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特開2024-121048硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物、及びそれを用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121048
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物、及びそれを用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20240830BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20240830BHJP
   C08G 18/20 20060101ALI20240830BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20240830BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08G18/28 015
C08G18/20
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023027911
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 礼実
(72)【発明者】
【氏名】森岡 佑介
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034CA02
4J034CC28
4J034CC34
4J034CC46
4J034CC65
4J034HA01
4J034HA06
4J034HC12
4J034HC63
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB05
4J034KD07
4J034KD12
4J034KE02
4J034NA03
4J034QB01
4J034QB10
4J034QB11
4J034QB19
4J034QC01
4J034RA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低温環境下での被着体への接着性が改善された硬質ポリウレタンフォームを得ることができる、硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)と、泡化触媒(B)と、ポリオール(C)と、水(D)とを含む、硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
[上記一般式(1)中、R、R、R、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。]
で示されるアミン化合物(A)と、泡化触媒(B)と、ポリオール(C)と、水(D)とを含む組成物であって、前記ポリオール(C) 45質量部に対して、水(D)を15~30質量部含むことを特徴とする、硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物。
【請求項2】
前記の一般式(1)で表されるアミン化合物(A)が、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(一般式(1)において、R、R、R、R及びRが、水素原子であり、a=0であり、b=1である)である、請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物。
【請求項3】
前記の泡化触媒(B)が、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N’-トリメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ビス(2-アミノエチル)エーテル、N,N’-ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、及びビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]エーテルからなる群より選ばれる、請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物。
【請求項4】
アミン化合物(A)と泡化触媒(B)の質量比が、泡化触媒(B) 100質量部に対して、アミン化合物(A)が1~150質量部である、請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物と、ポリイソシアネート類とを反応させることを特徴とする、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物、及びそれを用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、硬質ポリウレタンフォーム(以下、単にフォームともいう)は、断熱材等として、建物や電気冷蔵庫等、各種構造物に用いられており、ポリオール成分に、発泡剤、必要に応じて、硬化触媒や難燃剤、整泡剤等の各種助剤を配合したプレミックス組成物(硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物)とイソシアネート成分とを混合装置を用いて混合して調製される発泡性原液を、例えば、建物や電気冷蔵庫等の断熱部位へ吹き付け又は注入し、発泡・硬化させることで製造されている。
【0003】
そして、かかる発泡性原液には、発泡剤として、成層圏オゾン層の破壊という環境問題に対応した代替フロン(例えば、HFC-245fa、HFC-365mfc等)が使用されてきているのであるが、近年においては、更に、温暖化防止の観点から、ポリイソシアネート成分と水との化学反応で生成する二酸化炭素を、代替フロン系発泡剤の一部又は全部の代替として利用する、所謂、「水発泡法」と称される非フロン化指向の硬質ポリウレタンフォームの製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-227645号公報
【特許文献2】特開2008-303312号公報
【特許文献3】特開2022-22758号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987年初版)、日刊工業新聞社、p.118
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる水発泡においては、コスト削減を目的とした低密度化のためには水を多量に使用する必要があり、イソシアネートインデックス([イソシアネート基]/[イソシアネート基と反応しうる活性水素基]×100)の低下により、代替フロンを発泡剤として用いる代替フロン発泡法により形成されるフォームと比較して被着体表面への接着性が悪化する傾向がある。特に、冬季の厳寒期等の低温環境(例えば、-20~-5℃)下において、建物等の建設現場で、コンクリート躯体や壁面、天井、屋根等の被着体表面に、上記のような低密度水発泡硬質ポリウレタンフォームを形成せしめると、施工後、形成されたフォームが被着体から剥離し易いという問題があった。
【0007】
このような低密度水発泡硬質ポリウレタンフォーム製造用の触媒として、第3級アミン化合物が広く用いられており、従来公知のものとして、例えば、トリエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、又はN,N-ジメチルエタノールアミン等が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物を製造販売する事業者にとって、硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物はノウハウ性が高く、アミン触媒外の組成の変更は前記による物性改善は困難である。このため、第3級アミン化合物触媒のみの変更による接着性改善が切に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下記発明が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に示す硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物、及びそれを用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
[1]
下記一般式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
[上記一般式(1)中、R、R、R、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表す。a及びbは、それぞれ独立に、0又は1であり、a+b=1の関係を満たす。]
で示されるアミン化合物(A)と、泡化触媒(B)と、ポリオール(C)と、水(D)とを含む組成物であって、前記ポリオール(C) 45質量部に対して、水(D)を15~30質量部含むことを特徴とする、硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物。
[2]
前記の一般式(1)で表されるアミン化合物(A)が、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(一般式(1)において、R、R、R、R及びRが、水素原子であり、a=0であり、b=1である)である、[1]に記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物。
[3]
前記の泡化触媒(B)が、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N’-トリメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ビス(2-アミノエチル)エーテル、N,N’-ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、及びビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]エーテルからなる群より選ばれる、[1]に記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物。
[4]
アミン化合物(A)と泡化触媒(B)の質量比が、泡化触媒(B) 100質量部に対して、アミン化合物(A)が1~150質量部である、[1]に記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物。
[5]
[1]乃至[4]に記載の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物と、ポリイソシアネート類とを反応させることを特徴とする、硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物を用いることで、低温環境下での被着体への接着性が改善された硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明は、硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物、及びそれを用いる硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
【0016】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物は、上記の一般式(1)で示されるアミン化合物(A)と、泡化触媒(B)と、ポリオール(C)と、水(D)を含み、前記ポリオール(C) 45質量部に対して、水(D)を15~30質量部含むことを特徴とする。
【0017】
ここで、本発明の硬質ポリウレタンフォーム用プレミックス組成物は、上記のアミン化合物(A)と泡化触媒(B)を組み合わせたものを触媒成分として使用することを特徴とする。
【0018】
上記一般式(1)において、R、R、R、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、水酸基、ヒドロキシメチル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基を表し、特に限定するものではないが、例えば、各々独立して、水素原子、水酸基、ヒドロキシメチル基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、又はtert-ブトキシ基等を挙げることができる。
【0019】
これらのうち、好ましくは、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、又はメトキシ基である。
【0020】
上記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)の具体例としては、例えば、以下の化合物(例示化合物1~例示化合物28)を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
【化2】
【0022】
本発明のアミン化合物(A)については、ポリウレタンフォームの硬化性に優れる点で、上記一般式(1)において、R、R、R、R及びRが、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、若しくはヒドロキシメチル基であるもの(但し、R、R、R、R及びRの全てが同じ置換基を表すことはない)、R、R、R、R及びRの全てがメチル基であるもの、又はR、R、R、R及びRの全てが水素原子であるものが好ましく、より好ましくは、一般式(1)において、R、R、R、R及びRが、各々独立して、水素原子又はメチル基であるものが挙げられ、より好ましくは、上記一般式(1)において、R、R、R、R及びRの全てが水素原子であるもの(即ち、上記の例示化合物-1であって、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール)が挙げられる。
【0023】
上記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、ジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応により製造することができる(例えば、特開2010-37325号公報参照)。
【0024】
また、上記一般式(1)で示されるアミン化合物(A)の製造方法は、特に限定するものではないが、例えば、Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenil,10,1404(1980)、国際公開第95/18104号パンフレット等に記載の方法により製造可能である。また、Journal of Medicinal Chemistry(1993),36(15),2075-2083や、特開2010-120887号公報に記載の方法等によって誘導されるヒドロキシアルキルピペラジン類のエチレンオキサイド付加物を分子内環化することによっても製造可能である。更には、例えば、特開2010-37325号公報に記載の方法、すなわちジヒドロキシアルキルピペラジン類の環化反応により製造することができる。
【0025】
置換基を有する上記式(1)で示されるアミン化合物(A)の製造方法については、対応する置換ピペラジンを使用することで製造可能である。置換ピペラジンの製造方法は、上記したヒドロキシアルキルピペラジン類の合成に関する公知技術等によって製造可能である。
【0026】
ポリウレタン製造の用いられる旧来型の第3級アミン触媒は、ポリウレタン製品から揮発性のアミンとして徐々に排出され、臭気問題を引き起こすことが知られている。また、第3級アミン触媒は、一般に臭気が強いために、ポリウレタン樹脂製造時の作業環境を著しく悪化させる傾向がある。上記の一般式(1)で示されるアミン化合物(A)については、このような問題を解決する第3級アミンとして開発された。例えば、特許文献3では、上記の一般式(1)で示されるアミン化合物(A)を用いた低臭気なポリウレタンフォームが得られるポリウレタンフォーム製造用のアミン触媒組成物、及びそれを用いたポリウレタンフォームの製造方法が提供されている。
【0027】
しかしながら、特許文献3については、厳寒期等の低温環境下において、水発泡法を行う際に惹起される接着性の低下の課題に対する改善に関して、検討がなされていなかった。
【0028】
前記の泡化触媒(B)は、一般的に、水とイソシアネート類との反応(所謂、泡化反応)をより強く活性化する触媒を表し、特に限定するものではないが、例えば、下記一般式(2)で示されるアミン化合物を挙げることができる。
【0029】
【化3】
【0030】
[上記一般式(2)式中、R~Rは、各々独立して、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~16のアルキル基、炭素数6~16のアリール基、炭素数1~10のヒドロキシアルキル基、炭素数1~10のアミノアルキル基、モノメチルアミノ基を有する炭素数1~10のアルキル基、又はジメチルアミノ基を有する炭素数1~10のアルキル基を表し、xは、0~11の整数、yは、0~11の整数、aは、0~10の整数、bは、0~10の整数を表す。]
上記一般式(2)において、置換基R~Rとしては、各々独立して、例えば、水素原子、ヒドロキシ基、メチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、モノメチルアミノエチル基、モノメチルアミノプロピル基、ジメチルアミノエチル基、又はジメチルアミノプロピル基であることが好ましい。
【0031】
前記の泡化触媒(B)については、特に限定するものではないが、例えば、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルプロピレンジアミン、N,N’-ジメチルプロピレンジアミン、N,N-ジメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’-ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルジエチレントリアミン、トリメチルエチレンジアミン、トリメチルプロピレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチルジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-ジメチルアミノイソプロパノール、ビス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N-ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルアミノエチル-N’-メチルアミノエチル-N”-メチルアミノイソプロパノール、N,N-ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、N,N-ジメチル-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-1,3-プロパンジアミン、N,N,N’-トリメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ビス(2-アミノエチル)エーテル、N,N-ビス(3-ジメチルアミノプロピル)-N-イソプロパノールアミン、N,N-ジメチルアミノヘキサノール、N,N,N’-トリメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、N,N’-ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、又はビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]エーテル等が挙げられる。
【0032】
泡化触媒(B)については、本発明の効果に優れる点で、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N,N’-トリメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ビス(2-アミノエチル)エーテル、N,N’-ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]-N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、及びビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]エーテルからなる群より選ばれるいずれか一つ又は二つ以上であることが好ましく、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミンであることがより好ましい。
【0033】
上記のポリオール(C)としては、特に限定するものではないが、例えば、従来公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、又は難燃ポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは単独で使用することもできるし、適宜混合して併用することもできる。
【0034】
上記のポリエーテルポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物(具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン等のアミン類、エタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン類等が例示される。)を出発原料として、これとアルキレンオキサイド(具体的には、エチレンオキシドやプロピレンオキシドが例示される)との付加反応により製造されたものが挙げられる[例えば、Gunter Oertel,“Polyurethane Handbook”(1985) Hanser Publishers社(ドイツ),p.42-53に記載の方法参照]。
【0035】
上記のポリエステルポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、二塩基酸とグリコールの反応から得られるものや、ナイロン製造時の廃物、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールの廃物、フタル酸系ポリエステルの廃物、廃品を処理し誘導したポリエステルポリオール等が挙げられる[例えば、岩田敬治「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(1987)日刊工業新聞社 p.117の記載参照]。
【0036】
上記のポリマーポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、上記ポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる)をラジカル重合触媒の存在下に反応させた重合体ポリオールが挙げられる。
【0037】
上記の難燃ポリオールとしては、特に限定するものではないが、例えば、リン酸化合物にアルキレンオキシドを付加して得られるリン含有ポリオールや、エピクロルヒドリンやトリクロロブチレンオキシドを開環重合して得られるハロゲン含有ポリオール、又はフェノールポリオール等が挙げられる。
【0038】
上記のポリオール(C)については、単独で使用することもできるし、混合して使用することもできる。
【0039】
上記の水(D)については、例えば、水道水、井戸水、蒸留水、精製水、又はイオン交換水等が挙げられる。当該水(D)については、不純物含有量が少ないものが好ましく、例えば、蒸留水、精製水、又はイオン交換水が好ましい。
【0040】
本発明の組成物において、アミン化合物(A)と泡化触媒(B)は、任意の比率で含有されていても良いが、フォームの接着性に優れる点で、泡化触媒(B) 100質量部に対して、アミン化合物(A)が1~150質量部であることが好ましく、より好ましくは10~100質量部であり、更に好ましくは40~100質量部である。
【0041】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物において、アミン化合物(A)と泡化触媒(B)の含有量については、前記のポリオール(C) 45質量部に対し、アミン化合物(A)と泡化触媒(B)の合計量が0.03~9質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1~6質量部の範囲である。
【0042】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物において、水(D)の含有量については、前記のポリオール(C) 45質量部に対し、15~30質量部であることを特徴とするが、接着性に優れる点で、17~27の範囲であることがより好ましく、18~25
の範囲であることがより好ましい。
【0043】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物については、上記のアミン化合物(A)、泡化触媒(B)、ポリオール(C)、及び水(D)以外の成分(以下、添加物と称する)を含んでいてもよい。
【0044】
上記の添加物としては、ポリウレタンフォーム製造に利用される一般的な成分を挙げることができ、具体的には、例えば、追加の触媒(例えば、金属系触媒)、発泡剤(水を含まない)、界面活性剤、難燃剤、架橋剤、鎖延長剤、着色剤、老化防止剤、又は連通化剤等が挙げられる。
【0045】
当該添加剤については、それぞれ、一般的に用いられる範囲で本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物に包含させて用いることができる。
【0046】
前記の架橋剤又は鎖延長剤としては、例えば、低分子量の多価アルコール類、低分子量のアミンポリオール類、又はポリアミン類等が挙げられ、より具体的には、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、キシリレンジアミン、又はメチレンビスオルソクロルアニリン等を挙げることができる。
【0047】
前記の難燃剤としては、例えば、含リンポリオールの様な反応型難燃剤、第3リン酸エステル類難燃剤、ハロゲン含有第3リン酸エステル類難燃剤、ハロゲン含有有機化合物類難燃剤、又は無機化合物難燃剤等が挙げられ、より具体的には、リン酸とアルキレンオキシドとの付加反応によって得られるプロポキシル化リン酸、プロポキシル化ジブチルピロリン酸、トリクレジルホスフェート、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、ジブロモプロパノール、ジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA、酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、又はリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0048】
前記の界面活性剤としては、例えば、従来公知の有機シリコーン系界面活性剤が挙げられ、具体的には、有機シロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体、シリコーン-グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤、又はこれらの混合物等が例示される。当該界面活性剤の使用量は、前記のポリオール類 100質量部に対して通常0.05~5質量部であることが好ましい。
【0049】
本発明の一態様は、前記の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物と、ポリイソシアネート類とを反応させることを特徴とする、硬質ポリウレタンフォームの製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略記する)に係る。
【0050】
前記のポリイソシアネート類については、従来公知のものを用いることができ、特に限定するものではないが、例えば、芳香族ポリイソシアネート類、脂肪族ポリイソシアネート類、又は脂環式ポリイソシアネート類等が挙げられ、より具体的には、トリレンジイソシアネート(以下、「TDI」と称する場合がある)誘導体、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と称する場合がある)誘導体、ナフチレンジイシシアネート誘導体、キシリレンジイソシアネート誘導体、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体、ジシクロヘキシルジイソシアネート誘導体、イソホロンジイソシアネート誘導体、又はこれらの混合体等が挙げられる。これらのうち好ましくは、TDI誘導体、MDI誘導体であり、これらは単独で使用することもできるし、混合して使用することもできる。
【0051】
上記のTDI誘導体としては、例えば、TDI末端イソシアネートプレポリマー等を挙げることができる。また、MDI誘導体としては、例えば、MDIの重合体であるポリメリックMDI、MDI末端イソシアネートプレポリマー、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0052】
これらポリイソシアネート類のうち、ポリメリックMDIが好ましい。
【0053】
本発明の製造方法については、通常、前記の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物と、ポリイソシアネート類とを混合した混合液を急激に混合、攪拌することによって行われる。前記の混合、攪拌は一般的な攪拌機や専用のポリウレタン発泡機を使用して実施することができる。ポリウレタン発泡機としては、例えば、スプレー式の機器が挙げられる。
【0054】
本発明の製造方法において、前記の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物と、ポリイソシアネート類とを混合するとき、その量比は、イソシアネートインデックス(硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物の水酸基当量に対するポリイソシアネート類のイソシアネート基当量の比を100倍したもの)で、20~100であることが好ましく、22~60であることがより好ましく、25~40であることがより好ましい。
【0055】
なお、本発明の製造方法により得られる硬質ポリウレタンフォームの密度は、20kg/m以下であることが好ましく、より好ましくは5~15kg/mであり、更に好ましくは8~12kg/mである。かかるフォーム密度は、例えば、水の量や、別途添加する発泡剤の種類や量を調整することにより、上記範囲内に設定できる。
【0056】
本発明の製造方法により得られる硬質ポリウレタンフォームについては、断熱材として好適に使用される。
【0057】
本発明の製造方法については、例えば、建築物の現場施工方法としては、建築物の構成基材にスプレーにより吹き付け施工するスプレー法、建築基材により形成された空隙にポリオール組成物とポリイソシアネート類との混合物を注入する注入法などが挙げられ、特に限定されない。
【0058】
なお、本発明の製造方法については、その効果が発揮できる点で、-40~-5℃の環境下で実施されることが好ましく、-30~-10℃の環境下がより好ましい。前記の温度は、前記の発泡原液が吹き付けなどされる空間や基材の温度のことを表す。
【実施例0059】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、文書中及び表中の質量部は、全ポリオールの合計質量を45質量部とした場合の質量比を示す。
<原材料>
原材料としては下記のものを用いた。
【0060】
ポリオール(C): サンニックスFA-703(OH価=34mgKOH/g、三洋化成工業株式会社製)
ポリオール(C): サンニックスHM-551(OH価=400mgKOH/g、三洋化成工業株式会社製)
整泡剤: VORASURF SF 2938 ADDITIVE(シリコーン整泡剤、ダウ・東レ株式会社製)
架橋剤: 2,2’,2”-ニトリロトリエタノール(キシダ化学株式会社製)
難燃剤: トリス(クロロプロピル)ホスフェート(大八化学工業株式会社製)
アミン化合物(A): 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(東ソー株式会社製)
泡化触媒(B): N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン(東ソー株式会社製)
アミン化合物: 70質量%ジメチルイミダゾール、30質量%エチレングリコール(東ソー株式会社製)
アミン化合物: N,N-ジメチルドデシルアミン(東京化成工業株式会社製)
アミン化合物: N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン(東京化成工業株式会社製)
発泡剤: 水(D)
ポリイソシアネート類: ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(東ソー株式会社製ミリオネートMR-200,NCO含量=31.0%)
<ウレタンフォームの製造方法>
縦25cm×横25cm×高さ25cmのアルミ製容器の底面に、縦5cm×横5cm×厚み15μmのアルミシートを4箇所敷いた。この時、アルミシートの端が、前記アルミ製容器の最も近い壁面から7~7.5cmずつ離して設置した。この状態で、前記アルミ製容器を冷凍室に静置し、-20℃に温度調節した。
【0061】
後述する実施例等で調製した硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物 100gを300mlポリエチレンカップに秤り取り、これを20℃に温度調整した後、別途20℃に温度調整した前記ポリイソシアネート類をイソシアネートインデックスが30となる量だけ秤り取り、前記の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物が秤り取られたポリエチレンカップの中に入れ、素早く攪拌機にて6000rpmで4秒間混合攪拌した。混合攪拌した混合液を、-20℃に温度調節した前記アルミ製容器に投入し、前記容器を-20℃の冷凍庫内にて10分間静置した。次いで、前記容器内で発泡硬化した硬質ポリウレタンフォームを脱型し、前記のアルミシートが接着した面を側面にした状態で、72時間、室温で静置(エージング)した。
【0062】
なお、上記の本発明の触媒組成物の添加量(質量部)は、ポリウレタンフォームの反応性がクリームタイム(フォームの泡化開始時間)で13±2秒となるように調整した。
<評価項目>
・フォーム密度
前記のエージングを施した硬質ポリウレタンフォームの中心部より10×10×6cmの大きさをもつ試験片を取得し、その密度を測定し、コア密度(kg/cm)として表した。
・接着性評価
前記のエージングを施した硬質ポリウレタンフォームの山形に膨らんだ部分について、フォーム底面と並行の断面で切断し、切断面を下にして試験台上に固定した。前記アルミシートとフォームの境界に、フォーム面に対して直角に、カッターナイフで深さ約2mmの切り込みを入れた。アルミシートの四辺について端部部分を硬質ポリウレタンフォームから約0.3mm引き剥がし、アルミシート面に対してバンカーリングを貼りつけた。バンカーリングを鉛直上方に引張り、前記アルミシートを前記硬質ポリウレタンフォームから完全に引き剥がした。完全に引き剥がした時に掛かった最大の力を日本電産シンポ株式会社製デジタルフォースゲージにより測定し、アルミシートの接着強度(N/25cm)として評価した。
・フォームの臭気
前記のエージングを施した硬質ポリウレタンフォームの中心部より10×10×4cmの大きさをもつ試験片を取得し、この試験片を1ツ口タイプのテドラー(登録商標)バッグ(近江オドエアーサービス社製)に入れ、ヒートシーラーで開口部を接着した。前記テドラーバッグの空気を押し出した後、計量ポンプを用い、窒素5Lをバッグに封入し、80℃のオーブンで1時間加熱した。テドラーバックを室温まで放冷し、5人のモニターにテドラーバック内の臭いを嗅がせ、においの強さを判定し、臭気強度として表した。
【0063】
実施例1
1Lのポリエチレン製カップに、ポリオール(C)として、サンニックスFA-703 270g及びサンニックスHM-551 180gを計り取り、さらに、アミン化合物(A)として、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(80℃に加熱融解させたもの) 4.4g、泡化触媒(B)として、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン 39.6g、水(D) 200g、前記整泡剤 10g、前記架橋剤 60g、及び前記難燃剤 250gを前記カップ内に計り取り、撹拌混合することによって、本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物を調製した。
【0064】
前記組成物を用いて上記の<ウレタンフォームの製造方法>を実施し、さらに、上記の<評価項目>試験を行った。組成物の組成比及び評価結果について表に示した。
【0065】
実施例2
アミン化合物(A)として、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(80℃に加熱融解させたもの) 15.6gを使用し、泡化触媒(B)として、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン 36.4gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物を調製し、評価を行った。
【0066】
実施例3
アミン化合物(A)として、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン-2-メタノール(80℃に加熱融解させたもの) 31.5gを使用し、泡化触媒(B)として、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン 31.5gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って本発明の硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物を調製し、評価を行った。
【0067】
比較例1
アミン化合物(A)は使用せず、泡化触媒(B)として、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン 40.0gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物を調製し、評価を行った。
【0068】
比較例2
アミン化合物(A)は使用せず、泡化触媒(B)として、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン 36.4gを使用し、その他のアミン化合物として、濃度70質量%のジメチルイミダゾール(エチレングリコール溶液) 15.6gを追加で使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物を調製し、評価を行った。
【0069】
比較例3
アミン化合物(A)は使用せず、泡化触媒(B)として、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン 30.8gを使用し、その他のアミン化合物として、N,N-ジメチルドデシルアミン 13.2gを追加で使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物を調製し、評価を行った。
【0070】
比較例4
アミン化合物(A)は使用せず、泡化触媒(B)として、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン 28.0gを使用し、その他のアミン化合物として、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン 12.0gを追加で使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物を調製し、評価を行った。
【0071】
比較例5
アミン化合物(A)は使用せず、泡化触媒(B)として、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン 40.0gを使用し、水(D)の使用量を140gに変更し、イソシアネートインデックスを38に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って硬質ポリウレタンフォーム製造用プレミックス組成物を調製し、評価を行った。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例1~3から明らかなように、本発明の触媒組成物を用いたポリウレタンフォームは、比較例1~5のものと比較し、低温環境下における接着強度が強く、改善されたものであった。また、実施例1~実施例2ではフォームの臭気が比較的少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の触媒を用いて製造されるポリウレタンフォームは、硬質ポリウレタンフォームにて製造される断熱材の製造等として有用である。