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特開2024-11911可動装置、光偏向装置、画像投影装置、移動体およびヘッドマウントディスプレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011911
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】可動装置、光偏向装置、画像投影装置、移動体およびヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20240118BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20240118BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240118BHJP
   G02B 27/02 20060101ALN20240118BHJP
   G02B 27/01 20060101ALN20240118BHJP
   G02B 26/08 20060101ALN20240118BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
H04N5/64 511A
H04N5/64 521Z
B60K35/00 A
G02B27/02 Z
G02B27/01
G02B26/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114251
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】餅田 章利
【テーマコード(参考)】
2H045
2H141
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H045AB06
2H045AB13
2H045AB24
2H045AB25
2H045AB38
2H045AB44
2H045AB81
2H141MA12
2H141MB24
2H141MC09
2H141MD13
2H141MD16
2H141MD20
2H141MD24
2H141MF02
2H141MG04
2H141MZ06
2H141MZ13
2H141MZ15
2H141MZ16
2H141MZ26
2H199CA06
2H199CA12
2H199CA29
2H199CA34
2H199CA42
2H199CA47
2H199CA59
2H199CA69
2H199CA75
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA15
2H199DA28
2H199DA30
2H199DA34
2H199DA44
3D344AA21
3D344AA22
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】弾性振動の調整処理時間を短縮すること。
【解決手段】本発明にかかる可動装置は、反射部と、反射部にそれぞれの傾きを与える一対の可動部と、一対の可動部に傾きを与える駆動信号を入力する制御部と、を有し、制御部は、一対の可動部にそれぞれ入力する駆動信号の立ち上がり比と駆動信号間の位相差とを変数とする駆動信号を生成する駆動信号生成部と、駆動信号生成部が生成した駆動信号による駆動で検知される可動部の振れ角に対応する信号から高周波成分を抽出する高周波成分抽出部と、駆動信号の変数の値と高周波成分とを紐づけて格納するメモリ部と、メモリ部に格納された高周波成分に基づいて、駆動信号を更新する変数の値の組み合わせを選択する駆動信号選択部と、を有する。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射部と、
前記反射部にそれぞれの傾きを与える一対の可動部と、
前記一対の可動部に前記傾きを与える駆動信号を入力する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記一対の可動部にそれぞれ入力する前記駆動信号の立ち上がり比と駆動信号間の位相差とを変数とする前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、
前記駆動信号生成部が生成した前記駆動信号による駆動で検知される前記可動部の振れ角に対応する信号から高周波成分を抽出する高周波成分抽出部と、
前記駆動信号の前記変数の値と前記高周波成分とを紐づけて格納するメモリ部と、
前記メモリ部に格納された前記高周波成分に基づいて、前記駆動信号を更新する前記変数の値の組み合わせを選択する駆動信号選択部と、
を有する可動装置。
【請求項2】
前記駆動信号選択部は、
前記変数の値の組み合わせを基準に、他の組み合わせに変更することにより前記変数の値の複数の組み合わせを設定し、前記複数の組み合わせから前記高周波成分の高周波振幅値が最小となる前記変数の値の組み合わせを選択する
請求項1に記載の可動装置。
【請求項3】
前記駆動信号選択部は、
前記変数の値の組み合わせの座標を基準に、他の組み合わせの座標に変更することにより前記変数の値の複数の座標を設定し、前記複数の座標の隣接する座標同士を線で結び、内分点同士の線同士が交差する交点を前記変数の組み合わせの値として選択する
請求項1に記載の可動装置。
【請求項4】
前記駆動信号選択部は、
前記駆動信号を更新する前記変数の値の組み合わせとして前記メモリ部に格納された前記高周波成分の高周波振幅値が最小となる前記変数の値の組み合わせを選択する
請求項1に記載の可動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の可動装置と、
前記可動装置で走査される光を、前記可動部に照射する投光部と、
を有する光偏向装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の可動装置と、
前記可動装置で走査される光を、前記可動部に照射する投光部と、
前記可動装置による光の走査で画像を投影するスクリーンと、
を有する画像投影装置。
【請求項7】
請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の可動装置と、
前記可動装置で走査される光を、前記可動部に照射する投光部と、
を有する移動体。
【請求項8】
請求項1から請求項4のうち、いずれか一項に記載の可動装置と、
前記可動装置で走査される光を、前記可動部に照射する投光部と、
前記走査された光による画像を装着者の網膜に結像する結像部と、
を有するヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動装置、光偏向装置、画像投影装置、移動体およびヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可動装置は、固定フレームに弾性支持された可動部上に、光を走査するための反射部を設け、可動部により反射部の傾斜角度を変化させる傾斜動作を繰り返し行うことで、水平、垂直方向への走査を行う。
【0003】
可動部がとる実際の傾斜振れ角は、理想的な傾斜振れ角に対して上下に時間変化する。この時間変化は可動部の傾斜動作に対して重畳される高周波によるもので、この高周波は次のような方法で打ち消しを行っている。
【0004】
例えば、2つの駆動信号により可動部の傾斜動作に対して重畳されるそれぞれの高周波に対し、駆動信号の立ち上がりと立下がりとのシンメトリ比を変え、2つの駆動信号間の位相差を調整するという設定の変更を行うことで高周波を打ち消す。
【0005】
また、特許文献1には、可動部の傾斜振れ角を示す傾斜振れ角情報を検知し、検知した傾斜振れ角の、目標傾斜振れ角に対する変化量が小さくなるように、駆動信号の振幅、位相差を補正する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、駆動信号に対する設定の変更により高周波を打ち消す場合、設定変更時など可動部で弾性振動が別途発生し、その弾性振動が収まるまで調整処理時間を要するといった問題がある。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、弾性振動の調整処理時間を短縮することが可能な可動装置、光偏向装置、画像投影装置、移動体およびヘッドマウントディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる可動装置は、反射部と、前記反射部にそれぞれの傾きを与える一対の可動部と、前記一対の可動部に前記傾きを与える駆動信号を入力する制御部と、を有し、前記制御部は、前記一対の可動部にそれぞれ入力する前記駆動信号の立ち上がり比と駆動信号間の位相差とを変数とする前記駆動信号を生成する駆動信号生成部と、前記駆動信号生成部が生成した前記駆動信号による駆動で検知される前記可動部の振れ角に対応する信号から高周波成分を抽出する高周波成分抽出部と、前記駆動信号の前記変数の値と前記高周波成分とを紐づけて格納するメモリ部と、前記メモリ部に格納された前記高周波成分に基づいて、前記駆動信号を更新する前記変数の値の組み合わせを選択する駆動信号選択部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、弾性振動の調整処理時間を短縮することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1駆動部が片持ちタイプである可動装置の平面図である。
図2図2は、図1の可動装置の第2軸に沿った断面図である。
図3図3は、第1駆動部が両持ちタイプである可動装置の平面図である。
図4図4は、可動装置の第2駆動部の駆動を模式的に表した模式図である。
図5図5は、可動装置の圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧の波形の一例を示す図である。
図6図6は、反射面の第2軸周りの可動速度が一定(均一)である場合の反射面の第2軸周りの振れ角の時間変化の一例を示す図である。
図7図7は、反射面の第2軸周りの可動速度が一定(均一)である場合の投影画像の一例を示す図である。
図8図8は、反射面の第2軸周りの可動速度が一定(均一)ではない場合の反射面の第2軸周りの振れ角の時間変化の一例を示す図である。
図9図9は、可動速度が均一でない場合の投影画像の一例を示す図である。
図10図10は、駆動電圧A、Bともに単純なノコギリ波で駆動させた場合の反射面の振れ角の挙動の一例を示す図である。
図11図11は、駆動電圧A、B単独で駆動させた場合の反射面の振れ角の挙動の一例を示す図である。
図12図12は、駆動電圧Bのシンメトリを変えて単独駆動させた際の反射面の振れ角の挙動の一例を示す図である。
図13図13は、反射面の可動速度を一定に制御する駆動電圧Aと駆動電圧Bの位相関係の一例を示す図である。
図14図14は、可動装置の検知部の構成の一例を示す平面図である。
図15図15は、位相差、シンメトリ、およびリニアリティ値の関係の一例を示した図である。
図16図16は、図15に対して線分AB間におけるリニアリティ値との関係の一例を示した図である。
図17図17は、可動装置の制御システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
図18図18は、位相差とシンメトリとの組み合わせの最適設定を探索する処理の一例を示す図である。
図19図19は、制御装置が駆動信号のシンメトリと駆動信号間の位相差の設定変更を行う処理の一例を示すフロー図である。
図20図20は、第2の実施の形態にかかる可動装置の制御システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
図21図21は、位相差とシンメトリとの組み合わせの最適設定を探索する処理の一例を示す図である。
図22図22は、ひし型形状の場合の最適設定の探索処理の一例を示す図である。
図23図23は、制御装置が駆動信号のシンメトリと駆動信号間の位相差の設定変更を行う処理の一例を示すフロー図である。
図24図24は、可動装置の電源ONから電源OFFまでの全体フローの一例を示す図である。
図25図25は、光偏向装置の一例の構成を示す概略図である。
図26図26は、光偏向装置10の一例のハードウェア構成図である。
図27図27は、光偏向装置の制御装置の一例の機能ブロック図である。
図28図28は、光偏向装置の処理の一例のフローチャートである。
図29図29は、画像投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイ装置を搭載した車両の概略図である。
図30図30はヘッドアップディスプレイ装置の一例の概略図である。
図31図31は、HMDの外観を例示する斜視図である。
図32図32は、HMDの構成を部分的に例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、可動装置、光偏向装置、画像投影装置、移動体およびヘッドマウントディスプレイの実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
以下において第1駆動部と第2駆動部が「可動部」に相当する。
【0013】
(可動装置の構成)
図1および図2は、第1の実施の形態にかかる可動装置の構成の一例を示す図である。図1は、第1駆動部が片持ちタイプである可動装置の平面図である。図2は、図1の可動装置の第2軸に沿った断面図である。また、図3は、第1駆動部が両持ちタイプである可動装置の平面図である。まず図1図2を参照して可動装置の構成について説明する。
【0014】
可動装置13は、反射部101と、第1駆動部110a、110bと、第1支持部120と、第2駆動部130a、130bと、第2支持部140と、電極接続部150とを有し、電極接続部150を介して制御装置により駆動される。一例として可動装置13は、MEMS(Micro Electromechanical Systems)である。
【0015】
反射部101は、、入射した光を反射する。第1駆動部110a、110bは、反射部101に接続され、反射部101をY軸に平行な第1軸周りに駆動する。第1支持部120は、反射部101および第1駆動部を支持する。
【0016】
第2駆動部130a、130bは、第1支持部120に接続され、反射部101および第1支持部120をX軸に平行な第2軸周りに駆動する。図1の例において第2駆動部130aと第2駆動部130bは、それぞれ、折り返すように連結された複数の第2圧電駆動部131a~131f、132a~132fから構成されたミアンダ構造を有する。
【0017】
第2支持部140は、第2駆動部を支持する。電極接続部150は、第1駆動部および第2駆動部に電気的に接続されている。
【0018】
可動装置13は、例えば、1枚のSOI(Silicon On Insulator)基板をエッチング処理等により成形し、成形した基板上に反射面14や第1圧電駆動部112a、112b、第2圧電駆動部131a~131f、第2圧電駆動部132a~132f、電極接続部150等を形成することで、各構成部が一体的に形成されている。なお、上記の各構成部の形成は、SOI基板の成形後に行ってもよいし、SOI基板の成形中に行ってもよい。
【0019】
SOI基板は、単結晶シリコン(Si)からなる第1のシリコン層の上に酸化シリコン層162が設けられ、その酸化シリコン層の上にさらに単結晶シリコンからなる第2のシリコン層が設けられている基板である。以降、第1のシリコン層をシリコン支持層161、第2のシリコン層をシリコン活性層163とする。
【0020】
シリコン活性層163は、X軸方向またはY軸方向に対してZ軸方向への厚みが小さいため、シリコン活性層163で構成された部材は、弾性を有する弾性部としての機能を有する。
【0021】
なお、SOI基板は、必ず平面状である必要はなく、曲率等を有していてもよい。また、エッチング処理等により一体的に成形でき、部分的に弾性を持たせることができる基板であれば可動装置13の形成に用いられる部材はSOI基板に限られない。
【0022】
反射部101は、例えば、円形状の反射部基体102と、反射部基体102の+Z側の面上に形成された反射面14とから構成される。反射部基体102は、例えば、シリコン活性層163から構成される。反射面14は、例えば、アルミニウム、金、銀等を含む金属薄膜で構成される。また、反射部101は、反射部基体102の-Z側の面に反射部補強用のリブが形成されていてもよい。リブは、例えば、シリコン支持層161および酸化シリコン層162から構成され、可動によって生じる反射面14の歪みを抑制することができる。
【0023】
第1駆動部110a、110bは、反射部基体102に一端が接続し、第1軸方向にそれぞれ延びて反射部101を可動可能に支持する2つのトーションバー111a、111bと、一端がトーションバーに接続され、他端が第1支持部120の内周部に接続される第1圧電駆動部112a、112bとから構成される。
【0024】
トーションバー111a、111bはシリコン活性層163から構成される。また、第1圧電駆動部112a、112bは、弾性部であるシリコン活性層163の+Z側の面上に下部電極171、圧電部172、上部電極173の順に形成されて構成される。上部電極173および下部電極171は、例えば金(Au)または白金(Pt)等から構成される。圧電部172は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。
【0025】
第1支持部120は、例えば、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163から構成され、反射部101を囲うように形成された矩形形状の支持体である。
【0026】
第2駆動部130a、130bは、それぞれ、第2圧電駆動部131a~131f、132a~132fから構成されており、第2駆動部130a、130bの一端は第1支持部120の外周部に接続され、他端は第2支持部140の内周部に接続されている。このとき、第2駆動部130aと第1支持部120の接続箇所および第2駆動部130bと第1支持部120の接続箇所、さらに第2駆動部130aと第2支持部140の接続箇所および第2駆動部130bと第2支持部140の接続箇所は、反射面14の中心に対して点対称となっている。
【0027】
第2駆動部130a、130bは、弾性部であるシリコン活性層163の+Z側の面上に下部電極171、圧電部172、上部電極173の順に形成されて構成される。上部電極173および下部電極171は、例えば金(Au)または白金(Pt)等から構成される。圧電部172は、例えば、圧電材料であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる。
【0028】
第2支持部140は、例えば、シリコン支持層161、酸化シリコン層162、シリコン活性層163から構成され、反射部101、第1駆動部110a、110b、第1支持部120および第2駆動部130a、130bを囲うように形成された矩形の支持体である。
【0029】
電極接続部150は、例えば、第2支持部140の+Z側の面上に形成され、第1圧電駆動部112a、112b、第2圧電駆動131a~131f、132a~132fの各上部電極173および各下部電極171、および制御装置11にアルミニウム(Al)等の電極配線を介して電気的に接続されている。なお、上部電極173または下部電極171は、それぞれが電極接続部150と直接接続されていてもよいし、電極同士を接続する等により間接的に接続されていてもよい。
【0030】
なお、本実施の形態では、圧電部172が弾性部であるシリコン活性層163の一面である+Z側の面に形成された場合を一例として説明したが、弾性部の他の面である-Z側の面などに設けても良いし、弾性部の一面および他面の双方に設けても良い。
【0031】
また、反射部101を第1軸周りまたは第2軸周りに駆動可能であれば、各構成部の形状は実施の形態の形状に限定されない。例えば、トーションバー111a、111bや第1圧電駆動部112a、112bが曲率を有した形状を有していてもよい。
【0032】
さらに、第1駆動部110a、110bの上部電極173の+Z側の面上、第1支持部120の+Z側の面上、第2駆動部130a、130bの上部電極173の+Z側の面上、第2支持部の+Z側の面上の少なくともいずれかに酸化シリコン膜からなる絶縁層が形成されていてもよい。このとき、絶縁層の上に電極配線を設け、また、上部電極173または下部電極171と電極配線とが接続される接続スポットのみ、開口部として部分的に絶縁層を除去または絶縁層を形成しないことにより、第1駆動部110a、110b、第2駆動部130a、130bおよび電極配線の設計自由度をあげ、さらに電極同士の接触による短絡を抑制することができる。また、酸化シリコン膜は、反射防止材としての機能も有する。
【0033】
[可動装置の制御]
第1駆動部110a、110b、第2駆動部130a、130bが有する圧電部172は、分極方向に正または負の電圧が印加されると印加電圧の電位に比例した変形、例えば、伸縮が生じ、いわゆる逆圧電効果を発揮する。第1駆動部110a、110b、第2駆動部130a、130bは、上記の逆圧電効果を利用して反射部101を可動させる。
【0034】
このとき、反射部101の反射面14がXY平面に対して+Z方向または-Z方向へ傾いたときのXY平面と反射面14により成す角度を、振れ角とよぶ。このとき、+Z方向を正の振れ角、-Z方向を負の振れ角とする。
【0035】
まず、制御装置11による第1駆動部110a、110bの駆動について説明する。制御装置11は、第1駆動部110a、110bに駆動電圧を印加して制御する。第1駆動部110a、110bでは、第1圧電駆動部112a、112bが有する圧電部172に、上部電極173および下部電極171を介して駆動電圧が並列に印加されると、それぞれの圧電部172が変形する。この圧電部172の変形による作用により、第1圧電駆動部112a、112bが屈曲変形する。その結果、2つのトーションバー111a、111bのねじれを介して反射部101に第1軸周りの駆動力が作用し、反射部101が第1軸周りに可動する。
【0036】
従って、制御装置11は、第1駆動部110a、110bが有する第1圧電駆動部112a、112bに所定の正弦波形の駆動電圧を並行して印加することで、反射部101を、第1軸周りに所定の正弦波形の駆動電圧の周期で可動させることができる。
【0037】
例えば、正弦波形電圧の周波数がトーションバー111a、111bの共振周波数と同程度である約20kHzに設定された場合、トーションバー111a、111bのねじれによる機械的共振が生じるのを利用して、反射部101を約20kHzで共振振動させることができる。
【0038】
なお、図1の可動装置13はトーションバー111a、111bから+X方向に向かって第一圧電駆動部112a、112bが延びる片持ちタイプの可動装置であるが、電圧印加された圧電部により反射部101を可動させる構成であれば、これに限られない。例えば、図3に示されるように、トーションバー211a、211bから+X方向に向かって延びる第一圧電駆動部212a、212bおよび-X方向に向かって延びる第一圧電駆動部212c、212dを有する両端支持の両持ちタイプの可動装置を用いてもよい。また、1軸方向のみに反射部101を可動させる他の構成としてもよい。
【0039】
(駆動原理)
次に、制御装置11による第2駆動部130a、130bの駆動原理について、図4図13を用いて説明する。ここでは、図1において第2駆動部130aが有する複数の第2圧電駆動部131a~131fのうち、最も反射部101に距離が近い第2圧電駆動部(131a)から数えて偶数番目の第2圧電駆動部、すなわち第2圧電駆動部131b、131d、131fを圧電駆動部群Aとする。また、さらに第2駆動部130bが有する複数の第2圧電駆動部132a~132fのうち、最も反射部101に距離が近い第2圧電駆動部(132a)から数えて奇数番目の第2圧電駆動部、すなわち第2圧電駆動部132a、132c、132eを同様に圧電駆動部群Aとする。また、第2駆動部130aが有する複数の第2圧電駆動部131a~131fのうち、最も反射部101に距離が近い第2圧電駆動部(131a)から数えて奇数番目の第2圧電駆動部、すなわち第2圧電駆動部131a、131c、131eを圧電駆動部群Bとする。また、さらに第2駆動部130bが有する複数の第2圧電駆動部132a~132fのうち、最も反射部101に距離が近い第2圧電駆動部(132a)から数えて偶数番目の第2圧電駆動部、すなわち、132b、132d、132fを同様に圧電駆動部群Bとする。
【0040】
制御装置11は、駆動電圧を印加して第2駆動部130a、130bを駆動する。一例として第2駆動部130bを例に説明を行う。第2駆動部130bにおいて圧電駆動部群Aと圧電駆動部群Bが「一対の可動部」に相当する。これら圧電駆動部群Aと圧電駆動部群Bが反射部101に傾きを与えるように動作する。ここでは説明を省略するが第2駆動部130aについても同様である。
【0041】
図4は、可動装置13の第2駆動部130bの駆動を模式的に表した模式図である。点線で表されているのは反射部101の反射面14等である。図4(i)に示されるように、第2駆動部130bの圧電駆動部群Aおよび圧電駆動部群Bに駆動電圧が印加されていない状態では、第2駆動部130bによる振れ角はゼロである。
【0042】
圧電駆動部群Aは、駆動電圧が並行に印加されると、図4(ii)に示すように、圧電駆動部群Aが同一方向に屈曲変形し、反射部101が-Z方向に第2軸周りに可動する。
【0043】
圧電駆動部群Bは、駆動電圧が並行に印加されると、図4(iv)に示すように、圧電駆動部群Bが同一方向に屈曲変形し、反射部101が+Z方向に第2軸周りに可動する。
【0044】
図4(ii)、(iv)に示されるように、第2駆動部130aまたは130bでは、圧電駆動部群Aが有する複数の圧電部172または圧電駆動部群Bが有する複数の圧電部172を同時に屈曲変形させることにより、屈曲変形による可動量を累積させ、反射部101(反射面14)の第2軸周りの振れ角度を大きくすることができる。例えば、図1に示されるように、第2駆動部130a、130bが、第1支持部120の中心点に対して点対称で第1支持部120に接続されている。そのため、圧電駆動部群Aに駆動電圧を印加すると、第2駆動部130aでは第1支持部120と第2駆動部130aの接続部に+Z方向に動かす駆動力が生じ、第2駆動部130bでは第1支持部120と第2駆動部130bの接続部に-Z方向に動かす駆動力が生じ、可動量が累積されて反射部101(反射面14)の第2軸周りの振れ角度を大きくすることができる。
【0045】
また、図4(iii)に示されるように、電圧印加による圧電駆動部群Aによる反射部101の可動量と電圧印加による圧電駆動群Bによる反射部101の可動量が釣り合っている時は、振れ角はゼロとなる。
【0046】
図4(ii)~図4(iv)を連続的に繰り返すように第2圧電駆動部131a~131f、132a~132fに駆動電圧を印加することにより、反射部101を第2軸周りに駆動させることができる。
【0047】
(駆動電圧A、B)
次に、圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧(以下、駆動電圧Aとする)、圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧(以下、駆動電圧Bとする)について、図5を用いて説明する。
【0048】
図5(a)は、可動装置13の圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧Aの波形の一例である。図5(b)は、可動装置13の圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧の波形Bの一例である。図5(c)は、駆動電圧Aの波形と駆動電圧Bの波形を重ね合わせた図である。
【0049】
図5(a)に示されるように、圧電駆動部群Aに印加される駆動電圧Aは、例えば、ノコギリ波状の波形の駆動電圧であり、周波数は、例えば60HZである。また、駆動電圧Aの波形は、電圧値が極小値から次の極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をTrA、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をTfAとしたとき、例えば、TrA:TfA=9:1となる比率があらかじめ設定されている。このとき、一周期に対するTrAの比率を駆動電圧Aのシンメトリという。
【0050】
図5(b)に示されるように、圧電駆動部群Bに印加される駆動電圧Bは、例えば、ノコギリ波状の波形の駆動電圧であり、周波数は、例えば60HZである。また、駆動電圧Bの波形は、電圧値が極小値から次の極大値まで増加していく立ち上がり期間の時間幅をTrB、電圧値が極大値から次の極小値まで減少していく立ち下がり期間の時間幅をTfBとしたとき、例えば、TfB:TrB=9:1となる比率があらかじめ設定されている。このとき、一周期に対するTfBの比率を駆動電圧Bのシンメトリという。また、図5(c)に示されるように、例えば、駆動電圧Aの波形の周期TAと駆動電圧Bの波形の周期TBは、同一となるように設定されている。
【0051】
なお、上記の駆動電圧Aおよび駆動電圧Bのノコギリ波状の波形は、正弦波の重ね合わせによって生成される。
【0052】
また、この例では、駆動電圧A、Bとしてノコギリ波状の波形の駆動電圧を用いているが、これに限らず、ノコギリ波状の波形の頂点を丸くした波形の駆動電圧や、ノコギリ波状の波形の直線領域を曲線とした波形の駆動電圧など、可動装置13のデバイス特性に応じて波形を変えることも可能である。
【0053】
(振れ角の時間変化と高周波成分との関係)
次に、図6図9を参照して、可動装置13の反射面14の第2軸周りの可動速度、すなわち反射面14の第2軸周りの振れ角の時間変化について説明する。
【0054】
図6は、反射面14の第2軸周りの可動速度が一定(均一)である場合の反射面14の第2軸周りの振れ角の時間変化を示す図である。図7は、反射面14の第2軸周りの可動速度が一定(均一)である場合の投影画像を示しており、反射面14の第1軸、第2軸とも可動速度が一定であり、走査動作が適切であることを示している。なお、本実施の形態では、反射面14の可動動作範囲に対して、内側を有効画像領域として使用する。
【0055】
図8は、反射面14の第2軸周りの可動速度が一定(均一)ではない場合の反射面14の第2軸周りの振れ角の時間変化を示す図である。このように可動速度が均一でない場合は、図9に示されるように投影画像には疎密となる箇所で明暗の差が発生し、明るさムラとなる。従って、反射部101の第2軸周りの可動速度に変動が生じた場合は、直線的な光走査が妨げられ、例えば、被走査面に形成される画像に輝度ムラ、歪みなどが発生し、画質の劣化を招くことになる。
【0056】
反射面14の第2軸周りの振れ角の時間変化、すなわち反射面14の第2軸周りの可動速度は、図6に示されるように直線的であることが望ましい。つまり、反射部101の第2軸周りの可動速度に変動が生じないことが望ましい。この直線性のことをリニアリティと呼び、リニアリティ値が低いほどより直線性がよく、明るさムラが低減する。リニアリティと明るさムラとには相関関係がある。しかしながら、実際には、図8に示されるように、第2駆動部130a、130bによる反射部101の第2軸周りの可動動作においては、振れ角の可動速度に変動が生じてしまう。
【0057】
この変動は第2支持部140と駆動部130a、130bとを支持する弾性部に生じる弾性振動によって、振れ角に対し、高周波成分が重畳してしまうことが原因の1つであると考えられる。
【0058】
本実施の形態では、弾性部の弾性振動により重畳する高周波成分を抑制し、可動速度が均一となるように駆動電圧を制御する。図10図13を参照して、駆動電圧の制御により反射部101の可動速度の均一性が向上する理由について詳細に説明する。
【0059】
図10は、駆動電圧A、Bともに単純なノコギリ波で駆動させた場合の反射面の振れ角の挙動を示す図である。図10に示されるように、駆動電圧は重畳している高周波成分の影響を受けるため、可動速度が変動し、反射面の可動速度が不均一となってしまう。
【0060】
図11は、駆動電圧A、B単独で駆動させた場合の反射面の振れ角の挙動を示す図である。なお、駆動電圧A、B共に駆動させた時の反射面の振れ角は単独駆動させた時の(反射面の振れ角A)-(反射面の振れ角B)とおおよそ等しい挙動となる。
【0061】
次に駆動電圧Bのシンメトリを変えて単独駆動させた際の反射面の振れ角の挙動について説明する。
【0062】
図12は、駆動電圧Bのシンメトリを変えて単独駆動させた際の反射面の振れ角の挙動を示す図である。図12に示されるように、駆動電圧Bにおける立下り区間(走査区間)の電圧傾斜が緩やかになるほど、高周波の振幅は小さくなる。そこで、駆動電圧Aは変更せずに、駆動電圧Aにより発生した高周波の振幅と駆動電圧Bにより発生する高周波振幅とが一致するように駆動電圧Bのシンメトリを変更する。
【0063】
図13は、反射面の可動速度を一定に制御する駆動電圧Aと駆動電圧Bの位相関係を示す図である。図13に示されるように駆動電圧Aと駆動電圧Bとで発生する高周波がちょうど逆位相となるように駆動電圧AとBとの位相差を調整する。
【0064】
(高周波成分を抑制する可動装置の実施例)
図14は、可動装置の検知部の構成の一例を示す平面図である。図14に示される可動装置13は、第2駆動部130aと接触せずに若干の隙間を有し平行に配置される検知部140aと、第2駆動部130bと接触せずに若干の隙間を有し平行に配置される検知部140bとを有する。具体的に、検知部140aと140bは図14に示されるようにミアンダ構造の内側に配置され、ミアンダ段数に応じた数が配置されている。各検知部141a~141f、142a~142fは、各第2圧電駆動部131a~131f、第2圧電駆動部132a~132fに対してそれぞれ幅が狭く、長さはほぼ等しく長方形型である。
【0065】
検知部140aと140bの層構成は駆動部130a、130bの層構成と同一である。これにより、検知部140a、140bから第2軸に対する反射面14の振れ角の可動動作位置の情報を検知する。
【0066】
検知部140aと140bからの反射面14の振れ角の可動動作位置情報を用いることで、実際の反射面14の振れ角の可動動作に置き換えることができ、検知した位置情報から不均一な可動速度を補正するように駆動電圧の波形を制御することも可能である。
【0067】
図15および図16は、対となる駆動信号間の位相差、シンメトリ(一方の駆動信号のシンメトリを固定としたときのもう一方の駆動信号のシンメトリ)、およびリニアリティ値の関係を示した図である。図16は、図15に対して線分AB間におけるリニアリティ値との関係を示している。図15に示されるように、二次元座標軸における第一軸方向(以下便宜的にX軸方向とする)を位相差とし、第二軸方向(以下便宜的にY軸方向とする)をシンメトリとした時に、図16に示されるようにリニアリティは、リニアリティ値が最も小さくなる位相差とシンメトリとの組み合わせに向けて単調減少となる傾向となる。
【0068】
(可動装置の制御システム)
図17は、可動装置13の制御システムの概略構成の一例を示すブロック図である。図17に示されるように、可動装置13は制御装置11の制御を受けて駆動する。制御装置11は、駆動信号生成部A211-1、駆動信号生成部B211-2、駆動部A210-1、駆動部B210-2、高周波成分取出部212、メモリ部213、設定変更回数カウンタ部214-1、設定算出部214-2、および高周波成分比較部214-3を有する。
【0069】
ここで、「信号生成部」は駆動信号生成部A211-1、駆動信号生成部B211-2に相当し、「高周波成分抽出部」は高周波成分取出部212に相当し、「メモリ部」はメモリ部213に相当し、「駆動信号選択部」は設定変更回数カウンタ部214-1、設定算出部214-2、および高周波成分比較部214-3に相当する。
【0070】
駆動信号生成部A211-1は駆動部A210-1に駆動情報を出力し、駆動部A210-1が駆動情報を基に可動装置13の圧電駆動部群Aに対し駆動信号を出力する。
【0071】
また、駆動信号生成部B211-2は駆動部B210-2に駆動情報を出力し、駆動部B210-2が駆動情報を基に可動装置13の圧電駆動部群Bに対し駆動信号を出力する。
【0072】
可動装置13は入力された駆動信号に従い、駆動する。その時、可動装置13からは反射面14の可動動作情報である検知情報が出力され、高周波成分取出部212へと入力される。高周波成分取出部212では高周波成分の振幅を取り出し、メモリ部213へ出力する。このとき設定算出部214-2において現時点での設定パラメータである「シンメトリ」と「位相差」との2変数の値と紐づけたデータとして設定変更回数カウンタ部214-1からのカウンタ数もメモリ部213へ合わせて格納する。
【0073】
設定変更回数カウンタ部214-1にて設定変更回数をカウントし、規定回数に到達すると、高周波成分比較部214-3に規定回数に到達したことを示す信号を出力する。
【0074】
規定回数に到達したことを示す信号を受けると、高周波成分比較部214-3では規定回数分の高周波成分の振幅データをメモリ部213から読み出し、その中で高周波成分の振幅が最小となる設定パラメータ(位相差、シンメトリ)を算出する。
【0075】
設定算出部214-2では予め決めた順番に従い、設定パラメータ(位相差、シンメトリ)を変更していく。設定変更回数カウンタ部214-1からの規定回数に到達したことを示す信号が入力されると、高周波成分比較部214-3により算出された高周波成分の振幅が最小となる設定パラメータ(位相差、シンメトリ)を使い、設定パラメータが更新される。このときにメモリ部213のデータと設定変更回数カウンタ部214-1のカウント数がリセットされる。再び予め決めた順番に従い、更新された設定パラメータ(位相差、シンメトリ)に従い、変更していく。
【0076】
設定算出部214-2より算出された設定パラメータ(位相差とシンメトリ)は駆動信号生成部B211-2へ入力される。入力されたシンメトリ、位相差を元に駆動信号生成部B211-2では駆動情報を更新し、駆動部B210-2へと出力し、駆動波形を制御する。
【0077】
ここでは一例として駆動部B側に対して駆動情報を更新したが、駆動部A側に対する駆動情報の更新でもよく、また駆動部A、B両方の駆動情報を更新させてもよい。
【0078】
図18は、対となる駆動信号間の位相差とシンメトリ(一方の駆動信号のシンメトリを固定としたときのもう一方の駆動信号のシンメトリ)との組み合わせの最適設定を探索する処理の一例を示す図である。まず、図18に示されるようにp1の座標(以下、位置と言う)を囲むようにp1の位置を基準(中心)として左右で等間隔となり、また上下でも等間隔となるようにp2~p9の位相差とシンメトリとの組み合わせ位置を決める。
【0079】
次にp1~p9まで位相差とシンメトリとの設定値を順々に変更し、各点でのリニアリティ値を測定する。測定したp1~p9でリニアリティが最も小さい値となったp(minimum)、この例ではp(4)、の位置を囲むように、p(minimum)の位置を中心として、最初に等間隔にした左右の半分の間隔、また上下の半分の間隔となるように新たにp2’~p9’までの組み合わせを決める。
【0080】
次に、同様にしてp1’~p9’まで位相差とシンメトリとの設定値を順々に変更し、各点でのリニアリティ値を測定する。測定したp’1~p’9でリニアリティが最も小さい値となったp(minimum)’を中心として、左右のさらに半分の間隔、また上下のさらに半分の間隔となるように新たに位相差とシンメトリの組み合わせ位置を決める。この処理を繰り返すことで最適設定を導き出すことができる。この例ではp1~p9の9点を挙げたが、複数点であれば9点でなくてもよい。
【0081】
図19は、制御装置11が駆動信号のシンメトリと駆動信号間の位相差の設定変更を行う処理の一例を示すフロー図である。以下においてMEMSは可動装置に相当する。
【0082】
まず、制御装置11は初期設定を行う(S1)。一例として、p1~p9の9点とする場合、制御装置11はstep数を9(p1~p9)に設定し、探索数を2回に設定し、高周波振幅閾値を投影画像に明るさムラとして認識されないリニアリティ値で設定し、そして開始設定となる位相差とシンメトリを設定する。
【0083】
続いて、制御装置11はstepにおけるpX(p1~p9)の位相差とシンメトリ設定を準備(更新)する(S2)。
【0084】
続いて、制御装置11はstepカウンタをリセットし、さらにメモリ部213の格納データをリセットする(S3)。一例では、stepカウンタは1、2、3・・・とカウンタが進み、9になると1に戻る。
【0085】
続いて、制御装置11は現step数(p1~9)によってMEMSの駆動設定(位相差、シンメトリ)を選択する(S4)。
【0086】
続いて、制御装置11はS4での設定に従いMEMSを駆動する(S5)。
【0087】
続いて、制御装置11はMEMSミラーよりミラー振れ角をトレースした検知信号に重畳する高周波振幅を取得する(S6)。
【0088】
続いて、制御装置11はS6で取得した高周波振幅とstep回数と紐づけてメモリ部213へ格納する(S7)。
【0089】
続いて、制御装置11はstep更新回数がstep数に到達したかを判定する(S8)。
【0090】
続いて、制御装置11はstep更新回数がstep数に到達していないので、step更新回数を+1にインクリメントし、S4へ遷移する(S9)。
【0091】
続いて、制御装置11は、step更新回数がstep数に到達したため、メモリへ格納した高周波振幅が最小となるMEMS駆動設定(位相差、シンメトリ)を最適設定とする(S10)。
【0092】
続いて、制御装置11はS10で求めた高周波振幅最小がS1で設定した高周波振幅よりも小さいか判定する(S11)。制御装置11は、設定した高周波振幅閾値よりも小さければ、明るさムラとして認識されないことになるので、最適設定を最終設定として処理を終了する。
【0093】
続いて、制御装置11は、高周波振幅が閾値よりも大きいので、探索回数とS1で設定した探索数とを比較する(S12)。制御装置11は、設定した探索数に到達していれば、最適設定を最終設定として処理を終了する。
【0094】
続いて、制御装置11は、探索回数が設定した探索数に到達していないので、探索回数を+1にインクリメントし、S2へ遷移する(S13)。
【0095】
以上のように、第1の実施の形態にかかる可動装置13は、第2支持部140と駆動部130a、130bとを支持する弾性部に生じる弾性振動の高周波成分を抑制し、可動速度が均一となるように駆動電圧を制御する。これにより、設定変更に伴い発生する弾性振動の調整処理時間を短縮することが可能になる。
【0096】
(第2の実施の形態)
図20は、第2の実施の形態にかかる可動装置の制御システムの概略構成を示すブロック図である。図20に示される制御装置11は、駆動信号生成部A211-1、駆動信号生成部B211-2、駆動部A210-1、駆動部B210-2、高周波成分取出部212、メモリ部213、設定変更回数カウンタ部214-1、設定算出部214-2、内分点算出部251および最適設定算出部252を有する。第1の実施の形態の実施例と同様に、各駆動信号生成部(駆動信号生成部A211-1、駆動信号生成部B211-2)から各駆動部(駆動部A210-1、駆動部B210-2)へ駆動情報を入力し、駆動情報に基づき各駆動部(駆動部A210-1、駆動部B210-2)から可動装置13に駆動信号が出力される。可動装置13は入力された駆動信号に従い、駆動する。可動装置13からは反射面の可動動作情報である検知情報が出力され、高周波成分取出部212へと入力される。高周波成分取出部212は高周波成分の振幅を取り出してメモリ部213へ出力する。
【0097】
ここで、「駆動信号選択部」は設定変更回数カウンタ部214-1、設定算出部214-2、内分点算出部251および最適設定算出部252に相当する。
【0098】
第2の実施の形態では、高周波成分の振幅をメモリ部213へ格納する際に、設定算出部214-2において現時点での設定パラメータ(シンメトリ、位相差)と紐づけたデータとして設定変更回数カウンタ部214-1からのカウンタ数もメモリ部213へ合わせて格納する。
【0099】
設定変更回数カウンタ部214-1は、設定変更回数をカウントし、規定回数に到達すると、内分点算出部251に規定回数に到達したことを示す信号を出力する。
【0100】
規定回数に到達したことを示す信号を受けると、内分点算出部251は規定回数分の高周波成分の振幅データをメモリ部か502ら読み出し、設定パラメータ位置におけるリニアリティ値と隣接する設定パラメータ位置におけるリニアリティ値から内分点を算出する。
【0101】
算出された内分点は最適設定算出部252へ入力され、内分点同士を線で結んだ交点を最適設定パラメータとする。この最適設定パラメータを使い、設定算出部214-2が設定パラメータを更新する。このときにメモリ部213のデータと設定変更回数カウンタ部214-1のカウント数をリセットする。更新された設定パラメータ(位相差とシンメトリ)を駆動信号生成部B211-2へ出力する。入力されたシンメトリ、位相差を元に駆動信号生成部B211-2では駆動情報を更新し、駆動部B210-2へと出力し、駆動波形を制御する。
【0102】
ここでは一例として駆動部B側に対して駆動情報を更新したが、駆動部A側に対する駆動情報の更新でもよく、また駆動部A、B両方の駆動情報を更新させてもよい。
【0103】
図21は、対となる駆動信号間の位相差とシンメトリ(一方の駆動信号のシンメトリを固定としたときのもう一方の駆動信号のシンメトリ)との組み合わせの最適設定を探索する処理の一例を示す図である。まず、図21に示されるように四角形p1~p4の位相差とシンメトリとの組み合わせ位置を決める。次にp1~p4まで位相差とシンメトリとの設定値を順々に変更し、各点でのリニアリティ値(l1~l4)を測定する。
【0104】
次に、測定したp1~p4のリニアリティ値において隣接する位置同士(p1とp2、p2とp3、p3とp4、p4とp1)から内分点を求める。
【0105】
p(n)におけるリニアリティ値をl(n)とすると、p1とp2との内分点n12=p1+l1/(l1+l2)となる。このようにして各内分点を求めると、以下で表させる。
【0106】
n23=p2+l2/(l2+l3)
【0107】
n34=p4+l4/(l4+l3)
【0108】
n41=p1+l1/(l1+l4)
【0109】
ここで対面の内分点同士を線で結び、内分点同士の線同士が交差する点を最適位置として決める。これにより、4点でのリニアリティ測定することで最適位置を推定することができる。このため、順々にリニアリティを比較して最適位置を探索していく方法と比べて探索時間を短縮することができる。さらに、最適位置を中心として再度4点を更新し、処理を繰り返すことでより確度の高い最適設定を導きだすことができる。
【0110】
なお、4点は一例であり、4点に限らず複数点であればよい。
【0111】
また、ここでは長方形側を例に挙げたが、これに限定されない。例えば図22のような形状でもよい。
【0112】
図22は、ひし型形状の場合の最適設定の探索処理の一例を示す図である。このひし形形状のように位相差とシンメトリを同時に変更させても同様の処理を行うことができる。
【0113】
図23は、制御装置11が駆動信号のシンメトリと駆動信号間の位相差の設定変更を行う処理の一例を示すフロー図である。まず、制御装置11は初期設定を行う(S21)。一例として、制御装置11はstep数を4(p1~p4)に設定し、探索数を1回に設定し、高周波振幅閾値を投影画像に明るさムラとして認識されないリニアリティ値で設定し、そして開始設定となる位相差とシンメトリを設定する。
【0114】
続いて、制御装置11はstepにおけるpX(p1~p4)の位相差とシンメトリ設定を準備(更新)する(S22)。
【0115】
続いて、制御装置11はstepカウンタをリセットする(S23)。一例ではstepカウンタは1~4でカウンタが進み、4になると1に戻る。
【0116】
続いて、制御装置11は現step数(p1~4)によってMEMS駆動設定(位相差、シンメトリ)を選択する(S24)。
【0117】
続いて、制御装置11はS24での設定に従いMEMS駆動する(S25)。
【0118】
続いて、制御装置11はMEMSミラーよりミラー振れ角をトレースした検知信号に重畳する高周波振幅を取得する(S26)。
【0119】
続いて、制御装置11はS26で取得した高周波振幅とstep回数と紐づけてメモリへ格納する(S27)。
【0120】
続いて、制御装置11はstep更新回数がstep数に到達したかを判定する(S28)。
【0121】
続いて、制御装置11はstep更新回数がstep数に到達していないので、step更新回数を+1にインクリメントし、S24へ遷移する(S29)。
【0122】
続いて、制御装置11はstep更新回数がstep数に到達したため、隣接するstepにおける高周波振幅値の比率から内分点を算出し、算出した内分点において対面する内分点と線(内分線)を結び、内分線同士の交点をMEMS駆動設定(位相差、シンメトリ)の最適設定とする(S30)。
【0123】
続いて、制御装置11はS30で求めたMEMS駆動設定を用いてMEMSを駆動する(S31)。
【0124】
続いて、制御装置11はMEMSミラーよりミラー振れ角をトレースした検知信号に重畳する高周波振幅を取得する(S32)。
【0125】
続いて、制御装置11はS32で求めた最適設定における高周波振幅がS1で設定した高周波振幅よりも小さいか判定する(S33)。この判定により、設定した高周波振幅閾値よりも小さければ、明るさムラとして認識されないことになるので、最適設定を最終設定として処理を終了する。
【0126】
続いて、制御装置11は高周波振幅が閾値よりも大きいので、探索回数とS1で設定した探索数とを比較する(S34)。設定した探索数に到達していれば、最適設定を最終設定として処理を終了する。
【0127】
続いて、制御装置11は探索回数が設定した探索数に到達していないので、探索回数を+1にインクリメントし、S22へ遷移する(S35)。
【0128】
図24は、可動装置の電源ONから電源OFFまでの全体フローの一例を示す図である。まず、制御装置11は電源投入後、初期設定を行う(S41)。制御装置11は初期設定でMEMS駆動周波数設定と、予め決められたレーザ光量設定とを行う。
【0129】
続いて、制御装置11はリニアリティ調整を行う(S42)。
【0130】
続いて、制御装置11は明るさムラが認識されないMEMS駆動設定を使って、レーザ点灯を開始する(S43)。
【0131】
続いて、制御装置11は投影処理を終了されるためにまずはレーザ消灯を行う(S44)。
【0132】
続いて、制御装置11はMEMS駆動を停止させ、MEMSミラーを停止し、電源OFFする(S45)。
【0133】
(第3の実施の形態)
[光偏向装置]
第3の実施の形態にかかる光偏向装置について図25図28を参照しながら詳細に説明する。なお、第3の実施の形態にかかる光偏向装置において、第1の実施の形態または第2の実施の形態にかかる可動装置13の制御システムが適用される。
【0134】
図25は、光偏向装置の一例の構成を示す概略図である。図25に示されるように、光偏向装置10は、制御装置11と、光源装置12と、反射面14を有する可動装置13とを有する。光偏向装置10は、制御装置11の制御に従って光源装置12から照射された光を反射面14により偏向することで被走査面15を光走査する。
【0135】
制御装置11は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびFPGA(Field-Programmable Gate Array)等を備えた電子回路ユニットである。可動装置13は、例えば反射面14を有し、反射面14を可動可能なMEMSデバイスである。光源装置12は、例えばレーザを照射するレーザ装置である。なお、被走査面15は、例えばスクリーンである。
【0136】
制御装置11は、取得した光走査情報に基づいて光源装置12および可動装置13の制御命令を生成し、制御命令に基づいて光源装置12および可動装置13に駆動信号を出力する。
【0137】
光源装置12は、入力された駆動信号に基づいて光源の照射を行う。可動装置13は、入力された駆動信号に基づいて反射面14を1軸方向または2軸方向の少なくともいずれかに可動させる。
【0138】
これにより、例えば、光走査情報の一例である画像情報に基づいた制御装置11の制御によって、可動装置13の反射面14を所定の範囲で2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する光源装置12からの照射光をある1軸周りに偏向して光走査することにより、被走査面15に任意の画像を投影することができる。
【0139】
次に、光偏向装置10一例のハードウェア構成について図26を用いて説明する。
図26は、光偏向装置10の一例のハードウェア構成図である。図26に示されるように、光偏向装置10は、制御装置11、光源装置12および可動装置13を備え、それぞれが電気的に接続されている。このうち、制御装置11は、CPU301、RAM302(Random Access Memory)、ROM303(Read Only Memory)、FPGA304、外部I/F305、光源装置ドライバ306、可動装置ドライバ307を備えている。
【0140】
CPU301は、ROM303等の記憶装置からプログラムやデータをRAM302上に読み出し、処理を実行して、制御装置11の全体の制御や機能を実現する中央演算装置である。
【0141】
RAM302は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の記憶装置である。
【0142】
ROM303は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の記憶装置であり、CPU301が光偏向装置10の各機能を制御するために実行する処理用プログラムやデータを記憶している。
【0143】
FPGA304は、CPU301の処理に従って、光源装置ドライバ306および可動装置ドライバ307に適した制御信号を出力する回路である。
【0144】
外部I/F305は、例えば外部装置やネットワーク等とのインタフェースである。外部装置には、例えば、PC(Personal Computer)等の上位装置、USBメモリ、SDカード、CD、DVD、HDD、SSD等の記憶装置が含まれる。また、ネットワークは、例えば車両のCAN(Controller Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット等である。外部I/F305は、外部装置との接続または通信を可能にする構成であればよく、外部装置ごとに外部I/F305が用意されてもよい。
【0145】
光源装置トライバは、入力された制御信号に従って光源装置12に駆動電圧等の駆動信
号を出力する電気回路である。
【0146】
可動装置ドライバ307は、入力された制御信号に従って可動装置13に駆動電圧等の駆動信号を出力する電気回路である。
【0147】
制御装置11において、CPU301は、外部I/F305を介して外部装置やネットワークから光走査情報を取得する。なお、CPU301が光走査情報を取得することができる構成であればよく、制御装置11内のROM303やFPGA304に光走査情報を格納する構成としてもよいし、制御装置11内に新たにSSD等の記憶装置を設けて、その記憶装置に光走査情報を格納する構成としてもよい。
【0148】
ここで、光走査情報とは、被走査面15にどのように光走査させるかを示した情報であり、例えば、光走査により画像を表示する場合は、光走査情報は画像データである。
【0149】
次に、光偏向装置10の制御装置11の機能構成について図27を用いて説明する。
図27は、光偏向装置の制御装置の一例の機能ブロック図である。これらの機能は、CPU301によるプログラムの実行、ハードウェア、またはその両方により実現される。
【0150】
図27に示されるように、制御装置11は、機能部として制御部351と駆動信号出力部352とを有する。
【0151】
制御部351は、例えばCPU301、FPGA304等により実現され、外部装置から光走査情報を取得し、光走査情報を制御信号に変換して駆動信号出力部352に出力する。例えば、制御部351は、外部装置等から画像データを光走査情報として取得し、所定の処理により画像データから制御信号を生成して駆動信号出力部352に出力する。また、制御部351は、第1の実施の形態または第2の実施の形態の構成も有する。例えば第1の実施の形態に示される駆動信号生成部A211-1、駆動信号生成部B211-2、高周波成分取出部212、メモリ部213、設定変更回数カウンタ部214-1、設定算出部214-2、および高周波成分比較部214-3を有する。
【0152】
駆動信号出力部352は、光源装置ドライバ306、可動装置ドライバ307等により実現され、入力された制御信号に基づいて光源装置12または可動装置13に駆動信号を出力する。可動装置ドライバ307は、駆動部A210-1および駆動部B210-2に相当する。
【0153】
駆動信号は、光源装置12または可動装置13の駆動を制御するための信号である。例えば、光源装置12においては、光源の照射タイミングおよび照射強度を制御する駆動電圧である。また、例えば、可動装置13においては、可動装置13の有する反射面14を可動させるタイミングおよび可動範囲を制御する駆動電圧である。
【0154】
次に、光偏向装置10が被走査面15を光走査する処理について図28を用いて説明する。図28は、光偏向装置の処理の一例のフローチャートである。
【0155】
まず制御部351は、外部装置等から光走査情報を取得する(S51)。
【0156】
続いて制御部351は、取得した光走査情報から制御信号を生成し、制御信号を駆動信号出力部352に出力する(S52)。
【0157】
続いて駆動信号出力部352は、入力された制御信号に基づいて駆動信号を光源装置12および可動装置13に出力する(S53)。
【0158】
続いて、光源装置12が入力された駆動信号に基づいて光照射を行い、可動装置13が入力された駆動信号に基づいて反射面14の可動を行う(S54)。このような光源装置12および可動装置13の駆動により、任意の方向に光が偏向され、光走査される。
【0159】
なお、上記光偏向装置10では、1つの制御装置11が光源装置12および可動装置13を制御する装置および機能を有しているが、光源装置用の制御装置および可動装置用の制御装置と、別体に設けてもよい。
【0160】
また、上記光偏向装置10では、一つの制御装置11に光源装置12および可動装置13の制御部351の機能および駆動信号出力部352の機能を設けているが、これらの機能は別体として存在していてもよく、例えば制御部351を有した制御装置11とは別に駆動信号出力部352を有した駆動信号出力装置を設ける構成としてもよい。なお、上記光偏向装置10のうち、反射面14を有した可動装置13と制御装置11により、光偏向を行う光偏向システムを構成してもよい。
【0161】
(第4の実施の形態)
[画像投影装置]
次に、画像投影装置について、図29および図30を用いて詳細に説明する。画像投影装置は、光走査により画像を投影する装置であり、例えばヘッドアップディスプレイ装置である。第4の実施の形態にかかる画像投影装置において、第1の実施の形態または第2の実施の形態にかかる可動装置13の制御システムが適用される。
【0162】
図29は、画像投影装置の一例であるヘッドアップディスプレイ装置500を搭載した車両400の概略図である。また、図30はヘッドアップディスプレイ装置500の一例の概略図である。
【0163】
図29に示されるように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、例えば、車両400のウインドシールド(フロントガラス401等)の付近に設置される。ヘッドアップディスプレイ装置500から発せられる投射光Lがフロントガラス401で反射され、観察者である運転者402に向かう。これにより、運転者402は、ヘッドアップディスプレイ装置500によって投影された画像等を虚像として視認することができる。なお、ウインドシールドの内壁面にコンバイナを設置し、コンバイナによって反射する投射光によって運転者402に虚像を視認させる構成にしてもよい。
【0164】
図30に示されるように、ヘッドアップディスプレイ装置500は、赤色、緑色、青色のレーザ光源501R、501G、501Bからレーザ光が出射される。出射されたレーザ光は、各レーザ光源に対して設けられるコリメータレンズ502、503、504と、2つのダイクロイックミラー505、506と、光量調整部507と、から構成される入射光学系を経た後、反射面14を有する可動装置13にて偏向される。そして、偏向されたレーザ光は、自由曲面ミラー509と、中間スクリーン510と、投射ミラー511とから構成される投射光学系を経て、スクリーンに投影される。なお、上記ヘッドアップディスプレイ装置500では、レーザ光源501R、501G、501B、コリメータレンズ502、503、504、ダイクロイックミラー505、506は、光源ユニット530として光学ハウジングによってユニット化されている。
【0165】
上記ヘッドアップディスプレイ装置500は、中間スクリーン510に表示される中間像を車両400のフロントガラス401に投射することで、その中間像を運転者402に虚像として視認させる。
【0166】
レーザ光源501R、501G、501Bから発せられる各色レーザ光は、それぞれ、コリメータレンズ502、503、504で略平行光とされ、2つのダイクロイックミラー505、506により合成される。合成されたレーザ光は、光量調整部507で光量が調整された後、反射面14を有する可動装置13によって二次元走査される。可動装置13で二次元走査された投射光Lは、自由曲面ミラー509で反射されて歪みを補正された後、中間スクリーン510に集光され、中間像を表示する。中間スクリーン510は、マイクロレンズが二次元配置されたマイクロレンズアレイで構成されており、中間スクリーン510に入射してくる投射光Lをマイクロレンズ単位で拡大する。
【0167】
可動装置13は、反射面14を2軸方向に往復可動させ、反射面14に入射する投射光Lを二次元走査する。この可動装置13の駆動制御は、レーザ光源501R、501G、501Bの発光タイミングに同期して行われる。
【0168】
以上、画像投影装置の一例としてのヘッドアップディスプレイ装置500の説明をしたが、画像投影装置は、反射面14を有した可動装置13により光走査を行うことで画像を投影する装置であればよい。例えば、机等に置かれ、表示スクリーン上に画像を投影するプロジェクタや、観測者の頭部等に装着される装着部材に搭載され、装着部材が有する反射透過スクリーンに投影、または眼球をスクリーンとして画像を投影するヘッドマウントディスプレイ装置等にも、同様に適用することができる。
【0169】
また、画像投影装置は、車両や装着部材だけでなく、例えば、航空機、船舶、移動式ロボット等の移動体、あるいは、その場から移動せずにマニピュレータ等の駆動対象を操作する作業ロボットなどの非移動体に搭載されてもよい。
【0170】
(第5の実施の形態)
[ヘッドマウントディスプレイ]
次に、画像投影装置の他の一つの例であるヘッドマウントディスプレイについて図31図32を用いて説明する。ここでヘッドマウントディスプレイは、人間の頭部に装着可能な頭部装着型ディスプレイで、例えば、眼鏡に類する形状とすることができる。ヘッドマウントディスプレイを、以降ではHMDと省略して示す。第5の実施の形態にかかるヘッドマウントディスプレイにおいて、第1の実施の形態または第2の実施の形態にかかる可動装置13の制御システムが適用される。
【0171】
図31は、HMD60の外観を例示する斜視図である。図31において、HMD60は、左右に1組ずつ略対称に設けられたフロント60a、およびテンプル60bにより構成されている。フロント60aは、例えば、導光板61により構成することができ、光学系や制御装置等は、テンプル60bに内蔵することができる。
【0172】
図32は、HMD60の構成を部分的に例示する図である。なお、図32では、左眼用の構成を例示しているが、HMD60は右眼用としても同様の構成を有している。
【0173】
HMD60は、制御装置11と、光源ユニット530と、光量調整部507と、反射面14を有する可動装置13と、導光板61と、ハーフミラー62とを有する。
【0174】
光源ユニット530は、上述したレーザ光源501R、501G、および501Bと、コリメータレンズ502、503、および504と、ダイクロイックミラー505、および506とを、光学ハウジングによってユニット化したものである。光源ユニット530において、レーザ光源501R、501G、および501Bからの三色のレーザ光は、ダイクロイックミラー505および506で合成される。光源ユニット530からは、合成された平行光が発せられる。
【0175】
光源ユニット530からの光は、光量調整部507により光量調整された後、可動装置13に入射する。可動装置13は、制御装置11からの信号に基づき、反射面14をXY方向に可動し、光源ユニット530からの光を二次元走査する。この可動装置13の駆動制御は、レーザ光源501R、501G、501Bの発光タイミングに同期して行われ、走査光によりカラー画像が形成される。
【0176】
可動装置13による走査光は、導光板61に入射する。導光板61は、走査光を内壁面で反射させながらハーフミラー62に導光する。導光板61は、走査光の波長に対して透過性を有する樹脂等により形成されている。
【0177】
ハーフミラー62は、導光板61からの光をHMD60の背面側に反射し、HMD60の装着者63の眼の方向に出射する。ハーフミラー62は、例えば、自由曲面形状を有している。走査光による画像は、ハーフミラー62での反射により、装着者63の網膜に結像する。或いは、ハーフミラー62での反射と眼球における水晶体のレンズ効果とにより、装着者63の網膜に結像する。またハーフミラー62での反射により、画像は空間歪が補正される。装着者63は、XY方向に走査される光で形成される画像を、観察することができる。
【0178】
ハーフミラー62を使用したため、装着者63には、外界からの光による像と走査光による画像が重畳して観察される。ハーフミラー62に代えてミラーを設けることで、外界からの光をなくし、走査光による画像のみを観察できる構成としてもよい。
【0179】
最後に、上述の各実施の形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な各実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。また、各実施の形態および各実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0180】
11 制御装置
13 可動装置
210-1 駆動部A
210-2 駆動部B
211-1 駆動信号生成部A
211-2 駆動信号生成部B
212 高周波成分取出部
213 メモリ部
214-1 設定変更回数カウンタ部
214-2 設定算出部
214-3 高周波成分比較部
101 反射部
110a、110b 第1駆動部
120 第1支持部
130a、130b 第2駆動部
140 第2支持部
140a、140b、141a~141f、142a~142f 検知部
150 電極接続部
A 圧電駆動部群
B 圧電駆動部群
【先行技術文献】
【特許文献】
【0181】
【特許文献1】特許第6332736号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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