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特開2024-119101液体付与装置、電極製造装置、電気化学素子製造装置、液体付与方法、電極製造方法および電気化学素子製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119101
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】液体付与装置、電極製造装置、電気化学素子製造装置、液体付与方法、電極製造方法および電気化学素子製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/195 20060101AFI20240827BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240827BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240827BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B41J2/195
B41J2/18
B41J2/175 301
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025746
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】徳山 浩二
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EA28
2C056EB16
2C056EB21
2C056EB30
2C056EB34
2C056EB50
2C056EC15
2C056EC19
2C056EC20
2C056EC29
2C056EC40
2C056EC45
2C056EC46
2C056FA13
2C056FA14
2C056FB04
2C056FD13
2C056HA15
2C056KA01
2C056KB16
2C056KB37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】貯留部および液体付与手段間における液体組成物の品質低下を低減する。
【解決手段】液体組成物を付与する液体付与手段と、液体付与手段に供給する第一貯留部と、第一貯留部に供給する第二貯留部と、液体付与手段と第一貯留部との間で液体組成物を循環させる第一循環経路と、第一貯留部と第二貯留部との間で液体組成物を循環させる第二循環経路と、第二貯留部から液体組成物を第一貯留部に送液する第一送液手段と、第一貯留部から液体組成物を第二貯留部に送液する第二送液手段と、第一貯留部の貯留量に基づいた信号を出力する貯留量検知手段と、第一循環経路における液体組成物の性状に基づいた信号を出力する性状検知手段とを備え、貯留量検知手段の出力に基づき第一送液手段の送液量を制御し、性状検知手段の出力に基づき第一送液手段と前記第二送液手段の送液量を制御することにより、液体組成物の品質低下を低減する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体組成物を付与する液体付与手段と、
前記液体組成物を貯留し、前記液体付与手段に供給する第一貯留部と、
前記液体組成物を貯留し、前記第一貯留部に供給する第二貯留部と、
前記液体付与手段と、前記第一貯留部との間で前記液体組成物を循環させる第一循環経路と、
前記第一貯留部と第二貯留部との間で前記液体組成物を循環させる第二循環経路と、
前記第二循環経路に設けられ、前記第二貯留部から前記液体組成物を前記第一貯留部に送液する第一送液手段と、
前記第二循環経路に設けられ、前記第一貯留部から前記液体組成物を前記第二貯留部に送液する第二送液手段と、
前記第一貯留部に設けられ、前記第一貯留部の貯留量に基づいた信号を出力する貯留量検知手段と、
前記第一循環経路に設けられ、前記第一循環経路における前記液体組成物の性状に基づいた信号を出力する性状検知手段と、
前記第一送液手段および前記第二送液手段を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記貯留量検知手段の出力に基づき、前記第一送液手段の送液量を制御し、前記性状検知手段の出力に基づき、前記第一送液手段と前記第二送液手段の送液量を制御することを特徴とする液体付与装置。
【請求項2】
前記第二貯留部は、前記液体組成物の性状を均一にする均一化手段を備えることを特徴とする請求項1記載の液体付与装置。
【請求項3】
前記均一化手段は、前記液体組成物の温度を調整する温調機構を含むことを特徴とする請求項2記載の液体付与装置。
【請求項4】
前記液体組成物は沈降性材料を含む液体であり、前記均一化手段は、前記沈降性材料の濃度を均一にする沈降性材料濃度均一化手段を含むことを特徴とする請求項2記載の液体付与装置。
【請求項5】
前記第一貯留部から前記液体付与手段に前記液体組成物を供給する供給経路に設けられる第三送液手段と、
前記液体付与手段から前記第一貯留部に前記液体組成物を回収する回収経路に設けられる第四送液手段と、
前記供給経路に設けられ、前記供給経路を送られる前記液体組成物の圧力に基づいた信号を出力する第一圧力検出手段と、
前記回収経路に設けられ、前記回収経路を送られる前記液体組成物の圧力に基づいた信号を出力する第二圧力検出手段と、
前記第三送液手段および前記第四送液手段を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第一圧力検出手段の出力に基づき、前記第三送液手段の送液量を制御し、前記第二圧力検出手段の出力に基づき、前記第四送液手段の送液量を制御することを特徴とする請求項1記載の液体付与装置。
【請求項6】
前記貯留量検知手段は、前記第一貯留部に対し、前記第一循環経路の循環方向上流部と下流部とに設けられる、少なくとも2つの流量計を含み、前記2つの流量計の出力に基づき、前記第一貯留部の貯留量を検知することを特徴とする請求項1記載の液体付与装置。
【請求項7】
請求項1に記載の液体付与装置と、
前記液体付与装置の後段に設けられる後処理装置と、
を備えることを特徴とする電極製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電極製造装置と、前記電極製造装置の後段に設けられる電気化学素子化装置と、を備えることを特徴とする電気化学素子製造装置。
【請求項9】
基体に液体組成物を付与する液体付与手段と、
前記液体組成物を貯留し、前記液体付与手段に供給する第一貯留部と、
前記液体組成物を貯留し、前記第一貯留部に供給する第二貯留部と、
前記液体付与手段と、前記第一貯留部との間で前記液体組成物を循環させる第一循環経路と、
前記第一貯留部と第二貯留部との間で前記液体組成物を循環させる第二循環経路と、
前記第二循環経路に設けられ、前記第二貯留部から前記液体組成物を前記第一貯留部に送液する第一送液手段と、
前記第二循環経路に設けられ、前記第一貯留部から前記液体組成物を前記第二貯留部に送液する第二送液手段と、
前記第一貯留部に設けられ、前記第一貯留部の貯留量に基づいた信号を出力する貯留量検知手段と、
前記第一循環経路に設けられ、前記第一循環経路における前記液体組成物の性状に基づいた信号を出力する性状検知手段と、
前記第一送液手段および前記第二送液手段を制御する制御部と、
を備え、
前記貯留量検知手段の出力に基づき、前記第一送液手段の送液量を制御する第一送液量制御ステップと、
前記性状検知手段の出力に基づき、前記第一送液手段と前記第二送液手段の送液量を制御する第二送液量制御ステップと、
を含むことを特徴とする液体付与方法。
【請求項10】
請求項9に記載の液体付与方法を含み、
前記基体は電極基体であることを特徴とする電極製造方法。
【請求項11】
前記電極基体は、集電体と、前記集電体上に設けられた活物質層と、を含む請求項10記載の電極製造方法。
【請求項12】
前記電極基体は、集電体からなる請求項10記載の電極製造方法。
【請求項13】
前記液体組成物は、絶縁性材料を含むことを特徴とする請求項10または11記載の電極製造方法。
【請求項14】
前記液体組成物は、活物質を含むことを特徴とする請求項10または12記載の電極製造方法。
【請求項15】
請求項10に記載の電極製造方法を含むことを特徴とする電気化学素子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体付与装置、電極製造装置、電気化学素子製造装置、液体付与方法、電極製造方法および電気化学素子製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体を収容するメインタンクと、液体を吐出する液滴吐出ヘッドと、液滴吐出ヘッドに液体を供給するサブタンクと、メインタンクとサブタンクを接続する第1の液体供給路と、サブタンクと液滴吐出ヘッドを接続する第2の液体供給路と、第2の液体供給路に設けられる第1の切り替え弁によって液体をサブタンクからメインタンクへ戻すことが可能なように第2の液体供給路とメインタンクを接続する液体戻り路と、第1の液体供給路に設けられサブタンクへ液送可能な第1のポンプと、液体戻り路に設けられメインタンクへ液送可能な第2のポンプと、を備える液体吐出ユニットが記載されている。
【0003】
特許文献2には、液体吐出ヘッドを介して液体が循環する循環経路を有し、循環経路には、複数の液体吐出ヘッドの供給口側に通じる上流側マニホールドと、複数の液体吐出ヘッドの排出口側に通じる下流側マニホールドと、下流側マニホールド内の液体を排出する排出側流路と、を有し、下流側マニホールド内の気泡を排出する気泡排出経路を、排出側流路とは別に設けた液体循環装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-123207号公報
【特許文献2】特開2018-089949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しなしながら、環境変化等による液体組成物の性状変化により、貯留部での液体組成物の品質を液体付与手段まで保たせることが難しいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体組成物を付与する液体付与手段と、前記液体組成物を貯留し、前記液体付与手段に供給する第一貯留部と、前記液体組成物を貯留し、前記第一貯留部に供給する第二貯留部と、前記液体付与手段と、前記第一貯留部との間で前記液体組成物を循環させる第一循環経路と、前記第一貯留部と第二貯留部との間で前記液体組成物を循環させる第二循環経路と、前記第二循環経路に設けられ、前記第二貯留部から前記液体組成物を前記第一貯留部に送液する第一送液手段と、前記第二循環経路に設けられ、前記第一貯留部から前記液体組成物を前記第二貯留部に送液する第二送液手段と、前記第一貯留部に設けられ、前記第一貯留部の貯留量に基づいた信号を出力する貯留量検知手段と、前記第一循環経路に設けられ、前記第一循環経路における前記液体組成物の性状に基づいた信号を出力する性状検知手段と、前記第一送液手段および前記第二送液手段を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記貯留量検知手段の出力に基づき、前記第一送液手段の送液量を制御し、前記性状検知手段の出力に基づき、前記第一送液手段と前記第二送液手段の送液量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、貯留部および液体付与手段間における液体組成物の品質低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る液体付与装置の一例を示す全体構成図。
図2図1に例示した液体付与装置の概略平面図。
図3】液体付与手段の一例を示す外観斜視図。
図4】循環経路の構成例を示す概念図。
図5】液温差と加算流量の関係を示す図。
図6】液体循環系の制御部の機能構成例を示すブロック図。
図7】循環経路の別の構成例を示す概念図。
図8】実施形態に係る電極製造装置および電気化学素子製造装置を模式的に示した図。
図9】電極印刷部の変形例を示す説明図。
図10図9の電極印刷部における電極素子の作製工程の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら発明を実施するための形態を説明する。図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
<液体付与装置の概略>
図1および図2を用いて液体付与装置の概略を説明する。図1は実施形態に係る液体付与装置の一例を示す全体構成図、図2は、その概略平面図である。
【0011】
例示した液体付与装置は、基体Wの表面に液体組成物を付与して機能層を形成することにより、一次電池、二次電池またはキャパシタ等の電気化学素子に含まれる電極を製造する装置である。
【0012】
電極を製造する装置は、例えば、液体組成物として樹脂前駆体としての重合性化合物(モノマー)を含む樹脂層形成用インクまたは無機酸化物粒子を含む無機層形成用インクとしての液体インク、即ち絶縁性材料を含む液体インクを用いて、基体Wの一例としての集電体と、集電体上の少なくとも一部に設けられた活物質を含む電極合材層と、を有する電極基体の表面に絶縁層を形成するものである。つまり、電極を製造する装置は、樹脂層または無機層作製用インクを用いて、金属箔の表面、または金属箔上に塗工された合材層の表面の少なくともいずれか一方に対し、絶縁層を形成する。このように形成された絶縁層は、電極または電気化学素子において正極および負極が物理的に接触することを抑制する絶縁機能を有する機能層の一例である。なお、本発明において電極基体とは、電極を製造する装置において液体インクが付与される対象であり、液体インクが付与されることで形成される電極の前駆体のことを表す。すなわち、電極基体Wは上述のようなまた、液体組成物は集電体と、集電体上の少なくとも一部に設けられた活物質を含む電極合材層と、を有する構成であってもよく、集電体から成る構成であってもよい。また、液体組成物は活物質を含む電極合材層形成用インクであってもよい。このとき、例えば集電体から成る電極基体上に電極合材層形成用インクを付与することで集電体と、電極合材層と、を有する電極を製造することができる。
【0013】
図1において、電極製造装置1000は、供給部1、電極印刷部2、乾燥部3、および巻取部4を備える。
【0014】
供給部1は、ロール状に巻かれた基体(電極基体)Wを支持する支持ローラ1aと、支持ローラ1aから繰り出された基体Wを電極印刷部2へ送る供給ガイドローラ1b,1cを備える。
【0015】
電極印刷部2は、供給部1から送られる基体Wを搬送する搬送装置2aと、搬送装置2aにより搬送される基体Wの表面に液体インクを付与する液体付与部2bを備える。
【0016】
乾燥部3は、電極印刷部2から送られる基体W表面の液体インクを乾燥させる乾燥炉3aと、乾燥炉3aから送り出される基体Wを搬送する排出ガイドローラ3bを備える。乾燥炉3aは、基体W表面の液体インクを加熱して液体インク中の残溶媒を乾燥させたり、液体インクの硬化を促進したりする機能を有する。
【0017】
巻取部4は、乾燥部3から送られる基体Wを搬送する巻取ガイドローラ4a,4bと、基体Wを巻き取る巻取ローラ4cを備える。
【0018】
電極印刷部2において、液体付与部2bは、基体Wの表面に液体インクを付与するヘッド100を備えたヘッドユニット2cを、基体Wの搬送方向に沿って複数備える。
【0019】
図2に示されるように、電極印刷部2の外部には、液体インクを貯留するメインタンク50が設置される。メインタンク50は、サブタンク30を介してヘッド100に接続され、ヘッド100に液体インクを供給する。なお、メインタンクは電極印刷部2の内部に設けられてもよいが、その内部に少なくともヘッド100が設けられる液体付与装置の筐体の外部に設けられることが好ましい。このような構成とすることにより、印刷中であっても、気流の変化などによる印刷動作への影響を小さくしつつ、かつ基体W上への異物の付着を防ぎながらインクの補充が可能となる。
【0020】
メインタンク50とサブタンク30とを接続する経路40は、液体インクの循環が可能な循環経路となっており、メインタンク50からサブタンク30に液体インクを補充する補充経路と、サブタンク30からメインタンク50に液体インクを戻す還流経路とで構成される。また、サブタンク30とヘッド100とを接続する経路20もまた、液体インクの循環が可能な循環経路となっており、サブタンク30からヘッド100に液体インクを供給する供給経路と、ヘッド100からサブタンク30に液体インクを戻す回収経路とで構成される。ここで、電極印刷部2は、液体付与装置の一例であり、ヘッド100は、液体付与手段の一例である。
【0021】
図2において、メインタンク50は、サブタンク30と対をなして設けられる構成としているが、必ずしもこれに限るものではない。例えば、図2に例示した4つのヘッドユニット2cで同一の液体組成物が用いられる場合は、メインタンク50を1つにし、1つのメインタンク50から各ヘッドユニット2cへ液体組成物を供給する構成としてもよい。このような構成とすることにより、複数のヘッドユニット2cに対して、性状の近い状態のインクを供給することができ、ヘッドユニット2cによる液体付与能力を均一化することができる。このようにメインタンク50の数は、使用される液体組成物の種類数に応じて、適宜共通化してよい。
【0022】
また、乾燥部3は、後処理装置の一例である。なお、電極製造装置1000は、ヘッド100から付与される液体インクの成分によっては、電極印刷部2と乾燥部3の間に、紫外線により基体W表面の液体インク層を硬化させる硬化部を備えた構成としてもよい。この場合の硬化部もまた後処理装置の一例となる。紫外線により硬化する液体インクの一例としては、重合性化合物(モノマー)を含むインクが挙げられる。
【0023】
基体Wは、図示されたような長尺物の形態に限るものではなく、予め所定のサイズに裁断された形態であってもよい。また、電極製造装置1000は、定位置のヘッド100に対して基体Wを移動させ、基体Wに液体インクを付与する、いわゆるライン型の装置構成を例示したが、ライン型に限るものではない。ヘッド100と基体Wは、相対的に移動する構成であればよく、例えば、間欠送りされる基体Wに対してヘッド100を基体Wの搬送方向と直交する方向へ移動させ、基体Wに液体インクを付与する、いわゆるシリアル型の装置構成でもよい。または、基体載置テーブルに保持された基体に対してヘッド100をXY方向へ移動させ、基体Wに液体インクを付与する、いわゆるフラットベッド型の装置構成でもよい。
【0024】
<液体付与手段の概略>
図3は液体付与手段の一例を示す外観斜視図である。
【0025】
液体付与手段の一例であるヘッド100は、ノズル板101、流路部材102、共通液室部材103、カバー104、供給ポート105、および排出ポート106等を備える。ノズル板101は、液体インク等の液体組成物を付与する複数のノズルを有する。流路部材102は、共通液室部材103に供給された液体組成物を、各ノズルへ行き渡らせる。
【0026】
共通液室部材103は、供給ポート105と排出ポート106を備え、供給ポート105から液体組成物を取り込むとともに、ノズルから付与(吐出)されなかった液体組成物を、排出ポート106から排出する。
【0027】
カバー104は、共通液室部材103の上部側に設置される圧電アクチュエータ等の駆動機構を収容する。供給ポート105は、共通液室部材103を介して排出ポート106に通じており、これによりヘッド100は、液体組成物を循環させることが可能な構成となっている。
【0028】
<循環経路の構成例>
図4を用いて液体組成物の循環経路の構成について説明する。図4は、循環経路の構成例を示す概念図である。
【0029】
サブタンク30とヘッド100は、両者間で液体組成物を循環させる第一循環経路20によって接続される。サブタンク30とメインタンク50は、両者間で液体組成物を循環させる第二循環経路40によって接続される。サブタンク30は、第一循環経路20と第二循環経路40の中継部を成し、これによりメインタンク50の液体組成物はヘッド100へ供給可能となる。ここで、サブタンク30は第一貯留部の一例であり、メインタンク50は第二貯留部の一例である。なお、貯留部の容量は特に制限なく、第一循環経路20と第二循環経路40の中継部を成すような構成であればよい。
【0030】
[第一循環経路]
サブタンク30とヘッド100の間に形成される第一循環経路20は、サブタンク30からヘッド100に向けて液体組成物を送液する供給経路21と、ヘッド100からサブタンク30に向けて液体組成物を送液する回収経路22とを備える。このうち、供給経路21には、供給ポンプ201、液温センサ221、および圧力センサ211が設置される。供給ポンプ201は、サブタンク30が貯留する液体組成物をヘッド100(供給ポート105)へ供給する。供給ポンプ201は、第三送液手段の一例である。
【0031】
液温センサ221は、供給経路21内を流れる液体組成物の性状の一例である温度(液温)を検知する。例えば、液温は、供給経路21の内壁との摩擦により上昇したり、周囲の環境温度により変動する。こうした液温の変動は、液体組成物の粘度、あるいは、液体組成物がアルミナ粒子や活物質粒子などの沈降性材料を含んでいる場合は、沈降性材料の分散状態に影響を及ぼし、ヘッド100から付与される液体組成物の品質が不安定になる。ヘッド100から付与される液体組成物の品質を安定させるため、本実施形態では、液温センサ221を設けている。液温センサ221の検知結果は、第二循環経路40に設けたポンプ401,402の制御に用いられる。液温センサ221は、性状検知手段の一例である。
【0032】
圧力センサ211は、供給経路21内の圧力を検知する。以下、供給圧力センサ211ともいう。供給圧力センサ211の検出結果は、供給ポンプ201の流量制御に用いられ、供給ポンプ201の流量を制御することで、供給経路21内の圧力を予め設定された目標値の圧力に維持する。供給圧力センサ211は、第一圧力検出手段の一例である。
【0033】
第一循環経路20のうちの回収経路22には、回収ポンプ202、および圧力センサ212が設置される。回収ポンプ202は、ヘッド100(排出ポート106)から送り出された液体組成物をサブタンク30へ回収する。回収ポンプ202は、第四送液手段の一例である。
【0034】
圧力センサ212は、回収経路22内の圧力を検知する。以下、回収圧力センサ212ともいう。回収圧力センサ212の検出結果は、回収ポンプ202の流量制御に用いられ、回収ポンプ202の流量を制御することで、回収経路22内の圧力を予め設定された目標値の圧力に維持する。回収圧力センサ212は、第二圧力検出手段の一例である。
【0035】
サブタンク30は、大気開放部31を備える。大気開放部31は、サブタンク30内を常圧の状態にし、循環経路内の圧力変動を防ぐ。
【0036】
上記のように構成された第一循環経路20では、第一循環経路内の圧力が一定となり、ヘッド100のノズルに適切なメニスカスを形成することができる。
【0037】
[第二循環経路]
サブタンク30とメインタンク50の間に形成される第二循環経路40は、メインタンク50からサブタンク30に向けて液体組成物を送液する補充経路41と、サブタンク30からメインタンク50に向けて液体組成物を送液する還流経路42とを備える。
【0038】
サブタンク30は、貯留量検知手段の一例である液面センサ32を備える。液面センサ32は、サブタンク30における液体組成物の貯留量を検知しており、例えば、液体組成物の液面が基準液面321の高さにあるかを検知する。
【0039】
第二循環経路40のうち、補充経路41には補充ポンプ401が設置される。補充ポンプ401は、メインタンク50が貯留する液体組成物をサブタンク30へ補充する。補充ポンプ401は、第一送液手段の一例である。
【0040】
また、第二循環経路40のうち、還流経路42には還流ポンプ402が設置される。還流ポンプ402は、サブタンク30から液体組成物をメインタンク50へ送液する。還流ポンプ402は、第二送液手段の一例である。
【0041】
補充ポンプ401は、サブタンク30内の液体組成物の液面が基準液面321を下回ったことを液面センサ32が検知すると、メインタンク50からサブタンク30に向けて液体組成物を送液する。また、補充ポンプ401による送液と同時に、還流ポンプ402によるサブタンク30からメインタンク50への送液も行われる。
【0042】
例えば、ヘッド100のノズルから液体組成物が付与されると、当該付与により消費された液量分だけサブタンク30の液面は下がる。液面が基準液面321を下回った場合、補充ポンプ401の流量を、予め設定した流量よりも多くし、液面が基準液面321に達するまで補充ポンプ401は、液体組成物を多い流量でサブタンク30へ送液する。なお、還流ポンプ402は、補充ポンプ401が多い流量で送液している期間中も、流量は変わらず、予め設定した流量で液体組成物を送液する。
【0043】
サブタンク30の液面が基準液面321に達したならば、補充ポンプ401の流量はもとの流量に戻り、還流ポンプ402と同じ流量で送液する。なお、液体組成物がアルミナ粒子や活物質粒子などの沈降性材料を含んでいる場合は、補充ポンプ401および還流ポンプ402の送液流量は、沈降性材料の濃度が均一になる(沈降性材料を沈降させない)流量に設定されている。
【0044】
サブタンク50は、大気開放部51を備える。大気開放部51は、サブタンク50内を常圧の状態にし、循環経路内の圧力変動を防ぐ。また、メインタンク50は、メインタンク50が貯留する液体組成物の性状を均一にするための均一化手段を備える。
【0045】
均一化手段は、使用する液体組成物の特性等によって適宜選択されてよい。例えば、基体(電極基体)W上に、予め電極が形成されており、この電極の上に、沈降性材料(例えばアルミナ粒子等の無機粒子や活物質粒子)を含んだ液体組成物(液体インク)を用いて、絶縁膜を形成する電極製造装置に適用した場合を考える。この場合の均一化手段は、沈降性材料の沈降を防ぐための沈降性材料濃度均一化手段52、および液体組成物の温度を調整する温調機構53などで構成される。
【0046】
沈降性材料濃度均一化手段52としては、例えば液体組成物を撹拌する撹拌機構が挙げられる。メインタンク50内の液体組成物に対し、沈降性材料濃度均一化手段52に所定の動作を実行させることで、沈降性材料濃度が均一化される。沈降性材料濃度均一化手段52、および温調機構53は、均一化手段の一例である。
【0047】
温調機構53は、目標温度が設定されており、メインタンク50が貯留する液体組成物の温度(液温)が目標温度となるように制御される。温調機構53によってメインタンク50内の液温を目標温度に維持することで、液体組成物の粘度が均一化される。
【0048】
また、第一循環経路20に設置した液温センサ221の検出温度と、温調機構53の目標温度との間に液温差ΔT(絶対値)が生じた場合は、第二循環経路40の補充ポンプ401および還流ポンプ402の流量に対し同じ量だけ流量を加算し、流量を増加させる。この場合の加算流量は、図5に示されるように、液温差ΔT(絶対値)に比例して変化させる。例えば、液温差ΔTがT1のときは、流量Q1を加算する。
【0049】
また、第二循環経路40における流量は、沈降粒子濃度の均一化と、液温の一定化とを両立させる場合、補充ポンプ401および還流ポンプ402の流量が次式(1)および(2)を満たすように動作させる。
[補充ポンプ401の流量]=[沈降性材料濃度が均一となる流量]+[基準液面321を保つための流量]+[液温を保つための流量]・・・式(1)
[還流ポンプ402の流量]=[沈降性材料濃度が均一となる流量]+[温度を保つための流量]・・・式(2)
【0050】
上記のように構成された第二循環経路40では、沈降性材料濃度および液温が均一になり、液体組成物の品質を一定に保つことができる。
【0051】
第二循環経路40での流量は、沈降性材料の沈降・堆積を防ぐ面で、第一循環経路20よりも大きい値で設定される。仮に、第一循環経路20の流量を、第二循環経路40の流量と同じ値に設定した場合には、ヘッド100のノズルにかかる圧力が大きすぎてしまい、ノズルのメニスカスが不適切な状態になる。ノズルのメニスカスが不適切な状態であると、ノズルからの液垂れや、液体組成物を狙いの位置に付与できなくなる等、ヘッド100における液体組成物の付与性能が悪化する。本実施形態は、上述のように第一循環経路20と第二循環経路40とで機能を分離することで、メニスカスの適切化と、液体組成物の品質(性状)の均一化との両立を実現させている。
【0052】
<制御部の機能構成例>
次に、図6を用いて液体循環系に係わる制御部の機能構成について説明する。図6は、液体循環系の制御部の機能構成例を示すブロック図である。
【0053】
制御部900は、第一送液手段の一例である補充ポンプ401、第二送液手段の一例である還流ポンプ402、第三送液手段の一例である供給ポンプ201、第四送液手段の一例である回収ポンプ202、および均一化手段の一例である温調機構53,沈降性材料濃度均一化手段52の動作を制御する。制御部900は、貯留量検知手段の一例である液面センサ32、性状検知手段の一例である液温センサ221、第一圧力検出手段の一例である供給圧力センサ211、および第二圧力検出手段の一例である回収圧力センサ212の出力を受信する。
【0054】
制御部900は、補充制御部901と、還流制御部902と、供給制御部903と、回収制御部904と、均一化制御部905と、記憶部906と、を備える。なお、制御部900は、これらの機能を電気回路で実現する他、これらの機能の一部をソフトウェア(CPU:Central Processing Unit)によって実現することもできる。また、制御部900は、複数の回路または複数のソフトウェアによってこれらの機能を実現してもよい。
【0055】
補充制御部901は、液面センサ32の出力に基づき補充ポンプ401による液体組成物の送液量を制御する。補充制御部901は、補充ポンプ401の流量の切り替え等を制御できる。例えば、補充制御部901は、サブタンク30において液面が基準液面321を下回ったことを示す情報を液面センサ32から受信したときは、補充ポンプ401の流量を、予め設定した通常の流量よりも多くなるように切り替える。この流量切り替えにより、補充ポンプ401は、液面が基準液面321に達するまで、液体組成物を通常よりも多い流量でサブタンク30へ送液する。その後、補充制御部901は、液面が基準液面321に達したことを示す情報を液面センサ32から受信したならば、補充ポンプ401の流量を、通常の流量(還流ポンプ402と同じ流量)に戻す。
【0056】
還流制御部902は、液温センサ221の出力に基づき、補充ポンプ401および還流ポンプ402による液体組成物の送液量を制御する。還流制御部902は、補充ポンプ401および還流ポンプ402の流量を制御できる。例えば、還流制御部902は、液温センサ221によって検出された温度(液温)と、記憶部906に予め格納された温調機構53の目標温度とを比較し、両者間に液温差ΔTが生じている場合は、補充ポンプ401と還流ポンプ402の流量に対し、同じ量だけ流量を加算し、流量を増加させる。
【0057】
供給制御部903は、供給圧力センサ211の出力に基づき、供給ポンプ201による液体組成物の送液量を制御し、供給経路21内の圧力を一定にする。
【0058】
回収制御部904は、回収圧力センサ212の出力に基づき、回収ポンプ202による液体組成物の送液量を制御し、回収経路22内の圧力を一定にする。
【0059】
均一化制御部905は、記憶部906に予め格納された目標温度の情報に基づき温調機構53を制御し、メインタンク50が貯留する液体組成物の液温を均一にする。また、均一化制御部905は、記憶部906に予め格納された、沈降性材料の濃度を均一にするための情報(例えば撹拌条件等)に基づき、沈降性材料濃度均一化手段52を制御し、沈降性材料の濃度を均一にする。
【0060】
記憶部906は、制御部900が有するROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)/SSD(Solid State Drive)等によって構築される。記憶部906は、補充ポンプ401および還流ポンプ402の流量を増加させる際の加算流量のデータ、温調機構53の目標温度データ、沈降性材料濃度均一化手段52の駆動条件に関するデータ等、必要なデータを格納する。各データは、電極印刷部2において使用される液体組成物が複数種類ある場合は、液体組成物毎に記憶部906に格納される。
【0061】
上述のように、本実施形態は、液体組成物を付与するヘッド100と、液体組成物を貯留し、ヘッド100に供給するサブタンク30と、液体組成物を貯留し、サブタンク30に供給するメインタンク50と、ヘッド100と、サブタンク30との間で液体組成物を循環させる第一循環経路20と、サブタンク30とメインタンク50との間で液体組成物を循環させる第二循環経路40と、第二循環経路40に設けられ、メインタンク50から液体組成物をサブタンク30に送液する補充ポンプ401と、第二循環経路40に設けられ、サブタンク30から液体組成物をメインタンク50に送液する還流ポンプ402と、サブタンク30に設けられ、サブタンク30の貯留量に基づいた信号を出力する液面センサ32と、第一循環経路20に設けられ、第一循環経路20における液体組成物の温度に基づいた信号を出力する液温センサ221と、補充ポンプ401および還流ポンプ402を制御する制御部900と、を備え、制御部900は、液面センサ32の出力に基づき、補充ポンプ401の送液量を制御し、液温センサ221の出力に基づき、補充ポンプ401と還流ポンプ402の送液量を制御する。
【0062】
また、上述のように、メインタンク50は、液体組成物の性状を均一にする均一化手段を備える。
【0063】
また、上述のように、均一化手段は、液体組成物の温度を調整する温調機構53を含む。
【0064】
また、上述のように、液体組成物は沈降性材料を含む液体であり、均一化手段は、沈降性材料の濃度を均一にする沈降性材料濃度均一化手段52を含む。
【0065】
これらにより、液体組成物の液温が一定になるため、液体組成物の粘度が安定するとともに、沈降性材料濃度が均一になるため、沈降性材料の沈降・堆積が防止され、循環経路において液体組成物の品質を保つことができる。
【0066】
また、上述のように、サブタンク30からヘッド100に液体組成物を供給する供給経路21に設けられる供給ポンプ201と、ヘッド100からサブタンク30に液体組成物を回収する回収経路22に設けられる回収ポンプ202と、供給経路21に設けられ、供給経路21を送られる液体組成物の圧力に基づいた信号を出力する供給圧力センサ211と、回収経路22に設けられ、回収経路22を送られる液体組成物の圧力に基づいた信号を出力する回収圧力センサ212と、供給ポンプ201および回収ポンプ202を制御する制御部900と、を備え、制御部900は、供給圧力センサ211の出力に基づき、供給ポンプ201の送液量を制御し、回収圧力センサ212の出力に基づき、回収ポンプ202の送液量を制御する。
【0067】
これにより、第一循環経路20内の圧力が一定となり、ヘッド100のノズルに適切なメニスカスを形成することができる。
【0068】
<変形例>
図7を用いて実施形態の変形例について説明する。図7は、循環経路の別の構成例を示す概念図である。
【0069】
本例は、サブタンク30における液面の検知方法が、図4に示された構成例と異なる。つまり、本例では、サブタンク30に設けられていた液面センサ32の機能を、2つの流量計231,232によって実現している。一方の流量計231は、第一循環経路20の供給経路21に設置され、もう一方の流量計232は、第一循環経路20の回収経路22に設置される。
【0070】
このように、サブタンク30の上流部と下流部に流量計231,232を設置し、両者の流量差に基づき、液面が基準液面321の高さにあるかを検知するように構成してもよい。この場合の流量計231,232もまた貯留量検知手段の一例である。
【0071】
上述のように、本実施形態において、貯留量検知手段は、サブタンク30に対し、第一循環経路20の循環方向上流部と下流部とに設けられる、少なくとも2つの流量計231,232を含み、2つの流量計231,232の出力に基づき、サブタンク30の貯留量を検知する。
【0072】
この場合にも、液面センサと同様、サブタンク30における液体組成物の液面高さを検知することができる。また、第一循環経路20内への液体組成物の過剰補充を防ぐことができる。
【0073】
<適用例>
次に、図8を用いて適用例について説明する。図8は、実施形態に係る電極製造装置および電気化学素子製造装置を模式的に示した図である。
【0074】
[電極製造装置]
図8に示されるように、電極製造装置1000は、上述の電極印刷部2の後段に、後処理装置3を備えて構成される。後処理装置3には、上述の乾燥部3の他に、電極基体Wに付与された液体に紫外線を照射して液体を硬化させる硬化部、薄膜電極をプレスする手段としてのプレスロール、薄膜電極を切り分けるスリット刃やレーザなどのカット機構等が含まれる。
【0075】
[電気化学素子製造装置]
また、図8に示されるように、上述の電極製造装置1000の後段に、更に、電気化学素子化装置2000を備えることで電気化学素子製造装置3000としてもよい。電気化学素子化装置2000には、例えば、上述の電極製造装置1000で製造された電極を積層または巻回する装置や、パッケージングする装置などが含まれる。
【0076】
<変形例>
以下、実施形態の変形例について説明する。
【0077】
<<印刷部の変形例>>
上述の電極製造装置1000では、電極印刷部2の構成として、ヘッド100から付与される液体を直接、基体Wに付与する方式としたが、間接的に液体を基体Wに付与する方式でもよい。間接的に液体を付与する方式としては、例えば、転写工程を介して液体を基材に付与する方式(転写方式)がある。転写方式の例を、図9を用いて説明する。
【0078】
図9は、電極印刷部の変形例を示す説明図であり、図9(a)はドラム状の中間転写体を用いた印刷部、図9(b)は無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示している。
【0079】
図9(a)に示した印刷部400´は、中間転写体4001を介して基材(基体)W10に液体を転写することで基材W10の表面に機能層を形成するインクジェットプリンタである。
【0080】
印刷部400´は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004および清掃ユニット4005を備える。なお、印刷部400´は液体付与手段の一例である。
【0081】
インクジェット部420は、複数のヘッド101を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド101は、転写ドラムに4000に支持された中間転写体4001にインクを吐出し、中間転写体4001上にインク層を形成する。各ヘッド101はラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基材W10の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。
【0082】
ヘッド101は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド101は、放射状に配置される。
【0083】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド101による液体(インク)の付与前に、例えば、中間転写体4001上に、インクの粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上のインク層から液体成分を吸収する。
【0084】
加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上のインク層を加熱する。インク層を加熱することで、インク層中の樹脂が溶融し、基材W10への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留したインクやごみ等の異物を除去する。
【0085】
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基材W10が通過するときに、中間転写体4001上のインク層が基材W10に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基材W10の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも1つ備えた構成としてもよい。
【0086】
図9(b)に示した印刷部400´´は、中間転写ベルト4006を介して基材W10に液体組成物を転写することで基材(基体)W10の表面に機能層を形成するインクジェットプリンタである。
【0087】
印刷部400´´は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド101からインク滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上にインク層を形成する。中間転写ベルト4006に形成されたインク層は、乾燥ユニット4007によって乾かされ、インク層は中間転写ベルト4006上で膜化する。なお、印刷部400´´は液体付与手段の一例である。
【0088】
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化したインク層は基材W10に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
【0089】
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c,4009d,4009e,4009f、および複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図中矢印方向に移動する。ヘッド101に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド101からインク滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0090】
なお、図9(a)に示された中間転写体4001、および図9(b)に示された中間転写ベルト4006に形成されるインク層は単層とは限らず、複数のヘッド101毎にインクを異ならせ、1パスで2層以上のインク層を形成する構成としてもよい。
【0091】
その場合、例えば図10に示された工程(1)~(3)によって電極基体W10上に活物質層W20(X20)と絶縁層X30を形成することが可能になる。
【0092】
中間転写方式の場合、最終的に電極基体W10にインク層を転写する段階で、インク層の上下が反転する。そのため、工程(1)では、絶縁層用のインクを吐出するヘッド101を用いて、中間転写体4001(中間転写ベルト4006)に対してインクを付与し、中間転写体4001(中間転写ベルト4006)上に絶縁層X30を形成する。
【0093】
次に、工程(2)において、中間転写体4001(中間転写ベルト4006)に対し活物質層用のインクおよび絶縁層用のインクを付与する。そして、中間転写体4001(中間転写ベルト4006)上の絶縁層X30の上に更に活物質層W20(X20)および絶縁層X30を形成する。
【0094】
工程(2)における活物質層W20(X20)および絶縁層X30の作製は、活物質層用のインクと絶縁層用のインクを吐出可能な1つのヘッドにより1工程で作製してもよい。また、活物質層用のインクを吐出するヘッドと、絶縁層用のインクを吐出するヘッドを用いて2工程で作製してもよい。
【0095】
中間転写体4001(中間転写ベルト4006)上に作製されたインク層は、工程(3)において中間転写体4001(中間転写ベルト4006)から電極基体W10に転写される。中間転写方式の場合には、上記のような工程により電極基体W10への活物質層W20(X20)および絶縁層X30の作製が行われる。
【0096】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0097】
[第1態様]
第1態様は、液体組成物を付与する液体付与手段(例えばヘッド100)と、前記液体組成物を貯留し、前記液体付与手段に供給する第一貯留部(例えばサブタンク30)と、前記液体組成物を貯留し、前記第一貯留部に供給する第二貯留部(例えばメインタンク50)と、前記液体付与手段と、前記第一貯留部との間で液体組成物を循環させる第一循環経路(例えば第一循環経路20)と、前記第一貯留部と第二貯留部(例えばメインタンク50)との間で前記液体組成物を循環させる第二循環経路(例えば第二循環経路40)と、前記第二循環経路に設けられ、前記第二貯留部から前記液体組成物を前記第一貯留部に送液する第一送液手段(例えば補充ポンプ401)と、前記第二循環経路に設けられ、前記第一貯留部から前記液体組成物を前記第二貯留部に送液する第二送液手段(例えば還流ポンプ402)と、前記第一貯留部に設けられ、前記第一貯留部の貯留量に基づいた信号を出力する貯留量検知手段(例えば液面センサ32)と、前記第一循環経路に設けられ、前記第一循環経路における前記液体組成物の性状に基づいた信号を出力する性状検知手段(例えば液温センサ221)と、前記第一送液手段および前記第二送液手段を制御する制御部(例えば制御部900)と、を備え、前記制御部は、前記貯留量検知手段の出力に基づき、前記第一送液手段の送液量を制御し、前記性状検知手段の出力に基づき、前記第一送液手段と前記第二送液手段の送液量を制御することを特徴とするものである。
【0098】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記第二貯留部は、前記液体組成物の性状を均一にする均一化手段を備えることを特徴とするものである。
【0099】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記均一化手段は、前記液体組成物の温度を調整する温調機構(例えば温調機構53)を含むことを特徴とするものである。
【0100】
[第4態様]
第4態様は、第2態様において、前記液体組成物は沈降性材料を含む液体であり、前記均一化手段は、前記沈降性材料の濃度を均一にする沈降性材料濃度均一化手段(例えば沈降性粒子濃度均一化手段52)を含むことを特徴とするものである。
【0101】
[第5態様]
第5態様は、第1態様乃至第4態様のいずれかにおいて、前記第一貯留部から前記液体付与手段に前記液体組成物を供給する供給経路(例えば供給経路21)に設けられる第三送液手段(例えば供給ポンプ201)と、前記液体付与手段から前記第一貯留部に前記液体組成物を回収する回収経路(例えば回収経路22)に設けられる第四送液手段(例えば回収ポンプ202)と、前記供給経路に設けられ、前記供給経路を送られる前記液体組成物の圧力に基づいた信号を出力する第一圧力検出手段(例えば供給圧力センサ211)と、前記回収経路に設けられ、前記回収経路を送られる前記液体組成物の圧力に基づいた信号を出力する第二圧力検出手段(例えば回収圧力センサ212)と、前記第三送液手段および前記第四送液手段を制御する制御部(例えば制御部900)と、を備え、前記制御部は、前記第一圧力検出手段の出力に基づき、前記第三送液手段の送液量を制御し、前記第二圧力検出手段の出力に基づき、前記第四送液手段の送液量を制御することを特徴とするものである。
【0102】
[第6態様]
第6態様は、第1態様乃至第5態様のいずれかにおいて、前記貯留量検知手段は、前記第一貯留部に対し、前記第一循環経路の循環方向上流部と下流部とに設けられる、少なくとも2つの流量計(例えば流量計231,232)を含み、前記2つの流量計の出力に基づき、前記第一貯留部の貯留量を検知することを特徴とするものである。
【0103】
[第7態様]
第7態様は、第1態様乃至第6態様のいずれかの液体付与装置(例えば電極印刷部2)と、前記液体付与装置の後段に設けられる後処理装置(例えば後処理装置3)と、を備えることを特徴とする電極製造装置(例えば電極製造装置1000)である。
【0104】
[第8態様]
第8態様は、第7態様の電極製造装置と、前記電極製造装置の後段に設けられる電気化学素子化装置(例えば電気化学素子化装置2000)と、を備えることを特徴とする電気化学素子製造装置(例えば電気化学素子製造装置3000)である。
【0105】
[第9態様]
第9態様は、基体(例えば基体W)に液体組成物を付与する液体付与手段(例えばヘッド100)と、前記液体組成物を貯留し、前記液体付与手段に供給する第一貯留部(例えばサブタンク30)と、前記液体組成物を貯留し、前記第一貯留部に供給する第二貯留部(例えばメインタンク50)と、前記液体付与手段と、前記第一貯留部との間で液体組成物を循環させる第一循環経路(例えば第一循環経路20)と、前記第一貯留部と第二貯留部(例えばメインタンク50)との間で前記液体組成物を循環させる第二循環経路(例えば第二循環経路40)と、前記第二循環経路に設けられ、前記第二貯留部から前記液体組成物を前記第一貯留部に送液する第一送液手段(例えば補充ポンプ401)と、前記第二循環経路に設けられ、前記第一貯留部から前記液体組成物を前記第二貯留部に送液する第二送液手段(例えば還流ポンプ402)と、前記第一貯留部に設けられ、前記第一貯留部の貯留量に基づいた信号を出力する貯留量検知手段(例えば液面センサ32)と、前記第一循環経路に設けられ、前記第一循環経路における前記液体組成物の性状に基づいた信号を出力する性状検知手段(例えば液温センサ221)と、前記第一送液手段および前記第二送液手段を制御する制御部(例えば制御部900)と、を備え、前記貯留量検知手段の出力に基づき、前記第一送液手段の送液量を制御する第一送液量制御ステップと、前記性状検知手段の出力に基づき、前記第一送液手段と前記第二送液手段の送液量を制御する第二送液量制御ステップと、を含むことを特徴とする液体付与方法である。
【0106】
[第10態様]
第10態様は、第9態様の液体付与方法を含み、前記基体は電極基体(例えば電極基体W)であることを特徴とする電極製造方法である。
【0107】
[第11態様]
第11態様は、第10態様において、前記電極基体は、集電体と、前記集電体上に設けられた活物質層と、を含むことを特徴とするものである。
【0108】
[第12態様]
第12態様は、第10態様において、前記電極基体は、集電体からなることを特徴とするものである。
【0109】
[第13態様]
第13態様は、第10態様または第11態様において、前記液体組成物は、絶縁性材料を含むことを特徴とするものである。
【0110】
[第14態様]
第14態様は、第10態様または第12態様において、前記液体組成物は、活物質を含むことを特徴とするものである。
【0111】
[第15態様]
第15態様は、第10態様の電極製造方法を含むことを特徴とする電気化学素子製造方法である。
【符号の説明】
【0112】
1 供給部
2 電極印刷部
3 乾燥部
4 巻取部
100 ヘッド
20 第一循環経路
21 供給経路
22 回収経路
201 供給ポンプ
202 回収ポンプ
211 供給圧力センサ
212 回収圧力センサ
221 液温センサ
231,232 流量計
30 サブタンク
31 大気開放部
32 液面センサ
321 基準液面
40 第二循環経路
41 補充経路
42 還流経路
401 補充ポンプ
402 還流ポンプ
50 メインタンク
51 大気開放部
52 沈降性材料濃度均一化手段
53 温調機構
900 制御部
901 補充制御部
902 還流制御部
903 供給制御部
904 回収制御部
905 均一化制御部
906 記憶部
1000 電極製造装置
2000 電気化学素子化装置
3000 電気化学素子製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10