(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119288
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 5/00 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
C12N5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026078
(22)【出願日】2023-02-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和4年5月10日 ウェブサイトに掲載 https://member.spsj.or.jp/convention/spsj2022/ https://member.spsj.or.jp/convention/spsj2022/index.php?id=3P4B043 2.令和4年5月27日 第71回高分子学会にて公開 https://member.spsj.or.jp/convention/spsj2022/ 3.令和4年11月10日 ウェブサイトに掲載 http://www.kokuhoken.jp/jsb44/abstract.html 4.令和4年11月21日 第44回日本バイオマテリアル学会大会にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 典弥
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065BB18
4B065BB40
4B065BC47
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】グルコースの徐放性を制御可能で、細胞培養の足場材料となり得る組成物を提供する。
【解決手段】高分子ゲルと、グルコース重合体と、糖質加水分解酵素と、を含み、グルコース徐放性を有する組成物である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子ゲルと、グルコース重合体と、糖質加水分解酵素と、を含む組成物。
【請求項2】
グルコース徐放性を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記高分子ゲルは、アルギン酸カルシウムを含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記グルコース重合体は、分子量が1kDa以上100kDa以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記グルコース重合体は、グリコーゲン、マルトデキストリン、デキストリン及びセルロースからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記糖質加水分解酵素は、アミログルコシダーゼ及びセルラーゼからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記高分子ゲルを形成する高分子化合物に対する前記グルコース重合体の含有量の質量比が、0.1以上0.5以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記糖質加水分解酵素に対する前記グルコース重合体の含有量の質量比が、0.1以上0.5以下である請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生体外で構築した組織体を用いる再生医療が注目されている。しかしながら、組織体の内部へ栄養素を供給することの困難性により、200μm以上の厚みを有する組織体の構築は未だ困難である。例えば、非特許文献1には、栄養素であるグルコースを徐放可能な足場材料として、グルコース重合体と加水分解酵素を用いるグルコース供給性ハイドロゲルが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J. F. Mano et al., Mater. Horiz. 2022, 9, 694.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一態様は、グルコースの徐放性を制御可能で、細胞培養の足場材料となり得る組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一態様は、高分子ゲルと、グルコース重合体と、糖質加水分解酵素と、を含む組成物である。一態様において組成物はグルコース徐放性を有していてよい。組成物における高分子ゲルは、アルギン酸カルシウムを含んでいてよい。組成物におけるグルコース重合体は、分子量が1kDa以上100kDa以下であってよく、グリコーゲン、マルトデキストリン、デキストリン及びセルロースからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。組成物における糖質加水分解酵素は、アミログルコシダーゼ及びセルラーゼからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。組成物は、高分子ゲルを形成する高分子化合物に対するグルコース重合体の含有量の質量比が、0.1以上0.5以下であってよく、糖質加水分解酵素に対するグルコース重合体の含有量の質量比が、0.1以上0.5以下であってよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、グルコースの徐放性を制御可能で、細胞培養の足場材料となり得る組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】高分子ゲルにおけるグルコース重合体及び糖質加水分解酵素の担持状態を示すグラフである。
【
図2】高分子ゲルからのグルコースの放出を示すグラフである。
【
図3】高分子ゲルからのグルコースの徐放性を示すグラフである。
【
図4】マウス筋芽細胞の分化誘導条件における培養7日後の生存細胞数を示すグラフである。
【
図5】細胞培養培地のグルコース濃度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限及び下限は、数値範囲として例示された数値をそれぞれ任意に選択して組み合わせることが可能である。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、組成物を例示するものであって、本発明は、以下に示す組成物に限定されない。
【0009】
本実施形態に係る組成物は、高分子ゲルと、グルコース重合体と、糖質加水分解酵素と、を含む。組成物はグルコースの徐放性を有するように構成されていてよく、制御可能なグルコース徐放性を有していてよい。組成物においては、例えば、水不溶性の親水性高分子から形成される高分子ゲルをマイクロカプセルとし、グルコース重合体と糖質加水分解酵素をマイクロカプセルに内包することで、グルコース重合体が加水分解されて生成するグルコースがマイクロカプセル内を拡散してマイクロカプセルから徐放される。ここで糖質加水分解酵素のグルコース重合体に対する酵素活性を制御することで、グルコースの徐放性を制御することができる。組成物は、グルコース重合体を内包するマイクロカプセルであってよく、グルコース徐放性マイクロカプセルであってよい。また、組成物は、グルコース重合体を内包する細胞培養用の足場材料であってよく、細胞培養用のグルコース徐放性足場材料であってよい。
【0010】
高分子ゲルは、水不溶性であって、水中でグルコース重合体と糖質加水分解酵素を内包可能なものであればよい。高分子ゲルを構成する高分子化合物自体は水溶性であっても、金属塩(例えば、アルカリ土類金属塩)等の誘導体の状態で水不溶性のゲルを形成可能であればよい。
【0011】
高分子ゲルを形成する高分子化合物としては、多糖又はその誘導体、ビニルポリマー、タンパク質、ポリアミノ酸等を挙げることができる。多糖としては、例えばアルギン酸、ヒアルロン酸等を挙げることができる。多糖を構成する単糖としては、例えばグルコース、マンヌロン酸、グルロン酸等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいればよい。多糖を構成する単糖は、好ましくはマンヌロン酸及びグルロン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいればよい。多糖の分子量は、例えば1kDa以上100kDa以下であってよく、好ましくは5kDa以上50kDa以下であってよい。多糖誘導体として具体的にはアルギン酸カルシウム等を挙げることができる。多糖誘導体は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
組成物における高分子ゲルの含有量は、乾燥状態の高分子化合物の含有量として、例えば0.1質量%以上10質量%以下であってよく、好ましくは0.5質量%以上、又は5質量%以下であってよい。
【0013】
グルコース重合体は、多数のグルコースがグリコシド結合して形成され、糖質加水分解酵素でグルコースを放出可能な化合物あればよい。グルコース重合体を構成するグルコースは、α-グルコース、β-グルコースのいずれであってもよく、α-グルコースとβ-グルコースの両方を含んでいてもよい。グルコース重合体は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、好ましくは分岐鎖状であってよい。グルコース重合体の分子量は、例えば1kDa以上200kDa以下であってよく、好ましくは10kDa以上、又は150kDa以下であってよい。
【0014】
グルコース重合体の具体例としては、グリコーゲン、マルトデキストリン、デキストリン、セルロース等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。グルコース重合体は、好ましくは少なくともグリコーゲンを含んでいてよい。グルコース重合体は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
組成物におけるグルコース重合体の含有量は、例えば0.01質量%以上10質量%以下であってよく、好ましくは0.1質量%以上、又は5質量%以下であってよい。
【0016】
組成物におけるグルコース重合体の含有量は、高分子ゲルを形成する高分子化合物の乾燥状態での含有量に対する質量比として、例えば0.1以上5以下であってよく、好ましくは0.8以上、又は1以下であってよい。
【0017】
糖質加水分解酵素は、グルコース重合体を加水分解してグルコースを遊離可能な酵素であればよい。糖質加水分解酵素にはアノマー反転型酵素とアノマー保持型酵素とがあるが、これらのいずれであってもよい。糖質加水分解酵素は、α-1,4-グリコシド結合又はα-1,6-グリコシド結合を特異的に加水分解するものであってよく、両方を加水分解可能なものであってもよい。
【0018】
糖質加水分解酵素として具体的には、アミログルコシダーゼ、セルラーゼ等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。糖質加水分解酵素は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
組成物における糖質加水分解酵素の含有量は、例えば0.001質量%以上1質量%以下であってよく、好ましくは0.01質量%以上、又は0.5質量%以下であってよい。
【0020】
組成物における糖質加水分解酵素の含有量は、糖質加水分解酵素の含有量に対するグルコース重合体の含有量の質量比として、例えば0.01以上5以下であってよく、好ましくは0.1以上、又は1以下であってよい。
【0021】
組成物は、液媒体を更に含んでいてもよい。組成物に含まれる液媒体としては、例えば水、生理食塩水、細胞培養液、緩衝液等が挙げられる。
【0022】
組成物は、高分子ゲル、グルコース重合体及び糖質加水分解酵素に加えて、その他の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、脂肪酸、乳酸等が挙げられる。
【0023】
組成物の表面は、高分子やタンパク質等で表面処理されていてもよい。表面処理されていることで、例えば細胞の接着性がより向上し、細胞培養の足場材料としてより好適に利用することができる。
【0024】
組成物の形状としては、例えば粒子状、繊維状、紐状、膜状等が挙げられる。組成物の形状が粒子状である場合、その体積平均粒径は、例えば0.1μm以上5mm以下であってよく、好ましくは1μm以上、又は3mm以下であってよい。組成物の体積平均粒径は、体積基準の粒度分布において小径側からの体積累積50%に対応する粒径として測定される。
【0025】
グルコース重合体と糖質加水分解酵素を内包し、高分子ゲルで形成される粒子状の組成物は、例えば以下のような製造方法で製造することができる。組成物の製造方法は、水溶性の高分子化合物の水溶液に所望のグルコース重合体と糖質加水分解酵素を添加して得られる前駆体溶液を準備する第1工程と、高分子化合物をゲル化可能なゲル化剤を含む水溶液に、準備した前駆体溶液を添加して高分子化合物をゲル化する第2工程と、を含む。
【0026】
第1工程では前駆体溶液を準備する。前駆体溶液は、例えば水溶性の高分子化合物とグルコース重合体と糖質加水分解酵素と水を含む液媒体とを混合することで調製することができる。また、水溶性の高分子化合物の水溶液とグルコース重合体と糖質加水分解酵素とを混合することで調製してもよい。第1工程に用いる水溶性の高分子化合物としては、例えばアルギン酸ナトリウム塩、ジェランガム等を挙げることができる。グルコース重合体及び糖質加水分解酵素については既述の通りである。
【0027】
前駆体溶液における高分子化合物の含有量は、例えば0.1質量%以上10質量%以下であってよく、好ましくは0.3質量%以上、又は5質量%以下であってよい。前駆体溶液におけるグルコース重合体の含有量は、例えば0.01質量%以上10質量%以下であってよく、好ましくは0.1質量%以上、又は5質量%以下であってよい。前駆体溶液における糖質加水分解酵素の含有量は、例えば0.001質量%以上1質量%以下であってよく、好ましくは0.01質量%以上、又は0.5質量%以下であってよい。
【0028】
前駆体溶液は、高分子化合物、グルコース重合体及び糖質加水分解酵素に加えて、その他の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分としては、pH調整剤、脂肪酸、乳酸、アミノ酸等が挙げられる。前駆体溶液のpHは、例えば3以上8以下であってよく、好ましくは7丸以上、又は8以下であってよい。
【0029】
第2工程では、高分子化合物をゲル化可能なゲル化剤を含む水溶液に、準備した前駆体溶液を添加することで高分子化合物をゲル化して組成物を得る。
【0030】
第2工程におけるゲル化剤は、水溶性の高分子化合物をゲル化可能な物質であればよく、例えば塩化カルシム、硫酸カルシウム、塩化鉄等を挙げることができる。
【0031】
第2工程に用いるゲル化剤を含む水溶液におけるゲル化剤の含有量は、例えば0.1質量%以上10質量%以下であってよく、好ましくは1質量%以上、又は5質量%以下であってよい。
【0032】
ゲル化剤を含む水溶液への前駆体溶液の添加方法としては、例えばインクジェットヘッドからの吐出、シリンジからの吐出等を挙げることができる。第2工程において前駆体溶液の添加時には、必要に応じてゲル化剤を含む水溶液を撹拌してもよい。
【0033】
第2工程におけるゲル化剤を含む水溶液の温度は、例えば4℃以上60℃以下であってよく、好ましくは10℃以上、又は40℃以下であってよい。また、前駆体溶液の温度は、例えば4℃以上60℃以下であってよく、好ましくは10℃以上、又は40℃以下であってよい。
【0034】
第2工程において添加する前駆体溶液の総液量に対するゲル化剤を含む水溶液の液量の体積比は、例えば0.0001以上1以下であってよく、好ましくは0.001以上、又は0.01以下であってよい。
【0035】
組成物の製造方法は、第1工程及び第2工程に加えて、必要に応じて形成される組成物を分離する工程、精製する工程等をさらに含んでいてもよい。
【0036】
本発明は、以下の態様をも包含する。
[1] 高分子ゲルと、グルコース重合体と、糖質加水分解酵素と、を含む組成物。
【0037】
[2] グルコース徐放性を有する[1]に記載の組成物。
【0038】
[3] 前記高分子ゲルは、アルギン酸カルシウムを含む[1]又は[2]に記載の組成物。
【0039】
[4] 前記グルコース重合体は、分子量が1kDa以上100kDa以下である[1]から[3]のいずれかに記載の組成物。
【0040】
[5] 前記グルコース重合体は、グリコーゲン、マルトデキストリン、デキストリン及びセルロースからなる群から選択される少なくとも1種を含む[1]から[4]のいずれかに記載の組成物。
【0041】
[6] 前記糖質加水分解酵素は、アミログルコシダーゼ及びセルラーゼからなる群から選択される少なくとも1種を含む[1]から[5]のいずれかに記載の組成物。
【0042】
[7] 前記高分子ゲルを形成する高分子化合物に対する前記グルコース重合体の含有量の質量比が、0.1以上0.5以下である[1]から[6]のいずれかに記載の組成物。
【0043】
[8] 前記糖質加水分解酵素に対する前記グルコース重合体の含有量の質量比が、0.1以上0.5以下である[1]から[7]のいずれかに記載の組成物。
【実施例0044】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
参考例1
8.0mg/mLのアルギン酸ナトリウム水溶液200μLに、フルオレセイン修飾アミログルコシダーゼ(F-AMG)を終濃度1.0mg/mLになるように溶解して前駆体溶液を調製した。調製した前駆体溶液を、ノズル口径60μmのインクジェットプリンタを用いて、20mg/mLの塩化カルシウム水溶液2mLへ吐出して、参考例1のマイクロカプセルを製造した。マイクロカプセルの平均粒径は約2mmであった。
【0046】
参考例2
1.0mg/mLのフルオレセイン修飾アミログルコシダーゼ(F-AMG)の代わりに、ローダミンB修飾グリコーゲン(R-GLY)を終濃度10mg/mLになるように溶解して用いたこと以外は参考例1と同様にして、参考例2のマイクロカプセルを製造した。
【0047】
評価
上記で得られたマイクロカプセルをpH7.4の2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液中で37℃、1日間インキュベートし、F-AMGとR-GLYの担持率を蛍光画像より算出した。結果を
図1に示す。
【0048】
F-AMGとR-GLYは、1日間のインキュベート後においてもそれぞれ77%、61%保持されていることが確認された。これは、分子量がそれぞれ97kDaのAMGと、60kDaのGLYはマイクロカプセルのメッシュサイズよりも高分子量体であるため拡散せず保持されたためと考えられる。
【0049】
実施例1
1.0mg/mLのフルオレセイン修飾アミログルコシダーゼ(F-AMG)の代わりに、アミログルコシダーゼ(AMG)とグリコーゲン(GLY)を終濃度がそれぞれ1.0mg/mLおよび10mg/mLになるように溶解して用いたこと以外は参考例1と同様にして、実施例1のマイクロカプセル(GLY+/AMG+)を製造した。
【0050】
比較例1
アミログルコシダーゼ(AMG)とグリコーゲン(GLY)を添加しなかったこと以外は参考例1と同様にして、比較例1のマイクロカプセル(GLY-/AMG-)を製造した。
【0051】
比較例2
アミログルコシダーゼ(AMG)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のマイクロカプセル(GLY+/AMG-)を製造した。
【0052】
比較例3
グリコーゲン(GLY)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例3のマイクロカプセル(GLY-/AMG+)を製造した。
【0053】
評価
実施例1及び比較例1から3で得られたマイクロカプセルについて、pH7.4のHEPES緩衝液中、37℃で2時間インキュベートした。インキュベート後の上清について、グルコースアッセイキットを用いたグルコースアッセイにより、グルコース濃度を算出した。結果を
図2に示す。
【0054】
AMGとGLYの両方をマイクロカプセルに内包させることで、2時間インキュベート後に、約0.3mMのグルコースの放出が確認された
【0055】
実施例1で得られたマイクロカプセルについて、pH7.4のHEPES緩衝液中、37℃で24時間インキュベートした。インキュベート開始から30分後、1時間後及び24時間後の上清についてグルコース濃度を算出し、カプセル当たりのグルコース生成量を求めた。結果を
図3に示す。
【0056】
図3から、マイクロカプセルがグルコースの徐放性を有することが分かる。
【0057】
実施例2
80mg/mLのアルギン酸ナトリウム水溶液に30mg/mLのGLYと200μg/mLのAMGを混合して前駆体溶液を調製した。調製した前駆体溶液を200mg/mLの塩化カルシウム水溶液に滴下してアルギン酸ゲル粒子として実施例2のマイクロカプセル(Alginate scaffolds)を作製した。アルギン酸ゲル粒子の平均粒径は約2mmであった。
【0058】
細胞培養評価
1×10
5個のマウスC2C12筋芽細胞を24ウェルの底面に播種し、2mLのDMEM(10%FBSを含む)培地で2日間培養することで接着させた。その後、0mM、5.6mM又は25mMのグルコースを含む2mLのDMEM培地に変えて7日間培地交換をせずに培養した。また、実施例2で作製したアルギン酸ゲル粒子を30個(グルコース換算で5mMに相当)トランスウェル内部に入れ、グルコース不含のDMEM培地2mLと共に、2日間培養したC2C12筋芽細胞に加え、7日間培地交換をせずに培養した。7日間の培養後に培地を除去してPBSで洗浄後、トリパンブルーを用いて生存細胞数を計測した(n=3)。計測結果を
図4に、培地中のグルコース濃度の変化を
図5に示す。なお、生存細胞数は培養開始時の細胞数をそれぞれ100%とした相対値を示す。また、培地中のグルコース濃度は、グルコースアッセイキットを用いて測定した(n=3)。
【0059】
図4に示すように、培地にグルコースを添加しない場合(0mM)には生存細胞数が、培養開始時の32%程度となった。一方、培地にグルコースを5.6mM又は25mM添加することで分化した細胞が有意に増殖した。また、実施例2で得られたマイクロカプセル(Alginate scaffolds)を培地に添加した場合にも分化した細胞が有意に増殖した。