(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121199
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20240830BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20240830BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20240830BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240830BHJP
C04B 7/38 20060101ALI20240830BHJP
C04B 7/60 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B09B5/00 Z
B09B3/70 ZAB
C08L27/06
C08K3/26
C04B7/38
C04B7/60
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028162
(22)【出願日】2023-02-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度~令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電技術推進事業/カーボンリサイクル技術の共通基盤技術開発/カルシウム含有廃棄物からのCa抽出およびCO2鉱物固定化技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】門野 壮
【テーマコード(参考)】
4D004
4J002
【Fターム(参考)】
4D004AA16
4D004AA50
4D004AC05
4D004BA07
4D004CA10
4D004CA12
4D004CB50
4D004DA02
4D004DA20
4J002BD031
4J002DE236
4J002FD016
(57)【要約】 (修正有)
【課題】セメント製造プロセスからの廃棄物を循環させて有効利用する方法及び該方法の実施のための有用なシステムの提供。
【解決手段】セメント製造工程からの塩素バイパスダストを水洗して得られた塩化カリウムを含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成し、塩酸水の一部をカルシウム含有廃棄物に添加してCaイオンを含む水溶液を生成し、Caイオンを含有する水溶液のpHを調整して不純物を分離し、電気透析処理により得られた水酸化カリウムを含む水溶液にセメント製造工程からの二酸化炭素を接触させて炭酸カリウムを含む水溶液を生成し、分離工程を経たCaイオンを含む水溶液と炭酸カリウムとを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成し、電気透析により得られた塩酸水の一部や生成した炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂等の調製に利用する、セメント製造プロセスからの廃棄物の再利用循環方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法であって、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析工程と、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解工程と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離工程と、
上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを含む水溶液にセメント製造プロセスから排出される二酸化炭素を接触させて炭酸カリウムを含む水溶液を生成する炭酸カリウム生成工程と、
前記分離工程を経たカルシウムイオンを含む水溶液と、前記炭酸カリウムとを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収工程とを備え、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収工程で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用することを特徴とする、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法。
【請求項2】
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法であって、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析工程と、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解工程と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離工程と、
前記分離工程を経たカルシウムイオンを含む水溶液のpHを、上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを用いて調整するpH調整工程と、
前記pH調整工程を経てpH調整されたカルシウムイオンを含む水溶液と、セメント製造プロセスから排出される二酸化炭素とを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収工程とを備え、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収工程で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用することを特徴とする、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法において、炭酸カルシウム生成・回収工程により得られた塩化カリウムを含む水溶液を、前記電気透析処理工程において電気透析処理するか、又は、前記セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストの水洗処理に用いることを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法において、前記塩化ビニル樹脂を調製する際に発生した廃棄物を、上記セメント製造プロセスにおける原燃料代替物として利用することを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法において、該カルシウム含有廃棄物には、セメント製造設備の脱塩バイパス部分から得られる脱塩ダストを含むことを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法。
【請求項6】
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムであって、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析手段と、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解抽出手段と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離手段と、
上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを含む水溶液にセメント製造プロセスから排出される二酸化炭素を接触させて炭酸カリウムを含む水溶液を生成する炭酸カリウム生成手段と、
前記分離手段を経たカルシウムイオンを含む水溶液と、前記炭酸カリウムとを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収手段とを備え、
前記電気透析処理手段で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収手段で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用することを特徴とする、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システム。
【請求項7】
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムであって、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析手段と、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解抽出手段と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離手段と、
前記分離手段を経たカルシウムイオンを含む水溶液のpHを、上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを用いて調整するpH調整手段と、
前記pH調整手段を経てpH調整されたカルシウムイオンを含む水溶液と、セメント製造プロセスから排出される二酸化炭素とを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収手段とを備え、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収手段で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用することを特徴とする、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システム。
【請求項8】
請求項6又は7記載のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムにおいて、炭酸カルシウム生成・回収手段により得られた塩化カリウムを含む水溶液を、前記電気透析処理手段において電気透析処理するか、又は、前記セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストの水洗処理に用いることを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システム。
【請求項9】
請求項6又は7記載のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムにおいて、前記塩化ビニル樹脂を調製する際に発生した廃棄物を、上記セメント製造プロセスにおける原燃料代替物として利用することを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システム。
【請求項10】
請求項6又は7記載のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムにおいて、該カルシウム含有廃棄物には、セメント製造設備の脱塩バイパス部分から得られる脱塩ダストを含むことを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法及びそのシステムに関し、特にセメント製造プロセスから生じる廃棄物から炭酸カルシウムを生成することができる当該廃棄物の再利用循環方法及び当該方法を有効に実施できるシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウムは、プラスチック、紙、塗料などの充填材、また農薬・肥料などの土壌改良剤、食品添加物や化粧品原料など、幅広い産業分野で利用されている。
炭酸カルシウムは、水酸化カルシウム水溶液に二酸化炭素を吹き込むことで合成したり、塩化カルシウム等のカルシウムイオンを含む水溶液と炭酸ナトリウム水溶液を混合させることで合成される。
【0003】
近年では、特許文献1に示すように、温室効果ガスである二酸化炭素を削減するため、二酸化炭素を固定化するプロセスの中で炭酸カルシウムを生成する場合がある。特許文献1では、大量のカルシウム等を供給するため、廃コンクリートや鉄鋼スラグ等の廃材や岩石などカルシウム含有廃棄物が利用されている。
【0004】
また、特許文献1では、カルシウム含有廃棄物からカルシウムを溶解させる方法として硝酸が利用されるが、この段階でカルシウムのみが溶出されるだけでなくマグネシウムなどの他の元素も水溶液中に溶解する。更に、特許文献1では、硝酸カルシウムや硝酸マグネシウムなどを含む水溶液に、水酸化ナトリウムと二酸化炭素とを接触して生成される炭酸ナトリウムの水溶液を導入し、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムを析出させている。
【0005】
また、特許文献1では、硝酸や水酸化ナトリウムの生成には、炭酸カルシウム等の析出工程で発生する硝酸ナトリウムを利用し、この硝酸ナトリウムをバイポーラ膜電気透析処理を行うことも開示されている。
【0006】
しかしながら、カルシウム含有廃棄物を用いる場合には、廃棄物自体がカルシウム以外の多くの不純物を含んでおり、生成する炭酸カルシウム自体の純度が低くなるという課題がある。
【0007】
また、塩化ビニル製品には、塩素の他に、増量材として炭酸カルシウムが利用されており、プラスチック、例えば塩化ビニル製品を製造する際の充填材として、高い純度の炭酸カルシウムの生産が求められていた。
【0008】
一方、セメント製造プロセスにおいては、カルシウム含有廃棄物、塩素バイパスダスト等の廃棄物や二酸化炭素の排ガスが発生する。
近年の地球環境的な環境負荷低減を図るためには、セメント製造プロセスから排出される廃棄物を有効に再利用することが望まれており、更に、二酸化炭素の大気中への放出量を低減して、地球温暖化を抑制することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、セメント製造プロセスから排出されるカルシウム含有廃棄物や二酸化炭素を利用して、炭酸カルシウムを生成するとともに、該炭酸カルシウムを調製する際に生成される塩酸をも有効利用して塩化ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂製品の原料や充填材として利用する、セメント製造プロセスから排出される廃棄物を循環させて有効利用する方法及び該方法を実施するための有用なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法及びそのシステムは、以下の技術的特徴を有する。
(1)セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法であって、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析工程と、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解工程と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離工程と、
上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを含む水溶液にセメント製造プロセスから排出される二酸化炭素を接触させて炭酸カリウムを含む水溶液を生成する炭酸カリウム生成工程と、
前記分離工程を経たカルシウムイオンを含む水溶液と、前記炭酸カリウムとを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収工程とを備え、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収工程で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用することを特徴とする、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法である。
【0012】
(2)セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法であって、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析工程と、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解工程と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離工程と、
前記分離工程を経たカルシウムイオンを含む水溶液のpHを、上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを用いて調整するpH調整工程と、
前記pH調整工程を経てpH調整されたカルシウムイオンを含む水溶液と、セメント製造プロセスから排出される二酸化炭素とを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収工程とを備え、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収工程で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用することを特徴とする、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法である。
【0013】
(3)好ましくは、上記(1)又は(2)のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法において、炭酸カルシウム生成・回収工程により得られた塩化カリウムを含む水溶液を、前記電気透析処理工程において電気透析処理するか、又は、前記セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストの水洗処理に用いることを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法である。
【0014】
(4)更に好ましくは、上記(1)又は(2)のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法において、前記塩化ビニル樹脂を調製する際に発生した廃棄物を、上記セメント製造プロセスにおける原燃料代替物として利用することを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法である。
【0015】
(5)好ましくは、上記(1)又は(2)のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法において、該カルシウム含有廃棄物には、セメント製造設備の脱塩バイパス部分から得られる脱塩ダストを含むことを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法である。
【0016】
(6)本発明の他のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法を実施する有効なシステムは、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析手段と、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解抽出手段と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離手段と、
上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを含む水溶液にセメント製造プロセスから排出される二酸化炭素を接触させて炭酸カリウムを含む水溶液を生成する炭酸カリウム生成手段と、
前記分離手段を経たカルシウムイオンを含む水溶液と、前記炭酸カリウムとを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収手段とを備え、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収手段で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用することを特徴とする、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムである。
【0017】
(7)本発明の他のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法を実施する有効なシステムは、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析手段と、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解抽出手段と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離手段と、
前記分離手段を経たカルシウムイオンを含む水溶液のpHを、上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを用いて調整するpH調整手段と、
前記pH調整手段を経てpH調整されたカルシウムイオンを含む水溶液と、セメント製造プロセスから排出される二酸化炭素とを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収手段とを備え、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収手段で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用することを特徴とする、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムである。
【0018】
(8)好ましくは、上記(6)又は(7)のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムにおいて、炭酸カルシウム生成・回収手段により得られた塩化カリウムを含む水溶液を、前記電気透析処理手段において電気透析処理するか、又は、前記セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストの水洗処理に用いることを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムである。
【0019】
(9)より好ましくは、上記(6)又は(7)のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムにおいて、前記塩化ビニル樹脂を調製する際に発生した廃棄物を、上記セメント製造プロセスにおける原燃料代替物として利用することを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムである。
【0020】
(10)好ましくは、上記(6)又は(7)のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムにおいて、該カルシウム含有廃棄物には、セメント製造設備の脱塩バイパス部分から得られる脱塩ダストを含むことを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法及びそのシステムは、セメント製造設備から排出される廃棄物である二酸化炭素とカルシウム含有廃棄物とを利用して炭酸カルシウムを生成することができ、二酸化炭素の大気への放出量及び廃棄物量を低減することが可能となり、塩素、カルシウム、二酸化炭素が循環利用されることが可能となるため、環境負荷の低減を図ることが可能となる。
また、得られた炭酸カルシウム及び、本発明による方法で炭酸カルシウムを調製する工程及びその手段で生成される塩酸を、塩化ビニル樹脂の原料として、また塩化ビニル樹脂製品の充填材として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法の一例の概要図である。
【
図2】本発明の他のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法の一例の概要図である。
【
図3】本発明の他のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法の一例の概要図である。
【
図4】本発明の他のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法の一例の概要図である。
【
図5】一般ごみ焼却施設Aで採取したフライアッシュ(FA1)におけるCa抽出率の時間変化を示すグラフである。
【
図6】FA1におけるK抽出率の時間変化を示すグラフである。
【
図7】FA1におけるCr抽出率の時間変化を示すグラフである。
【
図8】FA1におけるPb抽出率の時間変化を示すグラフである。
【
図9】FA1におけるSi抽出率の時間変化を示すグラフである。
【
図10】FA1におけるAl抽出率の時間変化を示すグラフである。
【
図11】FA1におけるMg抽出率の時間変化を示すグラフである。
【
図12】一般ごみ焼却施設Bで採取したフライアッシュ(FA2)におけるCa抽出率の時間変化を示すグラフである。
【
図13】生コン工場Aの排水工程で採取した生コンスラッジ(CS1)におけるCa抽出率の時間変化を示すグラフである。
【
図14】生コン工場Bの排水工程で採取した生コンスラッジ(CS2)におけるCa抽出率の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法及びそのシステムについて、図面を参照しながら、好適例を用いて詳細に説明する。
以下、方法(システム)は、方法やその方法を実施するシステムを意味し、工程(手段)は、工程やその工程を実施する手段を意味する。
【0024】
図1及び
図2の本発明のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法(再利用循環システム)を説明する。
図1又は
図2に示す、本発明のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法は、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析工程と、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解抽出工程と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離工程と、
上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを含む水溶液にセメント製造プロセスから排出される二酸化炭素を接触させて炭酸カリウムを含む水溶液を生成する炭酸カリウム生成工程と、
前記分離工程を経たカルシウムイオンを含む水溶液と、前記炭酸カリウムとを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収工程とを備え、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収工程で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用する、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法である。
【0025】
また、上記本発明のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法を実施する有効なシステムは、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析手段と、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解抽出手段と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離手段と、
上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを含む水溶液にセメント製造プロセスから排出される二酸化炭素を接触させて炭酸カリウムを含む水溶液を生成する炭酸カリウム生成手段と、
前記分離手段を経たカルシウムイオンを含む水溶液と、前記炭酸カリウムとを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収手段とを備え、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収手段で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用する、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムである。
【0026】
具体的に好適例をあげて、以下に説明する。
セメント製造プロセスから排出される廃棄物である塩素バイパスダストを水洗して塩化カリウムを含む水溶液を生成する。水洗いした脱塩ダストは脱水し、脱水ケーキをセメント原料としてセメント製造プロセスに戻すことも可能である。
また好ましくは、次いで、塩化カリウムを含む水溶液に含まれる不純物などを除去する前処理を施すことも必要に応じて可能である。
【0027】
塩素バイパスダストを水洗して得られた塩化カリウムを含む水溶液及び、必要に応じて前処理を施した後の塩化カリウムを含む水溶液は、下記する電気透析工程(電気透析手段)に導入されるが、好ましくは必要に応じて塩化カリウムを含む水溶液の一部を、後述する塩化ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂製品の製造に用いることも可能である。例えば、一例として、塩化カリウムを含む水溶液を、公知の任意の方法で電気分解等することにより塩素を生成させて、塩化ビニル樹脂又は塩化ビニル樹脂製品の製造に使用する。
【0028】
また、
図1においては、後述する炭酸カルシウム生成・回収工程(炭酸カルシウム生成・手段)(
図1及び
図2で「Ca生成回収」と表示)で生成される塩化カリウムを含む水溶液を循環させて、上記塩素バイパスダストを水洗して得られた塩化カリウム水溶液と合流させて得られた塩化カリウムを含む水溶液を、電気透析工程(電気透析手段)、例えばバイポーラ膜電気透析(BMED)処理(BMED処理手段)して、水酸化カリウムと塩酸を生成する(
図1)。
【0029】
また、
図2においては、後述する炭酸カルシウム生成・回収工程(炭酸カルシウム生成・手段)で生成される塩化カリウムを含む水溶液を循環させて、上記塩素バイパスダストを水洗する水溶液として用いる。この場合、後述する炭酸カルシウム生成・回収工程(炭酸カルシウム生成・回収手段)で生成される塩化カリウムを含む水溶液を水洗液全量として用いても、工業用水と合流させて、塩素バイパスダストを水洗する水洗液として用いてもよい。塩素バイパスダストを水洗して得られた塩化カリウム水溶液を、電気透析工程(電気透析手段)、例えばバイポーラ膜電気透析(BMED)処理(BMED処理手段)して、水酸化カリウムと塩酸を生成する(
図2)。
【0030】
好ましくは、後述する炭酸カルシウム生成・回収工程(炭酸カルシウム生成・回収手段)で発生して循環利用する塩化カリウムは、必要に応じて、MF膜(ろ過膜)により微粒子を除去し、RO膜(逆浸透膜)により水溶液を濃縮するなどの前処理を施されることも可能である(図示せず)。
【0031】
次いで、塩化カリウム水溶液を電気透析工程(電気透析手段)、例えばバイポーラ膜電気透析(BMED)工程(電気透析手段)に導入して、塩酸水と水酸化カリウム及を含む水溶液とを生成させる。例えば、バイポーラ膜電気透析(BMED)は電気で動作し塩化カリウムの濃度が高くなるに従い、BMEDでの電流効率が向上し、省電力化にも寄与するものである。
【0032】
次いで、前記電気透析工程(電気透析手段)で得られた塩酸水の一部を、カルシウム溶解抽出工程(カルシウム溶解抽出手段)に導入する。かかる工程(手段)においては、当該塩酸水をカルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成させる。
【0033】
使用可能なカルシウム含有廃棄物としては、一般ごみや産廃ごみなどの焼却灰、火力発電所等から排出されるフライアッシュ、スラグ、廃コンクリート、生コンスラッジ等などを例示することができるが、特に、セメント製造設備から排出されるカルシウム含有廃棄物を本発明において利用する。
【0034】
セメント製造プロセス(セメント製造設備)の脱塩バイパス部分から排出される脱塩ダストは、塩化カリウム成分を含有しており、カルシウム溶解抽出工程(カルシウム溶解抽出手段)で利用することができるため、本発明で好適に用いることが可能である。
また、カルシウム含有廃棄物にはナトリウムを含む場合もあるため、
図1又は2のように循環利用を続けると、Naイオン濃度が上昇することとなる。このため、Naイオン濃度を一定となるように、後述するカルシウム生成・回収工程(カルシウム生成・回収手段)から電気透析に至る経路の途中でブロー排水を行うことが望ましい。一方、このブロー排水は、塩化カリウムも排出することとなるため、本発明の方法(本発明のシステム)における塩化カリウム(KCl)が不足することとなる場合がある。これを補うには、塩化カリウムを含む脱塩ダストをCa含有廃棄物として利用することがより効果的である。
【0035】
カルシウム含有廃棄物は、粒度を好ましくは1000μm以下、より好ましくは100~500μmの範囲に調整されることが望ましい。これにより、カルシウムを抽出し易くすることが可能となる。
【0036】
カルシウム溶解抽出工程(カルシウム溶解抽出手段)では、粒度調整したカルシウム含有廃棄物に塩酸水を添加して、カルシウムを溶解させてカルシウムイオンを含む水溶液を生成する。好ましくは、水素イオン濃度指数をpH0.5~5の範囲になるようにすることが望ましい。
かかる塩酸水は、後述する電気透析工程(電気透析手段)を経て得られた塩酸水の一部を利用する。
この際に、必要に応じて洗浄水を添加してもよい。洗浄は、固液分離の際、固形分に含まれる液体を清水と置換するために実施されるものである。
【0037】
カルシウム含有廃棄物からのカルシウム抽出に要する反応時間としては、120分以下、より好ましくは30~60分の範囲である。また、多段階で、特に多段向流で溶解抽出を行うことも可能である。
カルシウムを抽出する際の塩酸を含む水溶液の温度は、常温以上が好ましく、より好ましくは20~70℃の範囲である。電気透析、例えばバイポーラ膜電気透析(BMED)での処理で利用する膜が有機膜であるため、前記水溶液の温度は、当該膜の耐熱温度も考慮して設定されることが望ましい。
【0038】
カルシウム溶解抽出工程(カルシウム溶解抽出手段)で、残渣とカルシウムイオン含有水溶液とに分離し、当該残渣は、例えば、セメント製造設備において、セメント原料として使用することが可能である。
【0039】
次いで、カルシウム溶解抽出工程(カルシウム溶解抽出手段)で得られたカルシウムイオンを含有する水溶液を分離工程(分離手段)に導入する。当該カルシウムイオンを含有する水溶液は、カルシウム以外の不純物イオンを含んでおり、かかる分離工程(分離手段)では、水素イオン濃度指数を調整することで、不純物イオンを分離する。
【0040】
具体的には、まずカルシウム溶解抽出工程(カルシウム溶解抽出手段)から得られたカルシウムイオンを含有する水溶液のpHを、例えば、pH5~6に、水酸化カリウムを用いて調整することで、カルシウムイオンを含有する水溶液中に含まれるSiやAlイオンを、ゲルとして除去することが可能である。また、必要に応じて、清水等の洗浄水を添加して、固形分を洗浄することも可能である。これらのゲルはセメント原料として利用することができる。
【0041】
更に、SiやAlイオンを除去した後のカルシウムイオン含有水溶液のpHを、例えばpH7~10に、水酸化カリウムを用いて調整することで、PbやCrイオンなどの重金属を分離することができる。また、必要に応じて、清水等の洗浄水を添加することも可能であり、かかる洗浄により、固形分を洗浄する。
なお、重金属を除去する前に、必要に応じて、カルシウムイオン含有水溶液に凝集剤を添加することも可能である。例えば、高分子凝集剤または無機凝集剤があげられる。無機凝集剤としては、ポリ硫酸第二鉄、等の鉄塩、または硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、等のアルミ塩がある。高分子凝集剤としては、アニオン、ノニオン、カチオン性等のpHおよび粒子性状により適したものを用いればよく、ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸ソーダ系、ポリアクリル酸エステル系等がある。
【0042】
更に、前記重金属イオンが除去されたカルシウムイオン含有水溶液のpHを11~12に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いて調整することで、含有されるMgイオンを、ゲルとして除去することが可能となる。また、必要に応じて、清水等の洗浄水を添加することも可能であり、かかる洗浄により、固形分を洗浄する。
得られたマグネシウム含有ゲルは、水酸化マグネシウム難燃剤として利用することも可能である。
【0043】
上記分離工程(分離手段)で得られた、不要な不純物を分離除去したカルシウムイオン含有水溶液に、後述する方法で調製した炭酸カリウムを含む水溶液を添加して、高純度の炭酸カルシウムを生成し、炭酸カルシウムと、塩化カリウム水溶液とに分離する(炭酸カルシウム生成・回収工程(炭酸カルシウム生成・回収手段))。
一例として、得られた炭酸カルシウムの純度を、熱分析装置(TG)を用いて550℃~800℃の重量減少から計算すると、95.7%の値となった。
このように、本発明では、炭酸マグネシウムなどの不純物を含まない、純度の高い炭酸カルシウムが得られる。
【0044】
得られた炭酸カルシウムは、プラスチック、紙、塗料などの原料や充填材、また農薬・肥料などの土壌改良剤、食品添加物や化粧品原料、光反射・散乱向上材、アンチブロッキング材などに利用することができる。本発明においては好適には、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂製品の充填材として用いることができる。
また、これらの炭酸カルシウムは、セメント原料としても利用できるだけでなく、セメントの増量材としても利用可能である。
【0045】
また、上記電気透析工程(電気透析手段)で生成された塩酸水の一部を、塩化ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂製品の製造に利用することが可能である。この際に、必要に応じて、塩酸水を濃縮して用いることが望ましい。
また、上記したように、塩素バイパスダストを水洗して得られた塩化カリウムを含む水溶液や、その後に必要に応じて前処理した塩化カリウムを含む水溶液の一部を、例えば電気分解処理等を行って塩酸水として、塩化ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂製品の製造に利用することが可能である。
このように、本発明においては、得られる炭酸カルシウムのみならず、塩素を塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂製品を製造する際の原料として利用することが可能となる。
また、塩化ビニル樹脂の調製方法は、特に限定されず、任意の公知の方法を適用することができる。
【0046】
また、公知の方法による塩化ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂製品の製造の際に排出される廃塩化ビニル樹脂又は廃塩化ビニル樹脂製品は、セメント製造プロセスに、燃料(熱量)として循環利用することができる。これに伴い、セメント製造設備から排出される二酸化炭素には、廃塩化ビニル樹脂の燃焼に伴う二酸化炭素も含まれることとなる。
【0047】
また
図1及び
図2に示す本発明において、上記炭酸カルシウム生成・回収工程(炭酸カルシウム生成・回収手段)で使用する炭酸カリウムを含む水溶液は、上記電気透析工程(電気透析手段)で得られた水酸化カリウムを含む水溶液に二酸化炭素を接触させて、二酸化炭素を吸収させ、炭酸カリウムを含む水溶液を生成させて使用する。
【0048】
該二酸化炭素は、火力発電設備などの燃焼排ガスや、セメント製造設備での排ガスに含まれている二酸化炭素を使用することができ、また、大気中の二酸化炭素を直接吸収させて利用することも可能であるが、本発明においては、セメント製造プロセスで排出される二酸化炭素を有効に使用することができる。これにより、二酸化炭素を循環利用させて、環境負荷の低減を図ることが可能となる。
【0049】
次に
図3及び
図4の本発明の他のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法(再利用循環システム)を説明する。
図3又は
図4に示す、本発明の他のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法は、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析工程と、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解工程と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離工程と、
前記分離工程を経たカルシウムイオンを含む水溶液のpHを、上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを用いて調整するpH調整工程と、
前記pH調整工程を経てpH調整されたカルシウムイオンを含む水溶液と、セメント製造プロセスから排出される二酸化炭素とを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収工程とを備え、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収工程で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用する、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法である。
【0050】
また、上記
図3及び
図4に示す本発明の他のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法を実施する有効なシステムは、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析手段と、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解抽出手段と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離手段と、
前記分離手段を経たカルシウムイオンを含む水溶液のpHを、上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを用いて調整するpH調整手段と、
前記pH調整手段を経てpH調整されたカルシウムイオンを含む水溶液と、セメント製造プロセスから排出される二酸化炭素とを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収手段とを備え、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収手段で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用する、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムである。
【0051】
具体的に好適例をあげて、以下に説明する。
図3及び
図4に示す本発明の他のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法(再利用循環システム)は、上記
図1及び
図2のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法(再利用循環システム)と同様に、セメント製造プロセスから排出される廃棄物である塩素バイパスダストを水洗して塩化カリウムを含む水溶液を生成する。水洗いした脱塩ダストは脱水し、脱水ケーキをセメント原料としてセメント製造プロセスに戻すことも可能である。
また好ましくは、次いで、塩化カリウムを含む水溶液に含まれる不純物などを除去する前処理を施すことも必要に応じて可能である。
【0052】
塩素バイパスダストを水洗して得られた塩化カリウムを含む水溶液及び、塩素バイパスダストを水洗して得られた塩化カリウムを含む水溶液及び、必要に応じて前処理を施した後の塩化カリウムを含む水溶液は、下記する電気透析工程(電気透析手段)に導入されるが、好ましくは必要に応じて塩化カリウムを含む水溶液の一部を、後述する塩化ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂製品の製造に用いることも可能である。例えば、一例として、塩化カリウムを含む水溶液を、公知の任意の方法で電気分解等することにより塩素を生成させて、塩化ビニル樹脂又は塩化ビニル樹脂製品の製造に使用する。
【0053】
また、
図3においては、
図1と同様に、後述する炭酸カルシウム生成・回収工程(炭酸カルシウム生成・回収手段)(
図3で「Ca生成回収」と表示)で生成される塩化カリウムを含む水溶液を循環させて、上記塩素バイパスダストを水洗して得られた塩化カリウム水溶液と合流させて得られた塩化カリウムを含む水溶液を、電気透析工程(電気透析手段)、例えばバイポーラ膜電気透析(BMED)処理(BMED手段)して、水酸化カリウムと塩酸を生成する(
図1)。
【0054】
また、
図4においては、後述する炭酸カルシウム生成・回収工程(炭酸カルシウム生成・回収手段)で生成される塩化カリウムを含む水溶液を循環させて、上記塩素バイパスダストを水洗する水溶液として用いる。この場合、後述する炭酸カルシウム生成・回収工程(炭酸カルシウム生成・回収手段)で生成される塩化カリウムを含む水溶液を水洗液全量として用いても、工業用水と合流させて、塩素バイパスダストを水洗する水洗液として用いてもよい。塩素バイパスダストを水洗して得られた塩化カリウム水溶液を、電気透析工程(電気透析手段)、例えばバイポーラ膜電気透析(BMED)処理(BMED手段)して、水酸化カリウムと塩酸を生成する(
図4)。
【0055】
好ましくは、炭酸カルシウム生成・回収工程(炭酸カルシウム生成・回収手段)で発生する塩化カリウムは、必要に応じて、MF膜(ろ過膜)により微粒子を除去し、RO膜(逆浸透膜)により水溶液を濃縮するなどの前処理を施されることも可能である(図示せず)。
【0056】
次いで、塩化カリウム水溶液を電気透析、例えばバイポーラ膜電気透析(BMED)工程(電気透析手段)に導入して、塩酸水と水酸化カリウム及を含む水溶液とを生成する。例えば、バイポーラ膜電気透析(BMED)は電気で動作し塩化カリウムの濃度が高くなるに従い、BMEDでの電流効率が向上し、省電力化にも寄与するものである。
【0057】
図3及び
図4に示す本発明の他のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法(再利用循環システム)における電気透析工程(電気透析手段)、カルシウム溶解抽出工程(溶解抽出手段)、分離工程(分離手段)は、上記した
図1及び
図2に示すセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法(再利用循環システム)と同様である。
【0058】
図3及び
図4においては、分離工程(分離手段)で得られたカルシウム含有水溶液を、更にpH調整工程(pH調整手段)に導入して、pHをアルカリ性、好ましくは強アルカリ性に調整する。そのpHは、例えば11~13、好ましくは12~13であり、更には13以上とする場合もある。
その際のpH調整剤としては上記電気透析肯定(透析手段)で得られた水酸化カリウムを利用することができる。
【0059】
次いで、pH調整工程(pH調整手段)で得られた、アルカリ性、好ましくは強アルカリ性に調整されたカルシウムイオン含有水溶液と、セメント製造プロセス(セメント製造設備)で排出された二酸化炭素とを混合して接触させて、高純度の炭酸カルシウムを生成し、炭酸カルシウムと、塩化カリウム水溶液とに分離する(炭酸カルシウム生成・回収工程(炭酸カルシウム生成・回収手段))。
【0060】
その際の炭酸カルシウム生成・回収工程(炭酸カルシウム生成・回収手段)においては、カルシウムイオン含有水溶液と二酸化炭素との接触反応するpHは、pH10~11を保持することが望ましい。これは、この範囲のpHでの反応であると、副産物である炭酸水素カルシウムの生成を抑制することができ、得られる炭酸カルシウムの純度を、より高く保持することができるためである。
一例として、得られた炭酸カルシウムの純度を、熱分析装置(TG)を用いて550℃~800℃の重量減少から計算すると、95.7%の値となった。
このように、本発明では、炭酸マグネシウムなどの不純物を含まない、純度の高い炭酸カルシウムが得られる。
【0061】
また、上記炭酸カルシウム生成・回収工程(炭酸カルシウム生成・回収手段)で使用する二酸化炭素は、火力発電設備などの燃焼排ガスや、セメント製造設備での排ガスに含まれている二酸化炭素を使用することができ、また、大気中の二酸化炭素を直接吸収させて利用することも可能であるが、本発明においては、セメント製造プロセス(セメント製造設備)から排出される二酸化炭素を有効に使用することが好ましく、これにより二酸化炭素を循環利用させて、環境負荷の低減を図ることが可能となる。
【0062】
得られた炭酸カルシウムは、上述したプラスチック、紙、塗料などの充填材、また農薬・肥料などの土壌改良剤、食品添加物や化粧品原料、光反射・散乱向上材、アンチブロッキング材などに利用されるが、本発明においては好適には、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂製品の充填材として用いることができる。
また、これらの炭酸カルシウムは、セメント原料としても利用できるだけでなく、セメントの増量材としても利用可能である。
【0063】
また、上記電気透析工程(電気透析手段)で生成された塩酸水の一部を、塩化ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂製品の製造に利用することが可能である。この際に、必要に応じて、塩酸水を濃縮して用いることが望ましい。
また、上記したように、塩素バイパスダストを水洗して得られた塩化カリウムを含む水溶液や、その後に必要に応じて前処理した塩化カリウムを含む水溶液の一部を、例えば電気分解処理等を行って塩酸水として、塩化ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂製品の製造に利用することが可能である。
このように、本発明においては、得られる炭酸カルシウムのみならず、塩素を塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂製品を製造する際の原料として利用することが可能となる。
塩化ビニル樹脂の調製方法は、特に限定されず、任意の公知の方法を適用することができる。
【0064】
また、公知の方法による塩化ビニル樹脂の調製の際に排出される廃塩化ビニル樹脂又は廃塩化ビニル樹脂製品は、セメント製造プロセスに、燃料(熱量)として循環利用することができる。これに伴い、後述するセメント製造プロセス(セメント製造設備)から排出される二酸化炭素には、廃塩化ビニル樹脂の燃焼に伴う二酸化炭素も含まれることとなる。
【0065】
図5乃至
図11は、一般ごみ焼却施設Aで採取したフライアッシュ(FA1)からのCa等の抽出率の時間変化を示したものである。なお、抽出率とは、「廃棄物に含有されている成分の全量に対する溶解した成分量の比」を意味する。
フライアッシュの粒度を150μm(
図5のみ)と500μmとし、水溶液の温度を常温(20℃)と40℃(
図5のみ)で、水素イオン濃度指数をpH0.5,1,2,3,6における抽出率を測定した。
図5はカルシウム(Ca)、
図6はカリウム(K)、
図7はクロム(Cr)、
図8は鉛(Pb)、
図9はケイ素(Si)、
図10はアルミニウム(Al)、
図11はマグネシウム(Mg)を各々示している。
【0066】
図5を参照すると、Ca抽出に必要なpHは3以下である。
Caの抽出率は30分以降、特に60分以降は、反応時間(経過時間)による変化が緩やかになっており、Ca溶解抽出は30分以降にほぼ完了していることが理解される。
また、一般的な傾向として、pH1と3の場合を比較すると、粒度が小さくなるに従い、抽出率が高くなっており、pH1の場合を比較すると、水溶液の温度が高いほど、抽出率が高くなることが理解される。
【0067】
図6乃至
図11を参照すると、K,Cr,Pb,Si,Al,Mgのいずれにおいても、pH3以下の場合、30分経過後では、十分な溶解が見られる。このため、Caに対するこれらの不純物イオンを効果的に除去することが不可欠となる。
【0068】
図12は一般ごみ焼却施設Bから採取されたフライアッシュ(FA2)、
図13は生コン工場Aの排水工程から採取された生コンスラッジ(CS1)、
図14は生コン工場Bの排水工程から採取された生コンスラッジ(CS2)であり、各々のサンプルのCa抽出率の時間変化を示すグラフである。
水溶液のpHを0.5,1,3,6とし、粒度を150μm,500μm、水溶液温度を常温(20℃),40℃に設定している。
【0069】
図12のフライアッシュも
図3と同様に、pH3以下、より好ましくはpH1以下でCa抽出率が高くなっている。
図13や
図14の生コンスラッジでは、pH6以下でもCa抽出率が高くなっている。
いずれも30分経過後は、抽出率の変化は緩やかになっている。また、粒度が小さい方が、また水溶液の温度が高い方が溶出率は高くなる傾向がある。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、セメント製造プロセスから排出される二酸化炭素やカルシウム含有廃棄物を有効に利用して、純度の高い炭酸カルシウムを生成することが可能となるとともに、本発明により得られる炭酸カルシウムや塩酸を、塩化ビニル樹脂や塩化ビニル樹脂製品の原料や充填材に利用すること可能となり、また、廃塩化ビニルをセメント製造プロセスにおいて燃料として利用することが可能となる、塩素、カルシウム、二酸化炭素が循環して有効利用することができる、環境負荷の低減を達成するものである。
また、得られた残渣をセメント原料等に利用することも可能である。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法であって、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析工程と、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解工程と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離工程と、
上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを含む水溶液にセメント製造プロセスから排出される二酸化炭素を接触させて炭酸カリウムを含む水溶液を生成する炭酸カリウム生成工程と、
前記分離工程を経たカルシウムイオンを含む水溶液と、前記炭酸カリウムとを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収工程とを備え、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収工程で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用することを特徴とする、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法。
【請求項2】
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法であって、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析工程と、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解工程と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離工程と、
前記分離工程を経たカルシウムイオンを含む水溶液のpHを、上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを用いて調整するpH調整工程と、
前記pH調整工程を経てpH調整されたカルシウムイオンを含む水溶液と、セメント製造プロセスから排出される二酸化炭素とを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収工程とを備え、
前記電気透析工程で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収工程で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用することを特徴とする、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法において、炭酸カルシウム生成・回収工程により得られた塩化カリウムを含む水溶液を、前記電気透析工程において電気透析処理するか、又は、前記セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストの水洗処理に用いることを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法において、前記塩化ビニル樹脂を調製する際に発生した廃棄物を、上記セメント製造プロセスにおける原燃料代替物として利用することを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法において、該カルシウム含有廃棄物には、セメント製造設備の脱塩バイパス部分から得られる脱塩ダストを含むことを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法。
【請求項6】
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムであって、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析手段と、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解抽出手段と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離手段と、
上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを含む水溶液にセメント製造プロセスから排出される二酸化炭素を接触させて炭酸カリウムを含む水溶液を生成する炭酸カリウム生成手段と、
前記分離手段を経たカルシウムイオンを含む水溶液と、前記炭酸カリウムとを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収手段とを備え、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収手段で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用することを特徴とする、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システム。
【請求項7】
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムであって、
セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストを水洗処理して得られた塩化カリウム含む水溶液を電気透析処理して塩酸水と水酸化カリウムを含む水溶液とを生成する電気透析手段と、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を、カルシウム含有廃棄物に添加して、カルシウムを溶解させ、カルシウムイオンを含む水溶液を生成するカルシウム溶解抽出手段と、
前記カルシウムイオンを含有する水溶液の水素イオン濃度指数を調整し、Si、Al、Mg、及び重金属からなる群より選ばれる少なくとも一つを含む成分を該カルシウムイオンを含有する水溶液から分離する分離手段と、
前記分離手段を経たカルシウムイオンを含む水溶液のpHを、上記電気透析処理により生成された水酸化カリウムを用いて調整するpH調整手段と、
前記pH調整手段を経てpH調整されたカルシウムイオンを含む水溶液と、セメント製造プロセスから排出される二酸化炭素とを用いて炭酸カルシウムと塩化カリウムを含む水溶液とを生成して、炭酸カルシウムを回収する炭酸カルシウム生成・回収手段とを備え、
前記電気透析手段で得られた塩酸水の一部を塩化ビニル樹脂の調製に用いるとともに、更に炭酸カルシウム生成・回収手段で得られた炭酸カルシウムを塩化ビニル樹脂の充填材として利用することを特徴とする、
セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システム。
【請求項8】
請求項6又は7記載のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムにおいて、炭酸カルシウム生成・回収手段により得られた塩化カリウムを含む水溶液を、前記電気透析手段において電気透析処理するか、又は、前記セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストの水洗処理に用いることを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システム。
【請求項9】
請求項6又は7記載のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムにおいて、前記塩化ビニル樹脂を調製する際に発生した廃棄物を、上記セメント製造プロセスにおける原燃料代替物として利用することを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システム。
【請求項10】
請求項6又は7記載のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムにおいて、該カルシウム含有廃棄物には、セメント製造設備の脱塩バイパス部分から得られる脱塩ダストを含むことを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
(3)好ましくは、上記(1)又は(2)のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法において、炭酸カルシウム生成・回収工程により得られた塩化カリウムを含む水溶液を、前記電気透析工程において電気透析処理するか、又は、前記セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストの水洗処理に用いることを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環方法である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
(8)好ましくは、上記(6)又は(7)のセメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムにおいて、炭酸カルシウム生成・回収手段により得られた塩化カリウムを含む水溶液を、前記電気透析手段において電気透析処理するか、又は、前記セメントを製造する際に生じる塩素バイパスダストの水洗処理に用いることを特徴とする、セメント製造プロセスから生じる廃棄物の再利用循環システムである。