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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121495
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】発泡用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240830BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20240830BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20240830BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20240830BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CFD
C08L23/10
C08L67/04
C08L23/08
C08L53/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028635
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521067751
【氏名又は名称】ニューライト テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕也
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
【Fターム(参考)】
4F074AA21
4F074AA24
4F074AA68
4F074AA98
4F074AB05
4F074AD10
4F074BA13
4F074CA26
4F074DA24
4F074DA34
4F074DA35
4F074DA47
4J002BB053
4J002BB111
4J002BB151
4J002BP021
4J002CF182
4J002EG030
4J002EQ016
4J002FD326
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】発泡成形体における外観不良を低減できる発泡用樹脂組成物等が提供される。
【解決手段】プロピレン系重合体(A)、及び、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)を含む発泡用樹脂組成物であって、プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)0.1~40質量部を含み、組成物の135℃における等温結晶化時間が450秒以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体(A)、及び、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)を含む発泡用樹脂組成物であって、
プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)0.1~40質量部を含み、
前記組成物の135℃における等温結晶化時間が450秒以上である、発泡用樹脂組成物。
【請求項2】
プロピレン系重合体(A)がヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、請求項1に記載の発泡用樹脂組成物。
【請求項3】
プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、さらにエチレン-αオレフィン共重合体(B)1~40質量部含む、請求項1に記載の発泡用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の発泡用樹脂組成物と、発泡剤とを含む、発泡剤含有樹脂組成物。
【請求項5】
前記発泡剤が物理発泡剤及び/又は有機系の化学発泡剤である請求項4に記載の発泡剤含有樹脂組成物。
【請求項6】
請求項4に記載の発泡剤含有樹脂組成物を射出発泡成形して得られた発泡成形体。
【請求項7】
請求項4に記載の発泡剤含有樹脂組成物を射出発泡成形する工程を備える、発泡成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、プロピレン系樹脂などの熱可塑性樹脂の発泡成形体が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-234046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、発泡成形体の外面に、スワールマークと呼ばれる外観不良が発生することがあった。
本発明は、発泡成形体における外観不良を低減できる発泡用樹脂組成物等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]プロピレン系重合体(A)、及び、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)を含む発泡用樹脂組成物であって、
プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)0.1~40質量部を含み、
前記組成物の135℃における等温結晶化時間が450秒以上である、発泡用樹脂組成物。
【0006】
[2]プロピレン系重合体(A)がヘテロファジックプロピレン重合材料を含む、[1]に記載の発泡用樹脂組成物。
【0007】
[3] プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、さらにエチレン-αオレフィン共重合体(B)1~40質量部含む、[1]又は[2]に記載の発泡用樹脂組成物。
【0008】
[4][1]~[3]のいずれか一項に記載の発泡用樹脂組成物と、発泡剤とを含む、発泡剤含有樹脂組成物。
【0009】
[5]前記発泡剤が物理発泡剤及び/又は有機系の化学発泡剤である[4]に記載の発泡剤含有樹脂組成物。
【0010】
[6][4]又は[5]に記載の発泡剤含有樹脂組成物を射出発泡成形して得られた発泡成形体。
【0011】
[7][4]又は[5]に記載の発泡剤含有樹脂組成物を射出発泡成形する工程を備える、発泡成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発泡成形体における外観不良を低減できる発泡用樹脂組成物等が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(発泡用樹脂組成物)
本発明の1実施形態にかかる発泡用樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)、及び、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)を含む発泡用樹脂組成物であって、プロピレン系重合体(A)100質量部に対して、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)0.1~40質量部を含み、前記組成物の135℃における等温結晶化時間が450秒以上である。
【0015】
(プロピレン系重合体(A))
プロピレン系重合体とは、プロピレンに由来する構造単位を50質量%超含有する重合体であり、その例は、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、及び、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体である。プロピレン系重合体は、2種以上のプロピレン系重合体の組み合わせであってもよい。
【0016】
ここで、プロピレン系重合体について詳しく説明する。
【0017】
上述のように、プロピレン系重合体とは、プロピレン系重合体に含まれる全構成単位の量を100質量%としたときに、プロピレン単位が50質量%より多く含まれる重合体である。プロピレン単位は、60質量%以上でもよく、70質量%以上でもよい。
【0018】
プロピレン系重合体の例としては、プロピレン単独重合体、プロピレンおよびプロピレンと共重合しうる他のモノマーの共重合体が挙げられる。このような共重合体は、ランダム共重合体(以下、ポリプロピレン系ランダム共重合体ともいう。)であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0019】
プロピレン系重合体は、1種単独のプロピレン系重合体を含んでいてもよく、2種以上のプロピレン系重合体を、任意の組み合わせ、任意の割合で含んでいてもよい。
【0020】
2種以上のプロピレン系重合体の組み合わせの例としては、重量平均分子量等が異なる2種以上のプロピレン単独重合体の組み合わせ、下記の重合体(I)および重合体(II)の組み合わせが挙げられる。
【0021】
プロピレン系重合体は、ヘテロファジックプロピレン重合材料を含んでいてもよい。ここで、ヘテロファジックプロピレン重合材料とは、下記の重合体(I)および重合体(II)を含んでおり、当該重合体(I)および重合体(II)が相溶することなく、互いに異なる相を形成しているプロピレン系重合体(組成物)を意味する。プロピレン系重合体(A)において、ヘテロファジックプロピレン重合体が占める割合は、50質量%以上でもよく、60質量%以上でもよく、70質量%以上でもよく、80質量%でもよく、90質量%でもよい。
【0022】
ここで、重合体(I)は、全構成単位の量を100質量%としたときに、プロピレン単位を80質量%より多く、100質量%以下含むプロピレン系重合体である。重合体(I)は、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0023】
また、重合体(II)は、プロピレン単位と、エチレン単位および炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー単位との共重合体であるプロピレン系重合体である。
【0024】
重合体(I)および重合体(II)は、それぞれ1種単独の重合体であってもよく、2種以上の重合体の組み合わせであってもよい。
【0025】
プロピレン系重合体は、外観を向上させる観点から、好ましくはヘテロファジックプロピレン重合材料である。
【0026】
プロピレン系重合体は、発泡用樹脂組成物の成形体の剛性のさらなる向上の観点から、13C-NMRで測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率([mmmm]分率ともいう。)が、0.97以上であることが好ましく、0.98以上であることがより好ましい。
【0027】
プロピレン系重合体のアイソタクチック・ペンタッド分率は、1に近いほど、プロピレン系重合体の分子構造の立体規則性が高く、ポリプロピレン系重合体の結晶性が高いといえる。
【0028】
プロピレン系重合体が共重合体である場合は、共重合体中のプロピレン単位の連鎖についてアイソタクチック・ペンタッド分率が測定されうる。
【0029】
プロピレン系重合体は、発泡用樹脂樹脂組成物の成形加工性をより良好にする観点から、230℃、荷重2.16kgfの条件で、JIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR)が、10g/10分以上であることが好ましく、15g/10分以上であることがより好ましい。ポリプロピレン系重合体のメルトフローレートは250g/10分以下であることが好ましく、200g/10分以下であることがより好ましい。一態様において、ポリプロピレン系重合体のメルトフローレートは10g/10分~200g/10分であることが好ましい。
【0030】
プロピレン系重合体は、例えば、重合触媒を用いる重合方法により製造することができる。
【0031】
重合触媒の例としては、チーグラー型触媒、チーグラー・ナッタ型触媒、周期表第4族の遷移金属元素を含みシクロペンタジエニル環を有する化合物とアルキルアルミノキサンとを含む触媒、周期表第4族の遷移金属元素を含みシクロペンタジエニル環を有する化合物、当該化合物と反応してイオン性の錯体を形成する化合物、および有機アルミニウム化合物を含む触媒、触媒成分(例、周期表第4族の遷移金属元素を含みシクロペンタジエニル環を有する化合物、イオン性の錯体を形成する化合物、有機アルミニウム化合物等)を、無機粒子(例、シリカ、粘土鉱物等)に担持し変性させた触媒が挙げられる。
【0032】
また、重合触媒として、既に説明した触媒の存在下でエチレンやα-オレフィンなどの単量体を予備重合させて調製される予備重合触媒を用いてもよい。
【0033】
チーグラー・ナッタ型触媒の例としては、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とが組み合わされた触媒が挙げられる。
【0034】
上記の重合触媒の具体例としては、特開昭61-218606号公報、特開平5-194685号公報、特開平7-216017号公報、特開平9-316147号公報、特開平10-212319号公報、特開2004-182981号公報に記載の従来公知の触媒が挙げられる。
【0035】
重合方法の例としては、バルク重合、溶液重合、および気相重合が挙げられる。ここで、バルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法をいう。溶液重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法をいう。気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法をいう。
【0036】
上記の重合方法における方式(重合方式)の例としては、バッチ式、連続式およびこれらの組み合わせが挙げられる。重合方式は、直列に連結した複数の重合反応槽を用いて行われる多段式であってもよい。
【0037】
上記の重合方法にかかる重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、目的とするプロピレン系重合体に応じて任意好適な条件を適宜決定することができる。
【0038】
プロピレン系重合体を製造するにあたり、上記の重合方法により重合されたプロピレン系重合体中に含まれる残留溶媒や、重合工程において副生したオリゴマー等の不純物を除去するために、上記の重合方法により重合されたプロピレン系重合体を、例えば、残留溶媒やオリゴマー等の不純物が揮発し得る温度であって、かつプロピレン系重合体が融解、変性等し得ない温度で保持してもよい。このような不純物の除去方法の例としては、特開昭55-75410号公報、特許第2565753号公報等に記載の従来公知の任意好適な方法が挙げられる。
【0039】
以下、プロピレン系重合体であるプロピレン単独重合体、プロピレン系ランダム共重合体およびヘテロファジックプロピレン重合材料について説明する。
【0040】
(プロピレン単独重合体)
プロピレン単独重合体は、発泡用樹脂組成物の流動性と、発泡用樹脂組成物の成形体の靱性とを良好にする観点から、極限粘度数[η]が、0.1~2dL/gであることが好ましく、0.5~1.9dL/gであることがより好ましく、0.7~1.8dL/gであることがさらに好ましい。
【0041】
また、プロピレン単独重合体は、発泡用樹脂組成物の流動性と、発泡用樹脂組成物の成形体の靱性とを良好にする観点から、分子量分布Mw/Mnが、3以上7未満であることが好ましく、3~5であることがより好ましい。ここで、Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。なお、分子量分布は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される数値である。
【0042】
(プロピレン系ランダム共重合体)
プロピレン系ランダム共重合体の例としては、プロピレン単位とエチレン単位とを含むランダム共重合体(以下、ランダム共重合体(1)という。)、プロピレン単位と炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位とを含むランダム共重合体(以下、ランダム共重合体(2)という。)、およびプロピレン単位とエチレン単位と炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位とを含むランダム共重合体(以下、ランダム共重合体(3)という。)が挙げられる。
【0043】
プロピレン系ランダム共重合体を構成しうる、炭素原子数が4以上のα-オレフィンは、好ましくは炭素原子数が4~10のα-オレフィンである。炭素原子数が4~10のα-オレフィンの例としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、および1-デセンが挙げられ、好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンである。
【0044】
ランダム共重合体(2)の例としては、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、プロピレン-1-オクテンランダム共重合体、およびプロピレン-1-デセンランダム共重合体が挙げられる。
【0045】
ランダム共重合体(3)の例としては、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、およびプロピレン-エチレン-1-デセン共重合体が挙げられる。
【0046】
ランダム共重合体(1)中のエチレン単位の含有量は、好ましくは0.1~40質量%であり、より好ましくは0.1~30質量%であり、さらに好ましくは2~15質量%である。
【0047】
ランダム共重合体(2)中の炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位の含有量は、好ましくは0.1~40質量%であり、より好ましくは0.1~30質量%であり、さらに好ましくは2~15質量%である。
【0048】
ランダム共重合体(3)中のエチレン単位および炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位の合計含有量は、好ましくは0.1~40質量%であり、より好ましくは0.1~30質量%であり、さらに好ましくは2~15質量%である。
【0049】
ランダム共重合体(1)~(3)中のプロピレン単位の含有量は、好ましくは60~99.9質量%であり、より好ましくは70~99.9質量%であり、さらに好ましくは85~98質量%である。
【0050】
(ヘテロファジックプロピレン重合材料)
ヘテロファジックプロピレン重合材料に含まれうる重合体(I)は、既に説明したとおり、プロピレン単位を、80質量%より多く100質量%以下含有する重合体である。重合体(I)中のプロピレン単位以外のモノマー単位の合計の含有量は、通常0質量%以上20質量%未満であり、0質量%であってもよく、0.01質量%以上であってもよい。
【0051】
重合体(I)が有していてもよいプロピレン単位以外のモノマー単位の例としては、エチレン単位および炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位が挙げられる。
【0052】
重合体(I)を構成しうる炭素原子数が4以上のα-オレフィンは、好ましくは炭素原子数が4~10のα-オレフィンであり、より好ましくは1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンであり、さらに好ましくは1-ブテンである。
【0053】
重合体(I)の例としては、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、およびプロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。
【0054】
重合体(I)は、これらの中でも、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、およびプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体であることが好ましく、発泡用樹脂組成物を含む成形体の剛性の観点から、プロピレン単独重合体であることがより好ましい。
【0055】
重合体(I)のGPCで測定された分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以上7未満であり、より好ましくは3~5である。
【0056】
重合体(II)は、既に説明したとおり、プロピレン単位と、エチレン単位および炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー単位との共重合体である。
【0057】
重合体(II)中のエチレン単位および炭素原子数が4以上のα-オレフィン単位の合計の含有量は、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは、20~60質量%である。
【0058】
重合体(II)を構成しうる炭素原子数が4以上のα-オレフィンは、好ましくは炭素原子数が4~10のα-オレフィンである。重合体(II)を構成しうるα-オレフィンの例としては、既に説明した重合体(I)を構成しうるα-オレフィンの例と同様の例が挙げられる。
【0059】
重合体(II)の例としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-デセン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、およびプロピレン-1-デセン共重合体が挙げられ、好ましくはプロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、およびプロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体であり、より好ましくはプロピレン-エチレン共重合体である。
【0060】
ヘテロファジックプロピレン重合材料における重合体(II)の含有量は、重合体(I)および重合体(II)の合計を100質量%としたときに、1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることがさらに好ましく、8~15質量%であることが特に好ましい。
【0061】
ヘテロファジックプロピレン重合材料の例としては、重合体(I)がプロピレン単独重合体である、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、およびプロピレン単独重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせが挙げられる。
【0062】
また、ヘテロファジックプロピレン重合材料の別の例としては、重合体(I)が、プロピレン単位およびプロピレン単位以外のモノマー単位を含む重合体である、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ;(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体と(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-ヘキセン)共重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-1-オクテン)共重合体と(プロピレン-1-オクテン)共重合体との組み合わせ、および(プロピレン-1-オクテン)共重合体と(プロピレン-1-デセン)共重合体との組み合わせが挙げられる。なお、上記の組み合わせの例示においては、重合体(I)を先に記載し、重合体(II)を後に記載している。
【0063】
発泡用樹脂組成物に含まれうるヘテロファジックプロピレン重合材料は、(プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせ、(プロピレン-エチレン)共重合体と(プロピレン-エチレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせ、および(プロピレン-1-ブテン)共重合体と(プロピレン-1-ブテン)共重合体との組み合わせであることが好ましく、プロピレン単独重合体と(プロピレン-エチレン)共重合体との組み合わせであることがより好ましい。
【0064】
ヘテロファジックプロピレン重合材料は、重合体(I)を生成させる第1の重合工程と、第1の重合工程で生成した重合体(I)の存在下に重合体(II)を生成させる第2の重合工程を含む多段の重合工程を含む製造方法により製造することができる。ヘテロファジックプロピレン重合材料の重合は、既に説明したポリプロピレン系重合体の製造に使用可能な触媒として例示した触媒を用いて行うことができる。
【0065】
重合体(I)の極限粘度数(以下、[η]という。)は、好ましくは0.1~2dL/gであり、より好ましくは0.5~1.5dL/gであり、さらに好ましくは0.7~1.3dL/gである。
【0066】
重合体(II)の極限粘度数(以下、[η]IIという。)は、好ましくは1~10dL/gであり、より好ましくは2~10dL/gであり、さらに好ましくは5~8dL/gである。
【0067】
また、[η]IIの[η]に対する比([η]II/[η])は、好ましくは1~20であり、より好ましくは2~10であり、さらに好ましくは2~9である。
【0068】
ポリプロピレン系重合体が上記のとおり多段の重合工程により形成された重合体(I)と重合体(II)とからなるヘテロファジックプロピレン重合材料である場合には、第1の重合工程で生成した重合体(I)を、第1の重合工程を行った重合槽からその一部を抜き出して極限粘度数を求め、第2の重合工程により最終的に生成したヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度数(以下、([η]Totalという。)を求め、これらの極限粘度数の値と含有量とを用いて、第2の重合工程で生成した重合体(II)の極限粘度数を算出する。
【0069】
また、重合体(I)と重合体(II)とからなるヘテロファジックプロピレン重合材料が、重合体(I)が第1の重合工程で得られ、重合体(II)が第2の重合工程で得られる製造方法によって製造された場合には、重合体(I)および重合体(II)の各々の含有量、極限粘度数([η]Total、[η]、[η]II)の測定および算出の手順は、以下のとおりである。
【0070】
第1の重合工程で得られた重合体(I)の極限粘度数([η]I)、第2の重合工程により得られた最終重合体(すなわち、重合体(I)と重合体(II)とからなるヘテロファジックプロピレン重合材料)について既に説明した方法で測定した極限粘度数([η]Total)、最終重合体が含有している重合体(II)の含有量から、重合体(II)の極限粘度数[η]IIを、下記式により計算する。
式:[η]II=([η]Total-[η]×X)/XII
式中、
[η]Totalは、最終重合体の極限粘度数(単位:dL/g)を表し、
[η]は、重合体(I)の極限粘度数(単位:dL/g)を表し、
は、最終重合体に対する重合体(I)の重量比を表し、
IIは、最終重合体に対する重合体(II)の重量比を表す。
なお、XおよびXIIは重合工程における物質収支から求めることができる。
【0071】
ここで、最終重合体に対する重合体(II)の重量比XIIは、重合体(I)および最終重合体それぞれの結晶融解熱量を用いて下記式により算出してもよい。
式:XII=1-(ΔHf)/(ΔHf)
式中、
(ΔHf)は、最終重合体(重合体(I)および重合体(II))の融解熱量(単位:cal/g)を表し、
(ΔHf)は、重合体(I)の融解熱量(単位:cal/g)を表す。
【0072】
プロピレン系重合体は、炭素14(14C)を構成元素として含有するものであってもよく、マテリアルリサイクル(メカニカルリサイクル)されたものであってもよい。
【0073】
プロピレン系重合体に含まれる炭素14(14C)の濃度は、ISO 16620-2:2019に規定のAMS(Accelerator mass spectrometry)法によって、pMC(percentage of mordern carbon:単位%)として求められる。
大気中の二酸化炭素には炭素14(14C)が一定割合で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ、樹木には14Cが含まれることが知られている。そして、地中に長期にわたって貯蔵されてきたと考えらえる石油等の化石資源中には炭素14(14C)が殆ど含まれていないことも知られている。よって、プロピレン系重合体の製造に用いるモノマーの原料に植物由来の物質を用いることによって、プロピレン系重合体の構成元素に炭素14(14C)を含有させることができる。
【0074】
プロピレン系重合体の製造においては、化石資源由来モノマー(エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等)、植物由来モノマー(エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等)、ケミカルリサイクルモノマー(エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等)等を用いることができ、これらは2種以上組み合わせて用いられてもよい。
具体的なモノマーの組み合せとしては、例えば、
化石資源由来プロピレン/植物由来プロピレン/ケミカルリサイクルプロピレン、
化石資源由来プロピレン/植物由来プロピレン/ケミカルリサイクルプロピレン/化石資源由来エチレン/植物由来エチレン/ケミカルリサイクルエチレン、
化石資源由来プロピレン/植物由来プロピレン/ケミカルリサイクルプロピレン/化石資源由来1-ブテン/植物由来1-ブテン/ケミカルリサイクル1-ブテン、
化石資源由来プロピレン/植物由来プロピレン/ケミカルリサイクルプロピレン/化石資源由来1-ヘキセン/植物由来1-ヘキセン/ケミカルリサイクル1-ヘキセン、
化石資源由来プロピレン/植物由来プロピレン/ケミカルリサイクルプロピレン/化石資源由来1-オクテン/植物由来1-オクテン/ケミカルリサイクル1-オクテン、
があげられる。
【0075】
化石資源由来モノマーは、石油、石炭、天然ガスといった地下資源としての炭素を由来としており、一般的には炭素14(14C)が殆ど含まれていない。化石資源由来モノマーの製造方法としては、公知の方法、例えば、石油由来ナフサ・エタン等のクラッキング、エタン・プロパン等の脱水素等でオレフィンを製造する方法があげられる。
【0076】
植物由来モノマーは、動植物として地表面を循環する炭素を由来としており、一般的に一定割合の炭素14(14C)を含む。植物由来モノマーの製造方法としては、公知の方法、例えば、バイオナフサ・植物油・動物油等のクラッキング、バイオプロパン等の脱水素、サトウキビやトウモロコシ等の植物原料から抽出した糖等の発酵物からアルコールを分離し、それを脱水反応する方法(特表2010-511634、特表2011-506628、特表2013-503647等)、植物由来エタノールから得られるエチレンとn-ブテンをメタセシス反応させる方法(WO2007/055361等)があげられる。
【0077】
ケミカルリサイクルモノマーは、廃棄物の分解や燃焼により発生する炭素を由来としており、その炭素14(14C)含有量は、廃棄物によって種々の値となる。ケミカルリサイクルモノマーの製造方法としては、公知の方法、例えば、廃プラスチックを熱分解する方法(特表2017-512246等)、廃植物油・廃動物油等をクラッキングする方法(特表2018-522087等)、生ゴミ・バイオマス廃棄物・食品廃棄物・廃油・廃木材・紙ごみ・廃プラスチック等の廃棄物をガス化・アルコール変換・脱水反応する方法(特開2019-167424、WO2021/006245等)があげられる。
【0078】
化石資源由来オレフィン、植物由来オレフィンおよびケミカルリサイクルオレフィンを2種以上用いる場合、それぞれ個別に製造されたオレフィンを、化石資源由来オレフィン/植物由来オレフィン、化石資源由来オレフィン/ケミカルリサイクルオレフィン、植物由来オレフィン/ケミカルリサイクルオレフィン、化石資源由来オレフィン/植物由来オレフィン/ケミカルリサイクルオレフィンのような組み合わせで混合して用いてもよい。また、オレフィンの製造工程の原料・製造中間体に、化石資源由来化合物/植物由来化合物、化石資源由来化合物/ケミカルリサイクル化合物、植物由来化合物/ケミカルリサイクル化合物、化石資源由来化合物/植物由来化合物/ケミカルリサイクル化合物のような組み合わせの混合物を用いることによって、上記オレフィンの組み合わせの混合物として製造されたものを用いてもよい
【0079】
炭素14(14C)を含有するプロピレン系重合体としては、市販のプロピレン系重合体も用いることができる。例えば、Borealis社製「Bornewables」シリーズ、SABIC社製「TRUCIRCLE」シリーズ、LyondellBasell社製「CirculenRenew」シリーズ等があげられる。
【0080】
プロピレン系重合体の炭素14(14C)濃度は、環境負荷低減の観点から、好ましくは0.2pMC(%)以上であり、より好ましくは0.5pMC(%)以上であり、更に好ましくは1pMC(%)以上であり、より更に好ましくは5pMC(%)以上であり、特に好ましくは10pMC(%)以上である。コストの観点から、好ましくは99pMC(%)以下であり、より好ましくは95pMC(%)以下であり、更に好ましくは90pMC(%)以下であり、より更に好ましくは70pMC(%)以下であり、特に好ましくは50pMC(%)以下である。
【0081】
プロピレン系重合体の炭素14(14C)濃度については、プロピレン系重合体の製造に用いる化石資源由来オレフィン、植物由来オレフィンおよびケミカルリサイクルオレフィンの比率を変更することによって調整することができる。
【0082】
(エチレン-α-オレフィン共重合体(B))
エチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構造単位を50質量%超含有するエチレン及びα-オレフィンの共重合体である。エチレン-α-オレフィン共重合体中のエチレンに由来する構造単位の含有量は、60重量%以上であってよく、70質量%以上であってもよい。
【0083】
エチレン-α-オレフィン共重合体は、炭素原子数3~20のα-オレフィンに由来する単量体単位と、エチレンに由来する単量体単位とを有する共重合体であってよい。
炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、および1-ドデセン等が挙げられ、好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、または1-オクテンである。
【0084】
上記のエチレン-α-オレフィン共重合体としては、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、およびエチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体が挙げられる。エチレン-α-オレフィン共重合体については、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくは、エチレン-1-ブテン共重合体、またはエチレン-1-オクテン共重合体である。
【0085】
<ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)>
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体とは、ヒドロキシアルカン酸のポリエステルである。ヒドロキシアルカン酸の例は、2-ヒドロキシアルカン酸、3-ヒドロキシアルカン酸、4-ヒドロキシアルカン酸である。
【0086】
2-ヒドロキシアルカン酸の例は、グリコール酸、乳酸、2-ヒドロキシ酪酸である。2-ヒドロキシアルカン酸のポリエステル、すなわち、ポリ(2-ヒドロキシアルカノエート)系重合体の例は、ポリグリコール酸、及び、ポリ乳酸である。
【0087】
3-ヒドロキシアルカン酸の例は、3-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシプロピオン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、3-ヒドロキシヘキサン酸である。3ヒドロキシアルカン酸のポリエステル、すなわち、ポリ(3-ヒドロキシアルカネート)系重合体については、後で詳述する。
【0088】
4-ヒドロキシアルカン酸の例は、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシペンタン酸、4-ヒドロキシヘキサン酸である。
【0089】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)は、ヒドロキシアルカン酸の単独重合体でもよく、2種以上のヒドロキシアルカン酸の重合体でもよい。
【0090】
ポリ(3-ヒドロキシアルカネート)系重合体とは、ポリヒドロキシアルカノエートすなわちヒドロキシアルカン酸のポリエステルであって、かつ、(1)式で示される3-ヒドロキシアルカネートの繰り返し単位を必ず含む。(1)式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~15のアルキル基、シアノ基、炭素原子数1~18のアミノ基、炭素原子数1~11のアルコキシ基(アルキルオキシ基)、炭素原子数1~20のアミド基、炭素原子数6~12のアリール基、又は、炭素原子数1~9の1価の複素環基である。これらの基は、置換基を有していてもよい。特に、ペレットに含まれるポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)以外の成分(例えば、プロピレン系重合体(A))との相溶性の観点から、Rは、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~20のアミド基、又は、炭素原子数6~8のアリール基が好ましい。
【0091】
[-O-CHR-CH-CO-]…(1)
【0092】
ハロゲン原子の例は、F、Cl、Br、及びIである。
【0093】
炭素原子数1~15のアルキル基は直鎖状でも分岐状でもよい。アルキル基の炭素原子数は、1~8が好ましく、1~4がより好ましい。アルキル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル墓、ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル墓である。
【0094】
炭素原子数1~18、あるいは、1~11のアミノ基の例は、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、ベンジルアミノ基、ジベンジルアミノ基である。
【0095】
アルキルアミノ基の例は、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、イソプロピルアミノ基、イソブチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、sec-ブチルアミノ基、tert-ブチルアミノ基、sec-ペンチルアミノ基、tert-ペンチルアミノ基、tert-オクチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、シクロオクチルアミノ基、1-アダマンタミノ基、2-アダマンタミノ基である。
【0096】
ジアルキルアミノ基の例は、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、ジイソペンチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、メチルブチルアミノ基、メチルイソブチルアミノ基、ジシクロプロピルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、ピペラジノ基である。
【0097】
アリールアミノ基の例としては、アニリノ基、1-ナフチルアミノ基、2-ナフチルアミノ基、o-トルイジノ基、m-トルイジノ基、p-トルイジノ基、1-フルオレンアミノ基、2-フルオレンアミノ基、2-チアゾールアミノ基、p-ターフェニルアミノ基である。
【0098】
アルキルアリールアミノ基としては、N-メチルアニリノ基、N-エチルアニリノ基、N-プロピルアニリノ基、N-ブチルアニリノ基、N-イソプロピルアニリノ基、N-ペンチルアニリノ基である。
【0099】
炭素原子数1~11のアルコキシ基の例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペントキシ基である。
【0100】
「アミド基」とは、カルボン酸アミドから窒素原子に結合した水素原子1個を除いた基を意味する。炭素原子数1~20のアミド基の例は、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブチルアミド基、ベンズアミド基、トリフルオロアセトアミド基、ペンタフルオロベンズアミド基等の-NH-C(=O)-Rで表される基(ただし、Rは、水素原子、又は、1価の有機基)、及び、ジホルムアミド基、ジアセトアミド基、ジプロピオアミド基、ジブチロアミド基、ジベンズアミド基、ジトリフルオロアセトアミド基、ジペンタフルオロベンズアミド基のように-N(-C(=O)-R)(-C(=O)-R)で表される基(ただし、R はそれぞれ独立に、水素原子、又は、1価の有機基)である。有機基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい、アルキル基、アルコキシ基、アリール基であることができる。なかでも、アミド基は、ホルムアミド基、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブチロアミド基、ベンズアミド基が好ましい。
【0101】
炭素原子数6~12のアリール基の例は、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基であり、なかでも、フェニル基、トリル基、キシリル基がより好ましい。
【0102】
炭素原子数1~9の1価の複素環基のヘテロ原子の例は、N、O、及び、Sであり、飽和していても不飽和であってもよく、ヘテロ原子が単数であっても複数であっても異種のヘテロ原子を有していてもよい。このような複素環基の例は、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チアゾリル基が挙げられる。
【0103】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)の繰り返し単位は、1又は複数種の(1)式で示される3-ヒドロキシアルカノエートのみからなってもよく、1又は複数種の(1)式で示される3-ヒドロキシアルカノエート、及び、1又は複数種の他のヒドロキシアルカノエートを有してもよい。
【0104】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)は、(1)式で示される3-ヒドロキシルカノエートの繰り返し単位を、ヒドロキシアルカノエートの全繰り返し単位(100モル%)に対して50モル%以上含むものが好ましく、より好ましくは70モル%以上である。
【0105】
(1)式で示される3-ヒドロキシアルカノエートの例は、Rが水素原子またはC2n+1で表されるアルキル基であって、nは1~15の整数である場合、n=1である3-ヒドロキシブチレート(以降、3HBと記載することがある)、n=2である3-ヒドロキシバリレート(以降、3HVと記載することがある)、n=3である3-ヒドロキシヘキサノエート(以降、3HHと記載することがある)、n=5の3-ヒドロキシオクタネート、n=15である3-ヒドロキシオクタデカネート、Rが水素原子である3-ヒドロキシプロピオネートである。
【0106】
(1)式で表される1種の繰り返し単位のみを有するポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)の例は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(以降、P3HBと記載することがある)である。
【0107】
(1)式で表される複数種の繰り返し単位のみを有するポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)の例は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)(以下、P3HB3HHと記載することがある。)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバリレート)(以下、P3HB3HVと記載することがある)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシプロピオネート(以下P3HB3HPと記載することがある)である。
【0108】
(1)式で示される3-ヒドロキシアルカノエート以外の他のヒドロキシアルカノエートの例は、(2)式で示される繰り返し単位(式中、Rは水素原子またはC2n+1で表されるアルキル基で、nは1以上15以下の整数であり、mは、2~10の整数である。)である。
【0109】
[-O-CHR-C2m+1-CO-]…(2)
【0110】
(1)式および(2)式の繰り返し単位を含むポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)の例は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)(例えば下式(P3HB4HB))である。
【0111】
融点を高くする観点から、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)の繰り返し単位が、(1)式で示される3-ヒドロキシアルカノエートの中でも3-ヒドロキシブチレートを少なくとも含むことが好ましい。
【0112】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)は、3-ヒドロキシブチレートの繰り返し単位を、ヒドロキシアルカノエートの全繰り返し単位(100モル%)に対して50モル%以上含むものが好ましく、より好ましくは70モル%以上である。
【0113】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)は2種以上のエステルの繰り返し単位を有してもよく、例えば、上記のように2種の繰り返し単位を有するジ-ポリマー、3種の繰り返し単位を有するトリ-コポリマー、及び、4種の繰り返し単位を有するテトラ-コポリマーであってもよい。
【0114】
例えば、トリ-コポリマーの例は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(以下、(P3HB3HV3HH)と記載することがある。)である。
【0115】
上述のように、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)は、(1)式で示される3-ヒドロキシアルカノエートの繰り返し単位の中でも3-ヒドロキシブチレートを含むことが好ましい。全ヒドロキシアルカノエートのエステル繰り返し単位100モルに対して、3-ヒドロキシブチレートの繰り返し単位の割合XXは、90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98.0モル%以上であることが更に好ましい。
【0116】
割合XXは、通常、100モル%以下であり、99.9モル%以下であることが好ましく、99.8モル%以下であることが好ましい。
【0117】
コポリマーの配列の様式は、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれの様式でもよい。
【0118】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)は、(1)式及び(2)式以外の他のエステル繰り返し単位を有してもよいが、当該他のエステル繰り返し単位の主鎖は芳香族炭化水素構造を含まない。すなわち、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)は脂肪族ポリエステルである。ただし、当該他のエステル繰り返し単位の主鎖の炭素に芳香族炭化水素基を有する基が結合していることは可能である。
【0119】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)における繰り返し単位の構成比は、L.Tripathi.,M.C.Factories,11,44(2012)に記載されているように、1H-NMRや13C-NMR等のNMR測定結果から算出して求めることができる。
【0120】
また、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)は、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体の2種以上のブレンドでもよい。
【0121】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)の重量平均分子量(Mw)は、1万~100万であることができ、2万~80万であることが好ましく、より好ましくは3万~60万である。重量平均分子量(Mw)を1万以上とすることにより、衝撃強度及び引張伸びに優れた成形体を得ることが可能となる。また、重量平均分子量を50万以下にすることにより、プロピレン系重合体(A)中での分散性が良好となる。重量平均分子量は、40万以下でもよく、30万以下でもよく、20万以下でもよく、10万以下でもよい。なお本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、GPCにより、標準ポリスチレンを分子量標準物質として用いて測定される。
【0122】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)は、熱可塑性樹脂であり、結晶性であることが好適である。
【0123】
JIS K7210-2014に従って、温度190℃および荷重2.16kgfの条件で測定されるポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)のメルトマスフローレート(MFR(B))は、好ましくは0.1g/10分以上、200g/10分以下である。MFR(B)は、1g/10分以上でもよく、3g/10分以上でもよく、5g/10分以上でもよく、7g/10分以上でもよい。MFR(B)は、150g/10分以下でもよく、100g/10分以下でもよく、70g/100分以下、50g/100分以下、30g/100分以下、20g/100分以下でもよい。
【0124】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)の融点(Tm)は150℃以上であってよく、155℃以上、160℃以上、165℃以上、170℃以上、または、175℃以上であってもよい。ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)の融点(Tm)は、220℃以下であることができ、200℃以下であってもよく、190℃以下であってもよい。
【0125】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)の融点(Tm)は、JIS K7121に準拠した示差走査熱量計(DSC)測定により求められる結晶の融解に基づく主ピークの位置により測定される。
【0126】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)は、微生物が生産したものであってもよいし、石油または植物原料から誘導された化合物(例えば環状ラクトンなど)由来のものであってもよい。
【0127】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)は、微生物から生産されたもののようにヒドロキシアルカネートの各繰り返し単位がD体(R体)のみからなってもよいが、D体(R体)及びL体(S体)の混合物から誘導されたもののようにヒドロキシアルカノエートの繰り返し単位がD体(R体)及びL体(S体)を両方含むものでもよい。
【0128】
微生物から生産されたポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系重合体において、(1)式の繰り返し単位は下式のように表すことができる。(BI-1)式中、nは重合度を表す。
【0129】
【化1】
【0130】
そして、例えば、微生物から生産されたポリ-(3-ヒドロキシブチレート)は以下のような構造を有する。(BI-2)式中、nは重合度を表す。
【0131】
【化2】
【0132】
また、微生物から生産されたポリ-(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)は以下のような構造を有する。(BI-3)式中、m及びnは重合度を表す。
【0133】
【化3】
【0134】
また、微生物から生産されたポリ-(3-ヒドロキシブチレート-co-4-ヒドロキシブチレート)は以下のような構造を有する。(BI-4)式中、m及びnは重合度を表す。
【0135】
【化4】
【0136】
ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)は、生分解性を有することができる。
【0137】
例えば、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系重合体は、AlcaligeneseutrophusにAeromonascaviae由来のPHA合成酵素遺伝子を導入したAlcaligenes eutrophus AC32株(ブダペスト条約に基づく国際寄託、国際寄託当局:独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)、原寄託日:平成8年8月12日、平成9年8月7日に移管、受託番号FERMBP-6038(原寄託FERMP-15786より移管))(J.Bacteriol.,179,4821(1997))等の微生物によって産生することができる。
【0138】
(添加剤)
発泡用樹脂組成物は、必要に応じて、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、安定剤、防菌剤、防黴剤、分散剤、可塑剤、難燃剤、粘着付与剤、着色剤、金属粉末、有機粉末、有機及び無機の複合繊維、無機ウィスカー、及び、充填剤からなる群から選択される少なくとも一種であることができる。
【0139】
安定剤の例は、滑剤、老化防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐光剤、耐候剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、光安定剤、及び、銅害防止剤からなる群から選択される少なくとも一種である。耐光剤の例はヒンダードアミン系耐光剤である。
【0140】
着色剤の例は、酸化チタン、カーボンブラック及び有機顔料からなる群から選択される少なくとも一種である。金属粉末の例はフェライトなどの酸化鉄である。
【0141】
有機粉末の例はタンパク質、ポリエステル(ポリヒドロキシアルカノエート系重合体を除く)、芳香族ポリアミド、セルロース、及びビニロンである。無機ウィスカーの例はチタン酸カリウムウィスカーである。
【0142】
充填剤(フィラー)の例は、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク等のガラス粉、珪酸塩鉱物、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸塩鉱物、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩基性硫酸マグネシウム、亜硫酸カルシウム、硫化カドミウム、アスベスト、マイカ、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、ハイドロタルサイト、カオリン、けい藻土、グラファイト、軽石、エボ粉、コットンフロック、コルク粉、硫酸バリウム、フッ素樹脂、セルロースパウダー、及び、木粉からなる群から選択される少なくとも一種である。
【0143】
添加剤が粒子である場合の形状に限定はなく、板状、針状、又は、繊維状であってよい。
【0144】
ペレットや発泡用樹脂組成物の剛性、耐衝撃性及び寸法安定性の観点から、無機添加剤が好ましく、板状ケイ酸塩鉱物であるタルクがより好ましい。
【0145】
発泡用樹脂組成物は、上記の添加剤を1種のみ含んでもよく、2種以上の組み合わせを含んでもよい。
【0146】
発泡用樹脂組成物において、添加剤は、プロピレン系重合体(A)、エチレン-αオレフィン共重合体(B)、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)のいずれに含まれていてよい。
【0147】
動的機械分析(DMA)法により求められる発泡用樹脂組成物の温度に対する損失弾性率E’’のカーブにおけるピークは複数(例えば2峰)であってもよいが、1つ(単峰)であることが好適である。
【0148】
DMA法は、短冊状に切り出した0.3mm厚の測定試料を、測定周波数5Hz、引っ張りの測定モードで、測定温度-150℃から2℃/分の昇温速度で段階的に昇温し、試料が融解して測定不能になるまで測定して行うことができる。歪みは0.1%以下の範囲で行った。
【0149】
当該カーブにおけるピークがひとつである場合、当該ピークの温度はガラス転移温度Tgに対応する。発泡用樹脂組成物のガラス転移温度Tgは、-70℃~150℃であることができる。
【0150】
<発泡用樹脂組成物の組成>
本実施形態にかかる発泡用樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)の100質量部に対して、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)を0.1~40質量部を含む組成物である。本実施形態にかかる発泡用樹脂組成物は、エチレン-αオレフィン共重合体(B)を含んでもよく、含まなくてもよい。
【0151】
プロピレン系重合体(A)の100質量部に対して、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)の含有量は、0.5~35質量部でもよく、より好ましくは1~30質量部、さらに好ましくは3~20質量部である。
エチレン-αオレフィン共重合体(B)の含有量は、1~40質量部でもよく、1~35質量部でもよく、好ましくは5~30質量である。
【0152】
(発泡用樹脂組成物の等温結晶化時間)
本実施形態の発泡用樹脂組成物の135℃における等温結晶化時間は450秒以上であり、470秒以上であってよく、480秒以上であってよく、490秒以上であってよく、500秒以上であってよい。
【0153】
(作用)
本実施形態にかかる発泡用樹脂組成物によれば、発泡成形体の外観が優れる。この理由は明らかでは無いが、等温結晶化時間が長くなると結晶成長速度が遅くなり、発泡成形時の外観不良が低減されることが考えられる。
【0154】
(発泡用樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に係る上述の発泡用樹脂組成物の製造方法について説明する。
【0155】
この製造方法は、プロピレン系重合体(A)と、必要量のエチレン-α-オレフィン共重合体(B)と、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)と、必要に応じて添加される添加剤とを、溶融及び混練する工程を含む。溶融及び混練時の温度は150~250℃とすることができる。ここで、構成成分の全部を一度に溶融混練に供してもよいし、構成成分の一部を、途中から溶融及び混練工程に供してもよい。溶融混練は、例えば、2軸押出機などで行うことができる。
【0156】
本実施形態では、さらに、溶融混練により得られた発泡用樹脂組成物を、ダイから押し出してストランドを得る工程、ストランドを冷却して固化する工程、固化したストランドを切断してペレットを得る工程を備えてもよい。別の実施形態では、溶融混練により得られた発泡用樹脂組成物を、ダイから押し出してストランドを得る工程、ストランドを冷却しながら切断してペレットを得る工程を備える。
【0157】
ストランドを水と接触して固化してもよいし、ストランドをベルト上などで空気などの気体との接触により固化してもよい。ダイ、冷却装置、切断装置については、公知の物を利用できる。
【0158】
<発泡成形体の製造方法>
上記の発泡用樹脂組成物に発泡剤を添加して発泡剤含有樹脂組成物を得て、当該発泡剤含有樹脂組成物を発泡成形することで、発泡成形体を得ることができる。
【0159】
発泡剤に特に限定はなく、公知の化学発泡剤や物理発泡剤を用いることができる。発泡剤の添加量も成形体の発泡率などに応じて適宜調節できる。上記の発泡用樹脂組成物100質量部に対して発泡剤は0.05~10質量部であってよく、0.1質量部以上であってよく、0.2質量部以上であってよく、1.0質量部以上であってよく、8質量部以下であってよく、5質量部以下であってよい。
【0160】
化学発泡剤としては、有機化合物(有機系化学発泡剤)がよい。化学発泡剤として、ポリプロピレン樹脂組成物に対する分散性が優れているという観点から、好ましくは、粉末状の化学発泡剤であってよい。
有機化合物としては、クエン酸などのポリカルボン酸、アゾジカルボンアミド(ADCA)などのアゾ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物等などが挙げられる。
【0161】
ポリカルボン酸としては、例えば、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸などが挙げられる。アゾ化合物としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、ジメチル-2,2’-アゾビスブチレート、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチル-プロピオンアミジン]等が挙げられる。ニトロソ化合物としては、例えばN,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)が挙げられる。ヒドラジン誘導体としては、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド等が挙げられる。セミカルバジド化合物としては、例えばp-トルエンスルホニルセミカルバジドが挙げられる。その他の有機系化学発泡剤としては、トリヒドラジノトリアジン等が挙げられる。
【0162】
これらの化学発泡剤のうち、(A)発泡用樹脂組成物の溶融温度以下では分解せず発泡用樹脂組成物の分解温度以下で分解する発泡剤を用いることが好ましい。具体的には、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物であることが好ましく、臭気や発泡体の色むらの発生を防止する観点からは炭酸水素ナトリウムを含有することも好ましい。
【0163】
化学発泡剤として、射出発泡成形体の物性や外観をより良好にするという観点から、好ましくは、20以上200ml/g以下の気体を発生する化学発泡剤であってよい。複数の化学発泡剤を用いて、気体の発生量を20以上200ml/g以下に調整してもよい。気体の発生量の測定方法としては、特開2006-152271に開示されている。
【0164】
発泡用樹脂組成物と、化学発泡剤とを、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の混練機を用いて溶融及び混練することにより化学発泡剤含有樹脂組成物を得ることができる。
【0165】
なお化学発泡剤を樹脂で希釈してマスターバッチとし、このマスターバッチと、発泡用樹脂組成物とを混合して、化学発泡剤含有樹脂組成物を得てもよい。この場合の樹脂は、プロピレン系重合体(A)を含むことが好ましく、溶融温度がプロピレン系重合体(A)成分の溶融温度より低く、また溶融時の粘度がプロピレン系重合体(A)成分の溶融時の粘度より低い別のプロピレン系重合体を含むこともより好ましい。また、マスターバッチは、エチレン-αオレフィン共重合体(B)及び/又は、ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C)を含有していてもよく、これらの各濃度は、特に限定されるものではないが、マスターバッチの全量を100質量部とした場合、それぞれ10質量部~80質量部であってよい。マスターバッチにおける化学発泡剤の含有量は20~80重量%であってよい。
上記マスターバッチは、単軸又は二軸押出機やバンバリーミキサー、ニーダー等を使用して、化学発泡剤と樹脂とを溶融混練することにより得られる。
【0166】
物理発泡剤としては、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスや揮発性有機化合物などが挙げられる。中でも超臨界状態の二酸化炭素、窒素、または、これらの混合物を使用することが好ましい。物理発泡剤は2種以上を併用してもよく、化学発泡剤と物理発泡剤とを併用してもよい。
【0167】
物理発泡剤を用いる場合には、物理発泡剤を超臨界状態で溶融状のポリプロピレン系樹脂組成物に混合して、物理発泡剤含有樹脂組成物を得ることが好ましい。超臨界状態の物理発泡剤は樹脂への溶解性が高く、短時間で溶融状の発泡用樹脂組成物に均一に拡散することができるため、発泡倍率が高く、均一な発泡セル構造をもつ発泡成形体を得ることができる。
溶融状のポリプロピレン系樹脂組成物に物理発泡剤を混合する工程としては、物理発泡剤を射出成形装置のノズルまたはシリンダ内に注入する工程が挙げられる。
【0168】
発泡剤含有樹脂組成物を発泡成形する方法としては、具体的には射出発泡成形法、プレス発泡成形法、押出発泡成形法、スタンパブル発泡成形法などの公知の方法が挙げられる。外観に優れた発泡成形体を得るという観点から、特開2002-225165号公報に記載されている射出後、金型クリアランスを変化させる成形方法を採用することも好ましい。
【0169】
本発明の発泡成形体は、インサート成形、接着などの方法により表皮材を貼合して加飾発泡成形体とすることもできる。
【0170】
前記の表皮材としては、公知の表皮材を使用できる。具体的な表皮材としては、織布、不織布、編布、熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマーからなるフィルム、シート等が例示される。さらに、これらの表皮材に、ポリウレタン、ゴム、熱可塑性エラストマー等のシートを積層した複合表皮材を使用してもよい。
表皮材には、さらにクッション層を設けることができる。かかるクッション層を構成する材料としては、ポリウレタンフォーム、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)フォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム等が例示される。
【0171】
<発泡成形体の用途>
本発明に係る発泡成形体の用途としては、例えば、自動車材料、家電材料、OA機器材料、建材、排水設備、トイレタリー材料、各種タンク、コンテナー、シート等が挙げられる。
自動車材料としては、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアーインナーパネル、スペアタイヤカバー等の内装部品や、バンパー、スポイラー、フェンダー、サイドステップ、ドア・アウターパネル等の外装部品、その他エアインテークダクト、クーラントリザーブタンク、ラジエターリザーブタンク、ウインドウ・ウオッシャータンク、フェンダーライナー、ファン等の部品、また、フロント・エンドパネル等の一体成形部品等が挙げられる。
【0172】
家電材料としては、例えば、洗濯機用材料(外槽、内槽、蓋、パルセータ、バランサー、洗濯パン等)、乾燥機用材料(外装、内箱、蓋など)、掃除機用材料、炊飯器用材料、ポット用材料、保温機用材料、食器洗浄機用材料、空気清浄機用材料等が挙げられる。
OA機器・メディア関連材料としては、磁気記録媒体や光記録媒体のケース、パソコン用部品、プリンター用部品等が挙げられる。
建材としては、コンクリートなどを固める枠や、壁部材等が挙げられる。排水設備としては、パイプやポンプ部品等が挙げられる。コンテナー材料としては、食品充填用容器、運搬用コンテナー、衣装コンテナー等が挙げられる。また、運送用パレットなどが挙げられる。
中でも、本発明の成形品の用途として、好ましくは、自動車材料、家電材料、建材、排水設備、コンテナー、運送用パレットである。
【実施例0173】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0174】
[実施例及び比較例で用いた成分]
実施例及び比較例で用いた成分を、以下に示す。
【0175】
(プロピレン系重合体(A))
(プロピレン系重合体(A-1):ヘテロファジックプロピレン重合材料)
特開2004-182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を用いて、液相-気相重合法によって、プロピレン系重合体としてのヘテロファジックプロピレン重合材料(A-1)を製造した。物性は以下のとおりであった。
・メルトフローレート(230℃、21.18N荷重):90g/10分
・プロピレン単独重合体成分
極限粘度数:0.79dL/g
・エチレン-プロピレンランダム共重合体成分
極限粘度数:7.0dL/g
エチレンに由来する構造単位の含有量:32質量%
【0176】
(2)エチレン-α-オレフィン共重合体(B)
(B-1)エチレン-ブテンランダム共重合体
住友化学株式会社製:Excellen FX555
密度:0.870(g/cm
MFR(190℃、21.18N荷重):16g/10分
ブテンに由来する構造単位の含有量:24質量%
【0177】
(3)(ポリヒドロキシアルカノエート系重合体(C))
Newlight Technologies社製:ポリ(3-ヒドロキシブチレート)
・メルトフローレート(190℃、21.18N荷重):1.8g/10分
【0178】
(4)成分(D)発泡剤
(D-1)アゾジカルボンアミドを用いた。三協化成製「商品名:MB-31」
【0179】
<実施例1、2、比較例1、2>
プロピレン系樹脂組成物を次の方法で製造した。
表1の組成の原料および添加剤として「ステアリン酸カルシウム(堺化学工業社製)」を0.05重量部、「スミライザーGA80(住友化学社製)」を0.05重量部、「SONGNOX6260(ソンウォン社製)」を混合した後に、テクノベル(株)製 二軸混練機KZW-15/45MG(シリンダー径15.5mm、スクリュー径15.0mm、L/D=45)に投入して、溶融混練しペレット状のプロピレン系樹脂組成物を得た。溶融混練の条件は、次のとおりである。
シリンダー温度230℃;スクリュー回転数300rpm;スクリーンメッシュは100メッシュと50メッシュの2枚重ね。
得られたプロピレン系樹脂組成物の評価結果を表1に示す。また、得られた樹脂組成物を用いて発泡成形体を作製し、外観評価を行った。結果を表1に、評価方法の詳細を表1の後に示す。なお、実施例1において、プロピレン系重合体A-1の100質量部に対するエチレン-α-オレフィン共重合体B-1の量は0質量部、ポリヒドロキシアルカノエートC-1の量は5.3量部、実施例2において、プロピレン系重合体A-1の100質量部に対するエチレン-α-オレフィン共重合体B-1の量は28.2質量部、ポリヒドロキシアルカノエートC-1の量は12.7質量部であった。
【0180】
【表1】
【0181】
評価方法
1.等温結晶化時間(結晶化時間、T1/2、単位:秒)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC VII型)を用いて測定した。測定条件は、あらかじめ試片10mgを窒素雰囲気下におき結晶化温度135℃の条件で10分間等温結晶化を行い、得られた吸熱カーブのピークの半値幅を結晶化時間として測定した。
【0182】
2.メルトフローレート(MFR)(単位:g/10分)
JIS K7210に規定された方法に従って、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。
【0183】
3.外観(スワルマーク)の評価
実施例及び比較例のプロピレン系樹脂組成物に表1に記載の添加量の発泡剤(D)を混合し、その混合物を住友重機械工業社製「SE130型成形機」に供給し、成形温度190℃、金型冷却温度50℃、圧力50MPa、射出速度100mm/秒、保圧40MPa、保圧時間4秒にて、長さ150mm、幅90mm、厚み2.0mmの平板を成形した。成形した平板表面を目視で評価し、以下に示したとおりに判定した。
○:発泡体の表面のスワルマークが目視では確認できない
△:スワルマークがやや目立つ
×:スワルマークが目立つ