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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121269
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】唾液分泌改善用口腔組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/718 20060101AFI20240830BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240830BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20240830BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240830BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A61K31/718
A61P1/02
A61K9/00
A23L33/10
A23G3/34 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028277
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川上 晋平
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 友哉
(72)【発明者】
【氏名】森 貞夫
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4B014GB08
4B014GK03
4B014GK05
4B014GK12
4B014GL11
4B014GP01
4B014GP14
4B014GQ17
4B018LB01
4B018LB10
4B018LE01
4B018MD08
4B018MD27
4B018MD34
4B018MD35
4B018MD94
4B018ME14
4B018MF02
4B018MF04
4B018MF08
4C076AA94
4C076AA99
4C076BB22
4C076CC16
4C076DD38
4C076EE31
4C076FF31
4C076FF52
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA20
4C086EA21
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA57
4C086NA10
4C086NA12
4C086NA14
4C086ZA67
(57)【要約】
【課題】唾液の分泌を促す効果に優れた、唾液分泌改善用口腔組成物を提供する。
【解決手段】加工澱粉を含む澱粉質原料と風味材を含有し、前記澱粉質原料中の澱粉が糊化した状態で所定形状に形成され、前記澱粉質原料の含有量が乾燥物換算で40質量%以上であり、水分が20質量%以下とされており、唾液の分泌の改善を図るために摂取されるものである唾液分泌改善用口腔組成物である。本組成物は、唾液の分泌の改善を図ると共に、口臭の抑制や気分の高揚を図るために摂取されるものであってよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工澱粉を含む澱粉質原料と風味材を含有し、前記澱粉質原料中の澱粉が糊化した状態で所定形状に形成され、前記澱粉質原料の含有量が乾燥物換算で40質量%以上であり、水分が20質量%以下とされており、唾液の分泌の改善を図るために摂取されるものである唾液分泌改善用口腔組成物。
【請求項2】
唾液の分泌の改善を図ると共に、口臭の抑制を図るために摂取されるものである、請求項1記載の唾液分泌改善用口腔組成物。
【請求項3】
唾液の分泌の改善を図ると共に、気分の高揚を図るために摂取されるものである、請求項1記載の唾液分泌改善用口腔組成物。
【請求項4】
下記方法で測定される溶解性が60以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の唾液分泌改善用口腔組成物。
溶解性測定方法:口腔組成物を1cm角になるようにカットし、カットした1粒の重量(A)を計る。200mlの40℃の水に60分浸漬させた後、ろ紙で挟んで2分間静置して水気をとった後、重量(B)を計る。更に、上記粒をろ紙に軽く押し付けながら、ろ紙で表面をなで、粒表面の膨潤した部分を取り除いて重量(C)を計る。溶解性を下記式で算出する。
溶解性={(B-C)/A}×100
【請求項5】
前記加工澱粉が、エーテル化澱粉、アセチル化澱粉、エーテル化架橋澱粉、及びアセチル化架橋澱粉から選ばれた少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の唾液分泌改善用口腔組成物。
【請求項6】
前記口腔組成物は、その一粒を20分間以上に亘って口腔内で舐めることができる形態とされた、請求項1~3のいずれか1項に記載の唾液分泌改善用口腔組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液の分泌の改善を図るための口腔組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
唾液は、健康な成人で1日に1.0~1.5リットル分泌されるといわれており、また、唾液には粘膜保護・自浄・水分平衡・潤滑・緩衝・抗菌・消化・組織修復・再石灰化・発ガン予防などの作用もあり、常に口腔内を湿潤して、口腔のみならず身体が正常な機能を発揮しているものと考えられている(非特許文献1参照)。例えば、疾病などにより唾液分泌が低下すると、嚥下障害・咀嚼障害・発音障害・味覚障害などの原因となることがある。また、唾液分泌低下により自浄作用が低下すると、口腔内に食物残渣などが長期間残留するため、う蝕や歯周疾患が非常に発症しやすくなる。特に、高齢者では、加齢により唾液の分泌量は減少傾向となるため、口腔ケアをしっかりと行って口内環境を衛生的に保つことが推奨されている。
【0003】
一方、本出願人は、加工澱粉を含有する原料組成物を加熱して、その加工澱粉を糊化状態にしたのち乾燥させることによって得られる固形物は、口に入れて舐めたときに長い時間保たれて、含有する成分を少しずつ放出させるのに好適な素材であることを明らかにしている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト 健康用語辞典 唾液分泌(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-004.html)
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6216088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、唾液の分泌を促す効果に優れた、唾液分泌改善用口腔組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、加工澱粉を含有する口腔組成物は、唾液の分泌を改善する作用効果に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の構成を有する唾液分泌改善用口腔組成物を提供するものである。
[1]加工澱粉を含む澱粉質原料と風味材を含有し、前記澱粉質原料中の澱粉が糊化した状態で所定形状に形成され、前記澱粉質原料の含有量が乾燥物換算で40質量%以上であり、水分が20質量%以下とされており、唾液の分泌の改善を図るために摂取されるものである唾液分泌改善用口腔組成物。
[2]唾液の分泌の改善を図ると共に、口臭の抑制を図るために摂取されるものである、上記[1]記載の唾液分泌改善用口腔組成物。
[3]唾液の分泌の改善を図ると共に、気分の高揚を図るために摂取されるものである、上記[1]記載の唾液分泌改善用口腔組成物。
[4]下記方法で測定される溶解性が60以下である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の唾液分泌改善用口腔組成物。
溶解性測定方法:口腔組成物を1cm角になるようにカットし、カットした1粒の重量(A)を計る。200mlの40℃の水に60分浸漬させた後、ろ紙で挟んで2分間静置して水気をとった後、重量(B)を計る。更に、上記粒をろ紙に軽く押し付けながら、ろ紙で表面をなで、粒表面の膨潤した部分を取り除いて重量(C)を計る。溶解性を下記式で算出する。
溶解性={(B-C)/A}×100
[5]前記加工澱粉が、エーテル化澱粉、アセチル化澱粉、エーテル化架橋澱粉、及びアセチル化架橋澱粉から選ばれた少なくとも1種である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の唾液分泌改善用口腔組成物。
[6]前記口腔組成物は、その一粒を20分間以上に亘って口腔内で舐めることができる形態とされた、請求項1~3のいずれか1項に記載の唾液分泌改善用口腔組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加工澱粉を含有する口腔組成物を利用して、唾液の分泌を促す効果に優れた、唾液分泌改善用口腔組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】試験例1の試験スケジュールを示す図表である。
図2】試験例1において、唾液量を調べた結果を示す図表である。
図3】試験例1において、口臭測定(硫化水素濃度の測定)を行った結果を示す図表である。
図4】試験例1において、気分プロフィール検査ツール(POMS2:Profile of Mood States Second Edition)を使用したアンケートを行った結果を示す図表である。
図5】試験例1において、体感として「口のうるおい」及び「口の清涼感」の改善について、ビジュアルアナログスケール(VAS:Visual Analogue Scale)によるアンケートを行った結果を示す図表である。
図6】試験例2の試験スケジュールを示す図表である。
図7】試験例2において、試験時間にわたる各段階の唾液量の結果をまとめた結果を示す図表である。
図8】試験例2において、体感として「口のうるおい」の改善について、ビジュアルアナログスケール(VAS:Visual Analogue Scale)によるアンケートを行った結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明にかかる口腔組成物は、加工澱粉を含む澱粉質原料と風味材を含有してなるものである。
【0012】
加工澱粉としては、例えば、エーテル化澱粉、アセチル化澱粉、エーテル化架橋澱粉、アセチル化架橋澱粉などが挙げられる。これらの加工澱粉は、糊化したとき老化しにくいという特性を有している。また、糊化した状態で乾燥させると、硬くて溶けにくい固形物になる。このため、口に入れて舐めたときすぐに溶けきらず、長時間留まって舐めることができ、含有する成分を少しずつ溶出させることができる。加工澱粉は、1種類を用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、上記加工澱粉を更にα化処理したものを用いてもよい。
【0013】
上記加工澱粉として、例えば、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、アセチル化澱粉、及びヒドロキシプロピル化澱粉から選ばれた少なくとも1種を用いてもよい。これによれば、口に入れて舐めたときに、より溶けにくくして、徐放性を高めることができる。
【0014】
本発明にかかる口腔組成物には、上述したような加工澱粉以外にも、他の澱粉質原料が含まれていてもよい。澱粉質原料としては、例えば、未加工澱粉、架橋澱粉、酸化澱粉、α化澱粉、デキストリンなどが挙げられる。これらは、1種類を用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0015】
一方、風味材としては、例えば、甘味料、酸味料、香料、調味料、メントール、メントン、シネオールメントン、サリチル酸メチル、スペアミント油、ペパーミント油、ハッカ油及びユーカリプタス油などの清涼剤、ハーブエキス、梅エキス、カリンエキスなどの喉の不快感を改善するエキスなどが挙げられる。これらは、1種類を用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
本発明にかかる口腔組成物によれば、風味材は、澱粉質原料と混合されて、口に入れて舐めたとき澱粉質原料が溶解するのに伴って、少しずつ溶出する。そのため、口腔組成物を口腔内に長時間留めおくことができる。また、口腔内に留まった口腔組成物から風味材又はその組み合わせによる風味を長時間に亘って感じ続けることができる。
【0017】
本発明における限定されない任意の態様においては、本発明にかかる口腔組成物には、上記風味材として少なくとも高甘味度甘味料が含まれていてもよい。これによれば、高甘未度甘味料は、澱粉質原料と混合されて、口に入れて舐めたとき澱粉質原料が溶解するのに伴って、少しずつ溶出する。そのため、口腔組成物を長時間口の中に留めても甘味を感じ続けることができる。
【0018】
高甘味度甘味料としては、特に限定されないが、例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア抽出物、ネオテーム、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸およびその塩、ソーマチン、カンゾウ抽出物、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア、酵素処理カンゾウ、酵素分解カンゾウ、アドバンテーム、ラカンカ抽出物などが挙げられる。これらのなかでも、特にスクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア抽出物、ネオテーム、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビアなどが挙げられる。これらは、1種類を用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。高甘味度甘味料の含有量は、特に限定されないが、典型的に例えば、乾燥物換算で0.05~5質量%であることが好ましい。一方で体内に吸収される糖を減量する観点からは、甘味料として添加する砂糖(ショ糖)については、10質量%以下とすることが好ましく、添加しないことがより好ましい。
【0019】
本発明にかかる口腔組成物は、上述したように加工澱粉を含む澱粉質原料と風味材とを含有するものであるが、それに加えて、澱粉質原料中の澱粉が糊化した状態で所定形状に形成され、その澱粉質原料の含有量が乾燥物換算で40質量%以上であり、水分が20質量%以下とされる。これにより、口に入れて舐めたとき長時間留まらせることができる。上記澱粉質原料の含有量が乾燥物換算で40質量%未満では、溶解性が高くなり、硬度も低くなるため、長時間留まらせにくくなる。上記澱粉質原料の含有量は、乾燥物換算で60~99質量%であることがより好ましい。上記水分含量は、好ましくは18質量%以下、更に好ましくは16質量%以下であってもよい。
【0020】
本発明における限定されない任意の態様においては、本発明にかかる口腔組成物には、ゲル化剤、増粘剤、及び不溶性食物繊維から選ばれた少なくとも1種を用いてもよい。
【0021】
ゲル化剤及び/又は増粘剤としては、例えば、寒天、ゼラチン、キサンタンガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、ジェランガム、カラギーナン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩、セルロース誘導体、カルボキシメチルセルロース、ローカストビーンガム、アラビアガム、ガティガム、プルラン、大豆多糖類などが挙げられる。これらは、1種類を用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。ここで、セルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロースなどが挙げられる。ゲル化剤及び/又は増粘剤を含有することによって、成形時のべとつきを防止して保形性を高めることができる。また、乾燥固化した状態では、固形物のもろさを改善して、口の中で噛んでも、もろくくずれにくくすることができる。ゲル化剤及び/又は増粘剤の含有量は、特に限定されないが、典型的に例えば、乾燥物換算で0.05~7質量%であることが好ましい。
【0022】
不溶性食物繊維としては、例えば、セルロース粉末、微結晶セルロース、発酵セルロース、ふすま粉砕物、キチン粉末などが挙げられる。これらは、1種類を用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。不溶性食物繊維を含有することにより、成形時の保形性を高めることができると共に、乾燥固化した後の吸水性をコントロールすることができる。不溶性食物繊維の含有量は、特に限定されないが、典型的に例えば、乾燥物換算で0.5~40質量%であることが好ましい。
【0023】
本発明にかかる口腔組成物には、上述したような原料以外にも他の原料を含有させることができる。例えば、色素、糖質、水溶性食物繊維、油脂、タンパク質、乳化剤などが挙げられる。また、食品用素材だけではなく、医薬・機能性素材等であって経口摂取可能とされた素材であっても含有させることができる。例えば、ビタミン類、抗酸化剤、カフェイン、ミネラル類、pH調整剤、抗炎症剤などが挙げられる。
【0024】
本発明にかかる口腔組成物は、口に入れて舐めたとき口腔内に長時間留めおかれて、含有する成分が少しずつ放出されるので、口腔内において何等かの作用を与える成分を含有させるのに適している。例えば、清涼剤、喉の不快感を改善するエキス、薬剤、機能性成分などを、長時間かけて溶出させることにより、それらの作用、例えば清涼剤であれば清涼感などを、長時間に亘って維持することができる。
【0025】
本発明にかかる口腔組成物は、例えば、以下に示すような方法によって調製することができる。ただし、そのような特定の方法に限定されるものではなく、調製方法は任意であってよい。
【0026】
(調製方法)
原料に適当量の水を加えて混合する(混合工程)。ゲル化剤及び/又は増粘剤などは、予め水と混合して加熱することにより溶液にした状態で他の原料と混合することが好ましい。こうして得られた混合物の水分含量は、その後の糊化・成形工程及び乾燥工程の方法によっても異なるが、通常は、10~70質量%が好ましく、15~60質量%がより好ましい。
【0027】
次に、得られた混合物を所定形状に成形し、加熱して含有される澱粉質原料を糊化させるか、あるいは、得られた混合物を加熱して含有される澱粉質原料を糊化させた後、所定形状に成形する(糊化・成形工程)。
【0028】
澱粉質原料の糊化方法は、特に限定されないが、例えば、蒸煮、湯煎、ヒーター、オーブン、オートクレーブ、マイクロウェーブなどによる加熱、押出成形機内での加圧加熱などを採用することができる。
【0029】
また、成形方法としては、例えば成形型への充填成形、ローラによる圧延成形、押出成形などを採用することができる。また、上記手段によって成形した後、所望の大きさにカッティングしてもよい。成形形状は、特に限定されないが、例えば、シート状、板状、六面体状、円盤状、球状、三角錐状など、各種形状を採用することができる。
【0030】
次に、所定形状に成形され、含有される澱粉質原料が糊化された成形物を、水分含量が20質量%以下、好ましくは18質量%以下、更に好ましくは16質量%以下となるように乾燥させる。乾燥方法は、特に限定されないが、例えば、熱風乾燥、凍結乾燥、送風乾燥、遠赤外線加熱乾燥、除湿空気乾燥、天日乾燥、減圧乾燥、間接加熱乾燥、マイクロ波加熱乾燥などの手段を採用することができる。なお、押出成形装置で加熱加圧して押出した場合は、押出時に高温になっているので、押出と同時に水分が蒸発して乾燥がなされ、水分含量を20質量%以下とすることも可能である。このように、澱粉質原料が糊化した状態で乾燥させることにより、溶解しにくい固形物が得られる。
【0031】
(溶解性)
本発明にかかる口腔組成物は、特に限定されないが、下記の方法によって測定される溶解性が、60以下であること好ましく、40以下であることがより好ましい。適度な溶解性を有することにより、口に入れて舐めたときに長い時間保たれて、含有する成分を少しずつ放出させる、といった特性を備えた組成物とすることができる。
【0032】
[溶解性測定方法]
口腔組成物を1cm角になるようにカットし、カットした1粒の重量(A)を計る。200mlの40℃の水に60分浸漬させた後、ろ紙で挟んで2分間静置して水気をとった後、重量(B)を計る。更に、上記粒をろ紙に軽く押し付けながら、ろ紙で表面をなで、粒表面の膨潤した部分を取り除いて重量(C)を計る。溶解性を下記式で算出する。
溶解性={(B-C)/A}×100
【0033】
(用途)
本発明にかかる口腔組成物は、後述する実施例で示されるように、唾液の分泌を改善する作用効果に優れている。よって、唾液の分泌の改善を図るために摂取されるものであることが好ましい。また、その一粒を0.3~3.0gに調製したとしたとき、好ましくは10分間以上、より好ましくは20分間以上に亘って口腔内で舐めることができる形態とされ、摂取されるものであることが好ましい。また、その一粒を0.3~3.0gに調製したとしたとき、甘味料の含有量がショ糖として好ましくは30~300mg、より好ましくは0mg以下であるようにしたうえ、摂取されるものであることが好ましい。
【0034】
本発明にかかる口腔組成物は、後述する実施例で示されるように、口臭を抑制する効果にも優れている。よって、唾液の分泌の改善を図ると共に、口臭の抑制を図るために摂取されるものであってもよい。口臭は、例えば、口臭測定器(「OralChroma(登録商標)」、NISSHAエフアイエス株式会社)などを用いた口臭測定(硫化水素濃度の測定)などにより評価することができる。
【0035】
本発明にかかる口腔組成物は、後述する実施例で示されるように、気分を高揚させる効果にも優れている。よって、唾液の分泌の改善を図ると共に、気分の高揚を図るために摂取されるものであってもよい。気分の高揚は、例えば、気分プロフィール検査ツール(POMS2:Profile of Mood States Second Edition)を使用したアンケートなどにより評価することができる。また、体感として「口のうるおい」及び「口の清涼感」などの改善について、ビジュアルアナログスケール(VAS:Visual Analogue Scale)によるアンケートなどにより評価することができる。
【0036】
なお、本発明にかかる口腔組成物は、唾液の分泌の改善を図ると共に、口臭の抑制を図り、更に気分の高揚を図るために摂取されるものであってもよい。
【0037】
また、特定の機能性の表示を付した食品製品にも好適に用いられ得る。例えば、「お口の潤いに役立つ機能」、「お口の潤いをサポートする機能」、「加齢に伴って減少しがちなお口の潤いをサポートする機能」、「お口の潤いを助ける機能」、「口のうるおいを保つ機能」、「唾液量を維持する機能」などの表示が付されてなる機能性表示食品などが挙げられる。
【実施例0038】
以下、試験例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例示の範囲に限定されるものではない。
【0039】
<試験例1>
本発明の構成を備えた口腔組成物(以下、「実施品1」ということがある。)と、従来型のキャンディの構成を備えた口腔組成物(以下、「比較品1」ということがある。)とで、口腔内で舐めたときにヒトに与える影響について調べた。
【0040】
具体的には、実施品1は、表1に示す配合で原料を混練した後、6mm厚のシートに成形し、その成形品を15分蒸し器にて加熱し、常温にて放冷後、70℃で18時間乾燥させることにより調製した。乾燥後に、縦13.5mm×横15.0mm×高さ2.4mmの一口サイズにカットし、1日常温に放置したうえ、評価に供した。
【0041】
また、比較品1は、一般的な砂糖飴の製法に倣い、表1に示す配合で砂糖と水飴を155℃までに溶かしたのちに香料や色素、ミルクソースを添加して引き飴処理を施して内部に気泡を含有させたのち、縦13.5mm×横15.0mm×高さ2.4mmの一口サイズに成形することにより調製した。
【0042】
【表1】
【0043】
試験は、健康な成人男女で唾液量が少なめである24名を対象にして、表1に示す組成を備えた口腔組成物の1粒(0.5g)を摂取してもらい、その際、下記測定を実施した。図1には、試験スケジュールを示す。なお、口腔組成物が口の中からなくなっても20分間は唾液を採取し続けることとした。
【0044】
・摂取時(20分間)の唾液量
口腔組成物を口に入れてから20分間にわたり唾液を採取して、唾液量を測定した。
【0045】
・口臭測定(硫化水素濃度)
口腔組成物の摂取前と摂取後に、口臭測定器(「OralChroma(登録商標)」、NISSHAエフアイエス株式会社)を用いて口臭測定(硫化水素濃度の測定)を行った。
【0046】
・アンケート評価(POMS2)
気分プロフィール検査ツール(POMS2:Profile of Mood States Second Edition)を使用したアンケートを行った。具体的には、各質問から下記項目ごとの点数を算出した。
【0047】
(値が低いほうが良い項目)
TMD:各指標をもとに総合的なネガティブ気分
AH:怒り-敵意
CB:混乱-当惑
DD:抑うつ-落込み
FI:疲労-無気力
TA:緊張-不安
【0048】
(値が高いほうが良い項目)
VA:活気-活力
F:共好
【0049】
・アンケート評価(VAS)
体感として「口のうるおい」及び「口の清涼感」の改善について、ビジュアルアナログスケール(VAS:Visual Analogue Scale)によるアンケートを行った。
【0050】
試験群間の統計的有意差は、対応のある2群間のt検定により解析した。
【0051】
その結果、図2に示されるように、分泌した唾液量は、実施品1を摂取したほうが比較品1を摂取した場合に比べて有意に多くなった。
【0052】
また、図3に示されるように、口臭成分である硫化水素の濃度は、実施品1を摂取したほうが比較品1を摂取した場合に比べて有意に低下した。
【0053】
また、図4に示されるように、POMS2を使用したアンケート評価において、「総合的ネガティブ気分」や「活気,活力」の項目について気分指標の評価値が、実施品1を摂取したほうが比較品1を摂取した場合に比べて有意に改善した。
【0054】
また、図5に示されるように、VASによるアンケート評価において、体感として「口のうるおい」や「口の清涼感」についての主観的な評価値が、実施品1を摂取したほうが比較品1を摂取した場合に比べて有意に改善した。
【0055】
<試験例2>
本発明の構成を備えた口腔組成物(以下、「実施品2」ということがある。)と、その加工澱粉に替えてイヌリンを含む構成を備えた口腔組成物(以下、「比較品2」ということがある。)とで、口腔内で舐めたときにヒトに与える影響について調べた。
【0056】
具体的には、実施品2及び比較品2は、表2に示す配合で原料を混練した後、6mm厚のシートに成形し、その成形品を30分蒸し器にて加熱し、常温にて放冷後、80℃で18時間乾燥させることにより調製した。乾燥後に、縦13.5mm×横15.0mm×高さ2.4mmの一口サイズにカットし、1日常温に放置したうえ、評価に供した。
【0057】
【表2】
【0058】
試験は、表2に示す組成を備えた口腔組成物の1粒(0.5g)をパネラー(n=6)に摂取してもらい、その際に下記の測定を実施することにより行った。図6には、試験スケジュールを示す。
【0059】
・摂取時(5分間)及び安静時(15分間)の唾液量
口腔組成物を口に入れてから20分間にわたり唾液を採取して、唾液量を測定した。
【0060】
・アンケート評価(VAS)
体感として「口のうるおい」の改善について、ビジュアルアナログスケール(VAS:Visual Analogue Scale)によるアンケートを行った。
【0061】
試験群間の統計的有意差は、対応のある2群間のt検定により解析した。
【0062】
その結果、図7に示されるように、分泌した唾液量は、口腔組成物を舐めている間の5分間も含めて全体試験期間にわたって実施品2のほうが多くなる傾向が認められた。その傾向は舐め終わったあとの安静時にもそのまま維持されていた。特に、最後の5分間の実施品2の優位性は、比較品2に対して130%と顕著な増加傾向を示した。
【0063】
また、図8に示されるように、VASによるアンケート評価において、「口のうるおい」についての主観的な評価値が、実施品2を摂取したほうが比較品2に比べ、終了時における評価において改善した。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8