(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024118968
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】保護膜形成方法及び加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240826BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240826BHJP
【FI】
H01L21/78 L
H01L21/78 S
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025590
(22)【出願日】2023-02-21
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章文
(72)【発明者】
【氏名】田畑 晋
【テーマコード(参考)】
5F004
5F063
【Fターム(参考)】
5F004BA09
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB25
5F004CA01
5F004DA00
5F004DA01
5F004DA18
5F004DB01
5F004EA13
5F004EA28
5F004EB04
5F004FA08
5F063AA15
5F063AA44
5F063BA20
5F063CA01
5F063CA08
5F063CB02
5F063CB06
5F063CB22
5F063CB27
5F063CC23
5F063DD42
5F063DD48
5F063DD51
5F063DE02
5F063DE33
5F063DF01
5F063DF04
5F063DF06
5F063DF12
5F063DF19
5F063DF20
5F063EE21
5F063EE78
5F063FF01
5F063FF05
(57)【要約】
【課題】ウェーハの表面の凸部を保護膜で被覆することができること。
【解決手段】加工方法は、表面に凸部であるバンプが形成されるとともに複数の分割予定ラインが設定されたウェーハの加工方法であって、プレート上に液状の保護膜材を積層させて半硬化させた保護膜材積層プレートを準備する準備ステップ101と、ウェーハの表面の少なくともバンプに保護膜材積層プレートの保護膜材を当接させて保護膜材積層プレートの保護膜材をバンプに付着させる移転ステップ102と、移転ステップ102を実施する前または後にウェーハの表面に保護膜材を供給してウェーハの表面側を保護膜材で被覆して保護膜を形成する被覆ステップ103と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凸部が形成されたウェーハの該表面を該凸部とともに覆う保護膜を形成する保護膜形成方法であって、
プレート上に液状の保護膜材を積層させて半硬化させた保護膜材積層プレートを準備する準備ステップと、
ウェーハの該表面の少なくとも該凸部に該保護膜材積層プレートの該保護膜材を当接させて該保護膜材積層プレートの該保護膜材を該凸部に付着させる移転ステップと、
該移転ステップを実施する前または後にウェーハの該表面に保護膜材を供給してウェーハの該表面側を該保護膜材で被覆して保護膜を形成する被覆ステップと、を備えた保護膜形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の保護膜形成方法で保護膜が形成され、表面に凸部が形成されるとともに複数の分割予定ラインが設定されたウェーハの加工方法であって、
該被覆ステップを実施した後、該分割予定ラインに沿って該保護膜を除去してウェーハの該表面が露出した開口を該分割予定ラインに沿って形成する開口形成ステップと、
該開口形成ステップを実施した後、該保護膜を介してウェーハにプラズマエッチングを施すプラズマエッチングステップと、を備えた加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に凸部を備えたウェーハの表面に保護膜を形成する保護膜形成方法及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハのプラズマダイシングでは、マスクを介してプラズマ化したエッチングガスを半導体ウェーハに供給する。そして、レジストや水溶性樹脂を利用したマスクが広く採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1等に記載されたプラズマダイシングでは、マスクは、ウェーハ表面にレジストや水溶性樹脂等の保護膜材をスピンコートしてウェーハ表面を保護膜材で被覆した後、レーザや露光でストリートに対応した開口を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、導電性金属からなる突起電極であるバンプが形成されているバンプ付きウェーハの場合、バンプの上端部が保護膜材で被覆されておらずにバンプが露出していると、プラズマダイシング中にプラズマチャンバー内を金属汚染させてしまうため、問題となる。
【0006】
バンプの上端部の保護膜材が薄く十分な厚みがない場合も、プラズマダイシング中に保護膜材がエッチングされてバンプが露出し、同様の問題が生じる。
【0007】
しかし、スピンコートでウェーハ表面を保護膜材で被覆する際には、スピン回転に伴ってバンプの頭から保護膜材が流れ落ち、バンプの上端部に十分な厚みのマスク材を被覆するのが難しい。
【0008】
例えばスピンコートによる被覆と保護膜材層の乾燥とを繰り返して保護膜を積層することで十分な厚みの保護膜が形成できるが、時間がかかる上スピンコートで飛散して廃棄される保護膜材も多量となってしまう。
【0009】
本発明の目的は、ウェーハの表面の凸部を保護膜で被覆することができる保護膜形成方法及び加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の保護膜形成方法は、表面に凸部が形成されたウェーハの該表面を該凸部とともに覆う保護膜を形成する保護膜形成方法であって、プレート上に液状の保護膜材を積層させて半硬化させた保護膜材積層プレートを準備する準備ステップと、ウェーハの該表面の少なくとも該凸部に該保護膜材積層プレートの該保護膜材を当接させて該保護膜材積層プレートの該保護膜材を該凸部に付着させる移転ステップと、該移転ステップを実施する前または後にウェーハの該表面に保護膜材を供給してウェーハの該表面側を該保護膜材で被覆して保護膜を形成する被覆ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の加工方法は、前記保護膜形成方法で保護膜が形成され、表面に凸部が形成されるとともに複数の分割予定ラインが設定されたウェーハの加工方法であって、該被覆ステップを実施した後、該分割予定ラインに沿って該保護膜を除去してウェーハの該表面が露出した開口を該分割予定ラインに沿って形成する開口形成ステップと、該開口形成ステップを実施した後、該保護膜を介してウェーハにプラズマエッチングを施すプラズマエッチングステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、ウェーハの表面の凸部を保護膜で被覆することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る加工方法の加工対象のウェーハの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1中のII部を拡大して模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されたウェーハを模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図4に示された加工方法の準備ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
【
図6】
図6は、
図4に示された加工方法の準備ステップで準備される保護膜材積層プレートを模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図4に示された移転ステップを模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図4に示された移転ステップ後のウェーハを模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図8中のIX部を拡大して模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図4に示された加工方法の被覆ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
【
図11】
図11は、
図4に示された被覆ステップ後のウェーハを模式的に示す断面図である。
【
図13】
図13は、
図4に示された加工方法の開口形成ステップを模式的に示す斜視図である。
【
図14】
図14は、
図4に示された加工方法のプラズマエッチングステップを実施するプラズマエッチング装置の構成例を模式的に示す断面図である。
【
図15】
図15は、
図4に示された加工方法の洗浄ステップを一部で模式的に示す側面図である。
【
図16】
図16は、実施形態2に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、
図16に示された加工方法の被覆ステップ後のウェーハを模式的に示す断面図である。
【
図19】
図19は、
図16に示された加工方法の移転ステップ後のウェーハを模式的に示す断面図である。
【
図20】
図20は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る加工方法の準備ステップで準備される保護膜材積層プレートを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工方法を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る加工方法の加工対象のウェーハの一例を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1中のII部を拡大して模式的に示す平面図である。
図3は、
図1に示されたウェーハを模式的に示す断面図である。
図4は、実施形態1に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0016】
(ウェーハ)
実施形態1に係る加工方法は、
図1に示すウェーハ1を加工する方法である。実施形態1では、加工方法の加工対象のウェーハ1は、シリコン等を基板2とする円板状の半導体ウェーハである。ウェーハ1は、
図1に示すように、表面3の複数の分割予定ライン4によって区画された領域にそれぞれデバイス5が形成されている。
【0017】
デバイス5は、例えば、IC(Integrated Circuit)又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、又は各種のメモリ(半導体記憶装置)である。また、実施形態1では、デバイス5は、
図2及び
図3に示すように、配線層の電極等に接続した導電性の球状のバンプ6(凸部に相当)を備える。即ち、ウェーハ1は、表面3の複数の分割予定ライン4によって区画された領域に凸部であるバンプ6が形成されている。
【0018】
実施形態1では、バンプ6は、導電性の金属により構成され、球状に形成されて、ウェーハ1の表面3から突出している。なお、実施形態1では、バンプ6は、球状に形成されているが、本発明では、球状に限らず、円柱状又は角柱状に形成されても良い。
【0019】
ウェーハ1は、分割予定ライン4に沿って個々のデバイス5に分割される。また、実施形態1では、ウェーハ1は、バンプ6を備えて、実装基板に実装される際にフリップチップボンディングと呼ばれる実装技術により実装されるデバイス5に分割される。
【0020】
(加工方法)
実施形態1に係る加工方法は、ウェーハ1を分割予定ライン4に沿って個々のデバイス5に分割する方法である。実施形態1に係る加工方法は、ウェーハ1をプラズマエッチングによりデバイス5に分割する方法、所謂プラズマダイシングによりウェーハ1をデバイス5に分割する方法でもある。加工方法は、
図4に示すように、準備ステップ101と、移転ステップ102と、被覆ステップ103と、開口形成ステップ104と、プラズマエッチングステップ105と、洗浄ステップ106とを備える。
【0021】
(準備ステップ)
図5は、
図4に示された加工方法の準備ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図6は、
図4に示された加工方法の準備ステップで準備される保護膜材積層プレートを模式的に示す断面図である。準備ステップ101は、プレート21上に液状の保護膜材22を積層させて半硬化させた保護膜材積層プレート20を準備するステップである。
【0022】
実施形態1において、準備ステップ101では、外径がウェーハ1と同径でかつ厚みが一定の円板状のプレート21(
図5に示す)を準備する。実施形態1では、プレート21は、シリコンにより構成された所謂シリコンウェーハであるが、本発明では、シリコンに限らず、ガラス又はセラミックス等の他の材質により構成されても良い。また、実施形態1では、プレート21の外径は、ウェーハ1の外径と同径であるが、本発明では、ウェーハ1の外径よりも大きくても良く、小さくても良い。
【0023】
実施形態1において、準備ステップ101では、
図5に示すように、プレート21にプレート21よりも大径な円板状のテープ23の中央部を貼着し、テープ23の外縁部に内径がプレート21の外径よりも大径な環状のフレーム24を貼着する。実施形態1において、準備ステップ101では、
図5に示す被覆装置30が、スピンナテーブル31の保持面32にプレート21がテープ23を介して載置され、保持面32にプレート21をテープ23を介して吸引保持し、フレーム24をスピンナテーブル31の周囲に設けられたクランプ部33で挟持する。
【0024】
実施形態1において、準備ステップ101では、被覆装置30が、
図5に示すように、スピンナテーブル31を軸心回りに回転させながら、プレート21の上方の塗布ノズル34からウェーハ1の中央に液状の保護膜材22を塗布する。すると、プレート21に塗布された保護膜材22は、スピンナテーブル31の回転により生じる遠心力によりプレート21の外縁側に拡げられて、プレート21全体を被覆するとともに、スピンナテーブル31の回転により大気に曝されることで徐々に乾燥していく。
【0025】
なお、実施形態1において、保護膜材22は、例えば、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)、又はポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone:PVP)等の水溶性樹脂を含んでいる。また、実施形態1において、保護膜材22は、プラズマエッチングステップ105で用いられるプラズマ化したエッチングガスに対して耐性を有している。実施形態1において、プレート21を被覆した保護膜材22は、スピンナテーブル31が回転数2000rpmで90秒回転して乾燥されることで、完全硬化する。
【0026】
実施形態1において、準備ステップ101では、スピンナテーブル31が回転数2000rpmで20秒回転して乾燥されることで、プレート21を被覆した保護膜材22を半硬化する。なお、完全硬化とは、プレート21を被覆した保護膜材22が、流動性がないとともに、押圧されても変形しないことをいう。また、半硬化とは、プレート21を被覆した保護膜材22が、流動性がないとともに、押圧されると変形するとともに押圧したものが離れる際に押圧したものに当接した一部が分離することがあることをいう。また、流動性があるとは、プレート21の姿勢等を変化させるとプレート21上を流れることを示し、流動性がないとは、プレート21の姿勢等を変化させてもプレート21上を流れることがないことを示している。
【0027】
こうして、実施形態1において、準備ステップ101では、軸心回りに回転するスピンナテーブル31に保持されたプレート21に保護膜材22を供給して塗布する、所謂スピンコートで保護膜材22をプレート21に塗布する。実施形態1において、準備ステップ101では、保護膜材22を半硬化させて、保護膜材22が半硬化の状態でプレート21上に積層された
図6に示す保護膜材積層プレート20を準備する。また、本発明では、準備ステップ101において保護膜材22でプレート21を被覆する方法は、スピンコートに限定されない。
【0028】
(移転ステップ)
図7は、
図4に示された移転ステップを模式的に示す断面図である。
図8は、
図4に示された移転ステップ後のウェーハを模式的に示す断面図である。
図9は、
図8中のIX部を拡大して模式的に示す断面図である。移転ステップ102は、ウェーハ1の表面3の少なくともバンプ6に保護膜材積層プレート20の保護膜材22を当接させて保護膜材積層プレート20の保護膜材22をバンプ6に付着させるステップである。
【0029】
実施形態1において、移転ステップ102では、
図7に示すように、ウェーハ1の表面3に保護膜材積層プレート20の保護膜材22を相対させて、ウェーハ1と保護膜材積層プレート20とを互いに近づけて、バンプ6を保護膜材22に当接させて押圧する。すると、保護膜材22が変形して、保護膜材22内にバンプ6が侵入するとともに、バンプ6の表面3から離れた上端部に保護膜材22が付着する。実施形態1において、移転ステップ102では、ウェーハ1と保護膜材積層プレート20とを互いに離す。
【0030】
すると、ウェーハ1と保護膜材積層プレート20とを離す際に、バンプ6の上端部に付着した保護膜材22の一部がプレート21上から分離する。実施形態1において、移転ステップ102では、
図8及び
図9に示すように、ウェーハ1のバンプ6の上端部に保護膜材22を付着させることとなる。
【0031】
(被覆ステップ)
図10は、
図4に示された加工方法の被覆ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図11は、
図4に示された被覆ステップ後のウェーハを模式的に示す断面図である。
図12は、
図11中のXII部を拡大して模式的に示す断面図である。被覆ステップ103は、移転ステップ102を実施した後にウェーハ1の表面3に保護膜材22を供給してウェーハ1の表面3側を保護膜材22で被覆して保護膜10を形成するステップである。
【0032】
実施形態1において、被覆ステップ103では、
図10に示すように、ウェーハ1の裏面7にウェーハ1よりも大径な円板状のテープ8の中央部を貼着し、テープ8の外縁部に内径がウェーハ1の外径よりも大径な環状のフレーム9を貼着する。実施形態1において、被覆ステップ103では、
図10に示す被覆装置30が、スピンナテーブル31の保持面32にウェーハ1がテープ8を介して載置され、保持面32にウェーハ1をテープ8を介して吸引保持し、フレーム9をスピンナテーブル31の周囲に設けられたクランプ部33で挟持する。
【0033】
実施形態1において、被覆ステップ103では、被覆装置30が、
図10に示すように、スピンナテーブル31を軸心回りに回転させながら、ウェーハ1の上方の塗布ノズル34からウェーハ1の中央に液状の準備ステップ101と同じ材質の保護膜材22を塗布する。すると、ウェーハ1に塗布された保護膜材22は、スピンナテーブル31の回転により生じる遠心力によりウェーハ1の外縁側に拡げられて、ウェーハ1全体を被覆するとともに、スピンナテーブル31の回転により大気に曝されることで徐々に乾燥していく。
【0034】
なお、実施形態1において、保護膜材22は、準備ステップ101で用いられる保護膜材22と同じものであるが、本発明では、準備ステップ101で用いられる保護膜材22と異なるものであっても良い。
【0035】
実施形態1において、被覆ステップ103では、スピンナテーブル31が回転数2000rpmで90秒回転して乾燥されることで、ウェーハ1を被覆した保護膜材22を完全硬化する。こうして、実施形態1において、被覆ステップ103では、軸心回りに回転するスピンナテーブル31に保持されたウェーハ1に保護膜材22を供給して塗布する、所謂スピンコートで保護膜材22をウェーハ1に塗布する。実施形態1において、被覆ステップ103では、保護膜材22を完全硬化させて、
図8及び
図9に示すように、ウェーハ1の表面3側をバンプ6とともに保護膜材22で被覆して、ウェーハ1の表面3及びバンプ6を被覆した保護膜10を形成する。保護膜10は、保護膜材22により構成されるので、プラズマエッチングステップ105で用いられるプラズマ化したエッチングガスに対して耐性を有している。
【0036】
実施形態1において、準備ステップ101と、移転ステップ102と、被覆ステップ103とは、表面3にバンプ6が形成されたウェーハ1の表面3をバンプ6とともに覆う保護膜10を形成する保護膜形成方法である。このために、実施形態1に係る加工方法は、前述した保護膜形成方法で保護膜10が形成され、表面3にバンプ6が形成されるとともに複数の分割予定ライン4が設定されたウェーハ1の加工方法でもある。
【0037】
(開口形成ステップ)
図13は、
図4に示された加工方法の開口形成ステップを模式的に示す斜視図である。開口形成ステップ104は、被覆ステップ103を実施した後、分割予定ライン4に沿って保護膜10を除去してウェーハ1の表面3が露出した開口11を分割予定ライン4に沿って形成するステップである。
【0038】
実施形態1において、開口形成ステップ104では、
図13に示すレーザ加工装置40が、ウェーハ1の裏面7をテープ8を介して図示しないチャックテーブルの保持面に吸引保持し、フレーム9をチャックテーブルの周囲に設けられた図示しないクランプ部で挟持する。実施形態1において、開口形成ステップ104では、レーザ加工装置40が、撮像カメラ42でウェーハ1の表面3を撮像し、ウェーハ1の分割予定ライン4とレーザビーム照射ユニット41の集光レンズとの位置合わせを行なうアライメントを遂行する。
【0039】
実施形態1において、開口形成ステップ104では、レーザ加工装置40が、
図13に示すように、チャックテーブルとレーザビーム照射ユニット41とを分割予定ライン4に沿って相対的に移動させながら、集光点44を分割予定ライン4上の保護膜10の表面に設定して、保護膜10に対して吸収性を有する波長(例えば、355nm)のレーザビーム43を各分割予定ライン4上の保護膜10に向かって照射して、分割予定ライン4上の保護膜10を除去する。実施形態1において、開口形成ステップ104では、レーザ加工装置40が、分割予定ライン4に沿った開口11を各分割予定ライン4の全長に亘って形成して、保護膜10に分割予定ライン4の表面3を露出する開口11を形成する。
【0040】
なお、実施形態1において、開口形成ステップ104では、レーザ加工装置40が、分割予定ライン4上の保護膜10の厚み方向の全体を除去しているが、本発明では、開口11の底に保護膜10を僅かに残存させても良い。なお、開口11の底の僅かに残存された保護膜10は、次のプラズマエッチングステップ105でエッチングされて除去される。
【0041】
(プラズマエッチング装置)
次に、プラズマエッチングステップ105を実施するプラズマエッチング装置50を図面に基づいて説明する。
図14は、
図4に示された加工方法のプラズマエッチングステップを実施するプラズマエッチング装置の構成例を模式的に示す断面図である。プラズマエッチング装置50は、
図14に示すように、直方体状のチャンバー51と、保持ユニット52と、上部電極53と、制御ユニット55とを備える。
【0042】
チャンバー51は、内側にプラズマエッチングが実施される処理空間511が形成されている。チャンバー51は、一つの側壁512に、ウェーハ1を搬入及び搬出するための開口513と、開口513を開閉する開閉扉514が設けられている。開閉扉514は、エアシリンダ等で構成される開閉機構515によって昇降することで、開口513を開閉する。
【0043】
また、チャンバー51は、底壁516にチャンバー51の内部と外部とを連通させる排気口517が形成されている。排気口517は、真空ポンプ等の排気機構510が接続されている。
【0044】
保持ユニット52と上部電極53とは、チャンバー51の処理空間511に、互いに対向して配置されている。保持ユニット52の上面は、テープ8を介してウェーハ1を保持する保持面524である。また、保持ユニット52は、導電性の材料により構成され、下部電極としても機能する。
【0045】
保持ユニット52は、円盤状の保持部521と、保持部521の下面の中央部から下方に突出する円柱状の支持部520とを含む。支持部520は、チャンバー51の底壁516に形成された開口522に挿入されている。開口522内において、底壁516と支持部520との間には環状の絶縁部材523が配置されており、チャンバー51と保持ユニット52とは電気的に絶縁されている。また、保持ユニット52は、チャンバー51の外部で高周波電源56と接続されている。
【0046】
保持ユニット52の保持部521には、図示しない高周波電源に接続された電極526が設けられている。保持ユニット52は、電極526に高周波電源から電力が印加されて、保持面524とウェーハ1との間に誘電分極現象を発生させ、電荷の分極による静電吸着力によってウェーハ1を保持面524上に吸着保持する。
【0047】
また、保持ユニット52の保持部521の内部及び支持部520の内部には、保持ユニット52を冷却するための冷却流体が流れる冷却流路527が形成されている。冷却流路527の両端は、冷媒循環機構528に接続されている。冷媒循環機構528を作動させると、水等の冷却流体が、冷却流路527内を循環して流れ、保持ユニット52が冷却される。
【0048】
上部電極53は、導電性の材料でなり、円盤状のガス噴出部531と、ガス噴出部531の上面の中央部から上方に突出する円柱状の支持部530とを含む。支持部530は、チャンバー51の上壁518に形成された開口532に挿入されている。開口532内において、上壁518と支持部530との間には環状の絶縁部材533が配置されており、チャンバー51と上部電極53とは電気的に絶縁されている。
【0049】
上部電極53は、チャンバー51の外部で高周波電源57と接続されている。また、支持部530の上端部には、昇降機構534の支持アームが取り付けられている。上部電極53は、昇降機構534により昇降する。
【0050】
ガス噴出部531の下面側には、複数の噴出口535が設けられている。噴出口535は、ガス噴出部531及び支持部530に形成された流路536を介して、第1エッチングガス供給源58及び第2エッチングガス供給源59に接続されている。第1エッチングガス供給源58及び第2エッチングガス供給源59は、エッチングガスを流路536を通して噴出口535からチャンバー51内に供給する。実施形態1では、第1エッチングガス供給源58は、ウェーハ1の基板2がシリコンにより構成される場合、エッチングガスとして、SF6、C4F8又はCF4等のフッ素系ガスをチャンバー51内に供給する。実施形態1では、第2エッチングガス供給源59は、エッチングガスとして、酸素系ガスをチャンバー51内に供給する。
【0051】
制御ユニット55は、プラズマエッチング装置50の各構成要素を制御して、プラズマエッチング装置50にウェーハ1に対するプラズマエッチングを実施させるものである。なお、制御ユニット55は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット55の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、プラズマエッチング装置50を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介してプラズマエッチング装置50の各構成要素に出力する。
【0052】
また、制御ユニット55は、各種の情報や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニットと、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとが接続されている。入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0053】
(プラズマエッチングステップ)
プラズマエッチングステップ105は、開口形成ステップ104を実施した後、保護膜10を介してウェーハ1にプラズマエッチングを施すステップである。実施形態1において、プラズマエッチングステップ105では、プラズマエッチング装置50が、昇降機構534により上部電極53を上昇させ、昇降機構によりフレーム挟持プレート542を上昇させた状態で、開閉機構515により開閉扉514を下降させて開口513を開放する。
【0054】
プラズマエッチングステップ105では、プラズマエッチング装置50は、図示しない搬送ユニットにより開口形成ステップ104で保護膜10に開口11が形成されたウェーハ1が処理空間511内に搬入され、テープ8を介してウェーハ1の裏面7が保持ユニット52の保持面524に載置される。プラズマエッチングステップ105では、プラズマエッチング装置50は、高周波電源から電力を電極526に印加して、保持面524にテープ8を介してウェーハ1の裏面7を吸着保持する。
【0055】
プラズマエッチングステップ105では、プラズマエッチング装置50は、開閉機構515により開閉扉514を上昇させて開口513を閉じ、排気機構510を作動させてチャンバー51内を減圧し、処理空間511を真空状態(低圧状態)とし、冷媒循環機構528を作動させて、水等の冷却流体を冷却流路527内で循環し、保持ユニット52の異常昇温を抑制する。プラズマエッチングステップ105は、プラズマエッチング装置50は、昇降機構534により上部電極53を下降させ、上部電極53の下面と、下部電極を構成する保持ユニット52に保持されたウェーハ1との間の距離をプラズマエッチングに適した所定の電極間距離に位置付ける。
【0056】
プラズマエッチングステップ105では、プラズマエッチング装置50は、第1エッチングガス供給源58からエッチングガスを所定の流量で供給してガス噴出部531の複数の噴出口535から保持ユニット52上に保持されたウェーハ1に向けて噴出する。プラズマエッチングステップ105では、プラズマエッチング装置50は、第1エッチングガス供給源58からエッチングガスを供給した状態で、高周波電源57から上部電極53にプラズマを作り維持する高周波電力を印加し、高周波電源56から下部電極である保持ユニット52にイオンを引き込むための高周波電力を印加する。
【0057】
プラズマエッチングステップ105では、プラズマエッチング装置50は、保持ユニット52と上部電極53との間の空間のエッチングガスがプラズマ化され、このプラズマ化されたエッチングガスがウェーハ1側に引き込まれて、ウェーハ1の保護膜10の開口11から露出した分割予定ライン4の表面3をエッチング(所謂プラズマエッチング)する。プラズマエッチングステップ105では、プラズマエッチング装置50は、分割予定ライン4にエッチング溝14(
図15に示す)を形成し、エッチング溝14をウェーハ1の裏面7に向かって進行させる。
【0058】
なお、実施形態1では、エッチングガスとして、SF6、C4F8又はCF4等のフッ素系ガスを用いるが、エッチングガスは、これらに限定されない。また、実施形態1において、プラズマエッチングステップ105では、プラズマエッチング装置50は、SF6を供給することによるプラズマエッチングとC4F8を供給することによるエッチング溝14の内側面等に対する保護膜堆積(デポジション)とを交互に繰り返すボッシュ法によりウェーハ1をプラズマエッチングするが、本発明では、単一のエッチングガスを供給することでプラズマエッチングしても良い。
【0059】
プラズマエッチングステップ105では、プラズマエッチング装置50は、ウェーハ1の厚さに応じて、ウェーハ1をプラズマエッチングする所定時間が予め設定されている。プラズマエッチングステップ105では、プラズマエッチング装置50は、所定時間、エッチングガスを供給しながら保持ユニット52及び上部電極53に高周波電力を印加して、保護膜10の開口11から露出した分割予定ライン4を完全に除去して、ウェーハ1を開口11即ちエッチング溝14に沿って分断して、個々のデバイス5に分割する。即ち、プラズマエッチングステップ105では、ウェーハ1に各分割予定ライン4の全長に亘ってエッチング溝14を貫通させる。
【0060】
(洗浄ステップ)
図15は、
図4に示された加工方法の洗浄ステップを一部で模式的に示す側面図である。洗浄ステップ106は、プラズマエッチングステップ105を実施した後、ウェーハ1の表面3側を洗浄して、表面3上から保護膜10を除去するステップである。
【0061】
実施形態1において、洗浄ステップ106では、
図15に示す洗浄装置60がスピンナテーブル61の保持面62にウェーハ1の裏面7側がテープ8を介して載置され、保持面62にウェーハ1の裏面7側をテープ8を介して吸引保持し、フレーム9をスピンナテーブル61の周囲に設けられたクランプ部63で挟持する。実施形態1において、洗浄ステップ106では、洗浄装置60が、スピンナテーブル61を軸心回りに回転させながら、ウェーハ1の上方の洗浄ノズル64からウェーハ1の表面3の中央に例えば純水である洗浄液65を供給する。すると、ウェーハ1の表面3に供給された洗浄液65は、スピンナテーブル61の回転により生じる遠心力によりウェーハ1の外縁側に向かって流れて、ウェーハ1の表面3上から保護膜10を洗い流す。
【0062】
こうして、実施形態1において、洗浄ステップ106では、軸心回りに回転するスピンナテーブル61に保持されたウェーハ1に洗浄液65を供給して洗浄する、所謂スピンナー洗浄する。実施形態1において、洗浄ステップ106では、ウェーハ1を乾燥させて、加工方法を終了する。
【0063】
以上説明した実施形態1に係る加工方法は、準備ステップ101において保護膜材22が半硬化の状態でプレート21上に積層された保護膜材積層プレート20を準備し、移転ステップ102において保護膜材積層プレート20の保護膜材22をバンプ6に当接させることで、保護膜材積層プレート20上の半硬化した保護膜材22をバンプ6の上端部に付着させる。このために、実施形態1に係る加工方法は、バンプ6の上端部に付着した保護膜材22が半硬化の状態のため、バンプ6の上端部に留まることとなる。
【0064】
その結果、実施形態1に係る加工方法は、廃棄される保護膜材22の量が増加することを抑制しながらも、ウェーハ1の表面3のバンプ6を保護膜10で被覆することができるという効果を奏する。
【0065】
〔実施形態2〕
実施形態2に係る加工方法を図面に基づいて説明する。
図16は、実施形態2に係る加工方法の流れを示すフローチャートである。
図17は、
図16に示された加工方法の被覆ステップ後のウェーハを模式的に示す断面図である。
図18は、
図16に示された加工方法の移転ステップを模式的に示す断面図である。
図19は、
図16に示された加工方法の移転ステップ後のウェーハを模式的に示す断面図である。なお、
図16、
図17、
図18及び
図19は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
実施形態2に係る加工方法は、
図16に示すように、準備ステップ101及び移転ステップ102を実施する前に被覆ステップ103を実施する事以外、実施形態1と同じである。
【0067】
実施形態2に係る加工方法の被覆ステップ103では、被覆装置30が実施形態1と同様にウェーハ1の表面3に保護膜材22を供給して、
図17に示すように、ウェーハ1の表面3側を保護膜材22で被覆する。なお、
図17に示す例では、保護膜材22は、バンプ6の上端部を被覆することなく、バンプ6の上端部を露出させている。
【0068】
実施形態2に係る加工方法の移転ステップ102では、
図18に示すように、ウェーハ1の表面3に保護膜材積層プレート20の保護膜材22を相対させて、ウェーハ1と保護膜材積層プレート20とを互いに近づけて、バンプ6を保護膜材22に当接させて、押圧する。すると、保護膜材積層プレート20の保護膜材22が変形して、保護膜材積層プレート20の保護膜材22内にバンプ6の上端部が侵入するとともに、バンプ6の表面3から離れた上端部に保護膜材22が付着する。実施形態1において、移転ステップ102では、ウェーハ1と保護膜材積層プレート20とを互いに離す。
【0069】
すると、ウェーハ1と保護膜材積層プレート20とを離す際に、バンプ6の上端部に付着した保護膜材22の一部がプレート21上から分離する。実施形態2において、移転ステップ102では、
図19に示すように、ウェーハ1のバンプ6の上端部に保護膜材22を付着させて、ウェーハ1の表面3とバンプ6を被覆する保護膜10を形成する。
【0070】
実施形態2に係る加工方法は、準備ステップ101において保護膜材22が半硬化の状態でプレート21上に積層された保護膜材積層プレート20を準備し、移転ステップ102において保護膜材積層プレート20の保護膜材22をバンプ6に当接させることで、保護膜材積層プレート20上の半硬化した保護膜材22をバンプ6の上端部に付着させるので、実施形態1と同様に、廃棄される保護膜材22の量が増加することを抑制しながらも、ウェーハ1の表面3のバンプ6を保護膜10で被覆することができるという効果を奏する。
【0071】
〔変形例〕
実施形態1及び実施形態2の変形例に係る加工方法を図面に基づいて説明する。
図20は、実施形態1及び実施形態2の変形例に係る加工方法の準備ステップで準備される保護膜材積層プレートを模式的に示す断面図である。なお、
図20は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0072】
変形例において、準備ステップ101では、中央の凹部25が形成されたプレート21即ち所謂TAIKO(登録商標)研削されたプレート21を準備し、
図20に示すように、凹部25内に保護膜材22を供給して、凹部25内に供給された保護膜材22を半硬化させる。なお、変形例では、保護膜材22の表面をプレート21の外縁部の表面と同一平面上に位置付ける。また、変形例において、本発明では、保護膜材積層プレート20の保護膜材22は、僅かな流動性を有しても良い。なお、僅かな流動性とは、移転ステップ102においてバンプ6の上端部に付着した保護膜材22がバンプ6の上端部に留まり流下しない程度の流動性をいう。
【0073】
変形例に係る加工方法は、準備ステップ101において保護膜材22が半硬化の状態でプレート21上に積層された保護膜材積層プレート20を準備し、移転ステップ102において保護膜材積層プレート20の保護膜材22をバンプ6に当接させることで、保護膜材積層プレート20上の半硬化した保護膜材22をバンプ6の上端部に付着させるので、実施形態1及び実施形態2と同様に、廃棄される保護膜材22の量が増加することを抑制しながらも、ウェーハ1の表面3のバンプ6を保護膜10で被覆することができるという効果を奏する。
【0074】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 ウェーハ
3 表面
4 分割予定ライン
6 バンプ
10 保護膜
11 開口
20 保護膜材積層プレート
21 プレート
22 保護膜材
101 準備ステップ
102 移転ステップ
103 被覆ステップ
104 開口形成ステップ
105 プラズマエッチングステップ