(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119252
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理システム及び保護膜
(51)【国際特許分類】
C23C 16/40 20060101AFI20240827BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20240827BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240827BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C23C16/40
H01L21/316 X
H01L21/31 C
H01L21/302 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026021
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 順也
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 将久
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA14
4K030BA01
4K030BA42
4K030DA02
4K030DA08
4K030JA10
5F004DA00
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5F058BH11
5F058BH12
5F058BH13
5F058BJ05
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】容易に除去可能な保護膜を形成する基板処理方法、基板処理システム及び保護膜を提供する。
【解決手段】下地膜が形成された基板を準備する工程と、前記下地膜の上に保護膜を形成する工程と、前記下地膜及び前記保護膜の積層構造が形成された前記基板をドライエッチングする工程と、前記下地膜及び前記保護膜の積層構造が形成された前記基板から前記保護膜を除去する工程と、を有し、前記下地膜の上に保護膜を形成する工程は、250℃以下の成膜温度で、前記基板にMgを含む有機金属ガスを供給する工程と、前記基板に酸化剤を供給する工程と、を繰り返して、前記保護膜としてMgO膜を形成する、基板処理方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地膜が形成された基板を準備する工程と、
前記下地膜の上に保護膜を形成する工程と、
前記下地膜及び前記保護膜の積層構造が形成された前記基板をドライエッチングする工程と、
前記下地膜及び前記保護膜の積層構造が形成された前記基板から前記保護膜を除去する工程と、を有し、
前記下地膜の上に保護膜を形成する工程は、
250℃以下の成膜温度で、
前記基板にMgを含む有機金属ガスを供給する工程と、
前記基板に酸化剤を供給する工程と、
を繰り返して、前記保護膜としてMgO膜を形成する、
基板処理方法。
【請求項2】
前記保護膜を除去する工程は、
前記基板に水を供給し、前記保護膜を前記水で溶解して除去する、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記Mgを含む有機金属ガスは、
ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(エチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ビス(ジイソプロピルアミノ)マグネシウム、のいずれかである、
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記酸化剤は、
O3ガス、O2ガスとO3ガスの混合ガス、酸素ラジカルのいずれかである、
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記基板をドライエッチングする工程は、
前記基板に形成されたエッチング対象膜の形状を加工する、
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記保護膜は、前記エッチング対象膜よりも高いエッチング耐性を有する、
請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記エッチング対象膜は、シリコン酸化膜である、
請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記基板をドライエッチングする工程は、
エッチングガスとしてCF系ガスを含む、
請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記保護膜を形成する工程で形成された前記保護膜の密度は、2.8[g/cm3]以下である、
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記保護膜を形成する工程で形成された前記保護膜におけるマグネシウム、酸素、炭素の組成比において、炭素の組成比が15[%]以上である、
請求項1または請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項11】
下地膜が形成された基板に、250℃以下の成膜温度でMgを含む有機金属ガスと酸化剤とを交互に供給して保護膜を形成する成膜装置と、
前記下地膜及び前記保護膜の積層構造が形成された前記基板にドライエッチング処理を施すドライエッチング装置と、
前記下地膜及び前記保護膜の積層構造が形成された前記基板から前記保護膜を除去する保護膜除去装置と、を備える、
基板処理システム。
【請求項12】
前記Mgを含む有機金属ガスは、
ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(エチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ビス(ジイソプロピルアミノ)マグネシウム、のいずれかである、
請求項11に記載の基板処理システム。
【請求項13】
前記酸化剤は、
O3ガス、O2ガスとO3ガスの混合ガス、酸素ラジカルのいずれかである、
請求項11または請求項12に記載の基板処理システム。
【請求項14】
下地膜が形成された基板において、前記下地膜を覆う保護膜であって、
シリコン酸化膜のドライエッチングにおいて、前記シリコン酸化膜よりも高いエッチング耐性を有し、
水に対して溶解する、
保護膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、基板処理システム及び保護膜に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属酸化物層を反応性水素含有ガスまたはプラズマに曝露して、金属水素化物層に変換し、金属水素化物層を少なくとも昇華温度まで加熱して金属水素化物層を昇華させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一の側面では、本開示は、容易に除去可能な保護膜を形成する基板処理方法、基板処理システム及び保護膜を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、下地膜が形成された基板を準備する工程と、前記下地膜の上に保護膜を形成する工程と、前記下地膜及び前記保護膜の積層構造が形成された前記基板をドライエッチングする工程と、前記下地膜及び前記保護膜の積層構造が形成された前記基板から前記保護膜を除去する工程と、を有し、前記下地膜の上に保護膜を形成する工程は、250℃以下の成膜温度で、前記基板にMgを含む有機金属ガスを供給する工程と、前記基板に酸化剤を供給する工程と、を繰り返して、前記保護膜としてMgO膜を形成する、基板処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、本開示は、容易に除去可能な保護膜を形成する基板処理方法、基板処理システム及び保護膜を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】基板処理システムの構成の一例を説明する図。
【
図3】各ステップにおける基板Wの断面模式図の一例。
【
図5】基板処理装置の成膜処理の一例を示すフローチャート。
【
図6】ドライエッチング処理前後及びDIW処理後の膜厚の一例を示すグラフ。
【
図7】MgO膜の成膜温度と成膜量との関係を示すグラフの一例。
【
図8】MgO膜の成膜温度と密度との関係を示すグラフの一例。
【
図9】MgO膜の成膜温度と膜組成との関係を示すグラフの一例。
【
図10】MgO膜の成膜温度と膜厚との関係を示すグラフの一例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[基板処理システム]
本実施例に係る基板処理システム100について、
図1を用いて説明する。
図1は、基板処理システム100の構成の一例を説明する図である。
【0010】
基板処理システム100は、下地膜310(
図3参照)が形成された基板Wにドライエッチング処理から下地膜310を保護する保護膜320(
図3参照)を形成する基板処理システムである。更に、基板処理システム100は、基板Wにドライエッチング処理を施した後、基板Wから保護膜320を除去する基板処理システムである。
【0011】
基板処理システム100は、成膜装置(基板処理装置)110と、ドライエッチング装置120と、保護膜除去装置130と、を備える。なお、成膜装置110とドライエッチング装置120の間は、大気雰囲気で基板Wが搬送される構成であってもよく、真空雰囲気で基板Wが搬送される構成であってもよい。
【0012】
成膜装置110は、基板Wに後述する保護膜320(
図3参照)を形成する成膜装置である。保護膜320として、例えば、MgO膜を形成する。なお、成膜装置110は、ALD(Atomic Layer Deposition)装置を用いることができる。成膜装置110に付いての詳細は、
図4を用いて後述する。成膜装置110は、ALD装置に限定されるものではなく、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置であってもよい。
【0013】
ドライエッチング装置120は、基板Wにドライエッチング処理を施す装置である。ドライエッチング装置120は、例えば、基板Wに形成されたSiO2をエッチングする。また、ドライエッチング装置120は、平行平板型のプラズマエッチング装置を用いることができる。平行平板型のプラズマエッチング装置は、容量結合プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)を生成する。また、プラズマエッチング装置は、例えばエッチングガスとしてCF系ガス(炭素(C)とフッ素(F)を含むガス)を含むドライエッチング装置であって、基板Wの垂直方向にイオンを衝突させ、垂直方向にエッチング(異方性エッチング)する。なお、CF系ガスは、例えばC4F8ガス、CF4ガス等を用いることができる。また、エッチングガスは、CF系ガスに加えてO2ガスを添加してもよい。また、エッチングガスは、ArガスやN2ガスを添加してもよい。
【0014】
なお、保護膜320は、ドライエッチング処理に対してエッチング耐性を有しており、ドライエッチング処理の際に下地膜310を保護する。
【0015】
保護膜除去装置130は、基板Wに形成された保護膜320を除去する装置である。保護膜除去装置130は、基板Wに純水(DIW:De Ionized Water)を供給して基板Wを洗浄する洗浄装置である。
【0016】
ここで、保護膜320は、水(純水)に対して可溶性を有している。保護膜除去装置130は、基板Wに純水洗浄処理を施すことにより、基板Wに形成された保護膜320を水で溶解して除去する。
【0017】
次に、基板処理システム100の基板処理方法の一例について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、基板処理方法の一例を示すフローチャートである。
図3は、各ステップにおける基板Wの断面模式図の一例である。
【0018】
ステップS201において、下地膜310を有する基板Wを準備する。
【0019】
準備された基板Wの一例について、
図3(a)を用いて説明する。
図3(a)は、ステップS201で準備された基板Wの断面模式図の一例である。基板Wの層300の表面には、トレンチ形状等の凹部350が形成されている。また、凹部350の内壁及び底面には、下地膜310が形成されている。なお、下地膜310は、凹部350の内壁及び底面に形成されるものに限定されるものではない。また、下地膜310の膜種は、限定されるものではない。
【0020】
ステップS202において、基板Wに保護膜320を形成する。ここでは、成膜装置110によって基板Wの下地膜310の上に保護膜320が形成される。これにより、基板Wには、下地膜310及び保護膜320の積層構造が形成される。また、保護膜320は、ドライエッチング耐性を有するとともに、水によりエッチング及び除去が可能な膜である。また、保護膜320は、MgO膜である。
【0021】
保護膜320が形成された基板Wの一例について、
図3(b)を用いて説明する。
図3(b)は、ステップS202で保護膜320が形成された基板Wの断面模式図の一例である。保護膜320は、層300及び下地膜310の上に形成され、層300及び下地膜310を覆う。
【0022】
ここで、基板Wに保護膜320(MgO膜)を形成する成膜装置110について、
図4を用いて説明する。
図4は、成膜装置110の一例を示す概略図である。
【0023】
成膜装置110は、処理容器1、載置台2、シャワーヘッド3、排気部4、ガス供給部5及び制御部6を有する。
【0024】
処理容器1は、アルミニウム等の金属により構成され、略円筒状を有する。処理容器1は、基板Wを収容する。処理容器1の側壁には、基板Wを搬入又は搬出するための搬入出口11が形成されている。搬入出口11は、ゲートバルブ12により開閉される。処理容器1の本体の上には、断面が矩形状をなす円環状の排気ダクト13が設けられている。排気ダクト13には、内周面に沿ってスリット13aが形成されている。排気ダクト13の外壁には、排気口13bが形成されている。排気ダクト13の上面には、処理容器1の上部開口を塞ぐように天壁14が設けられている。排気ダクト13と天壁14との間は、シールリング15で気密に封止されている。
【0025】
載置台2は、処理容器1内で基板Wを水平に支持する。載置台2は、基板Wよりも大きい円板状を有し、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料や、アルミニウムやニッケル合金等の金属材料で構成されている。載置台2の内部には、基板Wを加熱するためのヒータ21が埋め込まれている。ヒータ21は、ヒータ電源(図示せず)から給電されて発熱する。そして、載置台2の上面の近傍に設けられた熱電対(図示せず)の温度信号によりヒータ21の出力を制御することにより、基板Wが所定の温度に制御される。載置台2には、上面の外周領域及び側面を覆うようにアルミナ等のセラミックスにより形成されたカバー部材22が設けられている。
【0026】
載置台2は、支持部材23に支持されている。支持部材23は、載置台2の底面中央から処理容器1の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器1の下方に延び、その下端が昇降機構24に接続されている。載置台2は、昇降機構24により、
図4において実線で示す処理位置と、その下方の二点鎖線で示す基板Wの搬送が可能な搬送位置との間で昇降する。支持部材23の処理容器1の下方には、鍔部25が取り付けられている。処理容器1の底面と鍔部25との間には、ベローズ26が設けられている。ベローズ26は、処理容器1内の雰囲気を外気と区画し、載置台2の昇降動作にともなって伸縮する。
【0027】
処理容器1の底面近傍には、昇降板27aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)のウエハ支持ピン27が設けられている。ウエハ支持ピン27は、処理容器1の下方に設けられた昇降機構28により昇降板27aを介して昇降する。ウエハ支持ピン27は、搬送位置にある載置台2に設けられた貫通孔2aに挿通されて載置台2の上面に対して突没可能となっている。ウエハ支持ピン27を昇降させることにより、搬送ロボット(図示せず)と載置台2との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0028】
シャワーヘッド3は、処理容器1内に処理ガスをシャワー状に供給する。シャワーヘッド3は、例えば金属材料により形成され、載置台2に対向して配置されている。シャワーヘッド3は、載置台2とほぼ同じ直径を有する。シャワーヘッド3は、本体部31及びシャワープレート32を含む。本体部31は、天壁14の下面に固定されている。シャワープレート32は、本体部31の下に接続されている。本体部31とシャワープレート32との間には、ガス拡散空間33が形成されている。ガス拡散空間33には、天壁14及び本体部31の中央を貫通するようにガス導入孔36,37が設けられている。シャワープレート32の周縁部には、下方に突出する環状突起部34が形成されている。シャワープレート32における環状突起部34の内側の平坦面には、多数のガス吐出孔35が形成されている。
【0029】
載置台2が処理位置に存在した状態では、載置台2とシャワープレート32との間に処理空間38が形成され、カバー部材22の上面と環状突起部34とが近接して環状隙間39が形成される。
【0030】
排気部4は、処理容器1の内部を排気する。排気部4は、排気配管41及び排気機構42を含む。排気配管41は、排気口13bに接続されている。排気機構42は、排気配管41に接続されており、真空ポンプ、圧力制御バルブ等を含む。排気機構42は、排気ダクト13及び排気配管41を介して、処理容器1内のガスを排気する。
【0031】
ガス供給部5は、シャワーヘッド3に各種のガスを供給する。ガス供給部5は、原料ガス供給源51a、パージガス供給源52a、キャリアガス供給源53a、酸素含有ガス供給源54a、パージガス供給源55a及びキャリアガス供給源56aを有する。
【0032】
原料ガス供給源51aは、ガス供給ライン51bを介して原料ガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン51bには、上流側から流量制御器51c、貯留タンク51d及びバルブ51eが介設されている。ガス供給ライン51bのバルブ51eの下流側は、ガス導入孔37に接続されている。原料ガス供給源51aから供給される原料ガスは処理容器1内に供給される前に貯留タンク51dで一旦貯留され、貯留タンク51d内で所定の圧力に昇圧された後、処理容器1内に供給される。貯留タンク51dから処理容器1への原料ガスの供給及び停止は、バルブ51eにより行われる。このように貯留タンク51dへ原料ガスを一旦貯留することで、原料ガスを比較的大きい流量で短時間に処理容器1内へ供給できる。
【0033】
パージガス供給源52aは、ガス供給ライン52bを介してパージガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン52bには、上流側から流量制御器52c、貯留タンク52d及びバルブ52eが介設されている。ガス供給ライン52bのバルブ52eの下流側は、ガス供給ライン51bに接続されている。パージガス供給源52aから供給されるパージガスは処理容器1内に供給される前に貯留タンク52dで一旦貯留され、貯留タンク52d内で所定の圧力に昇圧された後、処理容器1内に供給される。貯留タンク52dから処理容器1へのパージガスの供給及び停止は、バルブ52eにより行われる。このように貯留タンク52dへパージガスを一旦貯留することで、パージガスを比較的大きい流量で短時間に処理容器1内へ供給できる。
【0034】
キャリアガス供給源53aは、ガス供給ライン53bを介してキャリアガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン53bには、上流側から流量制御器53c、バルブ53e及びオリフィス53fが介設されている。ガス供給ライン53bのオリフィス53fの下流側は、ガス供給ライン51bに接続されている。キャリアガス供給源53aから供給されるキャリアガスは基板Wの成膜中に連続して処理容器1内に供給される。キャリアガス供給源53aから処理容器1へのキャリアガスの供給及び停止は、バルブ53eにより行われる。オリフィス53fは、貯留タンク51d,52dによってガス供給ライン51b,52bに供給される比較的大きい流量のガスがガス供給ライン53bに逆流することを抑制する。
【0035】
酸素含有ガス供給源54aは、ガス供給ライン54bを介して酸素含有ガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン54bには、上流側から流量制御器54c、貯留タンク54d及びバルブ54eが介設されている。ガス供給ライン54bのバルブ54eの下流側は、ガス導入孔36に接続されている。酸素含有ガス供給源54aから供給される酸素含有ガスは処理容器1内に供給される前に貯留タンク54dで一旦貯留され、貯留タンク54d内で所定の圧力に昇圧された後、処理容器1内に供給される。貯留タンク54dから処理容器1への酸素含有ガスの供給及び停止は、バルブ54eにより行われる。このように貯留タンク54dへ酸素含有ガスを一旦貯留することで、酸素含有ガスを比較的大きい流量で短時間に処理容器1内へ供給できる。
【0036】
パージガス供給源55aは、ガス供給ライン55bを介してパージガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン55bには、上流側から流量制御器55c、貯留タンク55d及びバルブ55eが介設されている。ガス供給ライン55bのバルブ55eの下流側は、ガス供給ライン54bに接続されている。パージガス供給源55aから供給されるパージガスは処理容器1内に供給される前に貯留タンク55dで一旦貯留され、貯留タンク55d内で所定の圧力に昇圧された後、処理容器1内に供給される。貯留タンク55dから処理容器1へのパージガスの供給及び停止は、バルブ55eにより行われる。このように貯留タンク55dへパージガスを一旦貯留することで、パージガスを比較的大きい流量で短時間に処理容器1内へ供給できる。
【0037】
キャリアガス供給源56aは、ガス供給ライン56bを介してキャリアガスを処理容器1内に供給する。ガス供給ライン56bには、上流側から流量制御器56c、バルブ56e及びオリフィス56fが介設されている。ガス供給ライン56bのオリフィス56fの下流側は、ガス供給ライン54bに接続されている。キャリアガス供給源56aから供給されるキャリアガスは基板Wの成膜中に連続して処理容器1内に供給される。キャリアガス供給源56aから処理容器1へのキャリアガスの供給及び停止は、バルブ56eにより行われる。オリフィス56fは、貯留タンク54d,55dによってガス供給ライン54b,55bに供給される比較的大きい流量のガスがガス供給ライン56bに逆流することを抑制する。
【0038】
ここで、原料ガスは、少なくともマグネシウム(Mg)を含有する有機金属ガスである。具体的には、原料ガスとして、
ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム (C5H5)2Mg、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)マグネシウム (CH3C5H4)2Mg、
ビス(エチルシクロペンタジエニル)マグネシウム (C2H5C5H4)2Mg、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)マグネシウム ((CH3)5C5)2Mg、
エチルブチルマグネシウム C6H14Mg、
ジブチルマグネシウム (C4H9)2Mg、
ビス(ジイソプロピルアミノ)マグネシウム C12H28N2Mg、
等のいずれかを用いることができる。
【0039】
酸素含有ガスは、O3ガスである。また、酸素含有ガスは、O2ガスとO3ガスの混合ガス(O2ガスが添加されたO3ガス)であってもよい。また、酸素含有ガスは、基板Wに吸着されたマグネシウム(Mg)を含有する有機金属ガスを酸化する酸化剤の一例である。
【0040】
パージガス及びキャリアガスは、例えばN2ガス、Arガス等の不活性ガスを用いることができる。
【0041】
制御部6は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置等を備える。CPUは、ROM又は補助記憶装置に格納されたプログラムに基づいて動作し、成膜装置110の動作を制御する。制御部6は、成膜装置110の内部に設けられていてもよく、外部に設けられていてもよい。制御部6が成膜装置110の外部に設けられている場合、制御部6は、有線又は無線等の通信ネットワークによって、成膜装置110を制御できる。
【0042】
次に、成膜装置110の成膜処理の一例について、
図5を用いて説明する。
図5は、成膜装置110の成膜処理の一例を示すフローチャートである。
【0043】
ステップS501において、基板Wを準備する。ここで、基板Wには、
図3(a)に示すように下地膜310が形成されている。
【0044】
最初に、バルブ51e~56eが閉じられた状態で、ゲートバルブ12を開いて搬送ロボット(図示せず)により基板Wを処理容器1内に搬送し、搬送位置にある載置台2に載置する。搬送ロボットを処理容器1内から退避させた後、ゲートバルブ12を閉じる。載置台2のヒータ21により基板Wを所定の成膜温度(例えば250℃以下)に加熱すると共に載置台2を処理位置まで上昇させ、処理空間38を形成する。また、排気機構42の圧力制御バルブにより処理容器1内を所定の圧力に調整する。
【0045】
次いで、バルブ53e,56eを開き、キャリアガス供給源53a,56aから夫々ガス供給ライン53b,56bに所定の流量のキャリアガスを供給する。また、原料ガス供給源51a、パージガス供給源52a、酸素含有ガス供給源54a及びパージガス供給源55aから夫々原料ガス、パージガス、酸素含有ガス及びパージガスをガス供給ライン51b,52b,54b,55bに供給する。このとき、バルブ51e,52e,54e,55eが閉じられているので、原料ガス、パージガス、酸素含有ガス及びパージガスは、貯留タンク51d,52d,54d,55dに夫々貯留され、貯留タンク51d,52d,54d,55d内が昇圧する。
【0046】
ステップS502において、基板Wが配置された処理空間38に原料ガスを供給する。制御部6は、バルブ51eを開く。そして、制御部6は、所定の時間が経過した後、バルブ51eを閉じる。これにより、貯留タンク51dに貯留された原料ガスを処理容器1の処理空間38内に供給し、原料ガスを基板Wの上に吸着させる。
【0047】
ステップS503において、基板Wが配置された処理空間38にパージガスを供給する。制御部6は、バルブ52e,55eを開く。そして、制御部6は、所定の時間が経過した後、バルブ52e,55eを閉じる。これにより、貯留タンク52d,55dに貯留されたパージガスを処理容器1の処理空間38内に供給し、処理容器1内に残留する原料ガスが速やかに排気配管41へと排出され、処理容器1内が原料ガス雰囲気からパージガス雰囲気に短時間で置換される。
【0048】
ステップS504において、基板Wが配置された処理空間38に酸化剤を供給する。ここでは、酸化剤として、酸素含有ガス(O3ガス)を供給する。制御部6は、バルブ54eを開く。そして、制御部6は、所定の時間が経過した後、バルブ54eを閉じる。これにより、貯留タンク54dに貯留された酸素含有ガスを処理容器1の処理空間38内に供給し、基板Wの上に吸着した原料ガスが酸素含有ガスによって酸化され、MgOを形成する。
【0049】
ステップS505において、基板Wが配置された処理空間38にパージガスを供給する。制御部6は、バルブ52e,55eを開く。そして、制御部6は、所定の時間が経過した後、バルブ52e,55eを閉じる。これにより、貯留タンク52d,55dに貯留されたパージガスを処理容器1の処理空間38内に供給し、処理容器1内に残留する酸素含有ガスが速やかに排気配管41へと排出され、処理容器1内が酸素含有ガス雰囲気からパージガス雰囲気に短時間で置換される。
【0050】
ステップS506において、ステップS502からステップS505の処理をALDプロセスの1サイクルとして、サイクルを所定回数繰り返したか否かを判定する。所定回数繰り返していない場合(S506・NO)、制御部6の処理はステップS502に戻る。所定回数繰り返した場合(S506・YES)、制御部6による成膜処理を終了する。
【0051】
このように、ALDプロセス(ステップS502からステップS505)のサイクルを所定回数繰り返すことにより、基板Wに予め定められた膜厚のMgO膜(保護膜320)が形成される。また、ALDプロセスによってMgO膜を成膜することにより、カバレッジよく成膜することができる。
【0052】
その後、処理容器1内への搬入時とは逆の手順で基板Wを処理容器1から搬出する。
【0053】
なお、上記の例では、ステップS503及びステップS505において、貯留タンク52d,55dに貯留されたパージガスを処理容器1内に供給して処理容器1内をパージする場合を説明したが、これに限定されない。例えば、キャリアガス供給源53a,56aから処理容器1内に供給されるキャリアガスによって処理容器1内をパージしてもよい。
【0054】
また、ステップS504において、基板Wが配置された処理空間38に酸素含有ガスを供給するものとして説明したが、これに限られるものではない。成膜装置110は、リモートプラズマを生成し、酸素ラジカルを処理容器1の処理空間38内に供給するリモートプラズマ装置(図示せず)を備えていてもよい。この場合、ステップS504において、基板Wが配置された処理空間38にリモートプラズマ装置(図示せず)から酸素ラジカルを供給する構成であってもよい。これにより、基板Wの上に吸着した原料ガスが酸素ラジカルによって酸化され、MgOを形成する。また、酸素ラジカルは、基板Wに吸着されたマグネシウム(Mg)を含有する有機金属ガスを酸化する酸化剤の一例である。
【0055】
図2及び
図3に戻り、ステップS203において、下地膜310及び保護膜320の積層構造が形成された基板Wにドライエッチング処理を施す。ここでは、ドライエッチング装置120によって基板Wにドライエッチング処理が施される。ここで、基板Wには、下地膜310及び下地膜310を覆う保護膜320の積層構造が形成された第1の部分と、ドライエッチング処理によって形状を加工するエッチング対象膜(例えば、SiO
2膜)を有する第2の部分と、を有している。ここでは、基板Wにドライエッチング処理を施すことにより、第2の部分のエッチング対象膜の形状を加工する。
【0056】
ここで、保護膜320は、ドライエッチング耐性を有し、ステップS203に示すドライエッチング処理から下地膜310を保護する。また、ドライエッチング処理後において、下地膜310の上には保護膜320が残存している。
【0057】
ステップS204において、下地膜310及び保護膜320の積層構造が形成された基板WにDIW処理(純水による洗浄処理)を施す。
【0058】
DIW処理後の基板Wの一例について、
図3(c)を用いて説明する。
図3(c)は、ステップS204で処理された後の基板Wの断面模式図の一例である。
【0059】
ここで、保護膜320が水(純水)に対して可溶性を有することにより、下地膜310を覆う保護膜320が除去される。
【0060】
このように、水(純水)を用いて保護膜320を好適に除去することができる。ここで、酸等の薬液を用いて保護膜を除去する構成において、薬液により下地膜が腐食するおそれがある。これに対し、本実施例では、水(純水)を用いて保護膜320を除去することができるので、下地膜310の腐食を防止することができる。
【0061】
なお、本実施例のMgO膜は、ドライエッチング処理から下地膜310を保護する保護膜320として用いるものとして説明したが、これに限られるものではない。本実施例のMgO膜は、エッチングストップ膜として用いてもよい。
【0062】
即ち、ステップS202において、下地膜310の上にMgO膜(保護膜320)を成膜した後、MgO膜の上にSiO2膜(ドライエッチング処理におけるエッチング対象膜)を成膜する。その後、ステップS204において、基板Wにドライエッチング処理を施し、SiO2膜をドライエッチングする。この際、MgO膜をエッチングストップ膜として用いてもよい。
【0063】
次に、本実施例のMgO膜の特性について、
図6を用いて説明する。
図6は、ドライエッチング処理前後及びDIW処理後の膜厚の一例を示すグラフである。ここでは、本実施例のMgO膜(保護膜320)とドライエッチング処理のエッチング対象膜としてのシリコン酸化膜(SiO
2膜)とを比較する。具体的には、MgO膜の単膜(保護膜320に相当)を形成した基板及びSiO
2膜の単膜(上にMgO膜が設けられてないエッチング対象膜に相当)を形成した基板のそれぞれについて、ドライエッチング処理及びDIW処理を施し、ドライエッチング処理前後及びDIW処理後の膜厚を測定した。また、本実施例のMgO膜の膜厚の変化を符号610で示す。SiO
2膜の膜厚の変化を符号620で示す。
【0064】
この例では、原料ガスとしてビス(エチルシクロペンタジエニル)マグネシウムを用い、酸素含有ガスとしてO2ガスを含むO3ガスを用い、成膜温度を250℃として、本実施例のMgO膜を成膜した。
【0065】
また、ドライエッチング処理は、シリコン酸化膜(SiO2膜)をエッチングする条件とした。具体的には、C4F8ガスを含むエッチングガスを用いて基板Wをプラズマエッチングした。
【0066】
ドライエッチング処理前後における本実施例のMgO膜の膜厚の変化610とSiO2膜の膜厚の変化620とを対比して示すように、本実施例のMgO膜は、シリコン酸化膜(SiO2膜)と比較して高いエッチング耐性を有している。
【0067】
また、ドライエッチング処理後とDIW処理後において、符号620で示すSiO2膜の膜厚は、変化が見られなかった。これに対し、符号610で示すMgO膜の膜厚は、減少した。即ち、DIW処理後に示すように、本実施例のMgO膜は、水(純水)に対して溶解し、水(純水)を用いて除去することができる。
【0068】
次に、成膜温度とMgO膜の特性との関係について、
図7から
図10を用いて説明する。
【0069】
図7は、本実施例のMgO膜の成膜温度とALDプロセスの1サイクルあたりの成膜量(GPC:Growth Per Cycle)との関係を示すグラフの一例である。横軸は、成膜温度を示し、縦軸は成膜量(GPC)を示す。
【0070】
図8は、本実施例のMgO膜の成膜温度と密度との関係を示すグラフの一例である。横軸は、成膜温度を示し、縦軸はMgO膜の密度を示す。
【0071】
図9は、本実施例のMgO膜の成膜温度と膜組成との関係を示すグラフの一例である。横軸は、成膜温度を示し、縦軸は膜組成を示す。ここでは、エネルギー分散型X線分析(EDX:Energy dispersive X-ray spectroscopy)によってMgO膜の元素の組成を測定し、その中からマグネシウム(Mg)、酸素(O)、炭素(C)における組成比を検出した。
【0072】
図10は、本実施例のMgO膜の成膜温度と膜厚との関係を示すグラフの一例である。ここで、「INITIAL」は、DIW処理前のMgO膜の膜厚を示す。「Aft DIW 1min」は、基板Wを1分間DIW処理した後のMgO膜の膜厚を示す。「Aft DIW 6min」は、基板Wを6分間DIW処理した後のMgO膜の膜厚を示す。「Aft DIW 10min」は、基板Wを10分間DIW処理した後のMgO膜の膜厚を示す。
【0073】
図7に示すように、成膜温度250℃以下のMgO膜においては、成膜温度300以上のMgO膜と比較して、1サイクルあたりの成膜量が少なくなっている。
【0074】
また、
図8に示すように、成膜温度250℃以下のMgO膜においては、成膜温度300以上のMgO膜と比較して、膜密度が低くなっている。
【0075】
また、
図9に示すように、成膜温度250℃以下のMgO膜においては、成膜温度300以上のMgO膜と比較して、膜中の炭素(C)の割合が高くなっている。
【0076】
そして、
図10に示すように、成膜温度250℃以下のMgO膜においては、成膜温度300以上のMgO膜と比較して、DIW処理によって好適に除去できることを示している。
【0077】
以上の様に、
図7から
図9に示すように、成膜温度250℃以下のMgO膜と、成膜温度300℃以上のMgO膜とでは、膜の特性(成膜量、膜密度、組成比)が異なっている。このような相違によって、
図10に示すように、成膜温度250℃以下のMgO膜において、DIW処理によって好適に除去できることを示している。
【0078】
また、
図8と
図10を対比して示すように、MgO膜(保護膜320)の密度は、2.8[g/cm
3]以下であることが好ましい。これにより、DIW処理によって好適に除去可能なMgO膜(保護膜320)とすることができる。
【0079】
また、
図9と
図10を対比して示すように、MgO膜(保護膜320)におけるマグネシウム(Mg)、酸素(O)、炭素(C)における組成比において、炭素(C)の組成比が15[%]以上であることが好ましい。これにより、DIW処理によって好適に除去可能なMgO膜(保護膜320)とすることができる。
【0080】
以上、基板処理システム100による保護膜320(MgO膜)の形成方法及び保護膜320(MgO膜)の除去方法について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 処理容器
2 載置台
3 シャワーヘッド
4 排気部
5 ガス供給部
6 制御部
51a 原料ガス供給源
52a パージガス供給源
53a キャリアガス供給源
54a 酸素含有ガス供給源
55a パージガス供給源
56a キャリアガス供給源
100 基板処理システム
110 成膜装置
120 ドライエッチング装置
130 保護膜除去装置
300 層
310 下地膜
320 保護膜
350 凹部
W 基板