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特開2024-120591レジスト組成物精製品の製造方法、レジストパターン形成方法、及びレジスト組成物精製品
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  • 特開-レジスト組成物精製品の製造方法、レジストパターン形成方法、及びレジスト組成物精製品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120591
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】レジスト組成物精製品の製造方法、レジストパターン形成方法、及びレジスト組成物精製品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20240829BHJP
   G03F 7/16 20060101ALI20240829BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240829BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20240829BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20240829BHJP
   B01D 71/64 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G03F7/004
G03F7/16
G03F7/004 531
G03F7/20 501
G03F7/20 521
B01D61/14 500
B01D69/00
B01D71/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027479
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】秋山 智
(72)【発明者】
【氏名】野口 拓也
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4D006
【Fターム(参考)】
2H197AA12
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197CE10
2H197HA03
2H197HA05
2H225AB03
2H225AN11P
2H225AN39P
2H225AN80P
2H225CA12
2H225CB14
2H225CB18
2H225EA01P
2H225EA02P
4D006GA02
4D006MA22
4D006MA40
4D006MC28
4D006MC30
4D006MC55
4D006PA01
4D006PB20
4D006PC80
(57)【要約】
【課題】不純物がより低減され且つレジスト膜形成時の欠陥発生を低減可能なレジスト組成物精製品の製造方法等を提供する。
【解決手段】レジスト組成物を、隣接した球状セル同士が連通した多孔質構造を有するフィルターで濾過する工程を含む、レジスト組成物精製品の製造方法。前記フィルターは、ポリイミド及びポリアミドイミドからなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含有する多孔質膜を備え、前記レジスト組成物は、金属化合物(M)と、有機溶剤成分(S)とを含有し前記金属化合物(M)は、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子の金属イオン又は前記金属原子の金属酸化物と、前記金属イオン又は前記金属酸化物に結合する結合子とを含み、前記金属イオン又は前記金属酸化物に含まれる前記金属原子の含有量が、前記レジスト組成物の総質量に対して、0.2~3質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジスト組成物を、隣接した球状セル同士が連通した多孔質構造を有するフィルターで濾過する工程を含む、
レジスト組成物精製品の製造方法であって、
前記フィルターは、ポリイミド及びポリアミドイミドからなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含有する多孔質膜を備え、
前記レジスト組成物は、金属化合物(M)と、有機溶剤成分(S)とを含有し
前記金属化合物(M)は、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子の金属イオン又は前記金属原子の金属酸化物と、前記金属イオン又は前記金属酸化物に結合する結合子とを含み、
前記金属イオン又は前記金属酸化物に含まれる前記金属原子の含有量が、前記レジスト組成物の総質量に対して、0.2~3質量%である
レジスト組成物精製品の製造方法。
【請求項2】
前記金属化合物(M)が、スズ、インジウム、アンチモン、モリブデン、バナジウム、タンタル、ハフニウム、ジルコニア、鉄、及びニオブからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のレジスト組成物精製品の製造方法。
【請求項3】
前記球状セルの平均孔径が、20~2500nmである、請求項1又は2に記載のレジスト組成物精製品の製造方法。
【請求項4】
隣接した前記球状セル同士が連通して形成される連通孔のハーフドライ法による平均孔径が1~1000nmである、請求項1又は2に記載のレジスト組成物精製品の製造方法。
【請求項5】
前記フィルターが、ポリイミド多孔質膜を備える、請求項1又は2に記載のレジスト組成物精製品の製造方法。
【請求項6】
前記請求項1又は2に記載のレジスト組成物精製品の製造方法により、レジスト組成物精製品を得る工程と、
前記レジスト組成物精製品を用いて、支持体上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、
を有する、レジストパターン形成方法。
【請求項7】
前記のレジスト膜を露光する工程において、前記レジスト膜に、EUV(極端紫外線)又はEB(電子線)を露光する、請求項6に記載のレジストパターン形成方法。
【請求項8】
金属化合物(M)と、有機溶剤成分(S)とを含有するレジスト組成物精製品であって、
前記金属化合物(M)は、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子の金属イオン又は前記金属原子の金属酸化物と、前記金属イオン又は前記金属酸化物に結合する結合子とを含み、
前記金属イオン又は前記金属酸化物に含まれる前記金属原子の含有量が、前記レジスト組成物精製品の総質量に対して、0.2~3質量%であり、
前記レジスト組成物精製品は、光散乱式液中粒子計数器によって計数される、0.135μm以上のサイズの被計数体の数が、1個/mL未満である、
レジスト組成物精製品。
【請求項9】
請求項8に記載のレジスト組成物精製品を用いて、支持体上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、
を有する、レジストパターン形成方法。
【請求項10】
前記のレジスト膜を露光する工程において、前記レジスト膜に、EUV(極端紫外線)又はEB(電子線)を露光する、請求項9に記載のレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジスト組成物精製品の製造方法、レジストパターン形成方法、及びレジスト組成物精製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子や液晶表示素子の製造においては、リソグラフィー技術の進歩により急速にパターンの微細化が進んでいる。微細化の手法としては、一般に、露光光源の短波長化(高エネルギー化)が行われている。
【0003】
レジスト材料には、これらの露光光源に対する感度、微細な寸法のパターンを再現できる解像性等のリソグラフィー特性が求められる。このような要求を満たすレジスト材料として、従来、酸の作用により現像液に対する溶解性が変化する基材成分と、露光により酸を発生する酸発生剤成分と、を含有する化学増幅型レジスト組成物が用いられている。
【0004】
最近では、より微細なパターンの再現に適したレジスト材料として、金属原子を含む化合物を基材成分とするレジスト組成物が提案されている。金属化合物を基材成分とするレジスト組成物では、露光により金属化合物の現像液に対する溶解性が低下し、ネガ型パターンを形成する。化学増幅型レジスト組成物とは異なり、酸の拡散が伴わないことから、微細パターンの形成により適している。
【0005】
例えば、特許文献1には、金属酸化物のコアに有機配位子が配位した錯体を含有するレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-102604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
金属化合物を基材成分として含有するレジスト組成物では、金属陽イオンのアグロメレーションによりゲルが発生し、レジスト膜形成の際に欠陥を引き起こす。ディフェクトの低減されたレジストパターン形成のためには、レジスト膜形成の際の欠陥の抑制が求められる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、不純物がより低減され、且つレジスト膜形成の際の欠陥の発生を低減可能な、レジスト組成物精製品の製造方法、及び前記製造方法により製造されたレジスト組成物精製品、並びに前記レジスト組成物精製品により形成されるレジストパターン形成方法を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0010】
本発明の第1の態様は、レジスト組成物を、隣接した球状セル同士が連通した多孔質構造を有するフィルターで濾過する工程を含む、レジスト組成物精製品の製造方法であって、前記フィルターは、ポリイミド及びポリアミドイミドからなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含有する多孔質膜を備え、前記レジスト組成物は、金属化合物(M)と、有機溶剤成分(S)とを含有し、前記金属化合物(M)は、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子の金属イオン又は前記金属原子の金属酸化物と、前記金属イオン又は前記金属酸化物に結合する結合子とを含み、前記金属イオン又は前記金属酸化物に含まれる前記金属原子の含有量が、前記レジスト組成物の総質量に対して、0.2~3質量%であるレジスト組成物精製品の製造方法である。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様にかかるレジスト組成物精製品の製造方法により、レジスト組成物精製品を得る工程と、前記レジスト組成物精製品を用いて、支持体上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、を有する、レジストパターン形成方法。である。
【0012】
本発明の第3の態様は、金属化合物(M)と、有機溶剤成分(S)とを含有するレジスト組成物精製品であって、前記金属化合物(M)は、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子の金属イオン又は前記金属原子の金属酸化物と、前記金属イオン又は前記金属酸化物に結合する結合子とを含み、前記金属イオン又は前記金属酸化物に含まれる前記金属原子の含有量が、前記レジスト組成物精製品の総質量に対して、0.2~3質量%であり、前記レジスト組成物精製品は、光散乱式液中粒子計数器によって計数される、0.135μm以上のサイズの被計数体の数が、1個/mL未満である、レジスト組成物精製品である。
【0013】
本発明の第4の態様は、前記第3の態様にかかるレジスト組成物精製品を用いて、支持体上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、
前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、を有することを特徴とする、レジストパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、不純物がより低減され、且つレジスト膜形成の際の欠陥の発生を低減可能な、レジスト組成物精製品の製造方法、及び前記製造方法により製造されたレジスト組成物精製品、並びに前記レジスト組成物精製品により形成されるレジストパターン形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ポリイミド系樹脂多孔質膜を構成する連通孔の一実施形態を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「置換基を有していてもよい」又は「置換基を有してもよい」と記載する場合、水素原子(-H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(-CH-)を2価の基で置換する場合との両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【0017】
「ポリイミド系樹脂」とは、ポリイミドもしくはポリアミドイミドの一方、又は両方を意味する。このポリイミド及びポリアミドイミドは、それぞれ、カルボキシ基、塩型カルボキシ基、及び-NH-結合からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有していてもよい。
ポリイミド及びポリアミドイミドの少なくとも一方を含有する多孔質膜を「ポリイミド系樹脂多孔質膜」ということがある。ポリイミドを含有する多孔質膜を「ポリイミド多孔質膜」ということがある。ポリアミドイミドを含有する多孔質膜を「ポリアミドイミド多孔質膜」ということがある。
【0018】
本明細書及び本特許請求の範囲において、化学式で表される構造によっては、不斉炭素が存在し、エナンチオ異性体(enantiomer)やジアステレオ異性体(diastereomer)が存在し得るものがある。その場合は一つの化学式でそれら異性体を代表して表す。それらの異性体は単独で用いてもよいし、混合物として用いてもよい。
【0019】
(レジスト組成物精製品の製造方法)
本発明の第1の態様にかかるレジスト組成物精製品の製造方法は、隣接した球状セル同士が連通した多孔質構造を有するフィルターで濾過する工程(以下、「工程(i)」ともいう)を含む。前記フィルターは、ポリイミド及びポリアミドイミドからなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含有する多孔質膜を備える。前記レジスト組成物は、金属化合物(M)と、有機溶剤成分(S)とを含有する。前記金属化合物(M)は、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子の金属イオン又は前記金属原子の金属酸化物と、前記金属イオン又は前記金属酸化物に結合する結合子とを含む。前記金属イオン又は前記金属酸化物に含まれる前記金属原子の含有量が、前記レジスト組成物の総質量に対して、0.2~3質量%である。
【0020】
工程(i)により、レジスト組成物から、有機金属錯体の凝集ゲルがフィルターに吸着されることにより、不純物が低減される。これにより、レジスト膜形成の際の結果の低減されたレジスト組成物精製品が得られる。
かかる製造方法によれば、特に、隣接した球状セル同士が連通した多孔質構造を有し、且つポリイミド及びポリアミドイミドからなる群より選択される少なくとも一種の樹脂を含有する多孔質膜を備えるフィルターが用いられていることで、レジスト組成物から、従来では取り除くことが困難であった有機金属錯体の凝集ゲルが充分に除去される。
加えて、工程(i)では、レジスト組成物から、不純物として金属成分も充分に除去される。この金属成分は、レジスト組成物を構成する成分中に元来含まれていることもあるが、製造装置等の配管、継ぎ手などのレジスト組成物移送経路から混入することもある。工程(i)では、例えば、製造装置等から混入しやすい鉄、ニッケル、亜鉛、クロム等を効果的に除去することができる。
【0021】
<工程(i)>
工程(i)は、レジスト組成物を、隣接した球状セル同士が連通した多孔質構造を有するフィルターで濾過する工程である。
【0022】
≪フィルター≫
本工程で用いるフィルターは、隣接した球状セル同士が連通した多孔質構造を有するものである。
例えば、かかるフィルターは、隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜の単体からなるものでもよいし、該多孔質膜とともに他の濾材が用いられたものでもよい。
他の濾材としては、例えば、ナイロン膜、ポリテトラフルオロエチレン膜、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)膜又はこれらを修飾した膜等が挙げられる。
【0023】
かかるフィルターでは、レジスト組成物の供給液と濾液とが混在せず分離するように、通液する前後の該多孔質膜の領域が好ましくはシーリングされる。このシーリングの方法としては、例えば、該多孔質膜を、光(UV)硬化による接着若しくは熱による接着(アンカー効果による接着(熱溶着等)を含む)若しくは接着剤を用いた接着等により加工する方法、又は、該多孔質膜と他の濾材とを組み込み法等により接着して加工する方法が挙げられる。かかるフィルターとしては、前記のような該多孔質膜を、熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、PFA、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド、ポリアミドイミド等)からなる外側容器に備えたものも挙げられる。
かかるフィルターにおいて、該多孔質膜の形態としては、平面状、又は、該多孔質膜の相対する辺を合わせたパイプ状が挙げられる。パイプ状の該多孔質膜は、供給液と接触する面積が増大する点から、表面がヒダ状であることが好ましい。
【0024】
・「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」について
かかるフィルターが備える、前記「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」は、隣接した球状セル同士が連通した連通孔を有する。
連通孔は、該多孔質膜に多孔質性を付与する個々の孔(セル)により形成している。かかる孔には、孔の内面のほぼ全体が曲面である孔が含まれ、これ以外の形状の孔が含まれていてもよい。
【0025】
本明細書においては、この孔の内面のほぼ全体が曲面である孔を「球状セル」又は「略球状孔」という。球状セル(略球状孔)は、孔の内面が略球状の空間を形成している。球状セルは、後述のポリイミド系樹脂多孔質膜の製造方法で用いられる微粒子が略球状である場合に容易に形成される。
「略球状」とは、真球を含む概念であるが、必ずしも真球のみに限定されず、実質的に球状であるものを含む概念である。「実質的に球状である」とは、粒子の長径を短径で除した値で表される、長径/短径によって定義される真球度が1±0.3以内であること、を意味する。ここでの球状セルは、かかる真球度が、好ましくは1±0.1以内であり、より好ましくは1±0.05以内である。
隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜においては、隣接した球状セル同士で連通孔の少なくとも一部が形成される。
【0026】
図1は、多孔質膜を構成する連通孔の一実施形態を模式的に示している。
本実施形態の多孔質膜において、球状セル1a及び球状セル1bは、それぞれの内面のほぼ全体が曲面であり、略球状の空間を形成している。
球状セル1aと球状セル1bとは隣接し、隣り合う球状セル1aと球状セル1bとの重なり部分Qが貫通した連通孔5が形成されている。そして、濾過対象物は、例えば球状セル1aから球状セル1bの方向(矢印方向)に、連通孔5内を通流する。
【0027】
このように、隣接する球状セルが相互に連通した構造を有する多孔質膜においては、複数の孔(球状セル、連通孔)が繋がり、全体として濾過対象物の流路が形成されていることが好ましい。
前記「流路」は、通常、個々の「孔」及び/又は「連通孔」が相互に連通することにより形成されている。個々の孔は、例えば、後述のポリイミド系樹脂多孔質膜の製造方法において、ポリイミド系樹脂-微粒子複合膜中に存在する、個々の微粒子、が後工程で除去されることによって形成される。また、連通孔は、後述のポリイミド系樹脂多孔質膜の製造方法において、ポリイミド系樹脂-微粒子複合膜中に存在する、個々の微粒子同士が接していた部分に、該微粒子が後工程で除去されることによって形成される、隣接する孔同士である。
多孔質膜においては、球状セルと、隣接した球状セル同士が連通した連通孔と、が形成され、多孔質の程度が高くされている。また、多孔質膜においては、球状セル又は該連通孔が多孔質膜表面に開口し、一方の表面に開口する連通孔が多孔質膜内部を連通して他方(裏側)の表面に開口し、流体が多孔質膜内部を通過し得る流路が形成されている。そして、多孔質膜によれば、濾過対象物が前記流路を流れることにより、濾過対象物に含まれる異物が濾過前の濾過対象物から取り除かれる。
【0028】
多孔質膜は、内面に曲面を有する球状セルで形成される連通孔が連続してなる流路を内部に有するため、球状セル内面の表面積が大きい。これによって、濾過対象物が、多孔質膜の内部を通過できるのみならず、個々の球状セルの曲面に接触しながら通過する際、球状セル内面との接触頻度が高まるため、濾過対象物に存在する異物が球状セル内面により吸着して、濾過対象物から異物が除去されやすくなっている。
【0029】
多孔質膜は、平均孔径が20~2500nmである球状セルが相互に連通した構造を有するものが好ましい。球状セルの平均孔径は、20~2500nmが好ましく、より好ましくは30~1000nm、さらに好ましくは50~250nmである。
【0030】
「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」が内部に有する流路は、前記の球状セル、及び前記球状セル同士の連通孔に加えて、これ以外の形状の孔又はこれを含む連通孔を有していてもよい。
また、球状セルは、その内面に、さらに凹部を有していてもよい。該凹部には、例えば、球状セルの内面に開口する、該球状セルよりも孔径が小さい孔が形成されていてもよい。
【0031】
「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」は、樹脂を含有するものが挙げられ、実質的に樹脂のみからなるものであってもよく、多孔質膜全体の、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上が樹脂であるものが挙げられる。
【0032】
該多孔質膜は、ポリイミド系樹脂を含有するものである。ポリイミド系樹脂を含有する多孔質膜は、異物除去性と強度や、ろ過前後のリソグラフィー特性の安定性との点で優れている。
該多孔質膜は、樹脂としてポリイミド及びポリアミドイミドの少なくとも一方を含有するものであり、好ましくはポリイミドを少なくとも含有するものである。該多孔質膜は、樹脂としてポリイミドのみを含有するものでもよく、ポリアミドイミドのみを含有するものでもよいが、ポリイミドのみを含有するものが好ましい。
【0033】
「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」としては、多孔質膜全体の95質量%以上がポリイミド及びポリアミドイミドの少なくとも一方であるものが特に好ましい。
以下、樹脂としてポリイミド系樹脂を含有する、隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜(ポリイミド系樹脂多孔質膜)について説明する。
【0034】
・・ポリイミド系樹脂多孔質膜
ポリイミド系樹脂は、カルボキシ基、塩型カルボキシ基、及び-NH-結合からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有するものであってもよい。
該ポリイミド系樹脂としては、前記官能基を主鎖末端以外に有するものが好ましい。前記官能基を主鎖末端以外に有する、好ましいものとしては、例えば、ポリアミド酸(ポリアミック酸)が挙げられる。
【0035】
本明細書において、「塩型カルボキシ基」とは、カルボキシ基における水素原子が陽イオン成分に置換した基を意味する。「陽イオン成分」とは、完全にイオン化した状態である陽イオン自体であってもよいし、-COOとイオン結合して事実上電荷のない状態である陽イオン構成要素であってもよいし、これら両者の中間的な状態である部分電荷を有する陽イオン構成要素であってもよい。
「陽イオン成分」がn価の金属MからなるMイオン成分である場合、陽イオン自体としてはMn+と表され、陽イオン構成要素としては「-COOM1/n」における「M1/n」で表される要素である。
【0036】
「陽イオン成分」としては、後述のエッチング液に含有される化合物として挙げられる化合物がイオン解離した場合の陽イオンが挙げられる。代表的には、イオン成分又は有機アルカリイオン成分が挙げられる。例えば、アルカリ金属イオン成分がナトリウムイオン成分の場合、陽イオン自体としてはナトリウムイオン(Na)であり、陽イオン構成要素としては「-COONa」における「Na」で表される要素である。部分電荷を有する陽イオン構成要素としては、Naδ+である。
陽イオン成分としては、特に限定されず、無機成分;NH 、N(CH 等の有機成分が挙げられる。無機成分としては、例えば、Li、Na、K等のアルカリ金属;Mg、Ca等のアルカリ土類金属等の金属元素が挙げられる。有機成分としては、例えば、有機アルカリイオン成分が挙げられる。有機アルカリイオン成分としては、NH 、例えばNR (4つのRはいずれも有機基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。)で表される第四級アンモニウムカチオン等が挙げられる。前記Rの有機基としては、アルキル基が好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がより好ましい。第四級アンモニウムカチオンとしては、N(CH 等が挙げられる。
【0037】
塩型カルボキシ基における陽イオン成分の状態は、特に限定されず、通常、ポリイミド系樹脂が存在する環境、例えば水溶液中であるか、有機溶媒中であるか、乾燥しているか等の環境に依存する。陽イオン成分がナトリウムイオン成分である場合、例えば、水溶液中であれば、-COOとNaとに解離している可能性があり、有機溶媒中であるか又は乾燥していれば、-COONaは解離していない可能性が高い。
【0038】
ポリイミド系樹脂は、カルボキシ基、塩型カルボキシ基、及び-NH-結合からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有するものであってもよいが、これらの少なくとも1つを有する場合、通常、カルボキシ基及び/又は塩型カルボキシ基と、-NH-結合と、の両方を有する。ポリイミド系樹脂は、カルボキシ基及び/又は塩型カルボキシ基に関していえば、カルボキシ基のみを有してもよいし、塩型カルボキシ基のみを有してもよいし、カルボキシ基と塩型カルボキシ基との両方を有してもよい。ポリイミド系樹脂が有するカルボキシ基と塩型カルボキシ基との比率は、同一のポリイミド系樹脂であっても、例えば、ポリイミド系樹脂が存在する環境に応じて変動し得るし、陽イオン成分の濃度にも影響される。
【0039】
ポリイミド系樹脂が有するカルボキシ基と塩型カルボキシ基との合計モル数は、ポリイミドの場合は、通常、-NH-結合と等モルである。
特に、後述のポリイミド多孔質膜の製造方法において、ポリイミドにおけるイミド結合の一部から、カルボキシ基及び/又は塩型カルボキシ基を形成する場合、実質的に同時に-NH-結合も形成される。形成されるカルボキシ基と塩型カルボキシ基との合計モル数は、形成される-NH-結合と等モルである。
ポリアミドイミド多孔質膜の製造方法の場合は、ポリアミドイミドにおけるカルボキシ基と塩型カルボキシ基との合計モル数は、-NH-結合と必ずしも等モルではなく、後述のエッチング(イミド結合の開環)工程におけるケミカルエッチング等の条件次第である。
【0040】
ポリイミド系樹脂は、例えば、下記の一般式(1)~(4)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位を有するものが好ましい。
ポリイミドである場合、下記一般式(1)で表される構成単位及び下記一般式(2)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位を有するものが好ましい。
ポリアミドイミドである場合、下記一般式(3)で表される構成単位及び下記一般式(4)で表される構成単位からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位を有するものが好ましい。
【0041】
【化1】
【0042】
【化2】
【0043】
前記の式(1)~(3)中、X~Xは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、水素原子又は陽イオン成分である。
Arは、アリール基であり、後述のポリアミド酸(ポリアミック酸)を構成する式(5)で表される構成単位、又は芳香族ポリイミドを構成する式(6)で表される構成単位においてそれぞれカルボニル基が結合しているRArで表されるアリール基と同様のものが挙げられる。
~Yは、それぞれ独立に、ジアミン化合物のアミノ基を除いた2価の残基であり、後述のポリアミド酸を構成する式(5)で表される構成単位、又は芳香族ポリイミドを構成する式(6)で表される構成単位においてそれぞれNが結合しているR’Arで表されるアリーレン基と同様のものが挙げられる。
【0044】
ポリイミド系樹脂としては、一般的なポリイミド又はポリアミドイミドが有するイミド結合(-N[-C(=O)])の一部が開環して、ポリイミドの場合は上記の一般式(1)又は一般式(2)で表される各構成単位、ポリアミドイミドの場合は上記の一般式(3)で表される構成単位をそれぞれ有することになったものであってもよい。
【0045】
ポリイミド系樹脂多孔質膜は、イミド結合の一部を開環させることで、カルボキシ基、塩型カルボキシ基、及び-NH-結合からなる群より選択される少なくとも1つの官能基を有するポリイミド系樹脂を含有するものでもよい。
【0046】
イミド結合の一部を開環させる場合の不変化率は、以下の手順(1)~(3)により求められる。
手順(1):後述のエッチング(イミド結合の開環)工程を行わないポリイミド系樹脂多孔質膜(但し、該多孔質膜を作製するためのワニスがポリアミド酸を含む場合、未焼成複合膜を焼成する工程において、実質的にイミド化反応が完結しているものとする。)について、フーリエ変換型赤外分光(FT-IR)装置により測定したイミド結合を表すピークの面積を、同じくFT-IR装置により測定したベンゼンを表すピークの面積で除した値で表される値(X01)を求める。
手順(2):前記の値(X01)を求めた多孔質膜と同一のポリマー(ワニス)を用いて得られたポリイミド系樹脂多孔質膜に対し、後述のエッチング(イミド結合の開環)工程を行った後のポリイミド系樹脂多孔質膜について、フーリエ変換型赤外分光(FT-IR)装置により測定したイミド結合を表すピークの面積を、同じくFT-IR装置により測定したベンゼンを表すピークの面積で除した値で表される値(X02)を求める。
手順(3):下式より不変化率を算出する。
不変化率(%)=(X02)÷(X01)×100
【0047】
ポリイミド系樹脂多孔質膜における不変化率は、60%以上であることが好ましく、70~99.5%であることがより好ましく、80~99%であることがさらに好ましい。
ポリアミドイミドを含有する多孔質膜の場合、-NH-結合を含むため、不変化率は100%であってもよい。
【0048】
ポリイミド多孔質膜である場合、FT-IR装置により測定したイミド結合を表すピークの面積を、同じくFT-IR装置により測定したベンゼンを表すピークの面積で除した値を「イミド化率」とする。
上記手順(2)で求められる値(X02)についてのイミド化率は、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.2~2であり、さらに好ましくは1.3~1.6であり、特に好ましくは1.30~1.55であり、最も好ましくは1.35以上1.5未満である。また、上記手順(1)で求められる値(X01)についてのイミド化率は、好ましくは1.5以上である。
かかるイミド化率は、相対的に数字が大きいほど、イミド結合の数が多い、即ち、上述の開環したイミド結合が少ないことを表す。
【0049】
・・ポリイミド系樹脂多孔質膜の製造方法
ポリイミド系樹脂多孔質膜は、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドにおけるイミド結合の一部から、カルボキシ基及び/又は塩型カルボキシ基を形成する工程(以下「エッチング工程」という。)を含む方法により製造することができる。
エッチング工程において、イミド結合の一部から、カルボキシ基及び/又は塩型カルボキシ基を形成する場合、実質的に同時に、理論上これらの基と等モルの-NH-結合も形成される。
【0050】
ポリイミド系樹脂多孔質膜が含有する樹脂が実質的にポリアミドイミドからなる場合、該多孔質膜は、エッチング工程を施さなくても既に-NH-結合を有しており、濾過対象物中の異物に対して良好な吸着力を示す。かかる場合、濾過対象物の流速を遅くする必要も特にない点で、エッチング工程は必ずしも必要ではないが、本発明の目的をより効果的に達成する点から、エッチング工程を設けることが好ましい。
【0051】
ポリイミド系樹脂多孔質膜の製造方法としては、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドを主成分とする成形膜(以下「ポリイミド系樹脂成形膜」と略称することがある。)を作製した後、エッチング工程を行うことが好ましい。
エッチング工程を施す対象である、ポリイミド系樹脂成形膜は、多孔質であってもよいし非多孔質であってもよい。
また、ポリイミド系樹脂成形膜の形態は、特に限定されないが、得られるポリイミド系樹脂多孔質膜における多孔質の程度を高めることができる点で、膜等の薄い形状であることが好ましく、多孔質であり、かつ、膜等の薄い形状であることがより好ましい。
【0052】
ポリイミド系樹脂成形膜は、上述のように、エッチング工程を施す際に非多孔質であってもよいが、その場合、エッチング工程の後に多孔質化することが好ましい。
ポリイミド系樹脂成形膜をエッチング工程の前又は後で多孔質化する方法としては、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドと、微粒子と、の複合膜(以下「ポリイミド系樹脂-微粒子複合膜」という。)から該微粒子を取り除いて多孔質化する[微粒子の除去]工程を含む方法が好ましい。
【0053】
ポリイミド系樹脂多孔質膜の製造方法としては、下記の製造方法(a)又は製造方法(b)が挙げられる。
製造方法(a):[微粒子の除去]工程の前に、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドと微粒子との複合膜にエッチング工程を施す方法
製造方法(b):[微粒子の除去]工程の後に、該工程により多孔質化したポリイミド系樹脂成形膜にエッチング工程を施す方法
これらの中でも、得られるポリイミド系樹脂多孔質膜における多孔質の程度をより高めることができる点から、後者の製造方法(b)が好ましい。
【0054】
以下に、ポリイミド系樹脂多孔質膜の製造方法の一例について説明する。
【0055】
[ワニスの調製]
予め微粒子を有機溶剤に分散させた微粒子分散液と、ポリアミド酸又はポリイミド若しくはポリアミドイミドとを任意の比率で混合する、又は、前記微粒子分散液中でテトラカルボン酸二無水物及びジアミンを重合してポリアミド酸とするか、もしくは、さらに該ポリアミド酸をイミド化してポリイミドとすることで、ワニスが調製される。
ワニスの粘度は、300~2000cP(0.3~2Pa・s)が好ましく、400~1800cP(0.4~1.8Pa・s)がより好ましい。ワニスの粘度が前記範囲内であれば、より均一に成膜をすることが可能である。
ワニスの粘度は、温度条件25℃で、E型回転粘度計により測定できる。
【0056】
上記ワニスには、焼成(焼成が任意の場合は乾燥)してポリイミド系樹脂-微粒子複合膜とした際に、微粒子/ポリイミド系樹脂の比率が好ましくは1~4(質量比)、より好ましくは1.1~3.5(質量比)となるように、樹脂微粒子と、ポリアミド酸又はポリイミド若しくはポリアミドイミドと、が混合される。
また、ポリイミド系樹脂-微粒子複合膜とした際に、微粒子/ポリイミド系樹脂の体積比率が好ましくは1.1~5となるように、より好ましくは1.1~4.5となるように、微粒子と、ポリアミド酸又はポリイミド若しくはポリアミドイミドと、が混合される。
前記の質量比又は体積比が、前記範囲の好ましい下限値以上であれば、多孔質膜として適切な密度の孔を容易に得ることができ、前記範囲の好ましい上限値以下であれば、粘度の増加や、膜中のひび割れ等の問題を生じにくく、安定的に成膜できる。
尚、本明細書において、体積比は、25℃における値を示す。
【0057】
・・・微粒子
微粒子の材料には、ワニスに用いられる有機溶剤に不溶で、成膜後選択的に除去可能なものであれば特に限定されることなく使用できる。
微粒子の材料としては、例えば、無機材料としてシリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、アルミナ(Al)、炭酸カルシウム等の金属酸化物などが挙げられる。有機材料としては、例えば、高分子量オレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリスチレン、アクリル系樹脂(メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等)、エポキシ樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエチレン等の有機高分子が挙げられる。
これらの中でも、多孔質膜に、内面に曲面を有する微小な孔が形成されやすいことから、無機材料としては、コロイダルシリカ等のシリカが好ましい。有機材料としては、PMMA等のアクリル系樹脂が好ましい。
【0058】
樹脂微粒子としては、例えば、通常の線状ポリマーや公知の解重合性ポリマーから、目的に応じて特に限定されることなく選択できる。通常の線状ポリマーは、熱分解時にポリマーの分子鎖がランダムに切断されるポリマーである。解重合性ポリマーは、熱分解時にポリマーが単量体に分解するポリマーである。何れのポリマーも、加熱時に、単量体、低分子量体、又はCOまでに分解することで、ポリイミド系樹脂膜から除去可能である。
【0059】
解重合性ポリマーの中でも、孔形成時の取り扱い上の点から、熱分解温度の低いメタクリル酸メチル若しくはメタクリル酸イソブチルの単独(ポリメチルメタクリレート若しくはポリイソブチルメタクリレート)又はこれを主成分とする共重合ポリマーが好ましい。
【0060】
樹脂微粒子の分解温度は、200~320℃が好ましく、230~260℃がより好ましい。分解温度が200℃以上であれば、ワニスに高沸点溶剤を使用した場合も成膜を行うことができ、ポリイミド系樹脂の焼成条件の選択の幅がより広くなる。分解温度が320℃以下であれば、ポリイミド系樹脂に熱的なダメージを与えることなく、樹脂微粒子のみを容易に消失させることができる。
【0061】
微粒子は、形成される多孔質膜における孔の内面に曲面を有しやすい点で、真球率が高いものが好ましい。使用する微粒子の粒径(平均直径)は、例えば、20~2500nmが好ましく、より好ましくは30~1000nm、さらに好ましくは50~250nmである。
微粒子の平均直径が前記範囲内であると、微粒子を取り除いて得られるポリイミド系樹脂多孔質膜に濾過対象物を通過させる際、該多孔質膜における孔の内面に濾過対象物を万遍なく接触させることができ、濾過対象物に含まれる異物の吸着を効率良く行うことができる。
【0062】
微粒子の粒径分布指数(d25/d75)は、好ましくは1~6、より好ましくは1.6~5、さらに好ましくは2~4である。
粒径分布指数を、前記範囲の好ましい下限値以上とすることで、多孔質膜内部に微粒子を効率的に充填させることができるため、流路を形成しやすく、流速が向上する。また、サイズの異なる孔が形成されやすくなり、異なる対流が生じて異物の吸着率がより向上する。
尚、d25及びd75は、粒度分布の累積度数がそれぞれ25%、75%の粒子径の値であり、本明細書においてはd25が粒径の大きい方となる。
【0063】
また、後述の[未焼成複合膜の成膜]において、未焼成複合膜を2層状として形成する場合、第1のワニスに用いる微粒子(B1)と、第2のワニスに用いる微粒子(B2)とは、互いに同じものを用いてもよいし異なったものを用いてもよい。基材に接する側の孔をより稠密にするには、微粒子(B1)は、微粒子(B2)よりも粒径分布指数が小さいか、又は同じであることが好ましい。あるいは、微粒子(B1)は、微粒子(B2)よりも真球率が小さいか、又は同じであることが好ましい。また、微粒子(B1)は、微粒子(B2)よりも微粒子の粒径(平均直径)が小さいことが好ましく、特に、微粒子(B1)が100~1000nm(より好ましくは100~600nm)、微粒子(B2)が500~2000nm(より好ましくは700~2000nm)のものをそれぞれ用いることが好ましい。微粒子(B1)に微粒子(B2)より小さい粒径のものを用いることで、得られるポリイミド系樹脂多孔質膜表面の孔の開口割合を高く、その径を均一にすることができ、かつ、ポリイミド系樹脂多孔質膜全体を、微粒子(B1)単独とした場合よりも多孔質膜の強度を高めることができる。
【0064】
本実施形態では、ワニスに、微粒子を均一に分散することを目的として、上記微粒子とともにさらに分散剤を添加してもよい。分散剤をさらに添加することにより、ポリアミド酸又はポリイミド若しくはポリアミドイミドと、微粒子と、をいっそう均一に混合でき、さらには、未焼成複合膜中に微粒子を均一に分布させることができる。その結果、最終的に得られるポリイミド系樹脂多孔質膜の表面に稠密な開口を設け、かつ、ポリイミド系樹脂多孔質膜の透気度が向上するように、該多孔質膜の表裏面を連通させる連通孔を効率良く形成することが可能となる。
【0065】
前記の分散剤は、特に限定されることなく、公知のものを用いることができる。前記の分散剤としては、例えば、やし脂肪酸塩、ヒマシ硫酸化油塩、ラウリルサルフェート塩、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェート塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート塩、イソプロピルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェート塩等のアニオン界面活性剤;オレイルアミン酢酸塩、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤;ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、アミドベタイン型活性剤、アラニン型活性剤、ラウリルイミノジプロピオン酸等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテルその他のポリオキシアルキレン一級アルキルエーテル又はポリオキシアルキレン二級アルキルエーテル系のノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン化硬化ヒマシ油、ソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミドその他のポリオキシアルキレン系のノニオン界面活性剤;オクチルステアレート、トリメチロールプロパントリデカノエート等の脂肪酸アルキルエステル;ポリオキシアルキレンブチルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、トリメチロールプロパントリス(ポリオキシアルキレン)エーテル等のポリエーテルポリオールが挙げられる。上記の分散剤は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0066】
・・・ポリアミド酸
本実施形態に用い得るポリアミド酸としては、任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重合して得られるものが挙げられる。
【0067】
・・・・テトラカルボン酸二無水物
テトラカルボン酸二無水物は、従来よりポリアミド酸の合成原料として用いられているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。
テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であってもよいし、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよい。
【0068】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2,6,6-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-へキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス無水フタル酸フルオレン、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0069】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロへキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0070】
上記の中では、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。その中でも、価格、入手容易性等の点から、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物及びピロメリット酸二無水物が好ましい。
テトラカルボン酸二無水物は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0071】
・・・・ジアミン
ジアミンは、従来よりポリアミド酸の合成原料として用いられているジアミンから適宜選択することができる。このジアミンは、芳香族ジアミンであってもよいし、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。ジアミンは、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0072】
芳香族ジアミンとしては、フェニル基が1個あるいは2~10個程度が結合したジアミノ化合物が挙げられる。芳香族ジアミンとして、具体的には、フェニレンジアミン又はその誘導体、ジアミノビフェニル化合物又はその誘導体、ジアミノジフェニル化合物又はその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物又はその誘導体、ジアミノナフタレン又はその誘導体、アミノフェニルアミノインダン又はその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物又はその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物又はその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体が挙げられる。
【0073】
フェニレンジアミンとしては、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミンが好ましい。フェニレンジアミン誘導体としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が結合したジアミン、例えば、2,4-ジアミノトルエン、2,4-トリフェニレンジアミン等が挙げられる。
【0074】
ジアミノビフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基がフェニル基同士で結合したものである。ジアミノビフェニル化合物としては、例えば、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル等が挙げられる。
【0075】
ジアミノジフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基が他の基を介してフェニル基同士で結合したものである。他の基としては、エーテル結合、スルホニル結合、チオエーテル結合、アルキレン基又はその誘導体基、イミノ結合、アゾ結合、ホスフィンオキシド結合、アミド結合、ウレイレン結合等が挙げられる。アルキレン基は、好ましくは炭素原子数が1~6程度であり、その誘導体基は、アルキレン基の水素原子の1つ以上がハロゲン原子等で置換されたものである。
【0076】
ジアミノジフェニル化合物としては、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルケトン、3,4’-ジアミノジフェニルケトン、2,2-ビス(p-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(p-アミノフェニル)へキサフルオロプロパン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)-1-ペンテン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)-2-ぺンテン、イミノジアニリン、4-メチル-2,4-ビス(p-アミノフェニル)ペンタン、ビス(p-アミノフェニル)ホスフィンオキシド、4,4’-ジアミノアゾベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニル尿素、4,4’-ジアミノジフェニルアミド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0077】
ジアミノトリフェニル化合物は、2つのアミノフェニル基と1つのフェニレン基がそれぞれ他の基を介して結合したものである。他の基としては、ジアミノジフェニル化合物における他の基と同様のものが挙げられる。
ジアミノトリフェニル化合物としては、1,3-ビス(m-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(p-アミノフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。
【0078】
ジアミノナフタレンとしては、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン等が挙げられる。
【0079】
アミノフェニルアミノインダンとしては、5又は6-アミノ-1-(p-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン等が挙げられる。
【0080】
ジアミノテトラフェニル化合物としては、4,4’-ビス(p-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’-ビス[p-(p’-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ビス[p-(p’-アミノフェノキシ)ビフェニル]プロパン、2,2’-ビス[p-(m-アミノフェノキシ)フェニル]ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0081】
カルド型フルオレンジアミン誘導体としては、9,9-ビスアニリンフルオレン等が挙げられる。
【0082】
脂肪族ジアミンは、例えば、炭素原子数が2~15程度のものが好ましく、具体的には、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン等が挙げられる。
【0083】
尚、ジアミンにおいては、水素原子がハロゲン原子、メチル基、メトキシ基、シアノ基、フェニル基からなる群より選択される少なくとも1種の置換基で置換された化合物であってもよい。
【0084】
上記の中でも、ジアミンとしては、フェニレンジアミン、フェニレンジアミン誘導体、ジアミノジフェニル化合物が好ましい。その中でも、価格、入手容易性等の点から、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテルが特に好ましい。
【0085】
ポリアミド酸の製造方法には、特に制限はなく、例えば、有機溶剤中で任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させる方法等の、公知の手法が用いられる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、有機溶剤中で行われる。ここで用いられる有機溶剤は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンをそれぞれ溶解することができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0086】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いられる有機溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類;クレゾール類等のフェノール系溶剤が挙げられる。
【0087】
これらの中でも、ここでの有機溶剤としては、生成するポリアミド酸の溶解性の点から、含窒素極性溶剤を用いることが好ましい。
また、成膜性等の観点から、ラクトン系極性溶剤を含む混合溶剤を用いることが好ましい。この場合、有機溶剤全体(100質量%)に対して、ラクトン系極性溶剤の含有量は、1~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
ここでの有機溶剤には、含窒素極性溶剤及びラクトン系極性溶剤からなる群より選択される1種以上を用いることが好ましく、含窒素極性溶剤とラクトン系極性溶剤との混合溶剤を用いることがより好ましい。
有機溶剤の使用量は、特に制限はないが、反応後の反応液中の、生成するポリアミド酸の含有量が5~50質量%となる程度が好ましい。
【0088】
テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの各使用量は、特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミン0.50~1.50モルを用いることが好ましく、0.60~1.30モルを用いることがより好ましく、0.70~1.20モルを用いることが特に好ましい。
【0089】
反応(重合)温度は、一般的には-10~120℃、好ましくは5~30℃である。
反応(重合)時間は、使用する原料組成により異なるが、通常は3~24(時間)である。
また、このような条件下で得られるポリアミド酸溶液の固有粘度は、好ましくは1000~100000cP(センチポアズ)(1~100Pa・s)、より好ましくは5000~70000cP(5~70Pa・s)の範囲である。
ポリアミド酸溶液の固有粘度は、温度条件25℃で、E型回転粘度計により測定できる。
【0090】
・・・ポリイミド
本実施形態に用い得るポリイミドは、ワニスに使用する有機溶剤に溶解可能であれば、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。
ポリイミドは、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基、又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
【0091】
ワニスに使用する有機溶剤に可溶なポリイミドとするため、主鎖に柔軟な屈曲構造を導入するためのモノマーの使用が有効である。
このモノマーとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;2-メチル-1,4-フェニレンジアミン、o-トリジン、m-トリジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミン;ポリシロキサンジアミン;2,3,3’,4’-オキシジフタル酸無水物、3,4,3’,4’-オキシジフタル酸無水物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0092】
また、かかる有機溶剤への溶解性を向上する、官能基を有するモノマーを使用することも有効である。このような官能基を有するモノマーとしては、例えば、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2-トリフルオロメチル-1,4-フェニレンジアミン等のフッ素化ジアミンが挙げられる。
さらに、かかる官能基を有するモノマーに加えて、溶解性を阻害しない範囲で、上記ポリアミド酸の説明の中で例示したモノマーを併用することもできる。
【0093】
ポリイミドの製造方法としては、特に制限はなく、例えば、ポリアミド酸を、化学イミド化又は加熱イミド化させて有機溶剤に溶解させる方法等の、公知の手法が挙げられる。
【0094】
本実施形態に用い得るポリイミドとしては、脂肪族ポリイミド(全脂肪族ポリイミド)、芳香族ポリイミド等が挙げられ、中でも、芳香族ポリイミドが好ましい。
芳香族ポリイミドとしては、下記一般式(5)で表される構成単位を有するポリアミド酸を、熱又は化学的に閉環反応させて得られるもの、又は、下記一般式(6)で表される構成単位を有するポリイミドを、溶媒に溶解して得られるものでよい。
式中、RArはアリール基、R’Arはアリーレン基を示す。
【0095】
【化3】
【0096】
前記の式中、RArは、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は、5~30であることが好ましく、5~20がより好ましく、6~15がさらに好ましく、6~12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。中でも、RArは、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン、ナフタレンがより好ましく、ベンゼンが特に好ましい。
前記の式中、R’Arは、前記のRArにおける芳香環から水素原子2つを除いた基が挙げられる。中でも、R’Arは、芳香族炭化水素環から水素原子2つを除いた基が好ましく、ベンゼン又はナフタレンから水素原子2つを除いた基がより好ましく、ベンゼンから水素原子2つを除いたフェニレン基が特に好ましい。
Arにおけるアリール基、R’Arにおけるアリーレン基は、それぞれ、置換基を有していてもよい。
【0097】
・・・ポリアミドイミド
本実施形態に用い得るポリアミドイミドは、ワニスに使用する有機溶剤に溶解可能であれば、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。
ポリアミドイミドは、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基、又は焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
【0098】
かかるポリアミドイミドには、任意の無水トリメリット酸とジイソシアネートとの反応により得られるものや、任意の無水トリメリット酸の反応性誘導体とジアミンとの反応により得られる前駆体ポリマーをイミド化して得られるものを、特に限定されることなく使用できる。
【0099】
上記任意の無水トリメリット酸の反応性誘導体としては、例えば、無水トリメリット酸クロライド等の無水トリメリット酸ハロゲン化物、無水トリメリット酸エステル等が挙げられる。
【0100】
上記任意のジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、o-トリジンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、4,4’-オキシビス(フェニルイソシアネート)、4,4’-ジイソシアネートジフェニルメタン、ビス[4-(4-イソシアネートフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’-ビス[4-(4-イソシアネートフェノキシ)フェニル]プロパン、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジエチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0101】
上記任意のジアミンとしては、上記ポリアミド酸の説明の中で例示したジアミンと同様のものが挙げられる。
【0102】
・・・有機溶剤
ワニスの調製に用い得る有機溶剤としては、ポリアミド酸及び/又はポリイミド系樹脂を溶解することができ、微粒子を溶解しないものであれば、特に限定されず、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いられる有機溶剤と同様のものが挙げられる。
有機溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0103】
ワニス中、有機溶剤の含有量は、好ましくは50~95質量%、より好ましくは60~85質量%とされる。ワニスにおける固形分濃度は、好ましくは5~50質量%、より好ましくは15~40質量%とされる。
【0104】
また、後述の[未焼成複合膜の成膜]において、未焼成複合膜を2層状として形成する場合、第1のワニスにおけるポリアミド酸又はポリイミド若しくはポリアミドイミド(A1)と微粒子(B1)との体積比を、19:81~45:55とすることが好ましい。微粒子(B1)が占める体積割合が全体を100とした場合に、55以上であれば、粒子が均一に分散し、また、81以下であれば、粒子同士が凝集することなく分散しやすくなる。これにより、ポリイミド系樹脂成形膜の基材側面側に孔を均一に形成できるようになる。
また、第2のワニスにおけるポリアミド酸又はポリイミド若しくはポリアミドイミド(A2)と微粒子(B2)との体積比を、20:80~50:50とすることが好ましい。微粒子(B2)が占める体積割合が全体を100とした場合に、50以上であれば、粒子単体が均一に分散しやすく、また、80以下であれば、粒子同士が凝集することなく、また、表面にひび割れ等が生じにくくなる。これにより、応力、破断伸度等の機械的特性の良好なポリイミド系樹脂多孔質膜が形成されやすくなる。
【0105】
上記の体積比について、第2のワニスは、上記第1のワニスよりも、微粒子含有比率の低いものであることが好ましい。上記条件を満たすことにより、微粒子がポリアミド酸又はポリイミド若しくはポリアミドイミド中に高度に充填されていても、未焼成複合膜、ポリイミド系樹脂-微粒子複合膜、及びポリイミド系樹脂多孔質膜の強度や柔軟性が確保される。また、微粒子含有比率の低い層を設けることで、製造コストの低減が図れる。
【0106】
ワニスを調製する際、上記した成分のほかに、帯電防止、難燃性付与、低温焼成化、離型性、塗布性等を目的として、帯電防止剤、難燃剤、化学イミド化剤、縮合剤、離型剤、表面調整剤等の公知の成分を必要に応じて配合することができる。
【0107】
[未焼成複合膜の成膜]
ポリアミド酸又はポリイミド若しくはポリアミドイミドと、微粒子と、を含有する未焼成複合膜の成膜は、例えば、基材上に上記ワニスを塗布し、常圧又は真空下で0~120℃(好ましくは0~100℃)、より好ましくは常圧下で60~95℃(さらに好ましくは65~90℃)の条件により乾燥して行われる。塗布膜厚は、例えば、好ましくは1~500μm、より好ましくは5~50μmである。
【0108】
尚、基材上には、必要に応じて離型層を設けてもよい。また、未焼成複合膜の成膜において、後述の[未焼成複合膜の焼成]の前に、水を含む溶剤への浸漬工程、乾燥工程、プレス工程をそれぞれ任意の工程として設けてもよい。
【0109】
上記離型層は、基材上に離型剤を塗布して乾燥あるいは焼き付けを行うことによって作製できる。ここで使用される離型剤は、アルキルリン酸アンモニウム塩系離型剤、フッ素系離型剤又はシリコーン系離型剤等の、公知の離型剤が特に制限なく使用可能である。
乾燥後の未焼成複合膜を基材から剥離する際、未焼成複合膜の剥離面にわずかながら離型剤が残存する。この残存した離型剤は、ポリイミド系樹脂多孔質膜表面の濡れ性や不純物混入に影響し得るため、これを取り除いておくことが好ましい。
そこで、上記基材から剥離した未焼成複合膜を、有機溶剤等を用いて洗浄することが好ましい。洗浄の方法としては、洗浄液に未焼成複合膜を浸漬した後に取り出す方法、シャワー洗浄する方法等の、公知の方法が挙げられる。
洗浄後の未焼成複合膜を乾燥するため、例えば、洗浄後の未焼成複合膜は、室温で風乾される、又は、恒温槽中で適切な設定温度まで加温される。その際、例えば、未焼成複合膜の端部をSUS製の型枠等に固定して、変形を防ぐ方法を採ることもできる。
【0110】
一方、未焼成複合膜の成膜において、離型層を設けず基材をそのまま使用する場合は、上記離型層形成の工程や、未焼成複合膜の洗浄工程を省くことができる。
【0111】
また、未焼成複合膜を2層状で成膜する場合、まず、ガラス基板等の基材上にそのまま、上記第1のワニスを塗布し、常圧又は真空下で0~120℃(好ましくは0~90℃)、より好ましくは常圧で10~100℃(さらに好ましくは10~90℃)の条件により乾燥して、膜厚1~5μmの第1未焼成複合膜の形成を行う。
続いて、第1未焼成複合膜上に、上記第2のワニスを塗布し、同様にして、0~80℃(好ましくは0~50℃)、より好ましくは常圧で10~80℃(更に好ましくは10~30℃)の条件により乾燥して、膜厚5~50μmの第2未焼成複合膜の形成を行うことで、2層状の未焼成複合膜を成膜できる。
【0112】
[未焼成複合膜の焼成]
上記[未焼成複合膜の成膜]の後、未焼成複合膜に対し、加熱処理(焼成)を施すことにより、ポリイミド系樹脂と微粒子とからなる複合膜(ポリイミド系樹脂-微粒子複合膜)が形成される。
ワニスにポリアミド酸を含む場合、本工程の[未焼成複合膜の焼成]で、イミド化を完結させることが好ましい。
【0113】
加熱処理の温度(焼成温度)は、未焼成複合膜に含有されるポリアミド酸又はポリイミド若しくはポリアミドイミドの構造や縮合剤の有無によっても異なるが、120~400℃が好ましく、より好ましくは150~375℃である。
【0114】
焼成を行うには、必ずしも前工程での乾燥と明確に操作を分ける必要はない。例えば、375℃で焼成を行う場合、室温から375℃までを3時間で昇温させた後、375℃で20分間保持させる方法や、室温から50℃刻みで段階的に375℃まで昇温(各刻みで20分間保持)し、最終的に375℃で20分間保持させる等の段階的な乾燥-熱イミド化法を用いることもできる。その際、未焼成複合膜の端部をSUS製の型枠等に固定して変形を防ぐ方法を採ってもよい。
【0115】
加熱処理(焼成)後のポリイミド系樹脂-微粒子複合膜の厚さは、例えば、1μm以上が好ましく、5~500μmがより好ましく、8~100μmであることがさらに好ましい。
ポリイミド系樹脂-微粒子複合膜の厚さは、マイクロメーターを用い、複数の箇所の厚さを測定し、これらを平均することで求めることができる。
【0116】
尚、本工程は任意の工程である。特にワニスにポリイミド又はポリアミドイミドが用いられる場合、本工程は行われなくてもよい。
【0117】
[微粒子の除去]
上記[未焼成複合膜の焼成]の後、ポリイミド系樹脂-微粒子複合膜から、微粒子を除去することにより、ポリイミド系樹脂多孔質膜が製造される。
例えば、微粒子としてシリカを採用した場合、ポリイミド系樹脂-微粒子複合膜を、低濃度のフッ化水素(HF)水に接触させることによって、シリカが溶解除去され、多孔質膜が得られる。また、微粒子が樹脂微粒子の場合、樹脂微粒子の熱分解温度以上で、かつ、ポリイミド系樹脂の熱分解温度未満の温度に加熱することによって、樹脂微粒子が分解除去され、多孔質膜が得られる。
【0118】
[エッチング(イミド結合の開環)]
エッチング工程は、ケミカルエッチング法若しくは物理的除去方法、又は、これらを組み合わせた方法により行うことができる。
【0119】
・ケミカルエッチング法について
ケミカルエッチング法には、従来公知の方法を用いることができる。
ケミカルエッチング法としては、特に限定されず、無機アルカリ溶液又は有機アルカリ溶液等のエッチング液による処理が挙げられる。中でも、無機アルカリ溶液による処理が好ましい。
無機アルカリ溶液としては、例えば、ヒドラジンヒドラートとエチレンジアミンとを含むヒドラジン溶液;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の溶液;アンモニア溶液;水酸化アルカリとヒドラジンと1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンとを主成分とするエッチング液等が挙げられる。
有機アルカリ溶液としては、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等の、アルカリ性のエッチング液が挙げられる。エッチング液におけるアルカリ濃度は、例えば0.01~20質量%である。
【0120】
上記の各エッチング液の溶媒には、純水、アルコール類を適宜選択でき、また、界面活性剤を適量添加したものを使用することもできる。
【0121】
・物理的除去方法について
物理的除去方法には、例えば、プラズマ(酸素、アルゴン等)、コロナ放電等によるドライエッチング法を用いることができる。
【0122】
上記したケミカルエッチング法又は物理的除去方法は、上記[微粒子の除去]の前に適用することも、上記[微粒子の除去]の後に適用することもできる。
中でも、ポリイミド系樹脂多孔質膜の内部の連通孔がより形成されやすく、異物の除去性が高められることから、上記[微粒子の除去]の後に適用することが好ましい。
【0123】
エッチング工程でケミカルエッチング法を行う場合、余剰のエッチング液を除去するため、本工程の後にポリイミド系樹脂多孔質膜の洗浄工程を設けてもよい。
ケミカルエッチング後の洗浄は、水洗単独でもよいが、酸洗浄と水洗とを組み合わせることが好ましい。
【0124】
また、エッチング工程の後、ポリイミド系樹脂多孔質膜表面の有機溶媒への濡れ性向上、及び、残存有機物除去のため、ポリイミド系樹脂多孔質膜に対し、加熱処理(再焼成)を行ってもよい。この加熱条件は、上記[未焼成複合膜の焼成]における条件と同様である。
【0125】
例えば上述した製造方法によって製造されるポリイミド系樹脂多孔質膜は、球状セルと、隣接した球状セル同士が連通した連通孔と、が形成され、好ましくは、一方の外部表面に開口する連通孔が、多孔質膜の内部を連通し、他方(裏側)の外部表面にまで開口して、流体が多孔質膜を通過し得る流路が確保されるような連通孔を有する。
【0126】
「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」のガーレー透気度は、例えば、該多孔質膜を通過する濾過対象物の流速をある程度高く維持しつつ、異物除去を効率良く行う点から、30秒以上が好ましい。該多孔質膜のガーレー透気度は、より好ましくは30~1000秒であり、さらに好ましくは30~600秒であり、特に好ましくは30~500秒である。ガーレー透気度が、前記範囲の好ましい上限値以下であれば、多孔質の程度(連通孔の存在比など)が充分に高いため、異物除去の効果がより得られやすくなる。
該多孔質膜のガーレー透気度は、JIS P 8117に準じて測定できる。
【0127】
「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」は、平均孔径が1~1000nmである連通孔を含むものが好ましく、より好ましくは3~300nm、さらに好ましくは5~100nmである。特に好ましくは10~40nmである。
かかる連通孔の孔径とは、連通孔の直径をいう。尚、1つの連通孔は、前述の製造方法によって、通常2つの隣接する粒子から形成されるため、該直径には、例えば、連通孔を構成する2つの孔が隣り合う方向を長手方向とすると、該長手方向に垂直な方向を直径としている場合が含まれ、(イミド結合の開環)工程を設けない場合、連通孔の孔径が小さくなる傾向にある。該多孔質膜の連通孔の平均孔径は、パームポロメーター(例えばPMI社製)を用いて、ハーフドライ法(ASTM E1294-89)に従い、試液としてパーフルオロポリエステル(商品名Galwick、界面張力値:15.9dyne/cm)を用い、測定温度25℃、測定圧力範囲0~400psiの範囲で測定した値である。
【0128】
また、「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」の球状セルの平均孔径は、20~2500nmが好ましく、より好ましくは30~1000nm、さらに好ましくは50~250nmである。ケミカルエッチングを行わない多孔質膜(例えば、ポリアミドイミド多孔質膜)については、多孔質膜の製造に使用した微粒子の平均粒径が球状セルの平均孔径とされる。
【0129】
「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」は、上述のように、好ましくは数百ナノメートル単位の平均孔径を有する孔を含有する多孔質膜である。このため、例えばナノメートル単位の微小物質をも、多孔質膜における孔及び/又は連通孔に吸着もしくは捕捉することができる。
【0130】
かかる連通孔の孔径は、「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」に多孔質性を付与する個々の孔の孔径の分布がブロードな方が、隣接する孔同士で形成される連通孔の孔径が小さくなる傾向にある。
連通孔の孔径を小さくする観点では、「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」の空隙率は、例えば、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55~90質量%、さらに好ましくは60~80質量%、特に好ましくは60~70質量%程度である。空隙率が、前記範囲の好ましい下限値以上であれば、異物除去の効果がより得られやすくなる。前記範囲の好ましい上限値以下であれば、多孔質膜の強度がより高められる。
該多孔質膜の空隙率は、該多孔質膜を製造する際に用いられる樹脂等と微粒子との合計質量に対する、微粒子の質量の割合を算出することにより求められる。
【0131】
「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」は、応力、破断伸度等の機械的特性に優れる。
フィルターが備える「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」の応力は、例えば、10MPa以上が好ましく、より好ましくは15MPa以上、さらに好ましくは15~60MPaである。
該多孔質膜の応力は、サイズ4mm×30mmの試料を作製し、試験機を用いて5mm/minの測定条件で測定した値とされる。
【0132】
また、「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」の破断伸度は、例えば、10%GL以上が好ましく、より好ましくは15%GL以上である。かかる破断伸度の上限は、例えば、60%GL以下が好ましく、より好ましくは55%GL以下である。ポリイミド系樹脂多孔質膜の空隙率を下げると、破断伸度が高くなる傾向がある。
該多孔質膜の破断伸度は、サイズ4mm×30mmの試料を作製し、試験機を用いて5mm/minの測定条件で測定した値とされる。
【0133】
「隣接した球状セル同士が連通した多孔質膜」の熱分解温度は、200℃以上が好ましく、320℃以上がより好ましく、350℃以上がさらに好ましい。
該多孔質膜の熱分解温度は、空気雰囲気下、10℃/minの昇温速度で1000℃まで昇温することで測定できる。
【0134】
本実施形態におけるフィルターは、図1に示すような隣り合う球状セル1aと球状セル1bとが連通した連通孔5が形成された多孔質膜を備えたものに限定されず、連通孔5に加えてこれ以外の形態のセル又は連通孔が形成された多孔質膜を備えるものでもよい。
これ以外の形態のセル(以下これを「他のセル」という。)としては、形状もしくは孔径が異なるセルが挙げられ、例えば楕円状セル、多面体状セル、孔径の異なる球状セル等が挙げられる。前記の「これ以外の形態の連通孔」としては、例えば、球状セルと他のセルとが連通した連通孔が挙げられる。
他のセルの形状又は孔径は、除去対象とされる不純物の種類に応じて適宜決定すればよい。球状セルと他のセルとが連通した連通孔は、上述の微粒子の材料選択、微粒子の形状制御などによって形成できる。
隣接した球状セル同士が連通した連通孔に加えてこれ以外の形態のセル又は連通孔が形成された多孔質膜を備えたフィルターによれば、濾過対象物から、種々の異物をより効率的に除去できる。
【0135】
また、本実施形態におけるフィルターは、半導体製造プロセスにおける各種薬液の供給ライン又はPOU(point of use)で、これまで設置されていた微粒子状不純物除去のためのフィルターカートリッジ等に置き換えて、又はこれと組み合わせて用いることができる。このため、従来と全く同一の装置及び操作で、濾過対象物(リソグラフィー用薬液)から、種々の異物を効率良く除去でき、高純度のレジスト組成物精製品を調製できる。
【0136】
≪レジスト組成物の濾過≫
隣接した球状セル同士が連通した多孔質構造を有するフィルターによるレジスト組成物の濾過は、差圧なしの状態で行ってもよいし(即ち、レジスト組成物をフィルターに重力のみで通過させてもよいし)、差圧を設けた状態で行ってもよい。中でも、後者が好ましく、レジスト組成物をフィルターに差圧によって通過させる操作を行うことが好ましい。
【0137】
「差圧を設けた状態」とは、フィルターが備えるポリイミド系樹脂多孔質膜の一方の側と他方の側との間に圧力差があること、をいう。
例えば、ポリイミド系樹脂多孔質膜の片方の側(レジスト組成物供給側)に圧力を加える加圧(陽圧)、ポリイミド系樹脂多孔質膜の片方の側(濾液側)を負圧にする減圧(陰圧)等が挙げられる。本実施形態における濾過工程では、前者の加圧が好ましい。
【0138】
加圧は、ポリイミド系樹脂多孔質膜を通過させる前のレジスト組成物(以下「供給液」ということがある。)が存在する、ポリイミド系樹脂多孔質膜の供給液側に圧力を加えるものである。
例えば、供給液の循環若しくは送流で生じる流液圧を利用すること、又はガスの陽圧を利用することにより、供給液側に圧力を加えることが好ましい。
流液圧は、例えばポンプ(送液ポンプ、循環ポンプ等)の積極的な流液圧付加方法により発生させることができる。ポンプとしては、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプ、定量ポンプ、ケミカルポンプ、プランジャーポンプ、べローズポンプ、ギアポンプ、真空ポンプ、エアーポンプ、液体ポンプ等が挙げられる。
ポンプによる供給液の循環若しくは送液を行う場合、通常、ポンプは、供給液槽(又は循環槽)とポリイミド系樹脂多孔質膜との間に配置される。
【0139】
流液圧としては、例えば、供給液をポリイミド系樹脂多孔質膜に重力のみで通過させる際に、該供給液によりポリイミド系樹脂多孔質膜に加えられる圧力であってもよいが、上記の積極的な流液圧付加方法により加えられる圧力であることが好ましい。
加圧に用いられるガスとしては、供給液に対して不活性又は非反応性のガスが好ましく、具体的には、窒素、又はヘリウム、アルゴン等の希ガス等が挙げられる。
供給液側に圧力を加える方法としては、ガスの陽圧を利用することが好ましい。その際、ポリイミド系樹脂多孔質膜を通過した濾液側は、減圧せず大気圧でよい。
【0140】
また、加圧は、流液圧とガスの陽圧との両方を利用するものであってもよい。また、差圧は、加圧と減圧とを組み合わせてもよく、例えば、流液圧と減圧との両方を利用するもの、ガスの陽圧と減圧との両方を利用するもの、又は、流液圧及びガスの陽圧と減圧とを利用するものであってもよい。差圧を設ける方法を組み合せる場合、製造の簡便化等の点で、流液圧とガスの陽圧との組合せ、流液圧と減圧との組合せが好ましい。
本実施形態においては、ポリイミド系樹脂多孔質膜を用いることから、差圧を設ける方法として、例えば、ガスによる陽圧等の1つの方法であっても、異物除去性能に優れる。
【0141】
減圧は、ポリイミド系樹脂多孔質膜を通過した濾液側を減圧するものであり、例えば、ポンプによる減圧であってもよいが、真空にまで減圧することが好ましい。
【0142】
レジスト組成物をフィルターに通過させる操作を、差圧を設けた状態で行う場合、その圧力差は、使用するポリイミド系樹脂多孔質膜の膜厚、空隙率若しくは平均孔径、又は所望の精製度、流量、流速、又は供給液の濃度若しくは粘度等を勘案して適宜設定される。例えば、いわゆるクロスフロー方式(ポリイミド系樹脂多孔質膜に対して平行に供給液を流す)の場合の圧力差は、例えば0.3MPa以下が好ましい。
いわゆるデッドエンド方式(ポリイミド系樹脂多孔質膜に対して交差するように供給液を流す)の場合の圧力差は、例えば1MPa以下が好ましく、0.3MPa以下がより好ましい。それぞれの圧力差の下限値は、0.01MPa以上が好ましく、0.05MPa以上がより好ましい。
【0143】
工程(i)において、レジスト組成物を、上述したポリイミド系樹脂多孔質膜を備えるフィルターに通過させる操作は、レジスト組成物(供給液)の流速を高く維持した状態で行うことができる。
この場合の流速としては、特に限定されないが、例えば、室温(20℃)において0.08MPaで加圧した場合の純水の流速が、好ましくは1mL/分以上、より好ましくは3mL/分以上、さらに好ましくは5mL/分以上、特に好ましくは10mL/分以上である。流速の上限値は、特に限定されず、例えば、50mL/分以下とされる。
本実施形態においては、上述したポリイミド系樹脂多孔質膜を備えるフィルターが用いられるため、このように流速を高く維持しながら濾過を行うことができ、レジスト組成物に含まれる異物の除去率を高められる。
【0144】
また、工程(i)において、レジスト組成物をフィルターに通過させる操作は、レジスト組成物の温度を、0~30℃に設定して行うことが好ましく、5~25℃に設定して行うことがより好ましい。
【0145】
また、工程(i)では、レジスト組成物を、ポリイミド系樹脂多孔質膜を備えるフィルターに複数回通過させても(複数回循環ろ過を行っても)よいし、ポリイミド系樹脂多孔質膜を備えるフィルターを少なくとも含む、複数のフィルターに通過させてもよい。
【0146】
また、供給液をポリイミド系樹脂多孔質膜に通過させる前に、ポリイミド系樹脂多孔質膜の洗浄、供給液に対する濡れ性向上、又は、ポリイミド系樹脂多孔質膜と供給液との表面エネルギー調整のために、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールもしくはアセトン、メチルエチルケトン等のケトン、水、供給液に含まれる溶媒又はそれらの混合物等の溶液を、ポリイミド系樹脂多孔質膜に接触させて通液してもよい。
上記溶液とポリイミド系樹脂多孔質膜とを接触させるには、上記溶液にポリイミド系樹脂多孔質膜を含浸させてもよいし浸漬させてもよい。上記溶液をポリイミド系樹脂多孔質膜と接触させることによって、例えば、ポリイミド系樹脂多孔質膜の内部の孔に溶液を浸透させることができる。上記溶液とポリイミド系樹脂多孔質膜との接触は、上述した差圧を設けた状態で行ってもよく、特に、ポリイミド系樹脂多孔質膜の内部の孔にも溶液を浸透させる場合は加圧下で行うことが好ましい。
【0147】
<他の工程>
本実施形態にかかる製造方法は、前記工程(i)に加えて、他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、ポリイミド系樹脂多孔質膜を備えるフィルター以外の他のフィルターで濾過する工程が挙げられる。前記ポリイミド系樹脂多孔質膜を備えるフィルター以外のフィルターは、特に限定されないが、例えば、ナイロン膜、ポリエチレン膜、ポリプロピレン膜、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)膜、及びこれらを修飾した膜等の熱可塑性樹脂の多孔質膜を備えるフィルター等が挙げられる。中でも、異物の除去性能に優れることから、他のフィルターとしては、ポリエチレン樹脂を含有する多孔質膜を備えるフィルターを用いることが好ましい。
【0148】
≪工程(ii)≫
本実施形態にかかる製造方法は、前記工程(i)に加えて、ポリエチレン樹脂を含有する多孔質膜を備えるフィルターで濾過する工程(ii)を、さらに含むことが好ましい。
ポリエチレン樹脂を含有する多孔質膜(以下「ポリエチレン樹脂多孔質膜」ともいう)は、ポリエチレン樹脂のみからなるものであってもよく、ポリエチレン樹脂と他の樹脂とを含むものであってもよいが、ポリエチレン樹脂のみからなるものが好ましい。
ポリエチレン樹脂多孔質膜は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。ポリエチレン樹脂多孔質膜は、耐衝撃性、耐摩耗性、及び耐薬品に優れることから、超高分子量ポリエチレン(UPE)の多孔質膜を用いることが好ましい。
かかるポリエチレン樹脂多孔質膜の平均孔径は、特に限定されないが、微細な異物を除去する観点から、0.1~100nmが好ましく、0.3~50nmがより好ましく、0.5~10nmがさらに好ましい。
【0149】
かかるポリエチレン樹脂多孔質膜を備えるフィルターとしては、ポリエチレン樹脂多孔質膜を、熱可塑性樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、PFA、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミド、ポリアミドイミド等)からなる外側容器に備えたものも挙げられる。
【0150】
工程(ii)は、前記工程(i)の後に行うことが好ましく、この場合、ポリエチレン樹脂多孔質膜の平均孔径は、前記ポリイミド系多孔質膜の連通孔の平均孔径よりも小さいことが好ましい。
本実施形態の製造方法においては、前記工程(i)の後に工程(ii)を行うことを繰り返し行ってもよい。この場合、レジスト組成物(供給液)を常時循環しながら、ポリイミド系樹脂多孔質膜を備えるフィルターと、ポリエチレン樹脂多孔質膜を備えるフィルターと、に通過させる。前記のような循環型の濾過を行う場合、該循環経路において、両フィルターは、レジスト組成物がポリイミド系樹脂多孔質膜を備えるフィルターを通過した後にポリエチレン樹脂多孔質膜を備えるフィルターを通過するように配置されることが好ましい。
【0151】
工程(ii)を行う場合、前記工程(i)において記載したのと同様に、供給液をポリエチレン樹脂多孔質膜に通過させる前に、ポリエチレン樹脂多孔質膜の洗浄、供給液に対する濡れ性向上、又は、ポリエチレン樹脂多孔質膜と供給液との表面エネルギー調整のために、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコールもしくはアセトン、メチルエチルケトン等のケトン、水、供給液に含まれる溶媒又はそれらの混合物等の溶液を、ポリエチレン樹脂多孔質膜に接触させて通液してもよい。
【0152】
<レジスト組成物>
濾過対象物であるレジスト組成物は、金属化合物(M)と、有機溶剤成分(S)とを含有する。前記金属化合物(M)は、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子の金属イオン又は前記金属原子の金属酸化物と、前記金属イオン又は前記金属酸化物に結合する結合子とを含む。前記金属イオン又は前記金属酸化物に含まれる前記金属原子の含有量が、前記レジスト組成物の総質量に対して、0.2~3質量%である。
【0153】
レジスト組成物は、金属化合物(M)(以下「(M)成分」ともいう)を含有し、露光により、前記金属化合物の構造が変化し、且つ前記金属化合物の現像液に対する溶解性が変化するものである。
【0154】
本実施形態のレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、該レジスト膜に対して選択的露光を行うと、露光部では(M)成分の現像液に対する溶解性が変化する一方で、該レジスト膜の未露光部では(M)成分の現像液に対する溶解性が変化しないため、露光部と未露光部との間で現像液に対する溶解性の差が生じる。そのため、該レジスト膜を現像すると、該レジスト組成物がポジ型の場合はレジスト膜露光部が溶解除去されてポジ型のレジストパターンが形成され、該レジスト組成物がネガ型の場合はレジスト膜未露光部が溶解除去されてネガ型のレジストパターンが形成される。
【0155】
本明細書においては、レジスト膜露光部が溶解除去されてポジ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をポジ型レジスト組成物といい、レジスト膜未露光部が溶解除去されてネガ型レジストパターンを形成するレジスト組成物をネガ型レジスト組成物という。本実施形態のレジスト組成物は、通常、ネガ型レジスト組成物である。また、本実施形態のレジスト組成物は、レジストパターン形成時の現像処理に、アルカリ現像液を用いるアルカリ現像プロセス用であってもよく、有機溶剤を含む現像液(有機系現像液)を用いる溶剤現像プロセス用であってもよい。
【0156】
[金属化合物(M)]
レジスト組成物は、金属化合物(M)((M)成分)を含有する。(M)成分は、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子の金属イオン又は前記金属原子の金属酸化物と、前記金属イオン又は前記金属酸化物に結合する結合子とを含む金属化合物である。レジスト組成物は、(M)成分を基材成分として含有する。(M)成分を用いることにより、露光前後で基材成分の有機溶剤に対する溶解性が変化するため、溶剤現像プロセスにおいて、良好な現像コントラストを得ることができる。
【0157】
溶剤現像プロセスを適用する場合、(M)成分を含む基材成分は、露光前は有機系現像液に対して溶解性が高く、露光により、有機系現像液に対する溶解性が減少する。そのため、レジストパターンの形成において、当該レジスト組成物を支持体上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、レジスト膜露光部は有機系現像液に対して可溶性から難溶性に変化する一方で、レジスト膜未露光部は可溶性のまま変化しないため、有機系現像液で現像することにより、露光部と未露光部との間でコントラストをつけることができ、ネガ型レジストパターンが形成される。
【0158】
≪金属イオン又は金属酸化物((M1)成分)≫
(M)成分は、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子の金属イオン又は前記金属原子の金属酸化物(以下、まとめて「(M1)成分」ともいう)を含む。
【0159】
第3族の金属原子としては、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)等が挙げられる。
第4族の金属原子としては、例えば、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等が挙げられる。
第5族の金属原子としては、例えば、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)等が挙げられる。
第6族の金属原子としては、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等が挙げられる。
第7族の金属原子としては、例えば、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)等が挙げられる。
第8族の金属原子としては、例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)等が挙げられる。
第9族の金属原子としては、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)等が挙げられる。
第10族の金属原子としては、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)等が挙げられる。
第11族の金属原子としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)等が挙げられる。
第12族の金属原子としては、例えば、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、水銀(g)等が挙げられる。
第13族の金属原子としては、例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等が挙げられる。
第14族の金属原子としては、例えば、ゲルマニウム(Ga)、スズ(Sn)、鉛(Pb)等が挙げられる。
第15族の金属原子としては、例えば、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等が挙げられる。
第16族の金属原子としては、例えば、テルル(Te)、ボロニウム(Po)等が挙げられる。
【0160】
金属原子としては、第3族、第4族、第5族、第6族、第13族、第14族、及び第15族の金属原子が好ましく、第4族、第14族の金属原子がより好ましい。これらの金属原子としては、スズ、インジウム、アンチモン、モリブデン、バナジウム、タンタル、ハフ二ウム、ジルコニア、鉄、及びニオブが好ましく、スズがより好ましい。
【0161】
(M1)成分は、金属イオンであってもよい。金属イオンは、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子の金属イオンである限り、特に限定されない。
金属イオンの具体例としては、例えば、ジルコニウムイオン(Zr4+)、ハフニウムイオン(Hf4+)、コバルト(Co2+,Co3+)、ニッケル(Ni2+,Ni3+)、亜鉛(Zn2+)、スズ(Sn2+,Sn4+)、アンチモン(Sb3+)、テルル(Te4+)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
(M1)成分は、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子の金属酸化物であってもよい。金属酸化物は、金属原子と酸素とが共有結合して形成される化合物である。金属酸化物としては、例えば、上記で挙げた金属原子の金属酸化物が挙げられる。
金属酸化物を構成する金属原子の具体例としては、前記金属原子と同様の金属原子が挙げられるが、これらに限定されない。金属酸化物の具体例としては、例えば、酸化スカンジウム(III)(Sc)、酸化イットリウム(III)(Y)等の第3族元素の金属酸化物;酸化チタン(IV)(TiO)、ジルコニア(ZrO)、酸化ハフニウム(IV)(HfO)等の第4族元素の金属酸化物;酸化バナジウム(V)(V)、酸化ニオブ(V)(Nb)、酸化タンタル(V)(Ta)等の第5族元素の金属酸化物;酸化クロム(VI)(CrO)、酸化モリブデン(VI)(MoO)、酸化タングステン(VI)(WO)等の第6族元素の金属酸化物;酸化アルミニウム(III)(Al)、酸化ガリウム(III)(Ga)、酸化インジウム(III)(In)等の第13族元素の金属酸化物;二酸化ゲルマニウム(GaO)、酸化スズ(II)(SnO)、酸化スズ(IV)(SnO)等の第14族元素の金属酸化物;三酸化アンチモン(Sb)等の第15元素の金属酸化物等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、金属酸化物は、金属酸化物の水酸化物であってもよい。金属酸化物の水酸化物としては、例えば、Zr(OH)、Hf(OH)、Sn1214(OH)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0163】
(M1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0164】
≪結合子((M2)成分)≫
(M)成分は、前記金属イオン又は金属酸化物に結合する結合子(M2)(以下、「(M2)成分」ともいう)を含む。金属イオン又は金属酸化物と、結合子との結合様式は、特に限定されず、共有結合、配位結合、及びイオン結合のいずれであってもよい。
【0165】
(M2)成分は、金属イオン又は金属酸化物と結合できるものであれば、特に限定されない。結合子としては、例えば、炭素原子数1~20の有機基、及び無機アニオン等が挙げられる。
炭素原子数1~20の有機基は、炭素原子数1~15が好ましく、炭素原子数1~12がより好ましく、炭素原子数1~10がさらに好ましい。無機アニオンとしては、例えば、水酸化物イオン(OH)、硫化水素イオン(SH)、メタリン酸イオン(PO )、硝酸イオン(NO )等が挙げられる。
【0166】
・共有結合する結合子(M2-1)
金属イオン又は金属酸化物に共有結合する結合子(以下、「結合子(M2-1)」ともいう)としては、下記式(m2-1)で表される有機基が挙げられる。
【0167】
【化4】
[式中、Rmは、炭素原子数1~20の1価の有機基を表す。*は、金属イオン又は金属酸化物に対する結合を表す。金属イオン又は金属酸化物に結合するRmが2個以上存在する場合、前記2個以上のRmは、相互に結合して、2価以上の連結基を形成してもよい。]
【0168】
前記式(m2-1)中、Rmは、炭素原子数1~20の1価の有機基を表す。Rmにおける有機基としては、置換基を有してもよい炭素原子数1~20の炭化水素基が挙げられる。前記炭化水素基は、炭素原子数1~15が好ましく、炭素原子数1~10がより好ましく、炭素原子数1~6がさらに好ましく、炭素原子数1~3が特に好ましい。前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
【0169】
前記脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1~15のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がさらに好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基が特に好ましい。
直鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数2~15のアルケニル基若しくはアルキニル基が好ましく、炭素原子数2~10のアルケニル基若しくはアルキニル基がより好ましく、炭素原子数2~6のアルケニル基若しくはアルキニル基がさらに好ましく、炭素原子数2~3のアルケニル基若しくはアルキニル基が特に好ましい。
【0170】
分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基は、炭素原子数3~15の分岐鎖状アルキル基が好ましく、炭素原子数3~10の分岐鎖状アルキル基がより好ましく、炭素原子数3~6の分岐鎖状アルキル基がさらに好ましく、炭素原子数3~4の分岐鎖状アルキル基が特に好ましい。
分岐鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基は、炭素原子数3~15の分岐鎖状アルケニル基若しくはアルキニル基が好ましく、炭素原子数3~10の分岐鎖状アルケニル基若しくはアルキニル基がより好ましく、炭素原子数3~6の分岐鎖状アルケニル基若しくはアルキニル基がさらに好ましく、炭素原子数3~4の分岐鎖状アルケニル基若しくはアルキニル基が特に好ましい。
【0171】
前記脂肪族炭化水素基は、構造中に環を含むものであってもよい。構造中に環を含む脂肪族炭化水素基としては、環構造中にヘテロ原子を含む置換基を含んでもよい環状の脂肪族炭化水素基(脂肪族炭化水素環から水素原子2個を除いた基)、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の末端に結合した基、前記環状の脂肪族炭化水素基が直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基の途中に介在する基等が挙げられる。環状の脂肪族炭化水素基は、炭素原子数3~15が好ましく、炭素原子数3~10がより好ましく、炭素原子数3~6がさらに好ましい。環状脂肪族炭化水素基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。
単環式基である脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましい。該モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6のものが好ましく、具体的にはシクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基である脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が好ましく、該ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12のものが好ましく、具体的にはアダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0172】
Rmにおける有機基は、芳香族炭化水素基であってもよい。芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。
この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素原子数は炭素原子数5~20が好ましく、炭素原子数6~15がより好ましく、炭素原子数6~12がさらに好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
前記芳香族炭化水素基として、例えば、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基は、炭素原子数1~4が好ましく、炭素原子数1~3がより好ましく、炭素原子数1~2が特に好ましい。
【0173】
Rmにおける炭化水素基は、置換基を有してもよい。前記置換基は、炭化水素鎖の水素原子(-H)を置換するものであってもよく、炭化水素鎖のメチレン基(-CH-)を置換するものであってもよい。
水素原子を置換する基としては、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基、ニトロ基、チオール基、シアノ基、リン酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基等が挙げられるが、これらに限定されない。前記置換基としてのアルコキシ基及びアシル基は、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~3がより好ましく、炭素原子数1又は2がさらに好ましい。
メチレン基を置換する基としては、例えば、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-NH-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
Rmとしては、炭化水素基が好ましく、脂肪族炭化水素基が好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましく、分岐鎖状の飽和脂肪族炭化水素基がさらに好ましい。前記飽和脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1~15のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基がさらに好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基が特に好ましい。Rmの具体例としては、例えば、炭素原子数1~15の分岐鎖状アルキル基(例、t-ブチル基等)、炭素原子数2~15の直鎖状不飽和炭化水素基(例、ビニル基等)、炭素原子数1~15の直鎖状アルキル基(例、メチル基、エチル基、n-ブチル基等)、炭素原子数6~15の芳香族炭化水素基(例、フェニル基等)が挙げられ、炭素原子数1~15の分岐鎖状アルキル基(例、t-ブチル基等)、炭素原子数2~15の直鎖状不飽和炭化水素基(例、ビニル基等)、炭素原子数1~15の直鎖状アルキル基(例、メチル基、エチル基、n-ブチル基等)が好ましく、炭素原子数1~15の分岐鎖状アルキル基(例、t-ブチル基等)、炭素原子数2~15の直鎖状不飽和炭化水素基(例、ビニル基等)がより好ましく、炭素原子数1~15の分岐鎖状アルキル基(例、t-ブチル基等)がさらに好ましい。
【0175】
金属イオン又は金属酸化物に結合する結合子(M2-1)が2個以上存在する場合、前記2個以上の結合子(M2-1)に含まれる2個以上のRmは、相互に結合して、2価以上の連結基を形成してもよい。
【0176】
結合子(M2-1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0177】
・配位結合する結合子(M2-2)
金属イオン又は金属酸化物に配位結合する結合子(以下、「結合子(M2-2)」ともいう)としては、有機アニオン又は無機アニオンが挙げられる。
無機アニオンとしては、例えば、水酸化物イオン(OH)、硫化水素イオン(SH)、メタリン酸イオン(PO )、硝酸イオン(NO )等が挙げられる。
有機アニオンとしては、例えば、下記一般式(m2-2)で表される有機アニオンが挙げられる。
【0178】
【化5】
[式中、Rmは、有機基を表す。Xは、アニオン性基を表す。mは、0~3の整数を表す。nは、1~4の整数を表す。m/nが2以上であるとき、複数のRmは、相互に同じであってもよく、異なっていてもよい。n/mが2以上であるとき、複数のXは、相互に同じであってもよく、異なっていてもよい。]
【0179】
前記式(m2-2)中、Rmは、有機基を表す。前記有機基としては、置換基を有してもよい炭化水素基が挙げられる。前記炭化水素基としては、前記式(m2-1)中のRmにおける1価の炭化水素基として挙げた基、前記式(m2-1)中のRmにおける1価の炭化水素基として挙げた基から1個の水素原子を除いた基、前記式(m2-1)中のRmにおける1価の炭化水素基として挙げた基から2個の水素原子を除いた基、前記式(m2-1)中のRmにおける1価の炭化水素基として挙げた基から3個の水素原子を除いた基が挙げられる。好ましい例としては、前記式(m2-1)中のRmにおける1価の炭化水素基として挙げた好ましい例の基から、1~3個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0180】
Rmにおける炭化水素基は、置換基を有してもよい。置換基としては、前記式(m2-1)中のRmにおける置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
水素原子を置換する基としては、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシル基等が好ましい。前記置換基としてのアルコキシ基及びアシル基は、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~3がより好ましく、炭素原子数1又は2がさらに好ましい。
メチレン基を置換する基としては、例えば、-O-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-NH-、-S-、-S(=O)-、-S(=O)-O-等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
mは、0~3を表す。
nは、1~4の整数を表す。nは、mが1のとき、1~3が好ましく、1又は2がより好ましい。nは、mが2又は3のとき、1が好ましい。
【0182】
Rmの具体例を以下に示すが、これらに限定されない。式中、*は、式(m2-2)中のXに対する結合を表す。
【0183】
【化6】
【0184】
前記式(m2-2)中、Xは、m/n価のアニオン性基を表す。アニオン性基は、負の電荷を帯びた原子を含む官能基である。Xとしては、-O、-S、-SO、-SS、SO 、P(OH)O 、-NH、-N-CO-を含むアニオン性基が好ましい。
【0185】
の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。式中、*は、式(m2-2)中のRmに対する結合を表す。
【0186】
【化7】
【0187】
結合子(M2-2)の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0188】
【化8】
【0189】
結合子(M2-2)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0190】
・イオン結合する結合子(M2-3)
金属イオン又は金属酸化物にイオン結合する結合子(以下、「結合子(M2-3)」ともいう)としては、有機アニオン又は無機アニオンが挙げられる。前記有機アニオン及び無機アニオンとしては、前記結合子(M2-2)で挙げた有機アニオン及び無機アニオンと同様のものが挙げられる。
【0191】
結合子(M2-3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0192】
(M2)成分が結合子(M2-3)である場合、(M1)成分は、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子の金属イオンである。(M2)成分が結合子(M2-3)である場合の(M)成分の例を以下に示す。
【0193】
【化9】
[式中、M01は、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子のp価のカチオンを表し;M02は、p価のアニオンである結合子(M2)を表す。]
【0194】
(M1)成分に対する(M2)成分の割合としては、(M1)成分100質量部に対して、10~900質量部が好ましく、30~400質量部がより好ましく、30~200質量部がさらに好ましい。(M1)成分と(M2)成分とのモル比としては、(M1)成分:(M2)成分(モル比)=1:1~1:20が好ましく、1:4~1:14がより好ましく、1:12~1:14がさらに好ましい。(M1)成分に対する(M2)成分の割合を前記好ましい範囲内にすることにより、レジスト組成物の安定性が向上する。
【0195】
(M)成分中の金属原子の含有量は、10~80質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましく、30~60質量%がさらに好ましい。(M)成分中の金属原子の含有量を前記好ましい範囲内にすることにより、レジスト組成物の安定性が向上する。
【0196】
本実施形態のレジスト組成物では、金属イオン又は金属酸化物に含まれる金属原子の含有量(以下、「金属原子の含有量」ともいう)が、前記レジスト組成物の総質量(100質量%)に対して、0.2~3質量%である。金属原子の含有量が、前記範囲内であることにより、ネガ型レジスト組成物としての機能が発揮される。
レジスト組成物の総質量(100質量%)に対する、金属原子の含有量は、下記式により算出することができる。
金属原子の含有量(質量%)=[((M)成分の総質量に対する金属原子の含有量(質量%))×((M)成分の総質量)]/(レジスト組成物の総質量)
【0197】
前記式中、「(M)成分の総質量に対する金属原子の含有量(質量%)」は、(M)成分を600℃で加熱した後に残留する金属酸化物の質量と、前記加熱に供した(M)成分の質量とに基づいて算出することができる。
【0198】
(M)成分の金属化合物は、公知の方法を用いて製造することができる。
例えば、(M1)成分を構成する金属の金属アルコキシドと、(M2)成分とを、適切な溶媒中で反応させることで、(M)成分の金属化合物を得ることができる。前記溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等を用いることができる。これらの溶媒の具体例としては、例えば、後述の(S)成分で挙げる溶媒等が挙げられる。
前記反応温度としては、0~150℃が挙げられ、10~120℃が好ましい。反応時間としては、30分~24時間が挙げられ、1~20時間が好ましい。
【0199】
<有機溶剤成分(S)>
レジスト組成物は、レジスト材料を有機溶剤成分(以下「(S)成分」という)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解又は分散し、均一な溶液又は分散液とすることができるものであればよく、従来、レジスト組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。
(S)成分としては、例えば、γ-ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチルブチルアルコール等のモノアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、またはジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物、前記多価アルコール類または前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテルまたはモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
本実施形態のレジスト組成物において、(S)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。なかでも、PGMEA、PGME、γ-ブチロラクトン、EL、シクロヘキサノン、4-メチル-2-ペンタノール、n-プロパノールが好ましい。
【0200】
また、(S)成分としては、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶剤も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてEL又はシクロヘキサノンを配合する場合は、PGMEA:EL又はシクロヘキサノンの質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合は、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9~9:1、より好ましくは2:8~8:2、さらに好ましくは3:7~7:3である。さらに、PGMEAとPGMEとシクロヘキサノンとの混合溶剤も好ましい。
また、(S)成分として、その他には、PGMEA及びELの中から選ばれる少なくとも1種とγ-ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者との質量比が、好ましくは70:30~95:5とされる。
(S)成分の使用量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。一般的にはレジスト組成物の固形分濃度が0.1~20質量%、好ましくは0.2~15質量%の範囲内となるように(S)成分は用いられる。
【0201】
<他の成分>
レジスト組成物は、前記(M)成分及び(S)成分に加えて、他の成分を含有していてもよい。
【0202】
[架橋促進剤]
レジスト組成物は、架橋促進剤を含有してもよい。架橋促進剤は、光又は熱によって酸又は塩基を発生する化合物である。架橋促進剤を含有することで、レジストパターン形成性及びエッチング選択性を向上させることができる。架橋促進剤としては、例えば、オニウム塩化合物、N-スルホニルオキシイミド化合物等が挙げられる。架橋促進剤としては、熱によって酸又は塩基を発生する熱架橋促進剤が好ましく、中でもオニウム塩化合物が好ましい。
【0203】
オニウム塩化合物としては、例えば、スルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0204】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、4-シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、4-シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、4-シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、4-メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、4-メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、4-メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム1,1,2,2-テトラフルオロ-6-(1-アダマンタンカルボニロキシ)-ヘキサン-1-スルホネート等が挙げられる。
【0205】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、1-(6-n-ブトキシナフタレン-2-イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-(6-n-ブトキシナフタレン-2-イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、1-(6-n-ブトキシナフタレン-2-イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、1-(6-n-ブトキシナフタレン-2-イル)テトラヒドロチオフェニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、1-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、1-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、1-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0206】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ-n-ブタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ-n-オクタンスルホネート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。
【0207】
アンモニウム塩としては、例えば蟻酸アンモニウム、マレイン酸アンモニウム、フマル酸アンモニウム、フタル酸アンモニウム、マロン酸アンモニウム、コハク酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、リンゴ酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、ブタン酸アンモニウム、ペンタン酸アンモニウム、ヘキサン酸アンモニウム、ヘプタン酸アンモニウム、オクタン酸アンモニウム、ノナン酸アンモニウム、デカン酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、セバシン酸アンモニウム、酪酸アンモニウム、オレイン酸アンモニウム、ステアリン酸アンモニウム、リノール酸アンモニウム、リノレイン酸アンモニウム、サリチル酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸アンモニウム、安息香酸アンモニウム、p-アミノ安息香酸アンモニウム、p-トルエンスルホン酸アンモニウム、メタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロエタンスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。また、上記アンモニウム塩のアンモニウムイオンが、メチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、プロピルアンモニウムイオン、ジプロピルアンモニウムイオン、トリプロピルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、ブチルアンモニウムイオン、ジブチルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオン、ジメチルジエチルアンモニウムイオン、ジメチルエチルプロピルアンモニウムイオン、メチルエチルプロピルブチルアンモニウムイオン、エタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等に置換されたアンモニウム塩、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン蟻酸塩、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンp-トルエンスルホン酸塩等の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン塩、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン蟻酸塩、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネンp-トルエンスルホン酸塩等の1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン塩等が挙げられる。
【0208】
N-スルホニルオキシイミド化合物としては、例えばN-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(ノナフルオロ-n-ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(パーフルオロ-n-オクタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド、N-(2-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-イル-1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド等が挙げられる。
【0209】
中でも、オニウム塩化合物が好ましく、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩がより好ましく、1-(4-n-ブトキシナフタレン-1-イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、酢酸テトラメチルアンモニウム、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンp-トルエンスルホン酸塩がさらに好ましい。
【0210】
架橋促進剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。架橋促進剤の含有量としては、前記(M)成分100質量部に対して、0質量部以上10質量部以下が好ましく、0質量部以上5質量部以下がより好ましい。
【0211】
[界面活性剤]
レジスト組成物は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤は塗布性、ストリエーション等を改良する作用を示す成分である。(界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn-オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn-ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤の他、以下商品名として、KP341(信越化学工業社)、ポリフローNo.75、同No.95(以上、共栄社化学社)、エフトップEF301、同EF303、同EF352(以上、トーケムプロダクツ社)、メガファックF171、同F173(以上、大日本インキ化学工業社)、フロラードFC430、同FC431(以上、住友スリーエム社)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-102、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-106(以上、旭硝子社)等が挙げられる。
【0212】
界面活性剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。界面活性剤の配合量は、その目的に応じて適宜決定することができる。
【0213】
[他の添加剤]
レジスト組成物は、架橋促進剤、界面活性剤以外の添加剤を含有してもよい。他の添加剤としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0214】
【化10】
【0215】
以上説明した、本態様のレジスト組成物精製品の製造方法によれば、工程(i)で、濾過対象物(レジスト組成物)が、隣接した球状セル同士が連通した多孔質構造を有し、且つポリイミド及びポリアミドイミドからなる群より選択される少なくとも一種の樹脂骨格を含有する多孔質膜を備えるフィルターにより濾過される。これによって、濾過対象物から、有機物、金属不純物などの異物がこれまで以上に除去される。
金属化合物(M)を含むレジスト組成物では、金属化合物(M)を構成する金属亜酸化物又は金属水酸化物が凝集してゲルを形成しやすい傾向がある。また、金属化合物(M)由来のイオン性不純物が生成する場合もある。
本実施形態の製造方法では、ポリイミド系樹脂多孔質膜を用いてろ過することで、金属化合物(M)由来の凝集ゲル、金属化合物(M)由来のイオン性不純物等の種々の不純物が充分に除去される。そのため、かかる製造方法により、レジスト膜の形成に際し、欠陥の発生を低減可能な、高純度のレジスト組成物精製品が得られる。
【0216】
本態様におけるフィルターは、図1に示すような隣り合う球状セル1aと球状セル1bとが連通した連通孔5が形成された多孔質膜を備えたものに限定されず、球状セル1a、1bが連通した連通孔5に加えてこれ以外の形態のセル又は連通孔が形成された多孔質膜を備えるものでもよい。
これ以外の形態のセル(以下これを「他のセル」という。)としては、形状もしくは孔径が異なるセルが挙げられ、例えば楕円状セル、多面体状セル、孔径の異なる球状セル等が挙げられる。前記の「これ以外の形態の連通孔」としては、例えば、球状セルと他のセルとが連通した連通孔が挙げられる。
他のセルの形状又は孔径は、除去対象とされる不純物の種類に応じて適宜決定すればよい。球状セルと他のセルとが連通した連通孔は、上述の微粒子の材料を選択したり、微粒子の形状を制御したりすることによって形成できる。
隣接した球状セル同士が連通した連通孔に加えてこれ以外の形態のセル又は連通孔が形成された多孔質膜を備えたフィルターによれば、濾過対象物から、種々の異物をより効率的に除去できる。
【0217】
また、濾過工程で用いられる、ポリイミド系樹脂多孔質膜を備えるフィルターは、半導体製造プロセスにおけるレジスト組成物の供給ライン又はPOU(point of use)で、これまで設置されていた微粒子状不純物除去のためのフィルターカートリッジ等に置き換えて、又はこれと組み合わせて用いることができる。このため、従来と全く同一の装置及び操作で、濾過対象物から、種々の異物を効率良く除去でき、高純度のレジスト組成物精製品を製造できる。
【0218】
(レジストパターンの形成方法)
本発明の第2の態様にかかるレジストパターン形成方法は、前記第1の態様にかかるレジスト組成物精製品の製造方法により、レジスト組成物精製品を得る工程と、前記レジスト組成物精製品を用いて、支持体上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、を有する。
【0219】
本態様のレジストパターン形成方法は、例えば以下のようにして行うことができる。
まず、前記第1の態様にかかるレジスト組成物精製品の製造方法により、レジスト組成物精製品を得る。
次に、支持体上に、前記レジスト組成物精製品を、スピンナーなどで塗布し、ベーク(ポストアプライベーク(PAB))処理を、たとえば80~200℃の温度条件にて40~120秒間、好ましくは60~90秒間施してレジスト膜を形成する。
次に、該レジスト膜に対し、例えばArF露光装置、電子線描画装置、EUV露光装置等の露光装置を用いて、所定のパターンが形成されたマスク(マスクパターン)を介した露光またはマスクパターンを介さない電子線の直接照射による描画等による選択的露光を行った後、ベーク(ポストエクスポージャーベーク(PEB))処理を、たとえば80~200℃の温度条件にて40~120秒間、好ましくは60~90秒間施す。
次に、前記レジスト膜を現像処理する。現像処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、アルカリ現像液を用い、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有する現像液(有機系現像液)あるいは水との混合溶媒を用いて行う。
現像処理後、好ましくはリンス処理を行う。リンス処理は、アルカリ現像プロセスの場合は、純水を用いた水リンスが好ましく、溶剤現像プロセスの場合は、有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
溶剤現像プロセスの場合、前記現像処理またはリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を、超臨界流体により除去する処理を行ってもよい。
現像処理後又はリンス処理後、乾燥を行う。また、場合によっては、上記現像処理後にベーク処理(ポストベーク)を行ってもよい。
このようにして、レジストパターンを形成することができる。
【0220】
支持体としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコンウェーハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。
また、支持体としては、上述のような基板上に、無機系および/または有機系の膜が設けられたものであってもよい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)や、多層レジスト法における下層有機膜等の有機膜が挙げられる。
【0221】
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。前記レジスト組成物精製品は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EB又はEUV用としての有用性が高く、EB又はEUV用として特に有用である。
【0222】
レジスト膜の露光方法は、空気や窒素等の不活性ガス中で行う通常の露光(ドライ露光)であってもよく、液浸露光(Liquid Immersion Lithography)であってもよい。
液浸露光は、予めレジスト膜と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たし、その状態で露光(浸漬露光)を行う露光方法である。
液浸媒体としては、空気の屈折率よりも大きく、かつ、露光されるレジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒が好ましい。かかる溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
空気の屈折率よりも大きく、かつ、前記レジスト膜の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl、COCH、COC、C等のフッ素系化合物を主成分とする液体等が挙げられ、沸点が70~180℃のものが好ましく、80~160℃のものがより好ましい。フッ素系不活性液体が上記範囲の沸点を有するものであると、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
フッ素系不活性液体としては、特に、アルキル基の水素原子が全てフッ素原子で置換されたパーフロオロアルキル化合物が好ましい。パーフロオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物、パーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2-ブチル-テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
液浸媒体としては、コスト、安全性、環境問題、汎用性等の観点から、水が好ましく用いられる。
【0223】
アルカリ現像プロセスで現像処理に用いるアルカリ現像液としては、例えば0.1~10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液が挙げられる。
溶剤現像プロセスで現像処理に用いる有機系現像液が含有する有機溶剤としては、(A)成分(露光前の(A)成分)を溶解し得るものであればよく、公知の有機溶剤の中から適宜選択できる。具体的には、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ニトリル系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
ケトン系溶剤は、構造中にC-C(=O)-Cを含む有機溶剤である。エステル系溶剤は、構造中にC-C(=O)-O-Cを含む有機溶剤である。アルコール系溶剤は、構造中にアルコール性水酸基を含む有機溶剤である。「アルコール性水酸基」は、脂肪族炭化水素基の炭素原子に結合した水酸基を意味する。ニトリル系溶剤は、構造中にニトリル基を含む有機溶剤である。アミド系溶剤は、構造中にアミド基を含む有機溶剤である。エーテル系溶剤は、構造中にC-O-Cを含む有機溶剤である。
有機溶剤の中には、構造中に上記各溶剤を特徴づける官能基を複数種含む有機溶剤も存在するが、その場合は、当該有機溶剤が有する官能基を含むいずれの溶剤種にも該当するものとする。たとえば、ジエチレングリコールモノメチルエーテルは、上記分類中のアルコール系溶剤、エーテル系溶剤のいずれにも該当するものとする。
炭化水素系溶剤は、ハロゲン化されていてもよい炭化水素からなり、ハロゲン原子以外の置換基を有さない炭化水素溶剤である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
有機系現像液が含有する有機溶剤としては、上記の中でも、極性溶剤が好ましく、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、ニトリル系溶剤等が好ましい。
【0224】
有機系現像液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、たとえば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されないが、たとえばイオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。界面活性剤としては、非イオン性の界面活性剤が好ましく、非イオン性のフッ素系界面活性剤、又は非イオン性のシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、有機系現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0225】
現像処理は、公知の現像方法により実施することが可能であり、たとえば現像液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、支持体表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している支持体上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0226】
溶剤現像プロセスで現像処理後のリンス処理に用いるリンス液が含有する有機溶剤としては、たとえば前記有機系現像液に用いる有機溶剤として挙げた有機溶剤のうち、レジストパターンを溶解しにくいものを適宜選択して使用できる。通常、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤およびエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の溶剤を使用する。これらのなかでも、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤及びアミド系溶剤から選択される少なくとも1種類が好ましく、アルコール系溶剤およびエステル系溶剤から選択される少なくとも1種類がより好ましく、アルコール系溶剤が特に好ましい。
これらの有機溶剤は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記以外の有機溶剤や水と混合して用いてもよい。ただし、現像特性を考慮すると、リンス液中の水の配合量は、リンス液の全量に対し、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下さらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
リンス液には、必要に応じて公知の添加剤を配合できる。該添加剤としては、例えば界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、前記と同様のものが挙げられ、非イオン性の界面活性剤が好ましく、非イオン性のフッ素系界面活性剤、又は非イオン性のシリコン系界面活性剤がより好ましい。
界面活性剤を配合する場合、その配合量は、リンス液の全量に対して、通常0.001~5質量%であり、0.005~2質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0227】
リンス液を用いたリンス処理(洗浄処理)は、公知のリンス方法により実施できる。該リンス処理の方法としては、たとえば一定速度で回転している支持体上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液中に支持体を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、支持体表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0228】
上述した本態様のレジストパターン形成方法によれば、前記第1の態様にかかるレジスト組成物精製品の製造方法により得たレジスト組成物精製品が用いられているため、レジスト膜形成時のディフェクト発生が抑制されて、ディフェクトが低減された、良好な形状のレジストパターンを形成できる。
【0229】
(レジスト組成物精製品)
本発明の第3の態様にかかるレジスト組成物精製品は、金属化合物(M)と、有機溶剤成分(S)とを含有する。前記金属化合物(M)は、長周期型周期表における第3族から第16族の金属原子の金属イオン又は前記金属原子の金属酸化物と、前記金属イオン又は前記金属酸化物に結合する結合子とを含む。前記金属イオン又は前記金属酸化物に含まれる前記金属原子の含有量は、前記レジスト組成物精製品の総質量に対して、0.2~3質量%である。該レジスト組成物精製品は、光散乱式液中粒子計数器によって計数される、0.135μm以上のサイズの被計数体の数が、1個/mL未満であることを特徴とする。
【0230】
本態様にかかるレジスト組成物精製品は、上述した第1の態様にかかるレジスト組成物精製品の製造方法により得ることができる。前記第1の態様にかかる製造方法により得たレジスト組成物精製品は、ポリイミド系樹脂多孔質膜を備えるフィルターを通過して濾過が施されていることで、異物が除去されたものである。したがって、本態様にかかるレジスト組成物精製品では、光散乱式液中粒子計数器によって計数される、0.135μm以上のサイズの被計数体の数が、1個/mL未満となり、異物の数が非常に少ないレジスト組成物組成製品を実現できる。
本態様にかかるレジスト組成物精製品において、光散乱式液中粒子計数器によって計数される、0.135μm以上のサイズの被計数体の数は、0.8個/mL以下が好ましく、0.5個/mL以下がより好ましく、0.3個/mL以下がさらに好ましい。
本態様にかかるレジスト組成物精製品は、このように異物の数が非常に少ないことにより、ディフェクトの少ないレジストパターンを形成することができる。
光散乱式液中粒子計数器としては、例えば、リオン株式会社製のKS-41等を用いることができる。
【0231】
第3の態様にかかるレジスト組成物精製品は、上述の第1の態様にかかるレジスト組成物精製品の製造方法で用いるレジスト組成物と、同様の組成を有することが好ましい。
【0232】
≪レジストパターン形成方法≫
本発明の第4の態様にかかるレジストパターン形成方法は、前記第3の態様にかかるレジスト組成物組成製品を用いて、支持体上にレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、前記露光後のレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程と、を有する、レジストパターン形成方法である。
本態様にかかるレジストパターン形成方法は、上述の第2の態様にかかるレジストパターン形成方法と同様に行うことができる。
【実施例0233】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0234】
<レジスト組成物の製造>
(製造例1:金属化合物(M-1))
0.209gのモノブチルスズオキシド水和物(BuSnOOH)粉末(TCI America)を10mLの4-メチル-2-ペンタノールに添加した。前記レジスト前駆体溶液を閉鎖バイアルに入れ、24時間攪拌した。得られた混合物を4000rpmで15分間遠心分離し、0.45μmのPTFEシリンジの前ろ過により不溶性材料を除去し、低沸点物をエバポレーターで除去し、金属化合物(M-1)の粉体を得た。
【0235】
(製造例2:金属化合物(M-2))
東京化成工業株式会社からブチルスズジアセタート(製品コード:D0302)を購入し、金属化合物(M-2)として用いた。
【0236】
(製造例3:金属化合物(M-3))
ハフニウム(IV)エトキシド47.0g及びテトラヒドロフラン(THF)50gを混合し、25℃で10分間攪拌した後、メタクリル酸43.0gを混合し、80℃で5時間加熱攪拌を行った。反応終了後、室温まで冷却し、低沸点物をエバポレーターにて除去し、金属化合物(M-3)の粉体を得た。
【0237】
<レジスト組成物の調製>
(レジスト組成物1~3)
表1に示す各成分を混合して溶解し、各レジスト組成物を調製した。
【0238】
【表1】
【0239】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(M)-1~(M)-3:それぞれ上記の金属化合物(M-1)~(M-3)。
【0240】
(S)-1:4-メチル-2-ペンタノール
(S)-2:n-プロパノール
(S)-3:PGMEA
【0241】
<レジスト組成物精製品の製造>
前記レジスト組成物1~3を、表2に示す各フィルター及びろ過条件で濾過することによって、レジスト組成物精製品をそれぞれ製造した。
【0242】
【表2】
【0243】
各例のレジスト組成物精製品の製造に用いたフィルターを表3に示す。フィルター(1)及び(1-2)における多孔質膜は、特開2017-68262号公報に記載の製法に準じて得られる。なお、(1-1)、及び(1-2)のフィルターについて、パームポロメーター(PMI社製)を用いたハーフドライ法(ASTM E1294-89)による測定で得られた連通孔の平均孔径は、それぞれ約30nm、及び約50nmであった。
【0244】
【表3】
【0245】
[金属原子の含有量の測定]
各例のレジスト組成物精製品について、フィルター濾過前後の金属原子の含有量を測定した。各例の金属化合物を600℃で加熱し、金属酸化物の残留質量から金属化合物の含有量を求めた。前記金属化合物の含有量から、レジスト組成物の総質量に対する金属原子の含有量を算出した。結果を「金属原子含有量」として表4に示す。
【0246】
[パーティクル量の評価]
各例のレジスト組成物精製品について、動的光散乱法に基づいて、光散乱式液中粒子計数器[リオン株式会社製、型番:KS-41、光源:半導体レーザ励起固体レーザ(波長830nm、定格出力0.2W)、流量:10mL/分]を用いて、0.135μm以上のサイズの被計数体の計数を行った。計数は3回行い、その平均値を計測値とした。なお、上記光散乱式液中粒子計数器は、PSL(Polystyrene Latex)標準粒子液で校正を行った後に用いた。結果を「パーティクル量」として表4に示す。
【0247】
[コーティング欠陥の評価]
ヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を施した12インチシリコン基板上に、各例のレジスト組成物精製品をそれぞれ、スピンナーを用いて塗布し、ホットプレート上で、温度80℃で60秒間のプレベーク(PAB)処理を行い、乾燥することにより、膜厚40nmのレジスト膜を形成した。得られたレジスト膜について、表面欠陥観察装置(KLAテンコール社製、SurfScan SP5機器)を用い、40nmよりも大きい欠陥数を測定した。その結果を「欠陥数(個/679cm)」として表4に示した。
【0248】
【表4】
【0249】
表4に示す結果から、濾過によりレジスト組成物中の金属濃度は減少しないことが確認された。また、実施例のレジスト組成物精製品は、比較例のレジスト組成物精製品と比較して、パーティクル量およびコーティング欠陥が低減されていること、が確認された。
【符号の説明】
【0250】
1a 球状セル、1b 球状セル、5 連通孔。
図1