IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人東京工業大学の特許一覧

特開2024-120884十字交差方向性結合器、及びアンテナ用電力分配装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120884
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】十字交差方向性結合器、及びアンテナ用電力分配装置
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/12 20060101AFI20240829BHJP
   H01P 5/18 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01P5/12 B
H01P5/18 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024025092
(22)【出願日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2023027324
(32)【優先日】2023-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】戸村 崇
(72)【発明者】
【氏名】廣川 二郎
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 修
(72)【発明者】
【氏名】山中 大輔
(57)【要約】
【課題】簡易な構造を備える十字交差方向性結合器を提供する。
【解決手段】本発明の一態様にかかる十字交差方向性結合器1は、第1ポートP1および第3ポートP3を備える第1導波管11と、第2ポートP2を備える第2導波管12と、第4ポートP4を備える第3導波管13と、を備える。第1導波管11と第2導波管12との間には第1スロットSL1が設けられており、第1導波管11と第3導波管13との間には第2スロットSL2が設けられている。第1及び第2スロットSL1、SL2は、第2導波管12の上面および第3導波管13の下面において第2導波管12および第3導波管13の幅方向の中心から所定の距離だけオフセットして配置されている。第2導波管12および第3導波管13は、第1スロットSL1、第1導波管11、及び第2スロットSL2を介して互いに結合している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポートおよび第3ポートを備える第1導波管と、
前記第1導波管の下側に配置されるとともに、第2ポートを備え、当該第2ポートと対向する端部が短絡された第2導波管と、
前記第1導波管の上側に配置されるとともに、第4ポートを備え、当該第4ポートと対向する端部が短絡された第3導波管と、を備え、
前記第1導波管と前記第2導波管との間には第1スロットが設けられており、
前記第1導波管と前記第3導波管との間には第2スロットが設けられており、
前記第1スロットおよび前記第2スロットは、前記第1導波管の下面および上面において前記第1導波管の幅方向の中心に配置されており、
前記第1スロットおよび前記第2スロットは、前記第2導波管の上面および前記第3導波管の下面において前記第2導波管および前記第3導波管の幅方向の中心から所定の距離だけオフセットして配置されており、
前記第2導波管および前記第3導波管は、前記第1スロット、前記第1導波管、及び前記第2スロットを介して互いに結合している、
十字交差方向性結合器。
【請求項2】
前記第1導波管の前記第1ポートに供給された電磁波は前記第1導波管の前記第3ポートから出力され、
前記第2導波管の前記第2ポートに供給された電磁波は、前記第1スロット、前記第1導波管、及び前記第2スロットを経由して前記第3導波管に伝播し、前記第3導波管の前記第4ポートから出力される、
請求項1に記載の十字交差方向性結合器。
【請求項3】
前記所定の距離は、前記第2導波管および前記第3導波管が前記第1スロットおよび前記第2スロットと結合し、前記第1導波管が前記第1スロットおよび前記第2スロットと結合しない距離である、請求項1または2に記載の十字交差方向性結合器。
【請求項4】
前記第1乃至第3導波管が伸びる方向において、前記第2導波管の前記第2ポートと前記第3導波管の前記第4ポートとが互いに反対側に配置されている、請求項1または2に記載の十字交差方向性結合器。
【請求項5】
前記第1乃至第3導波管が伸びる方向において、前記第2導波管の前記第2ポートと前記第3導波管の前記第4ポートとが同一側に配置されている、請求項1または2に記載の十字交差方向性結合器。
【請求項6】
入力信号を入力する複数の入力口がマトリックス状に配置された入力部と、
入力された信号に位相差を与えて等振幅で分配して出力するハイブリッド結合部と、
入力された信号を交差する回路に出力する交差部結合と、
入力された信号に位相差を与えて出力する位相器と、
出力信号を出力する複数の出力口がマトリックス状に配置された出力部と、を有するバトラーマトリックス給電回路と、
前記バトラーマトリックス給電回路の前記出力部から出力された前記出力信号の出力方向を90度曲げるベンド構造と、を備え、
前記ベンド構造は、請求項1または2に記載の十字交差方向性結合器を複数用いて構成されている、
アンテナ用電力分配装置。
【請求項7】
前記十字交差方向性結合器は、前記第1乃至第3導波管が伸びる方向において前記第2導波管の前記第2ポートと前記第3導波管の前記第4ポートとが互いに反対側に配置されているA型十字交差方向性結合器を備え、
前記ベンド構造は、複数の前記A型十字交差方向性結合器の前記第2導波管の前記第2ポートと前記第3導波管の前記第4ポートとを互いに接続して複数の前記A型十字交差方向性結合器を直列に接続した構成を含む、
請求項6に記載のアンテナ用電力分配装置。
【請求項8】
前記十字交差方向性結合器は、前記第1乃至第3導波管が伸びる方向において前記第2導波管の前記第2ポートと前記第3導波管の前記第4ポートとが同一側に配置されているB型十字交差方向性結合器を備え、
前記ベンド構造は、複数の前記B型十字交差方向性結合器の前記第2導波管の前記第2ポートと前記第3導波管の前記第4ポートとを互いに接続して複数の前記B型十字交差方向性結合器を直列に接続した構成を含む、
請求項6に記載のアンテナ用電力分配装置。
【請求項9】
第1ポートおよび第3ポートを備える第1導波管と、
前記第1導波管の下側に配置されるとともに、第2ポートを備え、当該第2ポートと対向する端部が短絡された第2導波管と、を備え、
前記第1導波管と前記第2導波管との間には第1スロットが設けられており、
前記第1導波管の前記第2導波管側と反対側の表面には第2スロットが設けられており、
前記第1スロットおよび前記第2スロットは、前記第1導波管の下面および上面において前記第1導波管の幅方向の中心に配置されており、
前記第1スロットは、前記第2導波管の上面において前記第2導波管の幅方向の中心から所定の距離だけオフセットして配置されており、
前記第1導波管の前記第1ポートに供給された電磁波は、前記第1導波管の前記第3ポートから出力され、
前記第2導波管の前記第2ポートに供給された電磁波は、前記第2導波管の前記第2ポート、前記第1スロット、前記第1導波管を経由して、前記第2スロットから空間中に放射される、
十字交差方向性結合器。
【請求項10】
第1ポートおよび第3ポートを備える第1導波管と、
前記第1導波管の下側に配置されるとともに、第2ポートを備え、当該第2ポートと対向する端部が短絡された第2導波管と、
前記第1導波管の上側に配置されるとともに、第4ポートを備え、当該第4ポートと対向する端部が短絡された第3導波管と、
前記第1導波管と前記第3導波管との間に配置されるとともに、第5ポートおよび第6ポートを備える第4導波管と、を備え、
前記第1導波管と前記第2導波管との間には第1スロットが設けられており、
前記第1導波管と前記第4導波管との間には第2スロットが設けられており、
前記第4導波管と前記第3導波管との間には第3スロットが設けられており、
前記第1乃至第3スロットは、前記第1及び第4導波管の下面および上面において前記第1及び第4導波管の幅方向の中心に配置されており、
前記第1及び第3スロットは、前記第2導波管の上面および前記第3導波管の下面において前記第2導波管および前記第3導波管の幅方向の中心から所定の距離だけオフセットして配置されており、
前記第2導波管および前記第3導波管は、前記第1スロット、前記第1導波管、前記第2スロット、前記第4導波管、及び前記第3スロットを介して互いに結合している、
十字交差方向性結合器。
【請求項11】
前記第1導波管の前記第1ポートに供給された電磁波は前記第1導波管の前記第3ポートから出力され、
前記第4導波管の前記第5ポートに供給された電磁波は前記第4導波管の前記第6ポートから出力され、
前記第2導波管の前記第2ポートに供給された電磁波は、前記第1スロット、前記第1導波管、前記第2スロット、前記第4導波管、及び前記第3スロットを経由して前記第3導波管に伝播し、前記第3導波管の前記第4ポートから出力される、
請求項10に記載の十字交差方向性結合器。
【請求項12】
第1ポートおよび第3ポートを備える第1導波管と、
前記第1導波管の下側に配置されるとともに、第2ポートを備え、当該第2ポートと対向する端部が短絡された第2導波管と、
前記第1導波管の上側に配置されるとともに、第5ポートおよび第6ポートを備える第4導波管と、を備え、
前記第1導波管と前記第2導波管との間には第1スロットが設けられており、
前記第1導波管と前記第4導波管との間には第2スロットが設けられており、
前記第4導波管の前記第1導波管側と反対側の表面には第3スロットが設けられており、
前記第1乃至第3スロットは、前記第1及び第4導波管の下面および上面において前記第1及び第4導波管の幅方向の中心に配置されており、
前記第1スロットは、前記第2導波管の上面において前記第2導波管の幅方向の中心から所定の距離だけオフセットして配置されており、
前記第1導波管の前記第1ポートに供給された電磁波は前記第1導波管の前記第3ポートから出力され、
前記第4導波管の前記第5ポートに供給された電磁波は前記第4導波管の前記第6ポートから出力され、
前記第2導波管の前記第2ポートに供給された電磁波は、前記第2導波管の前記第2ポート、前記第1スロット、前記第1導波管、前記第2スロット、前記第4導波管を経由して、前記第3スロットから空間中に放射される、
十字交差方向性結合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十字交差方向性結合器、及びアンテナ用電力分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンテナ用電力分配装置の構成要素の一つとして、バトラーマトリックス給電回路が知られている。バトラーマトリックス給電回路は、入力信号を入力する複数の入力口がマトリックス状に配置された入力部と、出力信号を出力する複数の出力口がマトリックス状に配置された出力部とを備え、入力部と出力部との間にハイブリッド結合器、交差結合器、及び位相器が配置されている。
【0003】
特許文献1には、2次元方向の切り替えをするための装置構成を簡略化できるバトラーマトリックス給電回路に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-144113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的にバトラーマトリックス給電回路は、入力信号が入力される方向と出力信号が出力される方向とが同一方向となるように構成されている。例えば、バトラーマトリックス給電回路は、ビーム切替回路を構成する基板と水平な方向に出力信号が出力される。
【0006】
しかしながらデバイスの構成によっては、バトラーマトリックス給電回路から出力される出力信号の方向を入力信号に対して所定の角度曲げたい場合がある。例えば、窓ガラスや壁面にバトラーマトリックス給電回路を搭載する場合は、ビーム切替回路を構成する基板に対して垂直な方向に出力信号を出力したい場合がある。このような構造は、例えば、バトラーマトリックス給電回路の出力側にベンド構造を設け、バトラーマトリックス給電回路から出力される出力信号の方向を入力信号に対して90度曲げることで実現できる。
【0007】
ベンド構造は、例えばビーム切替回路とは別に出力信号を曲げるための曲げ回路を設けることで構成できる。しかしながら、ビーム切替回路と曲げ回路とでは導波管の積層方向が異なるため、各々の導波管をコネクタで接続する必要があり、ベンド構造が複雑になるという問題がある。このような問題は、簡易な構成を備える十字交差方向性結合器を用いることで解決できる。
【0008】
上記課題に鑑み本発明の目的は、簡易な構造を備える十字交差方向性結合器、及びアンテナ用電力分配装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様にかかる十字交差方向性結合器は、第1ポートおよび第3ポートを備える第1導波管と、前記第1導波管の下側に配置されるとともに、第2ポートを備え、当該第2ポートと対向する端部が短絡された第2導波管と、前記第1導波管の上側に配置されるとともに、第4ポートを備え、当該第4ポートと対向する端部が短絡された第3導波管と、を備える。前記第1導波管と前記第2導波管との間には第1スロットが設けられており、前記第1導波管と前記第3導波管との間には第2スロットが設けられている。前記第1スロットおよび前記第2スロットは、前記第1導波管の下面および上面において前記第1導波管の幅方向の中心に配置されている。前記第1スロットおよび前記第2スロットは、前記第2導波管の上面および前記第3導波管の下面において前記第2導波管および前記第3導波管の幅方向の中心から所定の距離だけオフセットして配置されている。前記第2導波管および前記第3導波管は、前記第1スロット、前記第1導波管、及び前記第2スロットを介して互いに結合している。
【0010】
上述の十字交差方向性結合器において、前記第1導波管の前記第1ポートに供給された電磁波は前記第1導波管の前記第3ポートから出力され、前記第2導波管の前記第2ポートに供給された電磁波は、前記第1スロット、前記第1導波管、及び前記第2スロットを経由して前記第3導波管に伝播し、前記第3導波管の前記第4ポートから出力されてもよい。
【0011】
上述の十字交差方向性結合器において、前記所定の距離は、前記第2導波管および前記第3導波管が前記第1スロットおよび前記第2スロットと結合し、前記第1導波管が前記第1スロットおよび前記第2スロットと結合しない距離でもよい。
【0012】
上述の十字交差方向性結合器において、前記第1乃至第3導波管が伸びる方向において、前記第2導波管の前記第2ポートと前記第3導波管の前記第4ポートとが互いに反対側に配置されてもよい。
【0013】
上述の十字交差方向性結合器において、前記第1乃至第3導波管が伸びる方向において、前記第2導波管の前記第2ポートと前記第3導波管の前記第4ポートとが同一側に配置されてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様にかかるアンテナ用電力分配装置は、入力信号を入力する複数の入力口がマトリックス状に配置された入力部と、入力された信号に位相差を与えて等振幅で分配して出力するハイブリッド結合部と、入力された信号を交差する回路に出力する交差部結合と、入力された信号に位相差を与えて出力する位相器と、出力信号を出力する複数の出力口がマトリックス状に配置された出力部と、を有するバトラーマトリックス給電回路と、前記バトラーマトリックス給電回路の前記出力部から出力された前記出力信号の出力方向を90度曲げるベンド構造と、を備える。前記ベンド構造は、上述の十字交差方向性結合器を複数用いて構成されている。
【0015】
上述のアンテナ用電力分配装置において、前記十字交差方向性結合器は、前記第1乃至第3導波管が伸びる方向において前記第2導波管の前記第2ポートと前記第3導波管の前記第4ポートとが互いに反対側に配置されているA型十字交差方向性結合器を備えてもよく、前記ベンド構造は、複数の前記A型十字交差方向性結合器の前記第2導波管の前記第2ポートと前記第3導波管の前記第4ポートとを互いに接続して複数の前記A型十字交差方向性結合器を直列に接続した構成を含んでもよい。
【0016】
上述のアンテナ用電力分配装置において、前記十字交差方向性結合器は、前記第1乃至第3導波管が伸びる方向において前記第2導波管の前記第2ポートと前記第3導波管の前記第4ポートとが同一側に配置されているB型十字交差方向性結合器を備えてもよく、前記ベンド構造は、複数の前記B型十字交差方向性結合器の前記第2導波管の前記第2ポートと前記第3導波管の前記第4ポートとを互いに接続して複数の前記B型十字交差方向性結合器を直列に接続した構成を含んでもよい。
【0017】
本発明の第3の態様にかかる十字交差方向性結合器は、第1ポートおよび第3ポートを備える第1導波管と、前記第1導波管の下側に配置されるとともに、第2ポートを備え、当該第2ポートと対向する端部が短絡された第2導波管と、を備える。前記第1導波管と前記第2導波管との間には第1スロットが設けられており、前記第1導波管の前記第2導波管側と反対側の表面には第2スロットが設けられており、前記第1スロットおよび前記第2スロットは、前記第1導波管の下面および上面において前記第1導波管の幅方向の中心に配置されており、前記第1スロットは、前記第2導波管の上面において前記第2導波管の幅方向の中心から所定の距離だけオフセットして配置されており、前記第1導波管の前記第1ポートに供給された電磁波は、前記第1導波管の前記第3ポートから出力され、前記第2導波管の前記第2ポートに供給された電磁波は、前記第2導波管の前記第2ポート、前記第1スロット、前記第1導波管を経由して、前記第2スロットから空間中に放射される。
【0018】
本発明の第4の態様にかかる十字交差方向性結合器は、第1ポートおよび第3ポートを備える第1導波管と、前記第1導波管の下側に配置されるとともに、第2ポートを備え、当該第2ポートと対向する端部が短絡された第2導波管と、前記第1導波管の上側に配置されるとともに、第4ポートを備え、当該第4ポートと対向する端部が短絡された第3導波管と、前記第1導波管と前記第3導波管との間に配置されるとともに、第5ポートおよび第6ポートを備える第4導波管と、を備える。前記第1導波管と前記第2導波管との間には第1スロットが設けられており、前記第1導波管と前記第4導波管との間には第2スロットが設けられており、前記第4導波管と前記第3導波管との間には第3スロットが設けられており、前記第1乃至第3スロットは、前記第1及び第4導波管の下面および上面において前記第1及び第4導波管の幅方向の中心に配置されており、前記第1及び第3スロットは、前記第2導波管の上面および前記第3導波管の下面において前記第2導波管および前記第3導波管の幅方向の中心から所定の距離だけオフセットして配置されており、前記第2導波管および前記第3導波管は、前記第1スロット、前記第1導波管、前記第2スロット、前記第4導波管、及び前記第3スロットを介して互いに結合している。
【0019】
上述の第4の態様にかかる十字交差方向性結合器において、前記第1導波管の前記第1ポートに供給された電磁波は前記第1導波管の前記第3ポートから出力され、前記第4導波管の前記第5ポートに供給された電磁波は前記第4導波管の前記第6ポートから出力され、前記第2導波管の前記第2ポートに供給された電磁波は、前記第1スロット、前記第1導波管、前記第2スロット、前記第4導波管、及び前記第3スロットを経由して前記第3導波管に伝播し、前記第3導波管の前記第4ポートから出力されてもよい。
【0020】
本発明の第5の態様にかかる十字交差方向性結合器は、第1ポートおよび第3ポートを備える第1導波管と、前記第1導波管の下側に配置されるとともに、第2ポートを備え、当該第2ポートと対向する端部が短絡された第2導波管と、前記第1導波管の上側に配置されるとともに、第5ポートおよび第6ポートを備える第4導波管と、を備える。前記第1導波管と前記第2導波管との間には第1スロットが設けられており、前記第1導波管と前記第4導波管との間には第2スロットが設けられており、前記第4導波管の前記第1導波管側と反対側の表面には第3スロットが設けられており、前記第1乃至第3スロットは、前記第1及び第4導波管の下面および上面において前記第1及び第4導波管の幅方向の中心に配置されており、前記第1スロットは、前記第2導波管の上面において前記第2導波管の幅方向の中心から所定の距離だけオフセットして配置されており、前記第1導波管の前記第1ポートに供給された電磁波は前記第1導波管の前記第3ポートから出力され、前記第4導波管の前記第5ポートに供給された電磁波は前記第4導波管の前記第6ポートから出力され、前記第2導波管の前記第2ポートに供給された電磁波は、前記第2導波管の前記第2ポート、前記第1スロット、前記第1導波管、前記第2スロット、前記第4導波管を経由して、前記第3スロットから空間中に放射される。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、簡易な構造を備える十字交差方向性結合器、及びアンテナ用電力分配装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態1にかかる十字交差方向性結合器の構成例を示す斜視図である。
図2図1の切断線II-IIにおける断面図である。
図3図1の切断線III-IIIにおける断面図である。
図4】各導波管の構成を説明するための上面図である。
図5】実施の形態1にかかる十字交差方向性結合器のシミュレーション結果を示すグラフである。
図6】実施の形態1にかかる十字交差方向性結合器の他の構成例を示す断面図である。
図7図6に示す十字交差方向性結合器のシミュレーション結果を示すグラフである。
図8】バトラーマトリックス給電回路で用いられる二層ショートスロット結合器を説明するための斜視図である。
図9】バトラーマトリックス給電回路で用いられる二層ショートスロット結合器を説明するための斜視図である。
図10】バトラーマトリックス給電回路の入力部と出力部の構成例を説明するための斜視図である。
図11】実施の形態2にかかるアンテナ用電力分配装置の構成例を示す斜視図である。
図12】実施の形態2にかかるアンテナ用電力分配装置が備えるベンド構造の一例を説明するための模式図である。
図13】実施の形態2にかかるアンテナ用電力分配装置が備えるベンド構造の一例を説明するための模式図である。
図14】実施の形態2にかかるアンテナ用電力分配装置が備えるベンド構造の一例を説明するための模式図である。
図15】実施の形態2にかかるアンテナ用電力分配装置が備えるベンド構造の他の例を説明するための模式図である。
図16】実施の形態3にかかる十字交差方向性結合器の構成例を示す斜視図である。
図17図16の切断線XVII-XVIIにおける断面図である。
図18図16の切断線XVIII-XVIIIにおける断面図である。
図19】各導波管の構成を説明するための上面図である。
図20】実施の形態3にかかる十字交差方向性結合器のシミュレーション結果を示すグラフである。
図21】実施の形態4にかかる十字交差方向性結合器の構成例を示す斜視図である。
図22図21の切断線XXII-XXIIにおける断面図である。
図23図16の切断線XXIII-XXIIIにおける断面図である。
図24】各導波管の構成を説明するための上面図である。
図25】実施の形態4にかかる十字交差方向性結合器のシミュレーション結果を示すグラフである。
図26】実施の形態4にかかる十字交差方向性結合器の各導波管の他の構成例を説明するための上面図である。
図27】実施の形態5にかかる十字交差方向性結合器の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる十字交差方向性結合器(Cruciform Directional Couplers)の構成例を示す斜視図である。図2は、図1の切断線II-IIにおける断面図である。図3は、図1の切断線III-IIIにおける断面図である。図4は、各導波管の構成を説明するための上面図である。
【0024】
図1図3に示すように、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器1は、第1導波管11、第2導波管12、及び第3導波管13を備える。第1乃至第3導波管11~13は、z軸方向において第2導波管12、第1導波管11、第3導波管13の順に積層されている。
【0025】
図2に示すように、第1導波管11は、導波方向の一端(x軸方向マイナス側)に第1ポートP1を備え、導波方向の他端(x軸方向プラス側)に第3ポートP3を備える。第2導波管12は、導波方向の一端(x軸方向マイナス側)に第2ポートP2を備え、当該第2ポートP2と対向する端部17が短絡されている。第2導波管12は、第1導波管11の下側に配置されている。第3導波管13は、導波方向の一端(x軸方向プラス側)に第4ポートP4を備え、当該第4ポートP4と対向する端部18が短絡されている。第3導波管13は、第1導波管11の上側に配置されている。
【0026】
図2図3に示すように、第1導波管11と第2導波管12との間には第1スロットSL1が設けられている。また、第1導波管11と第3導波管13との間には第2スロットSL2が設けられている。
【0027】
図3図4に示すように、第1スロットSL1および第2スロットSL2は、第1導波管11の下面および上面において第1導波管11の幅方向(y軸方向)の中心に配置されている。すなわち、図4に示すように、第1スロットSL1および第2スロットSL2は、第1導波管11の中心軸C1に沿って対称に設けられている。
【0028】
図3図4に示すように、第1スロットSL1および第2スロットSL2は、第2導波管12の上面および第3導波管13の下面において第2導波管12および第3導波管13の幅方向(y軸方向)の中心から所定の距離D1だけオフセットして配置されている。すなわち、図4に示すように、第1スロットSL1は、第2導波管12の中心軸C2から距離D1だけオフセットして配置されている。また、第2スロットSL2は、第3導波管13の中心軸C2から距離D1だけオフセットして配置されている。なお、第2導波管12の中心軸C2と第3導波管13の中心軸C2は、z軸方向から見た際に重畳している。また、第1スロットSL1および第2スロットSL2はz軸方向から見た際に重畳している。
【0029】
本実施の形態では、例えば図3に示すように、第2導波管12および第3導波管13のy軸方向における位置を一致させ、第1導波管11のy軸方向の位置を第2導波管12および第3導波管13に対してy軸方向プラス側にずらしている。このような構成とすることで、第1スロットSL1および第2スロットSL2の位置を、第2導波管12および第3導波管13の幅方向(y軸方向)の中心から所定の距離D1だけオフセットして配置できる。
【0030】
本実施の形態において第1乃至第3導波管11~13は、直方体状の導波管を用いて構成できる。例えば、第1乃至第3導波管11~13は中空の導波管であり、各々の導波管の内部を電磁波が伝搬する。また、第1乃至第3導波管11~13の内部は、誘電体材料が配置されてもよい。例えば、第1乃至第3導波管11~13は中空の金属材料を用いて構成してもよく、中空の樹脂材料の内壁に金属膜を形成して構成してもよい。
【0031】
例えば、方形導波管におけるTE10モードの場合、第1乃至第3導波管11~13のy軸方向の長さ(長辺a)およびz軸方向の長さ(短辺b)は下記のようにして決定できる。
【0032】
まず、第1乃至第3導波管11~13(以下、まとめて「導波管」とも記載する)のカットオフ周波数fを下記の式より決定する。
【0033】
【数1】
ここで、cpは誘電体中の電磁波の速度、aは導波管の長辺の長さ、bは導波管の短辺の長さ、m、nはモード番号である。なお、cpは下記の式で表すことができる。
【0034】
【数2】
ここで、εは真空の誘電率、εは誘電体の比誘電率、μは真空の透磁率、μは誘電体の比透磁率である。
【0035】
また、基本伝搬モードであるTE10モードでは、上記式のfは下記のように表される。
【0036】
【数3】
【0037】
さらに、基板集積導波管(SIW:Substrate Integrated Waveguide)を用いて構成した場合は、上記aは下記のaのようになる。
【0038】
【数4】
ここで、aは基板集積導波管のy軸方向の長さ(長辺の長さ)、dはビアの直径、pはピッチである。また、Aは0.5≦A<1.5とする。
【0039】
例えば、誘電体の比誘電率を3.6とし、a=0.924mmとした場合のカットオフ周波数は、f=83GHzとなる。また、一般的に、所望モード以外の、不要な伝搬モードの発生を避けるため、b≦a/2とする。
【0040】
以上の式で求まるfがf<<設計周波数となるように導波管の寸法a、bを決定する。一例を挙げると、第1乃至第3導波管11~13のy軸方向の長さ(長辺a)はa=0.924mm、z軸方向の長さ(短辺b)はb=0.35とできる。
【0041】
第1スロットSL1および第2スロットSL2は、第1乃至第3導波管11~13に孔部を形成して構成できる。具体的には、第1スロットSL1は、第1導波管11の下面と第2導波管12の上面を部分的に切り欠いて孔部を形成することで構成できる。また、第2スロットSL2は、第1導波管11の上面と第3導波管13の下面を部分的に切り欠いて孔部を形成することで構成できる。
【0042】
一例を挙げると、第1スロットSL1および第2スロットSL2の寸法は、以下のようにして決定できる。設計周波数を120GHzとすると、120GHzの波長λは約2.5mmである。また、波長短縮による実効波長λは約1.28mmであり、λ/2=0.64mmとなる。
【0043】
スロットSL1、SL2の短辺は、電磁結合の調整によって決定される。スロットSL1の長辺LSL1は下記の範囲となるように決定できる。
λ/8≦LSL1≦2λ
【0044】
また、スロットSL1の長辺LSL1とスロットSL2の長辺LSL2は同程度の大きさにできるので、スロットSL2の長辺LSL2は下記の範囲となるように決定できる。
0.5LSL1≦LSL2≦1.5LSL1
【0045】
一例を挙げると、第1乃至第3導波管11~13の長辺a、短辺bの寸法を上記寸法(a=0.924mm、b=0.35)とした場合、第1スロットSL1および第2スロットSL2の寸法は、0.132mm×0.660mmとできる。
【0046】
本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器1では、第2導波管12および第3導波管13は、第1スロットSL1、第1導波管11、及び第2スロットSL2を介して互いに結合している。換言すると、第2導波管12および第3導波管13は、第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合するとともに、第1導波管11を介して互いに結合している。
【0047】
よって、第2導波管12の第2ポートP2に供給された電磁波は、第1スロットSL1、第1導波管11、及び第2スロットSL2を経由して第3導波管13に伝播し、第3導波管13の第4ポートP4から出力される。また、第1導波管11の第1ポートP1に供給された電磁波は第1導波管11の第3ポートP3から出力される。
【0048】
すなわち、第1導波管11では、第1スロットSL1および第2スロットSL2が第1導波管11の中心軸C1に沿って対称に設けられている。よって、第1導波管11のTE10モードでは電位差が生まれないため、第1導波管11は第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合しない。このため、第1導波管11の第1ポートP1に供給された電磁波は第1導波管11の第3ポートP3から出力される。
【0049】
一方、第2導波管12および第3導波管13において第1スロットSL1および第2スロットSL2は、第2導波管12および第3導波管13の中心軸C2から距離D1だけオフセットして配置されている。換言すると、第2導波管12および第3導波管13において第1スロットSL1および第2スロットSL2は、中心軸C2に対して非対称に配置されている。よって、第2導波管12および第3導波管13は第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合するとともに、第1導波管11を介して互いに結合する。このとき、第1導波管11に対して第1スロットSL1および第2スロットSL2は中心に配置されているので、第2導波管12および第3導波管13は、第1導波管11と結合しない。よって、第2導波管12の第2ポートP2に供給された電磁波は、第1スロットSL1、第1導波管11、及び第2スロットSL2を経由して第3導波管13に伝播し、第3導波管13の第4ポートP4から出力される。ここで、第2ポートP2と第4ポートP4との間の経路は、第1導波管11を垂直に通過する経路である。
【0050】
なお、本実施の形態において上述の所定の距離(オフセット距離)D1は、十字交差方向性結合器1の設計に応じて任意に決定できる。つまり、オフセット距離D1は、第2導波管12および第3導波管13が第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合し、第1導波管11が第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合しない距離であれば任意の距離とすることができる。ここで、「第1導波管11が第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合しない」とは、第1導波管11が第1スロットSL1および第2スロットSL2と弱く結合する場合も含むものとする。つまり、十字交差方向性結合器1の設計上、大きな影響を与えないのであれば、第1導波管11が第1スロットSL1および第2スロットSL2と弱く結合する場合も含んでもよい。
【0051】
一例を挙げると、所定の距離(オフセット距離)D1は、第2導波管12および第3導波管13の幅(y軸方向の距離)の1%~50%の範囲が好ましく、1%~35%の範囲がより好ましく、5%~25%の範囲が更に好ましい。
【0052】
また、図4では、第1スロットSL1および第2スロットSL2の形状が導波方向(x軸方向)に伸びる矩形状である例を示した。しかし本実施の形態では、第1スロットSL1および第2スロットSL2の形状は導波管の幅方向(y軸方向)に伸びる矩形状としてもよく、また、十字形状としてもよい。つまり、第1スロットSL1および第2スロットSL2の形状は、第2導波管12および第3導波管13が第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合する形状であれば、どのような形状としてもよい。
【0053】
また、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器1は、各ポートから逆方向に電磁波を伝播させることも可能である。つまり、第1導波管11の第3ポートP3に電磁波を供給した場合は、第1導波管11の第1ポートP1から電磁波が出力される。また、第3導波管13の第4ポートP4に電磁波が供給された場合は、第2スロットSL2、第1導波管11、及び第1スロットSL1を経由して電磁波が第2導波管12に伝播し、第2導波管12の第2ポートP2から出力される。
【0054】
図5は、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器のシミュレーション結果を示すグラフである。図5に示すシミュレーション結果は、設計周波数を120GHz、各導波管および各スロット内部の比誘電率を3.6とした場合の、十字交差方向性結合器のSパラメータの周波数特性を示している。
【0055】
ここで、S11は第1ポートP1から信号を入力したときに第1ポートP1に反射する信号を示す。S21は第1ポートP1から信号を入力したときに第2ポートP2を通過する信号を示す。S22は第2ポートP2から信号を入力したときに第2ポートP2に反射する信号を示す。S31は第1ポートP1から信号を入力したときに第3ポートP3を通過する信号を示す。S32は第2ポートP2から信号を入力したときに第3ポートP3を通過する信号を示す。S42は第2ポートP2から信号を入力したときに第4ポートP4を通過する信号を示す。なお、構造対称性より、S11=S33、S22=S44、S21=S43、S32=S41である。
【0056】
図5に示すように、S11は広帯域に渡って-25dB以下であった。これは第1スロットSL1および第2スロットSL2が第1導波管11の中心に配置されており、第1スロットSL1および第2スロットSL2の影響が少なかったためである。S22は、119GHzから122GHzで-20dB以下であった。S31は広帯域に渡って-0.01dB以上となり、第1ポートP1から第3ポートP3への透過特性が良好であった。S42は広帯域に渡って-2.5dB以上となり、第2ポートP2から第4ポートP4への透過特性が良好であった。また、S21とS41は-33dB以下となり、ポート間アイソレーション、つまり、第1ポートP1と第2ポートP2との間のアイソレーション、及び第1ポートP1と第4ポートP4との間のアイソレーションが良好であった。
【0057】
以上で説明したように、本実施の形態により、第1ポートP1と第3ポートP3との間の透過特性が良好で、かつ第2ポートP2と第4ポートP4との間の透過特性が良好な十字交差方向性結合器1を提供できる。
【0058】
また、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器1は、各々の導波管11~13をz軸方向に積層して構成するとともに、第1スロットSL1および第2スロットSL2の位置を、第2導波管12および第3導波管13の幅方向の中心から所定の距離Dだけオフセットすることで実現できる。よって、各々の導波管をコネクタで接続する必要がないので、十字交差方向性結合器の構造を簡易にできる。したがって、簡易な構造を備える十字交差方向性結合器を提供できる。
【0059】
次に、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器の他の構成例について説明する。図6は、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器の他の構成例を示す断面図である。図2に示した十字交差方向性結合器1では、第2導波管12の第2ポートP2と第3導波管13の第4ポートP4とが、第1乃至第3導波管11~13が伸びる方向(x軸方向)において反対側に配置されている構成を示した。すなわち、第2導波管12の第2ポートP2がx軸方向マイナス側に配置され、第3導波管13の第4ポートP4がx軸方向プラス側に配置された構成を示した。この構成の場合は、第2ポートP2に供給される電磁波の方向と、第4ポートP4から出力される電磁波の方向が一致する。
【0060】
これに対して、図6に示した十字交差方向性結合器2では、第2導波管12の第2ポートP2と第3導波管13の第4ポートP4とが、第1乃至第3導波管11~13が伸びる方向(x軸方向)において同一側に配置されている。つまり、第2導波管12の第2ポートP2と第3導波管13の第4ポートP4の両方がx軸方向マイナス側に配置されている。このような構成では、第2ポートP2に供給される電磁波の方向と、第4ポートP4から出力される電磁波の方向が逆向きとなる。
【0061】
図7は、図6に示す十字交差方向性結合器2のシミュレーション結果を示すグラフである。図7に示すシミュレーション結果は、設計周波数を120GHz、各導波管および各スロット内部の比誘電率を3.6とした場合の、十字交差方向性結合器2のSパラメータの周波数特性を示している。
【0062】
図7に示すように、S11は広帯域に渡って-25dB以下であった。これは第1スロットSL1および第2スロットSL2が第1導波管11の中心に配置されており、第1スロットSL1および第2スロットSL2の影響が少なかったためである。S22は、119GHzから122GHzで-20dB以下であった。S31は広帯域に渡って-0.01dB以上となり、第1ポートP1から第3ポートP3への透過特性が良好であった。S42は広帯域に渡って-2.5dB以上となり、第2ポートP2から第4ポートP4への透過特性が良好であった。また、S32とS41は-35dB以下となり、ポート間アイソレーション、つまり、第1ポートP1と第2ポートP2との間のアイソレーション、及び第1ポートP1と第4ポートP4との間のアイソレーションが良好であった。
【0063】
このように、図6に示す十字交差方向性結合器2においても、第1ポートP1と第3ポートP3との間の透過特性が良好で、かつ第2ポートP2と第4ポートP4との間の透過特性が良好な十字交差方向性結合器1を提供できる。
【0064】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2では、バトラーマトリックス給電回路とベンド構造とを備えるアンテナ用電力分配装置について説明する。実施の形態2にかかるアンテナ用電力分配装置では、実施の形態1で説明した十字交差方向性結合器を複数用いてベンド構造を構成している。
【0065】
まず、バトラーマトリックス給電回路について説明する。図8図9は、バトラーマトリックス給電回路で用いられる二層ショートスロット結合器を説明するための斜視図である。
【0066】
図8図9に示す二層ショートスロット結合器110は、入力信号を入力する入力部110Aおよび信号を出力する出力部110Bと、入力部110Aおよび出力部110Bの間に配置された結合部110Cとを有する金属製の結合器である。
【0067】
入力部110Aには、入力信号を入力する4つの入力口(ポート)111~114がマトリックス状(2×2)に配置されている。ポート111~114は、矩形管120の開口を十字状の仕切り板120aで仕切ることで形成されている。
【0068】
図9に示すように、出力部110Bは、入力信号を出力する4つの出力口(ポート)115~118がマトリックス状(2×2)に配置されている。ポート115~118は、ポート111~114とそれぞれ対向している。ポート115~118は、矩形管121の開口を十字状の仕切り板121aで仕切ることで形成されている。入力部110Aおよび出力部110Bは、TE10モード(基本モード)が伝搬する矩形導波管である。
【0069】
結合部110Cは、多モードの電磁界を発生させる断面形状を有する。二層ショートスロット結合器110は、結合部110Cの長さを変えることによって、信号の出力形態を変えることができ、ハイブリッド結合器や交差結合器として用いることができる。
【0070】
本実施の形態で用いられるバトラーマトリックス給電回路は、図8図9に示した二層ショートスロット結合器110を複数用いて構成できる。つまり、ハイブリッド結合器、交差結合器、位相器が多段接続された構成とすることで、バトラーマトリックス給電回路を構成できる。ここで、ハイブリッド結合器は、入力された信号に位相差を与えて等振幅で分配して出力する機能を備える。交差部結合は、入力された信号を交差する回路に出力する機能を備える。位相器は、入力された信号に位相差を与えて出力する機能を備える。なお、バトラーマトリックス給電回路の詳細については、特許文献1に記載されている。
【0071】
図10は、バトラーマトリックス給電回路の入力部と出力部の構成例を説明するための斜視図である。図10に示すバトラーマトリックス給電回路101は、ハイブリッド結合器、交差結合器、及び位相器が多段接続されており(各々不図示)、入力信号が入力される入力部102Aと出力信号が出力される出力部102Bとを備える。入力部102Aは、バトラーマトリックス給電回路101のx軸方向マイナス側に配置されており、入力信号を入力する複数の入力口がマトリックス状に配置された構成を備える。出力部102Bは、バトラーマトリックス給電回路101のx軸方向プラス側に配置されており、出力信号を出力する複数の出力口がマトリックス状に配置された構成を備える。なお、図10では、矢印で示すように、出力部102Bをx軸方向プラス側から見た状態を示している。
【0072】
図10に示すバトラーマトリックス給電回路101は、入力部102Aとして入力ポート1~16を備え、出力部102Bとして出力ポート17~32を備える。入力部102Aの入力ポート1~16は、4×4のマトリックス状に配置されており、出力部102Bの出力ポート17~32は、4×4のマトリックス状に配置されている。バトラーマトリックス給電回路101は、入力信号が入力される入力ポート1~16の位置に応じて、出力部102Bから出力されるビームの方向が変化する。例えば、バトラーマトリックス給電回路101は、ビーム方向を二次元的に変化させるフェイズドアレーアンテナ等に用いられる。
【0073】
図10に示すバトラーマトリックス給電回路101は、入力信号が入力される方向と出力信号が出力される方向とが同一方向(x軸方向)である。しかしながら、デバイスの構成によっては、バトラーマトリックス給電回路101から出力される出力信号の方向を入力信号の向き(x軸方向)に対して所定の角度曲げたい場合がある。例えば、窓ガラスや壁面にバトラーマトリックス給電回路101を搭載する場合は、ビーム切替回路を構成する基板に対して垂直な方向に出力信号を出力したい場合がある。
【0074】
本実施の形態では、図11に示すアンテナ用電力分配装置100のように、バトラーマトリックス給電回路101の出力部102B側にベンド構造130を設け、バトラーマトリックス給電回路101から出力される出力信号の方向を入力信号に対して90度曲げる構成としている。図11に示すアンテナ用電力分配装置100では、ベンド構造130のz軸方向プラス側の面に出力部140が設けられている。出力部140には、バトラーマトリックス給電回路101の出力部102B(図10参照)に対応する出力ポート141が各々設けられている。換言すると、ベンド構造130のz軸方向プラス側の面には、複数の出力ポート141がマトリックス状に配置されている。このような構成により、図11に示すアンテナ用電力分配装置100では、バトラーマトリックス給電回路101の出力部102Bから出力された出力信号の向き(x軸方向)を、ベンド構造130を用いてz軸方向に曲げることができる。よって、ベンド構造130の出力部140からz軸方向にビーム150が放射される。
【0075】
次に、ベンド構造130について詳細に説明する。図12は、本実施の形態にかかるアンテナ用電力分配装置が備えるベンド構造の一例を説明するための模式図である。ベンド構造130は、バトラーマトリックス給電回路101の出力部102Bから出力された出力信号の出力方向を90度曲げる機能を備える。つまり、ベンド構造130は、バトラーマトリックス給電回路101の出力信号の向きをx軸方向からz軸方向に曲げる機能を備える。なお、図12では一例として、図10に示すバトラーマトリックス給電回路101の出力部102Bのポート20、ポート24、ポート28、ポート32の出力信号の向きをx軸方向からz軸方向に曲げる構成を例示している。なお、出力部102Bの他のポートのベンド構造についても同様に構成できる。
【0076】
図12に示すように、ポート20から出力された出力信号は、導波管201を伝播し導波管201の所定の位置で垂直方向に曲げられてポートV20からz軸方向プラス側に放射される。また、ポート24から出力された出力信号は、導波管202を伝播し導波管202の所定の位置で垂直方向に曲げられてポートV24からz軸方向プラス側に放射される。また、ポート28から出力された出力信号は、導波管203を伝播し導波管203の所定の位置で垂直方向に曲げられてポートV28からz軸方向プラス側に放射される。また、ポート32から出力された出力信号は、導波管204を伝播し導波管204の所定の位置で垂直方向に曲げられてポートV32からz軸方向プラス側に放射される。
【0077】
図12に示すベンド構造130では、x軸方向に伝播する信号とz軸方向に伝播する信号とが交わる箇所がある。例えば、符号210に示す箇所では、ポート24から出力されたx軸方向に伝播している信号と、ポート28から出力された後、z軸方向に曲げられた信号とが交差している。本実施の形態では、このように信号が交差する箇所に、実施の形態1で説明した十字交差方向性結合器を用いている。
【0078】
図13は、ベンド構造の一例を説明するための模式図であり、図12に示したベンド構造130を、実施の形態1で説明した十字交差方向性結合器1を用いて構成した場合の構成例を示している。図13に示すベンド構造130は、十字交差方向性結合器1a~1fと位相器5a~5fとを用いて構成されている。位相器5a~5fは、通過する信号の位相を調整する機能を有する。各々の十字交差方向性結合器1a~1fには、実施の形態1で説明した十字交差方向性結合器1と対応するポート番号P1~P4を記載している。また、図13では、ベンド構造130に導入される信号のポートはH1~H4と記載し、ベンド構造130から出力される信号のポートはV1~V4と記載する。
【0079】
図13に示すように、ポートH1から導入された信号は、十字交差方向性結合器1aのポートP2に供給された後、十字交差方向性結合器1aのポートP4から出力される。その後、十字交差方向性結合器1bのポートP2、ポートP4、十字交差方向性結合器1cのポートP2、ポートP4を通過して、ベンド構造130の出力ポートV4から出力される。
【0080】
ポートH2から導入された信号は、十字交差方向性結合器1aのポートP1に供給された後、十字交差方向性結合器1aのポートP3から出力される。その後、位相器5aを通過した後、十字交差方向性結合器1dのポートP2、ポートP4、十字交差方向性結合器1eのポートP2、ポートP4を通過して、ベンド構造130の出力ポートV3から出力される。
【0081】
ポートH3から導入された信号は、十字交差方向性結合器1bのポートP1に供給された後、十字交差方向性結合器1bのポートP3から出力される。その後、位相器5bを通過した後、十字交差方向性結合器1dのポートP1、ポートP3、位相器5d、十字交差方向性結合器1fのポートP2、ポートP4を通過して、ベンド構造130の出力ポートV2から出力される。
【0082】
ポートH4から導入された信号は、十字交差方向性結合器1cのポートP1に供給された後、十字交差方向性結合器1cのポートP3から出力される。その後、位相器5cを通過した後、十字交差方向性結合器1eのポートP1、ポートP3、位相器5e、十字交差方向性結合器1fのポートP1、ポートP3、位相器5fを通過して、ベンド構造130の出力ポートV1から出力される。
【0083】
本実施の形態では、このように十字交差方向性結合器1a~1fを用いてベンド構造130を構成しているので、ベンド構造130の構成を簡素化できる。また、十字交差方向性結合器1a~1fを用いた場合は、各々の信号が互いに交差することを許容できる。したがって、各経路の経路長、すなわち、ポートH1からポートV4までの経路長、ポートH2からポートV3までの経路長、ポートH3からポートV2までの経路長、及びポートH4からポートV1までの経路長の差を小さくできる。また、ビーム切替回路と曲げ回路とをコネクタで接続する必要がないので、ベンド構造を一体で形成できる。
【0084】
図14は、本実施の形態にかかるアンテナ用電力分配装置が備えるベンド構造の一例を説明するための模式図である。図14では、ポートP1~P4の配置が図2に示した配置である十字交差方向性結合器(構成A)1を用いてベンド構造を構成した例を示している。なお、図14では図13の符号135aで示す箇所の構成を例示している。
【0085】
図14に示すように、十字交差方向性結合器(構成A)1a~1cは、x軸方向マイナス側にポートP1、P2が配置され、x軸方向プラス側にポートP3、P4が配置されている。図13の符号135aで示す箇所を構成する場合は、十字交差方向性結合器(構成A)1aのポートP2にポートH1を接続し、ポートP1にポートH2を接続する。また、十字交差方向性結合器(構成A)1aのポートP4と十字交差方向性結合器(構成A)1bのポートP2とを接続する。また、十字交差方向性結合器(構成A)1bのポートP1にポートH3を接続する。
【0086】
更に、十字交差方向性結合器(構成A)1bのポートP4と十字交差方向性結合器(構成A)1cのポートP2とを接続する。また、十字交差方向性結合器(構成A)1cのポートP1にポートH4を接続する。十字交差方向性結合器(構成A)1cのポートP4は、ベンド構造130の出力ポートV4と接続される。
【0087】
このように、ベンド構造130は、複数の十字交差方向性結合器1a~1cの第2ポートP2と第4ポートP4とを互いに接続して複数の十字交差方向性結合器1a~1cを直列に接続した構成を含む。ここで、図14に示す構成例では、十字交差方向性結合器1a~1cの第2ポートP2と第4ポートP4がx軸方向において互いに反対側に配置されている。よって、複数の十字交差方向性結合器(構成A)1a~1cを接続してベンド構造130を構成した際に、ベンド構造130がx軸方向に伸びた構造となる。
【0088】
図15は、本実施の形態にかかるアンテナ用電力分配装置が備えるベンド構造の他の例を説明するための模式図である。図15では、ポートP1~P4の配置が図6に示した配置である十字交差方向性結合器(構成B)2を用いてベンド構造を構成した例を示している。なお、図15では図13の符号135bで示す箇所の構成を例示している。
【0089】
図15に示すように、十字交差方向性結合器(構成B)2a、2bは、ポートP2とポートP4が同一側に配置されている。図13の符号135bで示す箇所を構成する場合は、十字交差方向性結合器(構成B)2aのポートP2にポートH1を接続し、ポートP1にポートH2を接続する。また、十字交差方向性結合器(構成B)2aのポートP4と十字交差方向性結合器(構成B)2bのポートP2とを接続する。また、十字交差方向性結合器(構成B)2bのポートP3にポートH3を接続する。なお、十字交差方向性結合器(構成B)2aと十字交差方向性結合器(構成B)2bは、yz平面を基準に対称関係にある。
【0090】
更に、十字交差方向性結合器(構成B)2bのポートP4と十字交差方向性結合器(構成A)1aのポートP2とを接続する。また、十字交差方向性結合器(構成A)1aのポートP1にポートH4を接続する。十字交差方向性結合器(構成A)1aのポートP4は、ベンド構造130の出力ポートV4と接続される。
【0091】
このように、ベンド構造130は、複数の十字交差方向性結合器2a、2bの第2ポートP2と第4ポートP4とを互いに接続して複数の十字交差方向性結合器2a、2bを直列に接続した構成を含む。ここで、図15に示す構成例では、十字交差方向性結合器2a、2bのポートP2とポートP4がx軸方向において同一側に配置されている。よって、複数の十字交差方向性結合器(構成B)2a、2bを接続してベンド構造130を構成した際に、ベンド構造130がx軸方向に伸びることを抑制できる。なお、z軸方向における十字交差方向性結合器(構成B)2の段数が奇数段の場合は、最後の段で十字交差方向性結合器(構成A)1を接続する(図15参照)。一方、z軸方向における十字交差方向性結合器(構成B)2の段数が偶数段の場合は、十字交差方向性結合器(構成B)2のみで構成できる。
【0092】
本実施の形態にかかるベンド構造130において、出力ポートV1~V4は、最上段の十字交差方向性結合器1、2にアンテナを設けて構成してもよい。例えば、最上段の十字交差方向性結合器1、2の第3導波管13、15の上面を切り欠いて出力ポートV1~V4を構成してもよい。また、最上段の十字交差方向性結合器1、2の第4ポートP4から出力された信号を90度曲げる構成を設けて出力ポートV1~V4を構成してもよい。
【0093】
以上で説明したように、本実施の形態では十字交差方向性結合器1、2を用いてベンド構造130を構成しているので、ベンド構造130の構成を簡素化できる。
【0094】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3について説明する。実施の形態3では、放射構造を備える十字交差方向性結合器について説明する。図16は、実施の形態3にかかる十字交差方向性結合器の構成例を示す斜視図である。図17は、図16の切断線XVII-XVIIにおける断面図である。図18は、図16の切断線XVIII-XVIIIにおける断面図である。図19は、各導波管の構成を説明するための上面図である。なお、本実施の形態にかかる放射構造を備える十字交差方向性結合器3は、実施の形態1で説明した十字交差方向性結合器1と比べて、第3導波管13を備えない点が異なる。これ以外の構成については、実施の形態1で説明した十字交差方向性結合器1と同様であるので、同一の構成については同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0095】
図16図18に示すように、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器3は、第1導波管11および第2導波管12を備える。第1及び第2導波管11、12は、z軸方向において積層されている。
【0096】
図17に示すように、第1導波管11は、導波方向の一端(x軸方向マイナス側)に第1ポートP1を備え、導波方向の他端(x軸方向プラス側)に第3ポートP3を備える。第2導波管12は、導波方向の一端(x軸方向マイナス側)に第2ポートP2を備え、当該第2ポートP2と対向する端部17が短絡されている。第2導波管12は、第1導波管11の下側に配置されている。
【0097】
図17図18に示すように、第1導波管11と第2導波管12との間には第1スロットSL1が設けられている。また、第1導波管11の第2導波管12側と反対側の表面(z軸方向プラス側の面)には第2スロットSL2が設けられている。
【0098】
図18図19に示すように、第1スロットSL1および第2スロットSL2は、第1導波管11の下面および上面において第1導波管11の幅方向(y軸方向)の中心に配置されている。すなわち、図19に示すように、第1スロットSL1および第2スロットSL2は、第1導波管11の中心軸C1に沿って対称に設けられている。
【0099】
図18図19に示すように、第1スロットSL1は、第2導波管12の上面において第2導波管12の幅方向(y軸方向)の中心から所定の距離D1だけオフセットして配置されている。すなわち、図19に示すように、第1スロットSL1は、第2導波管12の中心軸C2から距離D1だけオフセットして配置されている。なお、第1スロットSL1および第2スロットSL2はz軸方向から見た際に重畳している。
【0100】
本実施の形態において第1及び第2導波管11、12は、直方体状の導波管を用いて構成できる。なお、第1及び第2導波管11、12の構成については、実施の形態1で説明した場合と同様であるので、重複した説明は省略する。
【0101】
第1スロットSL1および第2スロットSL2は、第1及び第2導波管11、12に孔部を形成して構成できる。具体的には、第1スロットSL1は、第1導波管11の下面と第2導波管12の上面を部分的に切り欠いて孔部を形成することで構成できる。また、第2スロットSL2は、第1導波管11の上面を部分的に切り欠いて孔部を形成することで構成できる。なお、第1及び第2スロットSL1、SL2の構成については、実施の形態1で説明した場合と同様であるので、重複した説明は省略する。
【0102】
本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器3では、第2導波管12と、第1導波管11のz軸方向プラス側の空間50(図17図18参照)とが、第1スロットSL1、第1導波管11、及び第2スロットSL2を介して互いに結合している。換言すると、第2導波管12および空間50は、第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合するとともに、第1導波管11を介して互いに結合している。ここで、第1導波管11のz軸方向プラス側の空間50は、説明の都合上、便宜的に図示している空間であり、実際には第1導波管11のz軸方向プラス側において特に制限されない空間である。
【0103】
よって、第2導波管12の第2ポートP2に供給された電磁波(出力信号)は、第1スロットSL1、第1導波管11、及び第2スロットSL2を経由して、第2スロットSL2から第1導波管11のz軸方向プラス側の空間50に放射される。
【0104】
すなわち、第1導波管11では、第1スロットSL1および第2スロットSL2が第1導波管11の中心軸C1に沿って対称に設けられている。よって、第1導波管11のTE10モードでは電位差が生まれないため、第1導波管11は第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合しない。このため、第1導波管11の第1ポートP1に供給された電磁波は第1導波管11の第3ポートP3から出力される。
【0105】
一方、第1スロットSL1および第2スロットSL2は、第2導波管12の中心軸C2から距離D1だけオフセットして配置されている。換言すると、第2導波管12を基準とした場合、第1スロットSL1および第2スロットSL2は、中心軸C2に対して非対称に配置されている。よって、第2導波管12と、第1導波管11のz軸方向プラス側の空間50とが、第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合するとともに、第1導波管11を介して互いに結合する。このとき、第1導波管11に対して第1スロットSL1および第2スロットSL2は中心に配置されているので、第2導波管12は、第1導波管11と結合しない。よって、第2導波管12の第2ポートP2に供給された電磁波は、第1スロットSL1、第1導波管11、及び第2スロットSL2を経由して、第2スロットSL2から第1導波管11のz軸方向プラス側の空間50に放射される。
【0106】
なお、本実施の形態において上述の所定の距離(オフセット距離)D1は、十字交差方向性結合器3の設計に応じて任意に決定できる。つまり、オフセット距離D1は、第2導波管12が第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合し、第1導波管11が第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合しない距離であれば任意の距離とできる。ここで、「第1導波管11が第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合しない」とは、第1導波管11が第1スロットSL1および第2スロットSL2と弱く結合する場合も含むものとする。つまり、十字交差方向性結合器3の設計上、大きな影響を与えないのであれば、第1導波管11が第1スロットSL1および第2スロットSL2と弱く結合する場合も含んでもよい。
【0107】
図20は、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器のシミュレーション結果を示すグラフである。図20に示すシミュレーション結果は、設計周波数を120GHz、各導波管および各スロット内部の比誘電率を3.6とした場合の、十字交差方向性結合器のSパラメータの周波数特性を示している。
【0108】
ここで、S11は第1ポートP1から信号を入力したときに第1ポートP1に反射する信号を示す。S12は第2ポートP1から信号を入力したときに第1ポートP2を通過する信号を示す。S22は第2ポートP2から信号を入力したときに第2ポートP2に反射する信号を示す。S31は第1ポートP1から信号を入力したときに第3ポートP3を通過する信号を示す。S32は第2ポートP2から信号を入力したときに第3ポートP3を通過する信号を示す。SFP1,2は、第2ポートP2から信号を入力したときに第2スロットSL2から第1導波管11のz軸方向プラス側の空間50に放射される信号を示す。SFP1,1は、第1ポートP1から信号を入力したときに第2スロットSL2から第1導波管11のz軸方向プラス側の空間50に放射される信号を示す。
【0109】
図20に示すように、S11は広帯域に渡って-20dB以下であった。これは第1スロットSL1および第2スロットSL2が第1導波管11の中心に配置されており、第1スロットSL1および第2スロットSL2の影響が少なかったためである。S22は、120GHz付近で-10dB以下であった。S31は広帯域に渡って-0.1dB以上となり、第1ポートP1から第3ポートP3への透過特性が良好であった。
【0110】
FP1,2は、広帯域に渡って-1dB以上となり、第2ポートP2から第1導波管11のz軸方向プラス側の空間50への透過特性が良好であった。また、S12、SFP1,1は、-28dB以下となり、ポート間アイソレーション、つまり、第1ポートP1と第2ポートP2との間のアイソレーション、及び第1ポートP1と第1導波管11のz軸方向プラス側の空間50との間のアイソレーションが良好であった。
【0111】
以上で説明したように、本実施の形態により、第1ポートP1と第3ポートP3との間の透過特性が良好で、かつ第2ポートP2と第1導波管11のz軸方向プラス側の空間50との間の透過特性が良好な十字交差方向性結合器3を提供できる。よって、本実施の形態により、十字交差方向性結合器を実現するとともに、第2導波管12の第2ポートP2に供給された電磁波(出力信号)を、第2スロットSL2から第1導波管11のz軸方向プラス側の空間50に放射できる。
【0112】
例えば、図13に示したベンド構造130の出力側に本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器3を用いることで、出力信号を第1導波管11のz軸方向プラス側の空間50に放射できる。具体的には、図13に示したベンド構造130の出力側に配置されている十字交差方向性結合器1c、1e、1fとして、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器3を用いる。このような構成とした場合は、十字交差方向性結合器1c、1e、1fに別途アンテナを設けることなく、出力ポートV2~V4から出力信号を第1導波管11のz軸方向プラス側の空間50に放射できる。
【0113】
<実施の形態4>
次に、本発明の実施の形態4について説明する。実施の形態4では、4層構造を備える十字交差方向性結合器について説明する。図21は、実施の形態4にかかる十字交差方向性結合器の構成例を示す斜視図である。図22は、図21の切断線XXII-XXIIにおける断面図である。図23は、図21の切断線XXIII-XXIIIにおける断面図である。図24は、各導波管の構成を説明するための上面図である。なお、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器4は、実施の形態1で説明した十字交差方向性結合器1と比べて、第4導波管41を更に備える点が異なる。これ以外の構成については、実施の形態1で説明した十字交差方向性結合器1と同様であるので、同一の構成については同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0114】
図21図23に示すように、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器4は、第1導波管11、第2導波管12、第3導波管13、及び第4導波管41を備える。第1乃至第4導波管11~13、41は、z軸方向において第2導波管12、第1導波管11、第4導波管41、第3導波管13の順に積層されている。つまり、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器4は、実施の形態1で説明した十字交差方向性結合器1の第1導波管11と第3導波管13との間に第4導波管41を設けた構成を備える。
【0115】
図22に示すように、第1導波管11は、導波方向の一端(x軸方向マイナス側)に第1ポートP1を備え、導波方向の他端(x軸方向プラス側)に第3ポートP3を備える。第2導波管12は、導波方向の一端(x軸方向マイナス側)に第2ポートP2を備え、当該第2ポートP2と対向する端部17が短絡されている。第2導波管12は、第1導波管11の下側に配置されている。第4導波管41は、導波方向の一端(x軸方向マイナス側)に第5ポートP5を備え、導波方向の他端(x軸方向プラス側)に第6ポートP6を備える。第4導波管41は、第1導波管11の上側に配置されている。第3導波管13は、導波方向の一端(x軸方向プラス側)に第4ポートP4を備え、当該第4ポートP4と対向する端部18が短絡されている。第3導波管13は、第4導波管41の上側に配置されている。
【0116】
図22図23に示すように、第1導波管11と第2導波管12との間には第1スロットSL1が設けられている。また、第1導波管11と第4導波管41との間には第2スロットSL2が設けられている。また、第4導波管41と第3導波管13との間には第3スロットSL3が設けられている。
【0117】
図23図24に示すように、第1スロットSL1および第2スロットSL2は、第1導波管11の下面および上面において第1導波管11の幅方向(y軸方向)の中心に配置されている。すなわち、図24に示すように、第1スロットSL1および第2スロットSL2は、第1導波管11の中心軸C1に沿って対称に設けられている。また、第2スロットSL2および第3スロットSL3は、第4導波管41の下面および上面において第4導波管41の幅方向(y軸方向)の中心に配置されている。すなわち、図24に示すように、第2スロットSL2および第3スロットSL3は、第4導波管41の中心軸C1に沿って対称に設けられている。
【0118】
図23図24に示すように、第1スロットSL1、第2スロットSL2、及び第3スロットSL3は、第2導波管12の上面および第3導波管13の下面において第2導波管12および第3導波管13の幅方向(y軸方向)の中心から所定の距離D1だけオフセットして配置されている。すなわち、図24に示すように、第1スロットSL1は、第2導波管12の中心軸C2から距離D1だけオフセットして配置されている。また、第3スロットSL3は、第3導波管13の中心軸C2から距離D1だけオフセットして配置されている。なお、第2導波管12の中心軸C2と第3導波管13の中心軸C2は、z軸方向から見た際に重畳している。また、第1スロットSL1~第3スロットSL3はz軸方向から見た際に重畳している。
【0119】
本実施の形態では、例えば図23に示すように、第2導波管12および第3導波管13のy軸方向における位置を一致させ、第1導波管11および第4導波管41のy軸方向の位置を一致させ、第1導波管11および第4導波管41のy軸方向の位置を第2導波管12および第3導波管13に対してy軸方向プラス側にずらしている。このような構成とすることで、第1スロットSL1~第3スロットSL3の位置を、第2導波管12および第3導波管13の幅方向(y軸方向)の中心から所定の距離D1だけオフセットして配置できる。
【0120】
本実施の形態において第1乃至第4導波管11~13、41は、直方体状の導波管を用いて構成できる。第4導波管41は、第1導波管11と同様に構成できる。なお、第1乃至第4導波管11~13、41の構成については、実施の形態1で説明した場合と同様であるので、重複した説明は省略する。
【0121】
第1スロットSL1~第3スロットSL3は、第1乃至第4導波管11~13、41に孔部を形成して構成できる。具体的には、第1スロットSL1は、第1導波管11の下面と第2導波管12の上面を部分的に切り欠いて孔部を形成することで構成できる。また、第2スロットSL2は、第1導波管11の上面と第4導波管41の下面を部分的に切り欠いて孔部を形成することで構成できる。第3スロットSL3は、第4導波管41の上面と第3導波管13の下面を部分的に切り欠いて孔部を形成することで構成できる。なお、第1スロットSL1~第3スロットSL3の構成については、実施の形態1で説明した場合と同様であるので、重複した説明は省略する。
【0122】
本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器4では、第2導波管12および第3導波管13は、第1スロットSL1、第1導波管11、第2スロットSL2、第4導波管41、第3スロットSL3を介して互いに結合している。ここで、第2ポートP2と第4ポートP4との間の経路は、第1導波管11と第4導波管41を垂直に通過する経路である。
【0123】
なお、本実施の形態において上述の所定の距離(オフセット距離)D1は、十字交差方向性結合器4の設計に応じて任意に決定できる。つまり、オフセット距離D1は、第2導波管12および第3導波管13が第1スロットSL1および第3スロットSL3と結合し、第1導波管11が第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合せず、第4導波管41が第2スロットSL2および第3スロットSL3と結合しない距離であれば任意の距離とできる。ここで、「第1導波管11が第1スロットSL1および第2スロットSL2と結合しない」とは、第1導波管11が第1スロットSL1および第2スロットSL2と弱く結合する場合も含むものとする。つまり、十字交差方向性結合器1の設計上、大きな影響を与えないのであれば、第1導波管11が第1スロットSL1および第2スロットSL2と弱く結合する場合も含んでもよい。「第4導波管41が第2スロットSL2および第3スロットSL3と結合しない」についても同様である。
【0124】
一例を挙げると、所定の距離(オフセット距離)D1は、第2導波管12および第3導波管13の幅(y軸方向の距離)の1%~50%の範囲が好ましく、1%~35%の範囲がより好ましく、5%~25%の範囲が更に好ましい。
【0125】
また、図24では、第1スロットSL1~第3スロットSL3の形状が導波方向(x軸方向)に伸びる矩形状である例を示した。しかし本実施の形態では、第1スロットSL1~第3スロットSL3の形状は導波管の幅方向(y軸方向)に伸びる矩形状としてもよく、また、十字形状としてもよい。つまり、第1スロットSL1~第3スロットSL3の形状は、第2導波管12および第3導波管13が第1スロットSL1~第3スロットSL3と結合する形状であれば、どのような形状としてもよい。
【0126】
また、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器4は、各ポートから逆方向に電磁波を伝播させることも可能である。つまり、第1導波管11の第3ポートP3に電磁波を供給した場合は、第1導波管11の第1ポートP1から電磁波が出力される。また、第4導波管41の第6ポートP6に電磁波を供給した場合は、第4導波管41の第5ポートP5から電磁波が出力される。また、第3導波管13の第4ポートP4に電磁波が供給された場合は、第3スロットSL3、第4導波管41、第2スロットSL2、第1導波管11、及び第1スロットSL1を経由して電磁波が第2導波管12に伝播し、第2導波管12の第2ポートP2から出力される。
【0127】
図25は、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器のシミュレーション結果を示すグラフである。図25に示すシミュレーション結果は、設計周波数を120GHz、各導波管および各スロット内部の比誘電率を3.6とした場合の、十字交差方向性結合器のSパラメータの周波数特性を示している。
【0128】
ここで、S55は第5ポートP5から信号を入力したときに第5ポートP5に反射する信号を示す。S51は第1ポートP1から信号を入力したときに第5ポートP5を通過する信号を示す。S22は第2ポートP2から信号を入力したときに第2ポートP2に反射する信号を示す。S31は第1ポートP1から信号を入力したときに第3ポートP3を通過する信号を示す。S63は第3ポートP3から信号を入力したときに第6ポートP6を通過する信号を示す。S42は第2ポートP2から信号を入力したときに第4ポートP4を通過する信号を示す。S56は第6ポートP6から信号を入力したときに第5ポートP5を通過する信号を示す。なお、構造対称性より、S55=S66、S51=S63、S22=S44である。
【0129】
図25に示すように、S55は広帯域に渡って-35dB以下であった。これは第2スロットSL2および第3スロットSL3が第4導波管41の中心に配置されており、第2スロットSL2および第3スロットSL3の影響が少なかったためである。S22は、広帯域に渡って-15dB以下であった。S31は広帯域に渡って-0.1dB以上となり、第1ポートP1から第3ポートP3への透過特性が良好であった。S56は広帯域に渡って-0.1dB以上となり、第5ポートP5から第6ポートP6への透過特性が良好であった。S42は広帯域に渡って-0.2dB以上となり、第2ポートP2から第4ポートP4への透過特性が良好であった。また、S51とS63は-25dB以下となり、ポート間アイソレーション、つまり、第1ポートP1と第5ポートP5との間のアイソレーション、及び第3ポートP3と第6ポートP6との間のアイソレーションが良好であった。
【0130】
以上で説明したように、本実施の形態により、第1ポートP1と第3ポートP3との間の透過特性、及び第5ポートP5と第6ポートP6との間の透過特性が良好で、かつ第2ポートP2と第4ポートP4との間の透過特性が良好な十字交差方向性結合器4を提供できる。
【0131】
例えば、図13に示したベンド構造130に本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器4を用いることで、ベンド構造130の構成を簡略化できる。具体的には、図13に示したベンド構造130の2つの十字交差方向性結合器1a、1bを本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器4に置き換えられる。つまり、2つの十字交差方向性結合器1a、1bを1つの十字交差方向性結合器4に置き換えられるので、ベンド構造130の構成を簡略化できる。
【0132】
次に、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器の他の構成例について説明する。図26は、実施の形態4にかかる十字交差方向性結合器の各導波管の他の構成例を説明するための上面図である。本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器では、第1導波管11の側面に凹部45を形成してもよい。図26に示す構成例では、第1導波管11の側面に4つの凹部45を形成した構成例を示している。凹部45を形成する位置は、第1導波管11の内部を伝搬する電磁波の状態に応じて決定できる。第4導波管41の側面にも同様に凹部46を形成してもよい。図26に示す構成例のように、第1導波管11および第4導波管41の側面にそれぞれ凹部45および凹部46を形成した場合は、第1導波管11および第4導波管41の内部を伝搬する電磁波の状態を精度よく調整できる。
【0133】
以上で説明した構成例では、4層構造を備える十字交差方向性結合器について説明した。つまり、3入力3出力の十字交差方向性結合器について説明した。しかしながら本実施の形態では、第1導波管11と第4導波管41との間に更に導波管を追加して、十字交差方向性結合器の入力ポート数と出力ポート数を増やしてもよい。具体的には、第1導波管11と第4導波管41との間に更にn個(nは1以上の整数)の導波管を追加して、(n+3)入力(n+3)出力の十字交差方向性結合器を構成してもよい。
【0134】
このとき追加する導波管については、第1導波管11および第4導波管41と同様に構成できる。具体的には、追加する導波管に設けるスロットの位置は、第1導波管11および第4導波管41の第2スロットSL2の位置と同様の位置とできる。換言すると、追加する導波管に設けるスロットの位置は、z軸方向から見た際に第2スロットSL2と重畳する位置とできる。
【0135】
<実施の形態5>
次に、本発明の実施の形態5について説明する。図27は、実施の形態5にかかる十字交差方向性結合器の構成例を示す斜視図である。本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器5は、実施の形態3で説明した十字交差方向性結合器3と実施の形態4で説明した十字交差方向性結合器4とを組み合わせた構成を備える。すなわち、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器5は、実施の形態4にかかる十字交差方向性結合器4に放射構造を設けた構成を備える。なお、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器5は、実施の形態4で説明した十字交差方向性結合器4と比べて、第3導波管13を備えない点が異なる。これ以外の構成については、実施の形態4で説明した十字交差方向性結合器4と同様であるので、同一の構成については同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
【0136】
図27に示すように、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器5は、第1導波管11、第2導波管12、及び第4導波管41を備える。これらの導波管は、z軸方向において第2導波管12、第1導波管11、第4導波管41の順に積層されている。つまり、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器5は、実施の形態4で説明した十字交差方向性結合器4から第3導波管13を除いた構成を備える。
【0137】
図27に示すように、第1導波管11は、導波方向の一端(x軸方向マイナス側)に第1ポートP1を備え、導波方向の他端(x軸方向プラス側)に第3ポートP3を備える。第2導波管12は、導波方向の一端(x軸方向マイナス側)に第2ポートP2を備え、当該第2ポートP2と対向する端部17が短絡されている。第2導波管12は、第1導波管11の下側に配置されている。第4導波管41は、導波方向の一端(x軸方向マイナス側)に第5ポートP5を備え、導波方向の他端(x軸方向プラス側)に第6ポートP6を備える。第4導波管41は、第1導波管11の上側に配置されている。
【0138】
第1導波管11と第2導波管12との間には第1スロットSL1が設けられている。また、第1導波管11と第4導波管41との間には第2スロットSL2が設けられている。また、第4導波管41の上面には第3スロットSL3が設けられている。
【0139】
本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器5において、第2導波管12は、第4導波管41のz軸方向プラス側の空間と、第1スロットSL1、第1導波管11、第2スロットSL2、第4導波管41、及び第3スロットSL3を介して互いに結合している。よって、第2導波管12の第2ポートP2に供給された電磁波(出力信号)は、第1スロットSL1、第1導波管11、第2スロットSL2、第4導波管41、及び第3スロットSL3を経由して、第3スロットSL3から第4導波管41のz軸方向プラス側の空間に放射される。
【0140】
上記構成を備える本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器5により、第1ポートP1と第3ポートP3との間の透過特性、及び第5ポートP5と第6ポートP6との間の透過特性が良好で、かつ第2ポートP2と第1導波管11のz軸方向プラス側の空間との間の透過特性が良好な十字交差方向性結合器を提供できる。よって、本実施の形態により、十字交差方向性結合器を実現するとともに、第2導波管12の第2ポートP2に供給された電磁波(出力信号)を、第3スロットSL3から第4導波管41のz軸方向プラス側の空間に放射できる。
【0141】
例えば、図13に示したベンド構造130の出力側に本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器5を用いることで、出力信号を第4導波管41のz軸方向プラス側の空間に放射できる。具体的には、図13に示したベンド構造130の出力側に配置されている2つの十字交差方向性結合器1d、1eを、本実施の形態にかかる十字交差方向性結合器5に置き換えることで、2つの十字交差方向性結合器1d、1eを1つの十字交差方向性結合器5に置き換えられる。よって、ベンド構造130の構成を簡略化できる。また、十字交差方向性結合器に別途アンテナを設けることなく、出力ポートV3から出力信号を第4導波管41のz軸方向プラス側の空間に放射できる。
【0142】
以上で説明した構成例では、3入力3出力の十字交差方向性結合器について説明した。しかしながら本実施の形態では、第1導波管11と第4導波管41との間に更に導波管を追加して、十字交差方向性結合器の入力ポート数と出力ポート数を増やしてもよい。具体的には、第1導波管11と第4導波管41との間に更にn個(nは1以上の整数)の導波管を追加して、(n+3)入力(n+3)出力の十字交差方向性結合器を構成してもよい。
【0143】
このとき追加する導波管については、第1導波管11および第4導波管41と同様に構成できる。具体的には、追加する導波管に設けるスロットの位置は、第1導波管11および第4導波管41の第2スロットSL2の位置と同様の位置とできる。換言すると、追加する導波管に設けるスロットの位置は、z軸方向から見た際に第2スロットSL2と重畳する位置とできる。
【0144】
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0145】
1、2、3、4、5 十字交差方向性結合器
5a~5f 位相器
11 第1導波管
12 第2導波管
13、15 第3導波管
17、18 端部
41 第4導波管
45、46 凹部
50 空間
100 アンテナ用電力分配装置
101 バトラーマトリックス給電回路
102A 入力部
102B 出力部
130 ベンド構造
140 出力部
141 出力ポート
150 ビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27