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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119440
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】液吸引装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240827BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240827BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/165 101
B41J2/165 211
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026340
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 佑一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA20
2C056EB25
2C056EB30
2C056EB31
2C056EB38
2C056EC24
2C056EC28
2C056EC32
2C056EC54
2C056EC57
2C056FA03
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA29
2C056JA01
2C056JA13
2C056JB04
2C056JB09
2C056KA04
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】液滴吐出装置の長期未使用時等において、インク送液用のポンプの固着を防止し、良好な印刷結果を得ること。
【解決手段】液滴吐出装置に対して接離可能なキャップ部材と、負圧を発生させる吸引ポンプ130と、キャップ部材と吸引ポンプ130との間を連結する可撓性を有する液搬送部材150と、を備える液吸引装置であって、吸引ポンプ130は、液搬送部材を内部に取り付け可能なチューブポンプであり、液吸引装置は、液滴吐出装置から液体の吸引を行うとき、液滴吐出装置にキャップ部材をキャッピングした状態で液吸引可能であり、液滴の吐出と、液体の吸引とを行わない非動作のとき、キャップ部材をキャッピングした状態で保持可能であり、所定の期間、非動作の状態が続いた場合、チューブポンプを動作させる固着防止動作を実施する。固着防止動作は、基準位置から正圧方向へ回転する正転動作と、逆の負圧方向へ回転する逆転動作とを実施する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出装置に対して接離可能なキャップ部材と、
負圧を発生させる吸引ポンプと、
前記キャップ部材と前記吸引ポンプとの間を連結する可撓性を有する液搬送部材と、を備える液吸引装置であって、
前記吸引ポンプは、前記液搬送部材を内部に取り付け可能なチューブポンプであり、
前記液吸引装置は、
前記液滴吐出装置から液体の吸引を行うとき、前記液滴吐出装置に前記キャップ部材をキャッピングした状態で液吸引可能な装置であり、
前記液滴吐出装置による液滴の吐出と、前記液体の吸引とを行わない非動作のとき、前記キャップ部材を、前記液滴吐出装置にキャッピングした状態で保持可能な装置であり、
所定の期間、前記非動作の状態が続いた場合、前記チューブポンプを動作させる固着防止動作を実施し、
前記固着防止動作は、前記固着防止動作を除く前記チューブポンプの動作で最後に停止させた後の位置を基準位置とすると、前記基準位置から正圧方向へ回転する正転動作と、前記正圧方向と逆の負圧方向へ回転する逆転動作とを実施すること
を特徴とする液吸引装置。
【請求項2】
前記固着防止動作は、前記基準位置から、前記正転動作と前記逆転動作とが実施可能な可動範囲となる限界値を有すること
を特徴とする請求項1に記載の液吸引装置。
【請求項3】
前記前記固着防止動作は、前記基準位置から前記正転動作を行い、前記基準位置に戻り、前記基準位置から前記逆転動作を行い、前記基準位置に戻る動作を一サイクルとすると、前記一サイクルを一以上行うこと
を特徴とする請求項1または2に記載の液吸引装置。
【請求項4】
前記固着防止動作は、前記チューブポンプを、前記限界値の範囲内において、任意の場所に移動して動作停止可能なこと
を特徴とする請求項2に記載の液吸引装置。
【請求項5】
前記固着防止動作を実施するまでの前記所定の期間は、設置環境の温湿度に応じて可変されること
を特徴とする請求項1または2に記載の液吸引装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の液吸引装置と、
前記液吸引装置が実施する前記固着防止動作を制御する制御手段と、を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液吸引装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置の液吸引装置と維持回復装置、及びそれを使用した画像形成装置で、特に粘度が高い液体の吸引流路詰まり防止に関する技術が考えられ既に知られている。
例えば、特許文献1には、液搬送部材のインク増粘による詰まりが生じることを防止して、記録ヘッドの回復機能を良好に発揮することができる装置が開示されている。
しかしながら、特許文献1の技術では、液搬送部材の流路を閉状態としていることから液搬送部材での固着が懸念され、改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、液滴吐出装置の長期未使用時等において、インク送液用のポンプの固着を防止し、良好な印刷結果を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した課題を解決するために、本発明は、液滴吐出装置に対して接離可能なキャップ部材と、
負圧を発生させる吸引ポンプと、
前記キャップ部材と前記吸引ポンプとの間を連結する可撓性を有する液搬送部材と、を備える液吸引装置であって、
前記吸引ポンプは、前記液搬送部材を内部に取り付け可能なチューブポンプであり、
前記液吸引装置は、
前記液滴吐出装置から液体の吸引を行うとき、前記液滴吐出装置に前記キャップ部材をキャッピングした状態で液吸引可能な装置であり、
前記液滴吐出装置による液滴の吐出と、前記液体の吸引とを行わない非動作のとき、前記キャップ部材を、前記液滴吐出装置にキャッピングした状態で保持可能な装置であり、
所定の期間、前記非動作の状態が続いた場合、前記チューブポンプを動作させる固着防止動作を実施し、
前記固着防止動作は、前記固着防止動作を除く前記チューブポンプの動作で最後に停止させた後の位置を基準位置とすると、前記基準位置から正圧方向へ回転する正転動作と、前記正圧方向と逆の負圧方向へ回転する逆転動作とを実施するものとする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、液滴吐出装置の長期未使用時等において、インク送液用のポンプの固着を防止し、良好な印刷結果を得ることができる
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る液吸引装置の一例を説明する概略図である。
図2】吸引ポンプの構成例を説明する概略図である。
図3】基準位置及び正転動作と逆転動作との方向の一例を説明する図である。
図4】基準位置及び正転動作と逆転動作との方向の他の例を説明する図である。
図5】温度変化に対するチューブの劣化度の一例を説明するグラフである。
図6】湿度変化に対するチューブの劣化度の一例を説明するグラフである。
図7】画像形成装置の一例を前方側から見た斜視図である。
図8】画像形成装置の一例の機構部の全体構成を示す概略構成図である。
図9】機構部の要部平面図である。
図10】インクジェット画像形成装置の制御例を説明する概略ブロック説明図である。
図11】固着防止動作制御手段の動作例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0008】
本発明の実施の一形態の液吸引装置の構成例について説明する。液吸引装置は、液滴吐出装置から液体を吸引する装置であり、例えば、画像形成装置が備える維持管理装置に設けられる。画像形成装置については、図7から図10を参照して後述する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る液吸引装置の一例を説明する図である。
液吸引装置100は、キャップ部材110と、吸引ポンプ130と、液搬送部材としてのチューブ150とを有する。図1では、非印字動作で液滴吐出装置210をキャッピングしているときの、キャップ部材110とチューブ150及び吸引ポンプ130の接続構成例を示す。チューブ150の一部分とキャップ部材110とを断面で示している。
液滴吐出装置210は、液滴(液体)を吐出する装置であり、「液滴吐出ヘッド」、「記録ヘッド」とも称する。
【0010】
キャップ部材110は、液滴吐出装置210に対して接離可能な部材であり、液滴吐出装置210のノズルを覆う。キャップ部材110は非印字動作時のキャッピング状態で液滴吐出装置210をキャッピングする。
チューブ150は、キャップ部材110と吸引ポンプ130との間を連結する。チューブ150は、可撓性を有する部材とする。チューブ150は、「可塑性チューブ」とも称する。
吸引ポンプ130は、負圧を発生させる。吸引ポンプ130は、チューブ150を内部に取り付け可能なチューブポンプとする。吸引ポンプ130は、「ポンプ本体」または「チュービングポンプ」とも称する。
【0011】
図2に、吸引ポンプ130の構成例を示す。
吸引ポンプ130は、回転部131と、ローラ133と、ポンプハウジング135とを有する。
吸引ポンプ130は、中心部に回転部131が備えつけられており、その周囲にはローラ133が複数個取り付けられている。回転部131は、駆動部(不図示)に駆動され回転軸137を中心に回転する。図2等では、ローラ133を四個設けた例を示しているが、これに限られるものではない。
【0012】
吸引ポンプ130は、利用時に、回転部131の周囲に這わすようにチューブ150が取り付けられる(内臓される)。ポンプハウジング135は、取り付けられたチューブ150に沿うような形状とするとよい。ポンプハウジング135は、吸引ポンプ130の外側の壁を形成する。
チューブ150は、吸引ポンプ130に取り付けられると、ローラ133と接触している部分は、ローラ133とポンプハウジング135とに挟まれるので押しつぶされた状態になる。
【0013】
次に、液吸引装置100の動作例について説明する。
上述の液吸引装置100は、液滴吐出装置210から液体の吸引を行うとき、液滴吐出装置210にキャップ部材110をキャッピングした状態で液吸引可能な装置である。また、液吸引装置100は、液滴吐出装置210による液滴の吐出と、液滴吐出装置210からの液体の吸引とを行わない非動作のとき、キャップ部材110を、液滴吐出装置210にキャッピングした状態で保持可能な装置である。
【0014】
吸引ポンプ130において、回転部131が回転し始めると送液が開始される。このとき、ローラ133がチューブ150を押し潰しながら回転する。これにより、液吸引装置100の吸い込み側には負圧が発生し、これにより液体を吸い込むことができる。吸い込んだ液体は、ローラ133の回転動作によりそのまま吐出側に送られる。この動作が繰り返されることにより連続的に送液を行うことができる。
【0015】
ここで、チューブ150がローラ133と接触している部分は、ローラ133とポンプハウジング135に挟まれるので押しつぶされた状態になる。そのため、次のような問題が生じ得る。
例えば、長期間、チューブ150の同じポイントが押しつぶされた状態でいると、チューブ150が潰れて固着し、回転部131が回転して送液開始状態となっても、潰れたままの状態となる為、送液がされず、不吐出になったり、スジが発生する等の不具合が生じることがある。このような不具合は、長期未使用時の他、極稀に少数のみ印刷実施するとき、インク供給、吸引、メンテナンスがされないとき、または、吸引ポンプが動作しないときに生じ得る。
【0016】
例えば、特許文献1では、液滴吐出装置から液滴の吐出と液体の吸引とを行わない非動作のとき、液滴吐出装置にキャップ部材をキャッピングした状態で吸引ポンプの流路を開状態とし、流路開閉手段によりキャップ部材と吸引ポンプとを連結する可撓性を有する液搬送部材の流路を閉状態とする。これにより、可撓性を有する液搬送部材にキャップ部材から液が侵入することを防ぐことができ、可撓性を有する液搬送部材での液増粘による流路詰まりが生じることを防止できる。しかしながら、液搬送部材の流路を閉状態としていることから液搬送部材での固着が懸念される。
【0017】
上述した問題を解消するため、例えば、定期的に回転部131を動作させて、同じポイントで、チューブ150がローラ133とポンプハウジング135とに挟まれ続けることを防止するとよい。
そこで、本実施形態の液吸引装置100は、所定の期間、液滴吐出装置210から、液滴の吐出と液体の吸引がと行われない非動作の状態が続いた場合、吸引ポンプ130を動作させる固着防止動作を行う。
【0018】
固着防止動作は、例えば、固着防止動作を除く、吸引ポンプ130の動作で最後に停止させた後の位置を基準位置とすると、基準位置から正圧方向へ回転する正転動作と、正圧方向と逆の負圧方向へ回転する逆転動作(「反転動作」とも称する)とを実施する。
このとき、液吸引装置100は、固着防止動作の動作範囲を、吸引されないレベルと負圧形成が崩れないレベルとの範囲内で回転部131を動作させて、吸引ポンプ130を動かすように制御する。
これは、単純に定期的に回転部131を送液方向に動作させるだけでは、吸引動作となり、流路内のインクが排出され吸引されてしまい、また、排出とは逆方向に動かした場合、吸引キャップ側に逆流してしまい、負圧形成が崩れるといった懸念がある為である。
【0019】
このような固着防止動作により、長期未使用時等において、新規構成変更(例えば、液吸引装置を構成する部材、機器等の変更)を実施することなく、インク送液用のポンプの固着を防止し、良好な印刷結果を得ることができる。
【0020】
上述の通り、液滴吐出装置から液滴の吐出と液体の吸引を行わない非動作の状態が所定の期間継続されたとき、液滴吐出装置にキャップ部材をキャッピングした状態で、吸引ポンプを所定量動作させる固着防止動作を実施する。このようにすると、液増粘及び、可撓性チューブがチューブポンプにより常時押しつぶされることで、可撓性チューブにつぶれ癖がつき、その復元力により吸引性能を出している機能が低下して吸引量のバラツキにつながり回復性に影響が出ることによる不具合からなる流路詰まりが生じることを防止することができる。
【0021】
次に、図3及び図4を参照して、基準位置、及び、正転動作と逆転動作との方向について、一例を説明する。
基準位置は、例えば、固着防止動作を除く、吸引ポンプ130の動作で最後に停止させた後の位置(最後に固着防止動作以外の吸引ポンプ動作停止後の位置)とする。
正圧方向は、例えば、吸引ポンプ130の回転部131を、液滴吐出装置210から液体を吸引する負圧を生じさせるように回転する正転動作を行う方向(正転動作の方向)とする。
負圧方向は、例えば、正圧方向とは逆(反対)の方向(逆転動作の方向)とする。
【0022】
図3または図4中の基準位置から、aまたはcの方向に動作することを正転動作、bまたはdの方向に動作することを逆転動作とする。
【0023】
また、液吸引装置100は、例えば、固着防止動作の動作範囲を、基準位置から正転動作及び逆転動作が実施可能な可動範囲となる限界値(閾値)を有するとよい。
固着防止動作の可動範囲の限界値を設けることで、正転動作による正圧により、液滴吐出装置から液滴の吐出を防止し、逆転動作による負圧により、液滴吐出装置への空気引き込みを防止することができる。
図3及び図4に示すように、例えば、正転動作の範囲は、基準位置からaまたはcの正圧方向への回転を、逆転動作の範囲は、基準位置からbまたはdの負圧方向への回転を、限界値とする。
【0024】
また、液吸引装置100は、例えば、基準位置から正圧の方向へと回転する正転動作、負圧方向へと回転する逆転動作を、「基準位置⇒正転動作⇒基準位置⇒逆転動作⇒基準位置(次は正転動作)」に戻る動作を一サイクルの動作とすると、一サイクルを一以上行うとよい。
一サイクルを基準位置⇒正転動作⇒基準位置⇒逆転動作⇒基準位置(次は正転動作)とすることで、基準位置⇒正転動作⇒基準位置⇒正転動作や、基準位置⇒逆転動作⇒基準位置⇒逆転動作のように、移動量が短くなり、チューブポンプにより常時押しつぶされる位置が近くなりすぎることを防止することができる。
【0025】
さらに、液吸引装置100は、例えば、固着防止動作における、吸引ポンプ130の動作範囲を、限界値の範囲内において、任意の場所に移動して動作停止(押圧)可能にするとよい。吸引ポンプ130の回転部131は、例えば、限界値の区間内にて任意の位置(移動距離)で動作可能となる。
このようにすると、可動範囲の限界値内で移動している為、正転動作による正圧により、液滴吐出装置から液滴の吐出と、逆転動作による負圧により、液滴吐出装置への空気引き込みとを防止しつつ、チューブ150が吸引ポンプ130により常時押しつぶされる位置を可変させることが可能となる。これにより、チューブ150につぶれ癖がつき、その復元力により吸引性能を出している機能が低下して吸引量のバラツキにつながり回復性に影響が出ることによる不具合からなる流路詰まりが生じることを防止できる。
【0026】
次に、温度または湿度の変化とチューブの劣化との関係を説明する。
図5に温度変化に対するチューブの劣化度の一例を示す。
一般的な性質として、チューブは、低温化ではその物性が失われて硬化する。逆に高温化においては分子が分断されて、物性の定価やそれに伴う亀裂の発生等が懸念される。その為、常温では劣化度が低く、低温または高温では劣化度が高くなる。
【0027】
図6に湿度変化に対するチューブの劣化度の一例を示す。
一般的には、チューブは、比較的湿度の影響が受けにくいとされているが、水分にさらされることで、劣化を引き起こしやすくなる。劣化としては、配合されている酸化防止剤などの溶出、加水分解など、いくつか考えられる。
その為、高温になるにつれて劣化度が高くなる。
【0028】
そのため、液吸引装置100は、例えば、固着防止動作が動作するまでの所定の期間を、設置環境の温湿度に応じて可変されるとよい。
このようにすると、固着防止動作が動作するまでの所定の期間は常温や、常湿であれば影響は少ないが、図5に示す、低温環境や、高温環境下、または、図6に示す、高湿環境下におけるチューブ150の劣化を抑制することができる。
【0029】
次に、本実施形態の液吸引装置を用いる画像形成装置の構成例について説明する。
図7は、画像形成装置の一例を前方側から見た斜視図である。
図8は、画像形成装置の一例の機構部の全体構成を示す概略構成図である。
図9は、機構部の要部平面図である。
【0030】
図7に示すように、画像形成装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された記録用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に装着され画像が記録(形成)された記録用紙を排紙してストックするための排紙トレイ3とを備えている。
装置本体1の前面4の一端部側には、前面4から前方側に突き出し、上面5よりも低くなったカートリッジ装填部6を有し、カートリッジ装填部6の上面に操作キーや表示器などの操作部7を配置している。
【0031】
カートリッジ装填部6には、色の異なる液体(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の液体カートリッジ10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは液体カートリッジ10という)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、カートリッジ装填部6の前面側には、液体カートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)8を開閉可能に設けている。
【0032】
画像形成装置の機構部は、図9に示すように、フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによって図9で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
キャリッジ33には、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、の各色の液滴を吐出する複数のノズル列を有する記録ヘッド34を複数のノズル(吐出口)を主走査方向と交叉する方向に配列し、液滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0033】
記録ヘッド34は、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するためのエネルギー発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0034】
また、キャリッジ33には、各記録ヘッド34にそれぞれ各色の記録液を供給するための各色のサブタンク35k、35c、35m、35y(色を区別しない場合はサブタンク35という)を搭載している。
サブタンク35には各色の記録液供給チューブ36を介してカートリッジ装填部6に装着された各色の液体カートリッジ10から記録液を補充供給するようにしている。
カートリッジ装填部6には液体カートリッジ10内の記録液を送液するための供給ポンプユニット23が設けられている。
【0035】
また、カートリッジ装填部6からサブタンク35に至るまでの記録液供給チューブ36は這い回しの途中でフレーム21を構成する後板21Cに本体側ホルダ25にて固定保持されている。
さらに、キャリッジ33上でも固定リブ26にて固定されている。
【0036】
また、図8に示すように、給紙トレイ2の用紙積載部(底板)41上に積載した記録用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から記録用紙42を一枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向して摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0037】
そして、給紙部から給紙された記録用紙42を記録ヘッド34の下方側で搬送するための搬送部として、記録用紙42を静電吸着して搬送するための搬送ベルト51と、給紙部からガイド45を介して送られる記録用紙42を搬送ベルト51との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ52と、略鉛直上方に送られる記録用紙42を略90度方向転換させて搬送ベルト51上に倣わせるための搬送ガイド53と、押さえ部材54で搬送ベルト51側に付勢された先端加圧コロ55とを備えている。
【0038】
また、搬送ベルト51表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。
搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ57とテンションローラ58との間に掛け渡されて、図9のベルト搬送方向に周回するように構成している。
帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nをかけている。
【0039】
また、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応してガイド部材61を配置している。
ガイド部材61は、上面が搬送ベルト51を支持する搬送ローラ57とテンションローラ58の接線よりも記録ヘッド34側に突出している。
これにより、搬送ベルト51は印写領域ではガイド部材61の上面にて押し上げられてガイドされるので、高精度な平面性を維持される。
【0040】
さらに、記録ヘッド34で記録された記録用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から記録用紙42を分離するための分離爪71と、排紙ローラ72及び排紙コロ73とを備え、排紙ローラ72の下方に排紙トレイ3を備えている。
ここで、排紙ローラ72と排紙コロ73との間から排紙トレイ3までの高さは排紙トレイ3にストックできる量を多くするためにある程度高くしている。
【0041】
また、装置本体1の背面部には両面給紙ユニット81が着脱自在に装着されている。
両面給紙ユニット81は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される記録用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ52と搬送ベルト51との間に給紙する。
また、両面給紙ユニット81の上面には手差し給紙部82を設けている。
【0042】
さらに、図9に示すように、キャリッジ33の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復装置91を配置している。
維持回復装置91には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部(以下、キャップ」という)92と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード93と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け94及び空吐出受け94と一体に形成され、ワイパーブレード93に付着した記録液を除去するための清掃部材であるワイパークリーナ95と、ワイパーブレード93のクリーニング時にワイパーブレード93をワイパークリーナ95側に押し付けるクリーナ手段を構成するクリーナコロ96などを備えている。
【0043】
また、図9に示すように、キャリッジ33の走査方向の他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け98を配置し、空吐出受け98には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部99などを備えている。
【0044】
このように構成した画像形成装置においては、給紙トレイ2から記録用紙42が一枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された記録用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ52との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド53で案内されて先端加圧コロ55で搬送ベルト51に押し付けられ、略90度搬送方向を転換される。
このとき、図示しない制御回路によって高圧電源から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。
プラスとマイナスが交互に帯電した搬送ベルト51上に記録用紙42が給送されると、記録用紙42が搬送ベルト51に静電的に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって記録用紙42が副走査方向に搬送される。
【0045】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している記録用紙42にインク滴を吐出して一行分を記録し、記録用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。
記録終了信号または記録用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、記録用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0046】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復装置91側に移動されて、各キャップ92で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。
キャップ92で記録ヘッド34をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し(ノズル吸引またはヘッド吸引という)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。
記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。
これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
【0047】
図7から図9を参照して説明した画像形成装置の構成例において、維持回復装置91は、図1の液吸引装置100を設けた装置の一例、キャップ92は、図1のキャップ部材110の一例、記録ヘッド34は、図1の液滴吐出装置210の一例である。
【0048】
次に、液吸引装置100が実施する固着防止動作を制御する制御手段(「固着防止動作制御手段」とも称する)について説明する。固着動作防止制御手段は、例えば、画像形成装置が備える制御機能(制御部)により実現するとよい。
【0049】
図10は、インクジェット画像形成装置の制御例を説明する概略ブロック説明図である。図10では、画像形成装置の一例として、インクジェット画像形成装置を用いて説明する。インクジェット画像形成装置は、制御部500を備える。
制御部500は、装置全体の制御を司るCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0050】
制御部500は、画像形成装置が実施する各機能を制御する手段を実現するプログラムをROM502に格納し、プログラムをCPU501に実行させ、各機能を制御する。固着防止動作制御手段は、例えば、プログラムをCPU501が実行することにより実現するとよい。
【0051】
また、制御部500は、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構の維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511と、サブタンク35の大気開放機構207を開閉する大気開放ソレノイド302を駆動するソレノイド駆動部512と、送液ポンプ241を駆動するポンプ駆動部516などを備えている。
【0052】
制御部500には、装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0053】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。
なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
【0054】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0055】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動信号を構成する駆動パルスを選択的に記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。
このとき、駆動信号を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0056】
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ駆動部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。
【0057】
センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度、湿度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
I/O部513に入力されるセンサ群515には、前述したサブタンク35の変位部材205を検知する満タン検知センサ301、検知電極ピン208a、208bなどの信号も入力される。
【0058】
制御部500のCPU501は、前述したように、満タン検知センサ301の検知信号によって変位部材205を検知してサブタンク35内の圧力を検出する手段を構成し、また、吐出滴数及び吐出滴量などからインク消費量を測定する消費量測定手段を構成し、また、サブタンク35内のインクの最大使用可能インク量を算出する手段を構成し、算出結果に基づいてサブタンク35の負圧を形成する制御を行なうか否かを判定する手段を構成する。
【0059】
なお、上記では、制御部500(プログラムを実行するCPU501)が固着防止動作制御手段を実現する構成例を説明したが、例えば、個別の制御手段(プログラム)を、画像形成装置または画像形成装置を構成するユニット等に設ける構成としてもよい。
【0060】
次に、固着防止動作制御手段の動作例について説明する。
図11は、固着防止動作制御手段の動作例を説明するフローチャートである。
固着防止動作制御手段は、所定の期間、非動作の状態が続いているかを監視する(S11)。固着防止動作制御手段は、予め設定した所定の期間を、参照可能なメモリ等に保持するとよい。また、所定の期間を、カウンタ等により計測する。
固着防止動作制御手段は、非動作が所定の期間続いたことを検出すると(S12でYES)、吸引ポンプ130を動作させる固着防止動作を実施し(S13)、非動作の継続を検出しない場合には(S12でNO)、ステップS11の監視処理(監視工程)を継続する。
固着防止動作制御手段は、固着防止動作を実施後、カウンタを初期化し(S14)、ステップS11へ戻り、監視処理を再開する。
【0061】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>
液滴吐出装置に対して接離可能なキャップ部材と、
負圧を発生させる吸引ポンプと、
前記キャップ部材と前記吸引ポンプとの間を連結する可撓性を有する液搬送部材と、を備える液吸引装置であって、
前記吸引ポンプは、前記液搬送部材を内部に取り付け可能なチューブポンプであり、
前記液吸引装置は、
前記液滴吐出装置から液体の吸引を行うとき、前記液滴吐出装置に前記キャップ部材をキャッピングした状態で液吸引可能な装置であり、
前記液滴吐出装置による液滴の吐出と、前記液体の吸引とを行わない非動作のとき、前記キャップ部材を、前記液滴吐出装置にキャッピングした状態で保持可能な装置であり、
所定の期間、前記非動作の状態が続いた場合、前記チューブポンプを動作させる固着防止動作を実施し、
前記固着防止動作は、前記固着防止動作を除く前記チューブポンプの動作で最後に停止させた後の位置を基準位置とすると、前記基準位置から正圧方向へ回転する正転動作と、前記正圧方向と逆の負圧方向へ回転する逆転動作とを実施すること
を特徴とする液吸引装置である。
<2>
前記固着防止動作は、前記基準位置から、前記正転動作と前記逆転動作とが実施可能な可動範囲となる限界値(閾値)を有すること
を特徴とする
前記<1>に記載の液吸引装置である。
<3>
前記前記固着防止動作は、前記基準位置から前記正転動作を行い、前記基準位置に戻り、前記基準位置から前記逆転動作を行い、前記基準位置に戻る動作を一サイクルとすると、前記一サイクルを一以上行うこと
を特徴とする
前記<1>または<2>に記載の液吸引装置である。
<4>
前記固着防止動作は、前記チューブポンプを、前記限界値の範囲内において、任意の場所に移動して動作停止(押圧)可能なこと
を特徴とする
前記<2>に記載の液吸引装置である。
<5>
前記固着防止動作を行うまでの前記所定の期間は、設置環境の温湿度に応じて可変されることを特徴とする
前記<1>から<4>のいずれか一つに記載の液吸引装置である。
<6>
上記<1>から<5>のいずれか一項に記載の液吸引装置と、
前記液吸引装置が実施する前記固着防止動作を制御する制御手段と、を備える画像形成装置である。
【0062】
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
100 液吸引装置
110 キャップ部材
130 吸引ポンプ
131 回転部
133 ローラ
135 ポンプハウジング
137 回転軸
150 チューブ(液搬送部材)
210 液滴吐出装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開2009‐126116号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11