(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119035
(43)【公開日】2024-09-02
(54)【発明の名称】有機電子素子用材料、有機電子素子、および化合物
(51)【国際特許分類】
H10K 30/60 20230101AFI20240826BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20240826BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240826BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240826BHJP
H10K 39/32 20230101ALI20240826BHJP
【FI】
H10K30/60
C07D487/04 140
C07D487/04 CSP
H10K50/15
H10K85/60
H10K39/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008165
(22)【出願日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2023025555
(32)【優先日】2023-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】相原 秀典
(72)【発明者】
【氏名】坂部 将仁
(72)【発明者】
【氏名】磯田 恭佑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏亮
(72)【発明者】
【氏名】新井 信道
(72)【発明者】
【氏名】新屋 宏和
(72)【発明者】
【氏名】岡田 壮史
(72)【発明者】
【氏名】太田 恵理子
【テーマコード(参考)】
3K107
4C050
4M118
5F149
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107CC12
3K107DD71
3K107DD78
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB04
4C050CC08
4C050EE02
4C050FF05
4C050FF10
4C050GG01
4C050HH01
4C050HH04
4M118AA10
4M118AB01
4M118BA05
4M118CA14
4M118CB14
4M118CB20
4M118HA26
5F149AB11
5F149AB13
5F149BB03
5F149CB07
5F149FA02
5F149FA03
5F149FA04
5F149FA05
5F149GA02
5F149XA43
(57)【要約】 (修正有)
【課題】正孔輸送能力を向上させる有機電子素子用材料などの提供。
【解決手段】式(1)で示されるトリプタントリン化合物を含む、有機電子素子用材料。
(式(1)中、A
1は窒素原子またはC-R
1を、A
2は窒素原子またはC-R
2を、A
3は窒素原子またはC-R
3を、A
4は窒素原子またはC-R
4を、A
5は窒素原子またはC-R
5を、A
6は窒素原子またはC-R
6を、A
7は窒素原子またはC-R
7を、A
8は窒素原子またはC-R
8を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるトリプタントリン化合物を含む、有機電子素子用材料。
【化1】
(式(1)中、
A
1は窒素原子またはC-R
1を表し、A
2は窒素原子またはC-R
2を表し、A
3は窒素原子またはC-R
3を表し、A
4は窒素原子またはC-R
4を表し、A
5は窒素原子またはC-R
5を表し、A
6は窒素原子またはC-R
6を表し、A
7は窒素原子またはC-R
7を表し、A
8は窒素原子またはC-R
8を表す;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;ハロゲン原子;ニトロ基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R
11)
2;炭素数1~8のアルキル基;炭素数1~8のアルキルオキシ基;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R
12)
2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8のうち隣り合うもの同士は、互いに結合して環を形成していてもよい;
R
11およびR
12は、各々独立に、炭素数1~8のアルキル基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、および炭素数1~8のアルキルチオ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、および炭素数1~8のアルキルチオ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表し、複数のR
11およびR
12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、同一の原子に結合する2つのR
11は互いに結合して環を形成していてもよく、同一の原子に結合する2つのR
12は互いに結合して環を形成していてもよい;
R
9およびR
10は、各々独立に、シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;フッ素原子;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、およびペンタフルオロスルファニル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、およびペンタフルオロスルファニル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す。)
【請求項2】
前記R1~R8が、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;ハロゲン原子;ニトロ基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基である、請求項1に記載の有機電子素子用材料。
【請求項3】
前記R1~R8が、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~4のフルオロアルキル基;フッ素原子;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基である、請求項1に記載の有機電子素子用材料。
【請求項4】
前記R9およびR10が、各々独立に、シアノ基;炭素数1~4のフルオロアルキル基;フッ素原子;またはシアノ基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、およびフッ素原子からなる群から選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基である、請求項1に記載の有機電子素子用材料。
【請求項5】
前記R9およびR10が、各々独立に、シアノ基または炭素数1~4のフルオロアルキル基である、請求項1に記載の有機電子素子用材料。
【請求項6】
前記R9およびR10が同じ基である、請求項1に記載の有機電子素子用材料。
【請求項7】
前記A1がC-R1を表し、前記A2がC-R2を表し、前記A3がC-R3を表し、前記A4がC-R4を表し、前記A5がC-R5を表し、前記A6がC-R6を表し、前記A7がC-R7を表し、前記A8がC-R8を表す、請求項1に記載の有機電子素子用材料。
【請求項8】
前記R1~R8のうち6つまたは7つが水素原子である、請求項1に記載の有機電子素子用材料。
【請求項9】
光電変換素子用正孔輸送促進材である、請求項1~8のいずれか一項に記載の有機電子素子用材料。
【請求項10】
第一の電極、第二の電極、および前記第一の電極と前記第二の電極の間に配置された有機層を含む有機電子素子であって、前記有機層は、請求項1~8のいずれか一項に記載の有機電子素子用材料を含有する、有機電子素子。
【請求項11】
下記式(2)で示されるトリプタントリン化合物:
【化2】
(式(2)中、
A
21は窒素原子またはC-R
21を表し、A
22は窒素原子またはC-R
22を表し、A
23は窒素原子またはC-R
23を表し、A
24は窒素原子またはC-R
24を表し、A
25は窒素原子またはC-R
25を表し、A
26は窒素原子またはC-R
26を表し、A
27は窒素原子またはC-R
27を表し、A
28は窒素原子またはC-R
28を表す;
R
21、R
22、R
24、R
25およびR
28は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;ハロゲン原子;ニトロ基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R
11)
2;炭素数1~8のアルキル基;炭素数1~8のアルキルオキシ基;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R
12)
2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す;
R
23は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R
11)
2;炭素数1~8のアルキル基;炭素数1~8のアルキルオキシ基;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R
12)
2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す;
R
26は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;ハロゲン原子;ニトロ基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R
11)
2;炭素数1~8のアルキル基;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R
12)
2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す;
R
27は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R
11)
2;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R
12)
2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す;
R
11およびR
12は、各々独立に、炭素数1~8のアルキル基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、および炭素数1~8のアルキルチオ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、および炭素数1~8のアルキルチオ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表し、複数のR
11およびR
12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、同一の原子に結合する2つのR
11は互いに結合して環を形成していてもよく、同一の原子に結合する2つのR
12は互いに結合して環を形成していてもよい;
R
29およびR
30は、各々独立に、シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;フッ素原子;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、およびペンタフルオロスルファニル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、およびペンタフルオロスルファニル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す。
ただし、前記A
21がC-R
21を表し、前記A
22がC-R
22を表し、前記A
23がC-R
23を表し、前記A
24がC-R
24を表し、前記A
25がC-R
25を表し、前記A
26がC-R
26を表し、前記A
27がC-R
27を表し、前記A
28がC-R
28を表すとき、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27およびR
28は全て同時に水素原子にはなり得ない。)
【請求項12】
R21、R22、R24、R25、R26およびR28が、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;フッ素原子;ニトロ基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基である、請求項11に記載のトリプタントリン化合物。
【請求項13】
R21、R22、R24、R25、R26およびR28が、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~6のフルオロアルキル基;フッ素原子;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基である、請求項11に記載のトリプタントリン化合物。
【請求項14】
R23、およびR27が、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~6のフルオロアルキル基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基である、請求項11に記載のトリプタントリン化合物。
【請求項15】
R29およびR30が、各々独立に、シアノ基;炭素数1~6のフルオロアルキル基;フッ素原子;またはシアノ基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、およびフッ素原子からなる群から選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基である、請求項11に記載のトリプタントリン化合物。
【請求項16】
R29およびR30が、シアノ基または炭素数1~4のフルオロアルキル基である、請求項11に記載のトリプタントリン化合物。
【請求項17】
R29およびR30が同じ基である、請求項11に記載のトリプタントリン化合物。
【請求項18】
前記A21がC-R21を表し、前記A22がC-R22を表し、前記A23がC-R23を表し、前記A24がC-R24を表し、前記A25がC-R25を表し、前記A26がC-R26を表し、前記A27がC-R27を表し、前記A28がC-R28を表す、請求項11に記載のトリプタントリン化合物。
【請求項19】
R21~R28のうち6つまたは7つが水素原子である、請求項11に記載のトリプタントリン化合物。
【請求項20】
R21、R22、R24、R25、R26およびR28が水素原子であり、R23およびR27が各々独立に水素原子;シアノ基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基である、請求項11に記載のトリプタントリン化合物。
【請求項21】
下記式(A-1)~(A-11)、(A-151)、および(A-152)のいずれかで表される、請求項11に記載のトリプタントリン化合物。
【化3】
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のトリプタントリン化合物、該化合物を含む有機電子素子用材料、および該有機電子素子用材料を用いた有機電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、有機物を用いた新しい高機能デバイスの創製が積極的に試みられており、特に光電変換素子、有機EL素子等の有機電子素子に関する研究開発が活発に行われ、デバイスの高性能化を目指した材料・デバイス設計が進められている。例えば、動画撮影用途に用いられる光電変換素子においては、受光層で生成したキャリア(電子および正孔)を電極に運ぶ速度が遅いと残像の原因になるという問題があった。有機EL素子においては、電極から発光層へキャリアを輸送する速度が遅いと、駆動電圧を上昇させるという問題があった。したがって、デバイスの高性能化のためには、素子内でのキャリアの高効率な移動が必要とされている。
【0003】
例えば、特定のトリプタントリン誘導体が、その電子輸送性を利用して電子写真感光体に用いられている(特許文献1参照)が、有機電子素子の分野においては一層の性能向上が求められており、そのためにさらなる改良を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、正孔の輸送能力を向上させることができる有機電子素子用材料、該有機電子素子用材料を用いた有機電子素子、および、該有機電子素子用材料に好適に用いることができるトリプタントリン化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定のトリプタントリン化合物が、光電変換素子や有機EL素子の有機電子素子において正孔輸送能力を向上させ得ること、特に受光層を有する光電変換素子である有機電子素子において正孔輸送能力を向上させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の態様を包含するものである。
[1] 下記式(1)で示されるトリプタントリン化合物を含む、有機電子素子用材料。
【化1】
(式(1)中、
A
1は窒素原子またはC-R
1を表し、A
2は窒素原子またはC-R
2を表し、A
3は窒素原子またはC-R
3を表し、A
4は窒素原子またはC-R
4を表し、A
5は窒素原子またはC-R
5を表し、A
6は窒素原子またはC-R
6を表し、A
7は窒素原子またはC-R
7を表し、A
8は窒素原子またはC-R
8を表す;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;ハロゲン原子;ニトロ基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R
11)
2;炭素数1~8のアルキル基;炭素数1~8のアルキルオキシ基;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R
12)
2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表し、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8のうち隣り合うもの同士は、互いに結合して環を形成していてもよい;
R
11およびR
12は、各々独立に、炭素数1~8のアルキル基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、および炭素数1~8のアルキルチオ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、および炭素数1~8のアルキルチオ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表し、複数のR
11およびR
12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、同一の原子に結合する2つのR
11は互いに結合して環を形成していてもよく、同一の原子に結合する2つのR
12は互いに結合して環を形成していてもよい;
R
9およびR
10は、各々独立に、シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;フッ素原子;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、およびペンタフルオロスルファニル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、およびペンタフルオロスルファニル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す。)
[2] 前記R
1~R
8が、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;ハロゲン原子;ニトロ基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R
11)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R
11)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基である、[1]に記載の有機電子素子用材料。
[3] 前記R
1~R
8が、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~4のフルオロアルキル基;フッ素原子;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R
11)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R
11)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基である、[1]~[2]のいずれかに記載の有機電子素子用材料。
[4] 前記R
9およびR
10が、各々独立に、シアノ基;炭素数1~4のフルオロアルキル基;フッ素原子;またはシアノ基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、およびフッ素原子からなる群から選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基である、[1]~[3]のいずれかに記載の有機電子素子用材料。
[5] 前記R
9およびR
10が、各々独立に、シアノ基または炭素数1~4のフルオロアルキル基である、[1]~[4]のいずれかに記載の有機電子素子用材料。
[6] 前記R
9およびR
10が同じ基である、[1]~[5]のいずれかに記載の有機電子素子用材料。
[7] 前記A
1がC-R
1を表し、前記A
2がC-R
2を表し、前記A
3がC-R
3を表し、前記A
4がC-R
4を表し、前記A
5がC-R
5を表し、前記A
6がC-R
6を表し、前記A
7がC-R
7を表し、前記A
8がC-R
8を表す、[1]~[6]のいずれかに記載の有機電子素子用材料。
[8] 前記R
1~R
8のうち6つまたは7つが水素原子である、[1]~[7]のいずれかに記載の有機電子素子用材料。
[9] 光電変換素子用正孔輸送促進材である、[1]~[8]のいずれかに記載の有機電子素子用材料。
[10] 第一の電極、第二の電極、および前記第一の電極と前記第二の電極の間に配置された有機層を含む有機電子素子であって、前記有機層は、[1]~[8]のいずれかに記載の有機電子素子用材料を含有する、有機電子素子。
[11] 下記式(2)で示されるトリプタントリン化合物:
【化2】
(式(2)中、
A
21は窒素原子またはC-R
21を表し、A
22は窒素原子またはC-R
22を表し、A
23は窒素原子またはC-R
23を表し、A
24は窒素原子またはC-R
24を表し、A
25は窒素原子またはC-R
25を表し、A
26は窒素原子またはC-R
26を表し、A
27は窒素原子またはC-R
27を表し、A
28は窒素原子またはC-R
28を表す;
R
21、R
22、R
24、R
25およびR
28は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;ハロゲン原子;ニトロ基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R
11)
2;炭素数1~8のアルキル基;炭素数1~8のアルキルオキシ基;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R
12)
2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す;
R
23は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R
11)
2;炭素数1~8のアルキル基;炭素数1~8のアルキルオキシ基;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R
12)
2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す;
R
26は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;ハロゲン原子;ニトロ基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R
11)
2;炭素数1~8のアルキル基;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R
12)
2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す;
R
27は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R
11)
2;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R
12)
2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R
11)
2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R
12)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す;
R
11およびR
12は、各々独立に、炭素数1~8のアルキル基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、および炭素数1~8のアルキルチオ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、および炭素数1~8のアルキルチオ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表し、複数のR
11およびR
12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、同一の原子に結合する2つのR
11は互いに結合して環を形成していてもよく、同一の原子に結合する2つのR
12は互いに結合して環を形成していてもよい;
R
29およびR
30は、各々独立に、シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;フッ素原子;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、およびペンタフルオロスルファニル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、およびペンタフルオロスルファニル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す。
ただし、前記A
21がC-R
21を表し、前記A
22がC-R
22を表し、前記A
23がC-R
23を表し、前記A
24がC-R
24を表し、前記A
25がC-R
25を表し、前記A
26がC-R
26を表し、前記A
27がC-R
27を表し、前記A
28がC-R
28を表すとき、R
21、R
22、R
23、R
24、R
25、R
26、R
27およびR
28は全て同時に水素原子にはなり得ない。)
[12] R
21、R
22、R
24、R
25、R
26およびR
28が、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;フッ素原子;ニトロ基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R
11)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R
11)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基である、[11]に記載のトリプタントリン化合物。
[13] R
21、R
22、R
24、R
25、R
26およびR
28が、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~6のフルオロアルキル基;フッ素原子;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R
11)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R
11)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基である、[11]~[12]のいずれかに記載のトリプタントリン化合物。
[14] R
23、およびR
27が、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~6のフルオロアルキル基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R
11)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R
11)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基である、[11]~[13]のいずれかに記載のトリプタントリン化合物。
[15] R
29およびR
30が、各々独立に、シアノ基;炭素数1~6のフルオロアルキル基;フッ素原子;またはシアノ基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、およびフッ素原子からなる群から選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基である、[11]~[14]のいずれかに記載のトリプタントリン化合物。
[16] R
29およびR
30が、シアノ基または炭素数1~4のフルオロアルキル基である、[11]~[15]のいずれかに記載のトリプタントリン化合物。
[17] R
29およびR
30が同じ基である、[11]~[16]のいずれかに記載のトリプタントリン化合物。
[18] 前記A
21がC-R
21を表し、前記A
22がC-R
22を表し、前記A
23がC-R
23を表し、前記A
24がC-R
24を表し、前記A
25がC-R
25を表し、前記A
26がC-R
26を表し、前記A
27がC-R
27を表し、前記A
28がC-R
28を表す、[11]~[17]のいずれかに記載のトリプタントリン化合物。
[19] R
21~R
28のうち6つまたは7つが水素原子である、[11]~[18]のいずれかに記載のトリプタントリン化合物。
[20] R
21、R
22、R
24、R
25、R
26およびR
28が水素原子であり、R
23およびR
27が各々独立に水素原子;シアノ基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R
11)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R
11)
2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基である、[11]~[19]のいずれかに記載のトリプタントリン化合物。
[21] 下記式(A-1)~(A-11)、(A-151)、および(A-152)のいずれかで表される、[11]~[20]のいずれかに記載のトリプタントリン化合物。
【化3】
【化4】
【発明の効果】
【0008】
本発明により、正孔の輸送能力を向上させることができる有機電子素子用材料、該有機電子素子用材料を用いた有機電子素子、および、該有機電子素子用材料に好適に用いることができるトリプタントリン化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る光電変換素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明に係る有機EL素子の積層構成の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(有機電子素子)
本発明の一実施形態は、光電変換素子や有機電界発光素子(有機EL素子)からなる有機電子素子を対象とし、該有機電子素子に式(1)で示されるトリプタントリン化合物を含有させることにより、正孔の輸送能力を向上させることができる有機電子素子を提供するものである。
また、本発明の一実施形態は、特に、受光層を有する光電変換素子である有機電子素子を対象とし、該有機電子素子に式(1)で示されるトリプタントリン化合物を含有させることにより、正孔の輸送能力を向上させることができる有機電子素子を提供するものである。
【0011】
本発明の有機電子素子は、光電変換素子および有機電界発光素子(有機EL素子)を含む。光電変換素子は、光エネルギーを電気エネルギーや電気信号に変換する素子であり、撮像素子、光センサ、太陽電池等を含む。
【0012】
本発明の有機電子素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層を含む。
有機層は、下記式(1)で示されるトリプタントリン化合物を含む有機電子素子用材料を含有する。有機電子素子用材料は、式(1)で示されるトリプタントリン化合物自体であってもよい。
なお、式(1)で示されるトリプタントリン化合物を含む有機電子素子用材料も本発明の対象である。
【0013】
【化5】
上記式(1)で示される化合物についての詳しい説明は、後述する。
有機層は、正孔輸送層、および上記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料を含有する正孔輸送促進層を含むか、または、正孔輸送材料と前記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料とを混合してなる層を含む態様であることが好ましい。
ここで、正孔輸送層は正孔を輸送する役割を有し、正孔輸送材料を含有する。正孔輸送促進層は、第一の電極と正孔輸送層の間に配置され、正孔輸送層と電極の間の正孔のやりとりをスムーズにする役割を有し、正孔輸送促進材料を含有する。
本発明では、上記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料は、正孔輸送促進材料として用いられる。
【0014】
本発明の有機電子素子の好ましい実施態様として、光電変換素子が挙げられる。光電変換素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層および受光層を含む。
以下、有機電子素子の素子構成について、光電変換素子を例に説明する。
【0015】
<光電変換素子の構成>
本発明に係る光電変換素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層を含み、有機層は正孔輸送領域を含む。正孔輸送領域は、第一の電極と受光層との間の領域を指し、例えば正孔輸送層および正孔輸送促進層を含む。
本発明では、正孔輸送促進層に含有される正孔輸送促進材料として、上記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料を用いることができる。
正孔輸送領域は、好ましくは第一の電極に隣接している。
光電変換素子は、他の層を含むことができる。他の層としては一般に光電変換素子に使用される層が挙げられる。例えば、受光層、電子輸送層、正孔阻止層、電子阻止層、バッファ層等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明に係る光電変換素子は、例えば、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、および第二の電極がこの順で積層されているか、または第一の電極、正孔輸送層を形成する正孔輸送材料と上記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料とが混合されてなる層、および第二の電極がこの順で積層されている。
また、光電変換素子は、例えば、第一の電極、正孔輸送促進層、および正孔輸送層がこの順で隣接して積層されていてもよいし、第一の電極と正孔輸送促進層の間、または正孔輸送促進層と正孔輸送層の間にバッファ層等の他の層が介在していてもよい。
【0017】
一形態において、本発明に係る光電変換素子は、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、受光層、および第二の電極がこの順で積層されている。別の形態において、本発明に係る光電変換素子は、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、受光層、電子輸送層、および第二の電極がこの順で積層されている。上記各層は隣接して積層されていてもよいし、上記任意の層と層の間に他の層が介在していてもよい。
【0018】
光電変換素子は、第一の電極側および第二の電極側のいずれから光が入射してもよく、第一の電極および第二の電極のいずれが透明電極であってもよい。例えば、透明電極(第二の電極)、電子輸送層、受光層、正孔輸送層、正孔輸送促進層、および金属電極(第一の電極)の順に積層された構造であってよく、透明電極(第一の電極)、正孔輸送促進層、正孔輸送層、受光層、電子輸送層、および金属電極(第二の電極)の順に積層された構造であってもよい。更に、第一の電極および第二の電極は共に透明電極であってもよい。
【0019】
次に、有機電子素子が有機EL素子の場合についても説明する。
【0020】
<有機EL素子の構成>
本発明に係る有機EL素子は、第一の電極、第二の電極、および第一の電極と第二の電極の間に配置された有機層を含み、有機層は正孔輸送領域を含む。正孔輸送領域は、第一の電極と発光層との間の領域を指し、例えば正孔輸送層および正孔輸送促進層を含む。
本発明では、正孔輸送促進層に含有される正孔輸送促進材料として、上記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料を用いることができる。
正孔輸送領域は、好ましくは第一の電極に隣接している。
有機EL素子は、他の層を含むことができる。他の層としては一般に有機EL素子に使用される層が挙げられる。例えば、発光層、電子輸送層、正孔阻止層、電子阻止層、バッファ層等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明に係る有機EL素子は、例えば、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、および第二の電極がこの順で積層されているか、または第一の電極、正孔輸送層を形成する正孔輸送材料と上記式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料とが混合されてなる層、および第二の電極がこの順で積層されている。
また、有機EL素子は、例えば、第一の電極、正孔輸送促進層、および正孔輸送層がこの順で隣接して積層されていてもよいし、また、第一の電極と正孔輸送促進層の間、または正孔輸送促進層と正孔輸送層の間にバッファ層等の他の層が介在していてもよい。
【0022】
一形態において、本発明に係る有機EL素子は、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、発光層、および第二の電極がこの順で積層されている。別の形態において、本発明に係る有機EL素子は、第一の電極、正孔輸送促進層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および第二の電極がこの順で積層されている。上記各層は隣接して積層されていてもよいし、上記任意の層と層の間に他の層が介在していてもよい。
【0023】
有機EL素子は、第一の電極側および第二の電極側のいずれから光を取り出してもよく、第一の電極および第二の電極のいずれが透明電極であってもよい。例えば、透明電極(第二の電極)、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔輸送促進層、および金属電極(第一の電極)の順に積層された構造であってよく、透明電極(第一の電極)、正孔輸送促進層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、および金属電極(第二の電極)の順に積層された構造であってもよい。更に、第一の電極および第二の電極は共に透明電極であってもよい。
【0024】
次に、本発明の有機電子素子において、正孔輸送促進材料として有機層に含有される式(1)で示される化合物を含む有機電子素子用材料について説明する。
【0025】
<有機電子素子用材料>
有機電子素子用材料は、下記式(1)で示される化合物を含む。有機電子素子用材料は、式(1)で示される化合物自体であってもよい。
【0026】
【0027】
式(1)中、A1は窒素原子またはC-R1を表し、A2は窒素原子またはC-R2を表し、A3は窒素原子またはC-R3を表し、A4は窒素原子またはC-R4を表し、A5は窒素原子またはC-R5を表し、A6は窒素原子またはC-R6を表し、A7は窒素原子またはC-R7を表し、A8は窒素原子またはC-R8を表す。
【0028】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;ハロゲン原子;ニトロ基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R11)2;炭素数1~8のアルキル基;炭素数1~8のアルキルオキシ基;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R12)2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R11)2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R12)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R11)2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R12)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表し、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうち隣り合うもの同士は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0029】
R11およびR12は、各々独立に、炭素数1~8のアルキル基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、および炭素数1~8のアルキルチオ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、および炭素数1~8のアルキルチオ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表し、複数のR11およびR12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、同一の原子に結合する2つのR11は互いに結合して環を形成していてもよく、同一の原子に結合する2つのR12は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0030】
R9およびR10は、各々独立に、シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;フッ素原子;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、およびペンタフルオロスルファニル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、およびペンタフルオロスルファニル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す。
【0031】
有機電子素子の性能向上に資する点で、A1~A8のうち0~3箇所が窒素原子であることが好ましく、材料の製造コストを低下させる点で、A1~A8の全てが窒素原子ではないことがより好ましい。
すなわち、A1がC-R1を表し、A2がC-R2を表し、A3がC-R3を表し、A4がC-R4を表し、A5がC-R5を表し、A6がC-R6を表し、A7がC-R7を表し、A8がC-R8を表すことがより好ましい。
【0032】
R1~R8は、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基又は原子が好ましい。
・水素原子
・シアノ基
・炭素数1~8のフルオロアルキル基
・ハロゲン原子
・ニトロ基
・炭素数1~8のフルオロアルコキシ基
・ペンタフルオロスルファニル基
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基
【0033】
R1~R8は、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基又は原子がより好ましい。
・水素原子
・シアノ基
・炭素数1~4のフルオロアルキル基
・フッ素原子
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基
【0034】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうち隣り合うもの同士は、互いに結合して環を形成していてもよく、形成される環は以下の基又は原子で置換されていてもよい。
・シアノ基
・炭素数1~8のフルオロアルキル基
・ハロゲン原子
・ニトロ基
・炭素数1~8のフルオロアルコキシ基
・ペンタフルオロスルファニル基
・P(=O)(R11)2
・炭素数1~8のアルキル基
・炭素数1~8のアルキルオキシ基
・炭素数1~8のアルキルチオ基
・N(R12)2
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R11)2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R12)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R11)2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R12)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基
【0035】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうち隣り合うもの同士が互いに結合して形成される環は、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基又は原子で置換されていることが好ましい。
・シアノ基
・炭素数1~8のフルオロアルキル基
・ハロゲン原子
・ニトロ基
・炭素数1~8のフルオロアルコキシ基
・ペンタフルオロスルファニル基
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基
【0036】
本明細書において、フルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよい。フルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、パーフルオロプロパン-1-イル基、パーフルオロプロパン-2-イル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル基、パーフルオロヘキサン-1-イル基、パーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロヘプタン-1-イル基、パーフルオロオクタン-1-イル基、等が挙げられる。炭素数1~6のフルオロアルキル基が好ましく、有機電子素子用材料の取扱が容易になる点で、炭素数1~4のフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0037】
本明細書において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。有機電子素子の性能向上に資する点で、フッ素原子が好ましい。
【0038】
本明細書において、フルオロアルコキシ基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよい。フルオロアルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、パーフルオロプロパン-1-イルオキシ基、パーフルオロプロパン-2-イルオキシ基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イルオキシ基、パーフルオロヘキサン-1-イルオキシ基、パーフルオロシクロヘキシルオキシ基、パーフルオロヘプタン-1-イルオキシ基、パーフルオロオクタン-1-イルオキシ基、等が挙げられる。炭素数1~6のフルオロアルコキシ基が好ましく、有機電子素子用材料の取扱が容易になる点で、炭素数1~4のフルオロアルコキシ基が特に好ましい。
【0039】
本明細書において、アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、2-メチルシクロプロピル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、2-メチルシクロブチル基、n-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、n-オクチル基、2-オクチル基、3-オクチル基、4-オクチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、等が挙げられる。炭素数1~6のアルキル基が好ましく、有機電子素子用材料の取扱が容易になる点で、炭素数1~4のアルキル基が特に好ましい。
【0040】
本明細書において、アルキルオキシ基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよい。アルキルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、等が挙げられる。炭素数1~6のアルキルオキシ基が好ましく、有機電子素子用材料の取扱が容易になる点で、炭素数1~4のアルキルオキシ基が特に好ましい。
【0041】
本明細書において、アルキルチオ基は、直鎖状であっても分岐状であっても環状であってもよい。アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、シクロプロピルチオ基、n-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、イソブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、シクロペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n-ヘプチルチオ基、n-オクチルチオ基、等が挙げられる。炭素数1~6のアルキルチオ基が好ましく、有機電子素子用材料の取扱が容易になる点で、炭素数1~4のアルキルチオ基が特に好ましい。
【0042】
本明細書において、芳香族炭化水素基の炭素数は、6~18であってよく、好ましくは6~12である。芳香族炭化水素基は、単環の芳香族炭化水素基、2環以上の芳香環が連結した芳香族炭化水素基、または、縮合環の芳香族炭化水素基であってよい。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ベンゾフルオレニル基、トリフェニレニル基、フルオランテニル基等が挙げられ、合成が容易な点で、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基が好ましく、材料の蒸着性がよい点でフェニル基が特に好ましい。
【0043】
上記芳香族炭化水素基は、芳香環上の水素原子の一部または全部が以下の基又は原子で置換されていてもよい。
・シアノ基
・炭素数1~8のフルオロアルキル基
・ハロゲン原子
・ニトロ基
・炭素数1~8のフルオロアルコキシ基
・ペンタフルオロスルファニル基
・P(=O)(R11)2
・炭素数1~8のアルキル基
・炭素数1~8のアルキルオキシ基
・炭素数1~8のアルキルチオ基
・N(R12)2
置換された芳香族炭化水素基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。なお、下記式中、Raは上記基又は原子を表し、Raが複数存在するとき、複数のRaは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0044】
【0045】
上記芳香族炭化水素基は、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基又は原子で置換されたフェニル基がより好ましい。
・シアノ基
・炭素数1~8のフルオロアルキル基
・ハロゲン原子
・ニトロ基
・炭素数1~8のフルオロアルコキシ基
・ペンタフルオロスルファニル基
【0046】
本明細書において、ヘテロ芳香族基の核原子数は、5~18であってよく、好ましくは5~12である。ヘテロ芳香族基は、単環のヘテロ芳香族基、2環以上の芳香環が連結したヘテロ芳香族基、又は、縮合環のヘテロ芳香族基であってよい。なお、ヘテロ芳香族基が複数の芳香環を有する場合、当該芳香環の少なくとも一つがヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等)を含んでいればよい。ヘテロ芳香族基としては、例えば、ピロリル基、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、ピラジル基、ピリミジル基、1,3,5-トリアジル基、インドリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾイソチアゾリル基、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、キナゾリル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基、フェナジン基、チアントレニル基等が挙げられ、合成が容易な点で、ピリジル基、チエニル基、チアゾリル基、キノリル基、ピラジル基、ピリミジル基、1,3,5-トリアジル基が好ましく、有機電子素子の性能向上に資する点で、ピリジル基が特に好ましい。
【0047】
上記ヘテロ芳香族基は、ヘテロ芳香族基上の水素原子の一部または全部が以下の基又は原子で置換されていてもよい。
・シアノ基
・炭素数1~8のフルオロアルキル基
・ハロゲン原子
・ニトロ基
・炭素数1~8のフルオロアルコキシ基
・ペンタフルオロスルファニル基
・P(=O)(R11)2
・炭素数1~8のアルキル基
・炭素数1~8のアルキルオキシ基
・炭素数1~8のアルキルチオ基
・N(R12)2
置換されたヘテロ芳香族基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられる。なお、下記式中、Raは、上記基又は原子を表し、Raが複数存在するとき、複数のRaは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0048】
【0049】
上記ヘテロ芳香族基は、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基又は原子で置換されたピリジル基がより好ましい。
・シアノ基
・炭素数1~8のフルオロアルキル基
・ハロゲン原子
・ニトロ基
・炭素数1~8のフルオロアルコキシ基
・ペンタフルオロスルファニル基
【0050】
R9およびR10は、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基が好ましい。
・シアノ基
・炭素数1~4のフルオロアルキル基
・フッ素原子
・シアノ基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、およびフッ素原子からなる群から選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基
置換されたフェニル基は、有機電子素子の性能向上に資する点で、パーフルオロフェニル基、4-シアノフェニル基または2,3,5,6-テトラフルオロ-4-シアノフェニル基であることが好ましい。
【0051】
R9およびR10は、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基がより好ましい。
・シアノ基
・炭素数1~4のフルオロアルキル基
【0052】
材料の精製コストを低下させる点から、R9およびR10は同じ基であることが好ましい。
【0053】
材料の製造コストを低下させる点から、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうち6つまたは7つが水素原子であることが好ましい。
【0054】
材料の製造コストを低下させる点から、R1、R2、R4、R5、R6およびR8が水素原子であり、
R3およびR7が各々独立に水素原子;シアノ基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換された単環のヘテロ芳香族基であることが好ましい。
【0055】
本実施形態のトリプタントリン化合物としては、例えば、下記式(A-1)~(A-152)および(B-1)~(B-10)で表される化合物を例示することができ、(A-1)~(A-30)、(A-151)、および(A-152)が好ましく、(A-1)~(A-11)、(A-151)、および(A-152)がことさら好ましい。なお、本実施形態のトリプタントリン化合物は、以下に例示した化合物の限りではない。なお、下記化合物中、「Me」はメチル基を表す。
【0056】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【0057】
[製造方法]
本実施形態のトリプタントリン化合物の製造方法は特に限定されない。例えば、下記製造方法(1-1)で示す反応により製造することができる。
【化27】
【0058】
式中、A1~A8、R1~R8、R9およびR10は、上記と同義である。
【0059】
製造方法(1-1)の反応条件は特に限定されず、例えば、汎用的なKnoevenagel反応の条件を適用すること、もしくは合成実施例1~13に開示した方法に従うことで収率よく目的物を得ることができる。
【0060】
製造方法(1-1)は溶媒中で実施してもよく、該溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロアルカン;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン等の芳香族炭化水素;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4-フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ-ラクトン等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン(NMP)等のアミド;N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N’-ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレア;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2,2,2-トリフルオロエタノール等のアルコール;等が挙げられる。これらは1種のみで用いてもよく、任意の比で混合して用いてもよい。溶媒の使用量に特に制限はない。これらのうち、反応収率がよい点でクロロホルム、ジクロロメタン、THF、DMFが好ましい。
【0061】
製造方法(1-1)の反応を促進する目的で、アルミナ、シリカゲル等の固体酸;四塩化チタン、四塩化スズ、五塩化アンチモン等の金属塩化物;トリエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の有機塩基;などを加えることができる。反応収率の点で有機塩基が好ましく、生成物の純度の点でピリジンがとりわけ好ましい。
【0062】
製造方法(1-1)は、-80℃~300℃から適宜選択された温度にて実施することができ、反応収率がよい点で-20℃~150℃から適宜選択された温度にて実施することが好ましく、0℃~100℃から適宜選択された温度にて実施することがとりわけ好ましい。
【0063】
式(C-1)で表される化合物は、例えば、文献(New.J.Chem.2021,45,14633.)もしくは合成参考例2,3,4,5,7,8,10,11,13,15,18,19,20に開示された方法に基づいて合成することができる。
【0064】
式(D-1)で表される化合物は、市販品を用いることができる。
【0065】
本実施形態のトリプタントリン化合物は、製造方法(1-1)の終了後に通常の処理をすることで得られる。必要に応じて、洗浄、沈殿、ろ過、透析、再結晶、カラムクロマトグラフィー、分取HPLC、ソックスレー抽出等の当業者が有機化合物の精製に用いる汎用的な手段を適宜用いて精製してもよい。
【0066】
<<式(1)で示される化合物の作用効果>>
式(1)で示される化合物は、下記式(1A)で表されるトリプタントリン骨格を有しており、この強いアクセプター骨格により、正孔輸送材料のHOMO軌道との強い相互作用が期待される。つまり、有機電子素子(例えば、光電変換素子)中の層(例えば、正孔輸送促進層)が式(1)で示される化合物を含有することにより、隣接する正孔輸送層のHOMO軌道との相互作用が高まり、正孔輸送層と正孔輸送促進層の間のキャリア授受が促進されることが期待される。このように、式(1)で示される化合物は、深いLUMO準位を有するため、正孔輸送層と電極の間の正孔のやり取りがスムーズになることが期待される。
【化28】
(式(1A)中、Aは、窒素原子又はC-*(*は、結合手を表す。)を表す。)
【0067】
また、式(1)で示される化合物のR9およびR10が電子求引性基を有することにより、更に深いLUMO準位を有し、正孔輸送層と電極の間の正孔のやり取りがよりスムーズになることが期待される。
【0068】
本発明者らは、上述のように、式(1)で示される化合物が、正孔輸送層と電極の間の正孔のやり取りをスムーズにする正孔輸送促進材料として有効に使用し得ることを見出した。そして、実際に有機電子素子(例えば、光電変換素子)において、式(1)で示される化合物(正孔輸送促進材料)を正孔輸送材料と組み合わせた際にその正孔輸送能力が促進されることを確認した。すなわち、有機電子素子において、受光層内で発生したキャリアを電極側に取り出す際のエネルギー障壁を、式(1)で示される化合物によって低減し得ることを確認した。
【0069】
<実施形態>
本発明の有機電子素子(例えば、光電変換素子)の積層構成として、例えば下記(i)または下記(ii)の構成が挙げられる。
(i):第一の電極/正孔輸送促進層/正孔輸送層/受光層/第二の電極
(ii):第一の電極/正孔輸送促進層/正孔輸送層/受光層/電子輸送層/第二の電極
尚、有機電子素子が例えば有機EL素子である場合には、上記(i)または上記(ii)の構成において、「受光層」を「発光層」に読み替えることができる。
【0070】
以下、本発明に係る光電変換素子および有機EL素子を、上記(ii)の構成を例に挙げて、
図1および
図2を参照しながら更に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る光電変換素子の積層構成の一例を示す概略断面図であり、
図2は本発明に係る有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
【0071】
<<第1の実施形態>>
第1の実施形態による光電変換素子は、
図1に示す積層構成を備えた有機撮像素子または光センサである。
光電変換素子1は、第一の電極11(第一の電極)、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、電子輸送層15、および第二の電極16(第二の電極)をこの順で備える。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。
【0072】
図1に示す光電変換素子1では、透明である第一の電極11の上方から、光が入射し、受光層14で受光する。なお、
図1では便宜上受光層14の側面から光が入射するように示されている。また、光電変換素子1は、受光層14で光電変換により発生した電荷(正孔および電子)のうち、正孔を第一の電極11に移動させ、電子を第二の電極16に移動させるように、電圧が印加される。すなわち、第一の電極11を正孔捕集電極とし、第二の電極16を電子捕集電極としている。なお、
図1では、第一の電極11の上面に設けられた基板が省略されている。ここでの基板としては特に限定はなく、例えばガラス板、石英板、プラスチック板等が挙げられる。また、基板側から光が入射する構成の場合、基板は光の波長に対して透明である。以下では、上記各層について説明する。
【0073】
[第一の電極11]
基板上には第一の電極11または第二の電極16が設けられている。
光が第一の電極11を通過して、受光層14に入射する構成の光電変換素子の場合、第一の電極は当該光を通すかまたは実質的に通す透明材料で形成される。ここで、「光を通す」とは平均透過率が80%以上であることいい、「実質的に通す」とは平均透過率が50%以上であるこという。すなわち、本明細書において、「透明」とは平均透過率が50%以上であることを意味する。
【0074】
第一の電極11または第二の電極16に用いられる透明材料としては、特に限定されないが、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO;Indium Tin Oxide)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO;Indium Zinc Oxide)、酸化錫、アルミニウム・ドープ型酸化錫、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物、その他の金属酸化物、窒化ガリウム等の金属窒化物、セレン化亜鉛等の金属セレン化物、および硫化亜鉛等の金属硫化物等が挙げられる。
【0075】
なお、第二の電極16側のみから光が受光層14に入射する構成の光電変換素子の場合、第一の電極11の透過特性は重要ではない。したがって、この場合の第一の電極に用いられる材料の一例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金等が挙げられる。
【0076】
[正孔輸送促進層12]
第一の電極11と後述する正孔輸送層13との間には、正孔輸送促進層12が設けられている。正孔輸送促進層12は、正孔輸送層13から第一の電極11への正孔輸送を促進させるために設けられる。正孔輸送促進層12は、前述の式(1)で示される化合物を含有する。また、式(1)で示される化合物以外の化合物を一緒に含有させることもできる。正孔輸送促進層12に含有させることができる化合物としては、例えば従来公知の正孔輸送材料が挙げられ、後述の正孔輸送層13に用いる化合物等が挙げられる。
【0077】
[正孔輸送層13]
正孔輸送促進層12と受光層14との間には、正孔輸送層13が設けられている。
正孔輸送層13は、受光層14で発生した正孔を受光層14から第一の電極11へ輸送する役割と、受光層14で発生した電子が第一の電極11側へ移動するのをブロックする役割とを有する。また用途によっては第一の電極11からの電子注入をブロックする役割を有することもある。
【0078】
正孔輸送層13は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。正孔輸送層13に含有させることができる正孔輸送材料は、公知の正孔輸送材料であってよい。公知の正孔輸送材料としては、芳香族第三級アミン化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、テトラセン化合物、ペンタセン化合物、フェナントレン化合物、ピレン化合物、ペリレン化合物、フルオレン化合物、カルバゾール化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピセン化合物、チオフェン化合物、ベンゾトリフラン化合物、ベンゾトリチオフェン化合物、ナフトジチオフェン化合物、ナフトチエノチオフェン化合物、ベンゾジフラン化合物、ベンゾジチオフェン化合物、ベンゾチオフェン化合物、ナフトビスベンゾチオフェン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物等が挙げられる。
これらの中でも、フルオレン化合物、ナフトジチオフェン化合物、ナフトチエノチオフェン化合物、ベンゾジフラン化合物、ベンゾチオフェン化合物、ナフトビスベンゾチオフェン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物等が好ましく、特にフルオレン化合物、クリセノジチオフェン化合物、ベンゾチエノベンゾチオフェン化合物、インドロカルバゾール化合物が好ましい。
【0079】
[受光層14]
正孔輸送層13と後述する電子輸送層15との間には、受光層14が設けられている。
受光層14の材料としては、光電変換機能を有する材料が挙げられる。
【0080】
受光層14は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
中でも、光電変換効率を高める為には、受光層は少なくとも二種の材料(有機成分)を含有する層からなることが好ましい。
【0081】
一種の材料からなる単層構造である受光層14に用いられる材料としては、例えば、(i)クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体等が挙げられる。
二種の材料からなる単層構造である受光層14に用いられる材料としては、例えば、前述の(i)クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体と、(ii)フラーレンおよびその誘導体、その他アクセプター材料との組み合わせが挙げられる。これらの材料からなる受光層4の作製は、予め粉末を混合した状態で蒸着させて形成してもよいし、任意の割合で共蒸着することで形成してもよい。
三種の材料からなる単層構造である受光層14に用いられる材料としては、前述の(i)クマリンおよびその誘導体、キナクリドンおよびその誘導体、フタロシアニンおよびその誘導体、(ii)フラーレンおよびその誘導体、その他アクセプター材料、および(iii)正孔輸送材料との組み合わせが挙げられる。これらの材料からなる受光層14の作製は、予め粉末を混合した状態で蒸着させて形成してもよいし、任意の割合で共蒸着することで形成してもよい。
【0082】
(i)クマリン誘導体の具体例としては、クマリン6、クマリン30が挙げられる。キナクリドン誘導体の具体例としては、N,N-ジメチルキナクリドンが挙げられる。フタロシアニン誘導体の具体例としては、ホウ素サブフタロシアニンクロリド、ホウ素サブナフタロシアニンクロリド(SubNC)が挙げられる。
(ii)フラーレンおよびその誘導体の具体例としては、[60]フラーレン、[70]フラーレン、[6,6]-フェニル-C61-酪酸メチル([60]PCBM)が挙げられる。
(iii)正孔輸送材料の好ましい化合物および具体例としては、前述の正孔輸送層13で用いるものと同じものが挙げられる。
【0083】
また、光電変換機能を有する材料は受光層のみに含有されることに限定されるものではない。例えば、光電変換機能を有する材料は、受光層14に隣接した層(正孔輸送層13、または電子輸送層15)が含有していてもよい。
【0084】
[電子輸送層15]
受光層14と後述する第二の電極16との間には、電子輸送層15が設けられている。
電子輸送層15は、受光層14で発生した電子を第二の電極16へ輸送する役割と、電子輸送先の第二の電極16から受光層14に正孔が移動するのをブロックする役割とを有する。また用途によっては第二の電極16からの正孔注入をブロックする役割を有することもある。
【0085】
また、電子輸送層15に含有させることができる電子輸送材料は、公知の電子輸送材料であってよく、電子輸送材料としては、例えば、フラーレン、フラーレン誘導体、トリアジン誘導体、ビス(8-ヒドロキシキノリナート)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラート)-4-(フェニルフェノラート)アルミニウム)、4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-4-イル)フェニル)-2-メチルピリミジン、N,N’-ジフェニル-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、およびN,N’-ジ(4-ピリジル)-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド等が挙げられる。
【0086】
電子輸送層15は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
【0087】
[第二の電極16]
電子輸送層15上には第二の電極16が設けられている。
第二の電極16の材料としては、例えば、インジウム-錫酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、金、白金、希土類金属、酸化モリブデン等が挙げられる。尚、前記第一の電極11と第二の電極16は同一であっても相異なっていてもよい。
【0088】
[各層の形成方法]
以上説明した第一の電極11、第二の電極16を除く各層は、それぞれの層の材料(必要に応じて結着樹脂等の材料、溶剤と共に)を、例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir-Blodgett method)法等の公知の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。
このようにして形成された各層の膜厚については特に制限はなく、状況に応じて適宜選択することができるが、通常は5nm以上5μm以下の範囲である。
【0089】
第一の電極11および第二の電極16は、電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法によって薄膜化することにより、形成することができる。蒸着やスパッタリングの際に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよく、蒸着やスパッタリング等によって薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで所望の形状のパターンを形成してもよい。
【0090】
第一の電極11および第二の電極16の膜厚は、1μm以下であることが好ましく、10nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0091】
第一の電極11および第二の電極16は、必要に応じてそれぞれを構成する材料を入れ替えてもよい(逆型構造とも呼ばれる)。このような構造の場合、光は第二の電極16を通過して、受光層14に入射する構成の光電変換素子となる。
【0092】
本実施形態の光電変換素子を備えた撮像素子は、例えば、デジタルカメラやデジタルビデオカメラの撮像素子、および携帯電話等に内蔵された撮像素子に適用することができる。光センサは、例えば、テレビのリモコンやエアコンのスイッチ、自動ドアの開閉等に適用することができる。
【0093】
<<第2の実施形態>>
本発明の第2の実施形態による光電変換素子は、
図1に示す積層構成を備えた太陽電池である。太陽電池1は、第一の電極11と受光層14との間に正孔輸送促進層12および正孔輸送層13が設けられており、第二の電極16と受光層14との間には電子輸送層15が設けられている。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。
【0094】
[第一の電極11]
第一の電極11は、例えば透明材料からなり、透明材料は第1の実施形態における透明材料を用いることができる。第一の電極11は任意の基材(例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム等の透明基板)上に形成されていてもよい。
【0095】
[正孔輸送促進層12]
正孔輸送促進層12の材料は、第1の実施形態における正孔輸送促進層12の材料(式(1)で示される化合物)と同じである。正孔輸送促進層12の材料は、第1の実施形態における材料以外に従来公知の正孔輸送材料を含有してもよい。
【0096】
[正孔輸送層13]
正孔輸送層13の材料は、第1の実施形態における正孔輸送層13の材料と同じである。正孔輸送層13の材料は、第1の実施形態における正孔輸送材料以外に、従来公知の正孔輸送材料を含有してもよい。
【0097】
[受光層14]
受光層14の材料は、電子供与材料および電子受容材料を用いたものであればよく、電子供与材料と電子受容材料とが平面同士で結合された平面結合型でも、電子供与材料と電子受容材料とが混合して成膜されたバルクヘテロ結合型でもよい。
電子供与材料は特に限定されないが、有機半導体が好ましい。電子供与材料としては、例えば、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体等の高分子化合物およびそれらの共重合体、あるいはフタロシアニン誘導体およびその金属錯体、ポルフィリン誘導体およびその金属錯体、ペンタセン等のアセン誘導体、ジアミン誘導体等の低分子化合物等が挙げられる。電子供与材料は、本発明の効果を損なわない範囲において有機半導体とともに無機半導体を用いることもできる。
電子受容材料は特に限定されないが、有機半導体が好ましい。電子受容材料としては、例えば、フラーレン誘導体、ペリレン誘導体、ナフタレン誘導体等が挙げられる。
【0098】
[電子輸送層15]
電子輸送層15の材料は、第1の実施形態における電子輸送材料を用いることができる。また、電子輸送材料としてフッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属ハロゲン化物、フッ化カルシウム等のアルカリ土類金属ハロゲン化合物、炭酸セシウム等の炭酸塩、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機系n型半導体を用いてもよい。
【0099】
[第二の電極16]
第二の電極16は、例えば、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズ、鉛等の金属、またはこれらの合金が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
第一の電極11および第二の電極16は、必要に応じてそれぞれを構成する材料を入れ替えてもよい(逆型構造とも呼ばれる)。このような構造の場合、光は第二の電極16を通過して、受光層14に入射する構成の光電変換素子となる。
【0101】
[各層の形成方法]
各層の形成方法は特に限定されず、例えば基板上に、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、パターン転写法等を用いて第一の電極11、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、電子輸送層15、および第二の電極16を順次積層してもよいし、正孔輸送促進層12、正孔輸送層13、受光層14、および電子輸送層15を積層した後、この積層体に第一の電極11および第二の電極16をそれぞれ転写、蒸着、スパッタリング等によって形成してもよい。
【0102】
<<第3の実施形態>>
本発明の第3の実施形態による有機電子素子は、
図2に示す積層構成を備えた有機EL素子である。すなわち、有機EL素子2は、第一の電極21、正孔輸送促進層22、正孔輸送層23、発光層24、電子輸送層25、および第二の電極26がこの順で設けられている。ただし、これらの層のうちの一部の層が省略されていてもよく、また逆に他の層が追加されていてもよい。
【0103】
[第一の電極21]
第一の電極21は、正孔を正孔輸送層から発光層へ注入する役割を有する。第一の電極21としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、金、銀、白金、銅等の透明電極、アルミ、モリブデン、クロム、ニッケル等の金属や合金、高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0104】
有機電子素子は、第一の電極21および第二の電極26のいずれの側の面を発光させてもよいし、両面を発光させてもよい。光を取り出す側の電極は、ITO、IZO等の透明材料で形成される。なお、
図2では便宜上発光層24の側面から光を放出するように示されている。
【0105】
[正孔輸送促進層22]
第一の電極21と後述する正孔輸送層23との間には、正孔輸送促進層22が設けられている。正孔輸送促進層22は、第一の電極21から正孔輸送層23への正孔輸送を促進させるために設けられる。正孔輸送促進層22は正孔輸送促進材料として、前述の式(1)で示される化合物を含有する。正孔輸送促進層22は上記式(1)で示される化合物以外の化合物を一緒に含有させることもできる。正孔輸送促進層22に含有させることができる化合物としては、例えば従来公知の正孔輸送材料が挙げられる。
【0106】
[正孔輸送層23]
正孔輸送促進層22と発光層24との間には、正孔輸送層23が設けられている。
正孔輸送層23は、第一の電極21から注入された正孔を発光層24へ輸送する役割を有する。
正孔輸送層23は、一種または二種以上の材料からなる単層構造であってもよく、同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。正孔輸送層23に含有させることができる正孔輸送材料は、第1の実施形態における正孔輸送層13の材料と同じでよい。
【0107】
[発光層24]
発光層24は、第一の電極21から注入された正孔と第二の電極26から注入された電子が再結合し、発光(燐光または蛍光)を生じさせる役割を有し、発光材料と必要に応じて発光ホスト材料を含む。発光材料および発光ホスト材料は、公知のものから適宜選択することができる。発光材料および発光ホスト材料としては、例えば、トリアジン誘導体(カルバゾール等が置換されたTADF材料を含む)、ピリミジン誘導体、カルバゾール誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ルブレン誘導体、デカシクレン誘導体等の炭素縮合環系色素;ペリレンジイミド等のペリレン誘導体、ローダミンB等のキサンテン系色素、シアニン系色素、クマリン6やC545T等のクマリン系色素、Qd4やDEQ等のキナクリドン系色素、スクアリウム系色素、スチリル系色素、ピラゾロン誘導体、NileRed等のフェノキサゾン系色素、カルバゾール、トリアリールアミン、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)、トリス[2-フェニル-4-(2-エチルシクロヘキシルオキシ)ピリジン]イリジウム(III)(Ir(ehppy)3)等のイリジウム錯体、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体、Al、Zn、BeまたはTb、Eu、Dy等の希土類金属からなる中心金属、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等の配位子から構成される金属錯体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
[電子輸送層25]
電子輸送層25は、第二の電極と発光層との間に設けられ、第二の電極から注入された電子を発光層へ輸送する機能を有し、電子輸送材料を含む。電子輸送材料としては、例えば、トリアジン誘導体、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、ビス(2-メチル-8-キノリノレート)-4-(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq)、1,4,4’-bis(2,2’-diphenylvinyl)-1,1’-bipheny(DPVBi)、(2-(4-ビフェニル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)(PBD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、バソクプロイン(BCP)、シロール誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
[第二の電極26]
第二の電極26は、電子を電子輸送層25から発光層24へ注入する役割を有する。第二の電極26としては、アルミニウム、マグネシウム-銀合金、アルミニウム-リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、セシウム添加ITO等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0110】
[各層の形成方法]
有機EL素子2の各層の形成方法は、例えば、まず適当な透光性基板(図示せず)上に第一の電極21の材料からなる薄膜を蒸着、スパッタリング等の方法により形成する。第一の電極21上に正孔輸送促進層22および正孔輸送層23をこの順に成膜する。正孔輸送促進層22および正孔輸送層23の成膜は、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法により行うことができる。次に、正孔輸送層23の上に発光層24を設ける。発光層24の形成も所望の有機発光材料を用いて真空蒸着法、スパッタリング、スピンコート法、キャスト法等の方法により有機発光材料を薄膜化することにより形成することができる。次に、発光層24の上に電子輸送層25を形成する。電子輸送層25は、正孔輸送層、発光層と同様の方法により形成することができる。最後に電子輸送層25の上に第二の電極26を積層する。第二の電極26は所望の金属材料を蒸着法、スパッタリング等の方法により形成することができる。有機EL素子の各層の形成方法は上記方法に限定されない。例えば、真空蒸着法、分子線蒸着法(MBE法)、材料を溶媒に溶解した溶液を使用したディッピング法、スピンコーティング法、キャスティング法、バーコート法、ロールコート法等の塗布法等の公知の方法を適宜採用することができる。
【0111】
本発明の有機電子素子(光電変換素子、有機EL素子等)、および該素子を形成する各層の形成方法は、上述の実施形態に示した素子および方法に限定されない。例えば、第一の電極、受光層(または発光層)、電子輸送層、第二の電極の材料は公知の他の材料と適宜置き換えることができる。また、正孔輸送促進層および正孔輸送層は、式(1)で示される化合物と正孔輸送材料を混合して形成された層に置き換えることもできる。
【0112】
(有機電子素子に使用し得る化合物)
本発明は、有機電子素子に用いられる正孔の輸送能力を向上させることができる新規な化合物を提供するものである。
有機電子素子に使用し得る本発明の新規な化合物(トリプタントリン化合物)は、下記式(2)で示される。なお、式(2)で示される化合物は、式(1)で示される化合物の一実施形態である。
【0113】
【0114】
式(2)中、A21は窒素原子またはC-R21を表し、A22は窒素原子またはC-R22を表し、A23は窒素原子またはC-R23を表し、A24は窒素原子またはC-R24を表し、A25は窒素原子またはC-R25を表し、A26は窒素原子またはC-R26を表し、A27は窒素原子またはC-R27を表し、A28は窒素原子またはC-R28を表す。
ただし、A21がC-R21を表し、A22がC-R22を表し、A23がC-R23を表し、A24がC-R24を表し、A25がC-R25を表し、A26がC-R26を表し、A27がC-R27を表し、A28がC-R28を表すとき、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27およびR28は全て同時に水素原子にはなり得ない。
【0115】
R21、R22、R24、R25およびR28は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;ハロゲン原子;ニトロ基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R11)2;炭素数1~8のアルキル基;炭素数1~8のアルキルオキシ基;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R12)2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R11)2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R12)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R11)2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R12)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す。
【0116】
R23は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R11)2;炭素数1~8のアルキル基;炭素数1~8のアルキルオキシ基;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R12)2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R11)2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R12)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R11)2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R12)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す。
【0117】
R26は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;ハロゲン原子;ニトロ基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R11)2;炭素数1~8のアルキル基;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R12)2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R11)2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R12)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R11)2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R12)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す。
【0118】
R27は、各々独立に、水素原子;シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;炭素数1~8のフルオロアルコキシ基;ペンタフルオロスルファニル基;P(=O)(R11)2;炭素数1~8のアルキルチオ基;N(R12)2;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R11)2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R12)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、P(=O)(R11)2、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、炭素数1~8のアルキルチオ基、およびN(R12)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す。
【0119】
R11およびR12は、各々独立に、炭素数1~8のアルキル基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、および炭素数1~8のアルキルチオ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、および炭素数1~8のアルキルチオ基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表し、複数のR11およびR12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、同一の原子に結合する2つのR11は互いに結合して環を形成していてもよく、同一の原子に結合する2つのR12は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0120】
R29およびR30は、各々独立に、シアノ基;炭素数1~8のフルオロアルキル基;フッ素原子;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、およびペンタフルオロスルファニル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~18の芳香族炭化水素基;またはシアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、およびペンタフルオロスルファニル基からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~18のヘテロ芳香族基を表す。
【0121】
式(2)で示される化合物は、式(1)で示される化合物の一実施形態である。そのため、R21~R30の好適例、および具体例には、それぞれ、R1~R10の説明で挙げた好適例、および具体例が当てはまる。
【0122】
有機電子素子の性能向上に資する点で、A21~A28のうち0~3箇所が窒素原子であることが好ましく、材料の製造コストを低下させる点で、A21~A28の全てが窒素原子ではないことがより好ましい。
すなわち、A21がC-R21を表し、A22がC-R22を表し、A23がC-R23を表し、A24がC-R24を表し、A25がC-R25を表し、A26がC-R26を表し、A27がC-R27を表し、A28がC-R28を表すことがより好ましい。
【0123】
R21、R22、R24、R25、R26およびR28は、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基又は原子が好ましい。
・水素原子
・シアノ基
・炭素数1~8のフルオロアルキル基
・フッ素原子
・ニトロ基
・炭素数1~8のフルオロアルコキシ基
・ペンタフルオロスルファニル基
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基
【0124】
R21、R22、R24、R25、R26およびR28は、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基又は原子がより好ましい。
・水素原子
・シアノ基
・炭素数1~6のフルオロアルキル基
・フッ素原子
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基
【0125】
R23、およびR27は、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基又は原子が好ましい。
・水素原子
・シアノ基
・炭素数1~6のフルオロアルキル基
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基
・シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい核原子数5~12のヘテロ芳香族基
【0126】
R29およびR30は、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基又は原子が好ましい。
・シアノ基
・炭素数1~6のフルオロアルキル基
・フッ素原子
・シアノ基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、およびフッ素原子からなる群から選択される少なくとも1種で置換されたフェニル基
【0127】
R29およびR30は、有機電子素子の性能向上に資する点で、以下の基がより好ましい。
・シアノ基
・炭素数1~6のフルオロアルキル基
【0128】
材料の精製コストを低下させる点から、R29およびR30は同じ基であることが好ましい。
【0129】
材料の製造コストを低下させる点から、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27およびR28のうち6つまたは7つが水素原子であることが好ましい。
【0130】
材料の製造コストを低下させる点から、R21、R22、R24、R25、R26およびR28が水素原子であり、R23およびR27が各々独立に水素原子;シアノ基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換されていてもよい炭素数6~12の芳香族炭化水素基;シアノ基、炭素数1~8のフルオロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1~8のフルオロアルコキシ基、ペンタフルオロスルファニル基、およびP(=O)(R11)2からなる群から選択される少なくとも1種で置換された単環のヘテロ芳香族基であることが好ましい。
【実施例0131】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0132】
なお、1HNMRの測定には、Bruker ASCEND HD(400MHz;BRUKER製)を用いた。1HNMRは、重クロロホルム(CDCl3)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。
【0133】
(合成参考例-1)
2-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン:
【化30】
を、以下の方法で合成した。
【0134】
インドリン-2,3-ジオン(2.21g,15.0mmol)、6-ブロモ-2H-ベンゾ[d][1,3]オキサジン-2,4(1H)-ジオン(3.61g,15.0mmol)およびリン酸三カリウム(6.37g,30.0mmol)をジメチルスルホキシド(120mL)に溶解し、室温で16時間攪拌した。水晶析によって析出した固体をろ過し、水で洗浄することで、目的の2-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオンを黄色固体として4.13g(84%)得た。
【0135】
1HNMR(CDCl3)δ7.45(ddd,J=7.6,7.6,0.9Hz,1H),7.81(ddd,J=8.1,7.6,1.4Hz,1H),7.89(dd,J=8.6,0.4Hz,1H),7.92(ddd,J=7.6,1.4,0.6Hz,1H),7.94(dd,J=8.6,2.2Hz,1H),8.57(dd,J=2.2,0.4Hz,1H),8.62(ddd,J=8.1,0.9,0.6Hz,1H).
【0136】
(合成参考例-2)
4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)ベンゾニトリル:
【化31】
を、以下の方法で合成した。
【0137】
アルゴン雰囲気下、2-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(1.96g,6.00mmol)、4-シアノフェニルボロン酸(970mg,6.60mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(347mg,0.30mmol)および炭酸カリウム水溶液(2.0M,9.00mL,18.0mmol)をTHF(60mL)に溶解し、加熱還流した。16時間攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、THFおよび水/メタノール=9/1(体積比)混合溶媒で洗浄することで、目的の4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)ベンゾニトリルを黄緑色固体として1.89g(90%)得た。
【0138】
1HNMR(CDCl3)δ7.46(ddd,J=7.6,7.6,0.9Hz,1H),7.80-7.87(m,5H),7.95(ddd,J=7.6,1.4,0.6Hz,1H),8.08(dd,J=8.4,2.2Hz,1H),8.15(dd,J=8.4,0.4Hz,1H),8.65(ddd,J=8.1,0.9,0.6Hz,1H),8.67(dd,J=2.2,0.4Hz,1H).
【0139】
(合成実施例-1)
2-(2-(4-シアノフェニル)-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリル(化合物A-1):
【化32】
を、以下の方法で合成した。
【0140】
アルゴン雰囲気下、4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)ベンゾニトリル(1.83g,5.24mmol)、およびマロノニトリル(1.04g,15.7mmol)をTHF(180mL)およびピリジン(90mL)に懸濁させ、超音波をかけて沈殿を細かくし、60℃で2時間撹拌した。放冷後生じた固体をろ過してヘキサンで洗浄することで、目的の2-(2-(4-シアノフェニル)-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリルを1.60g(77%)得た。
【0141】
1HNMR(CDCl3)δ7.50(ddd,J=8.1,7.6,1.0Hz,1H),7.78-7.87(m,5H),8.07-8.13(m,2H),8.50(ddd,J=8.1,1.3,0.6Hz,1H),8.63(ddd,J=8.1,1.0,0.6Hz,1H),8.66(dd,J=1.7,1.0Hz,1H).
【0142】
(合成参考例-3)
2-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン:
【化33】
を、以下の方法で合成した。
【0143】
2-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(1.96g,6.00mmol)、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸(1.70g,6.60mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(347mg,0.30mmol)および炭酸カリウム水溶液(2.0M,9.00mL,18.0mmol)をTHF(60mL)に溶解し、加熱還流した。16時間攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、THFおよび水/メタノール=9/1(体積比)混合溶媒で洗浄することで、目的の2-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオンを黄緑色固体として1.38g(50%)得た。
【0144】
1HNMR(CDCl3)δ7.48(ddd,J=7.6,7.6,0.8Hz,1H),7.84(ddd,J=8.1,7.6,1.4Hz,1H),7.95(ddd,J=7.6,1.4,0.6Hz,1H),7.97(brs,1H),8.12(dd,J=8.4,2.2,1H),8.16(brs,2H),8.18(dd,J=8.4,0.4Hz,1H),8.66(ddd,J=8.1,0.8,0.6Hz,1H),8.69(dd,J=2.2,0.4Hz,1H).
【0145】
(合成実施例-2)
2-(2-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリル(化合物A-2):
【化34】
を、以下の方法で合成した。
【0146】
2-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(1.96g,6.00mmol)、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸(1.70g,6.60mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(347mg,0.30mmol)および炭酸カリウム水溶液(2.0M,9.00mL,18.0mmol)をTHF(60mL)に溶解し、加熱還流した。16時間攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、THFおよび水/メタノール=9/1(体積比)混合溶媒で洗浄することで、目的の2-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオンを黄緑色固体として1.38g(50%)得た。
【0147】
1HNMR(CDCl3)δ7.51(ddd,J=8.0,7.6,1.0Hz,1H),7.82(ddd,J=8.2,7.6,1.1Hz,1H),7.97(brs,1H),8.11-8.15(m,2H),8.16(brs,2H),8.51(ddd,J=8.0,1.1,0.4Hz,1H),8.64(ddd,J=8.2,1.0,0.4Hz,1H),8.68(dd,J=2.0,0.8Hz,1H).
【0148】
(合成参考例-4)
2-(2-フルオロピリジン-4-イル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン:
【化35】
を、以下の方法で合成した。
【0149】
2-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(2.45g,7.50mmol)、2-フルオロ-4-ピリジルボロン酸(1.16g,8.25mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(433mg,0.37mmol)および炭酸カリウム水溶液(2.0M,11.3mL,22.6mmol)をTHF(75mL)に溶解し、加熱還流した。16時間攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、THFおよび水/メタノール=9/1(体積比)混合溶媒で洗浄することで、目的の2-(2-フルオロピリジン-4-イル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオンを黄色固体として2.30g(89%)得た。
【0150】
1HNMR(CDCl3)δ7.28(m,1H),7.47(ddd,J=7.6,7.6,0.8Hz,1H),7.55(m,1H),7.83(ddd,J=8.1,7.6,1.4Hz,1H),7.95(ddd,J=7.6,1.4,0.5Hz,1H),8.11(dd,8.4,2.2Hz,1H),8.17(dd,J=8.4,0.4Hz,1H),8.38(d,J=5.2,Hz,1H),8.66(ddd,J=8.1,0.8,0.5Hz,1H),8.71(dd,J=2.2,0.4Hz,1H).
【0151】
(合成実施例-3)
2-(2-(2-フルオロピリジン-4-イル)-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリル(化合物A-3):
【化36】
を、以下の方法で合成した。
【0152】
アルゴン雰囲気下、2-(2-フルオロピリジン-4-イル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(2.27g,6.60mmol)、およびマロノニトリル(1.31g,19.8mmol)をTHF(240mL)およびピリジン(120mL)に懸濁させ、超音波をかけて沈殿を細かくし、60℃で2時間撹拌した。放冷後生じた固体をろ過してヘキサンで洗浄することで、目的の2-(2-(2-フルオロピリジン-4-イル)-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリルを赤色固体として2.02g(78%)得た。
【0153】
1HNMR(CDCl3)δ7.29(m,1H),7.50(ddd,J=7.8,7.8,0.9Hz,1H),7.55(m,1H),7.81(ddd,J=8.3,7.8,1.1Hz,1H),8.10-8.14(m,2H),8.38(d,J=5.3Hz,1H),8.51(ddd,J=7.8,1.1,0.5Hz,1H),8.64(ddd,J=8.3,0.9,0.5Hz,1H),8.71(dd,J=1.8,1.0Hz,1H).
【0154】
(合成参考例-5)
5-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)-2-フルオロベンゾニトリル:
【化37】
を、以下の方法で合成した。
【0155】
2-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(164mg,0.50mmol)、(3-シアノ-4-フルオロフェニル)ボロン酸(91mg,0.55mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(29mg,25μmol)および炭酸カリウム水溶液(2.0M,750μL,1.50mmol)をTHF(5.0mL)に溶解し、加熱還流した。16時間攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、THFおよび水/メタノール=9/1(体積比)混合溶媒で洗浄することで、目的の5-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)-2-フルオロベンゾニトリルを黄緑色固体として160mg(87%)得た。
【0156】
1HNMR(CDCl3)δ7.40(dd,J=8.5,8.5Hz,1H),7.47(ddd,J=7.6,7.6,0.8Hz,1H),7.83(ddd,J=8.1,7.6,1.3Hz,1H),7.93-8.00(m,3H),8.01(dd,J=8.4,2.2Hz,1H),8.14(d,J=8.4Hz,1H),8.60(d,J=2.2Hz,1H),8.66(ddd,J=8.1,0.8,0.6Hz,1H).
【0157】
(合成実施例-4)
2-(2-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリル(化合物A-4):
【化38】
を、以下の方法で合成した。
【0158】
アルゴン雰囲気下、5-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)-2-フルオロベンゾニトリル(114mg,0.31mmol)、およびマロノニトリル(61mg,0.92mmol)をTHF(10mL)およびピリジン(5.0mL)に懸濁させ、超音波をかけて沈殿を細かくし、60℃で2時間撹拌した。放冷後生じた固体をろ過してヘキサンで洗浄することで、目的の2-(2-(3-シアノ-4-フルオロフェニル)-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリルを赤色固体として122mg(95%)得た。
【0159】
1HNMR(CDCl3)δ7.40(dd,J=8.5,8.5Hz,H),7.50(ddd,J=7.9,7.6,1.1Hz,1H),7.81(ddd,J=8.2,7.6,1.1Hz,1H),7.94-8.01(m,2H),8.03(dd,J=8.4,2.1Hz,1H),8.11(d,J=8.4Hz,1H),8.50(ddd,J=7.9,1.1,0.5Hz,1H),8.59(d,J=2.1Hz,1H),8.64(ddd,J=8.2,1.1,0.5Hz,1H).
【0160】
(合成参考例-6)
2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン:
【化39】
を、以下の方法で合成した。
【0161】
アルゴン雰囲気下、2-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(3.27g,10.0mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(2.79g,11.0mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)ジクロロメタン付加体(245mg,0.30mmol)および酢酸カリウム(2.94g,3.00mmol)をトルエン(40mL)に溶解し、90℃に加熱した。16時間攪拌後、放冷し反応溶液を飽和塩化ナトリウム水溶液/クロロホルムで分液の後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒留去することで暗黄緑色固体を得た。これをクロロホルムに溶解し、活性炭を加え攪拌した後セライトろ過し乾固することで、目的の2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオンを黄色固体として3.04g(81%)得た。
【0162】
1HNMR(CDCl3)δ1.39(s,12H),7.43(ddd,J=7.6,7.6,0.8Hz,1H),7.80(ddd,J=8.1,7.6,1.3Hz,1H),7.92(ddd,J=7.6,1.3,0.5Hz,1H),7.99(dd,J=8.0,0.3Hz,1H),8.23(dd,J=8.0,1.4Hz,1H),8.65(ddd,J=8.1,0.8,0.5Hz,1H),8.90(dd,J=1.4,0.3Hz,1H).
【0163】
(合成参考例-7)
4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)-3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル:
【化40】
を、以下の方法で合成した。
【0164】
アルゴン雰囲気下、2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(1.62g,4.33mmol)、4-ブロモ-3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(1.19g,4.76mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(250mg,0.22mmol)および炭酸カリウム水溶液(2M,6.50mL,13.0mmol)をTHF(43mL)に溶解し、加熱還流した。16時間攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、THFおよび水/メタノール=9/1(体積比)混合溶媒で洗浄することで、、目的の4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)-3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリルを黄緑色固体として1.12g(62%)得た。
【0165】
1HNMR(CDCl3)δ7.46(ddd,J=7.6,7.6,0.8Hz,1H),7.58(d,J=7.9Hz,1H),7.79(dd,J=8.3,2.0Hz,1H),7.81(ddd,J=8.1,7.6,1.4Hz,1H),7.92-7.97(m,2H),8.11(d,J=8.3Hz,1H),8.12(s,1H),8.39(d,J=2.0Hz,1H),8.63(ddd,J=8.1,0.8,0.5Hz,1H).
【0166】
(合成実施例-5)
2-(2-(4-シアノ-2-(トリフルオロメチル)フェニル)-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリル(化合物A-5):
【化41】
を、以下の方法で合成した。
【0167】
アルゴン雰囲気下、4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)-3-(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(1.11g,2.66mmol)、マロノニトリル(527mg,7.97mmol)をTHF(80mL)およびピリジン(40mL)に懸濁させ、超音波をかけて沈殿を細かくし、60℃で2時間撹拌した。放冷後、反応溶液にヘキサンを加えて析出した固体をろ過してヘキサンで洗浄することで、目的の2-(2-(4-シアノ-2-(トリフルオロメチル)フェニル)-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリルを橙色固体として985mg(80%)得た。
【0168】
1HNMR(CDCl3)δ7.49(ddd,J=7.9,7.8,1.0Hz,1H),7.58(d,J=7.9Hz,1H),7.80(dd,J=8.3,2.0Hz,1H),7.81(ddd,J=8.0,7.8,1.1Hz,1H),7.95(dd,J=7.9,0.8Hz,1H),8.08(d,J=8.3Hz,1H),8.13(d,J=0.8Hz,1H),8.38(d,J=2.0Hz,1H),8.50(dd,J=7.9,1.1Hz,1H),8.61(dd,J=8.0,1.0Hz,1H).
【0169】
(合成参考例-8)
2-フェニルインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン:
【化42】
を、以下の方法で合成した。
【0170】
2-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(164mg,0.50mmol)、フェニルボロン酸(67mg,0.55mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(29mg,25μmol)および炭酸カリウム水溶液(2.0M,750μL,1.50mmol)をTHF(5.0mL)に溶解し、加熱還流した。16時間攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、水で洗浄することで褐色固体を得た。これをクロロホルム(30mL)に溶解し、活性炭を加え攪拌した後セライトろ過して得られた溶液を乾固することで、目的の2-フェニルインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオンを黄色固体として150mg(92%)得た。
【0171】
1HNMR(CDCl3)δ7.44(ddd,J=7.6,7.6,0.8Hz,1H),7.43-7.48(m,1H),7.50-7.56(m,2H),7.72-7.77(m,2H),7.81(ddd,J=8.1,7.6,1.3Hz,1H),7.95(ddd,J=7.6,1.3,0.5Hz,1H),8.08-8.12(m,2H),8.66(ddd,J=8.1,0.8,0.5Hz,1H),8.67(d,J=2.1Hz,1H).
【0172】
(合成実施例-6)
2-(12-オキソ-2-フェニルインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリル(化合物A-6):
【化43】
を、以下の方法で合成した。
【0173】
アルゴン雰囲気下、2-フェニルインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(100mg,308μmol)、マロノニトリル(61mg,920μmol)をTHF(10mL)およびピリジン(5.0mL)に懸濁させ、超音波をかけて沈殿を細かくし、60℃で2時間撹拌した。放冷後生じた固体をろ過してヘキサンで洗浄し、赤色固体を176mg得た。アルゴン雰囲気下、この赤色固体90mgにクロロベンゼン(12mL)を加え120℃で加熱し完溶させた後、放冷し析出した固体をろ過、少量のクロロベンゼンで洗浄することで、目的の2-(12-オキソ-2-フェニルインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリルを赤色固体として68mg(59%)得た。
【0174】
1HNMR(CDCl3)δ7.43-7.50(m,2H),7.50-7.56(m,2H),7.73-7.77(m,2H),7.79(ddd,J=8.1,7.7,1.2Hz,1H),8.06(d,J=8.4Hz,1H),8.11(dd,J=8.4,2.1Hz,1H),8.50(ddd,J=8.0,1.2,0.5Hz,1H),8.64(ddd,J=8.1,0.8,0.5Hz,1H),8.66(d,J=2.1Hz,1H).
【0175】
(合成参考例-9)
8-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン:
【化44】
を、以下の方法で合成した。
【0176】
5-ブロモインドリン-2,3-ジオン(3.39g,15.0mmol)、2H-ベンゾ[d][1,3]オキサジン-2,4(1H)-ジオン(2.45g,15.0mmol)およびリン酸三カリウム(6.37g,30.0mmol)をジメチルスルホキシド(120mL)に溶解し、室温で16時間攪拌した。水晶析によって析出した固体をろ過し、水で洗浄することで、目的の8-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオンを黄色固体として4.49g(92%)得た。
【0177】
1HNMR(CDCl3)δ7.70(ddd,J=7.9,7.4,1.2Hz,1H),7.87(ddd,J=8.1,7.4,1.5Hz,1H),7.90(dd,J=8.6,2.1,1H),8.03(d,J=2.1,1H),8.04(dd,J=8.1,1.2Hz,1H),8.44(dd,J=7.9,1.5Hz,1H),8.54(d,J=8.6Hz,1H).
【0178】
(合成参考例-10)
4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-イル)ベンゾニトリル:
【化45】
を、以下の方法で合成した。
【0179】
8-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(1.70g,5.20mmol)、4-シアノフェニルボロン酸(840mg,5.72mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(300mg,0.26mmol)および炭酸カリウム水溶液(2.0M,7.80mL,15.6mmol)をTHF(50mL)に溶解し、加熱還流した。16時間攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、THFおよび水/メタノール=9/1(体積比)混合溶媒で洗浄することで、目的の4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-イル)ベンゾニトリルを黄色固体として1.61g(89%)得た。
【0180】
1HNMR(CDCl3)δ7.71(ddd,J=7.8,7.3,1.2Hz,1H),7.72-7.76(m,2H),7.79-7.82(m,2H),7.89(ddd,J=8.2,7.3,1.5Hz,1H),8.02(dd,J=8.4,2.0Hz,1H),8.06(ddd,J=8.2,1.2,0.4Hz,1H),8.14(dd,J=2.0,0.5Hz,1H),8.47(ddd,J=7.8,1.5,0.4Hz,1H),8.75(dd,J=8.4,0.5Hz,1H).
【0181】
(合成実施例-7)
2-(8-(4-シアノフェニル)-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリル(化合物A-7):
【化46】
を、以下の方法で合成した。
【0182】
アルゴン雰囲気下、4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-イル)ベンゾニトリル(1.61g,4.61mmol)、およびマロノニトリル(910mg,13.8mmol)をTHF(160mL)およびピリジン(80mL)に懸濁させ、60℃で2時間撹拌した。放冷後生じた固体をろ過してヘキサンで洗浄することで、目的の2-(8-(4-シアノフェニル)-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリルを赤色固体として1.42g(78%)得た。
【0183】
1HNMR(CDCl3)δ7.72(ddd,J=7.8,7.3,1.2Hz,1H),7.73-7.77(m,2H),7.79-7.83(m,2H),7.90(ddd,J=8.1,7.3,1.4Hz,1H),8.00(dd,J=8.5,1.8Hz,1H),8.03(ddd,J=8.1,1.2,0.4Hz,1H),8.46(ddd,J=7.8,1.4,0.4Hz,1H),8.69(dd,J=1.8,0.4Hz,1H),8.73(dd,J=8.5,0.4Hz,1H).
【0184】
(合成参考例-11)
8-フェニルインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン:
【化47】
を、以下の方法で合成した。
【0185】
8-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(164mg,0.50mmol)、フェニルボロン酸(67mg,0.55mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(29mg,25μmol)および炭酸カリウム水溶液(2.0M,0.75mL,1.50mmol)をTHF(5.0mL)に溶解し、加熱還流した。終夜攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、水で洗浄することで黄土色固体を得た。これをクロロホルム(30mL)に溶解し、活性炭を加え攪拌した後セライトろ過して得られた黄色溶液を乾固することで、目的の8-フェニルインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオンを黄色固体として132mg(81%)得た。
【0186】
1HNMR(CDCl3)δ7.41-7.46(m,1H),7.48-7.53(m,2H),7.61-7.65(m,2H),7.69(ddd,J=7.9,7.3,1.2Hz,1H),7.87(ddd,J=8.1,7.3,1.5Hz,1H),8.02(dd,J=8.4,2.0Hz,1H),8.05(ddd,J=8.1,1.2,0.4Hz,1H),8.14(dd,J=2.0,0.5Hz,1H),8.46(ddd,J=7.9,1.5,0.4Hz,1H),8.68(dd,J=8.4,0.5Hz,1H).
【0187】
(合成実施例-8)
2-(12-オキソ-8-フェニルインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリル(化合物A-8):
【化48】
を、以下の方法で合成した。
【0188】
アルゴン雰囲気下、8-フェニルインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(100mg,0.31mmol)、およびマロノニトリル(61mg,0.92mmol)をTHF(10mL)およびピリジン(5.0mL)に懸濁させ、超音波をかけて沈殿を細かくし、60℃で2時間撹拌した。放冷後生じた固体をろ過してヘキサンで洗浄することで、赤色固体を177mg得た。この赤色固体90mgにクロロベンゼン(5.0mL)を加え100℃で加熱し完溶させた後、放冷し析出した固体をろ過、少量のクロロベンゼンで洗浄することで、目的の2-(12-オキソ-8-フェニルインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリルを赤色固体として39mg(34%)得た。
【0189】
1HNMR(CDCl3)δ7.41-7.47(m,1H),7.48-7.54(m,2H),7.62-7.66(m,2H),7.70(ddd,J=7.9,7.3,1.2Hz,1H),7.88(ddd,J=8.1,7.3,1.5Hz,1H),8.00(dd,J=8.5,1.8Hz,1H),8.01(ddd,J=8.1,1.2,0.5Hz,1H),8.45(ddd,J=7.9,1.5,0.5Hz,1H),8.66(dd,J=8.5,0.4Hz,1H),8.69(dd,J=1.8,0.4Hz,1H).
【0190】
(合成参考例-12)
2-ブロモ-6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-カルボニトリル:
【化49】
を、以下の方法で合成した。
【0191】
文献(Tetrahedron Lett.2017,58,1747-1750.)に従って合成した2,3-ジオキソインドリン-5-カルボニトリル(2.50g,14.5mmol)、6-ブロモ-1,2-ジヒドロ-4H-3,1-ベンゾオキサジン-2,4-ジオン(3.51g,14.5mmol)およびリン酸三カリウム(6.16g,29.0mmol)をジメチルスルホキシド(120mL)に溶解し、室温で16時間攪拌した。水晶析によって析出した固体をろ過し、水で洗浄することで、黄土色固体(2.96g)を得た。この生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル=99/1)によって精製することで、目的の2-ブロモ-6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-カルボニトリルを黄色固体として2.15g(42%)得た。
【0192】
1HNMR(CDCl3)δ7.92(d,J=8.6Hz,1H),8.00(dd,J=8.6,2.2Hz,1H),8.08(dd,J=8.4,1.7Hz,1H),8.20(dd,J=1.7,0.5Hz,1H),8.58(d,J=2.2Hz,1H),8.80(dd,J=8.4,0.5Hz,1H).
【0193】
(合成参考例-13)
6,12-ジオキソ-2-(ピリジン-4-イル)-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-カルボニトリル:
【化50】
を、以下の方法で合成した。
【0194】
2-ブロモ-6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-カルボニトリル(240mg,0.68mmol)、4-ピリジルボロン酸(92mg,0.75mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(40mg,35μmol)および炭酸カリウム水溶液(2.0M,1.02mL,2.04mmol)をTHF(7.0mL)に溶解し、加熱還流した。16時間攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、THF及びメタノールで洗浄することで、黄色固体(142mg)を得た。この生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/酢酸エチル=3/1)によって精製することで、目的の6,12-ジオキソ-2-(ピリジン-4-イル)-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-カルボニトリルを黄色固体として70mg(29%)得た。
【0195】
1HNMR(CDCl3)δ7.65(dd,J=4.5,1.7Hz,2H),8.10(dd,J=8.4,1.7Hz,1H),8.15-8.20(m,2H),8.22(dd,J=1.7,0.5Hz,1H),8.73(dd,J=1.7,0.8z,1H),8.79(dd,J=4.5,1.7Hz,2H),8.84(dd,J=8.4,0.5Hz,1H).
【0196】
(合成実施例-9)
2-(8-シアノ-12-オキソ-2-(ピリジン-4-イル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリル(化合物A-9):
【化51】
を、以下の方法で合成した。
【0197】
アルゴン雰囲気下、6,12-ジオキソ-2-(ピリジン-4-イル)-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-カルボニトリル(70mg,0.20mmol)、マロノニトリル(40mg,0.61mmol)をTHF(6.0mL)およびピリジン(3.0mL)に懸濁させ、超音波をかけて沈殿を細かくし、60℃で2時間撹拌した。放冷後反応溶液に過剰量のヘキサンを加え生じた固体をろ過してヘキサンで洗浄することで、目的の2-(8-シアノ-12-オキソ-2-(ピリジン-4-イル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリルを赤色固体として52mg(65%)得た。
【0198】
1HNMR(CDCl3/10%TFA-d)δ8.20(dd,J=8.5,1.6,Hz,1H),8.33(d,J=8.5Hz,1H),8.36(dd,J=8.5,2.0Hz,1H),8.41(d,J=5.3Hz,2H),8.83(d,J=8.5Hz,1H),8.84(d,J=1.6Hz,1H),8.98(d,J=2.0Hz,1H),9.01(d,J=5.3Hz,2H).
【0199】
(合成参考例-14)
4-クロロ-3-(ピリジン-4-イル)ベンゾニトリル:
【化52】
を、以下の方法で合成した。
【0200】
アルゴン雰囲気下、3-ブロモ-4-クロロベンゾニトリル(2.16g,10.0mmol)、4-ピリジルボロン酸(1.35g,11.0mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(578mg,0.50mmol)および炭酸カリウム水溶液(2.0M,15.0mL,30.0mmol)をTHF(100mL)に溶解し、加熱還流した。16時間撹拌後、クロロホルムと水で抽出、無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/2)によって精製することで、目的の4-クロロ-3-(ピリジン-4-イル)ベンゾニトリルを無色固体として792mg(37%)得た。
【0201】
1HNMR(CDCl3)δ7.36(dd,J=4.5,1.7Hz,2H),7.62-7.67(m,3H),8.75(dd,J=4.5,1.7Hz,2H).
【0202】
(合成参考例-15)
4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)-3-(ピリジン-4-イル)ベンゾニトリル:
【化53】
を、以下の方法で合成した。
【0203】
2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(187mg,0.50mmol)、4-クロロ-3-(ピリジン-4-イル)ベンゾニトリル(118mg,0.55mmol)、酢酸パラジウム(II)(5.6mg,25μmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’、4’、6’-トリイソプロピルビフェニル(24mg,50μmol)および炭酸カリウム水溶液(2.0M,0.75mL,1.50mmol)をTHF(5.0mL)に溶解し、加熱還流した。16時間攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、THF、水およびメタノールで洗浄することで、目的の4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)-3-(ピリジン-4-イル)ベンゾニトリルを黄土色固体として84mg(35%)得た。
【0204】
1HNMR(CDCl3)δ7.07(dd,J=4.6,1.7Hz,2H),7.45(ddd,J=7.6,7.6,0.8Hz,1H),7.48(dd,J=8.3,2.1Hz,1H),7.68(d,J=8.0Hz,1H),7.78(d,J=1.7Hz,1H),7.80(ddd,J=8.1,7.6,1.4Hz),7.85(dd,J=8.0,1.7Hz,1H),7.89(d,J=8.3Hz,1H),7.92(ddd,J=7.6,1.4,0.5Hz,2H),8.29(d,J=2.1Hz,1H),8.53(dd,J=4.6,1.7Hz,2H),8.59(ddd,J=8.1,0.8,0.5Hz,1H).
【0205】
(合成実施例-10)
2-(2-(4-シアノ-2-(ピリジン-4-イル)フェニル)-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリル(化合物A-10):
【化54】
を、以下の方法で合成した。
【0206】
アルゴン雰囲気下、4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)-3-(ピリジン-4-イル)ベンゾニトリル(80mg,0.19mmol)、マロノニトリル(37mg,0.56mmol)をTHF(6.4mL)およびピリジン(3.2mL)に懸濁させ、超音波をかけて沈殿を細かくし、60℃で2時間撹拌した。放冷後、反応溶液にヘキサンを加えて析出した固体をろ過してヘキサンで洗浄することで、目的の2-(2-(4-シアノ-2-(ピリジン-4-イル)フェニル)-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリルを赤色固体として68mg(76%)得た。
【0207】
1HNMR(CDCl3)δ7.06(dd,J=4.4,1.7Hz,2H),7.48(ddd,J=8.0,7.6,1.0Hz,1H),7.50(dd,J=8.4,2.1Hz,1H),7.69(d,J=7.9Hz,1H),7.78(ddd,J=8.1,7.6,1.1Hz,1H),7.78(d,J=1.7Hz,1H),7.85(dd,J=7.9,1.7Hz,1H),7.86(d,J=8.4Hz,1H),8.27(d,J=2.1Hz,1H),8.48(ddd,J=8.0,1.1,0.5Hz,1H),8.53(dd,J=4.4,1.7Hz,2H),8.57(ddd,J=8.1,1.0,0.5Hz,1H).
【0208】
(合成参考例-16)
8-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン:
【化55】
を、以下の方法で合成した。
【0209】
8-ブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(164mg,0.50mmol)、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸(142mg,0.55mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(29mg,0.025mmol)および炭酸カリウム水溶液(2M,0.75mL,1.50mmol)をTHF(5mL)に溶解し、加熱還流した。終夜攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、水で洗浄することで黄土色固体を得た。これをトルエンで洗浄することで、目的の8-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオンを黄色固体として169mg(73%)得た。
【0210】
1HNMR(CDCl3)δ7.72(ddd,J=7.9,7.3,1.1Hz,1H),7.90(ddd,J=8.1,7.3,1.5Hz,1H),7.95(brs,1H),8.04-8.09(m,4H),8.17(dd,J=2.0,0.5Hz,1H),8.48(ddd,J=7.9,1.5,0.4Hz,1H),8.79(dd,J=8.4,0.5Hz,1H).
【0211】
(合成参考例-17)
2,8-ジブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン:
【化56】
を、以下の方法で合成した。
【0212】
5-ブロモインドリン-2,3-ジオン(3.39g,15.0mmol)、6-ブロモ-2H-ベンゾ[d][1,3]オキサジン-2,4(1H)-ジオン(3.61g,15.0mmol)およびリン酸三カリウム(6.37g,30.0mmol)をジメチルスルホキシド(120mL)に溶解し、室温で攪拌した。終夜攪拌後、反応溶液を水/ジクロロメタンで分液、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後溶媒留去し、目的の2,8-ジブロモインドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオンを黄色固体として5.22g(86%)得た。
【0213】
1HNMR(CDCl3)δ7.90(d,J=8.6Hz,1H),7.91(dd,J8.6,2.2Hz,1H),7.96(dd,J=8.6,2.2Hz,1H),8.03(d,J=2.2Hz,1H),8.52(d,J=8.6Hz,1H),8.56(d,J=2.2Hz,1H).
【0214】
(合成参考例-18)
4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)フタロニトリル
【化57】
を、以下の方法で合成した。
【0215】
2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6,12-ジオン(374mg,1.00mmol)、4-ブロモフタロニトリル(228mg,1.10mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(58mg,50μmol)および炭酸カリウム水溶液(2M,2.0mL,3.0mmol)をTHF(10mL)に溶解し、加熱還流した。16時間攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、THFおよび水/メタノール=9/1(体積比)混合溶媒で洗浄することで、目的の4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)フタロニトリルを黄色固体として324mg(87%)得た。
【0216】
1HNMR(CDCl3)δ7.48(ddd,J=7.6,7.6,0.9Hz,1H),7.84(ddd,J=8.0,7.6,1.4Hz,1H),7.96(dd,J=7.6,1.4Hz,1H),7.98(dd,J=8.2,0.4Hz,1H),8.07(dd,J=8.4,2.2Hz,1H),8.09(dd,J=8.2,1.8Hz,1H),8.16(dd,J=1.8,0.4Hz,1H),8.20(dd,J=8.4,0.3Hz,1H),8.65(dd,J=8.0,0.9Hz,1H),8.67(dd,J=2.2,0.3Hz,1H).
【0217】
(合成実施例-11)
4-(6-(ジシアノメチレン)-12-オキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)フタロニトリル(化合物A-151):
【化58】
を、以下の方法で合成した。
【0218】
アルゴン雰囲気下、4-(6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)フタロニトリル(324mg,0.87mmol)、マロノニトリル(180mg,2.72mmol)をTHF(24mL)およびピリジン(12mL)に懸濁させ、超音波をかけて沈殿を細かくし、60℃で2時間撹拌した。放冷後生じた固体をろ過してヘキサンで洗浄、およびろ液にヘキサンを加えてろ過してヘキサンで洗浄することで、目的の4-(6-(ジシアノメチレン)-12-オキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-2-イル)フタロニトリルを赤色固体として335mg(92%)得た。
【0219】
1HNMR(CDCl3)δ7.51(ddd,J=8.0,7.6,1.0Hz,1H),7.81(ddd,J=8.1,7.6,1.2Hz,1H),7.98(dd,J=8.2,0.4Hz,1H),8.08(dd,J=8.4,2.2Hz,1H),8.09(dd,J=8.2,1.9Hz,1H),8.16(dd,J=8.4,0.5Hz,1H),8.17(dd,J=1.9,0.4Hz,1H),8.51(ddd,J=8.0,1.2,0.6Hz,1H),8.64(ddd,J=8.1,1.0,0.6Hz,1H),8.66(dd,J=2.2,0.5Hz,1H).
【0220】
(合成参考例-19)
2-(4-シアノフェニル)-6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-カルボニトリル
【化59】
を、以下の方法で合成した。
【0221】
アルゴン雰囲気下、2-ブロモ-6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-カルボニトリル(1.59g,4.50mmol)、4-シアノフェニルボロン酸(728mg,4.95mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(260mg,225μmol)および炭酸カリウム水溶液(2.0M,6.75mL,13.5mmol)をTHF(45mL)に溶解し、加熱還流した。16時間攪拌後、放冷し析出した固体をろ過し、THF、メタノール及び水で洗浄することで黄土色固体を得た。これをクロロホルム(150mL)及びトリフルオロ酢酸(15mL)に溶解し、活性炭を加え攪拌した後セライトろ過して得られた黄色溶液を濃縮することで、目的の2-(4-シアノフェニル)-6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-カルボニトリルを黄色固体として1.43g(85%)得た。
【0222】
1HNMR(CDCl3)δ7.84(m,4H),8.11-8.22(m,4H),8.68(d,J=2.0Hz,1H),8.83(d,J=8.3Hz,1H).
【0223】
(合成実施例-12)
2-(8-シアノ-12-オキソ-2-(4-シアノフェニル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリル(化合物A-11):
【化60】
を、以下の方法で合成した。
【0224】
アルゴン雰囲気下、2-(4-シアノフェニル)-6,12-ジオキソー6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-カルボニトリル(300mg,0.80mmol)、マロノニトリル(159mg,2.40mmol)をDMF(40mL)に懸濁させ、超音波をかけて沈殿を細かくし、60℃で4時間撹拌した。放冷後、反応溶液にヘキサンを加えて析出した固体をろ過してクロロベンゼンで洗浄することで、目的の2-(8-シアノ-12-オキソ-2-(4-シアノフェニル)インドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリルを赤色固体として160mg(71%)得た。
【0225】
1HNMR(CDCl3)δ7.83-7.81(m,6H),8.21(dd,J=9.2,2.3Hz,1H),8.47-8.48(m,1H),8.85(d,J=2.3Hz,1H),8.88(d,J=9.2Hz,1H).
【0226】
(合成参考例-20)
6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-カルボニトリル
【化61】
を、以下の方法で合成した。
【0227】
2,3-ジオキソインドリン-5-カルボニトリル(792mg,4.60mmol)、2H-ベンゾ[d][1,3]オキサジン-2,4(1H)-ジオン(751mg,4.60mmol)およびリン酸三カリウム(1.95g,9.21mmol)をジメチルスルホキシド(37mL)に溶解し、室温で16時間攪拌した。水晶析によって析出した固体をろ過し、水で洗浄することで茶色固体を991mg得た。これをクロロホルムに溶解し、シリカゲルを敷き詰めたグラスフィルターでろ過した後、色が消えるまでクロロホルムで溶出した。溶出後得られた黄色溶液を濃縮することで、目的の6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-カルボニトリルを黄色固体として858mg(68%)得た。
【0228】
1HNMR(CDCl3)δ7.73(ddd,J=7.9,7.6,0.9Hz,1H),7.90(dd,J=7.9,7.6,1.4Hz,1H),8.05(dd,J=7.9,0.9Hz,1H),8.06(dd,J=8.4,1.6Hz,1H),8.19(d,J=1.6Hz,1H),8.45(dd,J=7.9,1.4Hz,1H),8.80(d,J=8.4Hz,1H).
【0229】
(合成実施例-13)
2-(8-シアノ-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリル(化合物A-152):
【化62】
を、以下の方法で合成した。
【0230】
アルゴン雰囲気下、6,12-ジオキソ-6,12-ジヒドロインドロ[2,1-b]キナゾリン-8-カルボニトリル(943mg,3.45mmol)、マロノニトリル(684mg,10.3mmol)をTHF(120mL)およびピリジン(60mL)に懸濁させ、超音波をかけて沈殿を細かくし、60℃で2時間撹拌した。放冷後、反応溶液をろ過してTHFで洗浄することで、目的の2-(8-シアノ-12-オキソインドロ[2,1-b]キナゾリン-6(12H)-イリデン)マロノニトリルを110mg(10%)得た。
【0231】
1HNMR(CDCl3)δ7.74(ddd,J=7.9,7.3,1.1Hz,1H),7.92(ddd,J=8.1,7.3,1.2Hz,1H),8.03(dd,J=8.1,1.1Hz,1H),8.05(dd,J=8.4,1.5Hz,1H),8.45(dd,J=7.9,1.2Hz,1H),8.74(dd,J=1.5,0.5Hz,1H),8.79(dd,J=8.4,0.5Hz,1H).
【0232】
[評価に用いた化合物]
【化63】
なお、化合物(A-1)は、合成実施例-1で得られた化合物である。化合物(A-2)は、合成実施例-2で得られた化合物である。化合物(A-3)は、合成実施例-3で得られた化合物である。
【0233】
<表面粗さ>
化合物(A-2)の蒸着膜に対して、原子間力顕微鏡法(AFM)による測定画像をもとに平均粗さを測定したところ、結果は0.63nmであった。一方、同条件で測定した際の比較化合物(HAT-CN)の平均粗さの測定結果は、1.33nmであった。AFMによる測定結果から、化合物(A-2)は、良質なアモルファス膜を形成し得ることが確認できた。
【0234】
<ホールオンリーデバイス(HOD)の作製1および評価1>
[素子実施例1]
第一の電極/第一の正孔注入層/正孔輸送層/正孔輸送促進層/第二の電極からなる構造を有するホールオンリーデバイスを作製し、該デバイスの正孔輸送特性を評価した。
(第一の電極)
第一の電極をその表面に備えた基板として、ITO膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意し、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
【0235】
(真空蒸着の準備)
上記表面処理が施された基板の2面のうち、ITO膜が形成されている側の面上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に上記ガラス基板を導入し、1.0×10-4Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
【0236】
(第一の正孔注入層の作製)
ITO膜にMoO3を1nm製膜し、正孔注入層を作製した。
(正孔輸送層の作製)
正孔輸送材料として(HTL-1)を100nm成膜し、正孔輸送層を作製した。尚、(HTL-1)は特開2018-193371に記載の方法で合成した。
(正孔輸送促進層の作製)
昇華精製した化合物(A-1)を10nm成膜し、正孔輸送促進層を作製した。
【0237】
(第二の電極の作製)
Auを80nm成膜し、第二の電極を作製した。
【0238】
(ホールオンリーデバイスの正孔輸送能力評価)
素子実施例1のホールオンリーデバイスの第一の電極と第二の電極にそれぞれプラスとマイナスの電界をかけ、10mA/cm2の電流密度における電圧値を測定した。得られた結果を表1に示す。
【0239】
[素子実施例2]
実施例1において正孔輸送促進層の作製に用いた化合物(A-1)の代わりに、化合物(A-3)を用いたこと以外は、素子実施例1と同様の方法によりホールオンリーデバイスを作製した。得られたホールオンリーデバイスの正孔輸送能力を素子実施例1と同様の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0240】
[素子比較例1]
実施例1において正孔輸送促進層の作製に用いた化合物(A-1)の代わりに、化合物(NPT)を用いたこと以外は、素子実施例1と同様の方法によりホールオンリーデバイスを作製した。得られたホールオンリーデバイスの正孔輸送能力を素子実施例1と同様の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0241】
[素子比較例2]
正孔輸送促進層を有さないこと以外は、素子実施例1と同様の方法によりホールオンリーデバイスを作製した。得られたホールオンリーデバイスの正孔輸送能力を素子実施例1と同様の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0242】
【0243】
正孔輸送促進材料として化合物(A-1)を用いた素子実施例1の素子(HOD電圧は1.02V)、および正孔輸送促進材料として化合物(A-3)を用いた素子実施例2の素子(HOD電圧は1.11V)は、正孔輸送促進材料を用いなかった素子比較例2の素子(HOD電圧は4.42V)に比べHOD電圧が低下した。また、正孔輸送促進材料として化合物(A-1)を用いた素子実施例1の素子(HOD電圧は1.02V)、および正孔輸送促進材料として化合物(A-3)を用いた素子実施例2の素子(HOD電圧は1.11V)は、公知の材料NPTを用いた素子比較例1の素子(HOD電圧は2.27V)に比べHOD電圧が低下した。
【0244】
<光電変換素子の作製および評価>
[素子実施例3]
基板/第二の電極16/電子輸送層15/受光層14/正孔輸送層13/正孔輸送促進層12/第一の電極11からなる積層構成を有する光電変換素子1を作製し、該光電変換素子の暗電流および外部量子効率を評価した。
【0245】
(基板、第二の電極16の用意)
第二の電極をその表面に備えた基板として、2mm幅の酸化インジウム-スズ(ITO)膜(膜厚110nm)がストライプ状にパターンされたITO透明電極付きガラス基板を用意した。ついで、この基板をイソプロピルアルコールで洗浄した後、オゾン紫外線洗浄にて表面処理を行った。
(真空蒸着の準備)
洗浄後の表面処理が施された基板上に、真空蒸着法で各層の真空蒸着を行い、各層を積層形成した。
まず、真空蒸着槽内に上記ガラス基板を導入し、7.0×10-5Paまで減圧した。そして、以下の順で、各層の成膜条件に従ってそれぞれ作製した。
(電子輸送層15の作製)
昇華精製した化合物4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-4-イル)フェニル)-2-メチルピリミジンを0.03nm/秒の速度で10nm成膜し、電子輸送層15を作製した。
(受光層14の作製)
N,N-ジメチルキナクリドンおよびフラーレンC60を4:1(質量比)の割合で250nm成膜し、受光層14を作製した。成膜速度は0.13nm/秒であった。
(正孔輸送層13の作製)
正孔輸送材料として(HTL-1)を0.10nm/秒の速度で10nm成膜し、正孔輸送層13を作製した。
(正孔輸送促進層12の作製)
化合物(A-1)を0.20nm/秒の速度で10nm成膜し、正孔輸送促進層12を作製した。
(第一の電極11の作製)
最後に、基板上のITOストライプと直行するようにメタルマスクを配し、第一の電極11を成膜した。第一の電極は、Auを80nm成膜することで作製した。Auの成膜速度は0.1nm/秒であった。
【0246】
以上により、面積4mm
2の
図1に示す光電変換素子1を作製した。上記のようにして作製した光電変換素子に、第二の電極16側に電子が、第一の電極11側に正孔が輸送されるように、絶対値として2.5Vの電圧を印加したときの、暗所での電流(暗電流)および外部量子効率を評価した。暗電流の測定は、ケースレー社製ソース・メジャー・ユニット2636Bを用いて評価した。外部量子効率の測定には太陽電池分光感度測定装置(相馬光学社製)を用いた。照射光の波長は560nmで、強度50μW/cm
2で測定を行った。結果を表2に示す。なお暗電流(A/cm
2)および外部量子効率は、後述する素子比較例3における結果を基準値(100)とした相対値である。暗電流は数値が低いほど性能に優れ、外部量子効率は数値が高いほど性能に優れることを示す。
【0247】
[素子実施例4]
正孔輸送促進層12の作製において、化合物(A-1)の代わりに、化合物(A-3)を用いたこと以外は、素子実施例3と同様の方法により、素子実施例4の光電変換素子を作製し、素子実施例3と同じ方法により暗電流および外部量子効率を測定した。結果を表2に示す。
【0248】
[素子比較例3]
正孔輸送促進層12の作製において、化合物(A-1)の代わりに、化合物(NPT)を用いたこと以外は、素子実施例3と同様の方法により、素子比較例3の光電変換素子を作製し、素子実施例3と同じ方法により暗電流および外部量子効率を測定した。結果を表2に示す。
【0249】
[素子比較例4]
正孔輸送促進層12を設けなかったこと以外は、素子実施例3と同様の方法により、素子比較例4の光電変換素子を作製し、素子実施例3と同じ方法により暗電流および外部量子効率を測定した。結果を表2に示す。
【0250】
【0251】
表2に示すとおり、本発明の有機電子素子用材料を用いた素子実施例の素子では、素子比較例の素子と比べて暗電流が抑制され、且つ、高い外部量子効率が得られた。
なお、素子比較例4においては、暗電流が悪くノイズが多い為、正確な外部量子効率は測定できなかった。
【0252】
本発明の有機電子素子用材料は、式(1)で示される化合物を含むことにより、正孔の輸送能力を向上させることができ、光電変換素子に用いた場合にはより効率的に光電変換を行うことができる。また、本発明の有機電子素子用材料は、式(1)で示される化合物を含むことにより、暗電流が抑制され、外部量子効率も高めることができる。