(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121420
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 25/04 20060101AFI20240830BHJP
C08L 53/02 20060101ALI20240830BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20240830BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240830BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C08L25/04
C08L53/02
C08L71/12
B32B15/08 Q
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028523
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 豊
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB17B
4F100AB24B
4F100AK12A
4F100AK54A
4F100AL05A
4F100AL06A
4F100AL09A
4F100BA02
4F100GB43
4F100JL11A
4J002BC031
4J002BC041
4J002BP012
4J002BP013
4J002CH072
4J002CH074
4J002FD070
4J002FD200
4J002GF00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】金属等の他の材料との密着性に優れる、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物を提供する。中でも銅層との密着性に優れる、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂、(B)アミン変性樹脂、(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマー、及び(D)ポリフェニレンエーテルを含む、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物であって、前記(A)~(D)の合計100質量%に対して、前記(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマーを6質量%以上30質量%以下含み、該シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物中の窒素原子の含有量が0.0025質量%以上0.90質量%以下である、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂、
(B)アミン変性樹脂、
(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマー、及び
(D)ポリフェニレンエーテルを含む、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物であって、
前記(A)~(D)の合計100質量%に対して、前記(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマーを6質量%以上30質量%以下含み、
該シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物中の窒素原子の含有量が0.0025質量%以上0.90質量%以下である、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)~(D)の合計100質量%に対して、前記(A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂を50質量%以上含む、請求項1に記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)~(D)の合計100質量%に対して、前記(B)アミン変性樹脂を5質量%以上30質量%以下含む、請求項1又は2に記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)~(D)の合計100質量%に対して、前記(D)ポリフェニレンエーテルを0.5質量%以上30質量%以下含む、請求項1~3のいずれか1つに記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂のMFRが、1g/10min以上30g/10min以下である、請求項1~4のいずれか1つに記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)アミン変性樹脂が、アミン変性スチレン含有樹脂及びアミン変性ポリフェニレンエーテルから選ばれる少なくとも一種である、請求項1~5のいずれか1つに記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
前記アミン変性スチレン含有樹脂が、アミン変性スチレン系エラストマーである、請求項6に記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項8】
前記(B)アミン変性樹脂が、窒素原子を0.03質量%以上3.0質量%以下含む、請求項1~7のいずれか1つに記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項9】
前記(D)ポリフェニレンエーテルが、未変性のポリフェニレンエーテル及び前記(B)アミン変性樹脂以外の変性ポリフェニレンエーテルから選ばれる少なくとも一種である、請求項1~8のいずれか1つに記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物からなるシート。
【請求項11】
請求項10に記載のシートからなる樹脂層の少なくとも一面に金属層を有する、積層体。
【請求項12】
前記金属層が、銅、金、銀、及びこれらを含む合金から選ばれる少なくとも一種を含む金属層である、請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の積層体を電子回路基板用に用いる、電子回路基板用積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シンジオタクチック構造を有するポリスチレン系樹脂(以下、SPSともいう。)は、機械的強度、耐熱性、電気特性、吸水寸法安定性、及び耐薬品性等の優れた性能を有する。そのため、SPSは、電気・電子機器材料、車載・電装部品、家電製品、各種機械部品、産業用資材等の様々な用途に使用される樹脂として非常に有用である。
更に、SPSはスチレンモノマーを重合して得られる炭化水素樹脂であり、誘電損失が極めて小さく、絶縁性も有するため、前記用途の中でも電気・電子機器材料として使用することが検討されている。
【0003】
特許文献1には、優れた機械的な性質のみならず、優れた耐衝撃性を有するシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物を得ることを目的として、シンジオタクチックポリスチレン、水素添加スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、水素添加スチレン/ブタジエン/スチレン-無水マレイン酸、シンジオタクチックポリスチレン-無水マレイン酸、ポリフェニレンオキシド、及びジアミン化合物からなることを特徴とするシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電子機器・情報端末の高性能化・高機能化と情報通信技術の進歩により、通信には高周波の信号が用いられるようになっている。そのため、高周波数の信号を用いた場合においても、伝送損失の少ない回路基板を製造することのできる材料が求められており、SPSは誘電損失が極めて小さく、絶縁性も有するため、このような電子回路基板への展開が期待されている。
その一方で、電子回路に用いられる配線の複雑化に伴い、微細な配線であっても剥離しにくい、銅等の金属配線との優れた接着性を有する回路基板が求められている。
本発明は、金属等の他の材料との密着性に優れる、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物を提供することを課題とする。中でも銅層との密着性に優れる、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂に、アミン変性樹脂等の成分を組み合わせたシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物が、上記課題を解決し得ることを見出した。すなわち、本発明は、以下の[1]~[13]に関する。
【0007】
[1](A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂、(B)アミン変性樹脂、
(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマー、及び(D)ポリフェニレンエーテルを含む、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物であって、前記(A)~(D)の合計100質量%に対して、前記(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマーを6質量%以上30質量%以下含み、該シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物中の窒素原子の含有量が0.0025質量%以上0.90質量%以下である、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
[2]前記(A)~(D)の合計100質量%に対して、前記(A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂を50質量%以上含む、上記[1]に記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
[3]前記(A)~(D)の合計100質量%に対して、前記(B)アミン変性樹脂を5質量%以上30質量%以下含む、上記[1]又は[2]に記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
[4]前記(A)~(D)の合計100質量%に対して、前記(D)ポリフェニレンエーテルを0.5質量%以上30質量%以下含む、上記1~3のいずれか1つに記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
[5]前記(A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂のMFRが、1g/10min以上30g/10min以下である、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
[6]前記(B)アミン変性樹脂が、アミン変性スチレン含有樹脂及びアミン変性ポリフェニレンエーテルから選ばれる少なくとも一種である、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
[7]前記アミン変性スチレン含有樹脂が、アミン変性スチレン系エラストマーである、上記[6]に記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
[8]前記(B)アミン変性樹脂が、窒素原子を0.03質量%以上3.0質量%以下含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
[9]前記(D)ポリフェニレンエーテルが、未変性のポリフェニレンエーテル及び前記(B)アミン変性樹脂以外の変性ポリフェニレンエーテルから選ばれる少なくとも一種である、[1]~[8]のいずれか1つに記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物。
[10]上記[1]~[9]のいずれか1つに記載のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物からなるシート。
[11]上記[10]に記載のシートからなる樹脂層の少なくとも一面に金属層を有する、積層体。
[12]前記金属層が、銅、金、銀、及びこれらを含む合金から選ばれる少なくとも一種を含む金属層である、上記[11]に記載の積層体。
[13]上記[11]又は[12]に記載の積層体を電子回路基板用に用いる、電子回路基板用積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属等の他の材料との密着性に優れる、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1~4及び比較例1~4の評価に用いた銅箔の樹脂シートに接する面(銅層の樹脂層に接する面)の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率:5千倍)である。
【
図2】実施例1~4及び比較例1~4の評価に用いた銅箔の樹脂シートに接する面(銅層の樹脂層に接する面)の表面の走査型電子顕微鏡写真(倍率:5万倍)及びその写真を二値化した画像である。
【
図3】実施例1~4及び比較例1~4の評価に用いた銅箔(銅層)の断面の走査型電子顕微鏡写真(倍率:5千倍)である。
【
図4】実施例1~4及び比較例1~4の評価に用いた銅箔(銅層)の断面の走査型電子顕微鏡写真(倍率:3万倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物]
本発明のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう)は、(A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂、(B)アミン変性樹脂、(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマー、及び(D)ポリフェニレンエーテルを含む、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物であって、前記(A)~(D)の合計100質量%に対して、前記(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマーを6~30質量%含み、該シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物中の窒素原子の含有量が0.0025質量%~0.90質量%である、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物である。
以下、各項目について、詳細に説明する。
【0011】
本発明の樹脂組成物において、樹脂組成物100質量%中の窒素原子の含有率は、0.0025質量%以上0.90質量%以下であり、0.0030質量%以上0.60質量%以下が好ましく、0.0032質量%以上0.30質量%以下がより好ましく、0.0035質量%以上0.012質量%以下がより更に好ましく、0.0035質量%以上0.0080質量%以下がより更に好ましい。
樹脂組成物中の窒素原子の含有率が上記範囲内であることにより、脂組成物の金属等の他の材料との界面の接着性を向上でき、密着性を向上できる。
なお、樹脂組成物中の窒素原子の含有率は、全窒素分析装置(例えば、日東精工アナリテック株式会社製、微量全窒素分析装置「TN-2100H」)による酸化分解-化学発光法によって求めることができる。具体的には、精秤した各樹脂組成物を測定し、検量線から窒素量を算出し、窒素原子の含有率に換算して求めることができる。前記検量線としては、1-メチルピロール/イソオクタン混合溶液を4μl(窒素量:7μg)及び40μl(窒素量:70μg)の量でそれぞれ測定し、得られた各ピーク面積と各溶液の窒素量から1次式として作成した検量線を用いることができる。
また、樹脂組成物中の窒素原子の含有率は、樹脂組成物中の(B)アミン変性樹脂の含有量及び、該(B)アミン変性樹脂中の窒素原子の含有量から計算で求めることもできる。
【0012】
<(A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂>
樹脂組成物を構成する(A)シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂(以下、単に「(A)SPS」ともいう)は、ラセミダイアッド(r)で75モル%以上、好ましくは85モル%以上、ラセミペンタッド(rrrr)で30モル%以上、好ましくは50モル%以上のシンジオタクティシティを有する。
タクティシティは、隣り合うスチレン単位におけるフェニル基が、重合体ブロックの主鎖によって形成される平面に対して交互に配置されている割合のことを意味する。シンジオタクティシティは、核磁気共鳴法(13C-NMR法)により定量できる。ダイアッドは連続した2つのモノマーユニット、ペンタッドは5つのモノマーユニットでのシンジオタクティシティを示す。
【0013】
(A)SPSとしては、ポリスチレン、又はスチレンを主成分とする共重合体等が挙げられ、スチレンホモポリマー、スチレンとパラメチルスチレンとの共重合体、スチレンとエチレンとの共重合体が好ましく、スチレンホモポリマー、スチレンとパラメチルスチレンとの共重合体がより好ましく、スチレンホモポリマーが更によりこのましい。
(A)SPSにスチレンを主成分とする共重合体を用いる場合、スチレン成分は90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、99モル%以上が更に好ましい。
(A)SPSが、スチレンとパラメチルスチレンとの共重合体である場合、スチレンとパラメチルスチレンとの共重合体中におけるパラメチルスチレンの含有量は、1モル%以上50モル%以下が好ましく、1モル%以上40モル%以下%がより好ましく、1モル%以上30モル%以下%が更に好ましく、1モル%以上20モル%以下がより更に好ましい。
【0014】
本発明の樹脂組成物中の(A)SPS、(B)アミン変性樹脂、(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマー、及び(D)ポリフェニレンエーテルの合計(以下、単に「(A)~(D)の合計」ともいう)100質量%に対する、(A)SPSの含有量は、50質量%以上が好ましく、55質量%以上88質量%以下がより好ましく、60質量%以上86質量%以下が更に好ましく、65質量%以上84質量%以下がより更に好ましく、70質量%以上82質量%以下がより更に好ましい。(A)~(D)の合計100質量%に対する、(A)SPSの含有量が前記の範囲であれば、SPSの耐熱性を活かしながら樹脂組成物の金属等の他の材料との密着性を向上できる。
【0015】
(A)SPSの重量平均分子量は、100,000~300,000が好ましく、140,000~280,000がより好ましく、160,000~270,000が更に好ましい。本明細書において、重量平均分子量は、単分散ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィーで求められる。具体的には、実施例に記載した測定方法によって求められる。また、(A)SPSのMFRは、好ましくは1~30g/10minであり、より好ましくは5~15g/10minである。(A)SPSのMFRはJIS K 7210-1:2014(ISO1133-1:2011)に記載される方法に準じて、300℃、荷重1.2kgの条件での測定により求めることが出来る。
【0016】
(A)SPSの融点は、245℃以上が好ましく、265℃以上がより好ましく、267℃以上が更に好ましく、269℃以上がより更に好ましい。また、275℃以下が好ましく、273℃以下がより好ましい。(A)SPSの融点は、示差走査熱量測定(DSC測定)装置によりJIS K 7121:1987の「一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合」に記載される方法に準じて、昇温速度20℃/分の条件にて得られる融解ピーク温度から、樹脂の融点を求めることができる。
【0017】
<(B)アミン変性樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(B)アミン変性樹脂を含む。(B)アミン変性樹脂を含むことにより、樹脂組成物の金属等の他の材料との密着性を向上できる。
【0018】
本発明の樹脂組成物中の(A)~(D)の合計100質量%に対する、(B)アミン変性樹脂の含有量は、5質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましく、5質量%以上15質量%以下が更に好ましく、5質量%以上12質量%以下がより更に好ましい。(A)~(D)の合計100質量%に対する(B)アミン変性樹脂の含有量が前記の範囲であれば、樹脂組成物の金属等の他の材料との界面の接着性を向上でき、密着性を向上できる。
【0019】
(B)アミン変性樹脂は、(A)SPSと(B)アミン変性樹脂との相溶性又は親和性を向上させ、樹脂組成物の金属等の他の材料との密着性を向上させる観点から、アミン変性スチレン含有樹脂及びアミン変性ポリフェニレンエーテルから選ばれる少なくとも一種が好ましい。
アミン変性スチレン含有樹脂としては、例えば、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、及びスチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)等を、公知の方法によりアミン変性することにより得られるアミン変性スチレン系エラストマーが挙げられ、例えばアミノ基を有する変性剤によって変性されたアミン変性スチレン系エラストマーが挙げられる。また、アミン変性ポリフェニレンエーテルとしては、公知の方法によりアミン変性することにより得られるアミン変性ポリフェニレンエーテルが挙げられ、例えばアミノ基を有する変性剤によって変性されたアミン変性ポリフェニレンエーテルが挙げられる。これらの中でも、(A)SPSと(B)アミン変性樹脂との相溶性又は親和性を向上させ、樹脂組成物の金属等の他の材料との密着性を向上させる観点から、アミン変性スチレン系エラストマー及びアミン変性ポリフェニレンエーテルから選ばれる少なくとも一種が好ましく、アミン変性スチレン系エラストマーがより好ましく、アミン変性SEBSが更に好ましい。アミン変性SEBSとしては、例えば、アミノ基を有する変性剤によって変性したSEBS等を用いることが出来る。
これらの(B)アミン変性樹脂は、一種のみを単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
(B)アミン変性樹脂の重量平均分子量は、10,000以上1,000,000以下が好ましく、20,000以上500,000以下がより好ましく、30,000以上250,000以下が更に好ましい。
また、(B)アミン変性樹脂の数平均分子量は、5,000以上500,000以下が好ましく、10,000以上250,000以下がより好ましく、15,000以上100,000以下が更に好ましい。
【0021】
(B)アミン変性スチレン系エラストマーのMFRは、温度230℃、荷重2.16kgfの測定条件下において、0.5g/10min以上30g/10min以下が好ましく、1g/10min以上20g/10min以下がより好ましく、2g/10min以上10g/10min以下が更に好ましい。
【0022】
(B)アミン変性樹脂中の窒素原子の含有率は、(B)アミン変性樹脂100質量%中、0.03質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.04質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上1.0質量%以下が更に好ましい。(B)アミン変性樹脂中の窒素原子の含有量が前記範囲内であることにより、(A)SPSと(B)アミン変性樹脂との相溶性又は親和性を向上させることができ、樹脂組成物の金属等の他の材料との密着性を向上できる。
なお、(B)アミン変性樹脂中の窒素原子の含有率は、全窒素分析装置(例えば、日東精工アナリテック株式会社製、微量全窒素分析装置「TN-2100H」)による酸化分解-化学発光法によって求めることができる。具体的には、精秤した各(B)アミン変性樹脂を測定し、検量線から窒素量を算出し、窒素原子の含有率に換算して求めることができる。前記検量線としては、1-メチルピロール/イソオクタン混合溶液を4μl(窒素量:7μg)及び40μl(窒素量:70μg)の量でそれぞれ測定し、得られた各ピーク面積と各溶液の窒素量から1次式として作成した検量線を用いることができる。
【0023】
(B)アミン変性樹脂がアミン変性スチレン含有樹脂の場合、(B)アミン変性樹脂中のスチレン由来の構成単位の含有率は、12質量%以上100質量%以下が好ましく、20質量%以上100質量%以下が好ましく、25質量%以上100質量%以下が更に好ましい。
なお、本明細書において、(B)アミン変性樹脂中のスチレン由来の構成単位の含有率とは、(B)アミン変性樹脂中のアミノ基を除く構成単位の合計中の、スチレン由来の構成単位の含有量の割合を示すものである。すなわち、このスチレン由来の構成単位の含有率が100質量%の時、(B)アミン変性樹脂はアミン変性ポリスチレンである。
【0024】
<(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマー>
本発明の樹脂組成物は、(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマー(すなわち、前記(B)以外のスチレン系エラストマー)を含む。(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマーを含むことにより、樹脂組成物と、金属等の他の材料との密着性を向上できる。
【0025】
本発明の樹脂組成物中の(A)~(D)の合計100質量%に対する、(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマーは、6質量%以上30質量%以下であり、6質量%以上25質量%以下が好ましく、6質量%以上20質量%以下がより好ましく、6質量%以上18質量%以下が更に好ましい。(A)~(D)の合計100質量%に対する(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマーの含有量が前記の範囲であれば、樹脂組成物の金属等の他の材料との密着性を向上できる。
【0026】
(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマーの具体例としては、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(SIS)、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレンエチレンプロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEPS)、及びスチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレンイソブチレンスチレンブロック共重合体(SIBS)からなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましく、これらのスチレン系エラストマーは一種のみを単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)が好ましく、未変性のスチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体(SEBS)がより好ましい。未変性SEBSを用いることで、樹脂組成物の金属等の他の材料との密着性を向上し易くできる。
(C)(B)アミン変性樹脂以外のスチレン系エラストマーのMFRは、温度230℃、荷重2.16kgfの測定条件下において、0.0(No Flow)~10g/10minであることが好ましい。
スチレン系エラストマーの重量平均分子量は、150,000以上250,000以下が好ましい。
【0027】
<(D)ポリフェニレンエーテル>
本発明の樹脂組成物は、(D)ポリフェニレンエーテル(以下、「(D)PPE」ともいう)を含む。(D)PPEを含むことにより、樹脂組成物の金属等の他の材料との密着性を向上できる。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、(A)~(D)の合計100質量%に対して、前記(D)PPEを、0.5質量%以上30質量%以下含むことが好ましく、1.0質量%以上20質量%以下含むことが好ましく、1.5質量%以上15質量%以下含むことがより好ましく、2.0質量%以上10質量%以下含むことが更に好ましく、2.5質量%以上5質量%以下含むことがより更に好ましい。
【0029】
(D)PPEとしては、未変性のポリフェニレンエーテル及びアミン変性ポリフェニレンエーテル以外の変性ポリフェニレンエーテルから選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
未変性のポリフェニレンエーテルは、公知の化合物であり、この目的のため、米国特許第3,306,874号,同3,306,875号,同3,257,357号及び同3,257,358号の各明細書を参照することができる。ポリフェニレンエーテルは、通常、銅アミン錯体触媒の存在下で、二置換又は三置換フェノールを用いた酸化カップリング反応によって調製される。銅アミン錯体は、第一,第二及び第三アミンから誘導される銅アミン錯体を使用できる。
未変性のポリフェニレンエーテルの例としては、ポリ(2,3-ジメチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-6-クロロメチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-6-ヒドロキシエチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-6-n-ブチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-エチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-エチル-6-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2,3,6-トリメチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ〔2-(4’-メチルフェニル)-1,4-フェニレンエーテル〕,ポリ(2-ブロモ-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-フェニル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-クロロ-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-クロロ-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-クロロ-6-ブロモ-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-6-イソプロピル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-クロロ-6-メチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2,6-ジブロモ-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエーテル),ポリ(2,6-ジエチル-1,4-フェニレンエーテル)及びポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)などが挙げられる。
【0030】
アミン変性以外の変性ポリフェニレンエーテルは、変性剤を用いて上記の未変性のポリフェニレンエーテル等の公知のポリフェニレンエーテルを変性することにより得ることができるが、本発明の目的に使用可能であれば、この方法に限定されない。
ポリフェニレンエーテルの変性に用いられる変性剤としては、同一分子内にエチレン性二重結合と極性基とを有する化合物が挙げられ、具体的には例えば無水マレイン酸,マレイン酸,フマル酸,マレイン酸エステル,フマル酸エステル,マレイミド及びそのN置換体、マレイン酸塩,フマル酸塩,アクリル酸,アクリル酸エステル,アクリル酸アミド,アクリル酸塩,メタクリル酸,メタクリル酸エステル,メタクリル酸アミド,メタクリル酸塩,グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。これらのうち特に無水マレイン酸、フマル酸及びグリシジルメタクリレートが好ましく用いられる。上記各種の変性剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン変性以外の変性ポリフェニレンエーテルは、例えば溶媒や他樹脂の存在下、上記ポリフェニレンエーテルと変性剤とを反応させることにより得られる。変性の方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、ロールミル,バンバリーミキサー,押出機などを用いて150~350℃の範囲の温度において溶融混練して反応させる方法、ベンゼン,トルエン,キシレンなどの溶媒中で加熱反応させる方法などを挙げることができる。更に、反応を容易にするために、反応系にベンゾイルパーオキサイド;ジ-tert-ブチルパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド;tert-ブチルパーオキシベンゾエート;アゾビスイソブチロニトリル;アゾビスイソバレロニトリル;2,3-ジフェニル-2,3-ジメチルブタン等のラジカル発生剤を存在させることも有効である。ラジカル発生剤の存在下に溶融混練する方法が特に好ましい。
【0031】
(D)PPEとしては、上記の未変性のポリフェニレンエーテル及びアミン変性以外の変性ポリフェニレンエーテルの中より、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)が好ましい。
【0032】
<他の添加剤等>
本発明の樹脂組成物は、各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、ガラスクロス、充填剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤等が挙げられ、それぞれを併用することもできる。また、本発明の樹脂組成物は、結晶核剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。また、各種添加剤において、それぞれは1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0033】
核剤としては、有機核剤、及び無機核剤が使用できるが、好ましくは有機核剤である。
有機核剤としては、例えばジ-p-tert-ブチル安息香酸の金属塩、p-tert-ブチル安息香酸の金属塩、シクロヘキサンカルボン酸のナトリウム塩、β-ナフトエ酸のナトリウム塩などのカルボン酸の金属塩、リン酸2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)金属塩などの有機リン化合物などが挙げられ、好ましくは有機リン化合物であり、より好ましくはリン酸2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)金属塩である。
核剤の含有量としては、樹脂組成物中、好ましくは0.1~1質量%である。
【0034】
酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系酸化防止剤が挙げられ、好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤である。
酸化防止剤の含有量としては、樹脂組成物中、好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0035】
(樹脂組成物の製造)
本発明の樹脂組成物は、上述の成分(A)~(D)と、必要に応じて上記各種添加剤等とを配合・混練することで得ることが好ましい。配合及び混練は、通常用いられている機器、例えば、リボンブレンダー、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサーなどで予備混合して、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機及びコニーダ等を用いる方法で行うことができる。
本発明の樹脂組成物は、シート等の成形体に形成し易くする観点から、配合・混練後に、ペレット又はパウダーの形状であることが好ましく、ペレットの形状であることがより好ましい。
【0036】
[樹脂組成物の成形体]
本発明の樹脂組成物の成形体は、本発明の樹脂組成物を原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法及び発泡成形法等により各種成形体を製造することができる。
成形体の形状は特に限定されず、例えば、シート、パウダー粒子、維維、不織布、容器、射出成形品、ブロー成形体等を挙げることができる。
本発明の樹脂組成物は、上述の通り、金属等の他の材料との密着性に優れることから、本発明の樹脂組成物を成形してなる成形体は、電気・電子材料(コネクタ・プリント基板等)、産業構造材、自動車部品(車両搭載用コネクター、ホイールキャップ、シリンダーヘッドカバー等)、家電品、各種機械部品、パイプ、シート、トレイ等の産業用資材として好適であり、特に、電子回路基板の材料として、好適である。
【0037】
<樹脂組成物シート>
本発明の樹脂組成物は、後述の積層体として加工する観点から、シート状に形成されることが好ましい。すなわち、本発明の樹脂組成物シートは、上記本発明の樹脂組成物からなるシートであることが好ましい。なお、本明細書において「シート」と称する場合、「シート」(厚みが100μm以上のもの)及び「フィルム」(厚みが100μm未満であるもの)の両方の概念を含む。
【0038】
(樹脂組成物シートの製造)
本発明の樹脂組成物シートは、本発明の樹脂組成物を、単軸押出機又は二軸押出機に導入し、Tダイスより溶融押出し、キャストロールにて冷却固化して樹脂シートを得ることが好ましい。この際、本発明の樹脂組成物は、ペレットの形状であることが好ましい。
前記ペレットの形状である本発明の樹脂組成物は、予め乾燥することが好ましい。乾燥は、好ましくは60~80℃の環境下、30分間~6時間放置することによって行う。
次に押出機に本発明の樹脂組成物を導入するが、前記の乾燥ができない場合や乾燥が不十分である場合、真空ベント付き押出機を使用することが好ましい。
樹脂の流れ方向の厚さに変動が生じることを抑制し、厚さの均一な樹脂組成物シートを得るために、押出機の後にギヤポンプを設置することが好ましい。
更に異物混入を避けるため、ギヤポンプの後にポリマーフィルターを設けることがより好ましい。
ポリマーフィルターとしては、リーフディスクタイプ、キャンドルタイプが挙げられる。
ポリマーフィルターの濾過材としては、焼結金属タイプが好ましい。捕集粒径としては、1~100μmが好ましい。
押出機での押出温度は、280~330℃が好ましい。押出機のヒーターから、ポリマーライン、ギヤポンプ、ポリマーフィルター、Tダイスまで押出温度に調整することが好ましい。
【0039】
キャストロールの冷却媒体は、油又は水が好ましく、冷却温度は50~95℃が好ましく、60~90℃がより好ましい。
前記押出機のTダイスより溶融押出された樹脂混合物をキャストロールに密着させるため、エアーチャンバー、エアーナイフ方式、又は静電印加方式あるいはそれらを組み合わせて用いることが好ましい。
このようにキャストロール上に溶融した本発明の樹脂組成物を密着させ、急冷することにより、安定して連続して樹脂組成物シートを得ることができる。
キャストロールの引速は0.5~30m/分が好ましく、1~15m/分がより好ましい。
【0040】
[積層体]
本発明の積層体は、上述の樹脂組成物シートからなる樹脂層の少なくとも一面に金属層を有する。本発明の樹脂組成物は、上述の通り、金属等の他の材料との密着性に優れるため、本発明の積層体が前記構成を有することにより、特に電子回路基板の材料として好適に用いることができる。
本発明の積層体の金属層は、導電性の観点から銅、金、銀、及びこれらを含む合金から選ばれる少なくとも一種を含む金属層であることが好ましく、銅層であることがより好ましい。
【0041】
前記のとおり、本発明の積層体は、樹脂層の少なくとも一面に金属層を有しているが、樹脂層の両面に金属層を有することが好ましい。両面に金属層を有することで、回路の複雑化、高密度化が可能となる。
すなわち、本発明の積層体は、上述の樹脂組成物シートからなる樹脂層の少なくとも片面に金属層が積層されており、好ましくは上述の樹脂組成物シートからなる樹脂層の両面に金属層が積層され、樹脂層の両面に金属層が積層される場合、金属層、樹脂層、金属層の順に積層される。
【0042】
<金属層>
本発明の積層体において金属層は、導電性の観点から銅、金、銀、及びこれらを含む合金から選ばれる少なくとも一種を含む金属層であることが好ましく、銅層であることがより好ましい。
本発明の積層体において金属層は、金属層の樹脂層に接する面の表面に複数の突起を有し、前記突起が、前記金属層の樹脂層に接する面の法線方向から見たときに粒子の形状を有し、前記粒子の平均アスペクト比が1.0~5.0であり、前記粒子の平均面積が0.005~1.500μm2であることが好ましい。
【0043】
本発明の積層体が有する金属層は、樹脂層と金属層との層間の密着性を向上させる観点から、金属層の樹脂層に接する面の表面に複数の突起を有するが、前記金属層の樹脂層に接する面の法線方向から見たときに、前記金属層の樹脂層に接する面の表面のうち、前記複数の突起が占める面積が、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは90%以上であり、より更に好ましくは95%以上である。100%であってもよく、前記金属層の樹脂層に接する面の表面が全て突起で覆われていてもよい。
【0044】
前記複数の突起は、前記金属層の樹脂層に接する面の法線方向から見たときに粒子の形状を有しており、前記粒子は、好ましくは鋭角を持つ粒子を含み、より好ましくはひし形又は略ひし形の粒子を含む。
前記金属層の樹脂層に接する面の表面のうち、鋭角を持つ粒子の形状を有する突起が占める面積が、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上であり、更に好ましくは90%以上であり、より更に好ましくは95%以上である。100%であってもよく、前記金属層の樹脂層に接する面の表面が鋭角を持つ粒子の形状を有する突起で全て覆われていてもよい。
【0045】
前記粒子の平均アスペクト比は、好ましくは1.0~5.0であり、より好ましくは1.5~4.0であり、更に好ましくは2.0~3.5であり、より更に好ましくは2.5~3.0である。
前記粒子の平均面積は、好ましくは0.005~1.500μm2であり、より好ましくは0.005~0.500μm2であり、更に好ましくは0.010~0.020μm2であり、更に好ましくは0.010~0.015μm2である。
前記粒子形状、すなわち前記金属層の樹脂層に接する面の表面における突起の形状は、電子顕微鏡を用いて拡大し撮影して得られた前記表面の画像で観察することができる。
また、前記画像において、最表面に観測される粒子のうち面積が上位となる30個の面積とアスペクト比を測定し、それらを平均した値をそれぞれ粒子の平均アスペクト比と粒子の平均面積とした。
なお、前記アスペクト比は、各粒子の面積と同一の面積を有する楕円に近似し、長軸及び短軸の長さを求めた。
具体的な測定方法及び算出方法の例は実施例に示す。
【0046】
また、前記粒子の平均短軸長さは、好ましくは0.05~1.50μmであり、より好ましくは0.05~0.50μmであり、更に好ましくは0.05~0.10μmである。
粒子の平均短軸長さは、前記のアスペクト比の算出に用いた近似楕円の短軸の長さ、30個を平均した長さである。
【0047】
前記突起の側面から見た形状は、好ましくは樹状形状である。
なお、突起の側面から見た形状は、前記金属層を厚さ方向に切断した切断面を写真撮影し、得られた画像から観察することができる。
前記突起を側面から見た樹状形状の幅は、好ましくは0.05~0.12μmであり、また、前記突起の高さは、好ましくは0.05~0.30μmである。
なお、突起の高さは、前記金属層を厚さ方向に切断した切断面を写真撮影し、得られた画像から測定することができる。
【0048】
金属層の樹脂層に接する面の平均粗さ(Ra)は、好ましくは0.0001~0.50μmであり、より好ましくは0.0001~0.40μmであり、更に好ましくは0.0005~0.30μmであり、より更に好ましくは0.0010~0.25μmであり、より更に好ましくは0.13~0.20μmである。
また、本発明の積層体が有する金属層は、樹脂層と金属層との層間の密着性を向上させる観点から、金属層の樹脂層に接する面の最大高さ粗さ(Rz)は、好ましくは0.010~5.0μm、より好ましくは0.050~4.50μm、更に好ましくは0.10~4.00μm、より更に好ましくは0.10~3.50μm、より更に好ましくは2.00~3.00μmである。
前記平均粗さ(Ra)及び前記最大高さ粗さ(Rz)は、具体的には実施例の方法によって測定することができる。
【0049】
金属層の厚さは、高密度実装化、信頼性及び伝送損失の観点から、好ましくは8~40μmであり、より好ましくは9~30μmであり、更に好ましくは10~25μmである。
【0050】
金属層は、金属箔から構成され、金属層を構成する金属箔は、好ましくは圧延金属箔及び電解金属箔からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、樹脂層と金属層との層間の密着性を向上させる観点から、より好ましくは電解金属箔である。
金属箔の表面は、前記のように特定の粒子形状の複数の突起を有していればよいが、表面の突起をこの形状に調整するために、粗化処理を行ってもよい。粗化処理方法としては、めっきによる粗化粒子の形成等が挙げられる。
更に金属箔は、耐熱処理、防錆処理、化学処理等の表面処理を施している表面処理金属箔であってもよい。
耐熱処理及び防錆処理としては、それぞれ耐熱性、防錆性を有する金属を用いてめっき加工する方法が挙げられる。
化学処理としては、樹脂層との密着性を高めるために、金属箔表面と反応する反応性基と樹脂層表面と反応する反応性基の両方を有する化合物での処理が挙げられる。このような化合物としてはシランカップリング剤等が挙げられる。前記樹脂層表面と反応する反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ビニル基、アクリル基、イソシアネート基、メルカプト基等が挙げられる。
【0051】
前記金属層の樹脂層に接する面のX線光電子分光法を用いた原子組成分析によるケイ素元素の含有量は、好ましくは7%以上であり、より好ましくは8%以上であり、更に好ましくは9%以上であり、より更に好ましくは10%以上である。また、上限には制限はないが、好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下であり、更に好ましくは12%以下である。ケイ素の含有量が前記の範囲であれば、樹脂層と金属層の接着性が優れる電子回路基板を得ることができる。
【0052】
[電子回路基板用積層体]
本発明の積層体は、樹脂層と金属層との層間の密着性に優れ、金属層が剥離しにくい。また、本発明の積層体における金属層は、金属層の樹脂層に接する面の表面が、上記に示したような表面特性を有することから、伝送損失が低い特徴を有する。このため、本発明の積層体は、特に、電子回路基板用積層体に用いることが好ましい。
すなわち、本発明の電子回路基板用積層体は、上述の本発明の積層体を電子回路基板用に用いることが好ましい。
【0053】
本発明の積層体の厚さは、好ましくは10~3,000μmであり、用途によって適切な厚さに調節することが好ましい。
たとえば、本発明の積層体をリジットの電子回路用基板として用いる場合、積層体の厚さは、好ましくは50~3,000μmであり、より好ましくは100~2,000μmであり、更に好ましくは400~1,600μmである。また、本発明の積層体をフレキシブルの電子回路用基板として用いる場合、積層体の厚さは、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは150μm以下であり、更に好ましくは130μm以下であり、また、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは100μm以上である。前記の範囲であれば、強度に優れ、伝送損失が少なく、得られる電子回路基板及び製品の小型化も可能となる。
【0054】
(積層体の製造)
本発明の積層体の製造方法は、上述の樹脂組成物シートからなる樹脂層の少なくとも一面に金属層を有する積層体が得られる方法であれば、特に制限はないが、次のプレス工程を有する方法であることが好ましい。
【0055】
(プレス工程)
本発明の積層体の製造方法は、上述の樹脂組成物シートからなる樹脂層の少なくとも一面に、金属箔を、プレス温度が前記スチレン系樹脂の融点以下でプレスして一体化するプレス工程を有することが好ましい。
【0056】
本プレス工程で用いる金属箔は、上述の<金属層>の項で説明した金属層を構成する金属を含む金属箔であることが好ましく、中でも銅層を構成する銅箔であることが好ましい。
【0057】
本プレス工程では、金属箔の表面が前記の複数の突起を有する面を本発明の樹脂組成物シートに接するように積層する。具体的には、粗化処理を施してある金属箔であれば、粗化処理された面を樹脂シートに接するように積層する。
金属箔は本発明の樹脂組成物シートの少なくとも一面に積層すればよいが、好ましくは本発明の樹脂組成物シートの両面に積層する。
本プレス工程では、常圧でプレスしてもよく、真空状態でプレスしてもよいが、真空状態でプレスすることが好ましい。プレス方法としては上下に平行で平らな熱板の間に金属箔/本発明の樹脂組成物/金属箔の順にセットアップして積層する方式でもよいし、2本の金属ロールもしくは金属ベルトにロール状に巻かれた金属箔、本発明の樹脂組成物シートを繰り出し連続的にプレスをしてもよい。
真空状態でプレスする場合、真空プレス機を用いることが好ましく、真空度は好ましくは-0.05MPa以下である。また、プレス保持時間は好ましくは1~60分間である。
【0058】
本工程では、本発明の樹脂組成物シートの少なくとも一面に、金属箔を、プレス温度が前記スチレン系樹脂の融点以下でプレスして一体化するプレス工程を有することが好ましい。
プレス温度は、好ましくは200~275℃であり、より好ましくは220~270℃であり、更に好ましくは235~265℃である。前記の範囲であれば、得られる積層体は剥離強度に優れ、厚さは均一なものとなり、更に積層体を製造するためのプレス時に生じる樹脂の流れ出しを抑制することができる。
【0059】
プレス圧力は、前記プレス温度によって、調整すればよく、プレス温度が高い場合はプレス圧力を低く、プレス温度が低いときはプレス圧力を高く調整することが好ましい。
具体的にはプレス条件は、好ましくは3MPa以上20MPa以下であり、より好ましくは4MPa以上15MPa以下であり、更に好ましくは5MPa以上13MPa以下である。
上記の条件で製造された積層体は、剥離強度に優れ、得られる積層体が均一した厚さを有しており、更にプレス工程での溶融フローによる樹脂の流れ出しが少なく、生産性にも優れている。
【0060】
[電子回路基板]
本発明の電子回路基板は、前記電子回路基板用積層体を用いたものであることが好ましい。
すなわち、本発明の電子回路基板の第一の実施形態である電子回路基板は、本発明の樹脂組成物シートからなる樹脂層の少なくとも一面に金属層を有する電子回路基板用積層体を用いたものである。
これらのなかでも、前記積層体の製造方法で得られた積層体を用いたものが好ましい。
【0061】
前記積層体は、金属層が剥離しにくく、樹脂層と金属層との密着性に優れ、伝送損失が少ないため、本発明の電子回路基板は、特に高周波回路や高周波アンテナ回路等の用途に使用することが好ましい。
【0062】
本発明の電子回路基板は、前記電子回路用基板積層体の金属層をパターニングすることにより製造される。パターニングは、フォトリソグラフィ法により金属層をエッチングすることにより行うことが好ましい。
【0063】
本発明の電子回路基板の厚さは、上述の積層体の厚さと同様であればよく、好ましくは10~3,000μmであり、用途によって適切な厚さに調節することが好ましい。
具体的には、リジットの電子回路用基板である場合、電子回路基板の厚さは、好ましくは50~3,000μmであり、より好ましくは100~2,000μmであり、更に好ましくは400~1,600μmである。また、フレキシブルの電子回路用基板である場合、電子回路基板の厚さは、好ましくは180μm以下であり、より好ましくは150μm以下であり、更に好ましくは130μm以下であり、また、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは50μm以上であり、更に好ましくは100μm以上である。前記の範囲であれば、樹脂層と金属層との密着性に優れ、伝送損失が少なく、製品の小型化も可能となる。
【実施例0064】
本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
【0065】
[測定、評価]
(1)樹脂の重量平均分子量
ゲル浸透クロマトグラフィー(ゲルパーミエイションクロマトグラフィ、略称「GPC」)測定法により測定した。
測定条件は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8321GPC/HT)、東ソー株式会社製GPCカラム(GMHHR-H(S)HT)を用い、溶離液として1,2,4-トリクロロベンゼンを用い、145℃で測定した。
標準ポリスチレンの検量線を用いて、ポリスチレン換算分子量として算出した。
【0066】
(2)銅箔表面(銅層の樹脂層に接する面)の平均粗さ(Ra)及び最大高さ粗さ(Rz)
共焦点レーザー顕微鏡 OPTELICS H1200(レーザーテック株式会社製)を使用して測定した。
【0067】
(3)銅箔表面(銅層の樹脂層に接する面)の突起形状
各実施例及び比較例で用いた銅箔の表面(銅層の樹脂層に接する面)を、電界放出型走査型電子顕微鏡SU8200(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて5万倍に拡大した画像を得た。
画像より、最表面に観測される粒子の形状を有する突起について、粒子の平均アスペクト比と粒子の平均面積を以下のようにして求めた。
前記電子顕微鏡により得られた画像において、最表面に観測される粒子のうち、輪郭が鮮明で二次凝集しておらず、重なりがない(又は少ない)、少なくとも30個以上の粒子を選定した。次に選定した30個以上の粒子のうち面積が上位となる30個を選定し、粒子を白、背景を黒に色づける二値化を行った。二値化した画像について、画像解析ソフト(Media Cybernetics社製 Image-Pro Plus 6.3J)によって、各粒子の面積とアスペクト比を測定し、それらを平均した値をそれぞれ粒子の平均アスペクト比と粒子の平均面積とした。
なお、前記アスペクト比は、粒子を画像解析ソフトにより求めた各粒子の面積と同一の面積を有する楕円に近似し、長軸及び短軸の長さを求めた。近似して得られる楕円の形状は、解析対象となる粒子の輪郭から前記画像解析ソフトにより算出することができる。
また、粒子の平均短軸長さは、前記のアスペクト比の算出に用いた近似楕円の短軸の長さ、30個を平均した長さである。
図1に実施例及び比較例で用いた銅箔の樹脂シートに接する面(銅層の樹脂層に接する面)の表面を、前記方法で5千倍に拡大した画像を示す。
図2に実施例及び比較例で用いた銅箔の樹脂シートに接する面(銅層の樹脂層に接する面)の表面を、前記方法で5万倍に拡大した画像と、得られた画像を前記方法で二値化した画像を示す。
また、実施例及び比較例で用いた銅箔を厚さ方向に切断した断面を、電界放出型走査型電子顕微鏡を用いて、拡大した画像を
図3(倍率:5千倍)及び
図4(倍率:3万倍)に示す。銅箔の上面が樹脂シートに接する面(銅層の樹脂層に接する面)である。実施例及び比較例で用いた銅箔の表面に存在する突起の側面から見た形状は、樹状形状であることがわかる。
【0068】
(3)積層体の剥離強度
積層体の剥離強度は、積層体から銅箔を剥離する際の強度である。
測定は、測定器としてフォースゲージ(商品名:DPRS-2TR、株式会社イマダ製)を用い、JPCA電子回路基板規格第3版第7項「性能試験」に準拠し、次の条件で行った。
治具:90度剥離治具(商品名:P90-200N-BB、株式会社イマダ製)
引張速度:50mm/分
銅箔の流れ方向(銅箔製造時の巻取り方向)に剥離した際の強度、及び銅箔の流れ方向に直交する方向に剥離した際の強度を、それぞれ3回ずつ測定し、全ての測定値の平均値を積層体の剥離強度とした。積層体の剥離強度が高いほど、樹脂組成物の銅箔との密着性が高いことを示す。
JPCA電子回路基板規格第3版第7項「性能試験」に準拠した剥離強度の測定は、具体的には以下のように行った。測定に用いる積層体を、前処理としてISO291: 2008で規定される標準状態に24時間放置した。前記標準状態のもと、銅層の一端を10mm分SPSシートから剥がした積層体を上記治具に取り付け、剥がした銅層の先端をつかみ、積層体の表面に垂直な方向に上記引張速度で25mm以上剥がした。この間の単位幅当たりの荷重(kN/m)の最低値を引き剥がし強さとし、上記のように複数回の測定を行い、その平均値を積層体の剥離強度とした。
測定に用いる積層体の形状は幅10mm、長さ100mmとして測定を行った。
【0069】
(4)破壊層厚さ
上記(3)積層体の剥離強度を測定した後、剥離後の銅箔側の厚さを測定し、以下の計算式で破壊層厚さを求めた。
(破壊層厚さ(μm))=(剥離後の銅層側の厚さ)-(積層前の銅箔の厚さ)
なお、破壊層厚さとは、積層体の剥離強度の評価の際の樹脂組成物シートの破壊深さを示すものである。破壊層厚さが0μmの場合、積層体の銅箔と樹脂組成物シートとの界面付近で剥離していることを示し、破壊層厚さが0μmより大きい場合は、樹脂組成物シートが凝集破壊していることを示す。
【0070】
実施例1
(1)樹脂組成物の製造
(A)SPS(シンジオタクチックポリスチレン、スチレンホモポリマー、融点270℃、重量平均分子量200,000、MFR(300℃、荷重1.2kg)=9.0g/10min)70.5質量%、(B)アミン変性スチレン系エラストマー(アミン変性SEBS、タフテックMP10、旭化成株式会社製、スチレン/エチレンブチレン比=30/70、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)=4.0g/10min、数平均分子量21,000、重量平均分子量50,000、窒素含有量0.06質量%)10.0質量%、(C)前記(B)以外のスチレン系エラストマー(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体、セプトン8006、株式会社クラレ製、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)=0.0g/10min(No Flow))16.0質量%、(D)PPE(ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、PX-100L、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)3.5質量%の割合とし、前記(A)~(D)を合計で100質量部、酸化防止剤(イルガノックス1010、BASFジャパン株式会社製)0.1質量部、及び酸化防止剤(アデカスタブPEP-36、株式会社ADEKA製)0.1質量部を、二軸押出機にて280℃で溶融混練後、ペレット化し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のペレットを80℃で3時間乾燥した。
【0071】
(2)樹脂組成物シートの製造
(1)で得られた樹脂組成物のペレットをスクリュー径50mmの単軸押出機にて溶融し、以下の条件でTダイスより押出し、キャストロールにて冷却して、巻取り、厚さ100μmの樹脂組成物シートを得た。
押出時の温度は、押出機のヒーター、ポリマーライン、ギヤポンプ、ポリマーフィルター、Tダイスのいずれも300℃に設定した。Tダイスは、リップ幅500mm、リップ開度0.7~0.9mmに調整した。キャストロールは冷却媒体として油を用い、温度は80℃に設定した。キャストロールの引速は4.0m/分とした。
【0072】
(3)積層体の製造
(2)で得られた樹脂組成物シートを100mm×100mmの正方形に切り出し、次の構成となるように積層し、該積層物を真空プレス機にて、真空度を-0.1MPaとし、プレス温度260℃、プレス圧力8.0MPa、プレス時間3分間の条件でプレスし、一体化させて積層体を得た。
プレス機における積層順は、上部より、真空プレス機の上部プレス板(160mm×160mm)、アルミニウム板(160mm×160mm、厚さ1mm)、電解銅箔(CF-T4X-SV、180mm×180mm、厚さ12μm、福田金属箔粉工業株式会社製)、(2)で得られた厚さ100μmの樹脂組成物シート層、電解銅箔(CF-T4X-SV、180mm×180mm、厚さ12μm、福田金属箔粉工業株式会社製)、アルミニウム板(160mm×160mm、厚さ1mm)、真空プレス機の下部プレス板(160mm×160mm)とした。これにより、両面に銅層を有する積層体を得た。積層体の厚さ(平均厚さ)は124μmであった。積層体の剥離強度の値を表1に示す。また、実施例1の破壊層厚さは1~3μmであった。なお、各評価では、積層体を各評価で必要となる形状に切断して用いた。
【0073】
上記(3)で用いた、電解銅箔(CF-T4X-SV、180mm×180mm、厚さ12μm、福田金属箔粉工業株式会社製)の突起を有する面の表面粗さ及び突起形状は、以下の通りである。
(表面粗さ)
・平均粗さ(Ra):0.15μm
・最大高さ粗さ(Rz):2.06μm
(突起形状)
・粒子の平均面積:0.013μm2
・粒子の平均短軸長さ:0.080μm
・粒子の平均アスペクト比:2.77
【0074】
実施例2~4並びに比較例1及び2
樹脂組成物構成を、表1に記載の割合に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、樹脂組成物シート及び積層体を得た。積層体の厚さ(平均厚さ)は、いずれも124μmであった。積層体の剥離強度の値を表1に示す。また、実施例2の破壊層厚さは0~2μm、実施例3の破壊層厚さは0~1μm、実施例4の破壊層厚さは1~2μm、比較例1の破壊層厚さは0μm、比較例2の破壊層厚さは0~1μmであった。
【0075】
比較例3
樹脂組成物構成を、表1に記載の割合に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、樹脂組成物シート及び積層体を得た。なお、比較例3は、(D)PPEを含まない構成である。積層体の厚さ(平均厚さ)は、いずれも124μmであった。積層体の剥離強度の値を表1に示す。また、比較例3の破壊層厚さは0μmであった。
【0076】
比較例4
樹脂組成物構成を、表1に記載の割合に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、樹脂組成物シート及び積層体を得た。なお、比較例4は、(B)アミン変性スチレン系エラストマーを含まず、代わりにマレイン酸変性スチレン系エラストマー(マレイン酸変性SEBS、タフテックMP1913、旭化成株式会社製、スチレン/エチレンブチレン比=30/70、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)=5.0g/10min)を用いた構成である。積層体の厚さ(平均厚さ)は、いずれも124μmであった。積層体の剥離強度の値を表1に示す。また、比較例4の破壊層厚さは0~1μmであった。
【0077】
【0078】
表1の結果から、実施例である樹脂組成物、樹脂組成物シート及び積層体は、積層体の剥離強度が高く、金属等の他の材料との密着性に優れることがわかる。