(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120279
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】電子部品収容体の固定構造、及び、電子部品収容体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/16 20060101AFI20240829BHJP
H05K 7/12 20060101ALI20240829BHJP
F16B 21/08 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H02G3/16
H05K7/12 B
F16B21/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026957
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智治
(72)【発明者】
【氏名】平山 祥之
(72)【発明者】
【氏名】郡 智之
【テーマコード(参考)】
3J037
4E353
5G361
【Fターム(参考)】
3J037AA02
3J037BA02
3J037BB01
3J037DA12
3J037DB02
3J037DC02
4E353BB01
4E353DD05
4E353DR12
4E353DR34
4E353DR52
4E353GG21
4E353GG24
5G361BC01
5G361BC02
(57)【要約】
【課題】電子部品が収容されるケースと、ケースを設置箇所に固定するブラケットと、の組付け性が高い固定構造を提供する。
【解決手段】固定構造は、ケースと、ブラケットと、を備える。ケースは、ケース側係合部13を有する。ブラケット40は、ブラケット側係合部42を有する。ケース側係合部13は、ケース側板状体21と、ケース側板状体21に接続されたケース側係合爪22と、を有する。ブラケット側係合部42は、ブラケット側板状体51と、ブラケット側板状体51に接続されるとともにケース側係合爪22に係合するブラケット側係合爪52と、を有する。ケース側板状体21は、撓むことが可能な中途部を有し、中途部にケース側係合爪22が接続される。ブラケット側板状体51は、撓むことが可能な中途部を有し、中途部にブラケット側係合爪52が接続される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収容するケースと、
前記ケースを設置箇所に固定するブラケットと、
を備え、
前記ケースは、ケース側係合部を有し、
前記ブラケットは、ブラケット側係合部を有し、
前記ケース側係合部は、ケース側板状体と、当該ケース側板状体に接続されたケース側係合爪と、を有し、
前記ブラケット側係合部は、ブラケット側板状体と、当該ブラケット側板状体に接続されるとともに前記ケース側係合爪に係合するブラケット側係合爪と、を有し、
前記ケース側板状体は、前記ケースに接続されるケース側第1接続部と、前記ケースに接続されるとともに前記ケース側第1接続部とは離間した位置にあるケース側第2接続部と、前記ケース側第1接続部と前記ケース側第2接続部の間に位置しており撓むことが可能なケース側中途部と、を有し、当該ケース側中途部に前記ケース側係合爪が接続され、
前記ブラケット側板状体は、前記ブラケットに接続されるブラケット側第1接続部と、前記ブラケットに接続されるとともに前記ブラケット側第1接続部とは離間した位置にあるブラケット側第2接続部と、前記ブラケット側第1接続部と前記ブラケット側第2接続部の間に位置しており撓むことが可能なブラケット側中途部と、を有し、当該ブラケット側中途部に前記ブラケット側係合爪が接続されることを特徴とする固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載の固定構造であって、
前記ケース側板状体又は前記ブラケット側板状体の長手方向に垂直であって、かつ、厚み方向に垂直な方向を幅方向としたときに、
少なくとも前記ケース側中途部の幅方向の両側には、隙間が形成されており、
少なくとも前記ブラケット側中途部の幅方向の両側には、隙間が形成されていることを特徴とする固定構造。
【請求項3】
請求項1に記載の固定構造であって、
前記ケース及び前記ブラケットの一方に他方を挿入することで前記ケースと前記ブラケットが係合し、
前記ケースは、挿入方向に沿って設けられたケース側ガイド部を有し、
前記ブラケットは、前記挿入方向に沿って設けられたブラケット側ガイド部を有し、
前記ケース側ガイド部と前記ブラケット側ガイド部により前記ケース又は前記ブラケットの挿入がガイドされ、
前記ケース側板状体の長手方向と、前記ブラケット側板状体の長手方向と、前記挿入方向と、が平行であることを特徴とする固定構造。
【請求項4】
請求項1に記載の固定構造であって、
前記ケース側板状体の厚み方向において、少なくとも前記ケース側中途部は前記ケースの表面から離れた位置に配置されており、
前記ブラケット側板状体の厚み方向において、少なくとも前記ブラケット側中途部は前記ブラケットの表面から離れた位置に配置されていることを特徴とする固定構造。
【請求項5】
請求項1に記載の固定構造であって、
解除規制部を備え、
前記解除規制部は、前記ケース側係合爪と前記ブラケット側係合爪が係合した状態において、当該係合が解除されることを規制することを特徴とする固定構造。
【請求項6】
請求項5に記載の固定構造であって、
前記ケースは、第1ケース体と第2ケース体を備え、
前記ケース側係合部が第1ケース体に設けられ、
前記解除規制部が第2ケース体に設けられ、
前記解除規制部は前記ケース側係合爪と干渉することで、前記ケース側係合爪が係合を解除する方向に変形することを規制することを特徴とする固定構造。
【請求項7】
請求項2に記載の固定構造であって、
前記隙間がスリット状であることを特徴とする固定構造。
【請求項8】
請求項1に記載の固定構造であって、
前記ケース及び前記ブラケットは樹脂製であり、
前記ブラケットを構成する樹脂の曲げ強度が、前記ケースを構成する樹脂の曲げ強度よりも高いことを特徴とする固定構造。
【請求項9】
請求項5に記載の固定構造であって、
前記解除規制部は、前記ケース側係合部に挿入されることにより、前記ケース側係合爪と前記ブラケット側係合爪の係合が解除されることを規制し、
前記解除規制部の挿入方向の先端には、先端に近づくに連れて厚みが小さくなるように傾斜する傾斜部が形成されていることを特徴とする固定構造。
【請求項10】
請求項6に記載の固定構造を含む電子部品収容体の製造方法であって、
前記ケース側係合爪と前記ブラケット側係合爪とを係合させて、前記第1ケース体に前記ブラケットを係合させる第1工程と、
前記第1工程の後に、前記第1ケース体と前記第2ケース体を係合させて、前記解除規制部を前記ケース側係合爪に作用させる第2工程と、
を含むことを特徴とする電子部品収容体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、電子部品が収容される電子部品収容体の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電子部品収容体の一種である電気接続箱を開示する。特許文献1の電気接続箱は、ケースと、上側固定部材と、下側固定部材と、を備える。ケースには、リレー等の電子部品が収容される。ケースの上壁には受け側ロックが形成されている。上側固定部材及び下側固定部材は、ケースを車両に固定するための部材である。上側固定部材及び下側固定部材には、それぞれ、差込側ロックが形成されている。
【0003】
ケースの受け側ロックと、上側固定部材及び下側固定部材の差込側ロックと、は係合可能である。詳細には、受け側ロックはロック壁部を含む。差込側ロックはロック爪を含む。そして、ロック爪がロック壁部に引っ掛かることにより、受け側ロックと差込側ロックが係合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1のロック爪部の幅方向の両側には、スライドリブが形成されている。これにより、ロック爪部は撓むことができる。一方で、特許文献1のロック壁部には撓ませるための構成は形成されていない。そのため、受側ロックと差込側ロックを係合させるために必要な力が大きくなり易い。その結果、組付け性が低くなる。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、電子部品が収容されるケースと、ケースを設置箇所に固定するブラケットと、の組付け性が高い固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の固定構造が提供される。即ち、固定構造は、ケースと、ブラケットと、を備える。前記ケースは、電子部品を収容する。前記ブラケットは、前記ケースを設置箇所に固定する。前記ケースは、ケース側係合部を有する。前記ブラケットは、ブラケット側係合部を有する。前記ケース側係合部は、ケース側板状体と、当該ケース側板状体に接続されたケース側係合爪と、を有する。前記ブラケット側係合部は、ブラケット側板状体と、当該ブラケット側板状体に接続されるとともに前記ケース側係合爪に係合するブラケット側係合爪と、を有する。前記ケース側板状体は、前記ケースに接続されるケース側第1接続部と、前記ケースに接続されるとともに前記ケース側第1接続部とは離間した位置にあるケース側第2接続部と、前記ケース側第1接続部と前記ケース側第2接続部の間に位置しており撓むことが可能なケース側中途部と、を有し、当該ケース側中途部に前記ケース側係合爪が接続される。前記ブラケット側板状体は、前記ブラケットに接続されるブラケット側第1接続部と、前記ブラケットに接続されるとともに前記ブラケット側第1接続部とは離間した位置にあるブラケット側第2接続部と、前記ブラケット側第1接続部と前記ブラケット側第2接続部の間に位置しており撓むことが可能なブラケット側中途部と、を有し、当該ブラケット側中途部に前記ブラケット側係合爪が接続される。
【0009】
これにより、ケース側係合部とブラケット側係合部の両方が撓むことができるので、ケースとブラケットを係合する際に必要な力が小さくなる。その結果、ケースとブラケットの組付け性を高くすることができる。
【0010】
前記の固定構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ケース側板状体又は前記ブラケット側板状体の長手方向に垂直であって、かつ、厚み方向に垂直な方向を幅方向とする。少なくとも前記ケース側中途部の幅方向の両側には、隙間が形成されている。少なくとも前記ブラケット側中途部の幅方向の両側には、隙間が形成されている。
【0011】
これにより、ケース側中途部及びブラケット側中途部の撓み(つまり、ケース側係合爪及びブラケット側係合爪の撓み)を実現できる。
【0012】
前記の固定構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ケース及び前記ブラケットの一方に他方を挿入することで前記ケースと前記ブラケットが係合する。前記ケースは、挿入方向に沿って設けられたケース側ガイド部を有する。前記ブラケットは、前記挿入方向に沿って設けられたブラケット側ガイド部を有する。前記ケース側ガイド部と前記ブラケット側ガイド部により前記ケース又は前記ブラケットの挿入がガイドされる。前記ケース側板状体の長手方向と、前記ブラケット側板状体の長手方向と、前記挿入方向と、が平行である。
【0013】
これにより、ケース側ガイド部とブラケット側ガイド部により、挿入作業が容易となる。また、挿入がガイドされることにより位置ズレが生じにくいので、ケース側係合爪とブラケット側係合爪を適切に係合できる。
【0014】
前記の固定構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ケース側板状体の厚み方向において、少なくとも前記ケース側中途部は前記ケースの表面から離れた位置に配置されている。前記ブラケット側板状体の厚み方向において、少なくとも前記ブラケット側中途部は前記ブラケットの表面から離れた位置に配置されている。
【0015】
これにより、ケース側係合爪及びブラケット側係合爪が撓む空間を確保できる。
【0016】
前記の固定構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、固定構造は、解除規制部を備える。前記解除規制部は、前記ケース側係合爪と前記ブラケット側係合爪が係合した状態において、当該係合が解除されることを規制する。
【0017】
これにより、ケースとブラケットの係合を強固にすることができる。
【0018】
前記の固定構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ケースは、第1ケース体と第2ケース体を備える。前記ケース側係合部が第1ケース体に設けられる。前記解除規制部が第2ケース体に設けられる。前記解除規制部は前記ケース側係合爪と干渉することで、前記ケース側係合爪が係合を解除する方向に変形することを規制する。
【0019】
これにより、第2ケース体の一部である解除規制部を用いて、ケースとブラケットの係合の解除を規制できる。また、解除規制部が別部品である構成と比較して、部品点数を削減できる。
【0020】
前記の固定構造においては、前記隙間がスリット状であることが好ましい。
【0021】
これにより、隙間がスリット状(幅狭状)なので、ケースとブラケットの強度の低下を抑えつつ、ケース側係合爪及びブラケット側係合爪の撓みを実現できる。
【0022】
前記の固定構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ケース及び前記ブラケットは樹脂製である。前記ブラケットを構成する樹脂の曲げ強度が、前記ケースを構成する樹脂の曲げ強度よりも高い。
【0023】
設置箇所に固定される側であるブラケットには強い力が掛かり易いため、曲げ強度が高い樹脂で構成することで、ブラケットの破損を効果的に抑制できる。一方、ケースにはブラケットよりは強い力が掛かりにくいので、曲げ強度が低い樹脂で構成することで、ケースを安価に製造できる。
【0024】
前記の固定構造においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記解除規制部は、前記ケース側係合部に挿入されることにより、前記ケース側係合爪と前記ブラケット側係合爪の係合が解除されることを規制する。前記解除規制部の挿入方向の先端には、先端に近づくに連れて厚みが小さくなるように傾斜する傾斜部が形成されている。
【0025】
これにより、解除規制部を挿入する作業が容易となる。
【0026】
電子部品収容体の製造方法においては、第1工程と、第2工程と、を含む。前記第1工程では、前記ケース側係合爪と前記ブラケット側係合爪とを係合させて、前記第1ケース体に前記ブラケットを係合させる。前記第2工程では、前記第1工程の後に、前記第1ケース体と前記第2ケース体を係合させて、前記解除規制部を前記ケース側係合爪に作用させる。
【0027】
これにより、少ない工程、かつ、少ない部品数、かつ、ケースを設置箇所により安定して固定することが可能な電子部品収容体を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電子部品収容体の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品収容体1の斜視図である。
【0030】
電子部品収容体1は、自動車に設けられている。電子部品収容体1には、複数の電装品が設けられている。電子部品収容体1は、例えば電気接続箱である。電気接続箱とは、内部に複数のリレー及びヒューズが設けられており、バッテリーや発電機から供給された電力を分配して各車載機器に供給するものである。なお、電子部品収容体1は、電子制御ユニット又はバッテリー等を収容する構成であってもよい。また、電子部品収容体1の設置箇所は、自動車に限られない。
【0031】
図1に示すように、電子部品収容体1は、ケース3と、ブラケット40と、を備える。特に、電子部品収容体1のうちケース3を設置箇所に固定するための構造を固定構造2と称する。ケース3は電子部品を収容する箱状の樹脂製の部材である。ケース3は、第1ケース体10と第2ケース体30とを備える。第1ケース体10と第2ケース体30を係合することにより、電子部品を収容するための収容空間が形成される。ブラケット40は、ケース3(第1ケース体10)に係合可能である。ブラケット40は、ケース3を設置箇所である車体に固定するための樹脂製の部材である。以下、第1ケース体10、第2ケース体30、及びブラケット40について詳細に説明する。
【0032】
図2に示すように、第1ケース体10は、第1本体11と、第1係合部12と、ケース側係合部13と、ケース側ガイド部14と、を有する。
【0033】
第1ケース体10は容器状の部材である。第1係合部12は、第1ケース体10と第2ケース体30を係合するための部材である。第1係合部12は、開口であるが、凹部であってもよいし、爪であってもよい。第1係合部12は、第1ケース体10の側壁の複数箇所にそれぞれ設けられている。
【0034】
ケース側係合部13は、第1ケース体10とブラケット40を係合するための部材である。ケース側係合部13は、第1本体11の側壁(更に言えば2つの第1係合部12で挟まれる領域)に設けられている。ただし、ケース側係合部13が設けられる位置はこれに限定されず、第1本体11の様々な位置にケース側係合部13を設けることができる。ケース側係合部13は、ケース側板状体21と、ケース側係合爪22と、スリット23と、を有する。
【0035】
ケース側係合部13の説明において、ケース側板状体21の長手方向を単に「長手方向」と称し、ケース側板状体21の厚み方向を単に「厚み方向」と称し、長手方向及び厚み方向の両方に垂直な方向を「幅方向」と称する。
【0036】
ケース側板状体21は、第1接続部(ケース側第1接続部)21aと、第2接続部(ケース側第2接続部)21bと、中途部(ケース側中途部)21cと、を有する。第1接続部21a及び第2接続部21bは、型を用いて第1本体11と一体的に成形されている。第1接続部21aは、ケース側ガイド部14の壁部に接続される。第2接続部21bは、第1本体11の側壁に接続されるとともに、第1接続部21aとは離間した位置にある。第1接続部21a及び第2接続部21bの接続先は上記に限られず、ケース3(第1本体11)のうち上記と異なる位置であってもよい。また、本実施形態では、第1接続部21aはケース側板状体21の一端であり、第2接続部21bはケース側板状体21の他端であるが、何れか一方がケース側板状体21の端以外に位置していてもよい。第1接続部21aと第2接続部21bはケース3に接続されているため、撓むことができない。また、ケース側板状体21のうちケース3に接続されている箇所は第1接続部21aと第2接続部21bのみであるため、それ以外の部分は撓むことができる。中途部21cは、長手方向において第1接続部21aと第2接続部21bの間に位置している。従って、中途部21cは撓むことができる。
【0037】
ケース側係合爪22は、中途部21cに接続されている。詳細には、ケース側板状体21とケース側係合爪22は型を用いて一体的に成形されている。ケース側係合爪22は、中途部21cと一体的に撓むことができる。ケース側係合爪22は、第1本体11の外側方向に突出する爪部である。ケース側係合爪22は、ブラケット40(詳細には後述のブラケット側係合部42のブラケット側係合爪52)と係合可能である。
【0038】
スリット23は、ケース側板状体21の幅方向の両側、詳細にはケース側板状体21の中途部21cの幅方向の両側に形成されている隙間である。スリット23の幅は狭く、詳細には、スリット23の幅は、ケース側板状体21の幅よりも短い(更に詳細にはケース側板状体21の幅の半分よりも短い)。スリット23の幅が狭いため、サイズを抑えつつ、ケース側係合爪22を撓ませることができる。
【0039】
また、
図3に示すように、厚み方向において、中途部21cは、ケース3の第1本体11の表面から離れた位置に配置されている。言い換えれば、中途部21cとケース表面の間には、空間24が形成されている。本実施形態では、ケース側係合爪22の厚み方向の長さL1は、空間24の厚み方向の長さL2以下である。これにより、第1ケース体10とブラケット40の係合時において、ケース側係合爪22を十分に撓ませることができる。
【0040】
図2に示すように、ケース側ガイド部14は、ケース側係合爪22を幅方向で挟むように設けられている。つまり、ケース側板状体21(ケース側係合爪22)の幅方向の外側にスリット23が形成され、更に外側にケース側ガイド部14が設けられている。2つのケース側ガイド部14は、それぞれ、スライド溝14aを有する。スライド溝14aの長手方向は、ケース側板状体21の長手方向と平行である。ケース側ガイド部14は、第1ケース体10とブラケット40を係合する作業を補助する(詳細は後述)。
【0041】
図4に示すように、第2ケース体30は、第2本体31と、第2係合部32と、解除規制部33と、を有する。
【0042】
第2本体31は、蓋状の部材である。容器状の第1本体11の開放部分を第2本体31で塞ぐことにより、上述した収容空間が形成される。第2係合部32は、第2本体31の複数箇所にそれぞれ設けられている。第2係合部32が設けられる箇所は、第1係合部12が設けられる箇所と対応している。第2係合部32は第1係合部12に係合可能な爪である。ただし、第1係合部12が爪である場合、第2係合部32は、凹部又は開口であってもよい。第1係合部12と第2係合部32が係合することにより、第1本体11と第2本体31が係合する。
【0043】
解除規制部33は、第1ケース体10とブラケット40が係合した状態において、当該係合が解除されることを規制する部材である。解除規制部33は、板状の部材であり、長手方向に沿ってリブが形成されている。解除規制部33の先端には傾斜部33aが形成されている。傾斜部33aは、先端に近づくに連れて厚みが小さくなるように傾斜する。なお、解除規制部33の作用については後述する。
【0044】
図5に示すように、ブラケット40は、固定部41と、ブラケット側係合部42と、ブラケット側ガイド部43と、を有する。
【0045】
固定部41は、電子部品収容体1の設置先である車体に取り付けるための部分である。固定部41には貫通孔が形成されている。固定部41の貫通孔を車体のネジ孔に合わせてボルトを締結することにより、ブラケット40が車体に固定され、これにより電子部品収容体1が車体に固定される。なお、固定部41はボルトで固定される構成に限られず、他の固定具で固定される構成であってもよい。
【0046】
ブラケット側係合部42は、第1ケース体10とブラケット40を係合するための部材である。ブラケット側係合部42は、ブラケット側板状体51と、ブラケット側係合爪52と、スリット53と、を有する。
【0047】
上述したように、ケース3とブラケット40は樹脂製である。ここで、電子部品収容体1はブラケット40により車体に固定されるため、ケース3よりもブラケット40に強い力が掛かり易い。そのため、本実施形態では、ブラケット40を構成する樹脂の曲げ強度が、ケース3を構成する樹脂の曲げ強度よりも高い。また、一般的に、樹脂の曲げ強度が高くなるほど、樹脂のコストが高くなる。以上により、電子部品収容体1の破損を防止しつつ、電子部品収容体1のコストを抑えることができる。一例として、ブラケット40がポリアミド系樹脂又はポリプロピレン系樹脂で構成され、ケース3がポリプロピレン系樹脂又はポリブチレンテレフタレート系樹脂で構成される。
【0048】
ブラケット側板状体51の説明において、ブラケット側板状体51の長手方向を単に「長手方向」と称し、ブラケット側板状体51の厚み方向を単に「厚み方向」と称し、長手方向及び厚み方向の両方に垂直な方向を「幅方向」と称する。
【0049】
ブラケット側板状体51は、第1接続部(ブラケット側第1接続部)51aと、第2接続部(ブラケット側第2接続部)51bと、中途部(ブラケット側中途部)51cと、を有する。第1接続部51a及び第2接続部51bは、それぞれ、ブラケット40の一部に接続される。また、本実施形態では、第1接続部51aはブラケット側板状体51の一端であり、第2接続部51bはブラケット側板状体51の他端であるが、何れか一方がブラケット側板状体51の端以外に位置していてもよい。第1接続部51aと第2接続部51bはブラケット40の一部に接続されているため、撓むことができない。また、ブラケット側板状体51のうちブラケット40に接続されている箇所は第1接続部51aと第2接続部51bのみであるため、それ以外の部分は撓むことができる。中途部51cは、長手方向において第1接続部51aと第2接続部51bの間に位置している。従って、中途部51cは撓むことができる。
【0050】
ブラケット側係合爪52は、中途部51cに接続されている。詳細には、ブラケット側板状体51とブラケット側係合爪52は型を用いて一体的に成形されている。ブラケット側係合爪52は、中途部51cと一体的に撓むことができる。ブラケット側係合爪52は、ブラケット40の外側(第1本体11に近づく方向)に突出する爪部である。
【0051】
スリット53は、ブラケット側板状体51の幅方向の両側、詳細にはブラケット側板状体51の中途部51cの幅方向の両側に形成されている隙間である。スリット53の幅は狭く、詳細には、スリット53の幅は、ブラケット側板状体51の幅よりも短い(更に詳細にはブラケット側板状体51の幅の半分よりも短い)。スリット53の幅が狭いため、サイズを抑えつつ、ブラケット側係合爪52を撓ませることができる。
【0052】
また、
図6に示すように、厚み方向において、中途部51cは、ブラケット40の表面から離れた位置に配置されている。言い換えれば、中途部51cとブラケット40の表面の間には、空間54が形成されている。本実施形態では、ブラケット側係合爪52の厚み方向の長さL3は、空間54の厚み方向の長さL4以下である。これにより、第1ケース体10とブラケット40の係合時において、ブラケット側係合爪52を十分に撓ませることができる。
【0053】
ブラケット側係合爪52は、第1本体11のケース側係合爪22と係合可能である。詳細には、第1ケース体10に対して長手方向に沿ってブラケット40を挿入する(第1工程)。なお、挿入方向と長手方向は平行である。この挿入により、ケース側係合爪22とブラケット側係合爪52が力を及ぼし合い、両者は、厚み方向に離れるように撓む。特に、ケース側係合爪22とブラケット側係合爪52にはそれぞれ傾斜が形成されているため、両者を徐々に撓ませることができる。第1ケース体10に対するブラケット40の挿入長さが所定長さを超えると(傾斜のピークを乗り越えると)、
図7に示すように、ケース側係合爪22とブラケット側係合爪52が引っ掛かる。これにより、ケース側係合爪22とブラケット側係合爪52が係合する。なお、ケース側板状体21又はブラケット側板状体51のうち一方を他方から厚み方向に離れるように撓ませることにより、係合を解除できる。つまり、第1本体11とブラケット40は着脱可能である。上記では第1ケース体10に対してブラケット40を挿入するが、ブラケット40に対して第1ケース体10を挿入してもよい。
【0054】
上述した解除規制部33は、ケース側係合爪22とブラケット側係合爪52が係合した状態において、当該係合が解除されることを規制する。詳細には、ケース側係合爪22とブラケット側係合爪52の係合後において、解除規制部33が空間24に挿入される(第2工程)。解除規制部33を空間24に挿入することで、
図7に示すように、ケース側係合爪22の撓みが規制される。その結果、ケース側係合爪22とブラケット側係合爪52の係合の解除が規制される。なお、上述したように解除規制部33の先端には傾斜部33aが形成されているため、解除規制部33を空間24に挿入する作業を容易にすることができる。また、解除規制部33を空間24から抜くことにより、この規制を解除できる。
【0055】
本実施形態の解除規制部33は第2ケース体30に設けられるが、第2ケース体30とは別部品であってもよい。この別部品には、更に、第2係合部32を設けてもよい。また、本実施形態の解除規制部33はケース側係合爪22の撓みを規制するが、ブラケット側係合爪52の撓みを規制する構成でもよい。この場合、解除規制部33は空間54に挿入される。
【0056】
図5に示すように、ブラケット側ガイド部43は、ブラケット側係合爪52を幅方向で挟むように設けられている。2つのブラケット側ガイド部43の間隔は、2つのケース側ガイド部14の間隔と同じである。2つのブラケット側ガイド部43は、それぞれ、スライド突起43aを有する。スライド突起43aの長手方向は、ブラケット側板状体51の長手方向(即ち、挿入方向)と平行である。
図8に示すように、スライド突起43aの形状はスライド溝14aに形状と対応しており、スライド突起43aはスライド溝14aに沿ってスライド可能である。また、スライド溝14aとスライド突起43aが干渉するため、厚み方向の位置ズレが規制されるので、挿入作業を的確に行うことができる。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態の固定構造2は、ケース3と、ブラケット40と、を備える。ケース3は、電子部品を収容する。ブラケット40は、ケース3を設置箇所に固定する。ケース3は、ケース側係合部13を有する。ブラケット40は、ブラケット側係合部42を有する。ケース側係合部13は、ケース側板状体21と、ケース側板状体21に接続されたケース側係合爪22と、を有する。ブラケット側係合部42は、ブラケット側板状体51と、ブラケット側板状体51に接続されるとともにケース側係合爪22に係合するブラケット側係合爪52と、を有する。ケース側板状体21は、ケース3に接続される第1接続部21aと、ケース3に接続されるととも第1接続部21aとは離間した位置にある第2接続部21bと第1接続部21aと第2接続部21bの間に位置しており撓むことが可能な中途部21cと、を有し、中途部21cにケース側係合爪22が接続される。ブラケット側板状体51は、ブラケット40に接続される第1接続部51aと、ブラケット40に接続されるとともに第1接続部51aとは離間した位置にある第2接続部51bと、第1接続部51aと第2接続部51bの間に位置しており撓むことが可能な中途部51cと、を有し、中途部51cにブラケット側係合爪52が接続される。
【0058】
これにより、ケース側係合部13とブラケット側係合部42の両方が撓むことができるので、ケース3とブラケット40を係合する際に必要な力が小さくなる。その結果、ケース3とブラケット40の組付け性を高くすることができる。
【0059】
本実施形態の固定構造2において、ケース側板状体21又はブラケット側板状体51の長手方向に垂直であって、かつ、厚み方向に垂直な方向を幅方向とする。少なくとも中途部21c,51cの幅方向の両側には、隙間(スリット23,53)が形成されている。
【0060】
これにより、中途部21c,51cの撓み(つまり、ケース側係合爪22及びブラケット側係合爪52の撓み)を実現できる。
【0061】
本実施形態の固定構造2において、ケース3及びブラケット40の一方に他方を挿入することでケース3とブラケット40が係合する。ケース3は、挿入方向に沿って設けられたケース側ガイド部14を有する。ブラケット40は、挿入方向に沿って設けられたブラケット側ガイド部43を有する。ケース側ガイド部14とブラケット側ガイド部43によりケース3又はブラケット40の挿入がガイドされる。ケース側板状体21の長手方向と、ブラケット側板状体51の長手方向と、挿入方向と、が平行である。
【0062】
これにより、ケース側ガイド部14とブラケット側ガイド部43により、挿入作業が容易となる。また、挿入がガイドされることにより位置ズレが生じにくいので、ケース側係合爪22とブラケット側係合爪52を適切に係合できる。
【0063】
本実施形態の固定構造2において、ケース側板状体21の厚み方向において、少なくとも中途部21cはケース3の表面から離れた位置に配置されている。ブラケット側板状体51の厚み方向において、少なくとも中途部51cはブラケット40の表面から離れた位置に配置されている。
【0064】
これにより、ケース側係合爪22及びブラケット側係合爪52が撓む空間を確保できる。
【0065】
本実施形態の固定構造2は、解除規制部33を備える。解除規制部33は、ケース側係合爪22とブラケット側係合爪52が係合した状態において、係合が解除されることを規制する。
【0066】
これにより、ケース3とブラケット40の係合を強固にすることができる。
【0067】
本実施形態の固定構造2において、ケース3は、第1ケース体10と第2ケース体30を備える。ケース側係合部13が第1ケース体10に設けられる。解除規制部33が第2ケース体30に設けられる。解除規制部33はケース側係合爪22と干渉することで、ケース側係合爪22が係合を解除する方向に変形することを規制する。
【0068】
これにより、第2ケース体30の一部である解除規制部33を用いて、ケース3とブラケット40の係合の解除を規制できる。また、解除規制部が別部品である構成と比較して、部品点数を削減できる。
【0069】
本実施形態の固定構造2において、前記隙間がスリット状である。
【0070】
これにより、隙間がスリット状(幅狭状)なので、ケース3とブラケット40の強度の低下を抑えつつ、ケース側係合爪22及びブラケット側係合爪52の撓みを実現できる。
【0071】
本実施形態の固定構造2において、ケース3及びブラケット40は樹脂製である。ブラケット40を構成する樹脂の曲げ強度が、ケース3を構成する樹脂の曲げ強度よりも高い。
【0072】
設置箇所に固定される側であるブラケット40には強い力が掛かり易いため、曲げ強度が高い樹脂で構成することで、ブラケット40の破損を効果的に抑制できる。一方、ケース3にはブラケット40よりは強い力が掛かりにくいので、曲げ強度が低い樹脂で構成することで、ケース3を安価に製造できる。
【0073】
本実施形態の固定構造2において、解除規制部33は、ケース側係合部13に挿入されることにより、ケース側係合爪22とブラケット側係合爪52の係合が解除されることを規制する。解除規制部33の挿入方向の先端には、先端に近づくに連れて厚みが小さくなるように傾斜する傾斜部33aが形成されている。
【符号の説明】
【0074】
1 電子部品収容体
2 固定構造
10 第1ケース体
12 第1係合部
21 ケース側板状体
21a 第1接続部(ケース側第1接続部)
21b 第2接続部(ケース側第2接続部)
21c 中途部(ケース側中途部)
22 ケース側係合爪
30 第2ケース体
40 ブラケット
42 ブラケット側係合部
51 ブラケット側板状体
51a 第1接続部(ブラケット側第1接続部)
51b 第2接続部(ケース側第2接続部)
51c 中途部(ケース側中途部)
52 ブラケット側係合爪