(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121338
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028383
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智博
(72)【発明者】
【氏名】小山 裕司
(72)【発明者】
【氏名】内ケ島 愛梨
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AA01C
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK41A
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4F100JN18C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】
機械物性の大幅な低下を抑制でき、それでいて、積層セラミックコンデンサの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いた際などのカット性に優れた、環境配慮型ポリエステルフィルムを提供することにある。
【解決手段】
表層、中間層、及び表層をこの順に有する少なくとも3層からなるポリエステルフィルムであって、前記中間層が、共重合ポリエステルを含む層であり、前記ポリエステルフィルムの全ポリエステル中の全ジカルボン酸成分におけるイソフタル酸の含有量が、0.05~0.75モル%であり、窒素ガス雰囲気下、50℃から10℃/分で昇温し、200℃で10分間保持したときの、50℃~200℃の昇温過程のみをプロットした、ケミルミネッセンス発光強度の全幅半値幅が、53.0℃以上である、ポリエステルフィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層、中間層、及び表層をこの順に有する少なくとも3層からなるポリエステルフィルムであって、
前記中間層が、共重合ポリエステルを含む層であり、
前記ポリエステルフィルムの全ポリエステル中の全ジカルボン酸成分におけるイソフタル酸の含有量が、0.05~0.75モル%であり、
窒素ガス雰囲気下、50℃から10℃/分で昇温し、200℃で10分間保持したときの、50℃~200℃の昇温過程のみをプロットした、ケミルミネッセンス発光強度の全幅半値幅が、53.0℃以上である、ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記全幅半値幅に対しての高温側半値幅の比が、0.54以上である、請求項1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記共重合ポリエステルとして、ボトル再生原料を用いる、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記ボトル再生原料の含有量が、前記ポリエステルフィルムの全ポリエステルに対して5~50質量%である、請求項3に記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
ホモポリエステルからなる層と、共重合ポリエステルを含む層を交互に有する、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】
両表層が、ホモポリエステルからなる層である、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記ホモポリエステルからなる層の層厚みの和/前記共重合ポリエステルを含む層の層厚みの和が、0.06~0.67である、請求項5に記載のポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記表層のうち少なくとも一方が、粒子として無機粒子及び有機粒子を含有する、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項9】
前記表層のうち少なくとも一方の厚みが、5μm以下である、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項10】
総厚みが、12~50μmである、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項11】
いずれかの位置における複屈折(Δn×103)が、21.0以下である、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項12】
少なくとも一方の表面の算術平均粗さ(Ra)が、30nm以下である、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項13】
少なくとも一方の表面の最大突起高さ(Rp)が、300nm以下である、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項14】
積層セラミックコンデンサの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、機械的特性や耐熱性等に優れており、かつ、価格的にも入手し易いことから、工業材料用として多様な用途に用いられている。
特に、電子部材関連の工程紙としては、積層セラミックコンデンサ(Multi-Layer Ceramic Capacitor;MLCC)を製造する際の離型フィルムなどに用いられている。
【0003】
そして、近年、自動車の電装化やスマートフォンの高機能化等に伴い、MLCCの小型化及び高容量化が進んでいる。
【0004】
MLCCは、次のようにして製造される。
まず、離型フィルム上に、セラミック成分及びバインダー樹脂を含むセラミックスラリーを塗工し、乾燥することでセラミックグリーンシート(誘電体シート)を作製し、これに電極をスクリーン印刷法等により印刷して内部電極とし、乾燥した後に印刷済のセラミックグリーンシートを離型フィルムから剥離し、このようなグリーンシートを多数積層させる。積層させたグリーンシートをプレスして一体化させた後、個々のチップに切断する。その後、焼却炉で内部電極及び誘電体層を焼結させ、MLCCが製造される。
【0005】
上記のように、MLCCの製造工程においては、グリーンシートを積層した状態で離型フィルムごと裁断する(ハーフカット)工程がある。
上記ハーフカット工程に着目したポリエステルフィルムとしては、例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1には、MLCCの製造用離型フィルムとして用いた際、ハーフカット工程におけるフィルムの裂けを抑制することができるポリエステルフィルムが開示されている。
【0006】
また、昨今の環境問題の高まりから、ペットボトルリサイクルが一般化しつつあるように、ポリエステルフィルム分野においても、再利用・再生等の環境負荷低減が求められている。特に、積層セラミックコンデンサの小型化・高容量化に際して、セラミックグリーンシートの薄膜化が進み、積層させるグリーンシート数が増えたことで、離型フィルムの使用量が増大しており、環境負荷低減は喫緊の課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に開示のポリエステルフィルムは、ハーフカット工程におけるフィルムの裂けを抑制することはできるものの、裁断時のカット性(以下、単に「カット性」という場合がある。)が不十分な場合があった。カット性が不十分な場合、カットした端面がささくれだって、グリーンシートを多数積層させる際に、端面を基準とした位置合わせがしにくくなるおそれがある。
特に近年、セラミックグリーンシートの薄膜化が進み、グリーンシートの積層数が増えたことで、積層する際の基準面の決めやすさが求められる傾向にあり、裁断時のカット性の重要性が増してきている。
【0009】
また、特許文献1においては、環境負荷低減として、フィルム厚みを薄膜化することについて言及されているものの、再利用に関する開示はなく、再利用は困難として、それ以上の検討はされていない。
【0010】
さらに、特許文献1のポリエステルフィルムは、共重合ポリエステル樹脂を含む層を有することが開示されているが、共重合成分の含有量によっては、機械物性が大幅に低下する場合がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、機械物性の大幅な低下を抑制でき、それでいて、積層セラミックコンデンサの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いた際などのカット性に優れた、環境配慮型ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討の結果、次の構成を有することで、上記課題を解決できることを見出した。
本発明は、以下の態様を有する。
【0013】
[1]表層、中間層、及び表層をこの順に有する少なくとも3層からなるポリエステルフィルムであって、前記中間層が、共重合ポリエステルを含む層であり、前記ポリエステルフィルムの全ポリエステル中の全ジカルボン酸成分におけるイソフタル酸の含有量が、0.05~0.75モル%であり、窒素ガス雰囲気下、50℃から10℃/分で昇温し、200℃で10分間保持したときの、50℃~200℃の昇温過程のみをプロットした、ケミルミネッセンス発光強度の全幅半値幅が、53.0℃以上である、ポリエステルフィルム。
[2]前記全幅半値幅に対しての高温側半値幅の比が、0.54以上である、上記[1]に記載のポリエステルフィルム。
[3]前記共重合ポリエステルとして、ボトル再生原料を用いる、上記[1]又は[2]に記載のポリエステルフィルム。
[4]前記ボトル再生原料の含有量が、前記ポリエステルフィルムの全ポリエステルに対して5~50質量%である、上記[3]に記載のポリエステルフィルム。
[5]ホモポリエステルからなる層と、共重合ポリエステルを含む層を交互に有する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリエステルフィルム。
[6]両表層が、ホモポリエステルからなる層である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のポリエステルフィルム。
[7]前記ホモポリエステルからなる層の層厚みの和/前記共重合ポリエステルを含む層の層厚みの和が、0.06~0.67である、上記[5]に記載のポリエステルフィルム。
[8]前記表層のうち少なくとも一方が、粒子として無機粒子及び有機粒子を含有する、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載のポリエステルフィルム。
[9]前記表層のうち少なくとも一方の厚みが、5μm以下である、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載のポリエステルフィルム。
[10]総厚みが、12~50μmである上記[1]~[9]のいずれか1つに記載のポリエステルフィルム。
[11]いずれかの位置における複屈折(Δn×103)が、21.0以下である、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載のポリエステルフィルム。
[12]少なくとも一方の表面の算術平均粗さ(Ra)が、30nm以下である、上記[1]~[11]のいずれか1つに記載のポリエステルフィルム。
[13]少なくとも一方の表面の最大突起高さ(Rp)が、300nm以下である、上記[1]~[12]のいずれか1つに記載のポリエステルフィルム。
[14]積層セラミックコンデンサの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる、上記[1]~[13]のいずれか1つに記載のポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機械物性の大幅な低下を抑制でき、それでいて、積層セラミックコンデンサの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いた際などのカット性に優れた、環境配慮型ポリエステルフィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】50℃~200℃の昇温過程のみをプロットした、ケミルミネッセンス発光強度を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。ただし、本発明は、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<<ポリエステルフィルム>>
本発明のポリエステルフィルム(以下、「本フィルム」とも称する)は、表層、中間層、及び表層をこの順に有する少なくとも3層からなり、前記中間層が共重合ポリエステルを含む層であり、本フィルムの全ポリエステル中の全ジカルボン酸成分におけるイソフタル酸の含有量は0.05~0.75モル%である。
また、本フィルムの窒素ガス雰囲気下、50℃から10℃/分で昇温し、200℃で10分間保持したときの、50℃~200℃の昇温過程のみをプロットした、ケミルミネッセンス発光強度の全幅半値幅(Full Width at half Maximum:FWHM)は、53.0℃以上である。
【0018】
本フィルムは、上述のとおり、窒素ガス雰囲気下、50℃から10℃/分で昇温し、200℃で10分間保持したときの、50℃~200℃の昇温過程のみをプロットした、ケミルミネッセンス発光強度の全幅半値幅は、53.0℃以上である。
酸化劣化の程度は、樹脂が酸化劣化して生じたペルオキシラジカル(ROO・)が過酸化物(ROOH)となり、ROOHが分解して再びROO・となり、高エネルギー状態の励起カルボニルと活性酸素の1つである一重項酸素とを生じ、これらの励起カルボニルと一重項酸素とが励起状態から基底状態に戻る際に発するエネルギーである極微弱な光を検出し発光量を測定することで、ROOHの生成量、すなわち酸化劣化の程度を調べることができる。
したがって、当該ケミルミネッセンス発光強度の全幅半値幅が53.0℃以上ということは、酸化劣化の程度が大きいことを示しており、ポリエステルフィルムが再生原料を使用していることを意味する。すなわち、当該ケミルミネッセンス発光強度の全幅半値幅が53.0℃以上のフィルムは、環境配慮型とすることができる。特に、昨今の環境負荷低減の要求から、環境配慮型か否か区別できることは重要であると考えている。
かかる観点から、当該ケミルミネッセンス発光強度の全幅半値幅は、54.0℃以上であることが好ましく、より好ましくは55.0℃以上、さらに好ましくは56.0℃以上、特に好ましくは57.0℃以上である。また、当該ケミルミネッセンス発光強度の全幅半値幅の上限値は、過度な酸化劣化と区別する観点から、70.0℃以下であることが好ましく、より好ましくは65.0℃以下である。
【0019】
さらに、本フィルムは、前記全幅半値幅に対しての高温側半値幅の比が、0.54以上であることが好ましい。すなわち、本フィルムのケミルミネッセンス発光強度の高温側半値幅の寄与が大きいことを示しており、このような高温側半値幅は温度平衡に至る以前から存在している劣化由来の発光によるものである。したがって、前記全幅半値幅に対しての高温側半値幅の比が0.54以上ということは、ポリエステルフィルムが再生原料を使用していることを意味する。
かかる観点から、前記全幅半値幅に対しての高温側半値幅の比は、0.55以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.56以上、特に好ましくは0.57以上である。また、前記全幅半値幅に対しての高温側半値幅の比の上限値は、過度な酸化劣化と区別する観点から、0.70以下であることが好ましく、より好ましくは0.69以下である。
なお、50℃~200℃の昇温過程のみをプロットした、ケミルミネッセンス発光強度が正規分布の場合には、全幅半値幅の低温側半値幅と高温側半値幅が等しくなるが、本発明では、上述のように高温側半値幅の寄与が大きい。また、全幅半値幅、低温側半値幅、高温側半値幅は、
図1において、Xcをピーク温度としたときのW1+W2、W1、W2にそれぞれ相当する。
【0020】
なお、上記ケミルミネッセンス発光強度の全幅半値幅や上記全幅半値幅に対しての高温側半値幅の比は、使用するポリエステルやその含有量などによって調整することができる。
【0021】
本フィルムは、表層、中間層、及び表層をこの順に有する少なくとも3層からなり、前記中間層が共重合ポリエステルを含む層であり、本フィルムの全ポリエステル中の全ジカルボン酸成分におけるイソフタル酸の含有量が0.05~0.75モル%であり、上述の物性を満たすものであれば特に限定されず、本フィルムは、本発明の要旨を逸脱しない限り、3層構造であっても、4層又はそれ以上の多層であってもよい。積層する層数は特に限定されないが、10層以下であることが好ましい。10層以下であれば、各層の厚みが十分となるため、製膜時の積層性が十分となり、フローマーク等が発生しにくくなり、フィルムの品質が十分保たれる。
なお、本フィルムは、2種3層、3種3層の3層構造であることが好ましく、2種3層の3層構造であることがより好ましい。
【0022】
特に、本フィルムの少なくとも片面は平滑性に優れる面であることが好ましい。かかる設計の方法としては、例えば、本フィルムを2種3層及び3種3層構造として、本フィルムの両方の面を平滑性に優れた状態に設計する方法や、本フィルムを3種3層構造として本フィルムの片方の面を平滑性に優れた状態とし、もう一方の面を異なる粗さに設計する方法が挙げられる。
【0023】
また、本フィルムは、無延伸フィルム(シート)であっても延伸フィルムであってもよい。中でも、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。その中でも、力学特性のバランスや平面性に優れる点で、二軸延伸フィルムであることがより好ましい。
【0024】
本発明においては、本フィルムを巻き取ってなるポリエステルフィルムロール(以下、「本ロール」とも称する)としてもよい。本ロールは、紙管、金属管、プラスチック管等のコアに巻き取られたポリエステルフィルムロールであり、幅0.2m以上であることが好ましく、より好ましくは0.3m以上、さらに好ましくは1.0m以上、特に好ましくは1.5m以上である。本ロール幅の上限値は、特に限定されないが、好ましくは2.3m以下であり、より好ましくは2.0m以下である。
また、本ロールに巻き取られる本フィルムの長さは、特に限定されないが、好ましくは1000m以上、より好ましくは6000m以上、さらに好ましくは12000m以上である。上限値についても特に制限はなく、通常20000m以下、好ましくは18000m以下である。
【0025】
<ポリエステル>
本フィルムの原料であるポリエステルは、主鎖に連続してエステル結合を有する高分子化合物をいい、具体的には、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合反応させることによって得られるポリエステルを挙げることができる。また、ジカルボン酸成分を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸を50モル%よりも多く含有するポリエステルを使用することが好ましい。
【0026】
本フィルムは、上述のとおり、中間層が共重合ポリエステルを含む層である。
前記共重合ポリエステルは、例えばジカルボン酸成分と脂肪族ジオールの重縮合ポリマーであることが好ましい。ジカルボン酸成分としては、好ましくはイソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸及びオキシカルボン酸(例えば、p-オキシ安息香酸等)等の1種又は2種以上が挙げられる。また、脂肪族ジオールとしては、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール等の1種又は2種以上が挙げられる。
共重合ポリエステルは、ジカルボン酸としてイソフタル酸を含むことが好ましく、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸及びテレフタル酸を含み、脂肪族ジオールとしてエチレングリコールを含むことがより好ましい。
【0027】
上記共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。第三成分とは、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の主成分(すなわち、最も含有量が多い成分)となる化合物と、ジオール成分の主成分(すなわち、最も含有量が多い成分)となる化合物以外の成分であり、例えば共重合ポリエチレンテレフタレートではテレフタル酸及びエチレングリコール以外の成分である。本発明では、第三成分としてイソフタル酸を含む共重合ポリエチレンテレフタレートを少なくとも含むことが好ましい。
【0028】
上記共重合ポリエステルとして、ボトル再生原料を用いることが好ましい。ボトル再生原料とは、ペットボトルからなるリサイクルポリエステルを意味する。
ペットボトルに使用されているポリエステルにはボトル外観を良好にするために、結晶性の制御が行われており、その結果、10モル%以下のイソフタル酸を含むポリエステルを用いることがある。したがって、ボトル再生原料を活用するためには、イソフタル酸を含むポリエステルを使用することになる。
なお、上記ボトル再生原料におけるリサイクル方法は、マテリアルリサイクルであっても、ケミカルリサイクルであってもよい。
【0029】
本フィルムの全ポリエステル中の全ジカルボン酸成分におけるイソフタル酸の含有量は、上述のとおり、0.05~0.75モル%であり、好ましくは0.10~0.65モル%、より好ましくは0.20~0.55モル%、さらに好ましくは0.30~0.45モル%である。
当該イソフタル酸の含有量が、0.05モル%以上であれば、本フィルムの複屈折(Δn×103)を所望する範囲に調整しやすくなる。一方、当該イソフタル酸の含有量が、0.75モル%以下であれば、本フィルムの機械物性の低減を抑制することができる。
【0030】
本発明において、前記ボトル再生原料の含有量は、本フィルムの全ポリエステルに対して5~50質量%であることが好ましく、より好ましくは7~45質量%、さらに好ましくは10~40質量%である。
当該ボトル再生原料の含有量が、5質量%以上であれば、環境負荷低減に貢献することができる。一方、当該ボトル再生原料の含有量が、50モル%以下であれば、ボトル再生原料由来の異物の影響を低減させることができる。また、前記ボトル再生原料に含まれるイソフタル酸の影響による本フィルムの機械物性の低減を抑制することができる。
【0031】
本フィルムは、中間層が共重合ポリエステルを含む層であればよく、中間層が複数の共重合ポリエステルを含む層であってもよいし、また中間層が共重合ポリエステルとホモポリエステルの両方を含有している層であってもよい。
ホモポリエステルは、例えば芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、好ましくはテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族ジオールとしては、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なホモポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等を例示することができ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0032】
本フィルムは、上述のイソフタル酸の含有量を満たした上で、全ジカルボン酸成分中のテレフタル酸の含有量を、50モル%以上とすることが好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
また、本フィルムの全ポリエステル中の全ジオール成分中のエチレングリコールの含有量は、50モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
なお、原料であるポリエステル及び本フィルムを構成するポリエステル中に含まれるテレフタル酸及びイソフタル酸に由来するエステル構成単位の含有量は、サンプルを重クロロホルムとトリフルオロ酢酸の混合溶液(体積比9/1)に溶解させて試料溶液を調製し、プロトンのNMRを測定した後、所定のプロトンのピーク強度を算出して、エステル構成単位100モル%中のテレフタル酸由来のエステル構成単位及びイソフタル酸由来のエステル構成単位の含有量(モル%)を算出することで求められる。
【0033】
なお、通常、エチレングリコールを原料の1つとしてポリエステルを製造(重縮合)する場合、エチレングリコールからジエチレングリコールが副生する。本明細書においては、このジエチレングリコールを副生ジエチレングリコールと称する。エチレングリコールからのジエチレングリコールの副生量は、重縮合の様式等によっても異なるが、エチレングリコールのうち5モル%以下程度である。本発明においては、5モル%以下のジエチレングリコールを副生ジエチレングリコールとした上で、前記副生ジエチレングリコールもエチレングリコールに包含されるものとし、共重合成分とは区別される。
一方、ジエチレングリコールの含有量によっては、より具体的にはジエチレングリコールが5モル%を超えて含有されている場合には、ジエチレングリコールは副生ジエチレングリコールとしてではなく、共重合成分として扱う。
【0034】
なお、中間層以外の層(例えば表層や、表層及び中間層以外の層など)は、共重合ポリエステルを含む層であっても、ホモポリエステルを含む層であってもよい。この場合の共重合ポリエステルやホモポリエステルは、上述のものと同一であり、上述の記載を援用することができる。
【0035】
(好ましい形態)
本フィルムは、表層、中間層、及び表層をこの順に有する少なくとも3層からなる積層構造であり、前記表層のうち少なくとも一方の厚みは、5μm以下であることが好ましく、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。一方、当該厚みの下限値は、0.1μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.2μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上である。当該厚みが、5μm以下であれば、表層に含有させる粒子に基づき形成される突起の均一性が向上する。一方、当該厚みが、0.1μm以上であれば、表層に含有させる粒子の脱落を抑制することができる。
【0036】
中でも、本フィルムの積層構造は、ホモポリエステルからなる層と、共重合ポリエステルを含む層を交互に有することが好ましい。かかる積層構造であれば、切断刃の刃先の侵入に対するフィルムの追従性が良好となり、裁断時のカット性が向上する。一方で、ハーフカットされた際の破断の伝播を抑制することができるため、意図しないフィルムの破けや裂けを抑制することができる。すなわち、裁断時のカット性及びフィルムの破けや裂けの抑制といった両特性の両立を図ることができる。
なお、本フィルムは、ホモポリエステルからなる層と共重合ポリエステルを含む層以外のその他の層を有していてもよいが、製膜性、層間密着性の観点から、ホモポリエステルからなる層と共重合ポリエステルを含む層から構成されていることが好ましい。
【0037】
前記積層構造は表層、中間層、及び表層をこの順に有し、前記中間層が共重合ポリエステルを含む層であるが、両表層はホモポリエステルからなる層であることが好ましい。かかる積層構造であれば、例えば共重合ポリエステルとして使用するボトル再生原料に由来する異物の影響を低減させることができる。より具体的には、積層セラミックコンデンサの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いられる場合、本フィルムの少なくとも片面は平滑性に優れる面であることが好ましいため、表層における異物の影響を最大限低減させて平滑性を維持することが好ましい。
【0038】
以上のように、本フィルムの積層構造は、ホモポリエステルからなる層/共重合ポリエステルを含む層/ホモポリエステルからなる層の3層からなることが最も好ましい。
なお、本発明において、ホモポリエステルからなる層とは当該層を構成する樹脂全体に対してホモポリエステルが95質量%を超える層を、共重合ポリエステルを含む層とは当該層を構成する樹脂全体に対して共重合ポリエステルを5質量%以上含む層を意味する。
【0039】
また、本フィルムの積層構造が、ホモポリエステルからなる層と、共重合ポリエステルを含む層を有する場合において、ホモポリエステルからなる層の層厚みの和と共重合ポリエステルを含む層の層厚みの和の比(ホモポリエステルからなる層の層厚みの和/共重合ポリエステルを含む層の層厚みの和)は、0.06~0.67であることが好ましい。
当該比が0.06以上であれば、切断刃の刃先の侵入に対するフィルムの追従性が良好となり、裁断時のカット性が向上する他、ボトル再生原料の含有量を増やしやすくなり、環境負荷低減効果を高めることができる。一方、当該比が0.67以下であれば、ハーフカットされた際の破断の伝播を抑制することができるため、意図しないフィルムの破けや裂けを抑制することができる他、ボトル再生原料由来の異物の影響を低減させてフィルム表面の平滑性を維持することも可能となる。かかる観点から、当該比は、より好ましくは0.07~0.63、さらに好ましくは0.08~0.60、特に好ましくは0.08~0.50、とりわけ好ましくは0.08~0.30、最も好ましくは0.08~0.20である。
なお、本フィルムの層構成及び各層厚みは、ウルトラミクロトームにて冷凍破断した断面を、透過型電子顕微鏡を用いて3000~200000倍に拡大観察し、断面写真を撮影することで求められる。
【0040】
<重縮合触媒>
上記ポリエステルを重縮合する際の重縮合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えばチタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物等が挙げられる。
【0041】
<固有粘度>
本フィルムの固有粘度(IV)は、0.50dL/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.52dL/g以上、さらに好ましくは0.54dL/g以上である。かかる範囲であれば、混練中のせん断応力が増大することによって粒子が高分散する等の利点がある。また、当該固有粘度(IV)は、例えば、1.00dL/g以下である。
【0042】
<粒子>
本フィルム中には、粒子を含有させることも可能である。ポリエステルフィルムは、粒子を含有することで、易滑性が付与され、かつ各工程での傷発生を防止して、取扱い性が良好となる。
本フィルム中に含有させる粒子の種類は、易滑性を付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子の他、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン-アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子等の架橋高分子、シュウ酸カルシウム及びイオン交換樹脂等の有機粒子を挙げることができる。これらの中でも、無機粒子及び有機粒子を併用して用いることが好ましく、所望する表面粗さを得やすい観点から、炭酸カルシウム及び有機粒子の併用が好ましい。
さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0043】
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。
また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0044】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.01~3μm、より好ましくは0.02~1.5μm、さらに好ましくは0.03~1μmの範囲である。平均粒径がかかる範囲であれば、本フィルムの取り扱い性と表面平滑性を両立させることができる。
なお、粒子の平均粒径は、粒子が粉体の場合には、遠心沈降式粒度分布測定装置(例えば株式会社島津製作所製、「SA-CP3型」)を用いて粉体を測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径(d50)を平均粒径とすることができる。フィルム、層又は樹脂中の粒子の平均粒径については、10個以上の粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)観察して粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
【0045】
本フィルムに粒子を含有させる場合、表層に粒子を含有させることが好ましい。また、3種3層構造などにより表裏異設計とする場合は、少なくとも一方の表層のみに粒子を含有させることも可能である。したがって、前記表層のうち少なくとも一方に粒子を含有させることが好ましく、粒子としては上述のとおり、無機粒子及び有機粒子を併用して用いることがより好ましい。
粒子の含有量は、平均粒径にも依存するが、粒子を含有する層において、質量基準で、10000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは8000ppm以下、さらに好ましくは7000ppm以下、より好ましくは6000ppm以下である。かかる範囲であれば、本フィルムの表面平滑性を良好なものとすることができる。粒子を含有しない場合、あるいは粒子の含有量が少ない場合、滑り性が不十分となる場合があるため、当該含有量は50ppm以上であることが好ましく、より好ましくは100ppm以上である。
【0046】
本フィルム中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、積層構造のポリエステルフィルムであれば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化又はエステル交換反応終了後、添加するのが好ましい。
【0047】
<その他>
オリゴマー成分の析出量を抑えるために、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルを原料としてフィルムを製造してもよい。オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を用いることができ、例えばポリエステル製造後に固相重合する方法等が挙げられる。
また、本フィルムの表層を、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステル原料を用いた層とすることで、オリゴマー成分の析出量を抑えてもよい。
また、ポリエステルは、エステル化又はエステル交換反応をした後に、さらに反応温度を高くして減圧下で溶融重縮合して得てもよい。
【0048】
なお、本フィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0049】
本フィルムの総厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、機械的強度、ハンドリング性及び生産性などの観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上、特に好ましくは12μm以上であり、そして、好ましくは200μm以下、より好ましくは125μm以下、さらに好ましくは80μm以下、特に好ましくは50μm以下である。
【0050】
<ポリエステルフィルムの製造方法>
次に、本フィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
例えば二軸延伸フィルムを製造する場合、先に述べたポリエステル原料の乾燥したペレットを、押出機などの溶融押出装置を用いてダイから溶融シートとして押し出し、回転冷却ドラムなどの冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。ここで、冷却は、例えばポリマーのガラス転移点以下の温度となるように行い、実質的に非晶状態の未配向シート(未延伸シート)を得るとよい。また、シートの平面性を向上させるためシートと冷却ロールとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法及び/又は液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0051】
次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~120℃、好ましくは80~110℃であり、延伸倍率は通常2.5~7.0倍、好ましくは3.0~6.0倍である。
【0052】
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70~170℃であり、延伸倍率は通常3.0~7.0倍、好ましくは3.5~6.0倍である。
【0053】
そして、引き続き、通常180~270℃の温度で、緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。この熱処理は、熱固定工程とも呼ばれる。熱処理は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
また、熱処理の後に冷却ゾーンにて冷却を行ってもよい。冷却温度は、フィルムを構成するポリエステルのガラス転移温度(Tg)より高い温度であることが好ましく、より具体的には、100~160℃の範囲であることが好ましい。この冷却は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0054】
また、本フィルムの製造に同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70~120℃、好ましくは80~110℃で温度コントロールされた状態で機械方向(縦方向)及び幅方向(横方向)に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で好ましくは4~50倍、より好ましくは7~35倍、さらに好ましくは10~25倍である。
そして、引き続き、通常170~250℃の温度で、緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式及びリニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0055】
なお、フィルムの長手方向(MD)とは、フィルムの製造工程でフィルムが進行する方向、すなわちフィルムロールの巻き方向をいい、機械方向や縦方向とも称する。
フィルムの幅方向(TD)とは、フィルム面に平行かつ長手方向と直交する方向をいい、すなわち、フィルムロール状としたときロールの中心軸と平行な方向をいい、横方向とも称する。
【0056】
なお、ポリエステル原料の一部としてボトル再生原料を用いる場合、ボトル再生原料は、集められた使用済みのペットボトルを、他の材料やごみが混ざらないように選別し、ラベルなどを除去した後、粉砕してフレーク及び/又はフレークをチップ化したものである。フレークを得る方法としては、従来公知の方法を使用することができ、粉砕機により粉砕してフレークを得る方法が挙げられる。また、フレークをチップ化する方法としても、従来公知の方法を用いることができ、例えばフレークを溶融押出した後、ストランド状の溶融押出物を裁断することでチップ化した原料を得る方法が挙げられる。
また、上記フレークには、異物が付着・混入している場合や薬品や薬剤等の化学物質を消費者がペットボトルに充填して使用している場合がある。そうした場合には、通常の洗浄では、ペットボトル表面に吸着した化学物質を十分に取り除くことができないため、従来公知のアルカリ洗浄を取り入れてもよく、当該アルカリ洗浄に続いて、すすぎ洗浄、乾燥等を取り入れてもよい。
また、フレークをチップ化する過程において、フィルターを使用して細かな異物を濾別してもよい。
【0057】
<ポリエステルフィルムの物性>
本フィルムは、いずれかの位置における複屈折(Δn×103)が21.0以下であることが好ましい。
このように、当該複屈折(Δn×103)が21.0以下であれば、フィルムを切断方向に切りやすくなる。すなわち、裁断時のカット性が向上すると考えられる。フィルムのカット性が向上すると、フィルム内部に侵入してきた切断刃の侵入速度の低減を抑制することができる。言い換えると、切断刃の刃先の侵入に対して、フィルムが追従するようになり、カット性が向上すると考えている。その結果、カットした端面のささくれが減り、端面を基準とした位置合わせがしやすくなるため、グリーンシートの積層に有利である。
かかる観点から、当該複屈折(Δn×103)は、20.9以下であることがより好ましく、さらに好ましくは20.8以下、特に好ましくは20.7以下である。また、当該複屈折の下限値は、延伸配向によるフィルムの強度向上の観点から、3以上であることが好ましく、より好ましくは5以上である。
【0058】
本フィルム表面のうち少なくとも一方の算術平均粗さ(Ra)は、例えば、MLCCを製造する際の離型フィルムとして用いる場合に、セラミック層の薄肉化対応やピンホール抑制の観点から、平滑であることが好ましい。より具体的には、当該算術平均粗さ(Ra)は30nm以下であることが好ましく、より好ましくは28nm以下、さらに好ましくは26nm以下、特に好ましくは24nm以下である。一方、当該算術平均粗さ(Ra)は、特に制限されないが、フィルムの巻き取り性などを良好にする観点から、3nm以上であることが好ましい。
【0059】
また、本フィルム表面のうち少なくとも一方の最大突起高さ(Rp)は、算術平均粗さ(Ra)で記載したのと同様に、セラミック層の薄肉化対応やピンホール抑制の観点から、平滑であることが好ましい。より具体的には、当該最大突起高さ(Rp)は300nm以下であることが好ましく、より好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。一方、当該最大突起高さ(Rp)は、特に制限されないが、フィルムの巻き取り性などを良好にする観点から、30nm以上であることが好ましい。
【0060】
本フィルムの引張破断強度は、150MPa以上であることが好ましく、より好ましくは180MPa以上であり、350MPa以下であることが好ましく、より好ましくは320MPa以下である。
また、本フィルムの引張破断伸度は、50%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上であり、200%以下であることが好ましく、より好ましくは180%以下である。
本フィルムの引張判断強度及び引張破断伸度が、かかる範囲であれば、積層セラミックコンデンサの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いるための十分なフィルム強度を有するといえる。
【0061】
<<離型層>>
本発明における離型フィルムは、本フィルム表面の少なくとも一方に離型層を備えた離型フィルムであることが好ましい。また、本発明においては、本フィルム表面の少なくとも一方に離型層を備えた離型フィルムを巻き取ってなる離型フィルムロールとしてもよい。当該離型層は、前記ポリエステルフィルムにおいて、平滑性に優れる面側に積層されることが好ましい。
なお、前記離型層は、直接又は他の層を介して本フィルムに積層される。
【0062】
前記離型層は、離型剤を含む離型剤組成物から形成されるが、良好な離型性能を得る観点から、とりわけ、該離型剤組成物中にシリコーン樹脂を含有することが好ましい。具体的には、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプや、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ、あるいはフルオロシリコーン樹脂等を含有することが好ましい。
【0063】
硬化型シリコーン樹脂としては、付加型、縮合型等の熱硬化型や紫外線硬化型等の電子線硬化型等、既存の何れの硬化反応タイプでも用いることができ、また複数種類の硬化型シリコーン樹脂を併用して使用してもよい。
また、離型層を形成する際の硬化型シリコーン樹脂の塗工形態にも特に制限は無く、有機溶剤に溶解している形態、水系エマルジョンの形態、無溶剤の形態の何れであってもよい。
【0064】
離型層を形成する離型剤組成物には、その他にも、必要に応じてバインダー、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、帯電防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料及び顔料等が含有されてもよい。
【0065】
離型層は、本フィルムに離型剤組成物をコーティングすることにより設けられ、フィルム製膜工程内で行うインラインコーティング、あるいは、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングのいずれを採用してもよい。
【0066】
本フィルム上に離型層を設ける方法としては、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を挙げることができる。
【0067】
離型層を形成する際の硬化条件に関しては、特に限定されるわけではなく、オフラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、80℃以上で10秒間以上、好ましくは100~200℃で3~40秒間、より好ましくは120~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
【0068】
また、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。なお、活性エネルギー線照射による硬化のためのエネルギー源としては、公知の装置、エネルギー源を用いることができる。
【0069】
離型層の塗工量(乾燥後)は塗工性の面から、通常、0.005~5g/m2、好ましくは0.005~1g/m2、より好ましくは0.005~0.1g/m2の範囲である。塗工量(乾燥後)が0.005g/m2以上であると、塗工性が安定化し、均一な塗膜を得るのが容易になる。一方、5g/m2以下であると、厚塗りされず、離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下することを防止できる。
なお、塗工量は、塗布した時間あたりの液質量(乾燥前)、塗工液不揮発分濃度、塗布幅、延伸倍率、ライン速度等から計算で求める。
【0070】
<<用途>>
本フィルムは、グリーンシートを積層した状態で離型フィルムごと裁断する際のカット性に優れていることから、セラミックグリーンシートの支持体として、特に、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として好適に用いることができる。セラミックグリーンシートは、支持体としての本フィルムに例えばセラミックスラリーを塗布することで形成される。
このようにして製造される、離型フィルムの離型層上にグリーンシートを備える積層シートも本発明に包含される。
【0071】
今後、電装化が進む自動車向けMLCCにおいては、とりわけ、当該MLCCの小型化及び高容量化が進み、使用するセラミックグリーンシートの薄膜化が加速すると予測される。
本フィルムは、グリーンシートを積層した状態で離型フィルムごと裁断する際のカット性に優れていることから、グリーンシートの積層に有利である。また、本フィルムは、環境配慮型であることから、離型フィルムの使用量が増大することによる喫緊の課題である環境負荷低減にも対応することが可能である。
したがって、本フィルムは、とりわけ自動車用積層セラミックコンデンサの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として好適に用いることができる。
【0072】
<<語句の説明>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」あるいは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0073】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
ただし、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
<評価方法>
(1)ポリエステルの固有粘度(IV)
ポリエステルに非相溶な成分を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mLを加えて溶解させ、粘度測定装置「VMS-022UPC・F10」(株式会社離合社製)を用いて、30℃で測定した。
【0075】
(2)平均粒径
ポリエステルに含有される粒子の平均粒径については、株式会社島津製作所製の遠心沈降式粒度分布測定装置(SA-CP3型)を用いて測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径を平均粒径d50とした。
【0076】
(3)ケミルミネッセンス発光強度
ケミルミネッセンスアナライザー(東北電子産業株式会社 CLA-FS4)を用い、フィルムを約50mgになるように直径20mmのアルミ製カップに6枚重ねて入れ、窒素ガス雰囲気下で、50℃から200℃まで10℃/分で昇温し、200℃で10分間保持する間の50~200℃の化学発光量を、400nm~650nmの検出波長で1秒毎に測定した。また、アルミ製カップの測定値をバックグラウンド値として取得した。当該データの処理においては昇温過程のみ切り出して(時間レンジ 0‐900s)発光プロファイルの強度、半値幅等のプロファイルを解析した。以降のデータ処理では各試料の測定値からバックグラウンド値を差し引くが,スペクトル間の演算では、OriginPro2023にてLOESS(局所平滑化)処理を行った。
【0077】
(4)複屈折(Δn×103)
ポリエステルフィルムの所定の場所から長手方向(MD)に50mm、幅方向(TD)に20mmの試料片を採取し、オリンパス株式会社の偏光顕微鏡BX50を用いて主軸方向を求めた。試料片の主軸方向に印線を書き、印線とサンプル長辺が平行になるように所定の場所から20mm×10mmのサイズの屈折率測定用サンプルを切り出した。
なお、実施例においては、所定の場所として、ロール全幅に対する中央位置を測定した(他の測定においても同様)。
【0078】
株式会社アタゴ製のアッベ式屈折計(NAR-1T)を用い、配向の主軸方向の屈折率nγ、配向の短軸方向の屈折率nβを求め、(nγ-nβ)の絶対値である複屈折(Δn)を求めた。
なお、屈折率の測定は、ナトリウムD線を用い、23℃で行った。
【0079】
(5)算術平均粗さ(Ra)及び最大突起高さ(Rp)
ポリエステルフィルムの表面算術平均粗さ(Ra)を、株式会社小坂研究所製表面粗さ測定器(SE-3500)を用いて次のようにして求めた。
すなわち、測定によって得られたフィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をx軸、縦倍率の方向をy軸として、粗さ曲線y=f(x)で表した時、表面算術平均粗さは、次の式で与えられた値を〔nm〕で表したものである。算術平均粗さは、試料フィルム表面から10本の粗さ曲線を求め、これらの粗さ曲線から求めた抜き取り部分の算術平均粗さの平均値で表した。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
【0080】
【0081】
また、ポリエステルフィルムの表面最大突起高さ(Rp)は、上記方法で得られたフィルム断面曲線の平均面からの高さの最大値を表したものである。
【0082】
なお、算術平均粗さ(Ra)及び最大突起高さ(Rp)は、ポリエステルフィルムの両面とも測定した。
【0083】
(6)引張破断強度及び引張破断伸度
ポリエステルフィルムの所定の場所から、幅15mm、長さ150mmのサイズの試料片を採取し、株式会社島津製作所製のオートグラフAGX-Vを用いて引張破断強度及び引張破断伸度を測定した。各試験片の中央部に50mm間隔の標点をつけ、引張試験機を用い試験片のつかみ間隔50mm、引張速度200mm/minにて引張試験を行い、切断時の荷重及び伸びを測定し、引張破断強度及び引張破断伸度を求めた。
【0084】
<使用した材料>
原料A:ホモポリエチレンテレフタレート(固有粘度=0.64dL/g)
原料B:ホモポリエチレンテレフタレートに、平均粒径0.4μmの有機粒子を0.5質量%配合したマスターバッチ(固有粘度=0.62dL/g)
原料C:ホモポリエチレンテレフタレートに、平均粒径0.7μmの炭酸カルシウム粒子を2.0質量%配合したマスターバッチ(固有粘度=0.61dL/g)
原料D:ジカルボン酸成分全体に対してイソフタル酸を1.4モル%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度=0.71dL/g)
原料E:ジカルボン酸成分全体に対してイソフタル酸を1.5モル%共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度=0.69dL/g)
【0085】
なお、原料Dと原料Eは、ペットボトルからなるリサイクルポリエステル(ボトル再生原料/マテリアルリサイクル)である。
【0086】
(実施例1)
原料A、B、Cをそれぞれ49質量%、31質量%、20質量%の割合で混合した混合原料を両表層の原料とし、原料A、Dをそれぞれ67質量%、33質量%の割合で混合した混合原料を中間層の原料とした。両表層及び中間層の原料の各々を2台の押出機に供給し、各々280℃で溶融した後、25℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1.2/22.6/1.2の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。
次いで、得られた未延伸シートをロール延伸機で長手方向(MD)に85℃で3.5倍に延伸した。さらに、テンター内にて100℃で予熱した後、幅方向(TD)に110℃で4.5倍に延伸した。最後に220℃で熱処理を施し、厚み25μm(各表層:1.2μm、中間層:22.6μm)の二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0087】
(実施例2)
下記表1に記載の組成及び製膜条件で行った以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表2に示す。
【0088】
(比較例1)
下記表1に記載の組成及び製膜条件で行った以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表2に示す。
【0089】
【0090】
なお、表1中の「層厚みの和の比」とは、ホモポリエステルからなる層の層厚みの和/共重合ポリエステルを含む層の層厚みの和を意味し、ホモポリエステルからなる層は表層、共重合ポリエステルを含む層は中間層である。
【0091】
【0092】
表2の結果が示すとおり、本発明のポリエステルフィルムは、表層、中間層、及び表層をこの順に有する少なくとも3層からなるポリエステルフィルムであって、前記中間層が共重合ポリエステルを含む層であり、前記ポリエステルフィルムの全ポリエステル中の全ジカルボン酸成分におけるイソフタル酸の含有量が0.05~0.75モル%である。かかる構成とすることで、上述のとおり、機械物性の大幅な低下を抑制でき、また、裁断時のカット性が向上してグリーンシートの積層に有利になると考えている。
また、本発明のポリエステルフィルムは、窒素ガス雰囲気下、50℃から10℃/分で昇温し、200℃で10分間保持したときの、50℃~200℃の昇温過程のみをプロットした、ケミルミネッセンス発光強度の全幅半値幅が53.0℃以上である。当該ケミルミネッセンス発光強度の全幅半値幅がかかる範囲であれば、上述のとおり、環境配慮型といえる。
【0093】
以上のような物性を満たす実施形態の一例として、本発明のポリエステルフィルムが、ホモポリエステルからなる層/共重合ポリエステルを含む層/ホモポリエステルからなる層であり、共重合ポリエステルとしてボトル再生原料を用いれば、表層における再生原料に由来する異物の影響を最大限低減させることができ、実際に算術平均粗さ(Ra)や最大突起高さ(Rp)等の表面平滑性への影響が少ないことがわかる。
また、上記ボトル再生原料を50質量%以下とすることで、ボトル再生原料に含まれるイソフタル酸による機械物性の低下を、実用範囲内に抑えることも可能である。
本発明のポリエステルフィルムは、機械物性の大幅な低下を抑制でき、それでいて、積層セラミックコンデンサの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用いた際などのカット性に優れ、さらに環境配慮型である。
したがって、本開示の実施形態は、積層セラミックコンデンサの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として好適に用いることができる。
今後、電装化が進む自動車向け積層セラミックコンデンサにおいては、当該積層セラミックコンデンサの小型化及び高容量化が進み、使用するセラミックグリーンシートの薄膜化が加速すると予測される。
本発明のポリエステルフィルムは、上述のとおり、機械物性の大幅な低下がなく、グリーンシートの薄膜化に有利であり、環境負荷低減問題にも対応できることから、とりわけ自動車用積層セラミックコンデンサの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として好適に用いることができる。