(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119404
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】揚げ物衣材用ブレッダーミックス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20240827BHJP
A23L 7/157 20160101ALI20240827BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240827BHJP
A23L 13/50 20160101ALN20240827BHJP
【FI】
A23L7/109 C
A23L7/157
A23L5/10 E
A23L13/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026281
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】山口 大輝
(72)【発明者】
【氏名】中村香寿実
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B042
4B046
【Fターム(参考)】
4B025LB04
4B025LG01
4B025LG02
4B025LG04
4B025LG18
4B025LG28
4B025LG33
4B025LP10
4B035LC03
4B035LE17
4B035LG01
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4B035LP07
4B035LP27
4B042AC05
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4B046LP03
4B046LP15
4B046LP22
4B046LP34
4B046LP35
4B046LP40
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、保存しても衣のサクサクとした食感が劣化し難く、更には、電子レンジ再加熱しても衣のサクサクとした食感を有する揚げ物を製造することができる揚げ物衣材用ブレッダー組成物を提供することである。
【解決手段】本発明の課題は、下記条件1及び2を満たす、揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺により解決される。
条件1:加熱調理済乾燥麺における押出し方向または圧延方向に対して垂直な断面の面積が0.5~100mm2
条件2:加熱調理済乾燥麺における押出し方向または圧延方向の長さが1~25mm
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件1及び2を満たす、揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺。
条件1:加熱調理済乾燥麺における押出し方向または圧延方向に対して垂直な断面の面積が0.5~100mm2
条件2:加熱調理済乾燥麺における押出し方向または圧延方向の長さが1~25mm
【請求項2】
条件3:乾燥前の加熱調理済麺の麺水分量が35質量%以上である、請求項1記載の揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺。
【請求項3】
条件3’:乾燥前の加熱調理済麺の麺水分量が65質量%以上である、請求項1記載の揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺と澱粉質原料を含み、揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺の量が、揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺と澱粉質原料との合計質量に対して1質量%以上である、揚げ物衣材用ブレッダーミックス。
【請求項5】
下記工程1、2及び3を含み、下記条件1及び2を満たす、揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺の製造方法。
工程1:押出法及び/又は圧延法により生麺を準備する工程
工程2:工程1で得られた生麺を加熱調理する工程
工程3:工程2で得られた加熱調理済麺を乾燥する工程
条件1:工程3で得られた加熱調理済乾燥麺における押出し方向または圧延方向に対して垂直な断面の面積が0.5~100mm2
条件2:工程3で得られた加熱調理済乾燥麺における押出し方向または圧延方向の長さが1~25mm
【請求項6】
条件3:工程2で得られた加熱調理済麺の麺水分量が35質量%以上である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
条件3’:工程2で得られた加熱調理済麺の麺水分量が65質量%以上である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか一項に記載の方法により得られる揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺と澱粉質原料を混合する工程を含む揚げ物衣材用ブレッダーミックスの製造方法であって、揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺の量が、揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺と澱粉質原料との合計質量に対して1質量%以上である、前記方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法により得られる揚げ物衣材用ブレッダーミックスを使用する、揚げ物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物衣材用ブレッダーミックス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、揚げ物は、油調直後はサクミを有する良好な食感が得られるが、経時的にサクミの低下が生じ、ひきが強く、歯切れが悪くなり、食感が低下することが知られている。これは、調理後の経時によって具材の水分が衣に移行し、具材のジューシーさが失われると共に衣が柔らかくなって、食感が失われやすいことが一つの原因である。特に近年は、調理済みの揚げ物が流通販売され、消費者がこれを購入してそのまま喫食するか又は電子レンジなどで加熱調理してから喫食するスタイルが普及しているが、斯かる食事スタイルにおいては、揚げ物が製造されてから喫食されるまでに比較的長時間を要するため、前記の水分移行に起因する衣の品質低下が問題となりやすく、特に、喫食前に揚げ物を電子レンジで加熱調理すると、電子レンジのマイクロ波によって具材の水分が加熱蒸散して衣に移行しやすくなるため、衣の品質低下はより一層深刻なものとなる。
このような問題を解決するために種々検討されているが、更なる改良が求められていた。
特許文献1では、小麦粉と、カルボキシル基含量0.1~1.1%である酸化澱粉と、加熱溶解度が3~40%である膨潤抑制澱粉とを特定の比率で含む揚げ物用衣材が開示されており、サクミがある揚げ物用衣材ができることが記載されている。
特許文献2では、カルボキシル基含量が0.1~1.1%である酸化サゴ澱粉、及び/又は酸処理サゴ澱粉を含有することを特徴とする揚げ物用ミックスが開示されており、油調後、経時的に食感が低下することを抑制できることが記載されている。
特許文献3では、食物繊維含有量60質量%以上の食物繊維高含有難消化性澱粉を20質量%以上含有する揚げ物用ミックスが開示されており、サクミがあり、製造後ある程度の時間が経過した場合や電子レンジなどで再加熱した場合でも維持され得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-254785号公報
【特許文献2】特開2019-041717号公報
【特許文献3】WO2018-193655号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、保存しても衣のサクサクとした食感が劣化し難く、更には、電子レンジ再加熱しても衣のサクサクとした食感を有する揚げ物を製造することができる揚げ物衣材用ブレッダー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、揚げ物用衣材用ブレッダーミックスについて種々検討したところ、前記ミックスの一部あるいは全部として、特定条件で加熱調理し、乾燥した特定のサイズの麺を利用することにより、上記課題が解決されることを見いだした。すなわち、加熱調理した麺を乾燥することにより多孔質な加熱調理済乾燥麺となり、特定の断面積及び長さを有するこれらの乾燥麺を衣材の一部あるいは全部として用いることにより、揚げ物の保存時の具材から衣への水分の移行や電子レンジ加熱による水分の蒸散に耐えて、衣のサクサク感が維持された揚げ物が得られることを見いだした。
本発明は以下の態様を提供する。
〔1〕下記条件1及び2を満たす、揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺。
条件1:加熱調理済乾燥麺における押出し方向または圧延方向に対して垂直な断面の面積が0.5~100mm2
条件2:加熱調理済乾燥麺における押出し方向または圧延方向の長さが1~25mm
〔2〕条件3:乾燥前の加熱調理済麺の麺水分量が35質量%以上である、〔1〕記載の揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺。
〔3〕条件3’:乾燥前の加熱調理済麺の麺水分量が65質量%以上である、〔1〕記載の揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺。
〔4〕〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺と澱粉質原料を含み、揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺の量が、揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺と澱粉質原料との合計質量に対して1質量%以上である、揚げ物衣材用ブレッダーミックス。
〔5〕下記工程1、2及び3を含み、下記条件1及び2を満たす、揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺の製造方法。
工程1:押出法及び/又は圧延法により生麺を準備する工程
工程2:工程1で得られた生麺を加熱調理する工程
工程3:工程2で得られた加熱調理済麺を乾燥する工程
条件1:工程3で得られた加熱調理済乾燥麺における押出し方向または圧延方向に対して垂直な断面の面積が0.5~100mm2
条件2:工程3で得られた加熱調理済乾燥麺における押出し方向または圧延方向の長さが1~25mm
〔6〕条件3:工程2で得られた加熱調理済麺の麺水分量が35質量%以上である、〔5〕記載の方法。
〔7〕条件3’:工程2で得られた加熱調理済麺の麺水分量が65質量%以上である、〔5〕記載の方法。
〔8〕〔5〕~〔7〕のいずれか一に記載の方法により得られる揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺と澱粉質原料を混合する工程を含む揚げ物衣材用ブレッダーミックスの製造方法であって、揚げ物衣材用の加熱調理済乾燥麺の量が、揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺と澱粉質原料との合計質量に対して1質量%以上である、前記方法。
〔9〕〔8〕記載の方法により得られる揚げ物衣材用ブレッダーミックスを使用する、揚げ物の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、サクサクとした食感の衣を有する揚げ物を得ることができ、その食感は常温保持しても劣化し難く、更には、電子レンジ再加熱による衣の品質低下を抑制し、サクサクとした食感が維持される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(1)揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺
(1-1)麺
本発明の揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺の原料となる麺類(生麺)は、押出法及び/又は圧延法により製造されたものであることが好ましい。麺線であることがより好ましい。麺線とは、ロール製麺装置、または押出製麺装置によって製麺された麺類を意味する。
麺線の種類としては、公知の麺類であれば特に制限がなく、中華麺、うどん、ひやむぎ、素麺、パスタ類等の小麦粉を主原料とする麺類;蕎麦、米粉麺、澱粉麺等の小麦粉以外の穀粉を主原料とする麺類を例示できる。
【0008】
(1-2)麺の種類と製造方法
(1-2-1)小麦粉麺
本発明における小麦粉麺とは、小麦粉を含有した麺を指す。小麦粉としては、デュラムセモリナ、デュラム小麦粉、準強力粉、強力粉、中力粉、薄力粉等が挙げられる。
【0009】
(1-2-2)パスタ類
本発明におけるパスタ類とは、小麦粉麺の一つでデュラムセモリナ若しくは小麦粉又はこれらの混合物に水を加え(さらに卵やバイタル小麦グルテン、トマト、ほうれん草などの食材や、ビタミン類、ミネラル、アミノ酸、増粘剤、乳化剤などの添加物を必要に応じて加えることもある)、捏ねて生地を作り、押出し成形した麺類をいう。
【0010】
(1-2-3)そば
本発明におけるそばとは、日本農林規格(JAS規格)に準じ、そば粉を含有した麺を指す。そば粉はそばの実を粉砕して得られるものであり、本発明では、通常食用に供されているそば粉を特に制限無く用いることができる。具体的には、並み粉、更科粉、花粉(はなこ)等の分類や、一番粉(内層粉)、二番粉、三番粉種々のタイプを用いることができる。また本発明のそばは、前記のそば粉以外の他の成分を含有してもよい。前記他の成分としては、例えば、小麦粉、小麦蛋白質、澱粉類、糖類、卵粉、ヤマイモ粉、抹茶、ふのり、そばの葉粉末、乳化剤、色素、香料等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。前記澱粉類には、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の未加工澱粉、及びこれら未加工澱粉に油脂加工、α化、エーテル化、エステル化、架橋、酸化等の処理の1つ以上を施した加工澱粉が含まれる。 粉体原料に占めるそば粉の含量としては、特に限定されない。
【0011】
(1-2-4)米粉麺
本発明における米粉麺とは、麺の原料粉として米粉を使用したものを指す。米粉の原料は、粳米あるいはもち米を粉砕、粉末化することにより得ることができる。例えば、粳米あるいはもち米としては、ジャポニカ米、インディカ米、ジャバニカ米等の各種のものでよく特に限定されるものではない。また、粉砕する前の生米は、精白米、玄米など特に限定されない。
【0012】
(1-2-5)澱粉麺
本発明における澱粉麺とは、麺の原料粉として澱粉を使用したものを指す。原料粉の澱粉の種類には特に制限はなく、麺類の製造に際して通常使用されるものであればよい。澱粉麺の麺生地の原料として、小麦、米、そば、とうもろこし、いも、豆類等から分離・精製された澱粉及びそれらの澱粉をアセチル処理、エーテル処理、架橋処理、酸処理、酸化処理、温熱処理して得られる変成澱粉が、単独で若しくはそれらの混合物として、その目的に応じて適宜使用されたものが挙げられ、馬鈴薯澱粉麺が例示される。また、本発明では、麺生地用の原料に対し、麺類の製造において通常用いられている成分を更に配合することができる。このような成分としては、かんすい、食塩等の調味料、増粘剤、食用色素を例示することができる。
【0013】
(1-2-6)麺の副原料
前記小麦粉麺、パスタ、そば、米粉麺、澱粉麺は穀粉、澱粉の主原料の他、副原料を含有しても良い。副原料としては、特に限定されず、糠類;グルテン、卵成分、乳成分等の蛋白質素材;馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉等の澱粉;老化澱粉、熱処理澱粉、α化澱粉及びエステル化、ヒドロキシプロピル化又は架橋化等の化学修飾した加工澱粉;油脂類;増粘剤;食塩、かんすい、焼成カルシウム等の無機塩類;糖類;甘味料;食物繊維;難消化性澱粉;膨張剤;品質改良剤;保存料;香料;香辛料;調味料;ビタミン類;ミネラル類;pH調整剤;酵素剤;乳化剤;酒精;色素等が挙げられ、これらを単独又は複数を併用して使用することができる。
【0014】
(1-3)加熱調理済麺及び加熱調理済麺の製造方法
本発明では、加熱調理済麺は、生麺あるいは乾麺、好ましくは麺線を加熱調理したものであることが好ましい。加熱調理方法はいずれの方法でもよいが、沸騰水中または蒸気中で一定の麺水分になるまで加熱調理(麺線を茹でまたは蒸す)することが好ましい。このときの加熱調理前の麺線は乾麺であっても生麺であっても良く、麺線の種類は特に限定されるものではない。ここでの麺水分とは、加熱調理済麺の水分含有率(質量%)を意味する。加熱調理済麺の水分含有率は、常圧加熱乾燥法により測定してもよく、カールフィッシャー法により測定してもよいが、本書では常圧加熱乾燥法で測定した値を意味する。
本発明において、加熱調理済麺の麺水分に特に限定はないが、麺水分量が高いほど、後工程の加熱調理済乾燥麺がより多孔質な傾向となり、加熱調理済乾燥麺が多孔質であるほど揚げ物にサクサクとした食感をもたらすと考えられる。麺水分量は好ましくは35質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、更に好ましくは55質量%以上であり、なお好ましくは63質量%以上であり、より更に好ましくは65質量%以上または66質量%以上であり、なお更に好ましくは68質量%であり、また、加熱調理済麺が煮崩れないしは茹で溶けしない限りにおいて上限は特にないが、90質量%以下であり、好ましくは88質量%以下である。産業効率、例えば茹でに係る光熱費の観点から、より好ましくは加熱調理済麺の麺水分は83質量%以下であり、更に好ましくは75質量%以下である。
【0015】
(1-4)加熱調理済乾燥麺及びその製造方法
本発明において、加熱調理済麺はさらに乾燥して用いることが好ましい。加熱調理済麺の乾燥方法はフリーズドライ、フライ、熱風乾燥いずれの製造方法でもよいが、フリーズドライによる乾燥が本発明の課題の観点から好ましい。
【0016】
(1-4-1)フリーズドライ
フリーズドライとは真空中で低温に保って水分を昇華除去して食品を乾燥させる凍結乾燥処理法である。フリーズドライ方法は特に制限されず、従来公知の方法を利用できる。本発明では、フリーズドライによる乾燥方法として、加熱調理済麺を-20℃~-40℃で凍結し、凍結原料を凍結乾燥機にて乾燥させること(目標水分14.5質量%以下)が好ましい。水分量は好ましくは10質量%以下まで乾燥させることが好ましく、5質量%まで乾燥することがより好ましい。
【0017】
(1-4-2)フライ:
フライとは加熱調理済麺を130~170℃のフライ油に浸漬して乾燥すること(目標水分10質量%以下)である。水分量は好ましくは6質量%以下程度まで乾燥させることが好ましく、3質量%以下まで乾燥することがより好ましい。
【0018】
(1-4-3)熱風乾燥:
熱風乾燥とは、一般的に加熱調理済麺に対し60~120℃程度で風速5m/s以下程度の熱風を当てて30分から90分程度乾燥させる乾燥処理方法(目標水分14.5質量%以下、JAS規格)であり、本発明においても、同等の方法が好ましい。水分量は好ましくは10質量%以下まで乾燥させることが好ましく、5質量%以下まで乾燥することがより好ましい。
【0019】
(1-5)揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺及びその製造方法
本発明において、揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺は、特定の断面積と長さを有する。すなわち、加熱調理済乾燥麺における押出し方向または圧延方向に対して垂直な断面の面積が0.5~100mm2であり(条件1)、加熱調理済乾燥麺における押出し方向または圧延方向の長さが1~25mmである(条件2)。なお、生麺あるいは加熱調理済麺の段階で膨張・収縮を計算に入れて目的の形状に形成し、裁断してもよく、生麺あるいは加熱調理済麺を仮裁断して乾燥麺を本裁断してもよい。生麺を裁断することなく連続的に加熱調理し、加熱調理後に裁断・乾燥あるいは乾燥・裁断してもよい。
揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺の断面積、長さ、直径の記載は、加熱調理し乾燥した後の各数値を示す。
加熱調理済麺を乾燥させた加熱調理済乾燥麺の押出し方向または圧延方向に対して垂直な断面の面積は、好ましくは3~70mm2であり、より好ましくは5~50mm2であり、さらに好ましくは5~20mm2である。加熱調理済麺を乾燥させた加熱調理済乾燥麺の押出し方向または圧延方向の長さは、好ましくは3~20mmであり、より好ましくは5~15mmである。
【0020】
(2)揚げ物衣材用ブレッダー
本発明における揚げ物衣材用ブレッダーは、澱粉質原料と揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺を含み、これらを均一に分散するよう混合したものを指す。揚げ物衣材用ブレッダー組成物に含まれる澱粉質原料は、穀粉及び澱粉が含まれ、本発明ではこれらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。穀粉の種類には特に限定はなく、例えば小麦粉、大麦粉、デュラム小麦粉、ライ麦粉、米粉、大豆粉、緑豆粉、コーンフラワー等が挙げられる。澱粉の種類には特に限定はなく、例えばタピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉など、並びにこれらのワキシー種及びハイアミロース種の未変性澱粉、並びにその未変性澱粉にα化、エーテル化、エステル化、架橋、酸化等の変性処理から選択される1種以上の変性処理を施した変性澱粉等を挙げることができる。揚げ物衣材用ブレッダー組成物中の揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺の配合割合は、1質量%以上が好ましく、1~70質量%がさらに好ましく、1~50質量%がさらにより好ましい。前記範囲であれば、フライ直後に衣のサクサクとした食感があり、保存してもサクサクとした食感が劣化し難く、更には保存後電子レンジで再加熱してもサクサクとした食感を失わない揚げ物が得られる。
前記粉体原料にさらに、卵粉、食塩、調味料、増粘剤、香辛料、香料、着色料等の添加剤を添加してもよい。
【0021】
(3)揚げ物の製造方法
(3-1)揚げ種を準備する工程
使用できる揚げ種は、特に限定されず、例えば、肉類、魚介類、野菜類、豆類、きのこ類等を挙げることができる。これらは、生でも加熱処理されていてもよい。
【0022】
(3-2)揚げ物衣材用バッターを被覆する工程(任意工程)
フライ製品の製造の際には、衣材(衣液)を揚げ種表面の少なくとも一部に付着させればよい。すなわち、揚げ種の種類や所望するフライ製品の外観に応じて、例えばから揚げやエビフライのように揚げ種の表面全体を衣材で覆ってもよく、又は揚げ種表面の一部に衣材を付着させてもよい。衣材を揚げ種に付着させる際は、衣材中に揚げ種を浸したり、揚げ種に衣材を塗布するかまたは噴きつけたりすればよい。
本発明の対象となるフライ製品は限定されるものではないが、例えば、から揚げ、天ぷら、海老フライ等のフライ製品、トンカツ、チキンカツ等のカツ類、コロッケ、チキンナゲット等が挙げられる。
【0023】
(3-3)揚げ物衣材用ブレッダー組成物を付着させる工程
揚げ物衣材用ブレッダー組成物は、揚げ種に直接まぶす、または揚げ種に揚げ物衣材用バッター等を付着させた後にまぶすなどして使用することができる。
【0024】
(3-4)フライする工程
本発明のフライは公知の方法と同様でよく、160~200℃に予熱した油槽でフライする手法等が挙げられる。
【実施例0025】
<製造例1 揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺の製造>
(1)・小麦粉麺 - 小麦粉1000g、塩35g、水360gをよく混練した後、押出製麺機を使用し、断面積5mm2(直径2.5mm)の麺線を得た。
・そば - そば粉800g、小麦粉200g、水500gをよく混練した後、押出製麺機を使用して断面積5mm2(直径2.5mm)の麺線を製造した。
・米粉麺 - 米粉800g、小麦粉200g、水500gをよく混練した後、押出製麺機を使用して断面積5mm2(直径2.5mm)の麺線を製造した。
・澱粉麺 - 馬鈴薯澱粉800g、小麦粉200g、95℃の熱水500gをよく混練した後、押出製麺機を使用して断面積5mm2(直径2.5mm)の麺線を製造した。
(2)麺線を沸騰水中で茹で、麺水分70質量%の加熱調理済麺を作製した。
(3)加熱調理済麺を10mmの長さにはさみでカットした。
(4)以下の乾燥手法を使用して加熱調理済乾燥麺を得た。
・フリーズドライ - 麺線を茹でた後、麺線を凍結。凍結した加熱調理済麺を凍結乾燥機(RLEIII‐103共和真空技術株式会社)にて乾燥させた。
・フライ乾燥 - 麺線を茹でた後、150℃のフライ油(パーム油)に浸漬することでフライ乾燥した。
・熱風乾燥 - 麺線を茹でた後、100℃の熱風で乾燥させた。
得られたフリーズドライ、フライ乾燥、熱風乾燥の乾燥調理済麺の水分値は、
各々4.7質量%、4.8質量%、10.5質量%であった。
【0026】
<製造例2 ブレッダーの製造>
(1)澱粉質原料の製造
小麦粉(ニップン製 ダイヤ)とコーンスターチを下表のように混合して澱粉質原料を得た。
(2)前記澱粉質原料80質量%に対し、製造例1に従って製造した揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺20質量%を加え、均一に分散するよう混合し、揚げ物衣材用ブレッダーを調製した。
【0027】
<製造例3 揚げ物の製造>
(1)鶏もも肉を80-90gにカットした。
(2)薄力小麦粉50質量%、コーンフラワー20質量%、小麦澱粉23質量%、塩5質量%、グルタミン酸ナトリウム2質量%から構成されるミックスに170質量%加水し、よく混合して揚げ物衣材用バッターを作製した。
(3)鶏もも肉に対して揚げ物衣材用バッターを練り込んだ。
(4)バッターを練り込んだ鶏もも肉に揚げ物衣材用ブレッダーを満遍なく付着させた。
(5)170℃、6分フライを行った。フライ後、放冷して、評価例1に従って試食を行った。また、常温で3時間放置後、試食を行った。さらに常温で3時間放置後、電子レンジで十分温めた(レンジアップした)もので試食を行った。
【0028】
<評価例1 揚げ物の官能評価>
得られた揚げ物の食感について、10名の熟練パネラーにより下記評価基準表1に従って官能評価を行った。
なお、揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺を使用していない澱粉質原料のみからなるブレッダーミックスを使用した揚げ物(参考例1)の油ちょう直後のサクサク感を3点とした。
【0029】
【0030】
<試験例1 加熱調理済麺の麺水分の検討>
製造例1に従って製造した、麺の麺水分が50~85質量%になるまで茹でた小麦粉麺の加熱調理済麺をそれぞれフリーズドライし、断面積5mm2(直径2.5mm)かつ水分値5質量%以下に調製した。麺水分が40質量%の実施例1では、麺の内部まで十分にα化されなかったためにやや硬くガリガリとした食感があったが、参考例1よりはサクサクしていた。麺水分が90質量%より大きいと麺が煮崩れて形状を保てなかったため、試験は実施しなかった。製造例1に従い、長さ10mmにカットした加熱調理済乾燥麺で表1の配合に従って揚げ物衣材用ブレッダーを調製し、製造例3に従って揚げ物を製造し、評価例1に従って食感の違いを評価した。
サクミは、実施例1~6において、フライ直後、3時間後、6時間後レンジアップいずれも参考例1と比べて評価が高く、茹で小麦粉麺の麺水分に依存して評価が高くなった。特に実施例4~6の茹で麺の麺水分が70%以上では、サクサク感が強かった。
【0031】
【0032】
<試験例2 乾燥工程の検討>
製造例1に従い、断面積5mm2(直径2.5mm)、麺水分70質量%のものを使用した小麦粉麺のフリーズドライ品を長さ10mmにカットした(実施例4)。
他に乾燥工程の異なるものとして、麺線を茹でた後100℃の熱風で乾燥させた熱風乾燥品及び、麺線を茹でた後150℃のフライ油(パーム油)に浸漬したフライ品(いずれも断面積5mm2径、麺水分70質量%のものを使用し、長さ10mmにカット)の2種類の揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺を製造した(実施例7及び8)。
それぞれを表2の配合に従って揚げ物衣材用ブレッダーを調製し、製造例3に従って揚げ物を製造し、評価例1に従って食感の違いを評価した。
サクミは、実施例4、7~8ともに評価が高った。
熱風乾燥品、フライ品、フリーズドライ品を比較すると、フリーズドライ品の方がよりサクミがあり、軽く好ましい食感であった。
以上の結果より、いずれの乾燥方法であっても、乾燥麺製品が、サクサク感を向上させる食感改良効果をもたらすことが確認された。
【0033】
【0034】
<試験例3 フリーズドライ小麦粉麺の長さの検討>
製造例1に従って長さ1mm~30mm、断面積5mm2(直径2.5mm)の麺水分70質量%のものを使用したフリーズドライ小麦粉麺を調製した。これらを表3の割合に従って揚げ物衣材用ブレッダーを調製し、製造例3に従って揚げ物を製造し、評価例1に従って食感の違いを評価した。
サクミは、実施例4、9~13において、フライ直後、3時間後、6時間後レンジアップのいずれも評価が高かった。特に実施例4、10~12は、サクサクとした食感となった。実施例12、13の麺の長さ20mm以上では揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺の付着がやや悪くなった。また、比較例1の麺の長さ30mmではさらに揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺の付着性が低下し、不適当であった。麺の長さが1mmより短いものは揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺の製造が出来なかったため試験を実施しなかった。
これらのことから、揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺の長さは1~25mmが好ましく、5~15mmがより好ましかった。
【0035】
【0036】
<試験例4 フリーズドライ小麦粉麺の断面積の検討>
製造例1に従って断面積1~113mm2(直径1~12mm)、長さ10mmのフリーズドライ小麦粉麺(麺水分70質量%)を調製した。それらを表4の割合に従って揚げ物衣材用ブレッダーを調製し、製造例3に従って揚げ物を製造し、評価例1に従って食感の違いを評価した。
サクミは、実施例4、14~17において、フライ直後、3時間後、6時間後レンジアップのいずれも評価が高かった。特に実施例4、15では、サクサクとした食感となった。実施例16,17の麺の断面積が50mm2以上では揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺の付着がやや悪くなった。また、比較例2の麺の断面積が113mm2ではさらに揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺の付着性が低下し、サクサク感において食感改良効果が十分得られなかった。
これらのことから、揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺の断面積は0.5~100mm2が好ましく、5~20mm2がさらに好ましかった。
【0037】
【0038】
<試験例5 フリーズドライ小麦粉麺の配合量の検討>
製造例1に従って長さ10mm、断面積5mm2(直径2.5mm)のフリーズドライ小麦粉麺(麺水分70質量%)で表5に従った割合で揚げ物衣材用ブレッダーを調製し、製造例3に従って揚げ物を製造し、評価例1に従って食感の評価を行った。
サクミは、実施例4、18~29において、フライ直後、3時間後、6時間後レンジアップのいずれも評価が高かった。特に実施例4、19~22の揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺の配合量が5質量%以上では、サクサクとした食感となった。60質量%以上だとやや食感が硬くなり、80質量%以上だと食感がさらに硬くなったが、いずれも許容範囲であった。
参考例1、比較例3では配合量が少なく、サクサク感において食感改良効果が十分得られず不適であった。
この結果から、揚げ物衣材用ブレッダー100質量%中、1質量%以上の揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺の配合量が好ましく、1~70質量%がより好ましく、1~50質量%がさらに好ましかった。
【0039】
【0040】
<試験例6 各種フリーズドライ素材の検討>
小麦粉由来のフリーズドライ麺以外に、製造例1に従って長さ10mm、断面積5mm2(直径2.5mm)のそば(表6)、米粉麺(表7)、澱粉麺(表8)のフリーズドライ麺(麺水分70質量%)を作製し、各表の割合に従って揚げ物衣材用ブレッダーを調製し、製造例3に従って揚げ物を製造し、評価例1に従って食感の評価を行った。
そば、米粉麺、澱粉麺全てにおいてフリーズドライ小麦粉麺と同様の結果が得られた。
試験例5および6の結果より、揚げ物衣材用ブレッダー中に揚げ物衣材用加熱調理済乾燥麺を1質量%以上配合することで、サクッとした食感を作り出す効果が期待できる。
【0041】
【0042】
【0043】