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  • 特開-光信号測定装置及び光信号測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121275
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】光信号測定装置及び光信号測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
G01M11/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028289
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤志
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】張 超
(57)【要約】
【課題】超高速マルチモード通信の複素振幅を低速で安価な電子部品で測定できる光信号測定装置及び光信号測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る光信号測定装置301は、前記被測定信号光と同一波長かつ繰り返し周期T+ΔTであるサンプリングパルス光を発生するパルス発生器と、前記マルチモード光ファイバから前記被測定信号光を空間に出力させること、偏波方向を前記被測定信号光に対して45°傾けて前記サンプリングパルス光を前記空間に出力させること、及び前記空間において前記被測定信号光と前記サンプリングパルス光と干渉させて干渉光を発生させることを行う干渉部と、前記干渉光を直交する偏波成分に分離し、各偏波成分の空間分布をそれぞれ観測する2次元フォトディテクタアレイと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモード光ファイバを2つの最低次モード群で伝搬する、繰り返し周期Tで変調された被測定信号光のモード毎の時間波形を観察する光信号測定装置であって、
前記被測定信号光と同一波長かつ繰り返し周期T+ΔTであるサンプリングパルス光を発生するパルス発生器と、
前記マルチモード光ファイバから前記被測定信号光を空間に出力させること、偏波方向を前記被測定信号光に対して45°傾けて前記サンプリングパルス光を前記空間に出力させること、及び前記空間において前記被測定信号光と前記サンプリングパルス光と干渉させて干渉光を発生させることを行う干渉部と、
前記干渉光を直交する偏波成分に分離し、各偏波成分の空間分布をそれぞれ観測する2次元フォトディテクタアレイと、
を備えることを特徴とする光信号測定装置。
【請求項2】
マルチモード光ファイバにて繰り返し周期Tで変調された被測定信号光を2つの最低次モード群で伝搬すること、
前記被測定信号光と同一波長かつ繰り返し周期T+ΔTであるサンプリングパルス光を発生すること、
前記マルチモード光ファイバから前記被測定信号光を空間に出力させること、
偏波方向を前記被測定信号光に対して45°傾けて前記サンプリングパルス光を前記空間に出力させること、
前記空間において前記被測定信号光と前記サンプリングパルス光と干渉させて干渉光を発生させること、及び
前記干渉光を直交する偏波成分に分離し、各偏波成分の空間分布をそれぞれ2次元フォトディテクタアレイで受光すること、を行い、
前記マルチモード光ファイバを伝搬する前記被測定信号光のモード毎の時間波形を観察する光信号測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチモード光ファイバ自体の伝搬特性を解析するための2次元光信号測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチモード光ファイバの複数の空間モードに信号を多重する技術(空間多重通信)が開発されている。マルチモード光ファイバでは、各モードの光の電界ベクトルは互いに直交する空間分布を持つ。図1は、マルチモード光ファイバの2つの最低次モード群(LP01モード、LP11モード)の電界ベクトル分布をスケッチしたものである。図1内の矢印は電界ベクトルを表わしている。空間多重通信システムでは、これらの独立な空間ベクトルモードにより異なる信号を多重する。それぞれの空間モードは“モード分波器”によって分離され、別々の単一モードファイバに結合された後にその複素振幅が“受信”される。
【0003】
マルチモード光ファイバ自体の伝搬特性を解析する場合には、光ファイバのコア断面の複素電界の空間分布の変化(各モードごとの時間波形)を直接的に観察したい。つまり、光通信の信号速度(10~100Gbaud/s)に追随し、2次元の空間的な複素振幅分布を観測する「2次元光信号測定技術」が必要になるが、そのような技術は存在しない。その理由の一つは、このような高速領域で動作するフォトディテクタアレイの実現は、素子間の干渉によりほぼ不可能であるためである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Y. Wakayama et al., “MFD measurement of a six-mode fiber with low-coherence digital holography,” IEICE Trans. Commun., vol. E100-B, no. 10, pp. 1737-1739, 2017.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1では、赤外線カメラを使って光ファイバのコア断面における複素電界の空間分布の変化(各モードごとの時間波形)を直接的に観察する方法が開示されている。しかし、通常赤外線カメラの応答特性は光通信の信号速度(10~100Gbaud/s)に追随できるほど高速ではない。つまり、現状では、光通信の信号速度のような高速な波形変化を捉えることは困難という課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前記課題を解決するために、超高速マルチモード通信の複素振幅を低速で安価な電子部品で測定できる光信号測定装置及び光信号測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る光信号測定装置は、繰り返し変調された被測定信号光と、被測定信号光と同一波長かつ異なる繰り返し周期を有するサンプリングパルス光とを、それぞれ空間に取り出して干渉させ、干渉信号を直交する偏波成分に分離し、各偏波成分の空間分布をそれぞれ2次元フォトディテクタアレイで観測することとした。
【0008】
具体的には、本発明に係る光信号測定装置は、マルチモード光ファイバを2つの最低次モード群で伝搬する、繰り返し周期Tで変調された被測定信号光のモード毎の時間波形を観察する光信号測定装置であって、
前記被測定信号光と同一波長かつ繰り返し周期T+ΔTであるサンプリングパルス光を発生するパルス発生器と、
前記マルチモード光ファイバから前記被測定信号光を空間に出力させること、偏波方向を前記被測定信号光に対して45°傾けて前記サンプリングパルス光を前記空間に出力させること、及び前記空間において前記被測定信号光と前記サンプリングパルス光と干渉させて干渉光を発生させることを行う干渉部と、
前記干渉光を直交する偏波成分に分離し、各偏波成分の空間分布をそれぞれ観測する2次元フォトディテクタアレイと、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る光信号測定方法は、
マルチモード光ファイバにて繰り返し周期Tで変調された被測定信号光を2つの最低次モード群で伝搬すること、
前記被測定信号光と同一波長かつ繰り返し周期T+ΔTであるサンプリングパルス光を発生すること、
前記マルチモード光ファイバから前記被測定信号光を空間に出力させること、
偏波方向を前記被測定信号光に対して45°傾けて前記サンプリングパルス光を前記空間に出力させること、
前記空間において前記被測定信号光と前記サンプリングパルス光と干渉させて干渉光を発生させること、及び
前記干渉光を直交する偏波成分に分離し、各偏波成分の空間分布をそれぞれ2次元フォトディテクタアレイで受光すること、を行い、
前記マルチモード光ファイバを伝搬する前記被測定信号光のモード毎の時間波形を観察する。
【0010】
本光信号測定装置(方法)は、線形サンプリング法を用いる。線形サンプリング法は、信号光と同一波長である光短パルス(サンプリングパルス光)と信号光とのコヒーレント相関検出を用いて、信号光の瞬時複素振幅を測定する手法である。本手法は、図2のように、信号光21の繰返し周期Tとサンプリングパルス光22の周期とをわずかに離調(ΔT)し、干渉点をずらしながら瞬時振幅23を検出することで信号光全体の波形24を観測することができる。
【0011】
観測可能な信号の速度は、サンプリングパルス光22の幅(T+ΔT)だけで決まり、超高速信号にも対応できる。使用する電子部品はこのサンプリングパルス周期に追随できればよく、数MHz程度の帯域のものが使用できる。観測できる信号光は繰返し信号に限られるが、通信システムの検証に用いられる疑似ランダム信号(PRBS;Pseudo Random Bit Sequence)信号にも対応できる。
【0012】
従って、本発明は、超高速マルチモード通信の複素振幅を低速で安価な電子部品で測定できる光信号測定装置及び光信号測定方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、超高速マルチモード通信の複素振幅を低速で安価な電子部品で測定できる光信号測定装置及び光信号測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】光ファイバの空間モードを説明する図である。
図2】線形光サンプリング法を説明する図である。
図3】本発明に係る光信号測定装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0016】
図3は、本実施形態の光信号測定装置301を説明する図である。光信号測定装置301は、マルチモード光ファイバを2つの最低次モード群で伝搬する、繰り返し周期Tで変調された被測定信号光のモード毎の時間波形を観察する装置であって、
前記被測定信号光と同一波長かつ繰り返し周期T+ΔTであるサンプリングパルス光を発生するパルス発生器と、
前記マルチモード光ファイバから前記被測定信号光を空間に出力させること、偏波方向を前記被測定信号光に対して45°傾けて前記サンプリングパルス光を前記空間に出力させること、及び前記空間において前記被測定信号光と前記サンプリングパルス光と干渉させて干渉光を発生させることを行う干渉部と、
前記干渉光を直交する偏波成分に分離し、各偏波成分の空間分布をそれぞれ観測する2次元フォトディテクタアレイと、
を備える。
【0017】
光信号測定装置301は、被測定光ファイバであるマルチモード光ファイバ31にて繰り返し周期Tで変調された被測定信号光21を2つの最低次モード群(LP01モード及びLP11モード、図1参照)で伝搬する。
光信号測定装置301は、被測定信号光21と同一波長かつ繰り返し周期T+ΔT(周波数fHz)であるサンプリングパルス光22を発生する。図3の光信号測定装置301において、サンプリングパルス光22を発生させる前記パルス発生器は、例えば、fHz(10MHz程度)の周期で、変調信号光と同一波長の超短パルス(パルス幅約1ピコ秒)を発振するモードロックレーザ33である。
【0018】
光信号測定装置301は、マルチモード光ファイバ31から被測定信号光21を空間30に出力させる。さらに、光信号測定装置301は、偏波方向を被測定信号光21に対して45°傾けてサンプリングパルス光22を空間30に出力させる。そして、空間30において被測定信号光21とサンプリングパルス光22と干渉させて干渉光27を発生させる。
マルチモード光ファイバ31により伝送された被測定信号光21、ならびにサンプリングパルス光22はレンズ系(グリンレンズ32及びレンズ39)によって空間30に出力され、例えばビームスプリッタ35で合波され干渉し、干渉光27となる。図3の光信号測定装置301において、前記干渉部はグリンレンズ32、レンズ39、及びビームスプリッタ35である。
【0019】
光信号測定装置301は、干渉光27を直交する偏波成分に分離し、各偏波成分の空間分布をそれぞれ2次元フォトディテクタアレイ37で受光する。
干渉光27は、偏光ビームスプリッタ36によりx偏波成分とy偏波成分とに分離される。分離された光は、それぞれフォトディテクタアレイ(2×2PDA)(37-x及び37-y)により、ベクトルモードの電界分布のx,y成分(x成分及びy成分ともに4チャネル)が受信される。これらの信号(1秒あたりf個の8チャネル信号)を使って、図1に示す直交する空間モードの複素振幅を特定することができる。
【0020】
PDA37はモードロックレーザ33の繰返し周波数fに追随できればよく、低速で安価なデバイスを使用できる。
【0021】
図3の光信号測定装置301では、PDA37が2×2である構成例であり、LP01モード、LP11モードを観測することが可能である。光信号測定装置301において、PDA37の素子数を増やすことにより、観測するモード数を拡張することができる。
【符号の説明】
【0022】
21:被測定信号光
22:サンプリングパルス光
23:瞬時振幅
24:波形
25:サンプリングクロック
27:干渉光
30:空間
31:被測定光ファイバ(マルチモード光ファイバ)
32:グリンレンズ
33:モードロックレーザ
34:偏波保持ファイバ
35:ビームスプリッタ
36:偏光ビームスプリッタ
37:2×2-PDA
38:8ch-A/D変換
39:レンズ
301:光信号測定装置
図1
図2
図3