(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119137
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】研削装置及び研削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/04 20060101AFI20240827BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20240827BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240827BHJP
B24B 7/00 20060101ALI20240827BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B24B49/04 Z
B24B49/12
B24B7/04 A
B24B7/00 A
H01L21/304 622S
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023025819
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】飯島 悠
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034AA13
3C034BB73
3C034BB76
3C034BB82
3C034CA02
3C034CA13
3C034CA22
3C034CA26
3C034CB14
3C034DD10
3C034DD20
3C043BA04
3C043BA09
3C043BA12
3C043BA16
3C043BA17
3C043CC04
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3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C043DD14
5F057AA01
5F057AA19
5F057BA11
5F057BB01
5F057BB03
5F057BB11
5F057CA14
5F057CA25
5F057DA08
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5F057FA13
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5F057FA37
5F057GA12
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5F057GA27
5F057GB01
5F057GB02
5F057GB13
5F057GB20
5F057GB31
(57)【要約】
【課題】チャックテーブルの保持面の位置に依存することなく、分光干渉式厚さ測定器によって被加工物の厚さを高精度に測定しながら被加工物を研削可能な研削装置を提供する。
【解決手段】被加工物の研削前に、チャックテーブルの保持面に含まれる測定点が位置することが想定される想定位置と接触式位置測定器によって測定された測定点の位置との差に等しい距離だけ分光干渉式厚さ測定器の対物面を基準位置からずらす。これにより、チャックテーブルの保持面の位置に依存することなく、分光干渉式厚さ測定器によって被加工物の厚さを高精度に測定しながら被加工物を研削することが可能になる。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って延在するスピンドルの先端部に装着されている研削ホイールを利用して被加工物を研削するための研削装置であって、
保持面において該被加工物を保持するためのチャックテーブルと、
該保持面に含まれる測定点に接触可能な測定子を含み、該測定子が接触した該測定点の該第1方向における位置を測定するための接触式位置測定器と、
該保持面と対向可能な対物面を含み、該保持面において保持された該被加工物の厚さを測定するための分光干渉式厚さ測定器と、
該対物面を該第1方向に沿って移動させるための移動機構と、
該移動機構を制御するためのコントローラと、を備え、
該コントローラは、
該第1方向において該測定点が位置することが想定される想定位置と、該測定点が該想定位置に位置する場合に該第1方向において該対物面が位置付けられるべき位置である基準位置と、を記憶するメモリと、
該被加工物の研削前に、該想定位置と該接触式位置測定器によって測定された該測定点の位置との差に等しい第1距離だけ該基準位置からずれた位置である第1測定位置に該対物面が位置付けられるように該移動機構を制御するプロセッサと、を含む研削装置。
【請求項2】
該チャックテーブルとは異なり、かつ、該被加工物とは異なる第2被加工物を保持するための第2チャックテーブルをさらに備え、
該プロセッサは、該被加工物の研削後かつ該第2被加工物の研削前に、該想定位置と該接触式位置測定器によって測定された該第2チャックテーブルの保持面に含まれる測定点の位置との差に等しい第2距離だけ該基準位置からずれた位置である第2測定位置に該対物面が位置付けられるように該移動機構を制御する請求項1に記載の研削装置。
【請求項3】
第1方向に沿って延在するスピンドルの先端部に装着されている研削ホイールを利用して被加工物を研削する研削方法であって、
該第1方向における位置を測定するための接触式位置測定器の測定子をチャックテーブルの保持面に含まれる測定点に接触させて該測定点の位置を測定する測定ステップと、
該測定ステップの後に、該保持面において該被加工物を保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該第1方向において該測定点が位置することが想定される想定位置と該測定ステップにおいて測定された該測定点の位置との差に等しい第1距離だけ該測定点が該想定位置に位置する場合に該第1方向において分光干渉式厚さ測定器の対物面が位置付けられるべき位置である基準位置からずれた位置である第1測定位置に該対物面を位置付ける調整ステップと、
該調整ステップの後に、該分光干渉式厚さ測定器によって該被加工物の厚さを測定しながら該被加工物を研削する研削ステップと、
を備える研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1方向に沿って延在するスピンドルの先端部に装着されている研削ホイールを利用して、被加工物を研削するための研削装置及び被加工物を研削する研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、例えば、表面側に複数のデバイスが形成されているウェーハ等の被加工物を個々のデバイスを含む領域毎に分割することで製造される。
【0003】
また、被加工物は、製造されるチップの小型化等を目的として、その分割に先立って薄化されることがある。このような薄化は、例えば、保持面において被加工物を保持するためのチャックテーブルと、その先端部に研削ホイールが装着されているスピンドルと、を備える研削装置において、被加工物を研削することによって実施される。
【0004】
具体的には、この研削装置においては、まず、被加工物の表面側をチャックテーブルによって保持する。そして、チャックテーブル及びスピンドルの双方を回転させながら被加工物の裏面側に研削ホイールを接触させる。その結果、被加工物の裏面側が研削されて被加工物が薄化される。
【0005】
また、研削装置においては、被加工物が所望の厚さになったタイミングで研削を終了できるように被加工物の厚さを測定しながら被加工物が研削されることが多い。被加工物の厚さを測定するための厚さ測定器としては、例えば、分光干渉式厚さ測定器等の非接触式の厚さ測定器が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この分光干渉式厚さ測定器は、その対物面から被加工物に向けて光を照射することによって得られる反射光のスペクトル、具体的には、被加工物の表面によって反射された光と裏面によって反射された光とが互いに干渉して得られるスペクトルを参照して被加工物の厚さを測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
研削装置においては、それぞれの保持面の位置(高さ)が異なる複数のチャックテーブルを利用して被加工物が研削されることがある。例えば、研削装置においては、複数のチャックテーブルが設けられ、各チャックテーブルによって保持された被加工物が順番に研削されることがある。
【0009】
また、研削装置においては、一般的に、既存のチャックテーブルを厚さが異なる別のチャックテーブルへと交換可能である。さらに、研削装置においては、研削によって被加工物を所望の形状にするのに適した保持面を形成するためにチャックテーブル自体が研削されることもある。
【0010】
ここで、分光干渉式厚さ測定器を利用して被加工物の厚さを高精度に測定するためには、一般的に、その対物面から所定の距離の範囲に被加工物の表面及び裏面の双方を位置付ける必要がある。そのため、それぞれの保持面の位置が異なる複数のチャックテーブルを利用して被加工物を研削する場合には、少なくとも一つのチャックテーブルを利用して被加工物を研削する際に被加工物の厚さを高精度に測定できないおそれがある。
【0011】
この点に鑑み、本発明の目的は、チャックテーブルの保持面の位置に依存することなく、分光干渉式厚さ測定器によって被加工物の厚さを高精度に測定しながら被加工物を研削可能な研削装置及び研削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面によれば、第1方向に沿って延在するスピンドルの先端部に装着されている研削ホイールを利用して被加工物を研削するための研削装置であって、保持面において該被加工物を保持するためのチャックテーブルと、該保持面に含まれる測定点に接触可能な測定子を含み、該測定子が接触した該測定点の該第1方向における位置を測定するための接触式位置測定器と、該保持面と対向可能な対物面を含み、該保持面において保持された該被加工物の厚さを測定するための分光干渉式厚さ測定器と、該対物面を該第1方向に沿って移動させるための移動機構と、該移動機構を制御するためのコントローラと、を備え、該コントローラは、該第1方向において該測定点が位置することが想定される想定位置と、該測定点が該想定位置に位置する場合に該第1方向において該対物面が位置付けられるべき位置である基準位置と、を記憶するメモリと、該被加工物の研削前に、該想定位置と該接触式位置測定器によって測定された該測定点の位置との差に等しい第1距離だけ該基準位置からずれた位置である第1測定位置に該対物面が位置付けられるように該移動機構を制御するプロセッサと、を含む研削装置が提供される。
【0013】
さらに、本発明の研削装置は、該チャックテーブルとは異なり、かつ、該被加工物とは異なる第2被加工物を保持するための第2チャックテーブルをさらに備え、該プロセッサは、該被加工物の研削後かつ該第2被加工物の研削前に、該想定位置と該接触式位置測定器によって測定された該第2チャックテーブルの保持面に含まれる測定点の位置との差に等しい第2距離だけ該基準位置からずれた位置である第2測定位置に該対物面が位置付けられるように該移動機構を制御することが好ましい。
【0014】
本発明の別の側面によれば、第1方向に沿って延在するスピンドルの先端部に装着されている研削ホイールを利用して被加工物を研削する研削方法であって、該第1方向における位置を測定するための接触式位置測定器の測定子をチャックテーブルの保持面に含まれる測定点に接触させて該測定点の位置を測定する測定ステップと、該測定ステップの後に、該保持面において該被加工物を保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該第1方向において該測定点が位置することが想定される想定位置と該測定ステップにおいて測定された該測定点の位置との差に等しい第1距離だけ該測定点が該想定位置に位置する場合に該第1方向において分光干渉式厚さ測定器の対物面が位置付けられるべき位置である基準位置からずれた位置である第1測定位置に該対物面を位置付ける調整ステップと、該調整ステップの後に、該分光干渉式厚さ測定器によって該被加工物の厚さを測定しながら該被加工物を研削する研削ステップと、を備える研削方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、被加工物の研削前に、チャックテーブルの保持面に含まれる測定点が位置することが想定される想定位置と接触式位置測定器によって測定された測定点の位置との差に等しい距離だけ分光干渉式厚さ測定器の対物面を基準位置からずらす。これにより、チャックテーブルの保持面の位置に依存することなく、分光干渉式厚さ測定器によって被加工物の厚さを高精度に測定しながら被加工物を研削することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、チャックテーブル及びチャックテーブルに接続されている構成要素を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、スピンドルの先端部等を模式的に示す一部断面側面図である。
【
図5】
図5は、分光干渉式厚さ測定器及び分光干渉式厚さ測定器に接続されている構成要素を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、分光干渉式厚さ測定器によって被加工物の厚さを測定しながら被加工物を仕上げ研削する研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、測定ステップの様子を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、保持ステップの様子を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、調整ステップの様子を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、研削ステップの様子を模式的に示す図である。
【
図11】
図11は、研削方法の別の例に含まれる複数のステップを模式的に示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第2測定ステップの様子を模式的に示す図である。
【
図13】
図13は、第2調整ステップの様子を模式的に示す図である。
【
図14】
図14(A)は、粗研削位置に位置付けられたチャックテーブルと、このチャックテーブルの保持面において保持された厚い被加工物と、この被加工物の厚さを測定可能な分光干渉式厚さ測定器と、を模式的に示す図であり、
図14(B)は、厚い被加工物の粗研削の序盤におけるチャックテーブル、厚い被加工物及び分光干渉式厚さ測定器の位置関係を模式的に示す図であり、
図14(C)は、厚い被加工物の粗研削の終盤における、すなわち、厚い被加工物が粗研削されて薄い被加工物が形成された後のチャックテーブル、薄い被加工物及び分光干渉式厚さ測定器の位置関係を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。なお、
図1においては、研削装置の一部の構成要素が機能ブロックで示されている。また、
図1に示されるX軸方向(左右方向)及びY軸方向(前後方向)は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、Z軸方向(上下方向)は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向(鉛直方向)である。
【0018】
図1に示される研削装置2は、各構成要素を支持又は収容する基台4を備える。この基台4の前端部の上面には、一対のカセット載置領域6a,6bが設けられている。そして、各カセット載置領域6a,6bの上には、それぞれがZ軸方向において互いに離隔した状態で複数の被加工物を収容可能なカセット8a,8bが載置される。
【0019】
すなわち、各カセット8a,8bには、それぞれにおいて被加工物を収容可能な複数段の収容領域が設けられている。
図2は、カセット8a,8bに収容される被加工物の一例を模式的に示す斜視図である。
図2に示される被加工物11は、例えば、円状の表面11a及び裏面11bを有し、シリコン(Si)等の半導体材料を母材とするウェーハである。
【0020】
この被加工物11は格子状に設定される複数の分割予定ライン13によって複数の領域に区画されており、各領域の表面11a側にはIC等のデバイス15が形成されている。また、被加工物11は、このデバイス15を覆うように設けられたフィルム状のテープを含んでもよい。このテープは、デバイス15が形成されているウェーハの直径と概ね等しい直径を有し、例えば、樹脂からなる。
【0021】
そして、このテープは、被加工物11の裏面11b側を研削する際に表面11a側に加わる衝撃を緩和してデバイス15を保護する。なお、被加工物11の材質、形状、構造及び大きさ等に制限はない。例えば、被加工物11は、シリコン以外の半導体材料、セラミックス、樹脂又は金属を母材として含んでもよい。
【0022】
また、
図1に示されるように、カセット載置領域6a,6bの後方には窪み4aが形成されており、この窪み4aの内側には搬送ユニット10が設けられている。この搬送ユニット10は、研削前の被加工物11をカセット8a,8bの複数の収容領域のいずれか(元の収容領域)から搬出し、また、研削後の被加工物11を、例えば、元の収容領域に搬入する際に利用される。
【0023】
具体的には、搬送ユニット10は、例えば、複数の関節とロボットハンドとを有する。そして、この搬送ユニット10においては、ロボットハンドの一面側の空間に吸引力を作用させることによって被加工物11を吸引して保持すること、及び、当該空間の圧力を常圧にすることによって被加工物11をロボットハンドの一面から分離させることが可能である。
【0024】
さらに、ロボットハンドの基端部には、Z軸方向に直交する方向に沿った直線を回転軸としてロボットハンドを回転させるためのモータが接続されている。そして、搬送ユニット10においては、このモータを動作させることによって、被加工物11を保持するロボットハンドを反転させること、すなわち、被加工物11の上下を反転させることが可能である。
【0025】
また、窪み4aの斜め後方には、被加工物11の位置を調整するための位置調整機構12が設けられている。この位置調整機構12は、円盤状の位置調整用テーブルと位置調整用テーブルの周囲に配置された複数のピンとを含む。そして、搬送ユニット10によってカセット8a,8bから搬出された被加工物11は、この位置調整用テーブルに搬入されて、その中心が所定の位置に合わせられる。
【0026】
具体的には、被加工物11は、その裏面11bが上を向くように位置調整用テーブルに搬入される。そして、位置調整用テーブルの径方向に沿って複数のピンが位置調整用テーブルに接近する。これにより、複数のピンが被加工物11の側面に接触して被加工物11を僅かに移動させる。その結果、被加工物11の中心が所定の位置に合わせられる。
【0027】
また、位置調整機構12の側方には、被加工物11を保持して後方に搬送する搬送ユニット14が設けられている。この搬送ユニット14は、例えば、Z軸方向に沿って延在する支持軸と、この支持軸の上端部に基端部が固定され、かつ、Z軸方向と直交する方向に沿って延在するアームと、このアームの先端部の下側に固定されている吸引パッドと、を有する。
【0028】
そして、この搬送ユニット14においては、吸引パッド近傍の空間に吸引力を作用させることによって被加工物11を吸引して保持すること、及び、当該空間の圧力を常圧にすることによって被加工物11を吸引パッドから分離させることが可能である。
【0029】
さらに、搬送ユニット14の支持軸は、モータに接続されている。そして、このモータを動作させると、Z軸方向に沿った直線を回転軸として支持軸が回転する、すなわち、支持軸を中心として吸引パッドが旋回する。
【0030】
また、搬送ユニット14の支持軸は、例えば、ボールねじ式の移動機構(不図示)に連結されている。そして、この移動機構を動作させると、Z軸方向に沿って支持軸、アーム及び吸引パッドが移動する、すなわち、支持軸、アーム及び吸引パッドが昇降する。
【0031】
例えば、搬送ユニット14は、以下の順序で被加工物11を保持して後方に搬送する。まず、位置調整機構12において中心が所定の位置に合わせられた被加工物11の直上に吸引パッドが位置付けられるように支持軸を回転させる。次いで、この吸引パッドを被加工物11の裏面(上面)11bに接触させるように支持軸を下降させる。
【0032】
次いで、吸引パッドによって被加工物11の裏面(上面)11b側を吸引して保持する。次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを上昇させるように支持軸を上昇させる。次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを旋回させるように支持軸を回転させる。これにより、被加工物11が後方へと搬送される。
【0033】
搬送ユニット14の後方には、ターンテーブル16が設けられている。このターンテーブル16は、モータに接続されている。そして、このモータを動作させると、ターンテーブル16の上面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った直線を回転軸としてターンテーブル16が回転する。
【0034】
また、ターンテーブル16には、ターンテーブル16の周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で3個の円盤状のテーブルベース(不図示)が設けられている。さらに、各テーブルベースの上部には、ベアリング等を介して、交換可能な態様でチャックテーブル18a,18b、18cが装着されている。
【0035】
図3は、各チャックテーブル18a,18b、18c及び各チャックテーブル18a,18b、18cと接続する構成要素を模式的に示す図である。なお、各チャックテーブル18a,18b、18cと接続する構成要素は、
図3等において機能ブロックで示されている。
【0036】
各チャックテーブル18a,18b、18cは、例えば、セラミックス等からなる円盤状の枠体20を有する。この枠体20は、円盤状の底壁20aと、この底壁20aの外周部から立設する円筒状の側壁20bとを有する。すなわち、枠体20の上面側には、底壁20a及び側壁20bによって画定される円盤状の凹部が形成されている。
【0037】
そして、この凹部には、多孔質セラミックス等からなる円盤状のポーラス板22が固定されている。なお、枠体20の側壁20bの外径は被加工物11の直径よりも僅かに大きく、その内径(ポーラス板22の直径)は被加工物11の直径よりも僅かに小さい。
【0038】
また、枠体20の側壁20bの上面及びポーラス板22の上面は、円錐の側面に相当する形状に構成されており、被加工物11を保持するための保持面として機能する。また、底壁20aには、凹部の底面において開口し、かつ、底壁20aを貫通する流路20cが形成されている。
【0039】
そして、この流路20cは、バルブ24aを介して吸引源26aに接続され、かつ、バルブ24bを介してエア供給源26bに接続されている。なお、吸引源26aは、例えば、エジェクタ等を含む。また、エア供給源26bは、例えば、高圧エアを貯蔵するためのタンクと、タンクから供給される気体に混入した異物を取り除くためのフィルタと、タンクから供給される気体の圧力を調整するためのレギュレータと、を含む。
【0040】
さらに、各チャックテーブル18a,18b、18cは、回転機構(不図示)に接続されている。この回転機構は、例えば、モータ及びプーリ等を含む。そして、この回転機構が動作すると、それぞれの保持面の中心を通る直線を回転軸として各チャックテーブル18a,18b、18cが回転する。
【0041】
また、各チャックテーブル18a,18b、18cは、テーブルベースを介して傾き調整機構(不図示)に接続されている。この傾き調整機構は、例えば、各チャックテーブル18a,18b、18cの周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で配置されている2つの可動軸及び1つの固定軸を含む。
【0042】
そして、2つの可動軸の少なくとも一方がテーブルベース及び各チャックテーブル18a,18b、18cを部分的に昇降させると、各チャックテーブル18a,18b、18cの回転軸の傾きが調整される。
【0043】
なお、各チャックテーブル18a,18b、18cがテーブルベースに装着された状態でターンテーブル16を回転させると、ターンテーブル16の周方向に沿って、ターンテーブル16とともにテーブルベース及びチャックテーブル18a,18b、18cが移動する。
【0044】
これにより、各チャックテーブル18a,18b、18cを、例えば、搬送ユニット14に隣接する搬入搬出位置Aと、搬入搬出位置Aの斜め後方の粗研削位置Bと、粗研削位置Bの側方の仕上げ研削位置Cとに順番に位置付けることができる(
図1参照)。
【0045】
そして、搬入搬出位置Aに位置付けられたチャックテーブル(例えば、チャックテーブル18a)には、搬送ユニット14によって後方へと搬送された被加工物11が搬入される。被加工物11のチャックテーブル18aへの搬入は、例えば、以下の順序で行われる。
【0046】
まず、搬送ユニット14の吸引パッドによって裏面(上面)11b側が吸引されて保持された被加工物11をチャックテーブル18aの保持面に接近させるように、搬送ユニット14の支持軸を下降させる。次いで、吸引パッドと被加工物11とを分離する。これにより、被加工物11がチャックテーブル18aに搬入される。
【0047】
次いで、被加工物11の表面(下面)11a側がチャックテーブル18aに吸引されて保持されるように、吸引源26aを動作させ、かつ、バルブ24aを開状態にする。次いで、この被加工物11を保持するチャックテーブル18aを粗研削位置B又は仕上げ研削位置Cに位置付けるようにターンテーブル16を回転させる。
【0048】
粗研削位置B及び仕上げ研削位置Cのそれぞれの後方には、柱状の支持構造30a,30bが設けられている。各支持構造30a,30bの前面側には、移動機構32が設けられている。この移動機構32は、Z軸方向に沿って延在する一対のガイドレール34を備える。さらに、一対のガイドレール34には、移動プレート36がスライド可能な態様で取り付けられている。
【0049】
また、移動プレート36の後面側にはボールねじのナット(不図示)が固定されており、このナットにはZ軸方向に沿って延在するねじ軸38が回転可能な態様で連結されている。また、このナットは、ねじ軸38の回転に応じてねじ軸38の表面を転がる多数のボールを収容する。
【0050】
さらに、ねじ軸38の一端部(上端部)には、モータ40が接続されている。そして、モータ40によってねじ軸38を回転させると、多数のボールがナット内を循環してナットとともに移動プレート36がZ軸方向に沿って移動する。
【0051】
また、移動プレート36の前面(表面)には、研削ユニット42が設けられている。この研削ユニット42は、移動プレート36に固定されるスピンドルハウジング44を有する。さらに、スピンドルハウジング44には、Z軸方向(第1方向)に沿って延在するスピンドル(
図1においては不図示)が回転可能な態様で収容されている。
【0052】
図4は、このスピンドルの先端部(下端部)等を模式的に示す一部断面側面図である。このスピンドル46の先端部はスピンドルハウジング44の下端面から露出しており、この下端部には円盤状のマウント48が固定されている。
【0053】
そして、粗研削位置B側の研削ユニット42においては、マウント48を介して、スピンドル46の先端部に粗研削用の研削ホイール50aが装着されている。同様に、仕上げ研削位置C側の研削ユニット42においては、マウント48を介して、スピンドル46の先端部に仕上げ研削用の研削ホイール50bが装着されている。
【0054】
各研削ホイール50a,50bは、ステンレス鋼又はアルミニウム等の金属からなる環状のホイール基台52を含む。また、ホイール基台52の下面には、ホイール基台52の周方向に沿って概ね等しい角度の間隔で複数の研削砥石54が固定されている。
【0055】
そして、複数の研削砥石54のそれぞれは、ビトリファイド又はレジノイド等の結合剤と、この結合剤に分散されたダイヤモンド等の砥粒とを含む。なお、仕上げ研削用の研削ホイール50bが備える研削砥石54に含まれる砥粒の平均粒径は、粗研削用の研削ホイール50aが備える研削砥石54に含まれる砥粒の平均粒径よりも小さい。
【0056】
また、各研削ホイール50a,50bの近傍には、研削液供給ユニット56が設けられている。この研削液供給ユニット56は、例えば、平面視において各研削ホイール50a,50bの内側に位置するノズル58と、このノズル58に純水等の液体(研削液)を供給するポンプ(不図示)とを有する。
【0057】
そして、このポンプが動作すると、粗研削位置B又は仕上げ研削位置Cに位置付けられたチャックテーブル(例えば、チャックテーブル18a)において保持された被加工物11の裏面(上面)11bにノズル58から研削液が供給される。また、研削液供給ユニット56においては、ノズル58に換えて、又は、ノズル58に加えて、各研削ホイール50a,50bに形成されている流路を介して研削液が供給されてもよい。
【0058】
また、スピンドル46の基端部(上端部)には、モータ60が接続されている(
図1参照)。そして、このモータ60を動作させると、スピンドル46とともにマウント48及び各研削ホイール50a,50bがZ軸方向に沿った直線を回転軸として回転する。
【0059】
仕上げ研削位置Cの側方には、接触式位置測定器62及び分光干渉式厚さ測定器64が設けられている。この接触式位置測定器62は、仕上げ研削位置Cに位置付けられたチャックテーブル(例えば、チャックテーブル18a)の保持面に含まれる測定点に接触可能な測定子62aを含む。そして、接触式位置測定器62は、測定子62aが接触した当該測定点のZ軸方向における位置(高さ)を測定する。
【0060】
図5は、分光干渉式厚さ測定器64及び分光干渉式厚さ測定器64に接続されている構成要素を模式的に示す図である。この分光干渉式厚さ測定器64は、仕上げ研削位置Cに位置付けられたチャックテーブル(例えば、チャックテーブル18a)の保持面と対向可能な対物面64aを含む。そして、分光干渉式厚さ測定器64は、この保持面において保持された被加工物11の厚さを測定可能である。
【0061】
具体的には、分光干渉式厚さ測定器64は、対物面64aから被加工物11に向けて投光する投光部と、被加工物11の表面(下面)11a及び裏面(上面)11bのそれぞれによって反射された光を対物面64aにおいて受光する受光部と、を有する。そして、分光干渉式厚さ測定器64は、被加工物11の表面(下面)11aによって反射された光との裏面によって反射された光とが互いに干渉して得られるスペクトルを参照して被加工物11の厚さを測定する。
【0062】
なお、分光干渉式厚さ測定器64においては、その対物面64aから所定の距離の範囲に被加工物11の表面11a及び裏面11bの双方が位置付けられる場合に、被加工物11の厚さを高精度に測定可能である。換言すると、分光干渉式厚さ測定器64においては、それ以外の場合においても、被加工物11の厚さを測定可能ではあるが、その精度が低下するおそれがある。
【0063】
さらに、分光干渉式厚さ測定器64は、その対物面64aから直下に向けて純水を噴射するための噴射部を含んでもよい。そして、被加工物11の厚さを測定しながら被加工物11を研削する際に噴射部から純水を噴射する場合には、研削によって生じる研削屑が対物面64aと被加工物11との間に進入しにくくなる。
【0064】
これにより、被加工物11の表面(下面)11a及び裏面(上面)11bから対物面64aに向かう反射光が研削屑によって遮断される蓋然性を低減することができる。その結果、この場合には、分光干渉式厚さ測定器64による当該測定の精度の低下を抑制することが可能である
【0065】
また、分光干渉式厚さ測定器64は、アーム66の先端部に設けられている。このアーム66は、Z軸方向と直交する方向に沿って延在し、その基端部が、Z軸方向に沿って延在する支持軸68の上端部に固定されている。また、支持軸68の下端部は、モータ70に接続されている。
【0066】
そして、このモータ70を動作させると、Z軸方向に沿った直線を回転軸として支持軸68が回転する、すなわち、支持軸68を中心として分光干渉式厚さ測定器64が旋回する。また、支持軸68及びモータ70は、移動機構72に接続されている。この移動機構72は、モータ70の側部に表面側が固定されている移動プレート72aを有する。
【0067】
移動プレート72aの裏面側には、多数のボールを収容するナット72bが固定されている。そして、このナット72bには、Z軸方向に沿って延在するねじ軸72cが螺合されている。また、ねじ軸72cは、それぞれがZ軸方向に沿って延在する一対のガイドレール(不図示)の間に設けられており、この一対のガイドレールの表面側にはスライド可能な態様で移動プレート72aが取り付けられている。
【0068】
さらに、ねじ軸72cの基端部(下端部)には、モータ72dが接続されている。そして、モータ72dによってねじ軸72cを回転させると、多数のボールがナット72b内を循環してナット72bとともに移動プレート72a及び分光干渉式厚さ測定器64等がZ軸方向に沿って移動する。
【0069】
また、被加工物11を保持するチャックテーブル(例えば、チャックテーブル18a)が仕上げ研削位置Cに位置付けられると、分光干渉式厚さ測定器64によって被加工物11の厚さを測定しながら被加工物11の裏面(上面)11b側の仕上げ研削が行われる。なお、このような研削の一例については後述する。
【0070】
そして、被加工物11の仕上げ研削が完了すると、この被加工物11を保持するチャックテーブル18aを搬入搬出位置Aに位置付けるようにターンテーブル16を回転させる。また、このチャックテーブル18aが搬入搬出位置Aに位置付けられれば、その枠体20に形成されている流路20cの圧力を常圧にする。
【0071】
具体的には、まず、この流路20cに接続されている吸引源26aの動作を停止させ、かつ、バルブ24aを閉状態とするとともに、エア供給源26bを動作させ、かつ、バルブ24bを開状態にする。これにより、被加工物11がチャックテーブル18aによって吸引されずに、単にチャックテーブル18aに置かれた状態になる。
【0072】
搬入搬出位置Aの前方、かつ、搬送ユニット14の側方には、被加工物11を保持して前方に搬送する搬送ユニット74が設けられている(
図1参照)。この搬送ユニット74は、例えば、搬送ユニット14と同様の構造を有し、以下の順序で被加工物11を保持して前方に搬送する。
【0073】
まず、被加工物11を保持するチャックテーブル18aに置かれた被加工物11の直上に吸引パッドが位置付けられるように支持軸を回転させる。次いで、この吸引パッドを被加工物11の裏面(上面)11bに接触させるように支持軸を下降させる。
【0074】
次いで、吸引パッドによって被加工物11の裏面(上面)11b側を吸引して保持する。次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを上昇させるように支持軸を上昇させる。次いで、被加工物11を保持する吸引パッドを旋回させるように支持軸を回転させる。これにより、被加工物11が前方へと搬送される。
【0075】
搬送ユニット74の側方には、被加工物11を洗浄するための洗浄装置76が設けられている。この洗浄装置76は、例えば、被加工物11の表面(下面)11a側を保持するためのスピンナテーブルと、スピンナテーブルによって保持された被加工物11の裏面(上面)11b側に純水等の液体(洗浄液)を供給するノズルを含む洗浄ユニットと、を備える。
【0076】
なお、このスピンナテーブルは、
図1に示される各チャックテーブル18a,18b,18cと同様の構造を有し、また、モータ等に接続されている。そして、このモータを動作させると、スピンナテーブルの上面の中心を通り、かつ、Z軸方向に沿った直線を回転軸としてスピンナテーブルが回転する。
【0077】
そして、スピンナテーブルには、搬送ユニット74によって前方へと搬送された被加工物11が搬入される。例えば、被加工物11のスピンナテーブルへの搬入は、以下の順序で行われる。まず、搬送ユニット74の吸引パッドによって保持された被加工物11がスピンナテーブルの直上に位置付けられるように支持軸を回転させる。
【0078】
次いで、被加工物11をスピンナテーブルの保持面に接近させるように、搬送ユニット74の支持軸を下降させる。次いで、吸引パッドと被加工物11とを分離する。これにより、被加工物11がスピンナテーブルに搬入される。
【0079】
この洗浄装置76においては、被加工物11の表面(下面)11a側を保持するスピンナテーブルを回転させながら被加工物11の裏面(上面)11bに洗浄ユニットから洗浄液を供給することによって被加工物11が洗浄される。
【0080】
そして、洗浄装置76における被加工物11の洗浄が完了すると、搬送ユニット10が洗浄装置76からカセット8a,8bの複数の収容領域のいずれか(例えば、元の収容領域)に被加工物11を搬入する。
【0081】
上述した研削装置2の構成要素は、研削装置2に内蔵されたコントローラ78によって制御される。このコントローラ78は、プロセッサ78aとメモリ78bとを含む。なお、プロセッサ78aは、例えば、CPU(Central Processing Unit)等によって構成される。
【0082】
また、メモリ78bは、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリと、SSD(Solid State Drive)(NAND型フラッシュメモリ)又はHDD(Hard Disk Drive)(磁気記憶装置)等の不揮発性メモリとによって構成される。
【0083】
そして、メモリ78bは、プロセッサ78aにおいて用いられる各種の情報(データ及びプログラム等)を記憶する。例えば、このメモリ78bには、仕上げ研削位置Cに位置付けられた各チャックテーブル18a,18b,18cの保持面に含まれる測定点がZ軸方向において位置することが想定される想定位置を示すデータが記憶されている。なお、このデータは、3つのチャックテーブル18a,18b,18cに共通のデータであってもよいし、個別のデータであってもよい。
【0084】
さらに、メモリ78bには、この測定点が当該想定位置に位置する場合にZ軸方向において分光干渉式厚さ測定器64の対物面64aが位置付けられるべき位置である基準位置を示すデータが記憶されている。なお、この基準位置は、例えば、想定位置と基準位置との間隔が上述した所定の距離の範囲に含まれる最大値と等しくなるように設定される。
【0085】
また、プロセッサ78aは、例えば、分光干渉式厚さ測定器64によって被加工物11の厚さを測定しながら被加工物11を研削するためのプログラムをメモリ78bから読みだして実行するように研削装置2の構成要素を制御する。
【0086】
図6は、分光干渉式厚さ測定器64によって被加工物11の厚さを測定しながら被加工物11を研削する研削方法の一例を模式的に示すフローチャートである。この方法においては、まず、チャックテーブル18aの保持面に含まれる測定点の位置を測定する(測定ステップS1)。
【0087】
図7は、測定ステップS1の様子を模式的に示す図である。この測定ステップS1においては、まず、チャックテーブル18aを仕上げ研削位置Cに位置付けるように、プロセッサ78aがターンテーブル16に接続されているモータを制御する。次いで、測定子62aを測定点に接触させるように、プロセッサ78aが接触式位置測定器62を制御する。
【0088】
なお、この測定点は、例えば、チャックテーブル18aの保持面の中心からの距離が保持面の直径の半分となる点(以下「R/2の点」ともいう。)である。これにより、接触式位置測定器62において、チャックテーブル18aの保持面に含まれるR/2の点のZ軸方向における位置(以下「実測位置」ともいう。)Z1が測定される。
【0089】
さらに、この実測位置Z1を示すデータは、コントローラ78へと送信されてメモリ78bに記憶される。そして、プロセッサ78aは、実測位置Z1とメモリ78bに予め記憶されている想定位置Z0との差に等しい距離(以下「第1距離」ともいう。)ΔZ1を算出するとともに、この第1距離ΔZ1を示すデータをメモリ78bに記憶させる。
【0090】
測定ステップS1の後には、チャックテーブル18aの保持面において被加工物11を保持する(保持ステップS2)。
図8は、保持ステップS2の様子を模式的に示す図である。この保持ステップS2においては、まず、チャックテーブル18aを搬入搬出位置Aに位置付けるように、プロセッサ78aがターンテーブル16に接続されているモータを制御する。
【0091】
次いで、その裏面11bが上を向いた状態の被加工物11をカセット8a,8bからチャックテーブル18aに搬送するように、プロセッサ78aが搬送ユニット10,14等を制御する。次いで、チャックテーブル18aの保持面において被加工物11が保持されるように、プロセッサ78aが吸引源26aを動作させ、かつ、バルブ24aを開状態にする。
【0092】
保持ステップS2の後には、第1距離ΔZ1だけ基準位置からずれた位置である第1測定位置に対物面64aを位置付ける(調整ステップS3)。
図9は、調整ステップS3の様子を模式的に示す図である。この調整ステップS3においては、まず、チャックテーブル18aを仕上げ研削位置Cに位置付けるように、プロセッサ78aがターンテーブル16に接続されているモータを制御する。
【0093】
次いで、チャックテーブル18aの保持面に含まれるR/2の点の直上に分光干渉式厚さ測定器64が位置付けられるように、プロセッサ78aがモータ70を制御する。次いで、第1距離ΔZ1だけ基準位置P0からずれた位置である第1測定位置P1に対物面64aが位置付けられるように、プロセッサ78aが移動機構72(具体的には、モータ72d)を制御する。
【0094】
具体的には、
図7に示されるように実測位置Z1が想定位置Z0よりも高い場合には、基準位置P0に位置付けられた対物面64aを第1距離ΔZ1だけ上昇させるように、プロセッサ78aが移動機構72を制御する(
図9参照)。他方、実測位置Z1が想定位置Z0よりも低い場合には、基準位置P0に位置付けられた対物面64aを第1距離ΔZ1だけ下降させるように、プロセッサ78aが移動機構72を制御する。
【0095】
調整ステップS3の後には、分光干渉式厚さ測定器64によって被加工物11の厚さを測定しながら被加工物11を研削する(研削ステップS4)。
図10は、研削ステップS4の様子を模式的に示す図である。この研削ステップS4においては、まず、チャックテーブル18a及び研削ホイール50bの双方を回転させるように、プロセッサ78aがチャックテーブル18aに接続されている回転機構とモータ60とを制御する。
【0096】
次いで、チャックテーブル18a及び研削ホイール50bの双方を回転させたまま、被加工物11の裏面11bに複数の研削砥石54を接触させるように、プロセッサ78aが移動機構32(具体的には、モータ40)を制御する。すなわち、チャックテーブル18a及び研削ホイール50bの双方を回転させたまま、被加工物11と複数の研削砥石54とが接触するまで研削ホイール50bを下降させる。
【0097】
また、被加工物11と複数の研削砥石54とが接触する直前に、被加工物11の裏面11bに研削液GLが供給され、かつ、被加工物11の表面(下面)11a及び裏面(上面)11bのそれぞれによって反射された光RLが対物面64aにおいて受光されるように、プロセッサ78aが研削液供給ユニット56及び分光干渉式厚さ測定器64を制御する。これにより、分光干渉式厚さ測定器64によって被加工物11の厚さを測定しながら被加工物11が研削(具体的には、仕上げ研削)される。
【0098】
図6に示される研削方法においては、被加工物11の研削前に、チャックテーブル18aの保持面に含まれる測定点が位置することが想定される想定位置Z0と接触式位置測定器62によって測定された測定点の実測位置Z1との差に等しい第1距離ΔZ1だけ分光干渉式厚さ測定器64の対物面64aを基準位置P0からずらす。これにより、チャックテーブル18aの保持面の位置に依存することなく、分光干渉式厚さ測定器64によって被加工物11の厚さを高精度に測定しながら被加工物11を研削することが可能になる。
【0099】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明は上述した内容に限定されない。例えば、本発明においては、それぞれが別のチャックテーブルの保持面において保持された複数の被加工物が順番に研削されてもよい。
【0100】
具体的には、本発明においては、上述した測定ステップS1~研削ステップS4の後に、
図11に示される複数のステップが実施されてもよい。この場合、研削ステップS4の後には、チャックテーブル18aとは別の第2チャックテーブル(例えば、チャックテーブル18b)の保持面に含まれる測定点の位置を測定する(第2測定ステップS5)。
【0101】
図11は、第2測定ステップS5の様子を模式的に示す図である。この第2測定ステップS5においては、まず、チャックテーブル18bを仕上げ研削位置Cに位置付けるように、プロセッサ78aがターンテーブル16に接続されているモータを制御する。次いで、測定子62aを測定点に接触させるように、プロセッサ78aが接触式位置測定器62を制御する。
【0102】
なお、この測定点は、例えば、チャックテーブル18bの保持面のR/2の点である。これにより、接触式位置測定器62において、チャックテーブル18bの保持面に含まれるR/2の点のZ軸方向における位置(以下「第2実測位置」ともいう。)Z2が測定される。
【0103】
さらに、この第2実測位置Z2を示すデータは、コントローラ78へと送信されてメモリ78bに記憶される。そして、プロセッサ78aは、第2実測位置Z2とメモリ78bに予め記憶されている想定位置Z0との差に等しい距離(以下「第2距離」ともいう。)ΔZ2を算出するとともに、この第2距離ΔZ2を示すデータをメモリ78bに記憶させる。
【0104】
第2測定ステップS5の後には、チャックテーブル18bの保持面において被加工物11とは別の第2被加工物を保持する(第2保持ステップS6)。なお、この第2被加工物は、例えば、被加工物11と同様の構造を有する。また、第2保持ステップS6は、上述した保持ステップS2と同様に実施されるため、その説明については割愛する。
【0105】
第2保持ステップS6の後には、第2距離ΔZ2だけ基準位置P0からずれた位置である第2測定位置に対物面64aを位置付ける(第2調整ステップS7)。
図13は、第2調整ステップS7の様子を模式的に示す図である。この第2調整ステップS7においては、まず、その保持面において第2被加工物17を保持するチャックテーブル18bを仕上げ研削位置Cに位置付けるように、プロセッサ78aがターンテーブル16に接続されているモータを制御する。
【0106】
次いで、チャックテーブル18bの保持面に含まれるR/2の点の直上に分光干渉式厚さ測定器64が位置付けられるように、プロセッサ78aがモータ70を制御する。次いで、第2距離ΔZ2だけ基準位置P0からずれた位置である第2測定位置P2に対物面64aが位置付けられるように、プロセッサ78aが移動機構72(具体的には、モータ72d)を制御する。
【0107】
具体的には、
図7に示されるように実測位置Z1が想定位置Z0よりも高く、かつ、
図12に示されるように第2実測位置Z2が想定位置Z0よりも低い場合には、第1測定位置P1に位置付けられた対物面64aを第1距離ΔZ1及び第2距離ΔZ2の和に等しい距離だけ下降させるように、プロセッサ78aが移動機構72を制御する(
図13参照)。
【0108】
また、
図7に示されるように実測位置Z1が想定位置Z0よりも高く、かつ、第2実測位置Z2が想定位置Z0と実測位置Z1との間に位置する場合には、第1測定位置P1に位置付けられた対物面64aを第1距離ΔZ1及び第2距離ΔZ2の差に等しい距離だけ下降させるように、プロセッサ78aが移動機構72を制御する。
【0109】
また、
図7に示されるように実測位置Z1が想定位置Z0よりも高く、かつ、第2実測位置Z2が実測位置Z1よりも高い場合には、第1測定位置P1に位置付けられた対物面64aを第1距離ΔZ1及び第2距離ΔZ2の差に等しい距離だけ上昇させるように、プロセッサ78aが移動機構72を制御する。
【0110】
また、実測位置Z1が想定位置Z0よりも低く、かつ、第2実測位置Z2が実測位置Z1よりも低い場合には、第1測定位置P1に位置付けられた対物面64aを第1距離ΔZ1及び第2距離ΔZ2の差に等しい距離だけ下降させるように、プロセッサ78aが移動機構72を制御する。
【0111】
また、実測位置Z1が想定位置Z0よりも低く、かつ、第2実測位置Z2が想定位置Z0と実測位置Z1との間に位置する場合には、第1測定位置P1に位置付けられた対物面64aを第1距離ΔZ1及び第2距離ΔZ2の差に等しい距離だけ上昇させるように、プロセッサ78aが移動機構72を制御する。
【0112】
また、実測位置Z1が想定位置Z0よりも低く、かつ、第2実測位置Z2が想定位置Z0よりも高い場合には、第1測定位置P1に位置付けられた対物面64aを第1距離ΔZ1及び第2距離ΔZ2の和に等しい距離だけ上昇させるように、プロセッサ78aが移動機構72を制御する。
【0113】
調整ステップS3の後には、分光干渉式厚さ測定器64によって第2被加工物17の厚さを測定しながら第2被加工物17を研削する(第2研削ステップS8)。なお、第2研削ステップS8は、上述した研削ステップS4と同様に実施されるため、その説明については割愛する。
【0114】
上述した測定ステップS1~研削ステップS4の後に、
図11に示される第2測定ステップS5~第2研削ステップS8が実施される場合には、2つのチャックテーブル18a,18bのそれぞれの保持面の位置に依存することなく、分光干渉式厚さ測定器64によって被加工物11及び第2被加工物17のそれぞれの厚さを高精度に測定しながら被加工物11及び第2被加工物17を研削することが可能になる。
【0115】
なお、本発明においては、調整ステップS3の前に第2測定ステップS5及び第2保持ステップS6が実施されてもよい。例えば、本発明においては、測定ステップS1、第2測定ステップS5、保持ステップS2、第2保持ステップS6、調整ステップS3、研削ステップS4、第2調整ステップS7及び第2研削ステップS8の順番で複数のステップS1~S8が実施されてもよい。
【0116】
また、本発明においては、被加工物(例えば、被加工物11)の仕上げ研削、すなわち、上述した研削ステップS4に先立って、研削ホイール50aを利用した被加工物11の粗研削が実施されてもよい。
【0117】
また、本発明においては、分光干渉式厚さ測定器64に加えて、又は、換えて、これと同様の分光干渉式厚さ測定器が粗研削位置Bの側方に設けられてもよい。すなわち、本発明においては、粗研削位置Bに位置付けられたチャックテーブル(例えば、チャックテーブル18a)の保持面において保持された被加工物(例えば、被加工物11)の厚さを測定可能な分光干渉式厚さ測定器が設けられてもよい。
【0118】
この場合、上述した測定ステップS1~研削ステップS4における動作と同様の動作を粗研削位置Bにおいて実施することが可能にある。すなわち、この場合には、チャックテーブル18aの保持面の位置に依存することなく、当該分光干渉式厚さ測定器によって被加工物11の厚さを高精度に測定しながら被加工物11を粗研削することが可能になる。
【0119】
なお、粗研削は、厚い被加工物を十分に薄くするために実施されることがある。この場合、被加工物の粗研削の序盤において、被加工物の表面及び裏面の双方を当該分光干渉式厚さ測定器の対物面から所定の距離の範囲に位置付けられず、被加工物の厚さを高精度に測定することが困難になることがある。
【0120】
このような場合には、被加工物の粗研削の序盤において、それほど精度が高くない状態で測定が行われるとともに、その終盤において高精度な測定が行われるように、被加工物の粗研削の進行に伴って当該対物面を移動させてもよい。以下、この点について、
図14(A)、
図14(B)及び
図14(C)を参照して説明する。
【0121】
なお、
図14(A)は、粗研削位置Bに位置付けられたチャックテーブル18aと、このチャックテーブル18aの保持面において保持された厚い被加工物19と、この厚い被加工物19の厚さを測定可能な分光干渉式厚さ測定器80と、を模式的に示す図である。
【0122】
この分光干渉式厚さ測定器80は、その対物面80aからの距離がD1以上D4以下の範囲に厚い被加工物19の表面19a及び裏面19bの双方が位置付けられる場合に、厚い被加工物19の厚さを測定可能である。さらに、分光干渉式厚さ測定器80は、その対物面80aからの距離がD2以上D3以下の範囲に厚い被加工物19の表面19a及び裏面19bの双方が位置付けられる場合に、厚い被加工物19の厚さを高精度に測定可能である。
【0123】
また、厚い被加工物19の厚さは、D2とD3との差よりも大きく、かつ、D1とD3との差及びD2とD4との差よりも小さい。そのため、分光干渉式厚さ測定器80の対物面80aからの距離がD2以上D3以下の範囲に厚い被加工物19の表面19a及び裏面19bの双方が位置付けることはできない。そして、この厚い被加工物19は、その裏面19bが上を向いた状態でチャックテーブル18aの保持面において保持されている。
【0124】
図14(B)は、厚い被加工物19の粗研削の序盤におけるチャックテーブル18a、厚い被加工物19及び分光干渉式厚さ測定器80の位置関係を模式的に示す図である。また、
図14(C)は、厚い被加工物19の粗研削の終盤における、すなわち、厚い被加工物19が粗研削されて薄い被加工物21が形成された後のチャックテーブル18a、薄い被加工物21及び分光干渉式厚さ測定器80の位置関係を模式的に示す図である。なお、この薄い被加工物21の厚さは、D2とD3との差よりも小さい。
【0125】
この粗研削の序盤においては、例えば、対物面80aからの距離がD2以上D3以下の範囲に厚い被加工物19の表面19a及び裏面19bの一方が位置付けられ、かつ、D1以上D4以下のうちD2以上D3以下以外の範囲に厚い被加工物19の表面19a及び裏面19bの他方が位置付けられるように、対物面80aの位置が調整される。
【0126】
なお、厚い被加工物19の粗研削に伴って、被研削面となる裏面19bが粗くなりやすい。これにより、この粗研削の最中には、対物面80aから厚い被加工物19に向けて照射された光が厚い被加工物19の裏面19bにおいて乱反射され、対物面80aにおいて受光される裏面19bからの反射光の強度が小さくなりやすい。
【0127】
そのため、この粗研削の序盤においては、対物面80aからの距離がD2以上D3以下の範囲に厚い被加工物19の裏面19bが位置付けられ、かつ、D3超D4以下の範囲に厚い被加工物19の表面19aが位置付けられるように、対物面80aの位置が調整されることが好ましい(
図14(B)参照)。
【0128】
そして、この粗研削の終盤においては、対物面80aからの距離がD2以上D3以下の範囲に厚い被加工物21の表面21a及び裏面21bの双方が位置付けられるように、対物面80aの位置が調整される。例えば、対物面80aは、粗研削の進行に伴って、その位置が徐々に下降する(
図14(C)参照)。
【0129】
その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0130】
2 :研削装置
4 :基台(4a:窪み)
6a,6b:カセット載置領域
8a,8b:カセット
10:搬送ユニット
11:被加工物(11a:表面、11b:裏面)
12:位置調整機構
13:分割予定ライン
14:搬送ユニット
15:デバイス
16:ターンテーブル
17:第2被加工物
18a,18b,18c:チャックテーブル
19:厚い被加工物(19a:表面、19b:裏面)
21:薄い被加工物(21a:表面、21b:裏面)
20:枠体(20a:底壁、20b:側壁、20c:流路)
22:ポーラス板
24a,24b:バルブ
26a:吸引源
26b:エア供給源
30a,30b:支持構造
32:移動機構
34:ガイドレール
36:移動プレート
38:ねじ軸
40:モータ
42:研削ユニット
44:スピンドルハウジング
46:スピンドル
48:マウント
50a,50b:研削ホイール
52:ホイール基台
54:研削砥石
56:研削液供給ユニット
58:ノズル
60:モータ
62:接触式位置測定器
64:分光干渉式厚さ測定器(64a:対物面)
66:アーム
68:支持軸
70:モータ
72:移動機構
(72a:移動プレート、72b:ナット、72c:ねじ軸、72d:モータ)
70:モータ
72:移動機構
74:搬送ユニット
76:洗浄装置
78:コントローラ(78a:プロセッサ、78b:メモリ)
80:分光干渉式厚さ測定器(80a:対物面)