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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120865
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 11/02 20060101AFI20240829BHJP
【FI】
E02B11/02 A
E02B11/02 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024020580
(22)【出願日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2023027813
(32)【優先日】2023-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋平
(72)【発明者】
【氏名】清水 裕太
(72)【発明者】
【氏名】望月 秀俊
(57)【要約】
【課題】盛土領域を有する圃場の排水性を向上させる。
【解決手段】盛土領域(EA)に排水口(D)を施工する排水口施工工程と、圃場(F)に第1の補助暗渠(AC1)を施工する集水暗渠施工工程と、非盛土領域(NA)に第2の補助暗渠(AC2)を施工する遮水暗渠施工工程と、を含み、遮水暗渠施工工程では、第2の補助暗渠の深さを第1の補助暗渠の深さよりも浅くしつつ、第1の補助暗渠と第2の補助暗渠とを立体交差させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
盛土された盛土領域を有する圃場に補助暗渠を施工する施工方法であって、
前記盛土領域に、排水口を施工する排水口施工工程と、
前記排水口施工工程の終了後、前記圃場に、当該圃場の水を集水して前記排水口に導く第1の補助暗渠を施工する集水暗渠施工工程と、
前記圃場における前記盛土領域以外の非盛土領域に、前記圃場の水を集水する第2の補助暗渠を施工する遮水暗渠施工工程と、を含み、
前記遮水暗渠施工工程では、前記第2の補助暗渠の深さを前記第1の補助暗渠の深さよりも浅くしつつ、前記第1の補助暗渠と前記第2の補助暗渠とを立体交差させる、施工方法。
【請求項2】
前記圃場に、当該圃場の水を集水する第3の補助暗渠を施工する交差暗渠施工工程をさらに含み、
前記交差暗渠施工工程では、前記第3の補助暗渠の深さを前記第1の補助暗渠の深さよりも浅くしつつ、前記第1の補助暗渠と前記第3の補助暗渠とを立体交差させる、請求項1に記載の施工方法。
【請求項3】
前記交差暗渠施工工程では、
前記盛土領域および前記非盛土領域のそれぞれに、複数の前記第3の補助暗渠を、当該第3の補助暗渠の延伸方向に対して並列に施工するとともに、
前記盛土領域内で隣り合う2つの前記第3の補助暗渠の間隔を、前記非盛土領域内で隣り合う2つの前記第3の補助暗渠の間隔よりも狭くする、前記第3の補助暗渠を施工する、請求項2に記載の施工方法。
【請求項4】
前記集水暗渠施工工程では、複数の前記第1の補助暗渠を、前記排水口を基点として放射状に施工する、請求項3に記載の施工方法。
【請求項5】
整備前の前記圃場における第1の標高値の分布を示す第1の分布情報、および前記圃場における第2の標高値の分布を示す第2の分布情報を取得して、前記圃場における前記盛土領域の盛土態様を示す圃場基盤情報を生成する情報生成工程をさらに含み、
前記排水口施工工程では、前記情報生成工程で生成した前記圃場基盤情報に基づいて、前記盛土領域の中から前記排水口を施工する施工領域を決定する、請求項1から4のいずれか1項に記載の施工方法。
【請求項6】
情報生成工程では、
前記第1の分布情報として、整備前の前記圃場を仮想的に格子状に分割して得られる複数の第1の単位空間のそれぞれにおける前記第1の標高値を取得し、
前記第2の分布情報として、前記圃場を仮想的に格子状に分割して得られる複数の第2の単位空間のそれぞれにおける前記第2の標高値を取得し、
前記複数の第2の単位空間毎に、当該第2の単位空間における前記第2の標高値と、当該第2の単位空間に対応する前記第1の単位空間における前記第1の標高値と、の差分を基準値と比較することにより、当該第2の単位空間が盛土されているか否かを判定し、
判定結果に基づいて、前記圃場基盤情報を生成する、請求項5に記載の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助暗渠の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中山間地域には本暗渠が施工されていない中小規模の圃場が多数存在するところ、本暗渠の施工には手間が掛かる。そのため、特に中山間地域では、本暗渠が施工されていない圃場の排水性の確保が容易ではないという問題があった。そこで、この問題を解決すべく、本暗渠よりも施工が容易な補助暗渠を利用する方法が、従来から研究されている。例えば、非特許文献1には、複数の弾丸暗渠を、集水穴を基点として放射状に施工する施工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】牛尾昭浩、「放射状弾丸暗渠施工法による圃場排水性改善技術」、兵庫県における大豆の収量・品質向上技術、第58回シンポジウム、NPO法人近畿アグリハイテク
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に開示された施工方法は、圃場が、栽培期間中に起伏が生じない平地であることを前提としている。そのため、栽培期間中に起伏が生じる圃場、具体的には盛土領域を有する圃場に前述の施工方法を適用した場合、圃場における盛土領域以外の非盛土領域に集水穴を施工すると、盛土領域の沈降に起因する逆勾配によって逆流および余剰水の滞留が生じる。逆流および余剰水の滞留は、圃場の排水不良の大きな要因となる。
【0005】
ここで、盛土領域は、圃場における盛土された領域であり、切土領域は、圃場における切土された領域である。逆勾配とは、集水穴が施工されている施工領域の標高が、当該施工領域と反対側の領域の標高よりも高い状態のことを指す。逆流とは、圃場の水が施工領域と反対側の領域に向けて流れる現象を指す。余剰水の滞留とは、弾丸暗渠が集水し切れなかった水(つまり余剰水)が施工領域と反対側の領域に滞留する現象を指す。
【0006】
以上のことから、非特許文献1に開示された施工方法は、少なくとも盛土領域を有する圃場の排水性の向上という面において、必ずしも十分とはいえなかった。
【0007】
本発明の一態様は、前述の問題点に鑑みてなされたものであり、盛土領域を有する圃場の排水性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る施工方法は、盛土された盛土領域を有する圃場に補助暗渠を施工する施工方法であって、前記盛土領域に、排水口を施工する排水口施工工程と、前記排水口施工工程の終了後、前記圃場に、当該圃場の水を集水して前記排水口に導く第1の補助暗渠を施工する集水暗渠施工工程と、前記圃場における前記盛土領域以外の非盛土領域に、前記圃場の水を集水する第2の補助暗渠を施工する遮水暗渠施工工程と、を含み、前記遮水暗渠施工工程では、前記第2の補助暗渠の深さを前記第1の補助暗渠の深さよりも浅くしつつ、前記第1の補助暗渠と前記第2の補助暗渠とを立体交差させる。
【0009】
本発明の一態様に係る施工方法は、前記圃場に、当該圃場の水を集水する第3の補助暗渠を施工する交差暗渠施工工程をさらに含み、前記交差暗渠施工工程では、前記第3の補助暗渠の深さを前記第1の補助暗渠の深さよりも浅くしつつ、前記第1の補助暗渠と前記第3の補助暗渠とを立体交差させてもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る施工方法は、前記交差暗渠施工工程では、前記盛土領域および前記非盛土領域のそれぞれに、複数の前記第3の補助暗渠を、当該第3の補助暗渠の延伸方向に対して並列に施工するとともに、前記盛土領域内で隣り合う2つの前記第3の補助暗渠の間隔を、前記非盛土領域内で隣り合う2つの前記第3の補助暗渠の間隔よりも狭くする、前記第3の補助暗渠を施工してもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る施工方法は、前記集水暗渠施工工程では、複数の前記第1の補助暗渠を、前記排水口を基点として放射状に施工してもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る施工方法は、整備前の前記圃場における第1の標高値の分布を示す第1の分布情報、および前記圃場における第2の標高値の分布を示す第2の分布情報を取得して、前記圃場における前記盛土領域の盛土態様を示す圃場基盤情報を生成する情報生成工程をさらに含み、前記排水口施工工程では、前記情報生成工程で生成した前記圃場基盤情報に基づいて、前記盛土領域の中から前記排水口を施工する施工領域を決定してもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る施工方法は、情報生成工程では、前記第1の分布情報として、整備前の前記圃場を仮想的に格子状に分割して得られる複数の第1の単位空間のそれぞれにおける前記第1の標高値を取得し、前記第2の分布情報として、前記圃場を仮想的に格子状に分割して得られる複数の第2の単位空間のそれぞれにおける前記第2の標高値を取得し、前記複数の第2の単位空間毎に、当該第2の単位空間における前記第2の標高値と、当該第2の単位空間に対応する前記第1の単位空間における前記第1の標高値と、の差分を基準値と比較することにより、当該第2の単位空間が盛土されているか否かを判定し、判定結果に基づいて、前記圃場基盤情報を生成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、盛土領域を有する圃場の排水性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の機能的構成を示すブロック図である。
図2】符号201は、第1の作業機体の概略構成を示す側面図である。符号202は、第2の作業機体の概略構成を示す側面図である。
図3図1に示す情報処理装置の第1の情報生成部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図4図1に示す情報処理装置の第2の情報生成部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図5】符号501は、第1のグリッドと第2のグリッドと単位空間との対応関係を示す図である。符号502は、基礎情報および圃場基盤情報の各内容を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る補助暗渠の施工方法の一例を示すフローチャートである。
図7】本発明の一実施形態に係る排水口の施工方法の一例を示す図面代用写真である。
図8】符号801は、本発明の一実施形態に係る第1の補助暗渠の施工方法の一例を示す図面代用写真である。符号802は、本発明の一実施形態に係る第2の補助暗渠および第3の補助暗渠の各施工方法の一例を示す図面代用写真である。
図9】符号901は、第1の補助暗渠および第3の補助暗渠を施工した後における、図8の符号802に示す領域Rの内部構造図である。符号902は、符号901により示す図のA-A線矢視断面図である。符号903は、符号901により示す図のB-B線矢視断面図である。
図10】各種の補助暗渠を施工した後の圃場の一例を示す図面代用写真である。
図11】符号1101は、第3の補助暗渠の施工態様における第1の変形例を示す図である。符号1102は、第3の補助暗渠の施工態様における第2の変形例を示す図である。
図12】符号1201は、第3の補助暗渠の施工態様における第3の変形例を示す図である。符号1202は、第3の補助暗渠の施工態様における第4の変形例を示す図である。
図13】符号1301は、第1の施工圃場および第1の対照圃場のそれぞれにおける、切土領域および盛土領域の各分布状態を示す図面代用写真である。符号1302は、第1の施工圃場および第1の対照圃場を示す図面代用写真である。
図14】符号1401は、第2の施工圃場および第2の対照圃場のそれぞれにおける、切土領域および盛土領域の各分布状態を示す図面代用写真である。符号1402は、第2の施工圃場および第2の対照圃場を示す圃場を示す図面代用写真である。
図15】符号1301に示す各圃場で栽培されたダイズ品種「サチユタカ」の苗立ち本数と、符号1302に示す各圃場で栽培されたダイズ品種「黒招福」の苗立ち本数と、を示すグラフである。
図16】符号1301に示す各圃場で栽培されたダイズ品種「サチユタカ」の全刈収量と、符号1302に示す各圃場で栽培されたダイズ品種「黒招福」の全刈収量と、を示すグラフである。
図17】符号1301に示す各圃場で栽培されたダイズ品種「サチユタカ」に関する、土壌体積含水率と播種後日数との関係を示すグラフである。
図18】符号1301および1302に示す各圃場における、土壌体積含水率が最大値の50%になるまでの経過時間を示すグラフである。
図19】土壌体積含水率と経過時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図12を参照しつつ詳細に説明する。本実施形態では、各種の補助暗渠の施工対象となる圃場として、中山間地域の水田輪作圃場を例に挙げて説明する。なお、前述の施工対象となる圃場は中山間地域の水田輪作圃場に限られず、盛土された盛土領域を有する圃場であれば、どのような地域、どのような種類の圃場であってもよい。ただし、前述の施工対象となる圃場には本暗渠が元々施工されておらず、かつ、当該圃場に各種の補助暗渠を施工するときも本暗渠を施工しないことが前提となる。
【0017】
〔情報処理装置の構成〕
図1を参照して、本実施形態に係る情報処理装置1の構成について説明する。情報処理装置1は、各種情報の処理を実行可能な装置である。情報処理装置1は、例えばタブレット端末であってもよいし、スマートフォンであってもよい。あるいは、情報処理装置1は、据え置き型のパーソナルコンピュータであってもよい。図1に示すように、情報処理装置1は、入力部11、表示部12、記憶部13、通信部14および制御部15を備えている。
【0018】
入力部11は、各種操作を受け付けるインターフェースである。例えば、情報処理装置1が据え置き型のパーソナルコンピュータの場合、キーボードおよびマウスが入力部11となる。表示部12は、各種情報を表示する出力部である。例えば、情報処理装置1が据え置き型のパーソナルコンピュータであれば、モニタが表示部12となる。また例えば、情報処理装置1がスマートフォンまたはタブレット端末であれば、情報処理装置1は入力部11と表示部12とが一体化したタッチパネルを備えていてもよい。
【0019】
記憶部13は、情報処理装置1が使用する各種情報を記憶する。記憶部13としては、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクが挙げられる。通信部14は、情報処理装置1が後述のサーバ2、あるいは他の情報処理装置(不図示)との間で各種情報の送受信を行うための部である。制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはGPU(Graphics Processing Unit)であり、情報処理装置1の各部を統括して制御する。また、制御部15は、情報処理装置1が具備する各種機能を実現するための処理を実行する。図1に示すように、制御部15は情報生成装置50を備えている。
【0020】
情報生成装置50は、圃場基盤情報IFF(図5参照)を生成する装置である。圃場基盤情報IFFは、圃場Fにおける盛土領域EAの盛土態様を示す情報である。圃場基盤情報IFFの詳細については後述する。なお、情報生成装置50は、情報処理装置1内において制御部15の外部に備えられていてもよいし、サーバ2あるいは他の情報処理装置に備えられていてもよい。
【0021】
圃場Fは、盛土領域EAを有する圃場であり(図8等参照)、本実施形態では平面視で略矩形状である。また、本実施形態では、圃場Fにおける平面視で短辺側の2つの端部のうち、一方が盛土領域EAとなり、他方が切土領域CAとなっている。さらに、盛土領域EAと切土領域CAとの間の領域は、盛土および切土の両方が行われていない平地領域FAとなっている。つまり、本実施形態では、圃場Fは、盛土領域EA、切土領域CAおよび平地領域FAの3つの領域で構成されている(以上、図8の符号801参照)。なお、圃場Fにおける切土領域CAおよび平地領域FAの各施工位置は、本実施形態の例に限定されない。また、圃場Fは、盛土領域EAおよび平地領域FAの2つの領域で構成されていてもよい。
【0022】
図1に示すように、情報生成装置50は、情報取得部51、第1の情報生成部52および第2の情報生成部53を備えている。情報取得部51は、サーバ2から、通信部14を介して第1の標高マップM1(第1の分布情報)および第2の標高マップM2(第2の分布情報)を取得する。第1の情報生成部52は、第1の標高マップM1および第2の標高マップM2を用いて基礎情報IFTを生成する。第2の情報生成部53は、基礎情報IFTを用いて圃場基盤情報IFFを生成する。第1の標高マップM1、第2の標高マップM2および基礎情報IFTの詳細については後述する。
【0023】
〔サーバの構成〕
図1を参照して、本実施形態に係るサーバ2の構成について説明する。サーバ2は、情報処理装置1と送受信可能な記憶装置である。本実施形態では、サーバ2は情報処理装置1と無線接続されているが、有線接続されていてもよい。図1に示すように、サーバ2は、記憶部21、通信部22および制御部23を備えている。
【0024】
記憶部21は、サーバ2が使用する各種情報を記憶する。また、記憶部21は、第1の標高マップM1および第2の標高マップM2を記憶する。なお、第1の標高マップM1および第2の標高マップM2のそれぞれは、例えば記憶部13に記憶されていてもよい。通信部22は、サーバ2が情報処理装置1あるいは他の情報処理装置との間で各種情報の送受信を行うための部である。制御部23は、サーバ2の各部を総括して制御する。また、制御部23は、サーバ2が具備している各種機能を実現するための処理を実行する。
【0025】
〔各種作業機体の構成〕
図2を参照して、本実施形態に係る各種作業機体の構成について説明する。本実施形態では、図2の符号201に示す第1の作業機体3、および図2の符号202に示す第2の作業機体4を用いて、圃場Fに各種の補助暗渠を施工する。なお、以下に説明する第1の作業機体3および第2の作業機体4はあくまで一例であり、圃場Fに施工される補助暗渠の種類に応じて種々の作業機体、厳密に言えば暗渠施工機を用いることができる。
【0026】
<第1の作業機体>
第1の作業機体3は、補助暗渠としてもみ殻暗渠を施工する場合に用いられる作業機体である。図2の符号201に示すように、第1の作業機体3は、トラクターTともみ殻暗渠施工機31とが接続された状態で構成されている。
【0027】
トラクターTは、市販されている公知のトラクターである。本実施形態では、トラクターTとして34馬力のフルクローラー型トラクター(CT340;ヤンマーホールディングス株式会社製)を用いる。もみ殻暗渠施工機31は、もみ殻暗渠を施工可能な施工機であり、市販されている公知の施工機である。本実施形態では、もみ殻暗渠施工機31として、30~45cmの深さのもみ殻暗渠を施工可能な市販の施工機(M451ABH(モミサブロー)、30~60馬力用;スガノ農機株式会社製)を用いる。図2の符号201に示すように、もみ殻暗渠施工機31は、チゼル311、ナイフ312、尾輪313およびホッパー314を備えている。
【0028】
チゼル311は、圃場Fの地中を割って溝を掘るための爪であり、トラクターTの前進方向に爪の先端が向いている。ナイフ312は、薄板状の部分であり、チゼル311と同様、圃場Fの地中を割って溝を掘る。ナイフ312の下端におけるトラクターT側の面に、チゼル311が設けられている。トラクターTが前進することでもみ殻暗渠施工機31が牽引され、チゼル311およびナイフ312が溝を掘り進める。これにより、圃場Fに形成された溝がトラクターTの前進方向に延伸する。
【0029】
尾輪313は、もみ殻暗渠施工機31を圃場Fの地表面から支持するための環状の部分である。尾輪313の当接面とチゼル311の底面との間の距離が、チゼル311およびナイフ312によって形成される圃場Fの溝の深さとなる。尾輪313の当接面は、尾輪313における厚さ方向の面のうちの、圃場Fの地表面と当接する面である。
【0030】
また、尾輪313には、厚さ方向に貫通した不図示の貫通穴が形成されている。尾輪313をもみ殻暗渠施工機31の本体に取り付ける場合、この貫通穴を本体に形成された複数の貫通穴315のいずれかと位置合わせし、ボルト316をこれらの貫通穴に挿通して不図示のナットで締結する。複数の貫通穴315の中から、尾輪313の貫通穴と位置合わせする貫通穴315を適宜選択することで、尾輪313の取り付け角度を調整して圃場Fに形成する溝の深さを調整する。本実施形態では、圃場Fに形成する溝の深さを5cm毎に調整できるように、複数の貫通穴315が形成されている。
【0031】
ホッパー314は、上側および下側が開口している逆円錐形状または逆四角錐形状の容器である。上側の開口は投入口であり、当該投入口からもみ殻RHがホッパー314に投入される。ホッパー314に投入されたもみ殻RHは、下側の開口と連通している出口シャッタ317から、圃場Fに形成された溝に落ちる。このようにして、圃場Fに形成した溝の全体にもみ殻RHを堆積させることで、もみ殻暗渠を施工する。
【0032】
<第2の作業機体>
第2の作業機体4は、補助暗渠として弾丸暗渠を施工する場合に用いられる作業機体である。図2の符号202に示すように、第2の作業機体4は、トラクターTと弾丸暗渠施工機41とが接続された状態で構成されている。
【0033】
弾丸暗渠施工機41は、弾丸暗渠を施工可能な施工機であり、市販されている公知の施工機である。本実施形態では、弾丸暗渠施工機41として、25~45cmの深さの弾丸暗渠を施工可能な市販の施工機(S28-1S(振動サブソイラー)、16~30馬力用;松山株式会社製)を用いる。図2の符号202に示すように、弾丸暗渠施工機41は、チゼル411、ナイフ412、尾輪413およびモール414を備えている。
【0034】
チゼル411は、チゼル311と同様の爪である。ナイフ412は、ナイフ312と同様の薄板状の部分である。ナイフ412には、厚さ方向に貫通した複数の貫通穴415が、ナイフ412の延伸方向に並んだ状態で形成されている。
【0035】
尾輪413は、尾輪313と同様の環状の部分であり、厚さ方向に貫通した不図示の貫通穴が形成されている。尾輪413をナイフ412に取り付ける場合、尾輪413の貫通穴を複数の貫通穴415のいずれかと位置合わせし、ボルト416をこれらの貫通穴に挿通して不図示のナットで締結する。複数の貫通穴415の中から、尾輪413の貫通穴と位置合わせする貫通穴415を適宜選択することで、尾輪413の取り付け角度を調整して圃場Fに形成する溝の深さを調整する。本実施形態では、圃場Fに形成する溝の深さを5cm毎に調整できるように、複数の貫通穴415が形成されている。
【0036】
モール414は、弾丸型の振動器具であり、ナイフ412の下端と鎖417で繋がっている。また、モール414は、ナイフ412の下端と鎖で繋がった状態において、チゼル411よりも後方に位置する。ここで、「後方」とは、トラクターTの前進方向と反対の方向のことを指す。振動状態のモール414が圃場Fの地中を空隙および亀裂を形成しつつ前進することで、弾丸暗渠が施工される。
【0037】
〔基礎情報の生成方法〕
図3および図5を参照して、本実施形態に係る基礎情報IFTの生成方法について説明する。まず、図3に示すフローチャートのステップ(以下、「S」)101では、情報取得部51が、図5の符号501に示すような、複数の第2のグリッドG2で構成された圃場画像IMGを取得する。圃場画像IMGは、圃場Fが撮像された画像であり、記憶部13または記憶部21のいずれに記憶されていてもよい。以下、情報取得部51がS101の処理において取得する圃場画像IMGを、図5の符号502に示すように「基礎画像IMGF」と称する。
【0038】
次に、S102では、情報取得部51が、サーバ2から図5の符号501に示すような第1の標高マップM1および第2の標高マップM2を取得する。第1の標高マップM1は、整備前圃場画像IMGMを構成する複数の第1のグリッドG1のそれぞれに第1の標高値24(図1参照)が対応付けられたデータである。整備前圃場画像IMGMは、整備前の圃場F´が撮像された画像である。ここで、整備前の圃場F´は、盛土および切土だけでなく、区画整備、用水路整備、農道整備、換地等も行われていない状態の圃場Fを指す。
【0039】
複数の第1のグリッドG1は、整備前圃場画像IMGMを格子状に分割することで得られる。第1の標高値24は、第1の単位空間US1における標高値である。第1の単位空間US1は、整備前の圃場F´を仮想的に格子状に分割して得られる複数の第1の単位空間US1における構成単位である。つまり、第1の標高マップM1は、複数の第1のグリッドG1毎に、当該第1のグリッドG1に対応する第1の単位空間US1における第1の標高値24が対応付けられている。
【0040】
第2の標高マップM2は、圃場画像IMGを構成する複数の第2のグリッドG2のそれぞれに第2の標高値25(図1参照)が対応付けられたデータである。複数の第2のグリッドG2は、圃場画像IMGを格子状に分割することで得られる。第2の標高値25は、第2の単位空間US2における標高値である。第2の単位空間US2は、圃場Fを仮想的に格子状に分割して得られる複数の第2の単位空間US2における構成単位である。つまり、第2の標高マップM2は、複数の第2のグリッドG2毎に、当該第2のグリッドG2に対応する第2の単位空間US2における第2の標高値25が対応付けられている。
【0041】
換言すれば、情報取得部51は、整備前の圃場F´を構成する複数の第1の単位空間US1のそれぞれにおける第1の標高値24を、第1の標高マップM1という形で取得する。また、情報取得部51は、圃場Fを構成する複数の第2の単位空間US2のそれぞれにおける第2の標高値25を、第2の標高マップM2という形で取得する。
【0042】
なお、情報取得部51が取得する第1の標高マップM1および第2の標高マップM2の内容は、本実施形態の例に限定されない。例えば、所定時点の圃場Fが撮像された画像と、当該画像に設定された各等高線の標高値と、で構成されるデータを、第1の標高マップM1および第2の標高マップM2としてもよい。
【0043】
また例えば、情報取得部51は、第1の標高マップM1に代えて整備前の圃場F´を対象としたDEM(Digital Elevation Model;数値標高モデル)を取得し、第2の標高マップM2に代えて圃場Fを対象としたDEMを取得してもよい。また例えば、情報取得部51は、第1の標高マップM1に代えて第1のデータベースを取得し、第2の標高マップM2に代えて第2のデータベースを取得してもよい。第1のデータベースは、整備前圃場画像IMGMを構成する複数の第1のグリッドG1毎のIDと、第1の標高値24と、が対応付けられたデータテーブルである。第2のデータベースは、圃場画像IMGを構成する複数の第2のグリッドG2毎のIDと、第2の標高値25と、が対応付けられたデータテーブルである。
【0044】
つまり、情報取得部51は、整備前の圃場F´における第1の標高値24の分布を示す何らかの情報(第1の分布情報)、および圃場Fにおける第2の標高値25の分布を示す何らかの情報(第2の分布情報)を取得すればよい。
【0045】
次に、S103では、第1の情報生成部52が、圃場Fを構成する複数の第2の単位空間US2毎に、当該第2の単位空間US2における第2の標高値25と、当該第2の単位空間US2に対応する第1の単位空間US1における第1の標高値24と、の差分を算出する。
【0046】
本実施形態では、第1の情報生成部52は、図5の符号501に示すように、圃場Fを構成する複数の第2の単位空間US2の中から、差分の算出対象となる仮想注目グリッドGA1を決定する。そして、第1の情報生成部52は、仮想注目グリッドGA1に対応する第2のグリッドG2における第2の標高値25と、仮想注目グリッドGA1に対応する第1のグリッドG1における第1の標高値24と、の差分を算出する。
【0047】
次に、S104では、第1の情報生成部52が、差分と基準値とを比較することにより、差分の算出対象となった第2の単位空間US2(つまり仮想注目グリッドGA1)が盛土されているか否かを判定する。本実施形態では基準値として「0(ゼロ)」が設定されているが、圃場Fの地形等に応じて他の値を基準値としてもよい。
【0048】
差分が0より大きい値の場合(S104でYES)、第1の情報生成部52は、差分の算出対象となった第2の単位空間US2が盛土されていると判定する(S105)。一方、差分が0以下の値の場合(S104でNO)、第1の情報生成部52は、差分の算出対象となった第2の単位空間US2が盛土されていないと判定する(S106)。この場合の「盛土されていない」とは、差分の算出対象となった第2の単位空間US2が切土されている場合、または差分の算出対象となった第2の単位空間US2が盛土も切土もされていない場合のいずれかを指す。
【0049】
次に、S107では、第1の情報生成部52が、基礎画像IMGFを構成する複数の第2のグリッドG2のうちの仮想注目グリッドGA1に対応する第2のグリッドG2に、差分およびS104の処理の結果を対応付ける。S104の処理の結果は、S105の判定結果(盛土されている)またはS106の判定結果(盛土されていない)のいずれかである。
【0050】
次に、S108では、第1の情報生成部52が、圃場Fを構成する複数の第2の単位空間US2のすべてに対してS104の処理を行ったか否かを判定する。S108でYESの場合、基礎情報IFTが完成する(S109)。図5の符号502に示すように、基礎情報IFTは、基礎画像IMGFを構成する複数の第2のグリッドG2のそれぞれに、差分およびS104の処理の結果が対応付けられたデータである。
【0051】
具体的には、図5の符号502に示す基礎情報IFTにおいて、「m」がS105の判定結果(盛土されている)であり、「k」がS106の判定結果(盛土されていない)である。また、プラス/マイナスの符号と小数第一位の数値とで表されたデータが、差分である。一方、S108でNOの場合、第1の情報生成部52は、再びS103以降の各処理を行う。
【0052】
〔圃場基盤情報の生成方法〕
図4および図5を参照して、本実施形態に係る圃場基盤情報IFFの生成方法について説明する。まず、図4に示すフローチャートのS201では、第2の情報生成部53が基礎情報IFTを読み込む。
【0053】
次に、S202では、第2の情報生成部53が、図5の符号502に示すように、基礎画像IMGFを構成する複数の第2のグリッドG2の中から、注目グリッドGA2を決定する。そして、第2の情報生成部53は、基礎情報IFTに基づいて、注目グリッドGA2と当該注目グリッドGA2に隣接する第2のグリッドG2とでS104の処理の結果が同一か否かを判定する。
【0054】
S202でYESの場合、第2の情報生成部53は、注目グリッドGA2と当該注目グリッドGA2に隣接する第2のグリッドG2とで同一種類のグリッド群を構成するものと見做す(S203)。本実施形態では、グリッド群は、図5の符号502に示すような盛土グリッド群EGおよび非盛土グリッド群NGの2種類となる。盛土グリッド群EGは、S104の処理の結果が「盛土されている」となった、隣接する2つ以上の第2のグリッドG2で構成される。非盛土グリッド群NGは、S104の処理の結果が「盛土されていない」となった、隣接する2つ以上の第2のグリッドG2で構成される。一方、S202でNOの場合、S204の処理に進む。
【0055】
次に、S204では、第2の情報生成部53が、基礎画像IMGFを構成する複数の第2のグリッドG2のすべてに対してS202の処理を行ったか否かを判定する。S204でNOの場合、第2の情報生成部53は、再びS202以降の各処理を行う。
【0056】
一方、S204でYESの場合、第2の情報生成部53は、盛土グリッド群EGおよび非盛土グリッド群NGのそれぞれについて、差分の統計値が第1の基準値以上か否かを判定する(S205)。「差分の統計値」は、グリッド群を構成する2つ以上の第2のグリッドG2のそれぞれにおける差分を統計した値である。本実施形態では、第2の情報生成部53は、「差分の統計値」として差分の平均値を採用している。第1の基準値は、圃場Fの地形等に応じて任意に設定可能な値である。
【0057】
差分の統計値が第1の基準値未満の場合(S205でNO)、第2の情報生成部53は、判定対象となったグリッド群に対応する圃場Fの領域を非施工領域とする(S208)。非施工領域は、排水口Dが施工されない領域であり、圃場Fを構成する各領域の中で、他の領域よりも相対的に沈降し難いと見做される領域と、沈降のし易さが平均程度と見做される領域と、を合わせた領域である。非施工領域には、非盛土領域NA(図8の符号801参照;詳細は後述)の他、盛土領域EAの一部が含まれる。
【0058】
一方、差分の統計値が第1の基準値以上の場合(S205でYES)、第2の情報生成部53は、S205で判定対象となったグリッド群の面積が第2の基準値以上か否かを判定する(S206)。「グリッド群の面積」は、グリッド群を構成する2つ以上の第2のグリッドG2のそれぞれの面積を合計した合計面積である。なお、第2の情報生成部53は、「グリッド群の面積」に代えて、グリッド群を構成する第2のグリッドG2の数と何らかの基準値とを比較してもよい。第2の基準値は、圃場Fの大きさ等に応じて任意に設定可能な値である。
【0059】
グリッド群の面積が第2の基準値未満の場合(S206でNO)、第2の情報生成部53は、S208の処理を行う。一方、グリッド群の面積が第2の基準値以上の場合(S206でYES)、第2の情報生成部53は、判定対象となったグリッド群に対応する圃場Fの領域を、図8の符号801に示す施工領域SAとする(S207)。
【0060】
施工領域SAは、盛土領域EAにおける排水口Dが施工される領域であり、圃場Fを構成する各領域の中で、他の領域よりも相対的に沈降し易いと見做される領域である。本実施形態では、施工領域SAは、盛土領域EAにおける長辺領域EA-1の端部に位置している。長辺領域EA-1は、盛土領域EAにおける、外側長辺EA-2に沿った端部領域である。外側長辺EA-2は、盛土領域EAの外形の一部を成す2つの長辺のうち、圃場Fの外形の一部をも成している側の長辺である。言い換えれば、外側長辺EA-2は、圃場Fの外形の一部を成す2つの短辺のうち、盛土領域EA側の短辺である。第2の情報生成部53は、S207の処理の終了後、S209の処理に進む。
【0061】
次に、S209では、第2の情報生成部53が、基礎情報IFTにS207およびS208の各判定結果を追加して、図5の符号502に示すような圃場基盤情報IFFを生成する。
【0062】
具体的には、図5の符号502に示す圃場基盤情報IFFにおいて、「m」で表された領域が盛土グリッド群EGであり、「k」で表された領域が非盛土グリッド群NGである。また、図示しないものの、盛土グリッド群EGの一部にS207の判定結果が対応付けられ、盛土グリッド群EGにおける他の一部および非盛土グリッド群NGにS208の判定結果が対応付けられている。さらに、本実施形態では、盛土グリッド群EGおよび非盛土グリッド群NGのそれぞれについて、差分の最大値が算出されて圃場基盤情報IFFの一部を構成している。
【0063】
以上より、圃場基盤情報IFFによって示される「盛土領域EAの盛土態様」は、盛土領域EAを構成する複数の第2の単位空間US2毎の、(i)S105の判定結果、(ii)差分、(iii)S207またはS208の判定結果となる。
【0064】
S209の処理が終了することにより、情報生成装置50による圃場基盤情報IFFの生成処理が終了する。また、S101からS209までの一連の処理が、本発明の一態様に係る情報生成工程となる。
【0065】
このように、本発明の一態様に係る施工方法によれば、第1の標高マップM1および第2の標高マップM2を取得するだけで、複数の第2の単位空間US2毎に盛土されているか否かを判定できる。これにより、圃場Fにおける盛土領域EAの分布状態を簡易かつ精度高く特定でき、盛土領域EAを簡易かつ適切に決定できる。
【0066】
〔各種の補助暗渠の施工方法〕
図6図10を参照して、本実施形態に係る各種の補助暗渠の施工方法について説明する。まず、図6に示すフローチャートのS301では、図7に示す作業者Wが、圃場Fにおいて別用途排水口が施工されている箇所を調べる。別用途排水口は、例えば畑作用の排水口など、補助暗渠用と異なる用途の排水口である。別用途排水口が施工されている箇所の調査方法に特段の限定はなく、例えば作業者Wが圃場Fの地図を見ながら当該箇所を調べてもよい。
【0067】
作業者WがS301の調査を行った結果、別用途排水口が非盛土領域NA内に施工されていることが判明した場合(S302でNO)、図7に示すように、作業者Wが、新たな排水口Dを盛土領域EAに施工する(S303;排水口施工工程)。
【0068】
本実施形態では、作業者Wが、圃場基盤地図を見ながら施工領域SAを決定した上で、図7に示すように、当該施工領域SAに排水口Dを施工する。圃場基盤地図は、圃場基盤情報IFFがマップ化した状態で印字された紙媒体であり、作業者Wによって予め用意される。なお、施工領域SAの決定に圃場基盤地図を用いる必要は必ずしもない。例えば、作業者Wが、圃場基盤情報IFFを表示したタブレット端末の表示部を見ながら施工領域SAを決定してもよい。つまり、圃場基盤情報IFFに基づいて施工領域SAを決定するのであれば、どのような決定方法であってもよい。S303の工程が終了したら、S306の工程に進む。
【0069】
非盛土領域EAは、圃場Fにおける盛土領域EA以外のすべての領域であり、本実施形態では、図8の符号801に示すように切土領域CAと平地領域FAとで構成されている。排水口Dは、複数の第1の補助暗渠AC1が集水した圃場Fの水を排水するための溝である。第1の補助暗渠AC1は、圃場Fの水を集水して排水口Dに導くための補助暗渠である。本実施形態では、第1の補助暗渠AC1として、深さ35cmのもみ殻暗渠が第1の作業機体3によって施工される。また、「圃場Fの水」とは、地表水、浸透水および地下水等、圃場Fに凡そ存在するすべての種類の水を指す。
【0070】
一方、作業者WがS301の調査を行った結果、別用途排水口が施工領域SA内に施工されていることが判明した場合(S302でYES)、作業者Wが、別用途排水口の深さが35cmよりも深いか否か調べる(S304)。別用途排水口の深さの調査方法に特段の限定はなく、例えば別用途排水口の深さをメジャーで測定してもよい。
【0071】
作業者WがS304の調査を行った結果、別用途排水口の深さが35cm以下であることが判明した場合(NO)、S303の工程に進む。一方、作業者WがS304の調査を行った結果、別用途排水口の深さが35cmよりも深いことが判明した場合(YES)、別用途排水口を排水口Dとして活用する(S305;排水口施工工程)。つまり、本明細書における「排水口Dを施工する」との概念には、このような、別用途排水口を排水口Dとして活用するケースも含まれる。
【0072】
このように、本発明の一態様に係る施工方法によれば、第1の標高マップM1および第2の標高マップM2を取得するだけで施工領域SAを決定できる。これにより、施工領域SAの決定に手間を掛ける必要がなくなり、各種補助暗渠の施工作業の作業効率を高めることができる。
【0073】
また、本発明の一態様に係る施工方法では、盛土領域EAに排水口Dを施工する。これにより、盛土領域EAが沈降したとしても、第1の補助暗渠AC1に集水された水を排水口Dから確実に排水できる。また、切土領域CAに排水口Dを施工する場合に比べて、逆勾配による逆流および余剰水の滞留を低減できる。
【0074】
さらに、本発明の一態様に係る施工方法によれば、非盛土領域NAよりも盛土領域EAの方が、複数の第1の補助暗渠AC1が密集する。そのため、排水口Dが施工された施工領域SAを含む盛土領域EAにおいて、圃場Fの水を、密集した複数の第1の補助暗渠AC1を介して確実に集水できる。これにより、圃場Fの水を排水口Dからより確実に排水できる。
【0075】
ここで、「逆勾配」とは、排水口Dが施工されている施工領域SAの標高が、当該施工領域SAと反対側の領域(本実施形態では切土領域CA)の標高よりも高い状態を指す。「逆流」とは、圃場Fの水が施工領域SAと反対側の領域に向けて流れる現象を指す。「余剰水の滞留」とは、第1の補助暗渠ACが集水し切れなかった水(余剰水)が施工領域SAと反対側の領域に滞留する現象を指す。
【0076】
次に、S306では、作業者Wが、排水口施工工程の終了後、第1の作業機体3を操作して第1の補助暗渠AC1を圃場Fに施工する(集水暗渠施工工程)。具体的には、図8の符号801に示すように、複数の第1の補助暗渠AC1を、排水口Dを基点として放射状に施工する。
【0077】
本実施形態では、複数の第1の補助暗渠AC1を、盛土領域EA、切土領域CAおよび平地領域FAのすべてに跨って存在するよう圃場Fの略全域に施工する。施工が終わると、図9に示すように、ナイフ312の厚さと同程度の幅で深さH1が35cmの溝の全体にもみ殻RHが敷き詰められたもみ殻暗渠が、第1の補助暗渠AC1として形成される。
【0078】
次に、S307では、作業者Wが、第2の作業機体4を操作して図8の符号802に示すような第2の補助暗渠AC2を切土領域CAに施工する(遮水暗渠施工工程)。第2の補助暗渠AC2は、圃場Fの水を集水して第1の補助暗渠AC1に導くための補助暗渠である。具体的には、図9に示すように、第2の補助暗渠AC2の深さH2を第1の補助暗渠AC1の深さH1よりも浅くしつつ、第2の補助暗渠AC2を第1の補助暗渠AC1に接続させる。
【0079】
本実施形態では、第2の補助暗渠AC2の深さH2が30cmとなるように施工し、かつ第2の補助暗渠AC2が第1の補助暗渠AC1と立体交差するように施工する。また、第2の補助暗渠AC2を、切土領域CAと平地領域FAとの境界に沿って延伸するよう、当該境界の付近に施工する。施工が終わると、ナイフ412の厚さと同程度の幅の溝の底に、モール414の形状および外径と略同一の通水孔(つまり弾丸暗渠)が、第2の補助暗渠AC2として形成される。
【0080】
このように、本発明の一態様に係る施工方法では、第2の補助暗渠AC2を第1の補助暗渠AC1と立体交差するように施工する。そのため、圃場Fよりも標高が高い圃場から圃場Fに湧水等が流れ込んだとしても、湧水等が切土領域CAを含む非盛土領域NAに達した段階で、第2の補助暗渠AC2が湧水等を集水して第1の補助暗渠AC1に導くことができる。これにより、圃場Fに流れ込んできた湧水等を排水口Dから確実に排水できる。
【0081】
なお、第2の補助暗渠ACを本実施形態のように切土領域CAに施工する必要は必ずしもなく、切土領域CAの傾斜態様等に応じて平地領域FAに施工してもよい。圃場Fが盛土領域EAと平地領域FAとで構成されている場合、つまり非盛土領域NAが平地領域FAのみで構成されている場合においても、第2の補助暗渠ACを平地領域FAに施工することができる。
【0082】
また、第1の補助暗渠AC1の深さH1を35cmとし、第2の補助暗渠AC2の深さH2を30cmとすることはあくまで一例である。第1の補助暗渠AC1と第2の補助暗渠AC2とが立体交差する限度において、深さH1および深さH2のそれぞれを、圃場Fの大きさ、土質、起伏の態様等に応じて種々の値に設定することができる。
【0083】
次に、S308では、作業者Wが、第2の作業機体4を操作して図8の符号802に示すような第3の補助暗渠AC3を圃場Fに施工する(交差暗渠施工工程)。第3の補助暗渠AC3は、圃場Fの水を集水して第1の補助暗渠AC1に導くための補助暗渠である。具体的には、図9に示すように、第3の補助暗渠AC3の深さH3を第1の補助暗渠AC1の深さH1よりも浅くしつつ、第3の補助暗渠AC3を第1の補助暗渠AC1に立体交差させる。
【0084】
本実施形態では、第3の補助暗渠AC3の深さH3が30cmとなるように施工する。また、図8の符号802に示すように、盛土領域EAおよび非盛土領域NAのそれぞれに、複数の第3の補助暗渠AC3を、隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3が平行となるように、かつ平面視で外側長辺EA-2側に傾斜するように施工する。また、外側長辺EA-2に最も近い第3の補助暗渠AC3の一端(以下、「開始端」)を、圃場Fにおける四隅のうち、長辺領域EA-1側に位置するいずれか一方の隅(以下、「開始端」)の付近に位置するように施工する。さらには、盛土領域EA内で隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3の間隔I1を、非盛土領域NA内で隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3の間隔I2よりも狭くする。
【0085】
ここで、「隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3が平行」は、基準線(例えば、第3の補助暗渠AC3の延伸方向と略平行な直線)に対して厳密に180°の角度を成すことが必要な概念ではない。第3の補助暗渠AC3の施工過程で生じる施工誤差に起因する多少の角度誤差を含んでいたとしても、実質的に「平行」と見做しうる範囲であれば、なお「隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3が平行」と言い得る。
【0086】
また、本実施形態における「隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3の間隔(I1、I2)」は、隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3における、同じ側に位置する2つの先端の間の直線距離である。
【0087】
さらに、圃場Fに施工する複数の第3の補助暗渠AC3のすべてについて、隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3を略平行に施工するとともに、第2の補助暗渠AC2の延伸方向を基準として盛土領域EA側に傾斜させる。施工が終わると、図9に示すように、第2の補助暗渠AC2と同態様の弾丸暗渠が第3の補助暗渠AC3として形成される。
【0088】
このように、本発明の一態様に係る施工方法では、深さが第1の補助暗渠AC1よりも浅く、かつ第1の補助暗渠AC1と立体交差する第3の補助暗渠AC3を施工する。これにより、第1の補助暗渠AC1が集水し切れなかった圃場Fの水を第3の補助暗渠AC3が集水して第1の補助暗渠AC1に導くことから、圃場Fの水を排水口Dからより確実に排水できる。
【0089】
また、本発明の一態様に係る施工方法によれば、非盛土領域NAよりも盛土領域EAの方が、複数の第3の補助暗渠AC3が密集する。そのため、排水口Dが施工された施工領域SAを含む盛土領域EAにおいて、圃場Fの水を、密集した複数の第3の補助暗渠AC3を介して確実に集水できる。これにより、圃場Fの水を排水口Dからより確実に排水できる。
【0090】
S308の工程が終了することにより、圃場Fへの各種の補助暗渠の施工が終了する。施工終了後の圃場Fは、例えば図10に示すような状態になる。なお、図6に示すフローチャートにおける各工程の順番はあくまで一例であり、排水口施工工程の終了後に集水暗渠施工工程を実施する順番以外は、この順番に限定されない。
【0091】
〔第3の補助暗渠の施工態様の変形例〕
第3の補助暗渠AC3の施工態様は本実施形態の例に限定されず、種々の変形例が想定される。以下、図11および図12を参照して、想定される種々の変形例の中からいくつか例示して説明する。具体的には、(i)土壌水分の均一化を重視する場合、および(ii)施工作業の作業効率の向上を重視する場合のそれぞれについて説明する。
【0092】
なお、図11および図12では、説明の便宜上、圃場Fの外形を実際のもの(図8および図10参照)よりも簡略化して矩形状としており、かつ、第3の補助暗渠AC3の一部の図示を省略している。また、図12では、説明の便宜上、圃場Fの一部および第1の補助暗渠AC1の一部について、図示を省略している。さらに、図11および図12に示す各変形例においては、第1の補助暗渠AC1の施工態様が、本実施形態の例と同じであるものとする。
【0093】
<土壌水分の均一化を重視する場合>
複数の第3の補助暗渠AC3を、隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3が平行となるように施工する。まず、施工領域SAが長辺領域EA-1の端部に位置している場合であれば、図11の符号1101に示すように、複数の第3の補助暗渠AC3を、平面視で外側長辺EA-2側に傾斜するように施工する。また、開始端を開始隅の付近に位置するように施工する(第1の変形例)。
【0094】
第1の変形例では、外側長辺EA-2に最も近い第3の補助暗渠AC3における開始端と反対側の先端と、外側長辺EA-2における開始隅と反対側の先端と、の間の直線距離が5mとなるように施工している。また、盛土領域EA内で隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3の間隔I1を5mとし、非盛土領域NA内で隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3の間隔I2を10mとしている。
【0095】
ここで、第1の変形例における「隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3の間隔(I1、I2)」は、隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3における、同じ側に位置する2つの先端の間の直線距離である。
【0096】
さらに、第1の変形例および後述する第2から第4の変形例では、切土領域CAと平地領域FAとの境界が、圃場Fにおける外側長辺EA-2と反対側の短辺と平行になるように形成されている。かつ、第2の補助暗渠AC2を、切土領域CAと平地領域FAとの境界に沿って、圃場Fにおける外側長辺EA-2と反対側の短辺と平行になるように施工している。
【0097】
ここで、「第2の補助暗渠AC2を、圃場Fにおける外側長辺EA-2と反対側の短辺と平行」は、基準線(例えば、圃場Fにおける外側長辺EA-2と反対側の短辺の延伸方向と略平行な直線)に対して厳密に180°の角度を成すことが必要な概念ではない。第2の補助暗渠AC2の施工過程で生じる施工誤差に起因する多少の角度誤差を含んでいたとしても、実質的に「平行」と見做しうる範囲であれば、なお「第2の補助暗渠AC2が、圃場Fにおける外側長辺EA-2と反対側の短辺が平行」と言い得る。
【0098】
次に、施工領域SAが長辺領域EA-1の略中央に位置している場合であれば、図11の符号1102に示すように、複数の第3の補助暗渠AC3のそれぞれを、平面視で外側長辺EA-2と平行になるように施工する(第2の変形例)。
【0099】
ここで、「複数の第3の補助暗渠AC3のそれぞれを、平面視で外側長辺EA-2と平行」は、基準線(例えば、外側長辺EA-2の延伸方向と略平行な直線)に対して厳密に180°の角度を成すことが必要な概念ではない。第3の補助暗渠AC3の施工過程で生じる施工誤差に起因する多少の角度誤差を含んでいたとしても、実質的に「平行」と見做しうる範囲であれば、なお「複数の第3の補助暗渠AC3のそれぞれを、平面視で外側長辺EA-2と平行」と言い得る。
【0100】
第2の変形例でも、第1の変形例と同様、盛土領域EA内で隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3の間隔I1を5mとし、非盛土領域NA内で隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3の間隔I2を10mとしている。
【0101】
<施工作業の作業効率の向上を重視する場合>
複数の第3の補助暗渠AC3を、一筆書きの態様で施工する。まず、施工領域SAが長辺領域EA-1の端部に位置している場合であれば、複数の第3の補助暗渠AC3を、図12の符号1201に示すような態様で施工する(第3の変形例)。
【0102】
第3の変形例では、外側長辺EA-2に最も近い第3の補助暗渠AC3の施工態様については第1の変形例と同じである。外側長辺EA-2に2番目に近い第3の補助暗渠AC3以降については、隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3が、平面視において、外側長辺EA-2の延伸方向を基準として略対称となるように施工する。
【0103】
また、第3の変形例では、盛土領域EA内で隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3の間隔I1を10mとし、非盛土領域NA内で隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3の間隔I2を20mとしている。ここで、第3の変形例における「隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3の間隔(I1、I2)」は、隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3における、同じ側に位置し、かつ互いに離間している2つの先端の間の直線距離である。
【0104】
次に、施工領域SAが長辺領域EA-1の略中央に位置している場合であれば、複数の第3の補助暗渠AC3を、図12の符号1202に示すような態様で施工する(第4の変形例)。第4の変形例では、外側長辺EA-2に最も近い第3の補助暗渠AC3の施工態様については第2の変形例と同じである。外側長辺EA-2に2番目に近い第3の補助暗渠AC3以降の施工態様については、第3の変形例と同じである。
【0105】
<小括>
本実施形態および各変形例の通り、本発明の一態様に係る施工方法では、盛土領域EAおよび非盛土領域NAのそれぞれに、複数の第3の補助暗渠AC3を当該第3の補助暗渠AC3の延伸方向に対して並列に施工する方法を取り入れることができる。また、盛土領域EA内で隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3の間隔I1を、非盛土領域NA内で隣り合う2つの第3の補助暗渠AC3の間隔I2よりも狭くする方法を取り入れることができる。
【0106】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報生成装置50(以下、「装置」)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(情報生成装置50に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0107】
この場合、前述の装置は、前述のプログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により前述のプログラムを実行することにより、前述の実施形態で説明した各機能が実現される。
【0108】
前述のプログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、前述の装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、前述のプログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して前述の装置に供給されてもよい。
【0109】
また、前述の各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、前述の各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより前述の各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0110】
〔付記事項〕
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0111】
〔実施例〕
図13から図19を参照して、本発明の実施例について説明する。まず、2022年5月16日から同年5月18日にかけて、広島県東広島市の特定の圃場に図13の符号1302に示す態様の各補助暗渠を施工して、第1の施工圃場F-1とした。また、第1の施工圃場F-1に隣接する圃場に額縁明渠を施工して、第1の対照圃場F´-1とした。第1の施工圃場F-1は本発明の第1の実施例に係る圃場であり、第1の対照圃場F´-1は本発明の第1の比較例に係る圃場である。第1の施工圃場F-1および第1の対照圃場F´-1のそれぞれにおける、切土領域および盛土領域の各分布状態は、図13の符号1301に示すような状態になっていた。
【0112】
同じく2022年5月16日から同年5月18日にかけて、広島県東広島市の別の圃場に図14の符号1402に示す態様の各補助暗渠を施工して、第2の施工圃場F-2とした。また、第2の施工圃場F-2に隣接する圃場に額縁明渠を施工して第2の対照圃場F´-2とした。第2の施工圃場F-2は本発明の第2の実施例に係る圃場であり、第2の対照圃場F´-2は本発明の第2の比較例に係る圃場である。第2の施工圃場F-2および第2の対照圃場F´-2のそれぞれにおける、切土領域および盛土領域の各分布状態は、図14の符号1401に示すような状態になっていた。
【0113】
各補助暗渠を施工する際、第1の施工圃場F-1および第2の施工圃場F-2の双方において、各補助暗渠の施工方法および施工態様のそれぞれを前述の実施形態と同様にした(図11参照)。例えば、第1の補助暗渠AC1の深さH1を35cmとし、第2の補助暗渠AC2の深さH2を30cmとし、第3の補助暗渠AC3の深さH3を30cmとした。具体的には、第1の施工圃場F-1および第2の施工圃場F-2のそれぞれにおける各補助暗渠の施工態様は、下記の表1のようになった。なお、下記の表1に関し、第1の補助暗渠AC1および第2の補助暗渠AC2として「もみ殻暗渠」を使用した。また、第3の補助暗渠AC3として「もみ殻暗渠」と「弾丸暗渠」とを交互に配置して使用した。
【0114】
【表1】
【0115】
また、第1の施工圃場F-1および第2の施工圃場F-2の双方において、各補助暗渠を施工する前に排水口Dを設置した。具体的には、施工領域SAにおける深さ35cmの位置に、排水口Dとして径100mmのキャップ付き塩ビ管(図7参照)を設置した。
【0116】
次に、2022年6月4日、第1の施工圃場F-1および第1の対照圃場F´-1のそれぞれにダイズ品種「サチユタカ」を播種した。また、2022年7月1日、第2の施工圃場F-2および第2の対照圃場F´-2のそれぞれにダイズ品種「黒招福」を播種した。「サチユタカ」の播種量は、第1の施工圃場F-1および第1の対照圃場F´-1の双方において6.5kg/10aであった。「黒招福」の播種量も、第2の施工圃場F-2および第2の対照圃場F´-2の双方において6.5kg/10aであった。
【0117】
次に、第1の施工圃場F-1および第1の対照圃場F´-1の双方において、播種日から播種後120日強までの期間における土壌体積含水率の推移を調査した。具体的には、両圃場のそれぞれにおける最も内側の工程の畝の圃場中央付近において、深さ10cmの位置に市販の土壌水分センサ(不図示、EC-5;METER社製)を2本設置し、それぞれのセンサから1時間に1回土壌水分を検出した。そして、24時時点の2本の土壌水分センサの各検出値を平均した値を、検出日の土壌水分とした。なお、土壌水分センサの校正には、Mochizuki and Sakaguchi(2020)に記載されている、間隙率および水分飽和状態の出力値に基づく校正法を用いた。
【0118】
また、市販のデータロガー(不図示、Em50;METER社製)を、土壌水分センサによる検出(検出時間の制御を含む)と、土壌水分センサの検出値(出力値)の記録/保存と、に用いた。さらに、市販の雨量計(不図示、ECRN-50;METER社製)を用いて、播種日から播種後120日強までの期間における各日の降水量を計測した。具体的には、雨量計によって計測された1日当たりの降水量の積算値を各日の降水量とした。
【0119】
次に、第1の施工圃場F-1および第1の対照圃場F´-1の双方において、2022年10月25日に「サチユタカ」の株数調査を実施し、同年11月4日に「サチユタカ」の全刈収量調査を実施した。また、第2の施工圃場F-2および第2の対照圃場F´-2の双方において、2022年11月8日に「黒招福」の株数調査を実施し、同年11月18日に「黒招福」の全刈収量調査を実施した。
【0120】
「サチユタカ」の株数調査については、第1の施工圃場F-1の中から5か所、第1の対照圃場F´-1の中から5か所をそれぞれ、サイコロの「5」の目のように位置するように、かつ中央の1か所が各圃場の中央に位置するように選択した。また、1か所につき中央の3条の2m,1.8mを調査する手法を採用した。「黒招福」の株数調査についても、第2の施工圃場F-2の中から5か所、第2の対照圃場F´-2の中から5か所をそれぞれ任意に選択し、1か所につき中央の3条の2m,1.8mを調査する手法を採用した。
【0121】
「サチユタカ」の全刈収量調査については、次に述べる手法を採用した。すなわち、第1の施工圃場F-1および第1の対照圃場F´-1の双方において、不図示の汎用コンバイン(GS380;ヤンマーホールディングス株式会社製)を用いて収穫作業を実施した後、収穫物の重量を計測した。収穫物の重量計測には市販の車両重量計(不図示、HS1003-N1A;株式会社共和電業製)を用いた。また、市販の穀類水分計(不図示、PM-830-2;株式会社ケツト科学研究所製)を用いて収穫物の子実水分も計測した。次に、UAVによる空撮写真にオルソモザイク処理を施した写真から、ArcGISを用いて額縁明渠に囲まれた面積を算出した。そして、この算出面積を圃場面積とした上で子実水分を15%に補正することにより、全刈収量を算出した。「黒招福」の全刈収量調査についても、第2の施工圃場F-2および第2の対照圃場F´-2の双方において前述と同様の手法を採用した。
【0122】
なお、「サチユタカ」の播種日から「黒招福」の全刈収量調査実施日までの期間に対応する、広島県東広島市の月別の気象概況は下記の表2のように推移した。
【0123】
【表2】
【0124】
以下、第1の施工圃場F-1および第2の施工圃場F-2のそれぞれにおける排水対策の結果について説明する。まず、圃場1m当たりの苗立ち本数については図15に示すような結果となった。具体的には、「サチユタカ」について、第1の対照圃場F´-1では9.4株/mであったのに対して第1の施工圃場F-1では15.5株/mとなり、第1の施工圃場F-1の方が第1の対照圃場F´-1よりも苗立ち本数が約21.5%増加した。また、「黒招福」について、第2の対照圃場F´-2では13.3株/mであったのに対して第2の施工圃場F-2では16.7株/mとなり、第2の施工圃場F-2の方が第2の対照圃場F´-2よりも苗立ち本数が約13.9%増加した。圃場における排水対策の効果が高いほど苗立ち本数が増加することに鑑みれば、これらの結果から、第1の施工圃場F-1および第2の施工圃場F-2の双方において排水対策の効果が高かったことが判明した。
【0125】
次に、圃場10a当たりの全刈収量については図16に示すような結果となった。具体的には、「サチユタカ」について、第1の対照圃場F´-1では233kg/10aであったのに対して第1の施工圃場F-1では264kg/10aとなり、第1の施工圃場F-1の方が第1の対照圃場F´-1よりも全刈収量が約13.3%増加した。また、「黒招福」について、第2の対照圃場F´-2では272kg/10aであったのに対して第2の施工圃場F-2では301kg/10aとなり、第2の施工圃場F-2の方が第2の対照圃場F´-2よりも全刈収量が約10.6%増加した。圃場における排水対策の効果が高いほど全刈収量が増加することに鑑みれば、これらの結果からも、第1の施工圃場F-1および第2の施工圃場F-2の双方において排水対策の効果が高かったことが判明した。
【0126】
次に、土壌体積含水率については図17に示すような結果となった。1日当たりの降水量が最も多かった播種後46日以降の土壌体積含水率の推移を見てみると、第1の対照圃場F´-1では、播種後50日までは土壌体積含水率が約0.60m/mに維持され、播種後50日になってから土壌体積含水率が減少し始めた。そして、土壌体積含水率が減少し始めてから約0.20m/mに減少するまで24日経過した。一方、第1の施工圃場F-1では、播種後47日で土壌体積含水率が約0.60m/mから減少し始めただけでなく、約0.20m/mに減少するまで13日しか経過しなかった。これらの結果から、第1の施工圃場F-1の方が、第1の対照圃場F´-1よりも土壌体積含水率が早く減少し始め、かつ、減少速度も速いことが判明した。言い換えれば、第1の施工圃場F-1における排水対策の効果が高かったことが判明した。
【0127】
次に、圃場の排水能力については図18に示すような結果となった。ここで、「圃場の排水能力」とは、図19に示すような、土壌体積含水率の増加分の50%が低下するのに要した時間のことである。土壌体積含水率の増加分とは、降雨後の最大土壌体積含水率から降雨前の土壌体積含水率を差し引いた値である。この時間が短いほど「圃場の排水能力」が高いことになる。
【0128】
具体的には、「サチユタカ」について、第1の対照圃場F´-1では約46時間であったのに対して第1の施工圃場F-1では約39.5時間となり、第1の施工圃場F-1の方が第1の対照圃場F´-1よりも圃場の排水能力が約14.1%向上した。また、「黒招福」について、第2の対照圃場F´-2では約25.5時間であったのに対して第2の施工圃場F-2では15.5時間となり、第2の施工圃場F-2の方が第2の対照圃場F´-2よりも圃場の排水能力が約39.0%向上した。これらの結果からも、第1の施工圃場F-1および第2の施工圃場F-2の双方において排水対策の効果が高かったことが判明した。
【符号の説明】
【0129】
24 第1の標高値
25 第2の標高値
AC1 第1の補助暗渠
AC2 第2の補助暗渠
AC3 第3の補助暗渠
CA 切土領域
D 排水口
EA 盛土領域
F 圃場
F´ 整備前の圃場
G1 第1のグリッド
G2 第2のグリッド
H1 深さ(第1の補助暗渠の深さ)
H2 深さ(第2の補助暗渠の深さ)
H3 深さ(第3の補助暗渠の深さ)
I1、I2 間隔
IFF 圃場基盤情報
M1 第1の標高マップ(第1の分布情報)
M2 第2の標高マップ(第2の分布情報)
NA 非盛土領域
SA 施工領域
US1 第1の単位空間
US2 第2の単位空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19