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特開2024-119370硬化性樹脂組成物、硬化膜および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119370
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化膜および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/14 20060101AFI20240827BHJP
   C08G 59/24 20060101ALI20240827BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20240827BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20240827BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08F290/14
C08G59/24
G03F7/027 515
G03F7/032 501
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026223
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】喜多 駿弥
(72)【発明者】
【氏名】高野 正臣
【テーマコード(参考)】
2H225
4J036
4J127
4M109
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AC54
2H225AD02
2H225AE06P
2H225AE12P
2H225AE15P
2H225AN39P
2H225CA11
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4J036AD11
4J036AD12
4J036AJ09
4J036DB17
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB131
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD161
4J127BD201
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BF291
4J127BF441
4J127BG041
4J127BG051
4J127BG121
4J127BG161
4J127BG171
4J127CB371
4J127CC111
4J127DA52
4J127EA13
4J127FA08
4J127FA14
4J127FA37
4J127FA41
4M109AA01
4M109EA02
4M109EB02
4M109EB04
4M109EB06
(57)【要約】
【課題】保管中等の経時的な特性変化を抑制した硬化性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の効果性樹脂組成物は、(A)下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物と、(B)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、(D)重合開始剤と、(E)溶剤と、を、含有する。
【化1】
(式(1)中、aおよびdはエポキシ基を表し、bおよびcは炭素数が5以上の脂環式炭化水素骨格を表す。前記bおよび前記cのうち隣り合う2つは、互いに2原子を共有し、前記bまたは前記cを構成する炭素原子は、それぞれの環内で互いに架橋していてもよい。kは、1以上の自然数を表す。各々のcは異なっていてもよい。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ化合物と、
(B)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、
(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、
(D)重合開始剤と、
(E)溶剤と、
を、含有し、
前記(A)成分は、下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物である、硬化性樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、aおよびdはエポキシ基を表し、bおよびcは炭素数が5以上の脂環式炭化水素骨格を表す。前記bおよび前記cのうち隣り合う2つは、互いに2原子を共有する。前記bおよび前記cのうち少なくとも1つは、環内で架橋している炭素原子を有する。kは、1以上の自然数を表す。kが2以上の場合、各々のcは異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるエポキシ化合物の前記aおよび前記dの少なくとも一方は、下記一般式(2)で表されるエポキシ基である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】
【請求項3】
前記(A)成分は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される反応開始温度が80℃以上の化合物である請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分は、下記一般式(3)で表される不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂である、請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【化3】
(一般式(3)中、Arは、独立して炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。Gは、独立して(メタ)アクリロイル基、または下記一般式(4)もしくは下記一般式(5)で表される置換基である。Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、独立して水素原子または下記一般式(6)で表される置換基であり、Zの少なくとも1個は下記一般式(6)で表される置換基である。nは、平均値が1以上20以下の数である)
【化4】
【化5】
(一般式(4)および(5)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数である。*は一般式(3)に示す化合物との結合部位を示す。)
【化6】
(一般式(6)中、Wは、2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数である。*は一般式(3)に示す化合物との結合部位を示す。)
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化膜を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、硬化膜および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や画像表示装置などには、各素子を基板に封止し、保護するための保護膜が用いられる。透明性や耐熱性が求められるこれらの保護膜として、不飽和基とフルオレン骨格とを有するアルカリ可溶性樹脂を含む硬化性樹脂組成物を塗布し、パターン形成および硬化してなる硬化膜が用いられる(たとえば特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-089716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなフルオレン骨格を有するアルカリ可溶性樹脂を用いて作製した硬化膜は、透明性および耐熱性に優れることが知られている。
【0005】
ところで、近年、半導体装置その他のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)に作製される硬化膜には、製品の多様化に伴い、より膜厚化したいという要求も生じている。硬化膜を厚膜化するためには、硬化膜を作製するための硬化性樹脂組成物として固形分比率が高い組成物を用いることが一般的である。しかし、本発明者らの知見によると、硬化性樹脂組成物の固形分比率を高めると、保管中における系内での化合物の衝突確率が高くなり、意図せぬ化学反応が進行してしまうことがある。これにより、保管中の粘度増加や、保管後の組成物により作製した硬化膜では意図した物性が得られないなどの問題が生じる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、保管中等の経時的な特性変化を抑制した硬化性樹脂組成物、これを硬化してなる硬化膜および当該硬化膜を含む半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための一態様である硬化性樹脂組成物は、下記[1]~[4]に関する。
[1](A)エポキシ化合物と、
(B)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、
(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、
(D)重合開始剤と、
(E)溶剤と、
を、含有し、
前記(A)成分は、下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物である、硬化性樹脂組成物。
【0008】
【化1】
【0009】
(一般式(1)中、aおよびdはエポキシ基を表し、bおよびcは炭素数が5以上の脂環式炭化水素骨格を表す。前記bおよび前記cのうち隣り合う2つは、互いに2原子を共有する。前記bおよび前記cのうち少なくとも1つは、環内で架橋している炭素原子を有する。kは、1以上の自然数を表す。kが2以上の場合、各々のcは異なっていてもよい。)
[2]前記一般式(1)で表されるエポキシ化合物の前記aおよび前記dの少なくとも一方は、下記一般式(2)で表されるエポキシ基である、[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0010】
【化2】
【0011】
[3]前記(A)成分は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される反応開始温度が80℃以上の化合物である、[1]または[2]に記載の硬化性樹脂組成物。
[4]前記(B)成分は、下記一般式(3)で表される不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂である、[1]~[3]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物。
【0012】
【化3】
【0013】
(一般式(3)中、Arは、独立して炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、およびハロゲン基からなる群から選択される置換基で置換されていてもよい。R1は、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。Gは、独立して(メタ)アクリロイル基、または下記一般式(4)もしくは下記一般式(5)で表される置換基である。Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、独立して水素原子または下記一般式(6)で表される置換基であり、Zの少なくとも1個は下記一般式(6)で表される置換基である。nは、平均値が1以上20以下の数である)
【0014】
【化4】
【0015】
【化5】
【0016】
(一般式(4)および(5)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数である。*は一般式(3)に示す化合物との結合部位を示す。)
【0017】
【化6】
【0018】
(一般式(6)中、Wは、2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数である。*は一般式(3)に示す化合物との結合部位を示す。)
【0019】
上記課題を解決するための他の態様である硬化膜は、下記[5]に関する。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化膜。
【0020】
上記課題を解決するための他の態様である半導体装置は、下記[6]に関する。
[6][5]に記載の硬化膜を有する、半導体装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、保管中等の経時的な特性変化を抑制した硬化性樹脂組成物、これを硬化してなる硬化膜および当該硬化膜を含む半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本発明において、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0023】
1.硬化性樹脂組成物
本発明の一実施の形態に係る硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ化合物と、(B)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物と、(D)重合開始剤と、(E)溶剤と、を有する。以下、各成分について説明する。
【0024】
[(A)成分]
(A)成分は、下記一般式(1)で表されるエポキシ化合物である。(A)成分は、3つ以上の脂環式炭化水素基を有する。そして、この多数ある脂環式炭化水素基は、その立体障害により、(B)成分が有するアルカリ可溶性基(カルボキシル基等)の(A)成分が有するエポキシ基への接近を効率的に阻害すると考えられる。そのため、エポキシ化合物として3つ以上の脂環式炭化水素基を有する(A)成分を用いることで、(A)成分のアルカリ可溶性基と(B)成分のエポキシ基とが反応することによる、組成物の経時的な特性変化を抑制することができると考えられる。
【0025】
【化7】
【0026】
一般式(1)において、aおよびdはエポキシ基を表し、bおよびcは炭素数が5以上、好ましくは5以上7以下、より好ましくは6の脂環式炭化水素骨格を表す。bおよびcのうち隣り合う2つは、互いに2原子を共有する。bおよびcのうち少なくとも1つは、環内で架橋している炭素原子を有することが好ましい。bおよびcの少なくとも2つが、環内で架橋している炭素原子を有することがより好ましい。kは、1以上の自然数を表し、1以上4以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましく、2であることがさらに好ましい。kが2以上の場合、各々のcは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
bおよびcで表される脂環式炭化水素骨格の例には、シクロペンタン骨格、シクロヘキサン骨格、シクロへプタン骨格、ノルボルナン骨格等が含まれる。
【0028】
また、一般式(1)で表されるエポキシ化合物のaまたはdの少なくとも一方は、下記一般式(2)で表されるエポキシ基であることがより好ましく、aおよびdの両方が一般式(2)で表されるエポキシ基であることがより好ましい。
【0029】
【化8】
【0030】
一般式(1)で表されるエポキシ化合物の例には、下記一般式(11)~(17)で示されるエポキシ化合物が含まれる。
【0031】
【化9】
【0032】
【化10】
【0033】
【化11】
【0034】
【化12】
【0035】
【化13】
【0036】
【化14】
【0037】
【化15】
【0038】
(A)成分は、示差走査熱量測定(DSC)により測定される反応開始温度が80℃以上の化合物であることが好ましく、80℃以上180℃以下の化合物であることがより好ましく、85℃以上150℃以下の化合物であることがさらに好ましい。反応開始温度がより高いほど、保管中にエポキシ基が反応しにくく、組成物の経時的な特性変化が生じにくい。反応開始温度がより低いほど、(A)成分の反応性が良好となり十分な架橋構造を形成させて硬化膜の耐熱性を向上させやすい。また、反応開始温度がより低いほど、硬化性樹脂組成物に低温硬化をさせやすい。これらを両立させる観点から、(A)成分は上記範囲に反応開始温度を有することが好ましい。
【0039】
反応開始温度は、DSCによる測定で得られる、横軸を温度(℃)、縦軸を熱流(μW)としたグラフにおいて、昇温時に熱流が0μWになった後、はじめに50μWになった温度を意味する。
【0040】
(A)成分は、現像性および溶媒への溶解性を高める観点から、重量平均分子量(Mw)が10000未満の化合物であることが好ましい。
【0041】
(A)成分の含有量は、固形分の全質量に対して5質量%以上85質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。(A)成分の含有量を5質量%以上とすることにより、十分な架橋構造を形成させて基板への接着性を維持しつつ、組成物の粘度をより小さくして硬化膜の平坦性をより高めることができる。(A)成分の含有量を85質量%以下とすることにより、反応しなかった余剰の(A)成分による、発ガス性への悪影響を抑制することができる。
【0042】
[(B)成分]
(B)成分は、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂である。
(B)成分は、不飽和基により他の(B)成分や(C)成分と重合および架橋して、強固な硬化膜を形成する。一方で、(B)成分は、アルカリ可溶性基(たとえばカルボキシル基)を有するため、硬化膜をアルカリ現像可能とする。
【0043】
(B)成分の例には、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物に、(メタ)アクリル酸を反応させ、得られたヒドロキシ基を有する化合物に多塩基カルボン酸またはその無水物を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物が含まれる。ビスフェノール類から誘導されるエポキシ化合物とは、ビスフェノール類とエピハロヒドリンを反応させて得られるエポキシ化合物またはこれと同等物を意味する。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよびメタクリルの一方または両方を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの一方または両方を意味し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルおよびメタクリロイルの一方または両方を意味する。
【0044】
(B)成分は、下記一般式(3)で表されるフルオレン構造を有するビスフェノール型アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
【0045】
【化16】
【0046】
一般式(3)中、Arは、独立して炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。Gは、独立して(メタ)アクリロイル基、または下記一般式(4)もしくは下記一般式(5)で表される置換基である。Yは、4価のカルボン酸残基である。Zは、独立して水素原子または下記一般式(6)で表される置換基であり、Zの少なくとも1個は下記一般式(6)で表される置換基である。nは、平均値が1以上20以下の数である。
【0047】
【化17】
【0048】
【化18】
【0049】
一般式(4)および(5)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数である。*は一般式(3)に示す化合物との結合部位を示す。
【0050】
【化19】
【0051】
一般式(6)中、Wは、2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2の数である。*は一般式(3)に示す化合物との結合部位を示す。
【0052】
一般式(3)で表される樹脂は、以下の方法で合成することができる。
【0053】
まず、下記一般式(7)で表される、1分子内にいくつかのアルキレンオキサイド変性基を有してもよい、ビスアリールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(a)(以下、単に「エポキシ化合物(a)」ともいう。)に、(メタ)アクリル酸、下記一般式(8)で表される(メタ)アクリル酸誘導体、および下記一般式(9)で表される(メタ)アクリル酸誘導体の少なくとも1種を反応させて、エポキシ(メタ)アクリレートであるジオール化合物を得る。なお、上記ビスアリールフルオレン骨格は、ビスナフトールフルオレン骨格またはビスフェノールフルオレン骨格であることが好ましい。
【0054】
【化20】
【0055】
一般式(7)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。
【0056】
【化21】
【0057】
【化22】
【0058】
一般式(8)、(9)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数である。
【0059】
上記エポキシ化合物(a)と(メタ)アクリル酸またはその誘導体との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、特開平4-355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオール化合物が得られることが記載されている。本実施形態において、上記反応で得られる化合物は、下記一般式(10)で表される重合性不飽和基を含有するジオール(d)(以下、単に「ジオール(d)」ともいう。)である。
【0060】
【化23】
【0061】
一般式(10)中、Arは、それぞれ独立して、炭素数6以上14以下の芳香族炭化水素基であり、Arを構成する水素原子の一部は、炭素数1以上10以下のアルキル基、炭素数6以上10以下のアリール基またはアリールアルキル基、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基またはシクロアルキルアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、またはハロゲン基で置換されていてもよい。Gは、それぞれ独立して、(メタ)アクリロイル基、一般式(4)または一般式(5)で表される置換基であり、Rは、独立して炭素数2以上4以下のアルキレン基である。lは、独立して0以上3以下の数である。
【0062】
【化24】
【0063】
【化25】
【0064】
一般式(4)および一般式(5)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2以上10以下のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Rは、炭素数2以上20以下の飽和または不飽和の炭化水素基であり、pは、0以上10以下の数である。*は一般式(3)に示す化合物との結合部位を示す。
【0065】
次に、上記得られるジオール(d)と、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはその酸一無水物(b)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを反応させて、一般式(3)で表される1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有する不飽和基含有硬化性樹脂を得ることができる。
【0066】
上記酸成分は、ジオール(d)分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分である。一般式(3)で表される樹脂を得るためには、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)と、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)と、を併用することが必要である。上記酸成分のカルボン酸残基は、飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基のいずれでもよい。また、これらのカルボン酸残基には-O-、-S-、カルボニル基などのヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。
【0067】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)の例には、鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸、およびこれらの酸一無水物などが含まれる。
【0068】
上記鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、およびジグリコール酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸などが含まれる。
【0069】
上記脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、ヘキサヒドロトリメリット酸およびノルボルナンジカルボン酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸などが含まれる。
【0070】
上記芳香族炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の例には、フタル酸、イソフタル酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、およびトリメリット酸など、ならびに任意の置換基が導入されたこれらのジカルボン酸またはトリカルボン酸が含まれる。
【0071】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸は、これらのうち、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、およびトリメリット酸が好ましく、コハク酸、イタコン酸、およびテトラヒドロフタル酸がより好ましい。
【0072】
上記ジカルボン酸またはトリカルボン酸は、その酸一無水物を用いることが好ましい。
【0073】
上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)の例には、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族炭化水素テトラカルボン酸、およびこれらの酸二無水物などが含まれる。
【0074】
上記鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、ならびに、脂環式炭化水素基および不飽和炭化水素基などの置換基が導入されたこれらの鎖式炭化水素テトラカルボン酸などが含まれる。
【0075】
上記脂環式炭化水素テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、およびノルボルナンテトラカルボン酸、ならびに、鎖式炭化水素基および不飽和炭化水素基などの置換基が導入されたこれらの脂環式テトラカルボン酸などが含まれる。
【0076】
上記芳香族炭化水素テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、およびナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸などが含まれる。
【0077】
上記テトラカルボン酸は、これらのうち、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸が好ましく、ビフェニルテトラカルボン酸およびジフェニルエーテルテトラカルボン酸がより好ましい。
【0078】
上記テトラカルボン酸は、その酸二無水物を用いることが好ましい。
【0079】
また、上記テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)のかわりに、ビス無水トリメリット酸アリールエステル類を用いることもできる。ビス無水トリメリット酸アリールエステル類とは、たとえば国際公開第2010/074065号に記載された方法で製造される化合物であり、構造的には芳香族ジオール(ナフタレンジオール、ビフェノール、およびターフェニルジオールなど)の2個のヒドロキシル基と2分子の無水トリメリット酸のカルボキシ基がそれぞれ反応してエステル結合した形の酸二無水物である。
【0080】
ジオール(d)と酸成分(b)および(c)との反応方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。たとえば、特開平9-325494号公報には、反応温度が90~140℃でエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法が記載されている。
【0081】
このとき、化合物の末端がカルボキシ基となるように、エポキシ(メタ)アクリレート(ジオール(d))、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、およびテトラカルボン酸二無水物(c)のモル比が、(d):(b):(c)=1.0:0.01~1.0:0.2~1.0となるように反応させることが好ましい。
【0082】
たとえば、酸一無水物(b)、酸二無水物(c)を用いる場合には、ジオール(d)に対する酸成分の量〔(b)/2+(c)〕のモル比[〔(b)/2+(c)〕/(d)]が0.5より大きく1.0以下となるように反応させることが好ましい。上記モル比が1.0以下だと、一般式(1)で表される不飽和基含有硬化性樹脂の末端が酸無水物とならないので、未反応酸二無水物の含有量が増大するのを抑制して、それぞれの組成物の経時安定性を高めることができる。また、上記モル比が0.5より大きいと、重合性不飽和基を含有するジオール(d)のうち未反応の成分の残存量が増大するのを抑制して、それぞれの組成物の経時安定性を高めることができる。なお、一般式(3)で表される不飽和基含有硬化性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、(b)、(c)および(d)の各成分のモル比を、上述の範囲で任意に変更することができる。
【0083】
なお、ジオール(d)の合成、およびそれに続く多価カルボン酸またはその無水物の反応は、通常、溶媒中で必要に応じて触媒を用いて行う。
【0084】
上記溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、およびブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの高沸点のエーテル系またはエステル系の溶媒、ならびに、シクロヘキサノン、およびジイソブチルケトンなどのケトン系溶媒等が含まれる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、たとえば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0085】
また、エポキシ基とカルボキシ基またはヒドロキシル基との反応は、触媒を使用して行うことが好ましい。上記触媒として、特開平9-325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、およびトリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィンなどのホスフィン類などが記載されている。
【0086】
(B)成分は、酸価が50mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、60mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が50mgKOH/g以上であると、アルカリ現像時に残渣が残りにくくなり、200mgKOH/g以下であると、アルカリ現像液の浸透が早くなり過ぎないので、剥離現像を抑制することができる。なお、酸価は、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めることができる。
【0087】
(B)成分は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)測定(HLC-8220GPC、東ソー株式会社製)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1000以上40000以下であることが好ましく、1500以上30000以下であることがより好ましく、2000以上15000以下であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)が1000以上であると、支持体と被着体との密着性を向上させることができる。また、重量平均分子量(Mw)が40000以下であると、塗布に好適な組成物の溶液粘度に調整しやすく、支持体または被着体の表面への塗布に時間を要しすぎることがなく、被着体への接着性がより高まりやすい。接着強度を重視する場合には、重量平均分子量(Mw)は1000以上5000以下であることが好ましい。
【0088】
フルオレン構造を有する(B)成分は、それ自体が熱分解しにくく、他の樹脂と比較して分解物の揮発が生じにくい。また、フルオレン構造を有する(B)成分は、硬化性樹脂組成物を硬化してなる樹脂硬化膜のガラス転移温度を高め、熱による接着性の低下を抑制する。
【0089】
(B)成分の別の好ましい例には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体であって、(メタ)アクリロイル基およびカルボキシ基を有する樹脂が含まれる。上記樹脂の例には、グリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類を溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、(メタ)アクリル酸を反応させ、最後にジカルボン酸またはトリカルボン酸の無水物を反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂が含まれる。上記共重合体は、特開2014-111722号公報に示されている、両端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化されたジエステルグリセロールに由来する繰返し単位20~90モル%、およびこれと共重合可能な1種類以上の重合性不飽和化合物に由来する繰返し単位10~80モル%で構成され、数平均分子量(Mn)が2000~20000かつ酸価が35~120mgKOH/gである共重合体、および特開2018-141968号公報に示されている、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来するユニットと、(メタ)アクリロイル基およびジまたはトリカルボン酸残基を有するユニットと、を含む、重量平均分子量(Mw)3000~50000、酸価30~200mgKOH/gの重合体である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を参考にできる。
【0090】
(B)成分の含有量は、固形分の全質量に対して20質量%以上90質量%以下であることが好ましく、30質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、パターニング特性を重視する場合には40質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。(B)成分の上記含有量が20質量%以上であると、(D)成分またはその分解物の揮発を十分に抑制することが可能となり、かつ、高解像度のパターンを形成することが可能となる。
【0091】
[(C)成分]
(C)成分は、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物である。
【0092】
(C)成分の例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、またはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;デンドリマー型多官能アクリレートが含まれる。これらの光重合性モノマーは、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(C)成分は、これらの重合性化合物の1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。また、(C)成分は、(B)成分の分子同士を架橋する役割を果たすことができるものであり、この機能を発揮させるためには不飽和結合を3個以上有することが好ましい。また、(C)成分は、分子量を1分子中の(メタ)アクリル基の数で除したアクリル当量が50以上300以下であることが好ましく、80以上200以下であることがより好ましい。なお、(C)成分は遊離のカルボキシ基を有しない。
【0093】
(C)成分の含有量は、(B)成分100質量部に対して、10質量部以上80質量部以下であることが好ましく、20質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。(C)成分の含有量を上記範囲とすることで、硬化性樹脂組成物の感度および現像性を所望の範囲に調整しやすくなる。(C)成分をより多くすることで、硬化性樹脂組成物の感度をより高めることができ、(C)成分をより少なくすることで、硬化性樹脂組成物の現像性をより高めることができる。
【0094】
[(D)成分]
(D)成分は、重合開始剤である。
【0095】
(D)成分は、重合性不飽和結合を有し付加重合可能な化合物の重合を開始させ得る化合物であれば、特に限定されるものではない。(D)成分の例には、アセトフェノン化合物、トリアジン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物、イミダゾール化合物、アシルオキシム化合物などの光重合開始剤、また熱重合する際に用いる熱重合開始剤が含まれる。なお、本明細書において、重合開始剤は増感剤を含む意味で使用される。
【0096】
アセトフェノン化合物の例には、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーなどが含まれる。
【0097】
トリアジン化合物の例には、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(ピプロニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0098】
ベンゾイン化合物の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-tert-ブチルエーテルなどが含まれる。
【0099】
ベンゾフェノン化合物の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4,4‘-ビス(N,N-ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどが含まれる。
【0100】
チオキサントン化合物の例には、チオキサントン、2-クロロチオキサン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが含まれる。
【0101】
イミダゾール化合物の例には、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール2量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5-トリアリールイミダゾール2量体などが含まれる。
【0102】
アシルオキシム化合物の例には、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-ビシクロヘプチル-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ビシクロヘプタンカルボキシレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-トリシクロデカンカルボシキレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-アダマンタンカルボシキレート、1-[4-(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン-1,2-ジオン=2-o-ベンゾイルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エタノン-o-アセチルオキシム、(2-メチルフェニル)(7-ニトロ-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル)-アセチルオキシム、エタノン,1-[7-(2-メチルベンゾイル)-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-(-9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)-1-o-アセチルオキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1,2-オクタンジエン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセテート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセテート、4-エトキシ-2-メチルフェニル-9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾロ-3-イル-O-アセチルオキシム、5-(4-イソプロピルフェニルチオ)-1,2-インダンジオン,2-(O-アセチルオキシム)などが含まれる。上記光重合開始剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
アシルオキシム系光重合開始剤の他の例には、一般式(21)または一般式(22)で表されるO-アシルオキシム系光重合開始剤が含まれる。
【0104】
【化26】
【0105】
式(21)中、R、R10は、それぞれ独立に炭素数1~15のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基または炭素数4~12の複素環基を表し、R11は炭素数1~15のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基を表す。ここで、アルキル基およびアリール基は炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐、または環状のいずれのアルキル基であってもよい。
【0106】
【化27】
【0107】
(式(22)中、R12およびR13はそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4~10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R14はそれぞれ独立に、炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の-CH-基の一部が-O-基で置換されていてもよい。さらに、これらR12~R14の基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0108】
また、(D)成分は、365nmにおけるモル吸光係数が10000L/mol・cm以上であることが好ましい。このような光重合開始剤は、感度が高いため、アクリル当量が比較的大きい(C)成分を含む硬化性樹脂組成物でも、十分な感光性を担保することができ、硬化性樹脂組成物の現像性(解像性)を十分に高めることができる。このような光重合開始剤の例には、Omnirad1312(IGM Resins B.V.社製、「Omnirad」は同社の登録商標)、およびアデカアークルズNCI-831(株式会社ADEKA製、「アデカアークルズ」は同社の登録商標)などが含まれる。
【0109】
本明細書において、光重合開始剤のモル吸光係数は、紫外可視赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて、0.001重量%濃度のアセトニトリル溶液の吸光度を、光路長1cm石英セル中にて測定し求めた値とすることができる。
【0110】
また、(D)成分としては、熱重合開始剤を使用してもよい。熱重合開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン-1-カルボニトリル、アゾジベンゾイル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性触媒及び過酸化物あるいは過硫酸塩と還元剤の組み合わせによるレドックス触媒等、通常のラジカル重合に使用できるものはいずれも使用することができる。熱重合開始剤は、本発明の熱硬化性樹脂組成物の保存安定性や、硬化物の形成条件を考慮して選定できる。
【0111】
なお、(D)成分としては、活性ラジカル発生剤または酸発生剤を使用してもよい。
【0112】
活性ラジカル発生剤の例には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアントラキノン、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物などが含まれる。
【0113】
酸発生剤の例には、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムp-トルエンスルホナート、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムp-トルエンスルホナート、4-アセトキシフェニル・メチル・ベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのオニウム塩類、ニトロベンジルトシレート類、ベンゾイントシレート類などが含まれる。
【0114】
増感剤の例には、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ベンゾフェノン、4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、およびp-tert-ブチルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、およびベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;2-ジメチルアミノエチル安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルパラトルイジン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、および3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、および2,4-ジクロロチオキサントンなどのチオキサントン系;4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミノベンゾフェノン系;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、ならびにカンファーキノンなどが含まれる。
【0115】
(D)成分の含有量は、(B)成分と(C)成分の合計100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、2質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。また、(D)成分として、アシルオキシム系光重合開始剤を用いる場合には、(D)成分の含有量は、(B)成分と(C)成分の合計100質量部に対して、0.5質量部以上20質量部以下であることが好ましく、1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。(D)成分の含有量が上記下限値以上であると、適度な光重合の速度を有するので、十分な感度を担保できる。また、(D)成分の含有量が上記上限値以下であると、マスクに対して忠実な線幅を再現できるとともにパターンエッジをシャープにすることができる。
【0116】
増感剤の含有量は、(D)成分の全質量を100質量部としたときに0.5質量部以上400質量部以下であることが好ましく、1質量部以上300質量部以下であることがより好ましい。増感剤の上記含有量が0.5質量部以上であると、重合開始剤の感度を向上させて、重合速度を速めることができる。また、増感剤の上記含有量が400質量部以下であると、感度の過剰な高まりを抑制して、重合時(特には光重合時)に、焦げ、剥離カスなどを生じにくくすることができる。
【0117】
[(E)成分]
(E)成分は、溶剤である。(E)成分は、硬化性樹脂組成物の粘度を調整して、塗布性を向上させる。
【0118】
(E)成分としては、公知の溶剤を用いることができる。溶剤の例には、α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類;ブチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、および1,3-ブチレングリコールジアセテート等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノン等のケトン系溶剤;ジエチレングリコールエチルメチルエーテルメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、ジメチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のエチレングリコール骨格を有するエーテル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のプロピレングリコール骨格を有するエステル系やエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル系溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、3-メトキシブタノール、およびエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル等のアルコール系溶剤;トルエン、キシレン、およびテトラメチルベンゼン等の芳香族系溶剤;脂肪族系溶剤;アミン系溶剤、ならびにアミド系溶剤等が含まれる。安全性の観点からは、プロピレングリコール骨格を有するエステル系やエーテル系の溶剤であることが好ましい。なお、これらの溶剤は2種類以上を併用してもよい。
【0119】
(E)成分の含有量は、硬化性樹脂組成物の全質量に対して、10質量%以上95質量%以下であることが好ましく、25質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。(E)成分の含有量が25質量%以上であると、硬化性樹脂組成物の塗布性を十分に高めることができる。(E)成分の含有量が70質量%以下であると、膜厚がより厚い硬化膜を形成しやすくすることができる。
【0120】
[その他の成分]
硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、(A)成分以外のエポキシ化合物、硬化剤、硬化促進剤、カップリング剤、界面活性剤、樹脂、フィラー、熱重合禁止剤および酸化防止剤、可塑剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤等のその他の成分を含むことができる。
【0121】
((A)成分以外のエポキシ化合物)
(A)成分以外のエポキシ化合物は、例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、ジフェニルフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば、NC-7000L:日本化薬株式会社製)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物(例えば、EPPN-501H:日本化薬株式会社製)、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物などの芳香族構造を有するエポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、メタクリル酸とメタクリル酸グリシジルの共重合体に代表される(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む(メタ)アクリロイル基を有するモノマーの共重合体、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、リカレジンHBE-100:新日本理化株式会社製、「リカレジン」は同社の登録商標)などのグリシジル基を有するエポキシ化合物、1,4-シクロヘキサンジメタノール-ビス3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,1-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-m-ジオキサン(例えば、アラルダイトCY175:ハンツマン社製、「アラルダイト」は同社の登録商標)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、CYRACURE UVR-6128:ダウ・ケミカル社製)、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、セロキサイド2021P:株式会社ダイセル製、「セロキサイド」は同社の登録商標)、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(例えば、エポリードGT401:株式会社ダイセル製、「エポリード」は同社の登録商標)、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物(例えば、HiREM-1:四国化成工業株式会社製)、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えば、HP7200シリーズ:DIC株式会社製)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、EHPE3150:株式会社ダイセル製)などの脂環式エポキシ化合物、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、NISSO-PB・JP-100:日本曹達株式会社製、「NISSO-PB」は同社の登録商標)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等が含まれる。これらのうち、硬化膜の平坦性および低発ガス性を高める観点から、上述の芳香族構造を有するエポキシ化合物が好ましい。
【0122】
また、(A)成分以外のエポキシ化合物は、下記一般式(18)で示されるような、環内で架橋している炭素原子を有さない化合物であってもよい。
【0123】
【化28】
【0124】
硬化性樹脂組成物の経時的な特性変化を抑制する観点から、(A)成分以外のエポキシ化合物の含有量は、固形分の全質量に対して0質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0125】
(硬化剤)
硬化剤は、(A)成分の硬化反応を十分に進行させて、硬化膜の低発ガス性を向上させることができる。
【0126】
硬化剤の例には、エポキシ樹脂の硬化に寄与するアミン化合物、多価カルボン酸化合物またはその無水物、多価カルボン酸の熱分解性エステル、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が含まれる。これらの中では、多価カルボン酸またはその無水物、および多価カルボン酸の熱分解性エステルからなる群より選択されることが好ましい。
【0127】
多価カルボン酸は1分子中に2つ以上のカルボキシ基を有する化合物である。多価カルボン酸の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、メチルテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキセン-4,5-ジカルボン酸、ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸、ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、およびブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸等が含まれる。
【0128】
多価カルボン酸の無水物の例には、上記多価カルボン酸の酸無水物が含まれる。これらは分子間酸無水物でもよいが、一般には分子内で閉環した酸無水物が用いられる。酸無水物としては、無水トリメリット酸が好ましい。
【0129】
多価カルボン酸の熱分解性エステルの例には、上記多価カルボン酸のt-ブチルエステル、1-(アルキルオキシ)エチルエステル、1-(アルキルスルファニル)エチルエステル(ただし、ここでいうアルキルは炭素数1~20の飽和または不飽和の炭化水素基を表し、かかる炭化水素基は分岐構造や環構造を有していてもよく、任意の置換基で置換されていてもよい)等が含まれる。
【0130】
また、硬化剤としては、2つ以上のカルボキシ基を有する重合体または共重合体も用いてもよく、上記重合体または共重合体のカルボキシ基は、無水物または熱分解性エステルであってもよい。このような重合体または共重合体の例には、(メタ)アクリル酸を構成成分として含む重合体または共重合体、無水マレイン酸を構成成分として含む共重合体、テトラカルボン酸二無水物をジアミンまたはジオールと反応させて酸無水物を開環させた化合物等が含まれる。
【0131】
硬化剤の含有量は、固形分の全質量に対して、5質量%以上55質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。(B)成分の含有量が5質量%以上であると、硬化反応が十分に進行し、耐熱性など硬化物の物性が十分に向上する。また、未反応の成分(A)が揮発することによるガスの発生も抑制できる。(B)成分の含有量が55質量%以下であると、硬化反応に寄与しない余剰の硬化剤による、発ガス性や硬化物としての諸特性への悪影響を抑制することができる。
【0132】
(硬化促進剤)
硬化促進剤は、樹脂組成物の硬化反応を促進させて短時間で硬化膜を形成させる。
【0133】
硬化促進剤としては、公知の化合物を用いることができる。硬化促進剤の例には、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物などが含まれる。これらの中では、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンまたは1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エンまたはそれらの塩が好ましい。
【0134】
硬化促進剤を使用する場合の含有量は、固形分の全質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。硬化促進剤の含有量が0.01質量%以上であると、硬化反応を促進させて、短時間で反応を完了させることができる。硬化促進剤の含有量が5質量%以下であると、十分な保存安定性が得られ、硬化時の着色への悪影響も抑制することができる。
【0135】
カップリング剤の例には、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、および3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤、チタン系カップリング剤、ならびにアルミニウム系カップリング剤などが含まれる。これらの中では、シランカップリング剤である3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0136】
界面活性剤の例には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等が含まれる。これらのうち、フッ素系界面活性剤が好ましい。
【0137】
フィラーの例には、シリカ、タルク等が含まれる。
【0138】
樹脂の例には、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、メラミン樹脂などが含まれる。
【0139】
熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。
【0140】
可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填剤の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。
【0141】
消泡剤やレベリング剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。
【0142】
紫外線吸収剤の例には、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物などが含まれる。
【0143】
[硬化性樹脂組成物の製造方法]
硬化性樹脂組成物は、上述の各成分を混合することにより得ることができる。
【0144】
2.硬化膜
上述の硬化性樹脂組成物は、放射線の照射により硬化膜を形成して、液晶ディスプレイ、有機EL表示装置、μLED表示装置、および量子ドットを適用した表示装置などの各種表示装置における保護層、プリント配線基板および半導体装置用の絶縁膜、たとえばソルダーレジスト層、メッキレジスト層、エッチングレジスト層などのレジスト層、多層プリント配線板などの層間絶縁層、ガスバリア用のフィルム、レンズおよび発光ダイオード(LED)等の半導体発光素子用の封止材、塗料やインキのトップコート、プラスチック類のハードコート、金属類の防錆膜等に用いることができる。なお、本明細書において、半導体装置は、フリップチップパッケージ、ウエハレベルパッケージ等に加えて、例えば、フリップチップパッケージをインターポーザー上に積層したもの等のように、半導体チップを含みプリント基板上に実装できるような形態にしたものを含めたものを意味する。特に、発光素子(好ましくはUV-LEDやBlue-LEDなどのLED)と組み合わされる半導体装置に有用である。また、硬化性樹脂組成物そのものを成形してフィルム、基板、プラスチック部品、光学レンズ等の作製にも応用できる。
【0145】
上記硬化性樹脂組成物は、膜厚が厚い硬化膜の製造に特に適している。たとえば、上記硬化性樹脂組成物から製造される硬化膜は、膜厚を1μm以上100μm以下とすることが好ましく、10μm以上70μm以下とすることがより好ましい。
【0146】
上記硬化膜は、たとえば、上記硬化性樹脂組成物を基板等に塗布し、乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射(露光)し、これを硬化させることにより、作製することができる。このとき、フォトマスク等を使用して光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させれば、所望のパターンの硬化物が得られる。
【0147】
硬化性樹脂組成物を基板に塗布する際には、公知の溶液浸漬法、スプレー法、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコート機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。
【0148】
これらの方法によって、硬化性樹脂組成物を所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プレベーク)ことにより、被膜が形成される。プレベークは、オーブンおよびホットプレートなどによる加熱、真空乾燥、ならびにこれらの組み合わせることによって行われる。プレベークにおける加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば80~120℃の温度で1~10分間行われる。
【0149】
露光に使用される放射線の例には、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線およびX線などが含まれるが、波長が250~450nmの範囲にある放射線が好ましい。
【0150】
アルカリ現像は、たとえば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの水溶液を現像液として用いて行うことができる。これらの現像液は樹脂層の特性に合わせて選択されるが、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。現像は、20~35℃の温度で行うことが好ましい。市販の現像機や超音波洗浄機等を用いることで、微細な画像を精密に形成することができる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法の例には、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、およびパドル(液盛り)現像法などが含まれる。
【0151】
このようにして現像した後、180~250℃の温度及び20~100分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われる。このポストベークは、パターニングされた塗膜と基板との接着性を高めるため等の目的で行われる。ポストベークは、プレベークと同様に、オーブンおよびホットプレートなどにより加熱することによって行われる。
【0152】
その後、熱により重合または硬化(両者を合わせて硬化ということがある)を完結させて、絶縁膜等の硬化膜を得ることができる。このときの硬化温度は160~250℃の範囲が好ましい。
【0153】
なお、熱重合開始剤を用いて熱硬化により樹脂硬化膜を作製する際には、上記硬化性樹脂組成物を基板等に塗布し、乾燥し、熱処理すればよい。このときの塗布、乾燥(プレベーク)および熱処理(ポストベーク)の条件は、上述した露光およびアルカリ現像を含む方法について説明したものと同様の条件とすることができる。
【実施例0154】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0155】
なお、各種測定機器について、同一の機種を使用した場合には、2か所目から機器メーカー名を省略している。また、実施例で使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施して使用している。また、各成分の含有量について、小数第一位が0であるときは、小数点以下の表記を省略することがある。
【0156】
[物性の測定方法]
(固形分濃度)
固形分濃度は、合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W(g)〕に含浸させた重量〔W(g)〕、および160℃にて2時間加熱した後の重量〔W(g)〕を用いて次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W-W)/(W-W
【0157】
(酸価)
酸価は、樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0158】
(分子量)
分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H-2000(2本)+TSKgelSuper H-3000(1本)+TSKgelSuper H-4000(1本)+TSKgelSuper H-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0159】
(エポキシ当量)
硬化組成物溶液をジオキサンに溶解させた後に臭化テトラエチルアンモニウムの酢酸溶液を加え、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-過塩素酸溶液で滴定して求めた。
【0160】
(反応開始温度)
調製直後の硬化性樹脂組成物を、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)上に、加熱硬化処理後の膜厚が10μm(固形分濃度が50質量%の組成物)となるようにスピンコーターの回転数を変化させて塗布し、ホットプレートを用いて110℃で5分間プリベークをして塗膜を作製した。次いで、スクレイパー等で削り、得られた粉末状の塗膜10mgの発熱反応を示差走査熱量計(DSC)(装置名、メーカーを確認中)を用いて測定した。測定条件は、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分にて、30℃から230℃まで測定した。次いで、DSC測定で得られた、横軸を温度(℃)、縦軸を熱流(μW)としたグラフにおいて、昇温時に熱流が0μWになった後、はじめに50μWになった温度を、反応開始温度とした。
【0161】
[合成例1](不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の合成)
還留冷却器付き500mLの四つ口フラスコ中に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂(一般式(3)で示される、Wがフルオレン-9,9-ジイル基であり、RおよびRが水素であり、nは0~0.15であるエポキシ化合物)(114.4g、0.23モル)、アクリル酸(33.2g、0.46モル)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(157g)および臭化テトラエチルアンモニウム(0.48g)を仕込み、100~105℃で20時間撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内に3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(35.3g、0.12モル)、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物(18.3g、0.12モル)を仕込み、120~125℃で6時間撹拌し、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を得た。樹脂溶液の固形分濃度は56.5質量%であり、酸価(固形分換算)は103mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは3600であった。
【0162】
[硬化性樹脂組成物の作製]
下記の各成分を、表1~表3に示す配合で、室温で3時間攪拌混合して固形分成分を溶剤に溶解させ、いずれも硬化性組成物である組成物1~組成物12を調製した。なお、表1~表3に示した(A)成分~(D)成分の量は、固形分量である。
【0163】
なお、表1~3に示される各成分の数値は質量部である。固形分成分の中にははじめから溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に溶解した状態で合成されたものもあるが、その場合は組成の数値には固形分としての質量部を示し、持ち込まれる溶剤分は溶剤の質量部に含めて記した。
【0164】
表1~3中で使用した成分は以下のとおりである。
【0165】
(エポキシ化合物)
(A)-1: 一般式(1)において、k=2であり、bはシクロヘキシル骨格であり、bに隣接するc1はノルボルナン骨格であり、c1に隣接するc2はシクロペンチル骨格であり、aおよびdが一般式(2)で表されるエポキシ基である、下記一般式(5)で表されるエポキシ化合物(エポキシ当量:122g/eq、反応開始温度:90℃)
【化29】
【0166】
(A)-2: 一般式(1)において、k=2であり、bおよびbに隣接するc1はノルボルナン骨格であり、c1に隣接するc2はシクロペンチル骨格であり、aおよびdが一般式(2)で表されるエポキシ基である、下記一般式(6)で表されるエポキシ化合物(エポキシ当量:115g/eq、反応開始温度:88℃)
【0167】
【化30】
【0168】
(A)-3: 1,2:5,6-ジエポキシヘキサヒドロインダン(THI-DE、ENEOS株式会社製、エポキシ当量:80g/eq、反応開始温度:48℃)
(A)-4: 水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER YX8000、三菱ケミカル株式会社製、エポキシ当量:205g/eq、反応開始温度:51℃)
(A)-5: 3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021P、株式会社ダイセル製、エポキシ当量:128~133g/eq、反応開始温度:45℃)
(A)-6: 2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(EHPE3150、株式会社ダイセル製、エポキシ当量:170~190g/eq、反応開始温度:47℃)
(A)-7: ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828、三菱ケミカル株式会社製、エポキシ当量:184~194g/eq、反応開始温度:49℃)
(A)-8: テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂(YX4000、三菱ケミカル株式会社製、エポキシ当量:180~192g/eq、反応開始温度:47℃)
【0169】
(アルカリ可溶性樹脂)
(B): 合成例1で得られた不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂
【0170】
(重合性化合物)
(C): ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、日本化薬社製)
【0171】
(重合開始剤)
(D): 2,2-ジメトキシ―2-フェニルアセトフェノン(IGMResinsB.V.社製 OMNIRAD651)
【0172】
(溶剤)
(E): プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0173】
【表1】
【0174】
【表2】
【0175】
【表3】
【0176】
[評価]
表1~3に示される硬化性樹脂組成物について、調製直後と、室温(21.5±3℃)で14日間静置した後に、以下の測定を行い、経時前後の測定値の変化をもとに、以下の評価を行った。
【0177】
(粘度の変化)
調製直後および経時後の硬化性樹脂組成物を、E型粘度計(装置:RE-85L型、東機産業株式会社製、5号ロータ)にて23.0±0.4℃下で粘度を測定し、下記式により粘度の変化率を求めた。求められた粘度の変化率をもとに、下記基準により粘度の変化を評価した。
粘度の変化率(%)=(1-(経時後の粘度/調製直後の粘度)の絶対値)×100
◎: 粘度の変化率は10%未満
○: 粘度の変化率は10%以上20%未満
△: 粘度の変化率は20%以上30%未満
×: 粘度の変化率は30%以上
【0178】
(膜厚の変化)
調製直後の硬化性樹脂組成物を、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)上に、加熱硬化処理後の膜厚が10μm(固形分濃度が50質量%の組成物)、または30μm(固形分濃度が60質量%の組成物)となるようにスピンコーターの回転数を変化させて塗布し、ホットプレートを用いて110℃で5分間プリベークをして塗膜を作製した。次いで、波長365nmの照度が30mW/cmの超高圧水銀ランプで100mJ/cmの紫外線を照射して感光部分の光硬化反応を行った。次いで、熱風乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、膜厚測定用の硬化膜つき試験基板を得た。
【0179】
経時後の硬化性樹脂組成物からも、スピンコーターの回転数を同じとし、その他の条件も同じにして、膜厚測定用の硬化膜つき試験基板を得た。
【0180】
調製直後および経時後の硬化性樹脂組成物から得られた硬化膜の膜厚を、接触式膜厚計(テンコールP-17、テンコール社製)にて測定し、下記式により膜厚の変化率を求めた。求められた膜厚の変化率をもとに、下記基準により膜厚の変化を評価した。
膜厚の変化率(%)=(1-(経時後の組成物から得た硬化膜の膜厚/調製直後の組成物から得た硬化膜の膜厚)の絶対値)×100
◎: 膜厚の変化率は5%未満
○: 膜厚の変化率は5%以上10%未満
△: 膜厚の変化率は10%以上20%未満
×: 膜厚の変化率は20%以上
【0181】
(現像時間の変化)
調製直後の硬化性樹脂組成物を、10inchのベアシリコンウェハー上に、加熱硬化処理後の膜厚が10μm(固形分濃度が50質量%の組成物)、または30μm(固形分濃度が60質量%の組成物)となるようにスピンコーターの回転数を変化させて塗布し、ホットプレートを用いて110℃で5分間プリベークをして塗膜を作製した。次いで、波長365nmの照度が30mW/cmの超高圧水銀ランプで、ライン/スペースが10μm~100μmで形成された石英マスクを通して100mJ/cmの紫外線を照射して感光部分の光硬化反応を行い、現像時間の測定用の試験基板を得た。
【0182】
経時後の硬化性樹脂組成物からも、スピンコーターの回転数を同じとし、その他の条件も同じにして、現像時間の測定用の硬化膜つき試験基板を得た。
【0183】
調製直後および経時後の硬化性樹脂組成物から得られた硬化膜を、23℃の0.8%TMAH現像液に浸漬させ、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)を測定した。求められたBTの変化率をもとに、下記基準により現像時間の変化を評価した。
現像時間の変化率(%)=(1-(経時後の組成物から得た硬化膜のBT/調製直後の組成物から得た硬化膜のBT)の絶対値)×100
◎: BTの変化率は10%未満
○: BTの変化率は10%以上20%未満
△: BTの変化率は20%以上30%未満
×: BTの変化率は30%以上
【0184】
(透過率の変化)
調製直後の硬化性樹脂組成物を、膜厚測定用の硬化膜つき試験基板と同様に処理して、透過率の測定用の硬化膜つき試験基板を得た。
【0185】
経時後の硬化性樹脂組成物からも、スピンコーターの回転数を同じとし、その他の条件も同じにして、透過率の測定用の硬化膜つき試験基板を得た。
【0186】
調製直後および経時後の硬化性樹脂組成物から得られた硬化膜の波長400nmの光の透過率を分光光度計(SD7000m、日本電色工業株式会社製)にて測定し、下記式により透過率の変化率を求めた。求められた膜厚の変化率をもとに、下記基準により透過率の変化を評価した。
透過率の変化率(%)=(経時後の組成物から得た硬化膜の透過率/調製直後の組成物から得た硬化膜の透過率)の絶対値)×100
◎: 透過率の変化率は1%未満
○: 透過率の変化率は1%以上2%未満
△: 透過率の変化率は2%以上3%未満
×: 透過率の変化率は3%以上
【0187】
(接着強度の変化)
調製直後の硬化性樹脂組成物を、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製))上に、加熱硬化処理後の膜厚が20μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて110℃で5分間プリベークをして塗膜を作製した。次いで、波長365nmの照度が30mW/cmの超高圧水銀ランプで100mJ/cmの紫外線を照射して感光部分の光硬化反応を行った。露光した上記露光膜を23℃の0.8%TMAH現像液により1kgf/cmのシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から20秒の現像処理を行った後、5kgf/cmのスプレー水洗を行い、露光膜の未露光部分を除去してガラス基板上に2mm×2mmのパターンを形成した。次いで、パターン上に2mm×2mmにカットしたガラス基板を置き、100℃のホットプレート上で1分間加熱し仮接着した。その後、熱乾燥機を用いて230℃で30分間、本硬化(ポストベーク)し、接着強度の測定用の試験基板を得た。
【0188】
経時後の硬化性樹脂組成物からも、同様の処理により、接着強度の測定用の硬化膜つき試験基板を得た。
【0189】
調製直後および経時後の硬化性樹脂組成物から得られた硬化膜を、ダイシェアテスター(アークテック社製)を用いて、測定荷重範囲100kgで剥離させて、接着強度を求めた。求められた接着強度の変化率(低下率)をもとに、下記基準により接着強度の変化を評価した。
接着強度の変化率(%)=(1-(経時後の組成物から得た硬化膜の接着強度/調製直後の組成物から得た硬化膜の接着強度))×100
◎: 接着強度の変化率は2%未満
○: 接着強度の変化率は2%以上3%未満
△: 接着強度の変化率は3%以上4%未満
×: 接着強度の変化率は4%以上
【0190】
評価結果を表4~表6に示す。
【0191】
【表4】
【0192】
【表5】
【0193】
【表6】
【0194】
表4~表6の結果から、一般式(1)で表されるエポキシ化合物を用いることで、経時保管による粘度、膜厚、現像時間、透過率および接着強度の変化(低下)が生じにくい硬化性樹脂組成物が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明の硬化性樹脂組成物によれば、膜厚が厚い硬化膜を製造するための組成物を、より長期間保管することが可能になる。そのため、本発明は、従来より多様な設計を有する半導体装置その他のMEMSの製造をより容易にし、当該分野のさらなる発展に寄与すると期待される。