(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121328
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】非接触型測距装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/34 20200101AFI20240830BHJP
【FI】
G01S17/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028369
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中村 篤志
(72)【発明者】
【氏名】古敷谷 優介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】張 超
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AB17
5J084AD08
5J084BA03
5J084BA36
5J084BA38
5J084BA51
5J084BA60
5J084BB01
5J084BB31
5J084BB34
5J084CA08
5J084CA49
5J084CA64
5J084EA07
(57)【要約】
【課題】本開示は、ビート信号の検出時においてビート信号を発生させた周波数が、複製された複数の周波数のうちのどの周波数であるかを特定可能にすることを目的とする。
【解決手段】本開示は、周波数掃引光を被測定物に照射し、前記被測定物で反射されたプローブ光と参照光との干渉によるビート信号の周波数を計測することにより、前記被測定物までの距離を求める非接触型測距装置において、前記参照光又は前記プローブ光の一方を異なる複数の周波数の光に複製する光複製部を備え、前記光複製部は、前記複製に際し、複数種類の光強度の光に複製し、前記光複製部で複製された複数の周波数の光を前記参照光又は前記プローブ光の他方と合波することで、複数のビート信号を発生させ、前記複数のビート信号のうちの少なくともいずれの周波数を、前記複数種類の光強度に基づいて計測する、非接触型測距装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数掃引光を被測定物に照射し、前記被測定物で反射されたプローブ光と参照光との干渉によるビート信号の周波数を計測することにより、前記被測定物までの距離を求める非接触型測距装置において、
前記参照光又は前記プローブ光の一方を異なる複数の周波数の光に複製する光複製部を備え、
前記光複製部は、前記複製に際し、複数種類の光強度の光に複製し、
前記光複製部で複製された複数の周波数の光を前記参照光又は前記プローブ光の他方と合波することで、複数のビート信号を発生させ、
前記複数のビート信号のうちの少なくともいずれの周波数を、前記複数種類の光強度に基づいて計測する、
非接触型測距装置。
【請求項2】
前記複数のビート信号のうちの最小の周波数及び次に最小の周波数を計測する、
請求項1に記載の非接触型測距装置。
【請求項3】
前記光複製部は、前記複数の周波数の光として、前記周波数掃引光の周波数掃引幅よりも広い周波数帯域の光周波数コムを生成する、
請求項1に記載の非接触型測距装置。
【請求項4】
周波数掃引光を被測定物に照射し、前記被測定物で反射されたプローブ光と参照光との干渉によるビート信号の周波数を計測することにより、前記被測定物までの距離を求める非接触型測距方法において、
光複製部が、前記参照光又は前記プローブ光の一方を異なる複数の周波数の光に複製する手順を備え、
前記光複製部で複製された複数の周波数の光を前記参照光又は前記プローブ光の他方と合波することで、複数のビート信号を発生させ、
前記複数のビート信号のうちの少なくともいずれの周波数を、前記複数種類の光強度に基づいて計測する、
非接触型測距方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、周波数掃引光を用いた非接触型測距装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正確な測距技術は大規模構造物の形状測定のような計測において重要な技術である。このような応用は多数存在し、パラボラアンテナや建築物のような人工物の形状測定、氷床の厚み計測や森林の高さ測定に代表される自然形成物の測定、等がある。特に、建物等のヘルスモニタリングや防災を目的とした大規模構造物の計測では、遠方の測定物の位置や形状を高精細に測定する需要が存在する。
【0003】
LiDAR(Light Detection And Ranging:光による検知と測距)は、レーザ光を使って被測定物までの光路長を計測する非接触型測距技術である。このような技術において、周波数変調連続波(FMCW)型LiDARは単一光源で測距を行い、速度・振動検知の能力がある。FMCW型LiDARでは、光周波数を掃引し、戻り光との干渉により生じる周波数差(ビート周波数、IF)を距離に換算する。100nmの掃引帯域を有する光源を用いれば約12μmの分解能が実現できる。
【0004】
しかしながら、FMCW型LiDARでは、測定距離は光源のコヒーレンス長により数十mに限定されている。また、得られるビート周波数が受信帯域を上回る計測はできない。これは、受信帯域が一定である限り、周波数の掃引速度と測定距離の積に上限が生じることを意味する。すなわち、受信帯域が一定ならば、測定距離又は周波数の掃引速度のいずれかを犠牲にしなければならないという課題がある。なお、測定の繰り返し周波数(リフレッシュレート)は周波数の掃引速度に比例するため、周波数の掃引速度を犠牲にすることは、リフレッシュレートを犠牲することになる。以上2つの要因により、FMCW型LiDARは専ら数十m程度以内の比較的短距離の測距に限定されていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】永田崇弘 他,“波長掃引型光周波数コムを用いた周波数変調連続波型光距離計”,2022年度(第73回)電気・情報関連学会中国支部連合大会,R22-11-04.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単一光源を用いる簡便な測距装置において、周波数の掃引速度を低下させることなく測定距離の延長を実現するための技術が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。非特許文献1では、参照光又はプローブ光の一方を異なる複数の周波数の光に複製し、参照光又はプローブ光の他方と合波する。これにより、複数の周波数のビート信号を発生させ、そのうちの受信帯域に入ったビート周波数を検出する。
【0007】
しかし、非特許文献1では、複数の周波数の光が生成され、ビート信号の検出時においてビート信号を発生させた周波数がどの周波数であるかを特定することができなかった。そこで、本開示は、ビート信号の検出時においてビート信号を発生させた周波数が、複製された複数の周波数のうちのどの周波数であるかを特定可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示は、参照光又はプローブ光の一方の周波数の光を複製し、複製した複数の周波数の光と参照光又はプローブ光の他方とを干渉させる。この複製の際に、光強度が光周波数に対して非一様となるようにする。
【0009】
具体的には、本開示に係る非接触型測距装置は、周波数掃引光を被測定物に照射し、前記被測定物で反射されたプローブ光と参照光との干渉によるビート信号の周波数を計測することにより、前記被測定物までの距離を求める非接触型測距装置において、本開示に係る非接触型測距方法を実行する。
【0010】
本開示に係る非接触型測距装置は、
前記参照光又は前記プローブ光の一方を異なる複数の周波数の光に複製する光複製部を備え、
前記光複製部は、前記複製に際し、複数種類の光強度の光に複製し、
前記光複製部で複製された複数の周波数の光を前記参照光又は前記プローブ光の他方と合波することで、複数のビート信号を発生させ、
前記複数のビート信号のうちの少なくともいずれの周波数を、前記複数種類の光強度に基づいて計測する。
【0011】
本開示に係る非接触型測距方法は、
光複製部が、前記参照光又は前記プローブ光の一方を異なる複数の周波数の光に複製する手順を備え、
前記光複製部で複製された複数の周波数の光を前記参照光又は前記プローブ光の他方と合波することで、複数のビート信号を発生させ、
前記複数のビート信号のうちの少なくともいずれの周波数を、前記複数種類の光強度に基づいて計測する。
【0012】
本開示に係る非接触型測距装置は、前記複数のビート信号のうちの最小の周波数及び次に最小の周波数を計測してもよい。
【0013】
また前記光複製部は、前記複数の周波数の光として、前記周波数掃引光の周波数掃引幅よりも広い周波数帯域の光周波数コムを生成してもよい。
【0014】
なお、上記各開示は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ビート信号の検出時においてビート信号を発生させた周波数が、複製された複数の周波数のうちのどの周波数であるかを特定可能にするすることができる。このため、本開示は、単一光源を用いた簡便な構成にも関わらず、測定速度を低下させることなく、km級の測定距離と数十μm級の分解能とを実現することができ、さらに、測距結果の周期的な曖昧さを緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1に係る非接触型測距装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】従来の参照光及びプローブ光を説明する図であり、(a)は参照光及びプローブ光の周波数を示し、(b)は干渉信号スペクトルを示す。
【
図3】参照光及びプローブ光の周波数を説明する図である。
【
図5】本開示の参照光及びプローブ光の周波数を説明する図である。
【
図7】本開示の光周波数コム発生器の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1にFWCW型LiDAR方式をベースとした本開示の実施形態を示す。1は周波数掃引光源、2は光を分波または合波するカプラ、3は光サーキュレータ、4はレンズ、5は被測定物、6は遅延器、7は光周波数コム発生器、8は光90度ハイブリッド、9はバランス型フォトデテクタ、10はADコンバータ、11はコンピュータ等の演算部、12はRFシンセサイザである。
【0019】
光周波数コム発生器7は本開示の光複製部として機能し、参照光を異なる複数の周波数の光に複製する。光90度ハイブリッド8、バランス型フォトデテクタ9-1及び9-2、ADコンバータ10-1は、本開示の光検出部として機能する主干渉計20を構成する。以下、「光検出部の受信帯域」を「受信帯域」と略記する。
【0020】
周波数掃引光源1は、周波数が線形に変調されたレーザ光を発振する。その周波数は、一定の掃引速度γ[Hz/s]で、一定の周波数掃引時間ΔTに、周波数掃引幅ΔFにわたり掃引される。本実施形態では、周波数掃引光源1から出力される光をレーザ光として説明するが、コヒーレント光であればこれに限定されない。
【0021】
カプラ2-1は、周波数掃引光源1から入力された光を2つに分岐し、一方をプローブ光として光サーキュレータ3に入力し、他方を参照光として光周波数コム発生器7に入力する。光サーキュレータ3は、カプラ2-1からのプローブ光をレンズ4に入力する。また、光サーキュレータ3は、レンズ4からの光を光90度ハイブリッド8に入力する。レンズ4は、周波数掃引光源1からのプローブ光を平面波に変換する。また、レンズ4は、被測定物5からの反射されたプローブ光を集光して光サーキュレータ3に入力する。
【0022】
光周波数コム発生器7は、入力された光に対して高次の変調側波帯を発生させるものである。光周波数コム発生器7の具体的な構成としては、例えば非特許文献1に記載がある。本実施形態では、一例として、アンプ13を介したRFシンセサイザ12の信号が光周波数コム発生器7に入力され、光周波数コム発生器7がRFシンセサイザ12からの信号に応じた周波数間隔で光周波数コムを発生させる例を示す。
【0023】
光周波数コム発生器7は、カプラ2-1から入力された参照光の周波数を含み、複数の異なる周波数で構成される光周波数コムを生成する。光周波数コム発生器7は、生成した光周波数コムを、主干渉計20の参照光として光90度ハイブリッド8に入力する。被測定物5により反射されたプローブ光は、レーザ光(参照光)と光90度ハイブリッド8において干渉する(主干渉計)。主干渉計20では、被測定物5から反射されたプローブ光の参照光に対する遅延時間を測定することができる。演算部11は、この遅延時間を用いて測距を行う。
図1では、演算部11を主干渉計20に含まれる構成としているが、主干渉計20と演算部11は別々でもよい。
【0024】
具体的には、光90度ハイブリッド8は、参照光と被測定物5からの反射光とを合波したビート信号の同相成分Iを生成し、バランス型フォトデテクタ9-1に入力する。また、光90度ハイブリッド8は、90度位相シフトさせた参照光と被測定物からの反射光とを合波したビート信号の直交成分Qを生成し、バランス型フォトデテクタ9-2に入力する。
【0025】
バランス型フォトデテクタ9-1は、光90度ハイブリッド8からの入力に基づき、ビート信号の同相成分Iのアナログ電気信号を取得し、ADコンバータ10-1に入力する。バランス型フォトデテクタ9-2は、光90度ハイブリッド8からの入力に基づき、ビート信号の直交成分Qのアナログ電気信号を取得し、ADコンバータ10-1に入力する。ADコンバータ10-1は、バランス型フォトデテクタ9-1から入力されるビート信号の同相成分Iのアナログ電気信号及びバランス型フォトデテクタ9-2から入力されるビート信号の直交成分Qのアナログ電気信号をデジタル信号に変換し、演算部11に入力する。
【0026】
ここで、光周波数コム発生器7を備えない従来のFMCW型LiDARにおける参照光とプローブ光の干渉について
図2を用いて説明する。すなわち、従来のFMCW型LiDARは、
図1の主干渉計において、カプラ2-1からの参照光が光90度ハイブリッド8に直接入力される構成である。従来のFMCW型LiDARでは、カプラ2-1からの参照光と、参照光に対して被測定物5までの距離を往復した分だけ遅延したプローブ光とが到着し、その周波数差に相当する周波数を持つビート信号が発生する。以下、ビート信号の周波数をビート周波数IFとする。このビート周波数IFは、被測定物5から反射されたプローブ光の参照光に対する遅延時間に比例するため、測距ができる。
【0027】
ビート信号は、具体的には、光90度ハイブリッド8から出力されるビート信号のI相成分およびQ相成分を用いて複素数表示で式(1)のように表される。
(数1)
I+jQ=exp(jγτt) (1)
【0028】
演算部11は、ADコンバータ10-1から入力されるハイブリッド信号の同相成分I及び直交成分Qに基づき、式(1)からビート信号の位相を求める。ここで、τは、参照光とプローブ光との光経路差に相当するプローブ光の参照光に対する遅延時間であり、γτがビート周波数IFである。
【0029】
一般に、FMCW型LiDARの距離分解能Δzは、周波数掃引幅ΔFを用いて以下のように表される。
(数2)
Δz=c/(2ΔF) (2)
【0030】
つまり、距離分解能Δzを向上するには、周波数掃引幅ΔFを大きくする必要がある。かつ、ビート周波数IFは被測定物5までの距離により変動する遅延時間τと掃引速度γに比例する。そのため、仮に受信帯域が一定であるならば、掃引速度γと距離との積に対して限界が生じることになる。具体的には、従来のFMCW型LiDARでは、
図2(B)に示すように、ビート周波数IFが受信帯域外となるビート信号は検知できず、受信帯域による測定距離の限界が生じる。なお、繰り返し周波数(リフレッシュレート)は、掃引速度γに比例するため、掃引速度γが制限されれば、リフレッシュレートも制限されることになる。
【0031】
本開示では、この受信帯域による測定距離の限界を排除するため、参照光経路に、すなわち、カプラ2-1と光90度ハイブリッド8との間に、前述した光周波数コム発生器7を導入する。
【0032】
図3に、光周波数コム発生器7で生成される光周波数コムの一例を示す。本実施形態に係る光周波数コム発生器7は、カプラ2-1から入力された参照光の周波数を含み、複数の異なる周波数で構成される光周波数コムを生成する。
図3に示す光周波数コムでは、理解が容易になるように、参照光L
ref1が周波数掃引光源1が周波数を掃引するレーザ光に相当し、各時刻において、参照光L
ref1を中心に両側に等間隔に離れた周波数を2つずつ含む計7つの周波数で構成される例を示す。
【0033】
本実施形態に係る光周波数コムは一例であり、周波数の数はこれに限定されない。また、光周波数コムの周波数間隔は等間隔ではなく、異なっていてもよい。なお、
図3に示す数程度の複数の周波数を含む光周波数コムの生成を行う光複製部には、光周波数コム発生器7に限らず、入力された光に対して側波帯を発生させうる任意の手段を採用し得る。
【0034】
本実施形態では、カプラ2-1から入力された参照光が周波数掃引光源1によって線形に掃引されるため、光周波数コムも線形に掃引される。これにより、本開示におけるカプラ2-1からの参照光は、
図3に示す周波数掃引された光周波数コムとなって光90度ハイブリッド8に入射する。
【0035】
図4に、本実施形態の主干渉計20が検出するビート周波数の一例を示す。時刻τにおける光周波数コムを構成する参照光L
ref1~L
ref5とプローブ光L
pとのビート周波数IF1~IF5について示す。
図4に示すように、被測定物5までの伝搬により遅延を受けたプローブ光は、光周波数コムを構成する参照光のすべてと干渉し、ビート周波数IF1~IF5の複数のビート信号が発生する。本開示では、複数のビート信号のうちの最小の周波数及びその次に最小の周波数を計測する。例えば、
図6に示すようにバランス型フォトデテクタ9-1及び9-2などの受信帯域が観測されるビート周波数を、試験光とその最も近い周波数のビート周波数IF2及びIF3を計測する。
【0036】
周波数が等間隔である
図3に示す光周波数コムの周波数間隔をΔfとすると最小のビート周波数はΔf/2以下となる。そのため、主干渉計20は少なくともΔf/2以下を受信帯域とすることが望ましい。光周波数コムの周波数間隔Δfを狭めると、最小のビート周波数の最大値Δf/2が低くなるので、受信帯域が狭い主干渉計20でも最小のビート周波数を検出可能となる。なお、周波数間隔が等間隔ではない光周波数コムの場合は、周波数間隔が最大の周波数間隔をΔfとすれば等間隔の場合と同様に説明できる。
【0037】
図3では、参照光及びプローブ光の一部分を記載しているだけであり、参照光及びプローブ光はさらに高い周波数帯域側にも線形に掃引されているものとする。光周波数コム発生器7において周波数掃引光源1の周波数掃引幅ΔFよりも十分に広い周波数帯域の光周波数コムを発生すれば、被測定物5が遠方にある場合でも、バランス型フォトデテクタ9-1及び9-2などの受信帯域を拡張することなく、いずれかの光周波数コム成分との干渉を観測することができる。
【0038】
ここで、本開示では、
図4に示す複数のビート周波数は、発生光周波数コム発生器7により生成した周波数掃引光の周波数に依存する。発生光周波数コム発生器7より生成した周波数掃引光は、元の周波数掃引光を周波数方向にシフトした光である。光周波数コム発生器7では複数の周波数掃引光が生成されるため、ビート周波数IF2を生成させた周波数掃引光に周期的なあいまいさが残る。
【0039】
そこで、本開示では、発生光周波数コム発生器7で発生するCombの歯(teeth)の強度を一様でないものにする。これにより、本開示は周期的な曖昧さを緩和する。例えば、光周波数コム発生器7の構成を工夫し、歯の強度を不均一にする。
【0040】
図5に、周波数掃引光の光強度の一例を示す。実線が光周波数コム発生器7の生成する周波数掃引光を示し、破線が被測定物5から反射されて戻ってくる試験光L
p1,L
p2,L
p3を示す。図では説明のため、3とおりの試験光L
p1,L
p2,L
p3を示すが、実際はこれらの1つのみが発生する。例えば、
図5に示すように、光周波数コム発生器7の生成する周波数掃引光の光強度を、周波数間隔Δfの3倍の周期で2倍の強度にする。
【0041】
図6に、試験光L
p1,L
p2,L
p3を測定時のビート周波数の一例を示す。
図6(a)は試験光L
p1のビート周波数を示し、
図6(b)は試験光L
p2のビート周波数を示し、
図6(c)は試験光L
p3のビート周波数を示す。
図6のようにビート周波数スペクトルにおける強度が異なるため、区別することができる。
【0042】
演算部11は、発生した2つのビート信号の強度と周波数とに基づいて、試験光Lp1,Lp2,Lp3のいずれであるかを判定する。例えば、強い信号と弱い信号が同時に測定され、かつ強い信号が負の周波数側にある場合は試験光Lp1であると判定する。なお、周波数の正負は試験光と参照光のどちらを基準にするかによって変わる。
【0043】
例えば、光周波数コム発生器7を、
図7のようなマッハツェンダー型強度変調器7の縦列構成で実現する。第1番目の変調器71には周波数3Δf、第2番目の変調器72には周波数Δfの変調信号を入力し、それらの変調信号の振幅を異なる大きさにすることにより、所望の参照光を得る。
【0044】
なお、上記構成において光周波数コム発生器7は主干渉計20手前のプローブ光経路、すなわち、光サーキュレータ3と光90度ハイブリッド8との間に配置してもよい。この場合、光周波数コム発生器7には、被測定物5で反射されたプローブ光が入力される。そのため、光周波数コム発生器7は、被測定物5で反射されたプローブ光の周波数を含み、複数の異なる周波数で構成される光周波数コムを生成することになる。一方で、参照光は1つの光となる。この場合において、プローブ光に基づく光周波数コムのうち、参照光の周波数と近い周波数の光と参照光との干渉によるビート信号の周波数を計測することで、
図1に示す構成と同様の効果を得ることができる。
【0045】
以上のように、光周波数コム発生器7の導入により、周波数の掃引速度を低下させることなく、受信帯域による測定距離の限界を排除することができる。また光、強度が光周波数に対して非一様となるように、入射された光を異なる複数の周波数の光に複製することで、測距結果の周期的な曖昧さを緩和することができる。
【0046】
なお、本実施形態に係る主干渉計20では、光90度ハイブリッド8を用いてハードウェアベースで処理する構成としたが、ヒルベルト変換を用いてソフトウェアベースで処理してもよい。
【0047】
本実施形態に係る演算部11はコンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本開示に係る非接触型測距装置及び方法は、情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1:周波数掃引光源
2:カプラ
3:光サーキュレータ
4:レンズ
5:被測定物
6:遅延器
7:光周波数コム発生器
8:光90度ハイブリッド
9:バランス型フォトデテクタ
10:ADコンバータ
11:演算部
12:RFシンセサイザ
13:アンプ
20:主干渉計
71、72:変調器