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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119589
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物及び電子部品装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20240827BHJP
   G03F 7/031 20060101ALI20240827BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/031
G03F7/004 512
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026596
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390005728
【氏名又は名称】AGCエスアイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 蔵
(72)【発明者】
【氏名】加茂 博道
(72)【発明者】
【氏名】小峰 卓也
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197CA05
2H197CE01
2H197HA03
2H225AC31
2H225AD06
2H225AE05P
2H225AM77P
2H225AM90P
2H225AM93P
2H225AM99P
2H225AN33P
2H225AN54P
2H225AN57P
2H225AN89P
2H225AP05P
2H225AP08P
2H225AP11P
2H225BA05P
2H225BA09P
2H225CA12
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】
【課題】誘電正接が低く、かつ、高温高湿下における密着性の低下が抑制される硬化物が得られる感光性樹脂組成物、及びこれを用いた電子部品装置の提供。
【解決手段】本開示の感光性樹脂組成物は、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、フェノール樹脂、及びマレイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むポリマーと、アリル基含有化合物、エステル結合含有化合物、メチロール基含有化合物、アルコキシメチル基含有化合物、及びエポキシ基含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む架橋剤と、光照射により酸、塩基、又はラジカルが発生する感光剤と、周波数1GHzでの誘電正接が0.0010以下であり、かつ、相対水蒸気圧0.8における水蒸気吸着量が0.01~10.00cm/gである、シリカ粒子と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、フェノール樹脂、及びマレイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むポリマーと、
アリル基含有化合物、エステル結合含有化合物、メチロール基含有化合物、アルコキシメチル基含有化合物、及びエポキシ基含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む架橋剤と、
光照射により酸、塩基、又はラジカルが生成する感光剤と、
周波数1GHzでの誘電正接が0.0010以下であり、かつ、相対水蒸気圧0.8における水蒸気吸着量が0.01~10.00cm/gである、シリカ粒子と、
を含む感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記感光性樹脂組成物の固形分に対する前記シリカ粒子の含有率が5~70体積%である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記シリカ粒子におけるメジアン径d50は、0.001~50μmである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記シリカ粒子における比表面積とメジアン径d50との積は、2.7~5.0μm・m/gである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記感光剤は、オキシムエステル系化合物及びベンゾナフトキノン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
再配線層形成材料用である、請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
素子と、請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む再配線層と、を備えた電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子用保護膜、半導体表層に形成される層間絶縁膜、再配線層の絶縁膜等の電子部品装置に含まれる樹脂層は、例えば、フォトリソグラフィー技術によって微細加工が可能な感光性樹脂組成物を用いて製造される。
感光性樹脂組成物としては、例えば特許文献1に、ポリマー、ラジカル重合性化合物、光重合開始剤、及び無機フィラーを含む感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/163610号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、半導体パッケージの中でも、半導体素子サイズよりも大きな絶縁層に配線を引き出すファンアウトのウエハレベルパッケージ(FOWLP:Fan-Out Wafer Level Package)の需要が高まっている。
FOWLPにおいて、半導体素子と外部基板間の微細配線を形成する再配線層には、昨今の高速及び高周波数への対応も相まって、伝送特性の向上が要求されている。再配線層の伝送特性を向上するためには、再配線層の絶縁膜における誘電正接が低いことが求められる。また、再配線層が高温高湿下(例えば、温度85℃、湿度85%の環境下)にさらされると、再配線層の絶縁膜が吸湿することで、再配線層の設置面に対する密着性が低下することがあり、この密着性の低下が伝送特性の低下の原因になることもある。
【0005】
本開示の一実施形態は、誘電正接が低く、かつ、高温高湿下における密着性の低下が抑制される硬化物が得られる感光性樹脂組成物、及びこれを用いた電子部品装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の態様を含む。
<1> ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、フェノール樹脂、及びマレイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むポリマーと、
アリル基含有化合物、エステル結合含有化合物、メチロール基含有化合物、アルコキシメチル基含有化合物、及びエポキシ基含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む架橋剤と、
光照射により酸、塩基、又はラジカルが生成する感光剤と、
周波数1GHzでの誘電正接が0.0010以下であり、かつ、相対水蒸気圧0.8における水蒸気吸着量が0.01~10.00cm/gである、シリカ粒子と、
を含む感光性樹脂組成物。
<2> 前記感光性樹脂組成物の固形分に対する前記シリカ粒子の含有率が5~70体積%である、<1>に記載の感光性樹脂組成物。
<3> 前記シリカ粒子におけるメジアン径d50は、0.001~50μmである、<1>又は<2>に記載の感光性樹脂組成物。
<4> 前記シリカ粒子における比表面積とメジアン径d50との積は、2.7~5.0μm・m/gである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<5> 前記感光剤は、オキシムエステル系化合物及びベンゾナフトキノン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<6> 再配線層形成材料用である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<7> 素子と、<1>~<6>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物の硬化物を含む再配線層と、を備えた電子部品装置。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、誘電正接が低く、かつ、高温高湿下における密着性の低下が抑制される硬化物が得られる感光性樹脂組成物、及びこれを用いた電子部品装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示の実施形態は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示の実施形態を制限するものではない。
【0009】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に記載しない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に記載しない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において、「シリカ粒子」とは、特に断りがない限り、複数のシリカ粒子の群を指す。
本開示において、「真球度」は、走査型電子顕微鏡(SEM)により写真撮影して得られる写真投影図における任意の100個の粒子について、それぞれの最大径(DL)と、これと直交する短径(DS)とを測定し、最大径(DL)に対する最小径(DS)の比(DS/DL)を算出した平均値で表す。
本開示において、「硬化物」とは、樹脂組成物の硬化物を示査走査熱分析測定した際に、熱硬化性樹脂の硬化に伴う発熱ピークが現れない状態にある硬化物を意味する。
本開示において、「重量平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求める。
【0010】
[感光性樹脂組成物]
本開示の一実施形態に係る感光性樹脂組成物(以下、「本組成物」とも記す。)は、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、フェノール樹脂、及びマレイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むポリマーと、アリル基含有化合物、エステル結合含有化合物、メチロール基含有化合物、アルコキシメチル基含有化合物、及びエポキシ基含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む架橋剤と、光照射により酸、塩基、又はラジカルが生成する感光剤と、周波数1GHzでの誘電正接が0.0010以下であり、かつ、相対水蒸気圧0.8における水蒸気吸着量が0.01~10.00cm/gである、シリカ粒子と、を含む。
以下、相対水蒸気圧0.8における水蒸気吸着量を単に「水蒸気吸着量」ともいい、周波数1GHzでの誘電正接が0.0010以下であり、かつ、水蒸気吸着量が0.01~10.00cm/gであるシリカ粒子を「特定シリカ粒子」ともいう。
【0011】
本組成物によれば、誘電正接が低く、かつ、高温高湿下にさらしても設置面に対する密着性が低下しにくい硬化物が得られる。この理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。
【0012】
感光性樹脂組成物の硬化物の誘電正接を下げる方法として、例えば、感光性樹脂組成物に無機粒子を含有させる方法が考えられる。
一方、無機粒子を添加した感光性樹脂組成物を用いて得られる硬化物は、高温高湿下にさらされると、設置面に対する密着性が低下することがある。この密着性の低下は、感光性樹脂組成物の硬化物に含まれる無機粒子に水蒸気が吸着することで、硬化物に水分が取り込まれることに起因すると考えられる。
【0013】
これに対して、本組成物は、無機粒子として、誘電正接及び水蒸気吸着量がそれぞれ前記範囲である特定シリカ粒子を含んでいる。そのため、硬化物の誘電正接を低く抑えつつ、硬化物の吸湿も抑制される。そして、硬化物の吸湿が抑制されることで、高温高湿下にさらされても設置面に対する密着性の低下が起こりにくくなる。
【0014】
ここで、上記水蒸気吸着量は、25℃の水蒸気吸着等温線において相対水蒸気圧0.8における水蒸気吸着量であり、以下の条件にて測定されるものである。なお、本開示において、相対水蒸気圧とは、水蒸気の飽和蒸気圧に対する、吸着平衡にある水蒸気の圧力の比(吸着平衡にある水蒸気の圧力/水蒸気の飽和蒸気圧)を意味する。
(測定条件)
・装置:BELSORP MINI(日本BEL社製)
・測定原理:定容法
・吸着温度:298K(24.85℃)
・吸着ガス:水蒸気
・前処理:150℃、常圧(1.013×10Pa)において1時間乾燥
・対象:シリカ粒子1.0g
【0015】
特定シリカ粒子の水蒸気吸着量は、0.01~10.00cm/gであり、硬化物の密着性低下抑制の観点から、8cm/g以下が好ましく、6cm/g以下がより好ましく、5cm/g以下がさらに好ましい。なお、特定シリカ粒子の水蒸気吸着量を0.01cm/g未満とすることは、実質的に困難である。
特定シリカ粒子の水蒸気吸着量を制御する方法としては、シリカ粒子の表面形状を制御する方法が挙げられ、具体的には、例えば、粒径に対する比表面積を小さくする方法が挙げられる。特定シリカ粒子の水蒸気吸着量は、シリカ粒子の表面形状を制御した上で、シリカ粒子の表面を表面処理剤により表面処理することで、制御してもよい。ただし、シリカ粒子の表面形状を制御し表面処理を行っていない状態で、目的とする水蒸気吸着量の値に制御されている場合は、表面処理を行わなくてもよい。
なお、粒径に対する比表面積が小さい特定シリカ粒子としては、例えば、比表面積Aとメジアン径d50との積A×d50の値が2.7~5.0μm・m/gである特定シリカ粒子が挙げられる。積A×d50の値の詳細は後述する。
【0016】
特定シリカ粒子の誘電正接は、周波数1GHzにおいて、前記の通り0.0010以下である。特定シリカ粒子の周波数1GHzでの誘電正接が上記範囲であると、優れた誘電損失抑制効果が得られるので、高周波特性が向上した硬化物が得られる。そして、硬化物の誘電正接が小さいほど、回路の伝送損失が抑えられる。特定シリカ粒子の周波数1GHzでの誘電正接は、0.0008以下が好ましい。なお、特定シリカ粒子の周波数1GHzでの誘電正接の下限値は特に限定されず、0.0001であってもよい。
【0017】
無機粒子の誘電正接及び後述する比誘電率は、専用の装置(例えば、キーコム株式会社製「ベクトルネットワークアナライザ E5063A」)を用い、摂動方式共振器法にて測定する。具体的には、試験周波数1GHz、試験温度約24℃、湿度約45%、測定回数3回で測定を実施する。なお、測定試料の作製は、得られた無機粒子を150℃で真空乾燥後、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製の筒に無機粒子の粉末を十分にタップしながら充填することで行い、容器ごと比誘電率を測定した後、容器中の粉体の充填率を用いて誘電正接に換算する。
なお、無機粒子の誘電正接及び比誘電率の測定を周波数10GHz以上で行うと、サンプルスペースが小さくなり測定精度が低下するため、本開示においては、周波数1GHzでの測定値を採用する。
【0018】
以下、本組成物を構成する各成分について説明する。
【0019】
<(a)ポリマー>
本組成物に含まれるポリマーは、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、フェノール樹脂、及びマレイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
以下、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾオキサゾール前駆体、フェノール樹脂、及びマレイミド樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を「特定樹脂」ともいう。
ポリマーは、特定樹脂を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
ポリマーは、特定樹脂以外の他の樹脂を含んでもよく、含まなくてもよい。ポリマーに占める特定樹脂の合計含有率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0020】
ポリマーは、特定樹脂の中でも、耐熱性の観点から、ポリイミド、ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール、及びポリベンゾオキサゾール前駆体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0021】
特定樹脂は、アルカリ可溶性基を有することが好ましい。ここで、アルカリ可溶性基は、導入することで樹脂にアルカリ可溶性を付与する基である。アルカリ可溶性とは、2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液への溶解度が0.1g/100mL以上になることを指す。特定樹脂は、アルカリ可溶性であることがより好ましい。
アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基などが挙げられる。特定樹脂は、フェノール性水酸基、チオール基、カルボキシル基、及びスルホン酸基からなる群より選択される少なくとも1種を有することが好ましく、フェノール性水酸基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種を有することがより好ましい。
【0022】
特定樹脂の重量平均分子量としては、特に制限はないが、例えば5000~300000が挙げられる。ポリマーの重量平均分子量は、解像度の観点から、250000以下が好ましく、200000以下がより好ましい。ポリマーの重量平均分子量は、樹脂強度の観点から、7500以上が好ましく、10000以上がより好ましい。
【0023】
(ポリイミド及びポリイミド前駆体)
ポリイミドは、構造単位中にイミド結合を有する樹脂であれば特に限定されず、脂肪族ポリイミドでもよく、芳香族ポリイミドでもよい。ポリイミドは、耐熱性の観点から、芳香族ポリイミドが好ましい。
ポリイミドとしては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの重合体であるポリイミド前駆体(つまり、ポリアミック酸)のイミド化物が挙げられる。
ポリイミドは、テトラカルボン酸残基、つまり、テトラカルボン酸二無水物から無水カルボキシ基を除去した基として、芳香族基及び環状脂肪族基からなる群より選択される少なくとも1種を含む炭素数5~40の連結基を有することが好ましい。ポリイミドは、テトラカルボン酸残基を1種のみ有してもよく、2種以上有してもよい。
ポリイミドは、ジアミン残基、つまり、ジアミンからアミノ基を除去した基として、芳香族基及び環状脂肪族基からなる群より選択される少なくとも1種を含む炭素数5~40の連結基を有することが好ましい。ポリイミドは、ジアミン残基を1種のみ有してもよく、2種以上有してもよい。
ポリイミドは、テトラカルボン酸残基及びジアミン残基の少なくとも一方として、前述のアルカリ可溶性基を有する連結基を有することが好ましい。
【0024】
ポリイミドの製造に用いるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族のテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン酸二無水物、9,9-ビス{4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられる。
脂肪族のテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0025】
ポリイミドの製造に用いるジアミンとしては、例えば、ヒドロキシル基含有ジアミン、カルボキシル基含有ジアミン、チオール基含有ジアミン、芳香族ジアミン、これらの芳香環の水素原子のうち少なくとも一部をアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物、脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
ヒドロキシル基含有ジアミンとしては、例えば、ビス-(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)メチレン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0026】
カルボキシル基含有ジアミンとしては、例えば、2,2-ビス[3-アミノ-4-カルボキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-アミノ-3-カルボキシフェニル]プロパン、2,2-ビス[3-アミノ-4-カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルメタン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-2,2’-ジカルボキシジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノ-2,2’,5,5’-テトラカルボキシジフェニルスルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン等が挙げられる。
チオール基含有ジアミンとしては、例えば、ジメルカプトフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0027】
芳香族ジアミンとしては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ビス(4-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス{4-(4-アミノフェノキシ)フェニル}エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’,3,3’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジ(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0028】
ポリイミドは、隣接する層との接着性を向上させるために、シロキサン構造を有する脂肪族の基を側鎖に有してもよい。
シロキサン構造を有する脂肪族の基を側鎖に有するポリイミドとしては、例えば、ジアミンとして、シロキサン構造を有する脂肪族の基を含むジアミンを用いて製造されたものが挙げられる。
シロキサン構造を有する脂肪族の基を含むジアミンとしては、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p-アミノ-フェニル)オクタメチルペンタシロキサン等が挙げられる。
ポリイミドの製造に用いるシロキサン構造を有する脂肪族の基を含むジアミンの割合としては、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計に対し、1~10モル%が挙げられる。
【0029】
ポリイミドの末端基は、末端封止剤に由来する基であってもよい。
末端封止剤としては、1級モノアミン、ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
末端封止剤として用いられる1級モノアミンとしては、5-アミノ-8-ヒドロキシキノリン、1-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-ヒドロキシ-4-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-7-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-6-アミノナフタレン、2-ヒドロキシ-5-アミノナフタレン、1-カルボキシ-7-アミノナフタレン、1-カルボキシ-6-アミノナフタレン、1-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-カルボキシ-7-アミノナフタレン、2-カルボキシ-6-アミノナフタレン、2-カルボキシ-5-アミノナフタレン、2-アミノ安息香酸、3-アミノ安息香酸、4-アミノ安息香酸、4-アミノサリチル酸、5-アミノサリチル酸、6-アミノサリチル酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4,6-ジヒドロキシピリミジン、2-アミノフェノール、3-アミノフェノール、4-アミノフェノール、2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノールなどが好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
末端封止剤として用いられるジカルボン酸無水物としては、4-カルボキシフタル酸無水物、3-ヒドロキシフタル酸無水物、シス-アコニット酸無水物などが好ましい。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。
【0030】
ポリイミドは、公知の方法を利用して合成される。具体的には、例えば、公知の方法によりポリイミド前駆体を得た後、公知のイミド化反応法を用いて完全イミド化させる方法が挙げられる。
ポリイミド前駆体の合成方法としては、例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とモノアミンを反応させる方法、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジカルボン酸無水物とジアミン化合物を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミンとモノアミンと縮合剤の存在下で反応させる方法等が挙げられる。
【0031】
ポリイミドのイミド化率は、特に限定されるものではないが、耐熱性の観点から90%以上が好ましい。
イミド化率とは、ポリイミド前駆体を経てポリイミドを合成する場合において、ポリイミド前駆体のうち何モル%がポリイミドに転換しているかを意味する。
イミド化率の測定は、以下のようにして行われる。具体的には、まず、ポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1780cm-1付近、1377cm-1付近)の存在を確認する。次に、そのポリマーについて、350℃で1時間熱処理した後、再度、赤外吸収スペクトルを測定し、熱処理前と熱処理後の1377cm-1付近のピーク強度を比較する。熱処理後のポリマーのイミド化率を100%として、熱処理前のポリマーのイミド化率を求める。
【0032】
(ポリベンゾオキサゾール及びポリベンゾオキサゾール前駆体)
ポリベンゾオキサゾールは、構造単位中にベンゾオキサゾール構造を有する樹脂であれば特に限定されるものではない。
ポリベンゾオキサゾールとしては、例えば、ジカルボン酸とジアミノジヒドロキシ化合物との縮合重合反応により得られるポリベンゾオキサゾール前駆体(つまり、ポリヒドロキシアミド)の熱閉環反応(オキサゾール化反応)生成物が挙げられる。
【0033】
ジカルボン酸としては、特に限定されず、例えば、テレフタル酸(ベンゼン-1,4-ジカルボン酸)、イソフタル酸(ベンゼン-1,3-ジカルボン酸)、フタル酸(ベンゼン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシビフェニル、2,2-(4,4’-ジカルボキシジフェニル)プロパン等が挙げられる。
ジアミノジヒドロキシ化合物としては、特に限定されず、例えば、1,3-ジアミノ-4,6-ジヒドロキシベンゼン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2-(3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシジフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0034】
(フェノール樹脂)
フェノール樹脂としては、フェノール化合物とアルデヒド化合物との反応生成物、フェノール化合物とジメタノール化合物との反応生成物等が挙げられる。
フェノール化合物とアルデヒド化合物との反応生成物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、フェノール-ビフェニルノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;レゾール型フェノール樹脂;などが挙げられる。
フェノール化合物とジメタノール化合物との反応生成物としては、フェノールアラルキル樹脂等が挙げられる。
【0035】
フェノール化合物としては、特に限定されず、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール類;2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等のキシレノール類;o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール類;イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p-tert-ブチルフェノール等のアルキルフェノール類;レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール等の多価フェノール類;4,4’-ビフェノール等のビフェニル系フェノール類;などが挙げられる。フェノール化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0036】
アルデヒド化合物としては、アルデヒド基を有する化合物であれば限定されず、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。アルデヒド化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
ジメタノール化合物としては、特に限定されず、1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、4,4’-ビフェニルジメタノール、3,4’-ビフェニルジメタノール、3,3’-ビフェニルジメタノール、2,6-ナフタレンジメタノール、2,6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール等のジメタノール;1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、4,4’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,4’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、3,3’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,6-ナフタレンジカルボン酸メチル等のビス(アルコキシメチル)化合物;1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,3-ビス(クロロメチル)ベンゼン,1,4-ビス(ブロモメチル)ベンゼン、1,3-ビス(ブロモメチル)ベンゼン、4,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニル、3,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニル、3,3’-ビス(クロロメチル)ビフェニル、4,4’-ビス(ブロモメチル)ビフェニル、3,4’-ビス(ブロモメチル)ビフェニル、3,3’-ビス(ブロモメチル)ビフェニル等のビス(ハルゲノアルキル)化合物;4,4’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシメチル)ビフェニル等のビフェニルアラルキル化合物;などが挙げられる。ジメタノール化合物は、1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0037】
(マレイミド樹脂)
マレイミド樹脂は、マレイミド構造を有するモノマーに由来する構造単位を含む樹脂であれば特に限定されるものではない。
マレイミド構造を有するモノマーとしては、マレイミド構造の窒素原子に水素原子又は炭素数1~30の有機基が結合した構造を有するモノマーが挙げられる。
炭素数1~30の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基等の炭化水素基;前記炭化水素基における1以上の水素原子が、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子によって置換された基;などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、アリル基、ペンテニル基、ビニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、エチニル基等が挙げられる。
アルキリデン基としては、例えば、メチリデン基、エチリデン基等が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
アルカリル基としては、例えば、トリル基、キシリル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0038】
ポリマーの含有量は、誘電率の観点から、後述する無機粒子を除いた組成物の固形分100質量%中、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。ポリマーの含有量は、解像度の観点から、後述する無機粒子を除いた組成物の固形分100質量%中、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
【0039】
<(b)架橋剤>
本組成物に含まれる架橋剤は、アリル基含有化合物、エステル結合含有化合物、メチロール基含有化合物、アルコキシメチル基含有化合物、及びエポキシ基含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
以下、アリル基含有化合物、エステル結合含有化合物、メチロール基含有化合物、アルコキシメチル基含有化合物、及びエポキシ基含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種を「特定架橋剤」ともいう。
架橋剤は、特定架橋剤を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
架橋剤は、特定架橋剤以外の他の架橋剤を含んでもよく、含まなくてもよい。架橋剤全体に占める特定架橋剤の合計含有率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0040】
特定架橋剤の平均官能基数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。架橋剤の平均官能基数が大きいほど、硬化物の耐熱性が向上する。架橋剤の平均官能基数は、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。架橋剤の平均官能基数が小さいほど、硬化物のクラックの発生が抑制される。
【0041】
架橋剤は、ポリマーの種類に応じて選択される。
例えばポリマーがポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群より選択される少なくとも1種を含む場合、架橋剤は、特定架橋剤の中でも、現像性の観点から、エステル結合含有化合物を含むことが好ましく、その中でもアクリレート及びメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
架橋剤がエステル結合含有化合物を含む場合、架橋剤は、エステル結合含有化合物のみを含んでもよく、エステル結合含有化合物と、メチロール基含有化合物、アルコキシメチル基含有化合物、及びエポキシ基含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含んでもよく、エステル結合含有化合物と、メチロール基含有化合物及びアルコキシメチル基含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含んでもよい。
また、架橋剤がアクリレート及びメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含む場合、架橋剤は、アクリレート及びメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種のみを含んでもよく、アクリレート及びメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種と、メチロール基含有化合物、アルコキシメチル基含有化合物、及びエポキシ基含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含んでもよく、アクリレート及びメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1種と、メチロール基含有化合物及びアルコキシメチル基含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種と、を含んでもよい。
【0042】
アクリレート及びメタクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、1,3-アダマンタンジアクリレート、1,3-アダマンタンジメタクリレート、1,3,5-アダマンタントリアクリレート、1,3,5-アダマンタントリメタクリレート、5-ヒドロキシ-1,3-アダマンタンジアクリレート、5-ヒドロキシ-1,3-アダマンタンジメタクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジアクリレート、ペンタシクロペンタデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3-ジアクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、1,3-ジメタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルアクリレート、N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルメタクリレート、N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジメタクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAメタクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、プロピレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジメタクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリメタクリレート等が挙げられる。これらは単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用される。
【0043】
アリル基含有化合物としては、アリルアルコール、アリルアニソール、安息香酸アリルエステル、桂皮酸アリルエステル、N-アリロキシフタルイミド、アリルフェノール、アリルフェニルスルホン、アリルウレア、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、イソシアヌル酸ジアリル、トリアリルアミン、イソシアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、トリアリルアミン、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸トリアリル、トリメリット酸トリアリル、ピロメリット酸トリアリル、オキシジフタル酸トリアリル、トリアリルホスフェート、トリアリルホスファイト、クエン酸トリアリル等が挙げられる。
【0044】
メチロール基含有化合物としては、ベンゼンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)クレゾール、ビス(ヒドロキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、ヒドロキシメチル安息香酸ヒドロキシメチルフェニル、ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、4,4'-ビフェニルジメタノール等が挙げられる。
【0045】
アルコキシメチル基含有化合物としては、ビス(メトキシメチル)ベンゼン、ビス(メトキシメチル)クレゾール、ビス(メトキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(メトキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(メトキシメチル)ベンゾフェノン、メトキシメチル安息香酸メトキシメチルフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(メトキシメチル)ビフェニル、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、4,4'-ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,6-ジメトキシメチル-4-t-ブチルフェノール、2,6-ジメトキシメチル-p-クレゾール、2,6-ジアセトキシメル-p-クレゾール、4,4’,4”-エチリデントリス[2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール]等が挙げられる。
【0046】
エポキシ基含有化合物は、エポキシ基構造を有するモノマーに由来する構造単位を含む化合物であれば特に限定されるものではない。その具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン、複素環式エポキシ樹脂、及びポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0047】
架橋剤の含有量は、ポリマー100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましく、50質量部以上が特に好ましい。架橋剤の含有量を上記下限値以上とすることで、現像時の露光部の膜減りを低減できる。架橋剤の含有量は、ポリマー100質量部に対して、300質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましく、80質量部以下が特に好ましい。架橋剤の含有量を上記上限値以下とすることで、硬化物の耐熱性を向上できる。
【0048】
<(c)感光剤>
本組成物に含まれる感光剤は、光照射により酸、塩基、又はラジカルが生成する感光剤であれば、特に限定されるものではない。
感光剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンジリデン系化合物、クマリン系化合物、アントラキノン系化合物、ベンゾイン系化合物、チオキサントン系化合物、メルカプト系化合物、グリシン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルフォスフィン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、ベンゾナフトキノン系化合物等が挙げられる。
感光剤は、上記化合物の中でも、光感度の観点から、オキシムエステル系化合物及びベンゾナフトキノン系化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、オキシムエステル系化合物を含むことがより好ましい。
【0049】
オキシムエステル系化合物としては、1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、ビス(α-イソニトロソプロピオフェノンオキシム)イソフタル、1,2-オクタンジオン-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-2-(o-ベンゾイルオキシム)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(o-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0050】
ベンゾナフトキノン系化合物としては、o-キノンジアジド化合物等が挙げられる。o-キノンジアジド化合物として、例えば、o-キノンジアジドスルホニルクロリドと、ヒドロキシ化合物及び/又はアミノ化合物等とを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られる化合物を用いることができる。
o-キノンジアジドスルホニルクロリドとしては、例えば、ベンゾキノン-1,2-ジアジド-4-スルホニルクロリド、ナフトキノン-1,2-ジアジド-5-スルホニルクロリド及びナフトキノン-1,2-ジアジド-6-スルホニルクロリドが挙げられる。
【0051】
ヒドロキシ化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,2’,3’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,3’,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)プロパン、4b,5,9b,10-テトラヒドロ-1,3,6,8-テトラヒドロキシ-5,10-ジメチルインデノ[2,1-a]インデン、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン及びトリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。
【0052】
アミノ化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジヒドロキシビフェニル、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン及びビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。
【0053】
ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4,-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3,4,4,-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等が挙げられる。
ベンジリデン系化合物としては、3,5-ビス(ジエチルアミノベンジリデン)-N-メチル-4-ピペリドン、3,5-ビス(ジエチルアミノベンジリデン)-N-エチル-4-ピペリドン等が挙げられる。
クマリン系化合物としては、7-ジエチルアミノ-3-ノニルクマリン、4,6-ジメチル-3-エチルアミノクマリン、3,3-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、7-ジエチルアミノ-3-(1-メチルメチルベンゾイミダゾリル)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-ジエチルアミノクマリン等が挙げられる。
アントラキノン系化合物としては、2-t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン等が挙げられる。
【0054】
ベンゾイン系化合物としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
チオキサントン系化合物としては、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
メルカプト系化合物としては、エチレングリコールジ(3-メルカプトプロピオネート)、2-メルカプトベンズチアゾール、2-メルカプトベンゾキサゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール等が挙げられる。
グリシン系化合物としては、N-フェニルグリシン、N-メチル-N-フェニルグリシン、N-エチル-N-(p-クロロフェニル)グリシン、N-(4-シアノフェニル)グリシン等が挙げられる。
【0055】
アシルフォスフィン系化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
α-アミノアルキルフェノン系化合物としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モリフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0056】
ビイミダゾール系化合物としては、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(アルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール等が挙げられる。
【0057】
感光剤の含有量は、感光性樹脂組成物の露光に対する感度を向上する観点から、ポリマー100質量部に対し、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、2質量部以上がさらに好ましい。感光剤の含有量は、深部まで光を透過させ良好なパターン形状を得る観点から、ポリマー100質量部に対し、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
【0058】
<(d)無機粒子>
本組成物は、無機粒子として、周波数1GHzでの誘電正接が0.0010以下であり、かつ、水蒸気吸着量が0.01~10.00cm/gであるシリカ粒子、つまり、特定シリカ粒子を含む。
本組成物は、無機粒子として、特定シリカ粒子を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。
本組成物は、無機粒子として、特定シリカ粒子以外の他のシリカ粒子を含んでもよく、含まなくてもよい。シリカ粒子全体に占める特定シリカ粒子の合計含有率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
本組成物は、無機粒子として、シリカ粒子以外の他の無機粒子を含んでもよく、含まなくてもよい。無機粒子全体に占める特定シリカ粒子の合計含有率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0059】
特定シリカ粒子は、中実状のシリカ粒子であることが好ましい。
特定シリカ粒子のメジアン径d50は、0.001~50μmが好ましい。特定シリカ粒子のメジアン径d50が上記上限値以下であることにより、露光による解像度が向上する。この観点から、特定シリカ粒子のメジアン径d50は、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましく、8μm以下が特に好ましく、5μm以下が極めて好ましい。
特定シリカ粒子のメジアン径d50が上記下限値以上であることにより、吸湿に起因する誘電正接の上昇が起こりにくくなる。この観点から、特定シリカ粒子のメジアン径d50は、0.01μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、0.5μm以上が特に好ましく、1μm以上が極めて好ましい。
特定シリカ粒子のメジアン径d50は、レーザー回折式の粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製「MT3300EXII」)により求められるシリカ粒子の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、シリカ粒子の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
なお、本開示において、シリカ粒子のメジアン径d50は、一次粒子及び二次粒子を含む状態で測定する。
【0060】
特定シリカ粒子の比表面積Aは、0.2~2.0m/gが好ましい。特定シリカ粒子の比表面積Aが上記上限値以下であることにより、静電正接を小さくでき、かつ、水蒸気吸着量も低く抑えられる。この観点から、比表面積Aは、1.5m/g以下がより好ましい。一方、特定シリカ粒子の比表面積Aが上記下限値以上であることにより、ポリマーとの接点が十分にあることでポリマーとのなじみがよくなる。この観点から、比表面積Aは、0.5m/g以上がより好ましく、0.8m/g以上がさらに好ましい。なお、比表面積Aが0.2m/g未満のものは、実質的に得ることが困難である。
比表面積Aは、比表面積・細孔分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル社製「BELSORP-miniII」、マイクロメリティック社製「トライスターII」等)を用いた窒素吸着法に基づくBET法により求める。
【0061】
特定シリカ粒子の比表面積A(m/g)とメジアン径d50(μm)との積A×d50は、2.7~5.0μm・m/gが好ましい。積A×d50の下限の理論値が2.7であり、これ未満の値は現実的に達成不可である。なお、上記積A×d50の理論値は、式:比表面積A=6/(シリカの真密度2.2(g/cm)×メジアン径d50(μm))より導出される。
積A×d50の値が大きいほど、特定シリカ粒子のメジアン径に対する比表面積Aが大きくなり、特定シリカ粒子の誘電正接及び水蒸気吸収量が大きくなる。特定シリカ粒子の誘電正接を低く抑える観点から、積A×d50の値は5.0μm・m/g以下が好ましく、4.5μm・m/g以下がより好ましく、4.0μm・m/g以下がさらに好ましく、小さいほど好ましい。
【0062】
特定シリカ粒子の比誘電率は、誘電率の低い硬化物を得る観点から、周波数1GHzにおいて、5.0以下が好ましく、4.5以下がより好ましく、4.1以下がさらに好ましい。特定シリカ粒子の周波数1GHzでの比誘電率の下限値は特に限定されない。特定シリカ粒子の比誘電率は、1.5以上であってもよい。
無機粒子の比誘電率の測定方法は、前述の通りである。
【0063】
特定シリカ粒子は、チタン(Ti)を30~1500ppm含むのが好ましく、100~1000ppm含むのがより好ましく、100~500ppm含むのがさらに好ましい。Tiは、シリカ粒子の製造において任意に含有させる成分である。シリカ粒子の製造時において、シリカ粒子の割れによる微粉の発生は、粒子の比表面積を増大させてしまう。シリカ粒子の製造時にTiを含ませることにより、焼成時に熱締まりしやすくさせ、粒子の割れを抑制できる。その結果、微粉の発生を抑制でき、シリカ粒子の母粒子表面に付着する付着粒子を少なくでき、よってシリカ粒子の比表面積が調整しやすくなる。Tiを30ppm以上含むことで焼成時に熱締りしやすいため割れによる微粉の発生を抑制でき、Ti含有量が1500ppm以下であると、前記効果が得られるとともにシラノール基量の増加を抑制し、誘電正接の上昇を抑制できる。
【0064】
特定シリカ粒子は、チタン(Ti)以外の不純物元素を含んでいてもよく、含まなくてもよい。不純物元素としては、Tiの他に、例えば、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe等が挙げられる。不純物元素のうちアルカリ金属及びアルカリ土類金属の含有量は、総和が2000ppm以下であるのが好ましく、1000ppm以下がより好ましく、200ppm以下がさらに好ましい。特定シリカ粒子は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属を含まなくてもよい。
【0065】
特定シリカ粒子に含まれる個々の特定シリカ粒子の形状は、特に限定されるものではなく、球状であってもよく、非球状であってもよい。個々の特定シリカ粒子の形状は、密着性向上及び誘電正接低減の観点から、球状が好ましい。この観点から、特定シリカ粒子の真球度は、0.75以上が好ましく、0.90以上がより好ましく、0.93以上がさらに好ましく、1.00が特に好ましい。また、特定シリカ粒子は、密着性向上及び誘電正接低減の観点から、無孔質粒子が好ましい。
【0066】
個々の特定シリカ粒子はシランカップリング剤によって処理されていてもよい。特定シリカ粒子の表面がシランカップリング剤によって処理されていることで、表面のシラノール基の残存量が少なくなり、表面が疎水化され、水分吸着を抑えて誘電損失を向上できるとともに、本組成物において樹脂との親和性が向上し、分散性、及び樹脂製膜後の強度を向上できる。
シランカップリング剤の種類としては、アミノシラン系カップリング剤、メタクリルシラン系シランカップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物等が挙げられる。シランカップリング剤は1種類を用いてもよいし2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤の付着量は、特定シリカ粒子100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.02~5質量部がより好ましく、0.10~2質量部がさらに好ましい。
特定シリカ粒子の表面がシランカップリング剤で処理されていることはIRによるシランカップリング剤の置換基によるピークの検出により確認できる。また、シランカップリング剤の付着量は、炭素量により測定できる。
【0067】
特定シリカ粒子は、湿式法により製造されたシリカ粒子であるのが好ましい。湿式法とは、シリカ源として液体のものを用い、これをゲル化させることでシリカ粒子の原料を得る工程を含む方式を指す。湿式法を用いることで、特定シリカ粒子の形状を調整しやすくなる、特に球状のシリカ粒子を調製しやすくなり、粉砕等により粒子の形状を整える必要が無く、結果、比表面積の小さい粒子が得られやすい。また、湿式法は、平均粒径に対して大幅に小さい粒子が生成しにくく、焼成後に比表面積が小さくなりやすい傾向がある。また、湿式法では、シリカ源の不純物を調整することで、チタンなどの不純物元素の量を調整でき、さらに前述の不純物元素を、粒子中に均一に分散させた状態とすることができる。
【0068】
湿式法としては、噴霧法、エマルション・ゲル化法等が挙げられる。エマルション・ゲル化法としては、例えば、シリカ前駆体を含む分散相と連続相とを乳化し、得られたエマルションをゲル化して球状のシリカ前駆体を得る。乳化方法としては、シリカ前駆体を含む分散相を連続相に微小孔部又は多孔質膜を介して供給しエマルションを作製する方法が好ましい。これによって、均一な液滴径のエマルションを作製して、結果として均一な粒子径の球状シリカが得られる。このような乳化方法としては、マイクロミキサー法や膜乳化法が挙げられる。例えば、マイクロミキサー法は国際公開第2013/062105号に開示されている。
【0069】
特定シリカ粒子は、例えば、前記シリカ前駆体を熱処理することにより得られる。熱処理では、球状シリカ前駆体を焼き締め、シェルの緻密化を行うとともに、表面のシラノール基量を減らし、誘電正接を低下させる作用がある。熱処理の温度は、700℃以上が好ましい。また、粒子の凝集抑制という観点からは、1600℃以下が好ましい。また、得られたシリカ粒子をシランカップリング剤で表面処理してもよい。
【0070】
本組成物の固形分に対する特定シリカ粒子の含有率は、5~70体積%が好ましい。ここで、「固形分」とは、組成物を構成する成分から揮発性の成分(例えば溶剤)を除去した残分を意味する。
本組成物の固形分に対する特定シリカ粒子の含有率は、硬化物の誘電正接低減の観点から、10体積%以上がより好ましく、15体積%以上がさらに好ましく、18体積%以上が特に好ましい。本組成物の固形分に対する特定シリカ粒子の含有率は、露光による解像度を向上する観点から、65体積%以下がより好ましく、60体積%以下がさらに好ましい。
【0071】
本組成物の固形分に対する無機粒子の合計含有率は、硬化物の誘電正接低減と露光による解像度向上とを両立する観点から、5~70体積%が好ましく、10~65体積%がより好ましく、15~60体積%がさらに好ましく、18~60体積%が特に好ましい。
【0072】
<その他の成分>
本組成物は、必要に応じて、重合禁止剤をさらに含んでもよい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、t-ブチルカテコール等のフェノール系重合禁止剤;フェノチアジン、2-メトキシフェノチアジン等のフェノチアジン系重合禁止剤;などが挙げられる。
また、その他の重合禁止剤として、1-ナフトール、1,4-ジヒドロキシナフタレン、4-メトキシ-1-ナフトール、1-メトキシナフタレン、1,4-ジメトキシナフタレン、2,6-ジメトキシナフタレン、2,7-ジメトキシナフタレン、1,4-ジエトキシナフタレン、2,6-ジエトキシナフタレン、2,7-ジエトキシナフタレン、2,6-ジブトキシナフタレン、2-エチル-1,4-ジエトキシナフタレン、1,4-ジブトキシナフタレン、1,4-ジフェネチルオキシナフタレン、1,4-ナフトキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、9-ブトキシアントラセン、9,10-ブトキシアントラセン、9-アントロン、9,10-アントラキノン、2-エチル-9,10-アントラキノン等も挙げられる。
これらの重合禁止剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本組成物が重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤の含有量は特に限定されず、例えば、ポリマーと感光剤との合計100質量部に対し、0.01~0.5質量部の範囲が挙げられる。
【0073】
本組成物は、必要に応じて、密着性付与剤をさらに含んでもよい。
密着性付与剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;チタンキレート剤;アルミキレート剤;芳香族アミン化合物とアルコキシ基含有ケイ素化合物を反応させて得られる化合物;などが挙げられる。
これらの密着性付与剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本組成物が密着性付与剤を含む場合、密着性付与剤の含有量は特に限定されず、例えば、ポリマー100質量部に対し、0.1~10質量部の範囲が挙げられ、0.3~10質量部であってもよい。
【0074】
本組成物は、必要に応じて、溶剤をさらに含んでもよい。
溶剤としては、特に限定されるものではなく、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアセテート類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン等のケトン類;ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンタノ-ル、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;などが挙げられる。また、溶剤として、これらの他に、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン等も挙げられる。溶剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0075】
本組成物は、必要に応じて、上記成分以外のその他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、増感剤、着色剤、分散剤等が挙げられる。
【0076】
<組成物の形態及び製造方法>
本組成物は、組成物に含まれる前述の成分のうち固形分が溶剤に分散した分散液の形態であってもよく、前述の固形分からなるシートの形態であってもよい。
分散液である本組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、超音波、羽根撹拌、ボールミル等により、前述の固形分と溶剤とを混合する方法が挙げられる。分散液である本組成物においては、固形分の少なくとも一部が溶剤に溶解したものであってもよい。分散液である本組成物は、上記混合の後、必要に応じてフィルターろ過を行ってもよい。濾過方法は特に限定されず、保留粒子径1~50μmのフィルターを用いて加圧濾過により濾過する方法が挙げられる。
分散液である本組成物の総質量に対する溶剤の含有率は、特に限定されず、例えば10~90質量%が挙げられる。
【0077】
シートである本組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、前述の分散液である本組成物を、支持体上に塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥させて溶剤等の揮発性の成分を除去することで、シートである本組成物が支持体上に形成される。
支持体としては、特に限定されず、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルム等の公知のフィルムが挙げられる。支持体の表面には、形成されたシートである本組成物の剥離性を向上させる目的で、シリコーン、シランカップリング剤、アルミキレート剤、ポリ尿素等の表面処理剤によりあらかじめ表面処理してもよい。支持体の厚さは特に限定されず、例えば10~100μmが挙げられる。
【0078】
分散液である本組成物を支持体上に塗布する方法としては、スピンナーを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマロールコーター、グラビアコーター、スクリーンコーター、スリットダイコーター等の方法が挙げられる。
塗布膜の乾燥は、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線等が用いられる。乾燥温度及び乾燥時間は特に限定されず、例えば、乾燥温度40~120℃、かつ、乾燥時間1~20分の範囲が挙げられる。
シートである本組成物の厚さは、特に限定されず、例えば3~100μmが挙げられ、10~50μmであってもよく、20~40μmであってもよい。
【0079】
<組成物の用途>
本組成物は、特に、半導体パッケージの中でもFOWLPにおいて、半導体素子と外部基板間の微細配線を形成する再配線層の絶縁膜を形成するための再配線層形成材料用として、好適に用いられる。
本組成物は、FOWLPの再配線層以外にも、半導体素子用保護膜、半導体表層に形成される層間絶縁膜等、フォトリソグラフィー技術による微細加工が必要な樹脂層を形成するための材料用として、好適に用いられる。
【0080】
[電子部品装置]
本開示の一実施形態に係る電子部品装置(以下、「本装置」とも記す。)は、素子と、前述の本組成物の硬化物を含む再配線層と、を備える。以下、本組成物の硬化物を「本硬化物」ともいう。
本装置は、素子及び再配線層のほかに、素子を封止する封止材層等他の層を有してもよい。再配線層は、例えば、素子の端子に電気的に接続される複数の配線と、複数の配線の間を埋める絶縁膜である本硬化物と、を有する。
本装置は、素子と、封止材層と、配線及び本硬化物を含む再配線層と、を含むものであってもよい。
【0081】
本硬化物の誘電正接は、伝送損失低減の観点から、周波数10GHzにおいて、0.008以下が好ましく、0.007以下がより好ましく、0.006以下がさらに好ましい。
硬化物の比誘電率及び誘電正接は、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により、温度25℃、周波数10GHzで、測定された値である。
【0082】
本装置の製造方法は、特に限定されず、例えば、素子を準備する準備工程と、素子の端子に電気的に接続する再配線層を形成する再配線層形成工程と、を有する方法が挙げられる。
また、上記再配線形成工程は、例えば、前述の分散液である本組成物を用いて形成されたシート又は前述のシートである本組成物に対して、露光及び現像によりパターンを形成する工程と、パターンが形成されたシートを加熱して硬化物とする工程と、素子の端子に電気的に接続する配線をシート上のパターンに設ける工程と、を有する。
パターンが形成されたシートを加熱して硬化物とする工程における加熱温度は、特に限定されず、例えば150~400℃が挙げられ、170~300℃であってもよく、180~250℃であってもよい。
【実施例0083】
次に本開示の実施形態を実施例により具体的に説明するが、本開示の実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。例1~4は実施例であり、例5~7は比較例である。
【0084】
[(d)無機粒子の準備及び測定]
<無機粒子の準備>
(特定シリカ粒子1の調製)
球状シリカ前駆体として、湿式法で製造されたシリカ粉末1(AGCエスアイテック社製:H-31、d50=3.5μm)を用いた。シリカ粉末1のチタン(Ti)含有量を測定したところ、300ppmであった。シリカ粉末1を15g、アルミナ坩堝に充填し、電気炉内温度1300℃にて1時間加熱処理した。加熱処理後、室温まで冷却し、めのう乳鉢で擂潰して、特定シリカ粒子1を得た。
【0085】
(特定シリカ粒子2の調製)
球状シリカ前駆体として、湿式法で製造されたシリカ粉末2(AGCエスアイテック社製:H-121、d50=13μm)を用いた以外は、特定シリカ粒子1と同様の処理を行い、特定シリカ粒子2を得た。なお、球状シリカ前駆体として使用したシリカ粉末2のTi含有量を測定したところ、300ppmであった。
【0086】
(シリカ粒子3)
シリカ粒子(品名:TS-6021、マイクロン社製)を準備した。
(無機粒子4)
酸化ケイ素(SiO)を45質量%、酸化アルミニウム(Al)を25質量%、酸化ホウ素(B)を4質量%、酸化イットリウム(Y)を26質量%含有するガラスフィラーを準備した。
【0087】
<無機粒子の測定>
前述の方法により、無機粒子の周波数1GHzでの比誘電率(表中の「比誘電率」)、周波数1GHzでの誘電正接(表中の「誘電正接」)、水蒸気吸着量、比表面積A、メジアン径d50、及び比表面積Aとメジアン径d50との積A×d50(表中の「積A×d50(μm・m/g)」)を前述の方法により測定した結果を表1に示す。なお、比表面積Aの測定には、比表面積・細孔分布測定装置として、マイクロメリティック社製「トライスターII」を用いた。
【0088】
【表1】
【0089】
[その他の材料の準備]
<(a)ポリマー>
(ポリイミド1)
乾燥窒素気流下、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(32.78g(0.0895モル))と、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(1.24g(0.005モル))とを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、100g)に溶解させた。この溶液に、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(31.02g(0.10モル))をNMP(30g)とともに加えて、20℃で1時間撹拌し、次いで50℃で4時間撹拌した。この攪拌後の溶液に、3-アミノフェノール(1.09g(0.01モル))を加え、50℃で2時間撹拌した後、180℃で5時間撹拌して樹脂溶液を得た。次に、この樹脂溶液を水(3L)に投入して、白色沈殿を生成させた。この白色沈殿を、濾過で集めて水で3回洗浄した後、80℃の真空乾燥機で5時間乾燥することで、アルカリ可溶性の芳香族ポリイミドであるポリイミド1を得た。得られたポリイミド1のイミド化率は94%、23℃のテトラメチルアンモニウム水溶液(2.38質量%)に対するポリイミド1の溶解度は0.5g/100mL以上であった。
【0090】
<(b)架橋剤>
(架橋剤1)
ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート(特定架橋剤、品名:DCP-A、共栄社化学製、官能基数:2)を準備した。
(架橋剤2)
4,4’,4”-エチリデントリス[2,6-ビス(メトキシメチル)フェノール](特定架橋剤、品名:HMOM-TPHAP、本州化学工業株式会社製、官能基数:6)を準備した。
<(c)感光剤>
オキシムエステル系化合物(OXE-O4、BASF製)を準備した。
【0091】
<重合禁止剤>
フェノチアジン(東京化成工業製)を準備した。
<密着性付与剤>
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、品名:KBM-403、信越化学工業製)を準備した。
【0092】
[感光性樹脂組成物の製造及び評価]
<分散液である感光性樹脂組成物の製造>
(例1)
ポリイミド1を35質量部と、架橋剤1を20質量部と、架橋剤2のγ-ブチロラクトン溶液を30質量部(固形分6質量部)と、感光剤を1.5質量部と、特定シリカ粒子1を4質量部と、重合禁止剤を0.01質量部と、密着性付与剤を2質量部と、溶剤として乳酸エチルを68質量部と、を混合した。その後、120分間室温(25℃)にて攪拌し、得られた分散液を保留粒子径10μmのフィルターにより加圧濾過することで、分散液である感光性樹脂組成物を得た。
得られた感光性樹脂組成物の固形分に対する特定シリカ粒子1の含有率(質量基準及び体積基準)を表2に示す。
【0093】
(例2~7)
ポリイミド1、架橋剤1、架橋剤2の固形分、感光剤、無機粒子、重合禁止剤、及び密着性付与剤の添加量を表2に示すようにした以外は、例1と同様にして分散液である感光性樹脂組成物を得た。
得られた感光性樹脂組成物の固形分に対する無機粒子の含有率(質量基準及び体積基準)を併せて表2に示す。
【0094】
<シートである感光性樹脂組成物の製造>
得られた分散液である感光性樹脂組成物を、コンマロールコーターにより支持フィルム(厚さ50μmのPETフィルム)上に塗布し、65℃で5分間乾燥を行った。それにより、厚さが25μmのシートである感光性樹脂組成物(以下「感光性樹脂シート」ともいう)を得た。
【0095】
<硬化物の誘電正接の測定>
感光性樹脂シートに、超高圧水銀灯を光源とした露光機にて露光量400mJ/cm(i線カットフィルター使用、h線換算)で露光を行った。露光後、イナートオーブンにて200℃、60分の熱処理を行ったあと、支持フィルムを剥離し、硬化フィルム(感光性樹脂組成物の硬化物)を得た。
得られた硬化フィルムについて、スプリットポスト誘電体共振器(SPDR)により、温度25℃、周波数10GHzで、誘電正接を測定した。結果を表2(表中の「誘電正接」)に示す。
【0096】
<解像度の評価>
支持フィルム上の感光性樹脂シートがシリコンウエハに向くように配置し、80℃、0.3MPaの条件で4インチのシリコンウエハ上にロールラミネートした。支持フィルム及び感光性樹脂シートに、ビアの径が5μmから5μm刻みで100μmまでのビアパターンを20個配置したフォトマスクを載せ、超高圧水銀灯を光源とした露光機にて露光量400mJ/cm(i線カットフィルター使用、h線換算)で露光を行った。
露光後、支持フィルムを剥離し、100℃のホットプレートで5分間加熱した。次に、水酸化テトラメチルアンモニウムの2.38質量%水溶液を用いて、480秒間のシャワー現像により未露光部を除去し、水にてリンス処理を60秒間行い、その後、スピン乾燥を行った。さらに、イナートオーブンにて200℃、60分の熱処理を行い、シリコンウエハ上にビアパターンが加工された硬化物(感光性樹脂組成物の硬化物)をシリコンウエハ上に形成した。
【0097】
ビアパターンを顕微鏡で観察し、ビアが開口した最小寸法を解像度とした。ここでいうビアの開口は、フォトマスクの設計値に対して50%以上が開口することを以てビア開口とした。
径30μm以下のビアが開口したものをA、径35~55μmのビアが開口したものをB、ビアが開口した最小寸法が60μm以上であるものをCとした。結果を表2(表中の「解像度」)に示す。
【0098】
<硬化物の高温高湿下における密着性評価>
得られた分散液である感光性樹脂組成物を、コンマロールコーターにより、シリコンウエハ上に塗布し、65℃で5分間乾燥を行った。それにより、厚さが25μmのシートである感光性樹脂組成物(以下「感光性樹脂シート」ともいう)を得た。
得られた感光性樹脂シートに、超高圧水銀灯を光源とした露光機にて露光量400mJ/cm(i線カットフィルター使用、h線換算)で露光を行った。露光後、イナートオーブンにて200℃、60分の熱処理を行って、シリコンウエハ上に硬化フィルム(感光性樹脂組成物の硬化物)が形成された評価試料を得た。
評価試料を温度85℃湿度85%の環境下で168時間静置した。その後、クロスカット試験を実施し定性評価を行った。クロスカット試験は、具体的に、JIS K5600-5-6に準拠し、カット間隔2mmの25マス直角格子パターンを塗膜に切り込みを入れ、塗膜の切り込みを入れた箇所にテープを貼り、付着して5分以内に60°に近い角度で0.5~1.0秒で引き離し、格子パターンの剥離状態を観察した。欠けが無いものをA、一部でわずかに欠けがあるものをB、欠けが多いものをCとした。結果を表2(表中の「高湿密着性」)に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
表2に示されるように、例1~例4の感光性樹脂組成物は、例5~例7の感光性樹脂組成物に比べて、誘電正接が低く、かつ、高温高湿下における密着性の低下が抑制される硬化物が得られている。