(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119099
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】検査装置の焦点位置調整方法及びパターン検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20240827BHJP
G02B 7/28 20210101ALI20240827BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20240827BHJP
【FI】
G01N21/956 A
G02B7/28 H
G03B13/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025742
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】平野 亮一
(72)【発明者】
【氏名】山下 靖裕
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 寿明
【テーマコード(参考)】
2G051
2H011
2H151
【Fターム(参考)】
2G051AA56
2G051AB02
2G051BA05
2G051CA01
2G051CB01
2G051CB02
2G051DA09
2H011AA06
2H151AA15
2H151BA53
2H151BA65
2H151CD28
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マスク等の基板上のパターン種類によって生じる、オートフォーカス時に調整される基板のパターン形成面の高さ位置の誤差を抑制或いは低減する。
【解決手段】複数の種類の図形パターンが形成された評価基板のパターン形成面の高さ位置を可変にしながら、パターンの種類毎に、検査光で照射された評価基板を透過或いは反射した光の前焦点位置の光量と後焦点位置の光量を計測する工程と、計測された前焦点位置の光量と後焦点位置の光量を用いてオートフォーカス信号を算出する工程と、オートフォーカス信号毎の評価基板のパターン形成面の同じ高さ位置における値の差がしきい値以下となる検査用オートフォーカス信号の値を特定する工程と、被検査基板のパターン形成面の高さ位置を検査用オートフォーカス信号の値に対応する高さ位置に調整しながら、2以上の種類の図形パターンの欠陥を検査するための被検査基板の光学画像を撮像する工程と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の種類の図形パターンが形成された評価基板のパターン形成面の高さ位置を可変にしながら、パターンの種類毎に、検査光で照射された前記評価基板を透過或いは反射した光の前焦点位置の光量と後焦点位置の光量とを計測する工程と、
前記パターンの種類毎に、かつ前記評価基板のパターン形成面の高さ位置毎に、計測された前焦点位置の光量と後焦点位置の光量を用いてオートフォーカス信号を算出する工程と、
前記パターンの種類毎に算出されたオートフォーカス信号毎の前記評価基板のパターン形成面の同じ高さ位置における値の差がしきい値以下となる検査用オートフォーカス信号の値を特定する工程と、
前記複数の種類の図形パターンのうち2以上の種類の図形パターンが形成された被検査基板をステージに載置した状態で、前記ステージの水平方向の移動に伴ない変動し得る前記被検査基板のパターン形成面の高さ位置を前記検査用オートフォーカス信号の値に対応するパターン形成面の高さ位置に調整しながら、検査光で照射された前記被検査基板を透過或いは反射した光を、検査光学系を介してセンサで受光することにより、前記2以上の種類の図形パターンの欠陥を検査するための被検査基板の光学画像を撮像する工程と、
を備えたことを特徴とする検査装置の焦点位置調整方法。
【請求項2】
前記検査用オートフォーカス信号の値として、前記パターンの種類毎に算出されたオートフォーカス信号同士の値が評価基板の同じ高さ位置で一致する値を用いることを特徴とする請求項1記載の検査装置の焦点位置調整方法。
【請求項3】
前記複数の種類のパターンとして、3種以上の図形パターンが用いられ、
前記検査用オートフォーカス信号の値として、2種の図形パターンの組み合わせ毎に前記オートフォーカス信号同士の値が前記評価基板の同じ高さ位置で一致する複数の値のうち、最大値と最小値の間の値を用いることを特徴とする請求項1記載の検査装置の焦点位置調整方法。
【請求項4】
前記検査光学系のピント位置となる高さ位置と前記検査用オートフォーカス信号の値に対応する前記評価基板のパターン形成面の高さ位置との差が第2のしきい値よりも大きいかどうかを判定する工程と、
前記差が第2のしきい値よりも大きい場合に、前記検査光学系のピント位置を前記検査用オートフォーカス信号の値に対応する前記評価基板のパターン形成面の高さ位置になるように前記検査光学系を調整する工程と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の検査装置の焦点位置調整方法。
【請求項5】
複数の種類の図形パターンが形成された評価基板を載置するステージと、
前記ステージの高さ位置を移動させる駆動機構と、
前記ステージの高さ位置を移動させることにより、前記評価基板のパターン形成面の高さ位置を可変にしながら、パターンの種類毎に、検査光で照射された前記評価基板を透過或いは反射した光の前焦点位置の光量と後焦点位置の光量を計測する第1と第2の光量センサに導くオートフォーカス光学系と、
前記パターンの種類毎に、かつ前記評価基板のパターン形成面の高さ位置毎に、計測された前記前焦点位置の光量と前記後焦点位置の光量を用いてオートフォーカス信号を算出するオートフォーカス信号算出部と、
前記パターンの種類毎に算出されたオートフォーカス信号毎の前記評価基板のパターン形成面の同じ高さ位置における値の差がしきい値以下となる検査用オートフォーカス信号の値を特定する特定部と、
前記複数の種類の図形パターンのうち2以上の種類の図形パターンが形成された被検査基板を前記ステージに載置した状態で、前記ステージの水平方向の移動に伴ない変動し得る前記被検査基板のパターン形成面の高さ位置を前記検査用オートフォーカス信号の値に対応するパターン形成面の高さ位置に調整するオートフォーカス機構と、
前記被検査基板のパターン形成面の高さ位置が前記検査用オートフォーカス信号の値に対応するパターン形成面の高さ位置に調整された状態で、検査光で照射された前記被検査基板を透過或いは反射した光を受光することにより、前記2以上の種類の図形パターンの欠陥を検査するための被検査基板の光学画像を撮像するセンサと、
前記被検査基板を透過或いは反射した光を前記センサに導く検査光学系と、
を備えたことを特徴とするパターン検査装置。
【請求項6】
複数の種類の図形パターンが形成された基板のパターン形成面の高さ位置を可変にしながら、パターンの種類毎に、検査光で照射された前記基板を透過或いは反射した光の前焦点位置の光量と後焦点位置の光量とを計測する工程と、
前記パターンの種類毎に、かつ前記基板のパターン形成面の高さ位置毎に、計測された前焦点位置の光量と後焦点位置の光量を用いてオートフォーカス信号を算出する工程と、
前記パターンの種類毎に算出されたオートフォーカス信号毎の前記基板のパターン形成面の同じ高さ位置における値の差がしきい値以下となる検査用オートフォーカス信号の値を特定する工程と、
前記基板をステージに載置した状態で、前記ステージの水平方向の移動に伴ない変動し得る前記基板のパターン形成面の高さ位置を前記検査用オートフォーカス信号の値に対応するパターン形成面の高さ位置に調整しながら、検査光で照射された前記基板を透過或いは反射した光を、検査光学系を介してセンサで受光することにより、前記複数の種類の図形パターンの欠陥を検査するための前記基板の光学画像を撮像する工程と、
を備えたことを特徴とする検査装置の焦点位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置の焦点位置調整方法及びパターン検査装置に関する。例えば、半導体製造に用いる露光用マスクのパターン欠陥を検査する装置及びその装置の焦点位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。これらの半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
検査手法としては、例えば、同一マスク上の異なる場所の同一パターンを撮像した光学画像データ同士を比較する「die to die(ダイ-ダイ)検査」や、パターン設計されたCADデータをマスクにパターンを描画する時に描画装置が入力するための装置入力フォーマットに変換した描画データ(設計データ)を検査装置に入力して、これをベースに参照画像を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる光学画像とを比較する「die to database(ダイ-データベース)検査」がある。
【0005】
かかる検査装置では、検査対象物であるマスク上のパターン画像を鮮明に採取する必要がある。しかし、検査装置の光学系には有限の焦点深度が存在するので、検査中は検査対象物の検査面を、光学系の焦点深度内に保持し続ける必要がある。言い換えれば、撮像した画像のコントラストを許容される範囲に保持することが求められる。検査装置においてはステージを移動させながらマスクをスキャンして連続的に画像を撮像することが必要であり、検査中に逐次画像コントラストを計算して光学系の焦点(ピント)を調整するのは処理時間が不足するため現実的でない。
【0006】
そこで、検査装置においては、画像撮像用の検査光学系に加え、検査光学系に対する検査対象物の高さ方向の変位を検出し、高さ位置を調整するオートフォーカス機構が採用されている。
【0007】
昨今のパターンの微細化に伴い、検査光の短波長化が進んでいる。これに伴い検査光学系の焦点深度が浅くなってきた。そのため、従来は検査光学系の近傍に設置した独立したオートフォーカス機構の計測系の精度で足りていたものが、検査光学系そのものを利用した(In-situ)測定を行わないと、検査光学系の持つ様々な変動要因(温度/機械的変形の依存性)を検出できず、高精度なピント調整ができなくなってきた。そのため、オートフォーカス機構として、検査光学系を一部利用する形態が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
かかるオートフォーカス機構では、装置立ち上げ時に、オートフォーカス光学系のピント位置を基準として一様な反射面を持つマスクの高さ位置を上下させ、オートフォーカス信号の直線的な信号変化を測定している。オートフォーカス光学系のピント位置と検査光学系のピント位置との間には誤差がある。そのため、オートフォーカス光学系のピント位置にオフセットを加えて、検査光学系のピント位置を維持するようにマスクの高さ調整を行っている。
【0009】
ここで、パターンの微細化、検査光の短波長化が進んだことにより、マスク上のパターン種類に応じてオートフォーカス信号の勾配が変化することがわかってきた。従って、オートフォーカス光学系のピント位置からある変位量だけマスクの高さ位置をずらしたときのオートフォーカス信号の出力は、パターン種類によって異なることになる。よって、マスク上のパターン種類により調整されるマスクの高さ位置が変化してしまう。
【0010】
一方、パターンを撮像するセンサ側では、従来、装置立ち上げ時に様々な寸法、形状のテスト用パターンを描画したテスト用マスクを検査光学系のピント位置に設定したうえで、撮像されたどのパターンにおいても同じ計測値を出力するようにセンサ回路の調整が行われる。よって、マスク上のパターン種類によりマスクの高さ位置が変化してしまうと、センサから出力される画像信号の値の精度が劣化し、高精度な画像が得られないといった問題が生じる。パターンの微細化、検査光の短波長化に伴い、かかる画像信号の値の劣化に伴う画像ボケの影響が無視できなくなってきた。その結果、疑似欠陥が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の一態様は、マスク等の基板上のパターンの種類の違いによって生じる、オートフォーカス時に調整される基板のパターン形成面の高さ位置の誤差を抑制或いは低減することが可能な検査装置及び焦点位置調整方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様の検査装置の焦点位置調整方法は、
複数の種類の図形パターンが形成された評価基板のパターン形成面の高さ位置を可変にしながら、パターンの種類毎に、検査光で照射された評価基板を透過或いは反射した光の前焦点位置の光量と後焦点位置の光量を計測する工程と、
パターンの種類毎に、かつ評価基板のパターン形成面の高さ位置毎に、計測された前焦点位置の光量と後焦点位置の光量を用いてオートフォーカス信号を算出する工程と、
パターンの種類毎に算出されたオートフォーカス信号毎の前記評価基板のパターン形成面の同じ高さ位置における値の差がしきい値以下となる検査用オートフォーカス信号の値を特定する工程と、
複数の種類の図形パターンのうち2以上の種類の図形パターンが形成された被検査基板をステージに載置した状態で、ステージの水平方向の移動に伴ない変動し得る被検査基板のパターン形成面の高さ位置を検査用オートフォーカス信号の値に対応するパターン形成面の高さ位置に調整しながら、検査光で照射された被検査基板を透過或いは反射した光を、検査光学系を介してセンサで受光することにより、2以上の種類の図形パターンの欠陥を検査するための被検査基板の光学画像を撮像する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、検査用オートフォーカス信号の値として、パターンの種類毎に算出されたオートフォーカス信号同士の値が評価基板の同じ高さ位置で一致する値を用いると好適である。
【0015】
或いは、複数の種類のパターンとして、3種以上の図形パターンが用いられ、
検査用オートフォーカス信号の値として、2種の図形パターンの組み合わせ毎にオートフォーカス信号同士の値が評価基板の同じ高さ位置で一致する複数の値のうち、最大値と最小値の間の値を用いると好適である。
【0016】
また、検査光学系のピント位置となる高さ位置と検査用オートフォーカス信号の値に対応する評価基板のパターン形成面の高さ位置との差が第2のしきい値よりも大きいかどうかを判定する工程と、
差が第2のしきい値よりも大きい場合に、検査光学系のピント位置を検査用オートフォーカス信号の値に対応する評価基板のパターン形成面の高さ位置になるように検査光学系を調整する工程と、
をさらに備えると好適である。
【0017】
本発明の一態様のパターン検査装置は、
複数の種類の図形パターンが形成された評価基板を載置するステージと、
ステージの高さ位置を移動させる駆動機構と、
ステージの高さ位置を移動させることにより、評価基板のパターン形成面の高さ位置を可変にしながら、パターンの種類毎に、評価基板のパターン形成面の高さ位置に依存する、検査光で照射された評価基板を透過或いは反射した光の前焦点位置の光量と後焦点位置の光量を計測する第1と第2の光量センサに導くオートフォーカス光学系と、
パターンの種類毎に、かつ評価基板のパターン形成面の高さ位置毎に、計測された前焦点位置の光量と後焦点位置の光量を用いてオートフォーカス信号を算出するオートフォーカス信号算出部と、
パターンの種類毎に算出されたオートフォーカス信号毎の評価基板のパターン形成面の同じ高さ位置における値の差がしきい値以下となる検査用オートフォーカス信号の値を特定する特定部と、
複数の種類の図形パターンのうち2以上の種類の図形パターンが形成された被検査基板をステージに載置した状態で、ステージの水平方向の移動に伴ない変動し得る被検査基板のパターン形成面の高さ位置を検査用オートフォーカス信号の値に対応するパターン形成面の高さ位置に調整するオートフォーカス機構と、
被検査基板のパターン形成面の高さ位置が検査用オートフォーカス信号の値に対応するパターン形成面の高さ位置に調整された状態で、検査光で照射された被検査基板を透過或いは反射した光を受光することにより、2以上の種類の図形パターンの欠陥を検査するための被検査基板の光学画像を撮像するセンサと、
被検査基板を透過或いは反射した光をセンサに導く検査光学系と、
を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明の他の態様の検査装置の焦点位置調整方法は、
複数の種類の図形パターンが形成された基板のパターン形成面の高さ位置を可変にしながら、パターンの種類毎に、検査光で照射された基板を透過或いは反射した光の前焦点位置の光量と後焦点位置の光量を計測する工程と、
パターンの種類毎に、かつ基板のパターン形成面の高さ位置毎に、計測された前焦点位置の光量と後焦点位置の光量を用いてオートフォーカス信号を算出する工程と、
パターンの種類毎に算出されたオートフォーカス信号毎の前記基板のパターン形成面の同じ高さ位置における値の差がしきい値以下となる検査用オートフォーカス信号の値を特定する工程と、
基板をステージに載置した状態で、ステージの水平方向の移動に伴ない変動し得る基板のパターン形成面の高さ位置を検査用オートフォーカス信号の値に対応するパターン形成面の高さ位置に調整しながら、検査光で照射された基板を透過或いは反射した光を、検査光学系を介してセンサで受光することにより、複数の種類の図形パターンの欠陥を検査するための前記基板の光学画像を撮像する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、マスク等の基板上のパターンの種類の違いによって生じる、オートフォーカス時に調整される基板のパターン形成面の高さ位置の誤差を抑制或いは低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
【
図2】実施の形態1における検査領域を説明するための概念図である。
【
図3】実施の形態1における検査方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
【
図4】実施の形態1におけるオートフォーカス制御回路の内部構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態1におけるH-z間の関係の一例のグラフを示す図である。
【
図6】実施の形態1におけるH-z間の関係の他の一例のグラフを示す図である。
【
図7】実施の形態1における検査光学系の焦点合わせの手法の一例を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1の比較例におけるH-z間の関係の一例のグラフを示す図である。
【
図9】実施の形態1の比較例におけるパターンに依存したオートフォーカス光学系の出力の一例を示す図である。
【
図10】実施の形態1におけるH-z間の関係の一例のグラフを示す図である。
【
図11】実施の形態1におけるパターンに依存したオートフォーカス光学系の出力の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態1におけるパターンに依存したオートフォーカス光学系の出力の他の一例を示す図である。
【
図13】実施の形態1におけるフィルタ処理を説明するための図である。
【
図14】実施の形態1における比較回路の内部構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図1において、検査対象基板、例えばマスクに形成されたパターンの欠陥を検査する検査装置100は、光学画像取得機構150、及び制御系回路160を備えている。
【0022】
光学画像取得機構150は、光源103、反射照明光学系171、移動可能に配置されたXYθテーブル102、拡大光学系104、ビームスプリッタ174、ビームスプリッタ177、コリメータレンズ176、結像光学系178、オートフォーカス機構131、撮像センサ105、センサ回路106、ストライプパターンメモリ123、レーザ測長システム122、及びオートローダ130を有している。透過光を用いた透過検査を行う場合には、さらに透過照明光学系170を配置する。透過検査を行わずに反射光を用いた反射検査のみを行う場合には、透過照明光学系170を省略しても構わない。透過検査と反射検査の両方を同時に行う場合には、さらに図示しない撮像センサを追加し、撮像センサ105で反射検査のための画像を撮像し、追加された撮像センサで透過検査のための画像を撮像するように構成すればよい。
【0023】
オートフォーカス機構131は、オートフォーカス光学系180、光量センサ185(第1の光量センサ)、光量センサ187(第2の光量センサ)、Z駆動機構132、及び位置センサ134を有する。
【0024】
オートフォーカス光学系180は、結像光学系181、ビームスプリッタ182、スリット板184、及びスリット板186を有する。オートフォーカス光学系180は、基板を透過或いは反射した光を光量センサ185と光量センサ187に導く。ビームスプリッタ182は、焦点位置よりも手前に配置されたる。スリット板184は、前焦点位置(前ピン位置)に配置され、ビームスプリッタ182を透過した光を受光する。光量センサ185は、前焦点位置(前ピン位置)に配置されたスリット板184を通過した光量を計測する。スリット板186は、後焦点位置(後ピン位置)に配置され、ビームスプリッタ182により分岐された光を受光する。光量センサ187は、後焦点位置(後ピン位置)に配置されたスリット板186を通過した光量を計測する。
【0025】
XYθテーブル102上には、オートローダ130から搬送された基板101が配置されている。基板101として、例えば、ウェハ等の半導体基板にパターンを転写する露光用のフォトマスクが含まれる。また、このフォトマスクには、検査対象となる複数の種類の図形パターンが形成されている。基板101は、例えば、パターン形成面を下側に向けてXYθテーブル102に配置される。XYθテーブル102のステージの一例である。
【0026】
撮像センサ105として、ラインセンサ或いは2次元センサを用いる。例えば、TDI(時間遅延積分)センサを用いると好適である。TDIセンサは、2次元状に配列される複数のフォトセンサ素子を有する。各フォトセンサ素子は画像を撮像する際に、所定の画像蓄積時間が設定される。TDIセンサでは、スキャン方向に並ぶ複数のフォトセンサ素子の出力が積分されて出力される。スキャン方向に並ぶ複数のフォトセンサ素子は、XYθテーブル102の移動に応じて時間をずらしながら同じ画素を撮像することになる。ラインセンサを用いる場合には、スキャン方向と直交する方向に複数のフォトセンサ素子が並ぶように配置する。
【0027】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、オートフォーカス制御回路140、磁気ディスク装置109、メモリ111、磁気テープ装置115、フレシキブルディスク装置(FD)116、CRT117、パターンモニタ118、及びプリンタ119に接続されている。また、撮像センサ105は、ストライプパターンメモリ123に接続され、ストライプパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、参照画像作成回路112は、比較回路108に接続される。
【0028】
位置センサ134の出力は、オートフォーカス制御回路140に接続される。また、光量センサ185,187の出力は、オートフォーカス制御回路140に接続される。
【0029】
なお、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、及びオートフォーカス制御回路140といった一連の「~回路」は、処理回路を有する。かかる処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。各回路は、同じ処理回路(1つの処理回路)を用いて構成される場合であっても良いし、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。例えば、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、及びオートフォーカス制御回路140といった一連の「~回路」は、制御計算機110によって構成され、実行されても良い。位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、及びオートフォーカス制御回路140に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度各回路内の図示しないメモリ若しくはメモリ111に記憶される。制御計算機110に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度制御計算機110内の図示しないメモリ若しくはメモリ111に記憶される。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、FD116、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。
【0030】
検査装置100では、検査光学系175として、反射検査光学系或いは/及び透過検査光学系を搭載している。光源103、反射照明光学系171、ビームスプリッタ174、拡大光学系104、XYθテーブル102、コリメータレンズ176、及び結像光学系178により高倍率の反射検査光学系が構成されている。或いは、光源103、透過照明光学系170、XYθテーブル102、拡大光学系104、コリメータレンズ176、及び結像光学系178により高倍率の透過検査光学系が構成されている。
【0031】
また、XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下にテーブル制御回路114により駆動される。X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、Xモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。XYθテーブル102は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。XYθテーブル102は、ステージの一例となる。そして、XYθテーブル102上に配置された基板101の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。また、オートローダ130からXYθテーブル102への基板101の搬送、及びXYθテーブル102からオートローダ130への基板101の搬送処理は、オートローダ制御回路113によって制御される。
【0032】
また、XYθテーブル102は、オートフォーカス制御回路140により制御されたZ駆動機構132によりz方向に駆動される。Z駆動機構132として、例えば、ピエゾ素子或いはステップモータを用いると好適である。また、XYθテーブル102の高さ位置は、位置センサ134によって測定され、測定結果がオートフォーカス制御回路140に出力される。
【0033】
また、コリメータレンズ176は、オートフォーカス制御回路140により制御されたZ駆動機構136によりz方向に駆動される。Z駆動機構136として、例えば、ピエゾ素子或いはステップモータを用いると好適である。
【0034】
被検査基板101のパターン形成の基となる描画データ(設計データ)が検査装置100の外部から入力され、磁気ディスク装置109に格納される。描画データには、複数の種類の図形パターンが定義され、各図形パターンは、通常、複数の要素図形の組合せにより構成される。なお、1つの図形で構成される図形パターンがあっても構わない。被検査基板101上には、かかる描画データに定義された各図形パターンに基づいて、それぞれ対応するパターンが形成されている。
【0035】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成部分について記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
【0036】
図2は、実施の形態1における検査領域を説明するための概念図である。基板101の検査領域10(検査領域全体)は、
図2に示すように、例えばY方向に向かって、撮像センサ105のスキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ20に仮想的に分割される。そして、検査装置100では、検査ストライプ20毎に画像(ストライプ領域画像)を取得していく。検査ストライプ20の各々に対して、レーザ光(検査光)を用いて、当該ストライプ領域の長手方向(X方向)に向かって当該検査ストライプ20内に配置される図形パターンの画像を撮像する。なお、画像の取りこぼしを防ぐために、複数の検査ストライプ20は、隣接する検査ストライプ20同士間が所定のマージン幅でオーバーラップするように設定されると好適である。
【0037】
XYθテーブル102の移動によって撮像センサ105が相対的にX方向に連続移動しながら光学画像が取得される。撮像センサ105では、
図2に示されるようなスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。実施の形態1では、1つの検査ストライプ20における光学画像を撮像した後、Y方向に次の検査ストライプ20の位置まで移動して今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。すなわち、往路と復路で逆方向に向かうフォワード(FWD)-バックフォワード(BWD)の方向で撮像を繰り返す。
【0038】
また、実際の検査にあたって、各検査ストライプ20のストライプ領域画像は、
図2に示すように、矩形の複数のフレーム領域30の画像に分割される。そして、フレーム領域30の画像毎に検査を行っていく。例えば、512×512画素のサイズに分割される。よって、フレーム領域30のフレーム画像31と比較される参照画像も同様にフレーム領域30毎に作成されることになる。
【0039】
ここで、撮像の方向は、フォワード(FWD)-バックフォワード(BWD)の繰り返しに限るものではない。一方の方向から撮像してもよい。例えば、FWD-FWDの繰り返しでもよい。或いは、BWD-BWDの繰り返しでもよい。
【0040】
上述したように、検査装置100は、上述したように、検査光学系175(反射検査光学系或いは/及び透過検査光学系)に加えて、検査光学系175に対する検査対象物である基板101の高さ方向の変位を検出するオートフォーカス機構131を備えている。
【0041】
ここで、パターンの微細化が進行するに伴い、検査光の短波長化が進んでおり、これに伴い検査光学系175の焦点深度が浅くなるため、従来は、検査光学系の近傍に設置した独立した計測系の精度で足りていたものが、検査光学系そのものを利用した(In-situ)測定を行わないと、検査光学系の持つ様々な変動要因(温度/機械的変形の依存性)を検出できず、高精度なピント調整ができなくなってきた。
【0042】
即ち、オートフォーカス機構には、マスクの高さ変化に伴う信号出力変化(センサ出力)に加え、検査光学系の状態変化を検知(モニタ)する機能も要求されることになる。オートフォーカス光学系が検査光学系を利用する形態をとるために、当初の計測用光源(赤色レーザー)に適応させた(二波長収差補正)対物レンズを採用する方法から、対物レンズの更なる高精度化要求により、検査光であるDUV光を用いた光学系を設ける方式へと変遷をたどった。
【0043】
検査光学系を利用したオートフォーカス光学系は、従来からよく知られている前出の計測用光源(赤色レーザー)を用いた光テコ方式や、共焦点光学系方式を採用しているが、いずれの方法も検査対象物上の微小エリアに計測用の照明スポットを投影する。一方、検査対象物(マスク)上には微細パターンが描画されているため、パターンで生じる回折光が計測結果の誤差となることが分かっている。この誤差を最小にするため、光テコ式の場合は計測用光源の短波長化により回折光がオートフォーカス光学系の外乱にならないよう、また共焦点光学系方式では発生する回折光の影響を相殺するように、検出器の調整を精密に行っている。
【0044】
上記の調整は、装置立ち上げ時に様々な寸法、形状のテスト用パターンを描画したテスト用マスクを検査光学系のピント位置に設定したうえで、どのパターンにおいても同じ計測値を出力するように行われる。しかし、マスクの高さが異なった(ピント位置からずれた)とき、同様の特性が得られるかどうかは、これまで検証されていなかった。そもそも、ピント位置からずらして検査を実施することは、鮮明な画像を採取することが前提であったため、想定されていなかった。また、パターンの微細化、照明光の短波長化が進んだことにより、許容される高さずれ(焦点深度)が小さくなったことによる、オートフォーカス光学系の持つピント位置とのずれを、従来は考慮する必要性を認識していなかった。
【0045】
検査中にマスクの高さを検査光学系に対して一定に保つため、高さ(Z)方向の微動ステージの変位信号としてオートフォーカス信号をフィードバックする制御を採用することができる。制御系に与えるゲインを特定するため、装置立ち上げ時に、ピント位置(出力0)を基準として一様な反射面を持つマスクを上下させ、その直線的な信号変化を測定している。しかし、上述したように、マスク上のパターン種類により信号の勾配が変化することが判明した。従って、ピント位置からある量高さをずらしたときのオートフォーカス信号の出力は、パターン種類によって異なることになる。
【0046】
この問題は、パターンの種類の違いによる計測誤差が生じた場合でも、その誤差が検査光学系の焦点深度以下である、あるいはピントずれによるボケが必要とされる欠陥検査感度以下である場合には問題とはならない。しかし、検査光学系の焦点深度減少と、必要検査感度の向上に伴い、検査光学系のピント位置とオートフォーカス光学系のピント位置のずれによる画像ボケの影響が無視できない状況となった。
【0047】
検査装置の検査光学系は、検査対象物上の微細パターンに生じた様々な欠陥を高精度に検出する必要があるため、検査対象物の多様な光学特性を採取するため機能が搭載されている。検査対象物(マスク)が透明なガラス基板であり、表面に設けられた薄膜をエッチング加工して微細パターンを形成している場合には、検査対象物に照射した照明光に対して得られる透過/反射像を拡大して、画像センサ上に導入することで画像電気信号を得ている。また、更なる微細化に対応したEUVリソグラフィ技術においては、DUV光と比べ照明光波長が大幅に短く(~10nm)、回路パターンをウェハ上に転写するスキャナにおいては、レンズを用いた縮小光学系を構成することができなくなった。従って、搭載されるEUVマスクは照明光を表面に形成された微細パターンに照射し、その反射光を多数の反射鏡で構成された縮小光学系に導入し、ウェハ上に結像させる。EUVマスクの表面に形成されるパターンサイズはもはや検査光波長(λ=248~199nm)の1/2未満(ハーフピッチ<40nm)であり、光学系解像度の低下に伴い、通常の照明に加え様々な特殊照明(偏光・空間周波数変調)を駆使することで微小な欠陥の検出を実現している。
【0048】
このように多様な光学特性を有する検査光学系においては、最適な光学条件を得るため、検査条件に応じて複数の光学部品の設定(光軸周りの回転、光軸を基準としたシフト、傾き調整)を変化させる必要がある。これにより、対物レンズから画像センサ(TDIカメラ)に至る結像光学系の光路長が変化し、検査対象の対物レンズに対する高さが一定でも、結像光学系のピント位置が画像センサに対してずれる場合がある。装置の立ち上げ/調整が進むに従い、装置設置環境の安定化等により結像光学系のピント位置が徐々に変化し、何回か微調整する必要がある。さらに工場で立ち上げて性能出しをした装置は、顧客先に移設して同様な性能出し調整を繰返す必要があり、あらかじめ検出光学系構成部品の微動機構を備えることで対処している。
【0049】
一方、結像光学系の画像を電気信号に変換する撮像センサ(TDIカメラ)に対して、検査対象物(マスク)の高さを変化させることで、撮像センサに対するピント位置を調整することもできる。例えば、オートフォーカス光学系の信号にオフセットを与えることで実現できる、これにより検査光学系と検査対象とのピント位置補正を行うことができる。
【0050】
今回の課題が判明したことに従い、上記の微動機構を用いて検査光学系のピント位置を補正することが対策になる。半導体検査パターンの微細化(TN:Technology Node)が二桁から一桁(20→14→10→7)へ進行するに伴い、焦点ずれによる検査対象パターンの画像コントラスト低下が顕在化するようになった。例えば、100nmオーダーのL/Sパターンにおいてコントラスト低下を10%以下に抑えるためは、焦点ずれを50nm以下に抑える必要がある。そこで、実施の形態1では、露光用マスクを検査する検査装置100を一例として、かかる検査装置100で、種類の異なるパターンに対して、撮像される画像の計測誤差が生じないように、或いは低減できる手法を説明する。以下、具体的に説明する。
【0051】
図3は、実施の形態1における検査方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
図3において、実施の形態1における検査方法は、パターン設定工程(S102)と、光強度測定工程(S104)と、オートフォーカス信号(z)算出工程(S106)と、マスク面高さ(H)-オートフォーカス信号(z)の間の関係取得工程(S108)と、検査用オートフォーカス信号(Z0)特定工程(S120)と、被検査マスク搬入工程(S130)と、検査光学系焦点合わせ工程(S132)と、差分高さ(Δh)算出工程(S134)と、判定工程(S136)と、検査光学系焦点合わせ工程(S140)と、検査処理(オートフォーカス制御)工程(S150)と、いう一連の工程を実施する。
【0052】
図4は、実施の形態1におけるオートフォーカス制御回路の内部構成の一例を示すブロック図である。
図4において、オートフォーカス制御回路140内には、磁気ディスク装置等の記憶装置51,61、パターン設定部50、ステージ高さ制御部52、オートフォーカス信号(z)算出部54、関係算出部55、検査用オートフォーカス信号(Z0)特定部56、差分高さ(Δh)算出部58、判定部60、オートフォーカス処理部62、コントラスト算出部64、判定部66、及び高さ調整部68が配置される。パターン設定部50、ステージ高さ制御部52、オートフォーカス信号算出部54、関係算出部55、検査用オートフォーカス信号特定部56、差分高さ算出部58、判定部60、オートフォーカス処理部62、コントラスト算出部64、判定部66、及び高さ調整部68といった一連の「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。パターン設定部50、ステージ高さ制御部52、オートフォーカス信号算出部54、関係算出部55、検査用オートフォーカス信号特定部56、差分高さ算出部58、判定部60、オートフォーカス処理部62、コントラスト算出部64、判定部66、及び高さ調整部68に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度比較回路108内の図示しないメモリ若しくはメモリ111に記憶される。
【0053】
パターン設定工程(S102)として、まず、複数の種類の図形パターンが形成された評価基板を、パターン形成面を下に向けた状態でXYθテーブル102上に載置する。
そして、パターン設定部50は、複数の種類の図形パターンのうち、1種類のパターンを設定する。複数の種類の図形パターンとして、ラインアンドスペースパターン、及びホールパターン等が挙げられる。さらに、ラインアンドスペースパターンであれば、ラインパターンの線幅、配置ピッチ、或いは方向等が異なる場合には、種類の異なる図形パターンとすると好適である。ホールパターンであれば、サイズ、方向、或いは配置ピッチ等が異なる場合には、種類の異なる図形パターンとすると好適である。また、複数の種類の図形パターンの中に、被検査基板となる基板101に形成された複数の図形パターンのすべての種類が含まれるように評価基板は形成される。
そして、テーブル制御回路114は、設定された図形パターンが検査光で照射される位置にXYθテーブル102を移動させる。
【0054】
光強度測定工程(S104)として、複数の種類の図形パターンが形成された評価基板のパターン形成面の高さ位置を可変にしながら、パターンの種類毎に、検査光で照射された評価基板を透過或いは反射した光の前焦点位置の光量を光量センサ185で計測する。同様に、後焦点位置の光量を光量センサ187で計測する。前焦点位置の光量と後焦点位置の光量は、評価基板のパターン形成面の高さ位置に依存する。具体的には、以下のように動作する。
【0055】
検査装置100の光軸調整等の処理は完了しているものとする。
【0056】
適切な光源103から、検査光となる紫外域以下の波長のレーザ光(例えば、DUV光)が反射照明光学系171によりビームスプリッタ174に照射される。照射されたレーザ光は、ビームスプリッタ174で反射して、拡大光学系104により評価基板に照射される。評価基板から反射した光は拡大光学系104、及びビームスプリッタ174を通過して、ビームスプリッタ177を照射する。ビームスプリッタ177で分岐された光はオートフォーカス光学系180に入射する。
【0057】
オートフォーカス光学系180に入射された光は、結像光学系181により集光方向に屈折させられ、ビームスプリッタ182を照射する。ビームスプリッタ182で透過した光は、前焦点位置(前ピン位置)のスリット板184で一部が制限され、スリット板184を通過した光の光量が光量センサ185で計測される。ビームスプリッタ182を分岐された光は、後焦点位置(後ピン位置)のスリット板186で一部が制限され、スリット板186を通過した光の光量が光量センサ187で計測される。これにより、設定された図形パターンについて、評価基板の基板面の高さ位置毎の前ピン位置での光量と後ピン位置での光量とを計測できる。計測された評価基板のパターン形成面の高さ位置毎の前ピン位置での光量と後ピン位置での光量との各光量データ(光強度データ)は、記憶装置51に高さ位置に関連させて格納される。
【0058】
なお、評価基板のパターン形成面の高さ位置は、ステージ高さ制御部52による制御のもと、Z駆動機構132によって、XYθテーブル102の高さ位置を駆動することにより、可変に制御される。また、パターン形成面の高さ位置は、位置センサ134によって計測される。
【0059】
オートフォーカス信号(z)算出工程(S106)として、オートフォーカス信号算出部54は、パターンの種類毎に、かつ評価基板の高さ位置毎に、計測された前焦点位置の光量と後焦点位置の光量を用いてオートフォーカス信号を算出する。オートフォーカス信号(z)は、前焦点位置の光量Aと後焦点位置の光量Bとを用いて、次の式(1)で定義される。
(1) z=(A-B)/(A+B)
【0060】
評価基板のパターン形成面の高さ位置毎のオートフォーカス信号の値は、例えば、記憶装置51に格納される。
【0061】
マスク面高さ(H)-オートフォーカス信号(z)の間の関係取得工程(S108)として、関係算出部55は、パターンの種類毎に、評価基板のパターン形成面の高さ位置(マスク面高さ)(H)と、算出されたオートフォーカス信号(z)との関係を算出し、取得する。例えば、1次比例の関係として算出する。
【0062】
1つの種類のH-z間の関係が取得できたら、パターン設定工程(S102)に戻り、評価基板上に形成されたすべての種類のパターンについてH-z間の関係を取得するまで、パターン設定工程(S102)からステージ検査面(H)-オートフォーカス信号(z)との関係取得工程(S108)までの各工程を繰り返す。
【0063】
図5は、実施の形態1におけるH-z間の関係の一例のグラフを示す図である。
図5において、縦軸にオートフォーカス信号(z)を示す。横軸にパターン形成面の高さ位置(マスク面高さ)(H)を示す。
図5の例では、2種類のパターンa,bについてのH-z間の関係を示している。
図5に示すように、パターンa,bについてのH-z間の関係の直線の傾きは異なることがわかる。
図5の例において、例えば、被検査基板となるマスクの撮像センサに焦点が合う合焦マスク面高さhmにおけるパターンaのオートフォーカス信号がZ1となる。被検査基板の合焦マスク面高さhmにおけるパターンbのオートフォーカス信号がZ2となる。このように、被検査基板の合焦マスク面高さhmでは、パターンの種類によって、計測されるオートフォーカス信号の値が異なってしまう。パターンの種類毎にスリット板184,186で生じる回折光の状態が異なることが光量の違いとなって表れることが原因の1つと考えられる。
【0064】
検査用オートフォーカス信号(Z0)特定工程(S120)として、検査用オートフォーカス信号特定部56は、パターンの種類毎に算出されたオートフォーカス信号(z)毎の評価基板のパターン形成面の同じ高さ位置における差がしきい値以下となる検査用オートフォーカス信号の値(Z0)を特定する。
図5の例では、2種類のパターンについてH-z間の関係グラフを重ねているので、2つの関係を示す傾きの異なる2つの直線は1つの交点で交わる。よって、かかる交点のマスク面高さhaでオートフォーカス信号(z)同士の値が一致する。よって、かかる点が最もオートフォーカス信号(z)同士の値の差が小さい位置となる。言い換えれば、しきい値以下となる。よって、
図5の例では、検査用オートフォーカス信号特定部56は、交点のオートフォーカス信号(z)同士の値を検査用オートフォーカス信号の値(Z0)として特定する。なお、オートフォーカス信号(z)同士の値の差がしきい値以下になるのであれば、かかる交点からずれた位置であっても構わない。
【0065】
図6は、実施の形態1におけるH-z間の関係の他の一例のグラフを示す図である。
図6において、縦軸にオートフォーカス信号(z)を示す。横軸にパターン形成面の高さ位置(マスク面高さ)(H)を示す。
図6の例では、3種類のパターンa,b,cについてのH-z間の関係を示している。
図6に示すように、パターンa,b,cについてのH-z間の関係の直線の傾きは異なることがわかる。
図6の例において、被検査基板の合焦マスク面高さhmにおけるパターンaのオートフォーカス信号がZ1となる。被検査基板の合焦マスク面高さhmにおけるパターンbのオートフォーカス信号がZ2となる。被検査基板の合焦マスク面高さhmにおけるパターンcのオートフォーカス信号がZ3となる。このように、被検査基板の合焦マスク面高さhmでは、パターンの種類によって、計測されるオートフォーカス信号の値が異なってしまう。さらに、
図6の例では、3つの関係を示す傾きの異なる3つの直線は、1点で交わらない場合を示している。パターンa,bは、交点Aで交わり、パターンa,cは、交点Bで交わり、パターンb、cは、交点Cで交わる。すべての直線が1点で交われば、かかる交点のオートフォーカス信号(z)同士の値を検査用オートフォーカス信号の値(Z0)として特定すれば良い。しかし、
図6に示すようにすべての直線が1点で交わらない場合には、次の条件(1)を満たすように検査用オートフォーカス信号(Z0)を特定する。
(1)パターンの種類毎に算出されたオートフォーカス信号(z)同士の値の差が評価基板のパターン形成面の同じ高さ位置でしきい値Th1以下となる。
【0066】
さらに、以下の条件(2)を追加すると好適である。
(2)2種の図形パターンの組み合わせ毎にオートフォーカス信号同士の値が評価基板の同じ高さ位置で一致する複数の値のうち、最大値と最小値の間の値を用いる。例えば、
図6の例では、交点Aでのオートフォーカス信号(z)がZa、交点Bでのオートフォーカス信号(z)がZb、交点Cでのオートフォーカス信号(z)がZcとなる。また、Za>Zb>Zcとなる。よって、検査用オートフォーカス信号(Z0)は、最大値Zaと最小値Zcの間となる。
【0067】
よって、
図6の例では、条件(1)(2)を満たす点Dのオートフォーカス信号(z)を検査用オートフォーカス信号(Z0)として特定する。点Dは、交点A,B,Cで囲まれた領域内にあるとさらに好適である。
【0068】
また、検査用オートフォーカス信号(Z0)は、2種の図形パターンの組み合わせ毎のオートフォーカス信号(z)同士の値の差のずれが、より小さくなる値を特定するとさらに好適である。
図6の例では、例えば、ZaとZbの差よりもZbとZcとの差の方が大きいので、Zbと、交点Bでのマスク面高さ位置でのパターンcのオートフォーカス信号(z)とのちょうど中間の値を検査用オートフォーカス信号(Z0)として特定すると好適である。
【0069】
なお、検査用オートフォーカス信号(Z0)として、パターンの種類毎に算出されたオートフォーカス信号同士の値が評価基板の同じ高さ位置で一致する場合には、一致する値を用いると好適である。言い換えれば、2種類のパターンの他に、3種類以上のパターンにおいても、各パターンについてのH-z間の関係を示す傾きの異なる複数の直線すべてが1点で交わる場合には、かかる交点のオートフォーカス信号の値を検査用オートフォーカス信号(Z0)として特定すると好適である。
【0070】
特定された検査用オートフォーカス信号の値(Z0)は、検査用オートフォーカス信号の値(Z0)に対応するマスク面高さhaと関連させて記憶装置51に格納される。また、評価基板は、XYθテーブル102から搬出される。
【0071】
被検査マスク搬入工程(S130)として、XYθテーブル102上に、オートローダ130から搬送された被検査基板となる基板101を配置する。基板101には、評価基板に形成された複数の種類の図形パターンのうち2以上の種類の図形パターンが形成されている。
【0072】
検査光学系焦点合わせ工程(S132)として、オートフォーカス制御回路140は、マスク面高さを検査用の光学画像を撮像する撮像センサ105に合焦する合焦マスク面高さ位置hmに合わせる。撮像センサ105に合焦するとは、撮像された光学画像のコントラストが最大或いはしきい値Th2以上になる位置である。
【0073】
そこで、コントラスト算出部64は、XYθテーブル102の高さを可変にしながら、各マスク面高さ位置で基板101の光学画像を撮像し、得られた光学画像のコントラストを算出する。
【0074】
なお、基板101のパターン形成面の高さ位置は、ステージ高さ制御部52による制御のもと、Z駆動機構132によって、XYθテーブル102の高さ位置を駆動することにより、可変に制御される。また、パターン形成面の高さ位置は、位置センサ134によって計測される。
【0075】
判定部66は、各マスク面高さ位置で撮像された光学画像の中からコントラストが最大或いはしきい値Th2以上になる光学画像を撮像したマスク面高さ位置を合焦マスク面高さ位置hmとして判定する。
【0076】
なお、装置立ち上げ時に様々な寸法、形状のテスト用パターンを描画したテスト用マスクを検査光学系175の合焦マスク面高さ位置(ピント位置)に設定したうえで、白部と黒部については、それぞれどのパターンにおいても同じ計測値(画像の階調値)を出力するようにセンサ回路106の調整が行われる。そのため、被検査基板となる基板101についても、複数の種類のパターンについては、パターンの種別に無関係に同じ合焦マスク面高さ位置hmが得られる。
【0077】
差分高さ(Δh)算出工程(S134)として、差分高さ算出部58は、検査用オートフォーカス信号の値(Z0)に対応するマスク面高さhaと検査光学系175の合焦マスク面高さ位置hmとの差分Δh(=hm-ha)を算出する。
【0078】
判定工程(S136)として、判定部60は、検査光学系175のピント位置となる合焦マスク面高さ位置hm(高さ位置)と検査用オートフォーカス信号の値(Z0)に対応する評価基板のパターン形成面の高さ位置(ha)との差分Δh(=hm-ha)(ここでは絶対値|Δh|)がしきい値Δε(第2のしきい値)よりも大きいかどうかを判定する。大きくない場合には、許容範囲内として、検査処理(オートフォーカス制御)工程(S150)に進む。大きい場合には、検査光学系焦点合わせ工程(S140)に進む。
【0079】
検査光学系焦点合わせ工程(S140)として、高さ調整部68は、差分Δh(=hm-ha)(ここでは絶対値|Δh|)がしきい値Δεよりも大きい場合に、検査光学系175のピント位置を検査用オートフォーカス信号の値(Z0)に対応する評価基板のパターン形成面の高さ位置(ha)になるように検査光学系175を調整する。
【0080】
図7は、実施の形態1における検査光学系の焦点合わせの手法の一例を説明するための図である。
図7の例では、
図1の構成を簡略化して示している。
図7において、調整前には、マスク面高さ位置hmにて被検査基板となる基板101の検査光学系175のピント位置は合っていた。かかる状態から、例えば、コリメータレンズ176の高さ位置を可変にして、検査光学系175のピント位置をパターン形成面の高さ位置(ha)になるように調整する。高さ調整部68は、Z駆動機構136を制御して、コリメータレンズ176の高さ位置を制御すると好適である。或いは、作業員の手作業等によってコリメータレンズ176の高さ位置を変えても構わない。
図7の例では、コリメータレンズ176の高さ位置をΔZ’だけ移動させる(ここでは、例えば、下方向に移動させる)ことにより検査光学系175のピント位置をマスク面高さ位置haに調整する。
【0081】
上述したように、撮像センサ105に合焦する検査光学系175のピント位置は、撮像された光学画像のコントラストが最大或いはしきい値Th2以上になる位置である。
【0082】
図8は、実施の形態1の比較例におけるH-z間の関係の一例のグラフを示す図である。
図8において、縦軸にオートフォーカス信号(z)を示す。横軸にパターン形成面の高さ位置(マスク面高さ)(H)を示す。
図8の例では、3種類のパターンa,b,cについてのH-z間の関係を示している。
図8の例では、3つの関係を示す傾きの異なる3つの直線が1点で交わる場合を示している。比較例では、検査用オートフォーカス信号の値(Z0)に対応するマスク面高さ位置(ha)ではなく、調整前のマスク面高さ位置(hm)に検査光学系175のピント位置が合っている場合を示す。
図9は、実施の形態1の比較例におけるパターンに依存したオートフォーカス光学系の出力の一例を示す図である。
図9において、縦軸にオートフォーカス光学系の出力を示す。横軸にマスク面内の位置を示す。
図8に示すように、マスク面高さ位置(hm)では、オートフォーカス信号(z)が、種類が異なるパターンa,b,cでそれぞれZ1,Z2,Z3と異なる。よって、
図9に示すように、実際の画像取得時には、パターンaを撮像時にはマスク面高さ位置(hm)に合っているにもかかわらず、オートフォーカス信号(z)がZ1と出力されてしまう。また、パターンbを撮像時にはマスク面高さ位置(hm)に合っているにもかかわらず、オートフォーカス信号(z)がZ2と出力されてしまう。パターンcを撮像時にはマスク面高さ位置(hm)に合っているにもかかわらず、オートフォーカス信号(z)がZ3と出力されてしまう。よって、パターンの種類によって、出力されるオートフォーカス信号(z)が異なる。その結果、オートフォーカス機構によって調整されるマスク面高さ位置が異なってしまい、撮像センサ105で得られる光学画像がボケてしまう。
【0083】
図10は、実施の形態1におけるH-z間の関係の一例のグラフを示す図である。
図8において、縦軸にオートフォーカス信号(z)を示す。横軸にパターン形成面の高さ位置(マスク面高さ)(H)を示す。
図10の例では、3種類のパターンa,b,cについてのH-z間の関係を示している。
図10の例では、3つの関係を示す傾きの異なる3つの直線が1点で交わる場合を示している。実施の形態1では、検査用オートフォーカス信号の値(Z0)に対応するマスク面高さ位置(ha)に検査光学系175のピント位置が合っている場合を示す。
図11は、実施の形態1におけるパターンに依存したオートフォーカス光学系の出力の一例を示す図である。
図12は、実施の形態1におけるパターンに依存したオートフォーカス光学系の出力の他の一例を示す図である。
図11及び
図12において、縦軸にオートフォーカス光学系の出力を示す。横軸にマスク面内の位置を示す。
図10に示すように、マスク面高さ位置(ha)では、オートフォーカス信号(z)が、種類が異なるパターンa,b,cで同じZ0になる。よって、
図11に示すように、実際の画像取得時には、パターンaを撮像時、パターンbを撮像時、及びパターンcを撮像時には、各オートフォーカス信号(z)が同じZ0と出力される。或いは、3つの関係を示す傾きの異なる3つの直線が1点で交わらない場合でも、
図12に示すように、実際の画像取得時には、パターンaを撮像時、パターンbを撮像時、及びパターンcを撮像時には、各オートフォーカス信号(z)がしきい値Th1の範囲内に納まる。よって、パターンの種類によって、出力されるオートフォーカス信号(z)が異なることはない。或いは出力されるオートフォーカス信号(z)のずれをしきい値Th1の範囲内に抑えることができる。その結果、オートフォーカス機構によって調整されるマスク面高さ位置が同一或いは許容範囲内に納まる。よって、撮像センサ105で得られる光学画像のボケを抑制、或いは低減できる。
【0084】
検査処理(オートフォーカス制御)工程(S150)として、まず、光学画像取得機構150は、被検査基板となる基板101をXYθテーブル102に載置した状態で、XYθテーブル102の水平方向の移動に伴ない変動し得る基板101のパターン形成面の高さ位置を検査用オートフォーカス信号の値(Z0)に対応するパターン形成面の高さ位置(ha)に調整しながら、検査光で照射された基板101を透過或いは反射した光を、検査光学系175を介して撮像センサ105で受光することにより、2以上の種類の図形パターンの欠陥を検査するための被検査基板の光学画像を撮像する。具体的には、以下のように動作する。
【0085】
光学画像取得機構150は、検査ストライプ20上をレーザ光(検査光)でスキャンして、検査ストライプ20毎に、撮像センサ105によりストライプ領域画像を撮像する。具体的には、以下のように動作する。対象となる検査ストライプ20が撮像可能な位置にXYθテーブル102を移動させる。透過検査において、基板101に形成されたパターンには、適切な光源103から、検査光となる紫外域以下の波長のレーザ光(例えば、DUV光)が透過照明光学系170を介して照射される。言い換えれば、透過照明光学系170は、パターンが形成された被検査基板を照明する。基板101を透過した光は拡大光学系104及びコリメータレンズ176を介して、結像光学系178により撮像センサ105(センサの一例)に光学像として結像させられ、入射する。
【0086】
或いは反射検査において、基板101に形成されたパターンには、適切な光源103から、検査光となる紫外域以下の波長のレーザ光(例えば、DUV光)が反射照明光学系171によりビームスプリッタ174に照射される。照射されたレーザ光は、ビームスプリッタ174で反射して、拡大光学系104により試料101に照射される。試料101から反射した光は拡大光学系104、ビームスプリッタ174、及びコリメータレンズ176を通過して、結像光学系178により撮像センサ105に光学像として結像させられ、入射する。
【0087】
かかる光学画像を撮像する際、オートフォーカス機構131は、基板101をXYθテーブル102に載置した状態で、XYθテーブル102の水平方向の移動に伴ない変動し得る基板101のマスク面高さ位置を検査用オートフォーカス信号(Z0)に対応するマスク面高さ位置(ha)に調整する。具体的には、オートフォーカス処理部62は、光量センサ185,187から前ピン位置での光量と後ピン位置での光量を入力し、オートフォーカス信号を算出する。そして、オートフォーカス信号がZ0になるように、Z駆動機構132を制御する。
【0088】
撮像センサ105は、基板101のパターン形成面の高さ位置が検査用オートフォーカス信号の値(Z0)に対応するパターン形成面の高さ位置(ha)に調整された状態で、検査光で照射された基板101を透過或いは反射した光を受光することにより、2以上の種類の図形パターンの欠陥を検査するための基板101の光学画像を撮像する。
【0089】
撮像センサ105上に結像されたパターンの像は、撮像センサ105の各フォトセンサ素子によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログ・デジタル)変換される。そして、ストライプパターンメモリ123に、測定対象の検査ストライプ20の画素値のデータが格納される。測定データ(画素データ)は例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。
【0090】
一方、参照画像作成回路112は、図形パターンデータ(設計データ)を用いて、リファレンスとなる参照画像を作成する。参照画像の作成は、検査ストライプ20毎に、当該検査ストライプ20のスキャン動作と並行して実施される。具体的には、以下のように動作する。参照画像作成回路112は、対象となる検査ストライプ20の各フレーム領域30について、図形パターンデータ(設計データ)を入力し、図形パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0091】
図形パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0092】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、フレーム領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データ(設計画像データ)を出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/28(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとして作成する。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0093】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに、フィルタ関数を使ってフィルタ処理を施す。
【0094】
図13は、実施の形態1におけるフィルタ処理を説明するための図である。基板101から撮像される光学画像の画素データは、撮像に使用される光学系の解像特性等によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続変化するアナログ状態にあるため、例えば、
図13に示すように、画像強度(濃淡値)がデジタル値の展開画像(設計画像)とは異なっている。一方、図形パターンデータでは、上述したように、図形コード等により定義されるので、展開された設計画像では、画像強度(濃淡値)がデジタル値になる場合があり得る。そのため、参照画像作成回路112は、展開画像に画像加工(フィルタ処理)を施して光学画像に近づけた参照画像を作成する。これにより、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データを測定データ(光学画像)の像生成特性に合わせることができる。作成された参照画像は比較回路108に出力される。
【0095】
図14は、実施の形態1における比較回路の内部構成の一例を示す図である。
図14において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置70,72,76、フレーム画像作成部74、位置合わせ部78、及び比較処理部79が配置されている。フレーム画像作成部74、位置合わせ部78、及び比較処理部79といった一連の「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。フレーム画像作成部74、位置合わせ部78、及び比較処理部79に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度比較回路108内の図示しないメモリ若しくはメモリ111に記憶される。
【0096】
比較回路108に入力されたストライプデータ(ストライプ領域画像)は、記憶装置70に格納される。比較回路108に入力された参照画像データは、記憶装置72に格納される。
【0097】
比較工程(S106)として、比較回路108(比較部の一例)は、撮像センサ105から出力された光学画像データにより構成される光学画像と参照画像とを比較する。具体的には、以下のように動作する。
【0098】
比較回路108では、まず、フレーム画像作成部74は、所定の幅でストライプ領域画像(光学画像)が分割された複数のフレーム画像31を生成する。具体的には、
図2に示すように、ストライプ領域画像は、矩形の複数のフレーム領域30のフレーム画像に分割される。例えば、512×512画素のサイズに分割される。各フレーム領域30のデータは、記憶装置76に格納される。
【0099】
次に、位置合わせ部78は、フレーム領域30毎に、対応するフレーム画像31と、対応する参照画像とを記憶装置72,76から読み出し、所定のアルゴリズムでフレーム画像31と、対応する参照画像との位置合わせを行う。例えば、最小2乗法を用いて位置合わせを行う。
【0100】
そして、比較処理部79(比較部の他の一例)は、フレーム画像31と、当該フレーム画像31に対応する参照画像とを比較する。例えば画素毎に比較する。ここでは、所定の判定条件に従って画素毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。判定条件としては、例えば、所定のアルゴリズムに従って画素毎に両者を比較し、欠陥の有無を判定する。例えば、画素毎に両画像の画素値の差分値を演算し、差分値が閾値Thより大きい場合を欠陥と判定する。そして、比較結果は、例えば、磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置(FD)116、CRT117、パターンモニタ118に出力される、或いはプリンタ119から出力されればよい。
【0101】
上述した例では、ダイ-データベース検査の場合を説明したが、ダイ-ダイ検査であっても構わない。かかる場合、比較回路108は、複数のフレーム領域30のうち、ダイ-ダイ検査を行うフレーム領域同士については、フレーム領域同士の一方の領域について取得されたダイ2のフレーム画像(光学画像)をリファレンス(参照画像)として用いる。まず、位置合わせ部78は、ダイ-ダイ検査を行うフレーム領域30毎に、対応するダイ1のフレーム画像31と、ダイ2のフレーム画像とを記憶装置76から読み出し、所定のアルゴリズムでダイ1のフレーム画像31とダイ2のフレーム画像との位置合わせを行う。例えば、最小2乗法を用いて位置合わせを行う。そして、比較処理部79(比較部)は、ダイ-ダイ検査を行うフレーム領域30毎に、対応するダイ1のフレーム画像31と、ダイ2のフレーム画像とを画素毎に比較する。
【0102】
また、上述した例では、評価基板を用いて、複数の種類のパターンについて、パターン種毎のH-z間の関係を取得し、検査用オートフォーカス信号の値(Z0)を特定する場合について説明したが、これに限るものではない。複数の種類の図形パターンが形成された被検査基板を用いて、評価基板の場合と同様、複数の種類のパターンについて、パターン種毎のH-z間の関係を取得し、検査用オートフォーカス信号の値(Z0)を特定しても良い。かかる場合、被検査基板をステージに載置した状態で、XYθテーブル102の水平方向の移動に伴ない変動し得るマスク面高さ位置を検査用オートフォーカス信号(Z0)に対応するマスク面高さ位置(ha)に調整しながら、検査光で照射された被検査基板を透過或いは反射した光を、検査光学系175を介して撮像センサ105で受光することにより、複数の種類の図形パターンの欠陥を検査するための被検査基板の光学画像を撮像する。
【0103】
以上のように、実施の形態1によれば、マスク等の基板上のパターンの種類の違いによって生じる、オートフォーカス時に調整される基板のパターン形成面の高さ位置の誤差を抑制或いは低減できる。
【0104】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0105】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、検査装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0106】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての検査装置の焦点位置調整方法及びパターン検査装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0107】
20 検査ストライプ
30 フレーム領域
31 フレーム画像
50 パターン設定部
51,61 記憶装置
52 ステージ高さ制御部
54 オートフォーカス信号算出部
55 関係算出部
56 検査用オートフォーカス信号特定部
58 差分高さ算出部
60 判定部
62 オートフォーカス処理部
64 コントラスト算出部
66 判定部
68 高さ調整部
70,71,72,76 記憶装置
74 フレーム画像生成部
78 位置合わせ部
79 比較処理部
100 検査装置
101 基板
102 XYθテーブル
103 光源
104 拡大光学系
105 撮像センサ
106 センサ回路
107 位置回路
108 比較回路
109 磁気ディスク装置
110 制御計算機
111 メモリ
112 参照画像作成回路
113 オートローダ制御回路
114 テーブル制御回路
115 磁気テープ装置
116 FD
117 CR
118 パターンモニタ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 ストライプパターンメモリ
130 オートローダ
131 オートフォーカス機構
132 Z駆動機構
134 位置センサ
136 Z駆動機構
140 オートフォーカス制御回路
150 光学画像取得機構
160 制御系回路
170 透過照明光学系
171 反射照明光学系
174 ビームスプリッタ
175 検査光学系
176 コリメータレンズ
177 ビームスプリッタ
178 結像光学系
180 オートフォーカス光学系
181 結像光学系
182 ビームスプリッタ
184,186 スリット板
185,187 光量センサ