(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011902
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】水素生成装置及び水素生成方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/04 20060101AFI20240118BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C01B3/04 R
C02F11/00 D ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114232
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】日比野 忠史
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA09
4D059BK21
4D059CC10
(57)【要約】
【課題】エネルギー効率のよい水素生成装置及び水素生成方法を提供する。
【解決手段】水素生成装置1は、二酸化炭素が供給される水層WLに配置された正極11と、水層WLと連続する水域に鉄鋼スラグ15が配置されてなる鉄鋼スラグ層SLに配置された負極13と、正極11及び負極13に接続される電源14と、を備える。これにより、二酸化炭素が水層WLで電離して生じる水素イオンが、電源14によって正極11に供給される電子を受け取り、水素が生成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素が供給される水層に配置された正極と、
前記水層と連続する水域に鉄鋼スラグが配置されてなる鉄鋼スラグ層に配置された負極と、
前記正極及び前記負極に接続され、前記鉄鋼スラグから前記負極に供与された電子を前記正極へ供給する電源と、
を備える水素生成装置。
【請求項2】
前記鉄鋼スラグ層は、有機泥及び活性炭の少なくともいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の水素生成装置。
【請求項3】
前記正極及び前記負極を収容する容器と、
前記水層に二酸化炭素を供給する供給部と、を備え、
前記負極は、少なくとも前記容器の内側面に沿って筒状に配置され、
前記水層は、少なくとも前記負極の内部に配置され、
前記正極は、前記負極の内部の前記水層中に配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水素生成装置。
【請求項4】
二酸化炭素が供給される水層に正極を配置し、
前記水層と連続する水域に鉄鋼スラグが配置されてなる鉄鋼スラグ層に負極を配置し、
電源に前記正極及び前記負極を接続し、
前記鉄鋼スラグから前記負極に供与された電子を、
前記正極から、前記二酸化炭素の電離によって生じる水素イオンに供与して、水素を生成する、
ことを特徴とする水素生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素生成装置及び水素生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、燃焼させても二酸化炭素を発生しないクリーンなエネルギー源として注目されている。水素の生成方法としては、化石燃料を燃焼させて発生させたガスから水素を取り出す方法、水を電気分解して水素を生成する方法等がある。水を電気分解して水素を生成する方法は、水素の生成時に二酸化炭素を排出しないので、よりクリーンな方法として期待されており、種々の技術開発が行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の水の電解装置では、カソード電極の表面に多孔質のハニカム構造体を設けることにより、多孔質性を利用した毛管力で水を強制的に反応電極面に供給しつつ、生成する水素(水素気泡)をハニカム構造体の開口部から排出して電極(カソード電極)が気相で覆われることを抑制する。これらの効果によって、水の電気分解における水素生成の限界電流密度が向上し、水の電気分解を効率良く行うことができる。
【0005】
しかしながら、水の電気分解による水素の生成では、依然として大きな電気エネルギーを消費し、水素の製造に係るコストは大きい。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、エネルギー効率のよい水素生成装置及び水素生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の観点に係る水素生成装置は、
二酸化炭素が供給される水層に配置された正極と、
前記水層と連続する水域に鉄鋼スラグが配置されてなる鉄鋼スラグ層に配置された負極と、
前記正極及び前記負極に接続され、前記鉄鋼スラグから前記負極に供与された電子を前記正極へ供給する電源と、
を備える。
【0008】
また、前記鉄鋼スラグ層は、有機泥及び活性炭の少なくともいずれかを含む、
こととしてもよい。
【0009】
また、前記正極及び前記負極を収容する容器と、
前記水層に二酸化炭素を供給する供給部と、を備え、
前記負極は、少なくとも前記容器の内側面に沿って筒状に配置され、
前記水層は、少なくとも前記負極の内部に配置され、
前記正極は、前記負極の内部の前記水層中に配置されている、
こととしてもよい。
【0010】
また、本発明の第2の観点に係る水素生成方法では、
二酸化炭素が供給される水層に正極を配置し、
前記水層と連続する水域に鉄鋼スラグが配置されてなる鉄鋼スラグ層に負極を配置し、
電源に前記正極及び前記負極を接続し、
前記鉄鋼スラグから前記負極に供与された電子を、
前記正極から、前記二酸化炭素の電離によって生じる水素イオンに供与して、水素を生成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電源及び鉄鋼スラグに含まれる鉄の分解によって鉄鋼スラグ層で生じる電子と、二酸化炭素の電離によって水層で生じる水素イオンとから水素を生成できるので、エネルギー効率よく水素を生成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る水素生成装置の概念図である。
【
図2】水素生成装置の反応機構を示す反応式であり、(A)は負極で生じる化学反応、(B)は電解質層(水層WL及び鉄鋼スラグ層SL)で生じる化学反応、(C)は正極で生じる化学反応を示す反応式である。
【
図3】実施の形態2に係る水素生成装置の構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)のA-A’断面図である。
【
図4】実施の形態2に係る別の形態の供給部の例を示す図である。
【
図5】実施の形態2の変形例に係る水素生成装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る水素生成装置及び水素生成方法について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(実施の形態1)
本実施の形態に係る水素生成装置1は屋内又は河川、湖沼、海等の屋外の所定の水域に設置される。本実施の形態に係る水素生成装置1は、屋内に設けられた所定の水域に配置されるものとする。水素生成装置1は、正極11、導線12、負極13、電源14を備える。
【0015】
正極11は、
図1に示すように、水素生成装置1を設置する水層WLに配置される。正極11の材質、形状等は特に限定されないが、例えば、水の電気分解にも用いられるプラチナ又はプラチナメッキされた電極であることが好ましい。また、正極11の面積は、電流量に基づいて設定すればよい。
【0016】
導線12は、
図1に示すように、正極11と負極13とを接続して、電源14及び負極13で発生した電荷を正極11へ伝えるものである。導線12の素材、径、抵抗値等は、特に限定されず、電源14で生じる電力、設置環境等に適した特性のものを選択すればよい。
【0017】
負極13は、水層WLと連続する水域で、鉄鋼スラグ15が配置された鉄鋼スラグ層SLに配置される。正極11と同様に、負極13の材質、形状等は特に限定されないが、柔軟性のあるカーボン製の電極であることが好ましい。これにより、負極13は、鉄鋼スラグ15の形状に沿って配置されて、鉄鋼スラグ15の溶解によって生じる電子を効率よく受け取ることができる。また、負極13の面積は、鉄鋼スラグの量、電流量等に基づいて設定すればよい。
【0018】
また、鉄鋼スラグ層SLは、有機泥16及び活性炭17の少なくともいずれかを含む。本実施の形態に係る鉄鋼スラグ層SLは、有機泥16を含む。これにより、負極13は、微生物による有機泥16の分解によって生じる電子を受け取ることができるので、より多くの電子を受け取ることができる。また、本実施の形態に係る鉄鋼スラグ層SLは、電気伝導性を有する活性炭17(不図示)を含む。活性炭17は、鉄鋼スラグ15同士の空隙に配置されることにより、鉄鋼スラグ15からの電子伝達を補助する。これにより、負極13は、鉄鋼スラグ15の溶解によって生じる電子を効率よく受け取ることができる。活性炭17の形状は、粉末状、粒状、繊維状等、特に限定されない。
【0019】
鉄鋼スラグ15は、有機泥16及び活性炭17と混合され、負極13の周囲に配置される。鉄鋼スラグ15は、鉄鋼製造工程において副産物として発生するスラグであり、石灰(CaO)、シリカ(SiO2)等を含む。本発明に係る鉄鋼スラグ15は、鉄(Fe)の含有率の高い鉄鋼スラグであることが好ましい。これにより、多くの電子を得ることができる。
【0020】
具体的には、鉄鋼スラグ15を負極13の周囲に配置することにより、鉄鋼スラグ15に残存している鉄の溶解反応により二価鉄(Fe2+)及び電子(e-)が生じる。これにより、負極13で電子を受け取ることができる。
【0021】
本実施の形態に係る鉄鋼スラグ15は礫状であり、その大きさは特に限定されないが、溶解し易いように鉄鋼スラグ15の表面積がなるべく大きくなるように選択する。具体的には、鉄鋼スラグ15の大きさは、1cm~3.5cm程度であることが好ましい。
【0022】
電源14は、正極11及び負極13と接続され、正極11へ電荷を伝える。これにより、正極11の周囲の水素イオンから水素を発生させる。電源14の通電電力は、正極11及び負極13で生じる反応に係る酸化還元電位に基づいて、負極13に供与された電子を正極11へ供給することができるように設定される。具体的には、本実施の形態に係る電源14の電圧は0.6V以上である。電源14としては、太陽電池、微生物燃料電池等を用いることができ、特に限定されない。本実施の形態では、電源14として太陽電池を用いる。
【0023】
(反応機構)
以下、本実施の形態に係る水素生成装置1における反応機構について説明する。
図2(A)~(C)は、水素生成装置1の負極13、水層WLと鉄鋼スラグ層SLとを含む電解質層、正極11それぞれで生じる化学反応を示している。
図2(A)に示すように、負極13では、鉄鋼スラグ15に含まれる成分からイオンが溶出する。具体的には、鉄鋼スラグ15に含まれる酸化カルシウム(CaO)からカルシウムイオン(Ca
2+)と水酸化物イオン(OH
-)とが溶出する。また、鉄鋼スラグ15に含まれる鉄(Fe)から鉄イオン(Fe
2+)が溶出するとともに放出された電子が負極13へ供与される。負極13は、鉄鋼スラグ15と有機泥16、活性炭17とが混合された鉄鋼スラグ層SLに設置されているので、発生した電子を効率よく負極13に流すことができる。また、鉄鋼スラグ層SLの有機泥16の分解等によって生じる電子が、負極13に供与される。
【0024】
図2(B)に示すように、水層WLでは二酸化炭素の溶解が生じる。
図1の例では、水面に接する空気中の二酸化炭素が水層WLに供給されることにより、二酸化炭素が溶解し、水素イオン(H
+)と炭酸イオン(CO
3
2-)とが生じる。また、ここで生じた炭酸イオンは、負極13で生じたカルシウムイオンと結合して炭酸カルシウム(CaCO
3)となる。また、負極13で生じた水酸化物イオンと鉄イオンとが結合して水酸化鉄(Fe(OH)
2)となる。
【0025】
図2(C)に示すように、正極11では、二酸化炭素の溶解によって発生した水素イオン、公知の微生物燃料電池の反応と同様に鉄鋼スラグ層SLの有機泥16の分解等によって生じる水素イオン、及び水層WL中に存在する水素イオンが、負極13から流れてきた電子を受け取ることにより、水素(H
2)が発生する。
【0026】
上記二酸化炭素の電離反応は、水面近傍の水層WLのpH値が高い程生じ易い。この点、負極13周辺では、鉄鋼スラグ15に含まれる酸化カルシウム(CaO)の溶解によって、水酸化物イオンが生じており、負極13が正極11に十分近ければ、正極11近傍のpH値を高めることができる。水酸化物イオンはpH値を高め二酸化炭素の溶解を進める一方、水素イオンと結合して水(H2O)を生成するので、水素の生成を妨げる。この点、本実施の形態では、鉄イオンと水酸化物イオンとが反応して、水酸化鉄が生成される。これにより、水素イオンと水酸化物イオンとの反応を抑制し、水素の生成量を増加させることができる。また、カルシウムイオン(Ca2+)は、炭酸イオン(CO3
2-)と反応して二酸化炭素(CO2)を固定する。
【0027】
以上、詳細に説明したように、本実施の形態に係る水素生成装置1は、二酸化炭素が供給される水層WLに配置された正極11と、水層WLと連続する水域に鉄鋼スラグ15が配置されてなる鉄鋼スラグ層SLに配置された負極13とを備える。また、水素生成装置1は、正極11及び負極13に接続され、鉄鋼スラグ15の溶解によって生じる電子を正極11に供給する電源14と、を備える。これにより、二酸化炭素が水層WLで電離して生じる水素イオンが、電源14及び鉄鋼スラグ15によって正極11に供給される電子を受け取り、水素が生成される。
【0028】
したがって、水の電気分解による水素生成方法のように、外部から供給される大きな電気エネルギーを消費することなく、エネルギー効率よく水素を生成することができる。具体的には、本実施の形態に係る電源14の電圧は概ね0.6Vであり、水の電気分解を生じるための理論的な電圧である1.23Vより大幅に小さい。また、ガスの改質による水素生成のように化石燃料を使用しないので、二酸化炭素を排出せず、クリーンに水素を生成することが可能である。
【0029】
また、本実施の形態では、鉄鋼スラグ層SLが有機泥16を備え、有機泥16の分解によって生じる電子が負極13に供与されるように構成される。これにより、さらにエネルギー効率よく水素を生成することができる。また、通常は用途が限定される鉄鋼スラグ15を用いて、水素を生成しているので、水素の製造コストを低減することができる。
【0030】
また、本実施の形態では、鉄鋼スラグ層SLが電気伝導性を有する活性炭17を備える。これにより、負極13は、鉄鋼スラグ15の溶解によって生じる電子を効率よく受け取ることができるので、水素の生成量を増加させることが可能となる。
【0031】
本実施の形態に係る水素生成装置1では、電源14として太陽電池を用いることとしたが、これに限られない。例えば、複数の微生物燃料電池を直列又は並列させて水素生成装置1の電源14を構成することとしてもよい。また、微生物燃料電池を構成する正極及び負極の組を複数並列させることとしてもよい。これにより、電源14の発電量を大きくし、水素の生成量を増加させることができる。この場合、微生物燃料電池、正極、負極の数、大きさ等は、水素生成装置1による想定水素生成量、設置される環境等に基づいて選択すればよい。
【0032】
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、屋内又は河川、湖沼、海等の自然環境下等の所定の水域で水素生成を行う水素生成装置について説明したが、より小規模で簡便な水素生成装置を用いて水素を生成することもできる。本実施の形態では、実施の形態1の反応機構を用いた別の実施の形態に係る水素生成装置について説明する。
【0033】
図3(A)、(B)に示すように、本実施の形態に係る水素生成装置30は、容器31、電源40、正極41、導線42、負極43、二酸化炭素を供給する供給部51、水素回収部52を備える。
【0034】
容器31は、正極41、負極43等を含む水素生成装置30の構成要素を収容する容器である。容器31の材質、形状、大きさ等は特に限定されない。本実施の形態に係る容器31は、例えば、軽量で耐久性があり、加工が容易な樹脂製である。また、容器31は、後述する負極43の面積を大きく設定できる円筒状である。容器31の大きさは、例えば、直径30cm~50cm、高さ30cm~50cm程度である。
【0035】
電源40は、実施の形態1の電源14と同様に、正極41及び負極43と接続され、正極41へ電子を供給する。これにより、正極41の周囲の水素イオンから水素が発生する。
【0036】
負極43は、
図3(A)、(B)に示すように、鉄鋼スラグ45と有機泥46とが混合された鉄鋼スラグ層SLに配置される。鉄鋼スラグ層SLは、容器31の内側面に沿って円筒状に配置される。また、鉄鋼スラグ層SLは、
図3(B)に示すように、容器31の底部において円筒状の内部にも配置されていてもよい。
【0037】
鉄鋼スラグ層SLは、円筒状に配置されるように、円筒状の隔壁47によって水層WLと仕切られている。隔壁47の構成は特に限定されず、正極41と負極43との間で水素イオン、水酸化物イオン等のイオンの移動が可能であり、円筒状に配置された鉄鋼スラグ45及び有機泥46が、内部の正極41側へと流れ込むことを抑制できればよい。本実施の形態では、円筒形に形成された網状プラスチックの隔壁47によって、正極41側と負極43側とを仕切ることとしている。また、有機泥46は、負極43の外側及び下側部分に配置される。これにより、正極41側への有機泥46の流入が抑制される。鉄鋼スラグ45及び有機泥46は、実施の形態1と同様のものである。
【0038】
正極41は、
図3(A)、(B)に示すように、円筒状の鉄鋼スラグ層SLの中心部の水層WLに配置された電極である。正極41の材質、形状等は特に限定されず、実施の形態1と同様に、プラチナ又はプラチナメッキされた電極であることが好ましい。本実施の形態に係る正極41は、プラチナメッキされたチタン製の網状電極である。また、正極41の大きさは、2cm×10cmである。
【0039】
負極43の材質、形状等は特に限定されない。本実施の形態に係る負極43は、柔軟性のあるカーボン製の電極であり、鉄鋼スラグ層SLの内部に配置されるように、鉄鋼スラグ層SLと同心の円筒状に配置される。これにより、負極43は、鉄鋼スラグ45の形状に沿って配置され、広い面積で効率よく電子を受け取ることができる。
【0040】
導線42は、
図3(B)に示すように、正極41と負極43とを接続して、負極43で発生した電荷を正極41へ伝えるものである。導線42の素材、径、抵抗値等は、特に限定されず、電源40の電力に適した特性のものを選択すればよい。電源40の電圧は、実施の形態1と同様に概ね0.6Vである。
【0041】
供給部51は、水層WLに二酸化炭素を供給するものである。供給部51の構成は特に限定されず、供給される二酸化炭素の形態に応じて構成すればよい。例えば、二酸化炭素を水溶液として水層WLに供給する場合、図示しない二酸化炭素水溶液のタンクとポンプを用いて、水層WLに二酸化炭素水溶液を流入させればよい。
図3(B)に示すように、本実施の形態では、負極43の上部にも水層WLが形成されており、当該部分の水層WLに二酸化炭素水溶液が流入されるように、供給部51は構成されている。
【0042】
水素回収部52は、正極41の上部に配置され、正極41で発生した水素を回収する。
【0043】
水素生成装置30は、以上のような構成となっており、実施の形態1と同様の反応機構によって水素を生成する。すなわち、鉄鋼スラグ45に含まれる鉄及び有機泥46から負極43に供与される電子が、正極41へ流れる。また、二酸化炭素の供給及び電源40の働きによって水層WLに存在する水素イオンが正極41から電子を受け取ることにより、正極41で水素が生成される。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態に係る水素生成装置30は、実施の形態1と同様に、外部から供給される大きな電気エネルギーを消費することなく、エネルギー効率よく水素を生成することができる。また、水素生成装置30は簡素な構成であるので、所望の水素発生量、施設の規模等に応じて、水素生成装置30の大きさを適宜設定することができる。
【0045】
また、本実施の形態に係る水素生成装置30は、円筒形状の容器31内に正極41及び負極43を配置する構造となっている。これにより、負極43に供与された電子を正極41に効率よく供給できるので、水素の生成量を増加させることができる。また、容器31内に水素生成装置30の構成要素を配置するので、本発明に係る反応機構によって生じるイオン等が反応系外に流出せず、効率よく水素を生成することができる。
【0046】
また、本実施の形態に係る容器31は、円筒形状であることとしたが、これに限られない。例えば、断面が多角形の筒状であることとしてもよい。この場合、負極43は、内部の断面が多角形の筒状であってもよい。
【0047】
また、本実施の形態に係る供給部51は、水層WL中に二酸化炭素水溶液を供給することとしたが、これに限られない。例えば、
図4に示すように、水層WLに接する空気層に二酸化炭素ガスを供給することとしてもよい。また、空気層への供給と水層WLへの供給とを並行して行うこととしてもよい。これにより、二酸化炭素の供給量を細かく設定できるので、水素イオン及び水素の発生量を細かく調整することができる。
【0048】
本実施の形態に係る隔壁47は、網状プラスチックであることとしたが、これに限られない。例えば、素焼板のようなセラミック板としてもよい。この場合、隔壁47によって有機泥46の水層WLへの流入を防ぐことができるので、
図5に示すように、負極43の内側の鉄鋼スラグ層SLに有機泥46を配置することとしてもよい。これにより、有機泥46の分解によって負極43に供与される電子が増加するので、水素の生成量を増加させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、二酸化炭素を排出しないクリーンな水素の生成に好適である。特に、省エネルギーで安価な方法が求められる水素生成に好適である。
【符号の説明】
【0050】
1,30 水素生成装置、11,41 正極、12,42 導線、13,43 負極、14,40 電源、15,45 鉄鋼スラグ、16,46 有機泥、17 活性炭、31 容器、47 隔壁、51 供給部、52 水素回収部、SL 鉄鋼スラグ層、WL 水層