(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011986
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ミックス組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20240118BHJP
A21D 2/18 20060101ALI20240118BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20240118BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A21D2/18
A21D13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114381
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】樋口 創
(72)【発明者】
【氏名】川村 悠貴
【テーマコード(参考)】
4B032
4B046
【Fターム(参考)】
4B032DB35
4B032DG01
4B032DK11
4B032DK15
4B032DK21
4B046LA01
4B046LA02
4B046LB04
4B046LB09
4B046LG15
4B046LG16
4B046LG20
4B046LG26
4B046LG27
(57)【要約】
【課題】麺類分野、又はベーカリー製品分野において、その品質を向上させる技術を提供すること。
【解決手段】グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部;加工澱粉:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%;植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部;及び増粘多糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部から選択される1以上と、
下記の(a)及び(b)の特徴を有する粉末麦芽:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下と、
を含有するミックス組成物を提供する。
(a)糖化力が50WK以下
(b)CIELAB表色系のL値が40以上
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部;加工澱粉:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%;植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部;及び増粘多糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部から選択される1以上と、
下記の(a)及び(b)の特徴を有する粉末麦芽:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下と、
を含有するミックス組成物。
(a)糖化力が50WK以下
(b)CIELAB表色系のL値が40以上
【請求項2】
前記粉末麦芽は、さらに下記の(c)の特徴を有する、請求項1記載のミックス組成物。
(c)中位粒子径が10~150μm
【請求項3】
前記粉末麦芽は、粉砕された焙煎蒸し緑麦芽である、請求項1に記載のミックス組成物。
【請求項4】
麺類用、又はベーカリー製品用である、請求項1から3のいずれかに記載のミックス組成物。
【請求項5】
請求項4に記載のミックス組成物が用いられた、麺類用生地、又はベーカリー製品用生地。
【請求項6】
請求項4に記載のミックス組成物が用いられた、麺類、又はベーカリー製品。
【請求項7】
グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部;加工澱粉:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%;植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部;及び増粘多糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部から選択される1以上と、
下記の(a)及び(b)の特徴を有する粉末麦芽:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下と、
を添加する添加工程を含む、麺類用生地、又はベーカリー製品用生地の製造方法。
(a)糖化力が50WK以下
(b)CIELAB表色系のL値が40以上
【請求項8】
グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部;加工澱粉:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%;植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部;及び増粘多糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部から選択される1以上と、
下記の(a)及び(b)の特徴を有する粉末麦芽:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下と、
を添加する添加工程を含む、麺類、又はベーカリー製品の製造方法。
(a)糖化力が50WK以下
(b)CIELAB表色系のL値が40以上
【請求項9】
グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部;加工澱粉:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%;植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部;及び増粘多糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部から選択される1以上と、
下記の(a)及び(b)の特徴を有する粉末麦芽:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下と、
を添加する添加工程を含む、麺類、又はベーカリー製品の改質方法。
(a)糖化力が50WK以下
(b)CIELAB表色系のL値が40以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミックス組成物に関する。より詳しくは、麺類用、又はベーカリー製品用として用いることができるミックス組成物、該ミックス組成物を用いた麺類用生地、又はベーカリー製品用生地、麺類、又はベーカリー製品、並びに、麺類用生地、又はベーカリー製品用生地の製造方法、麺類、又はベーカリー製品の製造方法、及び、麺類、又はベーカリー製品の改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、麺類、ベーカリー製品等の食感や風味等を向上させるために、主原料である小麦粉や、副原料、添加剤などについて様々な技術が提案されている。中でも、近年、麦芽材料を食品に用いる技術の開発も進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、焙焼麦芽エキスを乾物換算重量比で0.6~6部配合した麺類が開示されている。特許文献1には、焙焼麦芽エキスは、麺本来の食感には何ら悪影響を与えることなく、心地よい風味とつやのある茶色い色調を付与することができ、従来にない差別化した麺類を提供できる旨が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、モルトエキスを添加した餃子用皮で具材を包んで凍結することにより、皮の耳部分が硬くなく、そのため流通・販売時、調理時などに耳部分での破損が生じず、更に胴部の皮の割れがなく、しかも調理したときに皮の本体部分だけでなく、耳部分での食感および外観に優れる冷凍生餃子を製造する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、小麦粉を主体とする穀粉原料100質量部に対して、α-アミラーゼ活性が10~100unit/gを有するように部分的に焙煎処理した麦芽の粉砕物を0.5~9質量部添加し、常法に従って製パンすることで、パン生地の伸展性がよく作業性に優れ、焼成後のパン類の内相が豊かな色合いと独特の良好な風味及び食味を有し、しかもソフトで歯切れや口溶けのよい食感を有する良好なパン類を容易に得ることができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-266809号公報
【特許文献2】特開2007-274964号公報
【特許文献3】特開2011-135810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、麦芽材料を食品に用いる技術について、様々な開発が進められているが、更なる技術の向上が求められているのが実情である。
【0008】
そこで、本技術では、麺類分野、又はベーカリー製品分野において、その品質を向上させる技術を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術では、まず、グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部;加工澱粉:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%;植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部;及び増粘多糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部から選択される1以上と、
下記の(a)及び(b)の特徴を有する粉末麦芽:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下と、
を含有するミックス組成物を提供する。
(a)糖化力が50WK以下
(b)CIELAB表色系のL値が40以上
本技術に係るミックス組成物に用いる前記粉末麦芽は、さらに下記の(c)の特徴を有していてもよい。
(c)中位粒子径が10~250μm
本技術に係るミックス組成物に用いる前記粉末麦芽としては、粉砕された焙煎蒸し緑麦芽を用いることができる。
本技術に係るミックス組成物は、麺類用、又はベーカリー製品用として用いることができる。
【0010】
本技術では、次に、本技術に係るミックス組成物を用いた麺類用生地、又はベーカリー製品用生地を提供する。
【0011】
本技術では、また、本技術に係るミックス組成物、又は本技術に係る麺類用生地、又はベーカリー製品用生地を用いた、麺類、又はベーカリー製品を提供する。
【0012】
本技術では、更に、グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部;加工澱粉:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%;植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部;及び増粘多糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部から選択される1以上と、
下記の(a)及び(b)の特徴を有する粉末麦芽:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下と、
を添加する添加工程を含む、麺類用生地、ベーカリー製品用生地麺類、又はベーカリー製品の製造方法を提供する。
(a)糖化力が50WK以下
(b)CIELAB表色系のL値が40以上
【0013】
本技術では、加えて、グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部;加工澱粉:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%;植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部;及び増粘多糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部から選択される1以上と、
下記の(a)及び(b)の特徴を有する粉末麦芽:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下と、
を添加する添加工程を含む、麺類、又はベーカリー製品の改質方法を提供する。
(a)糖化力が50WK以下
(b)CIELAB表色系のL値が40以上
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0015】
<ミックス組成物>
本技術に係るミックス組成物は、(1)特定の糖類;(2)加工澱粉;(3)特定のタンパク質;及び(4)増粘多糖類から選択される1以上と、(5)特定の粉末麦芽と、を含有する。以下、各素材について、詳細に説明する。なお、本発明に係る各素材の含有量、また、粉末麦芽との配合比において、各素材が粉体材料である場合、各素材に含まれる水分は「各素材」を構成するものとする。また、各素材液体材料である場合もしくは水など液体材料に溶解・分散させてから他の材料と混合する場合、各素材は固形分から構成するものとする。
【0016】
(1)特定の糖類
本技術には、グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類を用いることができる。本技術に係るミックス組成物に、特定の糖類を用いることで製造された食品において、穀物の自然な味・香りを強く感じることができ、また、食感を良好にすることができる。食感の効果としては、例えば、製造された麺類では粘弾性やつるみが向上し、ベーカリー製品ではしっとり感やもち感が向上する。
【0017】
グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖としては、例えば、トレハロース、マルトース、イソマルトース等の二糖類;パノース、マルトトリオース、イソマルトトリオース等の三糖類;マルトテトラオース、イソマルトテトラオース等の四糖類;マルトペンタオース等の五糖類;マルトヘキサオース等の六糖類が挙げられる。
【0018】
本技術では、改質効果が高い点で、重合度2~6のマルトオリゴ糖(マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース)及びこれらの還元糖から選ばれる1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類が好ましく、重合度2~6のマルトオリゴ糖から選ばれる1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類がより好ましい。これらの糖類を用いることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0019】
また、本技術に用いる糖類の状態は特に限定されず、粉体であっても液体であってもよい。
【0020】
本技術に係るミックス組成物に特定の糖類を用いる場合、本技術に係るミックス組成物中の特定の糖類の含有量は、食品に用いられる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部であり、好ましくは0.1~6質量部、より好ましくは0.15~5質量部である。この範囲とすることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0021】
本技術に係るミックス組成物に特定の糖類を用いる場合、後述する粉末麦芽との配合比は特に限定されず、自由に設定することができる。本技術では、粉末麦芽の量1に対する特定の糖類の量は、例えば0.01~5、好ましくは0.015~3、より好ましくは0.018~2.5、さらに好ましくは0.023~2.2、0.03~2.2、0.05~2.2、0.08~2.2であってもよい。後述する粉末麦芽と特定の糖類との配合比をこの範囲とすることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0022】
(2)加工澱粉
本技術には、加工澱粉を用いることができる。本技術に係るミックス組成物に、加工澱粉を用いることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りを強く感じることができ、また、食感を良好にすることができる。食感の効果としては、例えば、製造された麺類では粘弾性やつるみが向上し、ベーカリー製品ではしっとり感やもち感が向上する。
【0023】
加工澱粉とは、澱粉に、化学的な処理、物理的な処理、酵素的な処理を単独又は複数組み合わせて施したものをいう。
【0024】
加工澱粉の原料となる澱粉としは、馬鈴薯、餅種の馬鈴薯、甘藷、キャッサバ、餅種のキャッサバ、トウモロコシ、餅種のトウモロコシ、アミロース含有量の高いトウモロコシ、サゴ、小麦、ワキシー小麦、米、もち米、豆などを原料とした天然澱粉等を用いることができる。
【0025】
澱粉に施す化学的な処理としては、酸処理、アルカリ処理、酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理、架橋処理等が挙げられ、例えば、アセチル化澱粉、リン酸架橋澱粉、酢酸澱粉、酸化澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉等が挙げられる。澱粉に施す物理的な処理としては、乾燥処理、α化処理、湿熱処理、油脂加工処理、ボールミル処理、微粉砕処理、加熱処理、温水処理、漂白処理等が挙げられる。澱粉に施す酵素的な処理としては、α-アミラーゼ又はα-グルコシダーゼなどによる酵素処理が挙げられる。なお、本発明の加工澱粉には、湿熱処理を施したハイアミロースコーンスターチや高度に架橋処理を施した澱粉等、澱粉に化学的な処理、物理的な処理、酵素的な処理を単独又は複数組み合わせて施すことにより消化抵抗性を示すようになった澱粉(難消化性澱粉)も含まれる。
【0026】
本技術では、改質効果が高い点で、アセチル化処理、ヒドロキシプロピル化処理、リン酸架橋処理、酸化処理から選択される1以上の化学的な処理、及び/又は、α化処理を施した澱粉を用いることが好ましく、アセチル化処理、又は、ヒドロキシプロピル化処理を施した澱粉を用いることがより好ましい。これらの加工澱粉を用いることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0027】
本技術に係るミックス組成物に加工澱粉を用いる場合、本技術に係るミックス組成物中の加工澱粉の含有量は、食品に用いられる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%であり、好ましくは3~45質量%であり、より好ましくは3.5~42質量%である。この範囲とすることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0028】
本技術に係るミックス組成物に加工澱粉を用いる場合、後述する粉末麦芽との配合比は特に限定されず、自由に設定することができる。本技術では、粉末麦芽の量1に対する加工澱粉の量は、例えば1~500、好ましくは1.5~100、より好ましくは1.7~50、さらに好ましくは1.8~30、1.8~25であってもよい。後述する粉末麦芽と加工澱粉との配合比をこの範囲とすることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0029】
(3)特定のタンパク質
本技術には、植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質を用いることができる。本技術に係るミックス組成物に、特定のタンパク質を用いることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りを強く感じることができ、また、食感を良好にすることができる。食感の効果としては、例えば、製造された麺類では粘弾性やつるみが向上し、ベーカリー製品ではしっとり感やもち感が向上する。
【0030】
植物由来タンパク質としては、例えば、エンドウタンパク質、大豆タンパク質、緑豆タンパク質、大麦タンパク質、小麦タンパク質(グルテン(グリアジン、グルテニン等))、米タンパク質、野菜由来タンパク質、果実由来タンパク質等が挙げられる。卵由来タンパク質としては、例えば、卵白、卵黄、アルブミン、オボアルブミン、オボムコイド、オボトランスフェリン、リゾチームが挙げられる。乳由来タンパク質としては、例えば、例えば、カゼインや乳清タンパク質(ホエイタンパク質)、MPCが挙げられる。
【0031】
本技術では、改質効果が高い点で、エンドウタンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質(グルテン(グリアジン、グルテニン等))、卵白、及び卵黄から選択される1以上のタンパク質を用いることが好ましく、小麦タンパク質(グルテン(グリアジン、グルテニン等))、卵白から選択される1以上のタンパク質を用いることがより好ましい。これらのタンパク質を用いることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0032】
本技術に係るミックス組成物に特定のタンパク質を用いる場合、本技術に係るミックス組成物中の特定のタンパク質の含有量は、食品に用いられる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部、好ましくは0.05~20質量部、より好ましくは0.5~10質量部、0.5~5質量部、0.5~3質量部であってもよい。この範囲とすることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0033】
本技術に係るミックス組成物に特定のタンパク質を用いる場合、後述する粉末麦芽との配合比は特に限定されず、自由に設定することができる。本技術では、粉末麦芽の量1に対する特定のタンパク質の量は、例えば0.005~100、好ましくは0.02~10、より好ましくは0.03~8、0.04~5、0.04~3、0.04~1であってもよい。後述する粉末麦芽と特定のタンパク質との配合比をこの範囲とすることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0034】
(4)増粘多糖類
本技術には、増粘多糖類を用いることができる。本技術に係るミックス組成物に、増粘多糖類を用いることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りを強く感じることができ、また、食感を良好にすることができる。食感の効果としては、例えば、製造された麺類では粘弾性やつるみが向上し、ベーカリー製品ではしっとり感やもち感が向上する。
【0035】
増粘多糖類としては、例えば、キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル(アルギン酸プロピレングリコール)、サイリウムシードガム、ジェランガム、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、こんにゃく粉等が挙げられる。
【0036】
本技術では、特に、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸エステル、グアガムから選択される1以上の増粘多糖類を用いることが好ましい。これらの増粘多糖類を用いることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0037】
本技術に係るミックス組成物に増粘多糖類を用いる場合、本技術に係るミックス組成物中の増粘多糖類の含有量は、食品に用いられる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部、好ましくは0.03~0.6質量部である。この範囲とすることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0038】
本技術に係るミックス組成物に増粘多糖類を用いる場合、後述する粉末麦芽との配合比は特に限定されず、自由に設定することができる。本技術では、粉末麦芽の量1に対する増粘多糖類の量は、例えば0.003~0.6、好ましくは0.01~0.4、より好ましくは0.02~0.3である。後述する粉末麦芽と増粘多糖類との配合比をこの範囲とすることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0039】
(5)特定の粉末麦芽
本技術に用いる粉末麦芽は、下記の(a)及び(b)の特徴を有する。
(a)糖化力が50WK以下
(b)CIELAB表色系のL値が40以上
【0040】
本技術に係る粉末麦芽の糖化力は、50WK以下であれば、本技術の効果を発揮することができるが、好ましくは30WK以下、より好ましくは20WK以下、さらに好ましくは10WK以下である。糖化力が低いほど、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。即ち、糖化力の下限値は限定されず、糖化力は0であってもよい。なお、本技術において、「糖化力」とは、澱粉分解酵素の総活性であり、以下の方法により測定することができる。
【0041】
[糖化力の測定方法]
<粉末麦芽抽出液の調製>
粉末麦芽20gをビーカーに正確に計りとり、これに480mLの水を加えた後、40℃の恒温水槽に浸し1時間攪拌する。攪拌終了後に冷水で室温に戻し、水を加えて520gにする。得られた麦芽スラリーを東洋濾紙No.2を用いて濾過し、最初の濾液200mLを捨て、次の50mLを試料(以下、抽出液)として測定に供する。
【0042】
<糖化反応>
澱粉溶液は澱粉(例えば、Merck社の分析用可溶性澱粉(No.1252))10gを400mLの沸騰水に加えて5分間煮沸した後に急冷し、水を加えて500mLとしたものを用いる。2個の200mL容のメスフラスコ(試験用とブランク用)に100mLの澱粉溶液を入れる。試験用メスフラスコには、酢酸バッファー溶液(酢酸30gを水に溶かし1Lとした溶液と、酢酸ナトリウム3水和物34gを水に溶かし500mLとした溶液の混合液)5mLを加えておく。まず、これらの2個のメスフラスコを20℃の恒温水槽に20分間浸す。次いで、試験用メスフラスコに、5mLの抽出液を加え、30分間20℃の恒温水槽に入れる。抽出液を加えた30分後に4mLの1N 水酸化ナトリウム溶液(20gの水酸化ナトリウムを水に溶かし500mLとした溶液)を加えて糖化反応を止める。ブランク用メスフラスコには、2.35mLの1N 水酸化ナトリウム溶液を加えてから5mLの抽出液を加える。
【0043】
<測定>
糖化反応後の2個のメスフラスコに対し、標線まで水を加える。各メスフラスコから50mLの液をとり、それぞれ200mL容の共栓付三角フラスコに入れる。各三角フラスコに、それぞれ25mLの0.1Nヨウ素液(0.1Nヨウ素液は20gのヨウ化カリウムを200mLの水に溶かした溶液に12.7gのヨウ素を加え、さらに水を加えて1Lとした溶液)及び3mLの1N水酸化ナトリウム溶液を加えた後、栓をして15分間暗所に静置する。次いで、各三角フラスコに、4.5mLの1N硫酸溶液(濃硫酸28mLを、予め700mLの水を入れたビーカー中に攪拌しながら徐々に加え、水を加えて1Lとした溶液)を加える。その後、未反応の残存ヨウ素をファクターの標定された0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液(24.82gのチオ硫酸ナトリウム及び7.6gの四ホウ酸ナトリウムを400mLの水に溶かした後に水を加えて1Lとし、ファクターを標定した溶液)を用いて標定し、青色の消える点の滴定値を求める。糖化力(DP)は上記の条件化で生成されたマルトースのグラム数で表し、下記式(1)で求められる。下記式(1)中、fは0.1Nチオ硫酸ナトリウム溶液のファクター、VBはブランク試験におけるチオ硫酸ナトリウム溶液の滴定値、VTは本試験におけるチオ硫酸ナトリウム溶液の滴定値である。
式(1):DP=f×(VB-VT)×34.2
【0044】
本技術に係る粉末麦芽のCIELAB表色系のL値は、40以上であれば、本技術の効果を発揮することができるが、好ましくは50以上、より好ましくは55以上である。CIELAB表色系のL値が40以上の粉末麦芽を用いることで、色調に問題がない麺類を得ることができる。また、L値の上限値は、好ましくは90以下、より好ましくは85以下である。なお、CIELAB表色系のL値は、公知の手法を用いて色差計により測定された粉末麦芽の明度を示す値をいう。L値は、0から100までの数値で表され、L値0は黒、L値100は白を意味する。色差計としては、例えば、分光測色計CM-5(コニカミノルタ株式会社)を用いることができる。
【0045】
本技術に係る粉末麦芽は、さらに下記の(c)、(d)、(e)の特徴を1つ以上有していてもよい。
(c)中位粒子径が10~150μm
(d)粒子径30μm以下の粒子の割合が10%以上
(e)粒子径206μm以上の粒子の割合が30%以下
【0046】
本技術に係る粉末麦芽の粒子径は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されない。例えば、中位粒子径が10~180μm、好ましくは13~150μm、より好ましくは15~125μm、さらに好ましくは18~80μm、22~60μm、25~55μmであってもよい。また、例えば、粒子径30μm以下の粒子の割合が10%以上、好ましくは14~60%、より好ましくは20~58%、さらに好ましくは30~55%である。さらに、例えば、粒子径206μm以上の粒子の割合が30%以下、好ましくは26%以下、より好ましくは23.5%以下、さらに好ましくは20%以下、15%以下、10%以下であってもよい。本技術に係る粉末麦芽の粒子径をこの範囲にすることにより、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0047】
なお、本技術において、中位粒子径、粒子径30μm以下の粒子の割合、粒子径206μm以上の粒子の割合は、体積基準の粒子径累積分布から決定することができ、レーザー回折式の粒度分布測定装置を用いて測定することができる。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置HELOS&RODOS(日本レーザー製)を用いて、フラウンホーファー回折によって体積基準の粒子径分布を得て、粒子径分布における体積基準での積算分析曲線の50%に相当する粒子径を中位粒子径、また、粒子径30μm以下の粒子の割合、粒子径206μm以上の粒子の割合を算出することができる。
【0048】
本技術に係る粉末麦芽に用いる麦芽は、粉末化した際に上記特徴を有する粉末麦芽を得ることができれば特に限定されない。好ましくは、焙煎した麦芽であり、より好ましくは焙煎蒸し緑麦芽である。「焙煎蒸し緑麦芽」とは、蒸した緑麦芽を焙煎した麦芽をいう。緑麦芽は、一度低温乾燥したものを、乾燥工程を経ていない緑麦芽と同程度の水分含量(例えば40~45質量%)に水を加え調整してもよい。本技術に係る粉末麦芽の製造方法の詳細は後述するが、焙煎した麦芽を用いることで糖化力が低い又は糖化力が無い粉末麦芽を容易に得ることができる。また、蒸し緑麦芽を焙煎した麦芽を用いることで、酵素反応が進んだ蒸し緑麦芽の特徴を有した、糖化力が低い又は糖化力が無い粉末麦芽となり、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0049】
本技術の粉末麦芽の原料は特に限定されず、大麦、小麦、ライ麦等の麦類が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。本技術では、大麦を原料とする粉末麦芽を用いることが好ましい。
【0050】
[粉末麦芽の製造方法]
本技術に係る粉末麦芽の製造方法は、前述した特徴を有する粉末麦芽を得ることができれば、その方法は特に限定されない。加熱した麦芽を粉砕して前述した特徴を有する粉末麦芽を得てもよいし、粉末麦芽を加熱して前述した特徴を有する粉末麦芽を製造してもよい。好ましくは、加熱した麦芽を粉砕して製造する方法である。
【0051】
例えば、まず、原料の麦粒を発芽させて麦芽とする。緑麦芽の状態にすることが好ましい(発芽工程)。好ましい発芽の程度は、葉芽が穀粒の長さの50~100%まで伸長したものが良い。この程度の発芽状態の、緑麦芽にするための1つの具体的方法としては、浸麦槽に12~20℃の水を満たし、麦芽を20~60時間浸漬して、発芽に必要な水分を吸水させたあと、床が網目状の発芽室に移して、12~20℃の加湿した空気を網下から送りながら4~6日間発芽させる方法を挙げることができる。
【0052】
次に、得られた緑麦芽を焙煎して原料麦芽とする(焙煎工程)。焙煎するための1つの具体的な方法としては、回転ドラムで120~180℃で1~3時間加熱する方法を挙げることができる。好ましくは、密閉した回転ドラムで緑麦芽を60~80℃で0.5~2時間保持し蒸し緑麦芽を得て(蒸らし工程)、その後密閉状態を解いて、120~180℃で1~3時間加熱する(焙煎工程)方法である。さらに好ましくは、焙煎工程の温度が120~140℃である。焙煎した麦芽は、必要に応じて脱根、研磨工程を経て、原料麦芽とする。
【0053】
そして、得られた原料麦芽を粉砕して前述した特徴を有する粉末麦芽を製造する。粉砕方法としては、ロール式粉砕、衝撃式粉砕、気流式粉砕等公知の方法を用いることができる。必要に応じて、篩や分級機等を用いて整粒しても良い。
【0054】
本技術に係るミックス組成物中の特定の粉末麦芽の含有量は、食品に用いられる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下、好ましくは0.05~8質量%、より好ましくは0.15~7質量%、さらに好ましくは0.3~6.5質量%、0.5~6質量%である。上記範囲にすることで、製造された食品において、穀物の自然な味・香りをさらに強く感じることができ、また、食感をさらに良好にすることができる。
【0055】
以上説明した本技術に係るミックス組成物は、本技術の効果を損なわない限り、その用途は特に限定されないが、麺類用、又はベーカリー製品用として好適に用いることができる。具体的には、麺類、又はベーカリー製品の他の材料と共に、麺類用ミックス、又はベーカリー製品用ミックスとして流通させることができる。
【0056】
なお、前述した各素材の含有量は、食品に用いられる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対しての量、又は、食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たりの量である。即ち、各食品を製造する際に、本技術に係るミックス組成物にさらに穀粉類や澱粉類を加えて製造する場合には、本技術に係るミックス組成物に含有する穀粉類や澱粉類と製造時に加える穀粉類や澱粉類を合わせた100質量部に対しての量、又は、100質量%当たりの量であるため、本技術に係るミックス組成物中の各素材の含有量は、前述の数値よりも大きくなる。
【0057】
本技術に係るミックス組成物に用いられる穀粉類としては、小麦粉、米粉、そば粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、ひえ粉、あわ粉、大豆粉、ホワイトソルガム粉あるいはこれら穀粉に加熱処理を施した加熱穀粉等が挙げられる。なお、前述の粉末麦芽を含む麦芽粉も穀粉類に含まれる。また、澱粉類は、前述の加工澱粉及び加工澱粉の原料となる澱粉である。その他の材料としては、前述の糖類を含む糖;前述のタンパク質を含むたん白質素材;粉末油脂、サラダ油、ショートニング等の油脂;粉末セルロース、結晶セルロース等の食物繊維素材;重曹等の膨張剤;食塩等の塩類;乳化剤、pH調整剤、香辛料、調味料、酵素、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、かんすい等が挙げられる。
【0058】
<麺類用生地、ベーカリー製品用生地>
本技術に係るミックス組成物は、麺類用生地、及びベーカリー製品用生地に好適に用いることができる。
【0059】
例えば、本技術に係るミックス組成物、水、油脂等の必要な材料を混合して、麺類用生地やベーカリー製品用生地を製造することができる。
【0060】
本技術に係る麺類用生地、及びベーカリー製品用生地は、常温、冷蔵、チルド、冷凍等の状態で流通させることができる。例えば、冷蔵生地玉、成形冷蔵生地、冷凍生地玉、成形冷凍生地、ホイロ済み冷凍生地等の形態で流通させることが可能である。
【0061】
<麺類、ベーカリー製品>
本技術に係るミックス組成物、本技術に係る麺類用生地、ベーカリー製品用生地は、麺類、又はベーカリー製品に好適に用いることができる。
【0062】
(1)麺類
本技術における麺類としては、例えば、中華麺やスパゲッティ、マカロニ等のパスタ類等の麺線はもちろん、餃子やしゅうまい、ラザニア、ラビオリ等に用いられる麺皮類を包含する概念である。具体的には、例えば、中華麺、うどん、和そば、素麺、冷や麦、冷麺、ビーフン、きしめん等の麺線はもちろん、餃子皮、しゅうまい皮、ワンタン皮、春巻皮、ラザニアシート、ラビオリ皮等の麺皮類が挙げられる。
【0063】
また、本技術において、麺類は、調理前の麺類と調理済の麺類の両方を包含する概念である。調理済の麺類を調製する場合は、麺線等の未調理の麺類を、湯の中で茹でる等して調理すればよい。麺類の調理方法は特に制限されないが、茹でて調理することはもちろん、油ちょうや蒸し、炒め、電子レンジ等によって調理してもよく、喫食可能になるまで麺類をα化すればよい。また、麺類の形態も特に限定されず、生麺、乾麺(半乾燥麺を含む。)、茹で麺、蒸し麺、揚げ麺、冷蔵麺(チルド麺)、冷凍麺、即席麺、調理麺、LL(ロングライフ)麺のいずれにも適用できる。特に、より効果を発揮することができるため、加熱調理された後、冷蔵又は冷凍で保存及び/又は流通される麺類であることが好ましく、冷蔵で保存及び/又は流通される麺類であることがより好ましい。冷蔵で保存及び/又は流通される麺類は、そのまま喫食する麺類であってもよく、喫食前に再加熱される麺類であってもよい。
【0064】
本発明に係る麺類は、上述した本技術に係る組成物を、製造原料の一部又は全部として製造することで得られる。本発明において、麺生地は、通常の麺生地の調製方法に準じて調製することができる。例えば、上述した組成物に、水、塩等を配合して混練し、麺生地を調製することができる。また、中華麺の麺生地を調製する場合には、更に、かんすい等を配合してもよい。
【0065】
麺生地を調製する際の水の量は、麺類の種類にもよるが、通常は、麺類に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して、水25~50質量部とすることが好ましく、水28~48質量部とすることがより好ましい。
【0066】
本発明に係る麺類は、手打ち、手延べ又は手打ち式製麺、圧延式製麺、押出式製麺等の公知の製麺方法によって製造することができる。本発明の一つの態様において、麺生地は、圧延され、所望の厚さの麺帯とされる。当該圧延は、麺生地を圧延ロールに通すことで行われる。次いで、製麺機等を用いて麺帯を切り出して麺線とし、この麺線を所望の長さに切断することにより生麺を得ることができる。また、型抜き機等を用いて麺帯から麺皮を得ることができる。
【0067】
本発明の一つの態様において、麺生地を引き伸ばしたり撚ったりして麺線を得てもよく、また、麺生地を穴等から押し出して麺類を製造してもよい。一般に、スパゲッティやマカロニ等の麺類は、麺生地を押し出して製造することが多い。また本発明においては、機械を用いて製麺してもよく、機械を用いずに手延べや手打ちによって製麺してもよい。
【0068】
例えば、上記生麺を茹でることによって茹で麺が得られ、蒸すことによって蒸し麺が得られ、調湿乾燥法等により乾燥すれば乾麺が得られる。また、例えば、茹で処理又は蒸し処理を行った後、フライ用バスケットあるいは乾燥用バスケットに一食ずつ成形充填し、フライあるいは高温熱風乾燥処理すれば即席麺が得られる。
【0069】
(2)ベーカリー製品
本技術に係るベーカリー製品としては、パン類、ケーキ、洋菓子類、和菓子類等が挙げられる。パン類としては、食事パン(例えば、食パン、ライ麦パン、フランスパン、乾パン、バラエティブレッド、ロールパン等)、調理パン(例えば、ホットドッグ、ハンバーガー、ピザパイ等)、菓子パン(例えば、ジャムパン、アンパン、クリームパン、レーズンパン、メロンパン、スイートロール、クロワッサン、ブリオッシュ、デニッシュ、コロネ等)、蒸しパン(例えば、肉まん、中華まん、あんまん等)、特殊パン(例えば、グリッシーニ、イングリッシュマフィン、ナン等)等が挙げられる。ケーキとしては、例えば、蒸しケーキ、スポンジケーキ、バターケーキ、ロールケーキ、ホットケーキ、ブッセ、バームクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキ、スナックケーキ等が挙げられる。なお、洋菓子には、シュー、ワッフル、ドーナツ、クレープ、パイ、ビスケット、カステラ、マドレーヌ、クッキー、サブレ等も含まれる。また、和菓子には、どら焼、饅頭、たい焼、回転焼等が含まれる。特に、より効果を発揮することができるため、焼成等加熱調理された後、袋詰めされて保存及び/又は流通されるベーカリー製品であることが好ましい。袋詰めされて保存及び/又は流通されるベーカリー製品は、そのまま喫食するベーカリー製品であってもよく、喫食前に再加熱されるベーカリー製品であってもよい。
【0070】
本技術に係るベーカリー製品は、一般的なベーカリー製品の製造方法を自由に選択して用いることができる。具体的には、例えば、前述したベーカリー製品用組成物を製造する工程と、前述したベーカリー製品用生地を製造する工程と、該ベーカリー製品用生地を用いてベーカリー製品を製造する工程と、を少なくとも行うことで、本技術に係るベーカリー製品を製造することができる。ベーカリー製品用生地を用いてベーカリー製品を製造する工程としては、例えば、本技術に係るベーカリー製品用生地を、必要に応じて、一次発酵、分割、成形、二次発酵等を行い、加熱することでベーカリー製品を製造することができる。加熱方法は特に限定されず、焼成、蒸し、油ちょう、マイクロ波加熱等、本技術の効果を損なわない限り、1種又は2種以上の加熱方法を自由に選択して用いることができる。
【0071】
<製造方法、改質方法>
本技術に係る麺類用生地、ベーカリー製品用生地、麺類、ベーカリー製品の製造方法、(以下、単に「本技術に係る製造方法」とも称する。)、或いは本技術に係る麺類、ベーカリー製品の改質方法(以下、単に「本技術に係る改質方法」と称する。)は、上述した本技術に係るミックス組成物に用いる各素材を添加する添加工程を含む。
【0072】
本技術に係る製造方法、或いは本技術に係る改質方法において、上述した本技術に係るミックス組成物に用いる各素材を添加する方法や、添加するタイミングについては、特に限定されない。例えば、各食品の製造に用いる製造原料に代えて、又はその一部とともに、上述した本技術に係るミックス組成物に用いる各素材を製造原料の一つとして、所定量添加することができる。また、各生地の調製時に本技術に係るミックス組成物に用いる各素材を製造原料の一部として添加したり、本技術に係るミックス組成物に用いる各素材を含有する組成物を予め調製した上で、当該組成物を用いて各生地を調製することができる。
【0073】
添加工程における本技術に係るミックス組成物に用いる各素材の添加量は、本技術の効果を損なわない限り、目的の食品の種類や性質等に応じて、自由に設定することができる。各素材の好ましい具体的な添加量は、前述の通りであるため、ここでは説明を割愛する。
【0074】
なお、本技術は、以下のように構成することも可能である。
(1)
グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部;加工澱粉:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%;植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部;及び増粘多糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部から選択される1以上と、
下記の(a)及び(b)の特徴を有する粉末麦芽:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下と、
を含有するミックス組成物。
(a)糖化力が50WK以下
(b)CIELAB表色系のL値が40以上
(2)
前記粉末麦芽は、さらに下記の(c)の特徴を有する、(1)に記載のミックス組成物。
(c)中位粒子径が10~250μm
(3)
前記粉末麦芽は、粉砕された焙煎蒸し緑麦芽である、(1)又は(2)に記載のミックス組成物。
(4)
麺類用、又はベーカリー製品用である、(1)から(3)のいずれかに記載のミックス組成物。
(5)
(1)から(4)のいずれか一項に記載のミックス組成物が用いられた、麺類用生地、又はベーカリー製品用生地。
(6)
(1)から(4)のいずれか一項に記載のミックス組成物、又は、請求項(5)に記載の麺類用生地、もしくはベーカリー製品用生地が用いられた、麺類、又はベーカリー製品。
(7)
グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部;加工澱粉:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%;植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部;及び増粘多糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部から選択される1以上と、
下記の(a)及び(b)の特徴を有する粉末麦芽:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下と、
を添加する添加工程を含む、麺類用生地、又はベーカリー製品用生地の製造方法。
(a)糖化力が50WK以下
(b)CIELAB表色系のL値が40以上
(8)
グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部;加工澱粉:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%;植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部;及び増粘多糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部から選択される1以上と、
下記の(a)及び(b)の特徴を有する粉末麦芽:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下と、
を添加する添加工程を含む、麺類、又はベーカリー製品の製造方法。
(a)糖化力が50WK以下
(b)CIELAB表色系のL値が40以上
(9)
グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部;加工澱粉:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%;植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部;及び増粘多糖類:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部から選択される1以上と、
下記の(a)及び(b)の特徴を有する粉末麦芽:食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下と、
を添加する添加工程を含む、麺類、又はベーカリー製品の改質方法。
(a)糖化力が50WK以下
(b)CIELAB表色系のL値が40以上
【実施例0075】
以下、実施例に基づいて本技術をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0076】
<実験例1>
実験例1では、下記の表1に示す各粉末麦芽の製造を行い、それぞれの物性を測定した。具体的には、カラメル麦芽、黒麦芽、ミュンヘン麦芽(アサヒビールモルト株式会社)を粉砕し、粉末麦芽1~6を得た。また、粉末麦芽7として、市販の粉末麦芽「モルトフラワー」(アサヒビールモルト株式会社)を用いた。各粉末麦芽の物性(糖化力、CIELAB表色系のL値、中位粒子径、粒子径30μm以下の粒子の割合、粒子径206μm以上の粒子の割合)について、各麦芽の製造方法の概要とあわせて下記表1に記載する。なお、物性の測定方法は、上述した方法により測定した。
【0077】
【0078】
<実験例2>
実験例2では、実験例1で製造した各種粉末麦芽とマルデックPH400(昭和産業株式会社製;特徴は後述の表7参照)、アセチル化澱粉(SF-800、昭和産業株式会社製)、グルテン(B-パウダーグル、昭和産業株式会社製)、アルギン酸エステル(昆布酸501、株式会社キミカ製)を用いて麺類を製造した。本実験例では麺類の一例として再加熱うどんを製造した。
【0079】
(1)再加熱うどんの製造
横型のピンミキサーを用いて、実験例1で製造した各種粉末麦芽とマルデックPH400、アセチル化澱粉、グルテン、アルギン酸エステルを小麦粉(中力粉)(北海道100、昭和産業株式会社製)と下記の表2~6に示す配合で混合し、そのミックス組成物100質量部に対して、塩4質量部、水40質量部を添加して混合した後、そぼろ状になるまで15分間ミキシングして生地を調製した。次いで、ロール式製麺機を使用して圧延し、角10番の切刃を用いて麺線を切り出し、厚み3.0mmの生麺(うどん)を調製した。調製した各うどんを、沸騰した水で茹で増重率が160%になるように茹で、冷水で冷却、水切りし、調理済のうどんを製造した。調理済のうどんをゼラチンで固めたスープ上に静置し、冷蔵で24時間保存した後、電子レンジを用いて500Wで5分間加熱した。
【0080】
(2)評価
製造した再加熱うどんについて、10人の専門パネルによって、味、香り、粘弾性、つるみ、麺類の色を評価した。評価方法は、下記の基準に基づいて5段階で実施し、平均点を算出した。なお、対象区は参考例1とした。
【0081】
[味]
5:対象区と比べ、穀物の自然な甘みが非常に強く感じられる(非常に良好)
4:対象区と比べ、穀物の自然な甘みが強く感じられる(良好)
3:対象区と比べ、穀物の自然な甘みがやや感じられる(やや良好)
2:対象区と比べ、雑味や苦味がやや感じられる(やや劣る)
1:対象区と比べ、雑味や苦味が感じられる(劣る)
【0082】
[香り]
5:対象区と比べ、穀物の自然な香りが非常に強く感じられる(非常に良好)
4:対象区と比べ、穀物の自然な香りが強く感じられる(良好)
3:対象区と比べ、穀物の自然な香りがやや感じられる(やや良好)
2:対象区と比べ、穀物の自然な香りがやや弱い(やや劣る)
1:対象区と比べ、穀物の自然な香りが弱い(劣る)
【0083】
[粘弾性]
5:対象区と比べ、粘弾性が非常に良好である
4:対象区と比べ、粘弾性が良好である
3:対象区と比べ、粘弾性がやや良好である
2:対象区と比べ、粘弾性がやや劣る
1:対象区と比べ、粘弾性が劣る
【0084】
[つるみ]
5:対象区と比べ、表面が非常に滑らかで、口当たりがよい(非常に良好)
4:対象区と比べ、表面が滑らかである(良好)
3:対象区と比べ、表面がやや滑らかである(やや良好)
2:対象区と比べ、表面にザラつきがある(やや劣る)
1:対象区と比べ、表面のザラつきが強い(劣る)
【0085】
[麺類の色]
5:麺類の色にくすみがなく、非常に良好(参考例)
4:麺類の色にほとんどくすみがなく、良好
3:麺類の色がわずかにくすんでいるが、許容できる(やや良好)
2:麺類の色がややくすんでおり、やや劣る
1:麺類の色がくすんでおり、劣る
【0086】
(3)結果
結果を下記の表2~6に示す。
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
(4)考察
上記表2~6に示す通り、糖化力が50WK以下、かつ、CIELAB表色系のL値が40以上である粉末麦芽1~4とマルデックPH400(マルトペンタオース、マルトヘキサオースを合計で固形分当たり40質量%含む糖類、以下同様)を用いた再加熱うどん(実施例1~4)、粉末麦芽1~4とアセチル化澱粉を用いた再加熱うどん(実施例5~8)、粉末麦芽1~4とグルテンを用いた再加熱うどん(実施例9~12)、粉末麦芽1~4とアルギン酸エステルを用いた再加熱うどん(実施例13~16)、粉末麦芽1とマルデックPH400、グルテンを用いた再加熱うどん(実施例17)、粉末麦芽1とマルデックPH400、アルギン酸エステルを用いた再加熱うどん(実施例18)、粉末麦芽1とグルテン、アルギン酸エステルを用いた再加熱うどん(実施例19)、粉末麦芽1とマルデックPH400、グルテン、アルギン酸エステルを用いた再加熱うどん(実施例20)は、麺類の色に問題なく、穀物の甘み、香りを強く感じ、粘弾性、つるみも良好であった。
【0093】
一方、粉末麦芽1のみ用いた比較例1は、麺類の色に問題なく、穀物の甘み、香りも感じられ良好であったが、粘弾性、つるみの評価が低かった。また、CIELAB表色系のL値が40未満である粉末麦芽5とマルデックPH400を用いた比較例2、粉末麦芽5とアセチル化澱粉を用いた比較例5、粉末麦芽5とグルテンを用いた比較例8、粉末麦芽5とアルギン酸エステルを用いた比較例11は、粘弾性、つるみは良好であったが、麺類の色が劣り、また、味、香りの評価も低かった。糖化力が50WKを超える粉末麦芽6、7とマルデックPH400を用いた比較例3、4、粉末麦芽6、7とアセチル化澱粉を用いた比較例6、7、粉末麦芽6、7とグルテンを用いた比較例9、10、粉末麦芽6、7とアルギン酸エステルを用いた比較例12、13は、麺類の色に問題なく、粘弾性、つるみも良好であったが、味、香りの評価が低かった。
【0094】
<実験例3>
実験例3では、粉末麦芽1と下記の表7に示した各種糖質を用いて麺類を製造した。本実験例では麺類の一例として再加熱うどんを製造した。
【0095】
(1)再加熱うどんの製造
下記の表8、9に示す材料を用いて、実験例2と同一の方法で再加熱うどんを製造した。
【0096】
(2)評価
製造した再加熱うどんについて、実験例2と同一の方法で評価を行った。なお、対象区は参考例1とした。
【0097】
(3)結果
結果を下記の表8、9に示す。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
(4)考察
上記表8、9に示す通り、糖化力が50WK以下、かつ、CIELAB表色系のL値が40以上である粉末麦芽1を、食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下、グルコースを構成糖とする重合度が2~6の糖、及びこれらの還元糖から選択される1以上の糖を固形分当たり40質量%以上含む糖類を、食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.03~10質量部用いた再加熱うどん(実施例21~31)は、麺類の色に問題なく、穀物の甘み、香りを強く感じ、粘弾性、つるみも良好であった。
【0102】
一方、粉末麦芽1と含水結晶ぶどう糖を用いた比較例14は、麺類の色に問題なく、穀物の香りも感じられ良好であったが、味、粘弾性、つるみの評価が低かった。粉末麦芽1とJ-SPDを用いた比較例15は、麺類の色に問題なく、穀物の甘み、香りも感じられ、つるみも良好であったが、粘弾性の評価が低かった。また、粉末麦芽1を、食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり15質量%用いた比較例16では、麺類の色に問題なく、穀物の香りも感じられ良好であったが、味、粘弾性、つるみの評価が低かった。マルデックPH400を、食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して12質量部用いた比較例17では、麺類の色に問題なく、穀物の甘み、香りも感じられ、つるみも良好であったが、粘弾性の評価が低かった。
【0103】
<実験例4>
実験例4では、粉末麦芽1と各種タンパク質:グルテン(B-パウダーグル、昭和産業株式会社製)、グリアジン(グリアA、アサマ化成株式会社製)、卵白(乾燥卵白MタイプNo.200、キューピータマゴ株式会社製)、大豆タンパク質(フジプロ-F、不二製油株式会社製)、エンドウタンパク質(PP-CS、オルガノフードテック株式会社製)を用いて麺類を製造した。本実験例では麺類の一例として再加熱うどんを製造した。
【0104】
(1)再加熱うどんの製造
下記の表10、11に示す材料を用いて、実験例2と同一の方法で再加熱うどんを製造した。
【0105】
(2)評価
製造した再加熱うどんについて、実験例2と同一の方法で評価を行った。なお、対象区は参考例1とした。
【0106】
(3)結果
結果を下記の表10、11に示す。
【0107】
【0108】
【0109】
(4)考察
上記表10、11に示す通り、糖化力が50WK以下、かつ、CIELAB表色系のL値が40以上である粉末麦芽1を、食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下、植物由来タンパク質、卵由来タンパク質、及び乳由来タンパク質から選択される1以上のタンパク質を、食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.01~50質量部用いた再加熱うどん(実施例32~41)は、麺類の色に問題なく、穀物の甘み、香りを強く感じ、粘弾性、つるみも良好であった。
【0110】
<実験例5>
実験例5では、粉末麦芽1と各種増粘多糖類:アルギン酸エステル(昆布酸501、株式会社キミカ製)、キサンタンガム(ネオソフトXR、太陽化学株式会社製)、グアガム(グアーコールF50、三栄薬品貿易株式会社製)、アルギン酸(アルギロン、株式会社キミカ製)を用いて麺類を製造した。本実験例では麺類の一例として再加熱うどんを製造した。
【0111】
(1)再加熱うどんの製造
下記の表12、13に示す材料を用いて、実験例2と同一の方法で再加熱うどんを製造した。
【0112】
(2)評価
製造した再加熱うどんについて、実験例2と同一の方法で評価を行った。なお、対象区は参考例1とした。
【0113】
(3)結果
結果を下記の表12、13に示す。
【0114】
【0115】
【0116】
(4)考察
上記表12、13に示す通り、糖化力が50WK以下、かつ、CIELAB表色系のL値が40以上である粉末麦芽1を、食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下、増粘多糖類を、食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して0.005~1.2質量部用いた再加熱うどん(実施例42~49)は、麺類の色に問題なく、穀物の甘み、香りを強く感じ、粘弾性、つるみも良好であった。
【0117】
一方、増粘多糖類を、食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量部に対して1.5質量部用いた比較例18では、麺類の色に問題なく、穀物の甘み、香りも感じられ、つるみも良好であったが、粘弾性の評価が低かった。
【0118】
<実験例6>
実験例6では、粉末麦芽1と加工澱粉:アセチル化澱粉(SF-800、昭和産業株式会社製)、α化アセチル化澱粉(SF-α、昭和産業株式会社製)、ヒドロキシプロピル化澱粉(SF-4000、昭和産業株式会社製)、リン酸架橋澱粉(SF-700、昭和産業株式会社製)、ヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉(SF-2900、昭和産業株式会社製)を用いて麺類を製造した。本実験例では麺類の一例として再加熱うどんと冷やしうどんを製造した。
【0119】
(1)再加熱うどんの製造
下記の表14に示す材料を用いて、実験例2と同一の方法で再加熱うどんを製造した。
【0120】
(2)評価
製造した再加熱うどんについて、実験例2と同一の方法で評価を行った。なお、対象区は参考例1とした。
【0121】
(3)結果
結果を下記の表14に示す。
【0122】
【0123】
(4)冷やしうどんの製造
横型のピンミキサーを用いて、粉末麦芽1とマルデックPH400(昭和産業株式会社製)、アセチル化澱粉(SF-800、昭和産業株式会社製)、グルテン(B-パウダーグル、昭和産業株式会社製)、アルギン酸エステル(昆布酸501、株式会社キミカ製)を小麦粉(中力粉)(北海道100、昭和産業株式会社製)と下記の表15に示す配合で混合し、そのミックス組成物100質量部に対して、塩4質量部、水40質量部を添加して混合した後、そぼろ状になるまで15分間ミキシングして生地を調製した。次いで、ロール式製麺機を使用して圧延し、角10番の切刃を用いて麺線を切り出し、厚み3.0mmの生麺(うどん)を調製した。調製した各うどんを、沸騰した水で茹で増重率が160%になるように茹で、冷水で冷却、水切りし、調理済のうどんを製造した。調理済のうどんは、ほぐし剤をまぶし、冷蔵で24時間保存した後、スープをかけて冷やしうどんを得た。
【0124】
(5)評価
製造した冷やしうどんについて、実験例2と同一の方法で評価を行った。なお、対象区は参考例2とした。
【0125】
(6)結果
結果を下記の表15に示す。
【0126】
【0127】
(7)考察
上記表14、15に示す通り、糖化力が50WK以下、かつ、CIELAB表色系のL値が40以上である粉末麦芽1を、食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり0質量%超、12質量%以下、加工澱粉を、食品に用いる穀粉類及び澱粉類の合計100質量%当たり2~50質量%用いたうどん(実施例50~53)、さらにマルデックPH400、グルテン、アルギン酸エステルと組合せたうどん(実施例54~58)は、麺類の色に問題なく、穀物の甘み、香りを強く感じ、粘弾性、つるみも良好であった。
【0128】
<実験例7>
実験例7では、粉末麦芽1とマルデックPH400(昭和産業株式会社製)、アセチル化澱粉(SF-800、昭和産業株式会社製)を用いて麺類を製造した。本実験例では麺類の一例として再加熱餃子皮を製造した。
【0129】
(1)再加熱餃子皮の製造
横型のピンミキサーを用いて、粉末麦芽1とマルデックPH400、アセチル化澱粉を小麦粉(中力粉)(北海道100、昭和産業株式会社製)と下記の表16に示す配合で混合し、そのミックス組成物100質量部に対して、塩1質量部、加工油脂(フレンジーM、理研ビタミン株式会社製)1質量部、水34質量部を添加して混合した後、そぼろ状になるまでミキシングして生地を調製した。次いで、ロール式製麺機を使用して圧延し、得られた麺帯を型でくり抜き、餃子皮(直径90mm、厚さ1mm)を調製した。
【0130】
あらかじめ調製した具材(餡)を調製した餃子皮で包み、生餃子を調製した。得られた生餃子の表面に、澱粉(コーンスターチ、昭和産業株式会社製)をまぶして付着させ、蒸し処理(5分)を行い、調理済の餃子を製造した。調理済の餃子を冷蔵で24時間保存した後、200℃に加熱したフライパンに油をひき、7分間焼き調理し、焼餃子(再加熱餃子皮)を得た。
【0131】
(2)評価
製造した焼餃子(再加熱餃子皮)について、実験例2と同一の方法で、味、香り、粘弾性、麺類の色の評価を行った。なお、対象区は参考例3とした。
【0132】
(3)結果
結果を下記の表16に示す。
【0133】
【0134】
(4)考察
上記表16に示す通り、糖化力が50WK以下、かつ、CIELAB表色系のL値が40以上である粉末麦芽1と、マルデックPH400、アセチル化澱粉を用いた再加熱餃子皮(実施例59)は、麺類の色に問題なく、穀物の甘み、香りを強く感じ、粘弾性も良好であった。
【0135】
<実験例8>
実験例8では、粉末麦芽1とマルデックPH400(昭和産業株式会社製)、酸化澱粉(スタビローズT-10、松谷化学工業株式会社製)を用いて麺類を製造した。本実験例では麺類の一例として再加熱春巻皮を製造した。
【0136】
(1)再加熱春巻皮の製造
粉末麦芽1とマルデックPH400、酸化澱粉を小麦粉(中力粉)(北海道100、昭和産業株式会社製)と下記の表17に示す配合で混合し、そのミックス組成物100質量部に対して、塩1質量部を溶解させた水140質量部を添加して分散液を調製した。ドラム型焼成機を用いて、分散液から厚さ0.50~0.55mmの麺帯を焼成し、190mm×190mmの大きさに切断して春巻皮を製造した。
【0137】
あらかじめ調製した具材(餡)を調製した春巻皮で包んで春巻を調製、170~180℃で油ちょうし、調理済の春巻を製造した。-40℃で完全冷凍してから-20℃で14日間冷凍保存した後、電子レンジを用いて500Wで30秒間加熱した。
【0138】
(2)評価
製造した春巻(再加熱春巻皮)について、10人の専門パネルによって、風味、食感を評価した。評価方法は、下記の基準に基づいて5段階で実施し、平均点を算出した。なお、対象区は参考例4とした。
【0139】
[風味]
5:対象区と比べ、穀物の自然な甘み・香りが強く感じる(非常に良好)
4:対象区と比べ、穀物の自然な甘み・香りがやや強く感じる(良好)
3:対象区と同程度の穀物の自然な甘み・香りを感じる(やや良好)
2:対象区と比べ、穀物の自然な甘み・香りがやや弱く感じる(やや劣る)
1:対象区と比べ、穀物の自然な甘み・香りが弱く感じる(劣る)
【0140】
[食感]
5:対象区と比べ、良好な硬さ、サクミを有する(非常に良好)
4:対象区と比べ、やや良好な硬さ、サクミを有する(良好)
3:対象区と同程度の硬さ、サクミを有する(やや良好)
2:対象区と比べ、ややヒキがある(やや劣る)
1:対象区と比べ、ヒキがある(劣る)
【0141】
(3)結果
結果を下記の表17に示す。
【0142】
【0143】
(4)考察
上記表17に示す通り、糖化力が50WK以下、かつ、CIELAB表色系のL値が40以上である粉末麦芽1と、マルデックPH400、酸化澱粉を用いた再加熱春巻皮(実施例60)は、穀物の甘みを感じ、食感も良好であった。
【0144】
<実験例9>
実験例9では、粉末麦芽1とマルデックPH400(昭和産業株式会社製)、グルテン(B-パウダーグル、昭和産業株式会社製)、卵白を用いてベーカリー製品を製造した。本実験例ではベーカリー製品の一例としてフィナンシェを製造した。
【0145】
(1)フィナンシェの製造
粉末麦芽1とマルデックPH400、グルテンを小麦粉(薄力粉)(クレオパトラ、昭和産業株式会社製)と下記の表18に示す配合で混合し、そのミックス組成物100質量部に、グラニュー糖400質量部、アーモンドパウダー(株式会社カネカ製)233質量部、卵白(固形分12%)333質量部、溶かしバター433質量部を加え、均一に撹拌し、生地を作製した。生地は、冷蔵で12時間静置した後、フィナンシェ型に30g流し込み、オーブン(焼成温度:上段220℃/下段190℃、焼成時間:14分間)でフィナンシェを製造した。
【0146】
(2)評価
製造したフィナンシェについて、10人の専門パネルによって、風味、食感を評価した。評価方法は、下記の基準に基づいて5段階で実施し、平均点を算出した。なお、対象区は参考例5とした。
【0147】
[風味]
5:対象区と比べ、穀物の自然な甘み・香りが強く感じる(非常に良好)
4:対象区と比べ、穀物の自然な甘み・香りがやや強く感じる(良好)
3:対象区と同程度の穀物の自然な甘み・香りを感じる(やや良好)
2:対象区と比べ、穀物の自然な甘み・香りがやや弱く感じる(やや劣る)
1:対象区と比べ、穀物の自然な甘み・香りが弱く感じる(劣る)
【0148】
[食感]
5:対象区と比べ、良好なしっとり感、口溶けである(非常に良好)
4:対象区と比べ、やや良好なしっとり感、口溶けである(良好)
3:対象区と同程度のしっとり感、口溶けである(やや良好)
2:対象区と比べ、しっとり感、口溶けにやや劣る(やや劣る)
1:対象区と比べ、しっとり感、口溶けに劣る(劣る)
【0149】
(3)結果
結果を下記の表18に示す。
【0150】
【0151】
(4)考察
上記表18に示す通り、糖化力が50WK以下、かつ、CIELAB表色系のL値が40以上である粉末麦芽1と、マルデックPH400、グルテン、卵白を用いたフィナンシェ(実施例61)は、風味、食感ともに良好であった。
【0152】
<実験例10>
実験例10では、粉末麦芽1とマルデックPH400(昭和産業株式会社製)、グルテン(B-パウダーグル、昭和産業株式会社製)を用いてベーカリー製品を製造した。本実験例ではベーカリー製品の一例としてピザを製造した。
【0153】
(1)ピザの製造
粉末麦芽1とマルデックPH400、グルテンを小麦粉(強力粉)(紫ネオン、昭和産業株式会社製)と下記の表19に示す配合で混合し、そのミックス組成物100質量部に、塩2.9質量部、パン酵母(生)(カネカイーストレッド、株式会社カネカ製)0.03質量部、水59質量部を添加して、低速で15分間ミキシングし、生地を作製した。生地は20分間フロアタイムをとり、220gに分割し、丸めを行った後、18℃で12時間発酵熟成させた。次いで、直径25cmの円状に成形し、ピザソースを塗布し、チーズをのせ、ピザ窯(500℃)で90秒焼成してピザを製造した。
【0154】
(2)評価
製造したピザについて、10人の専門パネルによって、風味、食感を評価した。評価方法は、下記の基準に基づいて5段階で実施し、平均点を算出した。なお、対象区は参考例6とした。
【0155】
[風味]
5:対象区と比べ、穀物の自然な甘み・香りが強く感じる(非常に良好)
4:対象区と比べ、穀物の自然な甘み・香りがやや強く感じる(良好)
3:対象区と同程度の穀物の自然な甘み・香りを感じる(やや良好)
2:対象区と比べ、穀物の自然な甘み・香りがやや弱く感じる(やや劣る)
1:対象区と比べ、穀物の自然な甘み・香りが弱く感じる(劣る)
【0156】
[食感]
5:対象区と比べ、もちもちした食感である(非常に良好)
4:対象区と比べ、ややもちもちした食感である(良好)
3:対象区と同程度のもちもちした食感である(やや良好)
2:対象区と比べ、もちもちした食感がやや劣る(やや劣る)
1:対象区と比べ、もちもちした食感が劣る(劣る)
【0157】
(3)結果
結果を下記の表19に示す。
【0158】
【0159】
(4)考察
上記表19に示す通り、糖化力が50WK以下、かつ、CIELAB表色系のL値が40以上である粉末麦芽1と、マルデックPH400、グルテンを用いたピザ(実施例62)は、風味、食感ともに良好であった。