(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121490
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】三次元光造形用材料及び成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20240830BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20240830BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240830BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240830BHJP
【FI】
C08F290/06
B29C64/124
B33Y70/00
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028629
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】中村 優太
【テーマコード(参考)】
4F213
4J127
【Fターム(参考)】
4F213AA31
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4J127CC133
4J127CC181
4J127CC291
4J127FA06
(57)【要約】
【課題】光学的立体造形法による造形後、活性エネルギー線の照射のみの二次硬化で、耐熱性と耐衝撃性に優れた成形体を得ることができる三次元光造形用材料を提供する。
【解決手段】重合性成分としての(メタ)アクリルアミド(A)、ウレタン(メタ)アクリレート(B)及び3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)とを含む三次元光造形用材料であって、前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)はアルキレンオキサイド変性基を有さない化合物(C-1)と、アルキレンオキサイド変性基を有する化合物(C-2)とを含むことを特徴とする三次元光造形用材料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性成分としての(メタ)アクリルアミド(A)、ウレタン(メタ)アクリレート(B)及び3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)とを含む三次元光造形用材料であって、
前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)はアルキレンオキサイド変性基を有さない化合物(C-1)と、アルキレンオキサイド変性基を有する化合物(C-2)とを含むことを特徴とする三次元光造形用材料。
【請求項2】
さらに、光重合開始剤(D)を含む請求項1に記載の三次元光造形用材料。
【請求項3】
前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)中における前記アルキレンオキサイド変性基を有する化合物(C-2)の割合が50質量%以上である請求項1に記載の三次元光造形用材料。
【請求項4】
前記重合性成分の合計質量に占める前記2官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)の割合が55質量%以上である請求項1に記載の三次元光造形用材料。
【請求項5】
前記(メタ)アクリルアミド(A)が、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、及びN-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドのいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の三次元光造形用材料。
【請求項6】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(B)の官能基数が2以上であり、前記重合性成分の合計質量に占める割合が5質量%以上、40質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の三次元光造形用材料。
【請求項7】
前記アルキレンオキサイド変性基を有する化合物(C-2)1molに含まれるアルキレンオキサイドユニットの割合が9mol以下であることを特徴とする請求項1に記載の三次元光造形用材料。
【請求項8】
25℃におけるE型粘度が800mPa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載の三次元光造形用材料。
【請求項9】
前記三次元光造形用材料を用いて、下記a.の方法で作製された荷重たわみ温度評価用サンプルについて、下記C.の評価方法で測定された荷重たわみ温度が70℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の三次元光造形用材料。
<a.荷重たわみ温度評価用サンプルの作成>
光造型機(商品名:Elegoo Mars Pro、Elegoo社製)を使用して、前記三次元光造形用材料から、荷重たわみ温度評価用サンプルとして、120.0mm×12.7mm×3.0mmの角柱を底面が幅方向になる向きで造形する。造形条件は、1層ごとの厚みを50μmとし、初期8層については照射時間を一層毎50秒とし、その後は一層毎の照射時間を10秒に設定する。角柱を2次硬化装置(商品名:Prusa CW1s、Prusa社製)を用いて15分間UV照射し、光学的立体造形による荷重たわみ温度評価用サンプルとする。
<C.耐熱性の評価>
前記荷重たわみ温度評価用サンプルの荷重たわみ温度(℃)を、ASTM D648に準拠して、荷重1.8MPaでサンプルの光造形時における初期層の面を下向きにした状態でエッジワイズ法により測定する。
【請求項10】
前記三次元光造形用材料を用いて光学的立体造形法により活性エネルギー線のみで造形硬化させて得られる成形体について、ASTM D256に規定されるアイゾット衝撃値が20J/m以上であることを特徴とする請求項1に記載の三次元光造形用材料。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の三次元光造形用材料を用いて、光学的立体造形法により成形体を造形する成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性が高くかつ耐衝撃性にも優れる成形体を室温で容易に造形することが可能な三次元光造形用材料と、この三次元光造形用材料を用いた成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、立体造形物を簡易に得る方法として、三次元データをスライスした二次元の層を1層ずつ積み重ねていく立体造形法が知られている。立体造形用の成形材料としては、熱可塑性樹脂や金属粉など様々な材料が用いられているが、中でも光硬化性材料を用いた光学的立体造形法は、得られる造形物の寸法精度が高いことから、製作段階における模型の作成などで広く採用されている。
【0003】
一方で、光硬化性材料を用いた光学的立体造形法によって得られる硬化物の機械特性は、熱可塑性樹脂や金属粉を用いた立体造形法によって得られる硬化物と比較して低い。このため、光硬化性材料で作製した部品が直接製品に使用されることは少ない。
【0004】
例えば、自動車の部品などには、機械物性として高い耐熱性と耐衝撃性が求められるが、光硬化性材料を用いた硬化物では、これらの機械物性がトレードオフの関係にもあり、双方を両立することは困難とされている。これは以下の理由による。
即ち、耐熱性を高くするためには、架橋密度を上げ、熱をかけた際に分子運動を抑制することが好ましいが、この場合に得られる硬化物は硬くて脆いものとなり、耐衝撃性に劣るものとなる。一方で、架橋密度を下げると分子運動の抑制が緩和され、衝撃を吸収しやすくなることで耐衝撃性は向上するが、硬化物は柔らかくなるため耐熱性は低下してしまう。
【0005】
このようなことから、従来において、光学的立体造形法により高い耐熱変形温度と耐衝撃性を両立する硬化物を与える材料組成物は見出せておらず、多くの光硬化性材料の硬化物はASTM D648の荷重1.8MPaでエッジワイズ法により測定される荷重たわみ温度が70℃未満で、ASTM D256によるアイゾット衝撃値が20J/m未満となっている。このような硬化物は、耐熱性が低いため自動車のエンジン回りなど高温に晒される部品のパーツとして使用することが難しく、また、耐衝撃性が低いため、造形テーブルから造形物を取り外す際の衝撃で造形物が欠けるといった問題も起こる。
【0006】
以上のような技術背景の中、特許文献1では、第1化合物としてイソシアヌル環と3つの(メタ)アクリロイル基を有するトリアクリレート化合物と、第2化合物としてイソシアヌル環と2つの(メタ)アクリロイル基を有するジアクリレート化合物および1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノアクリルアミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含み、前記第1化合物と前記第2化合物との合計質量に占める前記第1化合物の割合が50質量%以上、90質量%以下である光硬化性樹脂組成物を用いることで、耐熱性および機械強度に優れた光造形物を与えることが教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の記載に従って調製した材料では、ASTM D648の荷重1.8MPaでエッジワイズ法により測定される荷重たわみ温度が70℃以上かつASTM D256によるアイゾット衝撃値が20J/m以上を両立することはできなかった。
また、特許文献1では、結晶性の原料を使用しているため、原料を混合して光硬化性樹脂組成物を製造するためには加熱撹拌が必要となり、光硬化性樹脂組成物の調製が煩雑である。
加えて、特許文献1では、耐熱性の良い評価サンプルを得るために、造形後、活性エネルギー線の照射と加熱による二次硬化を行っている。特許文献1において、造形後、活性エネルギー線の照射と加熱による二次硬化を行うのは、以下の理由による。
即ち、光学的立体造形法によって得られる硬化物は、立体造形に用いる光源の照度が低いことから、未反応の反応成分が多く残留しているため、全ての反応成分が反応した場合に期待される機械物性よりも劣るものとなる。そのため、造形後、活性エネルギー線の照射と加熱による二次硬化を行って機械的特性や形状安定性などを向上させる手段が採用されている。
しかし、造形後、活性エネルギー線の照射と加熱による二次硬化を行って機械物性を有意に向上させるためには、高温長時間の加熱工程が必要となり、生産性やエネルギー効率の低下につながる。
【0009】
また、光学的立体造形法は、二次元の層を積層、硬化させる手法であるため、用いる材料には、次の層を硬化させるために材料を速やかに供給することが求められる。このため、材料の供給速度を上げるべく、低粘度であることが望まれる。即ち、材料の粘度が高いと泡を巻き込みやすくなり、速やかに供給することが難しくなる。また、造形後の造形物に付着している未硬化の材料を洗浄除去し易くするためにも、材料の粘度はできる限り低いことが望まれる。
【0010】
本発明は、以上に述べた背景技術に鑑みてなされたものである。
本発明の目的は、室温で容易に調製可能であると共に、光学的立体造形法による造形後、活性エネルギー線の照射と加熱による二次硬化を行うことなく、活性エネルギー線の照射のみの二次硬化で、ASTM D648の荷重1.8MPaでエッジワイズ法により測定される荷重たわみ温度が70℃以上かつASTM D256によるアイゾット衝撃値が20J/m以上を両立する成形体を得ることができる三次元光造形用材料と、この三次元光造形用材料を用いた成形体の製造方法を提供することにある。本発明はまた、光学的立体造形法でより取り扱いやすい範囲の粘度である三次元光造形用材料と、この三次元光造形用材料を用いた成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、重合性化合物として、(メタ)アクリルアミド(A)、ウレタン(メタ)アクリレート(B)及び3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)を含み、前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)がアルキレンオキサイド変性基を有さない化合物(C-1)と、アルキレンオキサイド変性基を有する化合物(C-2)とを含む三次元光造形用材料により、上記課題を解決することができることを知見した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0012】
[1] 重合性成分としての(メタ)アクリルアミド(A)、ウレタン(メタ)アクリレート(B)及び3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)とを含む三次元光造形用材料であって、前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)はアルキレンオキサイド変性基を有さない化合物(C-1)と、アルキレンオキサイド変性基を有する化合物(C-2)とを含むことを特徴とする三次元光造形用材料。
【0013】
[2] さらに、光重合開始剤(D)を含む[1]に記載の三次元光造形用材料。
【0014】
[3] 前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)中における前記アルキレンオキサイド変性基を有する化合物(C-2)の割合が50質量%以上である[1]又は[2]に記載の三次元光造形用材料。
【0015】
[4] 前記重合性成分の合計質量に占める前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)の割合が55質量%以上である[1]~[3]のいずれかに記載の三次元光造形用材料。
【0016】
[5] 前記(メタ)アクリルアミド(A)が、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、及びN-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドのいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の三次元光造形用材料。
【0017】
[6] 前記ウレタン(メタ)アクリレート(B)の官能基数が2以上であり、前記重合性成分の合計質量に占める割合が5質量%以上、40質量%以下であることを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の三次元光造形用材料。
【0018】
[7] 前記アルキレンオキサイド変性基を有する化合物(C-2)1molに含まれるアルキレンオキサイドユニットの割合が9mol以下であることを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載の三次元光造形用材料。
【0019】
[8] 25℃におけるE型粘度が800mPa・s以下であることを特徴とする[1]~[7]のいずれかに記載の三次元光造形用材料。
【0020】
[9] 前記三次元光造形用材料を用いて、下記a.の方法で作製された荷重たわみ温度評価用サンプルについて、下記C.の評価方法で測定された荷重たわみ温度が70℃以上であることを特徴とする[1]~[8]のいずれかに記載の三次元光造形用材料。
<a.荷重たわみ温度評価用サンプルの作成>
光造型機(商品名:Elegoo Mars Pro、Elegoo社製)を使用して、前記三次元光造形用材料から、荷重たわみ温度評価用サンプルとして、120.0mm×12.7mm×3.0mmの角柱を底面が幅方向になる向きで造形する。造形条件は、1層ごとの厚みを50μmとし、初期8層については照射時間を一層毎50秒とし、その後は一層毎の照射時間を10秒に設定する。角柱を2次硬化装置(商品名:Prusa CW1s、Prusa社製)を用いて15分間UV照射し、光学的立体造形による荷重たわみ温度評価用サンプルとする。
<C.耐熱性の評価>
前記荷重たわみ温度評価用サンプルの荷重たわみ温度(℃)を、ASTM D648に準拠して、荷重1.8MPaでサンプルの光造形時における初期層の面を下向きにした状態でエッジワイズ法により測定する。
【0021】
[10] 前記三次元光造形用材料を用いて光学的立体造形法により活性エネルギー線のみで造形硬化させて得られる成形体について、ASTM D256に規定されるアイゾット衝撃値が20J/m以上であることを特徴とする[1]~[9]のいずれかに記載の三次元光造形用材料。
【0022】
[11] [1]~[10]のいずれかに記載の三次元光造形用材料を用いて、光学的立体造形法により成形体を造形する成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の三次元光造形用材料によれば、光学的立体造形法による造形後、活性エネルギー線の照射と加熱による二次硬化を行うことなく、活性エネルギー線の照射のみの二次硬化で、ASTM D648の荷重1.8MPaでエッジワイズ法により測定される荷重たわみ温度が70℃以上というような優れた耐熱性と、ASTM D256によるアイゾット衝撃値が20J/m以上というような優れた耐衝撃性を両立する成形体を得ることができる。
このため、本発明の三次元光造形用材料を使用すれば、従来の光硬化性材料では得られなかった機械特性が得られ、強度不足で使用できなかった部品についても適用できるようになる。また、造形後の後処理として活性エネルギー線による短時間の二次硬化のみで、目的の機械物性を発現でき、生産性も向上する。
【0024】
このようなことから、光学的立体造形法の成形材料として本発明の三次元光造形用材料を使用すれば、模型だけでなく製品として使用可能な部品も供給することが可能になり、例えば、少量生産品では、金型を使用せずに直接製品を生産することが可能になる。
しかも、本発明の三次元光造形用材料は、結晶性の原料を用いるものではないため、その調製に際して加熱を要することなく室温で容易に調製することができ、また、光学的立体造形法でより取り扱いやすい範囲の粘度を有するものであることから、造形効率、その後の洗浄等の後処理効率にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
なお、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
また、本明細書において、「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミドとメタクリルアミドの一方又は双方を示す。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」についても同様である。
【0026】
[三次元光造形用材料]
本発明の三次元光造形用材料は、重合性成分としての(メタ)アクリルアミド(A)(以下、「(A)成分」と称す場合がある。)、ウレタン(メタ)アクリレート(B)(以下、「(B)成分」と称す場合がある。)及び3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)(以下、「(C)成分」と称す場合がある。)とを含む三次元光造形用材料であって、前記3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)はアルキレンオキサイド変性基を有さない化合物(C-1)(以下、「(C-1)成分」と称す場合がある。)と、アルキレンオキサイド変性基を有する化合物(C-2)(以下、「(C-2)成分」と称す場合がある。)とを含むことを特徴とする。
【0027】
[メカニズム]
本発明の三次元光造形用材料により、光学的立体造形法による造形後、活性エネルギー線の照射と加熱による二次硬化を行うことなく、活性エネルギー線の照射のみの二次硬化で、ASTM D648の荷重1.8MPaでエッジワイズ法により測定される荷重たわみ温度が70℃以上というような優れた耐熱性と、ASTM D256によるアイゾット衝撃値が20J/m以上というような優れた耐衝撃性を両立する成形体を得ることができるメカニズムについては、以下のように考えられる。
本発明の三次元光造形用材料では、造形された造形物中で、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含む重合性成分が、活性エネルギー線の照射により共重合して硬化することにより成形体が得られるが、その際、(C)成分の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)により、耐熱性を高めることができる。
また、(C)成分中の(C-2)成分のアルキレンオキサイド変性基を有する化合物(C-2)と共に、(B)成分のウレタン(メタ)アクリレート(B)を併用することで、得られる成形体に柔軟性を持たせ、耐衝撃性を高めることができる。
これら(A)成分、(B)成分及び(C)成分は、いずれも結晶性の化合物ではないため、本発明の三次元光造形用材料の調製に当たっては、加熱を要することなく、室温にて容易に調製することができる。
また、比較的低粘度な(A)と成分(C)成分を用いているため、光学的立体造形法に好適な粘度の三次元光造形用材料を容易に調製することができる。
【0028】
[(A)成分]
(A)成分は(メタ)アクリルアミド(A)である。なお、本発明において、(メタ)アクリルアミド(A)とは(メタ)アクリルアミドのみをさすものではなく、(メタ)アクリルアミド系化合物全般の総称である。
【0029】
(A)成分は重合性成分であり、本発明の三次元光造形用材料を用いて得られる成形体の造形性に寄与する成分である。
前記(A)成分としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等のN-1置換(メタ)アクリルアミド化合物;N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペリドン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイル-4-ピペリドン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN-2置換(メタ)アクリルアミド化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記化合物の中でもN-(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドが造形性に優れることからより好ましい。
【0030】
(A)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
本発明の三次元光造形用材料における(A)成分の含有割合は、重合性成分の合計質量100質量%に占める割合として、1質量%~30質量%であることが好ましく、より好ましくは3質量%~25質量%、さらに好ましくは5質量%~20質量%である。(A)成分の割合が上記範囲内であることで、優れた造形性を得ることができる。
【0032】
なお、本発明において、重合性成分とは、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分と、必要に応じて含まれる後述のその他の重合性成分との合計である。
【0033】
[(B)成分]
(B)成分のウレタン(メタ)アクリレート(B)は重合性成分であり、本発明の三次元光造形用材料を用いて得られる成形体の耐熱性と耐衝撃性の両立に寄与する成分である。
【0034】
ウレタン(メタ)アクリレート(B)は、耐熱性の観点から官能基数が2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。また、ウレタン(メタ)アクリレート(B)の官能基数は15以下、特に12以下であることが好ましい。
【0035】
前記(B)成分としては、市販品を用いることができ、(B)成分の市販品としては、例えば、ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL204、EBECRYL205、EBECRYL210、EBECRYL215、EBECRYL220、EBECRYL6202、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL8804、EBECRYL8803、EBECRYL8807、EBECRYL9260、EBECRYL9270、EBECRYL1290、EBECRYL5129、EBECRYL4842、EBECRYL4827、EBECRYL6700、EBECRYL220、EBECRYL2220、EBECRYL8210、EBECRYL4450、EBECRYL8301、EBECRYL8311、EBECRYL8701、KRM7735、KRM8296、KRM8452等や、東亞合成社製のアロニックスM-1100、M-1200、M-1210、M-1310、M-1600、M-1960等、MIWONスペシャリティケミカルズ社製MIRAMER PU240、PU340、PU610、SC2152、MU9500、HR3000、HR3200、HR3700、SIU100、SIU2400などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明の三次元光造形用材料における(B)成分の含有割合は、重合性成分の合計質量100質量%に占める割合として、1質量%~50質量%であることが好ましく、より好ましくは3質量%~45質量%、さらに好ましくは5質量%~40質量%である。(B)成分の割合が上記範囲内であることで、得られる成形体の耐熱性と耐衝撃性が優れたものとなる。
【0038】
[(C)成分]
(C)成分は3官能以上の多官能(メタ)アクリレート(C)であり、(C-1)成分のアルキレンオキサイド変性基を有さない化合物(C-1)と、(C-2)成分のアルキレンオキサイド変性基を有する化合物(C-2)とを含む。(C)成分は重合性成分であり、(C-1)成分は本発明の三次元光造形用材料を用いて得られる成形体の耐熱性に寄与する成分であり、(C-2)成分は耐熱性と耐衝撃性の両立に寄与する成分である。
【0039】
<(C-1)成分>
(C-1)成分としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
(C-1)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
<(C-2)成分>
(C-2)成分としては、多価アルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物の(メタ)アクリル酸エステルや、アルキレンオキサイド骨格を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
上記多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン(ポリグリセリンを含む)、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられ、これらは更に任意の置換基を有するものであってもよい。
【0042】
上記アルキレンオキサイドとしては、例えば、炭素数2~18のアルキレンオキサイドが好適である。より好ましくは炭素数2~8のアルキレンオキサイドであり、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1-ブテンオキサイド、2-ブテンオキサイド、トリメチルエチレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、テトラメチルエチレンオキサイド、ブタジエンモノオキサイド、オクチレンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の炭素数2~4のアルキレンオキサイドが好ましく、特に好ましくは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドであり、エチレンオキサイドが最も好ましい。
上記アルキレンオキサイドは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
上記アルキレンオキサイドによる変性率は、(C-2)成分1molに含まれるアルキレンオキサイドユニット(アルキレンオキサイドに由来して(C-2)成分中に含まれる構成単位)のmol数で表すことができる。アルキレンオキサイド変性基を有する化合物(C-2)のアルキレンオキサイド変性率は、アルキレンオキサイド変性基を有する化合物(C-2)1molに対して9mol以下であることが好ましく、より好ましくは6mol以下、さらに好ましくは3mol以下である。アルキレンオキサイド変性率が上記上限以下であれば、得られる成形体の耐衝撃性をより優れたものとすることができる。一方、アルキレンオキサイド変性率の下限は、耐衝撃性の観点から、1mol以上であることが好ましく、2mol以上であることがより好ましい。
【0044】
(C-2)成分として、例えば、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール1,3-ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのε-カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのε-カプロラクトン付加物のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのε-カプロラクトン付加物のテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物のヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのε-カプロラクトン付加物のヘキサ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
(C-2)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
<含有割合>
本発明の三次元光造形用材料における(C)成分の含有割合は、重合性成分の合計質量100質量%に占める割合として、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは55質量%~90質量%、更に好ましくは55質量%~80質量%、特に好ましくは55質量%~70質量%である。(C)成分の割合が上記範囲内であることで、得られる成形体の耐熱性が顕著に優れたものとなる。
【0047】
また、(C-2)成分は、(C)成分100質量%中の割合で好ましくは50質量%以上であり、50質量%~90質量%であることがより好ましく、更に好ましくは52質量%~90質量%、特に好ましくは55質量%~90質量%である。(C)成分中の(C-2)成分の割合が上記範囲内であることで、得られる成形体の耐熱性と耐衝撃性を効果的に両立することができる。
【0048】
なお、(C)成分は、(C-1)成分と(C-2)成分とからなり、上記(C)成分中の(C-2)成分の含有割合の残部が(C-1)成分となる。
【0049】
[(D)成分]
光重合開始剤(D)(以下「(D)成分」と称す場合がある。)は、活性エネルギー線の照射によりラジカル種を発生させて本発明の三次元光造形用材料を硬化させるための成分である。
【0050】
(D)成分としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、4-フェニルベンゾフェノン、4-フェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジフェニルベンゾフェノン、4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
(D)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
本発明の三次元光造形用材料における(D)成分の含有割合は、重合性成分の合計100質量部に対して0.1質量部~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3質量部~7質量部、さらに好ましくは0.5質量部~5質量部である。(D)成分の含有割合が上記範囲内であることで、光学的立体造形法により、良好な成形体を得ることができる。
なお、ここで、重合性成分の合計とは、前述の通り、本発明の三次元光造形用材料が前述の(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外のその他の重合性成分を含む場合、(A)成分、(B)成分及び(C)成分とその他の重合性成分との合計である。
【0053】
[その他の重合性成分]
本発明の三次元光造形用材料は、必要に応じて、(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外のその他の重合性成分(以下「その他の重合性成分」という)を含んでもよい。その他の重合性成分としては、(メタ)アクリロイル基含有単量体が好ましい。(メタ)アクリロイル基含有単量体としては、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレートが挙げられる。その他、2官能以上のエポキシまたはオキセタン化合物を用いることもできる。
【0054】
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、クレゾール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリエポキシモノ(メタ)アクリレート、ポリエステルモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジ(メタ)アクリレート、又はこれらの単量体のポリカプロラクトン付加物、ポリカーボネート付加物、ポリエポキシジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
これらのその他の重合性成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
本発明の三次元光造形用材料が、その他の重合性成分を含有する場合、その含有割合は、本発明の三次元光造形用材料の性能を妨げない範囲であれば特に制限はされないが、全重合性成分100質量%中に50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは0質量%~20質量%である。
その他の重合性成分を用いることで、造形性に加えて、耐熱性や耐衝撃性を改善することができる場合があるが、その含有割合が多すぎると、相対的に(A)成分、(B)成分及び(C)成分の含有割合が減ることで、本発明の効果が損なわれるおそれがある。
【0058】
<添加剤>
本発明の三次元光造形用材料は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、紫外線吸収剤、光カチオン開始剤、熱ラジカル開始剤、重合禁止剤、光増感剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、フィラー、顔料、染料、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光剤、連鎖移動剤等の各種添加剤や、有機溶剤、水などの溶媒を含有してもよい。
【0059】
紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシ-プロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシ-プロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル-4,6-{ビス(2,4-ジメチルフェニル)}-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシ-プロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシ-プロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン系化合物;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(I-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2,5-チオフェンジイルビス(5-ターシャルブチル-1,3-ベンゾオキサゾール)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール等のベンゾトリアゾール系化合物;フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、p-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニルサリシレート等の安息香酸フェニル系化合物、サリチル酸フェニル類ならびに3-ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン-1,3-ジベンゾエート等のサリチル酸フェニル系化合物;2-エトキシ-2‘-エチルオキサルアニリド、2-エトキシ-2’-ドデシルオキサルアニリド等のシュウ酸アニリド系化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
紫外線吸収剤は本発明の三次元光造形用材料の硬化深度を制御するのに有効な成分である。
本発明の三次元光造形用材料が紫外線吸収剤を含有する場合、その含有割合は特に限定されないが、本発明の三次元光造形用材料100質量%中に、0.005質量%~1質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%~0.8質量%である。
【0061】
光カチオン開始剤、即ち、活性エネルギー線の照射によりカチオン種を発生する重合開始剤としては、ヨードニウム(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフルオロホスフェートが好適な光カチオン開始剤として挙げられるが、これに限定されない。これらの光カチオン開始剤についても、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
熱ラジカル開始剤、即ち、熱によりラジカル種を発生する重合開始剤としては、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシネオヘキサノエート、tert-ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエート等の過酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの熱ラジカル開始剤についても、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキノンモノエチルエーテル、ヒドロキノンモノプロピルエーテル、ヒドロキノンモノブチルエーテル、ヒドロキノンモノペンチルエーテル、ヒドロキノンモノヘキシルエーテル、ヒドロキノンモノオクチルエーテル、ヒドロキノンモノへプチルエーテル等のヒドロキノン系の重合禁止剤;ベンゾキノン系の重合禁止剤;3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等の置換基を有するフェノール系の重合禁止剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらの重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
但し、ヒドロキノン等のヒドロキノン系の重合禁止剤、ベンゾキノン等のベンゾキノン系の重合禁止剤は、紫外線照射で黄変することがあるため好適ではない。
【0064】
重合禁止剤は、反応時や保存時の重合抑制剤として機能する。本発明の三次元光造形用材料が重合禁止剤を含有する場合、その含有割合は、本発明の三次元光造形用材料100質量%中に、0.01質量%~1.00質量%の範囲が好ましい。
【0065】
光増感剤としては、ベンゾフェノン、4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、アシルホスフィンオキサイド等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの光増感剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の三次元光造形用材料が光増感剤を含有する場合、その含有割合は、本発明の三次元光造形用材料100質量%中に0.01質量%~10.00質量%の範囲が好ましい。
【0066】
光安定剤としては、得られる成形体の特性に大きな影響を及ぼさないものであれば特に制限は無く、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2,2’-メチルレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)]-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系の化合物、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸 2-エチルヘキシル等のシアノアクリレート系の化合物、トリアジン系の化合物、オクタベンゾン、2,2’-4,4’-テトラヒドロベンゾフェノン等のベンゾフェノン系の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。なお、光安定剤は光増感剤の役割を果たす場合もあり、その場合には光増感剤は用いなくてもよい。
本発明の三次元光造形用材料が光安定剤を含有する場合、その含有割合は、本発明の三次元光造形用材料100質量%中に0.01質量%~10.00質量%の範囲が好ましい。
【0067】
熱安定剤としては、得られる成形体の特性に大きな影響を及ぼさないものであれば特に制限は無く、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)]プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸の側鎖を有する炭素数7~9のアルキルエステル;4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)]プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)]プロピオネート等のヒンダードフェノール系の化合物;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系の化合物;ジオクタデシル-3,3’-チオジプロピオネート等の硫黄系の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの熱安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
酸化防止剤としては、得られる成形体の特性に大きな影響を及ぼさないものであれば特に制限は無く、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート等のヒンダードアミン系の化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
また、本発明の三次元光造形用材料には、得られる成形体の著しい性能低下が生じない範囲で三次元光造形用材料の粘度調整や機能付与のためフィラー等を添加しても構わない。フィラーとしては特に制限はなく、前記成形体の機械特性を劣化させないものであればよい。
【0070】
フィラーとしては、金属塩、金属酸化物、ポリマー微粒子、無機ファイバー、有機ファイバー、カーボン等が挙げられるが、これらに限定されない。金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー微粒子としては、アクリル微粒子、ポリスチレン微粒子、ナイロン粒子等が挙げられるが、これらに限定されない。有機ファイバーとしては、ナイロンファイバー、セルロースナノファイバー等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
フィラーは、その添加量が少な過ぎると添加効果を十分に得ることができず、多過ぎると三次元光造形用材料の粘度上昇で造形性が劣るものとなる。このため、本発明の三次元光造形用材料がフィラーを含有する場合、その含有割合は、本発明の三次元光造形用材料100質量%中に1.0質量%~50質量%の範囲内であることが好ましい。
【0072】
上記の各種添加剤は、その合計量として本発明の三次元光造形用材料100質量%中に0.01質量%~50.00質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0073】
[三次元光造形用材料の調製方法]
本発明の三次元光造形用材料の調製方法は特に制限されないが、すべての材料を秤量した後、室温(20~30℃)で撹拌する方法が最も簡便である。
【0074】
[成形体の製造方法]
本発明の三次元光造形用材料を用いて、光学的立体造形法により成形体を製造する本発明の成形体の製造方法には、従来既知の光学的立体造形方法および装置のいずれもが使用できる。
【0075】
例えば、上記本発明の三次元光造形用材料からなる薄膜を形成する工程と、該薄膜に対して活性エネルギー線を選択的に照射して硬化させる工程とを複数回繰り返すことにより、硬化した薄膜を複数積層させ、所望の形状の光造形物を製造する光学的立体造形法が好適である。なお、光学的立体造形法により製造された光造形物をそのまま製品としても良いし、さらに、活性エネルギー線照射や加熱による二次硬化などを行い、その機械的特性や形状安定性などを向上させたものを製品としても良い。
ただし、本発明の三次元光造形用材料によれば、二次硬化において加熱を行うことなく、活性エネルギー線の照射のみで、優れた耐熱性と耐衝撃性を有する成形体を造形することができるため、二次硬化を行う場合、活性エネルギー線の照射のみで行うことが、加熱のための装置等を不要とすることができ、好ましい。
【0076】
前記活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、放射線、高周波などを挙げることができる。その中でも、300~430nmの波長を有する紫外線が経済的な観点から好ましく用いられる。具体的には、Arレーザー、He-Cdレーザー、He-Neレーザー、ArFエキシマレーザー、CO2レーザー、Nd:YAGレーザー、半導体レーザー、Dyeレーザー等から出射されるレーザー光線や、キセノンランプ、メタルハライドランプ、水銀灯、蛍光灯等から出射される紫外線等の活性エネルギー線が好適である。
【0077】
本発明の三次元光造形用材料よりなる造形面に活性エネルギー線を照射して所定の形状パターンを有する各硬化層を形成するに当たっては、レーザー光などのような点状に絞られた活性エネルギー線を使用して点描または線描方式で硬化層を形成してもよいし、液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッター(DMD)などのような微小光シャッターを複数配列して形成した面状描画マスクを介して造形面に活性エネルギー線を面状に照射して硬化層を形成させる造形方式を採用してもよい。
【0078】
[粘度・耐熱性・耐衝撃性]
<粘度>
本発明の三次元光造形用材料の25℃におけるE型粘度は、800mPa・s以下であることが好ましい。E型粘度が,800mPa・s以下であれば、光学的立体造形法における取り扱い性に優れ、造形効率、造形後の洗浄等の処理効率に優れる。この観点から、本発明の三次元光造形用材料の25℃におけるE型粘度は800mPa・s以下であることが好ましく、600mPa・s以下であることがより好ましい。
一方で、硬化性の観点から、本発明の三次元光造形用材料の25℃におけるE型粘度は、1mPa・s以上であることが好ましく、10mPa・s以上であることがより好ましい。
【0079】
<耐熱性>
本発明の三次元光造形用材料を用いて、下記a.の方法で作製された荷重たわみ温度評価用サンプルについて、下記C.の評価方法で測定された荷重たわみ温度は、耐熱性の観点から70℃以上であることが好ましく、75℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましい。この荷重たわみ温度の上限には特に制限はないが通常200℃以下である。
<a.荷重たわみ温度評価用サンプルの作成>
光造型機(商品名:Elegoo Mars Pro、Elegoo社製)を使用して、前記三次元光造形用材料から、荷重たわみ温度評価用サンプルとして、120.0mm×12.7mm×3.0mmの角柱を底面が幅方向になる向きで造形する。造形条件は、1層ごとの厚みを50μmとし、初期8層については照射時間を一層毎50秒とし、その後は一層毎の照射時間を10秒に設定する。角柱を2次硬化装置(商品名:Prusa CW1s、Prusa社製)を用いて15分間UV照射し、光学的立体造形による荷重たわみ温度評価用サンプルとする。
<C.耐熱性の評価>
前記荷重たわみ温度評価用サンプルの荷重たわみ温度(℃)を、ASTM D648に準拠して、荷重1.8MPaでサンプルの光造形時における初期層の面を下向きにした状態でエッジワイズ法により測定する。
【0080】
<耐衝撃性>
本発明の三次元光造形用材料を用いて、光学的立体造形法により活性エネルギー線のみで造形、硬化させて得られる成形体について、ASTM D256に準拠して測定されるアイゾット衝撃値が、耐衝撃性の観点から20J/m以上であることが好ましく、22J/m以上であることがより好ましく、25J/m以上であることが更に好ましい。このアイゾット衝撃値の上限には特に制限はないが通常100J/m以下である。
【0081】
なお、上記荷重たわみ温度及びアイゾット衝撃値の測定のための成形体の具体的な造形方法及び各々の測定方法は、後掲の実施例の項に示す通りであり、「光学的立体造形法により活性エネルギー線のみで造形、硬化させる」とは、光学的立体造形法による造形後、二次硬化を行う場合においても加熱を行うことなく活性エネルギー線のみで二次硬化を行うことを意味する。
【0082】
[用途]
本発明の三次元光造形用材料は、そのままで光学的立体造形法による造形材料として用いることができる。また、本発明の三次元光造形用材料は、目的に応じて特殊性能を発現させるために、異種材料と混合して光学的立体造形法の造形材料とするベース材料として用いることもできる。
【0083】
本発明の三次元光造形用材料は、光学的立体造形分野に幅広く用いることができ、何ら限定されるものではないが、代表的な応用分野としては、設計の途中で外観デザインを検証するためのモデル、部品の機能性をチェックするためのモデル、鋳型を制作するための樹脂型、金型を制作するためのベースモデル、試作金型用の直接型などを挙げることできる。
特に、本発明の三次元光造形用材料は、高い熱変形温度と耐衝撃性を両立するため、耐久性が求められる部品としても使用可能である。
【0084】
本発明の三次元光造形用材料を用いて製造された成形体は、設計の途中で外観デザインを検証するためのモデル、部品の機能性をチェックするためのモデル、実部品として機械製品等に組み込み、性能をチェックするためのモデル、樹脂型、金型を制作するためのベースモデル、試作金型用の直接型などの作製などの用途に適用することができる。より具体的には、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物、金型、母型などのためのモデルや加工用モデルなどの製作等の用途に適用することができる。特に、自動車エンジン用パーツなど高温にさらされ、耐衝撃性が求められる部品などにも極めて有用である。
【実施例0085】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0086】
[使用原料]
以下の実施例及び比較例において、三次元光造形用材料の製造に用いた各原料の製品名と化合物名、製造元は下記表1に示す通りである。
【0087】
【0088】
[実施例1]
(1)三次元光造形用材料の調製
N-アクリロイルモルホリン(製品名:ACMO、KJケミカルズ社製)を10g、6官能ウレタンアクリレート(製品名:MIRAMER PU610、MIWONスペシャリティケミカルズ社製)を20g、トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:MIRAMER M300、MIWONスペシャリティケミカルズ社製)を6g、トリアクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド3mol変性品(製品名:MIRAMER M3130、MIWONスペシャリティケミカルズ社製)を54g、トリシクロデカンジアクリレート(製品名:MIRAMER M262、MIWONスペシャリティケミカルズ社製)を10g、重合開始剤としてジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド(商品名:Omnirad TPO H、BASF社製)を2g秤量し、室温(25℃)で均一になるまで撹拌することで三次元光造形用材料を得た。
【0089】
(2)評価用サンプルの作製
<a.荷重たわみ温度評価用サンプルの作成>
光造型機(商品名:Elegoo Mars Pro、Elegoo社製)を使用して荷重たわみ温度評価用サンプルとして、120.0mm×12.7mm×3.0mmの角柱を底面が幅方向になる向きで造形した。造形条件は、1層ごとの厚みを50μmとし、初期8層については照射時間を一層毎50秒とし、その後は一層毎の照射時間を10秒に設定した。角柱を2次硬化装置(商品名:Prusa CW1s、Prusa社製)を用いて15分間UV照射し、光学的立体造形による荷重たわみ温度評価用サンプルとした。
【0090】
<b.Izod評価用サンプルの作成>
光造型機(商品名:Elegoo Mars Pro、Elegoo社製)を使用してIzod評価用サンプルとして、ASTM D256に準拠して、63.5mm×12.7mm×3.0mmの角柱を底面が厚み方向になる向きで造形した。造形条件は、1層ごとの厚みを50μmとし、初期8層については照射時間を一層毎50秒とし、その後は一層毎の照射時間を10秒に設定した。角柱を2次硬化装置(商品名:Prusa CW1s、Prusa社製)を用いて15分間UV照射し、光学的立体造形によるIzod評価用サンプルとした。
【0091】
(3) 三次元光造形用材料及び評価サンプルの評価
<A.造形性の評価>
上記評価用サンプルの作製において、得られたサンプルのサイズを確認し、以下の通り評価した。
○:いずれも設定したサイズの角柱が得られた。
×:一方又は双方において、設定したサイズの角柱が得られなかった。
【0092】
<B.粘度の評価>
E型粘度計(東機産業製、装置名:TV25形粘度計、コーンローター:1°34′×R24、25℃、回転数:10又は100rpm)を用いて三次元光造形用材料の粘度を測定し、下記基準で評価した。
○:800mPa・s以下
×:800mPa・sより高い
【0093】
<C.耐熱性の評価>
前記a.荷重たわみ温度評価用サンプルの作成に記載の通りに作成したサンプルの荷重たわみ温度(℃)を、ASTM D648に準拠して、荷重1.8MPaでサンプルの光造形時における初期層の面を下向きにした状態でエッジワイズ法により測定し、耐熱性を下記基準で評価した。
◎:80℃以上
○:70℃以上80℃未満
×:70℃未満
【0094】
<D.耐衝撃性の評価>
前記b.Izod評価用サンプルの作成に記載の通り作成したサンプルのアイゾット衝撃値(単位:J/m)をASTM D256に準拠して、23℃の条件下で測定し、下記基準で耐衝撃性を評価した。
◎:25J/m以上
○:20J/m以上25J/m未満
×:20J/m未満
【0095】
[実施例2~7、比較例1~2]
表2に示す原料を、表2に示す通り秤量した以外は実施例1と同様の方法で三次元光造形用材料の調製及び評価を行った。
【0096】
実施例1~7及び比較例1~2の評価結果を表2に示す。
【0097】
【0098】
以上の結果から明らかなように、本発明を適用した実施例1~7は、耐熱性、耐衝撃性のいずれにも優れた成形体を製造できた。
これに対して、(A)成分を含まない比較例1は、硬化物が全く得られず、造形することができなかった。
重合性成分中の(C)成分の割合が55質量%以上である実施例1~5、7は、耐熱性においてより優れていた。
(C)成分中の(C-2)成分の割合が50質量%以上である実施例1~6では耐衝撃性においてより優れていた。
(B)成分と(C-2)成分を含まない比較例2では耐熱性と耐衝撃性ともに劣っていた。