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特開2024-121307電気化学的測定方法、電気化学的測定装置、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121307
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】電気化学的測定方法、電気化学的測定装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/30 20060101AFI20240830BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240830BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20240830BHJP
   G01N 27/48 20060101ALI20240830BHJP
   G01N 27/38 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G01N27/30 B
G01N27/416 311L
G01N27/26 391Z
G01N27/26 S
G01N27/48 A
G01N27/38
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028337
(22)【出願日】2023-02-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187632
【弁理士】
【氏名又は名称】橘高 英郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 篤志
(72)【発明者】
【氏名】守田 俊章
(72)【発明者】
【氏名】横山 正史
(72)【発明者】
【氏名】栗原 香
(57)【要約】
【課題】ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極を備える電気化学センサを用い、被検液中の被検物質の濃度を高精度で測定可能な電気化学的測定方法及び電気化学的測定装置を提供する。
【解決手段】被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定方法であって、電気化学的測定装置に、少なくとも、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を備える電気化学センサを装着する工程と、被検液に作用電極及び対電極を接触させた状態で、被検物質の濃度の電気化学的測定を実施する工程と、を有し、所定の条件に該当する場合には、電気化学的測定を実施する工程の前に、被検物質を含む処理液に少なくとも作用電極及び対電極を接触させた状態で、作用電極に被検物質の酸化還元電位を超える電位を印加し、作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を1回又は複数回実施する工程を更に有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定方法であって、
電気化学的測定装置に、少なくとも、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を備える電気化学センサを装着する工程と、
前記被検液に前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記被検物質の濃度の電気化学的測定を実施する工程と、を有し、
以下の(1)~(4)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する工程の前に、前記被検物質を含む処理液に少なくとも前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記作用電極に前記被検物質の酸化還元電位を超える電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を1回又は複数回実施する工程を更に有する、電気化学的測定方法。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着する工程を行った後、前記電気化学的測定を実施する工程を最初に行うとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する工程を繰り返し行う場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する工程を行った時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する工程を行うとき(但し、前回の前記電気化学的測定を実施する工程を行った後に前記前処理を実施する工程を行った場合を除く)
(3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合において、最後に前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する工程を行うとき(但し、前回の前記前処理を実施する工程を行った後に前記電気化学的測定を実施する工程を行った場合を除く)
(4)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する工程を繰り返し行う場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する工程で測定した前記被検物質とは異なる他の被検物質の濃度の電気化学的測定を実施するとき
【請求項2】
前記電気化学センサとして、前記作用電極と前記対電極とが搭載された2電極センサ、又は前記作用電極と前記対電極と参照電極とが搭載された3電極センサを用いる、請求項1に記載の電気化学的測定方法。
【請求項3】
前記電気化学センサに搭載される電極の総てが、表面にホウ素ドープダイヤモンド多結晶で構成された電極膜を有するダイヤモンド電極である、請求項2に記載の電気化学的測定方法。
【請求項4】
前記電気化学的測定は、リニアスイープボルタンメトリー測定、サイクリックボルタンメトリー測定、及びクロノアンペロメトリー測定のうちのいずれかである、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学的測定方法。
【請求項5】
前記処理液は前記被検液と同一である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学的測定方法。
【請求項6】
前記前処理を実施する工程で用いる前記処理液と、前記前処理を実施する工程に続いて行われる前記電気化学的測定を実施する工程で用いる前記被検液とは、同一の前記被検液からそれぞれ別にサンプリングした液である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学的測定方法。
【請求項7】
前記被検物質は水中の溶存オゾンである、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学的測定方法。
【請求項8】
前記被検物質は水中の溶存オゾンであり、
前記作用電極として、リニアスイープボルタンメトリー測定により得られるボルタモグラムにおいて、前記被検液中のオゾン濃度に対応する電流ピークが観測されるような表面処理が施された電極を用いる、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学的測定方法。
【請求項9】
前記被検物質は水中の溶存オゾンであり、
前記前処理を実施する工程では、オゾンを0.1ppm以上の濃度で含む前記処理液に前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記作用電極にオゾンの酸化還元電位を超える電位を印加する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学的測定方法。
【請求項10】
被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定装置であって、
少なくとも、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を備える電気化学センサを装着可能に構成されており、
前記電気化学的測定装置に装着された前記電気化学センサの少なくとも前記作用電極及び前記対電極を、前記被検物質を含む処理液に接触させた状態で、前記作用電極に予め設定された電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を予め設定された回数実施する機能と、
前記被検液に前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記被検物質の濃度の電気化学的測定を実施する機能と、
以下の(1)~(3)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する前に、前記前処理の実施を促す機能と、
を有する、電気化学的測定装置。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着した後、前記電気化学的測定を最初に実施するとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を繰り返し実施する場合において、前回の前記電気化学的測定を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施するとき(但し、前回の前記電気化学的測定を実施した後に前記前処理を実施した場合を除く)
(3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合において、最後に前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施するとき(但し、前回の前記前処理を実施した後に前記電気化学的測定を実施した場合を除く)
【請求項11】
被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定装置であって、
少なくとも、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を備える電気化学センサを装着可能に構成されており、
前記被検物質の濃度を表示する表示部を備え、
測定者が測定対象とする前記被検物質の指示を予め入力すると、前記測定者からの入力情報に基づき検量線を選択する機能と、
前記電気化学的測定装置に装着された前記電気化学センサの少なくとも前記作用電極及び前記対電極を、前記被検物質を含む処理液に接触させた状態で、前記作用電極に予め設定された電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を予め設定された回数実施する機能と、
前記被検液に少なくとも前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記被検物質の濃度に対応する通電電流値の電気化学的測定を実施する機能と、
選択した前記検量線を用いて、測定した前記通電電流値から前記被検物質の濃度を算出する機能と、
算出した前記被検物質の濃度を前記表示部に表示する機能と、
以下の(1)~(4)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する前に、前記前処理の実施を促す機能と、
を有する、電気化学的測定装置。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着した後、前記電気化学的測定を最初に実施するとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を繰り返し実施する場合において、前回の前記電気化学的測定を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施するとき(但し、前回の前記電気化学的測定を実施した後に前記前処理を実施した場合を除く)
(3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合において、最後の前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施するとき(但し、前回の前記前処理を実施した後に前記電気化学的測定を実施した場合を除く)
(4)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を繰り返し実施する場合において、前回の前記電気化学的測定で測定した前記被検物質とは異なる他の被検物質の濃度の前記電気化学的測定を実施するとき
【請求項12】
前記電気化学センサを前記電気化学的測定装置に装着した時刻、前記電気化学的測定を実施した時刻、及び前記前処理を実施した時刻を記録する機能と、
(a)前記電気化学センサを前記電気化学的測定装置に装着した時刻、(b)前回の前記電気化学的測定を実施した時刻、及び(c)前回の前記前処理を実施した時刻のうち、直近の時刻を抽出する機能と、
前記抽出した時刻が(a)の場合、前記前処理が必要である旨の警告を測定者に発する機能と、
前記抽出した時刻が(b)又は(c)の場合であって、(b)又は(c)の時刻から抽出時までの時間が所定の時間を超えている場合、前記前処理が必要である旨の警告を測定者に発する機能と、
前記警告を発した後、前記前処理を予め設定した回数実施するまで、前記電気化学的測定を実施しない機能と、をさらに有する、請求項10又は11に記載の電気化学的測定装置。
【請求項13】
前記電気化学センサは、前記作用電極と前記対電極とが搭載された2電極センサ、又は前記作用電極と前記対電極と参照電極とが搭載された3電極センサである、請求項10又は11に記載の電気化学的測定装置。
【請求項14】
前記電気化学的測定は、リニアスイープボルタンメトリー測定、サイクリックボルタンメトリー測定、及びクロノアンペロメトリー測定のうちのいずれかである、請求項10又は11に記載の電気化学的測定装置。
【請求項15】
前記被検物質は水中の溶存オゾンである、請求項10又は11に記載の電気化学的測定装置。
【請求項16】
前記電気化学的測定を実施する前に、通電試験を実施する機能と、
前記通電試験により測定した任意の電極間の通電抵抗が所定の値を超える場合は、センサのメンテナンス又は交換を促す機能と、
前記通電抵抗が所定の値以下である場合には、前記電気化学的測定を実施する機能と、
を有する、請求項10又は11に記載の電気化学的測定装置。
【請求項17】
前記前処理の実施を促す画面を前記表示部に表示する、請求項11に記載の電気化学的測定装置。
【請求項18】
入力部をさらに備え、
前記入力部からのコマンドに応じて前記前処理を行う、請求項10又は11に記載の電気化学的測定装置。
【請求項19】
前記電気化学的測定装置からの前記電気化学センサの脱着を検知する機能をさらに有する、請求項10又は11に記載の電気化学的測定装置。
【請求項20】
記憶部をさらに備え、
前記記憶部には、種々の前記被検物質に応じた、前記検量線、前記電気化学的測定を実施する際の条件、前記前処理を実施する際の条件が、予め格納されている、請求項11に記載の電気化学的測定装置。
【請求項21】
ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を少なくとも有し、被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定装置に装着された電気化学センサの、前記作用電極及び前記対電極が前記被検液に接触させた状態で、前記被検物質の濃度の電気化学的測定を実施する手順と、
以下の(1)~(4)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する手順の前に、前記被検物質を含む処理液に少なくとも前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記作用電極に前記被検物質の酸化還元電位を超える電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を1回又は複数回実施する手順と、
をコンピュータに実行させるように構成されている、プログラム。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着した後、前記電気化学的測定を実施する手順を最初に実行させるとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する手順を繰り返し実行させる場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する手順を実行した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する手順を実行させるとき(但し、前回の前記電気化学的測定を実施する手順を実行した後に前記前処理を実施する手順を実行した場合を除く)
(3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合において、最後に前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する手順を実行させるとき(但し、前回の前記前処理を実施する手順を実行した後に前記電気化学的測定を実施する手順を実行した場合を除く)
(4)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する手順を繰り返し実行させる場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する手順で測定した前記被検物質とは異なる他の被検物質の濃度の電気化学的測定を実施するとき
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気化学的測定方法、電気化学的測定装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極を備える電気化学センサを電気化学的測定装置に装着し、被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定方法が提案されている(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2020/091033号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極を備える電気化学センサを用い、被検液中の被検物質の濃度を電気化学的測定により測定した場合、被検物質の濃度の測定精度が低くなることがある。
【0005】
本開示の目的は、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極を備える電気化学センサを用い、被検液中の被検物質の濃度を高精度で測定可能な電気化学的測定方法及び電気化学的測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定方法であって、
電気化学的測定装置に、少なくとも、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を備える電気化学センサを装着する工程と、
前記被検液に前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記被検物質の濃度の電気化学的測定を実施する工程と、を有し、
以下の(1)~(4)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する工程の前に、前記被検物質を含む処理液に少なくとも前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記作用電極に前記被検物質の酸化還元電位を超える電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を1回又は複数回実施する工程を更に有する、電気化学的測定方法が提供される。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着する工程を行った後、前記電気化学的測定を実施する工程を最初に行うとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する工程を繰り返し行う場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する工程を行った時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する工程を行うとき(但し、前回の前記電気化学的測定を実施する工程を行った後に前記前処理を実施する工程を行った場合を除く)
(3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合において、最後に前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する工程を行うとき(但し、前回の前記前処理を実施する工程を行った後に前記電気化学的測定を実施する工程を行った場合を除く)
(4)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する工程を繰り返し行う場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する工程で測定した前記被検物質とは異なる他の被検物質の濃度の電気化学的測定を実施するとき
【0007】
本開示の他の態様によれば、
被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定装置であって、
少なくとも、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を備える電気化学センサを装着可能に構成されており、
前記電気化学的測定装置に装着された前記電気化学センサの少なくとも前記作用電極及び前記対電極を、前記被検物質を含む処理液に接触させた状態で、前記作用電極に予め設定された電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を予め設定された回数実施する機能と、
前記被検液に前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記被検物質の濃度の電気化学的測定を実施する機能と、
以下の(1)~(3)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する前に、前記前処理の実施を促す機能と、
を有する電気化学的測定装置。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着した後、前記電気化学的測定を最初に実施するとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を繰り返し実施する場合において、前回の前記電気化学的測定を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施するとき(但し、前回の前記電気化学的測定を実施した後に前記前処理を実施した場合を除く)
(3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合において、最後に前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施するとき(但し、前回の前記前処理を実施した後に前記電気化学的測定を実施した場合を除く)
【0008】
本開示のさらに他の態様によれば、
被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定装置であって、
少なくとも、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を備える電気化学センサを装着可能に構成されており、
前記被検物質の濃度を表示する表示部を備え、
測定者が測定対象とする前記被検物質の指示を予め入力すると、前記測定者からの入力情報に基づき検量線を選択する機能と、
前記電気化学的測定装置に装着された前記電気化学センサの少なくとも前記作用電極及び前記対電極を、前記被検物質を含む処理液に接触させた状態で、前記作用電極に予め設定された電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を予め設定された回数実施する機能と、
前記被検液に少なくとも前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記被検物質の濃度に対応する通電電流値の電気化学的測定を実施する機能と、
選択した前記検量線を用いて、測定した前記通電電流値から前記被検物質の濃度を算出する機能と、
算出した前記被検物質の濃度を前記表示部に表示する機能と、
以下の(1)~(4)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する前に、前記前処理の実施を促す機能と、
を有する、電気化学的測定装置。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着した後、前記電気化学的測定を最初に実施するとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を繰り返し実施する場合において、前回の前記電気化学的測定を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施するとき(但し、前回の前記電気化学的測定を実施した後に前記前処理を実施した場合を除く)
(3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合において、最後の前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施するとき(但し、前回の前記前処理を実施した後に前記電気化学的測定を実施した場合を除く)
(4)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を繰り返し実施する場合において、前回の前記電気化学的測定で測定した前記被検物質とは異なる他の被検物質の濃度の前記電気化学的測定を実施するとき
【0009】
本開示のさらに他の態様によれば、
ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を少なくとも有し、被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定装置に装着された電気化学センサの、前記作用電極及び前記対電極を前記被検液に接触させた状態で、前記被検物質の濃度の電気化学的測定を実施する手順と、
以下の(1)~(4)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する手順の前に、前記被検物質を含む処理液に少なくとも前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記作用電極に前記被検物質の酸化還元電位を超える電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を1回又は複数回実施する手順と、
をコンピュータに実行させるように構成されている、プログラムが提供される。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着した後、前記電気化学的測定を実施する手順を最初に実行させるとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する手順を繰り返し実行させる場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する手順を実行した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する手順を実行させるとき(但し、前回の前記電気化学的測定を実施する手順を実行した後に前記前処理を実施する手順を実行した場合を除く)
(3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合において、最後に前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する手順を実行させるとき(但し、前回の前記前処理を実施する手順を実行した後に前記電気化学的測定を実施する手順を実行した場合を除く)
(4)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する手順を繰り返し実行させる場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する手順で測定した前記被検物質とは異なる他の被検物質の濃度の電気化学的測定を実施するとき
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極を備える電気化学センサを用い、被検液中の被検物質の濃度を高精度で測定可能な電気化学的測定方法及び電気化学的測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一態様における電気化学的測定装置に装着される電気化学センサの概略斜視図の一例である。
図2図1に示す電気化学センサのA-A線断面図である。
図3】本開示の一態様に係る電気化学的測定装置のブロック構成図である。
図4】本開示の一態様における電気化学的装置の動作フロー(電気化学的側的方法の測定フロー)の一例を示す図である。
図5】本開示の一態様における電気化学的測定装置に装着された電気化学センサの電極群を、被検物質を含む被検液に接触させた状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<本発明者等が得た知見>
従来より、少なくとも作用電極がチップ状のダイヤモンド電極で構成されている電気化学センサを用いて、被検物質(例えばオゾン(O))を所定濃度で含む被検液中の被検物質の濃度を測定することが提案されている。ダイヤモンド電極とは、導電性基板と、導電性基板上に形成され、多結晶ダイヤモンドで構成される電極膜と、を備える電極である。ダイヤモンド電極は、その測定感度を高めるために、作用電極に対して各種の表面処理を行う技術が提案されている。しかしながら、作用電極がダイヤモンド電極で構成されている電気化学センサでは、被検物質の濃度を電気化学的測定により再現性よく測定できないという課題があった。本発明者等は、この課題について鋭意研究を行った。その結果、作用電極に対して各種の表面処理を実施した場合であっても、表面処理の実施後の作用電極(電気化学センサ)の保管状態や、表面処理の実施からの経過時間等に応じて、作用電極の表面(電気化学的測定に寄与する面)が変化し、その結果、センサの感度が低下(劣化)してしまうことが分かった。そして、このように感度が低下した電気化学センサであっても、電気化学的測定の実施の前に、作用電極に対して所定の条件で測定前処理(本明細書では、単に「前処理」と称する)を行うことで、センサの感度を回復させ、被検物質の濃度を電気化学的測定により高精度で再現性よく測定できるようになることを見出した。このことは、本発明者等が見出した新たな知見である。
【0013】
本開示は、本発明者等が得た上述の課題や知見に基づいてなされたものである。
【0014】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、図1図4を参照しながら説明する。
【0015】
(1)電気化学センサの構成
本態様に係る電気化学的測定装置100(以下、「測定装置100」とも称する)に脱着可能な電気化学センサ10(以下、「センサ10」とも称する)の一例について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0016】
センサ10は、作用電極と対電極と参照電極とが搭載された3電極センサとして構成されている。なお、センサ10は、作用電極と対電極とが搭載された2電極センサであってもよい。本態様では、センサ10が3電極センサとして構成されている例について説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、センサ10は、支持基材11(以下、「基材11」とも称する)を備えている。基材11は、後述の作用電極15、対電極16、及び参照電極17等を支持する基板状の部材である。基材11は、シート状(板状)部材として構成されている。基材11は、例えば絶縁性を有する複合樹脂、セラミック、ガラス、プラスチック等の絶縁性材料で形成することができる。基材11は、例えば、ガラスエポキシ樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)で形成されていることが好ましい。また、基材11は、作用電極15、対電極16、及び参照電極17等が設けられることとなる面が絶縁性を有するように構成された半導体基板や金属基板であってもよい。基材11の平面形状は例えば長方形状とすることができる。基材11は、所定の物理的強度及び機械的強度、例えば電気化学的測定の実施中は、折れ曲がったり、破損したりすることがない強度を有している。
【0018】
基材11が有する2つの主面のうちいずれか一方の主面(以下、「基材11の上面」とも称する)上には、基材11の長手方向における一端部から他端部側に向かって、3本の配線(電気配線)12,13,14が互いに離間して配設されている。配線12~14の形成材料としては、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)等の各種貴金属、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)等の各種金属、これらの貴金属又は金属を主成分とする合金、上記貴金属、金属、又は合金の酸化物、カーボン等が例示される。配線12~14は、同一の材料を用いて形成されていてもよく、それぞれが異なる材料を用いて形成されていてもよい。配線12~14は、サブトラクティブ法やセミアディティブ法等により形成することができる。また、配線12~14は、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の印刷法や、蒸着法等により形成することもできる。
【0019】
配線12の一端部には、導電性の接合材18(図2参照)を介して、作用電極15が電気的に接続されている。配線13の一端部には、導電性の接合材18を介して、対電極16が電気的に接続されている。配線14の一端部には、導電性の接合材18を介して、参照電極17が電気的に接続されている。接合材18としては、導電性ペースト(導電性接着剤)や導電性テープ等を用いることができる。
【0020】
作用電極15、対電極16、及び参照電極17は、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有するダイヤモンド電極、具体的には、ホウ素(ボロン)ドープダイヤモンド多結晶で構成された電極膜を表面に有するダイヤモンド電極(以下、「BDD電極」とも称する)である。BDD電極は、多結晶ダイヤモンド等で構成された電極膜21と、電極膜21を支持する導電性基板22と、を備えるチップ状の電極(電極チップ)である。本明細書では、作用電極15、対電極16、及び参照電極17をまとめて電極群30と称することもある。作用電極15、対電極16、及び参照電極17の詳細については後述する。
【0021】
作用電極15と配線12との接合部の周囲、対電極16と配線13との接合部の周囲、及び参照電極17と配線14との接合部の周囲は、それぞれ、絶縁性樹脂19(図2参照)で封止されている。絶縁性樹脂19は、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂で構成することができる。熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂としては、エポキシ系の絶縁樹脂、ノボラック系の絶縁樹脂等を用いることができる。絶縁性樹脂19は、例えば、硬化前の液状の絶縁性樹脂(以下、「液状樹脂」とも称する)を、各接合材18の周囲と、作用電極15、対電極16、及び参照電極17のそれぞれの周囲と、に塗布し、加熱又は紫外線照射により液状樹脂を硬化させることで設けることができる。なお、液状樹脂の塗布及び硬化は、作用電極15と配線12とを電気的に接続し、対電極16と配線13とを電気的に接続し、参照電極17と配線14とを電気的に接続した後に行われる。液状樹脂は、例えば、接合材18、作用電極15の側面、対電極16の側面、及び参照電極17の側面を露出させることなく覆うように塗布する。また、液状樹脂は、作用電極15の表面、対電極16の表面、及び参照電極17の表面には付着しないように塗布する。なお、「作用電極15の表面」、「対電極16の表面」、「参照電極17の表面」とは、それぞれ、各電極が有する電極膜の表面を意味し、具体的には、電極膜が有する2つの主面のうち、導電性基板22と接する面とは反対側の面を意味する。「作用電極15の表面」、「対電極16の表面」、「参照電極17の表面」は、被検液中の被検物質(例えばO)の検出に寄与する面(検出面)であるともいえる。
【0022】
配線12~14は、電極群30を後述の被検液や処理液(以下、「被検液等」とも称する)に接触させた際に、被検液等が配線12~14に接触することがないように、絶縁性の材料等で形成された防水部材20により覆われている。なお、防水部材20は、配線12~14がそれぞれ有する2つの端部のうち、各電極に接続された端部とは異なる端部を露出させるように構成されている。
【0023】
上述のように、作用電極15、対電極16、及び参照電極17の総てが、電極膜21と、電極膜21を支持する導電性基板22(以下、「基板22」とも称する)と、を備えるBDD電極である。BDD電極は、基板22の裏面から導通をとる縦型電極として構成されている。ここでいう「基板22の裏面」とは、基板22が有する2つの主面のうち、電極膜21が設けられた面とは反対側の面である。
【0024】
電極膜21は多結晶ダイヤモンドで構成されている。具体的には、電極膜21は、ドーパントとしてのホウ素(B)元素を含むダイヤモンド結晶、すなわち、p型の導電性を有するダイヤモンド結晶で構成される多結晶膜(多結晶ダイヤモンド膜)である。ダイヤモンド結晶とは、炭素(C)原子がダイヤモンド結晶構造と呼ばれるパターンで配列している結晶である。また、電極膜21は、Bがドープされたダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)膜であってもよい。電極膜21におけるB濃度は、二次イオン質量分析(Secondary Ion Mass Spectrometry(SIMS))で測定でき、例えば5×1019cm-3以上5×1021cm-3以下とすることができる。SIMSとは、電極膜21の表面にビーム状のイオン(一次イオン)を照射した際に発生するイオン(二次イオン)を質量分析計で検出して所定の物質の濃度を測定する手法である。
【0025】
電極膜21は、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition(CVD))法や、物理蒸着(Physical Vapor Deposition(PVD))法等により成長させる(堆積させる、合成する)ことができる。CVD法としては、タングステンフィラメントを用いた熱フィラメント(ホットフィラメント)CVD法、プラズマCVD法等が例示され、PVD法としては、イオンビーム法やイオン化蒸着法等が例示される。電極膜21の厚さは、例えば0.5μm以上10μm以下、好ましくは1μm以上6μm以下、より好ましくは2μm以上4μm以下とすることができる。
【0026】
基板22としては、低抵抗材料で構成された平板状の基板が用いられる。基板22として、シリコン(Si)を主元素として構成され、ホウ素(B)等のp型のドーパントを所定濃度で含む基板、例えばp型の単結晶Si基板を用いることができる。基板22として、p型の多結晶Si基板を用いることもできる。基板22におけるB濃度は、例えば5×1018cm-3以上1.5×1020cm-3以下、好ましくは5×1018cm-3以上1.2×1020cm-3以下とすることができる。基板22におけるB濃度が上記範囲内であることにより、基板22の比抵抗を低くしつつ、基板22の製造歩留の低下や性能劣化を回避することができる。
【0027】
基板22の厚さは例えば350μm以上とすることができる。これにより、直径が6インチや8インチである市販の単結晶Si基板を、バックラップ(back rap)して厚さ調整することなく、基板22としてそのまま用いることが可能となる。その結果、BDD電極の生産性を高め、製造コストを低減することが可能となる。基板22の厚さの上限は特に限定されないが、現在一般的に市場に流通しているSi基板の厚さは、直径が12インチの単結晶Si基板で775μm程度である。このため、現在の技術における基板22の厚さの上限は例えば775μm程度とすることができる。
【0028】
基板22として、Siを主元素として構成された基板(Si基板)以外の基板を用いることもできる。例えば、基板22として、炭化シリコン基板(SiC基板)等のSiの化合物を用いて構成された基板を用いることもできる。
【0029】
なお、基板22として、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)等を主元素として構成された金属基板を用いることも考えられる。しかしながら、金属基板を用いた場合、リーク電流が生じやすいことから、基板22として、Si基板やSiの化合物を用いて構成された基板を用いる方が好ましい。
【0030】
少なくとも作用電極15に対しては、センサ感度を高めるための表面処理が施されていることが好ましい。具体的には、作用電極15に対しては、リニアスイープボルタンメトリー(LSV)測定により得られるボルタモグラムにおいて、被検液中の被検物質(例えばO)の濃度に対応する電流ピークが観測されるような表面処理が施されていることが好ましい。例えば、被検物質が水中の溶存オゾンである場合、電極群30(すなわち、作用電極15、対電極16、及び参照電極17)を、Oを高濃度(例えば10ppm以上の濃度)で含む液に接触させた状態で、作用電極15にOの酸化還元電位を超える電位を印加し、作用電極15の表面(検出面)で所定の電気化学反応を生じさせる処理が施されていることが好ましい。これにより、センサ10の感度を、例えば飽和感度(そのセンサ10が有する最大の感度)まで高めることができる。その結果、作用電極15を有するセンサ10を用いてLSV測定(電気化学的測定)を行った際、得られるボルタモグラムにおいて、参照電極17がダイヤモンド電極であっても、被検液中のO濃度に対応する電流ピークを観測できる。
【0031】
ここで、センサ10の飽和感度は、センサ10が有する各電極の電極膜21を構成するBDD結晶の結晶粒径や配向性、電極膜21におけるドーパントのドープ量等の結晶特性や、電極サイズ、センサ10の仕様(例えば、各電極の配置)等によって決まるため、センサ10毎に微妙に異なる可能性がある。なお、本明細書における「センサ10の感度」とは、当該センサ10を用いて作成された検量線の傾きで定義され、簡易的には、ある被験物質の濃度に対応する電流密度ピーク値と原点とを結ぶ直線の傾きとすることができる。ここでいう「電流密度ピーク値」とは、センサ10を用いたLSV測定により得られる電流ピーク値を、作用電極15の平面積及び被検液中の被検物質の濃度で割った値(=電流ピーク値/(作用電極15の平面積・被検物質の濃度))の絶対値である。
【0032】
作用電極15、対電極16、及び参照電極17の外形(平面形状)は、それぞれ、基板22の主面に対して垂直方向上方から各電極を見た際に矩形状、例えば長方形状に成形されている。なお、作用電極15、対電極16、及び参照電極17は、それぞれ、同一の平面形状に成形されていても良く、異なる平面形状に成形されていても良い。
【0033】
作用電極15の平面積は、例えば1mm以上100mm以下である。対電極16の平面積及び参照電極17の平面積は、特に限定されないが、それぞれ、例えば1mm以上100mm以下である。なお、作用電極15の平面積、対電極16の平面積、参照電極17の平面積とは、それぞれ、基板22の主面に対して垂直方向上方から各電極をそれぞれ見た際の各電極の面積である。電極膜21は、基板22の結晶堆積面全域にわたって設けられることから、各電極の平面積は、各電極が有する電極膜21の平面積、すなわち、被検液中のOの検出に寄与する面の面積となる。
【0034】
作用電極15、対電極16、及び参照電極17の平面積が、それぞれ、1mm以上であることで、各電極のハンドリング性の低下及び実装安定性の低下を抑制することもできる。また、作用電極15の平面積が1mm以上であることで、電気化学的測定により被検物質の濃度を高精度で測定するために必要な感度を有するセンサ10が得られやすくなる。また、電気化学的測定時に流れる電流が過小になることを回避でき、結果、S/N比(=作用電極15を流れる電流(信号電流)/ノイズ電流の比)の低下も回避できる。また、作用電極15、対電極16、及び参照電極17の平面積が、それぞれ、100mm以下であることで、センサ10の大型化を回避できる、
【0035】
なお、作用電極15、対電極16、及び参照電極17は、それぞれ、同一の平面積を有していてもよく、また、上述の平面積の範囲内であれば、異なる平面積を有していてもよい。図1には、作用電極15、対電極16、及び参照電極17が、同一の平面積を有する例を示している。
【0036】
(2)電気化学的測定装置の構成
本態様に係る電気化学的測定装置100について、図3を参照しながら説明する。本態様に係る測定装置100は、被検液中の被検物質の濃度を測定する装置であり、具体的には、電気化学的測定としてのリニアスイープボルタンメトリー(LSV)測定(又はサイクリックボルタンメトリー(CV)測定)を行い、被検物質の濃度を測定する装置である。被検物質は、特に限定されず、公知の種々の物質を測定できる。被検物質としては、オゾン(O)、クエン酸、カフェイン、塩素等が例示される。
【0037】
測定装置100は、上述のセンサ10を脱着(装着及び取り外し)可能に構成されている。また、測定装置100は、例えばポテンショスタットとしての機能を有している。また、測定装置100(測定装置本体)は、例えばJIS規格に適合する耐水(防水)性能を有している。また、測定装置100におけるセンサ10の脱着部は、センサ10を装着した際に測定装置100の内部に被検液等の液体が流入しないように構成されている。
【0038】
図3に、本態様に係る測定装置100のブロック構成図を示す。図3に示すように、測定装置100は、CPU(Central Processing Unit)101a、RAM(Random Access Memory)101b、記憶部101c、例えばタッチパネル等として構成された入力部101d、ディスプレイ、タッチパネル式のディスプレイ、ランプ、ブザー等として構成された出力部(表示部)101e、及び無線あるいは有線を用いる通信部101fを備えたコンピュータ(スマートフォン、タブレット、PC等)として構成されている。なお、出力部101eは、タッチパネルを例えばGUI(Graphical User Interface)として利用することで、入力部101dとしても機能するように構成されていてもよい。本態様では、出力部101eが入力部101dとしても機能する例について説明する。CPU101a、RAM101b、記憶部101c、入力部101d、出力部101e、及び通信部101fは、内部バス101gを介して互いにデータ交換が可能なように構成されている。
【0039】
記憶部101cは、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性メモリデバイスにより構成されている。記憶部101cは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。記憶部101c内には、測定装置100の動作を制御する制御プログラムやその動作に際して用いられるデータファイル等が、読み出し可能に格納されている。以下、制御プログラムやデータファイル等を総称して、単に、プログラムともいう。RAM101bは、CPU101aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0040】
記憶部101cから読み出した制御プログラムをCPU101aが実行することにより、測定装置100に、検知機能100a、選択機能100b、判定機能100c、前処理機能100d、測定機能100e、算出機能100f、通電試験機能100g、出力機能100hといった機能群が実現される。これらの機能は、上述のプログラムと、CPU101a、RAM101b、記憶部101c、入力部101d、出力部101e、通信部101fといったハードウェア資源と、の協働動作により実現されるものである。以下、測定装置100に実現されるこれらの機能について、順に説明する。
【0041】
(検知機能)
検知機能100aは、測定装置100へのセンサ10の脱着(装着及び取り外し)を検知するように構成されている。また、検知機能100aは、測定装置100へのセンサ10の装着を検知したら、センサ10の装着時刻(装着日時)を記録し、装着時刻の情報を記憶部101cに読み出し可能に格納するように構成されている。また、検知機能100aは、測定装置100からのセンサ10の取り外しを検知したら、センサ10の取り外し時刻を記録し、取り外し時刻の情報を記憶部101cに読み出し可能に格納するように構成されていてもよい。また、検知機能100aは、センサ10の脱着を検知したら、「脱着を検知した」旨を示すメッセージや脱着時刻の情報等を出力部101eに出力するよう、後述の出力機能100hを動作させるように構成されていてもよい。
【0042】
(選択機能)
測定者が、今回の測定対象とする被検物質の種類等の指示を、入力部101dを介して入力すると、選択機能100bは、入力部101dからのコマンドに応じて、記憶部101cに予め格納されている複数の検量線、複数の前処理条件、及び複数の測定条件の中から、測定者が入力した被検物質に対応する検量線、前処理条件、及び測定条件をそれぞれ選択するように構成されている。検量線、前処理条件、及び測定条件は、使用するセンサ10の仕様及び測定対象となり得る被検物質の種類に応じてそれぞれ用意し、記憶部101cに予め格納しておくことができる。なお、本明細書における「前処理条件」とは、後述の前処理を実施する際の条件であり、前処理実施時における印加電位条件、前処理の実施回数等である。また、本明細書における「測定条件」とは、後述の電気化学的測定を実施する際の条件であり、電気化学的測定の実施時における印加電圧範囲条件、掃引速度条件等である。
【0043】
また、選択機能100bは、今回の測定対象とする被検物質のおよその濃度が予測できるときは、測定者が測定レンジを更に選択できるように構成されていてもよい。例えば、測定者が、測定条件や使用する検量線等をより詳細に選択できるように構成されていてもよい。
【0044】
また、選択機能100bは、測定者が入力した情報(被検物質の種類の情報、入力日時の情報等)を、記憶部101cに読み出し可能に格納するように構成されている。
【0045】
また、選択機能100bは、選択した検量線及び測定条件の情報を出力部101eに出力するよう、後述の出力機能100hを動作させるように構成されていてもよい。
【0046】
(判定機能)
判定機能100cは、前処理が必要か否か、具体的には、下記(条件1)~(条件4)のうち少なくともいずれかに該当するか否かを判定するように構成されている。
(条件1)測定装置100にセンサ10を装着した後、LSV測定を最初に実施するとき
(条件2)測定装置100からセンサ10を取り外すことなく同一のセンサ10を用いてLSV測定を繰り返し実施する場合において、前回のLSV測定を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、LSV測定を実施するとき(但し、前回のLSV測定の実施後に後述の前処理を実施した場合を除く)
(条件3)測定装置100からセンサ10を取り外すことなく同一のセンサ10を用いる場合において、最後の前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、LSV測定を実施するとき(但し、前回の前処理実施後にLSV測定を実施した場合を除く)
(条件4)測定装置100からセンサ10を取り外すことなく同一のセンサ10を用いてLSV測定を繰り返し実施する場合において、前回のLSV測定で測定した被検物質とは異なる他の被検物質の濃度のLSV測定を実施するとき
【0047】
例えば、判定機能100cは、(a)センサ10を測定装置100に装着した時刻、(b)前回のLSV測定を実施した時刻、及び(c)前回の(最後に)前処理を実施した時刻に基づいて、(条件1)~(条件3)の少なくともいずれかに該当するか否かを判定するように構成されている。
【0048】
具体的には、判定機能100cは、上記時刻(a)~(c)を記憶部101cからそれぞれ読み出し、時刻(a)~(c)のうち直近時刻を抽出する機能をさらに有している。また、判定機能100cは、直近時刻が時刻(a)の場合、(条件1)に該当すると判定するように構成されている。また、判定機能100cは、直近時刻が時刻(b)又は(c)の場合、時刻(b)又は(c)から抽出時までの時間を計算する機能をさらに有している。また、判定機能100cは、直近時刻が時刻(b)であって、時刻(b)から抽出時までの時間が所定の時間(例えば2時間、好ましくは1時間、より好ましくは30分)を超えている場合、(条件2)に該当すると判定するように構成されている。また、判定機能100cは、直近時刻が時刻(c)であって、時刻(c)から抽出時までの時間が所定の時間(例えば2時間、好ましくは1時間、より好ましくは30分)を超えている場合、(条件3)に該当すると判定するように構成されている。
【0049】
また、判定機能100cは、前回のLSV測定で測定した被検物質の種類(以下、「前回の測定物質」とも称する)及び今回の電気化学的測定で測定する被検物質の種類(以下、「今回の測定物質」とも称する)の情報に基づいて、(条件4)に該当するか否かを判定するように構成されている。
【0050】
例えば、判定機能100cは、前回の測定物質の情報を記憶部101cから読み出し、今回の測定物質と一致するか否かを判定するように構成されている。また、判定機能100cは、前回の測定物質と今回の測定物質とが一致しない場合、(条件4)に該当すると判定するように構成されている。
【0051】
判定機能100cは、(条件1)~(条件4)のうち少なくともいずれかに該当すると判定すると、「前処理が必要である」旨の警告を測定者に発する機能(前処理の実施を促す機能)を有している。例えば、判定機能100cは、(条件1)~(条件4)のうち少なくともいずれかに該当する場合、前処理の実施を促すようなメッセージ表示やアラーム発報を行うよう、後述の出力機能100hを動作させるように構成されている。
【0052】
また、判定機能100cは、(条件1)~(条件4)のいずれにも該当しないと判定すると、通電試験機能100gを動作させるように構成されている。
【0053】
また、判定機能100cは、(条件1)~(条件4)のうち少なくともいずれかに該当するか否かの判定結果、読み出した時刻(a)~(c)の情報、直近時刻の情報、直近時刻を抽出した時刻の情報、時刻(b)又は(c)から直近時刻の抽出時までの時間の情報、前回の測定物質の情報等を出力部101eに出力するよう、後述の出力機能100hを動作させるように構成されていてもよい。
【0054】
(前処理機能)
前処理機能100dは、判定機能100cが(条件1)~(条件4)のうち少なくともいずれかに該当すると判定した場合、前処理を予め設定(規定)した回数(1回又は複数回)実施するように構成されている。なお、前処理の実施回数は、記憶部101c内に予め格納される前処理条件に設定されている。本明細書における「前処理」とは、被検物質を含む処理液に少なくとも作用電極15及び対電極16を接触させた状態で、選択機能100bが選択した被検物質に対応する前処理条件に基づいて、作用電極15に被検物質(例えばO)の酸化還元電位を超える電位を印加し、作用電極15の表面(検出面)で電気化学反応を生じさせる処理である。前処理に用いる処理液は、前処理に続いて実施される後述の濃度測定処理で用いる被検液と同一の(同様の)液であることが好ましい。すなわち、被検液がOを所定濃度で含む水道水である場合は、処理液も、Oを所定濃度で含む水道水であることが好ましい。また、処理液は、後述の濃度測定処理で用いる被検液からサンプリングした液であることがより好ましい。以下では、処理液が被検液からサンプリングした液である例について説明する。
【0055】
また、前処理機能100dは、上述の前処理を行いつつ、前処理で生じる電気化学反応に起因して作用電極15と対電極16との間に流れる電流値を測定するように構成されていてもよい。また、前処理機能100dは、測定した電流値の変化率や、電流ピークの出現の有無に応じて、自動的に前処理の再実施を判断して、前処理の実施回数を可変するように構成されていてもよい。
【0056】
また、前処理機能100dは、判定機能100cが(条件1)~(条件4)のいずれにも該当しないと判定した場合であっても、入力部101dを介して測定者からの前処理実施の指示を受け付けると、入力部101dからのコマンドに応じて、前処理を実施するように構成されていてもよい。
【0057】
また、前処理機能100dは、前処理の実施時刻を記録し、この時刻情報を記憶部101c内に読み出し可能に格納するように構成されている。ここでいう「前処理の実施時刻」は、「前処理の開始時刻」又は「前処理の完了時刻」とすることができ、「前処理の完了時刻」とすることがより好ましい。
【0058】
また、前処理機能100dは、前処理が完了したら、「前処理が完了した」旨を示すメッセージや、前処理の実施時刻の情報等を出力部101eに出力するよう、後述の出力機能100hを動作させるように構成されていてもよい。
【0059】
なお、前処理に用いた処理液は、測定対象とする被検物質の濃度が変化している可能性が高いため、後述の濃度測定処理を実施する前に、処理液を新しい被検液に交換する必要がある。このため、前処理機能100dは、前処理が完了した後、「被検液の交換が必要である」旨の警告を測定者に発する機能を有していることが好ましい。例えば、前処理機能100dは、前処理が完了したら、被検液の交換を促すメッセージ表示やアラーム発報を行うよう、後述の出力機能100hを動作させるように構成されていることが好ましい。
【0060】
(通電試験機能)
通電試験機能100gは、測定機能100eによるLSV測定の実施前に、好ましくは、LSV測定の実施直前に、通電試験を実施するように構成されている。なお、本明細書における「通電試験」とは、測定装置100とセンサ10との間の接続を確認したり、センサ10が有する各電極15~17の表面の汚れや劣化の有無を確認したりする試験である。例えば、通電試験機能100gは、被検液等に電極群30を接触させた状態で、交流2電極法により任意の電極間の通電抵抗(抵抗率)を測定するように構成されている。任意の電極間の通電抵抗は、例えば、作用電極15の表面で電気化学反応が生じる前の微小電圧の範囲内(被検物質がOである場合、例えば0.01V~0.1Vの範囲内)で、任意の電極間に所定周波数の交流電圧(sin波)を印加し、任意の電極間のインピーダンス測定を実施することにより測定することが好ましい。これにより、特に、作用電極15の表面で電気化学反応が生じる前の微小電圧の範囲内で通電抵抗を測定することにより、被検液中の被検物質が通電試験により消耗することを回避できる。
【0061】
通電試験機能100gは、LSV測定の実施前に(好ましくは実施直前に)通電試験を実施するよう構成されていることが好ましいが、判定機能100cによる判定処理の実施前に通電試験を実施するよう構成されていてもよい。
【0062】
また、通電試験機能100gは、測定した通電抵抗値を出力部101eに出力するよう、後述の出力機能100hを動作させるように構成されていてもよい。
【0063】
また、通電試験機能100gは、測定した通電抵抗が予め設定された所定の値以下である場合に、測定機能100eを動作させるように構成されている。
【0064】
また、通電試験機能100gは、測定した通電抵抗が予め設定された所定の値を超えている場合には、「センサ10のメンテナンス又は交換が必要である」旨の警告を測定者に発する機能を有していてもよい。例えば、通電試験機能100gは、センサ10のメンテナンスやセンサ10の交換を促すようなメッセージ表示やアラーム発報を行うよう、後述の出力機能100hを動作させるように構成されていてもよい。なお、本明細書における「センサ10のメンテナンス」としては、センサ10の洗浄や、電極接点の清掃が例示される。
【0065】
(電気化学的測定機能)
電気化学的測定機能100e(以下、単に「測定機能100e」とも称する)は、測定装置100に装着されたセンサ10の少なくとも電極群30を被検液に接触させた状態でLSV測定(電気化学的測定)を実施し、被検物質の濃度を測定するように構成されている。例えば、測定機能100eは、少なくとも電極群30を被検液に接触させた状態で、選択機能100bが選択した被検物質に対応する測定条件に基づいて、作用電極15と対電極16との間に電圧を印加するとともに、参照電極17の電位を基準にして作用電極15の電位を掃引することで、作用電極15の表面で電気化学反応を生じさせ、そして、電気化学反応に起因して作用電極15と対電極16との間に流れる、被検物質の濃度に対応する通電電流値を電気化学的に測定するように構成されている。
【0066】
また、測定機能100eは、測定した通電電流値のデータや電気化学的測定の実施時刻を記録し、これらの情報を記憶部101c内に読み出し可能に格納するように構成されている。ここでいう「電気化学的測定の実施時刻」とは、「電気化学的測定を開始した時刻」又は「電気化学的測定を終了した時刻」とすることができる。
【0067】
また、測定機能100eは、測定した通電電流値のデータや記録した時刻の情報を出力部101eに出力するよう、後述の出力機能100hを動作させるように構成されていてもよい。
【0068】
また、測定機能100eは、判定機能100cが「前処理が必要である」旨を示す警告を発した後、前処理機能が前処理を1回又は複数回実施するまで、あるいは既定の回数実施するまで、LSV測定を実施しない機能をさらに有していてもよい。
【0069】
(算出機能)
算出機能100fは、選択機能100bが選択した検量線を用いて、測定機能100eにより測定した通電電流値(のピーク値)から被検物質の濃度を算出するように構成されている。また、算出機能100fは、算出した濃度のデータを、記憶部101c内に読み出し可能に格納するように構成されていてもよい。また、算出機能100fは、算出した濃度のデータを出力部101eに出力するよう、後述の出力機能100hを動作させるように構成されていてもよい。
【0070】
(出力機能)
出力機能100hは、測定開始の指示の入力、前処理の実施(前処理開始の指示(前処理機能100dを動作させるコマンド)の入力)を測定者に要求するメッセージを、出力部101eに出力することが可能なように構成されている。
【0071】
また、出力機能100hは、判定機能100cによる警告、前処理機能100dによる警告、通電試験機能100gによる警告を出力部101eに出力させることが可能なように構成されている。また、出力機能100hは、検知機能100aが検知したセンサ10の脱着の情報、選択機能100bが選択した検量線、前処理条件、及び測定条件の情報、判定機能100cによる判定結果の情報、測定機能100eが測定した通電電流値の情報、算出機能100fが算出した被検物質の濃度の情報等を記憶部101cから読み出し、出力部101eに出力(表示)させること等が可能なように構成されている。
【0072】
また、出力機能100hは、測定の準備を促すようなメッセージ表示を行うことが可能なように構成されていてもよい。例えば、出力機能100hは、測定する被検液の用意やセンサ10のセットを促すようなメッセージを、出力部101eに出力するように構成されていてもよい。なお、本明細書における「センサ10のセット」とは、測定装置100に装着したセンサ10の少なくとも電極群30を被検液(又は処理液)に接触させることを意味する。
【0073】
また、出力機能100hは、前処理の実施後や、センサ10のメンテナンス又は交換後に、測定の再準備を促すようなメッセージ表示を行うことが可能なように構成されていてもよい。例えば、出力機能100hは、被検液の交換やセンサ10の再セットを促すようなメッセージを、出力部101eに出力するように構成されていてもよい。
【0074】
また、出力機能100hは、測定開始の指示のコマンドの入力を要求するメッセージ表示の前に、「被検液を直前に交換したことを確認する」旨のコマンドの入力を測定者に要求するメッセージを、出力部101eに出力するように構成されていてもよい。
【0075】
また、例えばオゾン水のように時間経過とともに濃度が減衰する性質を有する被検液中の被検物質の濃度を測定する際には、被検液のサンプリングから時間を置かずに測定機能100eによるLSV測定を開始することが好ましい。このため、出力機能100hは、測定機能100eによるLSV測定の実施直前に、新しい被検液への交換を促すようなメッセージ表示やアラーム発報を行うことが可能なように構成されていてもよい。
【0076】
(3)電気化学的測定方法
続いて、上述の測定装置100を用い、被検物質としてのOを所定濃度で含む被検液中のO濃度、具体的には、水道水を原水として市販のオゾン水生成器を用いて製造したオゾン水中の溶存オゾン濃度を測定する方法の一例について、図4及び図5を参照しながら説明する。以下の説明において、判定機能100c、前処理機能100d、測定機能100e等の各種機能は、記憶部101c内に格納されているプログラムを読み出してCPU101aが実行することにより実現される。
【0077】
(検量線、前処理条件、及び測定条件の設定)
図4に示すように、まず、検量線、前処理条件、及び測定条件を設定する(検量線等の設定)。具体的には、測定者は、入力部101dを介して測定する被検物質の種類を入力する。測定者により被検物質が入力されると、選択機能100bは、測定者が入力した被検物質の情報に基づいて、予め記憶部101c内に格納されている複数の検量線、複数の前処理条件、及び複数の測定条件の中から、被検物質に応じた検量線、前処理条件、及び測定条件をそれぞれ設定(選択)する。なお、被検液中の被検物質のおよその濃度が予測できるときは、測定者は、測定レンジをさらに選択し、測定条件や使用する検量線等をより詳細に選択するようにしてもよい。また、選択機能100bは、測定者が入力部101dを介して入力した情報(被検物質の種類の情報、入力日時の情報等)を記憶部101cに読み出し可能に格納する。このとき、選択機能100bは、選択した検量線、前処理条件、及び測定条件の情報をそれぞれ出力部101eに出力するよう、出力機能100hを動作させてもよい。
【0078】
(センサの装着)
測定者が測定装置100にセンサ10を装着する。検知機能100aは、測定装置100へのセンサ10の装着を検知したら、測定装置100へのセンサ10の装着時刻の情報を記憶部101cに読み出し可能に格納する。このとき、検知機能100aは、「センサ10の装着を検知した」旨を示すメッセージ等を出力部101eに出力するよう、出力機能100hを動作させてもよい。また、センサ10にシリアルナンバー等の情報をバーコードや二次元コード等を利用して付けておき、測定装置100にセンサ10を装着する際に、装着したセンサ10に関する情報を測定装置100で読み取って記憶部101cに読み出し可能に格納してもよい。
【0079】
なお、センサ10の装着のタイミングは、検量線等の設定前、設定後、設定中(設定と同時)のいずれのタイミングであってもよい。
【0080】
(測定の準備)
検量線等の設定及びセンサ10の装着がそれぞれ完了した後、出力機能100hは、測定の準備を促すメッセージを出力部101eに出力する。測定の準備を促すメッセージが表示されたら、測定者は、被検液をサンプリングし(被検液の用意)、図5に示すように、センサ10が有する電極群30をサンプリングした被検液に接触させる(センサ10のセット)。
【0081】
出力機能100hは、測定の準備を促すメッセージの表示に続いて、測定開始の指示の入力を測定者に要求するメッセージを出力部101eに出力する。測定開始の指示のコマンドの入力を要求するメッセージが表示されたら、測定者は、入力部101dを介して測定開始の指示を入力する。
【0082】
(判定処理)
入力部101dを介して測定者からの測定開始の指示を受け付けると、電極群30を被検液に接触させた状態を維持しつつ(電極群30を被検液から取り出すことなく)、判定機能100cが、入力部101dからのコマンドに応じて、前処理の要否を判定する。すなわち、判定機能100cは、上述の(条件1)~(条件4)のうち少なくともいずれかに該当するかを判定する。
【0083】
具体的には、判定機能100cは、上述の時刻(a)~(c)を記憶部101cからそれぞれ読み出すとともに、(a)~(c)の時刻のうち直近時刻を抽出(判定)する。そして、判定機能100cは、直近時刻が(a)の場合、(条件1)に該当すると判定する。判定機能100cは、直近時刻が(b)の場合、(b)の時刻から抽出時までの時間をさらに計算し、計算した時間が所定の時間を超えている場合は(条件2)に該当すると判定する。また、判定機能100cは、直近時刻が(c)の場合、(c)の時刻から抽出時までの時間をさらに計算し、計算した時間が所定の時間を超えている場合は(条件3)に該当すると判定する。
【0084】
また、判定機能100cは、前回の測定物質の情報を記憶部101cから読み出すとともに、今回の測定物質と一致するか否かを判定する。判定機能100cは、これらの測定物質が一致しない場合は(条件4)に該当すると判定する。
【0085】
判定機能100cは、(条件1)~(条件4)の少なくともいずれかに該当すると判定した場合、判定結果として、「前処理が必要である」旨を示す警告を測定者に発する。例えば、判定機能100cは、前処理の実施を促すようなメッセージ表示やアラーム発報を行うよう、出力機能100hを動作させる。なお、(条件1)~(条件3)のうちの1つと(条件4)との両方に該当する場合であっても、判定機能100cは、「前処理が必要である」旨を示す警告を1回だけ測定者に発すればよい。また、出力機能100hは、「前処理が必要である」旨の警告に続いて、前処理の実施を測定者に要求するメッセージを出力部101eに出力する。
【0086】
判定機能100cが、(条件1)~(条件4)のいずれにも該当しないと判定した場合、すなわち、「前処理は不要である」と判定した場合は、判定機能100cは、後述の前処理を実施することなく通電試験を行うよう、通電試験機能100gを動作させる。
【0087】
(前処理)
前処理の実施を要求するメッセージが表示されたら、測定者は、電極群30を被検液に接触させた状態を維持しつつ(電極群30を被検液から取り出すことなく)、入力部101dを介して前処理開始の指示を入力する。入力部101dを介して測定者からの前処理開始の指示を受け付けると、前処理機能100dが、入力部101dからのコマンドに応じて、上述の前処理を規定回数実施する。なお、判定機能100cが(条件1)~(条件4)のいずれにも該当しないと判定した場合であっても、前処理機能100dが、入力部101dを介して測定者からの前処理実施の指示を受け付けると、前処理機能100dは、入力部101dからのコマンドに応じて上述の前処理を規定回数実施してもよい。
【0088】
前処理に用いる処理液は、測定のために準備した被検液をそのまま流用することができる。このため、前処理開始の指示の入力時には、濃度測定のために用意した被検液にセンサ10の電極群30を接触させた状態のままでよい。
【0089】
前処理機能100dは、前処理を実施した時刻を記憶部101cへ読み出し可能に格納する。このとき、前処理機能100dは、前処理を実施した時刻を出力部101eに出力するよう、出力機能100hを動作させてもよい。
【0090】
このような前処理を行うことで、作用電極15の表面(検出面)を、LSV測定に適した面、例えば、今回の測定物質(すなわちO)の検出に適した面に変化させ、センサ10の感度を回復させることができる。すなわち、電極製造時(出荷前)の表面処理を行った後にセンサ10が受けた履歴(保管状態や表面処理実施からの経過時間等)に応じて作用電極15の表面が変化し、センサ10の感度が低下した場合であっても、上述の前処理を実施することで、作用電極15の表面を今回の測定物質の測定に適した面に変化させ、センサ10の感度を回復させることができる。これにより、感度が高い状態のセンサ10を用いて、後述の濃度測定処理(LSV測定)を実施することができる。
【0091】
なお、「センサ10の感度を回復させる」とは、センサ10の感度を、作用電極15に対して電極製造時に表面処理を行った直後の感度(例えばそのセンサ10の飽和感度)に近い感度まで再度高めることを意味する。
【0092】
前処理は、既定回数(好ましくは複数回、さらに好ましくは3回以上)連続して実施することが好ましい。これにより、作用電極15の表面を今回の測定物質の検出に適した面に確実に変化させ、センサ10の感度を確実に回復させることができる。
【0093】
前処理を1回でも実施することで、作用電極15の表面を今回の測定物質の検出に適した面に変化させ、センサ10の感度をある程度回復させることができる。しかしながら、前処理を複数回実施することで、作用電極15の表面を今回の測定物質の検出に適した面に確実に変化させ、センサ10の感度を確実に回復させることができる。このため、前処理を複数回実施する方が好ましい。
【0094】
なお、前処理の実施回数は、予め規定する回数を1回として、再実施を測定者に問うようにしてもよく、予め既定した複数回数を実施するように設定してもよい。また、前処理機能100dは、前処理を行いつつ、前処理で生じる電気化学反応に起因して作用電極15と対電極16との間に流れる電流値(例えばOの還元電流値)を測定し、電流値の変化率や、電流ピークの出現の有無に応じて、自動的に再実施を判断して前処理の実施回数を可変させるようにしてもよい。
【0095】
前処理を実施すると、電極群30の周辺に存在する被検物質が電気化学反応の進行に伴って徐々に消費され、最終的には枯渇することになる。このため、前処理は、処理液が電極群30に対して流動している状態で実施することが好ましい。処理液を静止させた状態で前処理を複数回実施する場合は、前処理を1回実施する度に処理液を交換するか、又は、1回の前処理が終了した後次の前処理を実施する前に、処理液を攪拌することが好ましい。これらにより、作用電極15の表面を今回の測定物質の検出に適した面に確実に変化させ、センサ10の感度を確実に回復させることができる。
【0096】
前処理に用いる処理液が、前処理に続いて実施される後述の濃度測定処理で用いる被検液と同一の液であることで、好ましくは、後述の濃度測定処理で用いる被検液からサンプリングした液であることで、センサ10が有する作用電極15の表面を、今回の測定物質の濃度測定に適した面により確実に変化させることができる。また、被検物質がOである場合、処理液はOを例えば0.1ppm以上の濃度で含むことがさらに好ましい。これにより、作用電極15の表面を溶存オゾンの濃度測定に適した面にさらに確実に変化させることができる。
【0097】
前処理が完了した後、前処理機能100dは、「前処理が完了した」旨を示すメッセージ等を出力部101eに出力するよう、出力機能100hを動作させてもよい。
【0098】
前処理を実施することで、被検液(処理液)中の被検物質が消費され、被検液中の被検物質の濃度が変化してしまうため、前処理が完了した後、後述の濃度測定処理の実施前に、処理液を、濃度測定のための新しい被検液に交換する必要がある。このため、前処理が完了した後、前処理機能100dは、「被検液の交換が必要である」旨を示す警告を測定者に発する。例えば、前処理機能100dは、被検液の交換を促すようなメッセージ表示やアラーム発報を行うよう、出力機能100hを動作させる。
【0099】
(測定の再準備)
出力機能100hは、「被検液の交換が必要である」旨の警告に続いて、測定の再準備を促すメッセージを出力部101eに出力する。測定の再準備を促すメッセージが表示されたら、測定者は、処理液を新しい被検液に交換し(被検液の交換)、測定装置100に装着されたセンサ10の少なくとも電極群30を交換後の被検液に接触させる(センサ10の再セット)。
【0100】
また、被検液の交換及びセンサ10の再セットを行った際、前処理の実施から所定時間が経過していたり、被検液だけでなくセンサ10も交換されている場合がある。このため、出力機能100hは、測定の再準備を促すメッセージに続いて、測定開始の指示の入力を測定者に要求するメッセージを出力部101eに再度出力することが好ましい。測定開始の指示のコマンドの入力を要求するメッセージが表示されたら、測定者は、測定開始の指示のコマンドを入力する。入力部101dを介して測定者からの測定開始の指示を受け付けると、電極群30を被検液に接触させた状態を維持しつつ(電極群30を被検液から取り出すことなく)、判定機能100cは、上述の判定処理を再度実施する。
【0101】
(通電試験)
判定機能100cが「前処理は不要」と判定した場合、上述のように、判定機能100cは、通電試験機能100gを動作させる。電極群30を被検液に接触させた状態を維持しつつ(電極群30を被検液から取り出すことなく)、通電試験機能100gは、任意の電極間の通電抵抗を測定する通電試験を実施する。このとき、通電試験機能100gは、測定した通電抵抗値を出力部101eに出力するよう、出力機能100hを動作させてもよい。
【0102】
測定した通電抵抗が所定の値以下である場合、通電試験機能100gは、濃度測定処理を行うよう、測定機能100eを動作させる。なお、通電抵抗値が極端に低い(ゼロに近い)場合は、回路が短絡している恐れがあるため、通電試験機能100gは、エラー表示(「センサ10の確認が必要である」旨を示すメッセージを表示)するよう、出力機能100hを動作させてもよい。
【0103】
測定した通電抵抗が所定の値を超える場合、配線12~14のいずれかが断線している可能性(測定装置100とセンサ10との間が電気的に接続されていない可能性)や、センサ10が有する各電極15~17の少なくともいずれかの表面が汚れている可能性等がある。したがって、通電抵抗が所定の値を超える場合は、通電試験機能100gは、「センサ10のメンテナンス又は交換が必要である」旨を示す警告を測定者に発する。例えば、通電試験機能100gは、センサ10のメンテナンス又は交換を促すようなメッセージ表示やアラーム発報を行うよう、出力機能100hを動作させる。センサ10のメンテナンス又は交換を促すメッセージが表示されたら、測定者は、センサ10のメンテナンスを行うか、又は、センサ10を新しい(他の)センサ10と交換する。
【0104】
出力機能100hは、センサ10のメンテナンス又は交換を促すメッセージの表示に続いて、「センサ10のメンテナンス又は交換が完了した」旨のコマンドの入力を測定者に要求するメッセージを出力部101eに出力する。測定者は、センサ10のメンテナンス又は交換が完了したら、「センサ10のメンテナンス又は交換が完了した」旨のコマンドを入力する。
【0105】
測定者からの「センサ10のメンテナンス又は交換が完了した」旨のコマンドの入力を確認した後、出力機能100hは、測定の再準備を促すメッセージを出力部101eに出力する。センサ10のメンテナンス又は交換後に行われる測定の再準備の手順は、前処理の実施後に行われる上述の測定の再準備と同様の手順とすることができる。また、センサ10のメンテナンス又は交換後に行われる測定の再準備においても、測定の再準備を促すメッセージに続いて、測定開始の指示の入力を測定者に要求するメッセージを出力部101eに再度出力することが好ましい。測定開始の指示のコマンドの入力を要求するメッセージが表示されたら、測定者は、測定開始の指示のコマンドを入力し、入力部101dからのコマンドに応じて、判定機能100cは、上述の判定処理を再度実施する。
【0106】
(濃度測定処理)
通電試験において測定した通電抵抗が所定の値以下である場合、上述のように、通電試験機能100gは、測定機能100eを動作させる。そして、測定機能100eは、被検液中のO濃度を電気化学的に測定する処理(濃度測定処理)を実施する。濃度測定処理では、電気化学的測定ステップと、濃度算出ステップと、を順に実施する。
【0107】
なお、濃度測定処理は、前処理が完了した後、所定時間以内(例えば2時間以内、好ましくは1時間以内、より好ましくは30分以内)に実施することが好ましい。これにより、センサ10の感度が高い状態で、すなわち、センサ10の感度が再低下する前に、LSV測定を実施することができ、O濃度を高精度で測定することが可能となる。
【0108】
<電気化学的測定ステップ>
測定機能100eが動作されると、測定機能100eは、LSV測定を実施する。例えば、測定機能100eは、センサ10が有する各電極への印加電圧を制御することにより、作用電極15と対電極16の間に電圧を印加しつつ、参照電極17の電位を基準にして作用電極15の電位を掃引し、そのときに作用電極15と対電極16との間を流れる通電電流値を測定するLSV測定を実施する。そして、測定機能100eは、測定した通電電流値を、その測定時刻(LSV測定の実施時刻)とともに記憶部101cへ読み出し可能に格納する。このとき、測定機能100eは、測定した通電電流値及びその測定時刻を出力部101eに出力するよう、出力機能100hを動作させてもよい。
【0109】
なお、本ステップ(濃度測定処理)で用いる被検液は、通電試験で用いた被検液をそのまま流用することができる。なお、通電試験の完了後にシーケンスを中断し、被検液を新しくサンプリングした被検液と交換してもよい。
【0110】
LSV測定は、電極群30を静止状態の被検液に接触させた状態で実施する。本明細書における「被検液の静止状態」とは、「作用電極15の表面で生じる電気化学反応の度合いが、被検液中を拡散して電極群30の表面へ到達するOの量によって、実質的に支配されるような状態」のことをいう。この被検液の静止状態下でLSV測定を開始すると、最初は電圧の印加に伴い徐々に通電電流が増加し、次いで電極群30の周辺に存在するOが、電気化学反応の進行に伴って徐々に消費されて通電電流が減少し、最終的には電極群30でのOの消費量と電極群30の周辺からの拡散で供給されるOの供給量とで決まるO濃度に対応した通電電流へと変化していく。そのため、通電電流値をプロットして得たグラフ(ボルタモグラム)には、LSV測定開始後の時間経過に伴って、被検液のO濃度に対応した所定のピークが出現することとなる。なお、被検液が静止していない状態(被検液が流動している状態)でLSV測定を開始すると、電極群30の周囲の被検液が入れ替わることによって電極群30の周辺へOが新たに補充されることとなる。このため、通電電流は減少することなく、通電電流値をプロットして得たグラフにおいても、所定のピークは出現しなくなる。
【0111】
上述のように、(条件1)~(条件4)の少なくともいずれかに該当する場合、LSV測定の実施前に、前処理を実施している。したがって、感度が高い状態にあるセンサ10を用いて、LSV測定を実施することが可能となる。これにより、被検液中のOを高感度で検出することが可能となる。その結果、例えば、LSV測定で得られるボルタモグラムにおいて、O濃度に対応する電流ピーク(例えばOの還元電流のピーク)を確実に観測できるようになる。
【0112】
本明細書において、「ボルタモグラムにおいて電流ピークが観測される」とは、ボルタモグラムにおいて、正側又は負側のいずれかの側に向けて凸状に突出する頂部が存在することを意味する。参照電極にBDD電極を用いかつ被検液がOを含む液である場合、電極群30を静止状態の被検液に接触させた状態で、作用電極15の電位を、参照電極17の電位に対して所定の速度(例えば0.1V/sec)で掃引するLSV測定を行った際に得られるボルタモグラムでは、電流ピークが例えば-0.3V~-0.9V(vs.参照電極17)の電位範囲内に観測される。
【0113】
<濃度算出ステップ>
電気化学的測定ステップが完了したら、測定機能100eは、O濃度を算出するよう、算出機能100fを動作させる。そして、算出機能100fは、選択機能100bが選択した検量線を用いて、測定機能100eにより測定した通電電流値(のピーク値)から被検液中のOの濃度を算出する。また、算出機能100fは、算出したO濃度のデータを、出力部101eに出力するよう、出力機能100hを動作させる。このとき、算出機能100fは、算出したO濃度を、その算出日時とともに記憶部101cへ読み出し可能なように格納してもよい。
【0114】
(繰り返し測定)
濃度測定処理が終了した後、測定装置100からセンサ10を取り外すことなく、被検液を交換して新たな濃度測定処理を実施してもよい。この場合、検量線等の設定、測定の準備、判定処理、必要に応じて前処理、及び濃度測定処理のセットを、この順に繰り返し行う。なお、このセットに通電試験を含めてもよい。
【0115】
(センサの取り外し)
濃度測定処理が終了したら、測定者は、測定装置100からセンサ10を取り外してもよい。検知機能100aは、測定装置100からのセンサ10の取り外しを検知したら、「センサ10の取り外しを検知した」旨を示すメッセージ等を出力部101eに出力するよう、出力機能100hを動作させてもよい。また、検知機能100aは、測定装置100へのセンサ10の取り外し時刻の情報を記憶部101cに読み出し可能に格納してもよい。
【0116】
(4)効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0117】
(a)上記(条件1)~(条件4)の少なくともいずれかに該当する場合には、LSV測定の実施前に、前処理を実施している。これにより、感度が高い状態にあるセンサ10を用いて、LSV測定を実施することが可能となる。その結果、被検液中の被検物質の濃度、特に被検物質がOである場合にその濃度を高感度で検出でき、被検物質の濃度を高精度で再現性良く算出できる。
【0118】
(b)前処理で用いる処理液が、LSV測定で用いる被検液と同一であることで、好ましくは、LSV測定で用いる被検液からサンプリングした液であることで、前処理において、作用電極15の表面を、電気化学的測定に適した面に確実に変化させることができる。
【0119】
(c)濃度測定処理において、水を原水として作成したオゾン水中の溶存オゾンの濃度を測定する場合、前処理で用いる処理液がOを0.1ppm以上の濃度で含むことで、作用電極15の表面を、溶存オゾン濃度の測定に適した面に確実に変化させることができる。
【0120】
(d)LSV測定の実施前に、必要に応じて前処理を実施することで、作用電極15、対電極16、及び参照電極17の総てがBDD電極で構成されるセンサ10であっても、LSV測定により得られるボルタモグラムにおいて確実に電流ピークが観測できる。これにより、被検物質がオゾンである場合、参照電極がBDD電極であっても電位の変動が小さくなり、被検物質の濃度を高精度で再現性良く測定(算出)できる。
【0121】
(e)測定対象となり得る被検物質の種類ごとに、検量線、前処理条件、及び測定条件をそれぞれ用意し、記憶部101c内に予め格納している。そして、選択機能100bは、測定者が入力部101dを介して入力した被検物質の情報に基づいて、予め記憶部101c内に格納されている複数の検量線、複数の前処理条件、及び複数の測定条件の中から、被検物質に応じた検量線、前処理条件、及び測定条件をそれぞれ選択するように構成されている。これらにより、LSV測定の実施前に、前処理を実施することで、同一のセンサ10で多種多様の被検物質を連続して測定することが可能となる。例えば、測定装置100に一のセンサ10を装着し、O濃度の電気化学的測定を実施した後、センサ10を測定装置100から取り外すことなく、続けて、塩素濃度を測定する電気化学的測定を実施することが可能となる。
【0122】
(f)本態様の前処理は電気化学的測定の系内で実施されることから、前処理を実施するための系等を別に用意する必要がない。
【0123】
(g)本態様の通電試験は、被検物質の濃度測定処理に先立って自動的に実施されることから、測定装置100とセンサ10との間の接続不良や、センサ10の初期不良、各電極15~17の表面の汚れや劣化といった不具合を確実に検出することができる。結果、測定不良による異常値の混入を避けることができる。
【0124】
(h)本態様の測定装置100を用いることで、センサ10のメンテナンスや交換、及びセンサ10の前処理を常に適切なタイミングで実施することが可能になる。その結果、測定者の技量に依存せず、常に高い精度で再現性良く被検液中の被検物質の濃度を測定することが可能になる。
【0125】
(5)変形例
本態様は、以下の変形例のように変形することができる。なお、以下の変形例の説明において、上述の態様と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。また、上述の態様及び以下の変形例は任意に組み合わせることができる。
【0126】
(変形例1)
例えば、濃度測定処理は、検量線を作成するための処理であってもよい。
【0127】
本変形例では、測定装置100は、検量線作成機能をさらに有している。検量線作成機能は、測定機能100eが測定した通電電流値(のピーク値)に基づいて、電流値と被検物質の濃度との相関関係を示す検量線を作成するように構成されている。
【0128】
本変形例では、上述の態様と同様に、測定者が測定装置100にセンサ10を装着する。センサ10の装着が完了したら、上述の態様と同様に、検量線等の設定、判定処理、必要に応じて前処理、通電試験、及び濃度測定処理を順に実施する。本変形例では、濃度測定処理を実施する際、被検液として、被検物質の濃度が既知の液(標準液)を用意する。また、本変形例では、選択機能100bは、検量線の選択は実施しなくてもよい。上述の各処理及び試験におけるその他の手順、条件は、上述の態様の各処理及び試験における手順、条件と同様とすることができる。
【0129】
本変形例では、標準液(標準液における被検物質の濃度)を変えつつ、判定処理、前処理、及び濃度測定処理のセットを所定回数繰り返し行う。なお、このセットに検量線等の設定及び通電試験を含めてもよい。
【0130】
少なくとも、判定処理、前処理、及び濃度測定処理を有するセットを所定回数繰り返し行ったら、検量線作成機能は、測定機能100eが各LSV測定で測定した通電電流値(のピーク値)に基づいて、電流値と被検物質の濃度との相関関係を示す検量線を作成する。
【0131】
なお、検量線作成機能は、1つの標準液を用いて測定した電流値のみを用いて、測定点と原点とを結んだ簡易的な検量線を作成するように構成されていてもよい。
【0132】
本変形例においても、(条件1)~(条件4)の少なくともいずれかに該当する場合は、前処理を行うことにより、感度が高い状態にあるセンサ10を用いて、LSV測定を実施することが可能となる。これにより、正確な検量線を作成でき、結果、検量線を用いて算出する被検物質の濃度に誤差がより生じにくくなる。
【0133】
感度が高い状態にあるセンサ10を用いてLSV測定を実施することで、得られるボルタモグラムにおいて確実に電流ピークが観測できる。その結果、測定した電流ピーク値に基づいて精確な検量線を作成できる。なお、本発明者等は、各電極15~17の総てがBDD電極であるセンサ10を用いたLSV測定で得られる電流ピーク値が、被検液中のO濃度との間に一定の相関関係を示すことを確認済みである。
【0134】
(変形例2)
また例えば、濃度測定処理は、較正(キャリブレーション)のための処理であってもよい。
【0135】
本変形例では、測定装置100は、較正機能をさらに有している。較正機能は、測定機能100eが測定した通電電流値(のピーク値)と、算出機能100fが算出した被検物質の濃度と、に基づいて、過去の測定値と比較するための補正係数を算出するように構成されている。また、本変形例では、算出機能100fは、被検物質の濃度を算出する際、算出した補正係数を考慮して濃度を算出するように構成されていてもよい。
【0136】
本変形例では、上述の態様と同様に、測定者が測定装置100にセンサ10を装着する。センサ10の装着が完了したら、上述の態様と同様に、検量線等の設定、判定処理、必要に応じて前処理、通電試験、及び濃度測定処理を順に実施する。本変形例では、濃度測定処理を実施する際、被検液として、被検物質の濃度が既知の液(標準液)を用意する。また、本変形例では、選択機能100bは、過去の同一物質の検量線を選択する。上述の各処理及び試験におけるその他の手順、条件は、上述の態様の各処理及び試験における手順、条件と同様とすることができる。
【0137】
検量線等の設定、判定処理、必要に応じて前処理、通電試験、及び濃度測定処理を実施したら、較正機能は、測定機能100eが測定した、標準液の被験物質の濃度に対応する通電電流値(のピーク値)と、同濃度に対応する過去の検量線に基づく通電電流値と、から、補正係数を算出する。補正係数の算出手法としては、上述の簡易的な検量線の傾きと過去の検量線の傾きとを比較して乗じる係数を求める手法や、測定した通電電流値の値と過去の同一濃度の被検液で測定した通電電流値とを比較し、検量線の傾きは変わらないものと仮定して、加減する定数を求める手法(ゼロ点調整)等が例示される。
【0138】
補正係数を算出したら(補正係数が定まったら)、新たに測定したい被検液を用意し、上述の態様と同様に、検量線等の設定、センサの装着、測定の準備、判定処理、必要に応じて前処理、通電試験、及び濃度測定処理を行い、被検液中の被検物質の濃度を測定する。このとき、濃度算出ステップにおいて被検物質の濃度を算出する際、算出機能100fは、算出した補正係数を用いて被験物質の濃度を演算で補正し、補正後の濃度を被検液中の被検物質の濃度とする。また、算出機能100fは、算出した被検物質の濃度のデータとして、補正後の濃度だけを出力部101eに出力するよう、出力機能100hを動作させてもよく、補正前後の2種類の濃度を出力部101eに出力するよう、出力機能100hを動作させてもよい。その他の各処理及び試験における手順、条件は、上述の態様における各処理及び試験における手順と同様とすることができる。これにより、センサ10の交換等でセンサ10の感度が変わってしまった場合であっても、過去の測定値との比較が容易にできるようになる。また、異なるセンサ10を用いて測定された同一の被験物質の複数の濃度のデータの比較検討も可能になる。
【0139】
本変形例においても、較正時、測定時の両方で(条件1)~(条件4)の少なくともいずれかに該当する場合は、前処理を行うことにより、感度が高い状態にあるセンサ10を用いてLSV測定を実施することが可能となる。これにより、較正及び測定を正確に行うことができ、結果、算出機能100fが算出する被検物質の濃度に誤差がより生じにくくなる。すなわち、被検物質の濃度をより高精度で算出することが可能となる。
【0140】
(変形例3)
上述の態様では、測定装置100は、測定者が、今回の測定対象とする被検物質の種類等を、入力部101dを介して入力すると、選択機能100bは、入力部101dからのコマンドに応じて、測定者が入力した被検物質に対応する検量線、前処理条件、及び測定条件を選択するように構成されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、測定装置100は、特定の物質(例えばO)の電気化学的測定のみを実施するように構成されていてもよい。
【0141】
本変形例では、予め決められた被検物質に応じた検量線、前処理条件、及び測定条件のみが記憶部101c内に格納されていればよい。したがって、本変形例では、測定装置100は、選択機能100bを有していなくてもよい。
【0142】
本変形例では、上述の態様と同様に、測定者が測定装置100にセンサ10を装着する。センサ10の装着が完了したら、上述の態様と同様に、判定処理、必要に応じて前処理、通電試験、及び濃度測定処理の各処理及び試験を順に実施する。本変形例の判定処理では、判定機能100cは、上述の(条件1)~(条件3)のうち少なくともいずれかに該当するかを判定すればよい。すなわち、上述の(条件4)に該当するか否かの判定は行わなくてもよい。そして、判定機能100cが上述の(条件1)~(条件3)の少なくともいずれかに該当すると判定した場合は、前処理機能100dは前処理を実施する。上述の各処理及び試験におけるその他の手順、条件は、上述の態様や変形例の各処理及び試験における手順、条件と同様とすることができる。
【0143】
本変形例においても、(条件1)~(条件3)の少なくともいずれかに該当する場合は、前処理を行うことにより、感度が高い状態にあるセンサ10を用いてLSV測定を実施することが可能となる。これにより、濃度算出、検量線の作成、較正を正確に行うことができ、上述の態様や上述の変形例と同様の効果が得られる。
【0144】
(変形例4)
上述の態様や変形例において、濃度測定処理が完了した後に、好ましくは、濃度測定処理が完了した直後に、通電試験をさらに行ってもよい。例えば、電気化学的測定ステップが完了した後(直後)に、通電試験をさらに行ってもよい。このタイミングで通電試験をさらに行うことで、電気化学的測定が正常に行われていたか否かを確認することが可能となる。
【0145】
(変形例5)
例えば、測定装置100は、同一の被検液からサンプリングした被検液中の被験物質の濃度を、異なる複数のセンサ10を用いてそれぞれ測定し、その測定結果を比較することで、複数のセンサ10間のセンサ感度の相関関係を求める機能を有していてもよい。例えば、センサ10を交換する際、同一の被検液からサンプリングした被検液中の被験物質の濃度を、交換前後のセンサ10を用いてそれぞれ測定し、交換前後のセンサ感度の相関関係を求めるようにしてもよい。
【0146】
(変形例6)
電気化学的測定は、LSV測定(又はCV測定)に限定されず、例えばクロノアンペロメトリー(CA)測定であってもよい。また、電気化学的測定は、被検液が静止した状態で行ってもよく、被検液が流動している状態で行ってもよい。被検液が流動している状態でLSV測定(又はCV測定)を行う場合は、得られるボルタモグラムに電流ピークは出現しないが、所定の印加電圧における通電電流値を読み取ることで被験物質の濃度の測定は可能である。本変形例においても、濃度測定処理(電気化学的測定)の実施前に、上述の判定処理、及び必要に応じて上述の前処理を実施することにより、センサ10の感度が高い状態で、電気化学的測定を実施することが可能となる。すなわち、本変形例においても、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0147】
(変形例7)
上述の態様や変形例では、センサ10に搭載される電極の総てが、すなわち、作用電極15、対電極16、及び参照電極17の総てがBDD電極である例について説明したが、これに限定されない。少なくとも作用電極15がBDD電極であればよく、対電極16及び参照電極17は、BDD電極の他に、公知の任意の材料を用いて形成した電極とすることもできる。対電極16は、例えば、Pt、Au、Cu、Pd、Ni、Ag等の金属で構成された電極やカーボン電極等とすることができる。参照電極17は、例えば、Pt、Au、Cu、Pd、Ni、Ag等の金属で構成された電極、カーボン電極、銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極、標準水素電極、可逆水素電極、パラジウム・水素電極、飽和カロメル電極等を用いることもできる。対電極16又は参照電極17が上記金属で構成された電極である場合、対電極16又は参照電極17は、サブトラクティブ法やセミアディティブ法等により配線14と一体に形成されていてもよい。本変形例においても、濃度測定処理の実施前に、上述の判定処理及び必要に応じて前処理を実施することで、感度が高い状態にあるセンサ10を用いて、濃度測定処理(電気化学的測定)を実施することが可能となる。
【0148】
(変形例8)
上述の態様や変形例では、BDD電極が縦型電極である例、すなわち、BDD電極の裏面から導通をとる例について説明したが、これに限定されない。電極膜21の表面に、半田や銀ペースト等を用いて導通配線を接続し、BDD電極の表面から導通をとってもよい。また、BDD電極の表面から導通をとる場合、電極膜21を支持する基板として、導電性基板22の代わりに、セラミック基板や高抵抗材料で形成された基板を用いることもできる。
【0149】
なお、電極膜21の表面から導通をとる場合、LSV測定時に半田や銀ペースト等が被検液等に接触しないように、半田や銀ペーストを熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂で覆う必要がある。しかしながら、硬化前の樹脂は液状(ペースト状)であることから、電極膜21の表面のうち、Oの検出に寄与する面(すなわち、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂で覆われていない箇所の面)の面積を所定の面積に調整することが難しい。このため、複数のセンサ10間で、LSV測定で得られる電流ピーク値に誤差が生じやすくなる。複数のセンサ10間での測定精度のバラツキを小さくできる観点から、BDD電極は、上述のように基板22の裏面から導通をとる縦型電極として構成されている方が好ましい。
【0150】
<他の態様>
以上、本開示の態様及び変形例を具体的に説明した。但し、本開示は上述の態様や変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0151】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0152】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定方法であって、
電気化学的測定装置に、少なくとも、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を備える電気化学センサを装着する工程と、
前記被検液に前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記被検物質の濃度の電気化学的測定を実施する工程と、を有し、
以下の(1)~(4)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する工程の前に、前記被検物質を含む処理液に少なくとも前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記作用電極に前記被検物質の酸化還元電位を超える電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を1回又は複数回実施する工程を更に有する、電気化学的測定方法が提供される。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着する工程を行った後、前記電気化学的測定を実施する工程を最初に行うとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する工程を繰り返し行う場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する工程を行った時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する工程を行うとき(但し、前回の前記電気化学的測定を実施する工程を行った後に前記前処理を実施する工程を行った場合を除く)
(3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合において、最後に前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する工程を行うとき(但し、前回の前記前処理を実施する工程を行った後に前記電気化学的測定を実施する工程を行った場合を除く)
(4)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する工程を繰り返し行う場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する工程で測定した前記被検物質とは異なる他の被検物質の濃度の電気化学的測定を実施するとき
【0153】
(付記2)
付記1の測定方法であって、好ましくは、
前記電気化学センサとして、前記作用電極と前記対電極とが搭載された2電極センサ、又は前記作用電極と前記対電極と参照電極とが搭載された3電極センサを用いる。
【0154】
(付記3)
付記2の測定方法であって、好ましくは、
前記電気化学センサに搭載される電極の総て(すなわち、前記電気化学センサが2電極センサである場合は、前記作用電極及び前記対電極、前記電気化学センサが3電極センサである場合は、前記作用電極、前記対電極、及び前記参照電極)が、表面にホウ素(ボロン)ドープダイヤモンド多結晶で構成された電極膜を有するダイヤモンド電極である。
【0155】
(付記4)
付記1~3のいずれか1項に記載の測定方法であって、好ましくは、
前記電気化学的測定は、リニアスイープボルタンメトリー測定、サイクリックボルタンメトリー測定、及びクロノアンペロメトリー測定のうちのいずれかである。
【0156】
(付記5)
付記1~4のいずれか1項に記載の測定方法であって、好ましくは、
前記処理液は前記被検液と同一である。
【0157】
(付記6)
付記1~5のいずれか1項に記載の測定方法であって、好ましくは、
前記前処理を実施する工程で用いる前記処理液と、前記前処理を実施する工程に続いて行われる前記電気化学的測定を実施する工程で用いる前記被検液とは、同一の前記被検液からそれぞれ別にサンプリングした液である。
【0158】
(付記7)
付記1~6のいずれか1項に記載の測定方法であって、好ましくは、
前記被検物質は水中の溶存オゾンである。
【0159】
(付記8)
付記1~7のいずれか1項に記載の測定方法であって、好ましくは、
前記被検物質は水中の溶存オゾンであり、
前記作用電極として、リニアスイープボルタンメトリー測定により得られるボルタモグラムにおいて、前記被検液中のオゾン濃度に対応する電流ピークが観測されるような表面処理が施された電極を用いる。
【0160】
(付記9)
付記1~8のいずれか1項に記載の測定方法であって、好ましくは、
前記被検物質は水中の溶存オゾンであり、
前記前処理を実施する工程では、オゾンを0.1ppm以上の濃度で含む前記処理液に前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記作用電極にオゾンの酸化還元電位を超える電位を印加する。
【0161】
(付記10)
本開示の他の態様によれば、
被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定装置であって、
少なくとも、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を備える電気化学センサを装着可能に構成されており、
前記被検物質を含む処理液に少なくとも前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記作用電極に予め設定された電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を予め設定された回数実施する機能と、
前記被検液に前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記被検物質の濃度の電気化学的測定を実施する機能と、
以下の(1)~(3)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する前に、前記前処理の実施を促す機能と、
を有する、電気化学的測定装置が提供される。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着した後、前記電気化学的測定を最初に実施するとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を繰り返し実施する場合において、前回の前記電気化学的測定を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施するとき(但し、前回の前記電気化学的測定を実施した後に前記前処理を実施した場合を除く)
(3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合において、最後に前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施するとき(但し、前回の前記前処理を実施した後に前記電気化学的測定を実施した場合を除く)
【0162】
(付記11)
本開示のさらに他の態様によれば、
被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定装置であって、
少なくとも、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を備える電気化学センサを装着可能に構成されており、
前記被検物質の濃度を表示する表示部を備え、
測定者が測定対象とする前記被検物質の指示を予め入力すると、前記測定者からの入力情報に基づき検量線を選択する機能と、
前記電気化学的測定装置に装着された前記電気化学センサの少なくとも前記作用電極及び前記対電極を、前記被検物質を含む処理液に接触させた状態で、前記作用電極に予め設定された電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を予め設定された回数実施する機能と、
前記被検液に少なくとも前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記被検物質の濃度に対応する通電電流値の電気化学的測定を実施する機能と、
選択した前記検量線を用いて、測定した前記通電電流値から前記被検物質の濃度を算出する機能と、
算出した前記被検物質の濃度を前記表示部に表示する機能と、
以下の(1)~(4)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する前に、前記前処理の実施を促す機能と、
を有する、電気化学的測定装置が提供される。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着した後、前記電気化学的測定を最初に実施するとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を繰り返し実施する場合において、前回の前記電気化学的測定を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施するとき(但し、前回の前記電気化学的測定を実施した後に前記前処理を実施した場合を除く)
(3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合において、最後の前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施するとき(但し、前回の前記前処理を実施した後に前記電気化学的測定を実施した場合を除く)
(4)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を繰り返し実施する場合において、前回の前記電気化学的測定で測定した前記被検物質とは異なる他の被検物質の濃度の前記電気化学的測定を実施するとき
【0163】
(付記12)
付記10又は11に記載の測定装置であって、好ましくは、
前記電気化学センサを前記電気化学的測定装置に装着した時刻、前記電気化学的測定を実施した時刻、及び前記前処理を実施した時刻を記録する機能と、
(a)前記電気化学センサを前記電気化学的測定装置に装着した時刻、(b)前回の前記電気化学的測定を実施した時刻、及び(c)前回の前記前処理を実施した時刻のうち、直近の時刻を抽出する機能と、
前記抽出した時刻が(a)の場合、前記前処理が必要である旨の警告を測定者に発する機能と、
前記抽出した時刻が(b)又は(c)の場合であって、(b)又は(c)の時刻から抽出時までの時間が所定の時間を超えている場合、前記前処理が必要である旨の警告を測定者に発する機能と、
前記警告を発した後、前記前処理を予め設定した回数実施するまで、前記電気化学的測定を実施しない機能と、をさらに有する。
【0164】
(付記13)
付記10~12のいずれか1項に記載の測定装置であって、好ましくは、
前記電気化学センサは、前記作用電極と前記対電極とが搭載された2電極センサ、又は前記作用電極と前記対電極と参照電極とが搭載された3電極センサである。
【0165】
(付記14)
付記10~13のいずれか1項に記載の測定装置であって、好ましくは、
前記作用電極、前記対電極、及び前記参照電極は、それぞれ、表面にホウ素(ボロン)ドープダイヤモンド多結晶で構成された電極膜を有するダイヤモンド電極である。
【0166】
(付記15)
付記10~14のいずれか1項に記載の測定装置であって、好ましくは、
前記電気化学的測定は、リニアスイープボルタンメトリー測定、サイクリックボルタンメトリー測定、及びクロノアンペロメトリー測定のうちのいずれかである。
【0167】
(付記16)
付記10~15のいずれか1項に記載の測定装置であって、好ましくは、
前記被検物質は水中の溶存オゾンである。
【0168】
(付記17)
付記10~16のいずれか1項に記載の測定装置であって、好ましくは、
前記電気化学的測定を実施する前に、通電試験を実施する機能(例えば、交流2電極法により任意の電極間の抵抗率を測定する機能)と、
前記通電試験により測定した任意の電極間の通電抵抗が所定の値を超える場合は、センサのメンテナンス又は交換を促す機能と、
前記通電抵抗が所定の値以下である場合には、前記電気化学的測定を実施する機能と、
を有する。
【0169】
(付記18)
付記11~17のいずれか1項に記載の測定装置であって、好ましくは、
前記前処理の実施を促す画面を前記表示部に表示する。
【0170】
(付記19)
付記17に記載の測定装置であって、好ましくは、
前記センサのメンテナンス又は交換を促す画面を前記表示部に表示する。
【0171】
(付記20)
付記10に記載の測定装置であって、好ましくは、
表示部をさらに備え、
前記前処理の実施を促す画面を前記表示部に表示する。
【0172】
(付記21)
付記10~20のいずれか1項に記載の測定装置であって、好ましくは、
入力部をさらに備え、
前記入力部からのコマンドに応じて前記前処理を行う。
【0173】
(付記22)
付記10~21のいずれか1項に記載の測定装置であって、好ましくは、
前記電気化学的測定装置からの前記電気化学センサの脱着を検知する機能をさらに有する。
【0174】
(付記23)
付記11~22のいずれか1項に記載の測定装置であって、好ましくは、
記憶部をさらに備え、
前記記憶部には、種々の前記被検物質に応じた、前記検量線、前記電気化学的測定を実施する際の条件、前記前処理を実施する際の条件が、予め格納されている。
【0175】
(付記24)
付記10~23のいずれか1項に記載の測定装置であって、好ましくは、
前記測定装置本体が耐水性能を有している。
【0176】
(付記25)
付記17に記載の測定装置であって、好ましくは、
同一の前記被検液からサンプリングした被検液中の前記被験物質の濃度を、交換前後の前記センサを用いてそれぞれ測定し、その測定結果を比較し、交換前後のセンサ感度の相関関係を求める機能を有する。
【0177】
(付記26)
本開示のさらに他の態様によれば、
ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を少なくとも有し、被検液中の被検物質の濃度を測定する電気化学的測定装置に装着された電気化学センサの、前記作用電極及び前記対電極を前記被検液に接触させた状態で、前記被検物質の濃度の電気化学的測定を実施する手順と、
以下の(1)~(4)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する手順の前に、前記被検物質を含む処理液に少なくとも前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記作用電極に前記被検物質の酸化還元電位を超える電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を1回又は複数回実施する手順と、
をコンピュータに実行させるように構成されている、プログラム、又は、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着した後、前記電気化学的測定を実施する手順を最初に実行させるとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する手順を繰り返し実行させる場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する手順を実行した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する手順を実行させるとき(但し、前回の前記電気化学的測定を実施する手順を実行した後に前記前処理を実施する手順を実行した場合を除く)
(3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合において、最後に前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する手順を実行させるとき(但し、前回の前記前処理を実施する手順を実行した後に前記電気化学的測定を実施する手順を実行した場合を除く)
(4)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する手順を繰り返し実行させる場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する手順で測定した前記被検物質とは異なる他の被検物質の濃度の電気化学的測定を実施するとき
【符号の説明】
【0178】
10 電気化学センサ
15 作用電極
16 対電極
21 電極膜
100 電気化学的測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検液中の溶存オゾンの濃度を測定する電気化学的測定方法であって、
電気化学的測定装置に、少なくとも、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を備える電気化学センサを装着する工程と、
前記被検液に前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記溶存オゾンの濃度の電気化学的測定を実施する工程と、を有し、
以下の(1)~(4)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する工程の前に、オゾン0.1ppm以上の濃度で含む処理液に少なくとも前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記作用電極にオゾンの酸化還元電位を超える電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を1回又は複数回実施する工程を更に有する、電気化学的測定方法。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着する工程を行った後、前記電気化学的測定を実施する工程を最初に行うとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する工程を繰り返し行う場合であって前回の前記電気化学的測定を実施する工程を行った後に前記前処理を実施する工程を行っていない場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する工程を行った時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する工程を行うと
3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合であって前回の前記前処理を実施する工程を行った後に前記電気化学的測定を実施する工程を行っていない場合において、最後に前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する工程を行うと
4)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記溶存オゾンの濃度の電気化学的測定を実施する工程を行う場合において、前回の電気化学的測定でオゾンとは異なる被検物質の濃度の電気化学的測定を実施したとき
【請求項2】
前記電気化学センサとして、前記作用電極と前記対電極とが搭載された2電極センサ、又は前記作用電極と前記対電極と参照電極とが搭載された3電極センサを用いる、請求項1に記載の電気化学的測定方法。
【請求項3】
前記電気化学センサに搭載される電極の総てが、表面にホウ素ドープダイヤモンド多結晶で構成された電極膜を有するダイヤモンド電極である、請求項2に記載の電気化学的測定方法。
【請求項4】
前記電気化学的測定は、リニアスイープボルタンメトリー測定、サイクリックボルタンメトリー測定、及びクロノアンペロメトリー測定のうちのいずれかである、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学的測定方法。
【請求項5】
前記処理液は前記被検液と同一である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学的測定方法。
【請求項6】
前記前処理を実施する工程で用いる前記処理液と、前記前処理を実施する工程に続いて行われる前記電気化学的測定を実施する工程で用いる前記被検液とは、同一の前記被検液からそれぞれ別にサンプリングした液である、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学的測定方法。
【請求項7】
記作用電極として、リニアスイープボルタンメトリー測定により得られるボルタモグラムにおいて、前記被検液中のオゾン濃度に対応する電流ピークが観測されるような表面処理が施された電極を用いる、請求項1~3のいずれか1項に記載の電気化学的測定方法。
【請求項8】
被検液中の溶存オゾンの濃度を測定する機能を有する電気化学的測定装置であって、
少なくとも、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を備える電気化学センサを装着可能に構成されており、
前記電気化学的測定装置に装着された前記電気化学センサの少なくとも前記作用電極及び前記対電極を、オゾン0.1ppm以上の濃度で含む処理液に接触させた状態で、前記作用電極に予め設定された電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を予め設定された回数実施する機能と、
前記被検液に前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記溶存オゾンの濃度の電気化学的測定を実施する機能と、
以下の(1)~(3)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する前に、前記前処理の実施を促す機能と、
を有する、電気化学的測定装置。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着した後、前記電気化学的測定を最初に実施するとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を繰り返し実施する場合であって前回の前記電気化学的測定を実施した後に前記前処理を実施していない場合において、前回の前記電気化学的測定を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施すると
3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合であって前回の前記前処理を実施した後に前記電気化学的測定を実施していない場合において、最後に前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施すると
【請求項9】
被検液中の溶存オゾンの濃度を測定する機能を有する電気化学的測定装置であって、
少なくとも、ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を備える電気化学センサを装着可能に構成されており、
少なくとも前記溶存オゾンの濃度の測定結果を表示する表示部を備え、
測定者が測定対象を溶存オゾンとする指示を予め入力すると、前記測定者からの入力情報に基づき検量線を選択する機能と、
前記電気化学的測定装置に装着された前記電気化学センサの少なくとも前記作用電極及び前記対電極を、オゾン0.1ppm以上の濃度で含む処理液に接触させた状態で、予め設定されたオゾンの酸化還元電位を前記作用電極に印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を予め設定された回数実施する機能と、
前記被検液に少なくとも前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記溶存オゾンの濃度に対応する通電電流値の電気化学的測定を実施する機能と、
選択した前記検量線を用いて、測定した前記通電電流値から前記溶存オゾンの濃度を算出する機能と、
算出した前記溶存オゾンの濃度を前記表示部に表示する機能と、
以下の(1)~(4)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する前に、前記前処理の実施を促す機能と、
を有する、電気化学的測定装置。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着した後、前記電気化学的測定を最初に実施するとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を繰り返し実施する場合であって前回の前記電気化学的測定を実施した後に前記前処理を実施していない場合において、前回の前記電気化学的測定を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施すると
3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合であって前回の前記前処理を実施した後に前記電気化学的測定を実施していない場合において、最後の前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施すると
4)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記溶存オゾンの濃度の電気化学的測定を実施する場合において、前回の電気化学的測定でオゾンとは異なる被検物質の濃度の電気化学的測定を実施したとき
【請求項10】
前記電気化学センサを前記電気化学的測定装置に装着した時刻、前記電気化学的測定を実施した時刻、及び前記前処理を実施した時刻を記録する機能と、
(a)前記電気化学センサを前記電気化学的測定装置に装着した時刻、(b)前回の前記電気化学的測定を実施した時刻、及び(c)前回の前記前処理を実施した時刻のうち、直近の時刻を抽出する機能と、
前記抽出した時刻が(a)の場合、前記前処理が必要である旨の警告を測定者に発する機能と、
前記抽出した時刻が(b)又は(c)の場合であって、(b)又は(c)の時刻から抽出時までの時間が所定の時間を超えている場合、前記前処理が必要である旨の警告を測定者に発する機能と、
前記警告を発した後、前記前処理を予め設定した回数実施するまで、前記電気化学的測定を実施しない機能と、をさらに有する、請求項8又は9に記載の電気化学的測定装置。
【請求項11】
前記電気化学センサは、前記作用電極と前記対電極とが搭載された2電極センサ、又は前記作用電極と前記対電極と参照電極とが搭載された3電極センサである、請求項8又は9に記載の電気化学的測定装置。
【請求項12】
前記電気化学的測定は、リニアスイープボルタンメトリー測定、サイクリックボルタンメトリー測定、及びクロノアンペロメトリー測定のうちのいずれかである、請求項8又は9に記載の電気化学的測定装置。
【請求項13】
前記電気化学的測定を実施する前に、通電試験を実施する機能と、
前記通電試験により測定した任意の電極間の通電抵抗が所定の値を超える場合は、センサのメンテナンス又は交換を促す機能と、
前記通電抵抗が所定の値以下である場合には、前記電気化学的測定を実施する機能と、
を有する、請求項8又は9に記載の電気化学的測定装置。
【請求項14】
前記前処理の実施を促す画面を前記表示部に表示する、請求項9に記載の電気化学的測定装置。
【請求項15】
入力部をさらに備え、
前記入力部からのコマンドに応じて前記前処理を行う、請求項8又は9に記載の電気化学的測定装置。
【請求項16】
前記電気化学的測定装置からの前記電気化学センサの脱着を検知する機能をさらに有する、請求項8又は9に記載の電気化学的測定装置。
【請求項17】
記憶部をさらに備え、
前記記憶部には、少なくとも溶存オゾンの濃度測定に応じた、前記検量線、前記電気化学的測定を実施する際の条件、前記前処理を実施する際の条件が、予め格納されている、請求項9に記載の電気化学的測定装置。
【請求項18】
ダイヤモンドを含む材料で構成された電極膜を有する作用電極及び任意の材料で構成された対電極を少なくとも有し、被検液中の溶存オゾンの濃度を測定する電気化学的測定装置に装着された電気化学センサの前記作用電極及び前記対電極前記被検液に接触させた状態で、前記溶存オゾンの濃度の電気化学的測定を実施する手順と、
以下の(1)~(4)のうち少なくともいずれかに該当する場合には、前記電気化学的測定を実施する手順の前に、オゾン0.1ppm以上の濃度で含む処理液に少なくとも前記作用電極及び前記対電極を接触させた状態で、前記作用電極にオゾンの酸化還元電位を超える電位を印加し、前記作用電極の表面で電気化学反応を生じさせる前処理を1回又は複数回実施する手順と、
をコンピュータに実行させるように構成されている、プログラム。
(1)前記電気化学的測定装置に前記電気化学センサを装着した後、前記電気化学的測定を実施する手順を最初に実行させるとき
(2)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記電気化学的測定を実施する手順を繰り返し実行させる場合であって前回の前記電気化学的測定を実施する手順を実行した後に前記前処理を実施する手順を実行していない場合において、前回の前記電気化学的測定を実施する手順を実行した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する手順を実行させると
3)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いる場合であって前回の前記前処理を実施する手順を実行した後に前記電気化学的測定を実施する手順を実行していない場合において、最後に前記前処理を実施した時刻から所定の時間が経過した後に、前記電気化学的測定を実施する手順を実行させると
4)前記電気化学的測定装置から前記電気化学センサを取り外すことなく同一の前記電気化学センサを用いて前記溶存オゾンの濃度の電気化学的測定を実施する手順を実行させる場合において、前回の電気化学的測定を実施する手順でオゾンとは異なる被検物質の濃度の電気化学的測定を実施したとき