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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119692
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 35/00 20060101AFI20240827BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B01D35/00
H01F38/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026773
(22)【出願日】2023-02-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「IoT社会実現のための革新的センシング技術開発/革新的センシング技術開発/極限環境の液体管理をIoT化する革新的粘性センサの開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】山本 泰之
(72)【発明者】
【氏名】小林 健
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
(72)【発明者】
【氏名】若林 正法
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA30
4D116BB01
4D116BC13
4D116BC23
4D116BC27
4D116BC44
4D116BC46
4D116BC48
4D116BC76
4D116DD05
4D116FF16B
4D116GG12
4D116GG13
4D116KK04
4D116QA14C
4D116QA14D
4D116QA14E
4D116QA14F
4D116QA60C
4D116QA60D
4D116QA60F
4D116QB03
4D116QB19
4D116QB24
4D116QB26
4D116QB34
4D116QB35
4D116QC04A
4D116QC04B
4D116QC05A
4D116QC15A
4D116QC23A
4D116QC23B
4D116VV02
4D116VV04
4D116VV30
(57)【要約】
【課題】強磁性体で形成された筐体を挟んで無線給電を行うことができる。
【解決手段】フィルタエレメントと、フィルタエレメントが内部に設けられる筐体と、筐体の外部に設けられた外部部材と、筐体の内部に設けられた内部部材と、前記外部部材が有する外部コイルに電力を供給する電力供給部と、を有する無線給電部と、を備える。筐体は強磁性体で形成された板状の板状部を有し、外部部材と内部部材とは板状部を挟んで設けられている。外部部材は、外部コイルが設けられた外部コアを有する。内部部材は、内部コイルと、内部コイルが設けられた内部コアとを有する。外部コアは、第1端部材と、外部コイルが設けられた第1連結部とを有し、内部コアは、第2端部材と、外部コイルが設けられた第2連結部とを有する。第1端部材の先端である第1端は、板状部を挟んで、第2端部材の先端である第2端と対向する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタエレメントと、
前記フィルタエレメントが内部に設けられる筐体と、
前記筐体の外部に設けられた外部部材と、前記筐体の内部に設けられた内部部材と、前記外部部材が有する外部コイルに電力を供給する電力供給部と、を有する無線給電部と、
を備え、
前記筐体は、強磁性体で形成された金属製の板状部を有し、
前記外部部材と前記内部部材とは、前記板状部を挟んで設けられており、
前記外部部材は、前記外部コイルが設けられた外部コアを有し、
前記内部部材は、内部コイルと、前記内部コイルが設けられた内部コアと、を有し、
前記外部コアは、第1端部材と、前記外部コイルが設けられた第1連結部と、を有し、
前記内部コアは、第2端部材と、前記内部コイルが設けられた第2連結部と、を有し、
前記第1端部材の先端である第1端と前記第2端部材の先端である第2端とは、前記板状部を挟んで複数の離れた位置で対向することを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記外部コア及び前記内部コアは、棒状又は帯状の部材により形成されており、
前記第1端部材は、離間して配置された第3端部材及び第4端部材を有し、
前記第1連結部は、前記第3端部材及び前記第4端部材を連結し、
前記第2端部材は、離間して配置された第5端部材及び第6端部材を有し、
前記第2連結部は、前記第4端部材及び前記第5端部材を連結し、
前記第3端部材の先端である第3端は、前記板状部を挟んで前記第5端部材の先端である第5端と対向し、
前記第4端部材の先端である第4端は、前記板状部を挟んで前記第6端部材の先端である第6端と対向することを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記第1端部材及び前記第2端部材は、帯状の部材を湾曲させることで筒状に形成されており、
前記第1連結部は、筒状の前記第1端部材の中空部に設けられており、
前記第2連結部は、筒状の前記第2端部材の中空部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記電力供給部は、前記外部コイルに流す電流を変調させる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記内部コイルを含む回路のインピーダンスを変化させる調整部と、
前記調整部により前記回路のインピーダンスが変化したことを、前記外部コイルに流れる電流を測定することで取得する取得部と、
を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項6】
前記筐体の内部、かつ、前記内部部材に隣接して設けられたセンサを備え、
前記調整部は、前記センサの測定結果に基づいてインピーダンスを変化させる
ことを特徴とする請求項5に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無線送電を行うフィルタシステムが開示されている。このフィルタシステムでは、無線受電器がフィルタ本体に関連付けられ、無線受電器がフィードバックチャンネル回路を含む。フィードバックチャンネル回路は、受信アンテナ、無線受電器と電気的に連通する制御回路、及び制御回路と連通するフィードバックチャンネル回路であって、受信アンテナから分離されたチャネルを介し送信するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-512778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、無線電力発射機と無線受電器とを離れた場所に配置することが可能である。しかしながら、特許文献1に記載の発明では、筐体が鉄等の強磁性体である場合には送電をすることができない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、強磁性体で形成された筐体を挟んで無線給電を行うことができるフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルタ装置は、例えば、フィルタエレメントと、前記フィルタエレメントが内部に設けられる筐体と、前記筐体の外部に設けられた外部部材と、前記筐体の内部に設けられた内部部材と、前記外部部材が有する外部コイルに電力を供給する電力供給部と、を有する無線給電部と、を備え、前記筐体は、強磁性体で形成された金属製の板状部を有し、前記外部部材と前記内部部材とは、前記板状部を挟んで設けられており、前記外部部材は、前記外部コイルが設けられた外部コアと、を有し、前記内部部材は、内部コイルと、前記内部コイルが設けられた内部コアと、を有し、前記外部コアは、第1端部材と、前記外部コイルが設けられた第1連結部と、を有し、前記内部コアは、第2端部材と、前記外部コイルが設けられた第2連結部と、を有し、前記第1端部材の先端である第1端と前記第2端部材の先端である第2端とは、前記板状部を挟んで複数の離れた位置で対向することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るフィルタ装置によれば、筐体の外部に設けられた外部部材の外部コアと、筐体の内部に設けられた内部部材の内部コアとは、強磁性体で形成された板状部を挟んで設けられており、外部コアの先端と内部コアの先端とは、板状部を挟んで複数箇所で対向する。これにより、強磁性体で形成された筐体を挟んで無線給電を行うことができる。
【0008】
前記外部コア及び前記内部コアは、棒状又は帯状の部材により形成されており、前記第1端部材は、離間して配置された第3端部材及び第4端部材を有し、前記第1連結部は、前記第3端部材及び前記第4端部材を連結し、前記第2端部材は、離間して配置された第5端部材及び第6端部材を有し、前記第2連結部は、前記第4端部材及び前記第5端部材を連結し、前記第3端部材の先端である第3端は、前記板状部を挟んで前記第5端部材の先端である第5端と対向し、前記第4端部材の先端である第4端は、前記板状部を挟んで前記第6端部材の先端である第6端と対向してもよい。これにより、一対の強い磁界が発生し、磁性体を挟んだ状態で給電が可能になる。
【0009】
前記第1端部材及び前記第2端部材は、帯状の部材を湾曲させることで筒状に形成されており、前記第1連結部は、筒状の前記第1端部材の中空部に設けられており、前記第2連結部は、筒状の前記第2端部材の中空部に設けられていてもよい。これにより、一対の強い磁界が発生し、磁性体を挟んだ状態で給電が可能になる。
【0010】
前記電力供給部は、前記外部コイルに流す電流を変調させてもよい。これにより、筐体の外部から内部に向けて無線通信を行うことができる。
【0011】
前記内部コイルを含む回路のインピーダンスを変化させる調整部と、前記調整部により前記回路のインピーダンスが変化したことを、前記外部コイルに流れる電流を測定することで取得する取得部と、を備えてもよい。これにより、筐体の内部から外部に向けて無線通信を行うことができる。
【0012】
前記筐体の内部、かつ、前記内部部材に隣接して設けられたセンサを備え、前記調整部は、前記センサの測定結果に基づいてインピーダンスを変化させてもよい。これにより、センサの測定結果を無線で送信することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、強磁性体で形成された筐体を挟んで無線給電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態にかかるフィルタ装置1の概略を示す図である。
図2】フィルタ装置の要部を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は底面図である。
図3】フィルタ装置1の電気的な構成の概略を示すブロック図である。
図4】フィルタ装置2の要部を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は底面図である。
図5】フィルタ装置3の要部を示す図であり、(A)は平面図(上からみた図)であり、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明にかかるフィルタ装置は、油、燃料、尿素水等の液体に含まれる塵埃等を除去するものである。本実施の形態では、濾過装置として燃料に含まれる塵埃等を除去する燃料フィルタを例に説明するが、濾過装置は燃料フィルタに限られず、例えばリターンフィルタに用いることができる。また、本実施の形態では、濾過対象の液体として作動油を例に説明するが、濾過対象の液体は作動油に限られず、添加物を含む様々な液体、例えば燃料(石油系、エタノール系)でもよい。
【0016】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかるフィルタ装置1の概略を示す図である。なお、図1では、一部、断面を示すハッチングを省略する。
【0017】
フィルタ装置1は、主として、筐体10と、フィルタエレメント20と、無線給電部50とを有する。筐体10は、主として、ケース11と、ヘッド15とを有する。ケース11及びヘッド15は、強磁性体で形成されている。強磁性体とは、外から加えた磁場により強く磁化し、磁場を取り去っても磁化を残す性質(強磁性)を有する物質である。強磁性体としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト及びそれらを含む合金(炭素鋼、合金鋼、鋳鉄等)又は酸化物(フェライト等)である。本実施の形態では、ケース11及びヘッド15には鋳鉄が用いられている。
【0018】
ケース11は、一端が略閉塞され、他端が開口する有底筒形状の部材である。ケース11の側面13は筒状であり、側面13の下端が底面12により覆われている。側面13の上端は開口している。底面12及び側面13(本発明の板状部に相当)は、板状の部材を用いて形成されている。
【0019】
ケース11の開口部は、ヘッド15に取り付けられる。ケース11及びヘッド15は、ケース11及びヘッド15の外周に沿って設けられた取付部材17により固定される。ただし、取付部材17は必須ではなく、ケース11及びヘッド15の固定方法はこれに限られない。例えば、ケース11、ヘッド15のそれぞれに設けられた雄ねじ、雌ねじを螺合することでケース11とヘッド15とを固定してもよい。
【0020】
ケース11がヘッド15に取り付けられると、フィルタエレメント20がヘッド15の中央筒15b(後に詳述)に取り付けられる。また、フィルタエレメント20と底面12との間には、コイルばね等の弾性部材41が設けられており、弾性部材41は、フィルタエレメント20をヘッド15に向けて押圧する。これにより、フィルタエレメント20がケース11の内部に収容される。
【0021】
フィルタエレメント20は、主として、濾材21と、内筒22と、外筒23と、プレート24、25とを有する。内筒22は、両端に開口を有する略中空円筒形状の部材であり、全面に液体が通過する孔(図示省略)が複数設けられている。外筒23は、濾材21の一部を覆う帯状の部材である。なお、内筒22及び外筒23は必須ではない。
【0022】
濾材21は、径方向に厚みを有する略中空円筒形状である。濾材21は、合成樹脂や紙等を用いたシート状のろ紙をひだ折りにし、ひだ折りにしたろ紙の両端を連結して丸めることによって形成される。ただし、濾材21の形態はこれに限られない。
【0023】
濾材21の一方の端(図1における上側の端)にはプレート24が設けられ、他方の端(図1における下側の端)にはプレート25が設けられる。
【0024】
プレート24は、濾材21及び内筒22の上端に設けられる。プレート24には、ヘッド15の中央筒15bが挿入される。プレート24と中央筒15bとの間には、シール部材43(例えば、Oリング)が設けられる。シール部材43により、プレート24と中央筒15bとの間から液体が外部に漏れないようにシールされる。また、プレート24に内筒22が設けられているため、プレート24に中央筒15bが挿入されると、内筒22の内部空間が中央筒15bの内部空間と連通する。
【0025】
ヘッド15は、筒状部15aと、中央筒15bとを有する。筒状部15a及び中央筒15bは、円筒形状であり、ケース11に向けて突出している。筒状部15aは、取付部材17に挿入される。
【0026】
ヘッド15には、流入路となる穴15cと、流出路となる孔15d及び穴15eを有する。穴15cと穴15eとを隔てる壁面には、バイパスバルブ42が設けられている。穴15cは、ケース11とフィルタエレメント20との間の空間S1と連通しており、孔15d及び穴15eは、内筒22の内部(空間S2)と連通している。
【0027】
穴15cを介して、濾過すべき液体L1がフィルタ装置1に供給される。液体L1(図1実線矢印参照)は、空間S1に流入し、その後濾材21で濾過されて、空間S2へ流出する。また、内筒22の内部へ流出した濾過後の液体L2(図1二点鎖線矢印参照)は、流出路からフィルタ装置1の外部へ排出される。
【0028】
なお、本実施の形態では、流入路及び流出路がヘッド15に設けられていたが、流入路及び流出路は筐体10に設けられていればよい。例えば、流入路及び流出路がケース11に設けられていてもよい。
【0029】
底面12とフィルタエレメント20(プレート25)との間には、弾性部材41が設けられているため、空間が存在する。この空間に無線給電部50及びセンサ60(図2では図示省略、図3参照)が設けられている。以下、無線給電部50について詳細に説明する。
【0030】
図2は、フィルタ装置の要部を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は底面図である。無線給電部50は、主として、外部部材51と、内部部材52とを有する。外部部材51は、筐体10の外部に設けられており、内部部材52は、筐体10の内部に設けられている。また、外部部材51と内部部材52とは、ケース11、ここでは底面12を挟んで設けられている。
【0031】
外部部材51は、主として、コア511と、コア511に設けられたコイル512とを有する。内部部材52は、主として、コア521と、コア521に設けられたコイル522とを有する。コア511とコア521とは略同一の形状を有する。
【0032】
コア511は、離間して配置された端部材511a、511b(本発明の第1端部材に相当)と、端部材511aと端部材511bとを連結する連結部511c(本発明の第1連結部に相当)とを有する。コイル512は連結部511cに設けられている。
【0033】
コア521も、コア511と同様に、離間して配置された端部材521a、521b(本発明の第2端部材に相当)と、端部材521aと端部材521bとを連結する連結部521c(本発明の第2連結部に相当)とを有する。コイル522は連結部521cに設けられている。
【0034】
本実施の形態では、コア511、521は、棒状又は帯状の部材により形成されている。本実施の形態ではコア511、521はコの字形状であるが、コア511、521はU字形状でもよいし、V字形状でもよい。なお、U字形状、V字形状の場合には、両側の2本の棒状部が端部材であり、この2本の端部材をつなぐ連結部の長さや形状は任意である。例えば、連結部が円弧形状を有していてもよいし有していなくてもよい。また、V字形状の場合には、連結部は必須ではない。端部材511aは本発明の第3端部材に相当し、端部材511bは本発明の第4端部材に相当する。また、端部材521aは本発明の第5端部材に相当し、端部材521bは本発明の第6端部材に相当する。
【0035】
端部材511aの先端511d(本発明の第3端に相当)は、端部材521aの先端521d(本発明の第5端に相当)と底面12を挟んで対向している。また、端部材511bの先端511e(本発明の第4端に相当)は、端部材521aの先端521e(本発明の第6端に相当)と底面12を挟んで対向している。したがって、先端511dと先端521dとの間で磁界が発生し、先端511eと先端522eとの間で磁界が発生する。
【0036】
また、先端511dと先端521dと面積は略同一であり、先端511eと先端522eとの面積は略同一である。
【0037】
先端511d、先端521dと底面12との距離は近く、先端511e、先端522eと底面12との距離は近い(先端511d、511e、521d、522eと底面12ととは隣接している)ため、発生する磁界が強い。また、コア511の先端511d、511eと、コア521の先端521d、522eとが、底面12を挟んで複数の離れた位置で対向することで、一対の強い磁界が発生し、これにより磁性体を挟んだ状態で給電が可能になる。
【0038】
図3は、フィルタ装置1の電気的な構成の概略を示すブロック図である。無線給電部50は、主として、外部回路55と、内部回路56とを有する。外部回路55は、主として、電力供給部55aと、取得部55bとを有する。内部回路56は、主として、受信部56aと、調整部56bとを有する。
【0039】
まず、無線給電部50による給電について説明する。電力供給部55aは、コイル512に電力を供給する。電力供給部55aにより電力が供給されてコイル512に電流が流れると、コア511とコア521との間に磁界が発生し、この磁界の変化によりコイル522に誘導電流が発生する。受信部56aは、コイル522に誘導電流が流れることで発生した電力を、図示しないバッテリーへ供給する。これにより、無線給電が行われる。
【0040】
次に、無線給電部50による無線通信(データ通信)について説明する。無線通信は、外部回路55から内部回路56への無線通信と、内部回路56から外部回路55への無線通信とがある。
【0041】
まず、外部回路55から内部回路56への無線通信について説明する。電力供給部55aは、必要に応じて、コイル512に流す電流を変調させる。例えば、電力供給部55aは、正弦波である交流電流の振幅変調、周波数変調、位相変調を行うことができる。また、電力供給部55aは、正弦波を整流してパルス波に変調することができる。なお、パルス波への変調は、Offの時の電圧が0であるOnOff変調、Off時の電圧が0ではないオフセット付きOnOff変調等が挙げられる。例えば、電力供給部55aは、整流回路、変調回路等を含みうる。
【0042】
受信部56aは、コイル522に発生した誘導電流に基づいて、電力供給部55aがどのような波形の信号をコイル512に流したか検知する。また、受信部56aは、電力供給部55aがコイル512に流した波形と、データとの関係を保持しており、この関係に基づいて、外部回路55から内部回路56に送信されたデータを取得する。例えば、受信部56aは、復調回路を含み得る。
【0043】
次に、内部回路56から外部回路55への無線通信について説明する。フィルタ装置1に設けられたセンサ60は、例えば、温度センサ、粘度センサである。調整部56bは、センサ60の測定結果に基づいて、コイル522を含む回路のインピーダンスを変化させる。例えば、調整部56bは、流体の温度が高くなったときに、コイル522のインピーダンスを高くする。これにより、センサ60の測定結果を無線で送信することができる。なお、調整部56bは、インピーダンス変換器を含み得る。
【0044】
取得部55bは、コイル512に流れる電流を測定する。調整部56bによりコイル522のインピーダンスが変化すると、コイル512に流れる電流が変化する。取得部55bは、コイル522のインピーダンスが変化したことを、コイル512に流れる電流を測定することで取得する。取得部55bは、コイル522のインピーダンスの変化と、データとの関係を保持しており、この関係に基づいて、内部回路56から外部回路55に送信されたデータを取得する。
【0045】
本実施の形態によれば、無線給電部50を用いて強磁性体で形成された筐体10(ここでは、底面12)を挟んで無線給電を行うことができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、電力供給部55aがコイル512に流す電流を変調させることで、外部回路55から内部回路56に無線通信を行うことができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、調整部56bがコイル522を含む回路のインピーダンスを変化させることで、内部回路56から外部回路55に無線通信を行うことができる。
【0048】
なお、本実施の形態では、外部部材51と内部部材52とが底面12を挟んで対向して設けられていたが、無線給電部50の位置はこれに限られない。例えば、外部部材51と内部部材52とがヘッド15(例えば、筒状部15a)を挟んで対向して設けられていてもよい。例えば、ヘッド15の側面又は天面が板状の部材で形成された板状部であり、この板状部を介して外部部材51と内部部材52とが設けられていてもよい。
【0049】
また、本実施の形態では、コア511とコア521とは略同一の形状を有したが、コア511、521の形状は異なっていてもよい。例えば、コア511の高さがコア521の高さより高くてもよい。コア511の高さを高くすることで、コイル512の巻き数を増やしたり、大きさを大きくしたりすることができる。
【0050】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態は、無線給電部のコアの形状が異なる形態である。以下、第2の実施の形態にかかるフィルタ装置2について説明する。なお、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0051】
図4は、フィルタ装置2の要部を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は底面図である。フィルタ装置2は、主として、筐体10と、フィルタエレメント20と、無線給電部50Aとを有する。
【0052】
無線給電部50Aは、主として、外部部材51Aと、内部部材52Aとを有する。外部部材51Aは、筐体10の外部に設けられており、内部部材52Aは、筐体10の内部に設けられている。また、外部部材51Aと内部部材52Aとは、ケース11、ここでは底面12を挟んで設けられている。
【0053】
外部部材51Aは、主として、コア511Aと、コア511Aに設けられたコイル512Aとを有する。内部部材52Aは、主として、コア521Aと、コア521Aに設けられたコイル522Aとを有する。
【0054】
コア511Aは、端部材511f(本発明の第1端部材に相当)と、連結部511h(本発明の第1連結部に相当)とを有する。端部材511fは、帯状の部材を湾曲させることで筒状に形成されており、連結部511hは、筒状の端部材511fの中空部に設けられている。連結部511hは突出部511iを有し、コイル512Aは突出部511iに設けられている。
【0055】
コア521Aも、コア511Aと同様に、端部材521f(本発明の第2端部材に相当)と、連結部521h(本発明の第2連結部に相当)と、を有する。端部材521fは、帯状の部材を湾曲させることで筒状に形成されており、連結部521hは、筒状の端部材521fの中空部に設けられている。連結部521hは突出部521iを有し、コイル522Aは突出部521iに設けられている。
【0056】
端部材511fの先端511g(本発明の第1端に相当)は、端部材521fの先端521g(本発明の第2端に相当)と底面12を挟んで対向している。先端511gと先端521gと面積は略同一である。
【0057】
なお、本実施の形態では、端部材511f、521fが円筒形状であるが、端部材511f、521fの形状はこれに限られない。端部材511f、521fは筒状であればよく、例えば楕円筒状であってもよいし、角筒状であってもよい。また、端部材511f、521fは、底面12に向かって内径が小さく又は大きくなる円筒形状であってもよい。
【0058】
先端511g、先端521gと底面12との距離が近い(先端511g、521gと底面12とが隣接する)ため、発生する磁界が強い。また、コア511Aの先端511gとコア521Aの先端521gとは、底面12を挟んで複数の離れた位置で対向する。例えば、先端511g、521gとは、端部材511f、521fを挟んで対向する2箇所において、底面12を挟んで対向する。これにより、一対の強い磁界が発生し、磁性体を挟んだ状態で給電が可能になる。
【0059】
本実施の形態によれば、先端511gと先端521gとを底面12を挟んで対向させることにより、一対の強い磁界を発生させることで、磁性体を挟んだ状態で給電を行うことができる。また、外部部材51Aから内部部材52Aへデータを送信することができる。さらに、内部部材52Aのインピーダンスを測定することで、外部部材51Aが内部部材52Aからデータを受信することができる。
【0060】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態は、フィルタ装置1に対して無線給電部50の位置が異なる形態である。以下、第3の実施の形態にかかるフィルタ装置3について説明する。なお、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0061】
図5は、フィルタ装置3の要部を示す図であり、(A)は平面図(上からみた図)であり、(B)は断面図である。フィルタ装置3は、主として、筐体10と、フィルタエレメント20と、無線給電部50とを有する。
【0062】
フィルタ装置3では、無線給電部50が有する外部部材51と内部部材52が、側面13を挟んで設けられている。
【0063】
先端511dは、先端521dと側面13を挟んで対向している。また、先端511eは、先端522eと側面13を挟んで対向している。
【0064】
このようにコア511、521を配置することで、先端511dと先端521dとの間で磁界が発生し、先端511eと先端521eとの間で磁界が発生する。また、先端511d、先端521dと底面12との距離は近く、先端511e、先端522eと底面12との距離は近いため、発生する磁界が強い。
【0065】
本実施の形態によれば、先端511dと先端521d及び先端511eと先端522eを底面12を挟んで対向させることにより、一対の強い磁界を発生させることで、磁性体を挟んだ状態で給電を行うことができる。また、外部部材51から内部部材52へデータを送信することができる。さらに、内部部材52のインピーダンスを測定することで、外部部材51が内部部材52からデータを受信することができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、無線給電部50を側面13の底面12近傍に配置したが、無線給電部50の配置はこれに限られない。例えば、側面13のヘッド15近傍に無線給電部50を配置してもよい。また、無線給電部50に代えて、無線給電部50A、すなわち外部部材51と内部部材52とが側面13を挟んで設けられていてもよい。
【0067】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成の追加、削除、置換等をすることが可能である。
【0068】
また、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、「円筒形状」とは、厳密に円筒形状の場合には限られず、例えば円筒形状と同一視できる場合を含む概念である。また、例えば、単に直交、平行、一致等と表現する場合において、厳密に直交、平行、一致等の場合のみでなく、略平行、略直交、略一致等の場合を含むものとする。
【0069】
また、「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、端近傍という場合に、端の近くのある範囲の領域であって、端を含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0070】
1、2、3 :フィルタ装置
10 :筐体
11 :ケース
12 :底面
13 :側面
15 :ヘッド
15a :筒状部
15b :中央筒
15c、15e:穴
15d :孔
17 :取付部材
20 :フィルタエレメント
21 :濾材
22 :内筒
23 :外筒
24、25 :プレート
30 :ホルダ
40 :導通部
41 :弾性部材
42 :バイパスバルブ
43 :シール部材
50、50A:無線給電部
51、51A:外部部材
52、52A:内部部材
55 :外部回路
55a :電力供給部
55b :取得部
56 :内部回路
56a :受信部
56b :調整部
60 :センサ
511、511A、521、521A:コア
511a、511b、511f、521a、521b、521f:端部材
511c、511h、521c、521h:連結部
511d、511e、511g、521d、521e、521g:先端
511i、521i:突出部
512、512A、522、522A:コイル
図1
図2
図3
図4
図5