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特開2024-120941基板搬送装置、基板搬送方法、および基板処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120941
(43)【公開日】2024-09-05
(54)【発明の名称】基板搬送装置、基板搬送方法、および基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240829BHJP
   B65G 49/07 20060101ALI20240829BHJP
【FI】
H01L21/68 A
B65G49/07 E
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024102148
(22)【出願日】2024-06-25
(62)【分割の表示】P 2021002595の分割
【原出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】波多野 達夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直樹
(57)【要約】
【課題】平面モータを用いた基板搬送において、基板保持部を含む搬送ユニットの専有面積を小さくすることができる技術を提供する。
【解決手段】基板搬送装置は、基板を保持する基板保持部、内部に複数の磁石を有し、基板保持部を移動させる2つのベース、および基板保持部と2つのベースとをそれぞれ連結する2つのリンク部材を有する搬送ユニットと、本体部、本体部内に配列された複数の電磁コイル、および、電磁コイルに給電し、ベースを磁気浮上させるとともにリニア駆動するリニア駆動部を有する平面モータとを有する。2つのベースは、第1部材と、第1部材内に回転可能に設けられた第2部材とを有し、第1部材および第2部材の内部に磁石が設けられ、2つのリンク部材は、第2部材に回転可能に連結されるとともに関節を有し、リニア駆動部は、第2部材を第1部材に対して回転させて、2つのリンク部材にフロッグレッグタイプの伸縮動作を行わせる。
【選択図】 図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を基板搬送位置に搬送する基板搬送装置であって、
基板を保持する基板保持部、内部に複数の磁石を有し、前記基板保持部を移動させる2つのベース、および前記基板保持部と2つの前記ベースとをそれぞれ連結する2つのリンク部材を有する搬送ユニットと、
本体部、前記本体部内に配列された複数の電磁コイル、および、前記電磁コイルに給電し、前記ベースを磁気浮上させるとともにリニア駆動するリニア駆動部を有する平面モータと、
を有し、
2つの前記ベースは、それぞれ、第1部材と、前記第1部材内に回転可能に設けられた第2部材と、を有し、前記第1部材および前記第2部材の内部に前記磁石が設けられ、
2つの前記リンク部材は、それぞれ、対応する前記ベースの前記第2部材に回転可能に連結されるとともに関節を有し、
前記リニア駆動部は、前記第2部材を前記第1部材に対して回転させて、2つの前記リンク部材にフロッグレッグタイプの伸縮動作を行わせ、前記基板保持部材を前記リンク部材を介して伸縮させる、基板搬送装置。
【請求項2】
前記基板保持部が縮退した際には、2つの前記ベース、2つの前記リンク部材、および前記基板保持部が上下に重なった状態となり、その状態で2つの前記ベースがリニア駆動される、請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記基板保持部が縮退された状態では、平面視した場合に、2つの前記ベースおよび2つの前記リンク部材が、前記基板保持部に保持された前記基板の存在領域内に含まれるように構成される、請求項2に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記搬送ユニットは、前記基板保持部をガイドするガイド部材をさらに有する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記搬送ユニットは、基板に処理を行う処理室が接続された搬送室内に設けられ、基板搬送位置が前記処理室であり、前記平面モータの前記本体部は、前記搬送室の底壁を構成する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の基板搬送装置。
【請求項6】
基板を基板搬送位置に搬送する基板搬送方法であって、
基板を保持する基板保持部、内部に複数の磁石を有し、前記基板保持部を移動させる2つのベース、および前記基板保持部と2つの前記ベースとをそれぞれ連結する2つのリンク部材を有する搬送ユニットと、本体部、前記本体部内に配列された複数の電磁コイル、および、前記電磁コイルに給電し、前記ベースを磁気浮上させるとともにリニア駆動するリニア駆動部を有する平面モータと、を有し、2つの前記ベースは、それぞれ、第1部材と、前記第1部材内に回転可能に設けられた第2部材と、を有し、前記第1部材および前記第2部材の内部に前記磁石が設けられ、2つの前記リンク部材は、それぞれ、対応する前記ベースの前記第2部材に回転可能に連結されるとともに関節を有し、前記リニア駆動部は、前記第2部材を前記第1部材に対して回転させて、2つの前記リンク部材にフロッグレッグタイプの伸縮動作を行わせることが可能な基板搬送装置を用い、
前記基板が保持された前記基板保持部を縮退させ、2つの前記ベース、2つの前記リンク部材、および前記基板保持部が上下に重なった状態として2つの前記ベースをリニア駆動して前記基板を搬送することと、
前記基板が前記基板搬送位置に対応する位置に搬送された際に、前記リニア駆動部により前記第2部材を前記第1部材に対して回転させ、前記基板が保持された前記基板保持部を前記ベースから前記リンク部材を介して伸長させて前記基板を前記基板搬送位置に受け渡すことと、
を有する、基板搬送方法。
【請求項7】
前記基板保持部が縮退された状態では、平面視した場合に、2つの前記ベースおよび2つの前記リンク部材が、前記基板保持部に保持された前記基板の存在領域内に含まれるように構成される、請求項6に記載の基板搬送方法。
【請求項8】
前記搬送ユニットは、基板に処理を行う処理室が接続された搬送室内に設けられ、基板搬送位置が前記処理室であり、前記平面モータの前記本体部は、前記搬送室の底壁を構成する、請求項6または請求項7に記載の基板搬送方法。
【請求項9】
基板に対して処理を行う処理室と、
前記処理室が接続された搬送室と、
前記搬送室内で前記基板を搬送し、前記処理室内へ前記基板を受け渡す基板搬送装置と、
を具備し、
前記基板搬送装置は、
基板を保持する基板保持部、内部に複数の磁石を有し、前記基板保持部を移動させる2つのベース、および前記基板保持部と2つの前記ベースとをそれぞれ連結する2つのリンク部材を有する搬送ユニットと、
本体部、前記本体部内に配列された複数の電磁コイル、および、前記電磁コイルに給電し、前記ベースを磁気浮上させるとともにリニア駆動するリニア駆動部を有する平面モータと、
を有し、
2つの前記ベースは、それぞれ、第1部材と、前記第1部材内に回転可能に設けられた第2部材と、を有し、前記第1部材および前記第2部材の内部に前記磁石が設けられ、
2つの前記リンク部材は、それぞれ、対応する前記ベースの前記第2部材に回転可能に連結されるとともに関節を有し、
前記リニア駆動部は、前記第2部材を前記第1部材に対して回転させて、2つの前記リンク部材にフロッグレッグタイプの伸縮動作を行わせ、前記基板保持部材を前記リンク部材を介して伸縮させる、
基板処理システム。
【請求項10】
前記基板保持部が縮退した際には、2つの前記ベース、2つの前記リンク部材、および前記基板保持部が上下に重なった状態となり、その状態で2つの前記ベースがリニア駆動される、請求項9に記載の基板処理システム。
【請求項11】
前記基板保持部が縮退された状態では、平面視した場合に、2つの前記ベースおよび2つの前記リンク部材が、前記基板保持部に保持された前記基板の存在領域内に含まれるように構成される、請求項10に記載の基板処理システム。
【請求項12】
前記平面モータの前記本体部は、前記搬送室の底壁を構成する、請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板搬送装置、基板搬送方法、および基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造プロセスにおいては、基板である半導体ウエハの処理を行う際に、複数の処理室と、処理室と接続する真空搬送室と、真空搬送室内に設けられた基板搬送装置とを備える基板処理システムが用いられている。
【0003】
このような基板搬送装置として、従来、多関節アーム構造の搬送ロボットが用いられている(例えば特許文献1)。
【0004】
また、搬送ロボットを用いる技術の、真空シールからのガスの侵入の問題や、搬送ロボットの旋回や伸縮の移動が限定されるという問題を解消できる技術として磁気浮上を利用した平面モータを用いた基板搬送装置が提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-168866号公報
【特許文献2】特表2018-504784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、平面モータを用いた基板搬送において、基板保持部を含む搬送ユニットの専有面積を小さくすることができる基板搬送装置、基板搬送方法、および基板処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る基板搬送装置は、基板を基板搬送位置に搬送する基板搬送装置であって、基板を保持する基板保持部、内部に複数の磁石を有し、前記基板保持部を移動させる2つのベース、および前記基板保持部と2つの前記ベースとをそれぞれ連結する2つのリンク部材を有する搬送ユニットと、本体部、前記本体部内に配列された複数の電磁コイル、および、前記電磁コイルに給電し、前記ベースを磁気浮上させるとともにリニア駆動するリニア駆動部を有する平面モータと、を有し、2つの前記ベースは、それぞれ、第1部材と、前記第1部材内に回転可能に設けられた第2部材と、を有し、前記第1部材および前記第2部材の内部に前記磁石が設けられ、2つの前記リンク部材は、それぞれ、対応する前記ベースの前記第2部材に回転可能に連結されるとともに関節を有し、前記リニア駆動部は、前記第2部材を前記第1部材に対して回転させて、2つの前記リンク部材にフロッグレッグタイプの伸縮動作を行わせ、前記基板保持部材を前記リンク部材を介して伸縮させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、平面モータを用いた基板搬送において、基板保持部を含む搬送ユニットの専有面積を小さくすることができる基板搬送装置、基板搬送方法、および基板処理システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】基板処理システムの一例を示す概略平面図である。
図2】基板搬送装置の搬送ユニットおよび平面モータを説明するための部分断面側面図である。
図3】平面モータの駆動原理を説明するための斜視図である。
図4】ベースにおける第1部材に対する第2部材の回転を説明するための図である。
図5】搬送ユニットが縮退した状態を示す平面図である。
図6】搬送ユニットが伸長した状態を示す側面図である。
図7】搬送ユニットが伸長した状態を示す平面図である。
図8】エンドエフェクタの伸長動作を説明するための図である。
図9】ガイド部材を設けた場合のエンドエフェクタの伸長動作を説明するための図である。
図10】基板処理システムの他の例を示す概略平面図である。
図11】搬送ユニットの他の例を示す平面図である。
図12】搬送ユニットのさらに他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。
【0011】
<基板処理システムの一例>
図1は、基板処理システムの一例を示す概略平面図である。
本例の基板処理システム100は、複数の基板に対して連続的に処理を実施するものである。基板の処理は特に限定されず、例えば成膜処理、エッチング処理、アッシング処理、クリーニング処理のような種々の処理を挙げることができる。基板は、特に限定されるものではないが、以下の説明では、基板として半導体ウエハ(以下単にウエハともいう)を用いた場合を例にとって説明する。
【0012】
図1に示すように、基板処理システム100は、クラスタ構造(マルチチャンバタイプ)のシステムであり、複数の処理装置110、真空搬送室120、ロードロック室130、大気搬送室140、基板搬送装置150、および制御部160を備える。
【0013】
真空搬送室120は平面形状が矩形状をなし、内部が真空雰囲気に減圧され、長辺側の相対向する壁部に複数の処理室110がゲートバルブGを介して接続されている。また、真空搬送室120の短辺側の一方の壁部にロードロック室130がゲートバルブG1を介して接続されている。ロードロック室130の真空搬送室120と反対側にはゲートバルブG2を介して大気搬送室140が接続されている。なお、図1において、処理室110の配列方向がX方向であり、X方向と直交する方向がY方向である。また、図1においては、ロードロック室130が1つの場合を示しているが、ロードロック室130は複数であっても構わない。
【0014】
真空搬送室120内の基板搬送装置150は、処理室110、ロードロック室130に対して、基板であるウエハWの搬入出を行う。基板搬送装置150は、実際にウエハWを保持するウエハ保持部であるエンドエフェクタ50を有する搬送ユニット20を有している。基板搬送装置150の詳細については後述する。
【0015】
処理室110と真空搬送室120との間は、ゲートバルブGを開放することにより連通して基板搬送装置150によるウエハWの搬送が可能となり、ゲートバルブGを閉じることにより遮断される。また、ロードロック室130と真空搬送室120との間は、ゲートバルブG1を開放することにより連通して基板搬送装置150によるウエハWの搬送が可能となり、ゲートバルブG1を閉じることにより遮断される。
【0016】
処理室110は、ウエハWを載置する載置台111を有し、内部が真空雰囲気に減圧された状態で載置台111に載置されたウエハWに対して所望の処理(成膜処理、エッチング処理、アッシング処理、クリーニング処理等)を施す。
【0017】
ロードロック室130は、ウエハWを載置する載置台131を有し、大気搬送室140と真空搬送室120との間でウエハWを搬送する際に、大気圧と真空との間で圧力制御するものである。
【0018】
大気搬送室140は、大気雰囲気となっており、例えば清浄空気のダウンフローが形成される。また、大気搬送室140の壁面には、ロードポート(図示せず)が設けられている。ロードポートは、ウエハWが収容されたキャリア(図示せず)または空のキャリアが接続されるように構成されている。キャリアとしては、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)等を用いることができる。
【0019】
また、大気搬送室140の内部には、ウエハWを搬送する大気搬送装置(図示せず)が設けられている。大気搬送装置は、ロードポート(図示せず)に収容されたウエハWを取り出して、ロードロック室130の載置台131に載置し、または、ロードロック室130の載置台131に載置されたウエハWを取り出して、ロードポートに収容する。ロードロック室130と大気搬送室140との間は、ゲートバルブG2を開放することにより連通して大気搬送装置によるウエハWの搬送が可能となり、ゲートバルブG2を閉じることにより遮断される。
【0020】
制御部160は、コンピュータで構成されており、CPUを備えた主制御部と、入力装置、出力装置、表示装置、記憶装置(記憶媒体)を有している。主制御部は、基板処理システム100の各構成部の動作を制御する。例えば、各処理室110におけるウエハWの処理、基板搬送装置150によるウエハWの搬送、ゲートバルブG,G1,G2の開閉等を制御する。主制御部による各構成部の制御は、記憶装置に内蔵された記憶媒体(ハードディスク、光デスク、半導体メモリ等)に記憶された制御プログラムである処理レシピに基づいてなされる。
【0021】
次に、基板処理システム100の動作の一例について説明する。ここでは、基板処理システム100の動作の一例として、ロードポートに取り付けられたキャリアに収容されたウエハWを処理室110で処理を施し、ロードポートに取り付けられた空のキャリアに収容する動作を説明する。なお、以下の動作は、制御部160の処理レシピに基づいて実行される。
【0022】
まず、大気搬送室140内の大気搬送装置(図示せず)によりロードポートに接続されたキャリアからウエハWを取り出し、ゲートバルブG2を開けて大気雰囲気のロードロック室130に搬入する。そして、ゲートバルブG2を閉じた後、ウエハWが搬入されたロードロック室130を真空搬送室120に対応する真空状態とする。次いで、対応するゲートバルブG1を開けて、ロードロック室130の中のウエハWを、搬送ユニット20のエンドエフェクタ50により取り出し、ゲートバルブG1を閉じる。次いで、いずれかの処理室110に対応するゲートバルブGを開けた後、エンドエフェクタ50によりその処理室110にウエハWを搬入し載置台111に載置する。そして、その処理室110からエンドエフェクタ50を退避させ、ゲートバルブGを閉じた後、その処理室110で成膜処理等の処理が行われる。
【0023】
処理室110での処理が終了した後、対応するゲートバルブGを開け、搬送ユニット20のエンドエフェクタ50が、その処理室110からウエハWを取り出す。そして、ゲートバルブGを閉じた後、ゲートバルブG1を開け、エンドエフェクタ50に保持されたウエハWを、ロードロック室130に搬送する。その後、ゲートバルブG1を閉じ、ウエハWが搬入されたロードロック室130を大気雰囲気とした後、ゲートバルブG2を開け、大気搬送装置(図示せず)によりロードロック室130からウエハWを取り出し、ロードポートのキャリア(いずれも図示せず)に収納する。
【0024】
以上の処理を複数のウエハWに対して同時並行的に行い、キャリア内の全てのウエハWについて処理を実施する。
【0025】
なお、上記説明では、基板搬送装置150により、いずれかの処理室110にウエハWを搬送し、その処理室110でウエハWの処理を行っている間に、別のウエハWを他の処理室110に搬送するパラレル搬送の場合を説明したが、これに限るものではない。例えば、1枚のウエハWを複数の処理室110に順次搬送するシリアル搬送であってもよい。
【0026】
<基板搬送装置の一例>
次に、基板搬送装置の一例について、上述の図1の他、図2~7に基づいて詳細に説明する。図2は基板搬送装置の搬送ユニットおよび平面モータを説明するための部分断面側面図、図3は平面モータの駆動原理を説明するための斜視図、図4はベースにおける第1部材に対する第2部材の回転を説明するための図、図5は搬送ユニットが縮退した状態を示す平面図、図6は搬送ユニットが伸長した状態を示す側面図、図7は搬送ユニットが伸長した状態を示す平面図である。
【0027】
基板搬送装置150は、図1図2に示すように、平面モータ(リニアユニット)10と、搬送ユニット20とを有する。
【0028】
平面モータ(リニアユニット)10は、搬送ユニット20をリニア駆動する。平面モータ(リニアユニット)10は、真空搬送室120の底壁121で構成される本体部11と、本体部11の内部に全体に亘って配置された複数の電磁コイル12と、複数の電磁コイル12に個別的に給電して搬送ユニット20をリニア駆動するリニア駆動部13とを有している。リニア駆動部13は制御部160により制御される。電磁コイル12に電流が供給されることにより、磁場が生成される。
【0029】
搬送ユニット20は、2つのベース31,32と、リンク部材41,42と、上述したエンドエフェクタ50とを有する。ベース31は、第1部材33と、第1部材33の内部に回転可能に設けられた円柱状をなす第2部材34とを有する。同様に、ベース32は、第1部材35と、第1部材35の内部に回転可能に設けられた円柱状をなす第2部材36とを有する。なお、図では搬送ユニット20を3つ描いているが、搬送ユニット20の数は1つ以上であればよい。
【0030】
ベース31,32は、その中に複数の永久磁石が配列されて構成されており、リンク部材41,42を介してエンドエフェクタ50を移動させる。具体的には、ベース31,32の第1部材33,35には複数の永久磁石37が配列されており、第2部材34,36には複数の永久磁石38が配列されている。
【0031】
そして、平面モータ(リニアユニット)10の電磁コイル12に供給する電流の向きを、それにより生成される磁場が永久磁石37,38と反発するような向きとすることにより、ベース31,32が本体部11表面から磁気浮上するように構成されている。ベース31,32は、電磁コイル12への電流を停止することにより、浮上が停止され、真空搬送室120の床面、すなわち平面モータ10の本体部11表面に載置された状態となる。
【0032】
また、リニア駆動部13から電磁コイル12に供給する電流を個別的に制御することにより、ベース31,32を磁気浮上させた状態で、平面モータ10の本体部11表面に沿ってX方向、Y方向、またはθ方向(回転)に移動させ、その位置を制御することができる。また、電流の制御により浮上量も制御することができる。さらに、リニア駆動部13から電磁コイル12に供給する電流を個別的に制御して、例えば、図4の(a)の状態から(b)の状態のように、第2部材34,36を第1部材33,35に対して回転させることができる。
【0033】
リンク部材41,42は、それぞれ回転軸43,44を介して第2部材34,36に接続されており、第2部材34,36の回転にともなってリンク部材41,42が回動するようになっている。これにより、エンドエフェクタ50をベース31,32に対して伸縮することが可能となっている。
【0034】
図2および図5は、エンドエフェクタ50が縮退した状態であり、エンドエフェクタ50およびリンク部材41,42がベース31,32上に重なった状態に折りたたまれている。そして、この状態では、平面視した場合に、ベース31,32およびリンク部材41,42が、エンドエフェクタ50上のウエハWの存在領域内に含まれるようになっている。搬送ユニット20が真空搬送室120内を移動する際には、このようにエンドエフェクタ50が縮退した状態とされる。
【0035】
図6および図7は、エンドエフェクタ50およびリンク部材41,42がベース31,32から伸長した状態である。搬送ユニット20をウエハ搬送位置である処理室110にアクセスする際にこのようにエンドエフェクタ50およびリンク部材41,42を伸長することにより、エンドエフェクタ50を処理室110内にアクセスしてウエハWの受け渡しを行うことが可能となる。
【0036】
次に、このように構成される基板搬送装置150の動作について説明する。
基板搬送装置150においては、制御部160により平面モータ(リニアユニット)10のリニア駆動部13から電磁コイル12に供給する電流を制御して永久磁石37,38と反発する磁場を生成することにより、ベース31,32を磁気浮上させる。このときの浮上量は電流の制御により制御することができる。
【0037】
磁気浮上した状態で、リニア駆動部13から電磁コイル12に供給する電流を個別的に制御することにより、ベース31,32を平面モータ10の本体部11表面(真空搬送室120の床面)に沿って移動させ、エンドエフェクタ50上のウエハWを搬送することができる。
【0038】
このような平面モータを用いた基板搬送は、上述したように、搬送ロボットを用いる技術における真空シールからのガスの侵入の問題や、搬送ロボットの旋回や伸縮の移動が限定されるという問題を解決するものである。
【0039】
特に、搬送ロボットの旋回や伸縮の移動が限定されることにより、基板処理システム全体の設置面積が大きくなりクリーンルームコストの低減が困難であるという問題が生じるが、平面モータを用いた搬送技術ではそのような問題を軽減することができる。
【0040】
すなわち、複数の処理室を有する基板処理システムの場合、処理室の搭載位置が搬送ロボットの搭載位置によって制限され、また、真空搬送室はロボットアームの旋回および伸縮に必要な面積が必要となり、またそのような真空搬送室が複数必要となる。このため、システム全体の設置面積が大きくなってしまう。これに対し、特許文献2のような平面モータを用いた基板搬送では、処理室の搭載位置の自由度が高く、真空搬送室の面積に関してもある程度低減することができる。
【0041】
しかし、近時、複数の処理室を有する基板処理システムに対し、さらなる設置面積の低減が求められている。
【0042】
このため、本実施形態では、搬送ユニット20のベース31,32を、第1部材33,35と、第1部材33,35に対して回転可能な第2部材34,36とを有するものとし、第2部材34,36にリンク部材41,42を介してエンドエフェクタ50を接続する。
【0043】
これにより、リニア駆動部13から電磁コイル12に供給する電流を個別的に制御して、第2部材34,36を第1部材33,35に対して回転させることができ、リンク部材41,42を介してエンドエフェクタ50を伸縮することができる。
【0044】
図2および図5に示すように、エンドエフェクタ50が縮退した際には、エンドエフェクタ50およびリンク部材41,42が折りたたまれ、ベース31,32上に重なった状態とすることができる。そして、この状態では、平面視した場合に、ベース31,32およびリンク部材41,42が、エンドエフェクタ50上のウエハWの存在領域内に含まれた状態となり、搬送ユニット20の専有面積を最小化することができる。
【0045】
そして、この状態で搬送ユニット20を真空搬送室120内でリニア駆動により移動させてウエハWを搬送することにより、真空搬送室120における搬送ユニット20が移動するスペースを小さくすることができる。このため、真空搬送室120をより小型化することができ、基板処理システム100自体の設置面積をより小さくすることができる。
【0046】
搬送ユニット20によりウエハ搬送位置である処理室110に対してウエハWの受け渡しを行う際には、エンドエフェクタ50をその処理室110に正対させた状態で、ベース31,32の移動を停止する。そして、第2部材34,36を第1部材33,35に対して回転させることにより、図6および図7に示すように、エンドエフェクタ50およびリンク部材41,42をベース31,32から伸長させて、エンドエフェクタ50を処理室110にアクセスさせる。
【0047】
この際のエンドエフェクタ50の伸長動作を、図8を参照して説明する。(a)はエンドエフェクタ50が縮退した状態であり、平面視した場合に、ベース31,32およびリンク部材41,42が、エンドエフェクタ50上のウエハWの存在領域内に含まれている。この状態から、リニア駆動部13から電磁コイル12に供給する電流を個別的に制御して、ベース31,32の第1部材33,35および第2部材34,36を移動させて、(b)さらには(c)に示すように、ベース31,32を外側へ回動させ、エンドエフェクタ50を直進移動させる。そして、さらにベース31,32を回動させて、エンドエフェクタ50を直進させ、最終的に、(d)に示すように、エンドエフェクタ50およびリンク部材41,42をベース31,32から伸長させた状態とする。
【0048】
図9に示すように、エンドエフェクタ50を安定して移動させるためのガイド部材を設けてもよい。この場合は、(a)のエンドエフェクタ50が縮退した状態から、ベース31,32を外側へ回動させ、(b)さらには(c)に示すように、ベース31,32を外側へ回動させてエンドエフェクタ50を直進させる際に、エンドエフェクタ50をガイド部材60にガイドさせた状態とする。そして、さらにベース31,32を回動させて、エンドエフェクタ50をガイド部材60に沿って直進させ、最終的に、(d)に示すように、エンドエフェクタ50およびリンク部材41,42をベース31,32から伸長させた状態とする。
【0049】
このように、本実施形態の基板搬送装置150においては、リニア駆動部13から電磁コイル12に供給する電流を個別的に制御して、ベース31,32の第1部材33,35および第2部材34,36を移動させるだけで、容易にエンドエフェクタ50を直進移動させることができる。また、エンドエフェクタ50は、処理室110に対するウエハWの受け渡しの際のみに、処理室110へ伸長するので、エンドエフェクタ50の伸長動作はウエハWの真空搬送室120の設置面積に影響は及ぼすことはない。
【0050】
<基板処理システムの他の例>
図10は、基板処理システムの他の例を示す概略平面図である。
本例の基板処理システム100´は、図1の基板処理システム100と同様、複数の基板に対して連続的に所望の処理を行うものである。基板処理システム100´の基本構成は、基板処理システム100と同様であるから、基板処理システム100と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0051】
本例の基板処理システム100´は、真空搬送室120のロードロック室130と対向する位置に、バッファ室170を有している点が基板処理システム100と異なっている。
【0052】
バッファ室170を設けることにより、搬送ユニット20を複数有する場合に、搬送ユニット20の一つをバッファ室170に退避させることができ、搬送ユニット20同士が干渉することを防止することができる。ウエハWの搬送をより円滑に行うことができる。
【0053】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0054】
例えば、上記実施形態では、基板搬送装置の搬送ユニット20として、エンドエフェクタ50と、2個のベース31,32と、これらを接続するリンク部材41,42とを有するものを用いたが、これに限るものではない。例えば図11のように、1個のベース30と1個のリンク部材40を有する搬送ユニット20´であってもよい。図11の搬送ユニット20´においても、ベース30はX-Y移動用の第1部材30aとエンドエフェクタ伸縮用の第2部材30bを有している。また、エンドエフェクタ50を安定して移動させるためのガイド部材60が設けられている。また、図12ように、リンク部材41,42の代わりに、それぞれ関節47,48を有する関節付きリンク部材45,46を設けた搬送ユニット20″であってもよい。関節付きリンク部材45,46を用いることにより、いわゆるフロッグレッグタイプの伸縮動作を行うことができる。また、水平方向に変位するリンク機構と高さ方向に変化するリンク機構を組み合わせてもよい。
【0055】
また、基板として半導体ウエハ(ウエハ)を用いた場合について示したが、半導体ウエハに限らず、FPD(フラットパネルディスプレイ)基板や、セラミックス基板等の他の基板をであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10;平面モータ
11;本体部
12;電磁コイル
13;リニア駆動部
20,20´,20″;搬送ユニット
30,31,32;ベース
33,35,30a;第1部材
34,36,30b;第2部材
37,38;永久磁石
41,42,45,46;リンク部材
50;エンドエフェクタ(基板保持部)
60;ガイド部材
100,100´;基板処理システム
110;処理室
120;真空搬送室
130;ロードロック室
140;大気搬送室
150;基板搬送装置
160;制御部
170;バッファ室
G,G1,G2;ゲートバルブ
W;半導体ウエハ(基板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12