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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119361
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】位相補償回路及び増幅装置
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/52 20060101AFI20240827BHJP
   H03F 1/34 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H03F1/52
H03F1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026208
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大司
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AC56
5J500AC92
5J500AH29
5J500AM08
(57)【要約】
【課題】回路面積の低減及び電圧依存性の低減を図った位相補償回路及び増幅装置を提供する。
【解決手段】バイアス電圧に基づいて制御回路13が充電スイッチSW1をオンすると、カップリング容量C3が、充電端子T3に接続され、バッファ電圧が所定電圧Vpとなるように充放電される。制御回路13が充電スイッチSW1をオフすると、カップリング容量C3が、入力端子T12に入力した電圧Vinをレベルシフトしてバイアス電圧として出力する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の位相補償容量と、
前記第1の位相補償容量の第1の端子に出力が接続されたバッファ回路と、
前記バッファ回路の入力に出力が接続されたバイアス補正回路と、
前記第1の位相補償容量の第2の端子に接続された第1の出力端子と、
前記バイアス補正回路の入力に接続された第1の入力端子とを備え、
前記バイアス補正回路は、前記第1の入力端子の電圧をレベルシフトした電圧をバイアス電圧として前記バッファ回路に入力する、
位相補償回路。
【請求項2】
請求項1に記載の位相補償回路において、
前記バイアス補正回路は、
前記第1の入力端子と前記バッファ回路の入力との間に接続されたカップリング容量と、
所定電圧が与えられる充電端子と、
前記カップリング容量と前記バッファ回路の入力との接続点と、前記充電端子との間に接続された充電スイッチと、を有する、
位相補償回路。
【請求項3】
請求項2に記載の位相補償回路において、
前記充電スイッチのオンオフを制御する制御信号を出力する制御回路を備え、
前記制御回路は、前記バイアス電圧を検知し、前記バイアス電圧に応じた前記制御信号を出力する、
位相補償回路。
【請求項4】
請求項3に記載の位相補償回路において、
前記制御回路は、前記充電スイッチがオフの場合、前記バイアス電圧が第1の設定範囲外となると前記充電スイッチをオフからオンに切り替え、前記充電スイッチがオンの場合、前記バイアス電圧が前記第1の設定範囲内に含まれ、かつ、前記第1の設定範囲よりも狭い第2の設定範囲内となると前記充電スイッチをオンからオフに切り替える前記制御信号を出力する、
位相補償回路。
【請求項5】
請求項4に記載の位相補償回路において、
前記制御回路は、
前記バイアス電圧が前記第1の設定範囲外か否かを検知する第1のウインドウコンパレータと、
前記バイアス電圧が前記第2の設定範囲外か否かを検知する第2のウインドウコンパレータと、
前記第1のウインドウコンパレータ及び前記第2のウインドウコンパレータの検知結果を前記制御信号に変換する変換回路とを有する
位相補償回路。
【請求項6】
請求項5に記載の位相補償回路において、
前記第1のウインドウコンパレータの入力が前記バッファ回路の入力に接続され、
前記第2のウインドウコンパレータの入力が前記充電スイッチと前記充電端子との間に接続された、
位相補償回路。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の位相補償回路と、
前記位相補償回路が接続された増幅回路とを備えた、
増幅装置。
【請求項8】
請求項3~6何れか1項に記載の位相補償回路と、
前記位相補償回路が接続された増幅回路とを備え、
前記増幅回路は、内部の信号経路を切断状態と接続状態に切り替える経路切断回路を有し、
前記経路切断回路は、前記制御回路から出力される前記制御信号によって、前記充電スイッチがオフの場合に前記接続状態となり、前記充電スイッチがオンの場合に前記切断状態となるように制御される、
増幅装置。
【請求項9】
請求項8に記載の増幅装置において、
前記経路切断回路の後段に設けたサンプルホールド回路をさらに備えた、
増幅装置。
【請求項10】
請求項8に記載の増幅装置において、
前記経路切断回路の前段に設け、2つの前記信号経路を短絡状態と切断状態との間で切り替える短絡回路をさらに備え、
前記短絡回路は、前記制御回路から出力される前記制御信号によって、前記充電スイッチがオフの場合に前記切断状態となり、前記充電スイッチがオンの場合に前記短絡状態となるように制御される、
増幅装置。
【請求項11】
請求項8に記載の増幅装置において、
前記増幅回路は、
信号を入力する第2の入力端子と、
増幅した前記信号を出力する第2の出力端子と、
前記第2の入力端子に入力された前記信号を増幅し、前記経路切断回路を通過して、前記第2の出力端子へ出力するメイン経路と、
前記第2の入力端子に入力された前記信号を増幅し、前記経路切断回路を通過せずに、前記第2の出力端子へ出力するサブ経路とを有する
増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相補償回路及び増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位相補償回路を組み込んだ増幅装置として図14に示すものが提案されている。同図に示す増幅装置100は、信号を増幅する増幅回路101と、増幅回路101の位相補償を行う2つの位相補償容量C1,C2とを備えている。増幅回路101は、3段の増幅器AMP1,AMP2,AMP4で構成されたメインパスと、2段の増幅器AMP3,AMP2で構成されたフィードフォワードパスで構成されている。メインパスは低周波帯域を増幅し、フィードフォワードパスは高周波帯域を増幅する。図14に示す増幅装置100は、ユニティゲイン周波数f[Hz]を設計する際、下記の式(1)に示すように設計する。
【0003】
【数1】
【0004】
なお、Gm01:増幅器AMP1の相互コンダクタンス値、C01:位相補償容量C1の容量値、Gm02:増幅器AMP3の相互コンダクタンス値、C02:位相補償容量C2の容量値、とする。
【0005】
また、増幅装置100の入力段が図14に示すように差動増幅回路であった場合、メインパスで発生する1kHzといった低周波の信号帯域における入力換算雑音Vnは下記の式(2)となる。
【0006】
【数2】
【0007】
なお、k:ボルツマン定数、T:絶対温度、γ:デバイス依存の係数、α:他の雑音源の影響、とする。
【0008】
式(2)により、Gm01を大きくすることで、1kHzといった低周波の信号帯域における入力換算雑音を低減することができる。一方、式(1)によりGm01を大きくすると、ユニティゲイン周波数fを設計するために、Gm01も大きくする必要がある。
【0009】
ところで、増幅装置100を高耐圧に設計する場合、位相補償容量C1、C2も高耐圧にする必要がある。高耐圧の容量は、通常の耐圧が低い容量よりも単位面積当たりの容量値が小さい。このため、Gm01を大きくすると、位相補償容量C1の面積が大幅に大きくなり、大幅な回路面積の増加を招く、という課題がある。また、高耐圧に設計すると位相補償容量C1にかかる電圧の幅が広くなるため、位相補償容量C1の電圧依存性の影響が大きくなる、という課題がある。
【0010】
一方、フィードフォワードパスが発生する入力換算雑音は高周波数帯域であるため、この周波数帯が信号帯域よりも高くなるように設計すれば、Gm02は小さくできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、回路面積の低減及び電圧依存性の低減を図った位相補償回路及び増幅装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係る位相補償回路及び増幅装置は、下記[1]~[11]を特徴としている。
[1]
第1の位相補償容量と、
前記第1の位相補償容量の第1の端子に出力が接続されたバッファ回路と、
前記バッファ回路の入力に出力が接続されたバイアス補正回路と、
前記第1の位相補償容量の第2の端子に接続された第1の出力端子と、
前記バイアス補正回路の入力に接続された第1の入力端子とを備え、
前記バイアス補正回路は、前記第1の入力端子の電圧をレベルシフトした電圧をバイアス電圧として前記バッファ回路に入力する、
位相補償回路であること。
[2]
[1]に記載の位相補償回路において、
前記バイアス補正回路は、
前記第1の入力端子と前記バッファ回路の入力との間に接続されたカップリング容量と、
所定電圧が与えられる充電端子と、
前記カップリング容量と前記バッファ回路の入力との接続点と、前記充電端子との間に接続された充電スイッチと、を有する、
位相補償回路であること。
[3]
[2]に記載の位相補償回路において、
前記充電スイッチのオンオフを制御する制御信号を出力する制御回路を備え、
前記制御回路は、前記バイアス電圧を検知し、前記バイアス電圧に応じた前記制御信号を出力する、
位相補償回路であること。
[4]
[3]に記載の位相補償回路において、
前記制御回路は、前記充電スイッチがオフの場合、前記バイアス電圧が第1の設定範囲外となると前記充電スイッチをオフからオンに切り替え、前記充電スイッチがオンの場合、前記バイアス電圧が前記第1の設定範囲内に含まれ、かつ、前記第1の設定範囲よりも狭い第2の設定範囲内となると前記充電スイッチをオンからオフに切り替える前記制御信号を出力する、
位相補償回路であること。
[5]
[4]に記載の位相補償回路において、
前記制御回路は、
前記バイアス電圧が前記第1の設定範囲外か否かを検知する第1のウインドウコンパレータと、
前記バイアス電圧が前記第2の設定範囲外か否かを検知する第2のウインドウコンパレータと、
前記第1のウインドウコンパレータ及び前記第2のウインドウコンパレータの検知結果を前記制御信号に変換する変換回路とを有する
位相補償回路であること。
[6]
[5]に記載の位相補償回路において、
前記第1のウインドウコンパレータの入力が前記バッファ回路の入力に接続され、
前記第2のウインドウコンパレータの入力が前記充電スイッチと前記充電端子との間に接続された、
位相補償回路であること。
[7]
[1]~[6]の何れか1項に記載の位相補償回路と、
前記位相補償回路が接続された増幅回路とを備えた、
増幅装置であること。
[8]
[3]~[6]何れか1項に記載の位相補償回路と、
前記位相補償回路が接続された増幅回路とを備え、
前記増幅回路は、内部の信号経路を切断状態と接続状態に切り替える経路切断回路を有し、
前記経路切断回路は、前記制御回路から出力される前記制御信号によって、前記充電スイッチがオフの場合に前記接続状態となり、前記充電スイッチがオンの場合に前記切断状態となるように制御される、
増幅装置であること。
[9]
[8]に記載の増幅装置において、
前記経路切断回路の後段に設けたサンプルホールド回路をさらに備えた、
増幅装置であること。
[10]
[8]に記載の増幅装置において、
前記経路切断回路の前段に設け、2つの前記信号経路を短絡状態と切断状態との間で切り替える短絡回路をさらに備え、
前記短絡回路は、前記制御回路から出力される前記制御信号によって、前記充電スイッチがオフの場合に前記切断状態となり、前記充電スイッチがオンの場合に前記短絡状態となるように制御される、
増幅装置であること。
[11]
[8]に記載の増幅装置において、
前記増幅回路は、
信号を入力する第2の入力端子と、
増幅した前記信号を出力する第2の出力端子と、
前記第2の入力端子に入力された前記信号を増幅し、前記経路切断回路を通過して、前記第2の出力端子へ出力するメイン経路と、
前記第2の入力端子に入力された前記信号を増幅し、前記経路切断回路を通過せずに、前記第2の出力端子へ出力するサブ経路とを有する
増幅装置であること。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回路面積の低減を図った位相補償回路及び増幅装置を提供することができる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1実施形態における位相補償回路を示す回路図である。
図2図2は、第2実施形態における位相補償回路を示す回路図である。
図3図3は、図2の制御回路の具体的一例を示した位相補償回路を示す回路図である。
図4図4は、入力端子T12に入力される電圧、バイアス電圧、第1のウインドウコンパレータの出力、第2のウインドウコンパレータの出力、制御信号のタイムチャートである。
図5図5は、第3実施形態における位相補償回路を組み込んだ増幅装置を示す回路図である。
図6図6は、第4実施形態における位相補償回路を組み込んだ増幅装置を示す回路図である。
図7図7は、図6に示すサンプルホールド回路の詳細を示す回路図である。
図8図8は、図6に示すサンプルホールド回路の詳細を示す回路図である。
図9図9は、第5実施形態における位相補償回路を組み込んだ増幅装置を示す回路図である。
図10図10は、第6実施形態における位相補償回路を組み込んだ増幅装置を示す回路図である。
図11図11は、第7実施形態における位相補償回路を組み込んだ増幅装置を示す回路図である。
図12図12は、第8実施形態における位相補償回路を組み込んだ増幅装置を示す回路図である。
図13図13は、第8実施形態における位相補償回路を組み込んだ増幅装置を示す回路図である。
図14図14は、従来の位相補償回路を組み込んだ増幅装置の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0017】
(第1実施形態)
本実施形態の位相補償回路1は、位相補償容量C1(=第1の位相補償容量)と、バッファ回路11と、バイアス補正回路12と、出力端子T11(=第1の出力端子)と、入力端子T12(=第1の入力端子)とを備えている。位相補償容量C1は端子T21,T22(=第1の端子,第2の端子)を有している。バッファ回路11は、出力が位相補償容量C1の端子T21に接続されている。バイアス補正回路12は、バッファ回路11の入力に出力が接続されている。出力端子T11は、位相補償容量C1の端子T22に接続されている。入力端子T12は、バイアス補正回路12の入力に接続されている。
【0018】
バイアス補正回路12は、入力端子T12に入力された電圧Vinをレベルシフトした電圧をバイアス電圧としてバッファ回路11に入力する。バイアス補正回路12は、出力端子T11,入力端子T12間に印加される電圧よりも位相補償容量C1の端子T21,T22間に印加される電圧が低くなるようにレベルシフトする。このため、位相補償容量C1に印加される電圧が低くなるため、耐圧の高いものを用いる必要がなく、回路規模の低減を図ることができる。また、位相補償容量C1の電圧依存性も低減することができる。
【0019】
なお、上述したバイアス補正回路12としては、例えば後述する第2実施形態で説明するカップリング容量を用いたものや、電圧Vinを抵抗で分圧するものや、トランジスタを用いて電圧Vinを電圧電流変換し、さらに電圧に変換するものなど周知のレベルシフト回路を用いることができる。
【0020】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の位相補償回路1Bについて図2を参照して説明する。なお、図2において、上述した第1実施形態で既に説明した図1に示す位相補償回路1と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0021】
本実施形態の位相補償回路1Bは、位相補償容量C1と、バッファ回路11と、バイアス補正回路12Bと、出力端子T11と、入力端子T12と、制御回路13とを備えている。位相補償容量C1、バッファ回路11、出力端子T11、入力端子T12は、第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0022】
バイアス補正回路12Bは、カップリング容量C3と、充電端子T3と、充電スイッチSW1とを有する。カップリング容量C3は、入力端子T12とバッファ回路11の入力との間に接続されている。カップリング容量C3は、位相補償容量C1よりも高耐圧であり、位相補償容量C1よりも容量値が小さい。充電端子T3は、所定電圧Vpが与えられている。充電スイッチSW1は、カップリング容量C3とバッファ回路11の入力との接続点と、充電端子T3との間に接続されている。
【0023】
制御回路13は、充電スイッチSW1のオンオフを制御する制御信号S1を出力する。制御回路13は、バッファ回路11に入力されるバイアス電圧を検知し、バイアス電圧に応じた制御信号S1を出力する。
【0024】
制御回路13は、例えば図3に示すように構成されている。制御回路13は、第1のウインドウコンパレータCP1と、第2のウインドウコンパレータCP2と、変換回路131とを有する。第1のウインドウコンパレータCP1は、バイアス電圧が第1の設定範囲R1であるか否かを検知する。第1の設定範囲R1は、充電端子T3に与えられている所定電圧Vpを中心に設定された範囲である。第1のウインドウコンパレータCP1は、入力にバッファ回路11の入力が接続され、出力に変換回路131が接続されている。
【0025】
第2のウインドウコンパレータCP2は、バイアス電圧が第2の設定範囲R2であるか否かを検知する。第2の設定範囲R2は、所定電圧Vpを中心に設定された範囲であり、第1の設定範囲R1内に含まれ、かつ、第1の設定範囲R1よりも狭い範囲に設定されている。本実施形態では、第2のウインドウコンパレータCP2は、入力に充電スイッチSW1と充電端子T3との間が接続され、出力に変換回路131が接続されている。
【0026】
これにより、第2のウインドウコンパレータCP2には、充電スイッチSW1をオンしている間にバイアス電圧が入力され、充電スイッチSW1がオフしている間には所定電圧Vpが入力される。変換回路131は、第1、第2のウインドウコンパレータの検知結果を制御信号S1に変換する。
【0027】
次に、上述した位相補償回路1Bの動作について図4を参照して以下説明する。今、入力端子T12に入力される電圧VinがV1からV2に増加し、その後V2からV1に減少する場合について考える。Vin=V1のとき、カップリング容量C3は、両端電圧がV1-Vpとなるように充電され、電圧Vinからカップリング容量C3の両端電圧分、レベルシフトした所定電圧Vpがバイアス電圧としてバッファ回路11に入力される。
【0028】
その後、電圧Vinが上昇すると、バイアス電圧が上昇して第1の設定範囲R1の上限値を超える。バイアス電圧が第1の設定範囲R1の上限値を超えると、第1のウインドウコンパレータCP1の出力がLoレベルからHiレベルに切り替わり、Hiレベルの制御信号S1が出力される。
【0029】
Hiレベルの制御信号S1が出力されると、充電スイッチSW1がオンして、カップリング容量C3が充電され、カップリング容量C3の両端電圧が上昇し、レベルシフト量が増える。図4に示す例では、バイアス電圧が第1の設定範囲R1の上限値を越えた後も電圧Vinが上昇するため、バイアス電圧は第1の設定範囲R1の上限値で一定となる。その後、電圧VinがV2で一定となると、バイアス電圧が下がり始める。また、充電スイッチSW1がオンすると、第2のウインドウコンパレータCP2にバイアス電圧が入力される。このときバイアス電圧は第2の設定範囲R2の上限値を越えているので、第2のウインドウコンパレータCP2はHiレベルを出力する。
【0030】
カップリング容量C3の充電によりレベルシフト量が増えた結果、バイアス電圧が第1の設定範囲R1の上限値を下回ると、第1のウインドウコンパレータCP1の出力がLoレベルに切り替わる。カップリング容量C3の充電によりレベルシフト量がさらに増えて、バイアス電圧が第2の設定範囲R2の上限値を下回ると、第2のウインドウコンパレータCP2の出力がLoレベルに切り替わる。第2のウインドウコンパレータCP2の出力がLoレベルに切り替わると、制御信号S1がLoレベルに切り替わり、充電スイッチSW1がオフされる。
【0031】
次に、電圧Vinが下降すると、バイアス電圧が下降して第1の設定範囲R1の下限値を下回る。バイアス電圧が第1の設定範囲R1の下限値を超えると、第1のウインドウコンパレータCP1の出力がLoレベルからHiレベルに切り替わり、Hiレベルの制御信号S1が出力される。
【0032】
Hiレベルの制御信号S1が出力されると、充電スイッチSW1がオンして、カップリング容量C3が放電され、カップリング容量C3の両端電圧が下がり、レベルシフト量が減る。図4に示す例では、バイアス電圧が第1の設定範囲R1の下限値を下回った後も電圧Vinが下降するため、バイアス電圧は第1の設定範囲R1の下限値で一定となる。その後、電圧VinがV1で一定となると、バイアス電圧が上がり始める。また、充電スイッチSW1がオンすると、第2のウインドウコンパレータCP2にバイアス電圧が入力される。このときバイアス電圧は第2の設定範囲R2の下限値を越えているので、第2のウインドウコンパレータCP2はHiレベルを出力する。
【0033】
カップリング容量C3の放電によりレベルシフト量が減った結果、バイアス電圧が第1の設定範囲R1の下限値を上回ると、第1のウインドウコンパレータCP1の出力がLoレベルに切り替わる。カップリング容量C3の放電によりレベルシフト量がさらに下がり、バイアス電圧が第2の設定範囲R2の下限値を上回ると、第2のウインドウコンパレータCP2の出力がLoレベルに切り替わる。第2のウインドウコンパレータCP2の出力がLoレベルに切り替わると、制御信号S1がLoレベルに切り替わり、充電スイッチSW1がオフされる。
【0034】
上述した実施形態によれば、図4に示すように電圧Vinが変動してもバイアス電圧を第1の設定範囲R1内とすることができる。さらに、電圧Vinが変動して定常状態になった後はバイアス電圧を第1の設定範囲R1よりも狭い第2の設定範囲R2内とすることができる。これにより、電圧Vinが変動しても位相補償容量C1に印加される電圧が低くなるため、位相補償容量C1として耐圧の高いものを用いる必要がなく、位相補償容量C1の大きさを抑えることができる。カップリング容量C3としては高耐圧のものが必要であれば、容量としてはレベルシフトできる程度の小さいものであればよく大容量のものを用いる必要がないため、カップリング容量C3の大きさも抑えることができる。これにより、回路規模の低減を図ることができ、位相補償容量C1の電圧依存性も低減できる。
【0035】
なお、上述した第2実施形態の位相補償回路1Bは、バイアス電圧に応じて制御信号S1を出力していたが、これに限ったものではない。例えば、位相補償回路1Bの入力端子T12に入力される電圧Vinが所定の条件で変動することが分かっている装置に位相補償回路1Bを組み込む場合、制御回路13は、所定の条件になったときに充電スイッチSW1をオンするような制御信号S1を出力するようにしてもよい。
【0036】
上述した第2実施形態では、第2のウインドウコンパレータCP2の出力は、充電スイッチSW1と充電端子T3の間に接続されていたが、これに限ったものではない。第1のウインドウコンパレータCP1と同様に、第2のウインドウコンパレータCP2の出力をバッファ回路11の入力に接続するようにしてもよい。
【0037】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の増幅装置2について図5を参照して説明する。増幅装置2は、位相補償回路1Bと、位相補償回路1Bが接続された増幅回路3とを備えている。位相補償回路1Bは第2実施形態で説明したものと同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0038】
増幅回路3は、信号を入力する2つの差動入力端子T41,T41(=第2の入力端子)と、増幅した信号を出力する出力端子T42(=第2の出力端子)と、メイン経路31と、メイン経路31上に設けられた経路切断回路32とを備えている。
【0039】
メイン経路31は、差動入力端子T41,T41に入力された信号の低周波帯域を増幅して、出力端子T42へ出力する。本実施形態では、メイン経路31は、2つの増幅器としてのトランスコンダクタンスアンプAMP1,AMP2を有している。トランスコンダクタンスアンプAMP1は、差動入力が差動入力端子T41,T41に接続され、差動出力が経路切断回路32を介して、トランスコンダクタンスアンプAMP2の差動入力に接続されている。トランスコンダクタンスアンプAMP2は、出力が出力端子T42に接続されている。
【0040】
経路切断回路32は、トランスコンダクタンスアンプAMP1の差動出力とトランスコンダクタンスアンプAMP2の差動入力との間の2つの信号経路上に設けられ、信号経路を切断状態と接続状態との間で切り替える切替スイッチSW2,SW2を有している。切替スイッチSW2,SW2は、制御回路13から出力される制御信号S1によってオンオフが制御される。詳しく説明すると、経路切断回路32は、充電スイッチSW1がオフの場合に切替スイッチSW2,SW2がオンして接続状態に切り替えられる。また、経路切断回路32は、充電スイッチSW1がオンの場合に切替スイッチSW2,SW2がオフして切断状態に切り替えられる。
【0041】
また、位相補償回路1Bは、出力端子T11がトランスコンダクタンスアンプAMP1の差動出力と経路切断回路32との間に接続され、入力端子T12が出力端子T42に出力されている。
【0042】
上述した実施形態によれば、充電スイッチSW1がオンしてカップリング容量C3が充放電状態となっている間にメイン経路31の信号経路を切断して、その間に出力端子T42から増幅した信号が出力されないようにすることができる。
【0043】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の増幅装置2Dについて図6を参照して説明する。図6において、上述した第4実施形態で既に説明した図5に示す増幅装置2と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0044】
第3実施形態と第4実施形態とで大きく異なる点は、増幅回路3Dの構成である。第4実施形態の増幅回路3Dは、第3実施形態と同様の差動入力端子T41,T41、出力端子T42、メイン経路31、経路切断回路32に加えてサンプルホールド回路33(以下「S&H回路33」と略記)を有している。
【0045】
S&H回路33は、経路切断回路32の後段に設けられている。詳しく説明すると、S&H回路33は、経路切断回路32とトランスコンダクタンスアンプAMP2の入力との間に接続されている。上述した実施形態によれば、経路切断回路32が切断状態に切り替わったときに、S&H回路33が直前の接続状態のときにトランスコンダクタンスアンプAMP1から出力された信号を保持してトランスコンダクタンスアンプAMP2に入力することができる。これにより、経路切断回路32が切断状態に切り替えられているときも増幅回路3Dの出力を維持することができる。
【0046】
S&H回路33としては、例えば図7に示すように、2つの信号経路とグランドとの間にそれぞれ設けられたホールドコンデンサC41,C42から構成されていてもよい。また、図8に示すように経路切断回路32の後段に設けられたトランスコンダクタンスアンプAMP5と、トランスコンダクタンスアンプAMP5の入力と出力との間に接続されたホールドコンデンサC41,C42から構成されていてもよい。
【0047】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の増幅装置2Eについて図9を参照して説明する。図9において、上述した第3実施形態で既に説明した図5に示す増幅装置2と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0048】
第3実施形態と第5実施形態とで大きく異なる点は、増幅回路3Eの構成である。第5実施形態の増幅回路3Eは、第3実施形態と同様の差動入力端子T41,T41、出力端子T42、メイン経路31、経路切断回路32に加えてサブ経路34を有している。サブ経路34は、差動入力端子T41,T41に入力された信号を増幅し、経路切断回路32を通過せずに出力端子T42へ出力する。また、サブ経路34は、差動入力端子T41,T41に入力された信号の高周波帯域を増幅して、出力端子T42へ出力する。
【0049】
本実施形態では、サブ経路34は2つのトランスコンダクタンスアンプAMP2,AMP3が設けられている。トランスコンダクタンスアンプAMP3は、入力が差動入力端子T41,T41に接続され、出力が経路切断回路32の後段とトランスコンダクタンスアンプAMP2の差動入力との間に接続されている。
【0050】
また、増幅装置2Eは、サブ経路34の位相補償を行う位相補償容量C2を備えている。位相補償容量C2は、トランスコンダクタンスアンプAMP2の差動入力と出力との間に接続されている。上述した実施形態によれば、位相補償回路1Bがメイン経路31の位相補償を行い、位相補償容量C2がサブ経路34の位相補償を行う。位相補償容量C2は、カップリング容量C3よりも高耐圧であり、位相補償容量C1よりも容量値が小さい。
【0051】
上述した実施形態によれば、経路切断回路32が切断状態に切り替えられているときもサブ経路34が差動入力端子T41,T41に入力された信号を増幅して出力端子T42から出力するため、増幅回路3Eの出力を維持することができる。
【0052】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態の増幅装置2Fについて図10を参照して説明する。図10において、上述した第5実施形態で既に説明した図9に示す増幅装置2Eと同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0053】
第5実施形態と第6実施形態とで大きく異なる点は、増幅回路3Fの構成である。第6実施形態の増幅回路3Fは、第5実施形態と同様の差動入力端子T41,T41、出力端子T42、メイン経路31、経路切断回路32、サブ経路34に加えて、第4実施形態で既に説明したS&H回路33を有している点である。
【0054】
S&H回路33は、経路切断回路32の後段と、トランスコンダクタンスアンプAMP2の入力及びトランスコンダクタンスアンプAMP3の出力との間に接続されている。第6実施形態の増幅装置2Fも第4実施形態の増幅装置2Dと同様に、S&H回路33の働きにより、経路切断回路32が切断しているときも増幅回路3Dの出力を維持することができる。このため、サブ経路34の増幅動作の負担を減らすことができる。
【0055】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態の増幅装置2Gについて図11を参照して説明する。図11において、上述した第6実施形態で既に説明した図10に示す増幅装置2Fと同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0056】
第6実施形態と第7実施形態とで大きく異なる点は、増幅回路3Gのメイン経路31Gの構成である。第7実施形態のメイン経路31Gは、トランスコンダクタンスアンプAMP1,AMP2に加えてトランスコンダクタンスアンプAMP4から構成されている。トランスコンダクタンスアンプAMP4は、S&H回路33の後段とトランスコンダクタンスアンプAMP2の入力及びトランスコンダクタンスアンプAMP3の出力との間に接続されている。
【0057】
上述した実施形態では、メイン経路31、31Gとしては2段や3段のトランスコンダクタンスアンプから構成されていたが、これに限らず4段、5段といった3段以上のトランスコンダクタンスアンプから構成されていてもよい。
【0058】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態の増幅装置2Hについて図12及び図13を参照して説明する。図12及び図13において、上述した第7実施形態で既に説明した図11に示す増幅装置2Gと同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0059】
第7実施形態と第8実施形態とで大きく異なる点は、増幅回路3Hの構成である。増幅回路3Hは、第7実施形態と同様の差動入力端子T41,T41、出力端子T42、メイン経路31G、経路切断回路32、サブ経路34、S&H回路33に加えて短絡回路35を有する点である。短絡回路35は、トランスコンダクタンスアンプAMP1の出力と、経路切断回路32の前段との間に設けられ、2つの信号経路を短絡状態と切断状態との間で切り替える切替スイッチSW3から構成されている。
【0060】
次に、上述した構成の第8実施形態の増幅装置2Hの動作について説明する。バイアス電圧が第1の設定範囲R1内にある場合、図12に示すように、制御回路13は、充電スイッチSW1をオフ、切替スイッチSW2をオン、切替スイッチSW3をオフとする制御信号S1を出力する。このとき、位相補償回路1Bの入力端子T12に入力された電圧Vinは、カップリング容量C3によりレベルシフトされてバイアス電圧としてバッファ回路11に入力される。また、入力端子T41,T41に入力された信号は、メイン経路31G、サブ経路34の双方で増幅されて出力端子T42から出力される。
【0061】
バイアス電圧が第1の設定範囲R1外となると、図13に示すように、制御回路13は、充電スイッチSW1をオン、切替スイッチSW2をオフ、切替スイッチSW3をオンして短絡状態とする制御信号S1を出力する。このとき、カップリング容量C3は、電圧Vinに応じたレベルシフト量となるように充放電される。また、差動入力端子T41,T41に入力された信号はサブ経路34で増幅されて出力端子T42から出力される。メイン経路31Gからは、S&H回路33の働きにより切断直前の信号が増幅されて出力端子T42から出力される。
【0062】
充電スイッチSW1がオンのときは、位相補償回路1Bによるフィードバックがかかっていないため、トランスコンダクタンスアンプAMP1の差動出力が大きくなる虞がある。トランスコンダクタンスアンプAMP1の差動出力が大きくなりすぎると、切替スイッチSW2を誤動作させたり、切替スイッチSW2のオンオフに応じて出力端子T42から出力される電圧にグリッチが生じるなど様々な悪影響がでる虞がある。本実施形態によれば、短絡回路35を設けることにより、トランスコンダクタンスアンプAMP1の差動出力が大きくなりすぎないようにすることができる。
【0063】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0064】
上述した第3~第8実施形態では、増幅装置2、2D~2Hに位相補償回路1Bを組み込んでいたがこれに限ったものではない。例えば電源装置など位相補償を行う必要のある他の装置に位相補償回路1,1Bを組み込んでもよい。
【符号の説明】
【0065】
1,1B 位相補償回路
2、2D~2H 増幅装置
3、3D~3H 増幅回路
11 バッファ回路
12 バイアス補正回路
13 制御回路
31 メイン経路
32 経路切断回路
33 サンプルホールド回路
34 サブ経路
35 短絡回路
131 変換回路
C1 位相補償容量(第1の位相補償容量)
C3 カップリング容量
CP1 第1のウインドウコンパレータ
CP2 第2のウインドウコンパレータ
R1 第1の設定範囲
R2 第2の設定範囲
S1 制御信号
SW1 充電スイッチ
T11 出力端子(第1の出力端子)
T12 入力端子(第1の入力端子)
T21 端子(第1の端子)
T22 端子(第2の端子)
T3 充電端子
T41 差動入力端子(第2の入力端子)
T42 出力端子(第2の出力端子)
Vin 電圧
Vp 所定電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
図14