(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120423
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】光学積層体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240829BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240829BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240829BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240829BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240829BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240829BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/10
H10K50/86
H10K59/10
C09J7/30
B32B7/023
B32B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027215
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 央人
(72)【発明者】
【氏名】松野 健次
(72)【発明者】
【氏名】小林 直子
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
2H149AA13
2H149AA18
2H149AB13
2H149BA02
2H149BA13
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2H149FD14
3K107AA01
3K107AA05
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4F100JN18B
4J004AB01
4J004EA06
4J004FA08
(57)【要約】
【課題】液晶位相差層を有する位相差板を備えた光学積層体であって、耐熱性が向上した光学積層体を提供する。
【解決手段】直線偏光板と位相差板とをこの順に備え、前記直線偏光板と前記位相差板との間に粘接着層を有しない光学積層体であって、前記直線偏光板は、前記位相差板側の最表面に保護フィルムを有し、直交色相b値が-15以上-3以下である、光学積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光板と位相差板とをこの順に備え、前記直線偏光板と前記位相差板との間に粘接着層を有しない光学積層体であって、
前記直線偏光板は、前記位相差板側の最表面に保護フィルムを有し、直交色相b値が-15以上-3以下である、光学積層体。
【請求項2】
前記直線偏光板は、視感度補正単体透過率が43.0%以上46.0%以下である、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記直線偏光板は、直交色相b値が-15以上-6以下である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記位相差板は、液晶化合物の硬化物を含む、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記光学積層体を、温度85℃の環境下に500時間放置した前後での前記位相差板の面内位相差値の変化量の絶対値が0.5nm以下である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項6】
前記直線偏光板と前記位相差板との間に配向膜を有し、
前記配向膜は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置において、画像表示パネルの視認側に円偏光板を配置して、外来光の反射による視認性の低下を抑制する方法が採用されている。
【0003】
円偏光板は、直線偏光板と位相差板とが積層された光学積層体である。円偏光板では、画像表示パネルに向かう外来光を直線偏光板により直線偏光に変換し、続く位相差板により円偏光に変換する。円偏光である外来光は、画像表示パネルの表面で反射するものの、この反射の際に偏光面の回転方向が逆転し、位相差板により直線偏光に変換された後、続く直線偏光板により遮光される。その結果、外部への外来光の出射が著しく抑制される。
【0004】
位相差板においては、液晶化合物の硬化物を含む液晶位相差膜を有する構成が知られている(例えば、特許文献1、2)。かかる構成によると、位相差板の薄型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-163935号公報
【特許文献2】特開2019-91030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液晶位相差膜を有する位相差板を備えた光学積層体において、耐熱性が低下する場合があった。
【0007】
本発明は、液晶位相差膜を有する位相差板を備えた光学積層体であって、耐熱性が向上した光学積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の光学積層体を提供する。
〔1〕 直線偏光板と位相差板とをこの順に備え、前記直線偏光板と前記位相差板との間に粘接着層を有しない光学積層体であって、
前記直線偏光板は、前記位相差板側の最表面に保護フィルムを有し、直交色相b値が-15以上-3以下である、光学積層体。
〔2〕 前記直線偏光板は、視感度補正単体透過率が43.0%以上46.0%以下である、〔1〕に記載の光学積層体。
〔3〕 前記直線偏光板は、直交色相b値が-15以上-6以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の光学積層体。
〔4〕 前記位相差板は、液晶化合物の硬化物を含む、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔5〕 前記光学積層体を、温度85℃の環境下に500時間放置した前後での前記位相差板の面内位相差値の変化量の絶対値が0.5nm以下である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
〔6〕 前記直線偏光板と前記位相差板との間に配向膜を有し、前記配向膜は、ポリビニルアルコール系樹脂を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の光学積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、液晶位相差膜を有する位相差板を備えた光学積層体であって、耐熱性が向上した光学積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の光学積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】本実施形態の画像表示装置の一例を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下のすべての図面においては、各構成要素を理解しやすくするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0012】
[光学積層体]
図1は、本実施形態の光学積層体の一例を模式的に示す概略断面図である。
図1に示すように、光学積層体1は、前面側から、直線偏光板10と、位相差板30と、がこの順に積層されている。直線偏光板10は、位相差板30側の最表面に保護フィルム11を有する。光学積層体1は、円偏光板であってもよい。
【0013】
光学積層体1は、直線偏光板10と位相差板30との間に粘接着層を有しない。このような構成においては、粘接着層を有する場合と比較して耐熱性が低下しやすい。直線偏光板10と位相差板30との間に粘接着層が介在する場合には、これがバリア層として機能して、直線偏光板10から位相差板30へのヨウ素の移行が抑制されることにより、耐熱性の低下が抑制されるものと推測される。
【0014】
光学積層体1において、直線偏光板10は、直交色相b値が-15以上-3以下である。本発明者らは、このような構成によると、直線偏光板10と位相差板30との間に粘接着層を有しない構成であっても、耐熱性を向上させることができるとの知見を得て本発明に至った。
【0015】
耐熱性の向上は、色変化の大きさを一つの指標とすることができる。画像表示装置において、画像表示パネルの視認側に円偏光板を配置して、外来光の反射による視認性の低下を抑制する方法が採用されている。画面を正面方向からみた場合と斜め方向からみた場合とで反射色が異なり、更に斜め方向においては偏光板や位相差板の影響により面内角に応じた反射色を生じる。耐久試験を実施した際には、偏光板や位相差板の劣化に伴い反射色相の変化が生じることがあり、初期と耐久試験後の変化が少ないことが望ましい。本発明の光学積層体によると、初期と耐久試験後の反射色の変化が抑制された画像表示装置を構成することができる。
【0016】
上記の直交色相とは、直線偏光板の一方の面から光をあてたときに他方の面から透過してくる光の色相を意味する。ここでの色相は、Lab表色系においてa値及びb値で表すことができ、標準の光を用いて測定される。なお本発明において、直線偏光板の直交色相の実測は直線偏光板の片面に粘着剤層を設け、その粘着剤層側でガラス板に貼合した状態で行っている。Lab表色系は、 JIS K 5981:2006「合成樹脂粉体塗膜」の「5.5 促進耐候性試験」に記載されるように、ハンターの明度指数Lと色相a及びbで表されるものである。Lab表色系に類似する概念として、JIS Z 8781-4:2013「測色-第4部:CIE 1976 L*a*b*空間」に規定されるL*a*b*表色系があるが、本発明ではLab表色系を採用する。明度指数Lと色相a及びbの値は、JIS Z 8722:2009「色の測定方法-反射及び透過物体色」に規定される三刺激値X、Y及びZから、次の式によって計算される。
【0017】
L=10Y1/2
a=17.5(10.2X-Y)/Y1/2
b=7.0(Y-0.847Z)/Y1/2
【0018】
Lab表色系において、色相a値及びb値は、彩度に相当する位置を示すことができ、色相a値が増加すると色相は赤系に、色相b値が増加すると色相は黄系にそれぞれ変化する。また、0に近い程、共に無彩色に近いことを表す。
【0019】
直線偏光板10は、直交色相b値が-15以上-3以下であり、好ましくは-15以上-6以下であり、より好ましくは-10以上-6以下であり、-9以上-7以下である。
【0020】
[直線偏光板]
直線偏光板10は、光吸収異方性の機能を有するフィルムであり、一般的には二色性色素を一軸配向した偏光フィルムや偏光膜(本明細書において、偏光フィルムと偏光膜とをまとめて「偏光子」ともいう。)を含むフィルムである。二色性色素を一軸配向させるためには、PVA等のポリマー中にヨウ素や有機二色性染料を含浸させた状態で一軸延伸したフィルム(以下、「偏光フィルム」ともいう)や、二色性色素と重合性液晶化合物を配向させることによって形成される光学異方性層(以下、「偏光膜」ともいう)から作製する事ができる。すなわち、延伸ポリマーや重合性液晶化合物の重合体中に包摂された二色性色素によって光が異方性吸収されることによって偏光機能を発現する。
【0021】
直線偏光板の偏光性能は、分光光度計を用いて測定することができる。例えば、可視光である波長380nm~780nmの範囲で透過軸方向(配向垂直方向)の透過率(T1)及び吸収軸方向(配向方向)の透過率(T2)を、分光光度計にプリズム偏光子をセットした装置を用いてダブルビーム法で測定することができる。可視光範囲での偏光性能は、下記式(式1)ならびに(式2)を用いて、各波長における単体透過率、偏光度を算出し、さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行うことで、視感度補正単体透過率(Ty)および視感度補正偏光度(Py)で算出することができる。
単体透過率(%)= (T1+T2)/2 ・・・(式1)
偏光度(%) = (T1-T2)/(T1+T2)×100 ・・・(式2)
【0022】
直線偏光板10の視感度補正単体透過率Tyは、高くなるほど白表示時の明瞭性が増すが、(式1)と(式2)の関係からわかるように、単体透過率を高くしすぎると偏光度が下がるという問題がある。よって、好ましくは43.0%以上46.0%以下であり、より好ましくは43.5%以上45.5%以下であり、さらに好ましくは44.0%以上45.0%以下である。視感度補正単体透過率Tyが過度に高いと視感度補正偏光度Pyが低くなりすぎて、反射防止フィルムとして使用した際の反射防止機能が不十分となることがある。
【0023】
直線偏光板10の視感度補正偏光度Pyは、通常80%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上であり、99.9%以上であれば、外来光の反射を防止する観点から画像表示パネルに好適に用いる事ができる。直線偏光板の視感度補正偏光度Pyを高くすることは、光学積層体の反射防止機能を高めるうえで有利である。視感度補正偏光度Pyが80%未満であると、反射防止フィルムとして使用した際の反射防止機能を果たせないことがある。
【0024】
<偏光フィルム>
偏光フィルムすなわちポリビニルアルコール系樹脂フィルム(PVA)等のポリマー中にヨウ素や有機二色性染料を含浸させた状態で一軸延伸したフィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素等の二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液等の架橋剤で処理する工程、及び、ホウ酸水溶液等の架橋剤による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。偏光フィルムは架橋剤を含んでいてよい。
【0025】
偏光フィルムの厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは18μm以下、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは12μm以下である。該厚みは、通常1μm以上であり、例えば5μm以上であればよい。
【0026】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、又は染色の後に行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、ここに示した複数の段階で一軸延伸を行うこともできる。一軸延伸には、周速の異なるロール間でフィルム運搬方向に一軸に延伸する方法や、熱ロールを用いてフィルム運搬方向に一軸に延伸する方法、テンターを使用して幅方向に延伸する方法などが採用できる。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸により行ってもよいし、水等の溶媒を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸により行ってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍程度である。また、熱可塑性樹脂フィルム上にポリビニルアルコールを含む水溶液を塗布した後に乾燥処理を施し、熱可塑性樹脂フィルムと共に上記方法にて延伸してもよい。
【0027】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、例えば、二色性色素を含有する水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法により行うことができる。二色性色素として、具体的にはヨウ素や二色性有機染料が用いられる。
【0028】
<保護フィルム>
保護フィルム11(以下、「第1保護フィルム」とも称する)は、直線偏光板10の位相差板30側の最表面に設けられている。すなわち、光学積層体1において、直線偏光板10は、その保護フィルム11が位相差板30の最表面と接するようにして、積層されている。直線偏光板10において、偏光子の位相差板30側とは反対側の表面においても保護フィルム(以下、「第2保護フィルム」とも称する)が設けられていてもよい。以下、第1保護フィルムと第2保護フィルムに共通する事項についての説明は、「保護フィルム」という。
【0029】
保護フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。直線偏光子と保護フィルムとは、接着剤等を介して積層することができる。熱可塑性樹脂から形成されたフィルムは、偏光子との密着性を向上するため、表面処理(例えば、コロナ処理等)が施されていてもよく、プライマー層(下塗り層ともいう)等の薄層が形成されていてもよい。
【0030】
熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、透明フィルムである事が好ましく、例えば、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);(メタ)アクリル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂フィルムは、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、セルロースエステル系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム又は(メタ)アクリル系樹脂フィルムであることが好ましい。
【0031】
熱可塑性樹脂フィルム上にハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層は、熱可塑性樹脂フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度及び耐スクラッチ性を向上させた熱可塑性樹脂フィルムとすることができる。ハードコート層は、例えば活性エネルギー線硬化型樹脂、好ましくは紫外線硬化型樹脂の硬化層である。紫外線硬化型樹脂としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、強度を向上させるために、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は特に限定されず、無機系微粒子、有機系微粒子又はこれらの混合物が挙げられる。
【0032】
第1保護フィルム11として、偏光板の耐クラック性向上の観点からトリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂を用いることが好ましい。本発明によると、セルロース系樹脂からなる第1保護フィルム11に粘接着層を介さずに液晶位相差膜が設けられていることにより、耐クラック性を向上させることができる。通常、セルロース系樹脂は、適度な透湿度を有することから、直線偏光板10と位相差板30との間のバリア性に寄与しにくいと推測される。本発明によると、第1保護フィルム11がトリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂であっても、耐熱性を向上させることができる。また、第1保護フィルム11と液晶位相差膜との間にPVA系配向膜が含まれると、第1保護フィルム11がトリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂であっても、バリア性が付与され、ヨウ素の移行がさらに抑制される。
【0033】
直線偏光板10において、第1保護フィルム又は第2保護フィルムは、偏光子の表面には、粘接着層を介して設けられていてもよく、または粘接着層を介さずに自粘着タイプのものが設けてられいてもよい。保護フィルムの貼合に用いられる粘接着剤としては特に限定されることはなく、例えば、水系接着剤、紫外線硬化型接着剤を用いることができる。保護フィルムの透湿度は、水系接着剤を用いて偏光子に貼合される場合、水系接着剤を効率的に乾燥させる観点から、好ましくは500g/m2・24hr以上であり、より好ましくは1000g/m2・24hr以上である。偏光子の両面に保護フィルムの貼合を行う場合は、水系接着剤を用いることで3枚同時貼合を行うことが可能となるため工程数を少なくすることができる。
【0034】
<最前面の層>
直線偏光板10は、最前面に反射防止層を備えていてもよい。反射防止層は、直線偏光板10の表面での外光の反射光が視認されるのを防止する機能を有するものであり、従来に準じた反射防止層等の形成方法、すなわちコート法、スパッタ法、真空蒸着法等により形成することができる。反射防止層は、直線偏光板10の前面側に設けられる保護フィルムの前面側に予め形成しておくことにより、かかる保護フィルムを用いて反射防止層付き直線偏光板を構成してもよいし、保護フィルムとは別に設けられてもよい。
【0035】
直線偏光板10は、最前面に、反射防止層以外の表面処理層を有していてもよい。このような表面処理層としては、ハードコート層、スティッキング防止層、アンチグレア層、拡散層等が挙げられる。
【0036】
[位相差板]
位相差板30は、重合性液晶化合物の配向状態における重合体からなる液晶位相差膜であってよい。少なくとも1層の液晶位相差膜を有することが好ましい。光学異方性膜が重合性液晶を重合することで形成される層の場合、その厚さは、通常10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.3μm以上3μm以下である。
【0037】
<液晶位相差膜>
本明細書においては、重合性液晶の光軸が基材平面に対して水平に配向したものを水平配向、重合性液晶の光軸が基材平面に対して垂直に配向したものを垂直配向と定義する。光軸とは、重合性液晶の配向により形成される屈折率楕円体において、光軸に直交する方向で切り出した断面が円となる方向、すなわち3方向の屈折率がすべて等しくなる方向を意味する。
【0038】
重合性液晶化合物を含む組成物(以下、「液晶位相差層形成用組成物」ともいう)を透明基材上に塗布形成し、重合性液晶化合物の配向した重合体からなる液晶位相差膜とすることが、薄型化ならびに波長分散特性を任意に設計できる点で好ましい。
液晶位相差膜は、通常、基材上に形成された配向膜上に、位相差膜形成用組成物を塗布し、上記位相差膜形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物を重合することによって形成される。液晶位相差膜は、通常、重合性液晶化合物が配向した状態で硬化した膜であり、視認面内で位相差を生じるためには、重合性液晶化合物が基材面に対して水平方向に配向した状態で重合性基が重合した硬化膜である必要がある。この際、重合性液晶化合物が棒状の液晶である場合にはポジティブAプレートであればよく、重合性液晶化合物が円盤状の液晶であればネガティブAプレートであればよい。
【0039】
画像表示パネルの外来光の反射を防止するためには、可視光全域でのλ/4板機能(すなわちπ/2の位相差機能)を有すればよい。具体的には逆波長分散性λ/4層が好ましく、正波長分散性λ/2層と正波長分散性λ/4層を組み合わせたものであっても良い。さらに、斜め方向での反射防止機能を補償し得る観点から、厚み方向に異方性を有する層(ポジティブCプレート)をさらに含んでいる事が好ましい。また、それぞれの光学異方性層はチルト配向をしていても良いし、コレステリック配向状態を形成していても良い。
【0040】
重合性液晶としては、棒状の重合性液晶および円盤状の重合性液晶が挙げられる。棒状の重合性液晶が基材に対して水平配向または垂直配向した場合は、該重合性液晶の光軸は、該重合性液晶の長軸方向と一致する。円盤状の重合性液晶が配向した場合は、該重合性液晶の光軸は、該重合性液晶の円盤面に対して直交する方向に存在する。
【0041】
重合性液晶を重合させることにより形成される層が面内位相差を発現するためには、重合性液晶を適した方向に配向させればよい。重合性液晶が棒状の場合は、該重合性液晶の光軸を基材平面に対して水平に配向させることで面内位相差が発現する、この場合、光軸方向と遅相軸方向とは一致する。重合性液晶が円盤状の場合は、該重合性液晶の光軸を基材平面に対して水平に配向させることで面内位相差が発現する、この場合、光軸と遅相軸とは直交する。重合性液晶の配向状態は、配向膜と重合性液晶との組み合わせにより調整することができる。
【0042】
液晶位相差膜の面内位相差値は、位相差膜の厚みによって調整することができる。面内位相差値は式(11)によって決定されることから、所望の面内位相差値(Re(λ))を得るためには、Δn(λ)と膜厚dを調整すればよい。
Re(λ)=d×Δn(λ) (11)
式中、Re(λ)は、波長λnmにおける面内位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表わす。
【0043】
複屈折率Δn(λ)は、面内位相差値を測定して、位相差膜の厚みで除することで得られる。具体的な測定方法においては、ガラス基板のように基材自体に面内位相差が無いような基材上に製膜したものを測定することで、実質的な位相差膜の特性を測定することができる。
【0044】
本明細書では、重合性液晶の配向又はフィルムの延伸により形成される屈折率楕円体における3方向の屈折率を、nx、nyおよびnzとして表す。nxは、液晶位相差膜が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して平行な方向の主屈折率を表す。nyは、位相差膜が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して平行であり、且つ、該nxの方向に対して直交する方向の屈折率を表す。nzは、位相差膜が形成する屈折率楕円体において、フィルム平面に対して垂直な方向の屈折率を表す。
【0045】
棒状の重合性液晶の光軸が、基材平面に対して水平に配向した場合、得られる位相差膜の屈折率関係は、nx>ny≒nz(ポジティブAプレート)となり、屈折率楕円体におけるnxの方向の軸と遅相軸が一致する。
【0046】
また、円盤状の重合性液晶の光軸が、基材平面に対して水平に配向した場合、得られる位相差膜の屈折率関係は、nx<ny≒nz(ネガティブAプレート)となり、屈折率楕円体におけるnyの方向の軸と遅相軸が一致する。
【0047】
重合性液晶を重合させることにより形成される層が厚み方向の位相差を発現するためには、重合性液晶を適した方向に配向させればよい。本明細書において、厚み方向の位相差を発現するとは、式(20)において、Rth(厚み方向の位相差値)が負となる特性を示すものと定義する。Rthは、面内の進相軸を傾斜軸として40度傾斜させて測定される位相差値(R40)と、面内の位相差値(Re)とから算出することができる。すなわち、Rthは、Re、R40、d(位相差膜の厚み)、およびn0(位相差膜の平均屈折率)から、以下の式(21)~(23)によりnx、ny及びnzを求め、これらを式(20)に代入することで算出することができる。
Rth=[(nx+ny)/2-nz]×d (20)
Re =(nx-ny)×d (21)
R40=(nx-ny')×d/cos(φ) (22)
(nx+ny+nz)/3=n0 (23)
ここで、
φ=sin-1〔sin(40°)/n0〕
ny'=ny×nz/〔ny2×sin2(φ)+nz2×cos2(φ)〕1/2
また、nx、nyおよびnzは前述の定義と同じである。
【0048】
重合性液晶が棒状の場合は、該重合性液晶の光軸を基材平面に対して垂直に配向させることで厚み方向の位相差が発現する。重合性液晶が円盤状の場合は、該重合性液晶の光軸を基材平面に対して水平に配向させることで厚み方向の位相差が発現する。円盤状の重合性液晶の場合は、該重合性液晶の光軸が基材平面に対して平行であるため、Reを決めると、厚みが固定されるため、一義的にRthが決定されるが、棒状の重合性液晶の場合は、該重合性液晶の光軸が基材平面に対して垂直であるため、位相差膜の厚みを調節することでReを変化させることなくRthを調節することができる。
【0049】
棒状の重合性液晶の光軸が、基材平面に対して垂直に配向した場合、得られる位相差膜の屈折率関係は、nx≒ny<nz(ポジティブCプレート)となり、屈折率楕円体におけるnzの方向の軸と遅相軸方向が一致する。
【0050】
また、円盤状の重合性液晶の光軸が、基材平面に対して平行に配向した場合、得られる位相差膜の屈折率関係は、nx<ny≒nz(ネガティブAプレート)となり、屈折率楕円体におけるnyの方向の軸と遅相軸方向が一致する。
【0051】
<重合性液晶>
重合性液晶とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶が有する液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でもよく、サーモトロピック液晶を秩序度で分類すると、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。
【0052】
棒状の重合性液晶としては、例えば、下記式(A)で表される化合物及び、下記式(X)で表される基を含む化合物が挙げられる。棒状の重合性液晶としては、波長分散性発現の観点から分子軸方向に対して垂直配向さらに複屈折性を有するT字型あるいはH型にメソゲン構造を有する液晶が好ましく、より強い分散が得られる観点からT字型液晶がより好ましく、T字型液晶の構造としては、具体的には、下記式(A)で表される化合物が挙げられる。
【0053】
(式(A)で表される化合物)
式(A)は下記のとおりである。以下、式(A)で表される化合物を重合性液晶(A)ということがある。
【0054】
【0055】
式(A)中、Arは置換基を有していてもよい二価の芳香族基を表す。該二価の芳香族基中には窒素原子、酸素原子、硫黄原子のうち少なくとも1つ以上が含まれることが好ましい。二価の基Arに含まれる芳香族基が2つ以上である場合、2つ以上の芳香族基は互いに単結合、-CO-O-、-O-などの二価の結合基で結合していてもよい。
G1及びG2はそれぞれ独立に、二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を表す。ここで、該二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のフルオロアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基に置換されていてもよく、該二価の芳香族基又は二価の脂環式炭化水素基を構成する炭素原子が、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子に置換されていてもよい。
L1、L2
、B1及びB2はそれぞれ独立に、単結合又は二価の連結基である。
k、lは、それぞれ独立に0~3の整数を表し、1≦k+lの関係を満たす。ここで、2≦k+lである場合、B1及びB2、G1及びG2は、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
E1及びE2はそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基を表し、ここで、アルカンジイル基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該アルカンジイル基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-、-COO-で置換されていてもよく、-O-、-S-、-COO-を複数有する場合は互いに隣接しない。P1及びP2は互いに独立に、重合性基又は水素原子を表し、少なくとも1つは重合性基である。
【0056】
G1及びG2は、それぞれ独立に、好ましくは、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-フェニレンジイル基、ハロゲン原子及び炭素数1~4のアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの置換基で置換されていてもよい1,4-シクロヘキサンジイル基であり、より好ましくはメチル基で置換された1,4-フェニレンジイル基、無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロヘキサンジイル基であり、特に好ましくは無置換の1,4-フェニレンジイル基、又は無置換の1,4-trans-シクロへキサンジイル基である。
また、複数存在するG1及びG2のうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることが好ましく、また、L1又はL2に結合するG1及びG2のうち少なくとも1つは二価の脂環式炭化水素基であることがより好ましい。
【0057】
L1及びL2はそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra1ORa2-、-Ra3COORa4-、-Ra5OCORa6-、Ra7OC=OORa8-、-N=N-、-CRc=CRd-、又はC≡C-である。ここで、Ra1~Ra8はそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基を表し、Rc及びRdは炭素数1~4のアルキル基又は水素原子を表す。L1及びL2はそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa2-1-、-CH2-、-CH2CH2-、-COORa4-1-、又はOCORa6-1-である。ここで、Ra2-1、Ra4-1、Ra6-1はそれぞれ独立に単結合、-CH2-、-CH2CH2-のいずれかを表す。L1及びL2はそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CH2CH2-、-COO-、-COOCH2CH2-、又はOCO-である。
【0058】
B1及びB2はそれぞれ独立に、好ましくは、単結合、炭素数1~4のアルキレン基、-O-、-S-、-Ra9ORa10-、-Ra11COORa12-、-Ra13OCORa14-、又は-Ra15OC(=O)ORa16-である。ここで、Ra9~Ra16はそれぞれ独立に単結合、又は炭素数1~4のアルキレン基を表す。B1及びB2はそれぞれ独立に、より好ましくは単結合、-ORa10-1-、-CH2-、-CH2CH2-、-COORa12-1-、又はOCORa14-1-である。ここで、Ra10-1、Ra12-1、Ra14-1はそれぞれ独立に単結合、-CH2-、-CH2CH2-のいずれかを表す。B1及びB2はそれぞれ独立に、さらに好ましくは単結合、-O-、-CH2CH2-、-COO-、-COOCH2CH2-、-OCO-、又は-OCOCH2CH2-である。
【0059】
k及びlは、逆波長分散性発現の観点から2≦k+l≦6の範囲が好ましく、k+l=4であることが好ましく、k=2かつl=2であることがより好ましい。k=2かつl=2であると対称構造となるため好ましい。
【0060】
E1及びE2はそれぞれ独立に、炭素数1~17のアルカンジイル基が好ましく、炭素数4~12のアルカンジイル基がより好ましい。
【0061】
P1又はP2で表される重合性基としては、エポキシ基、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、及びオキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0062】
Arは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環、置換基を有していてもよい芳香族複素環、及び電子吸引性基から選ばれる少なくとも一つを有することが好ましい。当該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。当該芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、トリアジン環、ピロリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、及びフェナンスロリン環等が挙げられる。なかでも、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、又はベンゾフラン環を有することが好ましく、ベンゾチアゾール基を有することがさらに好ましい。また、Arに窒素原子が含まれる場合、当該窒素原子はπ電子を有することが好ましい。
【0063】
式(A)中、Arで表される2価の芳香族基に含まれるπ電子の合計数Nπは8以上が好ましく、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。また、好ましくは30以下であり、より好ましくは26以下であり、さらに好ましくは24以下である。
【0064】
Arで表される芳香族基としては、例えば以下の基が好適に挙げられる。
【0065】
【0066】
式(Ar-1)~式(Ar-23)中、*印は連結部を表し、Z0、Z1及びZ2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルキルスルフィニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~12のアルキルチオ基、炭素数1~12のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~12のN-アルキルスルファモイル基又は炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基を表す。
【0067】
Q1、Q2及びQ3は、それぞれ独立に、-CR2’R3’-、-S-、-NH-、-NR2’-、-CO-又はO-を表し、R2’及びR3’は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0068】
J1、及びJ2は、それぞれ独立に、炭素原子、又は窒素原子を表す。
【0069】
Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。
【0070】
W1及びW2は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基又はハロゲン原子を表し、mは0~6の整数を表す。
【0071】
Y1、Y2及びY3における芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等の炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む炭素数4~20の芳香族複素環基が挙げられ、フリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0072】
Y1、Y2及びY3は、それぞれ独立に、置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基又は多環系芳香族複素環基であってもよい。多環系芳香族炭化水素基は、縮合多環系芳香族炭化水素基、又は芳香環集合に由来する基をいう。多環系芳香族複素環基は、縮合多環系芳香族複素環基、又は芳香環集合に由来する基をいう。
【0073】
Z0、Z1及びZ2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルコキシ基であることが好ましく、Z0は、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基がさらに好ましく、Z1及びZ2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基がさらに好ましい。
【0074】
Q1、Q2及びQ3は、-NH-、-S-、-NR2’-、-O-が好ましく、R2’は水素原子が好ましい。中でも-S-、-O-、-NH-が特に好ましい。
【0075】
式(Ar-1)~(Ar-23)の中でも、式(Ar-6)及び式(Ar-7)が分子の安定性の観点から好ましい。
式(Ar-16)~(Ar-23)において、Y1は、これが結合する窒素原子及びZ0と共に、芳香族複素環基を形成していてもよい。芳香族複素環基としては、Arが有していてもよい芳香族複素環として前記したものが挙げられるが、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、プリン環、ピロリジン環等が挙げられる。この芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。また、Y1は、これが結合する窒素原子及びZ0と共に、前述した置換されていてもよい多環系芳香族炭化水素基又は多環系芳香族複素環基であってもよい。例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等が挙げられる。
【0076】
(式(X)で表される基を含む化合物)
式(X)は下記のとおりである。以下、式(X)で表される基を含む化合物を重合性液晶(B)ということがある。
P11-B11-E11-B12-A11-B13- (X)
【0077】
[式(X)中、P11は、重合性基を表わす。
A11は、2価の脂環式炭化水素基または2価の芳香族炭化水素基を表わす。該2価の脂環式炭化水素基および2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6アルコキシ基、シアノ基またはニトロ基で置換されていてもよく、該炭素数1~6のアルキル基および該炭素数1~6アルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。
B11は、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-NR16-、-NR16-CO-、-CO-、-CS-または単結合を表わす。R16は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表わす。
B12およびB13は、それぞれ独立に、-C≡C-、-CH=CH-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-C(=O)-NR16-、-NR16-C(=O)-、-OCH2-、-OCF2-、-CH2O-、-CF2O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-または単結合を表わす。
E11は、炭素数1~12のアルカンジイル基を表わし、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-または-CO-に置き換わっていてもよい。]
【0078】
A11の芳香族炭化水素基および脂環式炭化水素基の炭素数は、3~18の範囲であることが好ましく、5~12の範囲であることがより好ましく、5または6であることが特に好ましい。A11としては、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、1,4-フェニレン基が好ましい。
【0079】
E11としては、直鎖状の炭素数1~12のアルカンジイル基が好ましい。該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-に置き換っていてもよい。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、へキサン-1,6-ジイル基、へプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、ウンデカン-1,11-ジイル基およびドデカン-1,12-ジイル基等の炭素数1~12の直鎖状アルカンジイル基;-CH2-CH2-O-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-および-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-CH2-等が挙げられる。
B11としては、-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-が好ましく、中でも、-CO-O-がより好ましい。
B12およびB13としては、それぞれ独立に、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-が好ましく、中でも、-O-または-O-C(=O)-O-がより好ましい。
【0080】
P11で示される重合性基としては、重合反応性、特に光重合反応性が高いという点で、ラジカル重合性基またはカチオン重合性基が好ましく、取り扱いが容易な上、液晶化合物の製造自体も容易であることから、重合性基は、下記の式(P-11)~式(P-15)で表わされる基であることが好ましい。
【0081】
【0082】
[式(P-11)~(P-15)中、
R17~R21はそれぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基または水素原子を表わす。]
【0083】
式(P-11)~式(P-15)で表わされる基の具体例としては、下記式(P-16)~式(P-20)で表わされる基が挙げられる。
【0084】
【0085】
P11は、式(P-14)~式(P-20)で表わされる基であることが好ましく、ビニル基、p-スチルベン基、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましい。
P11-B11-で表わされる基が、アクリロイルオキシ基またはメタアクリロイルオキシ基であることがさらに好ましい。
【0086】
重合性液晶(B)としては、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)または式(VI)で表わされる化合物が挙げられる。
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-B16-E12-B17-P12 (I)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-A14-F11 (II)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-B15-E12-B17-P12 (III)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-A13-F11 (IV)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-B14-E12-B17-P12 (V)
P11-B11-E11-B12-A11-B13-A12-F11 (VI)
(式中、
A12~A14はそれぞれ独立に、A11と同義であり、B14~B16はそれぞれ独立に、B12と同義であり、B17は、B11と同義であり、E12は、E11と同義である。
F11は、水素原子、炭素数1~13のアルキル基、炭素数1~13のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジメチルアミノ基、ヒドロキシ基、メチロール基、ホルミル基、スルホ基(-SO3H)、カルボキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基またはハロゲン原子を表わし、該アルキル基およびアルコキシ基を構成する-CH2-は、-O-に置き換っていてもよい。)
【0087】
重合性液晶(B)の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の「3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)」、「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料」に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物、特開2010-31223号公報、特開2010-270108号公報、特開2011-6360号公報および特開2011-207765号公報記載の重合性液晶が挙げられる。
【0088】
重合性液晶(B)の具体例としては、下記式(I-1)~式(I-4)、式(II-1)~式(II-4)、式(III-1)~式(III-26)、式(IV-1)~式(IV-26)、式(V-1)~式(V-2)および式(VI-1)~式(VI-6)で表わされる化合物が挙げられる。なお、下記式中、k1およびk2は、それぞれ独立して、2~12の整数を表わす。これらの重合性液晶(B)は、その合成の容易さ、または、入手の容易さの点で、好ましい。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
円盤状の重合性液晶としては、例えば、式(W)で表される基を含む化合物(以下、重合性液晶(C)ということがある)が挙げられる。
【0099】
[式(W)中、R
40は、下記式(W-1)~(W-5)を表わす。
【0100】
【0101】
X40およびZ40は、炭素数1~12のアルカンジイル基を表わし、該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよく、該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。また、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-または-CO-に置き換わっていてもよい。
【0102】
重合性液晶(C)の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料
図6.21」に記載された化合物、特開平7-258170号公報、特開平7-30637号公報、特開平7-309807号公報、特開平8-231470号公報記載の重合性液晶が挙げられる。
【0103】
重合性液晶組成物中の重合性液晶化合物の含有量は、重合性液晶組成物の固形分100質量部に対して、例えば70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは85~98質量部であり、さらに好ましくは90~95質量部である。重合性液晶化合物の含有量が上記範囲内であれば、得られる液晶硬化膜の配向性の観点から有利である。なお、本明細書において、重合性液晶組成物の固形分とは、重合性液晶組成物から有機溶剤等の揮発性成分を除いた全ての成分を意味する。
【0104】
位相差板は、式(1)および式(2)で表される光学特性を有することが好ましい。式(1)および式(2)で表される光学特性を有する位相差板は、式(4)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層(正波長分散性1/2波長層)と、式(5)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層(正波長分散性1/4波長層)とを特定の遅相軸関係で組み合わせることで得られる。
Re(450)/Re(550)≦1.00 (1)
1.00≦Re(650)/Re(550) (2)
100nm<Re(550)<160nm (4)
200nm<Re(550)<320nm (5)
Re(450)/Re(550)≧1.00 (6)
1.00≧Re(650)/Re(550) (7)
【0105】
位相差板は、好ましくは、式(1)および式(2)で表される光学特性を有する。位相差板が式(1)および式(2)で表される光学特性を有すると、可視光域における各波長の光に対して、一様な偏光変換の特性が得られ、有機EL表示装置等の表示装置の黒表示時の光漏れを抑制することができる。
【0106】
前記特定の構造を有する重合性液晶としては、例えば、前記重合性液晶(A)が挙げられる。重合性液晶(A)を、基材平面に対して光軸が水平となるように配向することで、式(1)及び式(2)で表される光学特性を有する位相差膜が得られ、さらに、前記式(10)に従って膜厚を調節することで、例えば、式(4)で表される光学特性等の所望の面内位相差値を有する位相差膜を得ることができる。
100nm<Re(550)<160nm (4)
【0107】
なお、式(4)で表される光学特性を有する層を1/4波長層ともいい、式(5)で表される光学特性を有する層を1/2波長層ともいい、式(6)及び式(7)で表される光学特性を正波長分散性ともいう。式(4)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層と、式(5)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する層とを特定の遅相軸関係で組み合わせる方法としては、周知の方法が挙げられる。例えば、特開2015-163935号公報や、WO2013/137464号公報等の周知の方法が挙げられる。視野角補償の観点から好ましくは円盤状の重合性液晶化合物の重合体を含むである1/2波長層と棒状の重合性液晶化合物の重合体を含むである1/4波長層を用いることが好ましい。
【0108】
上記式(6)及び式(7)で表される光学特性を有する位相差膜は、周知の方法で得ることができる。すなわち、上記式(1)および式(2)で表される光学特性を有する位相差膜を得る方法以外の方法で得られる位相差膜は、概ね式(6)及び式(7)で表される光学特性を有する。
【0109】
1/2波長層及び1/4波長層は、面内位相差値を有することが好ましく、波長550nmにおける面内位相差値が80nm以上であることが好ましく、90nm以上であってもよく、100nm以上であってもよく、また、300nm以下であってもよく、200nm以下であってもよい。
【0110】
1/2波長層及び1/4波長層は、厚み方向の位相差値が0(ゼロ)であってもよく、厚み方向の位相差値を有していてもよい。1/2波長層及び1/4波長層の波長550nmにおける厚み方向の位相差値は、例えば10nm以上であってもよく、20nm以上であってもよく、40nm以上であってもよく、また、100nm以下であってもよく、80nm以下であってもよく、60nm以下であってもよい。
【0111】
位相差板の好適な一形態は、式(5)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する1/2波長層と、式(4)、(6)及び式(7)で表される光学特性を有する1/4波長層とからなる。
100nm<Re(550)<160nm (4)
200nm<Re(550)<320nm (5)
Re(450)/Re(550)≧1.00 (6)
1.00≧Re(650)/Re(550) (7)
1/4波長層は好ましくは式(4-1)で表される光学特性を有する層であり、1/2波長層は好ましくは式(5-1)で表される光学特性を有する層である。
130nm<Re(550)<150nm (4-1)
265nm<Re(550)<285nm (5-1)
【0112】
1/2波長層は、好ましくは重合性液晶(C)を重合させることにより形成されるコーティング層である。1/4波長層は、好ましくは重合性液晶(B)を重合させることにより形成されるコーティング層である。
【0113】
1/2波長層と1/4波長層は、それぞれの厚みが3.0μm以下である。1/2波長層と1/4波長層との厚みが、例えば3.0μm以下のように薄い構成の光学積層体においては、斜め方向から干渉ムラが視認されやすく、したがって本発明により奏される干渉ムラを低減する効果がより顕著となる。
【0114】
液晶位相差膜の厚さは、干渉膜厚計、レーザー顕微鏡または触針式膜厚計による測定によって求めることができる。
【0115】
位相差板として、上記1/2波長層と1/4波長層を組み合わせた構成以外にもチルト配向やコレステリック配向している構成についても反射防止機能を達成する構成であれば特に制限はなく、例えばWO2021/060378号公報、WO2021/132616号公報、WO2021/132624号公報等の周知の構成が挙げられる。
【0116】
位相差板として、液晶位相差膜として、上述の式(1)、(2)、(4)の関係を満たす、逆分散性の1/4波長層を1層のみ有する構成であってもよい。
【0117】
<基材>
位相差板30は、基材を有していてもよい。基材は通常透明基材である。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透明性を有する基材を意味し、透明性とは、波長380~780nmにわたる光線に対しての透過率が80%を以上となる特性をいう。基材としては、ガラス基材及びフィルム基材が挙げられ、フィルム基材が好ましい、連続的に製造できる点で長尺のロール状フィルムがより好ましい。フィルム基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシド;等のプラスチックが挙げられる。中でも光学フィルム用途で使用する際の透明性等の観点からトリアセチルセルロース、環状オレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレートのいずれかから選ばれるフィルム基材がより好ましい。
【0118】
市販のセルロースエステル基材としては、“フジタックフィルム”(富士写真フイルム株式会社製);“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が挙げられる。
市販の環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”(登録商標)(Ticona社(独)製)、“アートン”(登録商標)(JSR株式会社製)、“ゼオノア(ZEONOR)”(登録商標)、“ゼオネックス(ZEONEX)”(登録商標)(以上、日本ゼオン株式会社製)及び“アペル”(登録商標)(三井化学株式会社製)が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、溶剤キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜して、基材とすることができる。市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、“エスシーナ”(登録商標)、“SCA40”(登録商標)(以上、積水化学工業株式会社製)、“ゼオノアフィルム”(登録商標)(オプテス株式会社製)及び“アートンフィルム”(登録商標)(JSR株式会社製)が挙げられる。
【0119】
基材の厚さは、実用的な取り扱いができる程度で薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。基材の厚さは、通常、5μm~300μmであり、好ましくは10μm~200μm、より好ましくは10~50μmである。また、基材を剥離して偏光膜や位相差膜を転写することによって、さらなる薄膜化効果が得られる。
【0120】
<配向膜>
本明細書において配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。
【0121】
配向膜は、重合性液晶化合物の液晶配向を容易にする。水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向、傾斜配向等の液晶配向の状態は、配向膜および重合性液晶化合物の性質によって変化し、その組み合わせは任意に選択することができる。例えば、配向膜が配向規制力として水平配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は水平配向またはハイブリッド配向を形成することができ、垂直配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は垂直配向または傾斜配向を形成することができる。水平、垂直等の表現は、光学異方性層平面を基準とした場合の、配向した重合性液晶化合物の光軸の方向を表す。例えば、垂直配向とは光学異方性層平面に対して垂直な方向に、配向した重合性液晶化合物の光軸を有することである。ここでいう垂直とは、光学異方性層平面に対して90°±20°のことを意味する。
【0122】
配向規制力は、配向膜が配向性ポリマーから形成されている場合は、表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能であり、光配向性ポリマーから形成されている場合は、偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。また、重合性液晶化合物の、表面張力や液晶性等の物性を選択することにより、液晶配向を制御することもできる。
【0123】
基材と液晶位相差膜との間に形成される配向膜としては、配向膜上に液晶位相差膜を形成する際に使用される溶剤に不溶であり、また、溶剤の除去や液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーからなる配向膜、光配向膜およびグルブ(groove)配向膜、配向方向に延伸してある延伸フィルム等が挙げられ、長尺のロール状フィルムに適用する場合には、配向方向を容易に制御できる点で、光配向膜が好ましい。
【0124】
配向膜の厚さは、通常10nm~5000nmの範囲であり、好ましくは10nm~1000nmの範囲であり、より好ましくは30~300nmである。
【0125】
ラビング配向膜に用いられる配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル類等が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。これらの配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0126】
ラビングする方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0127】
光配向膜は、光反応性基を有するポリマーやオリゴマーまたはモノマーからなる。光配向膜は、偏光を照射することで配向規制力が得られる。照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点で光配向膜がより好ましい。
【0128】
光反応性基とは、光を照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応、または光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。当該光反応性基の中でも、二量化反応または光架橋反応を起こすものが、配向性に優れる点で好ましい。以上のような反応を生じうる光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)、および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基がより好ましい。
【0129】
C=C結合を有する光反応性基としては例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基等が挙げられる。反応性の制御が容易であるという点や光配向時の配向規制力発現の観点から、カルコン基およびシンナモイル基が好ましい。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基および芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基およびホルマザン基等や、アゾキシベンゼンを基本構造とするものが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基等が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基およびハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。
【0130】
偏光を照射するには、膜面から直接偏光を照射する形式でも、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であることが特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外光)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArF等の紫外光レーザー等が挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプおよびメタルハライドランプがより好ましい。これらのランプは、波長313nmの紫外光の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光を照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラー等の偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0131】
<偏光膜形成用組成物、液晶位相差膜形成用組成物>
偏光膜形成用組成物又は液晶位相差膜形成用組成物(以下、光学異方性層形成用組成物ともいう)はさらに、溶剤やレベリング剤、重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤、架橋剤、密着剤等の反応性添加剤を含んでいても良く、溶剤やレベリング剤を含む事が加工性の観点から好ましい。
【0132】
(溶剤)
光学異方性層形成用組成物は溶剤を含有してよい。一般に重合性液晶化合物は粘度が高いため、溶剤に溶解させた光学異方性層形成用組成物とすることで塗布が容易になり、結果として光学異方性層の形成がし易くなる場合が多い。溶剤としては、重合性液晶化合物を完全に溶解し得るものが好ましく、また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
【0133】
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトンまたはプロピレングリコールメチルエーテルアセテートおよび乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサンおよびヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフランおよびジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルムおよびクロロベンゼン等の塩素含有溶剤;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルミアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶剤等が挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
溶剤の含有量は、前記光学異方性層形成用組成物の総量に対して50~98質量%が好ましい。換言すると、光学異方性層形成用組成物における固形分の含有量は、2~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。該固形分の含有量が50質量%以下であると、光学異方性層形成用組成物の粘度が低くなることから、光学異方性層の厚さが略均一になることで、当該光学異方性層に干渉ムラが生じにくくなる傾向がある。また、かかる固形分の含有量は、製造しようとする光学異方性層の厚さを考慮して定めることができる。
【0135】
(レベリング剤)
光学異方性層形成用組成物には、レベリング剤を含有させてもよい。レベリング剤とは、組成物の流動性を調整し、組成物を塗布して得られる膜をより平坦にする機能を有する添加剤であり、例えば、有機変性シリコーン系、ポリアクリレート系およびパーフルオロアルキル系のレベリング剤が挙げられる。中でも、水平配向させる場合には、ポリアクリレート系レベリング剤およびパーフルオロアルキル系レベリング剤が好ましく、垂直配向させる場合には、有機変性シリコーン系レベリング剤およびパーフルオロアルキル系レベリング剤が好ましい。
【0136】
光学異方性層形成用組成物がレベリング剤を含有する場合、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~3質量部である。レベリング剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させることが容易であり、かつ得られる光学異方性層がより平滑となる傾向がある。重合性液晶化合物に対するレベリング剤の含有量が上記範囲を超えると、得られる光学異方性層に干渉ムラが生じやすい傾向がある。なお、光学異方性層形成用組成物は、レベリング剤を2種以上含有していてもよい。
【0137】
(重合開始剤)
光学異方性層形成用組成物は重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤は、重合性液晶化合物等の重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤としては、サーモトロピック液晶の相状態に依存しないという観点から、光の作用により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0138】
光重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であれば、公知の光重合開始剤を用いることができる。具体的には、光の作用により活性ラジカルまたは酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤は単独または二種以上組み合わせて使用できる。
【0139】
光重合開始剤としては、公知の光重合開始剤を用いることができ、例えば、活性ラジカルを発生する光重合開始剤としては、自己開裂型のベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、アゾ系化合物等を使用でき、水素引き抜き型のベンゾフェノン系化合物、アルキルフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジルケタール系化合物、ジベンゾスベロン系化合物、アントラキノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ハロゲノアセトフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、ハロゲノビスイミダゾール系化合物、ハロゲノトリアジン系化合物、トリアジン系化合物等を使用できる。酸を発生する光重合開始剤としては、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩等を使用することができる。低温での反応効率に優れるという観点から自己開裂型の光重合開始剤が好ましく、特にアセトフェノン系化合物、ヒドロキシアセトフェノン系化合物、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物が好ましい。
【0140】
光学異方性層形成用組成物中の重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の種類およびその量に応じて適宜調節できるが、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、通常0.1~30質量部、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~8質量 部である。重合開始剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合を行うことができる。
【0141】
(増感剤)
光学異方性層形成用組成物は増感剤を含有してもよい。増感剤としては、光増感剤が好ましい。該増感剤としては、例えば、キサントンおよびチオキサントン等のキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等);アントラセンおよびアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセン等)等のアントラセン化合物;フェノチアジンおよびルブレン等が挙げられる。
【0142】
光学異方性層形成用組成物が増感剤を含有する場合、光学異方性層形成用組成物に含有される重合性液晶化合物の重合反応をより促進することができる。かかる増感剤の使用量は、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0143】
(酸化防止剤)
重合反応を安定的に進行させる観点から、光学異方性層形成用組成物は酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤により、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いをコントロールすることができる。
【0144】
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、ニトロソ系酸化防止剤から選ばれる一次酸化防止剤であってもよいし、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤から選ばれる二次酸化防止剤であったもよい。
【0145】
光学異方性層形成用組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量は、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは0.5~8質量部である。酸化防止剤は単独または2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の含有量が、上記範囲内であると、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合を行うことができる。
【0146】
(光学異方性層形成用組成物;反応性添加剤)
光学異方性層形成用組成物は、反応性添加剤を含んでもよい。反応性添加剤としては、その分子内に炭素-炭素不飽和結合や活性水素反応性基やチオール基を有するものが好ましい。なお、ここでいう「活性水素反応性基」とは、カルボキシル基(-COOH)、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH2)等の活性水素を有する基に対して反応性を有する基を意味し、グリシジル基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、アジリジン基、イミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、無水マレイン酸基等がその代表例である。反応性添加剤が有する反応性基の個数は、通常、それぞれ1~20個であり、好ましくはそれぞれ1~10個である。
【0147】
<偏光膜、液晶位相差膜>
(保護層)
偏光膜又は液晶位相差膜(以下、光学異方性層ともいう)は、さらに保護層を有していても良い。光学異方性層を粘接着剤等によって別のフィルムに接着積層させるような場合に、保護層を有する事で光学異方性層中の未反応の重合性液晶化合物や二色性色素等の低分子成分が別の層へ拡散する事を防止する事ができる。
【0148】
保護層は光学異方性層中の未反応の重合性液晶化合物や二色性色素等の低分子成分が別の層へ拡散する事を防止する事ができるのであれば薄い事が好ましい。好ましい膜厚としては、0.1μm以上10μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上3μm以下である。
【0149】
保護層は架橋密度が高いポリマーか親水性相互作用の高い水溶性ポリマーが好ましい。例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ウレタン樹脂、及びメラミン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含んでなる。これらの中でも、硬化性が高く形成しやすい観点から、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ウレタン樹脂、及びメラミン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含んでなることが好ましく、アクリル樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含んでなることがより好ましい。また、親水性の観点からポリビニルアルコール樹脂が好ましい。
【0150】
<光学異方性層の製造方法>
光学異方性層は、基材並びに配向膜上に光学異方性層形成用組成物を塗布することで製造することができる。光学積層体1において、直線偏光板10側に設けられる第1位相差膜は、直線偏光板10の保護フィルム11を基材として保護フィルム11上に形成することが好ましい。また第1位相差膜は、保護フィルム11上に形成された配向膜上に形成することが好ましい。このように第1位相差膜を形成することにより、直線偏光板10と位相差板30との間に粘接着層を有しない光学積層体を構成することができる。
【0151】
<光学異方性層形成用組成物の塗布>
光学異方性層形成用組成物を基材又は配向膜上に塗布する方法としては、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法、スリットコーティング法、マイクログラビア法、ダイコーティング法、インクジェット法等が挙げられる。また、ディップコーター、バーコーター、スピンコーター等のコーターを用いて塗布する方法等も挙げられる。中でも、Roll to Roll形式で連続的に塗布する場合には、マイクログラビア法、インクジェット法、スリットコーティング法、ダイコーティング法による塗布方法が好ましく、ガラス等の枚葉基材に塗布する場合には、均一性の高いスピンコーティング法が好ましい。Roll to Roll形式で塗布する場合、基材に配向膜形成用組成物等を塗布して配向膜を形成し、さらに得られた配向膜上に光学異方性層形成用組成物を連続的に塗布することもできる。
【0152】
<光学異方性層形成用組成物の乾燥>
光学異方性層形成用組成物に含まれる溶剤を除去する乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、通風乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥およびこれらを組み合わせた方法が挙げられる。中でも、自然乾燥または加熱乾燥が好ましい。乾燥温度は、0~200℃の範囲が好ましく、20~150℃の範囲がより好ましく、50~130℃の範囲がさらに好ましい。乾燥時間は、10秒間~10分間が好ましく、より好ましくは30秒間~5分間である。光配向膜形成用組成物および配向性ポリマー組成物も同様に乾燥することができる。
【0153】
<重合性液晶化合物の重合>
重合性液晶化合物を重合させる方法としては、光重合が好ましい。光重合は、基材上または配向膜上に重合性液晶化合物を含む光学異方性層形成用組成物が塗布された積層体に活性エネルギー線を照射することにより実施される。照射する活性エネルギー線としては、乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物の種類(特に、重合性液晶化合物が有する光重合性官能基の種類)、光重合開始剤を含む場合には光重合開始剤の種類、およびそれらの量に応じて適宜選択される。具体的には、可視光、紫外光、赤外光、X線、α線、β線、およびγ線からなる群より選択される一種以上の光が挙げられる。中でも、重合反応の進行を制御し易い点、および光重合装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましく、紫外光によって光重合可能なように、重合性液晶化合物の種類を選択することが好ましい。
【0154】
前記活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ、ガリウム干渉ランプ、エキシマレーザー、波長範囲380~440nmを発光するLED光源、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
【0155】
紫外線照射強度は、通常、10mW/cm2~3,000mW/cm2である。紫外線照射強度は、好ましくはカチオン重合開始剤又はラジカル重合開始剤の活性化に有効な波長領域における強度である。光を照射する時間は、通常0.1秒~10分であり、好ましくは1秒~5分であり、より好ましくは5秒~3分であり、さらに好ましくは10秒~1分である。このような紫外線照射強度で1回又は複数回照射すると、その積算光量は、10mJ/cm2~3,000mJ/cm2、好ましくは50mJ/cm2~2,000mJ/cm2、より好ましくは100mJ/cm2~1,000mJ/cm2である。積算光量がこの範囲以下である場合には、重合性液晶化合物の硬化が不十分となり、良好な転写性が得られない場合がある。逆に、積算光量がこの範囲以上である場合には、光学異方層を含む光学フィルムが着色する場合がある。
【0156】
基材上または配向膜上に重合性液晶化合物を含む光学異方性層形成用組成物が塗布された積層体に活性エネルギー線を照射する前もしくは照射時に、積層体を加温することが好ましい。重合性液晶化合物の重合度を十分高められるという観点から、紫外線照射時の温度は好ましくは30℃以上であり、より好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは、50℃以上である。また、温度が高すぎる場合、基材層にシワが生じ、位相差ムラが発生する懸念が有ることから、紫外線照射時の温度は好ましくは200℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは90℃以下であり、特に好ましくは70℃以下である。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。この範囲に加温することにより、重合性液晶化合物の重合率が高まるため、耐久性の高い光学異方性層を形成することができる。
【0157】
液晶位相差膜の重合性液晶化合物の重合について、紫外線照射強度について、その積算光量を600J/cm2~1000mJ/cm2とすることにより、バリア性を向上させることができ、光学積層体の耐熱性を向上させることができる。
【0158】
第1位相差板の製造方法において、第1液晶位相差膜の上に第2液晶位相差膜を形成する方法は限定されない。例えば、上述のようにして形成された第2液晶位相差膜を、直線偏光板10上に形成された第1液晶位相層の上に粘接着層を介して貼合することにより、または第1位相差液晶層の上に塗布して形成することにより、得ることができる。
【0159】
[粘接着層]
粘接着層は、直線偏光板10内や位相差板30内で、二つ以上の層を貼合するために用いられる層である。粘接着層は、粘接着層は、粘着剤層であってもよいし、接着層であってもよい。粘着剤層は粘着剤組成物から形成される層であり、接着剤層は接着剤組成物から形成される層である。
【0160】
接着剤組成物としては、例えば、水系接着剤組成物、加熱又は紫外線、可視光、電子線、X線等の活性エネルギー線の照射により硬化する硬化性接着剤組成物等が挙げられる。水系接着剤組成物としては、例えば、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を水に溶解したもの、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂又はウレタン樹脂を水に分散させたものが挙げられる。
硬化性接着剤組成物は、主成分として硬化性(重合性)化合物を含み、活性エネルギー線照射により硬化する活性エネルギー線硬化型接着剤組成物であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型接着剤組成物としては、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物を含むカチオン重合型接着剤組成物、硬化性化合物としてラジカル重合性化合物を含むラジカル重合型接着剤組成物、硬化性化合物としてカチオン重合性化合物とラジカル重合性化合物との両方を含むハイブリッド型接着剤組成物等が挙げられる。
【0161】
粘着剤組成物としては、光学的な透明性に優れる粘着剤組成物を特に制限なく用いることができ、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂などのベースポリマーを有する粘着剤組成物を用いることができる。また、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、熱硬化型粘着剤組成物などであってもよい。
【0162】
粘着剤層の厚みは、通常0.1~30μmであり、好ましくは3~30μmであり、さらに好ましくは5~25μmである。
【0163】
水系接着剤組成物から形成される接着剤層の厚みは、例えば5μm以下であってよく、1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.01μm以上であってよく、0.05μm以上であることが好ましい。
活性エネルギー線硬化型接着剤組成物から形成される接着剤層の厚みは、例えば、10μm以下であってよく、5μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。
【0164】
[画像表示装置]
図2は、本実施形態の画像表示装置の一例を模式的に示す概略断面図である。画像表示装置2は、
図2に示すように、前面側から、
図1に示す光学積層体1、画像表示パネル40をこの順に有する。画像表示装置2において、光学積層体1は、直線偏光板10側が位相差板30よりも前面側となるような向きで配置される。
【0165】
光学積層体1が円偏光板である場合、画像表示装置2において、外部からの入射光は、光学積層体1で反射する光と、光学積層体1を透過する光とがある。光学積層体1は、最前面に反射防止層を有する構成であってもよく、反射防止層を設けることにより、光学積層体1の表面で反射する光(以下、「外部反射光」ともいう)を低減することができる。光学積層体1を透過する光は、画像表示パネル40で反射されて反射光となり(以下、「内部反射光」ともいう)、光学積層体1に吸収される。内部反射光は、光学積層体1で全て吸収されることが望ましいものの、一部は前面から放出される(以下、かかる光を「放出内部反射光」ともいう)。
【0166】
光学積層体1は、光学積層体1を画像表示パネル40に貼合させるために用いることができる粘着剤層を後面上に備え、粘着剤層付き偏光板として構成されていてもよい。
【0167】
画像表示装置は特に限定されず、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等の画像表示装置が挙げられる。
【0168】
画像表示装置は、スマートフォン、タブレット等のモバイル機器、テレビ、デジタルフォトフレーム、電子看板、測定器または計器類、事務用機器、医療機器、電算機器等として用いることができる。
【0169】
<画像表示装置が有していてもよい他の層>
画像表示装置2は、上記した層以外の層を有していてもよい。以下、画像表示装置2が有していてもよい他の層を例示する。
【0170】
(タッチセンサパネル)
タッチセンサパネルは、画像表示装置の画面に接触(タッチ)する指などを検知(センシング)する装置(センサ)であり、画面上の指の位置を検知して画像表示装置に入力する入力手段として用いられる。タッチセンサパネルは、光学積層体1と画像表示パネル40の間に配置されてもよく、光学積層体1の前面側に配置されていてもよい。タッチセンサパネルとしては、タッチされた位置を検出可能なセンサであれば、検出方式は限定されることはなく、抵抗膜方式、静電容量結合方式、光センサ方式、超音波方式、電磁誘導結合方式、表面弾性波方式、赤外線方式等のタッチセンサパネルが例示される。低コストであることから、抵抗膜方式、静電容量結合方式のタッチセンサパネルが好適に用いられる。
【0171】
抵抗膜方式のタッチセンサパネルの一例は、互いに対向配置された一対の基板と、それら一対の基板の間に挟持された絶縁性スペーサーと、各基板の内側の前面に抵抗膜として設けられた透明導電膜と、タッチ位置検知回路とにより構成されている。抵抗膜方式のタッチセンサパネルを設けた画像表示装置においては、前面板の表面がタッチされると、対向する抵抗膜が短絡して、抵抗膜に電流が流れる。タッチ位置検知回路が、このときの電圧の変化を検知し、タッチされた位置が検出される。
【0172】
静電容量結合方式のタッチセンサパネルの一例は、基板と、基板の全面に設けられた位置検出用透明電極と、タッチ位置検知回路とにより構成されている。静電容量結合方式のタッチセンサパネルを設けた画像表示装置においては、前面板の表面がタッチされると、タッチされた点で人体の静電容量を介して透明電極が接地される。タッチ位置検知回路が、透明電極の接地を検知し、タッチされた位置が検出される。静電容量方式タッチセンサパネルは活性領域及び前記活性領域の外郭部に位置する非活性領域に区分される。活性領域は表示パネルで画面が表示される領域(表示部)に対応する領域であって、使用者のタッチが感知される領域であり、非活性領域は表示装置で画面が表示されない領域(非表示部)に対応する領域である。
【0173】
タッチセンサパネルの厚みは、例えば5μm以上2,000μm以下であってよく、5μm以上100μm以下であってもよい。
【0174】
<フレキシブル画像表示装置>
画像表示装置は、フレキシブル画像表示装置であってもよい。フレキシブル画像表示装置は、折り曲げ可能な画像表示装置である。フレキシブル画像表示装置は、光学式指紋認証システムが組み込まれ、折り曲げ可能な画像表示素子と、本発明の偏光板とを備える。折り曲げ可能な画像表示素子は、例えば有機EL表示パネルである。有機EL表示パネルに対して視認側に本発明の偏光板が配置され、折り曲げ可能に構成されている。フレキシブル画像表示装置用偏光板は、さらに前面板やタッチセンサパネルを備えていてもよい。
視認側から前面板、本発明の偏光板、およびタッチセンサパネルがこの順に積層されているか、または視認側から前面板、タッチセンサパネルおよび本発明の偏光板が、この順に積層されていることが好ましい。タッチセンサパネルよりも視認側に偏光子が存在すると、タッチセンサパネルのパターンが視認されにくくなり、結果として表示画像の視認性が良くなるので、タッチセンサパネルよりも視認側に本発明の偏光板を備える構成、すなわち、前面板、本発明の偏光板及びタッチセンサパネルをこの順で備えることがさらに好ましい。それぞれの部材は接着剤、粘着剤等を用いて積層することができる。また、前面板、偏光板、タッチセンサパネルのいずれかの層の少なくとも一面に形成された遮光パターンを具備することができる。
【0175】
視認側から前面板、本発明の偏光板および、折り曲げ可能な画像表示パネルを備えるフレキシブル画像表示装置において、前面板および本発明の偏光板は、偏光板と、前面板とを備える前面板付き偏光板を構成する。この前面板付き偏光板において、前面板は通常、偏光板の視認側に配置され、偏光板とは、例えば粘着剤または接着剤により積層される。
視認側からタッチセンサパネル、本発明の偏光板および、折り曲げ可能な画像表示パネルを備えるフレキシブル画像表示装置において、タッチセンサパネルおよび本発明の偏光板は、偏光板とタッチセンサパネルとを備えるタッチセンサパネル付き偏光板を構成する。また、視認側から、本発明の偏光板、タッチセンサパネル、および折り曲げ可能な画像表示素子を備えるフレキシブル画像表示装置において、タッチセンサパネルおよび本発明の偏光板は、偏光板とタッチセンサパネルとを備えるタッチセンサパネル付き偏光板を構成する。このタッチセンサパネル付き偏光板において、タッチセンサパネルは偏光板よりも背面側(視認側とは反対側)に配置されてもよいし、偏光板よりも視認側に配置されてもよい。タッチセンサパネルと偏光板とは、例えば粘着剤または接着剤により積層される。
【0176】
本発明の偏光板は、その視認側に前面板を積層して前面板付き偏光板として用いることもできる。前面板付き偏光板は、本発明の偏光板と、その視認側に配置された前面板とを備える。
【0177】
(前面板)
前面板としては、ガラス、樹脂フィルムの少なくとも一面にハードコート層を含んでなるもの等が挙げられる。ガラスとしては、例えば、高透過ガラスや、強化ガラスを用いることができる。特に薄い透明面材を使用する場合には、化学強化を施したガラスが好ましい。ガラスの厚みは、例えば100μm~5mmとすることができる。
【0178】
樹脂フィルムの少なくとも一面にハードコート層を含んでなる前面板は、既存のガラスのように硬直ではなく、フレキシブルな特性を有することができる。ハードコート層の厚さは特に限定されず、例えば、5μm~100μmであってもよい。
【0179】
樹脂フィルムとしては、例えばノルボルネン、多環ノルボルネン系単量体のようなシクロオレフィンを含む単量体の単位を有するシクロオレフィン系誘導体、セルロース(ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、イソブチルエステルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース)エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリシクロオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、エポキシ等の高分子で形成されたフィルムであってもよい。これらの高分子はそれぞれ単独又は2種以上混合して使用することができる。
樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルム、例えば1軸延伸フィルム、2軸延伸フィルムであってもよい。樹脂フィルムとしては、透明性及び耐熱性に優れている点で、ポリアミドイミドフィルム、ポリイミドフィルム、1軸延伸ポリエステルフィルム、2軸延伸ポリエステルフィルムが好ましく、透明性及び耐熱性に優れるとともに、フィルムの大型化に対応できる点で、シクロオレフィン系誘導体フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムが好ましく、透明性と光学的に異方性のない樹脂フィルムが比較的入手しやすい点で、トリアセチルセルロース及びイソブチルエステルセルロースフィルムが、それぞれ好ましい。樹脂フィルムの厚さは、通常5~200μmであり、好ましくは20~100μmである。
【0180】
(遮光パターン)
遮光パターンはベゼルとも呼ばれる部材であり、前面板における表示素子側に形成することができる。遮光パターンを備えることにより、表示装置を構成する各配線を隠して使用者に視認されないようにすることができる。遮光パターンの色及び材質は特に制限されることはなく、黒色、白色、金色等の多様な色を有する樹脂物質で形成することができる。一実施形態において、遮光パターンの厚さは2μm~50μmであってもよく、好ましくは4μm~30μmであってもよく、より好ましくは6μm~15μmの範囲であってもよい。また、遮光パターンと表示部の間の段差による気泡混入及び境界部の視認を抑制するために、遮光パターンに形状を付与することができる。
【実施例0181】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。実施例、比較例中の「%」及び「部」で表される配合量は、特記しない限り、質量%及び質量部である。
【0182】
[光学積層体の作製]
1.偏光フィルムの作製
(偏光フィルム1の作製)
厚み30μm、重合度2400、ケン化度99%以上のポリビニルアルコールフィルムを、熱ロール上で延伸倍率4.5倍に一軸延伸し、緊張状態を保ったまま、20℃の純水が入った膨潤浴に30秒間浸漬した。次いで純水/ヨウ化カリウム/ヨウ素/ホウ酸/ (質量比)が100/2/0.01/0.3である30℃の染色浴に120秒間浸漬した。
【0183】
次いで、純水/ヨウ化カリウム/ホウ酸/(質量比)が100/12/4である56℃の架橋浴104aに70秒浸漬した。次に、第1の架橋処理後のフィルムをヨウ化カリウム/ホウ酸/純水(質量比)が9/2.9/100である40℃ の架橋浴104bに10秒浸漬した。次に、第2架橋処理後のフィルムを5℃の純水が入った洗浄浴105に5秒間浸漬させた。その後、80℃で113秒間乾燥させ偏光フィルム1を得た。偏光フィルム1の厚みは12μmであった。
【0184】
(偏光フィルム2の作製)
乾燥方法について80℃で76秒、その次に100℃で37秒とした点以外は、偏光フィルム1と同様の方法により偏光フィルム2を作製した。偏光フィルム2の厚み12μmであった。
【0185】
(偏光フィルム3の作製)
乾燥方法について100℃で113秒とした点以外は、偏光フィルム1と同様の方法により偏光フィルム3を作製した。偏光フィルム3の厚み12μmであった。
【0186】
(偏光フィルム4の作製)
厚み30μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99
.9モル%以上)を、熱ロール上で延伸倍率4倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、40℃の純水に40秒間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.052/5.7/100の水溶液に28℃で30秒間浸漬して染色処理を行った。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が11.0/6.2/100の水溶液に70℃で120秒間浸漬した。引き続き、8℃の純水で15秒間洗浄した後、300Nの張力で保持した状態で、60℃で50秒間、次いで75℃で20秒間乾燥し偏光フィルム4を得た。偏光フィルム4の厚みは12μmであった。
【0187】
2.保護フィルムの準備
以下の保護フィルムを準備した。
・保護フィルムA:厚さ32μmのハードコート層付TACフィルム〔凸版印刷株式会社製、商品名「25KCHCN」〕
・保護フィルムB:厚さ23μmのCOPフィルム〔日本ゼオン株式会社製、商品名「ZF14」〕
・保護フィルムC:厚さ40μmのTACフィルム〔コニカミノルタ株式会社製、商品名「KC4CZ」〕
【0188】
3.直線偏光板の作製
(偏光板1~3、5)
上記で作製した偏光フィルム1~4の片面に水系接着剤を介して保護フィルムAをロール貼合機を用いて貼合した。貼合後、80℃で3分間乾燥処理を行った。偏光フィルムの片面にのみ保護フィルムが積層された直線偏光板1~3、5を得た。偏光板1~3、5は、保護フィルムA/偏光フィルム1~3、4の層構成を有するものだった。偏光板1~3、5は、光学積層体を構成する際に、偏光フィルム1~3、4側に保護フィルムを貼合して、両面に保護フィルムを有する直線偏光板として用いることもできる。
【0189】
(偏光板4)
偏光フィルム4を用い、保護フィルムB、Cを用いて、偏光板1~3、5と同様にして、偏光板4を得た。偏光板4は、保護フィルムB/偏光フィルム4/保護フィルムCの層構成を有するものであった。
【0190】
(単体透過率、偏光度及び直交色相b値の測定)
偏光板1~5について、4cm×4cmのサイズで測定用試料を切り出した。この試料を積分球付き分光光度計〔日本分光(株)製の「V7100」〕を用いて波長380~780nmの範囲における透過軸方向の透過率と吸収軸方向の透過率を測定し、視感度補正単体透過率(Ty)、視感度補正偏光度(Py)及び直交色相b値を求めた。表1に、視感度補正単体透過率(Ty)及び直交色相b値の算出結果を示す。
【0191】
4.直線偏光板上への位相差板の作製
(1)配向膜形成用組成物の調製
(PVA系配向膜形成用組成物Aの調製)
市販のポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール1000完全ケン化型、和光純薬工業株式会社製)、水を加えて100℃で1時間加熱し、固形分量2質量%(溶剤濃度98質量%)のPVA系配向膜形成用組成物を得た。
【0192】
(光配向膜形成用組成物Bの調製)
下記化学式で表される数平均分子量28000のポリマー(1) 2部とo-キシレン 98部とを混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物Bを得た。
【0193】
【0194】
(2)液晶硬化膜形成用の重合性液晶組成物Aの調製
下記構造の重合性液晶化合物A-1(86.0部)と、重合性液晶化合物A-2(14.0部)と、ポリアクリレート化合物(レベリング剤/BYK-361N;BYK-Chemie社製)(0.12部)と、2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(光重合開始剤/イルガキュア369;チバ スペシャルティケミカルズ社製)(3.0部)と、LALOMER LR9000(BASFジャパン社製)(2.0部)とを混合した。さらに、固形分濃度が9%となるようにアニソールを添加した。重合性液晶化合物A-1および重合性液晶化合物A-2を含む重合性液晶組成物Aを得た。
なお、重合性液晶化合物A-1は、特開2010-31223号公報に記載の方法で合成した。クロロホルム中で測定した重合性液晶化合物A-1の極大吸収波長λmax(LC)は350nmであった。
【0195】
【0196】
【0197】
(3)光学積層体の作製(実施例1~6、比較例1、2)
(実施例1)
保護フィルムCの表面に、PVA系配向膜形成用組成物Aをバーコーターにより塗布した。塗布膜を80℃で1分間乾燥してPVA系配向膜を形成した。
【0198】
続いて、室温25℃、相対湿度30%の環境下において、重合性液晶組成物Aを孔径0.2μmのPTFE製メンブレンフィルタ(アドバンテック東洋株式会社製、品番;T300A025A)に通し、25℃に保温したPVA系配向膜上にバーコーターを用いて塗布し、塗膜を120℃で1分間乾燥した。得られた塗膜の保護フィルムCがホットプレートに接するように、フィルムを60℃に設定したホットプレート上に設置した。ホットプレートをケースの中に入れて、窒素を1分間封入した。高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、前記重合性液晶組成物Aの塗布面に紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける照射強度:10mW/cm2、積算光量:1000mJ/cm2)し、保護フィルムC、PVA系配向膜および第1位相差膜の積層体を形成した(以上の第1位相差膜を形成工程において採用した条件を「条件1」ともいう)。得られた塗膜の厚みをレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ2μmであった。
得られた第1位相差膜の位相差値を測定したところ、Re(450)=121nm、Re(550)=139nm、Re(650)=146nmであった。
各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.87
Re(650)/Re(550)=1.05
【0199】
偏光板1の偏光フィルム面に水系接着剤を介して、保護フィルムC、PVA系配向膜および第1位相差膜の積層体における保護フィルムC面をロール貼合機を用いて貼り合せた。その後、80℃で3分間乾燥処理を行って、重合性液晶化合物が硬化した層(第1位相差膜)、PVA系配向膜、及び偏光板(保護フィルムC(位相差板側の最表面の保護フィルム)、偏光フィルムおよび保護フィルムA)がこの順に積層された実施例1の光学積層体を得た。実施例1の光学積層体において、位相差板は、第1位相差膜とPVA系配向膜とからなり、第1位相差膜は、λ/4の位相差値を示す逆分散性の位相差膜であった。
【0200】
(実施例2)
保護フィルムCの表面に、実施例1と同様にしてPVA系配向膜を形成し、さらにPVA系配向膜の上に第1位相差膜を形成した。第1位相差膜の形成において、条件1に代えて条件2(ホットプレートによる加温無しとしたこと以外は条件1と同じ)を採用した点以外は、実施例1の光学積層体と同様にして、実施例2の光学積層体を得た。
【0201】
(実施例3)
保護フィルムCの表面に、実施例1と同様にしてPVA系配向膜及び第1位相層を形成した後、偏光板2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の光学積層体を得た。
【0202】
(実施例4)
第1位相差膜の形成において、条件1に代えて条件2を採用した点以外は、実施例3の光学積層体と同様にして、実施例4の光学積層体を得た。
【0203】
(実施例5)
保護フィルムCの表面に、実施例1と同様にしてPVA系配向膜及び第1位相層を形成した後、偏光板3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の光学積層体を得た。
【0204】
(実施例6)
第1位相差膜の形成において、条件1に代えて条件2を採用した点以外は、実施例3の光学積層体と同様にして、実施例6の光学積層体を得た。
【0205】
(比較例1)
第1位相差膜を含む積層体を以下のように作製した。トリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ社製KC4CZ-TAC、厚さ40μm)を、コロナ処理装置(AGF-B10;春日電機株式会社製)を用いて出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回処理した。コロナ処理を施した基材の表面に、光配向膜形成用組成物Bをバーコーターにより塗布した。塗布膜を80℃で1分間乾燥し、偏光UV照射装置(SPOT CURE SP-7;ウシオ電機株式会社製)を用いて、100mJ/cm2の積算光量で偏光UV露光を実施した。得られた水平配向膜の厚みをレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ、100nmであった。
【0206】
続いて、室温25℃、相対湿度30%の環境下において、重合性液晶組成物Aを孔径0.2μmのPTFE製メンブレンフィルタ(アドバンテック東洋株式会社製、品番;T300A025A)に通し、25℃に保温した配向膜付き基材フィルム上にバーコーターを用いて塗布した。塗膜を120℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)した。得られた塗膜の厚みをレーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)で測定したところ2μmであった。
得られた第1位相差膜の位相差値を測定したところ、Re(450)=121nm、Re(550)=139nm、Re(650)=146nmであった。
各波長での面内位相差値の関係は以下のとおりとなった。
Re(450)/Re(550)=0.87
Re(650)/Re(550)=1.05
【0207】
このようにして、重合性液晶化合物が硬化した層(第1位相差膜)、配向膜、及び基材がこの順に積層された積層体を得た。第1位相差膜は、λ/4の位相差値を示す逆分散性の位相差膜であった。
【0208】
両面剥離フィルム付きシート状粘着剤(厚み25μm リンテック株式会社製P-3132)の一方の剥離フィルムを剥離し、得られた偏光板4の保護フィルムC側表面に粘着層剤を介して貼り合わせた後、シート状粘着剤の他方側の剥離フィルムを剥離し、粘着剤層を偏光板のTACフィルム側表面に積層させた。積層された粘着剤層を介して、重合性液晶化合物が硬化した層(第1位相差膜)、配向膜、及び基材がこの順に積層された積層体における第1位相差膜表面と偏光板における保護フィルムC面を貼り合わせた後、この積層体から基材を剥離した。さらに先の両面剥離フィルム付きシート状粘着剤の一方の剥離フィルムを剥離した後、積層体の基材を剥離した面に粘着剤層を介して貼り合わせ、積層構造が、保護フィルムB/偏光フィルム4/保護フィルムC/粘着剤層/第1位相差膜/配向膜/粘着剤層/剥離フィルムである比較例1の光学積層体を得た。
【0209】
(比較例2)
偏光板5を用いたこと以外は実施例2と同様にして、比較例2の光学積層体を得た。
【0210】
5.評価
<耐熱性評価>
実施例1~6、比較例1,2の光学積層体について、測定波長550nmで面内位相差値を測定するとともに色味を観察した。その後、温度85℃の環境下に500時間放置し取り出した光学積層体について、測定波長550nmで面内位相差値を測定するとともに色味を観察した。面内位相差値は王子計測機器株式会社の「KOBRA-WPR」により測定した。表1に位相差値変化(耐熱試験後の面内位相差値-耐熱試験前の面内位相差値)と、下記測定にしたがって評価した色変化を示す。
【0211】
<色味観察反射色相b*の測定>
Instrument SystemsGmbH製のディスプレイ評価システムDMS803を用いて傾斜角60°の偏光板吸収軸を0°とし10°毎に180°旋回させた際の反射色相b*の平均値を算出した。次に耐熱性評価を実施したサンプルも同様の測定を実施し、初期と500時間との平均値の差分の絶対値Δb*を確認した。その際のΔb*に基づいて、色変化について以下の通りに評価を行った。
A:0.5未満
B:0.5以上かつ1.0未満
C:1.0以上かつ1.5未満
D:1.5以上かつ2.0未満
E:2.0以上かつ2.5未満
F:2.5以上
【0212】