(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119415
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】エピタキシャル基板の評価方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240827BHJP
G01N 21/00 20060101ALI20240827BHJP
G01N 21/47 20060101ALI20240827BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01N21/00 B
G01N21/47 Z
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026299
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】石引 涼太
(72)【発明者】
【氏名】大槻 剛
【テーマコード(参考)】
2G051
2G059
4M106
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB02
2G051BA04
2G051CB01
2G059AA05
2G059BB08
2G059BB16
2G059EE02
2G059GG02
2G059HH02
4M106AA01
4M106BA04
4M106CA25
4M106CA38
4M106CB19
4M106DB07
4M106DJ17
4M106DJ27
(57)【要約】
【課題】エピタキシャル基板におけるエピタキシャル層の対称性を短時間且つ非破壊にて評価する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】エピタキシャル基板におけるエピタキシャル層の評価方法であって、前記エピタキシャル基板の端部にLED光を照射し、反射光及び散乱光を明視野及び暗視野で検出し、検出された前記反射光及び前記散乱光から欠陥の位置を判定し、前記欠陥が位置する角度から前記エピタキシャル層の対称性を評価することを特徴とするエピタキシャル基板の評価方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャル基板におけるエピタキシャル層の評価方法であって、
前記エピタキシャル基板の端部にLED光を照射し、
反射光及び散乱光を明視野及び暗視野で検出し、
検出された前記反射光及び前記散乱光から欠陥の位置を判定し、
前記欠陥の位置から隣り合う欠陥との中心角を求めて前記エピタキシャル層の対称性を評価することを特徴とするエピタキシャル基板の評価方法。
【請求項2】
前記エピタキシャル基板を、面取り及び鏡面研磨された半導体基板に、前記半導体基板とは異なる材料をヘテロエピタキシャル成長させたヘテロエピタキシャル基板とすることを特徴とする請求項1記載のエピタキシャル基板の評価方法。
【請求項3】
前記エピタキシャル基板の端部を、前記エピタキシャル基板の最外周から、面取り部を含む少なくとも幅1mm以上の領域とすることを特徴とする請求項1記載のエピタキシャル基板の評価方法。
【請求項4】
前記LED光として、前記エピタキシャル基板を透過しない波長を少なくとも2種類以上含むものを用いることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエピタキシャル基板の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル基板の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上への薄膜形成技術の1つであるエピタキシャル成長は、半導体基板と同面方位の単結晶薄膜を成長させる技術であり、基板と同じ物質の単結晶薄膜を形成するホモエピタキシャル成長と、基板と異種の材料の単結晶薄膜を形成するヘテロエピタキシャル成長が広く知られている。特にヘテロエピタキシャル成長は、半導体基板と、エピタキシャル層の格子定数が異なるため、単結晶を成長させるためには高い技術力を要し、エピタキシャル層の結晶性の評価が重要である。したがって、エピタキシャル成長技術開発においては、迅速な評価が求められる。基板の結晶性の評価手法としては、例えば特許文献1には、半導体ウェーハのエッジ部(端部)に対してレーザー光を照射し、得られた明視野、暗視野画像からスリップを判定する技術が開示されている。また、特許文献2には、偏光された平行光を基板に照射し、結晶品質(欠陥、歪、格子歪み)を評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-054132号公報
【特許文献2】特許第6614513号公報
【0004】
しかし、前記特許文献1では、光源にレーザー光を使用しているため、指向性が強く、微小な欠陥の検出や短波長成分の評価に適している一方で、長波長成分の粗さが強い場合は、測定面にレーザーを照射しても反射光及び散乱光を検出できなくなる。また、単一波長のレーザーは、材料によっては吸収され、測定できない場合がある。また、前記特許文献2では、透過光を利用しており、透過光波長と材料によって吸収特性が異なることから、欠陥の判定が難しく、特に転位密度や欠陥密度が大きい欠陥については、評価が難しいという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述のような問題に鑑みてなされたもので、エピタキシャル基板におけるエピタキシャル層の対称性を短時間且つ非破壊にて評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、エピタキシャル基板におけるエピタキシャル層の評価方法であって、前記エピタキシャル基板の端部にLED光を照射し、反射光及び散乱光を明視野及び暗視野で検出し、検出された前記反射光及び前記散乱光から欠陥の位置を判定し、前記欠陥の位置から隣り合う欠陥との中心角を求めて前記エピタキシャル層の対称性を評価することを特徴とするエピタキシャル基板の評価方法を提供する。
【0007】
このような方法であれば、LED光を照射することで長波長成分の粗さが強い場合でも反射光及び散乱光を検出できるので、表面粗さの大きな基板の端部の欠陥を検出して欠陥の位置を判定でき、端部における隣り合う欠陥との中心角がわかるので、エピタキシャル基板におけるエピタキシャル層の対称性を短時間且つ非破壊にて評価することができる。
【0008】
また、前記エピタキシャル基板を、面取り及び鏡面研磨された半導体基板に、前記半導体基板とは異なる材料をヘテロエピタキシャル成長させたヘテロエピタキシャル基板とすることができる。
このような方法であれば、ホモエピタキシャル基板よりも表面が粗い(凹凸が大きい)ヘテロエピタキシャル基板であっても、確実に評価することができる。
【0009】
また、前記エピタキシャル基板の端部を、前記エピタキシャル基板の最外周から、面取り部を含む少なくとも幅1mm以上の領域とすることが好ましい。より好ましくは、最外周から幅5mmとすることができる。
これにより、半導体基板の加工条件や、エピタキシャル成長条件に依らず、評価が可能になる。
【0010】
さらに、前記LED光として、前記エピタキシャル基板を透過しない波長を少なくとも2種類以上含むものを用いることが好ましい。
これにより、特定の波長領域に吸収を持つ材料であっても測定することができる。また、指向性の弱いLEDを用いることで、長波長成分の粗さが強いために指向性の強いレーザー光では評価できないエピタキシャル基板であっても評価することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明のエピタキシャル基板の評価方法であれば、エピタキシャル層の対称性を短時間且つ非破壊で評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明の実施例1における欠陥マップの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の一例を示すフローチャートである。以下、
図1に示す第1工程と第2工程について詳細に説明する。
まず、評価するエピタキシャル基板を準備する。
【0015】
(第1工程)
次に、エピタキシャル基板の端部に、例えば波長615~645nmのLED光を照射し、反射光及び散乱光を明視野及び暗視野で検出する。前記エピタキシャル基板の端部は、基板の最外周から、面取り部を含む少なくとも幅1mm以上の領域とすることができる。より好ましくは、最外周から幅5mmとすることができる。また、前記LED光は、少なくとも2種類以上の波長を含む光を用いることができる。
【0016】
波長は、少なくとも5nm以上異なることが好ましい。また、波長を連続させることや、波長範囲が離れた発光色を用いることで、吸収の影響を低減できる。選択する波長範囲は、エピタキシャル基板を透過しない波長を少なくとも2種類以上含むことができる。例えば、選択する波長範囲を420nm~700nmとすることができる。
【0017】
これにより、特定の波長を吸収する材料であっても反射光及び散乱光を検出することができ、評価することができる。また、指向性の弱いLED光を用いることで、長波長成分の粗さが強いために指向性の強いレーザー光では評価できないエピタキシャル基板であっても評価することができる。
【0018】
(第2工程)
検出された反射光及び散乱光から欠陥の位置を判定する。得られた欠陥座標を基に、欠陥マップを作成してもよい。
【0019】
次に、検出された欠陥の位置から隣り合う欠陥との中心角を求めてエピタキシャル層の対称性を評価する。
【0020】
エピタキシャル成長速度に面方位依存性がある場合は、成長速度が最速である方向にエピタキシャル層が成長しやすい。そのため、エピタキシャル基板の端部で検出された欠陥は、エピタキシャル層の成長方向と平行ではない等価な方向に成長したエピタキシャル層である。これを検出することで、エピタキシャル成長の成長速度が最大である方向と、エピタキシャル基板最表面に存在する結晶粒子(ドメイン)の回転対称性、及びエピタキシャル基板の中心軸を対称軸とする回転対称性を評価することができる。
【0021】
この評価ではエピタキシャル基板の端部(エッジ部)を評価しているが、エッジ部に成長しているということは、ミクロに見ても回転対称になっており、エピタキシャル成長中にドメインが存在していることを推測することも可能であり、非破壊でエピタキシャル層の品質を評価することも可能である。エピタキシャル成長速度に面方位依存性があっても回転対称性が悪い場合は、特定の方向に成長していないことを示唆しており、エピタキシャル層が単結晶となっていない可能性がある。
【0022】
これにより、エピタキシャル基板におけるエピタキシャル層の対称性を短時間且つ非破壊にて評価することができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態におけるエピタキシャル基板の評価方法によれば、エピタキシャル基板の端部にLED光を照射し、反射光及び散乱光を明視野及び暗視野で検出し、検出された反射光及び散乱光から欠陥の位置を判定し、欠陥の位置から隣り合う欠陥との中心角を求めてエピタキシャル層の対称性を評価する。
【0024】
このような方法であれば、LED光を照射することで長波長成分の粗さが強い場合でも反射光及び散乱光を検出できるので、表面粗さの大きな基板の端部の欠陥を検出して欠陥の位置を判定でき、端部における隣り合う欠陥との中心角がわかるので、エピタキシャル基板におけるエピタキシャル層の対称性を短時間且つ非破壊にて評価することができる。
【0025】
また、エピタキシャル基板を、面取り及び鏡面研磨された半導体基板に、半導体基板とは異なる材料をヘテロエピタキシャル成長させたヘテロエピタキシャル基板とすることもできる。このような方法であれば、ホモエピタキシャル基板よりも表面が粗い(凹凸が大きい)ヘテロエピタキシャル基板であっても、確実に評価することができる。
【0026】
また、エピタキシャル基板の端部を、エピタキシャル基板の最外周から、面取り部を含む少なくとも幅1mm以上の領域とする。これにより、半導体基板の加工条件や、エピタキシャル成長条件に依らず、評価が可能になる。より好ましくは、最外周から幅5mmとすることもできる。
【0027】
さらに、LED光として、エピタキシャル基板を透過しない波長を少なくとも2種類以上含むものを用いる。これにより、特定の波長領域に吸収を持つ材料であっても測定することができる。また、指向性の弱いLEDを用いることで、長波長成分の粗さが強いために指向性の強いレーザー光では評価できないエピタキシャル基板であっても評価することができる。
【0028】
2種類以上の波長は、420nm~700nmの範囲で選択するのが好ましい。また少なくとも5nm以上異なることが好ましい。特に、615~645nmとすることが、より好ましい。
【実施例0029】
以下、本発明を実施例に基づきさらに説明するが、これらの実施例は例示的に示されるものであり限定的に解釈されるべきではない。
【0030】
(実施例1)
まず、基板表面が(111)面であるシリコン単結晶基板を準備した。この基板の表面は、鏡面研磨により鏡面にした。
【0031】
次に、3C-SiCをシリコン単結晶基板上にヘテロエピタキシャル成長させた。成長には減圧CVD装置を使用してトリメチルシランを原料ガスにして、1080℃、5Torr(666.61Pa)、30minで成長させた。
【0032】
次に、エピタキシャル基板の端部に波長615~645nmのLED光を照射し、反射光及び散乱光を、明視野及び暗視野で検出した。
【0033】
次に、検出された反射光及び散乱光から欠陥の位置を判定し、
図2の欠陥マップを作成した。
【0034】
次に、
図2の欠陥マップから、欠陥が端部の6方向に60度ピッチで検出されていたため、エピタキシャル基板は6回対称であることが分かった。
【0035】
次に、エピタキシャル基板の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、6回対称の欠陥位置において、3C-SiCが観察された。
【0036】
以上により、エピタキシャル基板が6回対称であることが確認され、エピタキシャル層の最速成長方向が<111>方向であることが確認された。
【0037】
(比較例1)
波長405nmのレーザーをエピタキシャル基板端部に照射したが、長波長成分の粗さが強く、明視野及び暗視野で欠陥を検出することができなかった。
【0038】
以上のように、本発明の実施例1により、エピタキシャル基板の端部にLED光を照射し、反射光及び散乱光を明視野及び暗視野で検出し、検出された反射光及び散乱光から欠陥の位置を判定し、欠陥が位置する角度からエピタキシャル層の対称性を評価することによって、表面粗さの大きな基板の端部の欠陥を検出して欠陥の位置を判定でき、端部の欠陥が位置する角度がわかるので、エピタキシャル基板におけるエピタキシャル層の対称性を短時間且つ非破壊にて評価できることが示された。
【0039】
本発明は以下の態様を包含する。
[1]:
エピタキシャル基板におけるエピタキシャル層の評価方法であって、
前記エピタキシャル基板の端部にLED光を照射し、
反射光及び散乱光を明視野及び暗視野で検出し、
検出された前記反射光及び前記散乱光から欠陥の位置を判定し、
前記欠陥の位置から隣り合う欠陥との中心角を求めて前記エピタキシャル層の対称性を評価することを特徴とするエピタキシャル基板の評価方法。
[2]:
前記エピタキシャル基板を、面取り及び鏡面研磨された半導体基板に、前記半導体基板とは異なる材料をヘテロエピタキシャル成長させたヘテロエピタキシャル基板とすることを特徴とする上記[1]に記載のエピタキシャル基板の評価方法。
[3]:
前記エピタキシャル基板の端部を、前記エピタキシャル基板の最外周から、面取り部を含む少なくとも幅1mm以上の領域とすることを特徴とする上記[1]又は上記[2]に記載のエピタキシャル基板の評価方法。
[4]:
前記LED光として、前記エピタキシャル基板を透過しない波長を少なくとも2種類以上含むものを用いることを特徴とする上記[1]から上記[3]のいずれかに記載のエピタキシャル基板の評価方法。
【0040】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。上記実施例は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。