IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 名古屋工業大学の特許一覧

<>
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図1
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図2
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図3
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図4
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図5
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図6
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図7
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図8
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図9
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図10
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図11
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図12
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図13
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図14
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図15
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図16
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図17
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図18
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図19
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図20
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図21
  • 特開-フェーズドアレイアンテナ装置 図22
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120273
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】フェーズドアレイアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/30 20060101AFI20240829BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20240829BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01Q3/30
H01Q1/52
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026947
(22)【出願日】2023-02-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度「電波資源拡大のための研究開発」のうち「テラヘルツ波による超大容量無線LAN伝送技術の研究開発」(JPJ000254)委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 久二男
【テーマコード(参考)】
5J021
5J046
【Fターム(参考)】
5J021AA02
5J021AA04
5J021AA05
5J021AA09
5J021AB06
5J021CA03
5J021DB03
5J021FA06
5J021FA29
5J021GA02
5J021JA07
5J046AA07
5J046AB13
5J046UA02
(57)【要約】
【課題】アンテナを高密度に配置できるフェーズドアレイアンテナ装置を提供すること。
【解決手段】本開示技術に係るフェーズドアレイアンテナ装置は、複数個のアンテナ2を配列してなるアンテナ群と、アンテナ群に含まれるアンテナの送受信を操作する複数個の送受信回路とを有する装置であって、複数個の送受信回路に、アンテナの送受信信号を第1の位相にする第1送受信回路51と、アンテナの送受信信号を第2の位相にする第2送受信回路52とが含まれ、アンテナ群に、第1送受信回路51による位相操作を受ける第1操作アンテナ21と、第2送受信回路52による位相操作を受ける第2操作アンテナ22と、第1操作アンテナ21と第2操作アンテナ22との間に配置された第1寄生アンテナ201とが含まれ、第1寄生アンテナ201と第1操作アンテナ21および第2操作アンテナ22との間にそれぞれ、電磁波を相互に通す結合構造を設けたものである。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のアンテナを配列してなるアンテナ群と、前記アンテナ群に含まれるアンテナの送受信を操作する複数個の送受信回路とを有するフェーズドアレイアンテナ装置であって、 前記複数個の送受信回路に、前記アンテナの送受信信号を第1の位相にする第1送受信回路と、前記アンテナの送受信信号を第2の位相にする第2送受信回路とが含まれ、
前記アンテナ群に、
前記第1送受信回路による位相操作を受ける第1操作アンテナと、
前記第2送受信回路による位相操作を受ける第2操作アンテナと、
前記第1操作アンテナと前記第2操作アンテナとの間に配置された第1寄生アンテナとが含まれ、
前記第1操作アンテナと前記第1寄生アンテナとの間、および
前記第2操作アンテナと前記第1寄生アンテナとの間にはそれぞれ、電磁波を相互に通す結合構造が設けられているフェーズドアレイアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ装置であって、
前記複数個の送受信回路に、前記アンテナの送受信信号を第3の位相にする第3送受信回路と、前記アンテナの送受信信号を第4の位相にする第4送受信回路とがさらに含まれ、
前記アンテナ群に、
前記第3送受信回路による位相操作を受ける第3操作アンテナと、
前記第4送受信回路による位相操作を受ける第4操作アンテナと、
前記第3操作アンテナと前記第4操作アンテナとの間に配置された第2寄生アンテナと、
前記第1操作アンテナと前記第3操作アンテナとの間に配置された第3寄生アンテナと、
前記第2操作アンテナと前記第4操作アンテナとの間に配置された第4寄生アンテナとが含まれ、
前記第3操作アンテナと前記第2寄生アンテナとの間、
前記第4操作アンテナと前記第2寄生アンテナとの間、
前記第1操作アンテナと前記第3寄生アンテナとの間、
前記第3操作アンテナと前記第3寄生アンテナとの間、
前記第2操作アンテナと前記第4寄生アンテナとの間、および
前記第4操作アンテナと前記第4寄生アンテナとの間にもそれぞれ、電磁波を相互に通す結合構造が設けられており、
前記第1操作アンテナと前記第2操作アンテナとを結ぶ方向と前記第3操作アンテナと前記第4操作アンテナとを結ぶ方向とが平行であるとともに、前記第1操作アンテナと前記第2操作アンテナとの間隔と前記第3操作アンテナと前記第4操作アンテナとの間隔とが等しく、
前記第1の位相と前記第2の位相との位相差と、前記第3の位相と前記第4の位相との位相差とが等しいフェーズドアレイアンテナ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のフェーズドアレイアンテナ装置であって、
前記アンテナ群にさらに、前記第1寄生アンテナと前記第2寄生アンテナとの間に配置された第5寄生アンテナが含まれ、
前記第1寄生アンテナと前記第5寄生アンテナとの間、
前記第2寄生アンテナと前記第5寄生アンテナとの間、
前記第3寄生アンテナと前記第5寄生アンテナとの間、および
前記第4寄生アンテナと前記第5寄生アンテナとの間にもそれぞれ、電磁波を相互に通す結合構造が設けられているフェーズドアレイアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ装置であって、
前記第1寄生アンテナが、
前記第1操作アンテナ側のものと、
前記第2操作アンテナ側のものとを含む複数の寄生アンテナで構成されており、
前記第1寄生アンテナを構成する複数の寄生アンテナ同士の間の各箇所に、電磁波を相互に通す結合構造が設けられているフェーズドアレイアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載のフェーズドアレイアンテナ装置であって、
前記アンテナ群に、前記第1操作アンテナと前記第2操作アンテナとを結ぶ線上における前記第1操作アンテナから前記第2操作アンテナまでの範囲の外に配置された外側寄生アンテナが含まれ、
前記外側寄生アンテナとその内隣のアンテナとの間にも、電磁波を相互に通す結合構造が設けられているフェーズドアレイアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載のフェーズドアレイアンテナ装置であって、
多層配線板を有しており、
前記アンテナ群の各アンテナの位置には、前記多層配線板に含まれる複数の導電層に形成されたウィンドウパターンが配置されており、
前記アンテナ群の各操作アンテナの位置には、前記多層配線板に含まれる導電層のうち少なくとも1つに形成され、前記複数個の送受信回路のいずれか1つに接続されたアンテナパターンが配置されているフェーズドアレイアンテナ装置。
【請求項7】
請求項6に記載のフェーズドアレイアンテナ装置であって、
前記アンテナ群の各寄生アンテナの位置では、前記多層配線板に含まれる前記導電層のうち前記結合構造よりも下層の少なくとも1つがベタパターンとされているフェーズドアレイアンテナ装置。
【請求項8】
請求項2または請求項3に記載のフェーズドアレイアンテナ装置であって、
多層配線板を有しており、
前記アンテナ群の各アンテナの位置には、前記多層配線板に含まれる複数の導電層に形成されたウィンドウパターンが配置されており、
前記アンテナ群の各操作アンテナの位置には、前記多層配線板に含まれる導電層のうち少なくとも1つに形成され、前記複数個の送受信回路のいずれか1つに接続されたアンテナパターンが配置されており、
前記複数の導電層に形成されたウィンドウパターンのうち少なくとも最上層のものが、前記第1操作アンテナと前記第2操作アンテナとを結ぶ第1方向と、前記第1操作アンテナと前記第3操作アンテナとを結ぶ第2方向とのいずれの方向に対しても線対称な形状のものであり、
前記第1方向に隣り合うアンテナ間に形成されている結合構造は、前記複数の導電層のうち2層間にて電磁波を相互に通す層間結合構造であり、
前記第2方向に隣り合うアンテナ間に形成されている結合構造は、前記複数の導電層のうち少なくとも1つのものにおけるスリットにて電磁波を相互に通すスリット結合構造であるフェーズドアレイアンテナ装置。
【請求項9】
請求項8に記載のフェーズドアレイアンテナ装置であって、
前記第1方向は、送受信される電磁波の電界の方向と平行な方向であり、
前記第2方向は、送受信される電磁波の電界の方向と垂直な方向であるフェーズドアレイアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、フェーズドアレイアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフェーズドアレイアンテナ装置の一例として、特許文献1に開示されているものを挙げることができる。特許文献1の装置は、複数のアンテナ素子と、複数の能動回路とを有している。同装置では、電源回路から各能動回路に電力を供給して、各能動回路により、各アンテナ素子を介した信号の送受信動作を行うようになっている。同文献では、送受信動作の開始時または終了時の電源電圧の立ち上がりおよび立ち下がりに発生するリンギングおよびなまりの抑制に着目している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-9083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のフェーズドアレイアンテナ装置では、アンテナ配置の高密度化を図るに際して、各アンテナ(特許文献1では「アンテナ素子」)を操作する送受信回路(特許文献1では「能動回路」)のサイズが問題となる。送受信回路は集積回路であり、必要な機能を持たせるための最低限のサイズが必要となる。そのことと、各アンテナに対してそれぞれ送受信回路を要することが、アンテナ配置の高密度化に対する制約要因となる。このため、ある程度以上の高集積化は困難であった。
【0005】
本開示技術の課題とするところは、アンテナを高密度に配置できるフェーズドアレイアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示技術の一態様におけるフェーズドアレイアンテナ装置は、複数個のアンテナを配列してなるアンテナ群と、アンテナ群に含まれるアンテナの送受信を操作する複数個の送受信回路とを有する装置であって、複数個の送受信回路に、アンテナの送受信信号を第1の位相にする第1送受信回路と、アンテナの送受信信号を第2の位相にする第2送受信回路とが含まれ、アンテナ群に、第1送受信回路による位相操作を受ける第1操作アンテナと、第2送受信回路による位相操作を受ける第2操作アンテナと、第1操作アンテナと第2操作アンテナとの間に配置された第1寄生アンテナとが含まれ、第1操作アンテナと第1寄生アンテナとの間、および第2操作アンテナと第1寄生アンテナとの間にはそれぞれ、電磁波を相互に通す結合構造が設けられているものである。
【0007】
上記態様におけるフェーズドアレイアンテナ装置では、アンテナ群に含まれるアンテナのうち第1操作アンテナは第1送受信回路による位相操作を受け、第2操作アンテナは第2送受信回路による位相操作を受ける。第1寄生アンテナと第1操作アンテナとの間、および第1寄生アンテナと第2操作アンテナとの間にはそれぞれ、結合構造による電磁波の漏れがある。このため第1寄生アンテナは、第1送受信回路および第2送受信回路のいずれからも直接には位相操作を受けないが、第1操作アンテナの送受信信号の位相と第2操作アンテナの送受信信号の位相との中間の位相で送受信を行うことになる。このため、第1操作アンテナと第2操作アンテナとの間の位相差を操作することで、アンテナ群全体としての指向性を操作することができる。ここで、送受信回路の総数がアンテナの総数より少ないので、アンテナの配置間隔を、送受信回路のサイズより小さくすることができる。このため、アンテナを高密度に配置してグレーティングローブ放射の影響を受けにくくしたフェーズドアレイアンテナ装置とすることができる。
【0008】
上記態様におけるフェーズドアレイアンテナ装置では、複数個の送受信回路に、アンテナの送受信信号を第3の位相にする第3送受信回路と、アンテナの送受信信号を第4の位相にする第4送受信回路とがさらに含まれ、アンテナ群に、第3送受信回路による位相操作を受ける第3操作アンテナと、第4送受信回路による位相操作を受ける第4操作アンテナと、第3操作アンテナと第4操作アンテナとの間に配置された第2寄生アンテナと、第1操作アンテナと第3操作アンテナとの間に配置された第3寄生アンテナと、第2操作アンテナと第4操作アンテナとの間に配置された第4寄生アンテナとが含まれ、第3操作アンテナと第2寄生アンテナとの間、第4操作アンテナと第2寄生アンテナとの間、第1操作アンテナと第3寄生アンテナとの間、第3操作アンテナと第3寄生アンテナとの間、第2操作アンテナと第4寄生アンテナとの間、第4操作アンテナと第4寄生アンテナとの間にもそれぞれ、電磁波を相互に通す結合構造が設けられており、第1操作アンテナと第2操作アンテナと結ぶ方向と第3操作アンテナと第4操作アンテナとを結ぶ方向とが平行であるとともに、第1操作アンテナと第2操作アンテナとの間隔と第3操作アンテナと第4操作アンテナとの間隔とが等しく、第1の位相と第2の位相との位相差と、第3の位相と第4の位相との位相差とが等しいものとすることができる。このように2次元配列になっていると、アンテナ群全体としての指向性の操作を2次元で行うことができる。
【0009】
2次元配列の態様におけるフェーズドアレイアンテナ装置では、アンテナ群にさらに、第1寄生アンテナと第2寄生アンテナとの間に配置された第5寄生アンテナが含まれ、第1寄生アンテナと第5寄生アンテナとの間、第2寄生アンテナと第5寄生アンテナとの間、第3寄生アンテナと第5寄生アンテナとの間、および第4寄生アンテナと第5寄生アンテナとの間にもそれぞれ、電磁波を相互に通す結合構造が設けられているものとすることができる。このようになっていると、第5寄生アンテナも2次元の指向性操作に寄与する。この場合における第5寄生アンテナが設けられる位置は、第3寄生アンテナと第4寄生アンテナとの間でもある。
【0010】
上記のいずれかの態様におけるフェーズドアレイアンテナ装置では、第1寄生アンテナが、第1操作アンテナ側のものと、第2操作アンテナ側のものとを含む複数の寄生アンテナで構成されており、第1寄生アンテナを構成する複数の寄生アンテナ同士の間の各箇所に、電磁波を相互に通す結合構造が設けられているものとすることができる。この構成により、寄生アンテナの個数をさらに増やすことができる。
【0011】
上記のいずれかの態様におけるフェーズドアレイアンテナ装置では、アンテナ群に、第1操作アンテナと第2操作アンテナとを結ぶ線上における第1操作アンテナから第2操作アンテナまでの範囲の外に配置された外側寄生アンテナが含まれ、外側寄生アンテナとその内隣のアンテナとの間にも、電磁波を相互に通す結合構造が設けられているものとすることができる。この構成により、操作アンテナの外側にも寄生アンテナを配置し、アンテナの総数をさらに増やすことができる。
【0012】
上記のいずれかの態様におけるフェーズドアレイアンテナ装置では、多層配線板を有しており、アンテナ群の各アンテナの位置には、多層配線板に含まれる複数の導電層に形成されたウィンドウパターンが配置されており、アンテナ群の各操作アンテナの位置には、多層配線板に含まれる複数の導電層のうち少なくとも1つに形成され、複数個の送受信回路のいずれか1つに接続されたアンテナパターンとが配置されているものとすることができる。このような構成では、多層配線板の各導電層のパターンによりアンテナ群の各アンテナを実現できる。
【0013】
多層配線板により構成される態様のフェーズドアレイアンテナ装置では、アンテナ群の各寄生アンテナの位置では、多層配線板に含まれる導電層のうち結合構造よりも下層の少なくとも1つがベタパターンとされているものとすることができる。このような構成では、ベタパターンでの電磁波の反射により、送受信の効率が向上する。
【0014】
2次元配列の態様におけるフェーズドアレイアンテナ装置では、多層配線板を有しており、アンテナ群の各アンテナの位置には、多層配線板に含まれる複数の導電層に形成されたウィンドウパターンが配置されており、アンテナ群の各操作アンテナの位置には、多層配線板に含まれる複数の導電層のうち少なくとも1つに形成され、複数個の送受信回路のいずれか1つに接続されたアンテナパターンとが配置されており、複数の導電層に形成されたウィンドウパターンのうち少なくとも最上層のものが、第1操作アンテナと第2操作アンテナとを結ぶ第1方向と、第1操作アンテナと第3操作アンテナとを結ぶ第2方向とのいずれの方向に対しても線対称な形状のものであり、第1方向に隣り合うアンテナ間に形成されている結合構造が、複数の導電層のうち2層間にて電磁波を相互に通す層間結合構造であり、第2方向に隣り合うアンテナ間に形成されている結合構造が、複数の導電層のうち少なくとも1つのものにおけるスリットにて電磁波を相互に通すスリット結合構造であるものとすることができる。このようになっていると、ウィンドウパターンにおけるいずれの方向においても、アンテナ間の結合動作の効率がよい。第1方向は送受信される電磁波の電界の方向と平行な方向であり、第2方向は、送受信される電磁波の電界の方向と垂直な方向であることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本開示技術構成によれば、アンテナを高密度に配置できるフェーズドアレイアンテナ装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係るフェーズドアレイアンテナ装置の斜視図である。
図2図1のフェーズドアレイアンテナ装置の平面図である。
図3】ICチップにおける送受信回路の配列を示す平面図である。
図4】フェーズドアレイアンテナ装置におけるアンテナと送受信回路との接続関係を示す模式図(その1)である。
図5】フェーズドアレイアンテナ装置におけるアンテナと送受信回路との接続関係を示す模式図(その2)である。
図6図1のフェーズドアレイアンテナ装置における多層配線板(6層構成)の構成例を示す断面図である。
図7図6に電磁波の送受信状況を書き加えた断面図である。
図8】フェーズドアレイアンテナ装置による送受信動作を説明する模式図である。
図9】グレーティングローブ放射について説明する模式図である。
図10】実施の形態に係るフェーズドアレイアンテナ装置の指向性を示すグラフである。
図11】比較例のフェーズドアレイアンテナ装置の指向性を示すグラフである。
図12】フェーズドアレイアンテナ装置の多層配線板(8層構成)における第1導電層のパターンの例を示す平面図である。
図13】フェーズドアレイアンテナ装置の多層配線板(8層構成)における第2導電層のパターンの例を示す平面図である。
図14】フェーズドアレイアンテナ装置の多層配線板(8層構成)における第3導電層のパターンの例を示す平面図である。
図15】フェーズドアレイアンテナ装置の多層配線板(8層構成)における第4導電層のパターンの例を示す平面図である。
図16】フェーズドアレイアンテナ装置の多層配線板(8層構成)における第5導電層のパターンの例を示す平面図である。
図17】フェーズドアレイアンテナ装置の多層配線板(8層構成)における第6導電層のパターンの例を示す平面図である。
図18】フェーズドアレイアンテナ装置の多層配線板(8層構成)における第7導電層のパターンの例を示す平面図である。
図19】フェーズドアレイアンテナ装置の多層配線板(8層構成)における第8導電層のパターンの例を示す平面図である。
図20】アンテナの総数が49個である場合のフェーズドアレイアンテナ装置の平面図である。
図21】アンテナの総数は25個でそのうち操作アンテナの総数が4個である場合のフェーズドアレイアンテナ装置の平面図である。
図22】2個の操作アンテナの間に複数個の寄生アンテナを配置した場合を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示技術を具体化した実施の形態に係るフェーズドアレイアンテナ装置1の全体の外観を図1に示す。図1のフェーズドアレイアンテナ装置1は、複数個のアンテナ2からなるアンテナ群を有している。フェーズドアレイアンテナ装置1は、多層配線板3により構成されている。各アンテナ2は、多層配線板3における導電層のパターンとして構成されている。多層配線板3における図1中での裏面側には、ICチップ4が取り付けられている。ICチップ4には後述する送受信回路が内蔵されている。
【0018】
フェーズドアレイアンテナ装置1を上方から見た平面図を図2に示す。図2に示されるように、本形態のフェーズドアレイアンテナ装置1には、9個のアンテナ2が含まれている。これらのアンテナ2は、3行×3列の2次元の形で多層配線板3の中に配列されている。以下、9個のアンテナ2を区別するときは、別々の符号(アンテナ21~アンテナ24、アンテナ201~アンテナ205)を付けて言及する。
【0019】
図1中のICチップ4には、図3に示すように4個の送受信回路5が内蔵されている。図3は、多層配線板3と一体化する前の段階でのICチップ4を示している。図3中のICチップ4の全体の縦横寸法は、図2中の多層配線板3の全体の縦横寸法とほぼ同じである。しかしながら、図2中のアンテナ2の個数と、図3中の送受信回路5の個数とは異なっている。送受信回路5の個数はアンテナ2の個数より少ない。また、それぞれの図中における個々のアンテナ2の縦横寸法と個々の送受信回路5の縦横寸法とも異なっている。図3中の送受信回路5は図2中のアンテナ2より大きい。以下、4個の送受信回路5を区別するときは、別々の符号(送受信回路51~送受信回路54)を付けて言及する。
【0020】
送受信回路5は、アンテナ2の送受信を操作する回路である。ただし、1個の送受信回路5が操作するアンテナ2は1つだけである。したがって、9個のアンテナ2には、送受信回路5による操作を受ける4個のものと操作を受けない5個のものとがある。具体的には、アンテナ21は送受信回路51により、アンテナ22は送受信回路52により、アンテナ23は送受信回路53により、アンテナ24は送受信回路54により、それぞれ操作を受ける。つまり、9個のアンテナ2のうち四隅に位置するものが、それぞれの最近接に位置する送受信回路5により操作される。
【0021】
残り5つのアンテナ201~アンテナ205は、いずれの送受信回路5による操作も受けない。以下、送受信回路5による操作を受けるアンテナ21~アンテナ24を「操作アンテナ」と呼び、送受信回路5による操作を受けないアンテナ201~アンテナ205を「寄生アンテナ」という。操作アンテナ21(第1操作アンテナ)と操作アンテナ22(第2操作アンテナ)との間に寄生アンテナ201(第1寄生アンテナ)が配置され、操作アンテナ23(第3操作アンテナ)と操作アンテナ24(第4操作アンテナ)との間に寄生アンテナ202(第2寄生アンテナ)が配置されている。
【0022】
また、操作アンテナ21と操作アンテナ23との間に寄生アンテナ203(第3寄生アンテナ)が配置され、操作アンテナ22と操作アンテナ24との間に寄生アンテナ204(第4寄生アンテナ)が配置されている。さらに、寄生アンテナ203と寄生アンテナ204との間に寄生アンテナ205(第5寄生アンテナ)が配置されている。寄生アンテナ205は、寄生アンテナ201と寄生アンテナ202との間に配置されているということもできる。
【0023】
図4に、フェーズドアレイアンテナ装置1におけるアンテナ2と送受信回路5との接続関係の概要を示す。図4には、図2および図3中のA-A線上の3つのアンテナ2および2つの送受信回路5が描かれている。ただしA-A線上に限らず、B-B線上、C-C線上、D-D線上でも同様である。図4中ではアンテナ2を模式的に描いている。
【0024】
図4には、機器6も記載されている。機器6は、図1のフェーズドアレイアンテナ装置1に含まれるものではないが、フェーズドアレイアンテナ装置1とともに使用されるものである。機器6は、送信用途の場合には制御回路であり、受信用途の場合にはデジタルシグナルプロセッサである。機器6について以下、送信用途に特化した記述では「制御回路6」と称し、受信用途に特化した記述では「デジタルシグナルプロセッサ6」と称することがある。図4中の送受信回路51、52は、機器6に従いアンテナ2を特定の位相で操作する回路である。送受信回路51、52は、送信用途では送信機であり、受信用途では受信機である。
【0025】
図4に示すように、両端の操作アンテナ21、22は送受信回路51、52を介して機器6と繋がっているが、中央の寄生アンテナ201は送受信回路5にも機器6にも繋がっていない。図2図3中のE-E線上、F-F線上について図4のような図を書けば、送受信回路5が存在せず、3つの寄生アンテナ2がいずれも機器6と繋がらずに存在している図となる。
【0026】
フェーズドアレイアンテナ装置1は、図4に示した構成および接続関係に替えて図5の構成および接続関係で使用することもできるものである。図5中の送受信回路51、52は、図4中のものと異なり移相器である。図5における、図4中の機器6の位置には、機器7が配置されている。機器7は、送信用途の場合には分配器であり、受信用途の場合には高周波合成器である。機器7はさらに、送受信機8に接続されている。図5でも3つのアンテナ2の接続状況は図4と同様である。両端の操作アンテナ21、22は送受信回路(移相器)51、52を介して機器7に繋がっているが、中央の寄生アンテナ201は送受信回路5にも機器7にも繋がっていない。図4の構成でも図5の構成でも、図1中の多層配線板3の構成は共通である。以下の説明では特記しない限り図4の構成を前提とするが、図5の構成の場合でも同様のことがいえる。
【0027】
多層配線板3の内部構造について説明する。図6に、図2中のA-A位置における多層配線板3の断面構造の例を示す。図6では、多層配線板3における導電層の層数が6である場合の例を示している。図6では、多層配線板3に含まれる6層の導電層に、入出射側、つまりICチップ4とは反対の側(図6中で上方)から順に、31、32、33、34、35、36の符号を付けて示している。図6に示されているのは、操作アンテナ21、寄生アンテナ201、操作アンテナ22、送受信回路51、送受信回路52を横切る断面である。図2中のB-B位置の断面も図6と同様である。
【0028】
図6中に示すように、6層の導電層のうち最もICチップ4寄りのものを除く導電層31~35にはいずれも、操作アンテナ21、寄生アンテナ201、操作アンテナ22の位置に、導電体が除去されたウィンドウパターン8が配置されている。ウィンドウパターン8の間の位置は導電体が残されて遮蔽パターン9とされている。各層の遮蔽パターン9同士は、一部を除いてビアホール10により相互に接続されている。
【0029】
各層の各ウィンドウパターン8はいずれも、上方から見て方形形状(長方形または正方形)である。これは、図2等における左右方向と上下方向とのいずれの方向に対しても線対称な形状の一例である。この構造により、多層配線板3における各アンテナ2の位置には、断面形状が方形である導波領域11が形成されている。これにより各アンテナ2がアンテナとして機能しうるようになっている。導波領域11の中は、誘電体で充填されている。図1の例では空洞であるように描いているが、これは理解のしやすさのためである。ただし、導波領域11の中が空洞であってもよい。
【0030】
6層の導電層のうち図6中で最も下のもの、つまり最もICチップ4寄りの導電層36には、操作アンテナ21、操作アンテナ22の位置に、アンテナパターン12が形成されている。アンテナパターン12は、バンプ13により送受信回路51または送受信回路52と接続されている。アンテナパターン12はまた、導電層36におけるアンテナパターン12以外の部分から分離されている。これにより送受信回路51、52は、アンテナパターン12を介して、操作アンテナ21、22の導波領域11に対して電磁波を送信しまたは受信することができる。アンテナパターン12は、図2中の各操作アンテナ21~24における短辺方向に電界を印加するものである。図6中のアンテナパターン12はシングルエンド給電で動作するシングルアーム型のものであるが、これに限らず差動給電で動作するツインアーム型でもよいしパッチ型でもよい。図2における操作アンテナ23、24の箇所も、図6中の操作アンテナ21、22の箇所と同様の構造である。
【0031】
図6では、導電層36における寄生アンテナ201の位置は、他の部分から分離されておらず、送受信回路5に繋がってもいない。したがってここに、アンテナパターンとして機能するものはない。図2における寄生アンテナ202~205の箇所も、図6中の寄生アンテナ201の箇所と同様の構造である。
【0032】
つまり、導波領域11が形成されておりそこにアンテナパターン12が配置されている箇所が操作アンテナであり、導波領域11は形成されているがそこにアンテナパターン12が配置されていない箇所が寄生アンテナである。送受信回路5に繋がっていない導体パターンが導波領域11の箇所に配置されていたとしても、その箇所は操作アンテナではなく寄生アンテナである。アンテナパターン12は、導電層36以外の別の導電層に形成されていてもよい。
【0033】
図6についてのここまでの説明からは、図1のフェーズドアレイアンテナ装置1の9個のアンテナ2のうち4個の操作アンテナ21~24のみがアンテナとして機能し、5個の寄生アンテナ201~205は送受信に寄与しないように思えるかもしれない。しかし実際には、5個の寄生アンテナ201~205を含めた9個のアンテナ2のすべてが送受信に寄与する。このことを図7により説明する。図7では送信の場合を示している。
【0034】
送信時で考えると、図7に示すように、操作アンテナ21から電磁波W1が、操作アンテナ22から電磁波W2が、それぞれ出射される。これらはむろん、アンテナパターン12の作用による。図7には示していないが、送信または受信の動作時には、送受信回路51、52は図4に示したように機器6と接続される。送信用途の用語で言えば、制御回路6が送受信回路51、52を介してアンテナパターン12への電気信号を操作することにより、電磁波W1、W2の出射が行われる。操作アンテナ23、24、送受信回路53、54についても同様である。
【0035】
図7ではそれだけでなく、寄生アンテナ201からも電磁波W01が出射される。これは、多層配線板3の内部で、操作アンテナ21から寄生アンテナ201への漏れ電磁波L1および操作アンテナ22から寄生アンテナ201への漏れ電磁波L2が存在するからである。このため寄生アンテナ201は、送受信回路5による直接的な操作を受けないにもかかわらず、漏れ電磁波L1と漏れ電磁波L2との合成による電磁波W01を出射するのである。
【0036】
受信時には逆に、寄生アンテナ201で受信した電磁波が、操作アンテナ21、22に分配される。そしてそれぞれ、操作アンテナ21、22自身で受信した電磁波と合成されてデジタルシグナルプロセッサ6に入力される。つまり、操作アンテナ21と寄生アンテナ201とは結合されているのである。操作アンテナ22と寄生アンテナ201とも結合されている。
【0037】
図6図7では、最上層の導電層31とそのすぐ下の導電層32との間には前述のビアホール10が描かれていない。これは、隣り合うアンテナ2間に、電磁波を相互に通す結合構造が形成されていることを表現しているものである。この結合構造は、複数の導電層のうち隣り合う2層間にて電磁波を相互に通す構造であり、層間結合構造15ということとする。
【0038】
ただし、導電層31と導電層32との間にビアホール10が全く存在しないというわけではなく、層間結合構造15として機能しうる程度にビアホール10同士の間隔が広ければ、ビアホール10があってもよい。層間結合構造15を、上下の導電層と左右のビアホールによる方形断面の導波管と見なすことができる。層間結合構造15の箇所のビアホール10同士の間隔は、送受信の対象の周波数が当該導波管におけるカットオフ周波数以上とならない程度に広ければよい。
【0039】
層間結合構造15は、導電層31と導電層32との間に限らず、他の2層間に形成されていてもよい。隣り合う2層間には限られない。例えば、導電層31と導電層33との間に形成されていてもよい。層間結合構造15が2箇所以上の2層間(例えば、導電層31と導電層32との間および導電層33と導電層34との間)に形成されていてもよい。
【0040】
図2中における寄生アンテナ202とその両隣の操作アンテナ23、24との間にも、図6図7で説明したのと同様の層間結合構造15が設けられている。結合構造は、図2における左右方向(第1方向)ばかりでなく上下方向(第2方向)に隣接するアンテナ2間にも形成されている。ただし上下方向の結合構造は、図6図7で説明した層間結合構造15とは別の構造である。これについては後述する。上下方向の結合構造は、寄生アンテナ203とその両隣の操作アンテナ21、23との間、寄生アンテナ204とその両隣の操作アンテナ22、24との間、寄生アンテナ205とその両隣の寄生アンテナ201、202との間に設けられている。さらに、寄生アンテナ205とその左右方向両隣の寄生アンテナ203、204との間には、図6図7で説明したのと同様の層間結合構造15が設けられている。これによりフェーズドアレイアンテナ装置1では、9個のアンテナ2のすべてが送受信を行うようになっている。
【0041】
フェーズドアレイアンテナ装置1の送受信動作を図8により説明する。ここでは送信時の例で説明する。図8には、図2のA-A線上の3個のアンテナ2による、位相差がないときおよびあるときの電磁波の出射状況を示している。操作アンテナ21、22を送受信回路51、52により位相差なしで駆動しているときには、層間結合構造15を介して駆動される寄生アンテナ201も含めて3個のアンテナ2が揃って同一の位相および同一の振幅にて電磁波を放出する。このため3個のアンテナ2の全体としては、図中垂直な方向に電磁波R1を送信する。このとき図2中のB-B線上の3個のアンテナ2も同様に位相差なしかつ同一振幅で駆動される。
【0042】
操作アンテナ21と操作アンテナ22との間に駆動の位相差φがあるときには、寄生アンテナ201の位相はその中間となる。すなわち、操作アンテナ21と寄生アンテナ201との位相差と寄生アンテナ201と操作アンテナ22との位相差とが等しい(φ/2)こととなる。振幅は同一とする。このため3個のアンテナ2の全体としては、操作アンテナ21と操作アンテナ22との間の光路差が位相差φと一致するような傾斜した方向に電磁波R2を送信する。このときB-B線上の3個のアンテナ2も同様に同じ位相差φかつ同一振幅で駆動される。このようにして、操作アンテナ21、23と、操作アンテナ22、24との間の位相差により、図2中の左右方向について送信方向を走査することができる。
【0043】
同様のことを図2中の上下方向についても行うことができる。すなわち、操作アンテナ21、22と、操作アンテナ23、24との間の位相差により、図2中の上下方向について送信方向を走査することができる。この2方向の組み合わせによりフェーズドアレイアンテナ装置1では、2次元の送信方向走査を行うことができる。また、受信についても同様に、受信感度を有する方向を2次元で走査することができる。
【0044】
ここでグレーティングローブについて図9により説明する。図9は、図8と似ているが、位相差なしでの駆動時の状態を示すものである。ここで、図9中に描かれている寄生アンテナ201が存在しない場合を考える。この場合、位相差なしでの駆動時には、前述の電磁波R1が送信されるが、それだけではない。図9に示されるように、電磁波R1に対して所定の角度差の電磁波G1、G2も送信される。電磁波G1、G2は、操作アンテナ21と操作アンテナ22との間での光路差が波長λ(もしくはその整数倍)と一致する角度の方向に、条件によっては不可避的に送信されるものである。
【0045】
電磁波G1、G2をグレーティングローブ放射という。これに対して本来の電磁波R1をメインローブ放射という。グレーティングローブ放射があると、送信エネルギーの一部の損失となる。受信の場合にもグレーティングローブはあり、これはノイズ増大の要因となる。このためグレーティングローブは、フェーズドアレイアンテナ装置1の指向性を低下させる要因であり、好ましくないものである。図9では位相差なしで電磁波R1を垂直に送信しようとする場合を描いているが、位相差を付けて傾斜した方向に電磁波R2を送信しようとする場合であっても、グレーティングローブ放射は発生しうる。
【0046】
図9から、グレーティングローブが発生しているとき、電磁波の波長λは、操作アンテナ21と操作アンテナ22との配置間隔dより小さいことが分かる。このことは、グレーティングローブを伴わずに送受信を行おうとする場合に、波長λの下限値が存在することを意味する。寄生アンテナを持たず操作アンテナのみを持ち既定の配置間隔dを持つフェーズドアレイアンテナ装置1の場合、上記の配置間隔dに一致する波長λが下限である。それより短い波長の電磁波を送受信しようとするとグレーティングローブが発生する。
【0047】
したがって、波長の短い高周波の電磁波を送受信しようとする場合に、グレーティングローブが問題となりやすい。そのため、配置間隔dをなるべく小さくしておくことが、グレーティングローブを発生させないためには有用である。なお、図2中の左右方向と上下方向とで配置間隔dが一致するとは限らない。
【0048】
もし、フェーズドアレイアンテナ装置1のすべてのアンテナ2に1つずつ送受信回路5が備えられていた(つまりすべてのアンテナ2が操作アンテナ)とすると、送受信回路5のサイズが、配置間隔dを小さくすることに対する制約要因となる。例えば送受信回路5のサイズが数ミリ角程度で、配置間隔dもその程度であったとする。この場合、300GHzの電磁波を送受信しようとすると、グレーティングローブが発生する。波長が約1ミリで配置間隔dより小さいからである。しかし、送受信回路5のサイズより小さい配置間隔dを実現することは容易ではない。
【0049】
しかし図9では実際には、操作アンテナ21と操作アンテナ22との間に寄生アンテナ201が配置されている。このため、寄生アンテナ201を含めて考えれば、隣接するアンテナ間の間隔は(d/2)である。したがってその分、グレーティングローブを伴わずに送受信を行うことができる波長λの下限値が低い。
【0050】
上記のように本形態のフェーズドアレイアンテナ装置1では、アンテナ同士の配置間隔を、送受信回路5のサイズより小さくすることができる。前述のように送受信回路5の個数がアンテナ2の個数より少ないからである。このため、高周波領域の電磁波の送受信について、本形態のフェーズドアレイアンテナ装置1は、グレーティングローブの悪影響をあまり受けずに電磁波の送受信を行う上で有用性が高い。
【0051】
図10図11により、フェーズドアレイアンテナ装置1の指向性を、比較例と比較して説明する。図10図11のグラフにおける縦軸は、信号強度(dBi)であり、横軸は出射角度である。図10は本形態のフェーズドアレイアンテナ装置1のグラフであり、図11は比較例のグラフである。図11の比較例では、図2中の寄生アンテナ201~アンテナ205の位置をすべて導体のベタパターンとしたアンテナ装置を使用した。つまり、図2中の4つの操作アンテナ21~24のみがアンテナとして機能するものを使用した。アンテナの配置間隔dは、図10の本形態のものが0.6ミリ、図11の比較例のものがその倍で1.2ミリである。
【0052】
図10図11ともに、位相差なしで垂直出射狙いにした場合の信号強度分布Pと、位相差を付けて狙いの出射方向を右に約30°傾けた場合の信号強度分布Qとの2通りを示している。これらはいずれも、300GHzの電磁波を送信した場合の信号強度分布である。
【0053】
図10における信号強度分布Pを見ると、傾斜角0°を中心とする大きなピークがあり、これがメインローブ放射に相当する。そしてその両側の傾斜角約±60°近辺の所に小さなピークがある。これがグレーティングローブ放射に相当する。図10における信号強度分布Qでは、メインローブ放射に相当する大きなピークは、傾斜角約30°の辺りにある。それよりも左側に、グレーティングローブ放射に相当する小さなピークがある。
【0054】
一方、図11では各ピークの位置は図10の場合とあまり変わらない。しかしながら、グレーティングローブ放射に相当するピークがいずれも、メインローブ放射に相当するピークとほぼ同じくらいの信号強度となっている。つまり、グレーティングローブ放射による信号強度がかなり強く、指向性はあまり良くないといわざるを得ないものである。
【0055】
図11との対比の上で図10を見ると、本形態のフェーズドアレイアンテナ装置1の指向性が優れていることがよく分かる。メインローブ放射のピーク強度の、グレーティングローブ放射のピーク強度に対する比率が圧倒的に高いからである。メインローブ放射のピーク強度の絶対値も、図11中よりも図10中の方が高い。本形態のフェーズドアレイアンテナ装置1のこのような優れた指向性は、多層配線板3に操作アンテナ21~24だけでなく寄生アンテナ201~アンテナ205も配置することでアンテナの配置間隔dを縮小したことによるものである。このためにグレーティングローブ放射が効果的に抑制されているのである。
【0056】
以下、本形態のフェーズドアレイアンテナ装置1の種々のバリエーションを説明する。まず、多層配線板3における各導電層のパターンについてのバリエーションの例を示す。図12図19に、8層構成の場合の多層配線板における導電層301~308の各パターンを示す。図12図19に示すもの(以下、「8層構成例」という。)は、4個の操作アンテナ21~24と5個の寄生アンテナ201~205とを3行×3列の形に配列したものであるという点で、図6に示した6層構成のものと共通する。このため、上方から見た平面図は図2と同様のものとなる。また、図3の4個の送受信回路51~54を有するICチップ4と接続されるものであるという点でも、図6のものと共通する。
【0057】
図12の導電層301は、ICチップ4とは反対側の、多層配線板における最も上層の導電層である。図19の導電層308は、最もICチップ4寄りの、多層配線板における最も下層の導電層である。図13図18の導電層302~307は、それらの中間に位置する導電層である。
【0058】
この8層構成例では、最下層の導電層308(図19)における操作アンテナ21~24に相当する位置に、アンテナパターン16が形成されている。この例におけるアンテナパターン16は、差動給電で動作するツインアーム型のものであり、図19中で左右方向(図12における短辺方向)に電界を印加するものである。最下層の導電層308以外の別の導電層にアンテナパターン16が形成されていてもよい。
【0059】
下から2番目の導電層307(図18)における操作アンテナ21~24に相当する位置には、ウィンドウパターン8とその中のパッチパターン17とが形成されている。ウィンドウパターン8は誘電体で占められているので、下のアンテナパターン16と上方の導波領域11(図6参照)との間での電磁波の伝達が可能である。パッチパターン17は、導電層307に限らず、前述の結合構造(層間結合構造またはスリット結合構造)より下層側のどの導電層に設けられていてもよい。
【0060】
導電層307、308における寄生アンテナ201~205に相当する位置はいずれもベタパターン14とされている。寄生アンテナ201~205では、送受信に関わる導波領域11内の電磁波が、ベタパターン14により反射される。このため、導波領域11における下方側への電磁波の漏れがなく、送受信の効率が高い。ベタパターン14は1層だけでもよい。ベタパターン14は、前述の結合構造(層間結合構造またはスリット結合構造)より下層側のどの導電層に設けられていてもよい。図6に示した6層構成のものにもパッチパターン17およびベタパターン14を備えることができる。
【0061】
導電層307、308を除いた上方6層の導電層301~306(図12図17)ではいずれも、操作アンテナ21~24に相当する位置および寄生アンテナ201~205に相当する位置の計9箇所に、ウィンドウパターン8が形成されている。これにより8層構成例の多層配線板でも、図6で説明した導波領域が9箇所に形成されている。
【0062】
そのうち最上層の導電層301(図12)では、各ウィンドウパターン8の形状が、図中で縦長の長方形となっている。これは、図19の導電層308におけるアンテナパターン16の配置上、送受信される電磁波の電界方向となる方向を短辺とし、それと垂直な方向を長辺としたものである。ただし内層の導電層302~306(図13図17)においては、各ウィンドウパターン8の形状は最上層の導電層301と同じでなくてもよい。正方形でもよいし、横長の長方形でもよい。
【0063】
導電層303(図14)および導電層304(図15)では、遮蔽パターン9の一部にスリット18が形成されている。スリット18が設けられているのは、寄生アンテナ203とその両隣の操作アンテナ21、23との間、寄生アンテナ204とその両隣の操作アンテナ22、24との間、寄生アンテナ205とその両隣の寄生アンテナ201、202との間の計6箇所である。これらはすべて、図中で上下方向に隣り合うアンテナ2の間の位置である。
【0064】
スリット18は、送受信される電磁波の電界方向と垂直な方向に隣接するアンテナ2間で電磁波を相互に通す結合構造である。これをスリット結合構造という。この8層構成例では、上から3層目および4層目の導電層303、304にスリット結合構造を設けているが、別の内層導電層にスリット結合構造を設けてもよい。1つの導電層にのみスリット結合構造を設けてもよいし、3つ以上の導電層にスリット結合構造を設けてもよい。
【0065】
図中の左右方向と上下方向とで結合構造の種類が異なるのは、電界の方向に応じて、結合構造内での電界の方向が異なるからである。図中の左右方向は、送受信される電磁波の電界の方向と平行な方向である。この方向に隣接するアンテナ同士の間では、多層配線板3の厚み方向の電界が通過できる構造が、結合構造として優れている。それが前述の層間結合構造である。この方向に設けられた層間結合構造では、導電層と導電層との間に発生する電界がアンテナ間で伝達され、両アンテナは結合される。
【0066】
図中の上下方向は、送受信される電磁波の電界の方向と垂直な方向である。この方向に隣接するアンテナ同士の間では、多層配線板3の導電層の面内方向の電界が通過できる構造が、結合構造として優れている。それが前述のスリット結合構造である。この方向に設けられたスリット結合構造では、スリットの両側の導電パターン間に発生する電界がアンテナ間で伝達され、両アンテナは結合される。スリットの幅がスリット結合構造の伝送経路としての特性インピーダンスに影響し、結合の程度を左右する。
【0067】
図中の左右方向、すなわち送受信される電磁波の電界方向と平行な方向についての結合構造は、図6図7で説明した層間結合構造である。この8層構成例における層間結合構造は、最上層の導電層301(図12)とその直下の導電層302(図13)との間に設けられている。層間結合構造が設けられている面内位置は、図6図7の説明の箇所で図2の配置例に対して述べたのと同じである。ただし、層間結合構造をどの層間に設けるかについては、最上層とその直下の層との間には限られない。他の層間に層間結合構造を設けてもよい。以上が図12図19の8層構成例についての説明である。
【0068】
次に、フェーズドアレイアンテナ装置1におけるアンテナ2および送受信回路5の総数についてのバリエーションを説明する。ここまでの説明で述べたものは、アンテナ2の総数が9個、そのうち操作アンテナが4個、寄生アンテナが5個、送受信回路5の総数が4個、というものであった。むろんこれに限られものではなく、アンテナ2および送受信回路5の総数はもっと多くてもよい。
【0069】
例えば図20に示すのは、アンテナの総数が49個、そのうち操作アンテナが16個、寄生アンテナが33個、送受信回路5の総数が16個、というものである。これ以外にも、アンテナの総数が25個、そのうち操作アンテナが9個、寄生アンテナが16個、送受信回路5の総数が9個、というものでもよいし、図20のものよりもっと多くてもよい。行数と列数が異なっていてもよい。例えば、アンテナの総数が35個、そのうち操作アンテナが12個、寄生アンテナが23個、送受信回路5の総数が12個、というようなものでもよい。基本的には、アンテナ群における1行当たりもしくは1列当たりで見れば、アンテナの総数は奇数である。そのうち、操作アンテナが寄生アンテナより1個多い行または列と、すべてが寄生アンテナである行または列とが存在する。
【0070】
アンテナ2および送受信回路5の配列が1次元だけのものも可能である。アンテナ2は2次元配列されているが指向性走査は1次元のみ、というものも可能である。
【0071】
図21に示すのは、アンテナの総数は25個であるが、操作アンテナ20の総数および送受信回路5の総数は4個、というものである。これは、図2等に示した9個配列の外側に1列ずつ寄生アンテナ200を追加したものである。追加した外側の寄生アンテナ200を外側アンテナという。外側アンテナとその内隣のアンテナとの間にも、前述の結合構造(層間結合構造またはスリット結合構造)が設けられる。このため外側アンテナも、その内側のアンテナ2との間の漏れ電磁波により送受信に寄与する。図21に示した例では外側アンテナの総数は16個であるが、そのうち四隅を除いた12個としてもよい。さらに、操作アンテナ20の外隣のもののみ(8個)としてもよい。
【0072】
操作アンテナ20の外隣の外側アンテナとは、例えば、操作アンテナ21と操作アンテナ22とを結ぶ線上における操作アンテナ21から操作アンテナ22までの範囲の外に配置されたアンテナのことである。外側アンテナと操作アンテナとをいずれも有する行または列では、アンテナの総数はやはり奇数であり、操作アンテナより寄生アンテナが1個多い。
【0073】
ここまでの説明では、2個の操作アンテナの間に配置される寄生アンテナの個数は1個であった(図4等)。しかしこれに限らず、2個の操作アンテナの間に複数個の寄生アンテナを配置することも可能である。図22はその例である。図22の例では、2個の操作アンテナ21、22の間に、2個の寄生アンテナ201、210が配置されている。寄生アンテナ201は操作アンテナ21側に、寄生アンテナ210は操作アンテナ22側に位置している。この場合に多層配線板3の構成としては、操作アンテナ21と寄生アンテナ201との間、操作アンテナ22と寄生アンテナ210との間、寄生アンテナ201と寄生アンテナ210との間、の3箇所のいずれにも前述の結合構造(層間結合構造またはスリット結合構造)が設けられる。
【0074】
この場合、操作アンテナ21と寄生アンテナ201との間の漏れ電磁波L1、操作アンテナ22と寄生アンテナ210との間の漏れ電磁波L2に加えてさらに、寄生アンテナ201、210間にも相互の漏れ電磁波L3、L4がある。結局、寄生アンテナ201は漏れ電磁波L1、L4の合成により、寄生アンテナ210は漏れ電磁波L2、L3の合成により、動作することになる。
【0075】
結果として、寄生アンテナ201、210の送受信の位相は、いずれも操作アンテナ21の位相と操作アンテナ22の位相との中間であるが、寄生アンテナ201の位相は操作アンテナ21寄りで寄生アンテナ210の位相は操作アンテナ22寄りとなる。このため図22のような配置でも、操作アンテナ21、22の間の位相差により、フェーズドアレイアンテナ装置の全体としてグレーティングローブ放射を発生させずに指向性走査が可能である。図2等に示した2次元のアンテナ配置においては、一方向のみ図22のような配置として他の一方向については図4のような配置とすることもできるし、二方向ともに図22のような配置とすることもできる。
【0076】
また、2個の操作アンテナの間の寄生アンテナの個数は、3個以上でもよい。この場合、寄生アンテナ同士の間の各箇所にも前述の結合構造(層間結合構造またはスリット結合構造)が設けられる。アンテナの配列が、外側アンテナを除いて5行以上×5列以上の多数であってもそのうちの操作アンテナは4個だけ、という構成も可能である。このように2個の操作アンテナの間に複数の寄生アンテナが配置されているアンテナ群の場合には、1列当たりまたは1行当たりのアンテナの総数が偶数であることもありうる。
【0077】
以上詳細に説明したように本実施の形態のフェーズドアレイアンテナ装置1では、アンテナ群に、送受信回路5による直接的な位相操作を受ける操作アンテナ(21等)ばかりでなく、送受信回路5による直接的な位相操作を受けない寄生アンテナ(201等)も含めている。そして寄生アンテナが、その両隣のアンテナの送受信位相の中間の位相で送受信を行うようにしている。このようにすることで、アンテナ同士の配置間隔dを、送受信回路5のサイズより小さくして高密度に配置することができるようにしている。これにより、高周波の電磁波を送受信しようとする場合でも、グレーティングローブ放射の影響をあまり受けずもっぱらメイングローブ配合による高指向性な送受信が可能なフェーズドアレイアンテナ装置1が実現されている。
【0078】
本実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示技術を何ら限定するものではない。したがって本開示技術は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、前述の説明では寄生アンテナと寄生アンテナとに挟まれる位置にもアンテナを配置し、これも寄生アンテナとして送受信に利用することとした。しかしこのようなものに限らず、操作アンテナと操作アンテナとに挟まれる寄生アンテナ(図22のようなものを含む。)は送受信に利用するが、寄生アンテナと寄生アンテナとに挟まれる位置にはアンテナを配置しないこととしてもよい。
【0079】
また、図12では、層間結合構造を構成している箇所(操作アンテナ21と寄生アンテナ201との間の箇所等)には全くビアホール10が存在しないように描いているが、当該箇所にビアホール10が存在してもよい。ただし、層間結合構造として機能するため、当該箇所におけるビアホール10間の間隔は、他の箇所におけるビアホール10間の間隔より広くしておく必要がある。また、各層の各ウィンドウパターン8は、上方から見て方形形状であることとしたが、これには限らない。ただし、図2等における左右方向と上下方向とのいずれの方向に対しても線対称な形状であることが望ましい。したがって、円形、楕円形等でもよい。
【0080】
[予備請求項1]
請求項2に記載のフェーズドアレイアンテナ装置であって、
前記第1寄生アンテナが、
前記第1操作アンテナ側のものと、
前記第2操作アンテナ側のものとを含む複数の寄生アンテナで構成されており、
前記第2寄生アンテナが、
前記第3操作アンテナ側のものと、
前記第4操作アンテナ側のものとを含む複数の寄生アンテナで構成されており、
前記第3寄生アンテナが、
前記第1操作アンテナ側のものと、
前記第3操作アンテナ側のものとを含む複数の寄生アンテナで構成されており、
前記第4寄生アンテナが、
前記第2操作アンテナ側のものと、
前記第4操作アンテナ側のものとを含む複数の寄生アンテナで構成されており、
前記第1寄生アンテナを構成する複数の寄生アンテナ同士の間の各箇所、
前記第2寄生アンテナを構成する複数の寄生アンテナ同士の間の各箇所、
前記第3寄生アンテナを構成する複数の寄生アンテナ同士の間の各箇所、および
前記第4寄生アンテナを構成する複数の寄生アンテナ同士の間の各箇所のそれぞれに、電磁波を相互に通す結合構造が設けられているフェーズドアレイアンテナ装置。
【0081】
[予備請求項2]
請求項2、請求項3、予備請求項1のいずれか1つに記載のフェーズドアレイアンテナ装置であって、
前記アンテナ群に、
前記第1操作アンテナと前記第2操作アンテナとを結ぶ線上における前記第1操作アンテナから前記第2操作アンテナまでの範囲の外、
前記第3操作アンテナと前記第4操作アンテナとを結ぶ線上における前記第3操作アンテナから前記第4操作アンテナまでの範囲の外、
前記第1操作アンテナと前記第3操作アンテナとを結ぶ線上における前記第1操作アンテナから前記第3操作アンテナまでの範囲の外、および
前記第2操作アンテナと前記第4操作アンテナとを結ぶ線上における前記第2操作アンテナから前記第4操作アンテナまでの範囲の外
に配置された外側寄生アンテナが含まれ、
前記外側寄生アンテナとその内隣のアンテナとの間にも、電磁波を相互に通す結合構造が設けられているフェーズドアレイアンテナ装置。
【0082】
[予備請求項3]
請求項8または請求項9に記載のフェーズドアレイアンテナ装置であって、
前記アンテナ群の各寄生アンテナの位置では、前記多層配線板に含まれる前記導電層のうち前記結合構造よりも下層の少なくとも1つがベタパターンとされているフェーズドアレイアンテナ装置。
【符号の説明】
【0083】
1 フェーズドアレイアンテナ装置 31 導電層
2 アンテナ 32 導電層
3 多層配線板 33 導電層
4 ICチップ 34 導電層
5 送受信回路 35 導電層
8 ウィンドウパターン 36 導電層
12 アンテナパターン 51 送受信回路
15 層間結合構造 52 送受信回路
16 アンテナパターン 53 送受信回路
17 パッチパターン 54 送受信回路
18 スリット 200 寄生アンテナ
20 操作アンテナ 201 寄生アンテナ
21 操作アンテナ 202 寄生アンテナ
22 操作アンテナ 203 寄生アンテナ
23 操作アンテナ 204 寄生アンテナ
24 操作アンテナ 205 寄生アンテナ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22