(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120854
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】塗料吹付資材の評価方法、塗料吹付資材の評価指標推定方法、遮光用塗布剤使用量決定方法、及び直達指数測定装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20240829BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240829BHJP
A01G 13/02 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
A01G9/14 S
G01N21/17 Z
A01G13/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008403
(22)【出願日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2023027175
(32)【優先日】2023-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】506158197
【氏名又は名称】公立大学法人 滋賀県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】松田 壮顕
(72)【発明者】
【氏名】山中 良祐
(72)【発明者】
【氏名】吉越 恆
【テーマコード(参考)】
2B024
2B029
2G059
【Fターム(参考)】
2B024DA02
2B024DB01
2B029EB01
2B029EC02
2B029EC12
2G059AA03
2G059AA05
2G059DD13
2G059DD20
2G059EE01
2G059EE02
2G059FF08
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】異なる塗料吹付資材同士の直達光率や散乱光率を比較評価できる塗料吹付資材の評価方法、評価対象塗料吹付資材についての単位面積当たりの塗布量から直達光率や散乱光率を推定できる塗料吹付資材の評価指標推定方法、単位面積当たりの塗布量と塗料吹付予定面積とから遮光用塗布剤使用量を決定できる遮光用塗布剤使用量決定方法、塗料吹付資材の評価に用いることができる直達指数測定装置を提供すること。
【解決手段】同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率と、直達光率測定装置10を用いて測定し、塗布剤無直達光率に対する塗布剤有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、直達指数を、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の評価指標に用い、評価対象塗料吹付資材の直達指数を推定し、単位面積当たりの塗布量と、遮光用塗布剤使用量を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、前記遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを、直達光率測定装置を用いて測定し、
測定された前記塗布剤無直達光率に対する、測定された前記塗布剤有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、
前記直達指数を前記遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の評価指標に用いる
ことを特徴とする塗料吹付資材の評価方法。
【請求項2】
同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、前記遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを、直達光率測定装置を用いて測定し、
測定された前記塗布剤無直達光率に対する、測定された前記塗布剤有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、
単位面積当たりの塗布量が異なる複数の塗料吹付資材から得られる前記直達指数と単位面積当たりの前記塗布量との関係式を用いて評価対象塗料吹付資材の前記直達指数を推定する塗料吹付資材の評価指標推定方法であって、
前記評価対象塗料吹付資材についての単位面積当たりの前記塗布量を特定し、
特定された単位面積当たりの前記塗布量から前記関係式を用いて前記評価対象塗料吹付資材についての前記直達指数を推定する
ことを特徴とする塗料吹付資材の評価指標推定方法。
【請求項3】
同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、前記遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを、直達光率測定装置を用いて測定し、
測定された前記塗布剤無直達光率に対する、測定された前記塗布剤有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、
単位面積当たりの塗布量が異なる複数の塗料吹付資材から得られる前記直達指数と単位面積当たりの前記塗布量との関係式を用いて塗料吹付予定資材に対する遮光用塗布剤使用量を決定する遮光用塗布剤使用量決定方法であって、
前記塗料吹付予定資材について、塗料吹付予定面積と予定直達指数とを特定し、
特定された前記予定直達指数から前記関係式を用いて単位面積当たりの前記塗布量を決定し、
決定された単位面積当たりの前記塗布量と前記塗料吹付予定面積とから遮光用塗布剤使用量を決定する
ことを特徴とする遮光用塗布剤使用量決定方法。
【請求項4】
請求項1に記載の塗料吹付資材の評価方法に用いる直達指数測定装置であって、
前記遮光用塗布剤を塗布しない場合での散乱光と直達光とを測定する第1日射計と、
前記遮光用塗布剤を塗布しない場合での前記直達光を遮蔽する第1遮蔽部材と、
前記第1遮蔽部材によって前記直達光を遮蔽することで、前記遮光用塗布剤を塗布しない場合での前記散乱光を測定する第2日射計と、
前記遮光用塗布剤を塗布した場合での前記散乱光と前記直達光とを測定する第3日射計と、
前記遮光用塗布剤を塗布した場合での前記直達光を遮蔽する第2遮蔽部材と、
前記第2遮蔽部材によって前記直達光を遮蔽することで、前記遮光用塗布剤を塗布した場合での前記散乱光を測定する第4日射計と
を備え、
前記第1日射計の設置面、前記第2日射計の設置面、前記第3日射計の設置面、及び前記第4日射計の設置面を平行とした
ことを特徴とする直達指数測定装置。
【請求項5】
同一時間帯における、前記第1日射計で計測される第1日射量、前記第2日射計で計測される第2日射量、前記第3日射計で計測される第3日射量、及び前記第4日射計で計測される第4日射量を記憶し、
前記第1日射量、前記第2日射量、前記第3日射量、及び前記第4日射量から前記直達指数を算出し、
算出される前記直達指数を表示する
ことを特徴とする請求項4に記載の直達指数測定装置。
【請求項6】
遮光用塗布剤を塗布しない場合での散乱光と直達光とを測定する第1日射計と、
前記遮光用塗布剤を塗布しない場合での前記直達光を遮蔽する第1遮蔽部材と、
前記第1遮蔽部材によって前記直達光を遮蔽することで、前記遮光用塗布剤を塗布しない場合での前記散乱光を測定する第2日射計と、
前記遮光用塗布剤を塗布した場合での前記散乱光と前記直達光とを測定する第3日射計と、
前記遮光用塗布剤を塗布した場合での前記直達光を遮蔽する第2遮蔽部材と、
前記第2遮蔽部材によって前記直達光を遮蔽することで、前記遮光用塗布剤を塗布した場合での前記散乱光を測定する第4日射計と
を備え、
前記第1日射計で計測される第1日射量及び前記第2日射計で計測される第2日射量から前記遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率を算出し、
前記第3日射計で計測される第3日射量及び前記第4日射計で計測される第4日射量から前記遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率を算出し、
前記塗布剤無直達光率及び前記塗布剤有直達光率から直達指数を算出する
ことを特徴とする直達指数測定装置。
【請求項7】
前記遮光用塗布剤を塗布しない場合の前記塗布剤無直達光率を測定する塗布剤無用測定筐体と、
前記遮光用塗布剤を塗布した場合の前記塗布剤有直達光率を測定する塗布剤有用測定筐体と、
を有し、
前記塗布剤無用測定筐体には、前記第1日射計、前記第1遮蔽部材、及び前記第2日射計を配置し、
前記塗布剤有用測定筐体には、前記第3日射計、前記第2遮蔽部材、及び前記第4日射計を配置した
ことを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の直達指数測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料吹付資材が光成分(直達光率・散乱光率)に与える影響を、測定時の気象条件に左右されずに評価できる塗料吹付資材の評価方法、塗料吹付資材の評価指標推定方法、遮光用塗布剤使用量決定方法、及び直達指数測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遮光資材や遮光用塗布剤の性能は、「遮光率」として提示されている。しかし、各資材メーカーのカタログ表示は、メーカー独自の基準を用いており、遮光性能を定量的に評価する指標が存在しない。
園芸施設では、気候変動による気温の上昇、豪雨の頻発、長雨傾向などにより、厳しい労働環境、栽培環境となっており、特に夏季から初秋にかけて野菜の価格が高騰している。このような環境下で、収益向上のため夏季栽培の技術開発が求められている。
ところで、直達光や散乱光という概念が近年注目されている。散乱光の割合が高いと、光がハウス全体に広がることで、施設部材や植物体の影ができにくくなり、光合成量が増加し、生育のばらつきが減少する。午前中の急激な温度上昇を抑制することができれば、葉焼けや高温障害を回避することができる。
なお、特許文献1には、環境光の成分比(比情報)を算出することが記載され、特許文献2には、直達光と散乱光との比と基準値との比較結果に基づいて天候を検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7156282号公報
【特許文献2】特許第6655802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、遮光資材や遮光用塗布剤は、直達光や散乱光についての評価指標がない。
直達光や散乱光を測定する装置はあるが、同じ遮光資材であっても気象条件が異なれば測定値が変わってしまう。従って、遮光資材の製品同士の性能比較ができない。
図1は本発明の遮光資材の評価方法の基本概念を示す説明図である。
資材Aと資材Bとは遮光率が同じ資材である。
図1(a)は、農業用ポリオレフィン系フィルムに資材A又は資材Bを被覆して測定した直達光率を示している。資材Aは晴れの日、資材Bは曇りの日に測定した場合を想定している。資材Aの直達光率が資材Bの直達光率よりも高くなっているが、測定日の天候が異なるため、
図1(a)から資材Bが資材Aよりも散乱光率が高いとは必ずしも言えない。
図1(b)は、同一気象条件の下で測定された資材無直達光率に対する資材有直達光率が一次関数の回帰式で表せると仮定した場合の概念を示している。
資材Aは、資材有直達光率が0.5であるが、仮に同時測定における資材無直達光率が0.9であり、資材Bは、資材有直達光率が0.3であるが、仮に同時測定における資材無直達光率が0.4であったとし、資材無直達光率に対する資材有直達光率が一次関数の回帰式で表せると仮定すると、
図1(b)に示す直線となり、資材Bについては、資材Aと同一条件(資材無直達光率が0.9)では、資材Aの直達光率0.5よりも高い直達光率になると推測できる。
すなわち、資材Aの傾きが資材Bよりも小さいため、資材Aが資材Bよりも散乱光率が高いと判断できる。
なお、
図1(b)では、資材による直達光率への影響がゼロの場合には、横軸1.0、縦軸1.0の45度の角度の直線となる。従って、直線の傾きが小さくなるほど、直達光率は低く散乱光率は高くなる。
【0005】
本発明は、異なる塗料吹付資材同士の直達光率や散乱光率を比較評価できる塗料吹付資材の評価方法を提供することを目的とする。
また本発明は、評価対象塗料吹付資材についての単位面積当たりの塗布量から直達光率や散乱光率を推定できる塗料吹付資材の評価指標推定方法を提供することを目的とする。
また本発明は、単位面積当たりの塗布量と塗料吹付予定面積とから遮光用塗布剤使用量を決定できる遮光用塗布剤使用量決定方法を提供することを目的とする。
また本発明は、塗料吹付資材の評価方法に用いることができる直達指数測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の塗料吹付資材の評価方法は、同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、前記遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを、直達光率測定装置10を用いて測定し、測定された前記塗布剤無直達光率に対する、測定された前記塗布剤有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、前記直達指数を前記遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の評価指標に用いることを特徴とする。
請求項2記載の本発明の塗料吹付資材の評価指標推定方法は、同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、前記遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを、直達光率測定装置10を用いて測定し、測定された前記塗布剤無直達光率に対する、測定された前記塗布剤有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、単位面積当たりの塗布量が異なる複数の塗料吹付資材から得られる前記直達指数と単位面積当たりの前記塗布量との関係式を用いて評価対象塗料吹付資材の前記直達指数を推定する塗料吹付資材の評価指標推定方法であって、前記評価対象塗料吹付資材についての単位面積当たりの前記塗布量を特定し、特定された単位面積当たりの前記塗布量から前記関係式を用いて前記評価対象塗料吹付資材についての前記直達指数を推定することを特徴とする。
請求項3記載の本発明の遮光用塗布剤使用量決定方法は、同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、前記遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを、直達光率測定装置10を用いて測定し、測定された前記塗布剤無直達光率に対する、測定された前記塗布剤有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、単位面積当たりの塗布量が異なる複数の塗料吹付資材から得られる前記直達指数と単位面積当たりの前記塗布量との関係式を用いて塗料吹付予定資材に対する遮光用塗布剤使用量を決定する遮光用塗布剤使用量決定方法であって、前記塗料吹付予定資材について、塗料吹付予定面積と予定直達指数とを特定し、特定された前記予定直達指数から前記関係式を用いて単位面積当たりの前記塗布量を決定し、決定された単位面積当たりの前記塗布量と前記塗料吹付予定面積とから遮光用塗布剤使用量を決定することを特徴とする。
請求項4記載の本発明の直達指数測定装置20は、請求項1に記載の塗料吹付資材の評価方法に用いる直達指数測定装置20であって、前記遮光用塗布剤を塗布しない場合での散乱光と直達光とを測定する第1日射計11aと、前記遮光用塗布剤を塗布しない場合での前記直達光を遮蔽する第1遮蔽部材13aと、前記第1遮蔽部材13aによって前記直達光を遮蔽することで、前記遮光用塗布剤を塗布しない場合での前記散乱光を測定する第2日射計11bと、前記遮光用塗布剤を塗布した場合での前記散乱光と前記直達光とを測定する第3日射計11cと、前記遮光用塗布剤を塗布した場合での前記直達光を遮蔽する第2遮蔽部材13bと、前記第2遮蔽部材13bによって前記直達光を遮蔽することで、前記遮光用塗布剤を塗布した場合での前記散乱光を測定する第4日射計11dとを備え、前記第1日射計11aの設置面、前記第2日射計11bの設置面、前記第3日射計11cの設置面、及び前記第4日射計11dの設置面を平行としたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の直達指数測定装置20において、同一時間帯における、前記第1日射計11aで計測される第1日射量、前記第2日射計11bで計測される第2日射量、前記第3日射計11cで計測される第3日射量、及び前記第4日射計11dで計測される第4日射量を記憶し、前記第1日射量、前記第2日射量、前記第3日射量、及び前記第4日射量から前記直達指数を算出し、算出される前記直達指数を表示することを特徴とする。
請求項6記載の本発明の直達指数測定装置20は、遮光用塗布剤を塗布しない場合での散乱光と直達光とを測定する第1日射計11aと、前記遮光用塗布剤を塗布しない場合での前記直達光を遮蔽する第1遮蔽部材13aと、前記第1遮蔽部材13aによって前記直達光を遮蔽することで、前記遮光用塗布剤を塗布しない場合での前記散乱光を測定する第2日射計11bと、前記遮光用塗布剤を塗布した場合での前記散乱光と前記直達光とを測定する第3日射計11cと、前記遮光用塗布剤を塗布した場合での前記直達光を遮蔽する第2遮蔽部材13bと、前記第2遮蔽部材13bによって前記直達光を遮蔽することで、前記遮光用塗布剤を塗布した場合での前記散乱光を測定する第4日射計11dとを備え、前記第1日射計で計測される第1日射量及び前記第2日射計で計測される第2日射量から前記遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率を算出し、前記第3日射計で計測される第3日射量及び前記第4日射計で計測される第4日射量から前記遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率を算出し、前記塗布剤無直達光率及び前記塗布剤有直達光率から直達指数を算出することを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の直達指数測定装置20において、前記遮光用塗布剤を塗布しない場合の前記塗布剤無直達光率を測定する塗布剤無用測定筐体21と、前記遮光用塗布剤を塗布した場合の前記塗布剤有直達光率を測定する塗布剤有用測定筐体22と、を有し、前記塗布剤無用測定筐体21には、前記第1日射計11a、前記第1遮蔽部材13a、及び前記第2日射計11bを配置し、前記塗布剤有用測定筐体22には、前記第3日射計11c、前記第2遮蔽部材13b、及び前記第4日射計11dを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の塗料吹付資材の評価方法によれば、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材が同じであれば測定時の気象条件に左右されることなく、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の固有値である直達指数を得ることができ、異なる塗料吹付資材同士の直達光率や散乱光率を比較評価できる。
また本発明の塗料吹付資材の評価指標推定方法によれば、評価対象塗料吹付資材についての単位面積当たりの塗布量が分かれば、関係式を用いて直達指数を推定し、直達光率や散乱光率を推定できる。
また本発明の遮光用塗布剤使用量決定方法によれば、評価対象塗料吹付資材についての塗料吹付予定面積と予定直達指数が分かれば、関係式を用いて単位面積当たりの塗布量を決定し、単位面積当たりの塗布量と塗料吹付予定面積とから遮光用塗布剤使用量を決定できる。
また本発明の直達指数測定装置によれば、塗料吹付資材の評価に用いることができる直達指数を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の遮光資材の評価方法の基本概念を示す説明図
【
図2】測定に用いた直達光率測定装置及び測定条件を示す図
【
図4】明度が同じで遮光率が異なる3つの遮光資材による測定結果を示すグラフ
【
図5】遮光率が同じで明度が異なる3つの遮光資材による測定結果を示すグラフ
【
図6】直達指数と遮光資材の間隙率との関係を示すグラフ
【
図9】直達指数と単位面積当たりの塗布量が異なる塗料吹付資材との関係を示すグラフ
【
図10】本発明による遮光資材の評価方法に用いる直達指数測定装置を示す構成図
【
図11】灰色遮光資材及び黒色遮光資材についての直達指数と遮光資材の間隙率との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による塗料吹付資材の評価方法は、同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを、直達光率測定装置を用いて測定し、測定された塗布剤無直達光率に対する、測定された塗布剤有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、直達指数を、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の評価指標に用いるものである。同一の遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材であっても、測定時の気象条件によって測定される直達光率は異なるが、本実施の形態によれば、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材が同じであれば測定時の気象条件に左右されることなく、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の固有値である直達指数を得ることができ、異なる塗料吹付資材同士の直達光率や散乱光率を比較評価できる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態による塗料吹付資材の評価指標推定方法は、同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを、直達光率測定装置を用いて測定し、測定された塗布剤無直達光率に対する測定された塗布剤有直達光率を一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、単位面積当たりの塗布量が異なる複数の塗料吹付資材から得られる直達指数と単位面積当たりの塗布量との関係式を用いて評価対象塗料吹付資材の直達指数を推定する塗料吹付資材の評価指標推定方法であって、評価対象塗料吹付資材についての単位面積当たりの塗布量を特定し、特定された単位面積当たりの塗布量から関係式を用いて評価対象塗料吹付資材についての直達指数を推定するものである。単位面積当たりの塗布量と直達指数との間には関係式が成り立つため、本実施の形態によれば、評価対象塗料吹付資材についての単位面積当たりの塗布量が分かれば、関係式を用いて直達指数を推定し、直達光率や散乱光率を推定できる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態による遮光用塗布剤使用量決定方法は、同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを、直達光率測定装置を用いて測定し、測定された塗布剤無直達光率に対する測定された塗布剤有直達光率を一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、単位面積当たりの塗布量が異なる複数の塗料吹付資材から得られる直達指数と単位面積当たりの塗布量との関係式を用いて塗料吹付予定資材に対する遮光用塗布剤使用量を決定する遮光用塗布剤使用量決定方法であって、塗料吹付予定資材について、塗料吹付予定面積と予定直達指数とを特定し、特定された予定直達指数から関係式を用いて単位面積当たりの塗布量を決定し、決定された単位面積当たりの塗布量と塗料吹付予定面積とから遮光用塗布剤使用量を決定するものである。単位面積当たりの塗布量と直達指数との間には関係式が成り立つため、本実施の形態によれば、評価対象塗料吹付資材についての塗料吹付予定面積と予定直達指数が分かれば、関係式を用いて単位面積当たりの塗布量を決定し、単位面積当たりの塗布量と塗料吹付予定面積とから遮光用塗布剤使用量を決定できる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態による直達指数測定装置は、第1の実施の形態による塗料吹付資材の評価方法に用いる直達指数測定装置であって、遮光用塗布剤を塗布しない場合での散乱光と直達光とを測定する第1日射計と、遮光用塗布剤を塗布しない場合での直達光を遮蔽する第1遮蔽部材と、第1遮蔽部材によって直達光を遮蔽することで、遮光用塗布剤を塗布しない場合での散乱光を測定する第2日射計と、遮光用塗布剤を塗布した場合での散乱光と直達光とを測定する第3日射計と、遮光用塗布剤を塗布した場合での直達光を遮蔽する第2遮蔽部材と、第2遮蔽部材によって直達光を遮蔽することで、遮光用塗布剤を塗布した場合での散乱光を測定する第4日射計とを備え、第1日射計の設置面、第2日射計の設置面、第3日射計の設置面、及び第4日射計の設置面を平行としたものである。本実施の形態によれば、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の評価に用いることができる直達指数を算出することができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第4の実施の形態による直達指数測定装置において、同一時間帯における、第1日射計で計測される第1日射量、第2日射計で計測される第2日射量、第3日射計で計測される第3日射量、及び第4日射計で計測される第4日射量を記憶し、第1日射量、第2日射量、第3日射量、及び第4日射量から直達指数を算出し、
算出される直達指数を表示するものである。本実施の形態によれば、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の評価に用いることができる直達指数を算出することができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態による直達指数測定装置は、遮光用塗布剤を塗布しない場合での散乱光と直達光とを測定する第1日射計と、遮光用塗布剤を塗布しない場合での直達光を遮蔽する第1遮蔽部材と、第1遮蔽部材によって直達光を遮蔽することで、遮光用塗布剤を塗布しない場合での散乱光を測定する第2日射計と、遮光用塗布剤を塗布した場合での散乱光と直達光とを測定する第3日射計と、遮光用塗布剤を塗布した場合での直達光を遮蔽する第2遮蔽部材と、第2遮蔽部材によって直達光を遮蔽することで、遮光用塗布剤を塗布した場合での散乱光を測定する第4日射計とを備え、第1日射計で計測される第1日射量及び第2日射計で計測される第2日射量から遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率を算出し、第3日射計で計測される第3日射量及び第4日射計で計測される第4日射量から遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率を算出し、塗布剤無直達光率及び塗布剤有直達光率から直達指数を算出するものである。本実施の形態によれば、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の評価に用いることができる直達指数を算出することができる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第4から第6のいずれかの実施の形態による直達指数測定装置において、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率を測定する塗布剤無用測定筐体と、遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率を測定する塗布剤有用測定筐体と、を有し、塗布剤無用測定筐体には、第1日射計、第1遮蔽部材、及び第2日射計を配置し、塗布剤有用測定筐体には、第3日射計、第2遮蔽部材、及び第4日射計を配置したものである。本実施の形態によれば、塗布剤無用測定筐体と塗布剤有用測定筐体とで遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の固有値である直達指数を得ることができ、装置を小型化及び軽量化できる。
【実施例0016】
以下本発明の一実施例による遮光資材の評価方法について説明する。
図2は測定に用いた直達光率測定装置及び測定条件を示す図である。
図2(a)は直達光率測定装置の構成図を示している。
直達光率測定装置10は、上面開口を40cm×40cmとし、日射計11を視野角が120°となるように配置している。
直達光率測定装置10の4つの側面と底面には、内面を黒色に塗装(反射率0.6%)したアルミ板を用いている。
直達光率測定装置10の上面開口には、資材展張用蓋12を配置する。
2台の直達光率測定装置10については、日射計11の上方に遮蔽板13を設けている。この遮蔽板13によって、直達光を遮断している。
【0017】
直達光率測定装置10Aは、農業用ポリオレフィン系フィルム(農PO)だけを資材展張用蓋12に配置し、遮蔽板13を設けることで、農業用ポリオレフィン系フィルムによる散乱光を測定した。
直達光率測定装置10Bは、農業用ポリオレフィン系フィルム(農PO)だけを資材展張用蓋12に配置し、遮蔽板13を設けないことで、農業用ポリオレフィン系フィルムによる散乱光と直達光とを測定した。
直達光率測定装置10Cは、農業用ポリオレフィン系フィルム(農PO)と遮光資材とを資材展張用蓋12に配置し、遮蔽板13を設けることで、農業用ポリオレフィン系フィルムと遮光資材とによる散乱光を測定した。
直達光率測定装置10Dは、農業用ポリオレフィン系フィルム(農PO)と遮光資材とを資材展張用蓋12に配置し、遮蔽板13を設けないことで、農業用ポリオレフィン系フィルムと遮光資材とによる散乱光と直達光とを測定した。
【0018】
4台の直達光率測定装置10は、直達光が南中時刻に資材展張用蓋12に垂直となるようにして屋上に設置した。
なお、直達光率測定装置10Aと直達光率測定装置10Bとによって、農業用ポリオレフィン系フィルム(農PO)だけの直達光を測定できる。
また、直達光率測定装置10Cと直達光率測定装置10Dとによって、農業用ポリオレフィン系フィルム(農PO)と遮光資材とによる直達光を測定できる。
このように、4台の直達光率測定装置10を用いることで、同一気象条件の下で、遮光資材を用いない場合の資材無直達光率と、遮光資材を用いた場合の資材有直達光率とを測定できる。
【0019】
図3は測定に用いた遮光資材を示す図である。
図3(a)は遮光率が30%の白色遮光資材(遮30%(白))、
図3(b)は遮光率が40%の白色遮光資材(遮40%(白))、
図3(c)は遮光率が50%の白色遮光資材(遮50%(白))、
図3(d)は遮光率が50%の灰色遮光資材(遮50%(灰))、
図3(e)は遮光率が50%の黒色遮光資材(遮50%(黒))である。なお、遮光率の数値は、メーカーのカタログ値である。
【0020】
図4は明度が同じで遮光率が異なる3つの遮光資材による測定結果を示すグラフである。
図4に示すように、明度が同じで遮光率が異なる3つの遮光資材について、資材無直達光率に対する資材有直達光率は一次関数の回帰式で表すことができる。
そして、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、この直達指数を遮光資材の評価指標に用いることができる。
遮30%(白)の遮光資材の直達指数は0.8658、遮40%(白)の遮光資材の直達指数は0.8535、遮50%(白)の遮光資材の直達指数は0.7750となっている。
直達指数が最も小さい遮50%(白)の遮光資材は散乱光率が最も高く、直達指数が最も大きい遮30%(白)の遮光資材は直達光率が最も高いと評価できる。
同一の遮光資材であっても、測定時の気象条件によって測定される直達光率は異なるが、本実施例によれば、遮光資材が同じであれば測定時の気象条件に左右されることなく、遮光資材の固有値である直達指数を得ることができ、異なる遮光資材同士の直達光率や散乱光率を比較評価できる。
【0021】
図5は遮光率が同じで明度が異なる3つの遮光資材による測定結果を示すグラフである。
図5に示すように、遮光率が同じで明度が異なる3つの遮光資材について、資材無直達光率に対する資材有直達光率は一次関数の回帰式で表すことができる。
そして、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、この直達指数を遮光資材の評価指標に用いることができる。
遮50%(白)の遮光資材の直達指数は0.7750、遮50%(灰)の遮光資材の直達指数は0.8406、遮50%(黒)の遮光資材の直達指数は0.9929となっている。
直達指数が最も小さい遮50%(白)の遮光資材は散乱光率が最も高く、直達指数が最も大きい遮50%(黒)の遮光資材は直達光率が最も高いと評価できる。
同一の遮光資材であっても、測定時の気象条件によって測定される直達光率は異なるが、本実施例によれば、遮光資材が同じであれば測定時の気象条件に左右されることなく、遮光資材の固有値である直達指数を得ることができ、異なる遮光資材同士の直達光率や散乱光率を比較評価できる。
【0022】
図6は直達指数と遮光資材の間隙率との関係を示すグラフである。
図6の縦軸は、回帰直線の傾きであり直達指数である。
直達指数は、
図2を用いて説明したように、同一気象条件の下で、遮光資材を用いない場合の資材無直達光率と、遮光資材を用いた場合の資材有直達光率とを、直達光率測定装置10を用いて測定し、
図4及び
図5に示すように、測定された資材無直達光率に対する、測定された資材有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きである。直達指数は、値が大きいほど散乱効果が低くなる。
図6に示すように、間隙率が下がるほど散乱成分が多くなっている。
従って、
図6に示すような関係式を用いて、評価対象遮光資材の直達指数を推定することができる。
すなわち、間隙率が異なる複数の遮光資材から得られる直達指数と間隙率との関係式を用いて、評価対象遮光資材の直達指数を推定することができる。
例えば、評価対象遮光資材の間隙率が50%であれば直達指数は約0.7、評価対象遮光資材の間隙率が60%であれば直達指数は約0.8となる。
このように、評価対象遮光資材についての評価資材間隙率を特定し、特定された評価資材間隙率から関係式を用いて評価対象遮光資材についての直達指数を推定することができる。
なお、
図6では関係式をグラフで示しているが、間隙率と直達指数との対応表を用いることもでき、コンピュータによる処理を行う場合には、テーブルに対応データを持たせる。
評価対象遮光資材の間隙率(評価資材間隙率)は、算出又は計測によって特定することができる。
以上のように、遮光資材の間隙率と直達指数との間には関係式が成り立つため、評価対象遮光資材についての間隙率(評価資材間隙率)が分かれば、関係式を用いて直達指数を推定し、直達光率や散乱光率を推定できる。
【0023】
図6に示す横軸を明度とすることで、直達指数と遮光資材の明度との関係を示すことができる。
直達指数は、
図2を用いて説明したように、同一気象条件の下で、遮光資材を用いない場合の資材無直達光率と、遮光資材を用いた場合の資材有直達光率とを、直達光率測定装置10を用いて測定し、
図4及び
図5に示すように、測定された資材無直達光率に対する、測定された資材有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きである。直達指数は、値が大きいほど散乱効果が低くなる。
図5に示すように、遮50%(白)の遮光資材の直達指数は0.7750、遮50%(灰)の遮光資材の直達指数は0.8406、遮50%(黒)の遮光資材の直達指数は0.9929であり、明度が高くなるほど散乱成分が多くなっている。
従って、明度が異なる複数の遮光資材から得られる直達指数と明度との関係式を用いて、評価対象遮光資材の直達指数を推定することができる。
このように、評価対象遮光資材についての評価資材明度を特定し、特定された評価資材明度から関係式を用いて評価対象遮光資材についての直達指数を推定することができる。
評価対象遮光資材の明度(評価資材明度)は、算出又は計測によって特定することができる。
以上のように、遮光資材の明度と直達指数との間には関係式が成り立つため、評価対象遮光資材についての明度(評価資材明度)が分かれば、関係式を用いて直達指数を推定し、直達光率や散乱光率を推定できる。
【0024】
図7は直達指数を示すグラフである。
図7(a)は、横軸を農業用ポリオレフィン系フィルムだけの直達光率とし、縦軸を農業用ポリオレフィン系フィルムと遮光資材との直達光率とした場合であり、この場合の直達指数は1以下の値となる。
これに対して
図7(b)は、横軸を農業用ポリオレフィン系フィルムと遮光資材との直達光率とし、縦軸を農業用ポリオレフィン系フィルムだけの直達光率とした場合であり、この場合の直達指数は1以上の値となる。
直達指数は、
図7(a)による回帰直線の傾きでも、
図7(b)による回帰直線の傾きであってもよい。
なお、本実施例では、農業用遮光資材を用いて説明したが、その他の用途の遮光資材であってもよく、網戸、すだれ、カーテン、又はロールスクリーンのような遮光資材に対しても直達指数を評価指数に用いることができる。
【0025】
本実施例による遮光資材の評価方法は、同一気象条件の下で、遮光資材を用いない場合の資材無直達光率と、遮光資材を用いた場合の資材有直達光率とを、直達光率測定装置10を用いて測定し、測定された資材無直達光率に対する、測定された資材有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、直達指数を遮光資材の評価指標に用いるものである。同一の遮光資材であっても、測定時の気象条件によって測定される直達光率は異なるが、本実施の形態によれば、遮光資材が同じであれば測定時の気象条件に左右されることなく、遮光資材の固有値である直達指数を得ることができ、異なる遮光資材同士の直達光率や散乱光率を比較評価できる。
【0026】
また本実施例による遮光資材の評価指標推定方法は、同一気象条件の下で、遮光資材を用いない場合の資材無直達光率と、遮光資材を用いた場合の資材有直達光率とを、直達光率測定装置10を用いて測定し、測定された資材無直達光率に対する、測定された資材有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、間隙率が異なる複数の遮光資材から得られる直達指数と間隙率との関係式を用いて、評価対象遮光資材の直達指数を推定する遮光資材の評価指標推定方法であって、評価対象遮光資材についての評価資材間隙率を特定し、特定された評価資材間隙率から関係式を用いて評価対象遮光資材についての直達指数を推定するものである。遮光資材の間隙率と直達指数との間には関係式が成り立つため、本実施の形態によれば、評価対象遮光資材についての間隙率(評価資材間隙率)が分かれば、関係式を用いて直達指数を推定し、直達光率や散乱光率を推定できる。
【0027】
また本実施例による遮光資材の評価指標推定方法は、同一気象条件の下で、遮光資材を用いない場合の資材無直達光率と、遮光資材を用いた場合の資材有直達光率とを、直達光率測定装置10を用いて測定し、測定された資材無直達光率に対する、測定された資材有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、明度が異なる複数の遮光資材から得られる直達指数と明度との関係式を用いて、評価対象遮光資材の直達指数を推定する遮光資材の評価指標推定方法であって、評価対象遮光資材についての評価資材明度を特定し、特定された評価資材明度から関係式を用いて評価対象遮光資材についての直達指数を推定するものである。遮光資材の明度と直達指数との間には関係式が成り立つため、本実施の形態によれば、評価対象遮光資材についての明度が分かれば、関係式を用いて直達指数を推定し、直達光率や散乱光率を推定できる。
【0028】
図8は遮光用塗布剤による測定結果を示すグラフである。
図8において、(塗A)(塗B)(塗C)は、それぞれ成分が異なる遮光用塗布剤を示しており、例えば「遮30%」は、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の遮光率を示している。成分が同じで遮光率が異なるのは、塗布量を異ならせている。なお、遮光率の数値は、メーカーのカタログ値である。
図8は、横軸を農業用ポリオレフィン系フィルムだけの直達光率とし、縦軸を農業用ポリオレフィン系フィルムに遮光用塗布剤を吹き付けた塗料吹付資材の直達光率としている。
本実施例においても、
図2を用いて説明したように、4台の直達光率測定装置10を用いる。そして、同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを測定し、測定された塗布剤無直達光率に対する、測定された塗布剤有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、直達指数を、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の評価指標に用いる。
【0029】
図8に示すように、成分や塗布量が異なる塗料吹付資材について、塗布剤無直達光率に対する塗布剤有直達光率は一次関数の回帰式で表すことができる。
そして、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、この直達指数を遮光資材の評価指標に用いることができる。
遮30%(塗A)の塗料吹付資材の直達指数は0.8752、遮10%(塗B)の塗料吹付資材の直達指数は0.9557、遮13%(塗B)の塗料吹付資材の直達指数は0.8837、遮25%(塗B)の塗料吹付資材の直達指数は0.7453、遮22%(塗C)の塗料吹付資材の直達指数は0.3367、遮28%(塗C)の塗料吹付資材の直達指数は0.3019、遮39%(塗C)の塗料吹付資材の直達指数は0.1882となっている。
直達指数が最も小さい遮39%(塗C)の塗料吹付資材は散乱光率が最も高く、直達指数が最も大きい遮10%(塗B)の塗料吹付資材は直達光率が最も高いと評価できる。
同一の遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材であっても、測定時の気象条件によって測定される直達光率は異なるが、本実施例によれば、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材が同じであれば測定時の気象条件に左右されることなく、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の固有値である直達指数を得ることができ、異なる塗料吹付資材同士の直達光率や散乱光率を比較評価できる。
【0030】
図9は直達指数と単位面積当たりの塗布量が異なる塗料吹付資材との関係を示すグラフである。
図9の縦軸は、回帰直線の傾きであり直達指数である。
直達指数は、
図2を用いて説明したように、同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを、直達光率測定装置10を用いて測定し、
図8に示すように、測定された塗布剤無直達光率に対する測定された塗布剤有直達光率を一次関数の回帰式で表した際の傾きである。直達指数は、値が大きいほど散乱効果が低くなる。
図9に示すように、単位面積当たりの塗布量が多くなるほど散乱成分が多くなっている。
従って、
図9に示すような関係式を用いて、評価対象塗料吹付資材の直達指数を推定することができる。
すなわち、単位面積当たりの塗布量が異なる複数の塗料吹付資材から得られる直達指数と単位面積当たりの塗布量との関係式を用いて評価対象塗料吹付資材の直達指数を推定することができる。
例えば、塗布剤Bを用いる場合には、単位面積当たりの塗布量が50mL/m
2であれば、直達指数は約0.8となり、塗布剤Cを用いる場合には、単位面積当たりの塗布量が50mL/m
2であれば、直達指数は約0.2となる。
このように、評価対象塗料吹付資材についての単位面積当たりの塗布量を特定し、特定された単位面積当たりの塗布量から関係式を用いて評価対象塗料吹付資材についての直達指数を推定することができる。
なお、
図9では関係式をグラフで示しているが、単位面積当たりの塗布量と直達指数との対応表を用いることもでき、コンピュータによる処理を行う場合には、テーブルに対応データを持たせる。
評価対象塗料吹付資材についての単位面積当たりの塗布量は、算出又は計測によって特定することができる。
以上のように、単位面積当たりの塗布量と直達指数との間には関係式が成り立つため、評価対象塗料吹付資材についての単位面積当たりの塗布量が分かれば、関係式を用いて直達指数を推定し、直達光率や散乱光率を推定できる。
【0031】
また、単位面積当たりの塗布量が異なる複数の塗料吹付資材から得られる直達指数と単位面積当たりの塗布量との関係式を用いて塗料吹付予定資材に対する遮光用塗布剤使用量を決定することができる。
すなわち、本実施例による遮光用塗布剤使用量決定方法は、塗料吹付予定資材について、塗料吹付予定面積と予定直達指数とを特定し、特定された予定直達指数から関係式を用いて単位面積当たりの塗布量を決定し、決定された単位面積当たりの塗布量と塗料吹付予定面積とから遮光用塗布剤使用量を決定する。
単位面積当たりの塗布量と直達指数との間には関係式が成り立つため、評価対象塗料吹付資材についての塗料吹付予定面積と予定直達指数が分かれば、関係式を用いて単位面積当たりの塗布量を決定し、単位面積当たりの塗布量と塗料吹付予定面積とから遮光用塗布剤使用量を決定できる。
【0032】
本実施例による塗料吹付資材の評価方法は、同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを、直達光率測定装置10を用いて測定し、測定された塗布剤無直達光率に対する、測定された塗布剤有直達光率を、一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、直達指数を、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の評価指標に用いるものである。同一の遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材であっても、測定時の気象条件によって測定される直達光率は異なるが、本実施の形態によれば、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材が同じであれば測定時の気象条件に左右されることなく、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の固有値である直達指数を得ることができ、異なる塗料吹付資材同士の直達光率や散乱光率を比較評価できる。
【0033】
また本実施例による塗料吹付資材の評価指標推定方法は、同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを、直達光率測定装置10を用いて測定し、測定された塗布剤無直達光率に対する測定された塗布剤有直達光率を一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、単位面積当たりの塗布量が異なる複数の塗料吹付資材から得られる直達指数と単位面積当たりの塗布量との関係式を用いて評価対象塗料吹付資材の直達指数を推定する塗料吹付資材の評価指標推定方法であって、評価対象塗料吹付資材についての単位面積当たりの塗布量を特定し、特定された単位面積当たりの塗布量から関係式を用いて評価対象塗料吹付資材についての直達指数を推定するものである。単位面積当たりの塗布量と直達指数との間には関係式が成り立つため、本実施の形態によれば、評価対象塗料吹付資材についての単位面積当たりの塗布量が分かれば、関係式を用いて直達指数を推定し、直達光率や散乱光率を推定できる。
【0034】
また本実施例による遮光用塗布剤使用量決定方法は、同一気象条件の下で、遮光用塗布剤を塗布しない場合の塗布剤無直達光率と、遮光用塗布剤を塗布した場合の塗布剤有直達光率とを、直達光率測定装置10を用いて測定し、測定された塗布剤無直達光率に対する測定された塗布剤有直達光率を一次関数の回帰式で表した際の傾きを直達指数とし、単位面積当たりの塗布量が異なる複数の塗料吹付資材から得られる直達指数と単位面積当たりの塗布量との関係式を用いて塗料吹付予定資材に対する遮光用塗布剤使用量を決定する遮光用塗布剤使用量決定方法であって、塗料吹付予定資材について、塗料吹付予定面積と予定直達指数とを特定し、特定された予定直達指数から関係式を用いて単位面積当たりの塗布量を決定し、決定された単位面積当たりの塗布量と塗料吹付予定面積とから遮光用塗布剤使用量を決定するものである。単位面積当たりの塗布量と直達指数との間には関係式が成り立つため、本実施の形態によれば、評価対象塗料吹付資材についての塗料吹付予定面積と予定直達指数が分かれば、関係式を用いて単位面積当たりの塗布量を決定し、単位面積当たりの塗布量と塗料吹付予定面積とから遮光用塗布剤使用量を決定できる。
【0035】
図10は本発明による遮光資材の評価方法に用いる直達指数測定装置を示す構成図であり、
図10(a)と
図10(b)とは異なる角度からの構成図である。
本実施例による直達指数測定装置20は、遮光資材Aを用いない場合での散乱光と直達光とを測定する第1日射計11aと、遮光資材Aを用いない場合での直達光を遮蔽する第1遮蔽部材13aと、第1遮蔽部材13aによって直達光を遮蔽することで、遮光資材Aを用いない場合での散乱光を測定する第2日射計11bと、遮光資材Aを用いた場合での散乱光と直達光とを測定する第3日射計11cと、遮光資材Aを用いた場合での直達光を遮蔽する第2遮蔽部材13bと、第2遮蔽部材13bによって直達光を遮蔽することで、遮光資材Aを用いた場合での散乱光を測定する第4日射計11dとを備えている。
第1日射計11aの設置面、第2日射計11bの設置面、第3日射計11cの設置面、及び第4日射計11dの設置面は平行としている。
【0036】
本実施例では、直達指数測定装置20は、遮光資材Aを用いない場合の資材無直達光率を測定する資材無用測定筐体21と、遮光資材Aを用いた場合の資材有直達光率を測定する資材有用測定筐体22とを有している。
資材無用測定筐体21には、第1日射計11a、第1遮蔽部材13a、及び第2日射計11bを配置している。資材有用測定筐体22には、第3日射計11c、第2遮蔽部材13b、及び第4日射計11dを配置している。
資材無用測定筐体21と資材有用測定筐体22とは、上面を開口面とした相同の箱状筐体である。すなわち、資材無用測定筐体21と資材有用測定筐体22とは、開口面の形状及び大きさが等しく、底面までの深さも等しい。
資材無用測定筐体21の開口面と資材有用測定筐体22の開口面とは平行であり、資材無用測定筐体21の底面と資材有用測定筐体22の底面とは平行である。
第1日射計11a、第1遮蔽部材13a、及び第2日射計11bは、資材無用測定筐体21の底面に配置している。第3日射計11c、第2遮蔽部材13b、及び第4日射計11dは、資材無用測定筐体22の底面に配置している。
第1日射計11aと第2日射計11bとは、資材無用測定筐体21の底面の中心から等しい距離に配置することが好ましく、第3日射計11cと第4日射計11dとは、資材無用測定筐体22の底面の中心から等しい距離に配置することが好ましい。
資材無用測定筐体21と資材有用測定筐体22とは、併設して一体構造であることが好ましい。
資材無用測定筐体21と資材有用測定筐体22との内面(底面及び側面)は、黒色塗料や無反射植毛布等の低反射素材を用いることが好ましく、低反射素材を用いることで迷光防止できる。
【0037】
第1日射計11a、第2日射計11b、第3日射計11c、及び第4日射計11dには、サーモパイル式日射センサを用いることができる。
第1遮蔽部材13a及び第2遮蔽部材13bには、例えば、シャドウバンドやシャドウディスクを用いることができ、直達光を遮蔽する部材である。このように、直達光を遮蔽する部材を設置することで、第2日射計11b及び第4日射計11dでは、散乱光成分を測定することができる。
なお、第1日射計11aの視野角内に第1遮蔽部材13aが存在するため、第1遮蔽部材13aによって第1日射計11aの出力は低下するが、第1日射計11aと第1遮蔽部材13aとの幾何学的位置関係から形態係数(View Factor)を予め計算することで補正することができる。また、同様に第3日射計11cの視野角内に第2遮蔽部材13bが存在するため、第3遮蔽部材13bによって第3日射計11cの出力は低下するが、第3日射計11cと第2遮蔽部材13bとの幾何学的位置関係から形態係数を予め計算することで補正することができる。
【0038】
本実施例による直達指数測定装置20は、同一時間帯における、第1日射計11aで計測される第1日射量、第2日射計11bで計測される第2日射量、第3日射計11cで計測される第3日射量、及び第4日射計11dで計測される第4日射量を記憶し、第1日射量、第2日射量、第3日射量、及び第4日射量から直達指数を算出し、算出される直達指数を表示する機能を備えていることが好ましい。
すなわち、直達指数測定装置20は、第1日射量、第2日射量、第3日射量、及び第4日射量を時刻情報とともに記憶する記憶部31と、同一時間帯における、第1日射量、第2日射量、第3日射量、及び第4日射量から直達指数を算出する演算部32と、演算部32で算出される直達指数を表示する表示部33とを備えている。
演算部32では、第1日射量及び第2日射量から遮光資材Aを用いない場合の資材無直達光率を算出し、第3日射量及び第4日射量から遮光資材Aを用いた場合の資材有直達光率を算出し、資材無直達光率及び資材有直達光率から直達指数を算出する。演算部32では、形態係数による補正や出力値(日射量)の平均化を行うことが好ましい。
このように、本実施例による直達指数測定装置20によれば、遮光資材Aの固有値である直達指数を得ることができる。
【0039】
なお、
図2で示すように、遮光資材Aを用いない直達光率測定装置10A及び直達光率測定装置10Bと、遮光資材Aを用いた直達光率測定装置10C及び直達光率測定装置10Dとを、それぞれの底面が平行になるように設置することで、直達指数測定装置20として用いることができるが、
図10に示す直達指数測定装置20のように、資材無用測定筐体21と資材有用測定筐体22とを用いることで、装置を小型化及び軽量化でき、設置や測定を容易に行うことができる。
【0040】
本実施例による直達指数測定装置20は、資材無用測定筐体21及び資材有用測定筐体22を支持固定する架台部40を備えていることが好ましい。
架台部40は、赤道儀式架台と同様な、極軸と、極軸に直交する赤緯軸の2軸で構成された架台である。架台部40の極軸を観測地点の緯度に合わせることで、太陽の日周運動に対し、資材無用測定筐体21及び資材有用測定筐体22の開口面を、1軸操作のみで容易に太陽に対向することができる。
また、架台部40がモータードライブのような駆動部を有することにより、資材無用測定筐体21及び資材有用測定筐体22の開口面を太陽に対向した状態に維持することができる。太陽の日周運動を自動追尾することで、第1遮蔽部材13a及び第2遮蔽部材13bを必要最小限の大きさにでき、形態係数による補正を最小限に減ずることができる。
【0041】
なお、
図10では、遮光資材の評価方法に用いる直達指数測定装置20を示す構成図として説明したが、塗料吹付資材の評価方法に用いる直達指数測定装置20としても用いることができる。この場合には、資材無用測定筐体21を塗布剤無用測定筐体21として用い、資材有用測定筐体22を塗布剤有用測定筐体22として用いる。
塗布剤無用測定筐体21の開口面には、遮光用塗布剤を塗布しない農業用ポリオレフィン系フィルム(資材)を配置し、塗布剤有用測定筐体22の開口面には、遮光用塗布剤を塗布した農業用ポリオレフィン系フィルム(資材)を配置する。
塗料吹付資材の評価方法に用いる直達指数測定装置20では、遮光用塗布剤を塗布しない場合での散乱光と直達光とを測定する第1日射計11aと、遮光用塗布剤を塗布しない場合での直達光を遮蔽する第1遮蔽部材13aと、第1遮蔽部材13aによって直達光を遮蔽することで、遮光用塗布剤を塗布しない場合での散乱光を測定する第2日射計11bと、遮光用塗布剤を塗布した場合での散乱光と直達光とを測定する第3日射計11cと、遮光用塗布剤を塗布した場合での直達光を遮蔽する第2遮蔽部材13bと、第2遮蔽部材13bによって直達光を遮蔽することで、遮光用塗布剤を塗布した場合での散乱光を測定する第4日射計11dとを備えている。
第1日射計11aの設置面、第2日射計11bの設置面、第3日射計11cの設置面、及び第4日射計11dの設置面は平行としている。
【0042】
本実施例では、直達指数測定装置20は、遮光用塗布剤を塗布しない資材の塗布剤無直達光率を測定する塗布剤無用測定筐体21と、遮光用塗布剤を塗布した資材の塗布剤有直達光率を測定する塗布剤有用測定筐体22とを有している。
塗布剤無用測定筐体21には、第1日射計11a、第1遮蔽部材13a、及び第2日射計11bを配置している。塗布剤有用測定筐体22には、第3日射計11c、第2遮蔽部材13b、及び第4日射計11dを配置している。
塗布剤無用測定筐体21と塗布剤有用測定筐体22とは、上面を開口面とした相同の箱状筐体である。すなわち、塗布剤無用測定筐体21と塗布剤有用測定筐体22とは、開口面の形状及び大きさが等しく、底面までの深さも等しい。
塗布剤無用測定筐体21の開口面と塗布剤有用測定筐体22の開口面とは平行であり、塗布剤無用測定筐体21の底面と塗布剤有用測定筐体22の底面とは平行である。
第1日射計11a、第1遮蔽部材13a、及び第2日射計11bは、塗布剤無用測定筐体21の底面に配置している。第3日射計11c、第2遮蔽部材13b、及び第4日射計11dは、塗布剤無用測定筐体22の底面に配置している。
第1日射計11aと第2日射計11bとは、塗布剤無用測定筐体21の底面の中心から等しい距離に配置することが好ましく、第3日射計11cと第4日射計11dとは、塗布剤無用測定筐体22の底面の中心から等しい距離に配置することが好ましい。
塗布剤無用測定筐体21と塗布剤有用測定筐体22とは、併設して一体構造であることが好ましい。
塗布剤無用測定筐体21と塗布剤有用測定筐体22との内面(底面及び側面)は、黒色塗料や無反射植毛布等の低反射素材を用いることが好ましく、低反射素材を用いることで迷光防止できる。
【0043】
第1日射計11a、第2日射計11b、第3日射計11c、及び第4日射計11dには、サーモパイル式日射センサを用いることができる。
第1遮蔽部材13a及び第2遮蔽部材13bには、例えば、シャドウバンドやシャドウディスクを用いることができ、直達光を遮蔽する部材である。このように、直達光を遮蔽する部材を設置することで、第2日射計11b及び第4日射計11dでは、散乱光成分を測定することができる。
なお、第1日射計11aの視野角内に第1遮蔽部材13aが存在するため、第1遮蔽部材13aによって第1日射計11aの出力は低下するが、第1日射計11aと第1遮蔽部材13aとの幾何学的位置関係から形態係数(View Factor)を予め計算することで補正することができる。また、同様に第3日射計11cの視野角内に第2遮蔽部材13bが存在するため、第3遮蔽部材13bによって第3日射計11cの出力は低下するが、第3日射計11cと第2遮蔽部材13bとの幾何学的位置関係から形態係数を予め計算することで補正することができる。
【0044】
本実施例による直達指数測定装置20は、同一時間帯における、第1日射計11aで計測される第1日射量、第2日射計11bで計測される第2日射量、第3日射計11cで計測される第3日射量、及び第4日射計11dで計測される第4日射量を記憶し、第1日射量、第2日射量、第3日射量、及び第4日射量から直達指数を算出し、算出される直達指数を表示する機能を備えていることが好ましい。
すなわち、直達指数測定装置20は、第1日射量、第2日射量、第3日射量、及び第4日射量を時刻情報とともに記憶する記憶部31と、同一時間帯における、第1日射量、第2日射量、第3日射量、及び第4日射量から直達指数を算出する演算部32と、演算部32で算出される直達指数を表示する表示部33とを備えている。
演算部32では、第1日射量及び第2日射量から遮光用塗布剤を塗布しない資材の塗布剤無直達光率を算出し、第3日射量及び第4日射量から遮光用塗布剤を塗布した資材の塗布剤有直達光率を算出し、塗布剤無直達光率及び塗布剤有直達光率から直達指数を算出する。演算部32では、形態係数による補正や出力値(日射量)の平均化を行うことが好ましい。
このように、本実施例による直達指数測定装置20によれば、遮光用塗布剤を塗布した塗料吹付資材の評価に用いることができる直達指数を算出することができる。
【0045】
なお、
図2で示す装置において、遮光用塗布剤を塗布しない資材を配置する直達光率測定装置10A及び直達光率測定装置10Bと、遮光用塗布剤を塗布した資材を配置する直達光率測定装置10C及び直達光率測定装置10Dとを、それぞれの底面が平行になるように設置することで、直達指数測定装置20として用いることができるが、
図10に示す直達指数測定装置20のように、塗布剤無用測定筐体21と塗布剤有用測定筐体22とを用いることで、装置を小型化及び軽量化でき、設置や測定を容易に行うことができる。
【0046】
本実施例による直達指数測定装置20は、塗布剤無用測定筐体21及び塗布剤有用測定筐体22を支持固定する架台部40を備えていることが好ましい。
架台部40は、赤道儀式架台と同様な、極軸と、極軸に直交する赤緯軸の2軸で構成された架台である。架台部40の極軸を観測地点の緯度に合わせることで、太陽の日周運動に対し、塗布剤無用測定筐体21及び塗布剤有用測定筐体22の開口面を、1軸操作のみで容易に太陽に対向することができる。
また、架台部40がモータードライブのような駆動部を有することにより、塗布剤無用測定筐体21及び塗布剤有用測定筐体22の開口面を太陽に対向した状態に維持することができる。太陽の日周運動を自動追尾することで、第1遮蔽部材13a及び第2遮蔽部材13bを必要最小限の大きさにでき、形態係数による補正を最小限に減ずることができる。
【0047】
図11は灰色遮光資材及び黒色遮光資材についての直達指数と遮光資材の間隙率との関係を示す図であり、
図11(a)は測定に用いた灰色及び黒色の遮光資材を示し、
図11(b)は、白色遮光資材、灰色遮光資材、及び黒色遮光資材についての直達指数と遮光資材の間隙率との関係を示している。なお、白色遮光資材については
図6と同一データである。
図11(a)に示すように、灰色遮光資材としては、遮光率が40%の灰色遮光資材(メーカ-N)、遮光率が50%の灰色遮光資材(メーカ-D)、遮光率が30~35%の灰色遮光資材(メーカーIN)を用い、黒色遮光資材としては、遮光率が50%の黒色遮光資材(メーカ-D)、遮光率が35~40%の黒色遮光資材(メーカーIN)、遮光率が25~30%の黒色遮光資材(メーカーN)を用いた。なお、遮光率の数値は、メーカーのカタログ値である。また、灰色遮光資材及び黒色遮光資材についての間隙率は、
図6に示す白色遮光資材の場合と同様に、サンプルとするそれぞれの遮光資材Aについての所定の矩形内領域を二値化処理することで算出している。
図11(b)に示すように、灰色遮光資材及び黒色遮光資材についても、白色遮光資材と同様に直達指数と遮光資材Aの間隙率との間には一定の関係式が成り立つ。従って、このような関係式を用いて、評価対象遮光資材の直達指数を推定することができる。