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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120255
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240829BHJP
   G01J 3/46 20060101ALI20240829BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G06T7/00 610Z
G01J3/46 Z
G01N21/88 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026925
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】本田 和也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 八千代
【テーマコード(参考)】
2G020
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G020AA08
2G020DA02
2G020DA03
2G020DA04
2G020DA05
2G020DA32
2G020DA34
2G020DA36
2G020DA42
2G020DA66
2G051AA88
2G051AA90
2G051AB07
2G051AC11
2G051AC15
2G051CA04
2G051EA12
2G051EA14
2G051EA16
2G051EA17
2G051EB01
2G051EC02
2G051FA03
5L096AA02
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096HA09
(57)【要約】
【課題】コンクリート構造物の仕上がりの色味に基づいて管理を行うコンクリート構造物の管理システム1の提供。
【解決手段】コンクリート構造物が写る構造物情報を取得する情報取得手段4と、構造物情報の色味を示す色味情報を導出する色味情報導出手段5と、色味情報導出手段5が導出した色味情報及びコンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別するための判別基準とする色味基準情報に基づいてコンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別する判別手段6とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート構造物が写る構造物情報を取得する情報取得手段と、
前記構造物情報の色味を示す色味情報を導出する色味情報導出手段と、
前記色味情報導出手段が導出した前記色味情報、及び前記コンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別するための判別基準とする色味基準情報に基づいて前記コンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別する判別手段と、を備える、
コンクリート構造物の管理システム。
【請求項2】
前記構造物情報の色味を補正する色味補正手段を備え、
前記色味補正手段は、前記コンクリート構造物とともに撮像された色見本が写る色見本情報の色味に基づいて前記構造物情報に写る前記コンクリート構造物の色味を補正するように構成される、
請求項1に記載のコンクリート構造物の管理システム。
【請求項3】
前記色味情報は、前記構造物情報に写る前記コンクリート構造物の明度値を示す明度導出値情報を含み、
前記色味基準情報は、明度値に基づいて設定される明度基準値情報を含む、
請求項1又は請求項2に記載のコンクリート構造物の管理システム。
【請求項4】
前記色味情報は、前記構造物情報に写る前記コンクリート構造物の明度値の偏差値を示す偏差導出値情報を含み、
前記色味基準情報は、明度値の偏差値に基づいて設定される偏差基準値情報を含む、
請求項1又は請求項2に記載のコンクリート構造物の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを硬化させて製造したコンクリート構造物の管理に用いられるコンクリート構造物の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記コンクリート構造物の管理システムとして、例えば特許文献1に開示されているような、コンクリート構造物(プレキャストコンクリート製品)の品質を管理する品質管理システムが知られている。
【0003】
前記品質管理システムは、プレキャストコンクリート製品の表面のデジタル写真を撮影するデジタルカメラと、デジタルカメラ、又はデジタルカメラと通信を行う通信機器に構築された演算装置と、を備えている。
【0004】
また、前記品質管理システムでは、演算装置がデジタル写真に写る空隙痕の割合(空隙形成度合)を導出するように構成されており、作業者がこの空隙形成度合を確認しながらプレキャストコンクリート製品の品質管理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-183795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、多数製造されたコンクリート構造物は、それぞれの色味にばらつきが生じることがあるため、コンクリート構造物を色味に応じて管理できるようにすることが望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、コンクリート構造物の仕上がりの色味に基づいて管理を行えるようにするコンクリート構造物の管理システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコンクリート構造物の管理システムは、
コンクリート構造物が写る構造物情報を取得する情報取得手段と、
前記構造物情報の色味を示す色味情報を導出する色味情報導出手段と、
前記色味情報導出手段が導出した前記色味情報、及び前記コンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別するための判別基準とする色味基準情報に基づいて前記コンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別する判別手段と、を備える。
【0009】
上記構成のコンクリート構造物の管理システムによれば、判別手段によってコンクリート構造物の色味を判別することができるため、判別手段によるコンクリート構造物の色味の判別結果を用いてコンクリート構造物の管理を行うことが可能になる。
【0010】
また、本発明のコンクリート構造物の管理システムは、
前記構造物情報の色味を補正する色味補正手段を備え、
前記色味補正手段は、前記コンクリート構造物とともに撮像された色見本が写る色見本情報の色味に基づいて前記構造物情報に写る前記コンクリート構造物の色味を補正するように構成されるようにしてもよい。
【0011】
構造物情報に写るコンクリート構造物の色味は、コンクリート構造物の撮像環境ごとに異なる影響を受けるが、前記コンクリート構造物の管理システムは、色味補正手段により色見本情報の色味に基づいて構造物情報に写るコンクリート構造物の色味を補正できるため、構造物情報に写るコンクリート構造物の色味が撮像環境から受けた影響を補正(抑制)できる。
【0012】
そのため、前記コンクリート構造物の管理システムでは、情報取得手段が取得した構造物情報に写るコンクリート構造物の色味を適切に導出しやすくなり、これにより、判別手段がコンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別する精度が高まるようになっている。
【0013】
また、本発明のコンクリート構造物の管理システムにおいて、
前記色味情報は、前記構造物情報に写る前記コンクリート構造物の明度値を示す明度導出値情報を含み、
前記色味基準情報は、明度値に基づいて設定される明度基準値情報を含むようにしてもよい。
【0014】
上記構成のコンクリート構造物の管理システムは、コンクリート構造物自体の色味に合わせて判別手段が明度値を基準としてコンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別できるように構成されているため、コンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別する精度が高まる。
【0015】
また、本発明のコンクリート構造物の管理システムにおいて、
前記色味情報は、前記構造物情報に写る前記コンクリート構造物の明度値の偏差値を示す偏差導出値情報を含み、
前記色味基準情報は、明度値の偏差値に基づいて設定される偏差基準値情報を含むようにしてもよい。
【0016】
上記構成のコンクリート構造物の管理システムも、コンクリート構造物自体の色味に合わせて判別手段が明度値の偏差値を基準としてコンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別できるように構成されているため、コンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別する精度が高まる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明のコンクリート構造物の管理システムは、コンクリート構造物の仕上がりの色味に基づいて管理を行えるようにするという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリート構造物の管理システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、同実施形態に係るコンクリート構造物の管理システムで用いられる撮像部の操作画面(ユーザーインターフェイス)の説明図である。
図3図3は、同実施形態に係るコンクリート構造物の管理システムで用いられる検査用画像の説明図である。
図4図4は、同実施形態に係るコンクリート構造物の管理システムで用いられる明度基準値情報と仕上分類情報の説明図である。
図5図5は、同実施形態に係るコンクリート構造物の管理システムで用いられる明度基準値情報の説明図である。
図6図6は、同実施形態に係るコンクリート構造物の管理システムにおける、コンクリート構造物と色見本の撮像の仕方の一例の説明図である。
図7図7において(a)、(b)は、同実施形態に係るコンクリート構造物の管理システムで用いられる明度導出値情報の説明図である。
図8図8は、本発明の他の実施形態に係るコンクリート構造物の管理システムで用いられる偏差基準値情報と仕上分類情報の説明図である。
図9図9は、同実施形態に係るコンクリート構造物の管理システムで用いられる偏差基準値情報の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態にかかるコンクリート構造物の管理システム1(以下、管理システム1と称する)について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態に係る管理システム1は、図1に示すように、コンクリート構造物を撮像した画像(以下、検査用画像と称する)を得る撮像手段2と、検査用画像の色味を補正する色味補正手段3と、検査用画像を取得する情報取得手段4と、検査用画像に写るコンクリート構造物の色味を示す色味情報を導出する色味情報導出手段5と、色味情報導出手段5が導出した色味情報、及びコンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別するための判別基準とする色味基準情報に基づいてコンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別する判別手段6と、を備える。
【0021】
撮像手段2は、撮像機能を有する撮像部20と、撮像部20を制御(操作)するための制御部21と、像を投影する投影部22(例えば、モニターや液晶パネル等)と、を有する。
【0022】
撮像部20は、例えば、コンクリート構造物と、コンクリート構造物に重ねて配置されている色見本を撮像するように構成されていればよい。
【0023】
制御部21は、図2に示すように、撮像部20を操作するための操作画面(ユーザーインターフェイス)Iを投影部22に出力(表示)する処理と、撮像実行部によって撮像部20の撮像機能を実行して得た画像を検査用画像として外部に送り出す処理とを実行するように構成されている。
【0024】
図2では、便宜上、操作画面Iが投影部22よりも小さいサイズで表示されているが、操作画面Iの表示サイズは特に問わない。
【0025】
操作画面Iは、撮像部20が写している像を表示する表示部I1と、撮像部20に撮像機能を実行させる撮像実行部I2とを有する。
【0026】
撮像部20の向きを変えると撮像部20が写している像も変わるため、撮像実行部I2が撮像部20に撮像機能を実行させる前の状態においては、撮像部20の動き(向きの変化)に合わせて表示部I1に表示される像も変化するようになっている。そして、撮像実行部I2が撮像部20に撮像機能を実行させると、撮像部20で撮像した画像(静止画)が表示部I1に表示される。
【0027】
本実施形態の表示部I1には、コンクリート構造物を写す領域を表示する構造物用ガイド部I10が表示されている。構造物用ガイド部I10は、表示部I1内に表示される枠(矩形の枠)によって構成されている。
【0028】
上記実施形態において特に言及しなかったが、操作画面Iの表示部I1には、構造物用ガイド部I10に加えて、色見本を写す領域を表示する色見本用ガイド部を表示してもよい。
【0029】
上述のように、撮像部20は、コンクリート構造物とコンクリート構造物に重ねて配置されている色見本を撮像するように構成されている。そのため、本実施形態の撮像手段2で得る検査用画像Pは、図3に示すように、コンクリート構造物が写る領域である構造物情報P1と、コンクリート構造物と同時に撮像された色見本が写る領域である色見本情報P2とを含む。
【0030】
構造物情報P1は、構造物用ガイド部I10によって囲まれていた領域で構成される。また、表示部I1に色見本用ガイド部を表示する場合、色見本情報P2は、色見本用ガイド部によって囲まれていた領域で構成されていてもよい。
【0031】
色見本は、いわゆる、カラーチェッカーであり、見本色が付された少なくとも1つのパレットを有する。そのため、色見本情報P2には、少なくとも1つのパレットが写っている。
【0032】
なお、本実施形態の管理システム1では、コンクリート構造物が写る構造物情報P1と、色見本が写る色見本情報P2を含む1つの画像を検査に用いる検査用画像Pとしているが、例えば、コンクリート構造物が写る構造物情報P1を含む画像と、色見本が写る色見本情報P2を含む画像を別々の検査用画像Pとしてもよい。
【0033】
撮像実行部I2は、例えば、押操作可能な状態で操作画面Iに表示されるボタンによって構成されていればよい。この場合、撮像実行部I2を構成するボタンが押操作されたときに、撮像部20に撮像機能を実行させるように構成されていればよい。
【0034】
撮像実行部I2が撮像部20に撮像させた検査用画像Pは、記憶装置に送られるように構成されていてもよいし、色味補正手段3に送られるように構成されていてもよい。
【0035】
図1に戻り、色味補正手段3は、構造物情報に写るコンクリート構造物をグレースケール化する処理と、構造物情報に写るコンクリート構造物の明度(明度値)を変更する処理とを実行可能である。色味補正手段3によって検査用画像の色味(具体的には、構造物情報に写るコンクリート構造物の色味)を補正する処理は、情報取得手段4が検査用画像を取得する前に実行されても、情報取得手段4が検査用画像を取得した後に実行されてもよいが、色味情報導出手段5によって構造物情報に写るコンクリート構造物の色味(明度値)を導出する処理が実行される前に実行される必要がある。
【0036】
本実施形態の管理システム1では、上述のように、構造物情報と色見本情報を含む検査用画像が用いられるため、色味補正手段3は、構造物情報と色見本情報を含む検査用画像全体に対してグレースケール化する処理や、明度値を変更する処理を実行するように構成されている。
【0037】
これにより、色味補正手段3は、色見本情報に対して行ったグレースケール化する処理や、明度値を変更する処理と同じ処理を構造物情報にも実行できるように構成されている。
【0038】
色味補正手段3によって構造物情報に写るコンクリート構造物の明度(明度値)を変更する処理では、色見本情報に写る色見本の色味(より具体的には、パレットの色味)を取得し、色見本情報に写る色見本の本来の色味を示す基準色情報を基準にして色見本情報の色味を変更し、色見本情報に加えた変更と同じ変更が構造物情報(構造物情報に写るコンクリート構造物)に加えられた状態にする。
【0039】
色味補正手段3によって構造物情報に写るコンクリート構造物の明度(明度値)を変更する処理は、人手によって実行できるように構成されていてもよいし、自動的に実行されるように構成されていてもよい。
【0040】
また、色見本情報の色味を変更する際は、色見本情報に写る色見本の色味を基準色情報が示す色味に一致させてもよいし、色見本情報に写る色見本の色味を基準色情報が示す色味に近付けるようにしてもよい。
【0041】
構造物情報に写るコンクリート構造物の色味は、コンクリート構造物の撮像環境から影響を受けることによってコンクリート構造物の色味とは異なる色味になるが、色味補正手段3で構造物情報に写るコンクリート構造物の色味を補正することによって、コンクリート構造物の色味が撮像環境から受けている影響を補正(抑制)できる。
【0042】
また、構造物情報に写るコンクリート構造物の色味は、撮像環境に応じて影響の受け方(変化の仕方)が異なるが、色味補正手段3によって構造物情報に写るコンクリート構造物の色味を補正することによって、異なる撮像環境で撮像された検査用画像であっても同じ環境下でコンクリート構造物の色味を判別できる状況を作り出すことができる。
【0043】
情報取得手段4は、検査用画像を取得する。上述のように、検査用画像には、構造物情報と色見本情報が含まれているため、情報取得手段4は、構造物情報と色見本情報を取得することになる。
【0044】
なお、情報取得手段4は、撮像手段2や色味補正手段3から検査用画像を直接的に取得するように構成されていてもよいし、例えば、記憶装置に記憶されている検査用画像を読み出すように構成されていてもよい。
【0045】
また、コンクリート構造物が写る構造物情報を含む画像と、色見本が写る色見本情報を含む画像を別々の検査用画像にする場合、情報取得手段4は、構造物情報を含む検査用画像と、この検査用画像に関連する色見本情報含む検査用画像とを取得するように構成されていればよい。
【0046】
本実施形態の色味情報導出手段5は、構造物情報内の各画素の明度値を導出する処理と、構造物情報内の各画素の明度値の平均値を明度導出値情報として導出する処理と、を実行する。明度導出値情報は、色味情報に含まれる情報とされる。なお、構造物情報内の各画素の明度値の分布は、例えば、図7(a)や図7(b)のような分布になっていることがある。
【0047】
判別手段6が判別基準として使用する色味基準情報D1は、図4に示すように、コンクリート製品に望まれる色味を示す明度値の最適値を基準にして設定された明度値の数値範囲を示す複数の明度基準値情報D2によって構成されている。
【0048】
また、複数の明度基準値情報D2のそれぞれには、コンクリート構造物の色味の仕上がり状態を示す仕上分類情報D3が関連付けられている。仕上分類情報D3は、明度基準値情報D2が示す数値範囲に応じて設定すればよい。
【0049】
本実施形態の複数の明度基準値情報D2は、最適値を中心として並ぶように設定されるため(図5参照)、仕上分類情報D3は、例えば、関連付けられている明度基準値情報D2の数値範囲が最適値に近いものであるほど、質の高い仕上がり状態を示す情報が設定されていればよい。なお、図4に図示している明度基準値情報D2と仕上分類情報D3は一例である。
【0050】
図1に戻り、判別手段6は、判定処理において、複数の明度基準値情報のうち、明度導出値情報(明度導出値情報が示す明度値)を含む明度値の数値範囲が設定されている明度基準値情報を選択する処理と、選択した明度基準値情報に関連付けられている仕上分類情報を選択する処理と、選択した仕上分類情報をコンクリート製品の仕上がりの色味の状態を示す情報として出力する処理とを実行するように構成されている。
【0051】
本実施形態に係る管理システム1の構成は、以上の通りである。続いて、管理システム1の動作を説明する。
【0052】
撮像手段2によって検査用画像を得る場合は、コンクリート構造物S1に 色見本S2を重ねて配置し、このコンクリート構造物S1と 色見本S2を撮像部20によって撮像する(図6参照)。色見本は、コンクリート構造物と一緒に撮像可能な場所であれば、コンクリート構造物の横に重ねてもよいし、コンクリート構造物の上に重ねてもよい。
【0053】
本実施形態の撮像手段2は操作画面を使用可能であるため、使用者は、表示部を見ながら撮像部20の向きを調整することによって、表示部I1内にコンクリート構造物と色見本が写り、且つガイド部内にコンクリート構造物が写る状態にする。
【0054】
そして、撮像実行部I2が押操作されると、コンクリート構造物が写る構造物情報と、コンクリート構造物と同時に撮像された色見本が写る色見本情報を含む検査用画像が得られる。
【0055】
本実施形態の撮像手段2では、操作画面Iを使用可能であるため、表示部I1内に構造物と色見本が写り且つ撮像ガイド部内に構造物が写っている状態で、撮像実行部I2を押操作すると、検査用画像が作成される。
【0056】
このようにして撮像手段2によって検査用画像を得ている状態で、情報取得手段4が検査用画像を取得し、情報取得手段4が取得した検査用画像の色味を色味補正手段3によって補正し、色味情報導出手段5が構造物情報の色味情報を導出し、判別手段6が色味情報と色味基準情報とに基づいてコンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別する。
【0057】
このようにして、コンクリート構造物の仕上がりの色味の状態が判別される。
【0058】
以上のように、コンクリート構造物の管理システム1によれば、判別手段6によってコンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別することができるため、判別結果(コンクリート構造物の仕上がりの色味)に基づいて管理を行えるようにできるという優れた効果を奏し得る。
【0059】
また、構造物情報に写るコンクリート構造物の色味は、コンクリート構造物の撮像環境ごとに異なる影響を受けるが、本実施形態の管理システム1は、色味補正手段3により色見本情報の色味に基づいて構造物情報に写るコンクリート構造物の色味を補正できるため、構造物情報に写るコンクリート構造物の色味が撮像環境から受けた影響を補正(抑制)できる。
【0060】
そのため、管理システム1は、情報取得手段4が取得した構造物情報に写るコンクリート構造物の色味を適切に導出しやすくなり、これにより、判別手段6がコンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別する精度が高まるようになっている。
【0061】
さらに、管理システム1は、コンクリート構造物自体の色味に合わせて判別手段6が明度値を基準としてコンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別できるように構成されているため、コンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別する精度が高まるようにもなっている。
【0062】
なお、本発明に係るコンクリート構造物の管理システムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0063】
上記実施形態の管理システム1では、色味情報が構造物情報の明度値を示す明度導出値情報を含むように構成され、色味基準情報が明度値に基づいて設定される明度基準値情報を含むように構成されていたが、この構成に限定されない。例えば、色味情報が構造物情報の明度値の偏差値(最適値に対する偏差値)を示す偏差導出情報を含み、色味基準情報が明度値の偏差値に基づいて設定される偏差基準値情報を含むように構成されていてもよい。
【0064】
この場合、色味情報導出手段5は、構造物情報内の各画素の明度値を導出する処理と、構造物情報内の各画素の明度値の平均値を導出する処理と、コンクリート製品に望まれる色味を示す明度値の最適値に対する平均値の偏差値を偏差導出値情報として導出する処理と、を実行するように構成されていればよい。導出した偏差導出値情報は、色味情報に含まれる情報とされる。
【0065】
なお、最適値には、任意に決定した明度値を設定できるが、例えば、コンクリート製品の仕上がりの色味の状態が良い場合の明度値の平均値を設定した場合、色味情報導出手段5は、最適値に対する構造物情報の明度値の標準偏差を偏差導出情報にすることになる。
【0066】
色味情報導出手段5は、構造物情報内の各画素の明度値を導出する処理と、構造物情報内の各画素の明度値の平均値を導出する処理と、コンクリート製品に望まれる色味を示す明度値の最適値に対する平均値の偏差値を偏差導出値情報として導出する処理と、を実行するように構成されていればよい。導出した偏差導出値情報は、色味情報に含まれる情報とされる。
【0067】
色味基準情報は、図8に示すように、コンクリート製品に望まれる色味を示す明度値の最適値を基準にして設定された偏差値の数値範囲を示す複数の偏差基準値情報D4によって構成される。
【0068】
複数の偏差基準値情報D4のそれぞれには、コンクリート構造物の仕上がり状態を示す仕上分類情報D3が関連付けられる。仕上分類情報D3は、偏差基準値情報D4が示す数値範囲に応じて設定すればよい。
【0069】
複数の偏差基準値情報D4は、最適値との偏差がない位置(偏差値が0の位置)を基準として並ぶように設定されるため(図9参照)、仕上分類情報D3は、例えば、関連付けられている偏差基準値情報D4の数値範囲が最適値に近いものであるほど、質の高い仕上がり状態を示す情報が設定されていればよい。なお、図8に図示している偏差基準値情報D4と仕上分類情報D3も一例である。
【0070】
そして、判別手段6は、判定処理において、複数の偏差基準値情報D4のうち、偏差導出値情報を含む偏差基準値情報D4を選択する処理と、選択した偏差基準値情報D4に関連付けられている仕上分類情報D3を選択する処理と、選択した仕上分類情報D3をコンクリート製品の仕上がりの色味を示す情報として出力する処理とを実行するように構成されていればよい。
【0071】
このようにしても、コンクリート構造物自体の色味に合わせて判別手段6が明度値を基準としてコンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別できるように構成されているため、コンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別する精度が高まる。
【0072】
上記実施形態の管理システム1の説明において、特に言及しなかったが、管理システム1は、1つのコンピューターによって構成されていてもよい。この場合、コンピューターが、撮像手段2と、色味補正手段3と、情報取得手段4と、色味情報導出手段5と、判別手段6を備える管理システム1として構成されていればよい。
【0073】
また、管理システム1は、複数のコンピューターによって構成されていてもよい。この場合、管理システム1は、例えば、撮像手段2を備えるコンピューターと、情報取得手段4と、色味補正手段3と、色味情報導出手段5と、判別手段6とを備えるコンピューターとで構成されていてもよい。
【0074】
上記実施形態の管理システム1の説明において、特に言及しなかったが、撮像手段2の撮像部20と制御部21と投影部22は、別々の装置で構成されていてもよいし、1つ装置で構成されていてもよい(すなわち、一体になっていてもよい)。ただし、撮像部20と制御部21と投影部22は、別々の装置で構成される場合、互いに接続されている必要がある。
【0075】
上記実施形態の撮像部20は、コンクリート構造物とコンクリート構造物に重ねて配置されている色見本を撮像するように構成されていたが、例えば、コンクリート構造物と色見本を同時又は略同時に撮像できれば、コンクリート構造物とコンクリート構造物から離れた場所に配置されている色見本とを撮像するように構成されていてもよい。
【0076】
上記実施形態の管理システム1の説明において特に言及しなかったが、撮像手段2は、1つの撮像部20を有するように構成されていてもよいし、複数の撮像部20を有するように構成されていてもよい。より具体的に説明すると、撮像手段2は、コンクリート構造物と色見本を一緒に撮像する1つの撮像部20を有するように構成されていてもよいし、コンクリート構造物を撮像する撮像部20と、色見本を撮像する撮像部20とを有するように構成されていてもよい。
【0077】
上記実施形態の色味補正手段3は、構造物情報と色見本情報を含む検査用画像全体に対してグレースケール化する処理や、明度値を変更する処理を実行するように構成されていたが、この構成に限定されない。
【0078】
色味補正手段3は、例えば、色見本情報に対してグレースケール化する処理や、明度値を変更する処理を実行した後に、色見本情報に対して実行した処理と同じ処理を構造物情報に実行するように構成されていてもよい。
【0079】
色見本情報と構造物情報が別々の検査用画像で構成される場合も、色味補正手段3は、例えば、色見本情報に対してグレースケール化する処理や、明度値を変更する処理を実行した後に、色見本情報に対して実行した処理と同じ処理を構造物情報に実行するように構成されていればよい。
【0080】
上記実施形態の管理システム1の説明において特に言及しなかったが、色味補正手段3は、構造物情報に写るコンクリート構造物をグレースケール化する処理を行わずに、構造物情報に写るコンクリート構造物の明度(明度値)を変更する処理を実行できるように構成されていてもよい。
【0081】
色味補正手段3が構造物情報に写るコンクリート構造物をグレースケール化する処理を実行しなかった場合、情報取得手段4は、グレースケール化されていない検査用画像を取得する。
【0082】
また、色味補正手段3は、構造物情報に写るコンクリート構造物の明度値の変更が必要か否かを判断し、明度値の変更が必要であると判断した場合は構造物情報に写るコンクリート構造物の明度値を変更する処理を実行し、明度値の変更が必要ないと判断した場合は構造物情報に写るコンクリート構造物の明度値を変更する処理を実行しないように構成されていてもよい。
【0083】
色味補正手段3が構造物情報に写るコンクリート構造物の明度値を変更する処理を実行しなかった場合、情報取得手段4は、明度値が補正されていない検査用画像を取得する。
【0084】
上記実施形態の管理システム1の説明において、特に言及しなかったが、管理システム1は、判別手段6によるコンクリート構造物の仕上がりの色味の状態を判別結果に基づいてコンクリート構造物の管理方法を決定する管理方法決定手段を備えていてもよい。管理方法とは、例えば、保管や、コンクリート構造物の色味を直す作業や、破棄等のことである。
【符号の説明】
【0085】
1…管理システム、2…撮像手段、3…色味補正手段、4…情報取得手段、5…色味情報導出手段、6…判別手段、20…撮像部、21…制御部、22…投影部、D1…色味基準情報、D2…明度基準値情報、D3…仕上分類情報、D4…偏差基準値情報、I…操作画面、I1…表示部、I10…構造物用ガイド部、I2…撮像実行部、P…検査用画像、P1…構造物情報、P2…色見本情報、S1…コンクリート構造物、S2…色見本
図1
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図9