(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120170
(43)【公開日】2024-09-04
(54)【発明の名称】誘導式位置測定機構用のスケール要素
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
G01D5/20 110F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024025134
(22)【出願日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】23158098
(32)【優先日】2023-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・ホイマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ハイネマン
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077NN04
2F077NN13
2F077PP06
2F077VV02
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、上に目盛トラック(2.2)が配置されている土台(2.1)を有するスケール要素(2)に関する。目盛トラック(2.2)は、測定方向(x)に沿って交互に配置されている導電性目盛領域(2.21)と非導電性目盛領域(2.22)との周期的なシーケンスから構成されており、この導電性目盛領域(2.21)はそれぞれ、導電材料からなる層から形成されている。スケール要素(2)を機械部分に固定するために、土台(2.1)内に少なくとも1つの孔(2.11)が配置されている。導電性目盛領域(2.21)はそれぞれ開口部(2.211)を有し、これに関しては導電材料が開口部(2.211)を包囲している。少なくとも導電性目盛領域(2.21)の1つでは、開口部(2.211)を貫くように、土台(2.1)内に孔(2.11)が配置されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導式位置測定機構用のスケール要素(2)であって、上に目盛トラック(2.2)が配置されている土台(2.1)を有し、
前記目盛トラック(2.2)が、測定方向(x)に沿って交互に配置されている導電性目盛領域(2.21)と非導電性目盛領域(2.22)との周期的なシーケンスから構成されており、前記導電性目盛領域(2.21)がそれぞれ、導電材料からなる層から形成されており、
前記スケール要素(2)を機械部分に固定するために、前記土台(2.1)内に少なくとも1つの孔(2.11)が配置されているスケール要素(2)において、
前記導電性目盛領域(2.21)がそれぞれ開口部(2.211)を有し、これに関しては前記導電材料が前記開口部(2.211)を包囲しており、
少なくとも前記導電性目盛領域(2.21)の1つでは、前記開口部(2.211)を貫くように、前記土台(2.1)内に前記少なくとも1つの孔(2.11)が配置されていることを特徴とするスケール要素(2)。
【請求項2】
前記目盛トラック(2.2)がリング状に形成されている、請求項1に記載のスケール要素(2)。
【請求項3】
前記導電性目盛領域(2.21)内の前記開口部(2.211)が、幾何形状的に同一に形成されている、請求項1または2に記載のスケール要素(2)。
【請求項4】
前記目盛トラック(2.2)がリング状に形成されており、かつ中心点(M)をもつ目盛円周線(C2)に沿って延びており、前記開口部(2.211)が、それぞれ中心点(M)に対して同じ間隔を有するように、かつ前記目盛円周線(C2)に沿って等距離に並ぶように配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のスケール要素(2)。
【請求項5】
前記目盛トラック(2.2)がリング状に形成されており、かつ中心点(M)をもつ目盛円周線(C2)に沿って延びており、前記スケール要素(2)が、前記導電性目盛領域(2.21)のうち孔(2.11)を有する前記導電性目盛領域(2.21)を複数含み、前記孔(2.11)が、それぞれ中心点(M)に対して同じ間隔を有するように、かつ前記目盛円周線(C2)に沿って等距離に並ぶように配置されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のスケール要素(2)。
【請求項6】
前記リング状に形成されたスケール要素(2)が内径dおよび外径Dを有し、D/d<3が当てはまる、請求項1から5のいずれか一項に記載のスケール要素(2)。
【請求項7】
前記孔(2.11)内に配置されている少なくとも1つの固定要素(2.4)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のスケール要素(2)。
【請求項8】
前記固定要素(2.4)が、前記導電性目盛領域(2.21)に対して同一平面上にまたは後ろに下げて配置されている、請求項7に記載のスケール要素(2)。
【請求項9】
前記固定要素(2.4)がネジとして形成されている、請求項7または8に記載のスケール要素(2)。
【請求項10】
前記固定要素(2.4)が導電材料からなる、請求項7、8、または9に記載のスケール要素(2)。
【請求項11】
複数の固定要素(2.4)を含み、前記導電性目盛領域(2.21)のうち孔(2.11)を有する前記導電性目盛領域(2.21)を複数含み、前記孔(2.11)内に前記固定要素(2.4)が配置されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のスケール要素(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査要素に対する相対的なスケール要素の角度位置または直線位置を決定するための請求項1に基づく誘導式位置測定機構用のスケール要素に関する。
誘導式位置測定機構は、例えば互いに対して相対的に回転可能な機械部分の角度位置を決定するための角度測定機構として使用される。誘導式位置測定機構ではしばしば、励磁トラックおよび受信トラックが例えば導体路の形態で、共通のたいていは多層のプリント基板上に施されており、このプリント基板が、例えば位置測定機構の固定子と固定的に結合している。このプリント基板に対向してスケール要素が存在しており、このスケール要素上には目盛構造が施されており、スケール要素は位置測定機構の可動部分と固定的に結合されている。励磁トラックに、時間と共に交番する励磁電流が印加されると、受信トラック内で、スケール要素と走査要素の相対移動中に位置に依存する信号が生成される。この信号はその後、評価電子機器内でさらに処理される。
【背景技術】
【0002】
本出願人のEP3929539A1から、誘導式角度測定機構用のスケール要素が知られている。このスケール要素は、それぞれ、交互に配置された導電性目盛領域と非導電性目盛領域との周期的なシーケンスからなる2つの目盛トラックを含む。このスケール要素は固定孔を使って固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の基礎となる課題は、コンパクトで安価に製造可能なスケール要素であって、それにもかかわらず、比較的正確に働く誘導式位置測定機構のために使用可能なスケール要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は本発明により、請求項1の特徴によって解決される。
誘導式位置測定機構に適しており、そのために決定されているこのスケール要素は、上に目盛トラックが配置されている土台を含む。目盛トラックは、測定方向に沿って交互に配置されている導電性目盛領域と比較的非導電性の目盛領域との周期的なシーケンスから構成されており、この導電性目盛領域はそれぞれ、導電材料からなる層から形成されている。さらに、土台内に少なくとも1つの孔が配置されて設けられており、この孔は、スケール要素を機械部分に固定するのに適している。導電性目盛領域はそれぞれ開口部を有し、これに関しては導電材料が開口部を包囲しており、これに加えて少なくとも導電性目盛領域の1つでは、開口部を貫くように、土台内に孔が配置されている。
【0006】
つまり、導電性目盛領域は、導電材料からなる層から形成されている。比較的非導電性の目盛領域は、例えばプラスチックから(例えばプリント基板材料から)形成され得る。スケール要素は、土台として、プラスチックからなるプリント基板材料を有し得ることが好ましい。その代わりに土台を、相対的に厚い鋼鉄層および非導電層(例えばプラスチック層)を含む層体から形成することができ、この鋼鉄層は、スケール要素のうち目盛領域に面していない側に配置されている。つまり、上記の用語「比較的非導電性」は、交互に配置されている目盛領域の材料の導電性の比に関する。この比は、とりわけ10超または50超であり得る。導電性目盛領域の導電材料からなる層は、12μm、つまり0.012mmより大きい、つまり厚いことが有利である。他方で、とりわけ経済的理由から有利なのは、層が1mmより薄い、とりわけ0.5mmより薄い、有利には0.1mmより薄い場合である。
【0007】
孔という用語は、以下では、必ずしも丸く形成されなくてよい空所と理解されるべきである。とりわけ、孔はここでは角形にまたは楕円形に形成されていてもよく、例えば打ち抜きプロセスまたはフライス加工プロセスによって製造され得る。
【0008】
スケール要素は、角度測定機構内で、走査要素に対する相対的な角度位置を決定し得るために用いられる。このスケール要素は、走査要素に対して相対的に軸の周りを回転可能に配置されており、したがって測定方向は、軸に対して周方向である。
【0009】
目盛トラックがリング状または円環状に形成されており、とりわけこのリング状の目盛トラックの中心点が軸上にあることが有利である。
本発明のさらなる形態では、導電性目盛領域内の開口部は、幾何形状的に同一に形成されている。
【0010】
目盛トラックが、とりわけ軸上にある中心点をもつ目盛円周線に沿って延びており、この場合に開口部が、それぞれ中心点に対して同じ間隔を有するように、かつ目盛円周線に沿って等距離に並ぶように配置されることが有利である。
【0011】
スケール要素が、孔を有する複数の導電性目盛領域を含むことが有利である。これらの孔は、それぞれ中心点に対して同じ間隔を有するように、かつ目盛円周線に沿って等距離に並ぶように配置されている。
【0012】
開口部または孔の間隔は、ここでは度で提示され、かつ軸の周りの、つまり目盛円周線の中心点の周りの、それぞれの中心角に関する。
リング状に形成されたスケール要素が内径dおよび外径Dを有し、D/d<3が当てはまることが有利である。それゆえつまり、スケール要素は例えば相対的に大きな内径dを有する。
【0013】
本発明のさらなる形態では、スケール要素が、孔内に配置されている少なくとも1つの固定要素を含む。この固定要素は、軸方向に関し、導電性目盛領域に対して同一平面上にまたは後ろに下げて配置されていてもよく、いずれにせよ軸方向に導電性目盛領域の表面を越えて突き出ることはできない。軸方向とは、以下では、軸に平行に向いた方向のことである。
【0014】
とりわけ固定要素は導電材料から製造されており、かつネジとして形成されていてもよい。その代わりに固定要素としてリベット、金属ピン、スプリングピン、またはその類似物を用いることができ、これに関してはスケール要素が追加的にさらに、スケール要素が固定される機械部分に接着される場合が有利であり得る。固定要素は、とりわけ形状結合をもたらすために用いることができ、これは機能的に確実な配置のために重要である。同時に、固定要素はスケール要素のセンタリングに役立ち得る。つまり例えば、孔にセンタリングコーンまたはセンタリングブレードを押し込んで、スケール要素を追加的に接着結合で位置固定する構成も可能である。
【0015】
スケール要素が複数の固定要素を含み、このスケール要素が、導電性目盛領域のうち孔を有する導電性目盛領域を複数含み、これらの孔内に固定要素が配置されていることが有利である。
【0016】
さらなる態様に基づき、本発明は、スケール要素および走査要素を備えた誘導式位置測定機構も含む。
本発明の有利な形成形態は従属請求項から読み取られる。
【0017】
本発明による走査要素のさらなる詳細および利点は、添付の図に基づく1つの例示的実施形態の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】走査要素およびスケール要素を含む角度測定機構の透視図である。
【
図3】スケール要素の、特に複数の受信導体路が被せられた平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に基づき、スケール要素2の角度位置を捕捉するために使用され得る走査要素1を備えた角度測定機構を用いて本発明を説明する。スケール要素2は、軸Aの周りを走査要素1に対して相対的に回転可能に配置されている。このような角度測定機構は、例えば駆動機構内で使用することができ、この場合、スケール要素2は、例えばモータの駆動シャフトと回転不能に結合される。
【0020】
走査要素1は、複数の層を有するプリント基板1.1およびプリント基板1.1上に取り付けられた電子部品1.2を含む。プリント基板1.1は、これに加えて機械的支持構造としての枠1.3を含む。
【0021】
図2にも示しているように、プリント基板1.1は、約300°にわたって周りを囲むように形成された円弧形状を有し、これに相応して空いている箇所を有する。このプリント基板1.1の外周にぐるりと配置されて、閉じた実質的にリング状の枠1.3(ここでは金属製)が固定されており、枠1.3は、とりわけ走査要素1の機械的補強に役立ち、ここでは孔の形態での固定領域1.31を有する。プリント基板1.1の空いている箇所の領域では、プリント基板1.1の端面に平行に、実質的に径方向に、枠1.3の片体1.32が走っている。枠1.3のさらなる片体1.33は、約60°の角度にわたって円弧の輪郭部を走っている。
【0022】
走査要素1は、第1のスケール要素2を走査するために用いられる。紹介している例示的実施形態では、電子部品1.2は、プリント基板1.1の一方の側、詳しくはスケール要素2に面していない側にしか取り付けられていない。しかしその代わりにまたはそれに加えて、プリント基板1.1の両側に電子部品1.2を備え付けてもよいであろう。
【0023】
図2に基づき、プリント基板1.1は、角度情報を決定するため、第1の検出ユニット1.11、第2の検出ユニット1.12、第3の検出ユニット1.13、および第4の検出ユニット1.14を有する。検出ユニット1.11~1.14はそれぞれ円弧形状を有し、これに関してはすべての検出ユニット1.11~1.14に、それぞれの円弧形状の中心点Mが軸A上にあることが当てはまる。それゆえ検出ユニット1.11~1.14は、中心点Mに対してほぼ同心で、互いに向かい合っている。
【0024】
第1の検出ユニット1.11は、第1の励磁トラック1.111および第1の受信トラック1.112を含む。同様に第2の検出ユニット1.12は第2の励磁トラック1.121および第2の受信トラック1.122を、第3の検出ユニット1.13は第3の励磁トラック1.131および第3の受信トラック1.132を、ならびに第4の検出ユニット1.14は第4の励磁トラック1.141および第4の受信トラック1.142を含む。
【0025】
励磁トラック1.111、1.121、1.131、1.141はそれぞれ、受信トラック1.112、1.122、1.132、1.142の1つを包囲している。励磁トラック1.111、1.121、1.131、1.141も、受信トラック1.112、1.122、1.132、1.142も、周方向xに沿って走っている。
【0026】
受信トラック1.112、1.122、1.132、1.142の各々が、紹介している例示的実施形態ではそれぞれ4つの受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421を含み、これらの受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421は、周方向xにずれて配置されており、したがってずれに相応して4つの移相した信号をもたらし得る。紹介している例示的実施形態では、1つの受信トラック1.112、1.122、1.132、1.142内で隣接している受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421は互いに対し、正弦波周期全体の1/8(周方向xに沿ってπ/4または45°)ずれて配置されている。
【0027】
図では、1つの同じ受信トラック1.112、1.122、1.132、1.142に属する受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421に1つだけの符号を付している。したがってつまり、例えば第1の受信トラック1.112のすべての受信導体路1.1121に1つだけの符号を付している。これに加え、検出ユニット1.11~1.14の受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421は、ビアと結合してプリント基板1.1の異なる層内を走っており、したがって交点では望ましくない短絡が回避されている。厳密に言えば、受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421の各々が、それぞれ2つの平面または層に割り振られて並んでいる多くの導体片からなるが、以下ではこのような構造をまとめて、1つの受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421と言う。
【0028】
図3では見やすくするため、それぞれ受信トラック1.112、1.122、1.132、1.142の1つの受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421しか示していない。以下の解説は、単一の受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421のこの表現に基づいて行われ、その状況は、相応に互いに一部を成している移相した受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421にも当てはまる。
【0029】
第1の受信導体路1.1121および第3の受信導体路1.1321は、第1の半径Rを有する第1の円周線K1に沿って走っている。第2の受信導体路1.1221および第4の受信導体路1.1421は、第2の半径rを有する第2の円周線K2に沿って走っており、これに関し第2の半径rは第1の半径Rより小さく、したがって、
r<R
が当てはまる。
【0030】
両方の円周線K1、K2は同じ中心点Mを有する。受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421は、実質的に正弦波形にまたは正弦波状に形成された、空間的に周期的な軌道を有する。第1の受信トラック1.112の第1の受信導体路1.1121および第3の受信トラック1.132の第3の受信導体路1.1321は、その軌道にわたって、一定の第1の周期長λ1を有する。これに対し第2の受信トラック1.122の第2の受信導体路1.1221および第4の受信トラック1.142の第4の受信導体路1.1421は、その軌道にわたって、一定の第2の周期長λ2を有する。ここでは第2の周期長λ2が第1の周期長λ1より大きい。
【0031】
λ2>λ1
周期長λ1、λ2は、ここでは度で提示され、かつ軸Aの周りの、つまり中心点Mの周りの、それぞれの中心角に関する。紹介している例示的実施形態では、
第1の周期長: λ1=360°/32=11.25°および
第2の周期長: λ2=360°/15=24°である。
【0032】
したがってつまり、第1の周期長λ1は、360°の、整数の第1の約数Sであり、ここではS=32、
【0033】
【0034】
が当てはまる。
これに倣って、第2の周期長λ2は、360°の、整数の第2の約数Tであり、ここではT=15、
【0035】
【0036】
が当てはまる。
第1の約数Sと第2の約数Tは互いに素である。
【0037】
【0038】
第2の受信導体路1.1221および第4の受信導体路1.1421は、周方向xでのこれらの受信導体路の間にそれぞれ第1の隙間G24および第2の隙間L24が存在するように配置されており、第2の受信導体路1.1221は第2の弧長α2にわたって延びており、第4の受信導体路1.1421は第4の弧長α4にわたって延びており、紹介している例示的実施形態では、
α2=p・λ2
α4=q・λ2
p=qなので、α2=α4
式中、
【0039】
【0040】
が当てはまる。
ここではp=q=4であり、それゆえα2=4×24°=96°=α4である。したがってつまり、第2の受信導体路1.1221および第4の受信導体路1.1421はそれぞれ同じ大きさの弧長α2、α4にわたって延びており、弧長α2、α4は、ここでは4つの第2の周期長λ2に相当する。
【0041】
第1の隙間G24は第1の隙間長β24にわたって延びており、第2の隙間L24は第2の隙間長γ24にわたって延びている。第1の隙間長β24は第2の周期長λ2の第1の倍数mであり、ここではm=3が当てはまる。加えて第2の隙間長γ24は第2の倍数nであり、紹介している例示的実施形態ではnは値4をとる。基本的に、mおよびnには0より大きい自然数が用いられ得る。
【0042】
β24=m・λ2
γ24=n・λ2
【0043】
【0044】
式中、
【0045】
【0046】
が当てはまる。
さらに、mとnの和が奇数になること、つまり
m+n=2・k+1、
式中、
【0047】
【0048】
が当てはまる。
絶対的な角度測定値の生成を考慮して、とりわけ第1および第3の受信トラック1.112、1.132との関連性を形成するため、つまり結び付きに向けて、基本的には、第2の弧長α2と、第4の弧長α4と、第1の隙間長β24と、第2の隙間長γ24との和が、第2の周期長λ2の奇数倍である場合、つまり第2の約数T(ここでは15)が奇数である場合が有利である。つまり
α2+α4+β24+γ24=(2・k+1)・λ2
または
p+q+m+n=2・k+1、ここでは
4+4+4+3=15(=2・7+1)
となる。
【0049】
第2の受信導体路1.1221と第4の受信導体路1.1421がそれぞれ同じ大きさの弧長α2、α4にわたって延びている(p=q)場合が有利である。したがって、弧長α2、α4および隙間長β24、γ24がそれぞれ第2の周期長λ2の倍数であり、その和が第2の周期長λ2の奇数倍である場合には、第1の隙間長β24と第2の隙間長γ24が異なる大きさでなければならない。紹介している例示的実施形態では、第1の隙間長β24は第2の隙間長γ24より小さく、したがって、
β24<γ24
または
m<n
が当てはまる。
【0050】
第1の隙間長β24と第2の隙間長γ24の差が最小限であることが有利であり、したがって、
n-m=1
または
γ24-β24=λ2
が当てはまる。
【0051】
第1の受信導体路1.1121および第3の受信導体路1.1321は、周方向xでのこれらの受信導体路の間に、第3の隙間G13および第4の隙間L13が存在するように配置されている。加えて第1の受信導体路1.1121は第1の弧長α1にわたって延びており、これに関し、
α1=s・λ1
が当てはまる。
【0052】
第3の受信導体路1.1321はそれぞれ第3の弧長α3にわたって延びており、これに関し、
α3=t・λ1
s=t
式中、
【0053】
【0054】
が当てはまる。
紹介している例示的実施形態ではs=t=8であり、つまりα1=8×11.25°=90°=α3である。つまり第1の受信導体路1.1121および第3の受信導体路1.1321はそれぞれ、ここでは8つの第1の周期長λ1に相当する同じ大きさの弧長α1、α3にわたって延びている。
【0055】
第3の隙間G13は第3の隙間長β13にわたって延びており、第4の隙間L13は第4の隙間長γ13にわたって延びている。第3の隙間長β13は第1の周期長λ1の第3の倍数vである。加えて第4の隙間長γ13は第4の倍数wであり、紹介している例示的実施形態ではvおよびwはそれぞれ値8をとる。基本的に、vおよびwには0より大きい自然数が用いられ得る。
【0056】
β13=v・λ1
γ13=w・λ1
ここでは:v=w、
式中、
【0057】
【0058】
が当てはまる。
さらに、紹介している例示的実施形態では、vおよびwが偶数であることが当てはまる。絶対的な角度測定値を生成するため、基本的には、第1の弧長α1と、第3の弧長α3と、第3の隙間長β13と、第4の隙間長γ13との和が、第1の周期長λ1の偶数倍である場合、つまり第1の約数S(ここでは32)が偶数である場合が有利である。
【0059】
α1+α3+β13+γ13=(2・k)・λ2
または
s+t+v+w=2・k、ここでは
8+8+8+8=32(=2・16)
式中、
【0060】
【0061】
第3の隙間G13および第4の隙間L13は、第1の周期長λ1の倍数にわたって延びている。これに加え、第3の隙間G13と第4の隙間L13は同じ大きさであり、したがってつまり、第3の隙間G13は90°または8つの第1の周期長λ1にわたって、および第4の隙間L13も90°にわたって延びている。
【0062】
第2の受信導体路1.1221の軌道は、周方向xに沿って、それぞれ異なる振幅j2a、J2bを有する。つまり、それぞれ最大振れの領域で、第2の円周線K2と正弦波状に走っている第2の受信導体路1.1221との間の異なる間隔が存在している。とりわけ、第2の受信導体路1.1221の軌道は第1の区間2a内では第1の振幅j2aを有し、この第1の区間2aは、第1の隙間G24に隣り合う第2の受信導体路1.1221の端から、第1の角度α2aにわたって延びている。第2の区間2b内では第2の受信導体路1.1221の軌道が第2の振幅J2bを有し、この第2の区間2bは、第2の隙間L24に隣り合う第2の受信導体路1.1221のもう一方の端から、第2の角度α2bにわたって延びている。これに関し、第1および第2の角度α2a、α2bはそれぞれ第2の弧長α2の半分以下である。第1の振幅j2aは第2の振幅J2bより小さい。
【0063】
第4の受信導体路1.1421にもこれに倣った考察が有効である。それゆえ第4の受信導体路1.1421の軌道は、周方向xに沿って、それぞれ異なる振幅j4a、J4bを有する。つまり、それぞれ最大振れの領域で、第2の円周線K2と正弦波状に走っている第4の受信導体路1.1421との間の異なる間隔が存在している。とりわけ、第4の受信導体路1.1421の軌道は第3の区間4a内では第3の振幅j4aを有し、この第3の区間4aは、第1の隙間G24に隣り合う第4の受信導体路1.1421の端から、第3の角度α4aにわたって延びている。第4の区間4b内では第4の受信導体路1.1421の軌道が第4の振幅J4bを有し、この第4の区間4bは、第2の隙間L24に隣り合う第4の受信導体路1.1421のもう一方の端から、第4の角度α4bにわたって延びている。これに関し、第1の角度α4aおよび第4の角度α4bはそれぞれ第4の弧長α4の半分以下であり、第3の振幅j4aは第4の振幅J4bより小さい。それゆえ紹介している例示的実施形態では、
j2a=j4a
J2b=J4b
が当てはまる。
【0064】
紹介している例示的実施形態では、第2および第4の受信導体路1.1221、1.1421は、2つの異なる振幅j4a、J4bしか有さないのではない。両方の挙げた振幅j4a、J4bの間の領域では、それぞれの第2の周期長λ2内で、中間の大きさを有する振幅、つまり第2の振幅J2bまたは第4の振幅J4bより小さく、かつ第1の振幅j2aまたは第3の振幅j4aより大きい振幅が存在している。
【0065】
紹介している例示的実施形態では、第2の受信導体路1.1221の間で形作られる面、つまり正弦波形の第2の受信導体路1.1221の間の個々の面の和(すべてのレンズ状の部分面の和)が、第4の受信導体路1.1421によって形作られる面と類似のまたは同じ大きさである。
【0066】
受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421は、一つには0°および90°の信号、もう一つには45°および135°の信号をもたらすように電気的に接続されている。0°および90°の信号から第1の位置信号を決定でき、45°および135°の信号から第1の位置信号に対して冗長な第2の位置信号が決定され得る。これに加え、第1の受信トラック1.112の第1の受信導体路1.1121と第3の受信トラック1.132の第3の受信導体路1.1321は、類似して、直列に相互に接続されている。第2の受信トラック1.122の第2の受信導体路1.1221と第4の受信トラック1.142の第4の受信導体路1.1421も、類似して、直列に相互に接続されている。相互に接続された受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421によって生成された信号の評価は、1つの共通の評価ASICを介して行われ、このようにして絶対位置が算出される。
【0067】
図4では、スケール要素2が平面図で示されている。スケール要素2は、リング状または円環状の形状を有し、内径dおよび外径Dを有する。紹介している例示的実施形態では、内径dが比較的大きく、したがってここではD/d=1.4が当てはまる。
【0068】
スケール要素2は、図示した例示的実施形態では、プリント基板材料から、つまりプラスチックから、とりわけエポキシ樹脂から製造された土台2.1(
図5)から成っており、土台2.1上には2つの目盛トラック2.2、2.3が配置されている。目盛トラック2.2、2.3はリング状に形成されており、軸Aに対して同心で、異なる半径で、土台2.1上に配置されており、したがって第1の目盛トラック2.2は第2の目盛円周線C2に沿って走っており、第2の目盛トラック2.3は第1の目盛円周線C1に沿って走っている。目盛トラック2.2、2.3は、それぞれ周方向xに沿って交互に配置されている導電性目盛領域2.21、2.31と非導電性目盛領域2.22、2.32との周期的なシーケンスからなる目盛構造を含み、この導電性目盛領域2.21、2.31はそれぞれ導電材料からなる層から形成されている。この層の厚さはここでは18μmである。導電性目盛領域2.21、2.31の材料として、示した例では銅が土台2.1上に施された。これに対し非導電性目盛領域2.22、2.32内では土台2.1がコーティングされていない。それぞれ2つの目盛トラック2.2、2.3を有する構成により、スケール要素2の角度位置はアブソリュート方式で決定され得る。スケール要素2の外側の目盛トラック2.3は、周方向xに沿ってより多数のそれぞれの目盛領域2.31、2.32を有し、したがって目盛領域2.31、2.32により、角度位置の測定に関するより高い分解能を達成可能である。紹介している例示的実施形態では、第2(外側)の目盛トラック2.3が、第1の周期長λ1の偶数倍を有し、詳しくはs+t+v+wの和に相当する32であり、この和を基礎として、第1および第3の受信導体路1.1121、1.1321の幾何形状が設計された。これに対し第1(内側)の目盛トラック2.2は、周方向xに沿ってより少数のそれぞれの目盛領域2.31、2.32を有し、ここでは15である。これは、p+q+m+nの和に相当し、この和が、第2の受信導体路1.1221および第4の受信導体路1.1421の設計に重要である。
【0069】
第1(内側)の目盛トラック2.2の導電性目盛領域2.21はそれぞれ開口部2.211を有し、つまり、導電材料からなる層がこの箇所で開口しているか、または土台2.1がこの領域ではコーティングされていない。導電性目盛領域2.21は、それぞれ開口部2.211が導電性目盛領域2.21によって包囲されるように形成または配置されている。開口部2.211は、それぞれ中心点Mに対して同じ間隔を有するように、かつ第2の目盛円周線C2に沿って周方向xに等距離に(ここではそれぞれ24°の間隔をあけて)並ぶように配置されている。導電材料が開口部2.211を包囲することにより、開口部2.211の周囲では両側に、導電材料からなる片体2.212(
図6を参照)が存在しており、かつ開口部2.211の周りに導電材料からなる閉じた輪郭部が存在している。
【0070】
導電性目盛領域2.21の一部の数、ここでは5つでは、それぞれ開口部2.211を貫くように、土台2.1内に孔2.11が配置されている。つまり孔2.11は、第1(内側)の目盛トラック2.2に沿って、つまり第2の目盛円周線C2に沿って、土台2.1内に配置されており、紹介している例示的実施形態では5つの孔2.11が設けられており、これらの孔2.11は、それぞれ中心点Mに対して同じ間隔を有し、かつ第2の目盛円周線C2に沿って等距離に(ここでは72°の間隔をあけて)配置されている。
【0071】
図6では、第1の目盛トラック2.2の領域でのスケール要素2の一部分の詳細な断面が示されており、これに関し
図6では、導電性目盛領域2.21の導電材料からなる層の厚さが、解説のために誇張されて大きく図示されている。孔2.11はここではそれぞれ段のある貫通孔として形成されている。とりわけ、孔2.11は、例えば穴あけ加工によって製造される円錐形領域2.111を有する。円錐形領域2.111は、土台2.1の表面に対して、つまり軸方向に、寸法hだけ後ろにずれて配置されている。これにより、それぞれの孔2.11内に、ここではそれぞれネジ(とりわけ皿ネジ)として形成された固定要素2.4を配置でき、この固定要素2.4は土台2.1の表面に対しておよびそれぞれの導電性目盛領域2.21の表面に対して後ろにずれている。固定要素2.4は、機械部分にスケール要素2を固定するために用いられ、ここでは鋼鉄から作製されており、それゆえ導電性である。
【0072】
組み立てられた状態では、走査要素1とスケール要素2が軸方向の間隔または空隙をあけて向かい合っており、したがってスケール要素2と走査要素1が相対的に回転すると、受信導体路1.1121、1.1221、1.1321、1.1421内で、それぞれの角度位置に依存する信号がそれぞれ誘導効果によって生成され得る。相応の信号が形成される前提条件は、励磁トラック1.111、1.121、1.131、1.141が、それぞれ走査される目盛構造の領域で、時間と共に交番する電磁励起場を生成することである。図示した例示的実施形態では、励磁トラック1.111、1.121、1.131、1.141が、平行平面で電流に貫流される複数の単一導体路として形成されている。走査要素1は、相互に電気接続された電子部品1.2を備えた電子回路を有する。この電子回路は、例えばASICチップも含み得る。受信トラック1.112、1.122,1.132、1.142によって生成された信号は、評価回路を構成する電子部品1.2の幾つかによってさらに処理される。走査要素1のこの電子回路は、評価要素としてだけでなく、励磁制御要素としても働き、この励磁制御要素の制御下で励磁電流が発生または生成され、励磁電流はその後、励磁トラック1.111、1.121、1.131、1.141を貫流する。したがって励磁トラック1.111、1.121、1.131、1.141は、1つの同じ励磁制御要素によって通電される。
【0073】
励磁トラック1.111、1.121、1.131、1.141が通電すると、励磁トラック1.111、1.121、1.131、1.141の周りに管状または円筒形に方向づけられた電磁場が形成される。この生じている電磁場の力線は、励磁トラック1.111、1.121、1.131、1.141の周りを走っており、この力線の方向は、既知のように励磁トラック1.111、1.121、1.131、1.141内の電流方向に依存している。導電性目盛領域2.21、2.31の領域で渦電流が誘導され、これにより、それぞれ角度位置に依存した場の変調が達成される。これに相応して受信トラック1.112、1.122、1.132、1.142により、それぞれ相対的な角度位置が測定され得る。第1の導電性目盛領域2.21の特殊な形態、とりわけ開口部2.211の位置決めおよび寸法決めが、渦電流の適切な形成を保証し、この渦電流は、開口部2.211の周りを360°にわたって、とりわけ導電材料からなる片体2.212内を流れ得る。つまり本発明により、スケール要素2の比較的コンパクトな構造方式が、測定精度を目立って低下させることなく達成され得る。というのも、固定要素2.4が第1の目盛トラック2.2に組み込まれているにもかかわらず、固定要素2.4が測定結果を妨げないからである。この関連では、とりわけ、孔のない導電性目盛領域2.21が、孔2.11および固定要素2.4を有する目盛領域2.21と同じ開口部2.211を有することも有利である。これに加え、固定要素2.4が軸方向に後ろにずれていることも有利である。
【符号の説明】
【0074】
2 スケール要素
2.1 土台
2.11 孔
2.2 目盛トラック
2.21 導電性目盛領域
2.211 開口部
2.22 非導電性目盛領域
2.4 固定要素
C2 目盛円周線
M 中心点
x 測定方向
【外国語明細書】