IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧 ▶ 石原産業株式会社の特許一覧

特開2024-120471化合物、有機半導体材料、有機半導体素子、及び有機太陽電池
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120471
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】化合物、有機半導体材料、有機半導体素子、及び有機太陽電池
(51)【国際特許分類】
   C07D 513/04 20060101AFI20240829BHJP
   H10K 30/50 20230101ALI20240829BHJP
【FI】
C07D513/04 301
C07D513/04 CSP
H10K30/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027288
(22)【出願日】2023-02-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(71)【出願人】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】チャタジー シュレーヤム
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 卓司
(72)【発明者】
【氏名】森山 太一
【テーマコード(参考)】
4C072
5F251
【Fターム(参考)】
4C072AA07
4C072BB02
4C072BB07
4C072CC04
4C072CC17
4C072EE12
4C072FF13
4C072GG06
4C072HH07
4C072UU10
5F251AA11
5F251XA32
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有機太陽電池等の用途に好適な新規化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で示される化合物。

(一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される化合物。
【化1】

(一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を含む、有機半導体材料。
【請求項3】
請求項2に記載の有機半導体材料を含む層を有する、有機半導体素子。
【請求項4】
請求項3に記載の有機半導体素子を含む、有機太陽電池。
【請求項5】
下記一般式(VII)で示される化合物。
【化2】

(一般式(VII)中、Rは、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、それを含む有機半導体材料、及びそれを含む有機半導体素子、並びにそれを用いた有機太陽電池に関する。更に、本発明は、前記化合物を製造するための中間体化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体材料を利用した有機太陽電池に関する研究開発が盛んに行われている。有機半導体材料を用いた場合、印刷法、スピンコート法等のウエットプロセスによる簡便な方法で薄膜状の有機半導体層を作製できる。このため、無機半導体材料に比べて製造コストが安いとともに、薄く柔軟性に優れる有機太陽電池が得られる等の利点がある。有機太陽電池の半導体層は、p型有機半導体材料及びn型有機半導体材料から構成される。
n型有機半導体材料は、分子内に高い電子受容性骨格を含有する特徴がある。例えば、特許文献1には、電子受容性を向上させる強力な電子求引性の置換基であるフッ素原子が導入されたナフトビスカルコゲナジアゾール誘導体及びその製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、フッ素原子が置換したナフトビスチアジアゾールと芳香族イミドをそれぞれ有する化合物をn型有機半導体材料として用いて、有機太陽電池の性能評価を行ったことが記載されている。
さらに、特許文献3には、固体有機半導体レーザー用に好適な特定の構造を有する化合物として、ハロゲンを有していてもよいナフトビスチアジアゾール骨格に、フルオレンが結合し、更に任意の置換基を有するものが開示されている。しかしながら、本明細書に記載の一般式(I)で示される化合物の構造は具体的に記載されていない。また、太陽電池特性については何ら考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/123207号
【特許文献2】特開2019-73468号公報
【特許文献3】国際公開第2021/161998号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載された材料を用いた太陽電池に対して、更なる光電変換効率の改良が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、高い電子受容性骨格であるフッ素原子が置換したナフトビスチアジアゾールを含む拡張π共役系化合物を探索した結果、下記一般式(I)で示される化合物が、優れたn型有機半導体特性を有し、有機半導体材料として高い光電変換効率を達成することを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下に存する。
【0006】
[1].下記一般式(I)で示される化合物。
【化1】

(一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
[2].[1]に記載の化合物を含む、有機半導体材料。
[3].[2]に記載の有機半導体材料を含む層を有する、有機半導体素子。
[4].[3]に記載の有機半導体素子を含む、有機太陽電池。
[5].下記一般式(VII)で示される化合物。
【化2】

(一般式(VII)中、Rは、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る化合物は、上記一般式(I)で示される構造を有するため、優れたn型有機半導体特性を有する。そのため、本発明に係る化合物は、有機半導体材料として有用であり、これを用いた有機太陽電池はより一層優れた光電変換効率を有する。また、本発明の上記一般式(VII)で示される化合物を中間体として用いることで、有機半導体材料に有用な化合物を生成物として簡便に、効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(化合物の構造)
本発明の化合物は、一般式(I)で示される。
【0009】
【化3】
【0010】
上記一般式(I)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。ここで、Rの炭素原子数は、1-20であれば好ましく、炭素原子数が4-10であればより好ましい。また、Rの炭素原子数が1-10であれば好ましく、炭素原子数が2-5であればより好ましい。
【0011】
(化合物の製造方法)
化合物(I)の製造方法は特に限定されない。一例として、以下の反応スキームに沿って、一般式(II)で表される市販の化合物、一般式(VIII)で表される市販の化合物、一般式(IX)で表される市販の化合物、及び一般式(X)で表される市販の化合物から合成して製造することができる。より具体的な一例は、後述の実施例に記載されている。
【0012】
【化4】
【0013】
市販の一般式(II)で表されるフルオレンから、後述する工程A、B、C、D及びEを経て、一般式(VII)で表される化合物を合成する。この化合物は、後続する反応によって生成される生成物に対して中間体としての役割を果たし得る。これとは別に、一般式(VIII)で表される市販のマロノニトリル、一般式(IX)で表される市販のイソチオシアン酸アルキル、及び一般式(X)で表される市販のブロモ酢酸エステルから、工程Fを経て、一般式(XI)で表される化合物を合成する。続いて、上記一般式(VII)で表される化合物と上記一般式(XI)で表される化合物から、工程Gを経て、(I)で表される化合物を生成物として合成する。
【0014】
後述する各種化合物の合成工程における温度の調整は、各反応が首尾よく進行するように、既知の方法及び装置を適宜選択することができる。例えば、反応対象物を加熱する場合は、ウォーターバスやオイルバス、マイクロ波などを使用することができ、反応対象物を0℃以下にする場合は、氷浴や液体窒素を使用することができる。
【0015】
<工程A>
まず、一般式(II)で示される化合物(以下「化合物(II)」という)から、一般式(III)で示される化合物(以下「化合物(III)」という)を製造する(工程A)。化合物(III)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0016】
工程Aは、具体的には、例えば、化合物(II)と、アルキル化剤とを反応(アルキル化反応)させることにより、化合物(III)を製造する。アルキル化剤としては、当該反応が進行するアルキル化剤であれば特に限定はなく、例えば、塩化アルキル、臭化アルキル、ヨウ化アルキル等が挙げられる。アルキル化剤の使用量としては、化合物(II)1当量に対して、1.5~20当量が好ましく、より好ましくは1.5~8当量の割合で使用することができる。工程Aの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば、特に限定はないが、例えば、カリウムtert-ブトキシドなどが挙げられる。塩基の使用量は、化合物(II)1当量に対して、2~20当量が好ましく、より好ましくは2~8当量の割合で使用することができる。ここで使用する塩基は、ブレンステッド塩基及びルイス塩基を含む。なお、後述する工程で使用する酸及び塩基についても、ブレンステッド酸もしくはブレンステッド塩基及び/又はルイス酸もしくはルイス塩基として定義されるものである。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられる。また、トリエチルアミンやピリジンのように、塩基性を有し、かつ、溶媒としての役割を果たすものを使用してもよい。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、より好ましくは0~120℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。工程Aにより製造された化合物(III)は、工程Bに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0017】
<工程B>
次いで、化合物(III)から、一般式(IV)で示される化合物(以下「化合物(IV)」という)を製造する(工程B)。化合物(IV)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0018】
工程Bは、具体的には、例えば、化合物(III)と臭素化剤を反応(臭素化反応)させることにより、化合物(IV)を製造する。臭素化剤としては、当該反応が進行する臭素化剤であれば特に限定はなく、例えば、臭素、N-ブロモスクシンイミド等が挙げられる。臭素化剤の使用量は、化合物(III)1当量に対して、1.5~20当量が好ましく、より好ましくは1.5~5当量の割合で使用することができる。工程Bの反応は、通常、触媒及び溶媒の存在下で行うことができる。触媒としては、当該反応が進行する触媒であれば特に限定はないが、例えば、FeClなどが挙げられる。触媒の使用量は、化合物(III)1当量に対して、0.0001~5当量が好ましく、より好ましくは0.01~0.1当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、クロロホルムやジクロロメタンなどが挙げられる。反応温度は、通常、-50~200℃が好ましく、より好ましくは-20~120℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。工程Bにより製造された化合物(IV)は、工程Cに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0019】
<工程C>
次いで、化合物(IV)から、一般式(V)で示される化合物(以下「化合物(V)」という)を製造する(工程C)。化合物(V)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0020】
工程Cは、具体的には、例えば、溶媒中で化合物(IV)にリチオ化剤を作用させた後に、N,N-ジメチルホルムアミドを反応させ、次いで酸を作用することにより、化合物(V)を製造する。
リチオ化剤としては、当該反応が進行するリチオ化剤であれば特に限定はなく、例えば、n-ブチルリチウム(n-BuLi)等が挙げられる。リチオ化剤の使用量は、化合物(IV)1当量に対して、0.5~5当量が好ましく、より好ましくは0.9~1.5当量の割合で使用することができる。N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の使用量は、化合物(IV)1当量に対して、1~5当量が好ましく、より好ましくは1~2当量の割合で使用することができる。工程Cの反応は、通常、酸及び溶媒の存在下で行うことができる。酸としては、当該反応が進行する酸であれば特に限定はないが、例えば、塩酸などが挙げられる。酸の使用量は、反応が進行するように適宜調整することができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられる。また、当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応温度は、通常、-78~50℃が好ましく、より好ましくは-78~30℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。工程Cにより製造された化合物(V)は、工程Dに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0021】
<工程D>
次いで、化合物(V)から、一般式(VI)で示される化合物(以下「化合物(VI)」という)を製造する(工程D)。化合物(VI)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0022】
工程Dは、具体的には、例えば、化合物(V)とホウ素化剤を反応(ホウ素化反応)させることにより、化合物(VI)を製造する。ホウ素化剤としては、当該反応が進行するホウ素化剤であれば特に限定はなく、例えば、ピナコールボラン、ビス(ピナコラート)ジボロン等が挙げられる。ホウ素化剤の使用量は、化合物(V)1当量に対して、1~5当量が好ましく、より好ましくは1~3当量の割合で使用することができる。工程Dの反応は、通常、触媒、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。触媒としては、当該反応が進行する触媒であれば特に限定はなく、例えば、酢酸パラジウム等が挙げられる。触媒の使用量は、化合物(V)1当量に対して、0.01~0.5当量が好ましく、より好ましくは0.01~0.3当量の割合で使用することができる。塩基の使用量は、化合物(V)1当量に対して、1~20当量が好ましく、より好ましくは1~10当量の割合で使用することができる。塩基は、当該反応が進行する塩基であれば特に限定はないが、例えば、酢酸カリウムなどが挙げられる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエンなどが挙げられる。反応温度は、通常、50~200℃が好ましく、より好ましくは80~120℃である。当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応時間は、通常、1~48時間である。工程Dにより製造された化合物(VI)は、工程Eに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0023】
<工程E>
次いで、化合物(VI)と、特許第6968373号公報を参考にして合成した4,9-ジブロモ-5,10-ジフルオロナフト[1,2-c:5,6-c’]ビス([1,2,5]チアジアゾール)(以降、これを「FNTz-Br」と記載することがある。)とから、一般式(VII)で示される化合物(以下「化合物(VII)」という)を製造する(工程E)。化合物(VII)において、Rの炭素原子数は前述の通りである。
【0024】
工程Eは、具体的には、例えば、化合物(VI)とFNTz-Brを反応(クロスカップリング反応)させることにより、化合物(VII)を製造する。工程Eの反応は、通常、触媒、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。FNTz-Brの使用量は、化合物(VI)1当量に対して、0.25~0.75当量が好ましく、より好ましくは0.25~0.5当量の割合で使用することができる。触媒としては、当該反応が進行する触媒であれば特に限定はなく、例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド等が挙げられる。触媒の使用量は、化合物(VI)1当量に対して、0.01~0.5当量が好ましく、より好ましくは0.01~0.2当量の割合で使用することができる。塩基の使用量は、化合物(VI)1当量に対して、1~20当量が好ましく、より好ましくは1~10当量の割合で使用することができる。塩基は、当該反応が進行する塩基であれば特に限定はないが、例えば、炭酸カリウムなどが挙げられる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、トルエンなどが挙げられる。反応温度は、通常、50~200℃が好ましく、より好ましくは80~180℃である。当該反応は窒素雰囲気で行うこともできる。反応時間は、通常、0.1~48時間である。工程Eで得られた化合物(VII)は、工程Gに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0025】
<工程F>
次いで、一般式(VIII)で示される化合物(以下「化合物(VIII)」という)と、一般式(IX)で示される化合物(以下「化合物(IX)」という)と、一般式(X)で示される化合物(以下「化合物(X)」という)とから、一般式(XI)で示される化合物(以下「化合物(XI)」という)を製造する(工程F)。化合物(IX)において、Rの炭素原子数は、1-40の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。ここで、Rの炭素原子数が1-10であれば好ましく、2~5がより好ましい。化合物(X)において、Rの炭素原子数は、1-4の直鎖状又は分岐状のアルキル基である。
【0026】
工程Fは、具体的には、例えば、化合物(VIII)に化合物(IX)を作用させた後に、化合物(X)と反応させることにより、化合物(XI)を製造する。工程Fの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。化合物(IX)の使用量は、化合物(VIII)1当量に対して、0.9~3当量が好ましく、より好ましくは0.9~2当量の割合で使用することができる。化合物(X)の使用量は、化合物(VIII)1当量に対して、1~3当量が好ましく、より好ましくは1~2当量の割合で使用することができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定はない。塩基の使用量は、化合物(VIII)1当量に対して、1~5当量が好ましく、より好ましくは1~2当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。また、トリエチルアミンや1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンのように、塩基性を有し、かつ、溶媒としての役割を果たすものを使用してもよい。このような塩基性を有する溶媒であれば、必ずしも上述の塩基の使用量の範囲に限定されず使用することができる。溶媒は1種類だけを用いてもよいし、複数種類の溶媒を併用してもよい。反応温度は、通常、下限が0℃以上であればよく、上限は溶媒の沸点温度であることが好ましく、より好ましくは0~120℃の温度範囲である。反応時間は、通常、1~48時間である。工程Fで製造された化合物(XI)は、工程Gに供する前に公知の方法で精製することが好ましい。
【0027】
<工程G>
次いで、化合物(XI)と、化合物(VII)とから、一般式(I)で示される化合物(以下「化合物(I)」という)を製造する(工程G)。化合物(I)において、R及びRの炭素原子数は前述の通りである。
【0028】
工程Gは、具体的には、例えば、化合物(XI)と、化合物(VII)とを反応(クネーフェナーゲル縮合反応)させることにより、化合物(I)を製造する。工程Gの反応は、通常、塩基及び溶媒の存在下で行うことができる。化合物(XI)の使用量は、化合物(VII)1当量に対して、2~20当量が好ましく、より好ましくは2~10当量の割合で使用することができる。塩基としては、当該反応が進行する塩基であれば特に限定はないが、例えば、ピペリジンやトリエチルアミンが挙げられる。塩基の使用量は、化合物(VII)1当量に対して、2~20当量が好ましく、より好ましくは2~15当量の割合で使用することができる。溶媒は、当該反応の進行を阻害しなければ特に限定はないが、例えば、クロロホルムが挙げられる。反応温度は、通常、0~200℃が好ましく、より好ましくは0~120℃である。反応時間は、通常、1~48時間である。工程Gで製造された化合物(I)は公知の方法で精製しても良い。このようにして、本発明の化合物(I)を製造することができる。
【0029】
(有機半導体材料)
本発明の化合物(I)は、有機半導体材料として用いることができる。特に、n型有機半導体材料として優れた効果を有する。
【0030】
(有機半導体素子)
前記の有機半導体材料を含有する層を基板上に形成して、有機半導体素子として用いることができる。基板としては、例えば、ガラス、樹脂を用いても良い。有機半導体材料を含む層は、溶媒に溶解した溶液を塗布したり、有機半導体材料を蒸着したりして、公知の方法で形成することができる。
【0031】
(有機半導体デバイス)
前記の有機半導体素子を用いて、必要に応じて電極や配線を施して、有機半導体デバイスとすることができる。有機半導体デバイスとしては、有機エレクトロニクス全般、例えば、有機太陽電池、有機トランジスタ(有機電界効果型トランジスタ、光トランジスタ等)、有機エレクトロルミネッセンス、センサ(光センサ等)、メモリ、電子写真用感光体、コンデンサ及び/又はバッテリー等においても使用することができる。また、プロトン導電膜の材料としても使用し得る。
【0032】
(有機太陽電池)
前記の有機半導体材料を用いて、有機太陽電池を作製することができる。有機太陽電池は、例えば、基板上に電極層、電子輸送層(電子取出層)、光電変換層(光活性層)、正孔輸送層(正孔取出層)、及び電極層を順に積層した構造を有する。本発明に係る化合物を含む有機半導体材料は、例えば、光電変換層(光活性層)を形成する。基板としては、例えば、受光性能を阻害しないよう、光透過性を有する基板が挙げられる。そのような基板としては、例えば、無色又は有色ガラス、網入りガラス、ガラスブロック等が用いられる他、無色又は有色の透明性を有する樹脂を用いても良い。また、そのような樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、及びポリメチルペンテン等が挙げられる。電極としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)電極、銀電極、アルミニウム電極、金電極、クロム電極、酸化チタン電極、酸化亜鉛電極などが挙げられる。電子輸送層(電子取出層)としては、例えば、フェナントロリン、バソキュプロイン、及びペリレン等の有機半導体分子並びにこれらの誘導体;遷移金属錯体等の有機物;LiF、CsF、CsO、CsCO、TiOx(xは0~2の任意の数字)、及びZnO等の無機化合物;Ca、Ba等の金属;等が挙げられる。正孔輸送層(正孔取出層)としては、例えば、poly(3,4-ethylenedioxythiophene)polystyrene sulfonate(PEDOT:PSS)、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフラン、ポリピリジン、及びポリカルバゾール等の導電性高分子;MoO及びWO等の無機化合物;フタロシアニン、及びポルフィリン等の有機半導体分子ならびにこれらの誘導体;遷移金属錯体;トリフェニルアミン化合物及びヒドラジン化合物等の電荷移動剤;TTF(テトラチアフルバレン)のような電荷移動錯体;等の正孔移動度が高い材料が挙げられる。
【0033】
本発明の化合物(I)をn型半導体材料として用いる場合において、発電材料として共に用いるp型半導体材料としては、ドナー型π共役高分子やドナーアクセプタ型π共役高分子等が挙げられる。ドナー型π共役高分子としては、ポリ-3-へキシルチオフェン(P3HT)、ポリ-p-フェニレンビニレン、ポリ-アルコキシ-p-フェニレンビニレン、ポリ-9,9-ジアルキルフルオレン、ポリ-p-フェニレンビニレンを挙げることができる。ドナーアクセプタ型π共役高分子中のドナーユニットとしては、ベンゾチオフェン、ジチエノシロール、N-アルキルカルバゾールが、またアクセプタユニットとしては、ベンゾチアジアゾール、チエノチオフェン、チオフェンピロールジオンなどが挙げられ、具体的には、これらのユニットを組み合わせた、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン-co-ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]チオフェン)(PTBxシリーズ)、ポリ(ジチエノ[1,2-b:4,5-b’][3,2-b:2’,3’-d]シロール-alt-(2,1,3-ベンゾチアジアゾール)類等の高分子化合物が挙げられる。これらのうちで、好ましいものとしては、ポリ({4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル}{3-フルオロ-2-[(2-エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4-b]チオフェンジイル})(PTB7)、ポリ[4,8-ジ(2-エチルヘキシルオキシ)ベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン]-2,6-ジイル-alt-((5-オクチルチエノ[3,4-c]ピロール-4,6-ジオン)-1,3-ジイル)(PBCTTPD)、ポリ[(4,4’-ビス(2-エチルヘキシル)ジチエノ[3,2-b:2’,3’-d]シロール)-2,6-ジイル-alt-(2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル)(PSBTBT)、ポリ[N-9’’-ヘプタデカニル-2,7-カルバゾール-alt-5,5-(4’,7’-ジ-2-チエニル-2’,1’,3’-ベンゾチアジアゾール)](PCDTBT)、ポリ[1-(6-{4,8-ビス[(2-エチルヘキシル)オキシ]-6-メチルベンゾ[1,2-b:4,5-b’]ジチオフェン-2-イル}{3-フルオロ-4-メチルチエノ[3,4-b]チオフェン-2-イル}-1-オクタノン)(PBDTTT-CF)が挙げられる。
【実施例0034】
以下、実施例に基づき、有機半導体材料を構成する各種化合物の合成、化合物を含む有機半導体材料を用いた有機太陽電池の特性について更に詳しく説明する。なお、これらの記載は本発明の実施形態の例示であって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
後述するように、得られた化合物の物性データとして、核磁気共鳴(NMR)スペクトルを測定し、具体的には、JEOL(日本電子株式会社)製の商品名「JMM-ECS400」又はブルカー株式会社製の商品名「ULTRASHIELD300」を用いて測定した。
ケミカルシフトは、百万分率(ppm)で表し、内部標準(0ppm)には、テトラメチルシラン(TMS)を用いた。結合定数(J)は、ヘルツで表し、略号s、d、t、q、m及びbrは、各々、一重線(singlet)、二重線(doublet)、三重線(triplet)、四重線(quartet)、多重線(multiplet)、及び広幅線(broad)を表すものとする。
【0036】
実施例で用いた全ての化学物質及びカラムクロマトグラフィー分離におけるシリカゲルは、いずれも試薬級の品質のものを用い、和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、関東化学株式会社、ナカライテスク株式会社、又はシグマアルドリッチジャパン株式会社より購入したものを用いた。
【0037】
[化合物1~5]
(化合物1の合成)
反応容器にフルオレン(4.15g、25.0mmol)、THF(30mL)、臭化オクチル(9.6mL、55mmol)、カリウム tert-ブトキシド(8.4g、75mmol)を加え、反応溶液を40℃で終夜撹拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで有機層を抽出し、有機層を水で洗浄した。得られた反応混合物はヘプタンを移動相に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して、化合物1を白色固体で得た(8.16g、収率84%)。
【0038】
得られた化合物1の物性データは次の通りである。
H-NMR(300MHz,CDCl):δ=7.71-7.68(m,2H),7.35-7.28(m,6H),1.97-1.92(m,4H),1.27-1.03(m,20H),0.81(t,J=6.9Hz,6H),0.63-0.58(m,4H)。
【0039】
(化合物2の合成)
反応容器に化合物1(8.16g、20.9mmol)、クロロホルム(27mL)、塩化鉄(III)(52mg、0.32mmol)を加え、反応溶液を0℃に冷却した。臭素(2.3mL、45mmol)を反応溶液に滴下しながら、反応溶液を室温に昇温して3時間撹拌した。反応溶液に水を加え、ヘプタンで有機層を抽出し、有機層を水で洗浄した。得られた反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過精製した。得られた粗生成物からヘプタン溶媒を減圧下で留去して、化合物2を白色固体で得た(10.8g、収率94%)。
【0040】
得られた化合物2の物性データは次の通りである。
H-NMR(300MHz,CDCl):δ=7.53-7.50(m,2H),7.46-7.43(m,4H),1.93-1.87(m,4H),1.26-1.04(m,20H),0.83(t,J=6.9Hz,6H),0.64-0.53(m,4H)。
【0041】
(化合物3の合成)
反応容器に化合物2(2.0g、3.6mmol)、ジエチルエーテル(20mL)を加え、反応容器内を窒素置換した。反応溶液を-78℃に冷却し、n-BuLi(2.5mL、4.0mmol)を加え、-78℃で30分間攪拌した。次いで、反応溶液を室温にして30分間攪拌した。反応溶液を0℃に冷却し、この温度を維持したまま、DMF(0.42mL、5.5mmol)を加え、1時間攪拌した。その後、反応溶液を室温にして終夜攪拌を行った。反応溶液を0℃に冷却し、塩酸(4mL)を加えた後、反応溶液を室温にして1時間攪拌した。反応溶液に水を加え、ジエチルエーテルで有機層を抽出し、有機層を水で洗浄した。得られた反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過精製を行い、ジエチルエーテル溶媒を減圧下で留去した。次いで、粗生成物をヘキサン:酢酸エチル(20:1)溶媒を移動相に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製して、化合物3を白色固体で得た(1.12g、収率63%)。
【0042】
得られた化合物3の物性データは次の通りである。
H-NMR(300MHz,CDCl):δ=10.06(s,1H),7.87-7.85(m,2H),7.80(d,J=8.4Hz,1H),7.64(d,J=8.4Hz,1H),7.53-7.49(m,2H),2.07-1.89(m,4H),1.33-1.03(m,20H),0.81(t,J=6.9Hz,6H),0.62-0.51(m,4H)。
【0043】
(化合物4の合成)
反応容器に化合物3(1.45g、2.91mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(1.74g、6.85mmol)、酢酸カリウム(2.32g、23.6mmol)、酢酸パラジウム(90mg、0.40mmol)、DMF(18mL)を加え、反応容器内を窒素置換した。この反応溶液を100℃で終夜攪拌した。得られた反応溶液に水を加えて、酢酸エチルで有機層を抽出し、有機層を水で洗浄した。得られた反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過精製を行い、酢酸エチル溶媒を減圧下で留去した。次いで、得られた粗生成物を、ヘキサン:酢酸エチル(20:1)溶媒を移動相とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、酢酸エチルを移動相とするゲル浸透クロマトグラフィーにより精製して、化合物4を白色固体で得た(1.16g、収率73%)。
【0044】
得られた化合物4の物性データは次の通りである。
H-NMR(300MHz,CDCl):δ=10.06(s,1H),7.89-7.82(m,4H),7.78-7.76(m,2H),2.05-2.00(m,4H),1.40(s,12H),1.21-1.01(m,20H),0.80(t,J=6.9Hz,6H),0.60-0.49(m,4H)。
【0045】
(化合物5の合成)
反応容器に化合物4(313mg、0.58mmol)、特許第6968373号公報を参考にして合成したFNTz-Br(100mg、0.23mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(26mg、0.023mmol)、2.0mol/Lの炭酸カリウム溶液(1.5mL、3mmol)及びトルエン(5mL)を加え、反応容器内を窒素置換した。マイクロ波反応装置(Biotage社製、Initiator2.5)用いて、反応溶液を160℃で15分間攪拌した。得られた反応混合物を、クロロホルムを移動相に用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより精製して、化合物5を白色固体で得た(180mg、収率70%)。
【0046】
得られた化合物5の物性データは次の通りである。
HNMR(400MHz,CDCl):δ=10.90-10.05(m,2H),8.15-7.75(m,12H),2.15-1.95(m,8H),1.27-0.93(m,40H),0.85-0.74(m,12H),0.60-0.44(m,8H)。反応式を以下に示す。
【0047】
【化5】
【0048】
[化合物6~7]
(化合物6の合成)
反応容器にマロノニトリル(1.32g、20.0mmol)、イソチオシアン酸エチル(1.92mL、22.0mmol)、アセトニトリル(50mL)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(3mL、20mmol)を加え、反応溶液を室温で30分攪拌した。この反応溶液にブロモ酢酸エチル(3.7mL、33.5mmol)を1時間かけて滴下し、3時間加熱還流した。加熱還流後の反応溶液からアセトニトリルを減圧下で留去した。その後、塩酸を加え、酢酸エチルで有機層を抽出し、有機層を水で洗浄した。得られた反応混合物を無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過精製を行い、酢酸エチル溶媒を減圧下で留去した。得られた粗生成物にメタノール溶媒を加えて、再結晶により精製及び分離を行い、化合物6を黄色固体で得た(2.07g、収率54%)。
【0049】
得られた化合物6の物性データは次の通りである。
H-NMR(300MHz,CDCl):δ=4.18(q,J=7.2Hz,2H),4.00(s,2H),1.35(t,J=7.2Hz,6H)。
【0050】
(化合物7の合成)
反応容器に化合物5(50mg、0.045mmol)、化合物6(65mg、0.34mmol)、ピペリジン(50μL、0.50mmol)、クロロホルム(5mL)を加え、反応溶液を70℃で16時間攪拌した。得られた反応混合物にエタノール溶媒を加えて析出物を分取した。得られた析出物を、クロロホルムを移動相に用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、クロロホルムを移動相に用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより精製した。得られた粗生成物をクロロホルム溶媒に溶解させた後、メタノール溶媒を加えて、析出物として化合物7を橙色固体で得た(38mg、収率58%)。
【0051】
得られた化合物7の物性データは次の通りである。
HNMR(400MHz,CDCl):δ=8.09(s,2H),8.01(s,2H),8.00(d,J=8.0Hz,4H),7.94(d,J=8.0Hz,2H),7.61(d,J=8.0Hz,2H),7.55(s,2H),4.36(q,J=7.2Hz,4H),2.19-2.02(m,8H),1.43(t,J=7.2Hz,6H),1.23-1.03(m,40H),0.90-0.65(m,20H)。反応式を以下に示す。
【0052】
【化6】
【0053】
続いて、合成した化合物7を用いて有機太陽電池を作製し、光電変換効率等の性能を評価した。
【0054】
[有機太陽電池の作製]
化合物7をn型有機半導体材料として用いて有機太陽電池の評価を行った。
p型有機半導体材料としてはP3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェンー2,5-ジイル)、Sigma-Aldrich社製)を、電極としてはITO(陰極)及び銀(陽極)を、正孔輸送材料としてはPEDOT:PSSを、電子輸送材料としては酸化亜鉛をそれぞれ用いた。
まず、ITO膜(150nm)がパターニングされたガラス基板(0.8mm)をトルエン、アセトン、純水、イソプロピルアルコールでそれぞれ15分間超音波洗浄した後、プラズマ洗浄器中に入れて、酸素ガスを流入しながら発生したプラズマにより基板表面を20分間洗浄処理した。さらに、オゾンUVを90分照射して表面を洗浄した。その後、スピンコート法製膜装置を用い、前記ITO膜がパターニングされたガラス基板上に、酢酸亜鉛二水和物、2-メトキシエタノール及び2-エタノールアミン溶液をスピンコート(4000rpm、15秒間)し、酢酸亜鉛層を形成させて200℃で30分間加熱することで酸化亜鉛層(40nm)を形成した。次いで、スピンコート法製膜装置を用い、事前にクロロベンゼン(1mL)に溶かしたP3HT(18mg)と化合物7(15mg)を含有する溶液を前述の酸化亜鉛層の上にスピンコート(600rpm、120秒間)し、有機半導体層(100nm)を形成させて、積層体を得た。次いで、スピンコート法製膜装置を用い、PEDOT:PSSの水分散体を前述の有機半導体層の上にスピンコート(3000rpm、60秒間)し、正孔輸送層(10nm)を形成させた。その後、小型高真空蒸着装置を用い、前記で作製した積層体を高真空蒸着装置中のマスクの上に置き、金属電極としての銀層(100nm)を製膜し有機太陽電池を作製した。
【0055】
[有機太陽電池の性能評価]
(実施例1)
得られた有機太陽電池に、ソーラーシュミレーター(三永電機製作所社製、XES-301S、AM1.5Gフィルター、放射照度100mW/cm)を用いて一定の光を照射し、発生する電流と電圧を測定した。
【0056】
電流密度-電圧特性をグラフ化し、それに基づいて短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)、形状因子FFを求めたところ、Jsc=9.73mA/cm、Voc=0.94、FF=0.55であった。光電変換効率(η)を、式η=(Jsc×Voc×FF)/100より算出したところ、5.03%であった。
【0057】
このように、本発明の化合物は、n型有機半導体材料として、高い光電変換効率を達成できることが実証された。本発明の化合物は、例えばフラーレン誘導体の代替となり得る。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の化合物は良好な光電変換効率等の半導体特性を有するため、有機半導体材料として有機太陽電池等の有機半導体デバイスに利用可能である。