電動アクチュエータである。
【0080】
液体吐出装置100は、キャリッジ71をX軸、Y軸およびZ軸の方向に動かしながら、ヘッド保持体70に設けられた液体吐出ヘッド10から液体25を吐出し、対象物Sに描画を行う。キャリッジ71およびヘッド保持体70のZ方向への移動は、Z方向と平行である必要はなく、少なくともZ方向の成分を含んでいれば斜め方向への移動であってもよい。
【0081】
なお、液体が吐出される対象物Sの表面形状は平面として示されているが、平面に限定されない。対象物Sの表面形状は、車またはトラック等の車体、あるいは航空機の機体等のように曲率半径の大きい面または鉛直面に対して傾斜した面等であってもよい。
【0082】
また、ライン型インクジェットプリンタの場合のように、キャリッジ71、各軸レールおよび各方向駆動アクチュエータは必ずしも必須の構成要素ではない。
【0083】
(液体吐出装置の制御構成)
次に、液体吐出装置100の制御構成について説明する。図8は第1実施形態に係る液体吐出装置100の制御構成のブロック図である。
【0084】
液体吐出装置100は、コントローラ901と、ヘッド駆動制御部902と、を備えるが、ヘッド駆動制御部902のみを備える構成であってもよい。コントローラ901は、有線または無線を通じてPC903等の外部装置と通信可能である。
【0085】
PC903は、RIP部9031(Routing Information Protocol)と、レンダリング部9032と、を備える。なお、RIP部9031とレンダリング部9032は、PC903に設けられるのではなく、コントローラ901のシステム制御部9011に設けられてもよい。
【0086】
RIP部9031は、カラープロファイルまたはユーザの設定に応じて画像処理を行う機能を有する。レンダリング部9032は、対象物Sに描画する画像データを、スキャン毎(例えばキャリッジ71が1回のX軸方向への移動で描画する単位毎)の画像データに分解する機能を有する。
【0087】
PC903には、入力装置9033が接続される。入力装置9033としては、キーボード、マウス、およびタッチパネル等が挙げられる。入力装置9033は、対象物Sに描画する画像データ、座標データの設定、描画モードの選択等のユーザからの入力を受け付ける。
【0088】
コントローラ901は、システム制御部9011と、画像データ格納部9012と、メモリ制御部9013と、吐出周期信号生成部9014と、キャリッジ制御部9015と、を備える。
【0089】
システム制御部9011は、PC903から画像データまたは制御指令を受信し、液体吐出装置100全体の動作を制御する。画像データ格納部9012は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、またはHDD(Hard Disk DriVe)等の記憶装置を備え、PC903から受信した画像データ等を格納する。
【0090】
メモリ制御部9013は、システム制御部9011からの制御指令に基づき、画像データ格納部9012への画像データ等の書き込み、画像データ格納部9012からの画像データ等の読み出しを行う。
【0091】
吐出周期信号生成部9014は、エンコーダセンサ109の出力信号と、PC903から受信した画像データの解像度を示す情報とに基づき、液体の吐出周期信号を生成する。吐出周期信号には、例えばキャリッジ71が1回のX軸方向への移動で描画する単位毎(スキャン毎)の周期パルスが含まれる。
【0092】
エンコーダセンサ109は、例えば、液体吐出装置100のX軸レール101に沿って設置されたリニアエンコーダのスリットを光学的に検出して出力信号を発生する。なお、エンコーダセンサ109は、少なくともキャリッジ71のX方向の位置を検知できる構成であればよく、リニアエンコーダ方式に限るものではない。例えばエンコーダセンサ109は、X方向駆動アクチュエータ72の一例であるモータの回転をカウントするロータリーエンコーダ方式であってもよい。
【0093】
キャリッジ制御部9015は、エンコーダセンサ109の出力信号に基づきキャリッジ71の位置または速度等を算出して、X方向駆動アクチュエータ72の速度を制御する。
【0094】
以上のようにコントローラ901は、システム制御部9011、画像データ格納部9012、メモリ制御部9013、吐出周期信号生成部9014、およびキャリッジ制御部9015等を備える。
【0095】
コントローラ901は、プロセッサ等の演算処理装置およびメモリ等の記憶装置を有し、記憶装置内に事前に記録されているプログラムを演算処理装置が実行することで、これら各機能部を実現する。
【0096】
ヘッド駆動制御部902は、駆動制御装置40の一例であり、液体吐出ヘッド10の駆動を制御する。なお、駆動制御装置40は、コントローラ901およびヘッド駆動制御部902を含んで構成されてもよい。
【0097】
ヘッド駆動制御部902は、図3で示したように、駆動波形発生回路41と、増幅回路42と、を備える。駆動波形発生回路41は、駆動波形データ格納部9021と、駆動波形生成部9022と、を備える。増幅回路42は、電圧増幅部9024と、電流増幅部9025と、を備える。
【0098】
駆動波形データ格納部9021は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを備え、液体吐出ヘッド10を駆動するための駆動波形データを格納する。駆動波形データには、アクチュエータ18に印加される電圧を示すデータが含まれる。
【0099】
アクチュエータ18に印加される電圧には、弁体17がノズル板15を最も大きな圧力で押し込んでノズル14を閉鎖する閉鎖電圧と、弁体17がノズル板15から最も離間してノズル14を開放するように開放電圧と、が含まれる。
【0100】
駆動波形生成部9022は、例えばマイクロコンピュータを主体に構成される。マイクロコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、およびD/Aコンバータ等を備える。マイクロコンピュータは、ROM等に記憶されているプログラムをRAMにロードし、プログラムをCPUで実行させることにより、各種制御を実行する。
【0101】
マイクロコンピュータは、例えばPWM方式等により、アクチュエータ18に印加される電圧を示す駆動パルス波形を生成する。なお、駆動波形生成部9022は、FPGA(Field Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を用いて駆動パルス波形を生成してもよい。
【0102】
駆動波形生成部9022は、駆動パルス波形を生成することでアクチュエータ18に印加する電圧を制御する。PWM方式の場合、駆動波形生成部9022は、駆動パルスのデューティ比を変更することにより、アクチュエータ18に印加する電圧を調節する。
【0103】
駆動波形生成部9022は、コントローラ901からの画像データと、駆動波形データ格納部9021から読み出した駆動波形データと、に基づき、吐出周期信号生成部9014からの吐出周期信号を契機として駆動パルス波形を生成する。
【0104】
例えば、駆動波形生成部9022は、次の吐出周期で液体の吐出を行う画像データを特定し、特定した画像データに含まれる画素毎の各色の濃度に応じた液滴サイズに対応する駆動パルス波形を生成する。
【0105】
また駆動波形生成部9022は、ノズル板15に対する弁体17の過剰な押し込み、または、チャンネル間の弁体17の押し込み量のばらつきを抑制するため、アクチュエータ18に印加する閉鎖電圧Vcをチャンネル毎に設定した駆動パルス波形を生成する。
【0106】
また駆動波形生成部9022は、チャンネル間の吐出量のばらつきを抑制するため、アクチュエータ18に印加する開放電圧Veをチャンネル毎に設定した駆動パルス波形を生成する。
【0107】
駆動波形生成部9022は、生成した駆動パルス波形を電圧増幅部9024に出力する。電圧増幅部9024は、例えばオペアンプを主体に構成される。電圧増幅部9024は、駆動波形の電圧を増幅して電流増幅部9025に出力する。
【0108】
電流増幅部9025は、例えばトランジスタ増幅回路を主体に構成される。電流増幅部9025は、電圧増幅部9024で増幅された駆動波形に基づいて電流を増幅し、アクチュエータ18に所望の電圧を印加する。
【0109】
以上のようにヘッド駆動制御部902は、駆動波形データ格納部9021、駆動波形生成部9022、電圧増幅部9024、および電流増幅部9025等を備える。ヘッド駆動制御部902で生成された駆動波形により、アクチュエータ18の駆動がチャンネル毎に制御される。なお、ヘッド駆動制御部902は、DC-DCコンバータ(直流-直流変換器)を主体に構成されてもよい。
【実施例0110】
以下、実施例により本発明の技術をさらに具体的に説明するが、本発明の技術は次の実施例により限定されるものではない。
【0111】
(実施例1-2)
実施例1-2は、閉鎖電圧Vcから開放電圧Veへ移行する閾値電圧Vthに基づいて閉鎖電圧Vcを設定することにより、ノズル板15への弁体17の過剰な押し込みを抑制すると共に、チャンネル間の弁体17の押し込み量のばらつきを抑制する。
【0112】
まず、電圧昇圧により弁体17がノズル14を開放する実施例1について説明する。
【0113】
実施例1では、アクチュエータ18として、電圧印加により収縮するタイプの圧電素子を用いた。弁体17の直径を700μmとし、弾性部材17aの材料にはPTFEを用いた。ノズル板15の厚さは0.5mmであり、ノズル14の径を100μmとした。
【0114】
弁体17を位置決めした後、液体吐出ヘッド10の複数のノズル14のそれぞれに対応するアクチュエータ18の閾値電圧Vthを計測した。閾値電圧Vthの計測は、液体25に替えて圧縮空気を液体吐出ヘッド10に供給し、圧縮空気の流量を計測することで行った。圧縮空気を用いて計測することで、ノズル14が閉鎖した状態から開放する状態に推移した状態を感度良く計測することができる。なお、閾値電圧Vthの計測は、液体25を液体吐出ヘッド10から吐出させ、液体25の流量を計測することでも計測可能である。
【0115】
閾値電圧Vthの計測の条件を以下に説明する。圧力が0.45MPaの圧縮空気をコンプレッサ35からタンク31へ圧送することで圧縮空気を液体吐出ヘッド10へ供給した。そして駆動制御装置40にて、各チャンネルの駆動波形として、図9A(a)に示す測定電圧Vth0が時間に応じてステップ状に上昇する駆動波形を生成した。ここで、測定電圧Vth0は、閾値電圧Vthの計測のために可変であり、0Vから72Vの範囲においてΔV=1Vの単位で調整可能な電圧である。図9A(a)に示す通り、測定電圧Vth0は、測定電圧の最大値である72Vまで、3秒ごとにΔV=1Vずつ昇圧する。
【0116】
駆動波形としての矩形波の測定電圧Vth0を0Vから72Vまで昇圧速度1V/3sにて第1チャンネルch1および第2チャンネルch2の各々に印加し、各チャンネルの単位時間当たりの圧縮空気の流量を測定し、図9B(a)に示す流量曲線を取得した。ここで、圧縮空気の流量は供給ポート12に流量計を配置して計測しても良く、ノズル14に流量系を取り付けて計測しても良い。
【0117】
図9B(a)は実施例1に係る各チャンネルの測定電圧Vth0と流量の関係を示している。閾値電圧Vthは、測定電圧Vth0を0Vから上昇させた際に、流量が増加し始める直前の測定電圧として求めることができる。本実施例では、流量測定の最小単位を1ml/minとしているので、閾値電圧Vthは、流量を0mlに維持できる最大の測定電圧である。なお、流量の最小単位を1ml/minとし、電圧の最小単位を1Vとしたが、最小単位はこれに限定されない。
【0118】
図9B(a)に示す第1チャンネルch1の流量は、測定電圧が0~30Vの範囲で0ml/minであり、31V以上で流量が0ml/minを超える。従って、第1チャネルch1の閾値電圧Vth1は、30Vである。同様に、第2チャンネルch2の流量は、測定電圧が0~18Vの範囲で0ml/minであり、19V以上で流量が0ml/minを超える。従って、第2チャネルch2の閾値電圧Vth2は、18Vである。従って、各チャンネルにおけるノズル14の閉鎖状態から開放状態に移行する閾値電圧Vthは、第1チャンネルch1の閾値電圧Vth1が30Vであり、第2チャンネルch2の閾値電圧Vth2が18Vであった。
【0119】
・閾値電圧Vth1=30V
・閾値電圧Vth2=18V
【0120】
第1チャンネルch1の閾値電圧Vth1と第2チャンネルch2の閾値電圧Vth2との大小関係はVth1>Vth2である。そこで、第1チャンネルch1の閉鎖電圧Vc1と第2チャンネルch2の閉鎖電圧Vc2との大小関係もVc1>Vc2となるように設定した。具体的には、各チャンネルch1,ch2ともに閉鎖電圧Vcを閾値電圧Vth-12Vに設定した。
【0121】
すなわち、表1に示すように、閾値電圧Vthの高い第1チャンネルch1に対応する閉鎖電圧Vc1が、第1チャンネルch1よりも閾値電圧Vthの低い第2チャンネルch2に対応する閉鎖電圧Vc2と比べて高くなるように、各閉鎖電圧Vc1,Vc2を設定した。
【0122】
【表1】
【0123】
つまり閾値電圧Vthの高い第1チャンネルch1に対応する閉鎖電圧Vc1と閾値電圧Vth1との差(12V)を、閾値電圧Vthの低い第2チャンネルch2に対応する閉鎖電圧Vc2と閾値電圧Vth2との差と略同じに設定した。なお、閉鎖電圧Vcと閾値電圧Vthの差は略同じであればよく、例えば閾値電圧Vthの測定電圧の最小単位以内(所定の値以下とする一例)とすることができる。又は、駆動制御装置40が設定できる閉鎖電圧Vc,開放電圧Veの最小単位以内(所定の値以内とする例)とすることができる。本実施例では、測定電圧、閉鎖電圧Vcおよび開放電圧Veの最小単位が1Vであるため、±0.5Vの範囲であれば同一とみなすことができる。
【0124】
すなわち、(Vth1-Vc1)と(Vth2-Vc2)との差が、1V以下であれば、同一とみなすことができる。また、閾値電圧Vthに測定誤差がある場合は、各チャンネルの閉鎖電圧Vcと閾値電圧Vthの差が、Vthの測定誤差以内であれば略同一とみなすことができる。すなわち、(Vth1-Vc1)と(Vth2-Vc2)との差が、Vthの測定誤差以内、例えばVthの測定値の標準偏差の6倍以内(±3σの範囲)を略同一とすることができる。
【0125】
各チャンネルch1,ch2の閉鎖電圧Vcと閾値電圧Vthとの差(12V)は、概ね同じであればよいが、同じであることが好ましい。各チャンネルch1,ch2の閉鎖電圧Vcと閾値電圧Vthとの差(12V)を同じにすることにより、弁体17の押し込み量のばらつきを精度良く抑制することが可能である。
【0126】
各チャンネルch1,ch2において、閉鎖電圧Vc1、Vc2をそれぞれ閾値電圧Vth1以下,Vth2以下とすることでノズル14を封止できていることを確認した。第1チャンネルch1の閉鎖電圧Vc1を18Vに設定し、第2チャンネルch2の閉鎖電圧Vc2を6Vに設定することでノズル板15への弁体17の過剰な押し込みを抑制することができた。
【0127】
また、弁体17の押し込み量と比例する閉鎖可能な電圧範囲(=閾値電圧Vth-閉鎖電圧Vc)を第1チャンネルch1,第2チャンネルch2ともにΔ12Vとすることができた。従って、初期電圧の閉鎖可能な電圧範囲(第1チャンネルch1:Δ30V、第2チャンネルch2:Δ18V)と比べて弁体17の押し込み量のばらつきを低減させることができた。
【0128】
つまり弁体17の耐久性のばらつきを抑制することができるので、メンテナンス頻度を低減させることが可能となった。
【0129】
また、各チャンネルch1,ch2ともに閉鎖電圧Vcからの印加電圧が13Vの際に吐出開始(開放状態)となり、チャンネルch1,ch2間の吐出開始のばらつきも抑制することができた。
【0130】
なお、本実施例では、第1チャネルch1と第2チャネルch2の2個のチャネルを調整する例を示したが、調整するチャネル数は3個以上であってもよい。例えば、図1および図2に示す液体吐出ヘッド10は、8個のチャネルを有するので、8個のチャネルそれぞれについて閾値電圧Vthを計測し、閉鎖電圧Vcを設定しても良い。
【0131】
また、閾値電圧Vthは、圧縮空気を液体吐出ヘッド10の供給ポート12に供給することで計測する例を示したが、測定に用いる流体は圧縮空気に限定されない。例えば、液体吐出ヘッド10が吐出する液体(例えばインクや塗料)を用いて、閾値電圧Vthを計測しても良い。
【0132】
次に、電圧降圧により弁体17がノズル14を開放する実施例2について説明する。
【0133】
実施例2では、アクチュエータ18として、電圧印加により伸張するタイプの圧電素子を用いた。弁体17の直径を700μmとし、弾性部材17aの材料にはPTFEを用いた。ノズル板15の厚さは0.5mmであり、ノズル14の径を100μmとした。
【0134】
弁体17を位置決めした後、液体吐出ヘッド10の複数のノズル14のそれぞれに対応するアクチュエータ18の閾値電圧Vthを計測した。閾値電圧Vthの計測は、液体25に替えて圧縮空気を液体吐出ヘッド10に供給し、圧縮空気の流量を計測することで行った。圧縮空気を用いて計測することで、ノズル14が閉鎖した状態から開放する状態に推移した状態を感度良く計測することができる。なお、閾値電圧Vthの計測は、液体25を液体吐出ヘッド10から吐出させ、液体25の流量を計測することでも計測可能である。
【0135】
閾値電圧Vthの計測の条件を以下に説明する。圧力が0.45MPaの圧縮空気をコンプレッサ35からタンク31へ供給することで圧縮空気を液体吐出ヘッド10へ供給した。そして駆動制御装置40にて、各チャンネルch1,ch2の駆動波形として、図9A(b)に示す測定電圧Vth0が時間に応じてステップ状に下降する駆動波形を生成した。ここで、測定電圧Vth0は、閾値電圧Vthの計測のために可変であり、0Vから72Vの範囲においてΔV=1Vの単位で調整可能な電圧である。図9A(b)に示す通り、測定電圧Vth0は、測定電圧の最大値である72Vから最小値の0Vまで、3秒ごとにΔV=1Vずつ降圧する。
【0136】
駆動波形としての矩形波の測定電圧Vth0を72Vから0Vまで降圧速度ΔV=1V/3sにて第1チャンネルch1および第2チャンネルch2の各々に印加し、各チャンネルの単位時間当たりの圧縮空気の流量を測定し、図9B(b)に示す流量曲線を得た。ここで、圧縮空気の流量は供給ポート12に流量計を配置して計測しても良く、ノズル14に流量系を取り付けて計測しても良い。
【0137】
図9B(b)は実施例2に係る各チャンネルの測定電圧Vth0と流量の関係を示している。閾値電圧Vthは、測定電圧Vth0を72Vから下降させた際に、流量が増加し始める直前の測定電圧として求めることができる。本実施例では、流量測定の最小単位を1ml/minとしているので、閾値電圧Vthは、流量を0mlに維持できる最小の測定電圧である。なお、流量の最小単位を1ml/minとし、電圧の最小単位を1Vとしたが、最小単位はこれに限定されない。
【0138】
図9B(b)に示す第1チャンネルch1の流量は、測定電圧が72~54Vの範囲で0ml/minであり、53V以下で流量が0ml/minを超える。従って、第1チャネルch1の閾値電圧Vth1は、54Vである。同様に、第2チャンネルch2の流量は、測定電圧が72~66Vの範囲で0ml/minであり、65V以下で流量が0ml/minを超える。従って、第2チャネルch2の閾値電圧Vth2は、66Vである。従って、各チャンネルにおけるノズル14の閉鎖状態から開放状態に移行する閾値電圧Vthは、第1チャンネルch1の閾値電圧Vth1が54Vであり、第2チャンネルch2の閾値電圧Vth2が66Vとなった。
【0139】
・閾値電圧Vth1=54V
・閾値電圧Vth2=66V
【0140】
第1チャンネルch1の閾値電圧Vth1と第2チャンネルch2の閾値電圧Vth2との大小関係はVth1<Vth2である。そこで、第1チャンネルch1の閉鎖電圧Vc1と第2チャンネルch2の閉鎖電圧Vc2との大小関係もVc1<Vc2となるように設定した。具体的には、各チャンネルch1,ch2ともに閉鎖電圧Vcを閾値電圧Vth+4Vに設定した。
【0141】
すなわち、表2に示すように、閾値電圧Vthの高い第2チャンネルch2に対応する閉鎖電圧Vc2が、第2チャンネルch2よりも閾値電圧Vthの低い第1チャンネルch1に対応する閉鎖電圧Vc1と比べて高くなるように、各閉鎖電圧Vc1,Vc2を設定した。
【0142】
【表2】
【0143】
つまり閾値電圧Vthの高い第2チャンネルch2に対応する閉鎖電圧Vc2と閾値電圧Vth2との差(4V)を、閾値電圧Vthの低い第1チャンネルch1に対応する閉鎖電圧Vc1と閾値電圧Vth1との差と略同じに設定した。なお、閉鎖電圧Vcと閾値電圧Vthの差は略同じであればよく、例えば閾値電圧Vthの測定電圧の最小単位以内(所定の値以下とする一例)とすることができる。又は、駆動制御装置40が設定できる閉鎖電圧Vc,開放電圧Veの最小単位以内(所定の値以内とする例)とすることができる。本実施例では、測定電圧、閉鎖電圧Vcおよび開放電圧Veの最小単位が1Vであるため、±0.5Vの範囲であれば同一とみなすことができる。
【0144】
すなわち、(Vth1-Vc1)と(Vth2-Vc2)との差が、1V以下であれば、同一とみなすことができる。また、閾値電圧Vthに測定誤差がある場合は、各チャンネルの閉鎖電圧Vcと閾値電圧Vthの差が、Vthの測定誤差以内であれば略同一とみなすことができる。すなわち、(Vth1-Vc1)と(Vth2-Vc2)との差が、Vthの測定誤差以内、例えばVthの測定値の標準偏差の6倍以内(±3σの範囲)を略同一とすることができる。
【0145】
各チャンネルch1,ch2の閉鎖電圧Vcと閾値電圧Vthとの差(4V)は、概ね同じであればよいが、同じであることが好ましい。各チャンネルch1,ch2の閉鎖電圧Vcと閾値電圧Vthとの差(4V)を同じにすることにより、弁体17の押し込み量のばらつきを精度良く抑制することが可能である。
【0146】
各チャンネルch1,ch2において、閉鎖電圧Vc1,Vc2をそれぞれ閾値電圧Vth1以上,Vth2以上とすることでノズル14を封止できていることを確認した。第1チャンネルch1の閉鎖電圧Vc1を58Vに設定し、第2チャンネルch2の閉鎖電圧Vc2を70Vに設定することでノズル板15への弁体17の過剰な押し込み量を低減することができた。
【0147】
また、弁体17の押し込み量と比例する閉鎖可能な電圧範囲(=閾値電圧Vth-閉鎖電圧Vc)を第1チャンネルch1,第2チャンネルch2ともにΔ4Vとすることができた。従って、初期電圧の印加前の閉鎖可能な電圧範囲(第1チャンネルch1:Δ18V、第2チャンネルch2:Δ6V)と比べて弁体17の押し込み量のばらつきを低減させることができた。
【0148】
つまり弁体17の耐久性のばらつきを抑制することができるので、メンテナンス頻度を低減させることが可能となった。
【0149】
また、各チャンネルch1,ch2ともに閉鎖電圧からの印加電圧が-5Vの際に吐出開始(開放状態)となり、チャンネルch1,ch2間の吐出開始のばらつきも抑制することができた。
【0150】
なお、本実施例では、第1チャネルch1と第2チャネルch2の2個のチャネルを調整する例を示したが、調整するチャネル数は3個以上であってもよい。例えば、図1および図2に示す液体吐出ヘッド10は、8個のチャネルを有するので、8個のチャネルそれぞれについて閾値電圧Vthを計測し、閉鎖電圧Vcを設定しても良い。
【0151】
また、閾値電圧Vthは、圧縮空気を液体吐出ヘッド10の供給ポート12に供給することで計測する例を示したが、測定に用いる流体は圧縮空気に限定されない。例えば、液体吐出ヘッド10が吐出する液体(例えばインクや塗料)を用いて、閾値電圧Vthを計測しても良い。
【0152】
(実施例3-4)
実施例3-4は、閉鎖電圧Vcから開放電圧Veへ移行する閾値電圧Vthに基づいて開放電圧Veを設定することにより、チャンネル間の吐出量のばらつきを抑制する。
【0153】
まず、電圧昇圧により弁体17がノズル14を開放する実施例3について説明する。
【0154】
実施例3は、実施例1と同じ条件である。初期電圧の範囲は、実施例1により閉鎖電圧Vcを設定したものとし、第1チャンネルch1の電圧範囲を18V-72Vとし、第2チャンネルch2の電圧範囲を6V-72Vとした。図9B(a)の流量曲線から、各チャンネルch1,ch2における閾値電圧Vthは、次の通りとなった。
【0155】
・閾値電圧Vth1=30V
・閾値電圧Vth2=18V
【0156】
第1チャンネルch1の開放電圧Ve1と第2チャンネルch2の開放電圧Ve2の大小関係を、第1チャンネルch1の閾値電圧Vth1と第2チャンネルch2の閾値電圧Vth2の大小関係と同じになるように設定した。具体的には、第2チャンネルch2の開放電圧Ve2を60Vに設定した。
【0157】
・開放電圧Ve1=72V
・開放電圧Ve2=60V
【0158】
すなわち表3に示すように、閾値電圧Vthの高い第1チャンネルch1に対応する開放電圧Ve1が第1チャンネルch1よりも閾値電圧Vthの低い第2チャンネルch2に対応する開放電圧Ve2と比べて高くなるように第2チャンネルch2の開放電圧Ve2を設定した。
【0159】
【表3】
【0160】
つまり閾値電圧Vthの高い第1チャンネルch1に対応する開放電圧Ve1と閾値電圧Vth1との差(42V)を、閾値電圧Vthの低い第2チャンネルch2に対応する開放電圧Ve2と閾値電圧Vth2との差と略同じに設定した。なお、開放電圧Veと閾値電圧Vthの差は略同じであればよく、例えば閾値電圧Vthの測定電圧の最小単位以内(所定の値以下とする一例)とすることができる。又は、駆動制御装置40が設定できる閉鎖電圧Vc,開放電圧Veの最小単位以内(所定の値以内とする例)とすることができる。本実施形態では、測定電圧,閉鎖電圧Vcおよび開放電圧Veの最小単位が1Vであるため、±0.5Vの範囲であれば同一とみなすことができる。
【0161】
すなわち、(Ve1-Vth1)と(Ve2-Vth2)との差が、1V以下であれば、同一とみなすことができる。また、閾値電圧Vthに測定誤差がある場合は、各チャンネルの閉鎖電圧Vcと閾値電圧Vthの差が、Vthの測定誤差以内であれば略同一とみなすことができる。すなわち、(Ve1-Vth1)と(Ve2-Vth2)との差が、Vthの測定誤差以内、例えばVthの測定値の標準偏差の6倍以内(±3σの範囲)を略同一とすることができる。
【0162】
各チャンネルch1,ch2の開放電圧Veと閾値電圧Vthとの差(42V)は、概ね同じであればよいが、同じであることが好ましい。各チャンネルch1,ch2の開放電圧Veと閾値電圧Vthとの差(42V)を同じにすることにより、チャンネルch1,ch2間の吐出量のばらつきを精度良く抑制することが可能である。
【0163】
以上により、各チャンネルch1,ch2の電圧範囲(閉鎖電圧Vcと開放電圧Veとの差)をΔ54Vという等しい範囲に揃えることができ、吐出量のばらつきを抑制することができた。
【0164】
次に、電圧降圧により弁体17がノズル14を開放する実施例4について説明する。
【0165】
実施例4は、実施例2と同じ条件である。初期電圧の範囲は、実施例2により閉鎖電圧Vcを設定したものとし、第1チャンネルch1の電圧範囲を58V-0Vとし、第2チャンネルch2の電圧範囲を70V-0Vとした。図9B(b)の流量曲線から、各チャンネルにおける閾値電圧Vthは、次の通りとなった。
【0166】
・閾値電圧Vth1=54V
・閾値電圧Vth2=66V
【0167】
第1チャンネルch1の開放電圧Ve1と第2チャンネルch2の開放電圧Ve2との大小関係を、第1チャンネルch1の閾値電圧Vth1と第2チャンネルch2の閾値電圧Vth2の大小関係と同じになるように設定した。具体的には、第2チャンネルch2の開放電圧Veを12Vに設定した。
【0168】
・開放電圧Ve1=0V
・開放電圧Ve2=12V
【0169】
すなわち表4に示すように、閾値電圧Vthの高い第2チャンネルch2に対応する開放電圧Ve2が第2チャンネルch2よりも閾値電圧Vthの低い第1チャンネルch1に対応する開放電圧Ve1と比べて高くなるように第2チャンネルch2の開放電圧Ve2を設定した。
【0170】
【表4】
【0171】
つまり閾値電圧Vthの高い第2チャンネルch2に対応する開放電圧Ve2と閾値電圧Vth2との差(54V)を、閾値電圧Vthの低い第1チャンネルch1に対応する開放電圧Ve1と閾値電圧Vth1との差と略同じに設定した。なお、開放電圧Veと閾値電圧Vthの差は略同じであればよく、例えば閾値電圧Vthの測定電圧の最小単位以内(所定の値以下とする一例)とすることができる。又は、駆動制御装置40が設定できる閉鎖電圧Vc,開放電圧Veの最小単位以内(所定の値以内とする例)とすることができる。本実施例では、測定電圧、閉鎖電圧Vcおよび開放電圧Veの最小単位が1Vであるため、±0.5Vの範囲であれば同一とみなすことができる。
【0172】
すなわち、(Ve1-Vth1)と(Ve2-Vth2)との差が、1V以下であれば、同一とみなすことができる。また、閾値電圧Vthに測定誤差がある場合は、各チャンネルの閉鎖電圧Vcと閾値電圧Vthの差が、Vthの測定誤差以内であれば略同一とみなすことができる。すなわち、(Ve1-Vth1)と(Ve2-Vth2)との差が、Vthの測定誤差以内、例えばVthの測定値の標準偏差の6倍以内(±3σの範囲)を略同一とすることができる。
【0173】
各チャンネルch1,ch2の開放電圧Veと閾値電圧Vthとの差(54V)は、概ね同じであればよいが、同じであることが好ましい。各チャンネルch1,ch2の開放電圧Veと閾値電圧Vthとの差(54V)を同じにすることにより、チャンネルch1,ch2間の吐出量のばらつきを精度良く抑制することが可能である。
【0174】
以上により、各チャンネルch1,ch2の電圧範囲(閉鎖電圧Vcと開放電圧Veとの差)をΔ58Vという等しい範囲に揃えることができ、吐出量のばらつきを低減することができた。
【0175】
(実施例5-6)
実施例5-6は、測定電圧の電圧変化量に対する流量変化量が最大を示す中間電圧Vhalfに基づいて閉鎖電圧Vcを設定することにより、チャンネル間の1回の吐出量のばらつきを抑制する。
【0176】
また、実施例5-6は、ノズル板15への弁体17の過剰な押し込みを低減させると共に、チャンネル間の弁体17の押し込み量のばらつきを抑制する。
【0177】
まず、電圧昇圧により弁体17がノズル14を開放する実施例5について説明する。
【0178】
実施例5は、実施例1と同じ条件である。図9B(a)の流量曲線から、各チャンネルの中間電圧Vhalfは、次の通りとなった。
【0179】
・中間電圧Vhalf1=40V
・中間電圧Vhalf2=28V
【0180】
各チャンネルの電圧変化量に対する流量変化量は、図9B(a)の測定電圧に対する流量のグラフにおける傾きを算出することで求めることができる。本実施例では、図9B(a)の測定データから、測定電圧が異なる隣り合う3点の測定点の平均傾きを算出して、隣り合う3点の中央の測定電圧における流量変化量とした。図9C(a)は、実施例5に係る測定電圧に対する流量変化量(絶対値)を算出したグラフである。
【0181】
図9C(a)に示す流量変化量(絶対値)が最大となる測定電圧を、中間電圧Vhalfとした。図9B(a)および図9C(a)の第1チャンネルch1では、測定電圧40Vで流量変化量(絶対値)が最大となるため、中間電圧Vhalf1は40Vと求めることができる。同様に第2チャンネルch2では、測定電圧28Vで流量変化量(絶対値)が最大となるため、中間電圧Vhalf2は28Vと求めることができる。なお、測定電圧に対する流量の傾きの算出方法は、前述の算出方法に限定されない。隣り合う2点間の流量の差から傾きを算出しても良い。もしくは、測定点を任意の関数で近似し、関数の微分の絶対値が最大となる測定電圧を中間電圧Vhalfとして求めても良い。
【0182】
第1チャンネルch1の中間電圧Vhalf1と第2チャンネルch2の中間電圧Vhalf2との大小関係はVhalf1>Vhalf2である。そこで、第1チャンネルch1の閉鎖電圧Vc1と第2チャンネルch2の閉鎖電圧Vc2との大小関係もVc1>Vc2となるように設定した。具体的には、各チャンネルch1,ch2ともに閉鎖電圧Vcが中間電圧Vhalf-22Vとなるように設定した。
【0183】
すなわち表5に示すように、中間電圧Vhalfの高い第1チャンネルch1に対応する閉鎖電圧Vc1が、第2チャンネルch2よりも中間電圧Vhalfの低い第2チャンネルch2に対応する閉鎖電圧Vc2と比べて高くなるように、各閉鎖電圧Vc1,Vc2を設定した。
【0184】
【表5】
【0185】
つまり中間電圧Vhalfの高い第1チャンネルch1に対応する閉鎖電圧Vc1と中間電圧Vhalf1との差(22V)を、中間電圧Vhalfの低い第2チャンネルch2に対応する閉鎖電圧Vc2と中間電圧Vhalf2との差と略同じに設定した。なお、閉鎖電圧Vcと中間電圧Vhalfの差は略同じであればよく、例えば中間電圧Vhalfの測定電圧の最小単位以内(所定の値以下とする一例)とすることができる。又は、駆動制御装置40が設定できる閉鎖電圧Vc,開放電圧Veの最小単位以内(所定の値以内とする例)とすることができる。本実施例では、測定電圧、閉鎖電圧Vcおよび開放電圧Veの最小単位が1Vであるため、±0.5Vの範囲であれば同一とみなすことができる。
【0186】
すなわち、(Vhalf1-Vc1)と(Vhalf2-Vc2)との差が、1V以下であれば、同一とみなすことができる。また、閾値電圧Vhalfに測定誤差がある場合は、各チャンネルの閉鎖電圧Vcと中間電圧Vhalfの差が、Vhalfの測定誤差以内であれば略同一とみなすことができる。すなわち、(Vhalf1-Vc1)と(Vhalf2-Vc2)との差が、Vhalfの測定誤差以内、例えばVhalfの測定値の標準偏差の6倍以内(±3σの範囲)を略同一とすることができる。
【0187】
各チャンネルch1,ch2の閉鎖電圧Vcと中間電圧Vhalfとの差(22V)は、概ね同じであればよいが、同じであることが好ましい。各チャンネルch1,ch2の閉鎖電圧Vcと中間電圧Vhalfとの差(22V)を同じにすることにより、チャンネル間の1回の吐出量のばらつきを精度良く抑制することが可能である。
【0188】
各チャンネルch1,ch2において、中間電圧Vhalf1,Vhalf2に基づいて決定した閉鎖電圧Vc1,Vc2を印可することで、ノズル14を封止できていることを確認した。第1チャンネルch1の閉鎖電圧Vc1を18Vに設定し、第2チャンネルch2の閉鎖電圧Vc2を6Vに設定することでチャンネル間の1回の吐出量のばらつきを抑制することができた。
【0189】
ここで、実施例1,2との違いについて説明する。流量曲線におけるノズル14の閉鎖状態から開放状態へ移行する閾値電圧Vth、または、流量立ち上がりの傾きは弁体17の形状、傾き、または異物等の影響により若干影響を受ける場合がある。
【0190】
例えば、弁体17とノズル板15との平行度が悪い場合、流量曲線の立ち上がりが若干緩やかになる。そして閉鎖状態から開放状態へ移行する閾値電圧Vthが同じ場合、流量曲線の立ち上がりの傾きが緩やかなチャンネルは駆動1周期の中での弁体17の開度の時間積分値が小さくなるため、1回の吐出量が少なくなる。
【0191】
従って、各チャンネルの閉鎖状態と開放状態との境界となる閾値電圧Vthを用いて閉鎖電圧Vcを制御しようとすると1回の吐出量のばらつきが大きくなる可能性がある。
【0192】
対照的に、実施例5のように電圧変化量に対する流量変化量が最大を示す電圧Vhalfに基づいて閉鎖電圧Vcを制御すると、チャンネル間の1回の吐出量のばらつきの抑制効果が得られ易い。
【0193】
つまり、チャンネル間の1回の吐出量のばらつきを抑制することが可能となった。また、ノズル板15への弁体17の過剰な押し込みの低減により、弁体17の耐久性を向上させることができると共に、弁体17の押し込み量のばらつきの低減により、メンテナンス頻度を低減させることが可能となった。
【0194】
次に、電圧降圧により弁体17がノズル14を開放する実施例6について説明する。
【0195】
実施例6は、実施例2と同じ条件である。図9(b)の流量曲線から、各チャンネルの中間電圧Vhalfは、次の通りとなった。
【0196】
・中間電圧Vhalf1=43V
・中間電圧Vhalf2=55V
【0197】
各チャンネルの電圧変化量に対する流量変化量は、図9B(b)の測定電圧に対する流量のグラフにおける傾きを算出することで求めることができる。本実施例では、図9B(b)の測定データから、測定電圧が異なる隣り合う3点の測定点の平均傾きを算出して、隣り合う3点の中央の測定電圧における流量変化量とした。図9C(b)は、実施例6に係る測定電圧に対する流量変化量(絶対値)を算出したグラフである。
【0198】
図9C(b)に示す流量変化量(絶対値)が最大となる測定電圧を、中間電圧Vhalfとした。図9B(b)および図9C(b)の第1チャンネルch1では、測定電圧43Vで流量変化量(絶対値)が最大となるため、中間電圧Vhalf1は43Vと求めることができる。同様に第2チャンネルch2では、測定電圧55Vで流量変化量(絶対値)が最大となるため、中間電圧Vhalf2は55Vと求めることができる。なお、測定電圧に対する流量の傾きの算出方法は、前述の算出方法に限定されない。隣り合う2点間の流量の差から傾きを算出しても良い。もしくは、測定点を任意の関数で近似し、関数の微分の絶対値が最大となる測定電圧を中間電圧Vhalfとして求めても良い。
【0199】
第1チャンネルch1の中間電圧Vhalf1と第2チャンネルch2の中間電圧Vhalf2との大小関係はVhalf1<Vhalf2である。そこで、第1チャンネルch1の閉鎖電圧Vc1と第2チャンネルch2の閉鎖電圧Vc2との大小関係もVc1<Vc2となるように設定した。具体的には、各チャンネルch1,ch2ともに閉鎖電圧Vcを閾値電圧Vhalf+12Vに設定した。
【0200】
すなわち表6に示すように、中間電圧Vhalfの高い第2チャンネルch2に対応する閉鎖電圧Vc2が第2チャンネルch2よりも中間電圧Vhalfの低い第1チャンネルch1に対応する閉鎖電圧Vc1と比べて高くなるように各閉鎖電圧Vc1,Vc2を設定した。
【0201】
【表6】
【0202】
つまり中間電圧Vhalfの高い第2チャンネルch2に対応する閉鎖電圧Vc2と中間電圧Vhalf2との差(12V)を、中間電圧Vhalfの低い第1チャンネルch1に対応する閉鎖電圧Vc1と中間電圧Vhalf1との差と略同じに設定した。なお、閉鎖電圧Vcと中間電圧Vhalfの差は略同じであればよく、例えば中間電圧Vhalfの測定電圧の最小単位以内(所定の値以下とする一例)とすることができる。又は、駆動制御装置40が設定できる閉鎖電圧Vc,開放電圧Veの最小単位以内(所定の値以内とする例)とすることができる。本実施例では、測定電圧,閉鎖電圧Vcおよび開放電圧Veの最小単位が1Vであるため、±0.5Vの範囲であれば同一とみなすことができる。
【0203】
すなわち、(Ve1-Vhalf1)と(Ve2-Vhalf2)との差が、1V以下であれば、同一とみなすことができる。また、閾値電圧Vhalfに測定誤差がある場合は、各チャンネルの閉鎖電圧Vcと中間電圧Vhalfの差が、Vhalfの測定誤差以内であれば略同一とみなすことができる。すなわち、(Ve1-Vhalf1)と(Ve2-Vhalf2)との差が、Vhalfの測定誤差以内、例えばVhalfの測定値の標準偏差の6倍以内(±3σの範囲)を略同一とすることができる。
【0204】
各チャンネルch1,ch2の閉鎖電圧Vcと中間電圧Vhalfとの差(12V)は、概ね同じであればよいが、同じであることが好ましい。各チャンネルch1,ch2の閉鎖電圧Vcと中間電圧Vhalfとの差(12V)を同じにすることにより、チャンネル間の1回の吐出量のばらつきを精度良く抑制することが可能である。
【0205】
各チャンネルch1,ch2において、中間電圧Vhalf1,Vhalf2に基づいて決定した閉鎖電圧Vc1,Vc2を印可することで、ノズル14を封止できていることを確認した。第1チャンネルch1の閉鎖電圧Vc1を55Vに設定し、第2チャンネルch2の閉鎖電圧Vc2を67Vに設定することでチャンネル間の1回の吐出量のばらつきを抑制することができた。
【0206】
また、電圧変化量に対する流量変化量が最大を示す電圧Vhalfに基づいて閉鎖電圧Vcを制御することにより、チャンネル間の吐出量のばらつきの抑制効果が得られ易い。これにより、ノズル板15への弁体17の過剰な押し込みの低減による弁体17の耐久性の向上と、弁体17の押し込み量のばらつきの低減によるメンテナンス頻度の低減と、に加えて、さらにチャンネル間の吐出量のばらつきを抑制することが可能となった。
【0207】
また、ノズル板15への弁体17の過剰な押し込みの低減により、弁体17の耐久性を向上させることができると共に、弁体17の押し込み量のばらつきの低減により、メンテナンス頻度を低減させることが可能となった。
【0208】
(実施例7-8)
実施例7-8は、電圧変化量に対する流量変化量が最大を示す中間電圧Vhalfに基づいて開放電圧Veを設定することにより、チャンネル間の1回の吐出量のばらつきを抑制する。
【0209】
まず、電圧昇圧により弁体17がノズル14を開放する実施例7について説明する。
【0210】
実施例7は、実施例5と同じ条件である。初期電圧の範囲は、実施例5により閉鎖電圧Vcを設定したものとし、第1チャンネルch1の電圧範囲を18V-72Vとし、第2チャンネルch2の電圧範囲を6V-72Vとした。図9B(a)の流量曲線および図9C(a)の流量変化量の曲線から、各チャンネルの中間電圧Vhalfは、次の通りとなった。
【0211】
・中間電圧Vhalf1=40V
・中間電圧Vhalf2=28V
【0212】
第1チャンネルch1の開放電圧Ve1と第2チャンネルch2の開放電圧Ve2の大小関係を、第1チャンネルch1の中間電圧Vhalf1と第2チャンネルch2の中間電圧Vhalf2の大小関係と同じになるように設定した。具体的には、第2チャンネルch2の開放電圧Ve2を60Vに設定した。
【0213】
・開放電圧Ve1=72V
・開放電圧Ve2=60V
【0214】
つまり表7に示すように、中間電圧Vhalfの高い第1チャンネルch1に対応する開放電圧Ve1が第1チャンネルch1よりも中間電圧Vhalfの低い第2チャンネルch2に対応する開放電圧Ve2と比べて高くなるよう第2チャンネルch2の開放電圧Ve2を設定した。
【0215】
【表7】
【0216】
すなわち中間電圧Vhalfの高い第1チャンネルch1に対応する開放電圧Ve1と中間電圧Vhalf1との差(32V)を、中間電圧Vhalfの低い第2チャンネルch2に対応する開放電圧Ve2と中間電圧Vhalf2との差と略同じに設定した。なお、閉鎖電圧Veと中間電圧Vhalfの差は略同じであればよく、例えば中間電圧Vhalfの測定電圧の最小単位以内(所定の値以下とする一例)とすることができる。又は、駆動制御装置40が設定できる閉鎖電圧Vc,開放電圧Veの最小単位以内(所定の値以内とする例)とすることができる。本実施例では、測定電圧、閉鎖電圧Vcおよび開放電圧Veの最小単位が1Vであるため、±0.5Vの範囲であれば同一とみなすことができる。
【0217】
すなわち、(Vhalf1-Vc1)と(Vhalf2-Vc2)との差が、1V以下であれば、同一とみなすことができる。また、閾値電圧Vhalfに測定誤差がある場合は、各チャンネルの閉鎖電圧Vcと中間電圧Vhalfの差が、Vhalfの測定誤差以内であれば略同一とみなすことができる。すなわち、(Vhalf1-Vc1)と(Vhalf2-Vc2)との差が、Vhalfの測定誤差以内、例えばVhalfの測定値の標準偏差の6倍以内(±3σの範囲)を略同一とすることができる。
【0218】
各チャンネルch1,ch2の開放電圧Veと中間電圧Vhalfとの差(32V)は、概ね同じであればよいが、同じであることが好ましい。各チャンネルch1,ch2の開放電圧Veと中間電圧Vhalfとの差(32V)を同じにすることにより、チャンネルch1,ch2間の吐出量のばらつきを精度良く抑制することが可能である。
【0219】
以上により、各チャンネルch1,ch2の電圧範囲(閉鎖電圧Vcと開放電圧Veとの差)をΔ54Vという等しい範囲に揃えることができ、吐出量のばらつきを抑制することができた。
【0220】
次に、電圧降圧により弁体17がノズル14を開放する実施例8について説明する。
【0221】
実施例8は、実施例6と同じ条件である。初期電圧の範囲は、実施例6により閉鎖電圧Vcを設定したものとし、第1チャンネルch1の電圧範囲を58V-0Vとし、第2チャンネルch2の電圧範囲を70V-0Vとした。図9B(b)の流量曲線および図9C(b)の流量変化量の曲線から、各チャンネルの中間電圧Vhalfは、次の通りとなった。
【0222】
・中間電圧Vhalf1=43V
・中間電圧Vhalf2=55V
【0223】
第1チャンネルch1の開放電圧Ve1と第2チャンネルch2の開放電圧Ve2との大小関係を、第1チャンネルch1の中間電圧Vhalf1と第2チャンネルch2の中間電圧Vhalf2の大小関係と同じになるように設定した。具体的には、第2チャンネルch2の開放電圧Ve2を12Vに設定した。
【0224】
・開放電圧Ve1=0V
・開放電圧Ve2=12V
【0225】
つまり表8に示すように、中間電圧Vhalfの高い第2チャンネルch2に対応する開放電圧Ve2が第2チャンネルch2よりも中間電圧Vhalfの低い第1チャンネルch1に対応する開放電圧Ve2と比べて高くなるよう第2チャンネルch2の開放電圧Ve2を設定した。
【0226】
【表8】
【0227】
つまり中間電圧Vhalfの高い第2チャンネルch2に対応する開放電圧Ve2と中間電圧Vhalf2との差(43V)を、中間電圧Vhalfの低い第1チャンネルch1に対応する開放電圧Ve1と中間電圧Vhalf1との差と略同じに設定した。なお、閉鎖電圧Veと中間電圧Vhalfの差は略同じであればよく、例えば中間電圧Vhalfの測定電圧の最小単位以内(所定の値以下とする一例)とすることができる。又は、駆動制御装置40が設定できる閉鎖電圧Vc,開放電圧Veの最小単位以内(所定の値以内とする例)とすることができる。本実施例では、測定電圧,閉鎖電圧Vcおよび開放電圧Veの最小単位が1Vであるため、±0.5Vの範囲であれば同一とみなすことができる。
【0228】
すなわち、(Ve1-Vhalf1)と(Ve2-Vhalf2)との差が、1V以下であれば、同一とみなすことができる。また、閾値電圧Vhalfに測定誤差がある場合は、各チャンネルの閉鎖電圧Veと中間電圧Vhalfの差が、Vhalfの測定誤差以内であれば略同一とみなすことができる。すなわち、(Vhalf1-Vc1)と(Vhalf2-Vc2)との差が、Vhalfの測定誤差以内、例えばVhalfの測定値の標準偏差の6倍以内(±3σの範囲)を略同一とすることができる。
【0229】
各チャンネルch1,ch2の開放電圧Veと中間電圧Vhalfとの差(43V)は、概ね同じであればよいが、同じであることが好ましい。各チャンネルch1,ch2の開放電圧Veと中間電圧Vhalfとの差(43V)を同じにすることにより、チャンネルch1,ch2間の吐出量のばらつきを精度良く抑制することが可能である。
【0230】
以上により、各チャンネルch1,ch2の電圧範囲(閉鎖電圧Vcと開放電圧Veとの差)をΔ58Vという等しい範囲に揃えることができ、吐出量のばらつきを抑制することができた。
【0231】
(液体吐出システムの構成)
次に、流量解析フィードバックシステムについて説明する。図10Aは第1実施形態に係る液体吐出システム200の構成図である。液体吐出システム200は、各チャンネルの流量を測定して駆動制御装置40に解析した結果をフィードバックする流量解析フィードバックシステムである。
【0232】
解析した結果には、ノズル14が閉鎖状態から開放状態へ移行する閾値電圧Vth、または、電圧変化量に対する流量変化量が最大を示す中間電圧Vhalfが含まれる。
【0233】
液体吐出システム200は、駆動制御装置40および液体吐出ヘッド10により構成される液体吐出装置100に加えて、流量計43と、流量解析部44と、通信回路45と、を備える。
【0234】
流量計43には、超音波式、コリオリ式、および熱式等の測定方式の流量センサを用いることができる。流量計43は、各チャンネルch1,ch2のノズル14から吐出される液体の流量を測定する。流量計43は、第1流量計43aおよび第2流量計43bの総称である。
【0235】
第1流量計43aはチャンネルch1(第1ノズル14a)の流量を計測し、第2流量計43bはチャンネルch2(第2ノズル14b)の流量を計測する。流量計43は、計測した流量を流量解析部44に送信する。
【0236】
流量解析部44は、例えば、液体吐出装置100と通信可能なコンピュータ、または、コンピュータで読み取り可能なプログラムである。コンピュータとしては、例えば、PC、タブレット端末、およびクラウドサーバ等の流量解析装置が挙げられる。コンピュータには、CPU、ROM、RAM、HDD(Hard Disk Drive)および入出力回路等が設けられる。
【0237】
流量解析部44は、流量曲線を解析するプログラムとして構成されてもよい。
【0238】
駆動制御装置40は、図9A(a)または図9A(b)に示す駆動波形を、液体吐出ヘッド10のそれぞれのノズル14、例えば第1チャンネルch1と第2チャンネルch2のそれぞれに対応するアクチュエータ18に印可する。そして、液体吐出ヘッド10は第1チャンネルch1と第2チャンネルch2のそれぞれのノズル14から液体を吐出させる。アクチュエータ18に印可する矩形波の測定電圧は、図9A(a)または図9A(b)に示すように0Vから72Vの範囲を1V単位で設定し、0Vから72Vを1Vあたり3秒で変更する(液体を吐出するステップ)。
【0239】
流量解析部44は、各チャンネルch1,ch2のノズル14から吐出される液体の流量を流量計43から取得すると共に、アクチュエータ18に印加される測定電圧を液体吐出装置100から取得する。そして流量解析部44は、図9Bで示した流量曲線を取得し、流量とアクチュエータ18に印加される電圧との関係、例えば、閾値電圧Vthまたは中間電圧Vhalfを解析する。流量解析部44は、前述の実施例で説明したように、解析した閾値電圧Vthまたは中間電圧Vhalfに基づいて閉鎖電圧Vcおよび開放電圧Veの少なくとも一方を決定する。
【0240】
本実施形態の液体吐出システム200は、流量の解析に液体を用いることとする。本実施形態の液体吐出システム200の流量の解析は、前述の実施例1~8の圧縮空気を用いた計測と、解析のために用いる流体が液体である点で異なる。本実施形態の液体吐出システム200は、流量解析に液体を用いることで、流量の解析と液体の吐出(例えば被吐出物への印刷や塗布)とを容易に切り替えることができる。
【0241】
流量解析部44は、通信回路45を介して、解析した結果(すなわち、決定した閉鎖電圧Vcおよび開放電圧Veの少なくとも一方)を駆動制御装置40へフィードバックする。通信回路45には、例えば、有線または無線により通信可能な通信モジュールを用いることができる。
【0242】
なお、流量計43、流量解析部44、および通信回路45の機能は、液体吐出装置100の中に組み込まれてもよい。すなわち、流体解析フィードバックシステムは、液体吐出システム200として構成されるのではなく、液体吐出装置100として構成されてもよい。
【0243】
駆動制御装置40は、流量解析部44からフィードバックされた解析結果(例えば閾値電圧Vthまたは中間電圧Vhalf)に基づいて、実施例1~8において説明したように閉鎖電圧Vcまたは開放電圧Veを設定する。
【0244】
図10Bは、第1実施形態に係る液体吐出システムの動作を説明するフローチャートである。図10Bには、実施例1,3で説明した、閾値電圧Vthの測定結果に基づいて開放電圧Veおよび閉鎖電圧Vcをフィードバックする動作が示されている。
【0245】
流量解析部44は、測定対象のノズル、例えば第1チャンネルch1を選択する(ステップS011)。次に、流量解析部44は、駆動制御装置40に対し、選択したチャンネルの測定電圧Vthを0Vに設定する(ステップS021)。測定電圧Vth=0Vは、図9A(a)に示す駆動波形の初期電圧に対応する。
【0246】
流量解析部44は、駆動制御装置40に対し、測定電圧Vthを、選択したチャンネルのアクチュエータ18に印可するよう指令し、液体吐出ヘッド10の選択したチャンネルに対応するノズル14から液体を吐出させる(ステップS031)。
【0247】
流量解析部44は、流量計43に、選択したチャンネルに対応するノズル14から吐出される液体の流量を計測させ、計測した流量を測定電圧と対応付けて記憶する(ステップS041)。
【0248】
流量解析部44は、測定電圧Vth0が、図9A(a)の駆動波形の上限電圧である72V以上かを判断する(ステップS051)。測定電圧Vth0が72V未満である場合は(ステップS051のNo)、流量解析部44は、駆動制御装置40に対し、測定電圧Vth0を+1Vに設定し(ステップS111)、ステップS031からステップS041を測定電圧Vth0で実行する。
【0249】
測定電圧Vth0が72V以上である場合(ステップS051のYes)、流量解析部44は、ステップS041で記憶した流量および測定電圧を、実施例1に記載した解析方法に基づいて解析する。そして流量解析部44は、選択したチャンネルの閾値電圧Vthを算出する(ステップS061)。
【0250】
流量解析部44は、実施例1に記載の方法で、選択したチャンネルの閉鎖電圧Vcを閾値電圧Vth-12Vに設定し記憶する(ステップS071)。流量解析部44は、実施例3に記載の方法で、選択したチャンネルの開放電圧Veを閾値電圧Vth+42Vに設定し記憶する(ステップS071)。
【0251】
流量解析部44は、測定チャンネルが測定対象チャンネルの最後のチャンネルかを判断する(ステップS081)。すなわち、流量解析部44は、計測対象となるチャンネルが残っているかを判断することに対応する。測定対象チャンネルが、最後のチャンネルではない場合(ステップS081のNo)、流量解析部44は、次のチャンネルを選択する(ステップS121)。流量解析部44は、例えば第2チャンネルch2を選択し、ステップS021からの処理を選択したチャンネルに対して繰り返し実行する。
【0252】
測定チャンネルが最後のチャンネルの場合(ステップS081のYes)、流量解析部44は、ステップS071で設定し記憶した各チャンネルの開放電圧Veと閉鎖電圧Vcとを、駆動制御装置40にフィードバックする(ステップS091)。そして、流量解析部44は、流量解析の処理を終了する。
【0253】
駆動制御装置40は、各チャンネルに実施例1,3に記載の方法で最適に調整された開放電圧Veおよび閉鎖電圧Vcを設定することができる。
【0254】
なお、図10Bは、流量解析部44が実施例1,3に記載の方法で開放電圧Veおよび閉鎖電圧Vcを駆動制御装置にフィードバックする例を示したが、開放電圧Veまたは開放電圧Vcのいずれか一方のみをフィードバックしても良い。また、実施例5,7に記載の方法で、閾値電圧Vthの代わりに中間電圧Vhalfを用いて、開放電圧Veまたは閉鎖電圧Vcをフィードバックしてもよい。
【0255】
また、図10Bのフローでは、図9A(a)の駆動波形を用いる例を示したが、図9A(b)の駆動波形を用いて、実施例2,4,6,8に記載のいずれかの方法を用いて開放電圧Veまたは閉鎖電圧Vcをフィードバックするようにしてもよい。
【0256】
以上により、液体吐出ヘッド10(または液体吐出ユニット60)を液体吐出装置100から取り外すことなく、現場で流量曲線の取得による弁体17の状態の検査が可能となる。また、液体吐出装置100の駆動前に初期電圧等(例えば閉鎖電圧Vcまたは開放電圧Ve)の校正が可能となる。
【0257】
さらに流体解析フィードバックシステムを液体吐出装置100の中に組み込んだ場合、閉鎖電圧Vcまたは開放電圧Veの校正を定期的に自動実行することにより、液体吐出ヘッド10のメンテナンス頻度を従来と比べて格段に低減させることが可能となる。
【0258】
(作用効果)
以上の実施形態によれば、次のような作用効果が得られる。ノズル14が閉鎖状態から開放状態へ移行する閾値電圧Vthに基づいて閉鎖電圧Vcを設定することにより、ノズル板15への弁体17の過剰な押し込みを抑制し、弁体17の耐久性を向上させることができる。また、チャンネル間の弁体17の押し込み量のばらつきが抑制されるため、弁体17の耐久性のばらつきが低減し、メンテナンス頻度を低減させることができる。
【0259】
また、閾値電圧Vthに基づいて各チャンネルの開放電圧Veを設定することにより、チャンネル間の吐出量のばらつきを低減させることができる。
【0260】
さらに、電圧変化量に対する流量変化量が最大を示す中間電圧Vhalfに基づいて閉鎖電圧Vcを設定することにより、チャンネル間の1回の吐出量のばらつきをより精度よく低減させることができる。加えて、ノズル板15への弁体17の過剰な押し込みを抑制し、弁体17の耐久性を向上させることができる。また、チャンネル間の弁体17の押し込み量のばらつきが抑制されるため、弁体17の耐久性のばらつきが低減し、メンテナンス頻度を低減させることができる。
【0261】
また、中間電圧Vhalfに基づいて各チャンネルの開放電圧Veを設定することにより、チャンネル間の吐出量のばらつきを低減させることができる。
【0262】
<第2実施形態>
次に、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10および駆動制御装置40を用いた塗布装置1001について説明する。
【0263】
(塗装装置の構成)
図11は、塗布装置1001の構成の一例を示す図である。図12(a)は、塗布装置1001の対象物Sへの配置の第1例を示す図である。図12(b)は、塗布装置1001の対象物Sへの配置の第2例を示す図である。
【0264】
塗布装置1001は、液体吐出ヘッド10と、駆動制御装置40と、を備える。また、塗布装置1001は、図示省略するが、液体供給機構30を備える構成であってもよい。
【0265】
塗布装置1001は、液体吐出ヘッド10の近傍に配設された撮影手段としてのカメラ1004と、液体吐出ヘッド10およびカメラ1004をX方向およびY方向へ移動させるX-Yテーブル1003と、を備える。
【0266】
駆動制御装置40は、所定の制御プログラムに基づいて、X-Yテーブル1003を動作させると共に、液体吐出ヘッド10から液体を吐出させる。塗布装置1001は、液体吐出ヘッド10により吐出された液体を対象物Sに塗布することができる。
【0267】
液体吐出ヘッド10は、複数のノズルから対象物Sの被塗布面に向けて液体を吐出する。ノズルから吐出される液体はX-Y平面に対して略直交する方向に吐出される。複数のノズルの各々から吐出される液体の吐出方向は略平行である。ノズルと対象物Sの被塗布面との距離は、例えば20cm程度である。
【0268】
X-Yテーブル1003は、直線移動機構を備えて形成されたX軸1005と、X軸1005を2つのアームで保持しつつX軸1005をY方向へ移動するY軸1006と、有する。X軸1005のスライダには、液体吐出ヘッド10およびカメラ1004が取り付けられる。
【0269】
Y軸1006にはシャフト1007が設けられる。塗布装置1001はロボットアーム1008を備え、シャフト1007をロボットアーム1008に保持させることで、対象物Sに対して液体吐出ヘッド10を自由に配置できる。
【0270】
例えば、対象物Sが自動車である場合は、ロボットアーム1008が、図12(a)に示すように対象物Sの上部に配置したり、図12(b)に示すように対象物Sの横位置に配置したりすることができる。
【0271】
駆動制御装置40は、所定のプログラムに基づいて、ロボットアーム1008の動作を制御するが、他の制御装置がロボットアーム1008の制御を担当してもよい。
【0272】
カメラ1004は、液体吐出ヘッド10の近傍であるX軸1005のスライダに設けられており、X-Y方向に移動しながら対象物Sの被塗布面における所定範囲を一定の微小な間隔により撮影する。カメラ1004は例えばデジタルカメラである。
【0273】
カメラ1004においては、被塗布面の所定範囲を分割した複数の細分割画像の撮影が可能なレンズの仕様または解像度等の仕様が適宜選択される。カメラ1004による被塗布面の複数の細分割画像の撮影は、駆動制御装置40に予め設けられたプログラムに従って連続的且つ自動的に行われる。
【0274】
塗布装置1001は、カメラ1004で撮影した画像を編集するソフトウェアを備え、駆動制御装置40のコンピュータでソフトウェアを実行する。なお、ソフトウェアによる画像の編集は、他のコンピュータが担当してもよい。駆動制御装置40は、ソフトウェアで編集された画像に基づいて液体吐出ヘッド10に印加する電圧を制御する。
【0275】
塗布装置1001は、ロボットアーム1008および液体吐出ヘッド10を有することにより、対象物Sとノズルとの間の距離が長い場合等においても、対象物Sの所望の位置に高精度に液体を塗布することができる。
【0276】
駆動制御装置40は、液体吐出ヘッド10のチャンネル間の吐出量のばらつきを低減することが可能であるため、塗布装置1001は対象物Sに対して液体をムラなく均一に塗布することが可能である。
【0277】
また駆動制御装置40は、液体吐出ヘッド10のノズル板への弁体の過剰な押し込みを抑制するため、弁体の耐久性を向上させることができる。また駆動制御装置40は、チャンネル間の弁体の押し込み量のばらつきを抑制するため、弁体の耐久性のばらつきが抑制され、メンテナンス頻度を低減させることができる。従って、塗布装置1001のダウンタイムが削減され、対象物Sの生産性の向上に寄与することができる。
【0278】
<第3実施形態>
次に、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド10を用いた電極製造方法および電極製造装置について説明する。
【0279】
(電極の製造方法)
図13は、第3実施形態に係る電極製造方法および電極製造装置の模式図である。電極製造装置は、液体吐出ヘッド10を用いて液体組成物を吐出することで電極材料層を有する電極を製造する装置である。
【0280】
<電極材料層形成手段および電極材料層形成工程>
吐出手段としての液体吐出ヘッド10から液体を吐出することにより、対象物上に液体組成物を付与して、液体組成物層を形成することができる。対象物は、電極材料層を形成する対象であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。対象物としては、例えば、電極基体(集電体)、活物質層、または固体電極材料を有する層等が挙げられる。
【0281】
吐出手段及び吐出工程は、対象物に対して電極材料層を形成することが可能であれば、液体組成物を直接的に吐出することで電極材料層を形成する構成であってもよく、液体組成物を間接的に吐出することで電極材料層を形成する構成であってもよい。
【0282】
<他の構成および他の工程>
電極合材層の製造装置における他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱手段等が挙げられる。電極合材層の製造方法における他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱工程等が挙げられる。
【0283】
<加熱手段および加熱工程>
加熱手段は、吐出手段により吐出された液体組成物を加熱する手段である。加熱工程は、吐出工程で吐出された液体組成物を加熱する工程である。加熱により、液体組成物層を乾燥させることができる。
【0284】
ここで電極の製造方法の一例として、電極基体(集電体)上に活物質を含む電極合材層を形成する電極製造方法を説明する。
【0285】
図13(a)に示すように、電極合材層の製造装置は、吐出工程部110gと、加熱工程部130gと、を備える。吐出工程部110gは、対象物を有する印刷基材4g上に、液体組成物を付与して液体組成物層を形成する。加熱工程部130gは、液体組成物層を加熱して電極合材層を得る。
【0286】
電極合材層の製造装置は、印刷基材4gを搬送する搬送部5を備え、搬送部5は、吐出工程部110gおよび加熱工程部130gの順に印刷基材4gを予め設定された速度で搬送する。搬送部5としては、例えば、搬送ローラ、搬送コンベヤ等が挙げられる。
【0287】
活物質層等の対象物を有する印刷基材4gの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0288】
吐出工程部110gは、印刷装置281aと、収容容器281bと、供給チューブ281cと、を備える。
【0289】
印刷装置281aは、例えば液体吐出ヘッド10であり、印刷基材4g上に液体組成物を付与する付与工程を実現する。収容容器281bは、例えばタンク31であり、液体組成物を収容する。供給チューブ281cは、例えばチューブ32であり、収容容器281bに貯留された液体組成物を印刷装置281aに供給する。
【0290】
収容容器281bは液体組成物7を収容し、吐出工程部110gは、印刷装置281aから液体組成物7を吐出して、印刷基材4g上に液体組成物7を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。
【0291】
なお、収容容器281bは、電極合材層の製造装置と一体化した構成であってもよいが、電極合材層の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また収容容器281bは、電極合材層の製造装置と一体化した容器、または、電極合材層の製造装置から取り外し可能な容器に液体組成物7を添加する容器であってもよい。
【0292】
収容容器281bまたは供給チューブ281cは、液体組成物7を安定して貯蔵および供給できるものであれば任意に選択可能である。
【0293】
加熱工程部130gは、加熱装置3aを有し、液体組成物層に残存する溶媒を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する溶媒除去工程を含む。これにより電極合材層を形成することができる。加熱工程部130gは、溶媒除去工程を減圧下で実施してもよい。
【0294】
加熱装置3aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板加熱、IRヒータ、および温風ヒータ等が挙げられ、これらを組み合わせてもよい。また、加熱温度または時間に関しては、液体組成物7に含まれる溶媒の沸点または形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0295】
図13(b)に示すように、液体吐出装置100は、電極合材層の製造方法を実現する電極製造装置の一例である。液体吐出装置100は、ポンプ310と、2個のバルブ311,312と、を制御することにより、液体組成物が液体吐出ヘッド10、内部タンク307、および送液チューブ308を循環する。
【0296】
また液体吐出装置100には、外部タンク313が設けられる。内部タンク307内の液体組成物が減少した際に、ポンプ310と、3個のバルブ311,312,314と、を制御することにより、外部タンク313から内部タンク307へ液体組成物が供給される。電極合材層の製造装置を用いると、対象物の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。
【0297】
電極合材層は、例えば、電気化学素子の構成の一部として、好適に用いることができる。電気化学素子における電極合材層以外の構成としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、正極、負極、およびセパレータなどが挙げられる。
【0298】
液体吐出装置100は、液体吐出ヘッドとしての印刷装置281aのチャンネル間の吐出量のばらつきを低減することが可能であるため、印刷装置281aは対象物としての印刷基材4g上に液体組成物層をムラなく均一に付与することが可能である。
【0299】
また液体吐出装置100は、印刷装置281aのノズル板への弁体の過剰な押し込みを抑制するため、弁体の耐久性を向上させることができる。また液体吐出装置100は、チャンネル間の弁体の押し込み量のばらつきを抑制するため、弁体の耐久性のばらつきが抑制され、メンテナンス頻度を低減させることができる。従って、電極製造装置としての液体吐出装置100のダウンタイムが削減され、対象物Sの生産性の向上に寄与することができる。
【0300】
以上、好ましい実施の形態について詳説したが、上述した実施の形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0301】
以下、本書における用語の定義について説明する。
【0302】
「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出または噴射する機能部品である。吐出される「液体」は、液体吐出ヘッドから吐出可能な粘度または表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱もしくは冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。
【0303】
例えば「液体」には、水または有機溶媒等の溶媒、染料または顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、および界面活性剤等の機能性付与材料等、を含む溶液、懸濁液、またはエマルジョン等が含まれる。また、例えば「液体」には、DNA、アミノ酸またはタンパク質またはカルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料等、を含む溶液、懸濁液、またはエマルジョン等が含まれる。
【0304】
上記「液体」は、例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子または発光素子等の構成要素および電子回路レジストパターンの形成用液、または3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。液体を吐出するエネルギー発生源には、積層型圧電素子または薄膜型圧電素子等の圧電アクチュエータ以外にも、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極とにより構成される静電アクチュエータ等が含まれる。
【0305】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品または機構が一体化されたものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、および主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたもの等が含まれる。
【0306】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品または機構が、締結、接着、または係合等で互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品または機構とが互いに着脱可能に構成されていてもよい。
【0307】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクとが一体化されているものがある。また、チューブ等で互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0308】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジとが一体化されているものがある。
【0309】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構とが一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構とが一体化されているものがある。
【0310】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構とが一体化されているものがある。
【0311】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンクもしくは流路部品が取り付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと液体供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0312】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、液体供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0313】
「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドまたは液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体吐出装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中または液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0314】
「液体吐出装置」には、液体が付着可能なものの、給送、搬送または排紙に係わる手段、その他、前処理装置または後処理装置等も含まれる。
【0315】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、または、立体造形物(三次元造形物)を造形するために粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)等が挙げられる。
【0316】
また「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字または図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば「液体吐出装置」には、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、または三次元像を造形するものも含まれる。
【0317】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が吐出される対象物のことを意味し、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例として、「液体が付着可能なもの」には、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、または布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、または検査用セル等の媒体が含まれる。特に限定しない限り、「液体が付着可能なもの」には、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0318】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、またはセラミックス等、液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0319】
また「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと、液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定されるものではない。具体例として、「液体吐出装置」には、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、または、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。
【0320】
また「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置等が挙げられる。また「液体吐出装置」には、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルから噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等が含まれる。
【0321】
また実施形態で説明した各種機能部は一つまたは複数の処理回路によって実現することが可能である。「処理回路」には、ソフトウェアで各機能を実行するように構成されたプロセッサが含まれる。また「処理回路」には、各機能を実行するように設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはDSP(Digital Signal Processor)等デバイスが含まれる。また「処理回路」には、FPGA(Field Programmable Gate Array)および従来の回路モジュール等のデバイスが含まれる。
【0322】
また上述した実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0323】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1> 液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドの駆動制御装置であって、前記駆動制御装置は、
前記ノズルを前記弁体に閉鎖させる閉鎖電圧を前記アクチュエータに印加可能であり、
前記ノズルが閉鎖状態から開放状態へ移行する電圧を閾値電圧とした場合に、前記複数のノズルのうち、前記閾値電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧が、前記閾値電圧の高い前記ノズルよりも前記閾値電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御する、駆動制御装置。
<2> 前記駆動制御装置は、前記複数のノズルのうち、前記閾値電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と該閾値電圧との差と、前記閾値電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と該閾値電圧との差との差が、所定の値以下になるように前記アクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御する、前記<1>に記載の駆動制御装置。
<3> 前記駆動制御装置は、前記ノズルを前記弁体に開放させる開放電圧を前記アクチュエータに印加可能であり、前記複数のノズルのうち、前記閾値電圧の高い前記ノズルに対応する前記開放電圧が、前記閾値電圧の高い前記ノズルよりも前記閾値電圧の低い前記ノズルに対応する前記開放電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記開放電圧を制御する、前記<1>または<2>に記載の駆動制御装置。
<4> 前記駆動制御装置は、前記ノズルを前記弁体に開放させる開放電圧を前記アクチュエータに印加可能であり、前記複数のノズルのうち、前記閾値電圧の高い前記ノズルに対応する前記開放電圧と該閾値電圧との差と、前記閾値電圧の低い前記ノズルに対応する前記開放電圧と該閾値電圧との差との差が、所定の値以下になるように前記アクチュエータに印加する前記開放電圧を制御する、前記<1>から<3>のいずれか一つに記載の駆動制御装置。
<5> 液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドの駆動制御装置であって、前記駆動制御装置は、
前記ノズルを前記弁体に閉鎖させる閉鎖電圧を前記アクチュエータに印加可能であり、
前記アクチュエータに印加する電圧の変化に対する前記ノズルの流量の変化が最大を示す電圧を中間電圧とした場合に、前記複数のノズルのうち、前記中間電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧が、前記中間電圧の高い前記ノズルよりも前記中間電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御する、駆動制御装置。
<6> 前記駆動制御装置は、前記複数のノズルのうち、前記中間電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と該中間電圧との差と、前記中間電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と該中間電圧との差との差が、所定の値以下になるように前記複数のアクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御する、前記<5>に記載の駆動制御装置。
<7> 前記駆動制御装置は、前記ノズルを前記弁体に開放させる開放電圧を前記アクチュエータに印加可能であり、前記複数のノズルのうち、前記中間電圧の高い前記ノズルに対応する前記開放電圧が、前記中間電圧の高い前記ノズルよりも前記中間電圧の低い前記ノズルに対応する前記開放電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記開放電圧を制御する、前記<5>または<6>に記載の駆動制御装置。
<8> 前記駆動制御装置は、前記ノズルを前記弁体に開放させる開放電圧を前記アクチュエータに印加可能であり、前記複数のノズルのうち、前記中間電圧の高い前記ノズルに対応する前記開放電圧と該中間電圧との差と、前記中間電圧の低い前記ノズルに対応する前記開放電圧と該中間電圧との差との差が所定の値以下になるように前記アクチュエータに印加する前記開放電圧を制御する、前記<5>から<7>のいずれか一つに記載の駆動制御装置。
<9> 前記<1>から<8>のいずれか一項に記載の駆動制御装置と、
前記液体吐出ヘッドと、
を備える、液体吐出装置。
<10> 前記<9>に記載の液体吐出装置と、
前記ノズルの流量を測定する流量計と、
前記流量と、前記アクチュエータに印加される電圧との関係を解析する流量解析部と、
解析した結果を前記液体吐出装置にフィードバックする通信回路と、
を備える、液体吐出システム。
<11> 液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドと、前記ノズルを前記弁体に閉鎖させる閉鎖電圧を前記アクチュエータに印加可能な駆動制御装置と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置が、
前記ノズルが閉鎖状態から開放状態へ移行する電圧を閾値電圧とした場合に、前記複数のノズルのうち、前記閾値電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧が、前記閾値電圧の高い前記ノズルよりも前記閾値電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と比べて高くなるように前記複数のアクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御するステップを実行する、制御方法。
<12> 液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドと、前記ノズルを前記弁体に閉鎖させる閉鎖電圧を前記アクチュエータに印加可能な駆動制御装置と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置が、
前記アクチュエータに印加する電圧の変化に対する前記ノズルの流量の変化が最大を示す電圧を中間電圧とした場合に、前記複数のノズルのうち、前記中間電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧が、前記中間電圧の高い前記ノズルよりも前記中間電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータに印加する前記閉鎖電圧を制御するステップを実行する、制御方法。
<13> 液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を有する液体吐出ヘッドと、前記アクチュエータに電圧を印加することで前記ノズルを閉鎖状態と開放状態のいずれかとなるように前記液体吐出ヘッドを駆動制御する駆動制御装置と、を備える液体吐出システムの制御方法であって、
前記駆動制御装置に、前記アクチュエータに電圧を印可させ前記ノズルから前記液体を吐出させるステップと、
流量計に、前記ノズルから吐出される前記液体の流量を測定させるステップと、
前記流量と、前記液体吐出ヘッドに印加される電圧との関係を解析するステップと、
解析した結果を通信回路に前記駆動制御装置へフィードバックさせるステップと、
を実行し、
前記解析するステップは、前記流量計の測定結果と前記電圧とに基づいて、前記ノズルを前記閉鎖状態にする閉鎖電圧と前記ノズルを前記開放状態にする開放電圧との少なくとも一方を決定し、
前記フィードバックさせるステップは、決定した前記閉鎖電圧と前記開放電圧との少なくとも一方を前記駆動制御装置にフィードバックする、制御方法。
<14> 液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドと、前記ノズルを前記弁体に閉鎖させる閉鎖電圧を前記アクチュエータに印加可能な駆動制御装置と、を備える液体吐出装置の制御プログラムであって、
前記ノズルが閉鎖状態から開放状態へ移行する電圧を閾値電圧とした場合に、前記複数のノズルのうち、前記閾値電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧が、前記閾値電圧の高い前記ノズルよりも前記閾値電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータの前記閉鎖電圧を制御するステップをコンピュータに実行させる、制御プログラム。
<15> 液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を備える液体吐出ヘッドと、前記ノズルを前記弁体に閉鎖させる閉鎖電圧を前記アクチュエータに印加可能な駆動制御装置と、を備える液体吐出装置の制御プログラムであって、
前記アクチュエータに印加する電圧の変化に対する前記ノズルの流量の変化が最大を示す電圧を中間電圧とした場合に、前記複数のノズルのうち、前記中間電圧の高い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧が、前記中間電圧の高い前記ノズルよりも前記中間電圧の低い前記ノズルに対応する前記閉鎖電圧と比べて高くなるように前記アクチュエータの前記閉鎖電圧を制御するステップをコンピュータに実行させる、制御プログラム。
<16> 液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルの各々を開閉する複数の弁体と、前記複数の弁体の各々を駆動する複数のアクチュエータと、を有する液体吐出ヘッドと、前記アクチュエータに電圧を印加することで前記ノズルを閉鎖状態と開放状態のいずれかとなるように前記液体吐出ヘッドを駆動制御する駆動制御装置と、を備える液体吐出システムの制御プログラムであって、
前記駆動制御装置に、前記アクチュエータに電圧を印可させ前記ノズルから前記液体を吐出させるステップと、
流量計に、前記ノズルから吐出される前記液体の流量を流量計に測定させるステップと、
前記流量と、前記液体吐出ヘッドに印加される電圧との関係を解析するステップと、
解析した結果を通信回路に前記駆動制御装置へフィードバックさせるステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記解析するステップは、前記流量計の測定結果と前記電圧とに基づいて、前記ノズルを前記閉鎖状態にする閉鎖電圧と前記ノズルを前記開放状態にする開放電圧との少なくとも一方を決定し、
前記フィードバックさせるステップは、決定した前記閉鎖電圧と前記開放電圧との少なくとも一方を前記駆動制御装置にフィードバックする、制御プログラム。
【符号の説明】
【0324】
10 液体吐出ヘッド
11 ハウジング
12 供給ポート
13 回収ポート
14 ノズル
15 ノズル板
16 流路
17 弁体
17a 弾性部材
18 アクチュエータ
19 規制部材
20 液体吐出モジュール
21 軸受
22 封止部材
23 保持部材
24 リード線
25 液体
29 コネクタ
30 液体供給機構
31 タンク
32 チューブ
33 エアーレギュレータ
34 パイプ
35 コンプレッサ
40 駆動制御装置
41 駆動波形発生回路
42 増幅回路
43 流量計
44 流量解析部
45 通信回路
60 液体吐出ユニット
70 ヘッド保持体
71 キャリッジ
72 X方向駆動アクチュエータ
82 Y方向駆動アクチュエータ
92 第1Z方向駆動アクチュエータ
93 第2Z方向駆動アクチュエータ
100 液体吐出装置
101 X軸レール
102 Y軸レール
103 Z軸レール
109 エンコーダセンサ
901 コントローラ
9011 システム制御部
9012 画像データ格納部
9013 メモリ制御部
9014 吐出周期信号生成部
9015 キャリッジ制御部
902 ヘッド駆動制御部
9021 駆動波形データ格納部
9022 駆動波形生成部
9024 電圧増幅部
9025 電流増幅部
903 PC
9031 RIP部
9032 レンダリング部
9033 入力装置
1001 塗布装置
1003 X-Yテーブル
1004 カメラ
1005 X軸
1006 Y軸
1007 シャフト
1008 ロボットアーム
110g 吐出工程部
130g 加熱工程部
3a 加熱装置
4g 印刷基材
5 搬送部
7 液体組成物
281a 印刷装置
281b 収容容器
281c 供給チューブ
307 内部タンク
308 送液チューブ
310 ポンプ
311、312、314 バルブ
313 外部タンク
S 対象物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0325】
【特許文献1】特開2022-064482号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11
図12
図13