(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120095
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】センシングケーブルおよびセンシングシステム
(51)【国際特許分類】
G01L 1/24 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
G01L1/24 A
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024104182
(22)【出願日】2024-06-27
(62)【分割の表示】P 2021172829の分割
【原出願日】2021-10-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英明
(57)【要約】
【課題】例えば、改善された新規なセンシングケーブルおよびセンシングシステムを得る。
【解決手段】センシングケーブルは、例えば、第一光ファイバと、第一光ファイバに沿って当該第一光ファイバと間隔をあけて延びた第二光ファイバと、少なくとも部分的に第一光ファイバと第二光ファイバとの間に介在し第一光ファイバから第二光ファイバへ光を伝送する媒質と、を備え、媒質を介して第一光ファイバから第二光ファイバへ光が伝送される位置での第一光ファイバの長手方向と交差した断面において、第一光ファイバの外周は、第一区間を含み、第一光ファイバは、第一区間および媒質を介して第二光ファイバと光学的に接続される。断面において、第一光ファイバの外周は、第二区間を含み、第一光ファイバは、第二区間および媒質を介しては第二光ファイバとは光学的に接続されなくてもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一光ファイバと、
前記第一光ファイバに沿って当該第一光ファイバと間隔をあけて延びた第二光ファイバと、
少なくとも部分的に前記第一光ファイバと前記第二光ファイバとの間に介在し前記第一光ファイバから前記第二光ファイバへ光を伝送する媒質と、
を備え、
前記媒質を介して前記第一光ファイバから前記第二光ファイバへ光が伝送される位置での前記第一光ファイバの長手方向と交差した断面において、前記第一光ファイバの外周は、第一区間を含み、
前記第一光ファイバは、前記第一区間および前記媒質を介して前記第二光ファイバと光学的に接続される、センシングケーブル。
【請求項2】
前記断面において、前記第一光ファイバの外周は、第二区間を含み、
前記第一光ファイバは、前記第二区間および前記媒質を介しては前記第二光ファイバとは光学的に接続されない、請求項1に記載のセンシングケーブル。
【請求項3】
前記第一光ファイバの外周において、前記第一光ファイバから前記媒質を介して前記第二光ファイバへ光が伝送される方向とは異なる方向へ光が向かうのを抑制する抑制部材を備えた、請求項1または2に記載のセンシングケーブル。
【請求項4】
第一光ファイバと、
前記第一光ファイバに沿って当該第一光ファイバと間隔をあけて延びた第二光ファイバと、
少なくとも部分的に前記第一光ファイバと前記第二光ファイバとの間に介在し前記第一光ファイバから前記第二光ファイバへ光を伝送する媒質と、
前記第一光ファイバの外周において、前記第一光ファイバから前記媒質を介して前記第二光ファイバへ光が伝送される方向とは異なる方向へ光が向かうのを抑制する抑制部材と、
を備えた、センシングケーブル。
【請求項5】
前記抑制部材は、合成樹脂材料で作られた、請求項3または4に記載のセンシングケーブル。
【請求項6】
前記第一光ファイバの検査光の検査波長における伝送損失は、0.3[dB/m]以上である、請求項1~5のうちいずれか一つに記載のセンシングケーブル。
【請求項7】
前記第一光ファイバおよび前記第二光ファイバは、検査光を検査波長においてマルチモードで伝送する、請求項1~6のうちいずれか一つに記載のセンシングケーブル。
【請求項8】
前記第一光ファイバおよび前記第二光ファイバを取り囲むチューブ状の被覆を備えた、請求項1~7のうちいずれか一つに記載のセンシングケーブル。
【請求項9】
前記第一光ファイバ、前記第二光ファイバ、および前記媒質と、前記被覆との間に、気体を収容した空間が設けられた、請求項8に記載のセンシングケーブル。
【請求項10】
前記媒質の屈折率は、前記第一光ファイバのコアの屈折率以上であり、かつ前記第二光ファイバの屈折率以下である、請求項1~9のうちいずれか一つに記載のセンシングケーブル。
【請求項11】
前記媒質の屈折率は、前記第一光ファイバのコアの屈折率より大きく、かつ前記第二光ファイバの屈折率より小さい、請求項1~9のうちいずれか一つに記載のセンシングケーブル。
【請求項12】
前記媒質の屈折率は、前記第一光ファイバのコアの屈折率および前記第二光ファイバの屈折率と略同じである、請求項1~11のうちいずれか一つに記載のセンシングケーブル。
【請求項13】
前記第一光ファイバおよび前記第二光ファイバは、合成樹脂材料で作られた、請求項1~12のうちいずれか一つに記載のセンシングケーブル。
【請求項14】
前記第一光ファイバおよび前記第二光ファイバは、石英ガラスで作られた、請求項1~12のうちいずれか一つに記載のセンシングケーブル。
【請求項15】
前記媒質は、合成樹脂材料で作られた、請求項1~14のうちいずれか一つに記載のセンシングケーブル。
【請求項16】
前記第一光ファイバおよび前記第二光ファイバは、一つの光ファイバから作られ、折返部を介して接続された、請求項1~15のうちいずれか一つに記載のセンシングケーブル。
【請求項17】
前記折返部は、前記媒質に対して、前記センシングケーブルの長手方向に外れて位置された、請求項16に記載のセンシングケーブル。
【請求項18】
前記第一光ファイバおよび前記第二光ファイバは、互いに分離された、請求項1~15のうちいずれか一つに記載のセンシングケーブル。
【請求項19】
光を前記第一光ファイバから前記第二光ファイバへ伝送する前記媒質を少なくとも部分的に挟むように位置された前記第一光ファイバと前記第二光ファイバとを有したセンシングセットとして、複数のセンシングセットを備えた、請求項1~18のうちいずれか一つに記載のセンシングケーブル。
【請求項20】
前記センシングセットとして、前記媒質が共通である複数のセンシングセットを備えた、請求項19に記載のセンシングケーブル。
【請求項21】
前記媒質が共通である複数のセンシングセットにおいて、前記第一光ファイバと前記第二光ファイバとが並ぶ方向が、互いに交差した、請求項20に記載のセンシングケーブル。
【請求項22】
光源と、
請求項1~21のうちいずれか一つに記載のセンシングケーブルと、
前記光源から前記第一光ファイバに入力され、前記媒質を介して前記第二光ファイバから出力された検査光に基づいて、前記センシングケーブルに作用した外力および前記センシングケーブルの状態変化のうち少なくとも一方を測定する測定装置と、
を備えた、センシングシステム。
【請求項23】
前記検査光の波長は、400[nm]以上かつ550[nm]以下である、請求項22に記載のセンシングシステム。
【請求項24】
前記検査光は、パルス光である、請求項22または23に記載のセンシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センシングケーブルおよびセンシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第一コアと第二コアとクラッドとを有したマルチコア光ファイバを含むセンシングケーブルを備え、第一コアと第二コアとの間のクロストークに基づいて圧力のような物理量を検出するセンシングシステムが、知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のセンシングケーブルでは、第一コアから第二コアへ光の結合を促進しようとすると第一コアへの光閉じ込め効果を下げる必要があり、結果として、第一コアからクラッドに漏洩する光は、当該第一コアの周囲に全体的に伝播する。このため、第一コアから漏洩する光のパワーに対する第二コアに結合される光のパワーの比率が低くなってしまい、例えば、検出感度が低くなったり、エネルギ効率が低くなったりといった問題が生じる場合があった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、検出感度やエネルギ効率をより高めることを可能とするような、改善された新規なセンシングケーブルおよびセンシングシステムを得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセンシングケーブルは、例えば、第一光ファイバと、前記第一光ファイバに沿って当該第一光ファイバと間隔をあけて延びた第二光ファイバと、前記第一光ファイバと前記第二光ファイバとの間に介在する介在部位を有し、当該介在部位を介して前記第一光ファイバから前記第二光ファイバへ光を伝送する伝送部材と、を備え、前記介在部位が設けられた位置での前記第一光ファイバの長手方向と交差した断面において、前記第一光ファイバの外周が、前記介在部位と接し当該介在部位と光学的に接続された第一区間と、前記介在部位と離間した第二区間とを含む。
【0007】
前記センシングケーブルは、前記第一光ファイバの外周において、前記第一光ファイバから前記介在部位とは外れた方向へ光が向かうのを抑制する抑制部材を備えてもよい。
【0008】
また、本発明のセンシングケーブルは、例えば、第一光ファイバと、前記第一光ファイバに沿って当該第一光ファイバと間隔をあけて延びた第二光ファイバと、前記第一光ファイバと前記第二光ファイバとの間に介在する介在部位を有し、当該介在部位を介して前記第一光ファイバから前記第二光ファイバへ光を伝送する伝送部材と、前記第一光ファイバの外周において、前記第一光ファイバから前記介在部位とは外れた方向へ光が向かうのを抑制する抑制部材と、を備える。
【0009】
前記センシングケーブルでは、前記抑制部材は、合成樹脂材料で作られてもよい。
【0010】
前記センシングケーブルでは、前記第一光ファイバの検査光の検査波長における伝送損失は、0.3[dB/m]以上であってもよい。
【0011】
前記センシングケーブルでは、前記第一光ファイバおよび前記第二光ファイバは、検査光を検査波長においてマルチモードで伝送してもよい。
【0012】
前記センシングケーブルは、前記第一光ファイバおよび前記第二光ファイバを取り囲むチューブ状の被覆を備えてもよい。
【0013】
前記センシングケーブルでは、前記第一光ファイバ、前記第二光ファイバ、および前記伝送部材と、前記被覆との間に、気体を収容した空間が設けられてもよい。
【0014】
前記センシングケーブルでは、前記伝送部材の屈折率は、前記第一光ファイバのコアの屈折率以上であり、かつ前記第二光ファイバの屈折率以下であってもよい。
【0015】
前記センシングケーブルでは、前記伝送部材の屈折率は、前記第一光ファイバのコアの屈折率より大きく、かつ前記第二光ファイバの屈折率より小さくてもよい。
【0016】
前記センシングケーブルでは、前記伝送部材の屈折率は、前記第一光ファイバのコアの屈折率および前記第二光ファイバの屈折率と略同じであってもよい。
【0017】
前記センシングケーブルでは、前記第一光ファイバおよび前記第二光ファイバは、合成樹脂材料で作られてもよい。
【0018】
前記センシングケーブルでは、前記第一光ファイバおよび前記第二光ファイバは、石英ガラスで作られてもよい。
【0019】
前記センシングケーブルでは、前記伝送部材は、合成樹脂材料で作られてもよい。
【0020】
前記センシングケーブルでは、前記第一光ファイバおよび前記第二光ファイバは、一つの光ファイバから作られ、折返部を介して接続されてもよい。
【0021】
前記センシングケーブルでは、前記折返部は、前記伝送部材に対して、前記センシングケーブルの長手方向に外れて位置されてもよい。
【0022】
前記センシングケーブルでは、前記第一光ファイバおよび前記第二光ファイバは、互いに分離されてもよい。
【0023】
前記センシングケーブルは、前記伝送部材と、前記介在部位を挟んで位置された前記第一光ファイバおよび前記第二光ファイバと、を有したセンシングセットとして、複数のセンシングセットを備えてもよい。
【0024】
前記センシングケーブルは、前記センシングセットとして、前記伝送部材が共通である複数のセンシングセットを備えてもよい。
【0025】
前記センシングケーブルでは、前記伝送部材が共通である複数のセンシングセットにおいて、前記第一光ファイバと前記第二光ファイバとが並ぶ方向が、互いに交差してもよい。
【0026】
本発明のセンシングシステムは、例えば、光源と、前記センシングケーブルと、前記光源から前記第一光ファイバに入力され、前記伝送部材を介して前記第二光ファイバから出力された検査光に基づいて、前記センシングケーブルに作用した外力および前記センシングケーブルの状態変化のうち少なくとも一方を測定する測定装置と、を備える。
【0027】
前記センシングシステムでは、前記検査光の波長は、400[nm]以上かつ550[nm]以下であってもよい。
【0028】
前記センシングシステムでは、前記検査光は、パルス光であってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、例えば、改善された新規なセンシングケーブルおよびセンシングシステムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、第1実施形態のセンシングシステムの例示的な概略構成図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のセンシングケーブルの例示的かつ模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態のセンシングシステムおよび従来の圧力センサによる圧力の検出値の経時変化の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、第2実施形態のセンシングケーブルの例示的かつ模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、第3実施形態のセンシングケーブルの例示的な概略構成図である。
【
図6】
図6は、第4実施形態のセンシングケーブルの例示的な概略構成図である。
【
図7】
図7は、第5実施形態のセンシングケーブルの例示的かつ模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、第5実施形態のセンシングケーブルの例示的な概略構成図である。
【
図9】
図9は、第6実施形態のセンシングケーブルの例示的かつ模式的な断面図である。
【
図10】
図10は、第7実施形態のセンシングケーブルの例示的かつ模式的な断面図である。
【
図11】
図11は、第8実施形態のセンシングシステムの例示的な概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、実施形態の構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0032】
以下に示される実施形態は、同様の構成を備えている。よって、各実施形態の構成によれば、当該同様の構成に基づく同様の作用および効果が得られる。また、以下では、それら同様の構成には同様の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される場合がある。
【0033】
また、本明細書において、序数は、部品や、部材、部位等を区別するために便宜上付与されており、優先度や順番を示すものではない。
【0034】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のセンシングシステム100の概略構成図である。センシングシステム100は、センシングケーブル10Aと、光ファイバ20と、測定装置30と、を備えている。なお、
図1において、センシングケーブル10Aの測定部10aについては、長手方向に沿った断面が示されている。
【0035】
センシングシステム100は、センシングケーブル10Aの測定部10aに作用した圧力や力のような物理量や、測定部10aに作用した外力に基づく当該センシングケーブル10Aの曲げや、捩れ、圧縮のような状態変化等を、測定することができる。
【0036】
測定装置30は、光源31と、受光部32と、処理部33と、を有している。
【0037】
光源31は、例えば、レーザダイオードを有し、例えば、波長が400[nm]以上でありかつ550[nm]以下である光(検査光)を、出力する。光源31は、検査光として、連続光を出力してもよいし、所定の時間間隔のパルス光を出力してもよい。
【0038】
受光部32は、例えば、フォトダイオードを有し、デリバリ光ファイバ22から入力された光の強度を検出する。受光部32は、検出部とも称されうる。
【0039】
処理部33は、受光部32における受光強度を取得し、当該受光強度に応じた力や圧力のような物理量や、センシングケーブル10Aの曲げの曲率半径や、捩れ角度、直径変化量のような状態変化量を算出する。また、処理部33は、光源31における検査光の出射および出射停止を切り替えたり、検査光の出力状態を変更したりする。処理部33は、制御部や演算部とも称されうる。
【0040】
本実施形態では、光源31および受光部32は、それぞれ別の光ファイバ20と光学的に接続されている。
【0041】
光源31と光学的に接続された光ファイバ20は、当該光源31から離れた位置で、部分的にセンシングケーブル10Aの測定部10a内に収容されている。測定部10aは、センシングケーブル10Aのうち、外力が作用する部位である。光源31と接続された光ファイバ20のうち測定部10a内に収容された区間は、第一光ファイバ21-1である。また、当該光ファイバ20のうち、第一光ファイバ21-1と、光源31との間の区間は、デリバリ光ファイバ22である。なお、第一光ファイバ21-1とデリバリ光ファイバ22とは、当初から一体の一つの光ファイバであってもよいし、別の光ファイバが融着等により接続されたものであってもよい。
【0042】
受光部32と光学的に接続された光ファイバ20は、当該受光部32から離れた位置で、部分的に測定部10a内に収容されている。当該光ファイバ20のうち測定部10a内に収容された区間は、第二光ファイバ21-2である。また、当該光ファイバ20のうち、第二光ファイバ21-2と、受光部32との間の区間は、デリバリ光ファイバ22である。なお、第二光ファイバ21-2とデリバリ光ファイバ22とは、当初から一体の一つの光ファイバであってもよいし、別の光ファイバが融着等により接続されたものであってもよい。
【0043】
図2は、センシングケーブル10Aの測定部10aの長手方向と交差した断面図である。
図1,2に示されるように、センシングケーブル10Aにおいて、第一光ファイバ21-1と第二光ファイバ21-2とは、互いに間隔をあけて、略平行に、いずれもX方向に延びている。X方向は、センシングケーブル10Aの長手方向である。また、本実施形態では、第一光ファイバ21-1と、第二光ファイバ21-2とは、互いに分離されている。
【0044】
センシングケーブル10Aは、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2の他、伝送部材11Aと、被覆12と、プラグ13と、を有している。
【0045】
伝送部材11Aは、検査光を伝送可能であり、例えば、合成樹脂材料で作られる。伝送部材11Aは、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2のそれぞれの周囲を取り囲むように、設けられるとともに、X方向に延びている。また、伝送部材11Aは、第一光ファイバ21-1と第二光ファイバ21-2との間に位置する介在部位11aを有している。介在部位11aも、X方向に延びている。なお、伝送部材11Aは、検査光が伝搬可能であればよく、例えば、空気や、水、その他液体等であってもよい。
【0046】
伝送部材11Aは、略円形の断面形状を有している。また、被覆12は、略一定の厚さを有するとともにチューブ状あるいは円筒状の形状を有し、伝送部材11Aの外周を取り囲んでいる。被覆12により、センシングケーブル10Aの保護性を高めることができる。
【0047】
第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2は、それぞれ、コア20aと、クラッド20bと、を有している。コア20aは、検査光を伝送可能であり、本実施形態では、例えば、石英ガラスで作られる。また、クラッド20bは、例えば、合成樹脂材料で作られる。クラッド20bは、検査光を伝送可能であってもよいし、検査光を伝送不能であってもよい。なお、コア20aは、例えば、メタクリル樹脂やフッ素樹脂のような検査光に対して透明な合成樹脂材料で作られてもよい。この場合、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2は、それぞれ、合成樹脂材料で作られたプラスチック光ファイバであってもよい。
【0048】
ここで、本実施形態では、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2の外周のうち、互いに面した部位20c、言い換えると介在部位11aと面した部位20cにおいては、クラッド20bが除去されている。これにより、第一光ファイバ21-1のコア20aと、伝送部材11Aの介在部位11aとが、互いに面するかあるいは接し、かつ第二光ファイバ21-2のコア20aと、伝送部材11Aの介在部位11aとが、互いに面するとともに接し、これにより、第一光ファイバ21-1のコア20a、介在部位11a、および第二光ファイバ21-2のコア20aが、光学的に接続されている。なお、部位20cは、例えば、研削や、研磨、ショットブラストのような機械的処理や、エッチングのような化学的処理によって、形成されうる。また、部位20cでは、クラッド20bが完全に除去される必要はなく、微少な厚さのクラッド20bや、間隔をあけた微少なクラッド20bが存在してもよい。部位20cは、除去部位とも称されうる。また、介在部位11aは、検査光の導光部位とも称されうる。なお、介在部位は、信号光を第一光ファイバ21-1から第二光ファイバ21-2へ伝搬する媒質であればよく、例えば、樹脂や、空気、水等であってもよい。
【0049】
また、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2は、検査光が比較的散乱しやすい構造を有している。一例として、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2は、コア20a内や、コア20aとクラッド20bとの界面付近に、複数のナノ構造を含んでもよい。ナノ構造は、例えば、フィラー(例えば、微粒子や筒状のチューブのようなパーティクル)や、ボイド(例えば、チューブ、微粒子以外の空気の微少空間)であり、複数種類のフィラーや複数種類のボイドを含んでもよいし、フィラーやボイドの双方を含んでもよい。ナノ構造の、センシングケーブル10Aの長手方向と垂直な断面における断面直径は、例えば、100[nm]以下である。ナノ構造は、散乱要素とも称されうる。また、検査光が散乱しやすくなるよう、第一ファイバ21-1および第二ファイバ21-2のうち少なくとも一方において、クラッド20bを除去した後、ファイバ外層を粗化してもよいし、クラッド20bを除去することなくファイバ外層を粗化してもよい。また、上述した検査光が散乱しやすい構造は、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2のうち少なくとも一方の、他方と面した部分のみに設けてもよい。この場合、第一光ファイバ21-1と第二光ファイバ21-2との間の光結合をより効率良く促進することができる。
【0050】
さらに、伝送部材11Aの屈折率は、第一光ファイバ21-1のコア20aの屈折率以上であり、かつ第二光ファイバ21-2のコア20aの屈折率以下である。なお、伝送部材11Aの屈折率は、第一光ファイバ21-1のコア20aの屈折率より大きく、かつ第二光ファイバ21-2のコア20aの屈折率より小さくてもよいし、第一光ファイバ21-1のコア20aの屈折率および第二光ファイバ21-2のコア20aの屈折率と略同じであってもよい。
【0051】
このような構成において、センシングケーブル10Aの測定部10aに作用した外力等に起因して、第一光ファイバ21-1に、曲げや、圧縮、捩れのような変形が生じたり、第一光ファイバ21-1と第二光ファイバ21-2とが互いに近付いたりすると、第一光ファイバ21-1における光の閉じ込め性が低下したり、第一光ファイバ21-1と第二光ファイバ21-2とのクロストークが増大したりして、第一光ファイバ21-1から伝送部材11Aの介在部位11aを経由して第二光ファイバ21-2に結合される検査光の量が増大する。これにより、受光部32での受光強度が増大する。
【0052】
さらに、上述したように第一光ファイバ21-1が散乱要素を含んでいる場合、当該第一光ファイバ21-1から介在部位11aを経由して第二光ファイバ21-2に結合される光の量は、外力や変形等に対してより敏感に増大しやすくなる。
【0053】
したがって、本実施形態によれば、受光部32における検査光の受光強度に基づいて、センシングケーブル10Aに作用した外力、あるいはセンシングケーブル10Aの状態変化の大きさを測定することができる。この際、処理部33は、予め実験的に取得された受光部32における受光強度と外力や状態変化の大きさとの相関関係に基づいて、受光部32における受光強度に対応した、外力や状態変化の大きさを算出することができる。
【0054】
ここで、本実施形態では、クラッド20bの屈折率は、コア20aの屈折率および伝送部材11Aの屈折率よりも低く設定されている。よって、第一光ファイバ21-1から漏洩する検査光は、クラッド20bを介しては伝送部材11Aには伝送され難く、主として、部位20cを介して介在部位11aに結合されることになる。つまり、第一光ファイバ21-1のクラッド20bは、当該第一光ファイバ21-1の外周において、当該第一光ファイバ21-1から介在部位11aおよび第二光ファイバ21-2とは外れた方向に光が漏洩するのを抑制している。このようなクラッド20bにより、第一光ファイバ21-1から漏洩する検査光は、より効率良く、介在部位11aおよび第二光ファイバ21-2に結合されることになる。クラッド20bは、抑制部材の一例である。
【0055】
また、上記構成においては、伝送部材11Aへの検査光の漏洩しやすさ、ひいては検査感度の向上という観点から、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2は、検査光を検査波長においてマルチモードで伝送する、マルチモード光ファイバであるのが好ましいことが判明した。また、同様の観点から、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2は、検査光に対する伝送損失が0.3[dB/m]以上であるのが好ましいことが判明した。
【0056】
図3は、本実施形態のセンシングシステム100による圧力の検出値、および従来の圧力センサによる圧力の検出値の経時変化の一例を示すグラフである。このグラフは、実験設備での、試験流体の圧力の測定結果を示している。
図3から、破線で示される本実施形態のセンシングシステム100と、実線で示される従来の圧力センサとで、試験流体の圧力の検出値が良好に一致していることがわかる。本実施形態のセンシングシステム100によれば、この例のように、従来の圧力センサと同等以上の測定性能が得られることが、実験的に確認された。
【0057】
以上、説明したように、本実施形態では、第一光ファイバ21-1のクラッド20b(抑制部材)が、当該第一光ファイバ21-1から伝送部材11Aの介在部位11aとは外れた方向へ光が向かうのを抑制する。
【0058】
このような構成によれば、第一光ファイバ21-1から漏洩する検査光を、より効率良く、伝送部材11Aの介在部位11aを介して第二光ファイバ21-2へ伝送することができ、センシングシステム100による外力や状態変化の測定において、検出感度やエネルギ効率をより高めることができる。
【0059】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態のセンシングケーブル10Bの測定部10aの長手方向と交差した断面図である。
図4に示されるように、本実施形態では、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2のクラッド20bが第1実施形態よりも広い範囲において除去されるとともに、クラッド20bが全体的により薄肉化されたり、介在部位11aとは反対側において断片的に設けられたりしている。このような構成にあっても、クラッド20bは、当該クラッド20bが設けられている部位において第一光ファイバ21-1から伝送部材11Aへ光が漏洩する、言い換えると、第一光ファイバ21-1から介在部位11aとは外れた方向に光が向かうのを抑制することができる。よって、本実施形態によっても、クラッド20bが無い構成に比べて、第一光ファイバ21-1から漏洩する検査光を、より効率良く、介在部位11aを介して第二光ファイバ21-2へ伝送することができ、センシングシステム100による外力や状態変化の測定において、検出感度やエネルギ効率をより高めることができる。
【0060】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態のセンシングケーブル10Cの長手方向に沿った断面図である。
図5に示されるように、本実施形態では、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2は、一つの光ファイバから作られ、折返部23を介して接続されている。光ファイバ20は、例えば、プラスチック光ファイバである。このような構成においても、上記実施形態と同様の作用および効果が得られる。
【0061】
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態のセンシングケーブル10Dの長手方向に沿った断面図である。
図6に示されるように、本実施形態でも、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2は、一つの光ファイバから作られ、折返部23を介して接続されている。ただし、本実施形態では、折返部23は、測定部10aとは外れた位置に設けられている。このような構成においても、上記実施形態と同様の作用および効果が得られる。また、本実施形態によれば、折返部23に外力が作用しないため、外力の作用によって折返部23において光の漏洩状態が変化し、当該変化が受光部32における受光強度に影響を及ぼすのを抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、測定精度をより向上することができる。
【0062】
[第5実施形態]
図7は、第5実施形態のセンシングケーブル10Eの測定部10aの長手方向と交差した断面図であり、
図8は、センシングケーブル10Eの長手方向に沿った断面図である。
【0063】
図7に示されるように、本実施形態では、伝送部材11Eは、第一光ファイバ21-1と第二光ファイバ21-2との間のみに存在している。すなわち、伝送部材11Eは、介在部位11aのみを有している。そして、被覆12の内側、すなわち、第一光ファイバ21-1、第二光ファイバ21-2、および伝送部材11Eと、被覆12との間には、収容室Sが形成されている。収容室Sには、例えば窒素のような不活性ガスや空気のような気体が収容される。この場合、収容室Sに収容される気体の屈折率は、第一光ファイバ21-1のコア20aの屈折率、第二光ファイバ21-2のコア20aの屈折率、および伝送部材11Eの屈折率よりも低い。
【0064】
第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2の外周は、部位20cと部位20dとを有している。部位20cにおいては、クラッド20bが除去され、コア20aが介在部位11aと面するとともに接している。また、部位20dにおいては、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2は、介在部位11aすなわち伝送部材11Eとは離間している。部位20dの少なくとも一部に、クラッド20bが設けられている。このような構成において、第一光ファイバ21-1から漏洩する検査光は、部位20dあるいはクラッド20bを介して収容室Sには漏洩せず、部位20cを介して介在部位11aひいては第二光ファイバ21-2と結合される。よって、本実施形態によっても、第一光ファイバ21-1から漏洩する検査光を、より効率良く、介在部位11aを介して第二光ファイバ21-2へ伝送することができ、センシングシステム100による外力や状態変化の測定において、検出感度やエネルギ効率をより高めることができる。部位20cは、第一区間の一例であり、部位20dは、第二区間の一例である。
【0065】
また、
図8に示されるように、本実施形態では、伝送部材11Eは、測定部10aにおいて長手方向に延びている。また、伝送部材11Eは、測定部10aにおいて、全区間に渡って設けられているのではなく、測定部10aの長手方向の一部に設けられるとともに、長手方向の複数箇所において互いに離間した状態で分布している。この場合、例えば、検査光をパルス光として出力し、光時間領域反射測定法(OTDR)の技術を導入することにより、受光部32における受光強度の時間波形に基づいて、測定部10aにおいて外力が作用した位置や、外力が作用した伝送部材11Eが設けられた位置を特定することが可能となる。
【0066】
[第6実施形態]
図9は、第6実施形態のセンシングケーブル10Fの測定部10aの長手方向と交差した断面図である。
図9に示されるように、本実施形態では、第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2ともに、少なくとも測定部10aにおいては、クラッド20bを有していない。上述したように、収容室S内の気体の屈折率は、第一光ファイバ21-1、第二光ファイバ21-2、および伝送部材11Eの屈折率よりも低い。また、被覆12の屈折率も、第一光ファイバ21-1、第二光ファイバ21-2、および伝送部材11Eの屈折率よりも低い。したがって、本実施形態のように、クラッド20bが無い構成においても、第一光ファイバ21-1から漏洩する検査光は、部位20dから、収容室Sや被覆12には漏洩せず、部位20cを介して介在部位11aひいては第二光ファイバ21-2と結合される。よって、本実施形態によっても、第一光ファイバ21-1から漏洩する検査光を、より効率良く、介在部位11aを介して第二光ファイバ21-2へ伝送することができ、センシングシステム100による外力や状態変化の測定において、検出感度やエネルギ効率をより高めることができる。
【0067】
[第7実施形態]
図10は、第7実施形態のセンシングケーブル10Gの測定部10aの長手方向と交差した断面図である。
図10に示されるように、本実施形態では、センシングケーブル10Gは、それぞれ、第5実施形態と同様に伝送部材11Gの介在部位11aを挟んで位置された第一光ファイバ21-1および第二光ファイバ21-2を有した複数のセットS1,S2を、備えている。このように複数のセットS1,S2を備えることにより、例えば、測定の二重系を構成できたり、二つのセットS1,S2のそれぞれの測定値に基づく平均値を算出することにより測定の誤差やばらつきを抑制できたり、といった利点が得られる。
【0068】
図10に示されるように、本実施形態では、複数のセットS1,S2において、伝送部材11Gは共通である。このような構成により、複数のセットS1,S2がそれぞれ別個の伝送部材11Gを有した構成に比べて、部品点数を減らして製造の手間やコストを低減できたり、測定部10aをよりコンパクトに構成できたり、といった利点が得られる。
【0069】
また、
図10に示されるように、本実施形態では、複数のセットS1,S2において、第一光ファイバ21-1と第二光ファイバ21-2とが並ぶ方向が、互いに交差している。このような構成によれば、例えば、複数のセットS1,S2のそれぞれの測定値に基づいて、外力が作用した方向や、センシングケーブル10Gに生じた状態変化の方向を測定できるという利点が得られる。
【0070】
[第8実施形態]
図11は、第8実施形態のセンシングケーブル10Hを有したセンシングシステム100の概略構成図である。なお、
図11において、センシングケーブル10Hについては、長手方向に沿った断面が示されている。
【0071】
図11に示されるように、本実施形態では、光源31および受光部32が、それぞれ,デリバリ光ファイバ22を介してカプラ24と光学的に接続されている。また、カプラ24は、二つのデリバリ光ファイバ22と第一光ファイバ21-1とを光学的に接続している。このような構成において、光源31から出力された検査光は、デリバリ光ファイバ22およびカプラ24を介して第一光ファイバ21-1に入力され、当該第一光ファイバ21-1の光源31とは反対側の端部で反射され、カプラ24およびもう一つのデリバリ光ファイバ22を介して受光部32に入力される。測定部10aに外力が作用すると、第一光ファイバ21-1から漏洩する検査光が、伝送部材11Aを介して、第二光ファイバ21-2に伝送され、その分だけ、受光部32での受光強度が低下する。したがって、本実施形態の構成によっても、受光部32での受光強度に基づいて、センシングケーブル10Hに作用した外力、あるいはセンシングケーブル10Aの状態変化の大きさを測定することができる。ただし、上記第1~第7実施形態では、受光部32での受光強度が高いほど外力や状態変化が大きくなるのに対し、本実施形態では、受光強度が低いほど、外力や状態変化が大きくなる。
【0072】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、型式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0073】
例えば、第一光ファイバ、伝送部材(介在部位)、および第二光ファイバの屈折率が略同じに設定されるとともに、これら第一光ファイバ、伝送部材、および第二光ファイバが、伝送部材に対して略対称となる構造を備えている場合、光源を第二光ファイバと光学的に接続し、かつ受光部を第一光ファイバと光学的に接続することにより、第一光ファイバと第二光ファイバとを入れ替えて測定することができる。
【符号の説明】
【0074】
10A~10H…センシングケーブル
10a…測定部
11A,11E,11G…伝送部材
11a…介在部位
12…被覆
13…プラグ
20…光ファイバ
20a…コア
20b…クラッド
20c…部位(第一区間、外周)
20d…部位(第二区間、外周)
21-1…第一光ファイバ
21-2…第二光ファイバ
22…デリバリ光ファイバ
23…折返部
24…カプラ
30…測定装置
31…光源
32…受光部
33…処理部
100…センシングシステム
S…収容室
S1,S2…セット