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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119750
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】プロピレン樹脂組成物及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20240827BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240827BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240827BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240827BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L53/00
C08K3/013
C08L23/08
B29C45/00
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015907
(22)【出願日】2024-02-05
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2023016654
(32)【優先日】2023-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023166488
(32)【優先日】2023-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】袋田 裕史
(72)【発明者】
【氏名】亀尾 幸司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 毅
【テーマコード(参考)】
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F206AA03
4F206AA11
4F206AB11
4F206AH17
4F206AH33
4F206AH54
4F206AH55
4F206AH56
4F206JA07
4F206JF01
4F206JF02
4J002BB05Y
4J002BB11W
4J002BB12W
4J002BB14W
4J002BP02X
4J002DA036
4J002DE076
4J002DE096
4J002DE116
4J002DE126
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DE256
4J002DG026
4J002DG046
4J002DG056
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DL006
4J002FD016
4J002GG00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐ヒンジ性に優れる成形体及びそれを製造できるプロピレン樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】アイソタクチックペンタッド分率が0.981未満であるプロピレン重合体A’とアイソタクチックペンタッド分率が0.981以上であるプロピレン重合体Cとを含むプロピレン樹脂組成物及びそれを含む成形体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソタクチックペンタッド分率が0.981未満であるプロピレン重合体A’ 20~80重量部と、
アイソタクチックペンタッド分率が0.981以上であるプロピレン重合体C 20~80重量部と
を含み(ただし、プロピレン重合体A’及びCの含有量の合計を100重量部とする)、
プロピレン重合体A’としてアイソタクチックペンタッド分率が0.963以上0.981未満であるプロピレン重合体Bを含み、
プロピレン重合体A’のアイソタクチックペンタッド分率とプロピレン重合体Cのアイソタクチックペンタッド分率の差が0.010以上であり、
プロピレン重合体Cがヘテロファジックプロピレン重合材料である、
プロピレン樹脂組成物であって、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、プロピレン樹脂組成物に含まれる全ての重合体の合計量が75重量%以上であり、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、プロピレン重合体A’とプロピレン重合体Cの合計量が50重量%以上である、
プロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれるキシレン不溶成分のアイソタクチックペンタッド分率が0.981以上である、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
プロピレン重合体A’及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてリサイクルプロピレン重合体を含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
プロピレン重合体A’及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてバージンプロピレン重合体を含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
プロピレン重合体A’としてアイソタクチックペンタッド分率が0.961未満であるプロピレン重合体Aを含む請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項6】
プロピレン重合体A’として、
アイソタクチックペンタッド分率が0.961未満であるプロピレン重合体Aと、
アイソタクチックペンタッド分率が0.963以上0.981未満であるプロピレン重合体Bと
を含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項7】
プロピレン重合体Aとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、請求項6に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項8】
プロピレン重合体Bとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項9】
1~60重量部のプロピレン重合体Aと、
5~89重量部のプロピレン重合体Bと、
20~80重量部のプロピレン重合体Cと
を含む請求項6に記載のプロピレン樹脂組成物であって、
ただし、プロピレン重合体Aとプロピレン重合体Bの合計量が20~80重量部であり(ただし、プロピレン重合体Aとプロピレン重合体Bとプロピレン重合体Cの合計を100重量部とする)、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、プロピレン樹脂組成物に含まれる全ての重合体の合計量が75重量%以上であり、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、プロピレン重合体Aとプロピレン重合体Bとプロピレン重合体Cの合計量が50重量%以上である、
プロピレン樹脂組成物。
【請求項10】
プロピレン重合体A,プロピレン重合体B及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてリサイクルプロピレン重合体を含む、請求項6に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項11】
プロピレン重合体A,プロピレン重合体B及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてバージンプロピレン重合体を含む、請求項6に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項12】
エチレン-α-オレフィン共重合体Dを含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項13】
エチレン-α-オレフィン共重合体Dとしてリサイクルエチレン-α-オレフィン共重合体を含む、請求項12に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項14】
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、エチレン-α-オレフィン共重合体Dが1~40重量%である、請求項12に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項15】
充填材Eを含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項16】
充填材Eとしてリサイクル充填材を含む、請求項15に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項17】
充填材Eとして無機充填材を含む、請求項15に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のプロピレン樹脂組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン樹脂組成物からなる成形体は、自動車材料、家電材料、容器包装材料等に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-193644号公報
【特許文献2】国際公開第2020/217829号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車材料、家電材料、容器包装材料等に用いられる成形体は、高い耐ヒンジ性が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、耐ヒンジ性に優れる成形体を製造できるプロピレン樹脂組成物を提供することを目的とする。本発明はまた、耐ヒンジ性に優れる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に関するが、それに限定されない。
[発明A1]
アイソタクチックペンタッド分率が0.981未満であるプロピレン重合体A’と、
アイソタクチックペンタッド分率が0.981以上であるプロピレン重合体Cと
を含むプロピレン樹脂組成物。
[発明A2]
プロピレン重合体A’のアイソタクチックペンタッド分率とプロピレン重合体Cのアイソタクチックペンタッド分率の差が0.005以上である、発明A1に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A3]
プロピレン重合体A’としてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、発明A1又はA2に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A4]
プロピレン重合体Cとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、発明A1~A3のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A5]
ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれるキシレン不溶成分のアイソタクチックペンタッド分率が0.981以上である、発明A4に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A6]
5~95重量部のプロピレン重合体A’と、
5~95重量部のプロピレン重合体Cと
を含む発明A1~A5のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物(ただし、プロピレン重合体A’とプロピレン重合体Cの合計を100重量部とする)。
[発明A7]
プロピレン重合体A’及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてリサイクルプロピレン重合体を含む、発明A1~A6のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A8]
プロピレン重合体A’及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてバージンプロピレン重合体を含む、発明A1~A7のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A9]
プロピレン重合体A’としてアイソタクチックペンタッド分率が0.961以上0.981未満であるプロピレン重合体Bを含む発明A1~A8のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A10]
プロピレン重合体A’としてアイソタクチックペンタッド分率が0.961未満であるプロピレン重合体Aを含む発明A1~A9のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A11]
プロピレン重合体A’として、
アイソタクチックペンタッド分率が0.961未満であるプロピレン重合体Aと、
アイソタクチックペンタッド分率が0.961以上0.981未満であるプロピレン重合体Bと
を含む、発明A1~A10のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A12]
プロピレン重合体Aとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、発明A10又はA11に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A13]
プロピレン重合体Bとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、発明A9又はA11に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A14]
1~60重量部のプロピレン重合体Aと、
5~94重量部のプロピレン重合体Bと、
5~94重量部のプロピレン重合体Cと
を含む発明A11~A13のいずれか一項に記載のプロピレン樹脂組成物(ただし、プロピレン重合体Aとプロピレン重合体Bとプロピレン重合体Cの合計を100重量部とする)。
[発明A15]
プロピレン重合体A,プロピレン重合体B及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてリサイクルプロピレン重合体を含む、発明A11~A14のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A16]
プロピレン重合体A,プロピレン重合体B及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてバージンプロピレン重合体を含む、発明A11~A15のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A17]
エチレン-α-オレフィン共重合体Dを含む、発明A1~A16のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A18]
エチレン-α-オレフィン共重合体Dとしてリサイクルエチレン-α-オレフィン共重合体を含む、発明A17に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A19]
充填材Eを含む、発明A1~A18のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A20]
充填材Eとしてリサイクル充填材を含む、発明A19に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A21]
充填材Eとして無機充填材を含む、発明A19又はA20に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明A22]
発明A1~A21のいずれか一項に記載のプロピレン樹脂組成物を含む成形体。
【0007】
本発明の他の態様を以下に示す。
[発明B1]
アイソタクチックペンタッド分率が0.981未満であるプロピレン重合体A’ 10~90重量部と、
アイソタクチックペンタッド分率が0.981以上であるプロピレン重合体C 10~90重量部と
を含み(ただし、プロピレン重合体A’及びCの含有量の合計を100重量部とする)、
プロピレン重合体A’としてヘテロファジックプロピレン重合材料を含み、
プロピレン重合体A’としてアイソタクチックペンタッド分率が0.963以上0.981未満であるプロピレン重合体Bを含み、
プロピレン重合体A’のアイソタクチックペンタッド分率とプロピレン重合体Cのアイソタクチックペンタッド分率の差が0.010以上である、
プロピレン樹脂組成物であって、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、含まれる重合体の合計が70重量%以上である、
プロピレン樹脂組成物。
[発明B2]
プロピレン重合体Cとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、発明B1に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B3]
ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれるキシレン不溶成分のアイソタクチックペンタッド分率が0.981以上である、発明B2に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B4]
プロピレン重合体A’及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてリサイクルプロピレン重合体を含む、発明B1~B3のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B5]
プロピレン重合体A’及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてバージンプロピレン重合体を含む、発明B1~B4のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B6]
プロピレン重合体A’としてアイソタクチックペンタッド分率が0.961未満であるプロピレン重合体Aを含む発明B1~B5のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B7]
プロピレン重合体A’として、
アイソタクチックペンタッド分率が0.961未満であるプロピレン重合体Aと、
アイソタクチックペンタッド分率が0.963以上0.981未満であるプロピレン重合体Bと
を含む、発明B1~B6のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B8]
プロピレン重合体Aとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、発明B6又はB7に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B9]
プロピレン重合体Bとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、発明B1~B7のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B10]
1~60重量部のプロピレン重合体Aと、
5~89重量部のプロピレン重合体Bと、
10~90重量部のプロピレン重合体Cと
を含む発明B7~B9のいずれか一項に記載のプロピレン樹脂組成物であって、
ただし、プロピレン重合体Aとプロピレン重合体Bの合計量が10~90重量部であり(ただし、プロピレン重合体Aとプロピレン重合体Bとプロピレン重合体Cの合計を100重量部とする)、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、含まれる重合体の合計が70重量%以上である、
プロピレン樹脂組成物。
[発明B11]
プロピレン重合体A,プロピレン重合体B及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてリサイクルプロピレン重合体を含む、発明B7~B10のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B12]
プロピレン重合体A,プロピレン重合体B及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてバージンプロピレン重合体を含む、発明B7~B11のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B13]
エチレン-α-オレフィン共重合体Dを含む、発明B1~B12のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B14]
エチレン-α-オレフィン共重合体Dとしてリサイクルエチレン-α-オレフィン共重合体を含む、発明B13に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B15]
充填材Eを含む、発明B1~B14のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B16]
充填材Eとしてリサイクル充填材を含む、発明B15に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B17]
充填材Eとして無機充填材を含む、発明B15又はB16に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明B18]
発明B1~B17のいずれか一項に記載のプロピレン樹脂組成物を含む成形体。
【0008】
本発明の他の態様を以下に示す。
[発明C1]
アイソタクチックペンタッド分率が0.981未満であるプロピレン重合体A’ 20~80重量部と、
アイソタクチックペンタッド分率が0.981以上であるプロピレン重合体C 20~80重量部と
を含み(ただし、プロピレン重合体A’及びCの含有量の合計を100重量部とする)、
プロピレン重合体A’としてアイソタクチックペンタッド分率が0.963以上0.981未満であるプロピレン重合体Bを含み、
プロピレン重合体A’のアイソタクチックペンタッド分率とプロピレン重合体Cのアイソタクチックペンタッド分率の差が0.010以上であり、
プロピレン重合体Cがヘテロファジックプロピレン重合材料である、
プロピレン樹脂組成物であって、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、プロピレン樹脂組成物に含まれる全ての重合体の合計量が75重量%以上であり、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、プロピレン重合体A’とプロピレン重合体Cの合計量が50重量%以上である、
プロピレン樹脂組成物。
[発明C2]
ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれるキシレン不溶成分のアイソタクチックペンタッド分率が0.981以上である、発明C1に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C3]
プロピレン重合体A’及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてリサイクルプロピレン重合体を含む、発明C1又はC2に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C4]
プロピレン重合体A’及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてバージンプロピレン重合体を含む、発明C1~C3のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C5]
プロピレン重合体A’としてアイソタクチックペンタッド分率が0.961未満であるプロピレン重合体Aを含む発明C1~C4のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C6]
プロピレン重合体A’として、
アイソタクチックペンタッド分率が0.961未満であるプロピレン重合体Aと、
アイソタクチックペンタッド分率が0.963以上0.981未満であるプロピレン重合体Bと
を含む、発明C1~C5のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C7]
プロピレン重合体Aとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、発明C6に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C8]
プロピレン重合体Bとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、発明C1~C7のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C9]
1~60重量部のプロピレン重合体Aと、
5~89重量部のプロピレン重合体Bと、
20~80重量部のプロピレン重合体Cと
を含む発明C6又はC7に記載のプロピレン樹脂組成物であって、
ただし、プロピレン重合体Aとプロピレン重合体Bの合計量が20~80重量部であり(ただし、プロピレン重合体Aとプロピレン重合体Bとプロピレン重合体Cの合計を100重量部とする)、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、プロピレン樹脂組成物に含まれる全ての重合体の合計量が75重量%以上であり、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、プロピレン重合体Aとプロピレン重合体Bとプロピレン重合体Cの合計量が50重量%以上である、
プロピレン樹脂組成物。
[発明C10]
プロピレン重合体A,プロピレン重合体B及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてリサイクルプロピレン重合体を含む、発明C6、C7又はC9に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C11]
プロピレン重合体A,プロピレン重合体B及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてバージンプロピレン重合体を含む、発明C6、C7、C9又はC10に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C12]
エチレン-α-オレフィン共重合体Dを含む、発明C1~C11のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C13]
エチレン-α-オレフィン共重合体Dとしてリサイクルエチレン-α-オレフィン共重合体を含む、発明C12に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C14]
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、エチレン-α-オレフィン共重合体Dが1~40重量%である、発明C12又はC13に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C15]
充填材Eを含む、発明C1~C14のいずれかに記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C16]
充填材Eとしてリサイクル充填材を含む、発明C15に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C17]
充填材Eとして無機充填材を含む、発明C15又はC16に記載のプロピレン樹脂組成物。
[発明C18]
発明C1~C17のいずれか一項に記載のプロピレン樹脂組成物を含む成形体。
【0009】
本発明の他の態様を以下に示す。
・ヘテロファジックプロピレン重合材料がプロピレンに由来する単量体単位を80重量%以上含有する重合体I(ただし、該重合体Iの全重量を100重量%とする。)と、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位とプロピレンに由来する単量体単位とを含有する重合体IIとを含む混合物であり、
重合体Iのアイソタクチックペンタッド分率が0.981以上である、本発明のプロピレン樹脂組成物。
・プロピレン重合体A’及びCの少なくとも一方としてリサイクルプロピレン重合体を含み、他方としてバージンプロピレン重合体を含む、本発明のプロピレン樹脂組成物。
・プロピレン重合体Aとしてリサイクルプロピレン重合体を含み、プロピレン重合体Bとしてバージンプロピレン重合体を含む、本発明のプロピレン樹脂組成物。
・重合体Bとしてリサイクルプロピレン重合体を含む、本発明のプロピレン樹脂組成物。
・重合体A’、A、B、及びCの少なくとも1つがリサイクルプロピレン重合体の場合、プロピレン樹脂組成物が、充填材もしくはエチレン-α-オレフィン共重合体、もしくは充填材とエチレン-α-オレフィン共重合体を含んでいてもよい。充填材はリサイクル充填材であってよく、エチレン-α-オレフィン共重合体はリサイクルエチレン-α-オレフィン共重合体であってよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐ヒンジ性に優れる成形体及びその原料であるプロピレン樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
本明細書において、用語「プロピレン重合体」は、プロピレンに由来する単量体単位を50重量%以上有する重合体を意味する。後で詳細に説明する。
本明細書において、用語「プロピレン樹脂組成物」は、プロピレン重合体を含有する組成物を意味する。後で詳細に説明する。
本明細書において、用語「α-オレフィン」は、α位に炭素-炭素不飽和二重結合を有する脂肪族不飽和炭化水素を意味する。
本明細書において、用語「C4~10の炭化水素基」は、炭素原子数4~10の炭化水素基を意味する。他の類似の表現についても同様である。
本明細書において、用語「エチレン-α-オレフィン共重合体」は、エチレンに由来する単量体単位と、C4以上(炭素原子数4以上を意味する。他の類似の表現についても同様である)のα-オレフィンに由来する単量体単位とを含有する共重合体であり、プロピレンに由来する単量体単位を実質的に含まないものを意味する。後で詳細に説明する。
本明細書において、用語「ヘテロファジックプロピレン重合材料」は、プロピレンに由来する単量体単位を80重量%以上含有する重合体I(ただし、該重合体Iの全重量を100重量%とする。)と、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位とプロピレンに由来する単量体単位とを含有する重合体IIとを含む混合物を意味する。
本明細書において、用語「キシレン可溶成分(「CXS成分」ともいう)」は、重合体に含まれるp-キシレンに可溶な成分であって、下記方法により得られる固形物を意味する:
重合体約2gを、沸騰しているp-キシレン中で2時間溶解して溶液を得、次いで、該溶液を20℃まで冷却することにより析出させた固形物をろ別し、得られたろ液を濃縮して、固形物を得る方法。
本明細書において、用語「キシレン不溶成分(「CXIS成分」ともいう)」は、重合体中の「CXS成分」以外の成分を意味する。上記方法によりろ紙上に残った固形物を真空乾燥することにより、CXIS成分が得られる。
【0012】
本明細書において開示されている全ての数は、「約」又は「概ね」という単語がそれと関連して使用されようとなかろうと、近似値である。それらは、1パーセント、2パーセント、5パーセント、又は時には10~20パーセントで変動してもよい。下限R及び上限Rを伴う数値の範囲が開示されている場合はいつも、範囲に含まれる任意の数が特に開示される。特に、範囲内の下記の数が特に開示される。R=R+k(R-R)(式中、kは、1パーセントずつ増加する1パーセント~100パーセントの範囲の変数であり、すなわち、kは、1パーセント、2パーセント、3パーセント、4パーセント、5パーセント、...、50パーセント、51パーセント、52パーセント、...、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、又は100パーセントである)。さらに、上記に記載の2つのRの数によって定義される任意の数値の範囲もまた、特に開示される。
【0013】
数値範囲を表す「下限~上限」の記載は、「下限以上、上限以下」を表し、「上限~下限」の記載は、「上限以下、下限以上」を表す。すなわち、これらの記載は、下限及び上限を含む数値範囲を表すが、一態様において、上限及び下限の一方又は両方が除外されてもよい、すなわち、「下限~上限」が、「下限より多く、上限以下」、「下限以上、上限未満」、又は「下限より多く、上限未満」を表してもよい。同様に、「xx以上」が「xxより多い」を表してもよく、「xx以下」が「xx未満」を表してもよい。
【0014】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
プロピレン樹脂組成物
本発明の「プロピレン樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう)」は、アイソタクチックペンタッド分率が0.981未満であるプロピレン重合体A’と、アイソタクチックペンタッド分率が0.981以上であるプロピレン重合体Cを含む。このようなプロピレン樹脂組成物を成形することにより、耐ヒンジ性に優れる成形体を製造できる。また、本発明のプロピレン樹脂組成物を用いれば、自動車用成形品の製造等で一般的に採用されている射出成形のような、簡便な方法により成形体を製造できる。
【0016】
成形体の耐ヒンジ性の観点から、プロピレン重合体A’のアイソタクチックペンタッド分率とプロピレン重合体Cのアイソタクチックペンタッド分率の差が0.005以上であることが好ましく、より好ましくは0.010以上、0.015以上、又は0.017以上である。なお、本発明のプロピレン樹脂組成物がプロピレン重合体A’を2種以上含有する場合には、もっとも含有量の大きいプロピレン重合体A’のアイソタクチックペンタッド分率が上記「差」の算出のために用いられる。同様に、本発明のプロピレン樹脂組成物がプロピレン重合体Cを2種以上含有する場合には、もっとも含有量の大きいプロピレン重合体Cのアイソタクチックペンタッド分率が上記「差」の算出のために用いられる。下記の「プロピレン重合体Bのアイソタクチックペンタッド分率とプロピレン重合体Cのアイソタクチックペンタッド分率の差」でも同様である。
本発明のプロピレン樹脂組成物が、プロピレン重合体A’としてアイソタクチックペンタッド分率が0.963以上0.981未満であるプロピレン重合体Bを含む場合、プロピレン重合体Bのアイソタクチックペンタッド分率とプロピレン重合体Cのアイソタクチックペンタッド分率の差が0.005以上であることが好ましく、より好ましくは0.010以上、0.015以上、又は0.017以上である。
【0017】
一態様において、本発明のプロピレン樹脂組成物は、アイソタクチックペンタッド分率が0.961未満であるプロピレン重合体Aと、アイソタクチックペンタッド分率が0.961以上0.981未満であるプロピレン重合体Bと、アイソタクチックペンタッド分率が0.981以上であるプロピレン重合体Cを含む。
【0018】
「プロピレン重合体A’」等で示される各成分をそれぞれ、単に「成分A’」等ともいう。
【0019】
以下、各成分について説明する。
【0020】
プロピレン重合体A’
成分A’は、プロピレンに由来する単量体単位を50重量%以上有する重合体であり、成分A’のアイソタクチックペンタッド分率が0.981未満である。成分A’の例として、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体、及びヘテロファジックプロピレン重合材料が挙げられる。本発明のプロピレン樹脂組成物は、成分A’を1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。成分A’は、成形体の剛性と耐衝撃性との観点から、プロピレン単独重合体及びヘテロファジックプロピレン重合材料からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0021】
成分A’がヘテロファジックプロピレン重合材料である場合、成分A’のアイソタクチックペンタッド分率とは成分A’のCXISのアイソタクチックペンタッド分率を意味する。他の成分及び原料においても同様に、ヘテロファジックプロピレン重合材料のアイソタクチックペンタッド分率とはそのCXISのアイソタクチックペンタッド分率を意味する。
【0022】
成分A’のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率ともいう)は、0.981未満であり、例えば0.980以下であってよく、0.978以下であってよく、0.975以下であってよく、0.961未満であってよく、0.958以下であってよく、0.955以下であってよく、0.950以下であってもよい。その下限は特に限定されないが、例えば0.900以上であってよく、0.925以上であってよく、0.930以上であってよく、0.961以上であってよく、0.965以上であってよく、0.968以上であってもよい。本樹脂組成物を含む成形体の剛性及び寸法安定性の観点から、0.930以上であることが好ましい。
【0023】
アイソタクチックペンタッド分率は、ペンタッド単位での、アイソタクチック分率を意味する。すなわち、アイソタクチックペンタッド分率は、ペンタッド単位でみたときに、プロピレンに由来する単量体単位が5個連続してメソ結合した構造の含有割合を示す。なお、対象の成分が共重合体である場合には、プロピレンに由来する単量体単位の連鎖について測定される値をいう。
【0024】
本明細書において、アイソタクチックペンタッド分率は、13C-NMRスペクトルで測定される値をいう。具体的には、13C-NMRスペクトルによって得られるメチル炭素領域の全吸収ピークの面積に対するmmmmピークの面積の比を、アイソタクチックペンタッド分率とする。なお、13C-NMRスペクトルによるアイソタクチックペンタッド分率の測定方法は、例えば、A.ZambelliらによるMacromolecules,6,925(1973)に記載されている。ただし、13C-スペクトルによって得られる吸収ピークの帰属は、Macromolecules,8,687(1975)の記載に基づくものとする。
【0025】
触媒、ドナー、重合条件等を適切に選択することにより、所望のアイソタクチックペンタッド分率を有するプロピレン重合体を製造することができる。また、市販品から、適宜、所望のアイソタクチックペンタッド分率を有するプロピレン重合体を入手することもできる。
【0026】
プロピレン単独重合体
本樹脂組成物が成分A’としてプロピレン単独重合体を含む場合、当該プロピレン単独重合体の極限粘度数([η])は、樹脂組成物の溶融時の流動性と成形体の靭性との観点から、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることが更に好ましい。
【0027】
本明細書において、極限粘度数(単位:dL/g)は、以下の方法によって、テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定される値を意味する。
【0028】
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1g/dL、0.2g/dL及び0.5g/dLの3点について還元粘度を測定する。還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法により、極限粘度数を求める。外挿法による極限粘度数の計算方法は、例えば、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載されている。
【0029】
上記プロピレン単独重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。成分A’の分子量分布は、15.0以下であってよく、10.0以下であってもよい。成分A’の分子量分布は、3.0~15.0であることが好ましく、4.0~10.0であることがより好ましい。
【0030】
本明細書において、分子量分布は、下記条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を用いて算出される、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)を意味する。
装置:東ソー株式会社製 HLC-8121 GPC/HT
分離カラム:東ソー株式会社製 GMHHR-H(S)HT 3本
測定温度:140℃
キャリア:オルトジクロロベンゼン
流量:1.0mL/分
試料濃度:約1mg/mL
試料注入量:400μL
検出器:示差屈折
検量線作成方法:標準ポリスチレンを使用
【0031】
プロピレン単独重合体は、例えば、重合触媒を用いて、プロピレンを重合することにより製造できる。
【0032】
重合触媒の例として、チーグラー型触媒;チーグラー・ナッタ型触媒;シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属の化合物及びアルキルアルミノキサンを含む触媒;シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属の化合物、当該遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物を含む触媒;並びに無機粒子(シリカ、粘土鉱物等)に、触媒成分(シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属の化合物、イオン性の錯体を形成する化合物、有機アルミニウム化合物等)を担持して、変性させた触媒が挙げられる。
【0033】
上記重合触媒の例として、特開昭61-218606号公報、特開平5-194685号公報、特開平7-216017号公報、特開平9-316147号公報、特開平10-212319号公報、特開2004-182981号公報、特開2010-168545号公報、特開2011-246699号公報等に記載の触媒が挙げられる。
【0034】
また、上記重合触媒の存在下でプロピレンを予備重合させて得られた重合体を、重合触媒として用いることもできる。
【0035】
重合方法の例として、バルク重合、溶液重合、及び気相重合が挙げられる。ここで、バルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法をいい、溶液重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法をいう。また気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法をいう。
【0036】
重合方式の例として、バッチ式、連続式及びこれらの組み合わせが挙げられる。重合方式は、複数の重合反応槽を直列に連結させた多段式であってもよい。
【0037】
工業的及び経済的に優れる観点から、連続式の気相重合法又はバルク重合法と気相重合法とを連続的に行うバルク-気相重合法が好ましい。
【0038】
重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、単量体濃度、触媒投入量、重合時間等の重合条件)は、目的とする重合体の分子構造に応じて、適宜決定すればよい。
【0039】
重合工程の前又は後に他の工程が実施されてよい。例えば、重合工程の後、重合体中に含まれる残留溶媒、製造時に副生する超低分子量のオリゴマー等を除去するために、必要に応じて重合体を、重合体が融解する温度以下の温度で乾燥してもよい。乾燥方法の例として、特開昭55-75410号公報、特許第2565753号公報等に記載の方法が挙げられる。
【0040】
プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体
プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体は、プロピレンに由来する単量体単位とプロピレン以外の単量体に由来する単量体単位とを含有するものである。本樹脂組成物が成分A’として前記ランダム共重合体を含む場合、前記ランダム共重合体は、前記ランダム共重合体の重量を基準として、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を0.01~20重量%含有することが好ましい。
【0041】
プロピレン以外の単量体の例として、エチレン及びC4~12のα-オレフィンが挙げられる。中でも、エチレン及びC4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0042】
前記ランダム共重合体の例として、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン-1-オクテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセンランダム共重合体及びプロピレン-エチレン-1-オクテンランダム共重合体が挙げられる。
【0043】
本樹脂組成物が成分A’としてプロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体を含む場合、前記ランダム共重合体の極限粘度数([η])は、樹脂組成物の溶融時の流動性の観点から、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることが更に好ましい。
【0044】
前記ランダム重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。前記ランダム重合体の分子量分布は、10.0以下であってよく、7.0以下であってもよい。前記ランダム重合体の分子量分布は、3.0~10.0であることが好ましく、4.0~7.0であることがより好ましい。
【0045】
前記ランダム共重合体は例えば、前記プロピレン単独重合体の製造において使用できる重合触媒、重合方法、重合方式、及び重合条件に従って、プロピレン及びプロピレン以外の単量体を重合することにより製造できる。
【0046】
ヘテロファジックプロピレン重合材料
本樹脂組成物が成分A’としてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む場合、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料は、例えば、重合体Iを形成する第1の重合工程と、重合体IIを形成する第2の重合工程を実施することにより製造することができる。これらの重合工程は、前記プロピレン単独重合体の製造において使用できる重合触媒、重合方法、重合方式、及び重合条件に従って実施することができる。
ヘテロファジックプロピレン重合材料においては、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%として、ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれる重合体Iと重合体IIとの合計が100重量%であってよい。
【0047】
上述したように、重合体Iはプロピレンに由来する単量体単位を80重量%以上含有する(ただし、重合体Iの全重量を100重量%とする)。重合体Iは、例えば、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含んでいてもよい。重合体Iが、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含む場合、この含有量は、重合体Iの全重量を基準として、例えば、0.01重量%以上20重量%未満であってもよい。
【0048】
プロピレン以外の単量体の例として、エチレン及びC4以上のα-オレフィンが挙げられる。中でも、エチレン及びC4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0049】
プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含む共重合体の例として、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。
【0050】
重合体Iは、成形体の寸法安定性の観点から、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン単独重合体がより好ましい。
【0051】
好ましくは、重合体Iのアイソタクチックペンタッド分率は0.981未満であり、例えば0.980以下であってよく、0.978以下であってよく、0.975以下であってよく、0.961未満であってよく、0.950以下であってもよい。その下限は特に限定されないが、例えば0.900以上であってよく、0.925以上であってよく、0.930以上であってよく、0.961以上であってよく、0.965以上であってよく、0.968以上であってもよい。
【0052】
重合体Iの含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、50~99重量%であることが好ましく、60~95重量%であることがより好ましい。
【0053】
上述したように、重合体IIはエチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位とプロピレンに由来する単量体単位とを含有する。好ましくは、重合体IIは、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位を30重量%以上含有し、かつ、プロピレンに由来する単量体単位を含有する(ただし、重合体IIの全重量を100重量%とする)。
【0054】
重合体IIにおいて、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、30~70重量%であってよく、35~60重量%であってもよい(ただし、重合体IIの全重量を100重量%とする)。
【0055】
重合体IIにおいて、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンとしては、エチレン及びC4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び1-デセンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0056】
重合体IIの例として、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-デセン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体及びプロピレン-1-デセン共重合体が挙げられる。中でも、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がより好ましい。
【0057】
重合体IIの含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、1~50重量%であることが好ましく、5~40重量%であることがより好ましい。
【0058】
ヘテロファジックプロピレン重合材料において、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、0.3~35重量%であってよく、0.7~24重量%であってもよい(ただし、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
【0059】
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のキシレン不溶成分(CXIS成分)の含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、50~99重量%であることが好ましく、60~95重量%であることがより好ましい。
【0060】
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のキシレン可溶成分(CXS成分)の含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、1~50重量%であることが好ましく、5~40重量%であることがより好ましい。
【0061】
好ましくは、ヘテロファジックプロピレン重合材料のCXISのアイソタクチックペンタッド分率は0.981未満であり、例えば0.980以下であってよく、0.978以下であってよく、0.975以下であってよく、0.961未満であってよく、0.958以下であってよく、0.955以下であってよく、0.950以下であってもよい。その下限は特に限定されないが、例えば0.900以上であってよく、0.925以上であってよく、0.930以上であってよく、0.961以上であってよく、0.965以上であってよく、0.968以上であってもよい。
【0062】
本発明において、ヘテロファジックプロピレン重合材料中のCXIS成分は、主として重合体Iから構成され、ヘテロファジックプロピレン重合材料中のCXS成分は、主として重合体IIから構成されると考えられる。
【0063】
ヘテロファジックプロピレン重合材料の例として、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-オクテン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、及び(プロピレン-1-オクテン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料が挙げられる。
【0064】
ここで、「(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料」との記載は、「重合体Iがプロピレン単独重合体であり、重合体IIがプロピレン-エチレン共重合体であるヘテロファジックプロピレン重合材料」を意味する。他の類似の表現においても同様である。
【0065】
ヘテロファジックプロピレン重合材料としては、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、又は(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料が好ましく、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料がより好ましい。
【0066】
重合体Iの極限粘度数([η]I)は、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることがより好ましい。
【0067】
重合体IIの極限粘度数([η]II)は、1.00~10.00dL/gであることが好ましく、2.00~10.00dL/gであることがより好ましく、2.00~9.00dL/gであることが更に好ましい。
【0068】
また、重合体Iの極限粘度数([η]I)に対する重合体IIの極限粘度数([η]II)の比([η]II/[η]I)は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
【0069】
重合体Iの極限粘度数([η]I)の測定方法の例として、重合体Iを形成する反応器から形成された重合体Iを抜き出し、当該重合体の極限粘度数を測定する方法が挙げられる。
【0070】
重合体IIの極限粘度数([η]II)は、例えば、ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度数([η]Total)、重合体Iの極限粘度数([η]I)並びに重合体II及び重合体Iの含有量を用いて、下記式(6)により算出できる。
【0071】
[η]II=([η]Total-[η]I×XI)/XII ・・・(6)
[η]Total:ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度数(dL/g)
[η]I:重合体Iの極限粘度数(dL/g)
XI:ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量に対する重合体Iの重量の比(重合体Iの重量/ヘテロファジックプロピレン重合材料の重量)
XII:ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量に対する重合体IIの重量の比(重合体IIの重量/ヘテロファジックプロピレン重合材料の重量)
【0072】
ここで、XI、XIIは、重合時の物質収支から求めることができる。
【0073】
なお、XIIは、重合体Iの融解熱量及びヘテロファジックプロピレン重合材料の融解熱量を測定し、下記式を用いて算出してもよい。
XII=1-(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:ヘテロファジックプロピレン重合材料の融解熱量(J/g)
(ΔHf)P:重合体Iの融解熱量(J/g)
【0074】
CXIS成分の極限粘度数([η]CXIS)は、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることがより好ましい。
【0075】
CXS成分の極限粘度数([η]CXS)は、1.00~10.00dL/gであることが好ましく、2.00~10.00dL/gであることがより好ましく、2.00~9.00dL/gであることが更に好ましい。
【0076】
CXIS成分の極限粘度数([η]CXIS)に対するCXS成分の極限粘度数([η]CXS)の比([η]CXS/[η]CXIS)は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
【0077】
重合体Iの分子量分布(Mw(I)/Mn(I))は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。
【0078】
CXIS成分の分子量分布(Mw(CXIS)/Mn(CXIS))は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。
【0079】
成分A’の温度230℃、荷重2.16kgfでのメルトフローレートは、樹脂組成物の成形加工性の観点から、0.1g/10分以上であることが好ましく、1~300g/10分であることがより好ましい。5g/10分以上であってもよく、10~300g/10分であってもよい。
【0080】
本明細書において、メルトフローレートは、JIS K7210に準拠して測定される値をいう。また、メルトフローレートを、以下、MFRと記すことがある。成分A’、成分A、成分B、成分Cおよびプロピレン樹脂組成物のMFRの測定温度は230℃である。
【0081】
一態様において、本樹脂組成物は成分A’としてバージンプロピレン重合体を含む。
【0082】
本明細書において、用語「バージンプロピレン重合体」とは、後述する「リサイクルプロピレン重合体」とは異なり、重合工程を含むプロセスによるプロピレン重合体の製造後、自動車等の製品又はその部品に成形されておらず、かつ、何らかの最終用途に使用されていない、プロピレン重合体を意味する。他の「バージンxxx」も同様である。
【0083】
一態様において、本樹脂組成物は成分A’としてリサイクルプロピレン重合体を含む。
【0084】
一態様において、リサイクルプロピレン重合体は、充填材もしくはエチレン-α-オレフィン共重合体、もしくは充填材とエチレン-α-オレフィン共重合体、を含みうる。
【0085】
本明細書において、用語「リサイクル(recycled)プロピレン重合体」とは、一旦、成形等の加工が施された後に、あるいは何らかの最終用途に使用された後に、回収(recovery)工程を経た後、再使用されるプロピレン重合体を意味する。他の「リサイクルxxx」も同様である。
【0086】
回収工程に供される原料の例として、使用された、自動車の内装部品(インスツルメントパネル、ドアトリム等)、自動車の外装部品(バンパー等)、その他の自動車部品(バッテリーケース等)、包装容器(食品用レトルトパウチ、詰め替え用パウチ、洗剤ボトル等)、家庭用電気製品の筐体、事務用品(トレー等)、家庭用日用品(コンタクトレンズケース等)が挙げられる。これらの回収原料には用途に応じてエチレン-α-オレフィン共重合体等の耐衝撃性を高めるエラストマー成分、または、および無機充填材等の充填材、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、着色剤(無機顔料、有機顔料、顔料分散剤等)、難燃剤、等の添加剤が含まれていてもよい。回収プロセスは特に限定されず、例えば公知の方法が挙げられる。
【0087】
一態様において、リサイクルプロピレン重合体を用意するプロセスは、回収工程のほかに任意の工程――例えば破砕工程、精製工程、溶融工程、他物質との混練工程、ペレット形態への成形工程――を含んでもよい。精製工程の例として、水、水性及び/又は油性薬剤による洗浄、微生物処理、磁力選別、比重選別が挙げられる。前記成形体には、例えば射出成形体が挙げられるがそれに限定されない。
【0088】
プロピレン重合体A
本樹脂組成物は、成分A’としてプロピレン重合体A(成分A)を含んでもよい。
成分Aは、プロピレンに由来する単量体単位を50重量%以上有する重合体であり、成分Aのアイソタクチックペンタッド分率が0.961未満である。成分Aの例として、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体、及びヘテロファジックプロピレン重合材料が挙げられる。本発明のプロピレン樹脂組成物が成分Aを含む場合、成分Aを1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。成分Aは、成形体の剛性と耐衝撃性との観点から、プロピレン単独重合体及びヘテロファジックプロピレン重合材料からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0089】
成分Aのアイソタクチックペンタッド分率は、0.961未満であり、例えば0.958以下であってよく、0.955以下であってよく、0.950以下であってもよい。その下限は特に限定されないが、例えば0.900以上であってよく、0.925以上であってもよい。本樹脂組成物を含む成形体の剛性及び寸法安定性の観点から、0.930以上であることが好ましい。
【0090】
触媒、ドナー、重合条件等を適切に選択することにより、所望のアイソタクチックペンタッド分率を有するプロピレン重合体を製造することができる。重合方法の例として、特開2010-168545公報、特開2011-246699公報等に記載の方法が挙げられる。また、市販品から、適宜、所望のアイソタクチックペンタッド分率のプロピレン重合体を入手することもできる。
【0091】
プロピレン単独重合体
本樹脂組成物が成分Aとしてプロピレン単独重合体を含む場合、当該プロピレン単独重合体の極限粘度数([η])は、樹脂組成物の溶融時の流動性と成形体の靭性との観点から、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることが更に好ましい。
【0092】
上記プロピレン単独重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。成分Aの分子量分布は、30.0以下であってよく、25.0以下であってもよい。成分Aの分子量分布は、3.0~30.0であることが好ましく、4.0~25.0であることがより好ましい。
【0093】
成分Aとしてのプロピレン単独重合体は、例えば、成分A’としての前記プロピレン単独重合体の製造において使用できる重合触媒、重合方法、重合方式、及び重合条件に従って、プロピレンを重合することにより製造できる。
【0094】
プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体
プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体は、プロピレンに由来する単量体単位とプロピレン以外の単量体に由来する単量体単位とを含有するものである。本樹脂組成物が成分Aとして前記ランダム共重合体を含む場合、前記ランダム共重合体は、前記ランダム共重合体の重量を基準として、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を0.01~20重量%含有することが好ましい。
【0095】
プロピレン以外の単量体の例として、エチレン及びC4~12のα-オレフィンが挙げられる。中でも、エチレン及びC4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0096】
前記ランダム共重合体の例として、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン-1-オクテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセンランダム共重合体及びプロピレン-エチレン-1-オクテンランダム共重合体が挙げられる。
【0097】
本樹脂組成物が成分Aとしてプロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体を含む場合、前記ランダム共重合体の極限粘度数([η])は、樹脂組成物の溶融時の流動性の観点から、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることが更に好ましい。
【0098】
前記ランダム重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。前記ランダム重合体の分子量分布は、10.0以下であってよく、7.0以下であってもよい。前記ランダム重合体の分子量分布は、3.0~10.0であることが好ましく、4.0~7.0であることがより好ましい。
【0099】
前記ランダム共重合体は例えば、前記プロピレン単独重合体の製造において使用できる重合触媒、重合方法、重合方式、及び重合条件に従って、プロピレン及びプロピレン以外の単量体を重合することにより製造できる。
【0100】
ヘテロファジックプロピレン重合材料
本樹脂組成物が成分Aとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む場合、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料は、例えば、重合体Iを形成する第1の重合工程と、重合体IIを形成する第2の重合工程を実施することにより製造することができる。これらの重合工程は、前記プロピレン単独重合体の製造において使用できる重合触媒、重合方法、重合方式、及び重合条件に従って実施することができる。
ヘテロファジックプロピレン重合材料においては、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%として、ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれる重合体Iと重合体IIとの合計が100重量%であってよい。
【0101】
上述したように、重合体Iはプロピレンに由来する単量体単位を80重量%以上含有する(ただし、重合体Iの全重量を100重量%とする)。重合体Iは、例えば、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含んでいてもよい。重合体Iが、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含む場合、この含有量は、重合体Iの全重量を基準として、例えば、0.01重量%以上20重量%未満であってもよい。
【0102】
プロピレン以外の単量体の例として、エチレン及びC4以上のα-オレフィンが挙げられる。中でも、エチレン及びC4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0103】
プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含む共重合体の例として、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。
【0104】
重合体Iは、成形体の寸法安定性の観点から、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン単独重合体がより好ましい。
【0105】
好ましくは、重合体Iのアイソタクチックペンタッド分率は0.961未満であり、例えば0.958以下であってよく、0.955以下であってよく、0.950以下であってもよい。その下限は特に限定されないが、例えば0.900以上であってよく、0.925以上であってよく、0.930以上であってもよい。
【0106】
重合体Iの含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、50~99重量%であることが好ましく、60~95重量%であることがより好ましい。
【0107】
上述したように、重合体IIはエチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位とプロピレンに由来する単量体単位とを含有する。好ましくは、重合体IIは、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位を30重量%以上含有し、かつ、プロピレンに由来する単量体単位を含有する(ただし、重合体IIの全重量を100重量%とする)。
【0108】
重合体IIにおいて、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、30~70重量%であってよく、35~60重量%であってもよい(ただし、重合体IIの全重量を100重量%とする)。
【0109】
重合体IIにおいて、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンとしては、エチレン及びC4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び1-デセンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0110】
重合体IIの例として、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-デセン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体及びプロピレン-1-デセン共重合体が挙げられる。中でも、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がより好ましい。
【0111】
重合体IIの含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、1~50重量%であることが好ましく、5~40重量%であることがより好ましい。
【0112】
ヘテロファジックプロピレン重合材料において、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、0.3~35重量%であってよく、0.7~24重量%であってもよい(ただし、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
【0113】
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のキシレン不溶成分(CXIS成分)の含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、50~99重量%であることが好ましく、60~95重量%であることがより好ましい。
【0114】
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のキシレン可溶成分(CXS成分)の含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、1~50重量%であることが好ましく、5~40重量%であることがより好ましい。
【0115】
好ましくは、ヘテロファジックプロピレン重合材料のCXISのアイソタクチックペンタッド分率は0.961未満であり、例えば0.958以下であってよく、0.955以下であってよく、0.950以下であってもよい。その下限は特に限定されないが、例えば0.900以上であってよく、0.925以上であってよく、0.930以上であってもよい。すなわち、プロピレン重合体Aとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含んでよく、ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれるキシレン不溶成分(CXIS)のアイソタクチックペンタッド分率が0.961未満であってよく、又は、上記各数値範囲であってよい。
【0116】
本発明において、ヘテロファジックプロピレン重合材料中のCXIS成分は、主として重合体Iから構成され、ヘテロファジックプロピレン重合材料中のCXS成分は、主として重合体IIから構成されると考えられる。
【0117】
ヘテロファジックプロピレン重合材料の例として、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-オクテン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、及び(プロピレン-1-オクテン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料が挙げられる。
【0118】
ここで、「(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料」との記載は、「重合体Iがプロピレン単独重合体であり、重合体IIがプロピレン-エチレン共重合体であるヘテロファジックプロピレン重合材料」を意味する。他の類似の表現においても同様である。
【0119】
ヘテロファジックプロピレン重合材料としては、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、又は(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料が好ましく、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料がより好ましい。
【0120】
重合体Iの極限粘度数([η]I)は、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることがより好ましい。
【0121】
重合体IIの極限粘度数([η]II)は、1.00~10.00dL/gであることが好ましく、2.00~10.00dL/gであることがより好ましく、2.00~9.00dL/gであることが更に好ましい。
【0122】
また、重合体Iの極限粘度数([η]I)に対する重合体IIの極限粘度数([η]II)の比([η]II/[η]I)は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
【0123】
重合体Iの極限粘度数([η]I)は、例えば、成分A’としてのヘテロファジックプロピレン重合材料の重合体Iについて上述した方法で測定できる。
【0124】
重合体IIの極限粘度数([η]II)は、例えば、成分A’としてのヘテロファジックプロピレン重合材料の重合体Iについて上述した方法で測定できる。
【0125】
CXIS成分の極限粘度数([η]CXIS)は、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることがより好ましい。
【0126】
CXS成分の極限粘度数([η]CXS)は、1.00~10.00dL/gであることが好ましく、2.00~10.00dL/gであることがより好ましく、2.00~9.00dL/gであることが更に好ましい。
【0127】
CXIS成分の極限粘度数([η]CXIS)に対するCXS成分の極限粘度数([η]CXS)の比([η]CXS/[η]CXIS)は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
【0128】
重合体Iの分子量分布(Mw(I)/Mn(I))は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。
【0129】
CXIS成分の分子量分布(Mw(CXIS)/Mn(CXIS))は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。
【0130】
成分Aの温度230℃、荷重2.16kgfでのメルトフローレートは、樹脂組成物の成形加工性の観点から、0.1g/10分以上であることが好ましく、1~300g/10分であることがより好ましい。
【0131】
本樹脂組成物は成分A’としてリサイクルプロピレン重合体A’を含んでよく、バージンプロピレン重合体A’を含んでもよい。
【0132】
プロピレン重合体B
成形体の耐ヒンジ性の観点から、好ましくは、本樹脂組成物は、成分A’としてプロピレン重合体B(成分B)を含む。
成分Bは、プロピレンに由来する単量体単位を50重量%以上有する重合体であり、成分Bのアイソタクチックペンタッド分率が0.961以上0.981未満である。成分Bの例として、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体、及びヘテロファジックプロピレン重合材料が挙げられる。本発明のプロピレン樹脂組成物が成分Bを含む場合、成分Bを1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。成分Bは、成形体の剛性と耐衝撃性との観点から、プロピレン単独重合体及びヘテロファジックプロピレン重合材料からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0133】
成形体の耐ヒンジ性の観点から、好ましくは、成分Bのアイソタクチックペンタッド分率は0.963以上、0.965以上、又は0.968以上である。その上限は、0.981未満であり、例えば0.980以下であってよく、0.978以下であってよく、0.975以下であってもよい。
【0134】
プロピレン単独重合体
本樹脂組成物が成分Bとしてプロピレン単独重合体を含む場合、当該プロピレン単独重合体の極限粘度数([η])は、樹脂組成物の溶融時の流動性と成形体の靭性との観点から、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることが更に好ましい。
【0135】
上記プロピレン単独重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。成分Bの分子量分布は、15.0以下であってよく、10.0以下であってもよい。成分Bの分子量分布は、3.0~15.0であることが好ましく、4.0~10.0であることがより好ましい。
【0136】
成分Bとしてのプロピレン単独重合体は、例えば、成分Aとしての前記プロピレン単独重合体の製造において使用できる重合触媒、重合方法、重合方式、及び重合条件に従って、プロピレンを重合することにより製造できる。
【0137】
プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体
プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体は、プロピレンに由来する単量体単位とプロピレン以外の単量体に由来する単量体単位とを含有するものである。本樹脂組成物が成分Bとして前記ランダム共重合体を含む場合、前記ランダム共重合体は、前記ランダム共重合体の重量を基準として、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を0.01~20重量%含有することが好ましい。
【0138】
プロピレン以外の単量体の例として、エチレン及びC4~12のα-オレフィンが挙げられる。中でも、エチレン及びC4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0139】
前記ランダム共重合体の例として、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン-1-オクテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセンランダム共重合体及びプロピレン-エチレン-1-オクテンランダム共重合体が挙げられる。
【0140】
本樹脂組成物が成分Bとして前記ランダム共重合体を含む場合、前記ランダム共重合体の極限粘度数([η])は、樹脂組成物の溶融時の流動性の観点から、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることが更に好ましい。
【0141】
前記ランダム重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。前記ランダム重合体の分子量分布は、10.0以下であってよく、7.0以下であってもよい。前記ランダム重合体の分子量分布は、3.0~10.0であることが好ましく、4.0~7.0であることがより好ましい。
【0142】
前記ランダム共重合体は例えば、前記プロピレン単独重合体の製造において使用できる重合触媒、重合方法、重合方式、及び重合条件に従って、プロピレン及びプロピレン以外の単量体を重合することにより製造できる。
【0143】
ヘテロファジックプロピレン重合材料
本樹脂組成物が成分Bとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む場合、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料は、例えば、重合体Iを形成する第1の重合工程と、重合体IIを形成する第2の重合工程を実施することにより製造することができる。これらの重合工程は、前記プロピレン単独重合体の製造において使用できる重合触媒、重合方法、重合方式、及び重合条件に従って実施することができる。
ヘテロファジックプロピレン重合材料においては、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%として、ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれる重合体Iと重合体IIとの合計が100重量%であってよい。
【0144】
上述したように、重合体Iはプロピレンに由来する単量体単位を80重量%以上含有する。重合体Iは、例えば、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含んでいてもよい。重合体Iが、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含む場合、この含有量は、重合体Iの全重量を基準として、例えば、0.01重量%以上20重量%未満であってもよい。
【0145】
プロピレン以外の単量体の例として、エチレン及びC4以上のα-オレフィンが挙げられる。中でも、エチレン及びC4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0146】
プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含む共重合体の例として、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。
【0147】
重合体Iは、成形体の寸法安定性の観点から、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン単独重合体がより好ましい。
【0148】
好ましくは、重合体Iのアイソタクチックペンタッド分率は0.961以上であり、例えば0.963以上であってよく、0.965以上であってよく、0.968以上であってもよい。その上限は、好ましくは0.981未満であり、例えば0.980以下であってよく、0.978以下であってよく、0.975以下であってもよい。
【0149】
重合体Iの含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、50~99重量%であることが好ましく、60~95重量%であることがより好ましい。
【0150】
上述したように、重合体IIはエチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位とプロピレンに由来する単量体単位とを含有する。好ましくは、重合体IIは、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位を30重量%以上含有し、かつ、プロピレンに由来する単量体単位を含有する。
【0151】
重合体IIにおいて、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、30~70重量%であってよく、35~60重量%であってもよい。
【0152】
重合体IIにおいて、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンとしては、エチレン及びC4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び1-デセンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0153】
重合体IIの例として、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-デセン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体及びプロピレン-1-デセン共重合体が挙げられる。中でも、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がより好ましい。
【0154】
重合体IIの含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、1~50重量%であることが好ましく、5~40重量%であることがより好ましい。
【0155】
ヘテロファジックプロピレン重合材料において、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、0.3~35重量%であってよく、0.7~24重量%であってもよい(ただし、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
【0156】
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のキシレン不溶成分(CXIS成分)の含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、50~99重量%であることが好ましく、60~95重量%であることがより好ましい。
【0157】
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のキシレン可溶成分(CXS成分)の含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、1~50重量%であることが好ましく、5~40重量%であることがより好ましい。
【0158】
好ましくは、ヘテロファジックプロピレン重合材料のCXISのアイソタクチックペンタッド分率は0.961以上であり、例えば0.963以上であってよく、0.965以上であってよく、0.968以上であってもよい。その下限は、好ましくは0.981未満であり、例えば0.980以下であってよく、0.978以下であってよく、0.975以下であってもよい。すなわち、プロピレン重合体Bとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含んでよく、ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれるキシレン不溶成分(CXIS)のアイソタクチックペンタッド分率が0.961以上0.981未満であってよく、又は、上記各数値範囲であってよい。
【0159】
本発明において、ヘテロファジックプロピレン重合材料中のCXIS成分は、主として重合体Iから構成され、ヘテロファジックプロピレン重合材料中のCXS成分は、主として重合体IIから構成されると考えられる。
【0160】
ヘテロファジックプロピレン重合材料の例として、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-オクテン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、及び(プロピレン-1-オクテン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料が挙げられる。
【0161】
ここで、「(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料」との記載は、「重合体Iがプロピレン単独重合体であり、重合体IIがプロピレン-エチレン共重合体であるヘテロファジックプロピレン重合材料」を意味する。他の類似の表現においても同様である。
【0162】
ヘテロファジックプロピレン重合材料としては、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、又は(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料が好ましく、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料がより好ましい。
【0163】
重合体Iの極限粘度数([η]I)は、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることがより好ましい。
【0164】
重合体IIの極限粘度数([η]II)は、1.00~10.00dL/gであることが好ましく、2.00~10.00dL/gであることがより好ましく、2.00~9.00dL/gであることが更に好ましい。
【0165】
また、重合体Iの極限粘度数([η]I)に対する重合体IIの極限粘度数([η]II)の比([η]II/[η]I)は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
【0166】
重合体Iの極限粘度数([η]I)は、例えば、成分Aとしてのヘテロファジックプロピレン重合材料の重合体Iについて上述した方法で測定できる。
【0167】
重合体IIの極限粘度数([η]II)は、例えば、成分Aとしてのヘテロファジックプロピレン重合材料の重合体Iについて上述した方法で測定できる。
【0168】
CXIS成分の極限粘度数([η]CXIS)は、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることがより好ましい。
【0169】
CXS成分の極限粘度数([η]CXS)は、1.00~10.00dL/gであることが好ましく、2.00~10.00dL/gであることがより好ましく、2.00~9.00dL/gであることが更に好ましい。
【0170】
CXIS成分の極限粘度数([η]CXIS)に対するCXS成分の極限粘度数([η]CXS)の比([η]CXS/[η]CXIS)は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
【0171】
重合体Iの分子量分布(Mw(I)/Mn(I))は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。
【0172】
CXIS成分の分子量分布(Mw(CXIS)/Mn(CXIS))は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。
【0173】
成分Bの温度230℃、荷重2.16kgfでのメルトフローレートは、樹脂組成物の成形加工性の観点から、0.1g/10分以上であることが好ましく、1~300g/10分であることがより好ましい。
【0174】
本樹脂組成物は成分Bとしてリサイクルプロピレン重合体Bを含んでよく、バージンプロピレン重合体Bを含んでもよい。
【0175】
プロピレン重合体C
成分Cは、プロピレンに由来する単量体単位を50重量%以上有する重合体であり、成分Cのアイソタクチックペンタッド分率が0.981以上である。成分Cの例として、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体、及びヘテロファジックプロピレン重合材料が挙げられる。本発明のプロピレン樹脂組成物は、成分Cを1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。成分Cは、成形体の剛性と耐衝撃性との観点から、プロピレン単独重合体及びヘテロファジックプロピレン重合材料からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、ヘテロファジックプロピレン重合材料であることがより好ましい。
【0176】
成分Cのアイソタクチックペンタッド分率は、0.981以上であり、例えば0.983以上であってよく、0.985以上であってよく、0.990以上であってもよい。その上限は特に限定されないが、例えば1.000以下であってよく、0.998以下であってよく、0.995以下であってよく、0.990以下であってもよい。
【0177】
プロピレン単独重合体
本樹脂組成物が成分Cとしてプロピレン単独重合体を含む場合、当該プロピレン単独重合体の極限粘度数([η])は、樹脂組成物の溶融時の流動性と成形体の靭性との観点から、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることが更に好ましい。
【0178】
上記プロピレン単独重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。成分Cの分子量分布は、15.0以下であってよく、10.0以下であってもよい。成分Cの分子量分布は、3.0~15.0であることが好ましく、4.0~10.0であることがより好ましい。
【0179】
成分Cとしてのプロピレン単独重合体は、例えば、成分Aとしての前記プロピレン単独重合体の製造において使用できる重合触媒、重合方法、重合方式、及び重合条件に従って、プロピレンを重合することにより製造できる。
【0180】
プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体
プロピレンとプロピレン以外の単量体とのランダム共重合体は、プロピレンに由来する単量体単位とプロピレン以外の単量体に由来する単量体単位とを含有するものである。本樹脂組成物が成分Cとして前記ランダム共重合体を含む場合、前記ランダム共重合体は、前記ランダム共重合体の重量を基準として、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を0.01~20重量%含有することが好ましい。
【0181】
プロピレン以外の単量体の例として、エチレン及びC4~12のα-オレフィンが挙げられる。中でも、エチレン及びC4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0182】
前記ランダム共重合体の例として、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン-1-オクテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセンランダム共重合体及びプロピレン-エチレン-1-オクテンランダム共重合体が挙げられる。
【0183】
本樹脂組成物が成分Cとして前記ランダム共重合体を含む場合、前記ランダム共重合体の極限粘度数([η])は、樹脂組成物の溶融時の流動性の観点から、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることが更に好ましい。
【0184】
前記ランダム重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。前記ランダム重合体の分子量分布は、10.0以下であってよく、7.0以下であってもよい。前記ランダム重合体の分子量分布は、3.0~10.0であることが好ましく、4.0~7.0であることがより好ましい。
【0185】
前記ランダム共重合体は例えば、前記プロピレン単独重合体の製造において使用できる重合触媒、重合方法、重合方式、及び重合条件に従って、プロピレン及びプロピレン以外の単量体を重合することにより製造できる。
【0186】
ヘテロファジックプロピレン重合材料
本樹脂組成物が成分Cとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む場合、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料は、例えば、重合体Iを形成する第1の重合工程と、重合体IIを形成する第2の重合工程を実施することにより製造することができる。これらの重合工程は、前記プロピレン単独重合体の製造において使用できる重合触媒、重合方法、重合方式、及び重合条件に従って実施することができる。
ヘテロファジックプロピレン重合材料においては、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%として、ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれる重合体Iと重合体IIとの合計が100重量%であってよい。
【0187】
上述したように、重合体Iはプロピレンに由来する単量体単位を80重量%以上含有する。重合体Iは、例えば、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含んでいてもよい。重合体Iが、プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含む場合、この含有量は、重合体Iの全重量を基準として、例えば、0.01重量%以上20重量%未満であってもよい。
【0188】
プロピレン以外の単量体の例として、エチレン及びC4以上のα-オレフィンが挙げられる。中でも、エチレン及びC4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0189】
プロピレン以外の単量体に由来する単量体単位を含む共重合体の例として、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。
【0190】
重合体Iは、成形体の寸法安定性の観点から、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン単独重合体がより好ましい。
【0191】
好ましくは、重合体Iのアイソタクチックペンタッド分率は0.981以上であり、例えば0.983以上であってよく、0.985以上であってよく、0.990以上であってもよい。その上限は特に限定されないが、例えば1.000以下であってよく、0.998以下であってよく、0.995以下であってよく、0.990以下であってもよい。
【0192】
重合体Iの含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、50~99重量%であることが好ましく、60~95重量%であることがより好ましい。
【0193】
上述したように、重合体IIはエチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位とプロピレンに由来する単量体単位とを含有する。好ましくは、重合体IIは、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位を30重量%以上含有し、かつ、プロピレンに由来する単量体単位を含有する。
【0194】
重合体IIにおいて、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、30~70重量%であってよく、35~60重量%であってもよい。
【0195】
重合体IIにおいて、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンとしては、エチレン及びC4~10のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン及び1-デセンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、エチレン及び1-ブテンからなる群より選択される少なくとも一種が更に好ましい。
【0196】
重合体IIの例として、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-デセン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体及びプロピレン-1-デセン共重合体が挙げられる。中でも、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体及びプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体が好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がより好ましい。
【0197】
重合体IIの含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、1~50重量%であることが好ましく、5~40重量%であることがより好ましい。
【0198】
ヘテロファジックプロピレン重合材料において、エチレン及びC4~12のα-オレフィンからなる群より選択される少なくとも一種のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、0.3~35重量%であってよく、0.7~24重量%であってもよい(ただし、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
【0199】
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のキシレン不溶成分(CXIS成分)の含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、50~99重量%であることが好ましく、60~95重量%であることがより好ましい。
【0200】
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のキシレン可溶成分(CXS成分)の含有量は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を基準として、1~50重量%であることが好ましく、5~40重量%であることがより好ましい。
【0201】
好ましくは、ヘテロファジックプロピレン重合材料のCXISのアイソタクチックペンタッド分率は0.981以上であり、例えば0.983以上であってよく、0.985以上であってよく、0.990以上であってもよい。その上限は特に限定されないが、例えば1.000以下であってよく、0.998以下であってよく、0.995以下であってよく、0.990以下であってもよい。
【0202】
本発明において、ヘテロファジックプロピレン重合材料中のCXIS成分は、主として重合体Iから構成され、ヘテロファジックプロピレン重合材料中のCXS成分は、主として重合体IIから構成されると考えられる。
【0203】
ヘテロファジックプロピレン重合材料の例として、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-エチレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-ヘキセン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、(プロピレン-1-ヘキセン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料、(プロピレン-1-オクテン)-(プロピレン-1-オクテン)重合材料、及び(プロピレン-1-オクテン)-(プロピレン-1-デセン)重合材料が挙げられる。
【0204】
ここで、「(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料」との記載は、「重合体Iがプロピレン単独重合体であり、重合体IIがプロピレン-エチレン共重合体であるヘテロファジックプロピレン重合材料」を意味する。他の類似の表現においても同様である。
【0205】
ヘテロファジックプロピレン重合材料としては、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料、(プロピレン-エチレン)-(プロピレン-エチレン-1-ブテン)重合材料、又は(プロピレン-1-ブテン)-(プロピレン-1-ブテン)重合材料が好ましく、(プロピレン)-(プロピレン-エチレン)重合材料がより好ましい。
【0206】
重合体Iの極限粘度数([η]I)は、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることがより好ましい。
【0207】
重合体IIの極限粘度数([η]II)は、1.00~10.00dL/gであることが好ましく、2.00~10.00dL/gであることがより好ましく、2.00~9.00dL/gであることが更に好ましい。
【0208】
また、重合体Iの極限粘度数([η]I)に対する重合体IIの極限粘度数([η]II)の比([η]II/[η]I)は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
【0209】
重合体Iの極限粘度数([η]I)は、例えば、成分Aとしてのヘテロファジックプロピレン重合材料の重合体Iについて上述した方法で測定できる。
【0210】
重合体IIの極限粘度数([η]II)は、例えば、成分Aとしてのヘテロファジックプロピレン重合材料の重合体Iについて上述した方法で測定できる。
【0211】
CXIS成分の極限粘度数([η]CXIS)は、0.10~4.00dL/gであることが好ましく、0.50~3.00dL/gであることがより好ましく、0.70~2.00dL/gであることがより好ましい。
【0212】
CXS成分の極限粘度数([η]CXS)は、1.00~10.00dL/gであることが好ましく、2.00~10.00dL/gであることがより好ましく、2.00~9.00dL/gであることが更に好ましい。
【0213】
CXIS成分の極限粘度数([η]CXIS)に対するCXS成分の極限粘度数([η]CXS)の比([η]CXS/[η]CXIS)は、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。
【0214】
重合体Iの分子量分布(Mw(I)/Mn(I))は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。
【0215】
CXIS成分の分子量分布(Mw(CXIS)/Mn(CXIS))は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましい。
【0216】
成分Cの温度230℃、荷重2.16kgfでのメルトフローレートは、樹脂組成物の成形加工性の観点から、0.1g/10分以上であることが好ましく、1~300g/10分であることがより好ましい。
【0217】
本樹脂組成物は成分Cとしてリサイクルプロピレン重合体Cを含んでよく、バージンプロピレン重合体Cを含んでもよい。
【0218】
エチレン-α-オレフィン共重合体D
一態様において、本樹脂組成物はエチレン-α-オレフィン重合体Dを含む。エチレン-α-オレフィン重合体Dは、エチレン-α-オレフィンランダム重合体Drであってよい。
【0219】
成分Dにおいては、成分Dの全重量を100重量%として、成分Dに含まれるエチレンに由来する単量体単位の含有量とC4以上のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量との合計が100重量%であってよい。
【0220】
C4以上のα-オレフィンの例として、C4~12のα-オレフィンが挙げられる。C4~12のα-オレフィンの例として、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン及び1-デセンが挙げられる。中でも、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンが好ましい。上記α-オレフィンは、ビニルシクロプロパン、ビニルシクロブタンなどの環状構造を有するα-オレフィンであってよい。
【0221】
成分Dの例として、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-デセン共重合体、エチレン-(3-メチル-1-ブテン)共重合体、及びエチレンと環状構造を有するα-オレフィンとの共重合体が挙げられる。
【0222】
成分Dにおいて、C4以上のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、成分Dの全重量を基準として、1~49重量%であることが好ましく、5~49重量%であることがより好ましく、24~49重量%であることが更に好ましい。
【0223】
成分Dの密度は、成形体の耐衝撃性の観点から、0.85~0.89g/cmであることが好ましく、0.85~0.88g/cmであることがより好ましく、0.85~0.87g/cmであることが更に好ましい。
【0224】
成分Dの温度190℃、荷重2.16kgfでのメルトフローレートは、0.1~80g/10分であることが好ましい。
【0225】
成分Dの製造方法
成分Dは、重合触媒を用いて、エチレン及びC4以上のα-オレフィンを重合することにより製造できる。
【0226】
重合触媒の例として、メタロセン触媒に代表される均一系触媒、及びチーグラー・ナッタ型触媒が挙げられる。
【0227】
均一系触媒の例として、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属の化合物及びアルキルアルミノキサンを含む触媒;シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属の化合物、当該遷移金属化合物と反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物を含む触媒;並びに無機粒子(シリカ、粘土鉱物等)に、触媒成分(シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属の化合物、イオン性の錯体を形成する化合物、有機アルミニウム化合物等)を担持して変性させた触媒が挙げられる。
【0228】
チーグラー・ナッタ型触媒の例として、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とを組み合わせた触媒が挙げられる。
【0229】
成分Dとしては、市販品を用いてもよい。市販の成分Dの例として、ダウ・ケミカル日本株式会社製エンゲージ(登録商標)、三井化学株式会社製タフマー(登録商標)、株式会社プライムポリマー製ネオゼックス(登録商標)、ウルトゼックス(登録商標)、住友化学株式会社製エクセレンFX(登録商標)、スミカセン(登録商標)、及びエスプレンSPO(登録商標)が挙げられる。
【0230】
本樹脂組成物は成分Dとしてリサイクルエチレン-α-オレフィン共重合体を含んでよく、バージンエチレン-α-オレフィン共重合体を含んでもよい。エチレン-α-オレフィン共重合体がプロピレン重合体をリサイクルする際の原料に含まれてよく、リサイクルプロピレン重合体と共にリサイクルエチレン-α-オレフィン共重合体が本樹脂組成物の製造の原料に含まれてよい。
【0231】
充填材E
一態様において、本樹脂組成物は充填材Eを含む。
【0232】
成分Eとしては、無機充填材及び有機充填材が挙げられる。本発明のプロピレン樹脂組成物は、成分Eを1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0233】
無機充填材としては、ガラス、ケイ酸塩鉱物、アルミナ、シリカ、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、バリウム・フェライト、ストロンチウム・フェライト、酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸塩鉱物、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩基性硫酸マグネシウム、亜硫酸カルシウム、カーボンブラック及び硫化カドミウムが挙げられる。
【0234】
有機充填材としては、ポリエステル、芳香族ポリアミド、セルロース及びビニロンが挙げられる。
【0235】
充填材の形状は、板状であってよく、針状であってよく、繊維状であってよい。
【0236】
成分Eは、成形体の剛性、耐衝撃性及び寸法安定性の観点から、無機充填材が好ましく、板状ケイ酸塩鉱物であるタルクがより好ましい。
【0237】
成分Eの平均粒子径D50[L]は、成形体の剛性、耐衝撃性及び寸法安定性の観点から、20.0μm以下であることが好ましく、15.0μm以下であることがより好ましい。成分Eの平均粒子径D50[L]は、2.0μm以上であってよく、4.0μm以上であってもよい。成分Eの平均粒子径D50[L]は、2.0~20.0μmが好ましく、4.0~15.0μmがより好ましい。
成分Eの平均粒子径D50[S]は、成形体の剛性、耐衝撃性及び寸法安定性の観点から、5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましい。
成分Eの平均粒子径D50[S]は、0.5μm以上であってよく、1.0μm以上であってもよい。成分Eの平均粒子径D50[S]は、0.5~5.0μmが好ましく、1.0~3.0μmがより好ましい。
成分Eの平均粒子径D50[L]と平均粒子径D50[S]との比(D50[L]/D50[S])は、成形体の剛性、及び寸法安定性の観点から、1.5以上であってもよく、2.5以上であってもよい。D50[L]/D50[S]は、10以下であってもよく、8以下であってもよい。D50[L]/D50[S]は、1.5~10であってもよく、1.5~8であってもよく、2.5~10であってもよく、2.5~8であってもよい。
【0238】
本明細書において、「平均粒子径D50[L]」とは、JIS R1629に規定された方法に従い、レーザー回析法により測定された体積基準の粒子径分布測定データに基づいて決定されるものであり、該粒子径分布測定データにおいて、粒子径が小さい側からの粒子数の累積が50%に達したときの粒子径(50%相当粒子径)を意味する。このように定義される粒子径は、一般に「50%相当粒子径」と称され、「D50」で表記される。
本明細書において、「平均粒子径D50[S]」とは、JIS R1619に規定された方法に従い、遠心沈降法により測定された体積基準の粒子径分布測定データに基づいて決定されるものであり、該粒子径分布測定データにおいて、粒子径が小さい側からの粒子数の累積が50%に達したときの粒子径(50%相当粒子径)を意味する。
成分Eの平均粒子径D50[L]と平均粒子径D50[S]との比(D50[L]/D50[S])が大きいほど、成形体の剛性と寸法安定性に優れる。
【0239】
本樹脂組成物は成分Eとしてリサイクル充填材を含んでよく、バージン充填材を含んでもよい。充填材がプロピレン重合体をリサイクルする際の原料に含まれてよく、リサイクルプロピレン重合体と共にリサイクル充填材が本樹脂組成物の製造の原料に含まれてよい。
【0240】
各成分の含有量
本発明のプロピレン樹脂組成物において、各成分の含有量は特に限定されない。成形体の耐ヒンジ性の観点から、好ましくは、成分A’の含有量は、成分A’及びCの含有量の合計100重量部に対して1~99重量部、5~95重量部、10~90重量部、又は20~80重量部である。成形体の耐ヒンジ性の観点から、好ましくは、成分Bの含有量は、成分A’及びCの含有量の合計100重量部に対して1~99重量部、5~95重量部、10~90重量部、又は20~80重量部である。成形体の耐ヒンジ性の観点から、好ましくは、成分Cの含有量は、成分A’及びCの含有量の合計100重量部に対して1~99重量部、5~95重量部、10~90重量部、20~80重量部、30~70重量部、又は40~60重量部である。
【0241】
本発明のプロピレン樹脂組成物が成分A’として成分A及びBを含む場合、成形体の耐ヒンジ性の観点から、好ましくは、成分Aの含有量は、成分A、B、及びCの含有量の合計100重量部に対して1~60重量部であり、成分Bの含有量は5~94重量部であり、成分Cの含有量は5~94重量部である。より好ましくは、成分A及びBの含有量の合計は、成分A、B、及びCの含有量の合計100重量部に対して10~90重量部であり、成分Aの含有量は1~60重量部であり、成分Bの含有量は5~89重量部であり、成分Cの含有量は10~90重量部である。
好ましくは、成分Cの含有量は成分Aの含有量より大きい。
好ましくは、成分Bの含有量は成分Aの含有量より大きい。
【0242】
本発明のプロピレン樹脂組成物が成分Dを含む場合、成分Dの含有量は、成形体の耐ヒンジ性の観点から、成分A~Dの含有量の合計100重量部に対して、0~50重量部であってよく、0.1~40重量部であってよく、1~40重量部であってよく、1~30重量部であってよく、又は5~25重量部であってもよい。また、成分Dの含有量は、プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、0~50重量%であってよく、0.1~40重量%であってよく、1~40重量%であってよく、1~30重量%であってよく、又は5~25重量%であってもよく、好ましくは、1~40重量%、1~30重量%、又は5~25重量%である。
【0243】
本発明のプロピレン樹脂組成物が成分Eを含む場合、成分Eの含有量は、成形体の耐ヒンジ性の観点から、成分A~Eの含有量の合計100重量部に対して0~80重量部であってよく、1~60重量部であってよく、5~50重量部であってよく、10~40重量部であってよく、10~35重量部であってよく、15~25重量部であってもよい。
【0244】
成型体の耐ヒンジ性の観点から、本発明のプロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、プロピレン樹脂組成物に含まれる全ての重合体の合計量が70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%、又は95重量%以上であることが好ましい。なお、「プロピレン樹脂組成物に含まれる全ての重合体の合計量」とは、本発明のプロピレン樹脂組成物に含まれる全ての重合体――例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン共重合体、及び他の重合体が含まれる場合にはそれら全ての重合体――の合計量を意味する。
【0245】
成型体の耐ヒンジ性の観点から、本発明のプロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、成分A~Eの含有量の合計が50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、又は90重量%以上であることが好ましい。
【0246】
成型体の耐ヒンジ性の観点から、本発明のプロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、成分A’と成分Cの合計量が40重量%以上、又は50重量%以上であることが好ましい。成分A’が成分A及び成分Bを含む場合、成分Aと成分Bと成分Cの合計量が40重量%以上、又は50重量%以上であることが好ましい。
【0247】
プロピレン樹脂組成物の製造方法
本発明のプロピレン樹脂組成物は、各原料成分を溶融混練することによって得ることができる。溶融混練時の温度は、180℃以上であってよく、180~300℃であってもよく、180~250℃であってもよい。
【0248】
溶融混練には、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸同方向回転押出機等が使用できる。
【0249】
各原料成分の混練順序は特に限定されるものではない。例えば、成分A~Eを一括に混練してもよく、成分A~Eのうち、一部の成分を混練した後、得られた混練物と他の成分とを混練してもよい。
【0250】
プロピレン樹脂組成物の形状に特に制限はないが、プロピレン樹脂組成物は、例えば、ストランド状、シート状、平板状又はペレット状の形態であってもよい。ペレット状の樹脂組成物は、例えば、ストランド状の樹脂組成物を形成した後、これを適当な長さに裁断することにより製造できる。
【0251】
樹脂組成物の成形加工性、及び、成形体を製造する場合の生産安定性の観点から、成形体に成形加工する前の樹脂組成物の形状は、長さが1~50mm程度のペレット状であることが好ましい。
【0252】
本発明のプロピレン樹脂組成物は、上記以外の成分を含んでいてよい。このような成分の例として、例えば、熱可塑性樹脂(ポリスチレン類(例えばポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(α-メチルスチレン)、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合)樹脂、AAS(特殊アクリルゴム/アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂、ACS(アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合)樹脂、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール、グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂、ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、天然ゴム等)、エポキシ樹脂、ジアリルフタレートプリポリマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、さらにはバイオ原料から抽出された植物由来のモノマーを重合して製造されるPLA樹脂(ポリ乳酸)、中和剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、加工助剤、有機系過酸化物、着色剤(無機顔料、有機顔料、顔料分散剤等)、発泡剤、発泡核剤、可塑剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、高輝度化剤、抗菌剤及び光拡散剤が挙げられる。
【0253】
本樹脂組成物が成分A~E以外の成分として含んでもよい上記成分は、バージン材であってよく、リサイクル材であってもよく、リサイクルする際の原料に含まれてよく、リサイクルプロピレン重合体と共に本樹脂組成物の製造の原料に含まれてよい。
【0254】
プロピレン樹脂組成物の性質
一態様において、本発明のプロピレン樹脂組成物のメルトフローレート(温度230℃、荷重2.16kgf)は、1~100g/10分であることが好ましく、12~70g/10分であってよく、15~40g/10分であってもよい。成形加工性の観点から、プロピレン樹脂組成物のMFRは10g/10分以上が好ましい。得られる成形体の衝撃強度の観点から、プロピレン樹脂組成物のMFRは100g/10分以下が好ましい。
【0255】
一態様において、本発明のプロピレン樹脂組成物の密度は、1.30g/cm以下が好ましく、1.20g/cm以下がより好ましく、1.10g/cm以下がさらに好ましい。
一態様において、本発明のプロピレン樹脂組成物の密度は、0.80g/cm以上が好ましく、0.85g/cm以上がより好ましく、0.90g/cm以上がさらに好ましい。
【0256】
本発明のプロピレン樹脂組成物の密度は、JIS K7112に記載のA法である水中置換法にて測定される。
【0257】
本発明のプロピレン樹脂組成物は、成形して成形体を形成させるための材料として用いることができる。本発明のプロピレン樹脂組成物は、射出成形用材料として用いることが好ましい。以下、本発明のプロピレン樹脂組成物を射出成形用材料として用いて製造される射出成形体の一例について説明する。
【0258】
成形体
本発明の成形体は、本発明のプロピレン樹脂組成物を含む(から作られる)。本発明の成形体は耐ソルベントクラック性及び/または耐ヒンジ性に優れる。
【0259】
上記射出成形体は、射出成形法により製造できる。射出成形法の例として、一般的な射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、及びインサート・アウトサート成形法が挙げられる。射出成形体の形状に特に制限はない。
【0260】
本発明の射出成形体は、例えば、自動車材料用途、家電材料用途、及びコンテナー用途に好ましく用いることができ、中でも、自動車内外装用途に好適である。自動車内外装部品の例として、ドアートリム、ピラー、インストルメントパネル及びバンパーが挙げられる。
【実施例0261】
以下、実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0262】
実施例及び比較例では、以下の原料を使用した。
【0263】
成分A:アイソタクチックペンタッド分率が0.961未満であるプロピレン重合体
成分Aとして下記プロピレン重合体(ヘテロファジックプロピレン重合材料)(成分A-1、A-2)を準備した。
【0264】
(A-1)プロピレン重合体(ヘテロファジックプロピレン重合材料)
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレンに由来する単量体単位の含有量:9.5重量%
CXISのアイソタクチックペンタッド分率:0.958
重合体I:プロピレン単独重合体
重合体II:プロピレン-エチレン共重合体
重合体IIの含有量:17.4重量%
【0265】
(A-2)プロピレン重合体(ヘテロファジックプロピレン重合材料)
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレンに由来する単量体単位の含有量:5.2重量%
CXISのアイソタクチックペンタッド分率:0.957
重合体I:プロピレン単独重合体
重合体II:プロピレン-エチレン共重合体成分
重合体IIの含有量:11.9重量%
【0266】
アイソタクチックペンタッド分率は上述した方法に従って測定し、CXIS成分及びCXS成分の含有量、重合体II中のエチレン含量は、以下の方法により算出した。
【0267】
CXIS成分及びCXS成分の含有量
ヘテロファジックプロピレン重合材料を2g秤量し(以下、「ヘテロファジックプロピレン重合材料の重量」を「a」とする)、沸騰キシレンで2時間加熱溶解した。次いで、20℃まで冷却した後、ろ紙を用いてろ別した。ろ別したろ液を、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮して、CXS成分を得た。得られたCXS成分を秤量した(以下、「CXS成分の重量」を「b」とする)。ヘテロファジックプロピレン重合材料中のCXIS成分及びCXS成分の含有量は、数値a及びbを用いて下記式により算出した。また、ろ紙上に残った固形物を真空乾燥することにより、CXIS成分を得た。得られたCXIS成分は、分子量分布の評価に用いた。
CXS成分量(重量%)=(b/a)×100
CXIS成分量(重量%)=100-CXS成分量(重量%)
【0268】
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレンに由来する単量体単位の含有量
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレンに由来する単量体単位の含有量は、下記の条件で測定した 13C-NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules,15,1150-1152(1982))に基づいて求めた。13C-NMRスペクトルは、直径10mmの試験管中でヘテロファジックプロピレン重合材料約200mgを3mLのオルソジクロロベンゼンに均一に溶解させた試料を用い、下記条件で測定した。
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
【0269】
成分B:アイソタクチックペンタッド分率が0.961以上0.981未満であるプロピレン重合体
成分Bとして下記プロピレン重合体(成分B-1、B-2)を準備した。
【0270】
(B-1)プロピレン重合体(ヘテロファジックプロピレン重合材料)
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレンに由来する単量体単位の含有量:6.5重量%
CXISのアイソタクチックペンタッド分率:0.965
重合体I:プロピレン単独重合体
重合体II:プロピレン-エチレン共重合体
重合体IIの含有量:14.4重量%
【0271】
(B-2)リサイクルプロピレン重合体(ヘテロファジックプロピレン重合材料)
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレンに由来する単量体単位の含有量:6.5重量%
CXISのアイソタクチックペンタッド分率:0.965
重合体I:プロピレン単独重合体
重合体II:プロピレン-エチレン共重合体
重合体IIの含有量:14.4重量%
【0272】
(B-3)プロピレン重合体(ヘテロファジックプロピレン重合材料)
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレンに由来する単量体単位の含有量:3.8重量%
CXISのアイソタクチックペンタッド分率:0.977
重合体I:プロピレン単独重合体
重合体II:プロピレン-エチレン共重合体
重合体IIの含有量:9.2重量%
【0273】
成分C:アイソタクチックペンタッド分率が0.981以上であるプロピレン重合体成分
成分Cとして下記プロピレン重合体(ヘテロファジックプロピレン重合材料)(成分C-1)を準備した。
【0274】
(C-1)プロピレン重合体(ヘテロファジックプロピレン重合材料)
ヘテロファジックプロピレン重合材料中のエチレンに由来する単量体単位の含有量:9.0重量%
CXISのアイソタクチックペンタッド分率:0.982
重合体I:プロピレン単独重合体
重合体II:プロピレン-エチレン共重合体
重合体IIの含有量:25.0重量%
【0275】
成分D:エチレン-α-オレフィン共重合体D
成分Dとして下記エチレン-α-オレフィン共重合体(成分D-1)を準備した。
【0276】
(D-1)エチレン-1-ブテン共重合体
ダウケミカル社製「ENGAGE EG7467」
密度:0.862g/cm
MFR(温度190℃、2.16kgf荷重で測定):1.0g/10分
【0277】
成分E:充填材
成分Eとして下記充填材を準備した。
【0278】
タルク:林化成社製「MW UPN-TT-H」
平均粒子径(50%粒子径):4.7μm(レーザー回析式のSALD1100(島津製作所社製)を用いて測定)
【0279】
実施例1~8及び比較例1~8
【0280】
プロピレン樹脂組成物の製造
成分A、B、C、D、Eを、表1に示す量(重量部)で準備した。
【0281】
準備した各成分を、ヘンシェルミキサー又はタンブラーで均一に予備混合した後、田辺プラスチックス株式会社製 単軸押出機V40-NSIII型(シリンダー内径40.0mm、スクリュー外径39.5mm、L/D=28)にて、シリンダー温度200℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量14kg/hrの条件にて溶融混練し、ペレット状のプロピレン系樹脂組成物を製造した。得られた樹脂組成物の物性を下記の表1に示す。
なお、実施例1~8及び比較例1~8では後述する実施例9~12とは異なる製造方法が実施されているが、実施例9~12と同じ製造方法でも同等の樹脂組成物が得られる。
【0282】
耐ヒンジ性の評価
屈曲試験機(株式会社東洋精機製作所)を用いて、後述する射出成形体試験片両端の短手部を固定し、水平方向に屈曲させた後、直線状に戻し、次に反対方向に屈曲させた後に直線状に戻す操作を2万回繰り返し行い、屈曲部表面の割れ有無を3人のパネラーによる目視で確認し、統一見解を得た。表では、屈曲部表面の割れが無い場合を〇、屈曲部表面の割れが有る場合を×と表記した。割れが発生した場合、亀裂の長さを測定した。
なお、実施例1~8及び比較例1~8では後述する実施例9~12とは異なる評価方法が実施されているが、実施例9~12と同じ評価方法でも同等の評価結果が得られる。
【0283】
耐ヒンジ性評価用射出成形体試験片の製造
得られた樹脂組成物を以下の条件で射出成形して、評価用の射出成形体試験片を製造した。
射出成形機: 東洋機械金属製Si30III射出成形機
金型キャビティ形状:35mm(幅)×80mm(長さ)×2mm(厚み)
ゲート:35mm側面フィルムゲート
シリンダー温度:220℃
金型温度:50℃
射出速度:20mm/秒
冷却時間:30秒
なお、実施例1~8及び比較例1~8では後述する実施例9~12とは異なる製造方法が実施されているが、実施例9~12と同じ製造方法でも同等の試験片が得られる。
【0284】
実施例9~12
プロピレン樹脂組成物の製造
準備した各成分を、ヘンシェルミキサー又はタンブラーで均一に予備混合した後、テクノベル(株)製 二軸混練機KZW-15/45MG(シリンダー内径15.5mm、スクリュー外径15.0mm、L/D=45)を用いて、溶融混練することによりペレット状のプロピレン系樹脂組成物を得た。溶融混練の条件は、シリンダー温度200℃;スクリュー回転数500rpm;スクリーンメッシュは100メッシュと50メッシュの2枚重ね;押出量6kg/hrとした。
【0285】
耐ヒンジ性の評価
屈曲試験機(株式会社東洋精機製作所:MIT試験機 型式DA)を用いて、後述する射出成形体試験片両端の短手部を固定し、水平方向に屈曲させた後、直線状に戻し、次に反対方向に屈曲させた後に直線状に戻す操作を2万回繰り返し行い、屈曲部表面の割れ有無を目視で確認した。表では、屈曲部表面の割れが無い場合を〇、屈曲部表面の割れが有る場合を×と表記した。
【0286】
耐ヒンジ性評価用射出成形体試験片の製造
得られた樹脂組成物を以下の条件で射出成形した射出成形体から、15mm(幅)×110mm(長さ)×2mm(厚み)に切り出して、評価用の試験片を製造した。
射出成形機: 住友重機械工業株式会社製SE130DU射出成形機
金型キャビティ形状:90mm(幅)×150mm(長さ)×2mm(厚み)
ゲート:5mm側面ゲート
シリンダー温度:220℃
金型温度:50℃
射出速度:30mm/秒
冷却時間:30秒
【0287】
【表1】
【0288】
表1から、実施例に係る成形体は、屈曲試験時に試験片表面に割れが発生せず、耐ヒンジ性に優れることがわかる。すなわち、本発明のプロピレン樹脂組成物によれば、耐ヒンジ性に優れる成形体を製造できること及び本発明の成形体は耐ヒンジ性に優れることを確認した。
【0289】
アイソタクチックペンタッド分率の差が0.001未満である2成分、成分(B-3)と成分(C-1)を含む比較例5では、劣った耐ヒンジ性が示された。それに比べて、アイソタクチックペンタッド分率の差が0.001以上であるである2成分、成分(B-1)と成分(C-1)を含む実施例3では、有意に高い耐ヒンジ性が示された。
【0290】
成分Cを10重量部未満含む比較例6では、劣った耐ヒンジ性が示された。それに比べて、成分Cを10重量部以上含む実施例7では、有意に高い耐ヒンジ性が示された。
【0291】
アイソタクチックペンタッド分率が0.961未満である成分Aを含むがアイソタクチックペンタッド分率が0.963以上0.981未満である成分Bを含まない比較例7及び8では、劣った耐ヒンジ性が示された。それに比べて、アイソタクチックペンタッド分率が0.963以上0.981未満である成分Bを含む実施例3では、有意に高い耐ヒンジ性が示された。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソタクチックペンタッド分率が0.981未満であるプロピレン重合体A’ 20~80重量部と、
アイソタクチックペンタッド分率が0.981以上であるプロピレン重合体C 20~80重量部と
を含み(ただし、プロピレン重合体A’及びCの含有量の合計を100重量部とする)、
プロピレン重合体A’としてアイソタクチックペンタッド分率が0.963以上0.981未満であるプロピレン重合体Bを含み、
プロピレン重合体A’のアイソタクチックペンタッド分率とプロピレン重合体Cのアイソタクチックペンタッド分率の差が0.010以上であり、
プロピレン重合体Cがヘテロファジックプロピレン重合材料である、
プロピレン樹脂組成物であって、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、プロピレン樹脂組成物に含まれる全ての重合体の合計量が75重量%以上であり、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、プロピレン重合体A’とプロピレン重合体Cの合計量が50重量%以上であり、
プロピレン樹脂組成物がプロピレン重合体A’としてアイソタクチックペンタッド分率が0.961未満であるプロピレン重合体Aを含み、
プロピレン樹脂組成物がエチレン-α-オレフィン共重合体Dを含まず又は含み、
プロピレン樹脂組成物が充填材Eを含まず又は含み、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、成分A~Eの含有量の合計が90重量%以上である、
プロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれるキシレン不溶成分のアイソタクチックペンタッド分率が0.981以上である、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
プロピレン重合体A’及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてリサイクルプロピレン重合体を含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
プロピレン重合体A’及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてバージンプロピレン重合体を含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
プロピレン重合体Aとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、請求項に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項6】
プロピレン重合体Bとしてヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項7】
1~60重量部のプロピレン重合体Aと、
5~79重量部のプロピレン重合体Bと、
20~80重量部のプロピレン重合体Cと
を含む請求項に記載のプロピレン樹脂組成物であって、
ただし、プロピレン重合体Aとプロピレン重合体Bの合計量が20~80重量部であり(ただし、プロピレン重合体Aとプロピレン重合体Bとプロピレン重合体Cの合計を100重量部とする)、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、プロピレン樹脂組成物に含まれる全ての重合体の合計量が75重量%以上であり、
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、プロピレン重合体Aとプロピレン重合体Bとプロピレン重合体Cの合計量が50重量%以上である、
プロピレン樹脂組成物。
【請求項8】
プロピレン重合体A,プロピレン重合体B及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてリサイクルプロピレン重合体を含む、請求項に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項9】
プロピレン重合体A,プロピレン重合体B及びプロピレン重合体Cからなる群より選ばれる少なくとも一種としてバージンプロピレン重合体を含む、請求項に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項10】
エチレン-α-オレフィン共重合体Dを含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項11】
エチレン-α-オレフィン共重合体Dとしてリサイクルエチレン-α-オレフィン共重合体を含む、請求項10に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項12】
プロピレン樹脂組成物の全重量を基準として、エチレン-α-オレフィン共重合体Dが1~40重量%である、請求項10に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項13】
充填材Eを含む、請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項14】
充填材Eとしてリサイクル充填材を含む、請求項13に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項15】
充填材Eとして無機充填材を含む、請求項13に記載のプロピレン樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載のプロピレン樹脂組成物を含む成形体。