IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公立大学法人秋田県立大学の特許一覧 ▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119306
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】木材積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/04 20060101AFI20240827BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B27N3/04 C
B27M3/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026105
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】306024148
【氏名又は名称】公立大学法人秋田県立大学
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】足立 幸司
(72)【発明者】
【氏名】中村 健史
(72)【発明者】
【氏名】西原 光一
【テーマコード(参考)】
2B250
2B260
【Fターム(参考)】
2B250AA01
2B250AA13
2B250BA05
2B250CA11
2B260AA12
2B260BA04
2B260BA23
2B260CB04
2B260CC03
2B260CD02
2B260CD04
2B260CD06
2B260DA01
2B260DA09
2B260EA05
2B260EB19
(57)【要約】
【課題】
木材製品としての意匠性に優れ、曲げ加工を容易に行うことができ、特には常温での曲げ加工を行うことができ、さらにその加工形状を容易に保持することが可能な木材積層体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】
木製単板(A)層、セルロース系材料(B)層、および粘着剤(C)層を有する木材積層体であって、前記木製単板(A)層が、比重0.3以上0.5未満かつ厚み0.2~3mmの木製単板であり、前記セルロース系材料(B)層が、比重0.5以上かつ厚み0.2~3mmのセルロース系材料であることを特徴とする、木材積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製単板(A)層、セルロース系材料(B)層、および粘着剤(C)層を有する木材積層体であって、前記木製単板(A)層が、比重0.3以上0.5未満かつ厚み0.2~3mmの木製単板であり、前記セルロース系材料(B)層が、比重0.5以上かつ厚み0.2~3mmのセルロース系材料であることを特徴とする、木材積層体。
【請求項2】
前記木製単板(A)層の総体積(AV)に対する前記セルロース系材料(B)層の総体積(BV)の体積比(BV/AV)が、5/100以上60/100以下であることを特徴とする、請求項1に記載の木材積層体。
【請求項3】
前記木材積層体の比重が0.60以下であることを特徴とする、請求項2に記載の木材積層体。
【請求項4】
前記セルロース系材料(B)層が、比重0.5以上かつ厚み0.2~3mmの木製単板(b1)であることを特徴とする、請求項3に記載の木材積層体。
【請求項5】
前記セルロース系材料(B)層が、比重0.5以上0.8以下の木製単板(b1)であることを特徴とする、請求項4に記載の木材積層体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の木材積層体の製造方法であって、木製単板(A)、セルロース系材料(B)、および粘着剤(C)を積層し、圧力をかけて貼り合わせる工程を含み、前記粘着剤(C)が、シート状であることを特徴とする、木材積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材積層体に関する。特に、木材製品としての意匠性に優れ、曲げ加工を容易に行うことができ、さらにその加工形状を容易に保持することが可能な木材積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材は、木目などの木材特有の外観を備えており、たとえば「温かい」、「やわらかい」、「高級感」などの印象を与える意匠性に優れた材料である。その中でも、木材の単板を積層してなる合板は、小物、家具、建築材料など小型から大型の木質部材として幅広く用いられている。
木材は一般的に、あらかじめ特定の部品形状に加工したものを組み立てて用いられることが通常である。木材に一度曲げ加工や切削加工を施して作製した部品の形状を変えることは極めて困難であり、合板においても同様である。そのため、これら木質材料を加工した部品を運搬する際には、加工に由来して部品間に空隙が生じて輸送効率の低下を招いたり、特定の用途向けに加工した部品を他の用途に再利用するのが難しかったりといった課題が生じている。そのため、特に常温環境で容易に曲げなどの加工が可能な木質材料が望まれている。
【0003】
これまでに、合板もしくは木材の、応力に対する変形性を上げることでこの課題の解決を図る試みがなされてきている。例えば、特許文献1では、単板と柔軟性の高い粘着剤を組み合わせることで、合板の変形性を高める試みがなされており、特許文献2では、木材にパターン化された特定の切り込みを入れることで、木材に変形性を付与する試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-36359号公報
【特許文献2】特開2011-93249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが種々検討したところ、特許文献1の方法では常温での曲げ加工が容易である一方で、その加工形状を保持することが難しいという課題があることが判明した。すなわち、曲げ加工した合板に反発性があり、その加工形状を保持するためにはネジや釘を打つことなどで固定する必要がある一方で、ネジや釘で形状を固定しようとすると、単板が割れてしまう場合があるなど、加工形状を保持することが困難という課題があることが判明した。また、特許文献2で得られる木材は、一見して大きな切れ込みパターンを有することから、木材としての意匠性に課題があり、用途が限定されるなどの問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、木材製品としての意匠性に優れ、曲げ加工を容易に行うことができ、特には常温での曲げ加工を行うことができ、さらにその加工形状を容易に保持することが可能な木材積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の比重を有する木製単板(A)と、前記(A)の比重よりも大きい特定の比重を有するセルロース系材料(B)を用い、さらに粘着剤(C)を用いると共に、木製単板(A)とセルロース系材料(B)の厚みを特定範囲にすることで、木材製品としての意匠性に優れ、曲げ加工を容易に行うことができ、さらにその加工形状をネジや釘などで容易に保持し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1] 木製単板(A)層、セルロース系材料(B)層、および粘着剤(C)層を有する木材積層体であって、前記木製単板(A)層が、比重0.3以上0.5未満かつ厚み0.2~3mmの木製単板であり、前記セルロース系材料(B)層が、比重0.5以上かつ厚み0.2~3mmのセルロース系材料であることを特徴とする、木材積層体。
[2] 前記木製単板(A)層の総体積(AV)に対する前記セルロース系材料(B)層の総体積(BV)の体積比(BV/AV)が、5/100以上60/100以下であることを特徴とする、[1]に記載の木材積層体。
[3] 前記木材積層体の比重が、0.60以下であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の木材積層体。
[4] 前記セルロース系材料(B)層が、比重0.5以上かつ厚み0.2~3mmの木製単板(b1)であることを特徴とする、[1]~[3]のいずれかに記載の木材積層体。
[5] 前記セルロース系材料(B)層が、比重0.5以上0.8以下の木製単板(b1)であることを特徴とする、[1]~[4]のいずれかに記載の木材積層体。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の木材積層体の製造方法であって、木製単板(A)、セルロース系材料(B)、および粘着剤(C)を積層し、圧力をかけて貼り合わせる工程を含み、前記粘着剤(C)が、シート状であることを特徴とする、木材積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の木材積層体は、木材製品としての意匠性に優れ、曲げ加工を容易に行うことができ、さらにその加工形状をネジや釘などで容易に保持することができる。特に、常温での曲げ加工を容易に行うことができ、さらにその加工形状をネジや釘などで容易に保持することができる点で優れている。
【0010】
本発明者らは、木製単板(A)と、それより比重の高いセルロース系材料(B)を組み合わせると共に、木製単板(A)とセルロース系材料(B)の厚みを特定範囲に制御することにより、セルロース系材料(B)が有する保持力によってネジや釘などを固定することができ、さらに、木製単板(A)のずり変形による加工性を最大限発揮できるため、結果として、曲げ加工性を損なわずに、ネジや釘などを用いることによる形状保持性を向上することができたと考えている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものである。なお、本明細書において、「~」はその前後に記載された数字を含む数字の範囲を表す。
【0012】
本発明の一実施形態にかかる木材積層体(以下、「本木材積層体」という場合がある。)は、木製単板(A)層、セルロース系材料(B)層、および粘着剤(C)層を有する木材積層体であって、前記木製単板(A)層が、比重0.3以上0.5未満かつ厚み0.2~3mmの木製単板であり、前記セルロース系材料(B)層が、比重0.5以上かつ厚み0.2~3mmのセルロース系材料であることを特徴とする。
【0013】
<木製単板(A)層>
木製単板(A)層は、木製単板(A)から構成される層である。木製単板(A)は、比重0.3以上0.5未満かつ厚み0.2~3mmであることが必要である。
【0014】
木製単板(A)の比重は、本発明の効果を顕著に奏する観点、特に曲げ加工性を向上させる観点から、0.48以下が好ましく、より好ましくは0.46以下であり、さらにより好ましくは0.44以下であり、特に好ましくは0.42以下であり、殊に好ましくは0.40以下である。他方、木製単板(A)の比重は、本木材積層体の強度を確保する観点から、0.32以上が好ましく、より好ましくは0.34以上である。
【0015】
木製単板(A)の比重とは、本技術分野において慣用されている「気乾比重」の意味である。具体的には、木材を乾燥させた時の重さと、同じ体積の水の重さとを比べた比を意味するものであり、木材を乾燥させたとは気乾状態(JIS Z2101)であることを意味し、通常、気乾含水率約15%に達したときを意味する。
【0016】
木製単板(A)の厚みは、本発明の効果を顕著に奏する観点、特に曲げ加工性を向上させる観点から、0.3~2.8mmが好ましく、より好ましくは0.4~2.4mm、さらにより好ましくは0.5~2.0mmである。
【0017】
木製単板(A)を構成する木材としては、以下に限定されないが、例えば、スギ、ウェスタンヘムロック、ラジアタパイン、キハダ、シルバーファー、タイヒ、ベイヒ、ホオ、スプルース、ホワイトウッド、エゾマツ、サワグルミ、セコイア、ポプラ、ホワイトパイン、ヒメコマツ、コウヤマキ、ヒノキ、イエローパイン、ウイロー、オベチェ、スギ、クロマツ、ファルカタ、レッドシダー、ネズコ、サワラ、ビバ、モミなどが挙げられる。
【0018】
木製単板(A)は、前記の材料などを用い、公知の方法で製造された木製単板を用いることができる。公知の方法で製造された木製単板としては、例えば、特定の原木や当該原木を所定の大きさに製材したフリッチから切削装置を用いて製造された木製単板が挙げられる。より具体的には、特定の原木を桂剥きして得られるロータリー単板、特定の原木を平角材などにしてスライサーで平削して得られるスライス単板などが挙げられる。
また、木製単板(A)は、木製単板に加工を施したものを用いてもよい。木製単板の前記加工方法としては、以下に限定されないが、例えば、樹脂成分などを木製単板に含浸させる含浸加工などが挙げられる。なお、木製単板に加工を施した場合、その比重は、加工後の比重の値を用いる。
【0019】
<セルロース系材料(B)層>
セルロース系材料(B)層は、セルロース系材料(B)から構成される層である。セルロース系材料(B)は、比重0.5以上かつ厚み0.2~3mmであることが必要である。すなわち、前記木製単板(A)の比重よりも高い比重のセルロース系材料(B)を用いることが重要である。
【0020】
セルロース系材料(B)の比重は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、特には曲げ加工の形状保持性の観点から、0.52以上が好ましく、より好ましくは0.54以上、さらにより好ましくは0.56以上であり、特に好ましくは0.58以上であり、殊に好ましくは0.6以上である。他方、セルロース系材料(B)の比重は、本木材積層体を取り扱いやすくする観点で、0.9以下が好ましく、より好ましくは0.8以下である。
【0021】
セルロース系材料(B)の比重とは、木製単板(A)と同様、気乾比重を意味するものである。
【0022】
セルロース系材料(B)の厚みは、本発明の効果を顕著に奏する観点から、特には曲げ加工の形状保持性の観点から、0.3~2.8mmが好ましく、より好ましくは0.4~2.4mm、さらにより好ましくは0.5~2.0mmである。
【0023】
セルロース系材料(B)層の好ましい実施形態としては、例えば、比重0.5以上かつ厚み0.2~3mmの木製単板(b1)から構成される層が挙げられる。
かかる木製単板(b1)を構成する材料としては、以下に限定されないが、例えば、ブナ、チェリー、マンソニア、アフリカンマホガニー、アメリカンエルム、イディグボ、タイガーウッド、マグノリア、モンキーポッド、ヨーロピアンエルム、レバノンスギ、イチョウ、アボジラ、ヨーロピアンスイートチェスナット、ヨーロピアンライム、リンバ、イチイ、アカマツ、アルダー、カツラ、ダグラスファー、トチ、ニュージーランドシルバービーチ、クスノキ、アガチス、カヤ、ホースチェスナット、アメリカンホワイトウッド、カラマツ、シナ、セン、ベイヒバ、セイロンサテンウッド、ブラジリアンチューリップウッド、ツゲ、ホンジュラスローズウッド、ヨーロピアンボックスウッド、ジリコテ、パープルハート、ブビンガ、アカガシ、パウアマレロ、ゴンサロアルベス、オリーブ、ジャカランダ、チェチェン、マラカイボボックスウッド、ローレル、シラガシ、ラブルナム、パオロサ、ヒッコリー、レモンウッド、ツバキ、オバンコール、ゼブラウッド、タガヤサン、モアビ、ローズウッド、アフゼリア、アカシア、ホリー、アメリカンレッドオーク、アンダマンパドウク、アカギ、アメリカンホワイトオーク、クロガキ、ペロバロサ、ホワイトペロバ、パシフィックイチイ、パルダオ、ヨーロピアンオーク、アサダ、シュガーメープル、タスマニアンマートル、アオダモ、アルビジア、ペアウッド、ヨーロピアンアッシュ、ケヤキ、バーチ、アフロルモシア、ビーチ、ホワイトアッシュ、モビンギ、ラミン、インディアンシルバーグレイウッド、クイーンズランドウォルナット、コア、シュリザクラ、ナラ、マカバ、ヨーロッパイチイ、オーストラリアンブラックウッド、パドック、マホガニー、ユティレ、イタヤカエデ、イブキ、カリン、タブノキ、タモ、ダケカンバ、イロコ、ウォルナット、シラカバ、メルサワ、ヨーロピアンウォルナット、エンジュ、チーク、ニレ、サペリ、クワ、サンタマリア、マコレ、ケンポナシ、シカモア、スリッパリーエルム、ソフトメープル、マテバシイ、ヨーロピアンチェリー、アフリカンプテリゴタ、ヤマザクラなどが挙げられる。
【0024】
セルロース系材料(B)層を構成する前記木製単板(b1)は、前記の材料などを用い、公知の方法で製造された木製単板を用いることができる。公知の方法で製造された木製単板としては、例えば、特定の原木や当該原木を所定の大きさに製材したフリッチから切削装置を用いて製造された木製単板が挙げられる。より具体的には、特定の原木を桂剥きして得られるロータリー単板、特定の原木を平角材などにしてスライサーで平削して得られるスライス単板などが挙げられる。
また、木製単板(b1)は、木製単板に加工を施したものを用いてもよい。木製単板の前記加工方法としては、以下に限定されないが、例えば、樹脂成分などを木製単板に含浸させる含浸加工などが挙げられる。
【0025】
セルロース系材料(B)としては、前記木製単板(b1)以外にも、例えば、パーティクルボード、オリエンテッドストランドボード(OSB)などのように、前記の木材などの小片を主な原料として、接着剤などを用いて成形して得られる木質ボードが挙げられる。また、例えば、ミディアムデンシティファイバーボード(MDF)、ハードボード(HD)などのように、解繊された植物繊維を主な原料として、接着剤などを用いて成形して得られる木質繊維板が挙げられる。
【0026】
また、セルロース系材料(B)としては、例えば、浸漬法、ロールコート法、グラビアコート法などによって、樹脂含浸用原紙に樹脂を含浸させて得られる樹脂含浸紙が挙げられる。樹脂含浸紙に用いる樹脂含浸用原紙としては、例えば、薄葉紙、クラフト紙、チタン紙などの紙製基材、織布や不織布などの布製基材を挙げることができる。また、樹脂含浸紙に用いる樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂などが挙げられる。
なお、セルロース系材料(B)として、樹脂を加工したり接着剤で成形したりしたものを用いた場合、その比重は、加工後の比重の値を用いる。
【0027】
<粘着剤(C)層>
粘着剤(C)層は、粘着剤(C)から構成される層である。本木材積層体は、本発明の効果を奏する観点から、特に曲げ加工性の観点から、接着剤層ではなく、粘着剤(C)層を有することが必要である。
粘着剤(C)としては、例えば、アクリル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を用いてもよい。
【0028】
前記粘着剤(C)のなかでも、木製単板(A)およびセルロース系材料(B)層との密着性をより向上させる観点から、アクリル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤が好ましく、より好ましくはアクリル系粘着剤である。
【0029】
アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマー(アクリル系粘着剤全体の50質量%以上)とするアクリル系粘着剤などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とはアクリルあるいはメタクリルを意味する。
【0030】
粘着剤(C)のガラス転移温度(Tg)は20℃以下が好ましく、さらに好ましくは10℃以下、特に好ましくは0℃以下である。また、粘着剤(C)のガラス転移温度(Tg)は-100℃以上が好ましく、さらに好ましくは-70℃以上、特に好ましくは-50℃以上である。これらの範囲内であれば、前記密着性がさらに向上する傾向がある。
【0031】
なお、前記ガラス転移温度は、例えばFoxの式より算出されるものである。例えば、アクリル系粘着剤のガラス転移温度は、下記のとおり算出される。
【数1】
【0032】
すなわち、ガラス転移温度(Tg)は、粘着剤を構成するそれぞれの単量体をホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率を前記Foxの式に当てはめて算出した値である。なお、粘着剤を構成する単量体のホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JISK7121-1987や、JISK6240に準拠した方法で測定することができる。
【0033】
粘着剤(C)層は、木製単板(A)およびセルロース系材料(B)との密着性を損なわない範囲において、粘着剤(C)以外の添加剤を含むものであってもよい。前記添加剤としては、例えば、架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤などが挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上を用いてもよい。
【0034】
粘着剤(C)の形態は、ペレット状、粉末状、シート状などが挙げられるが、作業性の観点、および、本発明の効果を顕著に奏する観点から、シート状であることが好ましい。
【0035】
前記シート状の粘着剤(C)としては、基材の有無は問わないが、基材の両面に粘着剤が塗布されたものが好ましい。前記基材としては、例えば、不織布、合成樹脂フィルム、発泡体などが挙げられる。具体的には、ポリエステル製基材、不織布、ポリエチレン製基材、紙製基材、アクリルフォーム製基材などが挙げられる。
【0036】
粘着剤(C)層の厚みは、木材積層体の種類および形状などに応じ種々選択されるが、通常10~400μmであり、20~300μmが好ましく、30~250μmが特に好ましい。これらの範囲を下回ると、粘着剤(C)層と、木製単板(A)層およびセルロース系材料(B)層との密着性が低下する傾向がある。一方、これらの範囲を上回ると木材積層体の強度が低下する傾向がある。
【0037】
<その他の層>
本木材積層体は、本発明の効果を損なわない範囲において、木製単板(A)層、セルロース系材料(B)層および粘着剤(C)層以外に、その他の層を含んでいてもよい。その他の層としては、例えば、比重0.3未満の木質材料からなる層が挙げられる。また、その他の層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ナイロン610(PA610)、ナイロン6T(PA6T)、ポリフェニレンスルフィド、エラストマー、ポリスチレンなどの樹脂;鉄、ステンレス、銅、アルミなどの金属;CFRPなどの繊維強化プラスチックなどを単独でもしくは2種以上併せてなる材料により構成された層とすることもできる。
【0038】
本木材積層体は、前記その他の層を含んでいてもよいが、本発明の効果を顕著に奏する観点からは、本木材積層体において、前記その他の層を含まないことが好ましい。但し、本木材積層体において、任意の目的によって、前記その他の層を含む場合には、本木材積層体の総体積(WV)に対するその他の層の総体積(EV)の体積比(EV/WV)は、例えば、10/100未満が好ましく、より好ましくは5/100未満であり、特に好ましくは2/100未満である。
【0039】
<本木材積層体の製造方法>
本木材積層体は、木製単板(A)、セルロース系材料(B)、および粘着剤(C)を積層し、圧力をかけて貼り合わせる工程を含む製造方法により製造される。具体的には、本木材積層体は、下記に限定されないが、木製単板(A)とセルロース系材料(B)の少なくとも一方に粘着剤(C)を塗布するか、または両層間((A)と(B)の間)にシート状の粘着剤(C)を配置して、これらを加圧する工程を経て製造することができる。
【0040】
前記加圧する工程における圧力は、通常0.01~10MPaであり、0.1~5MPaが好ましく、0.2~2MPaが特に好ましい。これらの範囲を上回っても下回っても、目的とする木材積層体の形状を十分に担保できない傾向がある。
【0041】
また、本発明の木材積層体の製造方法としては、粘着剤(C)の種類や目的とする木材積層体の形状に応じて、加圧と共に加熱を行う工程を備えていてもよい。かかる工程における加熱温度は、60~150℃が好ましく、80~140℃がさらに好ましく、90~130℃が特に好ましい。なお、加熱方法としては、例えば、プレス設備からの伝熱で加熱する方法、熱風で加熱する方法、電磁波で加熱する方法など、一般に合板を製造する際に加熱する公知の手法を用いることができる。
【0042】
本木材積層体の製造方法において、木製単板(A)層とセルロース系材料(B)層の間に粘着剤(C)層を配置する方法としては、例えば、シート状の粘着剤(C)を木製単板(A)およびセルロース系材料(B)の間に配置させる方法;粘着剤(C)を溶液化して木製単板(A)および/またはセルロース系材料(B)に塗工した後に貼り合わせる方法;粒子状の粘着剤(C)を木製単板(A)およびセルロース系材料(B)の間に配置し加熱しながら溶融させる方法などが挙げられる。これらのなかでも、より簡便に本発明の木材積層体を製造できる観点から、シート状の粘着剤(C)を木製単板(A)とセルロース系材料(B)との間に配置させる方法が好ましい。
【0043】
<木材積層体>
本木材積層体は、木製単板(A)層、セルロース系材料(B)層、および粘着剤(C)層を各々少なくとも1層有する多層構成であればよく、その用途などに応じて、任意の層構成を採用し得る。
【0044】
本木材積層体の形状や厚みは、その用途などによって種々選択される。本木材積層体の厚みとしては、例えば、0.5~6.0cmが好ましく、0.7~5.0cmがさらに好ましく、0.8~4.0cmが特に好ましい。この範囲内であることによって、曲げ加工性と木材積層体の強度を両立させやすい傾向にある。
【0045】
本木材積層体における木製単板(A)層の層数は、木材積層体の厚みおよび形状に応じ種々選択されるが、一例としては、1~20層、3~18層、5~15層などが挙げられる。この範囲内であることによって、曲げ加工性と木材積層体の強度を両立させやすい傾向にある。木材積層体に含まれる複数の木製単板(A)層は、その種類および形状(厚みを含む)は、同じでも異なっていてもよい。
【0046】
本木材積層体におけるセルロース系材料(B)層の層数は、木材積層体の厚みおよび形状に応じ種々選択されるが、一例としては、1~12層、2~10層、3~8層などが挙げられる。この範囲内であることによって、曲げ加工性と木材積層体の強度を両立させやすい傾向にある。木材積層体に含まれる複数のセルロース系材料(B)層は、その種類および形状(厚みを含む)は、同じでも異なっていてもよい。
【0047】
本木材積層体における粘着剤(C)層の層数は、木製単板(A)層、セルロース系材料(B)層、その他の層の数に応じて設定される。木材積層体に含まれる複数の粘着剤(C)層は、その種類および形状(厚みを含む)は、同じでも異なっていてもよい。
【0048】
本木材積層体としては、曲げ加工を容易に行うことができ、さらにその加工形状を容易に保持できる上、軽量であり取り扱いやすくする観点から、本木材積層体における木製単板(A)層の総体積(AV)に対する前記セルロース系材料(B)層の総体積(BV)の体積比(BV/AV)が、5/100以上60/100以下であることが好ましい。本発明の効果を顕著に奏する観点からは、前記体積比(BV/AV)は、10/100以上が好ましく、15/100以上がより好ましく、20/100以上がさらに好ましく、30/100以上が特に好ましい。他方、前記体積比(BV/AV)は、55/100以下が好ましく、50/100以下がより好ましい。
【0049】
本木材積層体としては、曲げ加工を容易に行うことができ、さらにその加工形状を容易に保持できる観点から、本木材積層体(全層)の総体積(WV)に対する、前記木製単板(A)層および前記セルロース系材料(B)層の総体積(AV+BV)の体積比((AV+BV)/WV)が、80/100以上であることが好ましい。また、例えば、前記体積比((AV+BV)/WV)は、90/100以上、95/100以上、98/100以上であってもよい。
【0050】
本木材積層体の層構成としては、例えば、厚み方向の中央から厚み方向の一方端(表面)までの部分である第1の積層部と、その残部、すなわち前記厚み方向の中央から厚み方向の他方端(裏面)までの部分である第2の積層部とからなる木材積層体において、前記第1の積層部と前記第2の積層部の各々に、セルロース系材料(B1,B2)層を有することが好ましい。また、本木材積層体の層構成としては、前記第1の積層部および前記第2の積層部の各々に、セルロース系材料(B1,B2)層および木製単板(A1,A2)層を有することが好ましい。
また、前記第1の積層部および前記第2の積層部の各々に、セルロース系材料(B1,B2)層および木製単板(A1,A2)層を有し、さらに、前記第1の積層部における木製単板(A1)層の積層位置は、セルロース系材料(B1)層よりも一方端側の積層位置であり、第2の積層部における木製単板(A2)層の積層位置は、セルロース系材料(B2)層よりも他方端側の積層位置であることが好ましい。なお、前記木材積層体において、一方端側または他方端側に位置する木製単板(A1)層および木製単板(A2)層は、各々、木材積層体の最外層を構成するものであってもよいが、その他の層が最外層を構成するものであってもよい。
【0051】
本木材積層体の層構成としては、例えば、2以上の木製単板(A)層を有する木材積層体においては、木製単板(A)同士の繊維方向を平行に配置して積層されていることが好ましい(平行積層)。また、セルロース系材料(B)として木製単板(b1)を用いる場合であって、2以上の木製単板(b1)層を有する木材積層体においては、木製単板(b1)同士の繊維方向を平行に配置して積層されていることが好ましい(平行積層)。
また、2以上の木製単板(A)層を有する木材積層体においては、木製単板(A)同士の繊維方向を平行に配置して積層されていると共に、木製単板(b1)の繊維方向を木製単板(A)の繊維方向と平行にして積層されていることが好ましい。
特には、2以上の木製単板(A)層を有する木材積層体において、木材積層体に含まれる全ての木製単板(A)同士の繊維方向を平行に配置して積層されると共に、木材積層体に含まれる全ての木製単板(b1)の繊維方向を木製単板(A)の繊維方向と平行にして積層されることが好ましい。
【0052】
本木材積層体の比重は、取り扱い性を向上させる観点から、0.60以下であることが好ましく、より好ましくは0.58以下、さらにより好ましくは0.56以下である。また、本木材積層体の比重は、加工性を十分に発揮させる観点から、0.35以上であることが好ましく、0.40以上であることが特に好ましい。
なお、ここでの比重は気乾比重を表す。
【0053】
本木材積層体は、後記の実施例に記載の方法によって測定される木ネジ保持力(先穴3mm)が、例えば、220N以上であり、240N以上が好ましく、より好ましくは280N以上である。木ネジ保持力が下限値以上であることで、良好な形状保持性を付与することができる傾向にある。
【0054】
本木材積層体は、後記の実施例に記載の方法によって測定される釘頭貫通抵抗力(先穴3mm)が、例えば、850N以上であり、900N以上が好ましく、より好ましくは950N以上である。釘頭貫通抵抗力が下限値以上であることで、良好な形状保持性を付与することができる傾向にある。
【0055】
本木材積層体は、後記の実施例に記載の方法によって測定される曲げたわみ荷重(15mm)が、例えば、100N以下であり、70N以下が好ましく、より好ましくは50N以下である。曲げたわみ荷重が上限値以下であることで、良好な曲げ加工性を付与することができる傾向にある。
【0056】
本木材積層体の層構成の具体例としては、木製単板(A)層を「A1、A2、A3・・・」、セルロース系材料(B)層を「B1、B2、B3・・・」、粘着剤(C)層を「C1、C2、C3・・・」、その他の層を「D1、D2、D3・・・」と表記した場合、以下に限定されないが、例えば、「A1/C1/B1」、「A1/C1/B1/C2/A2/C3/A3/C4/B2/C5/A4」、「B1/A1/C1/B2/C2/A2/C3/A3/C4/B3/C5/A4/C6/B4」、「A1/C1/B1/C2/D1/C3/A2/C4/B2/C5/A3」、「D1/C1/A1/C2/B1/C3/A2/C4/A3/C5/B2/C6/A4/C7/D2」など任意の層構成を採用し得る。
【0057】
<本木材積層体を用いた曲げ加工保持方法>
本発明の一実施形態としては、木製単板(A)層、セルロース系材料(B)層、および粘着剤(C)層を有し、前記木製単板(A)層が、比重0.3以上0.5未満かつ厚み0.2~3mmの木製単板であり、前記セルロース系材料(B)層が、比重0.5以上かつ厚み0.2~3mmのセルロース系材料である木材積層体を準備する工程と、前記木材積層体に荷重を与えて曲げ部を形成する曲げ加工工程と、釘やネジなどの接合部材を用いて前記曲げ加工が施された木材積層体の形状を保持する形状保持工程とを含む、曲げ加工保持方法としても好適に提供される。
【0058】
前記曲げ加工工程としては、公知の工法を適宜用いることができ、以下に限定されないが、例えば、所定の支持台に木材積層体を架設し、所定の加工半径を有する曲げ加工型を用いて木材積層体に荷重を与えて、曲げ加工型に沿う形状の曲げ部を木材積層体に形成する工程が挙げられる。
前記形状保持工程としては、以下に限定されないが、例えば、前記曲げ加工が施された木材積層体の積層方向に沿って釘やネジなどの公知の接合部材のネジ込み又は打ち込みを行うことにより、木材積層体の形状を固定ないし保持する工程が挙げられる。また、前記ネジ込み又は打ち込みは、ドリルなどを用いて木材積層体に案内孔を設けてから行うものであってもよい。
【0059】
本木材積層体は、曲げ加工を容易に行うことができ、さらにその曲げ加工形状を釘やネジなどの公知の接合部材を用いて容易に保持することができる点で有用である。特に、常温(25℃程度)の条件下においても曲げ加工を容易に行うことができる点で極めて有用である。
【0060】
なお、前述の曲げ加工保持方法により、曲げ加工が施された本木材積層体は、必要に応じて、釘やネジなどの接合部材を取り外すことによって、再加工(例えば、加工半径の異なる曲げ加工型を用いた再加工)することもできる。そのため、本木材積層体は、リユースによる複数回使用ができる点でも有用である。
【0061】
<用途>
本木材積層体は、文具、小物、玩具、家具、建材、自動車部材などの木質部材ないし木製製品に好適に用いられる。
【実施例0062】
以下に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0063】
まず、下記の木製単板(A-1)、木製単板(A-2)、セルロース系材料(B-1)、粘着剤(C-1)、接着剤(D-1)を準備した。
・木製単板(A-1):スギ単板(比重0.38)、厚み1mm
・木製単板(A-2):スギ単板(比重0.38)、厚み2.5mm
・セルロース系材料(B-1):ブナ単板(比重0.63)、厚み1mm
・粘着剤(C-1):アクリル系粘着剤(ニトムズ社製、多用途強力両面テープ、厚み0.23mm)
・接着剤(D-1):水性ビニルウレタン樹脂接着剤(光洋産業社製、KR-7800、塗布量200g/m2
【0064】
<実施例1>
木製単板(A-1)、セルロース系材料(B-1)および粘着剤(C-1)を以下の構成で積層し、0.5MPaでプレスすることで木材積層体を作製した。
[層構成]
木製単板(A-1)層およびセルロース系材料(B-1)層を合計13層。
粘着剤(C-1)層を各層間に合計12層。
木製単板(A-1)層およびセルロース系材料(B-1)層の合計13層のうち、片面の最表層を1層目としたときに3層目および11層目の合計2層がセルロース系材料(B-1)層であり、残りの11層が木製単板(A-1)層である。木製単板(A-1)層およびセルロース系材料(B-1)層はすべて平行積層である。
【0065】
すなわち、実施例1の木材積層体の層構成は、木製単板(A-1)層を「A」、セルロース系材料(B-1)層を「B」、粘着剤(C-1)層を「C」とすると、「A/C/A/C/B/C/A/C/A/C/A/C/A/C/A/C/A/C/A/C/B/C/A/C/A」である。
【0066】
得られた木材積層体における木製単板(A)層の総体積(AV)に対する前記セルロース系材料(B)層の総体積(BV)の体積比(BV/AV)は、約18/100であった。また、得られた木材積層体の比重は0.52であった。また、得られた木材積層体の厚みは16mmであった。
【0067】
得られた積層体につき、下記の「木ネジ保持力試験」、「釘頭貫通抵抗力試験」および「荷重たわみ試験」を実施した。その結果を表1に示す。なお、各試験の温湿度環境は、20℃、65%RHである。
【0068】
[木ネジ保持力試験]
木ネジ保持力試験は、JIS A5098(2015)に準拠して行った。すなわち、JIS A5098に規定の試験片(繊維方向長さ100mm×繊維方向に直交する幅50mm)を準備し、JIS B 1112に規定する呼び径2.7mm、長さ16mmの木ネジを、垂直にネジ部(約11mm)をネジ込み、試験片を固定して木ネジを垂直に引き抜き、それに要する最大荷重を測定し、最大荷重を木ネジ保持力(N)とした。但し、引抜荷重速度は,約2mm/minとする。なお、前記ネジ込みは、予め直径2mmのドリルまたは3mmのドリルで、深さ約3mmの案内孔を設けてから行うものとする。
【0069】
[釘頭貫通抵抗力試験]
釘頭貫通抵抗力試験は、ASTMD1037-96に準拠して行った。すなわち、試験片(繊維方向長さ80mm×繊維方向に直交する幅50mm)の中央に、釘(CN50)を釘頭が試験片表面に達するまで打ち込み、突き出した釘先端を治具で挟んで引張力を加え(荷重速度2mm/min)、釘頭が試験片を貫通するときに生ずる最大抵抗力を測定し、最大抵抗力を釘頭貫通抵抗力(N)とした。なお、前記釘の打ち込みは、予め直径2mmのドリルまたは3mmのドリルで、深さ約3mmの案内孔を設けてから行うものとする。
【0070】
[荷重たわみ試験]
繊維方向に直交する幅20mm、繊維方向長さ210mmの試験片を準備し、支点間距離180mm、荷重速度3mm/minで三点曲げ試験を実施し、15mm曲げたわみ時の応力を求めた。試験片の長辺は繊維(木目)方向と平行とした。
【0071】
<実施例2>
木製単板(A-1)、セルロース系材料(B-1)および粘着剤(C-1)を以下の構成で積層し、実施例1と同様にして木材積層体を作製し、各試験を実施した。その結果を表1に示す。
[層構成]
木製単板(A-1)層およびセルロース系材料(B-1)層を合計13層。
粘着剤(C-1)層を各層間に12層。
木製単板(A-1)層およびセルロース系材料(B-1)層の合計13層のうち、片面の最表層を1層目としたときに3層目、6層目、8層目および11層目の合計4層がセルロース系材料(B-1)で、残りの9層が木製単板(A-1)層である。木製単板(A-1)層およびセルロース系材料(B-1)層はすべて平行積層である。
【0072】
すなわち、実施例2の木材積層体の層構成は、木製単板(A-1)層を「A」、セルロース系材料(B-1)層を「B」、粘着剤(C-1)層を「C」とすると、「A/C/A/C/B/C/A/C/A/C/B/C/A/C/B/C/A/C/A/C/B/C/A/C/A」である。
【0073】
得られた木材積層体における木製単板(A)層の総体積(AV)に対する前記セルロース系材料(B)層の総体積(BV)の体積比(BV/AV)は約44/100であった。また、得られた木材積層体の比重は0.55であった。また、得られた木材積層体の厚みは15.8mmであった。
【0074】
<比較例1>
木製単板(A-1)および粘着剤(C-1)を以下の構成で積層し、実施例1と同様にして木材積層体を作製し、各試験を実施した。その結果を表1に示す。
[層構成]
木製単板(A-1)を13層、(C-1)を各層間に12層。
木製単板(A-1)はすべて平行積層である。
【0075】
すなわち、比較例1の木材積層体の層構成は、木製単板(A-1)層を「A」、粘着剤(C-1)層を「C」とすると、「A/C/A/C/A/C/A/C/A/C/A/C/A/C/A/C/A/C/A/C/A/C/A/C/A」である。得られた木材積層体の厚みは15.8mmであった。
【0076】
<比較例2>
木製単板(A-2)および粘着剤(C-1)を以下の構成で積層し、実施例1と同様にして木材積層体を作製し、各試験を実施した。その結果を表1に示す。
[層構成]
木製単板(A-2)を7層、(C-1)を各層間に6層。
木製単板(A-2)はすべて平行積層である。
【0077】
すなわち、比較例2の木材積層体の層構成は、木製単板(A-2)層を「A」、粘着剤(C-1)層を「C」とすると、「A/C/A/C/A/C/A/C/A/C/A/C/A」である。得られた木材積層体の厚みは15.0mmであった。
【0078】
<比較例3>
木製単板(A-1)および接着剤(D-1)を以下の構成で積層し、0.5MPaでプレスしながら60℃で30分加熱硬化させることで、木材積層体を作製した。得られた積層体について、実施例1と同様の試験を実施した。その結果を表1に示す。
[層構成]
木製単板(A-1)を13層、(D-1)を各層間に12層。
木製単板(A-1)はすべて平行積層である。
【0079】
すなわち、比較例3の木材積層体の層構成は、木製単板(A-1)層を「A」、接着剤(D-1)層を「D」とすると、「A/D/A/D/A/D/A/D/A/D/A/D/A/D/A/D/A/D/A/D/A/D/A/D/A」である。得られた木材積層体の厚みは13.0mmであった。
【0080】
【表1】
【0081】
本発明の実施例1、2の木材積層体は、比較例1に比して、木ネジ保持力、釘頭貫通抵抗力のいずれもが向上しており、ネジや釘での保持性が向上していることがわかる。さらに、本発明の実施例1、2の木材積層体は、比較例1に比して、曲げたわみ荷重は殆ど同一であり、常温での加工性も確保できていることがわかる。
【0082】
他方、比較例2のように、単純に木製単板(A)の厚みを増加するだけでは、木ネジ保持力、釘頭貫通抵抗力のいずれもが向上しない傾向にあるうえ、曲げたわみ荷重が高まることから、加工性も低下する傾向にあることがわかる。
また、比較例3のように、粘着剤層ではなく接着剤層を有する場合には、木ネジ保持力、釘頭貫通抵抗力は大きく向上する一方、曲げたわみ荷重が著しく高くなることから、加工性の著しい低下を招く傾向があることがわかる。
【0083】
以上の結果から、本発明の木材積層体によれば、高い加工性と、ネジや釘打ちによる保持性を両立しているといえる。
【0084】
さらに、本発明の木材積層体は、視認されるような切れ込みなどの表面加工を行うことなく、加工性を確保できることから、意匠性にも優れる木材積層体を提供し得る。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の木材積層体は、小物、家具、建築材料向けのベニヤ合板、コンパネ、構造用合板など、幅広い用途に用いることができる。また、再加工も容易であることから、リユースによる複数回使用にも向いているといえる。