(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119655
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】レーザー加工装置およびレーザー加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/066 20140101AFI20240827BHJP
B23K 26/16 20060101ALI20240827BHJP
B23K 26/382 20140101ALI20240827BHJP
B23K 26/53 20140101ALN20240827BHJP
【FI】
B23K26/066
B23K26/16
B23K26/382
B23K26/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026710
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 利夫
(72)【発明者】
【氏名】大町 修
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD12
4E168CB07
4E168DA23
4E168EA19
4E168FC01
4E168HA01
4E168JA02
4E168JA03
4E168JA04
4E168JA12
4E168JA13
(57)【要約】
【課題】レーザー加工装置においてスペイシャルフィルタのピンホールを製造する際に発生する加工屑が周辺の光学素子へ付着することを抑制すること。
【解決手段】レーザー加工装置は、レーザー発振器22と、集光器23と、これらの間に配設されたレンズ31と、レンズ31の集光点位置26に配設されたフィルタ材料33と、光路外の非作用位置と光路内でフィルタ材料33を覆う作用位置42との間で進退可能であって、作用位置42においてレーザービーム21を透過させるウインドウを有する箱状部材40と、を備え、箱状部材40を作用位置42に位置付けて内部を吸引した状態で、レーザービーム21をフィルタ材料33に照射させてピンホールを形成することでレンズ31とフィルタ材料33とを含むスペイシャルフィルタ30を製造させ、箱状部材40を非作用位置に位置付けた状態で、レーザービーム21を被加工物100に照射させて加工を施させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物にレーザービームを照射することで加工を施すレーザー加工装置であって、
被加工物を保持する保持テーブルと、
レーザービームを照射するレーザービーム照射ユニットと、
該レーザービームの集光点と該保持テーブルに保持された被加工物とを相対的に移動させる移動ユニットと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、
を備え、
該レーザービーム照射ユニットは、
レーザー発振器と、
該レーザー発振器から出射されたレーザービームを集光して被加工物に照射する集光器と、
該レーザー発振器と該集光器との間に配設されたレンズと、
該レンズの集光点位置に配設されたフィルタ材料と、
吸引源に連通する吸引口を有する箱状部材と、
を有し、
該箱状部材は、
該レーザービームの光路外の位置である非作用位置と、該レーザービームの光路内で該フィルタ材料を覆う位置である作用位置と、の間で進退可能であって、該作用位置において該レーザービームを透過させるウインドウを更に有し、
該制御ユニットは、
該箱状部材を該作用位置に位置付けるとともに該箱状部材の内部を吸引した状態で、該ウインドウを介して該レーザービームを該フィルタ材料に照射させて該フィルタ材料にピンホールを形成することで該レンズと該フィルタ材料とを含むスペイシャルフィルタを製造させ、
該箱状部材を該非作用位置に位置付けた状態で、該レーザービームを該保持テーブルに保持された被加工物に照射させて該被加工物に加工を施させる
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
被加工物にレーザービームを照射することで加工を施すレーザー加工装置であって、
被加工物を保持する保持テーブルと、
レーザービームを照射するレーザービーム照射ユニットと、
該レーザービームの集光点と該保持テーブルに保持された被加工物とを相対的に移動させる移動ユニットと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、
を備え、
該レーザービーム照射ユニットは、
レーザー発振器と、
該レーザー発振器から出射されたレーザービームを集光して被加工物に照射する集光器と、
該レーザー発振器と該集光器との間に配設されたレンズと、
該レンズの集光点位置に配設されたフィルタ材料と、
吸引源に連通する吸引口を有し、該レーザービームの光路内で該フィルタ材料を覆う位置に配設される箱状部材と、
を有し、
該箱状部材は、
該レーザービームを通過させる開口と、
該開口を開放する位置である非作用位置と、該開口を閉塞する位置である作用位置と、の間で進退可能であって、該作用位置において該レーザービームを透過させるウインドウと、
を更に有し、
該制御ユニットは、
該ウインドウを該作用位置に位置付けるとともに該箱状部材の内部を吸引した状態で、該ウインドウを介して該レーザービームを該フィルタ材料に照射させて該フィルタ材料にピンホールを形成することで該レンズと該フィルタ材料とを含むスペイシャルフィルタを製造させ、
該ウインドウを該非作用位置に位置付けた状態で、該レーザービームを該保持テーブルに保持された被加工物に照射させて該被加工物に加工を施させる
ことを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項3】
該フィルタ材料は、該レーザービームの光軸方向と直交する方向に移動可能である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のレーザー加工装置。
【請求項4】
レーザー発振器から出射したレーザービームを集光器により集光して被加工物に照射することで加工を施すレーザー加工方法であって、
該レーザー発振器と該集光器との間にレンズを配設し、該レンズの集光点位置にフィルタ材料を配設した状態で、該レーザー発振器からレーザービームを出射して該フィルタ材料にピンホールを形成することにより、該レンズと該フィルタ材料とを含むスペイシャルフィルタを製造するスペイシャルフィルタ製造ステップと、
該レーザービームを該スペイシャルフィルタの該ピンホールを介して被加工物に照射することで該被加工物に加工を施すレーザー加工ステップと、
を備え、
該スペイシャルフィルタ製造ステップでは、
該レーザービームを透過するウインドウが形成された箱状部材を、該フィルタ材料を覆う位置に配設し、該箱状部材の内部を吸引しつつ該フィルタ材料に該ウインドウを介してレーザービームを照射する
ことを特徴とする、レーザー加工方法。
【請求項5】
該スペイシャルフィルタ製造ステップでは、
該フィルタ材料を該レーザービームの光軸方向と直交する方向に移動させることで、該フィルタ材料に複数のピンホールを形成する
ことを特徴とする、請求項4に記載のレーザー加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置およびレーザー加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割して個片化するために、被加工物に設定された分割予定ラインに沿ってレーザービームを照射して加工を施すレーザー加工装置が知られている。レーザー加工装置では、レーザー発振器から出射されたレーザービームが、光軸上に配置された複数の光学素子によって加工点まで導かれる。
【0003】
高品質なレーザービームで加工を施すためのレーザー加工装置では、レーザー発振器と集光器との間の光軸上に、レーザービームに含まれる光学的ノイズを除去するスペイシャルフィルタ(空間フィルタ)が配置される。スペイシャルフィルタは、レンズとレンズの集光点位置に配置されるピンホールとで構成され、パーティクルの付着やレンズの傷等によって発生する干渉縞を取り除き、ノイズのない高品質なレーザービームを成形する。
【0004】
ところで、スペイシャルフィルタは、ピンホールをレンズの集光点位置へ正確に位置決めするのが難しく、調整に時間がかかるという問題がある。これに対し、例えば、特許文献1には、同じレーザー加工装置を用いてピンホールの加工と被加工物の加工とを行う方法が開示されている。この方法によれば、スペイシャルフィルタの製作とレンズの集光点位置へのピンホールの位置決めとを高精度に行うことができるので、位置決め調整が非常に容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明では、ピンホールの加工を行う際に発生した加工屑がレンズ等の周辺の光学素子に付着してしまい、結果的に加工品質を低下させてしまう可能性があった。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、スペイシャルフィルタのピンホールを製造する際に発生する加工屑が周辺の光学素子へ付着することを抑制することができるレーザー加工装置およびレーザー加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー加工装置は、被加工物にレーザービームを照射することで加工を施すレーザー加工装置であって、被加工物を保持する保持テーブルと、レーザービームを照射するレーザービーム照射ユニットと、該レーザービームの集光点と該保持テーブルに保持された被加工物とを相対的に移動させる移動ユニットと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、該レーザービーム照射ユニットは、レーザー発振器と、該レーザー発振器から出射されたレーザービームを集光して被加工物に照射する集光器と、該レーザー発振器と該集光器との間に配設されたレンズと、該レンズの集光点位置に配設されたフィルタ材料と、吸引源に連通する吸引口を有する箱状部材と、を有し、該箱状部材は、該レーザービームの光路外の位置である非作用位置と、該レーザービームの光路内で該フィルタ材料を覆う位置である作用位置と、の間で進退可能であって、該作用位置において該レーザービームを透過させるウインドウを更に有し、該制御ユニットは、該箱状部材を該作用位置に位置付けるとともに該箱状部材の内部を吸引した状態で、該ウインドウを介して該レーザービームを該フィルタ材料に照射させて該フィルタ材料にピンホールを形成することで該レンズと該フィルタ材料とを含むスペイシャルフィルタを製造させ、該箱状部材を該非作用位置に位置付けた状態で、該レーザービームを該保持テーブルに保持された被加工物に照射させて該被加工物に加工を施させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のレーザー加工装置は、被加工物にレーザービームを照射することで加工を施すレーザー加工装置であって、被加工物を保持する保持テーブルと、レーザービームを照射するレーザービーム照射ユニットと、該レーザービームの集光点と該保持テーブルに保持された被加工物とを相対的に移動させる移動ユニットと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、該レーザービーム照射ユニットは、レーザー発振器と、該レーザー発振器から出射されたレーザービームを集光して被加工物に照射する集光器と、該レーザー発振器と該集光器との間に配設されたレンズと、該レンズの集光点位置に配設されたフィルタ材料と、吸引源に連通する吸引口を有し、該レーザービームの光路内で該フィルタ材料を覆う位置に配設される箱状部材と、を有し、該箱状部材は、該レーザービームを通過させる開口と、該開口を開放する位置である非作用位置と、該開口を閉塞する位置である作用位置と、の間で進退可能であって、該作用位置において該レーザービームを透過させるウインドウと、を更に有し、該制御ユニットは、該ウインドウを該作用位置に位置付けるとともに該箱状部材の内部を吸引した状態で、該ウインドウを介して該レーザービームを該フィルタ材料に照射させて該フィルタ材料にピンホールを形成することで該レンズと該フィルタ材料とを含むスペイシャルフィルタを製造させ、該ウインドウを該非作用位置に位置付けた状態で、該レーザービームを該保持テーブルに保持された被加工物に照射させて該被加工物に加工を施させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のレーザー加工装置において、該フィルタ材料は、該レーザービームの光軸方向と直交する方向に移動可能であってもよい。
【0011】
また、本発明のレーザー加工方法は、レーザー発振器から出射したレーザービームを集光器により集光して被加工物に照射することで加工を施すレーザー加工方法であって、該レーザー発振器と該集光器との間にレンズを配設し、該レンズの集光点位置にフィルタ材料を配設した状態で、該レーザー発振器からレーザービームを出射して該フィルタ材料にピンホールを形成することにより、該レンズと該フィルタ材料とを含むスペイシャルフィルタを製造するスペイシャルフィルタ製造ステップと、該レーザービームを該スペイシャルフィルタの該ピンホールを介して被加工物に照射することで該被加工物に加工を施すレーザー加工ステップと、を備え、該スペイシャルフィルタ製造ステップでは、該レーザービームを透過するウインドウが形成された箱状部材を、該フィルタ材料を覆う位置に配設し、該箱状部材の内部を吸引しつつ該フィルタ材料に該ウインドウを介してレーザービームを照射することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のレーザー加工方法において、該スペイシャルフィルタ製造ステップでは、該フィルタ材料を該レーザービームの光軸方向と直交する方向に移動させることで、該フィルタ材料に複数のピンホールを形成してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、スペイシャルフィルタのピンホールを製造する際に発生する加工屑が周辺の光学素子へ付着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すレーザービーム照射ユニットの概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すレーザービーム照射ユニットの概略構成を示す模式図である。
【
図4】
図4は、
図2および
図3におけるレンズの集光点位置を示す拡大模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るレーザー加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図5に示すスペイシャルフィルタ製造ステップの一状態を示す模式図である。
【
図7】
図7は、
図6における要部を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図5に示すレーザー加工ステップにおけるフィルタ材料の一状態を模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8の後のスペイシャルフィルタ製造ステップにおけるフィルタ材料の一状態を模式的に示す斜視図である。
【
図10】
図10は、
図9の後のレーザー加工ステップにおけるフィルタ材料の一状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0016】
〔実施形態〕
<レーザー加工装置1の構成>
まず、本発明の実施形態に係るレーザー加工装置1の構成について図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係るレーザー加工装置1の構成例を示す斜視図である。
図2および
図3は、
図1に示すレーザービーム照射ユニット20の概略構成を示す模式図である。
図4は、
図2および
図3におけるレンズ31の集光点位置26を示す拡大模式図である。
【0017】
レーザー加工装置1は、保持テーブル10と、レーザービーム照射ユニット20と、移動ユニット60と、撮像ユニット70と、入力ユニット80と、制御ユニット90と、を備える。以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。実施形態のレーザー加工装置1は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向であり、集光点位置調整方向がZ軸方向である。
【0018】
実施形態に係るレーザー加工装置1は、加工対象である被加工物100に対して、レーザービーム21を照射することにより、被加工物100を加工する装置である。レーザー加工装置1による被加工物100の加工は、例えば、ステルスダイシングによって被加工物100の内部に改質層を形成する改質層形成加工、被加工物100の表面102に溝を形成する溝加工、または分割予定ライン103に沿って被加工物100を切断する切断加工等である。
【0019】
被加工物100は、例えば、シリコン(Si)、サファイア(Al2O3)、ガリウムヒ素(GaAs)、炭化ケイ素(SiC)、またはリチウムタンタレート(LiTa3)等を基板101とする円板状の半導体デバイスウエーハ、光デバイスウエーハ等のウエーハである。被加工物100は、基板101の表面102に格子状に設定された分割予定ライン103と、分割予定ライン103によって区画された領域に形成されたデバイス104と、を有している。デバイス104は、例えば、IC(Integrated Circuit)、またはLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサである。
【0020】
被加工物100は、例えば、環状のフレーム110が貼着されかつ被加工物100の外径よりも大径なテープ111が被加工物100の裏面105に貼着されて、フレーム110の開口内に支持された状態で搬送および加工される。被加工物100は、分割予定ライン103に沿って個々のデバイス104に分割されて、チップに個片化される。なお、被加工物100は、実施形態では円板状であるが、本発明では円板状でなくともよい。また、チップは、実施形態では正方形状であるが、本発明では長方形状であってもよい。
【0021】
保持テーブル10は、被加工物100を保持面11で保持する。保持面11は、ポーラスセラミック等から形成された円板形状である。保持面11は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面11は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。保持テーブル10は、保持面11上に載置された被加工物100を吸引保持する。保持テーブル10の周囲には、被加工物100を支持する環状のフレーム110を挟持するクランプ部12が複数配置されている。
【0022】
保持テーブル10は、回転ユニット13によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。回転ユニット13は、X軸方向移動プレート14に支持される。回転ユニット13および保持テーブル10は、X軸方向移動プレート14を介して、後述の加工送りユニット61によりX軸方向に移動される。回転ユニット13および保持テーブル10は、X軸方向移動プレート14、加工送りユニット61およびY軸方向移動プレート15を介して、後述の割り出し送りユニット62によりY軸方向に移動される。
【0023】
レーザービーム照射ユニット20は、保持テーブル10の保持面11に保持された被加工物100に対してレーザービーム21を照射するユニットである。レーザービーム照射ユニット20のうち、少なくとも集光器23(
図2および
図3参照)は、レーザー加工装置1の装置本体2から立設した柱3に設置される後述の集光点位置調整ユニット63に支持される。
図2および
図3に示すように、レーザービーム照射ユニット20は、レーザー発振器22と、集光器23と、ミラー24と、スペイシャルフィルタ30と、箱状部材40と、を含む。
【0024】
レーザー発振器22は、被加工物100および後述のフィルタ材料33を加工するための所定の波長を有するレーザービーム21を出射する。レーザービーム照射ユニット20が照射するレーザービーム21は、被加工物100に対して透過性または吸収性を有する波長のレーザービームであり、フィルタ材料33に対して吸収性を有する波長のレーザービームである。レーザービーム21は、例えば、CO2レーザーである。
【0025】
集光器23は、レーザー発振器22から出射されたレーザービーム21を、保持テーブル10の保持面11に保持された被加工物100に集光して、被加工物100に照射させる集光レンズである。集光器23は、スペイシャルフィルタ30によって光学的ノイズを除去されたレーザービーム21を、被加工物100に集光する。集光器23によって集光されたレーザービーム21の集光点25は、被加工物100の所定の加工位置に位置付けられる。
【0026】
ミラー24は、レーザービーム21を反射して、保持テーブル10の保持面11に保持した被加工物100に向けて反射する。実施形態において、ミラー24は、スペイシャルフィルタ30を通過したレーザービーム21を集光器23へ向けて反射する。なお、レーザービーム照射ユニット20の光学系の各配置は、
図2および
図3に示す例に限定されず、例えば、複数のミラー24を配置してレーザービーム21を導いてもよい。
【0027】
スペイシャルフィルタ30は、レーザー発振器22と集光器23との間に配設され、レーザー発振器22から出射されたレーザービーム21の光学的ノイズを除去する。スペイシャルフィルタ30は、レンズ31、32と、フィルタ材料33と、を含む。なお、実施形態では、スペイシャルフィルタ30にレンズ32を含めて扱っているが、一般的にスペイシャルフィルタ30は、レンズ31とフィルタ材料33との組み合わせを示し、本発明では必ずしもレンズ32を含む必要はない。フィルタ材料33は、レーザービーム21の光軸方向、および光軸に直交する面内方向に移動可能な支持テーブル34に固定される。
【0028】
レーザービーム21は、スペイシャルフィルタ30において、レンズ31に入射し、フィルタ材料33を通過して、レンズ32から出射する。レンズ31は、レーザー発振器22から出射されたレーザービーム21を、フィルタ材料33に向かって集束させるレンズである。レンズ31によって集束されたレーザービーム21は、集光点位置26に集光し、拡散する。レンズ32は、レンズ31の集光点位置26より後段に配設され、入射したレーザービーム21を平行光で出射させるコリメータレンズである。レンズ31およびレンズ32は、凸レンズを組み合わせたケプラー式のビームエキスパンダーを構成する。
【0029】
フィルタ材料33は、レンズ31の集光点位置26に配設される。より詳しくは、フィルタ材料33は、後述の箱状部材40が非作用位置41(
図2に示す位置)にある状態においてレンズ31によって集束されたレーザービーム21の集光点位置26-1に配設される。フィルタ材料33には、CuW(銅タングステン)、SUS(ステンレス鋼)、AlN(窒化アルミニウム)等のレーザー穴あけ加工可能でかつ熱により変形しにくい素材が用いられる。
【0030】
レンズ31によって集束されたレーザービーム21は、フィルタ材料33の集光点位置26-1に形成されたピンホール35(
図6参照)を通過することで、光学的ノイズが除去される。ピンホール35は、レーザービーム21の光軸方向に貫通する貫通孔であり、後述の箱状部材40が作用位置42(
図3に示す位置)にある状態において、後述のスペイシャルフィルタ製造ステップ201(
図5参照)で形成される。
【0031】
支持テーブル34は、フィルタ材料33を支持する。支持テーブル34は、
図2および
図3に示す例において、上面でフィルタ材料33の下縁部を支持する。支持テーブル34は、例えば、不図示の移動機構を備え、フィルタ材料33をレーザービーム21の光軸方向に直交する方向に移動可能に支持する。これにより、フィルタ材料33は、レーザービーム21の光軸方向に直交する方向に移動可能である。
【0032】
箱状部材40は、レーザービーム21の光路外の位置である非作用位置41(
図2に示す位置)と、レーザービーム21の光路内でフィルタ材料33を覆う位置である作用位置42(
図3に示す位置)と、の間で進退可能である。箱状部材40は、不図示の移動機構によって、非作用位置41と作用位置42との間で移動する。箱状部材40は、開口43と、ウインドウ44、45と、吸引口46と、を有する。
【0033】
開口43は、箱状部材40の一側面(
図2および
図3に示す例では、下面)に形成され、フィルタ材料33を内部に収容する際に、フィルタ材料33が通る穴である。箱状部材40は、例えば、レーザービーム21の光軸方向に垂直な面方向に移動することで、フィルタ材料33を内部に収容する。箱状部材40が作用位置42(
図3に示す位置)にあってフィルタ材料33を内部に収容している状態において、開口43は、フィルタ材料33を支持する支持テーブル34によって閉塞される。
【0034】
ウインドウ44、45は、箱状部材40が作用位置42(
図3に示す位置)にあってフィルタ材料33を内部に収容している状態において、レーザービーム21の光路上に形成され、レーザービーム21を透過させる。ウインドウ44、45は、例えば、BK7(ホウケイ酸塩クラウンガラス)、CaF
2(フッ化カルシウム)、SiO
2(合成石英ガラス)によって構成される。ウインドウ44、45の屈折率は、材質によって異なる。したがって、ウインドウ44、45は、レーザービーム21の集光点位置26が所定距離ずれるように厚みが選定されることが好ましい。例えば、ウインドウ44が厚み1mmの合成石英ガラスであり、レンズ31の焦点距離がf=50であり、レーザービーム21の波長が532nmである場合、集光点位置26は、約0.3mm程度ずれる。
【0035】
図4に示すように、レンズ31によって集束されウインドウ44に入射したレーザービーム21-2は、ウインドウ44における入射時および出射時に屈折することにより、集光点位置26が変化する。すなわち、ウインドウ44を透過したレーザービーム21-2の集光点位置26-2は、ウインドウ44に干渉されないレーザービーム21-1の集光点位置26-1より、後方(レンズ31から離隔した位置)に変化する。したがって、フィルタ材料33は、箱状部材40が作用位置42(
図3に示す位置)にあって箱状部材40によって覆われている状態において、レーザービーム21がデフォーカスされた状態で照射される。
【0036】
吸引口46は、箱状部材40の一側面(
図2および
図3に示す例では、上面)に形成され、吸引源47に連通する。箱状部材40が作用位置42(
図3に示す位置)にある状態では、開口43がフィルタ材料33に閉塞されることにより、箱状部材40の内部が密閉される。この状態において、吸引源47に負圧を作用することにより、箱状部材40は、吸引口46を介して内部が吸引され、レーザービーム21がフィルタ材料33に照射されることにより発生する加工屑が、吸引口46から排出される。
【0037】
図1に示す移動ユニット60は、レーザービーム21の集光点25(
図2および
図3参照)と、保持テーブル10に保持された被加工物100とを相対的に移動させるユニットである。移動ユニット60は、加工送りユニット61と、割り出し送りユニット62と、集光点位置調整ユニット63と、を含む。
【0038】
加工送りユニット61は、保持テーブル10と、レーザービーム照射ユニット20の集光点25(
図2および
図3参照)とを加工送り方向であるX軸方向に相対的に移動させるユニットである。加工送りユニット61は、実施形態において、保持テーブル10をX軸方向に移動させる。加工送りユニット61は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2上に設置されている。加工送りユニット61は、X軸方向移動プレート14をX軸方向に移動自在に支持する。
【0039】
割り出し送りユニット62は、保持テーブル10と、レーザービーム照射ユニット20の集光点25(
図2および
図3参照)とを割り出し送り方向であるY軸方向に相対的に移動させるユニットである。割り出し送りユニット62は、実施形態において、保持テーブル10をY軸方向に移動させる。割り出し送りユニット62は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2上に設置されている。割り出し送りユニット62は、Y軸方向移動プレート15をY軸方向に移動自在に支持する。
【0040】
集光点位置調整ユニット63は、保持テーブル10と、レーザービーム照射ユニット20の集光点25(
図2および
図3参照)とを集光点位置調整方向であるZ軸方向に相対的に移動させるユニットである。集光点位置調整ユニット63は、実施形態において、レーザービーム照射ユニット20の少なくとも集光器23をZ軸方向に移動させる。集光点位置調整ユニット63は、実施形態において、レーザー加工装置1の装置本体2から立設した柱3に設置されている。集光点位置調整ユニット63は、レーザービーム照射ユニット20の少なくとも集光器23をZ軸方向に移動自在に支持する。
【0041】
加工送りユニット61、割り出し送りユニット62、および集光点位置調整ユニット63はそれぞれ、実施形態において、周知のボールねじと、周知のパルスモータと、周知のガイドレールと、を含む。ボールねじは、軸心回りに回転自在に設けられる。パルスモータは、ボールねじを軸心回りに回転させる。加工送りユニット61のガイドレールは、X軸方向移動プレート14をX軸方向に移動自在に支持する。加工送りユニット61のガイドレールは、Y軸方向移動プレート15に固定して設けられる。割り出し送りユニット62のガイドレールは、Y軸方向移動プレート15をY軸方向に移動自在に支持する。割り出し送りユニット62のガイドレールは、装置本体2に固定して設けられる。集光点位置調整ユニット63のガイドレールは、レーザービーム照射ユニット20の少なくとも集光器23をZ軸方向に移動自在に支持する。集光点位置調整ユニット63のガイドレールは、柱3に固定して設けられる。
【0042】
撮像ユニット70は、保持テーブル10に保持された被加工物100を撮像する。撮像ユニット70は、CCDカメラまたは赤外線カメラを含む。撮像ユニット70は、例えば、レーザービーム照射ユニット20の集光器23(
図2および
図3参照)に隣接するように固定されている。撮像ユニット70は、被加工物100を撮像して、被加工物100とレーザービーム照射ユニット20との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を得て、得た画像を出力する。
【0043】
入力ユニット80は、実施形態において、液晶表示装置等により構成される表示装置に含まれるタッチパネルである。入力ユニット80は、オペレータが加工内容情報を登録する等の各種操作を受付可能である。入力ユニット80は、キーボード等の外部入力装置であってもよい。
【0044】
制御ユニット90は、レーザー加工装置1の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物100に対する加工動作等をレーザー加工装置1に実行させる。制御ユニット90は、演算手段としての演算処理装置と、記憶手段としての記憶装置と、通信手段としての入出力インターフェース装置と、を含むコンピュータである。演算処理装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを含む。記憶装置は、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)等のメモリを有する。演算処理装置は、記憶装置に格納された所定のプログラムに基づいて各種の演算を行う。演算処理装置は、演算結果にしたがって、入出力インターフェース装置を介して各種制御信号を上述した各構成要素に出力し、レーザー加工装置1の制御を行う。
【0045】
制御ユニット90は、不図示の移動機構を駆動し、箱状部材40を非作用位置41と作用位置42との間で移動させる。制御ユニット90は、箱状部材40を作用位置42に位置付けるとともに、吸引源47によって負圧を作用させて箱状部材40の内部を吸引した状態で、レーザービーム21を照射させる。レーザービーム21は、デフォーカス状態でフィルタ材料33に照射され、フィルタ材料33にピンホール35を形成する。これにより、レンズ31(、32)とフィルタ材料33とを含むスペイシャルフィルタ30が製造される。また、制御ユニット90は、箱状部材40を非作用位置41に位置付けた状態で、レーザービーム21を保持テーブル10に保持された被加工物100に照射させて被加工物100に加工を施させる。
【0046】
<レーザー加工方法>
次に、まず、本発明の実施形態に係るレーザー加工方法の流れについて図面に基づいて説明する。
図5は、実施形態に係るレーザー加工方法の流れを示すフローチャートである。
図5に示すように、実施形態のレーザー加工方法は、スペイシャルフィルタ製造ステップ201と、レーザー加工ステップ202と、を備える。
【0047】
図6は、
図5に示すスペイシャルフィルタ製造ステップ201の一状態を示す模式図である。
図7は、
図6における要部を模式的に示す斜視図である。なお、
図6に示す図では、支持テーブル34と、ウインドウ44、45を除く箱状部材40と、の描写を省略している。また、
図7に示す図では、支持テーブル34の描写を省略している。
【0048】
また、以降の図において、レーザービーム21の光軸方向をz軸方向とし、光軸方向に直交する面の一方向をx軸方向とし、光軸方向に直交する面のx軸方向に直交する方向をy軸方向とする。z軸方向、x軸方向およびy軸方向は、レーザービーム照射ユニット20において各光学系に導かれるレーザービーム21が、保持テーブル10(
図1参照)に保持された被加工物100に照射される際の、レーザー加工装置1のZ軸方向、X軸方向およびY軸方向に相当する。
【0049】
スペイシャルフィルタ製造ステップ201は、フィルタ材料33にピンホール35を形成することにより、レンズ31とフィルタ材料33とを含むスペイシャルフィルタ30を製造するステップである。スペイシャルフィルタ製造ステップ201では、まず、
図2に示すように、箱状部材40を非作用位置41に位置づけた状態で、レーザー発振器22と集光器23との間にレンズ31を配設し、レンズ31の集光点位置26-1にフィルタ材料33を配設する。
【0050】
スペイシャルフィルタ製造ステップ201では、次に、
図3に示すように、制御ユニット90(
図1参照)が、不図示の移動機構を駆動して箱状部材40を移動させ、箱状部材40がフィルタ材料33を覆う作用位置42に配設する。次に、吸引源47により負圧を作用させて箱状部材40の内部を吸引しつつ、レーザー発振器22からレーザービーム21を出射する。
【0051】
レーザー発振器22から出射されたレーザービーム21は、レンズ31により集束され、ウインドウ44を透過した後、フィルタ材料33に照射される。ウインドウ44を透過したレーザービーム21(
図4に示すレーザービーム21-2)は、ウインドウ44における入射時および出射時の屈折により集光点位置26が変化することで、デフォーカス状態でフィルタ材料33に照射される。
【0052】
レーザービーム21の照射によりフィルタ材料33の集光点位置26-1(
図2等参照)に穴あけ加工が施され、レーザービーム21の集光径より大きな穴であるピンホール35が形成される。これにより、レンズ31(、32)とピンホール35が形成されたフィルタ材料33とを含むスペイシャルフィルタ30が形成される。なお、
図3では、
図2との比較のためにレーザービーム21が被加工物100に照射される状態を描写しているが、スペイシャルフィルタ製造ステップ201を実施している間は、例えば、保持テーブル10に隣接する位置に設けられるパワーメータでレーザービーム21を受光させるように構成することが好ましい。
【0053】
レーザー加工ステップ202は、レーザービーム21をスペイシャルフィルタ30のピンホール35を介して被加工物100に照射することで被加工物100に加工を施すステップである。スペイシャルフィルタ30を製造し、レーザービーム21の照射を停止させた後、レーザー加工ステップ202では、制御ユニット90(
図1参照)が、不図示の移動機構を駆動して箱状部材40を、レーザービーム21の光路外の非作用位置41(
図2に示す位置)に移動させる。これにより、レンズ31により集束されるレーザービーム21の集光点位置26は、フィルタ材料33が配設される位置に戻る、すなわち、ピンホール35の中心である集光点位置26-1に戻る。レーザー加工ステップ202は、次に、レーザー発振器22からレーザービーム21を出射する。
【0054】
レーザー発振器22から出射されたレーザービーム21は、レンズ31により集束され、ウインドウ44を介さず、フィルタ材料33に形成されたピンホール35を通過する。ピンホール35を通過することで光学的ノイズが除去されたレーザービーム21は、
図2に示すように、レンズ32を透過することで平行光となり、ミラー24に反射され、集光器23に集光されて、被加工物100に照射される。
【0055】
ここで、前述した特許文献1では、フィルタ材料に予め複数のピンホールが形成され、1個のピンホールが劣化した場合に別のピンホールを使用することができるスペイシャルフィルタについて開示している。本実施形態においても、フィルタ材料33に形成されたピンホール35が劣化した場合、別のピンホール35を形成して使用する方法について説明する。
【0056】
図8は、
図5に示すレーザー加工ステップ202におけるフィルタ材料33の一状態を模式的に示す斜視図である。
図8では、既に複数のピンホール35が形成され、そのうちの1つであるピンホール35-1にレーザービーム21が照射される状態を示している。
図8に示すレーザー加工ステップ202において、ピンホール35-1が劣化した場合、レーザービーム21の照射を停止させ、再度、スペイシャルフィルタ製造ステップ201に移行する。
【0057】
図9は、
図8の後のスペイシャルフィルタ製造ステップ201におけるフィルタ材料33の一状態を模式的に示す斜視図である。スペイシャルフィルタ製造ステップ201では、箱状部材40を、フィルタ材料33を覆う作用位置42に移動させる(
図3参照)。次に、不図示の移動機構を駆動して、フィルタ材料33をレーザービーム21の光軸方向に直交する方向(
図9に示す例では、x軸方向の負方向)に所定距離移動させる。これにより、レーザービーム21の集光点位置26-2が、フィルタ材料33の新たにピンホール35-2を形成する位置に位置づけられる。
【0058】
スペイシャルフィルタ製造ステップ201では、次に、吸引源47により負圧を作用させて箱状部材40の内部を吸引しつつ、レーザー発振器22からレーザービーム21を出射する(
図3等参照)。
図9に示すように、レーザービーム21は、デフォーカス状態でフィルタ材料33におけるレーザービーム21の集光点位置26-2に照射される。これにより、集光点位置26-2に、ピンホール35-2(
図10参照)が形成される。
【0059】
このように、スペイシャルフィルタ製造ステップ201では、フィルタ材料33をレーザービーム21の光軸方向と直交する方向に移動させることで、フィルタ材料33に複数のピンホール35を形成することができる。新たなピンホール35-2を形成すると、レーザービーム21の照射を停止させ、再度、レーザー加工ステップ202に移行する。
【0060】
図10は、
図9の後のレーザー加工ステップ202におけるフィルタ材料33の一状態を模式的に示す斜視図である。レーザー加工ステップ202では、箱状部材40を、非作用位置41に移動させる(
図2参照)。これにより、レーザービーム21の集光点位置26-1が、フィルタ材料33の新たに形成されたピンホール35-2に位置づけられる。
【0061】
レーザー加工ステップ202では、次に、レーザー発振器22からレーザービーム21を出射する。
図10に示すように、レーザービーム21は、フィルタ材料33のピンホール35-2の中心である集光点位置26-1に向かって集束し、ピンホール35-2を通過する。これにより、新たに形成したピンホール35-2によって、レーザービーム21の光学的ノイズが除去される。
【0062】
以上説明したように、実施形態に係るレーザー加工装置1は、フィルタ材料33にレーザービーム21を照射してピンホール35を製造する際に、レーザービーム21が透過するウインドウ44、45を有する箱状部材40を、フィルタ材料33を覆う位置に配設し、この箱状部材40の内部を吸引しながら加工を行う。このため、周辺の光学素子に加工屑を付着させることなく、スペイシャルフィルタ30のピンホール35を製造することができる。したがって、高精度な位置合わせを実現するとともに、加工品質を低下させる危険性を抑制できるという効果を奏する。
【0063】
また、ウインドウ44により集光点位置26を変化させることによって、デフォーカス状態でピンホール35を形成する。すなわち、ピンホール35の形成から被加工物100の加工まで、フィルタ材料33の位置を光軸方向に移動させることはないため、より高精度な加工が実現できる。
【0064】
〔変形例〕
変形例は、実施形態と比較して、ウインドウ44、45のみをレーザービーム21の光路上に進退可能である点で異なる。すなわち、箱状部材40は、必ずしもレーザービーム21の光路上に進退しなくてもよく、少なくともレーザービーム21の集光点位置26をずらすためのウインドウ44が進退可能であればよい。
【0065】
この場合、例えば、箱状部材40は、常時
図3に示すレーザービーム21の光路内でフィルタ材料33を覆う位置に配設される。箱状部材40は、実施形態でウインドウ44、45が形成されている位置に、ウインドウ44、45の代わりに開口を有する。ウインドウ44、45は、開口を開放する位置と閉塞する位置との間で進退可能に設けられる。
【0066】
すなわち、ウインドウ44、45が開口を開放する位置が非作用位置であり、閉塞する位置が作用位置である。変形例のレーザー加工方法では、ウインドウ44、45を作用位置に位置付けた状態でスペイシャルフィルタ製造ステップ201を実施し、非作用位置に位置付けた状態でレーザー加工ステップ202を実施すればよい。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0068】
例えば、スペイシャルフィルタ製造ステップ201では、フィルタ材料33を光軸方向と直交するx-y面内でスパイラル状に移動させることで、形成するピンホール35の大きさを調整してもよい。また、レンズ31の位置を光軸方向にずらすことにより、レーザービーム21の集光点位置26を変化させてもよい。
【0069】
また、箱状部材40には、フィルタ材料33に照射される前のレーザービーム21が透過するウインドウ44が少なくともあればよく、ウインドウ45がなくてもよい。また、レーザービーム照射ユニット20は、レンズ31の前段に、ピンホール35より大径の別のピンホールを備えていてもよい。レーザービーム21がレンズ31に入射する前にピンホールを通過することで、より綺麗なレーザービーム21を形成できる。
【0070】
また、レーザービーム21が保持テーブル10上の被加工物100に照射される加工点にビームプロファイラを設置し、このプロファイラでレーザービーム21の状態を判定することによって、新たなピンホール35の製造が必要か否かを自動判定してもよい。このような自動判定は、例えば、予め基準となるレーザービーム21の撮像画像を保存し、パターンマッチング等によりレーザービーム21の状態変化を検知すればよい。
【符号の説明】
【0071】
1 レーザー加工装置
10 保持テーブル
20 レーザービーム照射ユニット
21 レーザービーム
22 レーザー発振器
23 集光器
24 ミラー
25 集光点
26 集光点位置
30 スペイシャルフィルタ
31、32 レンズ
33 フィルタ材料
34 支持テーブル
35 ピンホール
40 箱状部材
41 非作用位置
42 作用位置
43 開口
44、45 ウインドウ
46 吸引口
47 吸引源
60 移動ユニット
90 制御ユニット
100 被加工物