(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120713
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】バッテリーの異常検知システム、バッテリーの異常検知方法
(51)【国際特許分類】
G01K 11/32 20210101AFI20240829BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
G01K11/32 Z
H01M10/48 Z
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027710
(22)【出願日】2023-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】上田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英明
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】椎野 雅人
【テーマコード(参考)】
2F056
5H030
【Fターム(参考)】
2F056VF02
2F056VF07
5H030AA06
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF51
(57)【要約】
【課題】 環境温度の影響を抑制し、感度よく熱異常を検知することが可能な光センサを用いたバッテリーの異常検知システム等を提供する。
【解決手段】 記憶部12には、光源5及びプラスチックファイバ11が基準温度(25℃)の状態における、受光器7で受光される受光光強度と温度との関係を示す基準光強度曲線情報が記憶される。制御部8は、温度センサ6a、6bからの光源5及びプラスチックファイバ11の温度情報を取得し、温度情報に基づいて、異常を判別する光強度規格値を設定する光強度規格値作成手段として機能する。検知部9は、受光した光強度情報を取得し、受光光強度と設定された光強度規格値と比較する。受光光強度が光強度規格値を下回ると異常と判断して警報を発する。一方、受光光強度が光強度規格値以上である場合には、正常と判断する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光センサを用いたバッテリーの異常検知システムであって、
光源と、
一端が前記光源と光接続され、バッテリーのセルに沿って配置されるプラスチックファイバと、
前記プラスチックファイバの他端と光接続される受光器と、
前記受光器で受光した光強度に基づいて異常を検知することが可能な検知部と、
前記光源又は前記プラスチックファイバの少なくとも一方の環境温度を測定可能な温度センサと、
異常を判別する光強度規格値を設定する光強度規格値作成手段と、
前記光源及び前記プラスチックファイバが基準温度の状態における、前記受光器で受光される受光光強度と温度との関係を示す基準光強度曲線情報と、前記光源の温度と前記光源から出力される光出力との関係を示す光源温度依存情報又は前記プラスチックファイバの温度と前記プラスチックファイバを透過する透過光強度との関係を示すプラスチックファイバ温度依存情報とを記憶する記憶部と、
を具備し、
前記光強度規格値作成手段は、
前記温度センサによって、前記光源又は前記プラスチックファイバの温度情報を取得し、
前記温度情報から、光源温度依存情報又はプラスチックファイバ温度依存情報に基づいて、前記基準光強度曲線情報を補正し、補正基準光強度曲線情報を作成し、
前記補正基準光強度曲線情報に対して前記光強度規格値を作成し、
前記検知部によって、前記受光光強度と、前記光強度規格値とを比較して、前記受光光強度が前記光強度規格値から外れると、異常と判定し、前記受光光強度が前記光強度規格値の範囲内である場合には、前記温度センサによる、前記光源又は前記プラスチックファイバの前記温度情報の取得から異常判定までを繰り返すことが可能であることを特徴とするバッテリーの異常検知システム。
【請求項2】
複数の前記温度センサを有し、前記光源及び前記プラスチックファイバのそれぞれの環境温度を測定可能であり、
前記記憶部は、光源温度依存情報及びプラスチックファイバ温度依存情報を有し、
前記光強度規格値作成手段は、前記温度情報から、光源温度依存情報及びプラスチックファイバ温度依存情報に基づいて、前記基準光強度曲線情報を補正し、前記補正基準光強度曲線情報を作成することを特徴とする請求項1記載のバッテリーの異常検知システム。
【請求項3】
前記光強度規格値作成手段は、前記補正基準光強度曲線情報において、常温での光強度に所定の割合を乗じて、前記光強度規格値を算出することを特徴とする請求項1記載のバッテリーの異常検知システム。
【請求項4】
光センサを用いたバッテリーの異常検知方法であって、
光センサは、
光源と、
一端が前記光源と光接続され、バッテリーのセルに沿って配置されるプラスチックファイバと、
前記プラスチックファイバの他端と光接続される受光器と、
前記受光器で受光した光強度に基づいて異常を検知することが可能な検知部と、
前記光源又は前記プラスチックファイバの少なくとも一方の環境温度を測定可能な温度センサと、
を具備し、
前記光源及び前記プラスチックファイバが基準温度の状態における、前記受光器で受光される受光光強度と温度との関係を示す基準光強度曲線情報と、前記光源の温度と前記光源から出力される光出力との関係を示す光源温度依存情報又は前記プラスチックファイバの温度と前記プラスチックファイバを透過する透過光強度との関係を示すプラスチックファイバ温度依存情報を用い、
前記温度センサによって、前記光源又は前記プラスチックファイバの温度情報を取得する工程aと、
前記温度情報から、光源温度依存情報又はプラスチックファイバ温度依存情報に基づいて、前記基準光強度曲線情報を補正し、補正基準光強度曲線情報を作成する工程bと、
前記補正基準光強度曲線情報に対して光強度規格値を作成する工程cと、
前記検知部によって、前記受光光強度と、前記光強度規格値とを比較して、前記受光光強度が前記光強度規格値から外れると、異常と判定する工程dと、
を具備し、
前記工程aから前記工程dを繰り返すことを特徴とするバッテリーの異常検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサを用いてバッテリーの熱異常を検知することが可能なバッテリーの異常検知システム及びバッテリーの異常検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器や電気自動車の需要が増加しており、バッテリーについても開発が進んでいる。例えば、リチウムイオンバッテリーは、正極側と負極側を別々の電解液で満たし、これらがセパレータで仕切られた構造を有する。充放電の際には、リチウムイオンがセパレータを通過することで反応が進み、充電及び放電を行うことができる。
【0003】
ここで、何らかの原因(過充電、内部短絡、外部発熱など)がトリガーとなり、電池温度が上昇すると、セパレータのメルトダウンに至る場合がある。セパレータがメルトダウンすると、全面短絡が生じ、セル全体の発熱が進み、いわゆる熱暴走が生じる恐れがある。
【0004】
このような熱暴走に起因して、電気自動車の火災事故も発生しており、例えば、2020年には、国連のUN規則において、乗員室に危険が発生する前に脱出を可能とする時間、又は5分前に事前警告表示を行うことが規定された。このため、バッテリーの異常を迅速に検知することが可能な方法が要求される。
【0005】
このようなバッテリーの異常検知方法としては、例えば、バッテリーの温度を測定する温度センサ、圧力を測定する圧力センサ、およびガス濃度を測定するガスセンサを用いたバッテリー異常検知装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、通常、複数のセルが連結されてバッテリースタックが構成され、バッテリーは、複数のバッテリースタックが集合されて構成される。また、セルの温度を測定する温度センサとしては、一般的にセルに接触するサーミスタが使用される。しかし、すべてのセルごとにサーミスタを配置するのは配策面やコスト面から問題がある。
【0008】
これに対し、光ファイバ(光センサ)を用いてスタック全体を一括して温度測定する方法もある。光センサを用いて温度測定を行うことで、セルの個々に温度センサを配置する必要がない。しかし、例えば、後方散乱光を計測するようなOTDRは、どのセルが異常であるかの位置も特定はできるものの、装置が大型であり高価である。
【0009】
一方、光ファイバの透過光の減衰・遮断により異常を検知する光センサを用いれば、どのセルが異常であるかは把握できないが、構造が簡易であり異常検知にも適用可能である。しかし、このような光センサを用いて温度測定を行った際には、各部材の周囲の環境温度の変化の影響を受けるため、必ずしも精度の良い測定が容易ではなかった。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、環境温度の影響を抑制し、感度よく熱異常を検知することが可能な光センサを用いたバッテリーの異常検知システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、光センサを用いたバッテリーの異常検知システムであって、光源と、一端が前記光源と光接続され、バッテリーのセルに沿って配置されるプラスチックファイバと、前記プラスチックファイバの他端と光接続される受光器と、前記受光器で受光した光強度に基づいて異常を検知することが可能な検知部と、前記光源又は前記プラスチックファイバの少なくとも一方の環境温度を測定可能な温度センサと、異常を判別する光強度規格値を設定する光強度規格値作成手段と、前記光源及び前記プラスチックファイバが基準温度の状態における、前記受光器で受光される受光光強度と温度との関係を示す基準光強度曲線情報と、前記光源の温度と前記光源から出力される光出力との関係を示す光源温度依存情報又は前記プラスチックファイバの温度と前記プラスチックファイバを透過する透過光強度との関係を示すプラスチックファイバ温度依存情報とを記憶する記憶部と、を具備し、前記光強度規格値作成手段は、前記温度センサによって、前記光源又は前記プラスチックファイバの温度情報を取得し、前記温度情報から、光源温度依存情報又はプラスチックファイバ温度依存情報に基づいて、前記基準光強度曲線情報を補正し、補正基準光強度曲線情報を作成し、前記補正基準光強度曲線情報に対して前記光強度規格値を作成し、前記検知部によって、前記受光光強度と、前記光強度規格値とを比較して、前記受光光強度が前記光強度規格値から外れると、異常と判定し、前記受光光強度が前記光強度規格値の範囲内である場合には、前記温度センサによる、前記光源又は前記プラスチックファイバの前記温度情報の取得から異常判定までを繰り返すことが可能であることを特徴とするバッテリーの異常検知システムである。
【0012】
複数の前記温度センサを有し、前記光源及び前記プラスチックファイバのそれぞれの環境温度を測定可能であり、前記記憶部は、光源温度依存情報及びプラスチックファイバ温度依存情報を有し、前記光強度規格値作成手段は、前記温度情報から、光源温度依存情報及びプラスチックファイバ温度依存情報に基づいて、前記基準光強度曲線情報を補正し、前記補正基準光強度曲線情報を作成してもよい。
【0013】
前記光強度規格値作成手段は、前記補正基準光強度曲線情報において、常温での光強度に所定の割合を乗じて、前記光強度規格値を算出してもよい。
【0014】
第1の発明によれば、光源から出射される光強度又はプラスチックファイバの透過光強度の少なくとも一方の温度依存性を考慮して光強度曲線を補正し、補正した曲線に基づいて合否判定を行う規格値を設定するため、環境温度等に対して高い精度で異常を検知することができる。
【0015】
特に、光源温度とプラスチックファイバの温度の両方を考慮することで、より精度を高めることができる。
【0016】
また、補正基準光強度曲線の常温での光強度に所定の割合を乗じることで、常に一定の基準で合否を判定することができる。
【0017】
第2の発明は、光センサを用いたバッテリーの異常検知方法であって、光センサは、光源と、一端が前記光源と光接続され、バッテリーのセルに沿って配置されるプラスチックファイバと、前記プラスチックファイバの他端と光接続される受光器と、前記受光器で受光した光強度に基づいて異常を検知することが可能な検知部と、前記光源又は前記プラスチックファイバの少なくとも一方の環境温度を測定可能な温度センサと、を具備し、前記光源及び前記プラスチックファイバが基準温度の状態における、前記受光器で受光される受光光強度と温度との関係を示す基準光強度曲線情報と、前記光源の温度と前記光源から出力される光出力との関係を示す光源温度依存情報又は前記プラスチックファイバの温度と前記プラスチックファイバを透過する透過光強度との関係を示すプラスチックファイバ温度依存情報を用い、前記温度センサによって、前記光源又は前記プラスチックファイバの温度情報を取得する工程aと、前記温度情報から、光源温度依存情報又はプラスチックファイバ温度依存情報に基づいて、前記基準光強度曲線情報を補正し、補正基準光強度曲線情報を作成する工程bと、前記補正基準光強度曲線情報に対して光強度規格値を作成する工程cと、前記検知部によって、前記受光光強度と、前記光強度規格値とを比較して、前記受光光強度が前記光強度規格値から外れると、異常と判定する工程dと、を具備し、前記工程aから前記工程dを繰り返すことを特徴とするバッテリーの異常検知方法である。
【0018】
第2の発明によれば、環境温度の影響を抑制し、精度よくバッテリーの温度異常を検知することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、環境温度の影響を抑制し、感度よく熱異常を検知することが可能な光センサを用いたバッテリーの異常検知システム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】バッテリー異常検知システム10の構成を示す概略図。
【
図2】バッテリー異常検知システム10の動作を示すフローチャート。
【
図4】光ファイバ径ごとの環境温度による損失変動の関係を示す図。
【
図5】光源ごとの環境温度による損失変動の関係を示す図。
【
図7】補正基準光強度曲線に基づいて設定された光強度規格値を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態にかかるバッテリー異常検知システムについて説明する。
図1は、バッテリー異常検知システム10を示す概略図である。バッテリー異常検知システム10は、光センサ1が利用されたものである。光センサ1は、温度異常を検知可能であって、主に、電源3、光源5、温度センサ6a、6b、受光器7、制御部8、検知部9、プラスチックファイバ11、記憶部12等から構成される。
【0022】
光源5は、例えばLED光源である。光源5には、プラスチックファイバ11の一端が光接続される。なお、複数の波長からなる光源5をスイッチで切り替えて、プラスチックファイバ11へ入射させる光の波長を切り替えることが可能であってもよい。例えば、波長400nm以上460nm以下の青色LEDと、波長500nm以上560nm以下の緑色LEDと、波長630nm以上700nm以下の赤色LEDのように、互いに波長の異なる複数の光源5が用い、スイッチによって切り替え可能としてもよい。
【0023】
プラスチックファイバ11は、バッテリーの複数のセル13(スタック15)に沿って配置される。図示した例では、1本のプラスチックファイバ11が、複数のスタック15に沿って配置される。また、プラスチックファイバ11の他端には受光器7が光接続される。
【0024】
受光器7には検知部9が接続される。検知部9は、受光器7で受光した光強度に基づいて、異常を検知することが可能である。例えば、検知部9は、受光する光の強度をモニタリングして、いずれかのセル13の温度異常に伴う光強度の低下(損失の増加)によって、バッテリーの温度異常を検知可能である。
【0025】
例えば、検知部9は、受光器7で受光した光の光強度があらかじめ設定された光強度を下回った場合(すなわち、プラスチックファイバの光損失が所定以上大きくなった場合)に、バッテリーが異常であると判定する。なお、光センサ1に用いられるプラスチックファイバ11としては、100℃以上において軟化又は溶融するものが望ましい。このようなプラスチックファイバ11によれば、100℃を超えると軟化・溶融によって急激に損失が増大するため、検知部9によって異常を検知することが可能である。
【0026】
光源5には、光源5の環境温度を測定可能な温度センサ6aが配置される。また、プラスチックファイバ11には、プラスチックファイバ11の環境温度を測定可能な温度センサ6bが配置される。なお、温度センサ6aは、光源5が配置される空間又は筐体等の温度を測定可能であればよい。また、温度センサ6bは、セル13(スタック15)が収容される筐体17の温度を測定可能であればよい。
【0027】
記憶部12には、波長ごとの光源5の温度と光源5から出力される光出力との関係を示す光源温度依存情報と、プラスチックファイバ11の種類ごとの温度とプラスチックファイバ11を透過する透過光強度との関係を示すプラスチックファイバ温度依存情報が記憶される。
【0028】
また、記憶部12には、光源5及びプラスチックファイバ11が基準温度(25℃)の状態における、受光器7で受光される受光光強度と温度との関係を示す基準光強度曲線情報が記憶される。光源温度依存情報、基準光強度曲線情報、プラスチックファイバ温度依存情報については詳細を後述する。
【0029】
制御部8は、温度センサ6a、6bからの光源5及びプラスチックファイバ11の温度情報を取得し、温度情報に基づいて、異常を判別する光強度規格値を設定する光強度規格値作成手段として機能する。すなわち、制御部8は、光強度規格値作成手段で作成された光強度規格値を検知部9に設定し、検知部9は、受光器7で受光した光が光強度規格値を下回った際に異常と判断することができる。
【0030】
次に、光センサ1を用いたバッテリー異常検知システムの動作及びバッテリーの異常検知方法について説明する。
図2は、バッテリー異常検知システムの動作を示すフローチャートである。
【0031】
まず、制御部8(光強度規格値作成手段)は、記憶部12から基準光強度曲線情報を読み出して設定する(ステップ101)。
図3は、基準光強度曲線情報(図中曲線A)を示す概念図である。
【0032】
図中の曲線Aは、以下のようにあらかじめ設定される。まず、基準温度(25℃)において光源5から出射した光をプラスチックファイバ11に導入し、受光器7で受光した光強度を測定する。次に、プラスチックファイバ11の一部(一点)に熱源を接触させる。この熱源の温度を変化させ(図中横軸)、それぞれの温度における光強度の変化(基準温度を1とした場合の規格値であって、図中縦軸)をプロットすることで得ることができる。
【0033】
すなわち、曲線Aは、プラスチックファイバ11において、局所的な温度変化(温度上昇)に伴う、光強度の低下を示すものである。このため、この曲線Aを用いて異常を判別することもできる。例えば、受光器7で受光した光強度が、曲線Aの25℃における光強度の80%を下回った際に異常と判断することもできる。しかし、本実施形態は、光センサ1の各部の環境温度の影響を排除して、より精度の高い異常判定を行うものである。
【0034】
そこで、次に制御部8は、光源5及びプラスチックファイバ11のそれぞれの温度情報を温度センサ6a、6bを用いて取得する(ステップ102)。ここで、光源5は、環境温度によって出射する光強度が変化する。また、プラスチックファイバ11も、環境温度(前述した熱源によるスポット温度ではなく、略全体にわたる温度)によって透過する透過光強度が変化する。
【0035】
例えば、
図4は、プラスチックファイバ11の径ごとの温度変化による透過光強度変化を示す図である。また、
図5は、光源(波長)ごとの温度変化による出力変化を示す図である。このように、光源5の波長やプラスチックファイバ11の径によって温度依存性が異なるが、環境温度によって、光源5から出射する光の強度やプラスチックファイバ11を伝播する光の強度が変化する。
【0036】
前述したように、記憶部12には、
図4、
図5で示すようなプラスチックファイバ温度依存情報及び光源温度依存情報が記憶されている。このため、制御部8は、光センサ1に使用されている光源5及びプラスチックファイバ11の種類に応じたプラスチックファイバ温度依存情報及び光源温度依存情報を読み出す。
【0037】
なお、光センサ1に使用されている光源5及びプラスチックファイバ11の種類に応じたプラスチックファイバ温度依存情報及び光源温度依存情報のみを記憶部12に記憶させておいてもよく、又は、複数種類の光源又はプラスチックファイバの種類ごとにプラスチックファイバ温度依存情報及び光源温度依存情報を記憶して起き、使用する光源5及びプラスチックファイバ11を予め選択して設定してもよい。
【0038】
次に、制御部8は、光源5の温度情報とプラスチックファイバ11の温度情報から、光源温度依存情報及びプラスチックファイバ温度依存情報に基づいて、基準光強度曲線情報を補正し、補正基準光強度曲線情報を作成する(ステップ103)。
【0039】
図6は、基準光強度曲線(A)に対して、補正基準光強度曲線(B)を示す図である。図示した例では、曲線Aよりも曲線Bが低い値となる。
【0040】
例えば、光源5として青色LEDを用いた場合には、光源5の環境温度が基準温度よりも低い場合に、基準温度よりも光強度が低くなる。また、プラスチックファイバ11として250μmを用いた場合には、プラスチックファイバ11の環境温度が基準温度よりも低い場合に、透過光強度が低くなる。すなわち、基準光強度曲線に対し、光源5の環境温度による補正と、プラスチックファイバ11の環境温度による補正をそれぞれ行い、補正基準光強度曲線を作成する。
【0041】
次に、制御部8は、補正基準光強度曲線Bに対して、光強度規格値を設定する(ステップ104)。
図7は、光強度規格値(図中C)を示す図である。光強度規格値は、異常を判断するための受光光強度の下限値である。制御部8は、補正基準光強度曲線Bにおいて、常温(基準温度)での光強度に所定の割合(例えば80%)を乗じて、光強度規格値を算出する。
【0042】
検知部9は、受光した光強度情報を取得し(ステップ105)、受光光強度と設定された光強度規格値と比較する(ステップ106)。受光光強度が光強度規格値を下回ると、検知部9は異常と判断して警報を発する(ステップ107、108)。
【0043】
一方、受光光強度が光強度規格値以上である場合には、検知部9は、正常と判断して、ステップ102に戻る。すなわち、常に光源5の環境温度とプラスチックファイバ11の環境温度によって、異常判断を行う基準光強度曲線を補正して、使用条件に即した光強度規格値を更新する工程を繰り返す。
【0044】
以上、本実施形態によれば、常に一定の光強度規格値(異常と判断する最低受光光強度)と実際の受光光強度とを比較して異常を検知するのではなく、光源5の環境温度の影響やプラスチックファイバ11の環境温度の影響を考慮して、常に適切な光強度規格値を設定するため、精度よく異常を判断することができる。
【0045】
また、環境温度を考慮しない場合と比較して、光強度規格値を高めに設定しても、誤判定が生じにくい。すなわち、基準温度における受光光強度と異常判断を行う光強度規格値とを近づけることができる。この結果、異常が発生した際に、より早期に異常を検知することができる。
【0046】
なお、上述した実施形態では、光源温度依存情報とプラスチックファイバ温度依存情報の両方を利用して制御を行う例を説明したが、いずれか一方のみに基づく制御であってもよい。例えば、光源5又はプラスチックファイバ11の少なくとも一方の環境温度を測定可能な温度センサを用いればよい。
【0047】
また、この場合、記憶部12には、波長ごとの光源5の温度と光源5から出力される光出力との関係を示す光源温度依存情報、又はプラスチックファイバ11の種類ごとの温度とプラスチックファイバ11を透過する透過光強度との関係を示すプラスチックファイバ温度依存情報の少なくとも一方が記憶されていればよい。
【0048】
すなわち、制御部8は、温度センサによって取得した光源5又はプラスチックファイバ11の一方の温度情報を取得して、この温度情報から、光源温度依存情報又はプラスチックファイバ温度依存情報の一方に基づいて、基準光強度曲線情報を補正し、補正基準光強度曲線情報を作成してもよい。
【0049】
なお、光強度規格値としては、受光光強度の下限値のみでなくてもよい。例えば、制御部8は、補正基準光強度曲線の基準温度の値に対して上下限を設定してもよい。なお、バッテリーの温度異常(温度上昇)によって受光光強度が上昇することはないが、受光光強度の上限値を設定することで、例えば光センサ1自体のシステムの異常が生じた場合を検出することができる。
【0050】
この場合、検知部9は、受光光強度が光強度規格値の上下限範囲から外れると異常と判定し、受光光強度が光強度規格値の範囲内である場合には、制御部8は、温度センサによる光源5又はプラスチックファイバ11の温度情報の取得から異常判定までを繰り返すことで、精度よく異常を検知することができる。
【0051】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0052】
1………光センサ
3………電源
5………光源
6a、6b………温度センサ
7………受光器
8………制御部
9………検知部
10………バッテリー異常検知システム
11………プラスチックファイバ
12………記憶部
13………セル
15………スタック
17………筐体