(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121158
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】充電器
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20240830BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20240830BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240830BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H02M7/12 Q
H02M3/28 H
H02J7/00 A
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028106
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514007047
【氏名又は名称】長岡パワーエレクトロニクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】權藤 涼
(72)【発明者】
【氏名】榎本 倫人
(72)【発明者】
【氏名】前▲崎▼ 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大沼 喜也
(72)【発明者】
【氏名】宅間 春介
(72)【発明者】
【氏名】米田 昇平
【テーマコード(参考)】
5G503
5H006
5H730
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503GB04
5H006AA01
5H006AA02
5H006CA02
5H006CB01
5H006CC08
5H006DA04
5H006DB01
5H730AA02
5H730AA15
5H730AA18
5H730AS01
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB66
5H730CC01
5H730DD04
5H730DD16
5H730DD41
5H730EE07
5H730EE13
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】電力の脈動を吸収することが可能な小型で高効率な充電器を提供する。
【解決手段】DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutが第1の電力値P
O1より小さいならば、交流電源200から入力される交流電圧v
Sの一周期のすべての期間、不連続電流モードにより、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31を制御し、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutが第2の電力値P
O2以上ならば、交流電圧v
Sの一周期のすべての期間、連続電流モードにより、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31を制御する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、
前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、
第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、
前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、
前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、
前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、
前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、
前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、
前記制御部は、
前記DC/DCコンバータの出力電力値が第1の電力値より小さいならば、前記交流電源から入力される交流電圧の一周期のすべての期間、不連続電流モードにより、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチを制御し、
前記DC/DCコンバータの出力電力値が第2の電力値以上ならば、前記交流電圧の一周期のすべての期間、連続電流モードにより、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチを制御する、充電器。
【請求項2】
前記制御部は、
前記不連続電流モードにおいて、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチのスイッチング周波数を変化させず、
前記連続電流モードにおいて、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチのスイッチング周波数を変化させる、請求項1に記載の充電器。
【請求項3】
前記第1の電力値は、前記第2の電力値と異なる値であり、
前記制御部は、前記DC/DCコンバータの出力電力値が前記第1の電力値以上であり、かつ前記第2の電力値より小さいならば、
前記交流電圧の一周期のうちの第1の期間に、前記連続電流モードにより、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチを制御し、
前記交流電圧の一周期のうちの前記第1の期間以外の期間に、前記不連続電流モードにより、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチのスイッチングを制御する、請求項1または2に記載の充電器。
【請求項4】
前記制御部は、
前記DC/DCコンバータのインダクタの動作波形が方形波形により近似可能な動作波形になるように、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチのスイッチングを制御し、
前記連続電流モードにおいて、前記スイッチング周波数の最小値が第1の周波数値になるように、前記方形波形の波高値の指定値を制御する、請求項3に記載の充電器。
【請求項5】
前記制御部は、前記スイッチング周波数の最大値が前記第1の周波数値より大きい第2の周波数値以下になるように、前記第1の期間を設定する、請求項4に記載の充電器。
【請求項6】
前記交流電源から入力される交流電圧の一周期のうちの前記第1の期間以外の期間の前記スイッチング周波数は、前記第1の周波数値である、請求項5に記載の充電器。
【請求項7】
前記スイッチング周波数の最大値は、前記第2の周波数値であり、
前記交流電源から入力される交流電圧の一周期のうちの前記第1の期間以外の期間の前記スイッチング周波数は、前記第2の周波数値である、請求項5に記載の充電器。
【請求項8】
前記第1の電力値は、前記スイッチング周波数の変化率がゼロになるタイミングのスイッチング周波数が前記第2の周波数値以下になるように設定される、請求項5に記載の充電器。
【請求項9】
前記第2の電力値は、前記交流電圧の一周期のすべての期間を前記連続電流モードにより前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチを制御したときの前記スイッチング周波数の最大値が前記第2の周波数値以下になるように設定される、請求項8に記載の充電器。
【請求項10】
前記DC/DCコンバータは、DAB(Dual Active Bridge)コンバータである、請求項1に記載の充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車向け充電器として,種々の絶縁形単相AC/DCコンバータが検討されている。一般的には、電気自動車向け充電器として、力率改善(Power factor Correction(PFC))回路付きのダイオード整流器、直流リンク部の大容量コンデンサ、高周波絶縁形DC/DCコンバータからなる回路構成が用いられる。直流リンク部の大容量コンデンサは単相交流電源による電力の脈動を吸収するだけの容量が必要であり、このような回路構成では、小型化が困難であった。
【0003】
電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器として、特許文献1、非特許文献1には、Dual-Active-Bridge(DAB)コンバータに電力脈動吸収用のアクティブバッファを付加した充電器とその制御が開示されている。
【0004】
特許文献1、非特許文献1に開示された制御(不連続電流モード)では、DABコンバータのすべてのスイッチがオフになる期間(零電流期間)がある。このため、スイッチング回数が多く、スイッチング損失が大きくなる。また、この零電流期間では、すべてのスイッチがオフになるため、DABコンバータのインダクタLを流れる電流はゼロになるはずであるが、実際にはスイッチがオフになるタイミングにずれが生じ、このずれにより電流が残存し、DC/DCコンバータ120のインダクタLとスイッチS21~S28の寄生容量との間の共振が生じる。このため、零電流期間後のスイッチングがハードスイッチングとなり、スイッチング損失が生じる。
【0005】
そこで、非特許文献2、3には、零電流期間が存在しない制御(連続電流モード)が開示されている。連続電流モードでは、零電流期間がゼロになるように、交流電源から入力される交流電圧の一周期の間に、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングのスイッチング周波数fSWを変化させることにより、インダクタLの電流と電圧の振動を除去し、零電流期間後のハードスイッチングを避け、充電器を高効率に制御することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】米田昇平, 大沼喜也, 「アクティブバッファを有するDual Active Bridge AC-DCコンバータの検討」, 半導体電力変換研究会資料, 2021, SPC-21-003, pp. 13-18
【非特許文献2】米田昇平, 宅間春介, 大沼喜也, 「アクティブバッファを有するDual Active Bridge AC-DCコンバータの可変周波数制御の検討」, 2021年電気学会産業応用部門大会講演論文集, 2021, Vol. 1, No. 30, pp. 13-18
【非特許文献3】S. Komeda, S. Takuma and Y. Ohnuma, "A Variable Switching Frequency Control Method for a Dual-Active-Bridge Single-Phase AC-DC Converter with an Active Energy Buffer," 2022 International Power Electronics Conference (IPEC-Himeji 2022- ECCE Asia), 2022, pp. 1185-1190
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図6、7は、連続電流モードにおけるスイッチング周波数f
SWの変化を示す図である。
図6、7には、DC/DCコンバータ120の出力電力値が1kW、3kW、7kWであるときのスイッチング周波数f
SWの変化が示されている。
図6、7に示すように、連続電流モードでは、出力電力値が小さくなるにつれ、スイッチング周波数f
SWの最大値がかなり大きな値になる。このため、軽負荷時には、連続電流モードで充電器を動作させることができない。
【0009】
そこで、本発明は、電力の脈動を吸収することが可能な小型で高効率な充電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る一実施形態に係る充電器は、交流電源に接続するための2つの入力端子とカソード端子とアノード端子を有する整流器と、前記整流器のカソード端子に第1のラインを介して接続する第1の端子と、前記整流器のアノード端子に第2のラインを介して接続する第2の端子と、バッテリに接続するための2つの出力端子と、を有するDC/DCコンバータと、第1のダイオードと、第2のダイオードと、第3のダイオードと、インダクタと、コンデンサと、第1のスイッチと、第2のスイッチと、を有する電力脈動吸収回路と、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチと前記第2のスイッチのスイッチングを制御する制御部と、を有し、前記第1のダイオードは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記整流器の2つの入力端子の一方との間に接続され、前記第2のダイオードは、前記インダクタと前記整流器の2つの入力端子の他方との間に接続され、前記コンデンサと前記第1のスイッチは、前記第1のラインと前記第2のラインの間に、直列に接続され、前記コンデンサは、前記第2のライン側に配置され、前記第3のダイオードは、前記コンデンサと前記第1のスイッチを接続するラインと前記電力脈動吸収回路のインダクタとの間に接続され、前記第2のスイッチは、前記電力脈動吸収回路のインダクタと前記第3のダイオードを接続するラインと前記第2のラインとの間に接続され、前記制御部は、前記DC/DCコンバータの出力電力値が第1の電力値より小さいならば、前記交流電源から入力される交流電圧の一周期のすべての期間、不連続電流モードにより、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチを制御し、前記DC/DCコンバータの出力電力値が第2の電力値以上ならば、前記交流電圧の一周期のすべての期間、連続電流モードにより、前記DC/DCコンバータのスイッチと前記第1のスイッチを制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電力の脈動を吸収することが可能な小型で高効率な充電器を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る充電器100を示す図である。
【
図2】交流電源から出力される瞬時電力p
sとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力p
Cとの関係を示す図である。
【
図3】各モードにおける各スイッチの状態を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lとその等価方形波i
L′を示す図である(不連続電流モード)。
【
図5】本実施形態に係るDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lとその等価方形波i
L′を示す図である(連続電流モード)。
【
図6】電流指令値I
L′の値を最適化していないときのスイッチング周波数f
SWの一例を示す図である。
【
図7】電流指令値I
L′の値を最適化したときのスイッチング周波数f
SWの一例を示す図である。
【
図8】出力電力値Poutと効率との関係の一例を示す図である。
【
図9】スイッチング周波数f
SWの動作可能な周波数値の上限値fcと第1の周波数f
1との関係を説明する図である。
【
図10】連続電流モードと不連続電流モードの混合動作時におけるスイッチング周波数f
SWの変化の一例を示す図である。
【
図11】連続電流モードと不連続電流モードの混合動作時におけるスイッチング周波数f
SWの変化の一例を示す図である。
【
図12】出力電力値Poutと効率との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<充電器100>
図1は、本発明の一実施形態に係る充電器100を示す図である。充電器100は、整流器110と、DC/DCコンバータ120と、電力脈動吸収回路130と、制御部140と、を有する。充電器100は、単相交流電源200から入力された単相交流電圧v
Sを直流電圧V
dcに変換し、バッテリ300に出力する。
【0014】
整流器110は、DC/DCコンバータ120に接続されたカソード端子111、アノード端子112と、交流電源200に接続するための2つの入力端子113と、を有する。整流器110は、例えば、
図1に示すように、4つのダイオードから成るブリッジダイオード整流器であり、交流電源に接続した2つの入力端子113間から入力された交流電流を、直流電流に変換し、カソード端子111から出力する。整流器110は、
図1に示すように、インダクタLacとコンデンサCacを有するフィルタFを介して、交流電源200と接続されるようにしても良い。
【0015】
DC/DCコンバータ120は、例えば、DAB(Dual Active Bridge)コンバータである。DC/DCコンバータ120は、整流器110のカソード端子111に接続した第1の端子121と、整流器110のアノード端子112に接続した第2の端子122と、バッテリ300の正極に接続するための第3の端子123と、バッテリ300の負極に接続するための第4の端子124と、を有する。DC/DCコンバータ120は、変圧器Trと、変圧器Trを挟んで、入力端側(1次側)に4つのスイッチ、第1のスイッチS21、第2のスイッチS22、第3のスイッチS23、第4のスイッチS24を含むフルブリッジ回路を有し、出力側端側(2次側)に4つのスイッチ、第5のスイッチS25、第6のスイッチS26、第7のスイッチS27、第8のスイッチS28を含むフルブリッジ回路を有する。8つのスイッチS21~S28の各々は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETは、スナバコンデンサを有するようにしても良い。
【0016】
DC/DCコンバータ120の1次側のフルブリッジ回路は、第1の端子121と第2の端子122との間に接続された2つのレグ(第1のスイッチS21、第2のスイッチ22を含むレグと第3のスイッチS23、第4のスイッチS24を含むレグ)を有し、DC/DCコンバータ120の2次側のフルブリッジ回路は、第3の端子123と第4の端子124との間に接続された2つのレグ(第5のスイッチS25、第6のスイッチ26を含むレグと第7のスイッチS27、第8のスイッチS28を含むレグ)を有する。
【0017】
DC/DCコンバータ120は、変圧器Trの1次側にインダクタLを有する。このインダクタLは、例えば、変圧器Trの漏れインダクタである。
【0018】
また、DC/DCコンバータ120の第3の端子123と第4の端子124との間には、直流コンデンサCdcが接続されている。DC/DCコンバータ120の第3の端子123とバッテリ300の正極との間に、インダクタLdcを接続するようにしても良い。
【0019】
電力脈動吸収回路130は、第1のダイオードD31と、第2のダイオードD32と、第3のダイオードD33と、インダクタLb、バッファコンデンサCbufと、第1のスイッチS31と、第2のスイッチS32と、を有する。
【0020】
電力脈動吸収回路130の第1のダイオードD31は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の2つの入力端子113の一方との間に接続され、電力脈動吸収回路130の第2のダイオードD32は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の2つの入力端子113の他方との間に接続されている。このとき、電力脈動吸収回路130の第1のダイオードD31、第2のダイオードD32の各々は、整流器110の入力端子113からインダクタLbへの方向が順方向となるように、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと整流器110の入力端子113の間に接続されている。このため、整流器110の入力端子113に交流電源200が接続されたとしても、電力脈動吸収回路130のインダクタLbには、直流電流が入力される。
【0021】
電力脈動吸収回路130のバッファコンデンサCbufと第1のスイッチS31は、整流器110のカソード端子111とDC/DCコンバータ120の第1の端子121とを接続する第1のラインLHと、整流器110のアノード端子112とDC/DCコンバータ120の第2の端子122とを接続する第2のラインLLと、の間に、直列に接続されている。バッファコンデンサCbufは、第2のラインLL側に配置され、第1のスイッチ31は、第1のラインLH側に配置されている。第1のスイッチS31は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETのソースが、第1のラインLHに接続し、Nチャネル型パワーMOSFETのドレインがバッファコンデンサに接続するようにすると良い。
【0022】
電力脈動吸収回路130の第3のダイオードD33は、電力脈動吸収回路130のバッファコンデンサCbufと第1のスイッチS31とを接続するラインと電力脈動吸収回路130のインダクタLbとの間に、インダクタLbからこのラインへの方向が順方向になるように接続されている。
【0023】
電力脈動吸収回路130の第2のスイッチS32は、電力脈動吸収回路130のインダクタLbと第3のダイオードD33とを結ぶラインと、第2のラインLLと、の間に接続されている。第2のスイッチS32は、例えば、逆極性ダイオード(ボディダイオード)を備えたNチャネル型パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。このとき、Nチャネル型パワーMOSFETのドレインが電力脈動吸収回路130のインダクタLbと第3のダイオードD33とを結ぶラインに接続し、Nチャネル型パワーMOSFETのソースが第2のラインLLに接続するようにすると良い。
【0024】
制御部140は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31、S32のスイッチングを制御する。
【0025】
電力脈動吸収回路130は、第1のダイオードD31と、第2のダイオードD32と、第3のダイオードD33と、インダクタLb、バッファコンデンサCbufと、第2のスイッチS32と、を有しているため、力率改善回路(PFC)として機能することが可能である。このため、本実施形態では、下記のような正弦波電圧v
S、正弦波電流i
Sが、交流電源200から充電器100に、入力されるように制御することが可能である。
【数1】
ここで、V
Sは、電源電圧の実効値であり、I
Sは、電源電流の実効値である。
【0026】
このとき、交流電源200から出力される瞬時電力p
Sは、下記のように、平均電力P(=V
SI
S)と脈動部分p
rip(t)(=-V
SI
Scos2ω
St)の和となり、
図2の実線に示すように、平均電力P(
図2の破線)を挟んで、交流の角周波数ω
Sの2倍の角周波数で脈動する。
【数2】
【0027】
そこで、制御部140は、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31、S32のスイッチングを制御することで、電力脈動吸収回路130で交流電源による電力の脈動を吸収し、DC/DCコンバータ120に入力される電力を一定にする。
【0028】
このとき、本実施形態に係る充電器100では、交流電源200から出力される瞬時電力pSが平均電力Pよりも高いとき(ps>P)と、交流電源200から出力される瞬時電力pSが平均電力Pよりも低いとき(ps<P)と、で制御を変える。
【0029】
交流電源から出力される瞬時電力p
sが平均電力Pよりも高いとき(p
s>P)は、DC/DCコンバータ120の8つのスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の2つのスイッチS31、S32のスイッチングを制御することにより、交流電源200から出力される瞬時電力p
Sのうちの脈動部分p
ripを電力脈動吸収回路130のインダクタLbを介してバッファコンデンサCbufに充電することで、交流電源から出力された電力のうちの平均電力PのみがDC/DCコンバータ120に入力されるようにする。つまり、本実施形態では、交流電源から出力される瞬時電力p
Sが平均電力Pよりも高い期間は、バッファコンデンサCbufが充電される期間(充電期間)であり、バッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力p
Cは、
図2の一点鎖線に示すように、マイナスになる。
【0030】
一方、交流電源200から出力される瞬時電力p
sが平均電力Pよりも低いとき(p
s<P)は、電力脈動吸収回路130の第2のスイッチS32は、オフの状態に保ちつつ、DC/DCコンバータ120の8つのスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御することにより、バッファコンデンサCbufを第1のスイッチS31を介して積極的に放電し、交流電源200から出力される瞬時電力p
Sと平均電力Pの差である脈動部分p
ripを補償することで、平均電力PがDC/DCコンバータ120に入力されるようにする。つまり、本実施形態では、交流電源から出力される瞬時電力p
Sが平均電力Pよりも低い期間は、バッファコンデンサCbufが放電する期間(放電期間)であり、バッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力p
Cは、
図2の一点鎖線に示すように、プラスになる。
【0031】
つまり、本実施形態では、制御部140は、交流電源200から出力される瞬時電力pSとバッファコンデンサCbufから出力される瞬時電力pCとの和が一定になるように、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130のスイッチS31~32のスイッチングを制御する。
【0032】
このように、本実施形態では、放電期間において、積極的に、バッファコンデンサCbufを放電している。このため、本実施形態では、バッファコンデンサCbufに蓄えられる電力量(つまり、バッファコンデンサCbufの容量)を抑えることが可能であり、バッファコンデンサCbufの小型化が可能である。
【0033】
また、本実施形態では、第2のスイッチS32は、充電期間だけ作動する。このため、本実施形態では、インダクタLbに蓄えられる電力量(つまり、インダクタLbのインダクタンス)を抑えることが可能であり、インダクタLbの小型化が可能である。
【0034】
また、本実施形態では、DC/DCコンバータ120に入力される電力には脈動がない。このため、本実施形態では、DC/DCコンバータ120の変圧器Tr、直流コンデンサCdcの小型化が可能である。
【0035】
以上のように、本実施形態では、コンデンサやインダクタ、変圧器などの受動素子を小型化することが可能である。このため、本実施形態では、電力の脈動を吸収することが可能な小型の充電器を提供することが可能である。
【0036】
<スイッチングモードと動作波形>
制御部140は、DC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lが方形波形により近似可能な動作波形になるように、7つのモードにより、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御する。
図3は、7つのモードの各々における各スイッチの状態を示す図である。7つのモードには、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のすべてのスイッチがオフになるモード(モード5)が含まれている。
【0037】
図4は、本実施形態に係るDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lとその等価方形波i
L′を示す図である。この動作波形i
Lは、
図3に示す7つのモードを、モード1、モード2、モード3、モード4、モード5、モード4、モード6、モード7、モード1、モード5の順にスイッチングすることで得られる。このとき、7つのモードの各々における電流i
Lは、下記のようになる(特許文献1、非特許文献1)。
【数3】
ここで、t
cn(n=1~7)は、モードnに切り替えられた時間である。
【0038】
本実施形態では、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31がオンであるときにバッファコンデンサCbufをより積極的に放電するために、制御部140は、バッファコンデンサCbufにかかる電圧v
Cが整流器110から出力される瞬時電圧v
recよりも常に大きくなるように制御する。このため、本実施形態では、バッファコンデンサCbufにかかる電圧v
Cが整流器110の瞬時電圧v
recと異なる値を持っており、モード2とモード3での動作波形i
Lの傾きが異なる。同様に、モード6とモード7での動作波形i
Lの傾きが異なる。このため、本実施形態では、
図4に示されているように、正での波形と負での波形がi
L=0に対して非対称である動作波形を生成することができる。
【0039】
図4に示した動作波形i
Lにおいて、|t
0-t
1|=|t
5-t
6|、|t
1-t
2|=|t
7-t
8|、|t
2-t
3|=|t
6-t
7|、|t
3-t
4|=|t
8-t
9|となるようにt
0~t
10を設定し、|t
0-t
1|=|t
S1-t
4|=|t
S2-t
9|となるように、t
3とt
4の間にt
S1を、t
8とt
9の間にt
S2を設定すると、動作波形i
Lは、等価方形波形i
L′により近似することができる。
【数4】
【0040】
等価方形波形i
L′のt
0≦t<t
1、t
S1≦t<t
4、t
5≦t<t
6、t
S2≦t<t
9の期間を無効電流期間T
qと定義し、t
1≦t<t
2、t
7≦t<t
8の期間をバッファコンデンサ放電電流期間T
Cと定義し、t
2≦t<t
3、t
6≦t<t
7の期間を電源電流期間T
recと定義し、t
3≦t<t
S1、t
8≦t<t
S2の期間を電流バランス期間T
bと定義し、t
4≦t<t
5、t
9≦t<t
10の期間を零電流期間T
0と定義すると、スイッチング周期T
SWおける各期間のデューティー比は、下記のようになる。
【数5】
指令値として、i
rec、i
C、v
C、V
dc、I
L′を与えることにより、各期間のデューティー比を得ることができる。この得られた各期間のデューティー比を用いることで、
図4の動作波形i
Lに対する制御則を求めることができる。この指令値のうち、i
recおよびi
Cの指令値i
rec
*、i
C
*は、次のように、放電期間と充電期間で切り替え、電力脈動吸収回路130を、PFC回路として機能させ、かつ、電力の脈動を吸収する回路として機能させる。
【数6】
【0041】
<不連続電流モードと連続電流モード>
図4に示した動作波形は、スイッチング周波数f
SWを変化させず、一定のスイッチング周波数f
SWで、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31をスイッチングすることで得られる。
図4に示した動作波形は、リアクトルLに流れる電流i
Lがゼロになる零電流期間T
0を含んでおり、
図4に示すように、モード1、モード2、モード3、モード4、モード5、モード4、モード6、モード7、モード1、モード5の順にスイッチングする動作は、不連続電流モード(DCM)である。
【0042】
零電流期間T0は、モード5であり、DC/DCコンバータ120のすべてのスイッチS21~S28がオフになる期間である。しかしながら、実際にはスイッチがオフになるタイミングにずれが生じ、このずれにより電流が残存し、DC/DCコンバータ120のインダクタLとスイッチS21~S28の寄生容量との間の共振が生じる。このため、不連続電流モードでは、零電流期間T0後のスイッチング(モード5からモード4に切り替わる際のスイッチング、モード5からモード1に切り替わる際のスイッチング)がハードスイッチングとなり、スイッチング損失が生じる。
【0043】
そこで、零電流期間T0がゼロになるように、つまり、連続電流モード(CCM)の動作になるように、交流電源200から入力される交流電圧vSの一周期の間に、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチング周波数fSWを変化させると良い(非特許文献2、3)。このようにすることで、インダクタLの電流iLと電圧VLの振動を除去し、零電流期間T0後のハードスイッチングを避けることが可能であり、連続電流モードでは、充電器100を高効率に制御することが可能である。
【0044】
上記の式(2)をD
0=0として解くことにより、零電流期間T
0をゼロにするスイッチング周波数f
SW、つまり、連続電流モードでのスイッチング周波数f
SWは、次のように求まる。
【数7】
【0045】
図5は、連続電流モードでのDC/DCコンバータ120のインダクタLの動作波形i
Lとその等価方形波i
L′を示す図である。連続電流モードでは、モード5での動作が無くなるため、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31がモード1、モード2、モード3、モード4、モード6、モード7、モード1の順にスイッチングされる。
【0046】
等価方形波i
L′の波高値I
L′の指令値を最適化することで、充電器100をより高効率で動作させることが可能である(非特許文献2、3)。例えば、交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが45度であるときのスイッチング周波数f
SW(上記式(3))が所定の値(第1の周波数値)f
1になるように等価方形波形i
L′の波高値I
L′の指令値を制御することで、充電器100をより高効率で動作することが可能である。このとき、等価方形波形i
L′の波高値I
L′の指令値I
L′
*は、下記のようになる。
【数8】
ここで、V
Cminは、バッファコンデンサCbufにかかる電圧の最小値である。
【0047】
図6、7は、連続電流モードにおけるスイッチング周波数f
SWの変化の一例を示す図である。
図6は、電流指令値I
L′の値を最適化していないときのスイッチング周波数f
SWの一例を示す図であり、
図7は、電流指令値I
L′の値を最適化したときのスイッチング周波数f
SWの一例を示す図である。
図6、7には、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutが1kW、3kW、7kWであるときのスイッチング周波数f
SWの変化の一例が示されている。
【0048】
図6、7に示すように、連続電流モードでは、出力電力値Poutが小さくなるにつれ、スイッチング周波数f
SWの最大値がかなり大きな値になる。特に、電流指令値I
L′の値を最適化したときのスイッチング周波数f
SWの最大値は、出力電力値Poutが小さくなるにつれ、急上昇する。このため、軽負荷時には、連続電流モードにより充電器100を動作させることができない。
【0049】
そこで、本実施形態では、制御部140は、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutが第1の電力値PO1より小さいならば、交流電源200から入力される交流電圧vSの一周期の間のすべての期間、不連続電流モードにより、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31を制御し、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutが第2の電力値PO2以上ならば、交流電源200から入力される交流電圧vSの一周期の間のすべての期間、連続電流モードにより、DC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31を制御する。
【0050】
このとき、第2の電力値PO2は、例えば、交流電圧vsの一周期のすべての期間を連続電流モードによりスイッチングしたときのスイッチング周波数fSWの最大値がスイッチング周波数fSWの動作可能な周波数値の上限値fc以下になるように設定する。
【0051】
また、第1の電力値P
O1は、例えば、第2の電力値P
O2と同じであっても良い。上述したように、不連続電流モードによりスイッチングしたときの効率は、連続電流モードによりスイッチングしたときの効率より悪く、第1の電力値P
O1と第2の電力値P
O2が同じである場合、
図8に示すように、不連続電流モードによりスイッチングしたときの効率と、連続電流モードによりスイッチングしたときの効率に乖離が生じる。
【0052】
<連続電流モードと不連続電流モードの混合動作>
上述したように、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutが小さくなるにつて、スイッチング周波数fSWの最大値が上昇する。このため、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutによっては、スイッチング周波数fSWの最大値が動作可能でない値になってしまい、連続電流モードを用いることができない。
【0053】
しかしながら、電流指令値I
L′の値を最適化した場合、第1の周波数値f
1をスイッチング周波数f
SWの動作可能な周波数値の上限値fcより小さい値に設定することで、交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが45度であるタイミング付近では、
図9に示すように、スイッチング周波数f
SWが動作可能な値となる。つまり、電流指令値I
L′の値を最適化した場合、スイッチング周波数f
SWの動作可能な周波数値の上限値fcより第1の周波数値f
1が小さい値であるならば、電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチング周波数f
SWの最大値がスイッチング周波数f
SWの動作可能な周波数値の上限値fcより大きい値となる場合であっても、交流電源200から入力される交流電圧v
Sの一周期のうちに、スイッチング周波数f
SWが動作可能な値となる期間が存在する。
【0054】
そこで、第1の周波数値f1を、スイッチング周波数fSWの動作可能な周波数値の上限値fcより小さい値にすると良い。そして、第1の電力値PO1を、第2の電力値PO2と異なる電力値とし、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutが第1の電力値PO1以上であり、かつ第2の電力値PO2より小さい範囲において、連続電流モードと不連続電流モードを混合した動作(混合動作)により充電器100を動作させるようにすると良い。
【0055】
例えば、制御部140は、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutが第1の電力値PO1以上であり、かつ第2の電力値PO2より小さいならば、交流電源200から入力される交流電圧vSの一周期のうちの第1の期間TCCMに連続電流モードによりDC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御し、交流電圧vSの一周期のうちの第1の期間TCCM以外の期間(第2の期間TDCM)に不連続電流モードによりDC/DCコンバータ120のスイッチS21~S28と電力脈動吸収回路130の第1のスイッチS31のスイッチングを制御するようにすると良い。
【0056】
このようにすることで、交流電圧vsの一周期のすべてを連続電流モードで動作させることができない出力電力値の際にも、交流電圧vSの一周期のうちの一部の期間において、連続電流モードにより動作させることが可能になる。結果、軽~中負荷時での効率を向上することが可能になる。
【0057】
このとき、制御部140は、
図10に示すように、スイッチング周波数f
SWの最大値が第1の周波数値f
1より大きい第2の周波数値f
2以下になるように、第1の期間T
CCMを設定すると良い。第2の周波数値f
2は、スイッチング周波数f
SWの動作可能な周波数値の上限値fc以下の値であり、適宜設定する。
【0058】
第2の期間T
DCMのスイッチング周波数f
SWは、
図10に示したように、第1の周波数値f
1であっても良いし、
図11に示したように、第2の周波数値f
2であっても良い。
図11において、スイッチング周波数f
SWの最大値は、第2の周波数f
2である。第2の期間T
DCMのスイッチング周波数f
SWを第2の周波数値f
2にした場合、第2の期間T
DCMのスイッチング周波数f
SWを第1の周波数値f
1にした場合に比べ、スムーズな動作となる。しかしながら、不連続電流モードはハードスイッチング動作を含んでいる。ハードスイッチング動作による損失は、スイッチング周波数f
SWが大きくなるにつれて大きくなる。このため、第2の期間T
DCMのスイッチング周波数f
SWを第1の周波数値f
1にした場合の方が、第2の期間T
DCMのスイッチング周波数f
SWを第2の周波数値f
2にした場合より効率が良い。
【0059】
また、
図10、11に示すように、第1の期間T
CCMは、交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが90度になるタイミングを含むようにすると良い。電流指令値I
L′の値を最適化した連続電流モードでは、
図7に示すように、交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが90度になるタイミングで、スイッチング周波数f
SWの変化率がゼロになり、スイッチング周波数f
SWは局所的な極大値となり、交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが45度になるタイミングと交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが135度になるタイミングとで、スイッチング周波数f
SWは局所的な極小値となる。このため、第1の期間T
CCMが交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが90度になるタイミングを含むようにした場合、第1の期間T
CCMが長くなる。つまり、連続電流モードで動作する期間が、より長くなり、より効率が良くなる。
【0060】
交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが90度になるタイミングでのスイッチング周波数f
SWの値は、
図7に示すように、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutが小さくなるにつれ、大きくなる。つまり、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutがある値より小さくなると、交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが90度になるタイミングでのスイッチング周波数f
SWの値は、第2の周波数値f
2より大きくなる。そこで、例えば、第1の電力値P
O1は、第1の期間T
CCMが交流電源電圧v
Sの位相ω
Stが90度になるタイミングを含むように設定すると良い。つまり、第1の電力値P
O1は、スイッチング周波数f
SWの変化率がゼロになるタイミングのスイッチング周波数f
SWが第2の周波数値f
2以下になるように設定すると良い。特に、第1の電力値P
O1は、混合動作モードにおいてスイッチング周波数f
SWの変化率がゼロになるタイミングのスイッチング周波数f
SWが第2の周波数値f
2であるときの出力電力値にすると良い。このようにすることで、混合動作によりスイッチングされる出力電力値Poutの範囲がより広くなる。結果、より高効率に充電器100を動作させることが可能になる。
【0061】
また、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutが交流電圧vSの一周期のすべての期間を連続電流モードによりスイッチングしたときのスイッチング周波数fSWの最大値が第2の周波数値f2以下になる出力電力値である場合、交流電圧の一周期のすべてを連続電流モードによりDC/DCコンバータ120を動作させることが可能である。このため、第2の周波数値PO2は、第2の周波数値f2に基づいて設定することも可能である。そこで、例えば、第2の電力値PO2は、交流電圧vsの一周期のすべての期間を連続電流モードによりスイッチングを変化させたときのスイッチング周波数fSWの最大値が第2の周波数値f2以下になるように設定すると良い。特に、第2の電力値PO2は、第2の動作モードにおいて交流電圧vsの一周期のすべての期間を連続電流モードによりスイッチングを変化させたときのスイッチング周波数fSWの最大値が第2の周波数値f2であるときの出力電力値にすると良い。このようにすることで、連続電流モードのみでスイッチングされる出力電力値Poutの範囲がより広くなる。結果、より高効率に充電器100を動作させることが可能になる。
【0062】
図12は、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutが第1の電力値P
O1以上であり、かつ第2の電力値P
O2より小さい範囲において、連続電流モードと不連続電流モードを混合した動作(混合動作)により充電器100を動作させたときの効率の一例を示す図である。
図12に示すように、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutが第1の電力値P
O1以上であり、かつ第2の電力値P
O2より小さい範囲において、混合動作モードにより充電器100を動作させた場合、
図8に示した例に比べ、DC/DCコンバータ120の出力電力値Poutが小さい範囲における効率が向上し、効率の変化が連続的になる。
【0063】
上記では、本発明を、降圧動作時を例として説明したが、本実施形態に係る充電器100は、昇圧動作も可能である(S. Komeda, S. Takuma and Y. Ohnuma, "Boost Operation of a Dual-Active-Bridge AC-DC Converter with an Active Energy Buffer," 2022 IEEE Energy Conversion Congress and Exposition (ECCE), Detroit, MI, USA, 2022, pp. 1-6, doi: 10.1109/ECCE50734.2022.9948064.)。昇圧動作時であっても、DC/DCコンバータの出力電力値が小さくなるにつれて、スイッチング周波数の最大値が上昇する。よって、上記で説明した本発明は、昇圧動作時であっても適用することが可能である。
【0064】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に記載した本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【符号の説明】
【0065】
100 充電器
110 整流器
120 DC/DCコンバータ
S21~S28 DC/DCコンバータのスイッチ
130 電力脈動吸収回路
D31 第1のダイオード
D32 第2のダイオード
D33 第3のダイオード
Lb インダクタ
Cbuf バッファコンデンサ
S31 第1のスイッチ
S32 第2のスイッチ
200 交流電源
300 バッテリ