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特開2024-119570プラズマ処理装置の異常検知方法及びプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119570
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置の異常検知方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20240827BHJP
   H05H 1/00 20060101ALI20240827BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240827BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H05H1/46 L
H05H1/00 A
H01L21/302 101M
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026569
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 純一
(72)【発明者】
【氏名】笹浪 雄作
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA05
2G084BB05
2G084BB14
2G084BB27
2G084BB30
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD25
2G084DD32
2G084DD38
2G084DD55
2G084DD65
2G084DD66
2G084FF14
2G084FF38
2G084FF39
2G084HH05
2G084HH21
2G084HH28
2G084HH57
5F004AA01
5F004BA20
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB29
5F004CA06
5F004CB05
5F004DB03
5F004DB07
5F004DB08
5F004DB26
5F045AA08
5F045AB32
5F045AB33
5F045BB02
5F045BB20
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EB03
5F045EB05
5F045EB09
5F045EF05
5F045EH02
5F045EH11
5F045EH20
5F045EJ03
5F045EK07
5F045EM05
5F045EM07
5F045GB04
(57)【要約】
【課題】プラズマ処理装置において発生した異常を検出するプラズマ処理装置の異常検知方法及びプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】仮想矩形平面は、複数のエリアに区画され、前記仮想矩形平面は、前記仮想矩形平面において対称な位置に配置される前記エリアを組み合わせた複数のエリアグループに区画される部分を有するプラズマ処理装置の異常検知方法であって、監視期間において、複数の前記アンテナコイルのそれぞれの電流値を前記電流計により検出する工程と、複数の前記アンテナコイルのそれぞれについて前記電流値に基づいた評価値を算出する工程と、複数の前記エリアのそれぞれについて、前記アンテナコイルの前記評価値の前記監視期間にわたる平均値を求め、前記平均値に基づいて、前記評価値の得られた前記エリアまたは前記評価値の得られた前記エリアが含まれる前記エリアグループの異常を検知する工程と、を含む、プラズマ処理装置の異常検知方法。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をプラズマ処理する処理チャンバの内部において前記基板を載置する載置台の載置面に対向し前記処理チャンバの内部を上部と下部とに区画する矩形平面状の窓部材に対応する仮想矩形平面に沿って配置される複数のアンテナコイルを備え、
複数の前記アンテナコイルは、それぞれ、一端が高周波電源に、他端が電流計を介して接地電位に接続され、
前記仮想矩形平面は、少なくともその一部において、それぞれに複数の前記アンテナコイルのいずれかが配置される複数のエリアに区画され、
前記仮想矩形平面は、前記仮想矩形平面において対称な位置に配置される前記エリアを組み合わせた複数のエリアグループに区画される部分を有するプラズマ処理装置の異常検知方法であって、
監視期間において、
複数の前記アンテナコイルのそれぞれの電流値を前記電流計により検出する工程と、
複数の前記アンテナコイルのそれぞれについて前記電流値に基づいた評価値を算出する工程と、
複数の前記エリアのそれぞれについて、前記アンテナコイルの前記評価値の前記監視期間にわたる平均値を求め、前記平均値に基づいて、前記評価値の得られた前記エリアまたは前記評価値の得られた前記エリアが含まれる前記エリアグループの異常を検知する工程と、を含む、
プラズマ処理装置の異常検知方法。
【請求項2】
前記仮想矩形平面は、同心状の複数の矩形領域に分割される、
請求項1に記載のプラズマ処理装置の異常検知方法。
【請求項3】
前記同心状の複数の矩形領域は、最外周に位置する外側領域を有し、
前記外側領域において、複数の前記エリアグループの少なくとも一部が最外周エリアグループとして区画され、
前記最外周エリアグループは、一の前記エリアに対し一の前記アンテナコイルが配置され、
前記アンテナコイルの電流を制御することにより前記プラズマ処理の均一性が制御される、
請求項2に記載のプラズマ処理装置の異常検知方法。
【請求項4】
前記評価値は、一の前記アンテナコイルの電流値を、該アンテナコイルに対応する一の前記エリアについて予め定められた基準電流値により除して規格化された値に基づいて、算出する、
請求項3に記載のプラズマ処理装置の異常検知方法。
【請求項5】
前記基準電流値は、前記プラズマ処理装置による前記基板の前記プラズマ処理の均一性が最も高くなる条件において得られる電流値である、
請求項4に記載のプラズマ処理装置の異常検知方法。
【請求項6】
複数の前記最外周エリアグループのうち、
前記仮想矩形平面の4つの角部に配された前記エリアで構成される前記最外周エリアグループは角部エリアグループであり、
前記仮想矩形平面の2つの短辺部に配された前記エリアで構成される前記最外周エリアグループは短辺部エリアグループであり、
前記仮想矩形平面の2つの長辺部に配された前記エリアで構成される前記最外周エリアグループは長辺部エリアグループである、
請求項3に記載のプラズマ処理装置の異常検知方法。
【請求項7】
前記同心状の複数の矩形領域は、内側に位置する内側領域を有し、
前記内側領域において、複数の前記エリアグループの少なくとも一部が内側エリアグループとして区画され、
前記内側エリアグループは、一の前記エリアに対し複数の前記アンテナコイルが配置される、
請求項2に記載のプラズマ処理装置の異常検知方法。
【請求項8】
前記異常を検知する工程は、
一の前記エリアグループに含まれる前記アンテナコイルのそれぞれについて、前記アンテナコイルの前記評価値の平均値を算出する工程と、
前記評価値の平均値に基づいて、前記評価値の得られた前記エリアの異常を検知する工程と、を有する、
請求項1に記載のプラズマ処理装置の異常検知方法。
【請求項9】
前記評価値を算出する工程は、
前記エリアグループ内の前記エリアに配置される複数の前記アンテナコイルにおける前記アンテナコイルの前記電流値の偏差を前記評価値として算出する、
請求項7に記載のプラズマ処理装置の異常検知方法。
【請求項10】
前記評価値を算出する工程は、
前記エリアグループ内の前記エリアに配置される複数の前記アンテナコイルにおける前記アンテナコイルの前記規格化された値の偏差を前記評価値として算出する、
請求項4に記載のプラズマ処理装置の異常検知方法。
【請求項11】
前記異常を検知する工程は、
前記評価値の平均値が、予め定めた閾値を超えた場合、前記評価値の得られた前記エリアまたは前記評価値の得られた前記エリアが含まれる前記エリアグループに異常があると判定する、
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置の異常検知方法。
【請求項12】
基板をプラズマ処理する処理チャンバの内部において前記基板を載置する載置台と、
前記載置台の載置面に対向し前記処理チャンバの内部を上部と下部とに区画する矩形平面状の窓部材と、
前記窓部材に対応する仮想矩形平面に沿って配置される複数のアンテナコイルと、
制御部と、を備え、
複数の前記アンテナコイルは、それぞれ、一端が高周波電源に、他端が電流計を介して接地電位に接続され、
前記仮想矩形平面は、少なくともその一部において、それぞれに複数の前記アンテナコイルのいずれかが配置される複数のエリアに区画され、
前記仮想矩形平面は、前記仮想矩形平面において対称な位置に配置される前記エリアを組み合わせた複数のエリアグループに区画される部分を有し、
前記制御部は、
一の前記エリアグループに含まれる一又は複数の前記エリアに配置される複数の前記アンテナコイルの電流値に基づいて異常を検知する、
プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置の異常検知方法及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のアンテナコイルのそれぞれの電流の経時変化を電流計により測定する工程と、複数のアンテナコイルのそれぞれについて電流の経時変化に基づいた評価値を算出する工程と、複数の統合エリアのそれぞれに含まれるエリアのそれぞれに配置されるアンテナコイルの評価値の最大値と最小値の差分を算出して、差分に基づいて異常を検知する工程と、を含むプラズマ処理装置の異常検知方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-112927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ処理装置において発生した異常を検出するプラズマ処理装置の異常検知方法及びプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、基板をプラズマ処理する処理チャンバの内部において前記基板を載置する載置台の載置面に対向し前記処理チャンバの内部を上部と下部とに区画する矩形平面状の窓部材に対応する仮想矩形平面に沿って配置される複数のアンテナコイルを備え、複数の前記アンテナコイルは、それぞれ、一端が高周波電源に、他端が電流計を介して接地電位に接続され、前記仮想矩形平面は、少なくともその一部において、それぞれに複数の前記アンテナコイルのいずれかが配置される複数のエリアに区画され、前記仮想矩形平面は、前記仮想矩形平面において対称な位置に配置される前記エリアを組み合わせた複数のエリアグループに区画される部分を有するプラズマ処理装置の異常検知方法であって、監視期間において、複数の前記アンテナコイルのそれぞれの電流値を前記電流計により検出する工程と、複数の前記アンテナコイルのそれぞれについて前記電流値に基づいた評価値を算出する工程と、複数の前記エリアのそれぞれについて、前記アンテナコイルの前記評価値の前記監視期間にわたる平均値を求め、前記平均値に基づいて、前記評価値の得られた前記エリアまたは前記評価値の得られた前記エリアが含まれる前記エリアグループの異常を検知する工程と、を含む、プラズマ処理装置の異常検知方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、プラズマ処理装置において発生した異常を検出するプラズマ処理装置の異常検知方法及びプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置を示す断面図の一例。
図2】高周波アンテナのエリアの一例を示す図。
図3】アンテナセグメントの一例を示す図。
図4】スパイラルアンテナの一例を示す平面図。
図5】本実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置のアンテナ回路の一例を示すブロック図。
図6】本実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置の異常検知処理の一例を示すフローチャート。
図7】本実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置の異常検知処理における異常判定を説明するグラフの一例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[プラズマ処理装置]
実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置(プラズマ処理装置)100について、図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置100を示す断面図の一例である。
【0010】
誘導結合プラズマ処理装置100は、プロセスチャンバ1を含む。プラズマ処理は、具体的には、一例として酸化シリコン膜や窒化シリコン膜、金属膜等のエッチング処理、基板Gの表面上に薄膜トランジスタを形成する際のメタル膜やITO(Indium Tin Oxide)膜を保護する酸化シリコン膜や窒化シリコン膜の成膜処理又はレジスト膜のアッシング処理等である。
【0011】
プロセスチャンバ1は、導電性材料、例えば、内壁面が陽極酸化処理されたアルミニウム製の角筒形状の気密なチャンバである。プロセスチャンバ1は分解可能に組み立てられており、接地線1aにより電気的に接地されている。プロセスチャンバ1は、誘電体壁(誘電体窓)2により上下にアンテナ室3および処理室4に区画されている。したがって、誘電体壁2は上部と下部に分割する処理室4の天壁として機能する。誘電体壁2は、上面視で矩形平面状である。誘電体壁2は、Al等のセラミックスや石英等で構成されている。
【0012】
誘電体壁2の下側部分には、処理ガス供給用のシャワー筐体11が嵌め込まれている。シャワー筐体11は例えば十字状に設けられている。シャワー筐体11は、誘電体壁2を下から支持する梁としての機能を有する。誘電体壁2は十字状のシャワー筐体11に対応して四分割されていてもよい。なお、誘電体壁2を支持するシャワー筐体11は、複数本のサスペンダ(図示せず)によりプロセスチャンバ1の天井に吊された状態となっている。
【0013】
シャワー筐体11は導電性材料製、望ましくは金属製である。シャワー筐体11は、例えば汚染物が発生しないように内面または外面が陽極酸化処理されたアルミニウムで構成されている。シャワー筐体11は電気的に接地されている。
【0014】
シャワー筐体11には水平に伸びるガス流路12が形成されている。ガス流路12には、下方に向かって延びる複数のガス吐出孔12aが連通している。誘電体壁2の上面中央には、ガス流路12に連通するガス供給管20aが設けられている。ガス供給管20aは、プロセスチャンバ1の天井または側壁を貫通して外側へ延在し、処理ガス供給源およびバルブシステム等を含む処理ガス供給系20に接続されている。したがって、プラズマ処理においては、処理ガス供給系20から供給された処理ガスがガス供給管20aを介してシャワー筐体11内に供給され、ガス吐出孔12aから処理室4内へ吐出される。
【0015】
プロセスチャンバ1におけるアンテナ室3の側壁3aと処理室4の側壁4aとの間には内側に突出する支持棚5が設けられている。支持棚5の上に誘電体壁2が載置される。
【0016】
また、誘導結合プラズマ処理装置100は、高周波(RF: Radio Frequency)アンテナ120を有するアンテナユニット50を含む。高周波アンテナ120には、給電部51、給電線19、整合器14を介して高周波電源15が接続されている。また、高周波アンテナ120は絶縁部材で構成されるスペーサ17により誘電体壁2から離隔している。そして、高周波アンテナ120に、高周波電源15から例えば周波数が13.56MHzの高周波電力が供給されることにより、処理室4内に誘導電界が生成される。高周波アンテナ120によって処理室4内に生成された誘導電界によりシャワー筐体11から供給された処理ガスがプラズマ化される。
【0017】
アンテナユニット50は、高周波アンテナ120と、整合器14を経た高周波電力を高周波アンテナ120に給電する給電部51と、を含む。高周波アンテナ120は、誘電体壁2の上面に設けられている。
【0018】
高周波アンテナ120は、複数のアンテナセグメントを有する。後述する図3及び図4に示されるように、各アンテナセグメントは、銅線等で構成されるアンテナ線を巻回したものである。アンテナセグメントの詳細については後述する。
【0019】
高周波アンテナ120の複数のアンテナセグメントの平面部は、誘電体壁2の上面2A側において下側を向き、高周波電力に対して誘電体窓として機能する誘電体壁2を介して基板Gの上面に対向するように設けられている。高周波アンテナ120の複数のアンテナセグメントの平面部は、同心状の矩形環状をなすように配置されており、全体として基板Gに対応する矩形状の平面を構成している。高周波アンテナ120の複数のアンテナセグメントの平面部は、全体として矩形環状をなし、例えば、内側環状アンテナ、第1の中間環状アンテナ、第2の中間環状アンテナ及び外側環状アンテナの同心4環状となるような、多分割環状アンテナを構成しており、プラズマ生成に寄与する誘導電界を生成する。なお、アンテナの環状の数は、4環状に限られず、例えば、内側環状アンテナ、中間環状アンテナ、外側環状アンテナの3環状などであってもよい。
【0020】
なお、プロセスチャンバ1が処理チャンバの一例、誘電体壁2は窓部材の一例である。例えば、誘電体壁2の代わりに金属壁(金属窓)によってプロセスチャンバ1をアンテナ室3および処理室4に区画してもよい。この場合、高周波アンテナ120は一旦金属壁に誘導電流を誘起し、金属壁に誘起された誘導電流が、処理室4内に、プラズマ生成に寄与する誘導電界を生成する。また、金属壁がシャワー筐体を兼ねてもよい。
【0021】
高周波アンテナ120は、プロセスチャンバ1内に生成されたプラズマに対し、いくつかの領域に分けてプラズマ密度分布を制御するために、高周波電力を供給する1又は2以上のアンテナセグメントが属する複数のエリアに分けられている。
【0022】
処理室4内の下方には、誘電体壁2を挟んで高周波アンテナ120と対向するように、基板Gを載置するための載置台23が設けられている。載置台23は上面に載置面23Aを有し、基板Gは載置面23Aに載置される。載置台23は、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムで構成されている。載置台23に載置された基板Gは、静電チャック(図示せず)により吸着保持される。
【0023】
載置台23は絶縁体枠24内に収納される。また、載置台23は、プロセスチャンバ1の底部に支持される。載置台23には図示しない昇降ピンが備えられる。基板Gの搬入出時に昇降ピンにより基板Gが上下方向に昇降される。また、処理室4の側壁4aには、基板Gを搬入出するための搬入出口27aおよび搬入出口27aを開閉するゲートバルブ512が設けられている。
【0024】
載置台23には、給電線25aにより、整合器28を介して高周波電源29が接続されている。この高周波電源29は、プラズマ処理中に、バイアス用の高周波電力、例えば周波数が3.2MHzの高周波電力を載置台23に供給する。このバイアス用の高周波電力により生成されたセルフバイアスによって、処理室4内に生成されたプラズマ中のイオンが効果的に基板Gに引き込まれる。
【0025】
さらに、載置台23内には、基板Gの温度を制御するため、セラミックヒータ等の加熱手段や冷媒流路等を含む温度制御機構と、温度センサとが設けられている(いずれも図示せず)。これらの機構や部材に対する配管や配線は、プロセスチャンバ1の外に導出される。
【0026】
処理室4の底部には、排気管31を介して真空ポンプ等を含む排気装置30が接続される。この排気装置30により、処理室4が排気され、プラズマ処理中、処理室4内が所定の真空雰囲気(例えば1.33Pa)に設定、維持される。
【0027】
載置台23に設けられた温度制御機構による基板Gの温度制御性を高めるため、載置台23の上面の載置面23Aと基板Gの裏面との間の微細な隙間に一定の圧力の熱伝達用ガス(Heガス)を供給するHeガス流路41が設けられている。このように基板Gの裏面側に熱伝達用ガスを供給することにより、真空下において基板Gの温度上昇や温度変化を回避できるようになっている。
【0028】
誘導結合プラズマ処理装置100は、制御装置110を含む。制御装置110は、例えば、コンピュータにより実現される。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力インターフェース及び内部バス等を含む。
【0029】
制御装置110は、主制御部111、プラズマ生成処理部112、異常検知判定部113及びメモリ115を有する。図1の主制御部111、プラズマ生成処理部112及び異常検知判定部113は、制御装置110が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ115は、制御装置110のメモリを機能的に表したものである。
【0030】
誘導結合プラズマ処理装置100の各構成部は、制御装置110に接続されている。誘導結合プラズマ処理装置100の各構成部は、制御装置110の主制御部111、プラズマ生成処理部112及び異常検知判定部113によって制御される。なお、主制御部111が包括的にプラズマ生成処理部112及び異常検知判定部113を含み、主制御部111が上位的にプラズマ処理部112及び異常検知判定部113を制御するように構成されていてもよい。
【0031】
また、制御装置110には、オペレータによる誘導結合プラズマ処理装置100を管理するためのコマンド入力等の入力操作を行うキーボードや、誘導結合プラズマ処理装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等を含むユーザーインターフェース101が接続されている。
【0032】
なお、オペレータは、誘導結合プラズマ処理装置100が納入された工場等の作業者に限らず、誘導結合プラズマ処理装置100の製造工場等における出荷前の組み立て段階等で誘導結合プラズマ処理装置100を操作する作業者も含む。
【0033】
主制御部111は、制御装置110の制御処理を統括する処理部であり、プラズマ生成処理部112及び異常検知判定部113が行う以外の処理を実行する。例えば、主制御部111は、基板Gの搬送制御や、プロセスレシピに従ってエッチング処理や成膜処理等の制御処理を行う。
【0034】
プラズマ生成処理部112は、高周波アンテナ120の複数のアンテナセグメントに高周波電力を供給してプラズマを生成するプラズマ生成処理を行う。プラズマ生成処理部112は、給電部51が出力する高周波電力の出力の調整等も行う。
【0035】
異常検知判定部113は、誘導結合プラズマ処理装置100における異常を検知する。異常検知判定部113については詳細を後述する。
【0036】
メモリ115は、誘導結合プラズマ処理装置100で実行される各種処理を実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて誘導結合プラズマ処理装置100の各構成部に処理を実行させるためのプログラム(プロセスレシピ)を記憶(格納)する。なお、プロセスレシピは、オペレータがユーザーインターフェース101を操作して作成し入力してもよく、また、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性の記憶媒体から制御装置110に伝送されてメモリ115に格納されたものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してプロセスレシピを制御装置110に伝送させるようにしてもよい。そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース101からの指示等にて任意のプロセスレシピをメモリ115から呼び出して制御装置110が実行することで、制御装置110の制御下で、誘導結合プラズマ処理装置100での所望のプラズマ処理等が行われる。
【0037】
また、後述の複数のエリア及び複数のエリアグループと、アンテナセグメントとの関係を表すデータは、メモリ115に記憶される。
【0038】
また、制御装置110は、外部のホストコンピュータ200に接続される。ホストコンピュータ200は、制御装置110から誘導結合プラズマ処理装置100での処理結果及び装置状態データを取得する。
【0039】
なお、制御装置110における処理を、複数の機器によって行ってもよい。制御装置110における処理の一部、例えば、異常検知判定部113の処理を、プログラマブルロジックコントローラ等により処理してもよい。
【0040】
図2は、高周波アンテナ120のエリアA1~A15の一例を示す図である。
【0041】
仮想矩形平面120Aは、誘電体壁2の上面2Aと平行に規定される。仮想矩形平面120Aは、少なくともその一部において、それぞれに複数のアンテナセグメントのいずれかが配置される複数のエリアに区画される。なお、図1に示すように、仮想矩形平面120Aは、高周波アンテナ120を構成する複数のアンテナセグメントの、誘電体壁2と対向する平面部の少なくとも一部を含んで規定されてもよい。あるいは、アンテナセグメントの平面部が構成する矩形状の平面を含んで規定されてもよい。また、仮想矩形平面120Aを任意の位置に規定し、高周波アンテナ120を構成するアンテナセグメントの、後述のエリア分割の配置が投影されるようにしてもよい。
【0042】
図2に示す例において、高周波アンテナ120は、エリアA1~A15の15個のエリアに分割される。図2では仮想矩形平面120A上にエリアA1~A15が示された状態が図示されている。エリアA1は、内側環状アンテナに対応する内側領域を構成する。エリアA2は、内側領域を囲むように形成され、第1の中間環状アンテナに対応する第1の中間領域を構成する。エリアA3は、第1の中間領域を囲むように形成され、第2の中間環状アンテナに対応する第2の中間領域を構成する。エリアA4からエリアA15は、第2の中間領域を囲むように形成され、外側環状アンテナに対応する外側領域を構成する。内側領域、第1の中間領域、第2の中間領域及び外側領域は、同心状の複数の矩形領域の一例である。外側領域は、同心状の複数の矩形領域の最外周に位置する。
【0043】
また、仮想矩形平面120Aは、仮想矩形平面において対称な位置に配置されるエリアA1~A15を組み合わせた複数のエリアグループに区画される部分を有する。
【0044】
図2に示す例において、第1のエリアグループSA1は、エリアA1で構成される。第2のエリアグループSA2は、エリアA2で構成される。第3のエリアグループSA3は、エリアA3で構成される。
【0045】
第4のエリアグループSA4(角部エリアグループ)は、仮想矩形平面の4つの角部に配されたエリアA4,A7,A10,A13で構成される。換言すれば、第4のエリアグループSA4は、外側領域の角部に配されたエリアA4,A7,A10,A13で構成される。
【0046】
第5のエリアグループSA5(短辺部エリアグループ)は、仮想矩形平面の2つの短辺部に配されたエリアA5,A6及びエリアA11,A12で構成される。換言すれば、第5のエリアグループSA5は、外側領域の短辺部に配されたエリアA5,A6,A11,A12で構成される。
【0047】
第6のエリアグループSA6(長辺部エリアグループ)は、仮想矩形平面の2つの長辺部に配されたエリアA8,A9及びエリアA14,A15で構成される。換言すれば、第6のエリアグループSA6は、外側領域の長辺部に配されたエリアA8,A9,A14,A15で構成される。
【0048】
外側領域に区画される第4~第6のエリアグループSA4~SA6は、最外周エリアグループの一例である。また、内側領域、第1の中間領域及び第2の中間領域に区画される第1~第3のエリアグループSA1~SA3は、内側エリアグループの一例である。
【0049】
外側領域のエリアA4からエリアA15には、例えば、1つのエリアに対しアンテナ線を縦巻きにした1つのアンテナセグメント121A(後述する図3参照)が配置される。また、内側領域及び中間領域のエリアA1からエリアA3には、例えば、アンテナ線を平面状に巻回した複数のアンテナセグメント121Bを多重に配置して有するスパイラルアンテナ160(後述する図4参照)が配置される。即ち、内側領域及び中間領域のエリアA1からエリアA3には、1つのエリアに対し複数のアンテナセグメント121B(後述する図4参照)が配置される。なお、アンテナセグメント121A及びアンテナセグメント121Bを総称して、アンテナセグメント121ともいう。アンテナセグメント121(121A,121B)は、アンテナコイルの一例である。
【0050】
図3は、アンテナセグメント121Aの一例を示す図である。アンテナセグメント121Aは、高周波アンテナ120が有する複数のアンテナセグメント121Aのうちの1つである。図3にはXYZ座標系を示す。XY平面は水平面に平行であり、Z方向は鉛直上方向である。
【0051】
アンテナセグメント121Aは、例えば、水平方向に延在する巻回軸RAに対して、銅等の導電性材料製のアンテナ線122を上下方向に立体的に複数回にわたって巻回したものである。巻回軸RAは、一例としてX軸に平行である。アンテナ線122は、水平面内で巻回されているのではなく、上下方向(縦方向)に折り曲げられて巻回されている。アンテナ線122は、YZ面視で矩形状に縦方向に巻回されている。
【0052】
アンテナ線122は、端部122Aと端部122Bとの間で複数回にわたって巻回されているため、複数の底部122Cを有する。底部122Cは、立体的に巻回されるアンテナ線122の底に位置する部分である。複数の底部122Cは、一例としてY軸に平行であり、水平面に平行な平面部125を構成する。
【0053】
図3に示すアンテナ線122は、一例として3本の底部122Cを有するため、平面部125は、一例として3本の底部122Cによって構成されている。平面部125が発生する誘導電界は、プラズマの生成に寄与する。
【0054】
図3に示すアンテナセグメント121Aの形状は一例であり、高周波アンテナ120が有する複数のアンテナセグメント121Aの形状は、各エリアの形状等に合わせられている。このため、各エリアの場所によっては、アンテナセグメント121Aの形状は、図3に示すアンテナセグメント121Aの形状とは異なる場合があるが、すべてのアンテナセグメント121Aは、複数の底部122Cによって構成される平面部125を有する。平面部125は、仮想矩形平面120Aに沿って配置される。
【0055】
なお、エリアA4~A15には、アンテナセグメント121Aがそれぞれ設けられる。なお、外側領域の角部を形成するエリアA4に設けられるアンテナセグメント121Aにおいては、アンテナ線122の底部122Cの形状がエリアA4の形状に沿って水平方向に90°屈曲するように形成される。同様に、外側領域の角部を形成するエリアA7,A10,A13に設けられるアンテナセグメント121Aにおいても、アンテナ線122の底部122Cの形状がエリアの形状に沿って水平方向に90°屈曲するように形成される。
【0056】
図4は、スパイラルアンテナ160の一例を示す平面図である。図4に示すスパイラルアンテナ160は、4本のアンテナセグメント121Bを90°ずつずらして巻回したものである。なお、スパイラルアンテナ160は、これに限らず、例えば、2本のアンテナ線を180°ずらして巻回してもよく、1本のアンテナ線を巻回して構成してもよく、全体としてスパイラル形状となるように構成されればよい。
【0057】
アンテナセグメント121Bは、アンテナコイルの一例である。
【0058】
なお、エリアA1には、2本のアンテナセグメント121Bを180°ずらして巻回してスパイラルアンテナ160が構成されているものとして説明する。また、エリアA2には、4本のアンテナセグメント121Bを90°ずらして巻回してスパイラルアンテナ160が構成されているものとして説明する。また、エリアA3には、4本のアンテナセグメント121Bを90°ずらして巻回してスパイラルアンテナ160が構成されているものとして説明する。
【0059】
図5は、本実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置100のアンテナ回路150の一例を示すブロック図である。
【0060】
アンテナ回路150は、複数のアンテナセグメント121を備える。図5に示す例において、アンテナ回路150は、第1のエリアグループSA1(エリアA1)に対応する2つのアンテナセグメント121Bと、第2のエリアグループSA2(エリアA2)に対応する4つのアンテナセグメント121Bと、第3のエリアグループSA3(エリアA3)に対応する4つのアンテナセグメント121Bと、第4のエリアグループSA4のエリアA4,A7,A10,A13のそれぞれに対応する4つのアンテナセグメント121Aと、第5のエリアグループSA5のエリアA5,A6,A11,A12のそれぞれに対応する4つのアンテナセグメント121Aと、第6のエリアグループSA6のエリアA8,A9,A14,A15のそれぞれに対応する4つのアンテナセグメント121Aと、を備える。
【0061】
アンテナ回路150は、アンテナセグメント121(121A,121B)のそれぞれと接地との間に設けられたアンテナ電流を測定する電流計131を複数備える。すなわち、アンテナセグメント121(121A,121B)の一端は、高周波電源15に接続し、他端は電流計131を介して接地電位に接続される。
【0062】
電流計131は、例えば、電流トランスである。電流計131は、例えば、出力値として、アンテナセグメント121(121A,121B)と接地との間に流れる電流に基づく電圧を出力する。出力された電圧値は変換され、電流値として測定される。
【0063】
CT1,CT2で示す電流計131は、第1のエリアグループSA1(エリアA1)のアンテナセグメント121Bのそれぞれと接続される。CT3~CT6で示す電流計131は、第2のエリアグループSA2(エリアA2)のアンテナセグメント121Bのそれぞれと接続される。CT7~CT10で示す電流計131は、第3のエリアグループSA3(エリアA3)のアンテナセグメント121Bのそれぞれと接続される。CT11~CT14で示す電流計131は、第4のエリアグループSA4(エリアA4,A7,A10,A13)のアンテナセグメント121Aのそれぞれと接続される。CT15~CT18で示す電流計131は、第5のエリアグループSA5(エリアA5,A6,A11,A12)のアンテナセグメント121Aのそれぞれと接続される。CT19~CT22で示す電流計131は、第6のエリアグループSA6(エリアA8,A9,A14,A15)のアンテナセグメント121Aのそれぞれと接続される。
【0064】
また、アンテナ回路150において、第4~第6のエリアグループSA4~SA6のアンテナセグメント121Aのそれぞれには、アンテナセグメント121Aに流れる電流を調整するコンデンサ(図示せず)が設けられている。これにより、アンテナセグメント121Aを流れる電流を調整することにより処理室4内に生成されるプラズマ処理の均一性が制御される。
【0065】
次に、異常検知判定部113での異常検知について、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置100の異常検知処理の一例を示すフローチャートである。
【0066】
プラズマ生成処理部112は、高周波電源15から高周波アンテナ120に定格の高周波電力を供給させる。これにより、処理室4内にプラズマを生成する。例えば、処理室4内にプラズマを生成して基板Gを除電する除電ステップであってもよい。異常検知判定は、監視期間内に一定間隔で取得された各アンテナセグメント121を流れる電流、即ち、各アンテナセグメント121に接続されたそれぞれの電流計131により測定された電流値に基づいて行われる。監視期間は、例えば、除電ステップであってもよい。
【0067】
監視期間の開始後、ステップS101において、異常検知判定部113は、アンテナセグメント121(アンテナコイル)の電流値を検出する。ここでは、電流計131を用いてアンテナセグメント121ごとの電流値を検出する。例えば、監視期間内において、100ms単位でアンテナセグメント121ごとの電流値を検出する。アンテナセグメント121の電流値の取得は監視期間の開始前から継続して行われていてもよく、その場合、監視期間の開始以降に取得されたアンテナセグメント121の電流値のみを異常検知の判定に用いるようにすればよい。なお、以下のステップS102の処理は、100ms単位で電流値を検出する(ステップS101)ごとに行われる。
【0068】
ステップS102において、異常検知判定部113は、ステップS101において検出したアンテナセグメント121の電流値に基づいて、評価値を算出する。ここで、評価値は、各アンテナセグメント121毎に算出される。また、評価値は、同じエリアグループ内のアンテナセグメント121の電流値における偏差(電流偏差)を算出する。電流偏差は評価値の一例である。
【0069】
例えば、スパイラルアンテナ160が配置される第2のエリアグループSA2(第1の中間領域)において、4つのアンテナセグメント121Bを有し、CT3~CT6(図5参照)で示す電流計131がそれぞれ接続されている。CT3の電流値をICT3、CT4の電流値をICT4、CT5の電流値をICT5、CT6の電流値をICT6とする。ここでは、異常検知判定部113は、CT3の電流偏差[%]、CT4の電流偏差[%]、CT5の電流偏差[%]、CT6の電流偏差[%]をそれぞれ算出する。
【0070】
ここで、CTx(xは3~6のいずれか)の電流偏差[%]は、(CTxの電流値-同エリアグループの電流平均値)/同エリアグループの電流平均値×100で表される。
【0071】
例えば、CT3の電流偏差[%]は、以下の式で算出される。
【0072】
CT3の電流偏差[%]=(ICT3-Average(ICT3,ICT4,ICT5,ICT6))/Average(ICT3,ICT4,ICT5,ICT6)×100
【0073】
なお、Average(ICT3,ICT4,ICT5,ICT6)は、電流値ICT3,ICT4,ICT5,ICT6の平均値である。
【0074】
CT4~CT6の電流偏差[%]についても同様にそれぞれ算出される。
【0075】
また、スパイラルアンテナ160が配置される第1のエリアグループSA1(内側領域)のCT1,CT2の電流偏差[%]及び第3のエリアグループSA3(第2の中間領域)のCT7~CT10の電流偏差[%]についても同様にそれぞれ算出される。
【0076】
第4~第6のエリアグループSA4~SA6(外側領域)において、各アンテナセグメント121Aを流れる電流を制御することにより、プラズマ処理の均一性を制御する。換言すれば、CT11からCT22には、それぞれ電流を制御するための基準電流値が予め設定されている。基準電流値は、例えば、誘導結合プラズマ処理装置100による基板Gのプラズマ処理の均一性が最も高くなる条件において得られる電流値である。基準電流値は、必ずしも誘導結合プラズマ処理装置100において改めて測定し準備する必要はなく、過去に行った基板Gの処理において取得されたデータから抽出してもよい。また、必ずしも当該誘導結合プラズマ処理装置100で測定される必要はなく、同じ構成の他の誘導結合プラズマ処理装置100で測定した値であってもよい。
【0077】
例えば、アンテナセグメント121Aが配置される第4のエリアグループSA4(外側領域の角部)において、エリアA4,A7,A10,A13にそれぞれアンテナセグメント121Aを有し、CT11~CT14(図5参照)で示す電流計131がそれぞれ接続されている。CT11の電流計131で測定した電流値をCT11の基準電流値で割った値(基準電流値で規格化(正規化)された値)をISCT11、CT12の電流計131で測定した電流値をCT12の基準電流値で割った値(基準電流値で規格化された値)をISCT12、CT13の電流計131で測定した電流値をCT13の基準電流値で割った値(基準電流値で規格化された値)をISCT13、CT14の電流計131で測定した電流値をCT14の基準電流値で割った値(基準電流値で規格化された値)をISCT14、とする。ISCT11、ISCT12、ISCT13、ISCT14は規格化された電流値である。ここでは、異常検知判定部113は、規格化された電流値により、CT11の電流偏差[%]、CT12の電流偏差[%]、CT13の電流偏差[%]、CT14の電流偏差[%]をそれぞれ算出する。
【0078】
ここで、CTx(xは11~14のいずれか)の電流偏差[%]は、(CTxの規格化した電流値-同エリアグループの規格化した電流平均値)/同エリアグループの規格化した電流平均値×100で表される。
【0079】
例えば、CT11の電流偏差[%]は、以下の式で算出される。
【0080】
CT11の電流偏差[%]=(ISCT11-Average(ISCT11,ISCT12,ISCT13,ISCT14))/Average(ISCT11,ISCT12,ISCT13,ISCT14)×100
【0081】
なお、Average(ISCT11,ISCT12,ISCT13,ISCT14)は、規格化した電流値ISCT11,ISCT12,ISCT13,ISCT14の平均値である。
【0082】
CT12~CT14の電流偏差[%]についても同様にそれぞれ算出される。
【0083】
また、アンテナセグメント121Aが配置される、第5のエリアグループSA5(外側領域の短辺部)のCT15~CT18の電流偏差[%]、第6のエリアグループSA6(外側領域の長辺部)のCT19~CT22の電流偏差[%]についても同様にそれぞれ算出される。このように、内側エリアグループである第1のエリアグループSA1、第2のエリアグループSA2、第3のエリアグループSA3と、最外周エリアグループである第4のエリアグループSA4、第5のエリアグループSA5、第6のエリアグループSA6とでは、電流偏差の求め方が異なっている。内側エリアグループでは電流値そのままの値に基づき電流偏差を算出し、最外周エリアグループでは電流値を規格化した値に基づき電流偏差を算出しているが、最終的に異常の有無の判定に用いる際には同等に扱うことができる。そのままの電流値による電流偏差も、規格化した電流値による電流偏差も、同様に評価値として用いることができる。
【0084】
ステップS103において、監視期間の終了後、異常検知判定部113は、各アンテナセグメント121の評価値(電流偏差)の監視期間にわたる平均値を算出する。即ち、評価値(電流偏差)の平均値は、例えば、100ms間隔で測定された各アンテナセグメント121の電流値に基いて算出されたエリアグループ内における各アンテナセグメント121の電流偏差について、監視期間にわたり各アンテナセグメント121ごとに算出する。
【0085】
即ち、監視期間にわたり、第1のエリアグループSA1において、CT1~CT2のそれぞれの電流計131により測定された電流値の電流偏差[%]について、それぞれ平均値を算出する。同様に、第2のエリアグループSA2において、CT3~CT6のそれぞれの電流計131により測定された電流値の電流偏差[%]について、それぞれ平均値を算出する。同様に、第3のエリアグループSA3において、CT7~CT10のそれぞれの電流計131により測定された電流値の電流偏差[%]について、それぞれ平均値を算出する。同様に、第4のエリアグループSA4において、CT11~CT14のそれぞれの電流計131により測定された電流値に基づく規格化された電流値の電流偏差[%]について、それぞれ平均値を算出する。同様に、第5のエリアグループSA5において、CT15~CT18のそれぞれの電流計131により測定された電流値に基づく規格化された電流値の電流偏差[%]について、それぞれ平均値を算出する。同様に、第6のエリアグループSA6において、CT19~CT22のそれぞれの電流計131で測定された電流値に基づく規格化された電流値の電流偏差[%]について、それぞれ平均値を算出する。
【0086】
ステップS104において、異常検知判定部113は、異常判定を行う。
【0087】
異常検知判定部113は、ステップS103で算出した評価値(電流偏差)の監視期間にわたる平均値が予め設定された閾値未満であるか否かを判定する。エリアグループ内の全てのアンテナセグメント121において、ステップS103で算出した評価値の監視期間にわたる平均値が予め設定された閾値未満である場合、そのエリアグループは正常であると判定する。一方、エリアグループ内の少なくとも1つのアンテナセグメント121において、ステップS103で算出した評価値の監視期間にわたる平均値が予め設定された閾値以上である場合、そのアンテナセグメント121を含むエリア、またはエリアグループには異常があると判定する。また、そのエリアグループ内において、そのアンテナセグメント121を含むエリアに異常があると判定してもよい。なお、閾値は、変更可能に構成されていてもよい。
【0088】
図7は、本実施形態に係る誘導結合プラズマ処理装置100の異常検知処理における異常判定を説明するグラフの一例である。なお、図7(a)から図7(f)に示すグラフにおいて、横軸は時間である。なお、図7(a)、図7(c)、図7(e)に示すグラフにおいて、縦軸は、電流計131で検出される電流値(ステップS101で検出される値)である。図7(b)、図7(d)、図7(f)に示すグラフにおいて、縦軸は、評価値の監視期間にわたる平均値(ステップS103で算出される値)である。なお、図7(a)、図7(c)、図7(e)で電流の立ち上がり時には変化が急であるため、図7(b)、図7(d)、図7(f)における判定は、図7(a)、図7(c)、図7(e)で電流が安定した状態に対応する部分で判断することが好ましい。また、図7(b)、図7(d)、図7(f)で異常の有無を判定する際の閾値は状況に応じて予め設定することのできる値である。ここでは、例えば、仮に閾値を±10若しくは絶対値10とした場合について説明する。言うまでもなく、閾値は10には限られない。
【0089】
ここでは、誘導結合プラズマ処理装置100のアンテナユニット50の部品(例えば、高周波アンテナ120等)をメンテナンス等のために交換する場合を例に説明する。
【0090】
図7(a)は、アンテナユニット50の部品を交換する前における第6のエリアグループSA6のCT19~CT22の電流値の一例を示す。図7(b)は、アンテナユニット50の部品を交換する前におけるCT19~CT22の評価値の監視期間にわたる平均値の一例を示す。
【0091】
ここでは、図7(b)に示すように、評価値の監視期間にわたる平均値は閾値(絶対値10)よりも小さくなっている。このため、異常検知判定部113は、ステップS104において、そのエリアグループは正常であると判定する。
【0092】
図7(c)は、アンテナユニット50の部品を交換した後におけるCT19~CT22の電流値の一例を示す。図7(d)は、アンテナユニット50の部品を交換した後におけるCT19~CT22の評価値の監視期間にわたる平均値の一例を示す。
【0093】
ここでは、アンテナユニット50の部品を交換した際に、組付け不良等が発生していたものとする。この場合、図7(a)に示す電流値と図7(c)に示す電流値とを対比して示すように、電流値の状態から異常の判定を行うことは困難である。
【0094】
これに対し、図7(d)に示すように、評価値の監視期間にわたる平均値はCT20とCT21において閾値(絶対値10)よりも大きくなっている。このため、異常検知判定部113は、ステップS105において、そのエリアグループ(ここでは第6のエリアグループSA6)に異常があると判定することができる。
【0095】
図7(e)は、交換したアンテナユニット50の部品の取り付けを再調整した後におけるCT19~CT22の電流値の一例を示す。図7(d)は、交換したアンテナユニット50の部品の取り付けを再調整した後におけるCT19~CT22の評価値の監視期間にわたる平均値の一例を示す。
【0096】
ここでは、図7(f)に示すように、評価値の監視期間にわたる平均値は閾値(絶対値10)よりも小さくなっている。このため、異常検知判定部113は、ステップS104において、そのエリアグループは正常であると判定する。即ち、交換したアンテナユニット50の部品が正しく取り付けられていると判定することができる。なお、閾値は、アンテナユニット50の実際の具体的な構造などによって変わるものであり、一義的には定まらない。装置に応じて設定することが好ましい。
【0097】
誘導結合プラズマ処理装置100が大型化し部品点数が多くなることにより、装置の改造時やメンテンナンス時において、部品の組付け不良等が発生するおそれがある。これに対し、図6に示す誘導結合プラズマ処理装置100の異常検知処理によれば、部品の組付け後に電流値を検出(ステップS101)して、評価値を算出し(ステップS102)、評価値の監視期間にわたる平均値を算出して(ステップS103)、異常判定(ステップS104)をすることができる。これにより、部品の組付け不良等によって装置の稼働開始時から異常がある場合においても、異常を検知することができる。換言すれば、異常判定を行うための事前の基準値等の測定を不要とすることができる。
【0098】
また、異常検知処理によれば、プラズマ放電中の変化を伴わない異常であっても検知することができる。
【0099】
以上、誘導結合プラズマ処理装置100について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 プロセスチャンバ
2 誘電体壁(窓部材)
2A 上面
3 アンテナ室
4 処理室
14 整合器
15 高周波電源
23 載置台
50 アンテナユニット
100 誘導結合プラズマ処理装置(プラズマ処理装置)
110 制御装置
113 異常検知判定部
120 高周波アンテナ
120A 仮想矩形平面
121,121A,121B アンテナセグメント(アンテナコイル)
131 電流計
150 アンテナ回路
160 スパイラルアンテナ
A1~A15 エリア
SA1 第1のエリアグループ(内側エリアグループ)
SA2 第2のエリアグループ(内側エリアグループ)
SA3 第3のエリアグループ(内側エリアグループ)
SA4 第4のエリアグループ(最外周エリアグループ、角部エリアグループ)
SA5 第5のエリアグループ(最外周エリアグループ、短辺部エリアグループ)
SA6 第6のエリアグループ(最外周エリアグループ、長辺部エリアグループ)
G 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7