(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120380
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】加熱調理済み麺類を容器内に含む保存食品
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20240829BHJP
A23L 7/109 20160101ALI20240829BHJP
A23L 23/00 20160101ALN20240829BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L7/109 E
A23L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027136
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼西 寿洋
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 友彦
【テーマコード(参考)】
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B036LC01
4B036LC04
4B036LE05
4B036LF01
4B036LF19
4B036LH04
4B036LH09
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4B036LH50
4B036LK01
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4B036LP01
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4B046LA06
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4B046LG11
4B046LG15
4B046LG60
4B046LP41
4B046LP67
4B046LP71
(57)【要約】
【課題】本発明は、加熱調理済み麺類と麺類のためのソース又はスープとを容器に入れた保存食品であって、当該保存食品を再加熱した際に、麺類の好ましい弾力性のある食感を維持しつつ、加熱調理済み麺類のほぐれが良好な、容器入り保存食品を提供することを課題とする。
【解決手段】加熱調理済み麺類とソース又はスープとを容器に含む保存食品であって、前記ソース又はスープが難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物とを含み、前記ソース又はスープ中の難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物との合計質量割合が5~60質量%である、前記保存食品により、上記課題は解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理済み麺類とソース又はスープとを容器内に含む保存食品であって、前記ソース又はスープが、少なくとも、水と、難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物とを含む水溶性物質とを含み、前記ソース又はスープ中の水及び水溶性物質の合計質量に対する、難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物との合計質量割合が5~60質量%である、前記保存食品。
【請求項2】
難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物との合計質量に対する、難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンの質量割合が10質量%以上である、請求項1に記載の保存食品。
【請求項3】
加熱調理済み麺類とソース又はスープとを容器内に含む、保存食品の製造方法であって、
前記ソース又はスープが、少なくとも、水と、難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと、任意成分である澱粉分解物とを含む水溶性物質とを含み、
前記水及び水溶性物質の合計質量に対する、難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物との合計質量割合が5~60質量%となるようにこれらの成分を添加してソース又はスープを製造することを含む、前記保存食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理済み麺類を容器内に含む保存食品に関する。
【背景技術】
【0002】
生活習慣の多様化から、簡便に喫食することができる保存食品へのニーズが高まっている。このようなニーズに対し、具材及び調味液が上掛けされた麺類等の主食が容器詰めされた冷凍保存食品が広く普及している。しかしながら、冷凍保存食品は、冷凍保存手段を必要とし、冷凍保存条件によっては冷凍焼けするという問題があった。このような問題を解決するには常温保存食品の形態が適しているが、保存中に加熱調理済みの麺類や米飯といった主食に調味液が浸透するために次第に柔らかくなり、加熱調理直後の食感が劣化するという課題があった。
特許文献1には、茹で済み麺類を、DE4~8のデキストリンを30~35重量%含有する調味液中で加熱殺菌することを特徴とする麺類の調理済みレトルト食品の製造方法が開示されており、煮崩れが少なく、かつ長期保存しても、食感が変わらない麺類の調理済みレトルト食品を得られることが記載されている。特許文献2には、α化された定形性澱粉質食品と、前記食品を浸漬したテキストリン又はデキストリンアルコールの溶液とから成ることを特徴とする、食品組成物が開示されている。具体的には、茹でマカロニとデキストリンアルコール(DE14~16)の13%溶液を含むホワイトソースとをプラスチック製袋に充填密封し、135℃で14分間加熱殺菌して1ヵ月保存したところ、マカロニの型崩れはなく、風味が良好であったことが記載されている。特許文献3には、パスタと、5~25%のデンプン糖を含んだソースとを容器に充填・密封し、ソースを液汁として残した状態でレトルト殺菌されていることを特徴とする容器詰パスタが開示されており、ソースが液汁として残っており、ラビオリの外観が良好で、ジューシーで歯ごたえのあるレトルトラビオリが得られることが記載されている。これらの発明は何れも優れた効果を有しているが、再加熱した際に麺のほぐれ性が十分ではないという新たな課題が見いだされた。
一方、近年の健康志向から、塩分の使用量が相対的に少ない減塩食品へのニーズが高まっている。減塩の手段として塩化ナトリウムを塩化カリウムに置換することが一般的であるが、その多くは塩化カリウムに由来する異味を解消することにあり、例えば、特許文献4では、塩化カリウムに対して特定量のフィチン酸及び/又はその塩、アルギニン及び/又はその塩、カルボン酸及び/又はその塩を含む組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-071838号公報
【特許文献2】特開昭54-105249号公報
【特許文献3】特開2001-078696号公報
【特許文献4】特開2017-158543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、加熱調理済み麺類とソース又はスープとを容器に入れた保存食品であって、当該保存食品を再加熱した際に、麺類の好ましい弾力性のある食感を維持しつつ、加熱調理済み麺類のほぐれが良好な、容器入り保存食品を提供することを課題とする。また、本発明はさらに、上記の特徴を有することに加えて、塩味が増強された保存食品を提供することを目的とする。本発明の目的はさらに、上記特徴に加えて、麺類への油馴染みが良好な保存食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、加熱調理済み麺類とソース又はスープとを含む容器入り保存食品において、ソース又はスープに澱粉分解物と難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンとを一定量加えることにより、容器入り保存食品を再加熱した際に、加熱調理済み麺類が、麺類の好ましい弾力性を維持しつつ、ほぐれやすくなることを見いだした。また、さらに当該ソース又はスープの使用により保存食品の塩味が、澱粉分解物と難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンとを含まないソース又はスープを使用した場合と比べて増強されることも見いだした。
本発明は以下を提供する。
〔1〕加熱調理済み麺類とソース又はスープとを容器内に含む保存食品であって、前記ソース又はスープが、少なくとも、水と、難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物とを含む水溶性物質とを含み、前記ソース又はスープ中の水及び水溶性物質の合計質量に対する、難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物との合計質量割合が5~60質量%である、前記保存食品。
〔2〕難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物との合計質量に対する、難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンの質量割合が10質量%以上である、〔1〕に記載の保存食品。
〔3〕加熱調理済み麺類とソース又はスープとを容器内に含む、保存食品の製造方法であって、
前記ソース又はスープが、少なくとも、水と、難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物とを含む水溶性物質とを含み、
前記水及び水溶性物質の合計質量に対する、難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物との合計質量割合が5~60質量%となるようにこれらの成分を添加してソース又はスープを製造することを含む、前記保存食品の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、加熱調理済み麺類とソース又はスープとを容器に入れた保存食品は、再加熱した際に加熱調理済み麺類の硬さが麺類の好ましい弾力性を維持しつつ、ほぐれやすいという特徴を有する。
また、本発明は前記特性に加えてさらに塩味が増強された当該保存食品を得ることができる。塩味が増強されることから、当該保存食品の調理済調味液に使用する食塩量を低減することができる。
さらに、難消化性デキストリンと及び/又はイソマルトデキストリンと更にデキストリン等の澱粉分解物とを併用すると麺への油馴染みが良好になり油浮きが抑制されるという効果も期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(1)容器入り保存食品
本発明の保存食品は、加熱調理済み麺類と特定の組成のソース又はスープとを容器内に含む保存食品である。
本明細書において、「保存食品」とは、パスタ入りパスタソースや中華麺入りラーメンあるいはうどん入り出汁等のような食品を意味し、食する際に、電子レンジ、茹で、蒸し等で再加熱する食品を意味する。好ましくは、「レトルト食品」である。
また、本発明の「容器入り保存食品」の「容器」は、上記保存食品を収納するためのいずれの容器でもよいが、本発明の保存食品は、上述のとおり、電子レンジ等で再加熱する食品を意味しているから、再加熱処理に適する材料及び形状の容器である。具体的には、レンジ用パウチ袋、レトルト用パウチ袋等が挙げられる。レトルトパウチとは、プラスチックフィルムもしくは金属箔又はこれを多層に合わせたものを袋状その他の形状に成型した容器を意味する。
前記レトルト処理は、慣用手法に従って行うことができる。例えば、レトルト用ソースを所定分量に取り分けてレトルト処理に耐えることができるパウチに充填及び密閉した後、レトルト処理(例えばパウチ内の製品において殺菌中に最も温度が上がりにくい中心部のF値が4上となるように100~135℃で加熱及び加圧して殺菌処理)する方法が挙げられる。
【0008】
(1-1)加熱調理済み麺類
本発明の保存食品は、加熱調理済み麺類を含む。本発明に使用する麺類の種類は特に限定されるものではなく、公知の麺類であれば何れも適用することができる。そのような麺類としては、スパゲッティやマカロニといったロングパスタ、ショートパスタ、中華麺、うどん、きし麺、冷や麦、素麺、そば、冷麺、ビーフン等が挙げられる。
また、食感などの改良のために、穀粉の一部を植物性蛋白(バイタルグルテン、大豆タンパクなど)、卵白粉、全卵粉、各種加工澱粉、増粘剤(グアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グルコマンナン、ガラクトマンナン、カードラン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸エステル、及びカラギーナンなど)の1種類または複数に適宜置き換えてよい。
さらに、本発明の製造においては、麺の種類などに応じて、上記粉原料の他に食塩、澱粉、乳化剤、酒精、乳化油脂、乳粉末、通常麺類の製造に用いる副原料を使用することができる。
加熱調理方法は、茹で、蒸し、またはこれらの組み合わせが挙げられ、茹でが好ましい。
【0009】
(1-2)ソース又はスープ
本発明の保存食品は、上述した加熱調理済み麺類と、前記麺類のためのソース又はスープ、すなわち、麺類と共に食するためのソース又はスープを含む。本発明に使用するソース又はスープは特に限定されるものではなく、公知のソース又はスープのように麺類と共に食する調味済み液体であれば何れも適用することができる。そのようなソース又はスープとしては、和風ソース又はスープ(照り焼き、めんつゆ、出汁等)や洋風ソース又はスープ(ナポリタン、カルボナーラ、ボロネーゼ等)、中華・アジア系ソース又はスープ(ラーメンスープ、あんかけ、韓国風、東南アジア風等)等が挙げられる。ソース又はスープは加熱調理後に容器に入れてもよく、麺類と共に加熱調理されたものでもよい。
本発明のソース又はスープには、少なくとも水と水溶性物質が含まれており、水溶性物質として難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンとを含み、さらに任意成分である澱粉分解物が含んでいてもよい。ソース又はスープには、前記水と水溶性物質以外には、通常のソース又はスープ等で使用する具材や調味料等由来の固形部及び油液部が含まれる。ソース又はスープから固形部及び油液部を除いた液体部における水及び水溶性物質の質量に対する難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物との合計質量の割合は5~60質量%である。当該範囲にあると、再加熱後の麺が、麺類の好ましい弾力性のある硬さを有し、かつほぐれ性もよい。好ましくは10~50質量%であり、さらに好ましくは25~50質量%であり、よりさらに好ましくは40~50質量%である。
ソース又はスープの固形部とは、ソース又はスープの液体部分に溶解しない固体の部分を意味し、具体的には、角切り人参や液中に分散する赤唐辛子などが挙げられる。ソース又はスープの油液部とは、ソース又はスープの液体部分に溶解しない油脂及び油溶性物質の部分を意味し、具体的には、食用油脂やHLB値1~10の油溶性の乳化剤、香料や着色料などの油溶性物質が挙げられる。また、ソース又はスープの液体部は、固形部及び油液部を除いた水と水溶性物質から成る部分を意味し、具体的には、水溶性物質として、上述した難消化性デキストリン等の水溶性デキストリンに加えて、HLB値が10を越える値(>10)~20の乳化剤、砂糖や塩等が挙げられる。
【0010】
(1-2-1)難消化性デキストリン、イソマルトデキストリン
「難消化性デキストリン」とは、コーンスターチなどの澱粉を酸存在下で焙焼して得られるデキストリンをアミラーゼ等の消化酵素で加水分解し、その内の難消化性成分を回収して得られる水溶性の食物繊維のことである。難消化性デキストリンは公知の方法で製造することができるが、市販されているものを使用することもできる。市販されているものの好適な例としてファイバーソル2(US)、ファイバーソル2H、ファイバーソル2AG(何れも松谷化学社製)が挙げられ、食物繊維含量は何れも85質量%以上である。
「イソマルトデキストリン」とは、トウモロコシ等の澱粉に、微生物由来の酵素を作用させて得られる水溶性の食物繊維のことである。イソマルトデキストリンは公知の方法で製造することができるが、市販されているものを使用することもできる。市販されているものの好適な例としてファイバリクサ(林原社製)が挙げられ、食物繊維含量は80質量%以上である。
なお、難消化性デキストリン及びイソマルトデキストリン等の低分子水溶性食物繊維は、プロスキー法及びプロスキー変法で測定することができないので、通例、衛新第13号「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」に記載されている酵素-HPLC法で測定される(参考文献:日本食物繊維学会 http://jdf.umin.ne.jp/kakusyu/teigen-2.pdf、特開2006-149369)。
任意成分である澱粉分解物と難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンとの合計質量に対する難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンの質量割合は、10質量%以上であることが好ましい。難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンの質量がかかる範囲であると、麺の硬さもちょうどよく、ほぐれ性も良好となる。また、塩味の増強も見られるため好ましい。より好ましくは、難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンの質量は15質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、よりさらに好ましくは30質量%であり、なお好ましくは60質量%以上である。油馴染みの観点から、90質量%以下が好ましく、さらに80質量%以下が好ましい。
【0011】
(1-2-2)澱粉分解物
「澱粉分解物」とは、澱粉の加水分解で得られる低分子量の炭水化物のことをいう。前記澱粉分解物としては、当技術分野で通常使用されるものを特に制限されることなく採用することができる。前記澱粉分解物の原料である澱粉の由来は特に限定されず、例えば、タピオカ由来、馬鈴薯由来、トウモロコシ由来、小麦由来、米由来、甘藷由来、又は豆由来などであってもよい。前記澱粉分解物は、一般にDE値により、水あめ、マルトデキストリン、デキストリンに分類されるが、本発明においては特に区別するものではない。また、澱粉分解物を還元して得られる糖アルコール(還元水飴、マルトデキストリンアルコール、デキストリンアルコール)についても、本発明においては澱粉分解物に包含されるものである。
本発明において、澱粉分解物を難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと共に併用すると、麺類への油馴染みが良好になり、油浮きを抑制することができるため好ましい。麺類への油馴染みと麺類のほぐれ性は、理由は不明であるがトレードオフの関係にあることが実験的に見られたため、澱粉分解物を難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと共に併用することによりこれらの課題を解決できることは特に有利な効果である。油馴染みの観点から、澱粉分解物と難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンとの合計質量に対する澱粉分解物の質量割合は、少なくとも5質量%含むことが好ましく、10~50質量%含むことがより好ましく、20~40質量%含むことがさらに好ましい。
【0012】
(2)容器入り保存食品の製造方法
上述した加熱調理済み麺類とソース又はスープとを容器内に含む、本発明の保存食品は、以下を含む方法により製造される。
(i)ソース又はスープが、少なくとも、水と、難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物とを含む水溶性物質とを含み、
(ii)前記水及び水溶性物質の合計質量に対する、難消化性デキストリン及び/又はイソマルトデキストリンと任意成分である澱粉分解物との合計質量割合が5~60質量%となるようにこれらの成分を添加してソース又はスープを製造する。
より具体的には、例えば、少なくとも水と、難消化性デキストリンと澱粉分解物とを含む水溶性物質とを含むソース又はスープを製造するにあたり、水及び水溶性物質の合計質量に対して、難消化性デキストリンと澱粉分解物との合計質量割合が5~60質量%となるように添加して、ソース又はスープを製造する。
ソース又はスープの製造では、成分の添加混合後さらに任意に加熱してもよく、加熱しながら混合してもよい。また各成分の添加順序は適宜決めることができる。 ソース又はスープを製造した後、加熱調理済麺類とあわせて容器に入れ、レトルト処理を行う。レトルト処理は、慣用手法に従って行うことができる。
【実施例0013】
<製造例1 デキストリン、難消化性デキストリン水溶液の調製>
ファイバーソル2(US)(松谷化学工業株式会社)と水道水を混合し、70質量%濃度の難消化性デキストリン水溶液を得た。
パインデックス#1(松谷化学工業株式会社、DE8)と水道水を混合し、70質量%濃度のデキストリン水溶液を得た。
【0014】
<製造例2 容器入りペペロンチーノの製造>
オーマイスパゲッティ1.7mm(株式会社ニップン)を沸騰した湯で8分間茹で、湯切りを行い、茹でスパゲッティを得た。茹でスパゲッティの水分値は60質量%であった。
配合表1に示した原料をよく撹拌しながら加熱し、ペペロンチーノソースを得た。ペペロンチーノソースの液体部質量(水及び水溶性物質の合計質量)に対するデキストリンの量は35質量%であった。
茹でスパゲッティ180質量部にペペロンチーノソース120質量部をまぶした後レトルト用のパウチ袋に入れて密封し、加熱加圧殺菌処理を行った。加熱加圧殺菌は、貯湯式レトルト殺菌装置を使用し、2.0MPa下で内部温度が121℃に到達後、25分間加熱の条件で行った。
【0015】
*デキストリン水溶液:製造例1により調製した70質量%デキストリン水溶液である。
*乳化剤については、HLB値が1~10を油溶性物質、10を越える値(>10)~20を水溶性物質とし、製造例2で使用した乳化剤はHLB値が11のため、水溶性物質に分類した。
【0016】
<評価例1 麺の硬さ、ほぐれ性、塩味、麺への油馴染みの評価>
製造例2で得られた容器入りペペロンチーノを1カ月間室温保存した後、開封して皿に盛付け、電子レンジに投入して600Wで3分間加熱し、10名の熟練パネラーにより下記評価基準表1に従って、麺の硬さ(食感)、麺のほぐれ性、及びペペロンチーノを食したときの塩味について官能評価を行った。麺への油馴染みは目視で評価した。
【0017】
【0018】
<試験例1 デキストリン含有ペペロンチーノの検証試験>
表1記載のデキストリン水溶液を用いた以外は製造例2に従って容器入りペペロンチーノを製造し、評価例1に従って評価した。なお、参考例1は、製造例2においてデキストリン水溶液を使用せずに製造したペペロンチーノソースを茹でスパゲッティにまぶした直後の標準的なペペロンチーノパスタ(レトルト処理していない)であり、官能評価の基準となるものである。
参考例2、3及び4では、保存中にペペロンチーノソースの水分がスパゲッティに吸収されたため、スパゲッティが柔らかく伸びた食感になり、ペペロンチーノソースの濃度が高くなったためにべたつきがあり、スパゲッティのほぐれ性が悪かった。参考例5及び6では、デキストリン量が多くなるにつれてスパゲッティの硬さが強くなり、従来技術に記載されている評価と同等であった。また、参考例4、5及び6におけるデキストリン量の増加に伴って、ややぼやけた塩味になり、ペペロンチーノソースにややべたつきがあったもののスパゲッティのほぐれは悪くなかった。麺への油馴染みは、デキストリン量が増えるほどソースの粘り気が増し、良好になった。
【0019】
*デキストリン量:ペペロンチーノソースの液体部(水及び水溶性物質)の合計質量に対するデキストリンの含有量(質量%)である。
【0020】
<試験例2 デキストリンの難消化性デキストリンへの置き換えの検討>
デキストリンの全部または一部を表2の通りに難消化性デキストリンに置き換えた以外は製造例2に従って、容器入りペペロンチーノを製造し、評価例1に従って評価した。
デキストリンを難消化性デキストリンに置き換えた実施例1~6において、その置換割合に関わらずスパゲッティの硬さに大差はなかった。塩味については、置換率の増加(難消化性デキストリン量の増加)に伴って強くなり、実施例2~6では参考例1よりも塩味が増強されており、このことからペペロンチーノソースに使用する食塩の使用量を低減できることが示唆された。また、スパゲッティのほぐれ性は難消化性デキストリンの含有量の増加に依存して改善されていた。更には、実施例1~2ではデキストリンにより粘り気が付く分、(油を抱き込むことができて)麺への油馴染みが良かった。しかし、実施例4~6ではデキストリンに比べ、難消化性デキストリンの粘り気は弱く、油を抱き込めずにやや油浮きが見られた。難消化性デキストリンを単独で使用した場合(実施例6~8)には、ソースの液体質量部に対して10質量%の場合(実施例7)が最も良好なほぐれ性を示したが35質量%以上においてもほぐれ性は良好であった(実施例6及び8)。また35質量%以上において、麺の硬さや塩味についても良好になった(実施例6及び8)。
【0021】
【0022】
*デキストリン量:ペペロンチーノソースの液体部の水及び水溶性物質の合計質量に対するデキストリンの含有量(質量%)である。
*難消化性デキストリン量:ペペロンチーノソースの液体部の水及び水溶性物質の合計質量に対するデキストリン水溶液中に含有されるデキストリンを難消化性デキストリンに置き換えた際の難消化性デキストリンの含有量(質量%)である。
【0023】
<試験例3 難消化性デキストリンのイソマルトデキストリンへの置き換えの検討>
表3記載の難消化性デキストリンに換えてイソマルトデキストリンとデキストリンとを用いた以外は製造例2に従って、容器入りペペロンチーノを製造し、評価例1に従って評価したところ、麺の硬さが弾力的で、ほぐれ性も良く、塩味及び麺への油馴染みにおいても難消化性デキストリンを使用した実施例3と同様の結果が得られたため、イソマルトデキストリンでも難消化性デキストリンと同様の効果を得られることが確認できた(実施例9~11)。
【0024】